1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:08:50.92 ID:xvtfjy090
映画『艦これ』 −平和を守るために
製作:○鎮守府
●この映画はフィクションであり、実在の団体、事件とは無関係です。
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2 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:09:26.55 ID:xvtfjy090
提督「コンコン 失礼します」
元帥「よく来た。まあ座りなさい」
提督「失礼します」
元帥は、提督に背を向けたまま、話す。
元帥「話は聞いているか?」
提督「はい! ○鎮守府にて、海軍の生物兵器、『艦娘』の指揮を取らせていただけると」
元帥「その通り……何か、私に直接聞きたいことはあるか?」
提督「いえ!」
元帥「では、明日からよろしく頼む」
提督「はい!」
提督は元帥に向かって敬礼をする。そして、元帥の部屋から出た。
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3 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:10:18.53 ID:xvtfjy090
深海棲艦との戦争に作られた艦娘は、計135人。全員が、鎮守府の講堂に集まった。
提督「私が、君らの指揮を取る。よろしく頼む」
シーンとした講堂に、大きな拍手。誰一人として、話そうとするものはいない。全員、直立している。
提督「戦争に大切なのは、味方を信頼することだ。私のことも、信頼して欲しい。では、解散!」
艦娘たちは、小走りで、自分たちの部屋へ戻っていく。
中には、小学生かと思えるくらい幼い子もいるが、そんな子も、きちんと、軍人らしい行動をしているのだ。
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4 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:10:47.55 ID:xvtfjy090
今まで大きな出撃もなく、艦娘の訓練も、問題なく出来ている。
艦娘たちは、徐々に私に心を開き始めた。
5 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:11:44.38 ID:xvtfjy090
提督「そこでバランスを上手く。耐えろ! よし! そこで砲撃だ!」
今、私が指導しているのは、『潮』、という駆逐艦の少女だ。
バランス感覚が弱く、艤装をつけた状態での海上移動も、未だ不安定だ。
提督「よしっ! ……その砲撃で最後にしよう」
潮は訓練の最後、見事、的に命中させた。他の子に比べれば遅いが、着実に、上達している。
6 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:12:38.59 ID:xvtfjy090
潮「ハァ、ハァ」
提督「疲れたか?」
潮「いえ……大丈夫です」
提督「そうか、私はこれから出撃だ。先輩とかに練習は見てもらってくれ。この調子なら、近いうちに、お前も出撃できるぞ」
潮「ほ、本当ですか! ……嬉しいです」
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7 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:13:30.58 ID:xvtfjy090
出撃は、基本は、戦場の様子を艤装のトランシーバを通して、執務室で聞いているだけである。
作戦中断を伝えることもあるが。
8 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:14:03.64 ID:xvtfjy090
ドガン
夕立「提督! 夕立の魚雷が入りました。全敵艦が轟沈しました!」
提督「よくやった! 周りに敵はいないか? 何度も言うが、潜水艦にも気をつけろよ。存在は確定していないが」
夕立「えー……周りに敵はいないっぽ、いないです!」
提督「よし、帰投してくれ」
夕立「了解です!」
プツ。トランシーバのサイドスイッチから指を離す。何かあったら、連絡が入るはずだ。
――
9 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:15:09.10 ID:xvtfjy090
夕立「提督さん、帰投しました」
提督「ご苦労。無事でなによりだ」
満潮「……あんたは何もしていないじゃない」ボソッ
提督「はは、すまないな……」
夕立「提督さんは悪くないっぽい! 満潮ちゃんは酷いっぽい!」
必死に私を弁護してくれる夕立を見て、私は、平和というものを、強く望む。
早くこの戦争を終わらせ、この子達を、クローン生物とは言っても、産みの親の元へ返してあげたいと、しみじみ思うのだ。
このときの私には、この後の残酷な未来など、想像も出来なかった……
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10 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:16:10.59 ID:xvtfjy090
曙「いっけぇー! ……やった! 轟沈よ!」
提督「よくやった、曙!」
曙「ふんっ、こんなもんよ。私に感謝しなさい!」
提督「ああ、本当にありがたいよ。よくやった、曙」
曙「そ、そんなに褒めても……ありがとう」
提督「よしっ、周りに敵はいないか?」
曙「確認済みよ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:17:12.89 ID:xvtfjy090
漣「ん? ……曙、あれって」
曙「んん? ……うぁっ!」
提督「っ! どうした!」
曙「う、海から攻撃が……」
提督「それは潜水艦だ! 海上の、潜望鏡を探せ!」
曙「せ、潜水艦って……ああっ! さ、漣、大丈夫?」
漣の声は、私には聞こえない。
12 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:17:55.02 ID:xvtfjy090
提督「全員、帰投せよ! 繰り返す、全員、帰投せよ!」
曙「……皆! 帰投してって、クソ提督が……」
ドガン
提督「曙!」
曙「ああ……ねぇ、海の底って……」
プツ。
それから曙は応答しなかった。
潮「司令官! 潮です! ご命令を」
提督「あ、ああ! 全員、ただちに帰投せよ!」
――
13 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:19:52.96 ID:xvtfjy090
潮「失礼します……」
提督「潮……戦況は? 曙は無事なのか? 漣も……」
潮「……轟沈です。二人とも、沈みました……」
提督「……」
潮は、うつむき、震えながら言った。
潮「大破4艦、……轟沈……2艦です」
提督「……了解した、ドッグに入りなさい……」
潮「……はい……うっ…うっ……」
潮は、泣きながら、執務室から、出て行った。
提督「……曙、漣」
14 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:20:33.98 ID:xvtfjy090
私の脳裏には、今まで沈めた深海棲艦のことが、浮かんできた。その後すぐに、艦娘との日常が。
曙『……あんま、見ないでくれますか?』
曙『この、クソ提督!』
曙『こんだけ? 対したことないわね』
漣『よろしくおねがいします、ご主人様』
漣『ふざけてるように思われがちですが、本気だせば、こんなもんですよ♪』
漣『キタコレ!』
15 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:21:03.70 ID:xvtfjy090
提督「……」
私の目からは、不思議と、涙は出なかった。
理由はよく分からないが、涙が出なかった。
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16 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:21:45.39 ID:xvtfjy090
今まで優勢だった私の軍隊は、日に日に、深海棲艦に負かされていった。
とにかく、時間がなかった。鎮守府に派遣されてから、一秒たりとも無駄な時間は使わなかったが、私の胸には、まだ、余裕があった頃の鎮守府への後悔が、渦巻いていた。
――
17 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:23:28.98 ID:xvtfjy090
提督「もう少しで遠征組の援助が来る! 耐えてくれ!」
飛龍「了解! ……痛っ」
大潮「わぁっ!」
飛龍「大潮ちゃん! 大丈夫!?」
大潮「うう……大潮はまだ、だいじょうぶ!」ドン
ドガン
大潮の砲撃が、敵艦に命中。轟沈させる
18 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:25:17.56 ID:xvtfjy090
大潮「やった」
ドガン
飛龍「大潮ちゃん! ……このー!」
飛龍の砲撃は敵艦に当たらず、敵艦の砲撃は、飛龍に当たる。
提督「飛龍!」
飛龍「ま、まだ、大丈夫だよ……それに、このまま帰投するわけにもいかないじゃない……」
飛龍の言う通り、この場で帰投させては、深海棲艦と本土決戦に持ち込まれる可能性があった。
19 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:25:49.34 ID:xvtfjy090
荒潮「皆さ〜ん! 援助に来ました!」
龍驤「飛龍! しっかりせい!」
飛龍「……ああ、助けが来たね……よかっ」
ドガン
提督「っ……荒潮を旗艦とし、攻撃を再開せよ!」
――
20 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:26:50.64 ID:xvtfjy090
荒潮「……提督、報告よ……」
提督「ああ、すまない」
荒潮「提督は悪くないわ……ただ、」
提督「報告を頼む……」
荒潮「……轟沈3名、大破5名、中破2名です。轟沈は飛龍、大潮、龍驤です……」
提督「……龍驤もか……」
荒潮「飛龍さんに近づいたとき、敵艦の砲撃が飛龍に命中、不幸にも誘爆を起こして、龍驤さんも……」
21 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 13:28:17.40 ID:xvtfjy090
提督「……そうか、わかった」
荒潮「提督……ただ、敵艦隊は全滅できたじゃない!」
提督「……そう、だな、ありがとう」
荒潮が執務室から出て行った後、提督はしばらく、外を眺めていた。
日差しを反射して、海は綺麗に輝いている。
提督「……皆、すまない」
私は海に向かって、脱帽した。
――
25 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:49:23.42 ID:xvtfjy090
艦娘の間には、『出撃したら、生きては帰れない』という、不安な空気が強くなる。
そして、轟沈は毎日のように出る。
今朝見かけた子が、夜にはもういない。
そんなことは、当たり前だった。
――
