1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:17:59.56 ID:YZ0VpcoP0
中島「はぁ……」
いつからだろう。
磯野を遊びに誘うだけでこんなに緊張するようになったのは。
中島「磯野ー……」
いつからだろう。
磯野を好きになったのは。
磯野……気づいてないだろ?
僕、お前のことが好きなんだ。
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:23:15.25 ID:YZ0VpcoP0
中島「……すぅー……はぁー……」
駄目だ駄目だ。僕と磯野は友達なんだ。
野球に誘うぐらい、普通だろ?
中島「……よし……大丈夫だ」
中島「磯野ーー!!」
中島「……」
ガラッ
カツオ「よっ、中島」
中島「おお磯……うわぁぁぁぁぁぁ!?」
カツオ「えっ!? どうしたんだ一体」
中島「なななななんで、裸なんだよぅ!?」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:28:30.65 ID:YZ0VpcoP0
カツオ「ああ、暑いから上を脱いでただけだよ。そんなに驚くことじゃないだろ〜」
中島「あわわわ、ととととにかく、着替えろよぉ! やや、野球しようぜ!」
カツオ「? 変な中島だなぁ。ちょっと待ってて!」ドタドタ
中島「……はぁ、はぁ……磯野、馬鹿だよ、馬鹿だよ!」
今見た映像が目に焼き付いて離れない。
健康的な肌、健康的なヘソ、健康的な乳首……。
こっちに腕を振るもんだから、脇も見えちゃったよ。
なんで、あんなに無防備なんだ。
なんで、あんなに無邪気なんだ。
なんで、なんで。
なんで、僕はこんなにドキドキしているんだ。
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:34:10.94 ID:YZ0VpcoP0
ガラッ
カツオ「おまたせー」
中島「あ、ああ……」
カツオ「……中島? なんでそんなに元気ないんだよー。野球に誘ったのは中島のくせに」
中島「えぇ? いや、そんなことないよ。ほら、行こうぜ!」
切り替えないと。
そうだ。僕と磯野は、友達。
一緒にいて楽しい、親友。
そうだよ。これで十分なんだ。僕は満足なんだ。
毎日のように学校で面を合わせて、休みの日には、いっぱい遊んで。
とても、楽しいじゃないか。それでいいんだ。
……いや。
そうでなくてはいけないんだ。磯野を傷つけないためにも。
そして、なにより……僕が傷つかないためにも……。
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:41:35.14 ID:YZ0VpcoP0
数分後
カツオ「……ナイスキャッチ!」
中島「おう!」
キャッチボール。
グローブを身につけ、本当に楽しそうに笑う磯野が僕は大好きだ。
中島「いくぞー……ほらっ!」
カツオ「……っとぅ!」
中島「ナイスキャッチ!」
さっきまでの緊張感は無くなっていた。
磯野を見ていると、こっちまで無邪気になってしまうのだ。
だけど……だからこそ、苦しいんだよなぁ……。
こんな時にも、僕は磯野に欲情している。
それが罪悪感に繋がっていることに、最近僕はきづいてしまったのだ。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:45:49.40 ID:YZ0VpcoP0
僕が息を切らしていること。
その原因は、決して運動じゃないんだ。
カツオ「はー…中島、そろそろ帰ろうぜ。暗くなってきたし」
中島「ん? ああ、そうしよっか」
カツオ「やっぱり野球は楽しいな」
中島「……なぁ、磯野」
カツオ「ん?」
中島「……楽しい、よな」
カツオ「え?」
中島「あっ……」
僕は何を言っているんだろう。
こんなこと言ったら、変に思われるに決まってる!
