1 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 21:54:12.82 ID:2+Ws2FJ0o
此処はとある山国、大吹雪吹き荒れる中、
二人のマタギが帰路につく為に川の畔まで来ていた。
シンジ「おっとぉ!舟っこ向ごう岸さ居で、渡られねぇど!」
ゲンドウ「あぁ…んだな」
ゲンドウ「しゃねがらあそごの渡し守の小屋っこさへぇるべ…」
シンジ「んだな、そうすっぺ…」
ガタゴト…
シンジ「ふぅ〜!寒ぇさべぇ!」ブルブル
シンジ「薪っこさ火着けっぺし!」
だがその小屋に火を燃やす余地は無かった。
ゲンドウ「スンズ…火焚がれね…」
シンジ「じゃじゃじゃ…こらヤバつねな…」
シンジ「おっとぉ、しゃねがら簑被って縮こまるしかねぇど…」
ゲンドウ「問題ねぇ…」
二人は疲れていたが、寒さで中々寝付けなく居た。
ゲンドウ「スンズ…今日は二ひぎも使徒を仕留めそごなったな…」
シンジ「うん…惜すがったな…弾っこ届がねがったおん…」
シンジ「おっとぉ…」
ゲンドウ「なんだ…スンズ…」
シンジ「なしておっとぉは、熊っこのごど使徒っつーのや?」
ゲンドウ「熊っこは山の神様の使いだがらな…」
ゲンドウ「ほがの国では、熊っこが神様っつーどごもある…」
シンジ「ふ〜ん…」
シンジ「つが、なんだがオラ寝ふてぐなって来たじゃ…寝るべ、おっとぉ…」ウツラウツラ…
ゲンドウ「あぁ…」
二人はやっと眠りについた。
2 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 21:55:44.31 ID:2+Ws2FJ0o
〜〜〜〜深夜〜〜〜〜
外はまだ猛吹雪だ、戸がガタガタと鳴り、
シンジは目を覚ました。
シンジ(う…なんだべ…誰が居るのが?)
其処には居るはずのない人影が有った。
シンジは驚き声を上げようとした。
シンジ(だ、誰だ!)
シンジ(こ、声が出ねぇ!?体も動がねぇ!?)
声も出ず、体もこわばり動けない、
シンジは目を凝らしてその人影を凝視した。
シンジ(!?)
シンジ(女?なしてこっただどごさオナゴが居るんだ?)
その女は白装束で肌の色も雪のように白く、
顔は見たことも無い美しさだった。
そして女はゲンドウの上に屈みこみ、息を吹き掛けていた。
シンジ(何すてんだ!、おっとぉ起ぎろ!)
ゲンドウ「………」
返事も無く、ゲンドウは冷たくなって行った。
一しきり息を吹き掛けた女は、
ゆっくりとシンジの方を振り向いた。
シンジ(なんたら綺麗な姉っこだべ…)ブルブル
シンジは寒さで震えてるのか、恐怖で震えてるのか、
しかしその女の美しさに魅入られていた。
そしてシンジは思い出した。
シンジ(こいづは雪女だ!間違いねぇ!)ブルブル
雪女はシンジの上に屈みこみ、
息を吹き掛けようとした。
だが雪女動きは其処で止まった。
3 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:00:26.35 ID:2+Ws2FJ0o
シンジ(うぅ…お、おっかねぇ…)ブルブル
雪女は氷のように透き通った声で喋りかけた。
雪女「…綺麗な顔…あなた…まだ若いのね…」
雪女「可哀想だから…そこの人のようにはしないわ…」
シンジ(……)
雪女「ただし…この事は誰にも喋らないで…」
雪女「誰かに喋ったら…直ぐにわかるもの…」
雪女「何処に居ようと…必ず命は頂くわ……」
シンジ(……)コクコク
シンジは力も無く頷いた所で気を失った。
〜〜〜〜翌日〜〜〜〜
吹雪は収まり、天気は良くなっていた。
渡し守「おめ大丈夫が!?」
シンジ「うっ…」
渡し守「おお、気が付いだが!?」
シンジ「はっ!?おっとぉ!おっとぉは!?」
渡し守「…残念だけんど、見っけだどぎにはもう…」
シンジ「くっ…おっとぉ……」
シンジは肩を落とした。
事の洗いざらいを喋ろうとしたが、
雪女の言葉を思いだし、
その口からは何も語られる事は無かった。
5 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:05:40.11 ID:2+Ws2FJ0o
〜〜〜〜翌年〜〜〜〜
シンジ「ミサトばっちゃ!行ってくっからなぁ!」
ミサト「気ぃ付けでなぁ〜」
猫アスカ「ニャー」
シンジはマタギの仕事に戻った、家に居るのは祖母のミサト、
それに猫のアスカだ。
二人と一匹で細々と暮らしていた。
シンジ「さぁてど、狙いっこ狂ってねぇが、試し撃ぢしねばねな…」
シンジは照門と照星を合わせて狙いを付けた。
シンジ「目標ば真ん中さ入れで引ぎ金…」ドコーン!
