1 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:38:19.98 ID:Qf7Unaa10
二○○○ 食堂
提督「…」
大井「…」
カレー「」
提督「…」
大井「…あの」
2 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:39:11.08 ID:Qf7Unaa10
提督「何だ」
大井「何だじゃないですよ、何やってるんですか。夕食には遅すぎますよ?」
提督「見ての通りだ。カレー食ってる」
大井「の割には…」
カレー「」ホトンドテツカズ
大井「完全に冷めてますよね、これ」
提督「…聞け。これには訳がある」
大井「何ですか」
3 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:40:05.95 ID:Qf7Unaa10
提督「まず、俺は今日一日、機嫌が悪かった」
大井「見るからにイライラしてましたね。駆逐の子が怖がってましたよ」
提督「横須賀から視察に来やがったジジイのせいだ。あの野郎、大将だからって調子に乗りやがって要らぬことをうだうだ…」アーダコーダ
大井「…あの、長引くならもう下がってもいいですか? さっさとお風呂に入って休みたいので」
提督「まあ待て」
大井「チッ …で?」
提督「腐っても上官だし殴り倒すわけにはいかん。ましてや部下に八つ当たりするわけにもいかない。結果、こいつに手が出た」コト
大井「ガムですか」
提督「ガムです」フンスッ
大井「」イラッ
4 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:40:51.61 ID:Qf7Unaa10
提督「今日一日で1ケース空にした」
大井「そのまま腹下せば良かったのに」(食べ過ぎは体に毒ですよ)
提督「本音と建前がひっくり返ってるぞ。まあ、そんな訳で一日ガムを噛みまくった結果……」
大井「何ですか」
提督「…猛烈に顎が痛い」
大井「知りませんよそんなこと!」
提督「マジで痛いんだって。モノも食えないレベルで」
大井「我慢しなさいよそのくらい! 大体、スルメじゃあるまいしカレーに苦戦する要素なんて無いでしょう!?」
提督「現代っ子は顎が弱いんだよ!!」ダンッ
大井「開き直った…!?」
提督「…おほん。で、ここからが本題だ。お前に頼みがある。このカレーを…」
大井「…」
5 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:41:24.43 ID:Qf7Unaa10
提督「俺の代わりに、噛んでくれ」
6 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:42:13.84 ID:Qf7Unaa10
大井「」
提督「どうだ」
大井「」
提督「おい」
大井「…はっ、いけない。北上さんがお風呂で待ってるわ」
提督「気でも狂ったか大井。北上は今佐世保だ。そしてここはリンガだ」
大井「トチ狂ってるのはそっちでしょう! 何なんですか代わりに噛めって!?」
提督「何ですかも何も、文字通り咀嚼しろって意味だが」
大井「あぁ、もう……じゃあ百歩譲って私が提督のカレーを咀嚼したとして、それからどうするんですか。代わりに食べればいいんですか。私、もう夕飯は食べましたよ」
提督「馬鹿言え、そんなことしたら俺の飯が無くなるだろ」
大井「チッ……馬鹿が馬鹿とか言うんじゃないわよ」
提督「そうじゃなくて、ここまできたら後はもう決まってるだろ」ニタァ
大井「」ゾクッ
7 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:43:02.37 ID:Qf7Unaa10
提督「Mouth to moutまてまて早まるな大井」
大井「提督の死体は夜、秘密裏に泊地近くへ投棄します。表向きには深海棲艦による奇襲で命を失ったことにしますので、名誉は守られます。良かったですね」カチャリ
提督「落ち着け。話し合おう。まずはその物騒なモノを下ろせ」
大井「十四年式です。酸素魚雷ほどじゃないけど、素敵でしょう?」
提督「だがそいつで俺を殺してみろ。余計に陸軍との仲がややこしくなるぞ。今の時代、銃弾を調べれば一発で…」