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:50:35.41 ID:YZ0VpcoP0
カツオ「おい中島。今日、なんか変だぞ! 僕に隠し事しようとしても無駄だからな!」
中島「いやっ、そのっ……」
頭が回らない。
カツオ「水くさいなぁ。何かあるなら早く言ってくれればいいのに」
言葉が、まとまらない。
カツオ「僕達、親友だろ?」
中島「あの、忘れて、くれっ、なんでも、なくてっ、そのっ、」
カツオ「え? なに? 落ち着けよ中島」
何かが溢れそうになる。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:53:53.98 ID:YZ0VpcoP0
中島「ぁぁ……ぁぁ……えと」
カツオ「じゃあ、そこに座ろうよ。たぶん落ち着くからさ」
こういう時の磯野はしつこいんだ。
カツオ「……中島?」
中島「…〜〜!!」ダッ
カツオ「え!? おい、中島ぁ!! なんなんだよぅ、もう!」
気がついたら、逃げ出していた。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 00:58:10.30 ID:YZ0VpcoP0
中島「……はぁ、はぁ」ダダッ
中島「……ぅぅ〜! うわぁぁ!!!」
涙が溢れてしまう。
なんで、なんでだよ磯野。
お前本当は気づいてるんじゃないのか?
なんで僕を苦しめるんだよ。しつこいんだよ。
大体僕もなんだよ。余計なこと言ったからだぞ。なんだよ、逃げ出すって。
何してるんだよ。意味わからないよ。変人だよ。
なぜか湧いてくる磯野への理不尽な怒り。
不甲斐ない自分への怒り。
そして、嫌われたのではないか、という不安。終わってしまったのではないか、という不安。
それらに、押し潰されてしまいそうで。
涙が止まらなかった。
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:01:27.91 ID:YZ0VpcoP0
翌日
中島「ん……?」ムクッ
中島「寝てたのか……」
中島「はは、たぶん、目真っ赤だなぁ……」
中島「……うわ」
夢精していた。
そういえば、磯野と激しい汗だくセックスする夢を見たような……。
中島「……くそっ」ドン
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:04:56.19 ID:YZ0VpcoP0
苛立ち。
しかし。
中島「……」
中島「……磯野の写真、どこやったかな……あった」コソコソ
中島「……磯野……磯野……」
僕はどこまでクズなんだ。
しかし、気持ちいいな。
いつもよりも気持ちいいな。
磯野だな。
なぜこんなに気持ちいいのだろう。
磯野を求める気持ちが、強くなってきているのかな。
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:08:31.47 ID:YZ0VpcoP0
数時間後
中島「はぁ……」
野球をする磯野授業を受ける磯野喜ぶ磯野怒る磯野哀しむ磯野怒る磯野。
休み。さらに親がいないのをいいことに一通りの妄想磯野で抜くと、僕は倒れこんでいた。
こんなことしてる場合じゃないだろ。
磯野に謝らなくていいのか?
でも怖いな。本当に嫌われていたらどうしよう。
そもそもまた会った時にまともに話せないよな……。
その時。
ピンポーン
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:12:12.23 ID:YZ0VpcoP0
中島「……ん? 誰だろう……そんな気分じゃないのに」ムクッ
中島「……誰ですか……あれ?」ガラガラ
花沢「……」
中島「花沢さん?」
花沢「よっ」
中島「あ、うん。珍しいな花沢さんが僕の家に来るなんて」
花沢「まぁね」
中島「……?」
花沢「……」
なんだろう。
なにか、雰囲気がちがうような……。
中島「ど、どうしたの今日は」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:16:26.31 ID:YZ0VpcoP0
花沢「磯野君に聞いたわの。中島くん、昨日何かおかしかったんですって?」
中島「げっ。き、聞いたのか…」
花沢「詳しくね。顔を真っ赤にして逃げ出したそうじゃない?」
中島「お、お恥ずかしながら……」
花沢「中島くん」
中島「あの、このことは言いふらさないでおくれよ。変な人だと……」
花沢「男同士なんて気持ち悪いと思うわよ」
……え?
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:20:43.44 ID:YZ0VpcoP0
中島「な、なにを言っているんだよいきなり〜」ハハハ
花沢「磯野くんは女の子が好きなのよ。普通の男の子」
中島「いや、だから……」
花沢「それに、中島くんのことを信じてると思うわ。自分の親友だって」
中島「……」
……なんだよ。
いきなり来たかと思えば、好き勝手に言いやがって。
花沢「そんな中島くんに裏切られたと知ったら、磯野くん、どう思うでしょうね」
中島「……裏切り!? 裏切りって言ったのか、花沢さん!!!!!」
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:25:04.04 ID:YZ0VpcoP0
花沢「……だって、そうでしょう? 自分で分からない? お子ちゃまね〜」フフン
こいつ……!