カチャッ
シンジ「目標ば真ん中さ入れで引ぎ金…」ドコーン!
カチャッ
シンジ「目標ば真ん中さ入れで引ぎ金…」ドコーン!
カチャッ
シンジ「目標ば真ん中さ入れで引ぎ金…」ドコーン!
シンジ「よし!こげなもんで良がべ」
その後マタギ仲間のシゲルと合流し、
熊を探しに山に入った。
シンジ「シゲさん…熊っこ居だぞ…」ヒソヒソ
シゲル「分がった…オラ向ごうさ回っがら…」コソコソ
シンジとシゲルは一頭の熊に狙いを定め、引き金を絞った。
ドココーン!!
シンジ「やったど!!」
シゲル「久々の大物だなや!」
二人は嬉々として熊を村まで引っ張った。
ミサト「あんらまぁ!なんたらでっけぇ熊っこだべ!」
猫アスカ「ニャーニャー!」
シンジ「こんだけあれば、良い銭になるべよ!」
シゲル「んだんだ!」
シンジ「まんずバラして、あだりほどりさ肉分げんべじゃ」
シゲル「おうよ!」
二人は熊を解体し、近所に肉を配った。
6 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:07:08.69 ID:2+Ws2FJ0o
シンジ「リっつぁ〜ん、ほれ肉だぁ〜鍋さでもして食ってけろ〜」
リツコ「あらあら、ありがどねぇ」
シンジ「ほれ!冬月のずんつぁんも!」
冬月「おお…いづもすまねぇなぁ〜」
熊の胆嚢は高価な薬になるので、
シンジは軒下に干した。
シゲル「残りは燻製にして町さ売ってくっぺし」
シンジ「んだな!」
〜〜〜〜後日〜〜〜〜
シンジ「全部売っぱらって、やんべ銭っこになったな〜」
懐が暖まったシンジは上機嫌で帰路についていた、
そして道端にうずくまる娘が目についた。
シンジ「ん?こっただ道に珍すな…」
シンジ「そごの姉っこよ…なんじょしたれ?」
シンジは声を掛けながら近づいた。
娘「うぅ…急に差し込みが…」
シンジ「じゃじゃじゃ、なんたらや…ほれ、何さでも効ぐ薬だ、飲め」
シンジは携帯していた熊の胆を少量与えた。
娘「に、苦いわ…」
シンジ「良薬は口さ苦しっつーべ?」ニコニコ
娘「そうね…ありがと」ニコッ
聞けば娘は親兄弟を亡くし、
一人身で江戸から出て旅をしているらしい。
シンジ「おめさん名はなんつーんだ?」
娘「わたしは…レイ」
シンジ「おレイさんがぁ!なしてだが、涼しげな名前だなや」ニコッ
レイ「あなたは?」
シンジ「オラはスンズっつーんだ、よろすぐな!」
7 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:08:27.09 ID:2+Ws2FJ0o
レイとシンジは意気投合し、様々な話をした。
夫婦になってるのか?好いてる人は居るのか?