提督「……ハァ 仕方ない、無理にとは言わんさ」
大井「分かれば良いんです、分かれば」スッ…
提督「仕方ないから、利根にでも頼むか」
8 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:43:42.74 ID:Qf7Unaa10
大井「っ」ビク
提督「ああ、筑摩でも良いかもな。あいつなら利根を人質にすればすんなり…」
大井「そ、それは…駄目です」アセアセ
提督「ほう、何故だ?」ニヤニヤ
大井「ほ、他の娘を巻き込むわけにはいきませんっ!」
提督「でもなー大井が嫌って言うなら、心ある者として無理強いはできないしなーやっぱり」チラッチラッ
大井「…」
大井「…すか」ボソッ
提督「ん?」
大井「本当に、自力で食べられないんですか。どうしても、無理ですか」
提督「うん」b
大井「…」
9 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:44:48.20 ID:Qf7Unaa10
大井「…ふぅ」
ガラッ ストン
提督「大井?」
大井「…」カチャカチャ パク モグモグ
大井「…ん!」
提督「」
大井「ん!」プルプル
提督(こ、これは……)ジー
大井「んー! んー…」ング
提督「あ」
大井「っ…もう! 食べるんですか、食べないんですか?!」
提督「す、すまん」
大井「もう…次はありませんからね?」
10 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:45:27.87 ID:Qf7Unaa10
大井「…」ハム モグモグ
大井「ん!」
提督「では…いただきます」ズイ
大井「」ドキドキ
ちゅ
大井「ッ」ビク
ぢゅるっ ぢゅっ
ごくん
大井「あ…」
提督「…ふぅ。まずは一口」
大井(そう…まだ…)ポー
提督「どうした、大丈夫か? 無理はしなくても」
大井「だ、大丈夫ですっ!」パクッ
大井「ん」
提督(全然噛んでないけど、まあ良いか)
11 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:46:21.04 ID:Qf7Unaa10
ちゅ ちゅる
大井(あ、舌が…)
ちゅるっ ちゅるっ ちゅっ
「「…ぷはあ」」
提督「こ、これは中々…」
大井「…」
提督「大井?」
大井「…おいしい?」トローン
提督「っ!!」ドキューン
提督「そ、そうだな…よく分からなかったから、もう一回」
大井「仕方ないわね…」パク モグモグモグ…
提督(今度はめっちゃ噛んでる)
12 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:47:09.15 ID:Qf7Unaa10
大井「ふぁい」ズイ
提督「おっと」ダキッ
大井「んー…」ジー
提督(これは…)
大井「…」キラキラ
提督(完全にスイッチ入ったか…のか?)
ちゅっ ぢゅ〜…
大井「ん…んっ」
提督(見たことない顔…)
提督「…」ギュッ
大井「ふ、はっ、…提督?」
13 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:48:18.42 ID:Qf7Unaa10
提督「…」
大井「あの、離していただかないと、まだカレーが」
提督「ラップ掛けて、明日の朝食う」
大井「金曜日が終わっちゃいますよ」
提督「構わんさ。その頃にはもう顎も治ってるだろ」
大井「…」
提督「…なあ。何で今日、俺がムカついてたか分かるか」
大井「横須賀から来た奴、のせいでしょ?」
提督「奴の案内を押し付けられたんだよ。そしたら、見回りの最中にこいつを見られてさ」スッ
指輪「」キラキラ
…
14 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:49:09.48 ID:Qf7Unaa10
一○○○ 泊地廊下
スタスタ
大将「前線でさぞかし荒れているだろうと心配していたが、案外平和なものじゃないか」
提督「出張っていない連中はこんなもんですよ。四六時中片意地張ってちゃ、息が詰まっちまいます」
大将「それもそうか。ただ、緊張感だけは欠かしてはならん。分かるな」