26 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:50:02.89 ID:xvtfjy090
艦娘の人数が、最初の3分の1ほどになった。
しかし、深海棲艦も、相対的に、弱体化していく。
駆逐艦でも、戦艦に止めを刺すことが出来るまで、艦娘たちの錬度は上がっていた。
しかし、それと、艦娘の轟沈は別だった
――
27 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:51:05.44 ID:xvtfjy090
霞「沈みなさい!」
ドガン
霞「きゃっ! う、嘘でしょ」
ドガン
霞「」
提督「霞! 応答せよ!」
朝潮「司令官、ここは朝潮が旗艦を代理します!」
提督「朝潮! 頼む!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:51:51.77 ID:xvtfjy090
ドガン
朝潮「っ…… これで勝ったつもり? 突撃!」
ドガン
深海棲艦の砲撃が、加賀に当たる。
朝潮「あ、加賀さん」
加賀「頭に来ました」ブーン
29 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:52:22.72 ID:xvtfjy090
ドガン
朝潮「」
加賀「朝潮!」
ドガン
これが、深海棲艦との最後の戦いだった。最後まで生き残った艦は、加賀のみだった。
30 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:53:00.42 ID:xvtfjy090
加賀「ヒュー……ヒュー……」
提督「加賀……ありがとう。帰投してくれ」
加賀「ヒュー……提督、ちょっと、休んでもいいかしら」
提督「ああ、……かまわんが」
加賀「ヒュー・・・」
プツ。
加賀との連絡が、途絶えた。その後、声が枯れるくらい、繰り返し、トランシーバに向かって叫んだが、加賀の声は、二度と聞こえなかった。
――
――
31 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:53:35.77 ID:xvtfjy090
深海棲艦との戦いが終わり、鎮守府は解体されることとなった。
にぎやかだった鎮守府には、もう、提督しかいない。
聞こえるのは、海の小波のみだ。
荷物をまとめ終わった提督は、艦娘たちの部屋の片づけを始める。女の子の部屋に入るのは抵抗があるが、執務の一環だ。
32 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:54:20.43 ID:xvtfjy090
コンコン
中に入ると、彼女たちの私物。しわくちゃになったベッド。全てが、あの時の状態で保存されている。
かつての、彼女たちの姿が浮かんでくる。
33 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:54:49.22 ID:xvtfjy090
龍田『さあ、死にたい艦はどこかしら♪』
雪風『ゆきかぜは、沈みません!』
大鯨『無事に帰ってこれて、よかった♪』
満潮『はぁ、なんでこんな部隊に配属されたのかしら』
吹雪『いやっ、沈むのは、嫌だよぉ!』
赤城『……ごめんなさい、雷撃処分、してください』
電『次に生まれてくるときは、平和な世界だと、いいなぁ……』
34 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:55:27.79 ID:xvtfjy090
提督「……」ツー
ああ、涙が出てきた。胸が痛い。嗚咽を抑えることができない。
私は部屋の窓から海に向かい、敬礼をした。目の前はぼやけているが、海は、平和だった。
それは、彼女たち、艦娘たちが守った平和と言っても良いかもしれない。
――
35 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:56:03.04 ID:xvtfjy090
今日、鎮守府が破壊される。艦娘たちの遺物は、ちゃんと、産みの親の元へ送った。
私は、鎮守府から少し離れた、砂浜に来た。鎮守府でやったように、再度、海に向かって敬礼をした。今度は泣かなかった。
平和を守ってくれて、ありがとう。
私は心の中でそう唱え、数秒、目を閉じた後、本部へ向かった。
潮「オーケーです!」
提督「よっしゃあああああああああああああ!!!!!!!」
36 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:57:04.49 ID:xvtfjy090
監督:長門、提督
監督補佐:睦月、吹雪
脚本:提督、睦月、山城
元帥の声:天龍
その他制作:(省略、○鎮守府の艦娘の皆さん)
加賀「……なんでこんなに暗い脚本なのかしら」
赤城「提督が、『どうせなら事実と逆を行こう』って言っていました」
加賀「捻くれ者ね」
37 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:57:33.83 ID:xvtfjy090
カメラの裏側からぞろぞろと出てくる艦娘たち。
夕立「提督さん! 迫真の演技だったっぽい!」
青葉「お疲れ様です! 今の心情、一言お願いします!」
陸奥「お疲れ様! 提督」
鎮守府主催の映画の撮影が、全て終わったのだ。
38 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:58:31.37 ID:xvtfjy090
提督「ああ、ありがとう。お前らの演技もすごかったぞ!」
満潮「・・・ありがとう」
電「そういわれると、嬉しいのです」
青葉「あっ、提督! 編集は、青葉におまかせ!」
提督「ああ、頼もしいよ」
撮影セットを片付け、鎮守府に戻っていく。
――
39 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 16:59:07.24 ID:xvtfjy090
提督「えーでは、映画の撮影終了、そしてなんといっても、深海棲艦の撲滅、おめでとう! 一足早いが、宴会だ! 一人として欠けることなく、戦い抜いてくれたことには、私からも、感謝を申し上げたい。ありがとう。では、堅苦しいことは抜きにして、乾杯!」
艦娘「乾杯!」
深海棲艦の撲滅に成功したのは3日前の話だ。その後、即席で小さな宴会を開いたとき、
・・・
・・
・
40 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:00:03.28 ID:xvtfjy090
睦月「提督、私、映画作りたいです!」
提督「映画? って睦月お前、なんで酒飲んでんだよ!」
北上「いーじゃんいーじゃん、一口くらいさ!」
提督「お前もギリでアウトだぞ! ……で映画とは?」
北上「え、何気にスルー?」
睦月「うん、鎮守府のみんなで簡単な映画を作るの!」
北上「いーじゃん楽しそーじゃん」
提督「随分酔ってるな……しかし、135人もこの鎮守府にいるわけだが……」
夕張「カメラとマイクは工廠に結構な数あったよ〜」
睦月「ね、提督、どう?」
提督「……反対するやつは?」
誰も、手を上げない。
提督「なら、いいんじゃないか?」
・
・・
・・・
41 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:00:57.95 ID:xvtfjy090
と、こんな感じで始まった映画撮影。3日で全撮影が終わり、後は編集作業のみとなった。
始め興味なさげにしていた霞や初雪、満潮のような面子も、なんだかんだで楽しそうに動いていた。
陸奥『あれ…島風ちゃーん』
島風『おうっ?』
陸奥『ごめん、レンズ拭くやつ、霧島から借りてきて』
島風『おうっ!』ヒュン
42 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:01:37.16 ID:xvtfjy090
北上「いやー撮影おわったねぇ大井っち……私の場面はなかったけど」
大井「大丈夫ですよ北上さん。スタッフロールには全員載りますから……にしても、やっと終わったって、感じですよね」
北上「うん、なんか、生まれた頃からずっとって感じがするから、なんか終わったのが不思議……」
大井「……これで、平和になったんですよ」
北上「そうだね、大井っち……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:02:10.85 ID:xvtfjy090
大潮「どっかーん!」
朝潮「きゃっ! お、大潮、びっくりした、って何やってるの!?」
大潮「う〜ん、やっぱり朝潮が一番大きいよ」ナデナデ
朝潮「ちょ、ちょっとやめて」///
霞「…くだらない」
大潮「霞は一番小さいもんねぇ」ニヤニヤ
霞「むっ……そ、そんなことないわよ」
霰「…チラッ…チラッ」
霞「な、なに見てんのよ!」///
44 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:02:51.39 ID:xvtfjy090
古鷹「……ねえ青葉」
青葉「はい、何ですか?」
古鷹「青葉は、鎮守府を出た後、どうするの?」
青葉「う〜ん、とりあえずは親のところに行ってみます。全く記憶にないのですが……」
衣笠「だよね〜、顔とか全く覚えていないし、会わないっていうのもなんかね〜」
青葉「ですよね、いっそのこと、この鎮守府でこれからも生活したほうが、なんかしっくりきます」
45 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:03:52.39 ID:xvtfjy090
北上「暁ちゃ〜ん、レディっていうならこれ飲めるよねぇ」アハアハ
電「北上さんが大変なのです!」
暁「も、も、もちろんよ! 大人のレディなんだから!」
北上「ほらほら〜、コップに注いであげるよ〜」トクトク
大井「き、北上さん、それはちょっと……」
暁「うっ……」
雷「暁、無理しなくていいのよ」
響「というよりも、飲んじゃだめ」
暁「あ、暁の本気をみるのよぉー!」ガバア
電「暁ちゃん!」
響「暁、大丈夫かい?」
暁「うぷっ……ちょ、ちょっと、おトイレに行ってくる……」
北上「ごめん、さすがに反省してる」
提督「北上コラァー!」
北上「ヒェー!」
46 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:04:57.68 ID:xvtfjy090
鎮守府は、非常時のために残され、艦娘たちは、産みの親の元へと帰る。その後は、その親の元で、生活する。これが、本来の予定であった。
……事実は小説よりも奇なり、とは言うが。さて……
――
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47 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:05:32.81 ID:xvtfjy090
ここで、艦娘について、まとめておく。
艦娘は、戦争のための存在である。
突如、日本近海に現れた謎の生物『深海棲艦』を倒すため、クローン技術によって作られた生物兵器である。
普通の人間よりも、生命力、筋力を強くされ、また、目的の大きさまでの成長は非常に早い。言語能力の取得も早い。
――
48 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:06:08.74 ID:xvtfjy090
提督「……どういうことですか?」