中島「花沢さんに何が分かるんだよ!? 僕の気持ちが、好きだという気持ちが、磯野への裏切り!? どういうことだよ、説明しろよ!!!」
花沢「……本当は、気づいてるんでしょう? 中島くん……」
中島「……うる、さい。うるさい!!!」
否定したい。
でも。
そうだよ、僕は気づいているんだ。
気づいたのは最近だけれど。
はっきりと。
この、どす黒い罪悪感に。
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:31:34.27 ID:YZ0VpcoP0
花沢「中島くんは」
花沢「磯野くんが安心している間に」
うるさい、うるさい!
花沢「自分が男なのをいいことに、親友なのをいいことに、磯野くんと一緒に過ごして……」
花沢「間違ってるのは分かってるのに。裏切り以外の何物でもないと思わない?」
中島「くっ……そんなつもりはないよ! 花沢さんが大げさに言ってるだけだろ!」
花沢「でも、そのわりには苦しそうね?」フフン
中島「……くっ……!」
突きつけられると、改めて思う。
僕の磯野への好意は、間違ってる…。
花沢「……ねぇ、中島くん。別に私、責めたくてきたんじゃないのよ?」
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:37:01.75 ID:YZ0VpcoP0
中島「え……?」
今さら何を……。
もうめちゃくちゃになりそうなんだよ。
花沢「ただ、私は、中島くんに筋を通して欲しいだけなのよ!」
中島「…筋を…通す…?」
まさか。
一瞬で花沢さんの意図がわかる。
いや、そんなの無理だよ。
わかるだろ、花沢さん?勘弁してくれよ。
花沢「男という立場を利用しない。親友という立場を利用しない。『磯野の親友の中島』はもうやめ」
花沢「『磯野カツオを恋愛対象としている中島』で、磯野くんと向き合いなさい!」
花沢「その上で!」
花沢「私と勝負! 私は、これを言いに来たのよ!」
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:40:51.05 ID:YZ0VpcoP0
……
思考が止まる。まとめようとする。
その間にも、花沢さんは間髪入れずに話し続ける。
「……私だって前から磯野くんのことが……」
聞こえている。
でも、頭で処理できない。
「……中島くんはずるいのよ。私だってもっと一緒に……」
勝負……だって……?
「……だから、はっきりさせるのよ……」
僕は男だぞ?
勝負になるわけ……
花沢「中島くん!!!!!!」
中島「っ!」ビクッ
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:45:09.18 ID:YZ0VpcoP0
花沢「どうなの!? この勝負、受けるの!?」
中島「ぼ……僕は……」
花沢「……」
中島「僕は……そんな……くそっ……」
花沢「……ごめんなさい。興奮しちゃったみたいね」
花沢「でも、私の言いたいこと分かるでしょう?」
中島「……ぅっ」グスッ
そうだ。まず、言うべきことがある。
中島「わかる……! わかるよ……! 今までごめん……! 卑怯な僕を、許してくれ……! 苦しい思いをさせてごめん……!」ポロポロ
花沢「あっ……な、泣かないでよ〜」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:50:31.02 ID:YZ0VpcoP0
中島「ううっ、ううう…! ごめんよ……」ポロポロ
ごめん、ごめん。花沢さん、ごめん。
今まで、ごめん。
僕も磯野が好きだから、痛いほど気持ちが分かってしまう。
花沢「……あーもうっ! 私のことはいいから!」
中島「……花沢さん……」グスッ
花沢「はぁ、落ち着く時間が必要みたいね」
花沢「……そうねぇ。じゃあ、今が11時だからぁ……今日の午後4時。公園に集合! その時答えを聞かせてちょうだい」
中島「……わかった……」グスッ
花沢「うん、よし。それじゃあまた後でね。ばいばい」クルッ