提督(殿上人が知った口利きやがって…)「ええ、そうですね」
大将「時に、その指輪だが」
提督「あ、これですか」スッ
提督「お察しの通りですよ」
大将「そうかそうか。それはめでたい。で、相手は? 君の所なら、扶桑か?」
提督「いやあ扶桑なんて私には勿体無い」
大将「そんなことはあるまい。大局が見えているのならば、戦艦や空母を選んで然るべきだ。第一、駆逐艦や巡洋艦などに貴重な指輪を渡しても…」
提督「」イラッ
15 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:50:06.70 ID:Qf7Unaa10
提督「ははは。じゃあ、雷巡を選んだ私はまだまだ未熟ですな」
大将「雷巡…この泊地に雷巡は…」
提督「だいぶ前にそっちから寄越したじゃないですか」
大将「…ああ、そう言えば。何、それを選んだだと?」
提督「何か問題でも?」
大将「…余計なことを」
提督「あ?」
大将「元々こっちで評判が悪かったからそっちに遣ったと言うのに。そんなことをして、またつけ上がったらどうするのだ。第一、あんな金ばかり掛かる船に目を掛ける必要など」
提督「…」ガサゴソ
大将「ない…何をしている」
提督「お気になさらず」ヒョイパク ヒョイパク
提督「」クッチャクッチャ…
大将「き、君、それを止めないか」
提督「」クッチャクッチャ
提督「…何でしょうか、将軍どの?」ギロッ
大将「ひっ…ふ、不愉快だ! もういい、私は帰る!」
16 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:51:15.04 ID:Qf7Unaa10
…
大井「……馬鹿じゃないの」
提督「お前もそう思うだろ? 大体あの」
大井「アンタのことよ!」ゴッ
提督「痛」
大井「自分の立場くらい、自分で分かってるわよ! 北上さんと離されて、ここに飛ばされた理由も、上官達にどんな目で見られてるかも、陰で他の娘達に何て言われてるかも。今更言い訳なんてする気は無い。それなのに、どうして私なんかのために、上に楯突いたりするの? 危ない橋を渡るの? どうして…」
大井「どうして、私なんかに、こんなものまで……」スッ
17 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:51:54.29 ID:Qf7Unaa10
指輪「」
提督「そんなに大したことか? 命懸けで戦ってるお前達に比べたら、なんてことは無い」
大井「でも」
提督「聞け。俺は、褒められた人間じゃない。すぐにカッとなってしまうし、無茶苦茶言ってお前達を何度三途の畔に立たせたか知れん。だが…本当に取り返しの付かないところまで行きかけると、決まってお前が横っ面張って止めてくれた」
大井「馬鹿な作戦で死にたくないだけ」
提督「自分が無傷でも?」
大井「そんなの」
提督「人の本心なんて、誰も分からんさ。ただ、俺はお前を信じて指輪を渡した」
大井「…」
提督「それで、十分だろ? そして信じたとおり、お前は応えてくれた」
大井「…」
18 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:52:41.75 ID:Qf7Unaa10
大井「…で、その『信じた相手』に、食べ物を口移しさせるの」フフッ
提督「だってこうでもしないと、お前手出したら撃とうとするだろ」
大井「執務中にセクハラしてくるのが悪いのよ。まあ執務後に、誰も居ない所ならちょっとは…」
大井「! しまっ」
提督「ほう」ニヤニヤ
大井「ち、違いますこれは言葉の綾で」
提督「ちなみに俺はいつでもウェルカムだ」
大井「そんなこと聞いてないわよ! …でも、じゃあ、その」
提督「どうした?」
大井「このカレー、明日の朝食べるんでしょう?」
提督「ああ」
大井「じゃあ、その時…また、私を呼んで」
提督「!」
提督「…喜んで」ニッ
おしまい
20 名前: ◆eXipHdytqM[sage] 投稿日:2015/03/30(月) 23:57:03.43 ID:Qf7Unaa10
何か言われる前に全弾投下
大井っちはレズじゃないよ。ただちょっと、信頼した相手に色々依存しちゃうだけだよ
ちなみに嫁は川内です
ここまでご覧頂き、ありがとうございました