元帥「君の気持ちはよく分かる、一番近くで、あの娘たちを見てきたんだからな……」
提督「だから! どういう意味なんですか!」
提督は思わず、声を上げてしまった。元帥に対して。
提督「…私の無礼、申し訳ありません」
元帥「良い、気にするな。……しかし、これが世間の現実なんだ」
提督「詳しく、話を聞かせてください」
49 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:07:34.10 ID:xvtfjy090
元帥「…君は『クローン』と聞いたとき、何を思い浮かべるか?」
提督「…人工的に作られた、生き物と」
元帥「それは君が、艦娘に接してきた、クローンに接してきたから言えることだ。世間の民間人は違う。クローンである艦娘を、人造人間やターミネーターのように見ている」
提督「! それは大きな誤解です。艦娘は、クローンであっても生物です。もちろん、人間との相違点はいくつか上げられますが、彼女たちはそれを自覚し、己の意志でコントロールすることができる。これは、人間と同様の心を持っている証拠です!」
元帥「君の言い分はよく分かる。しかし、世間は違う。……事実、製造の際に協力してもらった、『産みの親』135名は全員、艦娘の受け取り、扶養を拒否している」
提督「……腹を痛くして産んだ、自分の子どもにも関わらず……」
元帥「特別手当が数百万出るからな……これが世論というものだ。どれだけ、艦娘に対する偏見が強いかが分かるだろう。」
50 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:08:27.80 ID:xvtfjy090
元帥「軍部はこれまで、艦娘たちの将来を考え、艦娘の顔は公開してこなかった」
元帥「しかし、戦争が終結し、艦娘を産みの親に返すと軍部が発表してからは、それの反対運動があらゆるところで起きている」
元帥「そこで軍部は、……」
元帥「殺処分という選択肢を、取らざるを得なかった」
元帥「……全て、仕方のないことなんだ……」
51 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:09:05.71 ID:xvtfjy090
提督「……」
元帥「……来週の今日、艦娘たちの殺処分が予定されている。君から、艦娘に伝えて欲しい」
元帥「ただ、もしそれで艦娘たちが暴動を起こした場合、軍部は、海外にも応援を要請して、艦娘を相手に戦争を起こす」
元帥「生命力や筋力がいくらか強いといっても、所詮、『生物』なんだ」
提督「……分かりました。失礼します……」
元帥「本当に、すまない……」
提督は元帥の部屋を出て、鎮守府の帰路についた。途中、電車の中で泣いた。
大の大人が涙を流す姿は、同じ車両の女子高生に笑われたが、提督には、どうでも良いことだった。
――
52 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:09:40.59 ID:xvtfjy090
時雨「提督から、緊急召集だって」
夕立「なんだか、不自然っぽい」
綾波「何か、あったのかしら……」
初雪「また戦争とかだったら、やだなぁ……」
53 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:10:25.59 ID:xvtfjy090
提督「集まってくれて、ありがとう。非常に大事な話だ。不在の者はいないか?」
ザワザワ、アッ、アノコハ? ソコニイルヨ
提督「…いないようだな。非常に、諸君にとって、ショッキングな話となるかも知れないが、最後まで、落ち着いて、聞いて欲しい」
龍田「まあ、ショッキングな話って」
天龍「まさか、また深海棲艦と戦争か? ったく、やめてくれよ」
提督「……まず、結論から伝える」
提督「君たちの産みの親は、全員、君たちの引取りを拒否した」
シーン… デモ、ソレデモヨクナ~イ? アンマキニシナイ デモ、ソレジャワタシタチハドウナルノ
54 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:11:36.58 ID:xvtfjy090
提督は、自分の感情を消すことで、艦娘たちに、残酷すぎる現実を伝えようとした。
提督「さらに、君たちは一週間後、殺処分をされることとなった。この経緯を、全て話す」
天龍「っ! はあ!? ふ、ふざけんなよ! なんで、国のために戦った俺たちが、……殺されなきゃなんねぇんだ!」
龍田「天龍ちゃん、今は落ち着きましょう。……一番辛いのは、提督よ」
天龍「……ちくしょう!」
他の艦娘は、皆、ポカンとしている。
55 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:12:27.24 ID:xvtfjy090
提督はその後、元帥に伝えられたことを全て話した。艦娘を世に出すことへの反対運動のこと、艦娘への激しい偏見のこと、そして最後に、艦娘が暴動を起こせば、世界が鎮圧しようとすること。もちろん、そうなれば、提督の命も助からないだろう。
提督「……つまり、君たちはターミネーターのような、殺人生物としてのレッテルを世間に貼られてしまい、それらを世間に出すことに対しての非難が……うぐっ……うっ……」
提督は、耐えることができなかった。
あまりにも理不尽な世間の目への怒りと、目の前の艦娘が、来週には死んでしまうということへの悲しみ、不憫さが、提督を襲う。
押さえようとしても押さえきれず、どんどん膨らんでいく。
56 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:13:32.70 ID:xvtfjy090
怒りで赤くなっていた天龍も、その提督の姿を見て、静かに泣き出した。
天龍だけではない、他の艦娘たちも、静かに泣き始める。深海棲艦との戦争が始まって2年。当時は小さかった駆逐艦の子も、大きく、頼もしく成長した。
本当に、色々なことがあった、2年間だった。
その経緯を間近で見てきた提督、艦娘にとって、一週間後の理不尽な殺処分は、あまりにもショックが大きかった。自分たちにとって、何のための、2年間だったのか……
提督「…………すまない、よって、一週間後の今日、君たちの殺処分が行われる。失踪を図ったとしても、軍部は君たちの顔写真を持っている……以上、報告は終わった。何か、質問のあるものは」
誰も、口を開かない。
提督「……解散してくれ。私の力不足で、申し訳ない」
57 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:14:03.85 ID:xvtfjy090
しばらく、たたずんでいた艦娘も、パラパラと部屋に戻り始める。
泣き出す駆逐艦の子をあやめる重巡洋艦や戦艦の子。
提督はずっとうつむき、静かに泣いていた。
最後まで残ったのは、青葉だけだった。
58 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:14:57.93 ID:xvtfjy090
提督「……お前は、帰らないのか?」
青葉「……ちょっと、考え事をしていまして」
提督「そうか……」
提督はゆっくり、部屋に戻ろうとする。
59 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:15:25.28 ID:xvtfjy090
青葉「司令官」
提督「……どうした」
青葉「……映画、楽しみにしててくださいね」ニコッ
提督「……ああ、別に、お前の好きなように過ごしてもいいんだぞ」
青葉「いえ、やり残して死ぬのは、気持ち悪いですから」
提督「お前はすごいよ……じゃあ」
提督は、青葉の方を振り返らず、講堂を出た。
青葉はずっと、何かを考えていた。
――
60 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:16:37.49 ID:xvtfjy090
カタカタ、カチッ、カタカタ
加古「青葉〜、何やってるの?」
青葉「あっ、すみません、起こしてしまって……映画の編集です」
加古「……よくやるね。あたし、あの話聞いたら、なんか眠れないよ」
青葉「加古さんまで眠れないとは……」カタ、カチッ
加古「体壊さないようにね、青葉」
青葉「はい、おやすみなさい」
61 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:17:12.48 ID:xvtfjy090
カタ、カチッ、カタカタカタ、カチカチッ
青葉「カタカチカチ……カチッ……これで、完成かな」
古鷹「……あおば〜」
青葉「うわっ! ……って古鷹さん、おはようございます」
古鷹「……映画の編集? そうか、青葉編集だったもんね……」
青葉「はい……もうちょっとで終わりそうですよ」
古鷹「……青葉」
古鷹はベッドから起き、青葉に後ろから抱きついた
62 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:18:08.46 ID:xvtfjy090
古鷹「……死ぬのは、怖いよ……」
青葉「……」
青葉「もう、古鷹さんはお姉ちゃんなんですから、しっかりしましょうよ!」
古鷹「……青葉は強いね、羨ましい……」
青葉「……死ぬときは、みんな一緒ですよ」
古鷹「……うん、そうだね。おやすみ、青葉。早く寝てね」
青葉「もう少し、がんばります」
古鷹はベッドに入ってゆく。そして青葉は、カメラとパソコンを接続して、作業を開始する。
――
63 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:18:35.75 ID:xvtfjy090
チュンチュン
青葉「あ、外が明るくなってる……でもこれで、完成しました。皆にばれないようにですが、通しで見て確認もしましたし、大丈夫でしょう」
衣笠「んん〜……あ、青葉おはよう」
青葉「おはようございます」ゴソゴソ
衣笠「なんかやってた?」
青葉「ちょっと、映画の編集をしていまして」
衣笠「さすが! 期待してるね!」
青葉「ありがとうございます」ニコッ
――
64 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:19:25.49 ID:xvtfjy090
青葉「司令官、映画が完成しましたよ!」
提督「ん? ……ああ、そうか……いつ、放映できる?」
青葉「プロジェクターとかの準備があるので、余裕を持って、明日からでお願いします」
提督「そうか、俺もこの後本部に行かなきゃならないから、明日放映しよう。ありがとな」
青葉「いえいえ!」
提督「……やけに元気だな」
青葉「最後の一週間を笑って過ごして、最後の日に、思い切り泣くんです……」
青葉「もし、最後の日が来ればですけどね」ボソッ
提督「ん?」
青葉「司令官、行ってらっしゃい!」
提督「ああ、……行ってくるよ」
――
65 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:20:56.15 ID:xvtfjy090
提督「失礼します」
元帥「・・・わざわざ済まない。艦娘諸君には、伝えてくれたか?」
提督「はい……皆、泣いていました。今日の鎮守府は、全体的に静かだったように思えます」
元帥「……そうか、本当にすまない」
提督「いえ……仕方のないこととは、理解しています」
提督「……私、艦娘を本当の娘みたいに、思ったことがあるんです」
提督「若造の私でも慕ってくれて、失敗したときも、励ましてくれて……」
提督「そんな子が、戦争が終わった後で死ぬなんて……」
元帥「もう良い、帰ってよい」