中島「…… 」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 01:56:18.81 ID:YZ0VpcoP0
中島「……ありがとう、花沢さん……」ボソッ
花沢さんへの感謝の気持ち。
しかし、花沢さんのあんな姿を見ると、より自分の醜さが際立つような気がする、
勝負……か。
二人で磯野に気持ちを伝える…ってことだ。
花沢さんの気持ちに答えるべきだ。だけど……怖いんだよ。
今までずっと一緒にいて、磯野は当たり前のように僕の横で笑っていて。
磯野は僕にとって特別。しかし、思いを出すということは。
磯野にとっての僕も、特別になってしまう。
それも、おそらく悪い意味で。
それは、やっぱり嫌で。
でも、花沢さんの気持ちに答えたくて。
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:00:24.95 ID:YZ0VpcoP0
中島「……」
「……中島くんはずるいのよ」
「……裏切り以外の何物でもないと思わない?」
「……私と勝負!」
「磯野くんと、向き合いなさい!」
怖い。
でも、このままにするわけにはいかないのは分かってる。
気がつけば、僕は
磯野の家に足を向けていた。
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:04:44.54 ID:YZ0VpcoP0
中島「はぁ、はぁ」ダダッ
まだ、思いを伝えるわけじゃない。
磯野と話すつもりもない。
ただ、ぐちゃぐちゃになった思いをまとめるために、確認したかった。
磯野の姿を一目見て、磯野への思いをもう一度整理したかった。
僕に、覚悟が出来るのかを。
中島「はぁ、はぁ」ダダッ
いつも、磯野を誘う時に通る道。
今日はどこか、違う雰囲気がした。
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:10:17.27 ID:YZ0VpcoP0
11:30ごろ
中島「はあっ、着いた……」ハァハァ
中島「……い、いそ……」
いつも以上に緊張する。
あ……そういえば、今、磯野とは気まずいんだったっけ……?
中島「……いそ……」
まるで、喉に張り付いてしまったかよように、声が出ない。
中島「……」
無理だ。
どうしても、声が出ない。
……なんて情けないんだ……
心臓の跳ね上がる音だけが大きくなっていく。
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:12:34.79 ID:YZ0VpcoP0
中島「……」
帰ろう。
本当にごめん、花沢さん。
いっぱいいっぱい謝るからさ。
許してくれ。
これからは、磯野とは距離を取るからさ。
だから
磯野と向き合えなんて、言わないでくれ。
どうか、情けない僕を許してくれ。
184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:15:41.37 ID:YZ0VpcoP0
……
変わらなくても、いい。
波平「む……君は、中島くんか?」
中島「……えっ!? はは、はい!!」ビクッ
波平「やっぱりそうか。こんなところで何をしておる」
中島「そっ、そそそそちらこそ、何を!?」
波平「わしか? わしは散歩から帰ってきたところでな」
187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:18:26.52 ID:YZ0VpcoP0
中島「あぁ、そうですか!」
波平「うむ」
中島「……」
波平「……む?」
まずい。磯野を呼ばれたら……
中島「あのっ、すみません! 帰ります!」クルッ
波平「待て」ガシッ
中島「ひぃぃぃぃ!?」
な、なに!?
家の前で立ってたから、なにかしたのかと疑われてるのか!?
191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:22:36.70 ID:YZ0VpcoP0
波平「わしと話をしないか」
中島「えっ……? でも、磯野は……?」
波平「……なるほど。安心せい、カツオは出かけておる。入ってくれ」
……なるほど?