そんな他愛もない話をした。
そしてシンジの家に泊まることになった。
シンジ(にしてもなんたらべっぴんさんだべ)
シンジ(こっただ人が嫁っこさ来てけだらなぁ…)
色白で細身の本当に美しい娘だった。
家に着いた時、祖母のミサトは喜んで歓迎し、
シンジは暖かい料理を振る舞った。
8 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:09:20.97 ID:2+Ws2FJ0o
レイ「お味噌汁…美味しい」
シンジ「マタギは自分で料理出来ねばなんねがらな、
山に入ったらなんでも料理して食っちまうんだ」ケラケラ
数日滞在しているうちに、レイは家の手伝い等をした、
シンジ達はレイを大層気に入り、是非嫁に来てくれと頼み込んだ。
レイ「わたしで良ければ…喜んで」ニコッ
シンジ「本当が!?やった!」
ミサト「いがったなぁスンズ…」
猫アスカ「ニャーン…」
レイは美しく、とても働き者で近所でも評判になった。
シゲル「くぅ〜…いいなやスンズはよ〜」ダクダク
トウジ・ケンスケ「いや〜んな感じぃ〜」
そして数年が経ち、シンジとレイの間に双子の子供が出来た。
珠のように可愛い男の子と女の子だ、
男の子はカヲル、女の子はマリと名付けた。
シンジ「おめだずめんけぇ〜なぁ〜」デレッ
シンジ「目さ入れでも痛ぐねぇがもなぁ〜」デレッ
レイ「お前様ったら…」ニコニコ
9 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:12:20.66 ID:2+Ws2FJ0o
そして数年後、祖母のミサトが亡くなった、
亡くなる前ミサトは、レイに感謝の言葉を述べた。
ミサト「おレイよぉ…よぐ家さ来てけだなぁ…こっただ田舎さ…」ゴホッ…
レイ「おばあさま…しっかり…」ウルウル
ミサト「ありがどなぁ…ありがどなぁ…」ボロボロ…
ミサトはしきりに感謝しながら逝った。
〜〜〜〜数年後〜〜〜〜
マリ「うわ〜ん!カヲルがあだしの人形ごわじだにゃー!」
カヲル「ゴメンねマリ…人形は良いね、リリンが作り出した文化の極みだよ」
マリ「まだわげわがんねごど語っでごまがしてるにゃー」ダクダク
レイ「あらあら、大丈夫よ…わたしが直してあげる」ニコニコ
子供たちは騒がしくも元気に育ち、
シンジ達はささやかな幸せを噛み締めて暮らしていた。
10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:12:57.52 ID:2+Ws2FJ0o
〜〜〜〜その夜〜〜〜〜
子供たちは寝静まり、
レイは人形を直すために裁縫をしていた。
シンジ「オラぁ本当に幸せだ、おレイが嫁さ来てくれで本当にいがった…」
レイ「わたしも…幸せよ」
レイ「お前様や子供たちと暮らしてると…心がポカポカする」ポカポカ
シンジ「おレイはいづまでも綺麗で若ぐて、みんなさ羨ましがられでっと」ニコ
レイ「お前様…」ニコ
シンジ「そう言えばなぁ〜、昔おレイみでにやだら綺麗な姉っこ見だったな〜」
レイ「!?」ピクッ
シンジ「あんどぎは…」
レイ「ダメ…言わないで」
シンジ「なしてぇ、たんだの昔話だぁ〜」
レイ「…」
12 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:14:35.31 ID:2+Ws2FJ0o
シンジはあの夜の話を喋り出した、
みるみる険しくなるレイの表情。
シンジ「つーごどで、そん時におっとぉが死んでしまったんだぁ…」
シンジ「おっかねがったけんど、綺麗だったなぁ…」
レイ「お前様……」
レイ「その雪女はわたし…わたし…わたしなの…」
シンジ「え?な、何バガな事語ってれ…」
レイ「お前様は約束を破ってしまった……」ポロポロ
シンジ「おレイ…まさが…おめぇ…」カタカタ
レイ「わたしはお前様の命を取らなければならなくなった…」ポロポロ
レイ「でもダメ…出来ない…子供たちが居るもの…」
レイは悲しそうに子供たちの顔を撫でた。
レイ「さよなら…お前様…」フワァ…
13 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:16:49.34 ID:2+Ws2FJ0o
猫アスカ「シャー!」
シンジ「おレイ!」
レイの体はあの雪女の姿になり、宙に浮かんだ。
そして最後にこう語った。
レイ「わたしは向こうの世界に帰ります……ただし…子供たちに辛い思いをさせたら……」
シンジ「わがった!わがったがら行ぐな!行がねでけろ!」ボロボロ
レイ「さよなら…愛しい人…可愛い子供たち…」シュゥゥゥ…
シンジ「おレイ!おレイ!うわぁぁぁぁ!」
シンジは涙を流しながらレイにすがろうとした、
しかしレイは霞のように消えてしまった、
堪らずシンジは外に飛びだした、
だがそこは冷えた夜の空気に満たされた真っ暗な空間、
その空間には梟の鳴き声とシンジの嗚咽が響くだけだった。
その後子供たちは一人立ちし、
それぞれ家庭を持ち幸せに暮らした。
シンジはその後嫁も貰わず、
レイへの想いを胸に秘め、
一人寂しく余生を過ごした。
完
15 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:36:53.74 ID:2+Ws2FJ0o
〜〜〜〜NERV宴会場〜〜〜〜
シンジ「うわ〜おどろいたよ、凄く感動したよ!」
ミサト「泣けたわ〜あたしお婆さん役だったけど…」チーン…
アスカ「なんであたしが猫で、しかも猫の鳴き真似だけの出演なのよ!