提督「……失礼します」
バタン
元帥「本当に、済まない……」
――
66 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:21:45.93 ID:xvtfjy090
青葉「んー……時間かかるなぁ」
卯月「青葉さ〜ん! なにやってるぴょん?」
青葉「あっ、うーちゃん、こ、これは見ちゃダメです!」アセアセ
卯月「いけないものぴょん?」
青葉「いえ、そんなものでは、映画のビデオです。明日、放映ですよ!」
卯月「映画みれるぴょん!」
青葉「はい! 楽しみにしててくださいね!」
卯月「ぴょんぴょん! うれしいぴょん!」
青葉「……ふう、見られなくてよかった。サプライズですから……」
――
67 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:22:25.45 ID:xvtfjy090
青葉「はーい! 明日の11時から講堂にて、[映画『艦これ』 −平和を守るため]が放映されます! ぜひぜひ、全員見てください!」
天龍「映画かぁ……忘れかけてたぜ」
龍田「鎮守府最後の、思い出でしょうね……」
雪風「ねぼうしないで、絶対見にいきます!」
瑞鳳「……なんだか、もう懐かしく感じる」
祥鳳「…短かったわね……」
提督「鎮守府最後の、思い出だな……色々、あったよ」
――
68 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:23:02.23 ID:xvtfjy090
青葉「プロジェクター、よし。パソコン、ムービー、よし」
青葉「それでパブリックにして……」
青葉「皆さん! お待たせしました。これより、[映画『艦これ』 −平和を守るため]を放送いたします! 拍手!」
パチパチパチ
さすがに、大拍手とまではいかないが、艦娘たちは、少しずつ、予定された死に、向き合いつつあった。
青葉「では、放映します!」
映画は、オープニングテーマなしで、いきなり始まった。冒頭、いきなり天龍むき出しの元帥の声に、笑いがこぼれた。
69 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:23:33.15 ID:xvtfjy090
そして、戦闘のシーン。稚拙なカメラワークながらも、雰囲気はなかなか出ている。もちろん、深海棲艦は出てこない。
ドガン。曙の轟沈。艦娘たちの涙を誘った。そして、肝心の曙は……号泣していた。
曙「ううっ……この、クソ提督、クソ……クソッ……うっ」ボロボロ
ルルルルルルルル
提督の電話が鳴り響く。元帥からだった。
提督「・・・すまん」
提督は講堂から出て行き、電話に出た。
70 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:24:09.21 ID:xvtfjy090
提督「もしもし、提督ですが」
元帥「おい! 貴様は何のつもりだ?」
提督「はい?」
元帥「軍部で大変な騒ぎになっているぞ!」
提督「・・・すいません、なんのことだか」
元帥「とぼけるな! 動画共有サイトOURTUBEで、艦娘たちの映像を2本流出したんだろうが!」
提督「はっ!?」
71 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:25:46.37 ID:xvtfjy090
講堂の中にいた艦娘たちは、映画よりも、外から聞こえてくる提督の電話のほうに、意識が移っていた。
提督「鎮守府の内部を撮影した覚えはありません。マスコミの仕業では」
元帥「違う! 艦娘が、向けられるカメラに向かって手をかざしたり、ピースしたりする様子まで取られているらしい。どう考えても、貴様の仕業だ!」
提督「しかし……私はカメラを所持していません。まして撮影なんて」
元帥「言い訳はいい! そっちにヘリが向かっている。今すぐ、本部まで来い!」
提督「げ、元帥殿!」
プツ。ツー、ツー、
72 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:26:33.45 ID:xvtfjy090
何人かの艦娘は、講堂から出ていた。
夕立「……提督さん、何かあったっぽい?」
提督「……お前らの移った映像が、流出したらしい」
エッ、ソレッテ… ナンカモンダイナノ? ダッテ…ネエ
提督「……ちょっと、本部に行ってくる」バラバラバラバラ
外には既に、ヘリがきていた。
青葉「……えー、どうせなら司令官と一緒に観たいと思うので、映画は繰上げましょう」
映画の放映は中止となった。
――
73 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:27:18.24 ID:xvtfjy090
元帥「貴様! …まさかここまでするとは」
提督「ですから、私には何を言っているのか」
元帥「とぼけるな! これを見ろ!」
OURTUBE上で流れる、一本の動画。確かに、戦中の鎮守府の日常を撮っている。
ユーザー名 wareaoba
提督「……これは」
元帥「やっと認めたか…この責任、どう取る」
提督「うちの重巡、青葉が撮ったものです。間違いありません」
74 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:27:57.31 ID:xvtfjy090
元帥「……」
提督「彼女が変な感じはしていました……私の管理不足です。申し訳ありません」
元帥「…これは、艦娘のやったことなのか」
スイマセーン、オハナシヲ アノドウガノジッタイヲオタズネシタク
元帥「……外では、マスコミどもが騒いでいる。この動画は、今も世界中から、閲覧されている」
75 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:28:47.97 ID:xvtfjy090
提督「……申し訳、ありません」
元帥「良い、疑ってすまなかった。そうか、艦娘か……君は早く、鎮守府に戻りなさい。仕事が入るかもしれない」
提督「……元帥殿?」
元帥「記者会見をする! あとこいつを、鎮守府にもどしてくれ!」
軍人「はい!」
――
76 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:29:20.73 ID:xvtfjy090
男1「……これが、艦娘なのか」
男2「可愛い子ばっかじゃねえか」
男3「提督って、この子たちの指揮をとるんだろ……いいなぁ」
女1「どっかの女子高みたいwww」
女2「でも……なんか可愛いよね」
女1「……うん」
77 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:30:00.80 ID:xvtfjy090
動画の流出により、世論は一変した。
ターミネーターや人造人間のような、危険生物と思われていた艦娘は、実際には、可愛らしく、人間らしい少女だった。
艦娘を世間に出すことへの反対運動の代わりに、艦娘の殺処分の反対運動が、各地で、しかも、前者よりも大規模で、行われた。
78 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:30:31.41 ID:xvtfjy090
デモ隊1「艦娘も人間として、基本的人権の保障をするべきである」
デモ隊2「クローンといえども、生命を持つことに変わりはない」
デモ隊3「殺処分の判断は、理不尽この上ない」
79 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:30:58.71 ID:xvtfjy090
この運動に対して、軍部は、殺処分に至った経緯を丁寧に公開した上、即行で殺処分を取り消した。
ただ、問題なのは、艦娘のこれからである。
――
80 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:31:39.90 ID:xvtfjy090
講堂にて、提督が、軍部からの情報を艦娘に伝える。
提督「皆、喜んで欲しい。君たちの殺処分は中止になった!」
…ン? モウヨクワカンナイッポイ ドッチナノ?
提督「昨日、鎮守府の内部映像が流出した。それにより、君たちの本当の姿が明らかとなり、世論が変わった…今まではただの偏見だったからな」
提督「よって、君たちは後日、一般人として、生活することが可能となる。まだ詳細は決まっていないが、おめでとう」
…トリアエズ、オメデトウ ヨカッタネ ヨカッタヨカッタ…
82 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:32:25.79 ID:xvtfjy090
提督「ゴホン、この件にあたり、一人の英雄を称えたい。青葉! 来い!」
青葉「えっ、え〜?」
提督「いいからいいから」
青葉はとぼとぼと、提督の隣に来る。
提督「今回流出した映像は、青葉が製作し、故意に流したものと判明した。無断でやったのは感心しないが、彼女のおかげで、君たちは殺処分を免れたと言えるだろう」
83 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:33:10.99 ID:xvtfjy090
…パチパチパチ…パチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチ
電「青葉さん、ありがとうなのです!」
多摩「青葉ちゃんすごいにゃ〜」
古鷹「あおば〜、すごいよ!」
パチパチパチパチ
青葉「う〜、青葉のキャラじゃないのに」
提督「ハハッ、それなりことをしたんだ。素直に喜べ!」
84 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:34:26.85 ID:xvtfjy090
その後、艦娘に、最低1年間の義務教育を受けた後に、日本人と同様の全権利が与えられることが、正式に決まった。
義務教育を修了した後は、艦娘たちは、それぞれの未来へと歩んでいった。
提督は、深海棲艦撲滅の実績から、海軍にて、それなりの地位を得た。
映像流出によって顔が知られている艦娘たちにとって、最初の社会生活は特に過ごしにくかっただろう。
そんなとき、鎮守府の仲間を頼っただろう。
生を共にした、仲間なのだから。
-FIN
85 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:35:13.38 ID:xvtfjy090
これにて完結です。
レスをくださった方、ありがとうございます。
質問があれば、どうぞ。
86 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/03/20(金) 17:37:26.41 ID:4KCVtQA6o
本当に流出したのは青葉だったのか?
88 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:45:49.97 ID:xvtfjy090
>>86
青葉です。伏線はいくつか張ったので、紹介を
>>61
青葉「カタカチカチ……カチッ……これで、完成かな」
>>62
カメラとパソコンを接続して、作業を開始する。
↑61は映画の編集の完成、62は流出用動画の作成の開始。
>>66
青葉「んー……時間かかるなぁ」
青葉「……ふう、見られなくてよかった。サプライズですから……」
>>68
青葉「それでパブリックにして……」
↑OURTUBE(もちろんYOUTUBE)への動画のアップ。その後、非公開を公開に設定変更。
閲覧、感謝です!