どういう意味だろう。わからない。
でも、何故か。
おじさんの口調からは、優しさが感じられた。
全てを受け止めてくれるような、そんな優しさが……。
中島「……はい……」
波平「うむ」
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:25:36.12 ID:YZ0VpcoP0
波平の部屋
波平「……」
中島「あのー……なんですか?」
波平「……いやな。中島くんの顔を見て、気づいんてしまった」
波平「中島くん、君は苦しんでおる。それも恋沙汰絡みで」
中島「……!」
なんで、分かったのだろう。
言葉が出ない。
波平「なぜ、苦しんでいるのかと言えば……カツオが好きだから。違うか?」
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:28:51.07 ID:YZ0VpcoP0
中島「……」
驚き。
しかし、それと同時に。
不思議な安心感は増していく。
波平「何も言えないか」
波平「いきなり言われても戸惑うであろう。しかし、聞いてくれ」
中島「……」コクン
波平「少し、わしの昔話をさせてもらうぞ」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:33:53.99 ID:YZ0VpcoP0
それから、僕はおじさんの話に耳を傾けた。
要約すると、こうだ。
昔のことだが、おじさんはガッチガチのホモだったらしい。
男が好きで好きでたまらなくて……しかしおじさんは真面目な性格だ、誰にも言えなかった。
もちろん、告白なんて出来るはずもない。
清く正しく、頑固一徹。
その反面、男でシコシコと激しいオナニーをする変態ガチホモ。それはそれは気持ちよかったそうだ。
でも、そんな生活が苦しくてたまらなかった。
そろそろ狂いそうだ……そんな時。
お見合いの話が転がり込んできたのだ。
215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:39:39.70 ID:YZ0VpcoP0
もちろんそこで出会ったのが今の奥さん……フネおばさん。
最初は適当に縁を切るつもりだった。
しかし、波平おじさんの性格が災いし、簡単に切ることができなかった。
人の気持ちを軽んじているような気がして嫌だった。
嫌々だったのだ。当然だ、ガチホモなのだから。
最初は。
ある日から波平おじさんは、誠実に付き合ってくれるフネおばさんに本気で惚れてしまった。
フネおばさんを、女として見るようになった。
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:42:17.91 ID:YZ0VpcoP0
そしてまた、波平おじさんの性格が隠し事を許せなくなっていった。
正直に話そう。
昔はガチホモだったと。
でも、今はお前一筋だと。
そして、打ち明けた。全て。
ガチホモだったこと。
男でオナニーをしていたこと。
それはそれは気持ちよかったこと。
すると、フネおばさんは笑顔でこう言ったそうだ。
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:44:44.82 ID:YZ0VpcoP0
「…ふふっ」
「気づいていましたよ」
「だからどうしました?」
「私は、あなたが好きなんです」
「今は私一筋でしょう?」
そこで、波平おじさんは固く決意した。
この女と、一生を共にしよう。
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:48:36.56 ID:YZ0VpcoP0
・
・
波平「中島くん」
中島「……」
波平「わしはガチホモだった。しかし、それを知りながら向き合ってくれ、一緒にいてくれたあいつのおかげで変われた……」
波平「不安だろう、怖いだろう。しかしな。人は変われるんだ。誰かの思いで、変えることが出来るんだよ」
中島「……」
波平「中島くん。君の気持ちはわかる。しかしな」
波平「君の思いでカツオを変えることができるかどうか……試すべきだと思うぞ」
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:53:08.23 ID:YZ0VpcoP0
中島「……」
変える……?
僕、が……磯野を……?