納得いかないわ!感動したけど…」グスッ
マリ「私とカヲル君なんて名前だけ、全部子役がやってるし…くやしいにゃ…」
女の子「おねーちゃんどうしたの?」キョトン
マリ「…」
マリ「…か、カワイイから許すにゃ…」ダキッ!
女の子「きゃぁ〜〜ダッコされたぁにゃ〜〜」キャッキャッ
男の子「お兄さんがカヲル君?中々のイケメンだね」フッ
カヲル「生意気な子だな、もう少し大人になったら、色んな意味で相手してあげるよ」ニコッ
リツコ「しかし、日向君に監督の才能があったなんてね、感心したわ」
日向「いや〜、一度やって見たかったんですよ、雪女の映画!
おかげさまで良いものが撮れましたよ!」
16 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:38:20.40 ID:2+Ws2FJ0o
シンジ「東北弁が物凄く大変だったな〜」
日向「何回もNG出したからね〜みんな」
ミサト「所でこれ、結構予算掛かったんじゃないの?」
日向「そこは全部司令が…」
ゲンドウ「問題ない…」クイッ
アスカ「太っ腹ねぇ〜」
シンジ「綾波の雪女がはまり役過ぎだよね!」
レイ「わたしは…地でやっただけ…」ポッ
アスカ「悔しいけど、あれはあたしには無理だわ…」
アスカ(ファーストとバカシンジが夫婦役やったってのも何か悔しいけど…)
青葉「何か俺の出番が割りと多くて…恐縮です…」
マヤ「わたしはナレーションだけだし…」
ミサト「ナレーションも大事な仕事よ〜! そいえば友情出演のあの二人は?」
シンジ「トウジは委員長とデート、ケンスケは空自の航空ショーですよ」
ミサト「副司令も居ないじゃない…」
リツコ「副司令はインフルエンザで寝込んでるわ」
ミサト「あらそう、残念ね〜」
日向「DVD焼きますんで、大丈夫ですよ!」
ミサト「てか、幾ら暇だからって、映画撮っちゃうとはねぇ〜」
日向「段取り1週間撮り3日ですよ!なんてこと無いですよ!」
日向「雪のシーンとか建物は全部MAGIが作ったCGですもん、
むしろ何も無いトコで撮れたみなさんが凄すぎです」
アスカ「あ〜あ…あたしもなんか主役でやりたいなぁ〜」チラッ
日向「あはは、そのうち何か企画しようか!」
日向「でも予算がなぁ…」チラッ
ゲンドウ「………私の出番が有るなら何とかする…」
アスカ「やった!SFラブロマンスね!お相手は加持センパーイ!」
加持「はははっ、駄目だよアスカ、俺は裏方に徹するよ、映画に出るなんてガラじゃない」
アスカ「ええ〜!つまんな〜い」プクッ
リツコ「まあまあ、せっかくの上映会兼食事会だし、楽しみましょ」
ミサト「さぁ〜乾杯すんべ〜!」
シンジ「ミサトさん、訛ってっつぉ!」
ミサト「あら?シンジ君もね♪」
シンジ「はっ!?」
アハハハハ!
ホントに終わり
17 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] 投稿日:2013/03/05(火) 22:40:03.46 ID:2+Ws2FJ0o
ご精読ありがとうございました(*_ _)ペコリ