87 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/03/20(金) 17:41:31.17 ID:B62iRFW0o
乙
扶養を拒否した親たちはこの動画見てどう思ったのだろうな
あと殺処分の方向は日本だけでなく世界的なものだったのかな?
89 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/20(金) 17:49:12.16 ID:xvtfjy090
>>87
扶養を拒否した親たちの反応は、想像にお任せします。
ただ、艦娘は皆、自立しました。
殺処分の方向は、運動までおこったのは、日本国内が中心ですが、海外の軍部も、生物兵器である以上はと、反対でした。
レス感謝です。
95 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:07:25.96 ID:phUYwM/70
後日談を落とそうと思います。
*注意
艦娘の終戦後を描くため、私の独自設定、妄想が非常に濃くなっています。
96 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:08:19.49 ID:phUYwM/70
深海棲艦の撲滅から、早2年目の3月。全ての艦娘が、義務教育を修了した。そして社会に出た艦娘には、普通の日本人と同様に、苗字が与えられた。
提督は艦娘に対してお祝いをしたいと願ったが、艦娘は、今では普通の日本人。プライバシー保護の観点で、艦娘の個人情報が、提督に教えられることはなかった。
提督は国民栄誉賞を受賞し、軽く有名人となった。しかし、提督は、艦娘のその後を未だに知らない。
――
97 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:10:03.41 ID:phUYwM/70
【後日談1】
春の半ば、3月。
提督は飲み会の帰り。
提督(二二〇〇か……二次会に行かなくてよかった)
提督(……眠い、帰ったら風呂入らずに即行で寝よう)ウツラウツラ
??「…スッ」
提督(隣に誰か? 席はガラ空きなのに……)
??「…司令官?」
提督「っ、んん?」
提督(あっ、もう司令官じゃないのに)
98 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:10:53.07 ID:phUYwM/70
朝潮「やっぱり、司令官ですね! お久しぶりです!」
提督「お、おお。えーと、大海、朝潮か」
朝潮「はい! 『大海朝潮』です」
艦娘の苗字は、どれも、海にちなんだものだった。
朝潮型には、大海(ヒロミ)という苗字が与えられた。そして姉妹艦は、戸籍上は姉妹となった。
提督「ああ、俺も会えて嬉しいよ。今は、何をしているんだ?」
朝潮「はい、朝潮型みんなで一緒にアパート暮らしです。高卒認定試験を目指して、勉強するんです」
100 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:11:44.18 ID:phUYwM/70
提督「高認かあ、ってことは大学に行くのか?」
朝潮「はい、やっぱり学歴は必要なので」
提督「そうだよなぁ……」
朝潮の持つ袋の中には、生物基礎、化学基礎、数学I、世界史A、日本史A、現代社会、コミュニケーション英語の教科書と高認試験の過去問。
教科書は限られた書店でしか、定価で手に入らない。
また、6人姉妹にも関わらず、全教科、一冊ずつしか、入っていない。
提督「……生活の方はどうだ?」
朝潮「はい…やっぱり進学となると、結構厳しいです。しかも私たち、まだ17歳の扱いなので、アルバイトもできなくて……」
101 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:13:17.50 ID:phUYwM/70
艦娘の給金は、たったの1千万前後。戦争に勝ったとはいっても、人間でない相手との戦争のために、賠償金は発生しなかった。
この金額では、駆逐艦のような若い子には、生活は厳しかった。
ツギハ~テテテテス、テテテテス
朝潮「あっ、私、次なんです。…司令官、会えてよかったです」
提督「…俺もこの辺りなんだ。もう少し話したいし、見送るよ」
実際は、もう一つ先の駅が、提督の家の最寄りだったが、やっと会えた艦娘だ。これで別れるのは、心残りだった。
朝潮「あ、は、はい! あの…ありがとうございます」
提督「あと、せっかくだし、電話番号を交換しよう。次会えるかなんて、分からないしな」
102 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:14:29.69 ID:phUYwM/70
それから、歩きながら、提督と朝潮たちの色々なことを話し合った。
朝潮姉妹は、義務教育を2年受けて、修了したてだということ。暮らしは始まったばかりで、ようやく、引越しの片付け、買出しが終わったということ。
提督は、国民栄誉賞を受賞したこと(朝潮は知らなかった)。プライバシー保護のために、艦娘と連絡が取れなかったこと。
そしてとうとう、朝潮たちの家まで来た。
朝潮「ご同行、ありがとうございます。あの……よければ、お茶でも飲みませんか?」
提督「良いのか? ならお邪魔するよ」
提督(事案とか……起きないよな)
103 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:15:52.51 ID:phUYwM/70
チャリーン
朝潮「ただいまー!」
朝潮型「おかえりー(なさい)!」
満潮「ヒョイッ おつかれさま、って//////////!!!」
満潮は提督を見るなり、顔を赤くして部屋に戻る。
他の子たちも玄関まで来て、霞以外は、手を取って歓迎してくれた。
霞は満潮と同様に、部屋に戻ってしまった。
大潮「司令官! お久しぶりです!」
霰「……会えて、うれしい……」
荒潮「あら〜。朝潮が提督を逆ナンパする日がくるなんて、うふふふふふ♪」
朝潮「ち、違うよ荒潮! たまたま電車で会って!」///
104 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:17:08.74 ID:phUYwM/70
提督(ああ、成長したんだなぁ……)
提督(朝潮型も、もう高校生。かつての幼かった朝潮型では、もうない)
提督(そういえば、朝潮もやわらかくなったなぁ)
朝潮「ささっ、司令官。どうぞ!」///
朝潮は顔を真っ赤にしながら、提督を部屋に入れる。
満潮・霞「……」///
朝潮「今、お茶出します。麦茶ですが」
朝潮「あっ、これ、教科書だよ」
霞「スッ ガサガサ、ズラーッ」
大潮「うわぁー、厚い……」
霰「高認、一発じゃ厳しいよね……」
満潮「……こんな英文、読めないわ」
105 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:17:51.86 ID:phUYwM/70
提督(チラッ……英文法がないのか、それは厳しいな)
満潮「……プイッ」///
提督「ああ、すまない、満潮」
満潮「……」
その後、朝潮の注いでくれたお茶を飲みながら談笑した。提督は、久々の艦娘との会話を、朝潮たちは、提督との会話を、懐かしく感じた。
106 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:18:41.91 ID:phUYwM/70
朝潮「私と大潮、荒潮、霞は看護の専門学校に行こうと思っているんです」
提督「看護か、お前ららしいな。他の二人は?」
満潮「……私は、短大に行って語学を……奨学金を受けながら……」
霰「プログラムの専門学校に……」
提督「そうか、頑張れよ……(霰がプログラマとは意外だった)」
提督「おっ、もう二三〇〇か。じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。久しぶりに話せて楽しかった。ありがとな」
提督「あっ、それと満潮。英語をやるんだったら、文法書はもっといた方がいいぞ。英語の読み方だからな」
満潮「あ、ありがとう……」
朝潮「では、司令官、さようなら。またいつか、会いましょうね」
朝潮に見送られて、提督は再び帰路についた。
107 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:20:13.10 ID:phUYwM/70
満潮「……はぁ〜疲れた……」
大潮「なんでそんなに緊張してたの?」
満潮「だって……嫌味とか、色々言っちゃったし」
大潮「…司令官は多分気にしてないと思うけど」
満潮「でも……チラッ」
霞「チラッ」
満潮・霞「……」/////フルフル
大潮(震えてる……)
朝潮(これってもしかして……こ、恋!?)///
荒潮(あらあら、みんな可愛いわね〜♪)
ルルルルルルルルル
朝潮「あっ、私が出るわ」
-FIN
108 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:22:00.60 ID:phUYwM/70
【後日談2】
休日。提督はネットで、朝潮型の言っていた進路について、検索をかけていた。
提督(看護の短大って少ないんだな……情報もよく分からんし……)
提督(おっ、外語大にも短大が存在するのか)
提督(プログラムの専門学校って、パソコンが必要だよな。俺でよければ買ってあげたいが、インターネット環境とかになれば、家の問題だし……)
ピンポーン
提督「はいはーい」
ガチャ
109 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:22:50.76 ID:phUYwM/70
赤城「提督! お久しぶりです!」
加賀「お久しぶりです」
提督「お、え、えーと……波中(ハナカ)赤城と波中加賀か」
赤城「はい。姉妹ではありませんが、同じ一航船として、同じ苗字をもらいました」
提督「そうかそうか。……まあ、よければ入れ」
赤城「失礼します♪」
加賀「お邪魔します」
――
110 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:24:12.07 ID:phUYwM/70
赤城「引っ越し祝いで朝潮ちゃん家に電話したら、『司令官に会いました!』って嬉しそうに言ってきたんですよ」
提督「それで俺の住所が分かったのか」
加賀「それより、どうして私たちに連絡くれなかったのでしょうか? 気付いた時には貴方はいませんでした」
提督「あ、ああ…艦娘の個人情報はプライバシーの侵害と言われてな、俺でも教えてもらえなかったんだよ。直後は上官として、寝れないくらい慌ただしかったしな」
加賀「……そうだったんですか」
加賀(この人が見捨てるわけない。そう信じて、良かった)
111 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:25:33.99 ID:phUYwM/70
提督「…それより、お前らは今、何してんだ?」
赤城「はい! 日弓連の弓道講師として、活動しています」
提督「おお! すごいじゃないか」
加賀「道のりは、相応に大変でしたが」
赤城「そうなんです。武器の矢と重さがまるで違って。普通の矢で練習をしようにも、級位を持っていないので初心者向けセミナーみたいのに通うしかなかったんです」
加賀「矢に慣れるのには多少苦労はしましたが、慣れたらすぐに段位を受け取れました」
加賀「しかし、段位を受けたからといって、すぐに講師になれるわけではありません」
赤城「はい。審査とか、登録とか色々あって……でも、薄給ですが、弓道の指導員として、今は活動しています。少々不安ですが、唯一の取り柄なので……」
112 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:26:27.56 ID:phUYwM/70
提督「う〜ん…皆、苦労してるんだなぁ……ん? 矢を買って、鎮守府の道場で練習とかは無理だったのか?」
赤城「それが……」
加賀「鎮守府は一般公開していないと、軍部の人に言われました。私たちはもう民間人ですから」
提督「……そうか」
提督(軍部も、もう少し柔軟な対応はなかったのか?)