中島「そんなこと……僕に出来るんですか?」
波平「……ばっかもん!!!!!!!」
中島「っ!」
波平「今の話を無駄にするかどうかは君次第」
波平「わしの言いたいことは全部伝えた。ここまで言って分からんようなら、本当のたわけ者だ!」
波平「さぁ、もう済んだ! 出ていけ!」
中島「は、はぃ!!」スッ
237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:57:09.69 ID:YZ0VpcoP0
ピシャ
中島「はぁ、はぁ……」
中島「……ははっ」
どうやら、答えは出たみたいだ。
……いや、自信を持って言える。
僕が答えを見つけた。
変えることが出来る……波平おじさんはこう言っていた。
しかし、僕が波平おじさんの話から出した答えはこうだ。
別に磯野を変えなくたっていい。
僕が、変わる。いや、変わることができる。人は変わることができる……
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 02:59:54.96 ID:YZ0VpcoP0
花沢さんの思い。
波平おじさんの思い。
そして、何より。
磯野を好きだという気持ちが僕に勇気を与えてくれる。僕を変えてくれる。
そういうことだ。
わかった、わかったよ。
磯野と正面から向き合うよ。
勝負だ、花沢さん。
これまでの曖昧な関係はもうなしだ。
僕は磯野の親友であり、ホモだ。ホモとして、向き合ってやるよ。
243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:03:00.85 ID:YZ0VpcoP0
午後三時
花沢「……!」
中島「……やぁ」
花沢「ずいぶん、早いのね。まだ一時間前よ?」
中島「それはこっちのセリフさ」
花沢「……答えは、聞くまでもない感じかしら」
中島「ああ」
中島「磯野に気持ちを伝えるよ」
246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:06:50.87 ID:YZ0VpcoP0
花沢「……言ってなかったけど、磯野くんにも4時にここに来るように言っておいたのよ」
中島「!」
…なるほど。
答えの是非はともかく、無理矢理にでも磯野に気持ちを伝えさせる気だったんだな。
花沢「ごめんなさい」
中島「いや、いいよ。正しいと思うから」
少し前の僕ならパニックになっていただろうけど……
今はその作戦が微笑ましいとさえ思える。
花沢「……ふーん……」ジロジロ
中島「な、なに?」
247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:09:20.56 ID:YZ0VpcoP0
花沢「いや、ちょっと強くなってきちゃったなと思ってね」ニコ
中島「……ばれちゃったか」
花沢「さ、余計な話は終わり! 敵同士お口にチャック! 磯野くんを待ちましょう」
中島「……うん」
ふふ、よく言うよ。
もう、敵同士だなんて思ってないくせに。
恨みっこなし。
そんなことは、言うまでもない。
250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:11:17.79 ID:YZ0VpcoP0
午後三時半
花沢「……」
中島「……」
緊張感が高まっていく。
でも、嫌な緊張ではない。
遠足前に寝られないような、あの感覚だ。
股間の勃起を楽しむ余裕すらある。
254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:15:36.16 ID:YZ0VpcoP0
午後四時
カツオ「……」
中島「!」
花沢「……きたっ」
カツオ「あ。おーい、花沢さ……ん、中島? なんで中島が?」
中島「…ちょっとね。この前は変な感じになって、ごめん」
カツオ「え? あぁ、僕も無理矢理聞き出そうとして悪かったよ」
すんなり謝ることが出来た。
磯野がいるから緊張する。
しかし
磯野がいるからこそ、勇気が湧いてくる。
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:19:03.02 ID:YZ0VpcoP0
カツオ「で、何の用? あらたまってさ」
花沢「……うーん、そうねぇ。大事な話」
カツオ「なんだよ、回りくどいなぁ」
花沢「中島くん。私からいいかしら?」
中島「……」
中島「うん」
カツオ「えぇ? なんだよこれ〜」
花沢「磯野くん。よーく聞いてね」
カツオ「……う、うん」
磯野もこの緊張を察したみたいだ。
戸惑いつつも、表情が引き締まる。
262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:23:24.93 ID:YZ0VpcoP0
花沢「……」
花沢「私、磯野くんのことが好きです」
カツオ「……えっ」
花沢「一緒にいると、馬鹿だなぁと思うことばっかりするし、嘘もつくし、ガキっぽいけど」
花沢「一緒にいて、とても安心するの」
花沢「私と、付き合ってくれませんか」
カツオ「……本気、なの? 花沢さん」
花沢「本気も本気。超本気よ?」
カツオ「……」
花沢「磯野くんなら、すぐに答えを出せるでしょう。はっきり言ってよ」
263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:27:38.59 ID:YZ0VpcoP0
カツオ「……ご、めん」
花沢、さん……
花沢「……」
カツオ「僕、どうしても花沢さんのこと友達としか思えないよ」
花沢「……そうよね! なはは、あー恥かいた。友達よね、友達!」
カツオ「えっ? いやに軽いなぁ」
花沢「だって答えは出たでしょう? あと何を話すことがあるのよ?」
カツオ「……まぁ、元気そうならそれでいいんだけどさ……はぁ」
花沢さんは、強いな……。
あんなに、震えてるのに……。
花沢「さぁ、中島くん!」
267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:30:04.01 ID:YZ0VpcoP0
中島「! ……うん」
カツオ「なに? 中島も、なんかあるのか?」
中島「ああ、大事な話さ」
カツオ「……中島?」
中島「よく、聞いてくれ」
瞬間。
頭の中で色んなことがグルグルと回り出す。
269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:37:44.50 ID:YZ0VpcoP0
磯野と向き合わない。
このままでいい。
ホモなんて恥ずかしい。
どうせ嫌われる。
怖い。
僕は変われない
捨てるべき思い。
今、捨てるよ。
頭に流れる言葉。
「磯野くんと、向き合いなさい!」
「人は、変われるんだ」
うん、ありがとう。
中島「磯野……僕はガチホモなんだ。男の体で欲情してオナニーする変態なんだ。それはそれは気持ちいいぞ。磯野の体で抜いた時なんか天にも昇る思いさ。僕は磯野に惚れてるんだよ。恋愛対象として好きなんだよ。磯野とずっとずっと一緒にいたい」
中島「今までは怖いから言わなかった。ずっと一緒に野球が出来ればいいと思ってた。でも、違う。それは駄目だってことに気づいたんだ。こんな関係、親友でもなんでもない、間違ってる」
中島「だから言うよ。磯野、好きだ」
281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:41:33.97 ID:YZ0VpcoP0
カツオ「……」
中島「……」
カツオ「冗談じゃないみたいだな」
中島「当然さ」
カツオ「……」
中島「……」
カツオ「気持ち悪い」
中島「当然さ」
カツオ「……」
中島「……」
292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:45:16.18 ID:YZ0VpcoP0
カツオ「お前、すごいよ」
中島「ありがとう」
カツオ「……」
中島「答えは? 僕がこんなに勇気を出したんだ。答えられないなんて、言わないよな?」
カツオ「……ごめん」
……
中島「まぁ、わかって…」
カツオ「わからないんだ」
297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:48:21.82 ID:YZ0VpcoP0
中島「へ?」
花沢「……ちょっと、黙ってたけどね。どういうことよ、磯野くん」
本当だ。どういうことだ。
カツオ「いや…花沢さんの時みたいに、はっきり断ろうって気持ちになれないんだ」
カツオ「そういえば、僕も、最近中島に違和感を抱くようになってたなーとか考えたら、わかんなくなっちゃったんだよ」
カツオ「……どうしよう、中島」
中島「…!」
花沢「……」
303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:51:58.12 ID:YZ0VpcoP0
中島「……大丈夫だよ、磯野」
カツオ「え?」
磯野。わかるよ。
お前も変わりたいと思って変われないんだな。
身を委ねるのが、怖いんだな。
何かが壊れてしまう気がして、怖いんだな。
なんだ、僕と一緒じゃないか。
でも、大丈夫だよ。
波平おじさんは言ってくれた。
人は誰かの思いで変わることができる。
そして、僕の思いは。
誰にも負けないほど強い。自信を持って言える。
僕が変えてやるよ、磯野。
中島「…磯野」
カツオ「え?え?」
花沢「あーあ……」
花沢(私は退散しますかね)
309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:56:08.39 ID:YZ0VpcoP0
カツオ「中島……?」
今まで色々あった。
切なくて、悲しくて。
でもさ、僕は変われたよ。
だから、一緒に変わろうぜ、磯野?
今まで溜め込んでいた思い。
もう、ガチガチに固まった思い。
見せてやるよ。
中島「とりあえず、これを見てくれるか?」
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314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/08/28(水) 03:59:21.19 ID:YZ0VpcoP0
数週間後
今、僕は磯野の家の前にいる。
いつものように誘うのだ。
時間は夜。だが、磯野は起きているはず。
少し前まで、ためらっていた、この声。
しかし、僕は変われた。
ありがとう、花沢さん、波平おじさん。
ありがとう、磯野。
中島「磯野ー!『野球』しようぜー!」
〜おわり〜