加賀「ただ、さすがに講師の給料では生活できないので、アルバイトを複数やっています」
赤城「コンビニで面接を受けると、最初は雰囲気が良かったのに、履歴書を見た瞬間、店長が顔色を変えて不採用とかもありました。…ちょっと…悲しかったです」
113 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:27:40.12 ID:phUYwM/70
加賀「…赤城さん、そろそろ」
赤城「あっ、もうそんな時間ですか。提督、色々話せて楽しかったです」
提督「おう、俺も楽しかったよ、じゃあな」
加賀「また、いつか、お会いしましょう」
二人は小走りで、玄関まで行く。
赤城「あっ、提督。国民栄誉賞の受賞、おめでとうございます!」
バタン
114 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:30:00.34 ID:phUYwM/70
提督(ああ、そんなこともあったなぁ……)
提督にとって、国民として栄誉を称えられたことよりも、かつても艦娘と再会を果たせた喜びの方が、今は、大きくなっていた。
-FIN
115 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/25(水) 22:38:22.14 ID:phUYwM/70
今日の投下はここまでです。閲覧、ありがとうございます。
執筆完了・予定の艦娘
第六駆逐隊、瑞鳳、鳳翔、青葉、夕張
もし、希望の艦娘がいれば、書きこんでください。書けそうなら書いてみます。
安価ではないので、お気楽に
116 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/03/25(水) 22:40:58.16 ID:akyTCLb+o
おつ
曙かいてほしいです
117 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga sage] 投稿日:2015/03/25(水) 22:42:39.78 ID:jWt/L3+r0
乙
ドイツ艦は登場しないか……?
118 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/03/25(水) 22:43:32.72 ID:hABYM8UI0
乙でち
川内型は如何でしょう?
119 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:09:45.24 ID:ydccdwb30
レス、ありがとうございます。
ぼのさん含め第7も、川内型も、設定はできています。
川内型は、脇役のみでの登場です。期待はずれでしたら、ごめんなさい
>>117
ドイツ艦よくわからないんです
120 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:10:36.48 ID:ydccdwb30
【後日談3】
二一〇〇。提督はビールを飲みながら、テレビを見て、寛いでいる。
司会「本日の、マンデースペシャルは、ある、居酒屋さんのお話です。VTR、どうぞ」
**VTR**
「帰り道にい〜い匂い。ふらっと寄ってみたくなるこの居酒屋さん『海守(ミモリ)』。中を覗くと、ちらほら、お客さんがいます。みなさん楽しそうです」
「女将さんの名前は『海守鳳翔』さん」
提督「!」
121 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:11:05.06 ID:ydccdwb30
提督「鳳翔……よく、お店を持ちたいと言っていたが、夢、叶えたのか」
提督「おめでとう、鳳翔」
「朝の仕入れから、店構え、掃除、料理、片付けまで、全部鳳翔さん一人でやっています。すっご〜い」
「そんな鳳翔さんに、色々と尋ねてみました」
122 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:12:00.34 ID:ydccdwb30
鳳翔「えー、最初は中々お客さんが来てくれませんでした。一日のお客さんが0人なんてことも、よくありました」
鳳翔「最初の半年は、ずっと赤字でしたね。お店を構えるときにもいくらか借金をしてしまったので、本当に、苦しかったです」
鳳翔「でも……あるお客さんが会社の宴会に使ってくれて、それから、なんとか営むことができました。私のお店を利用してくださる、全てのお客さんに、感謝しています」
「――ありがとうございます。いや〜素晴らしい。お話の最中に、私も煮物をひとくち。うん、これはおいしい。居酒屋『海守』の未来が、明るいとよいですね」
***
提督「カリカリ 住所はここか、ちょっと遠いな」
提督「近いうちに、行ってみたいものだ」ゴクゴク
-FIN
123 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:12:49.82 ID:ydccdwb30
【後日談4】
提督は仕事の用事で、隣の県まで新幹線で行くこととなった。若い軍人対象の講演会だ。
講演会自体はそこまで長いものではなく、昼休みを2時間ほどもらった。
休憩時間中、見知らぬ街をぶらぶらと観光している。
124 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:14:01.78 ID:ydccdwb30
??「しれいかーん!」
提督「!」
雷「やっぱり司令官ね! 久しぶり!」
提督「おおっ! 偶然だな! …お前らも」
電「司令官さん、お久しぶりなのです」
暁「司令官♪ ちょっとは大人っぽくなったでしょ」
響「久しぶり。急にいなくなるから、心配したよ」
提督「ああ、すまない。……これから、用事とかあるか? 無ければ話したいのだが」
125 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:15:35.99 ID:ydccdwb30
暁「あー……ちょっと」
電「学校があります」
提督「学校? (もう昼だが)」
響「私たちは、定時制の高校に昼夜で通っているんだよ」
雷「義務教育中に受験したのよ」
提督「ああ、そうかそうか…学費とか、大丈夫か?」
*定時制の昼夜とは、昼と夜の両方に学校に通うことです。
126 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:16:47.52 ID:ydccdwb30
暁「今は17歳だけど、もう少しで18歳になるわ。そしたら、学校を夜だけにして、昼はアルバイトをするの!」
提督「ああ、なるほど……賢いな」
提督(朝潮型もこうすればよかったのに……)
提督「……高校を卒業した後とかは、決まっているのか?」
電「電は……獣医さんに……一回受けてだめだったら、フリーターをやりますが」
雷「私は保母さんを目指して、専門学校に通うつもりよ」
響「まだ、明確に決まっていないんだ」
暁「私は、公務員の高卒枠ってのを狙うわ! 勉強しながらそっちの勉強も、ちょっとだけど始めているの」
127 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:17:43.66 ID:ydccdwb30
提督「……お前らは立派だな」ナデナデ
暁「ひゃあ! ……ありがとう」
提督(皆、夢を持って、前に進んでいる)
雷「し、司令官。ちょっと学校があるから……」
提督「おおっ! 悪かった。そうだ、電話番号だけ交換しよう サラサラ ほい!」
雷「ありがとう、電話するわ。じゃあ、さよなら司令官!」スタスタスタ
電「あっ、みんな置いてかないで」タッタッタ
提督(……立派になったなぁ)
――
128 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:20:19.28 ID:ydccdwb30
二二〇〇。提督は新幹線で自宅に帰ってきたばかりで、ソファーでボーっとしていた。
ルルルルルルルルル
ガチャ
提督「もしもし提督です」
雷「司令官? 広海(ヒロミ)雷です」
提督「おお、雷か。どうした?」
雷「いや、特に用事は……勉強でしばらく会えないけど、全部片付いたら、みんなで、どこかに行きましょう……ってね」
提督「うん……約束する。だから今は、学業に専念してくれ。……お前らの人生だからな」
雷「うん、ありがとう。……じゃあね」
ガチャ
-FIN
129 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:21:27.49 ID:ydccdwb30
【後日談5】
まだ、隣の県にいた頃。
講演が終わり、その後の作業も終わり、一六〇〇。
せっかくだからここで早めの夕食をとってから、自宅に帰ろうと思っていた。
サイゼリヤに入り、ピザとドリアを頼む。
130 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:22:21.74 ID:ydccdwb30
提督(久々に入ったな……中々うまい)
??「では、お先に失礼しまーす」
提督(ん、もしや)
提督「…海風さん!」
瑞鳳「はいっ!? ……あっ……」トコトコトコ
瑞鳳「提督、すっごい久しぶり。元気だった?」
提督「おう、元気だったよ。まさかこんなところで会えるなんてな……時間、大丈夫か? 少し話したい」
131 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:22:50.56 ID:ydccdwb30
瑞鳳「うん♪ バイトも終わったから、大丈夫よ」
提督「そうか…ところで、お前たちは今、どうなんだ?」
瑞鳳「私は、バイト3つ掛け持ちして、フリーターをやっているの。祥鳳は思い切って、料理学校に通って……いつか二人で、料理店を開ければなと、姉妹で思っているんです」
提督「そうか……店ができたら、俺も通うよ」
瑞鳳「ふふ、ありがとう……そうだ、よければ、アドレス交換しませんか?」
提督「ああ、良いぞ」
132 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/26(木) 19:24:04.03 ID:ydccdwb30
二人はメアドを交換した。瑞鳳は、今時は珍しいPHSを使っていた。
提督「そうだ、鳳翔さんがお店を開いたらしい。テレビでインタビューを受けていたんだ」
瑞鳳「本当!? ……すごいなぁ、ちょっと、羨ましい」
提督「お前たちもいつか、そうなるよ。俺でよければ、相談にも乗る」
瑞鳳「……もしよければ、近いうちに、一緒に鳳翔さんのお店に、行かない?」
提督「え? ……結構離れているが、大丈夫か?」
瑞鳳「多少は、お休みもありますから」
提督「……なら、いつか行こう」
瑞鳳「約束ですよ♪」
二人は別れた。会話した時間は30分ほどだったが、提督は、色々な現実を、瑞鳳から感じた。
-FIN
136 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:32:39.31 ID:XL9CIlVL0
【後日談6】
鳳翔「……」
鳳翔「電気代、もったいないわね」
鳳翔「でも消しちゃうと、お店がやっているかわからないし……」
鳳翔「ふふ……お客さんなんて、もう、来ないわよ……」
137 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:33:10.61 ID:XL9CIlVL0
チャリーン
鳳翔「! い、いらっしゃいませ……あっ……」アセアセ
提督「……今、やってますか?」
提督が、鳳翔さんの店『海守』にやってきた。
138 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:33:55.60 ID:XL9CIlVL0
鳳翔「……提督。お久しぶりです」
提督「ああ、久しぶり」
鳳翔「あっ、どうぞおかけになってください」
赤城「鳳翔さん!」
加賀「お久しぶりです」
鳳翔「赤城に加賀……」
139 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:34:30.56 ID:XL9CIlVL0
瑞鳳「こんばんは♪」
鳳翔「づほちゃんまで……」
瑞鳳「あっ、祥鳳は忙しいみたいなので来てません」
提督「急に押しかけて、申し訳ない。住所しか知らなかったので」
鳳翔「いえいえ……むしろ……うれしいです」
提督「まずは熱燗4本で。ほら、お前らも食え。俺のおごりだ」
赤城「はい、いただきます♪」
提督「……多少は遠慮してくれな」
140 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:35:24.49 ID:XL9CIlVL0
鳳翔(ああ、なんだか懐かしい、この空気)
鳳翔(……あのころに、戻れたらいいのに……)
ピッ
テレビの音が流れる。
提督「煮物を頼む」
瑞鳳「あっ、私もお願いします」
鳳翔「はい、煮物二つですね」
テレビ「ヒ素殺人事件について、加害者と被害者の関係が明らかになってきました」
鳳翔「」ピクッ
141 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:35:57.33 ID:XL9CIlVL0
テレビ「加害者の女性は、男について、あの人にとっての私の存在価値は、私がしょブツ」
鳳翔「……別の番組にしましょう……」
赤城「殺人事件なんて」チビチビ
加賀「生命の尊さを、知らないのでしょう……」チビチビ
瑞鳳「こわ〜い……」
提督「ここの近所だよな、鳳翔は、大丈夫だったのか?」
鳳翔「は、はい……特には」
142 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:37:02.90 ID:XL9CIlVL0
提督「おっ、そうだ。この店がテレビで紹介されているのを、偶然見たんだよ」
鳳翔「ああ、はい。ありがとうございます」
赤城「えっ! テレビにも出たんですか?」
加賀「さすがに驚きました」
鳳翔「はい、一応……」
提督「……なんか、気分が悪そうだが、大丈夫か?」
鳳翔「はい、大丈夫です……」
瑞鳳「鳳翔さん! 煮物が!」
143 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:37:32.18 ID:XL9CIlVL0
鳳翔「えっ? あっ! ……あー……」
煮物は焦げてしまった。元々量も、多く作っていなかった。
鳳翔「……ごめんなさい、煮物、失敗しちゃいました……」
鳳翔(もう、消えてしまいたい……)
提督「……少し、疲れているみたいだな」
赤城「トントン 加賀さん」ヒソヒソ
加賀「はい?」
144 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:38:03.49 ID:XL9CIlVL0
赤城「料理がほとんどありません。流しもきれいですし」
加賀「……確かに、不自然ですね」
赤城「もしかして、お客さん、入っていないのでは?」
鳳翔「ビクッ……」
赤城「あっ……ごめんなさい、変なこと言ってしまって」
鳳翔「いえ…………本当のことです」
145 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:38:30.73 ID:XL9CIlVL0
鳳翔「ここのところ、お客さんは全く来ていません」
提督「……」
瑞鳳「……」
加賀「……」
赤城「……」
鳳翔「さっきのヒ素事件の犯人。あれ、私の、お母さんみたいなんです」
・・・
・・
・
146 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:39:25.89 ID:XL9CIlVL0
ガラッ
顔のこわばったオバサンが、店に入ってくる。
鳳翔「いらっしゃいませ〜」
客1「鳳翔さん、熱燗追加で」
鳳翔「はい。少々お待ちください」
オバサン「鳳翔……お前」
鳳翔「はい? ……私でしょうか?」
オバサン「お前……ニヤァ」
オバサン「みなさ〜ん! この女はあの艦娘ですよ!」
鳳翔「!」
147 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:40:05.54 ID:XL9CIlVL0
オバサン「よく分かんない生き物を殺しまくった、血で汚れたあの艦娘なんですよ〜!」
鳳翔「ちょ、ちょっと……」
客1「鳳翔さん、本当なんですか?」
鳳翔「え、ええ、はい。隠していたわけでは、ないのですが……」
オバサン「はあ!? 隠していたにきまってるでしょう! だって艦娘だってばらしたら、毒盛れないじゃあ〜ん!」
客たち「ザワッ 毒?」
鳳翔「ちょ、ちょっと! 私は毒なんて盛りません! なんでそんな嘘を……」
オバサン「アハハハハハハ!! ……私はねぇ、」
オバサン「あんたの母親なんだよぉ〜だ!」
鳳翔「!」
148 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:40:40.90 ID:XL9CIlVL0
オバサン「あんたがあの時何をしたのか、どんな娘だったか、覚えているんだよ〜!」
鳳翔「……すみません、私は覚えていません」
オバサン「キャハハハハハハ!! ぱぱぱぱぱぴぷぺぽぉ〜レロレロレロレロ」プルプル
オバサン「いやっほぉ〜う」ダダダダダダ
オバサンは店から走って出て行った。店内は、しんとしていた。
客1「……鳳翔さん、あなた、元艦娘だったのか……」
鳳翔「……はい、隠していたわけでは、ありません……」フルフル
鳳翔「言うタイミングを、計っていたんです」フル…ポロポロ
鳳翔「ごめんなさい……信じてくれたのに……ごめんなさい」ポロポロポロ
149 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:41:36.71 ID:XL9CIlVL0
常連の客たちはその後、鳳翔さんを元気づけた。
翌日、近所で殺人事件が起きたと報道された。殺された男性は、ヒ素による中毒死。殺人犯と思われる女性は、その男性の夫だった。
そしてその女性は鳳翔さんの店に来た女性であり、あとで軍部に確かめに行ったところ、確かに、鳳翔さんの『産みの親』だった。
ただ、あのオバサンがなぜ、鳳翔さんを自分のクローンの子どもと見破れたのかは、謎だった。
・
・・
・・・
150 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:43:33.84 ID:XL9CIlVL0
鳳翔「あの日から、私の店に、お客さんは来なくなった」
鳳翔「常連のお客さんも、来なくなっちゃった」
鳳翔「皆が私を避けようとする」
鳳翔「はあ、もう、疲れちゃた……」
鳳翔さんの手元には、艦娘の時の給金の残り、500万円が残っている。
店の借金は約1千万円。
一年間で義務教育をして、同時に料理も独学でやり。
経営なども勉強して、色んなことを考えて、程よい建物を探して。
そうして、店を構えた。
それが、あの数分で、壊されたのだ。
151 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:44:11.92 ID:XL9CIlVL0
提督「鳳翔……俺でよければ、相談に乗ったのに」
鳳翔「もう、おわりなんです。こういうお店は信用が第一。それを、失ってしまったんです。……それに、嘘は、私もつきましたから」
加賀「……ちょっと、電話かけますね」
加賀「ルルルルル あ、もしもし隼鷹。急ですが、今から会いませんか? …はい、では、住所をメールで送ります。では後ほど。 プッ 川内型の皆さんを呼びました。……小さな、宴会でも開きませんか?」
赤城「それは良いですね! お金は、提督が出してくれますし」
提督「……おう、いくらでも食え!」
赤城「ありがとうございます♪」
鳳翔「皆さん……」
152 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:45:29.02 ID:XL9CIlVL0
提督「鳳翔、煮物、作ってくれないか?」
赤城「私は焼き魚3尾で」
加賀「私もそれでお願いします」
鳳翔「……はい、承りました。ありがとう、ございます」
提督「ところで加賀、川内型は今どうしてんだ?」
加賀「このあたりに住んでいると聞いています」
153 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:46:41.38 ID:XL9CIlVL0
加賀「川内は定時制高校と夜勤のパート」
加賀「那珂はアイドル事務所に応募したら書類審査で落とされ、今は立ち直り、通信制の高校に通いながらアルバイト」
加賀「神通も同じく、通信制高校に通いながらアルバイトをしているようです」
提督「那珂……まあ、元気そうで何よりだ」
鳳翔(……辛いのは、みんな同じなのでしょうか……)トントントン
――
154 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:47:52.18 ID:XL9CIlVL0
川内「よー! って提督!! ひっさしぶりじゃん!」
那珂「提督! ……お久しぶりです、成海(ナリミ)那珂です」ペコリ
神通「お久しぶりです。お元気でしたか?」
その後、提督のおごりで、小さな宴会をした。『姦し』というように、酒の入った若い女の宴会は、非常ににぎやかだった(6割は川内の大声、夜テンション+酒)
155 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:48:20.12 ID:XL9CIlVL0
〇〇〇〇。宴会は終了し、全員、帰宅した。
居酒屋『海守』が、ここまでにぎやかになったのは、初めてだった。
鳳翔は、静かになった店内を、感傷に浸りながら、ボーっとしていた。
鳳翔(皆さん、ありがとう……おかげでもう少し、がんばれそうです)
ガラッ
客1「……まだ、やっていますか?」
鳳翔「ええ、大丈夫です」
客1「最近ずっと来れなくて、ごめんなさい」
鳳翔「いえいえ、ご贔屓、ありがとうございます」
156 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:50:29.93 ID:XL9CIlVL0
客1「……急なのですが、4日後、会社の飲み会がありまして、貸し切りで使わせていただきたいのですが……」
鳳翔「えっ! も、もちろん、大歓迎です。ありがとうございます!」
客1「それと……」
その客、ポケットの中から、小箱を取り出した。
客1「私と、結婚を前提に、付き合ってください!」
鳳翔「えっ…………えーと、その、えー……/////」
海守鳳翔、現在25歳。和服と落ち着いた性格から上に見られがちだが、まだ、華の20代である。
157 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:51:00.36 ID:XL9CIlVL0
鳳翔「……私、艦娘ですよ……」
客1「関係ありません。私は、鳳翔さんの人柄に惚れました」
鳳翔「でも…………すみません、少し、考えさせてください」
客1「…ありがとうございます。良いお返事を期待して、待っています」
その客は酒を何杯か飲みながら鳳翔にアピールし、帰って行った。
鳳翔「まだ、初恋の人は……諦めていません」
-FIN
158 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:51:30.46 ID:XL9CIlVL0
【後日談7】
一一〇〇。
提督は買い物に出かけ、アパートに戻ってきた。
漣「あ! ご主人様、おかえりなさい!」
隣人「ジー……」
提督「おわっ、漣、っバ、バカッ、少しは周りを見ろ!」
隣人「こんにちは」ニコッ
提督「あっ、こんにちは(笑顔が……)」
159 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:52:02.93 ID:XL9CIlVL0
漣「それより、早く私たちを部屋に入れてください!」
提督「……ガチャッ ……いいぞ」
漣「さすがご主人様♪ 話が早い」スタスタ
潮「お、お邪魔しまーす」
曙「……」キョロキョロ
朧「お邪魔します」
提督「麦茶でいいな」
漣「キタコレ!」
160 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:52:28.91 ID:XL9CIlVL0
曙「ちょ、ちょっと、……少しは静かに……」
漣「あっ、もしかしてぼの、照れてる?」
曙「て、照れてなんて……」
提督「ほい ゴトッ お前らは今、どうしてる?」
漣「全員、通信制の高校に通ってます。バイトもしています」
提督「ほう、卒業後は、何か考えているのか?」
161 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:53:02.07 ID:XL9CIlVL0
漣「私は、プログラマになりたいのでそっちの専門学校に」
朧「あたしは看護の方に、興味があるな」
潮「わ、私も看護師に……」
朧「あ、そうだったの?」
潮「はい……」
漣「ぼのは?」
曙「……アニマルトレーナー」ボソッ
漣「ん? もっかい」
曙「あ、アニマルトレーナー」ボソッ
漣「もっと大きい声で」
曙「アニマルトレーナー!」
漣(キタコレ!)
162 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:53:32.92 ID:XL9CIlVL0
提督「動物が好きなのか?」
曙「割と……」
提督「そうか……頑張れよ。俺にはこんなことしか言えないが……」
曙「……ありがとう」
漣「では、私たちはもう帰りますね」
提督「おおそうか、早いな」
漣「じつは、これから学校の登校日なんです。学校がご主人様の家の近くだったので、ちょっと寄ってみたんですよ」
163 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:54:06.16 ID:XL9CIlVL0
提督「それは、わざわざ済まないな……なんで俺の住所がバレてんだ?」
朧「艦娘なら、みんな知っていますよ」
漣「艦娘のアナログネットワーク、甘く見ないでください♪」
提督(マジか……)
漣「では、私たちはこれにて、さようなら!」
朧「お邪魔しました」
潮「あっ、国民栄誉賞、おめでとうございます」
漣「ぼのー、行くよー!」
曙「……また会いましょう……提督」
提督(初めてまともに呼んでくれた)
潮「お、お邪魔しましたー!」
曙「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ!」ダダダダダ
-FIN
164 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/27(金) 18:56:03.38 ID:XL9CIlVL0
閲覧してくれた方、ありがとうございます。
そろそろ新しい娘の執筆をやめ、今まで出てきた駆逐艦娘の未来を書こうと思っています。
167 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/30(月) 23:15:50.06 ID:IVooWoft0
レス、ありがとうございます。
考えていた設定を落とします。
非常に妄想が濃いので、閲覧にはご注意を。
168 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/30(月) 23:16:57.06 ID:IVooWoft0
【朝潮型のその後】
一年で全科目を終わらせ、40点ギリギリで、高卒認定を取る。勉強していた一年間、アルバイトはしなかった。
・朝潮、大潮、荒潮、霞
無事、全員同じ、3年制看護専門学校に入学。
別の職に行こうかと迷った時期もあったが、看護師として、就職。休みが中々取れないが、それなりにやりがいを感じている。
・満潮
偏差値としては低いが、外語短大に入学。卒業。
中学英語の塾講師として就活をした際、元艦娘、高認、レベルの低い外語短大、のため、相当苦労したが、なんとか就職できた。
・霰
プログラムの専門学校に入学。入学祝いに、提督にパソコン(ネットブック)を買ってもらう。アプリ開発のコースに進む。
グレーな企業に就職。3時間までは残業代なし、交通費支給なし。しかし、そこそこ楽しんでいる。
【暁型のその後】
定時制高校卒業後、それぞれの道へ
・電
獣医の道は、早めに諦めた。勉強、仕事に加えて国立理IIIの勉強は無理がありすぎた。
お金の流れに興味を持ち、商学部に進学し、企業に就職。
・暁
希望通り、公務員として採用される。
・響
図書館司書を目指したが、挫折。
書店の契約社員として、働く。
・雷
高校卒業後に、ホームヘルパーの資格を取得。介護の仕事に就く。
高校を卒業した時、約束通り、提督に水族館に連れて行ってもらった。
【綾波型 第七駆逐隊のその後】
・漣
プログラマになったが、社畜。しかし、それなりに仕事は楽しんでいる。
・朧
ホームヘルパー
・潮
看護師
・曙
アニマル専門学校に入ったが、動物の心、気持ちがわからない。
自分は親身に接しているつもりでも、動物には伝わらない。それが悔しくて、先輩や先生とのトラブルもあり、アニマルトレーナーの道を挫折した。
色々あった後、企業の事務職に就く。
169 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/30(月) 23:17:25.92 ID:IVooWoft0
【おまけ】
居酒屋『海守』にて
鳳翔「わざわざごめんなさい」
瑞鳳「いえいえ、それより、お話って何ですか?」
鳳翔「うん、づほちゃんは確か、お姉さんと一緒に、お店を持ちたいのよね」
瑞鳳「はい ……持てるかどうか、先が全く見えませんが」
鳳翔「……もしよければ、私のこのお店、づほちゃんに、あげようと思うの」
瑞鳳「えっ! ……でも、鳳翔さんは?」
鳳翔「ふふふ……」
鳳翔は、隠していた左手を見せる。
薬指には、銀色の指輪。
170 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/30(月) 23:17:56.46 ID:IVooWoft0
鳳翔「私、結婚することになったの」
瑞鳳「! おめでとうございます! それで、私たちにお店を?」
鳳翔「ええ、どうかしら?」
瑞鳳「もちろん、もらいます! ありがとうございます、鳳翔さん!」
鳳翔「ありがとう。小さいお店だけど、よろしくね」
瑞鳳「はい!」
-FIN
171 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga] 投稿日:2015/03/30(月) 23:18:58.30 ID:IVooWoft0
今まで閲覧してくださった方、心の底から、感謝申し上げます。ありがとうございます。
他にも、長門が会社を興したり、青葉が探偵をやっていたり、隼鷹がバーで働いていたり、という設定があったのですが、書くのはやめました。
アマチュア二次創作は、やめたいときにやめるのが一番だと思います。
前スレ
提督「艦むすの感情」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425806585/
むやみに安価を取ったのが失敗だったかなと、今でも後悔している作品ですが、設定はこの話とつながるところもあります。
機会ができたら、艦娘がクローンという設定で、よりちゃんとした作品を書きたいなと思っています。また会えたら、再度よろしくお願いします。