7 名前: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:15) [sage] 投稿日:2012/11/27(火) 18:42:03.49 ID:3n4jki2OP
ゲンドウ「……断る」
綾波「……分かりました」
冬月「待ちなさい、レイ。……碇、お前もだ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 18:44:43.82 ID:3n4jki2OP
ゲンドウ「……なんだ」
冬月「なぜ、即座に断る。レイ、お前も諦めが早すぎる」
綾波「……」
ゲンドウ「しかし」
冬月「まぁ待て。まずはレイの言い分を聞いてからでもいいのではないか」
ゲンドウ「……」
冬月「良き上司とは、部下の言うことに耳を傾けるものだ」
ゲンドウ「……」
冬月「これはなにも上司と部下の関係に限ったことではなく、親と子でもだな」
ゲンドウ「……よかろう、レイ、お前の話を聞こう」
冬月「うむ」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 18:48:08.08 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
冬月「レイ、なぜ携帯電話を欲しいと思ったのか、正直に話してみなさい」
綾波「……」
綾波「……みんなが、持っているから」
ゲンドウ「……理由が弱いな」
冬月「ふむ……まぁそれはたしかに」
綾波「……」
冬月「その、みんなとは、具体的に言うと誰なのだ」
綾波「……」
綾波「クラスの人、NERVの人、弐号機の人」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 18:50:16.84 ID:3n4jki2OP
綾波「……それと」
冬月「それと?」
綾波「……碇、君が」
冬月「……」
綾波「……」
ゲンドウ「……」
冬月「なるほど」
ゲンドウ「却下だ」
冬月「待て、碇」
綾波「わかりました」
冬月「レイ、お前もだ」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 18:52:35.42 ID:3n4jki2OP
冬月「本当に欲しいと思ったのなら、ちゃんと主張しなさい」
綾波「……」
冬月「……碇」
ゲンドウ「……なんだ」
冬月「今度は、お前がなぜレイの希望を無下にするのかを聞こうか」
ゲンドウ「……」
冬月「……」
ゲンドウ「……」
冬月「碇」
ゲンドウ「……中学生、だからだ」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 18:54:46.90 ID:3n4jki2OP
冬月「ふむ……しかし、クラスメイトは皆、持っているのだろう?」
綾波「はい」
冬月「碇、お前の息子だって持っている」
ゲンドウ「……」
冬月「時代は今、そういうものなのだよ。中学生だから、というのは理由にならんな」
ゲンドウ「……」
綾波「……」
ゲンドウ「……よそはよそ、うちはうち……」
冬月「碇」
ゲンドウ「……」
冬月「……」
ゲンドウ「……写真を、撮るだろう」
冬月「写真?」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 18:58:04.35 ID:3n4jki2OP
冬月「写メール、というやつか。別にいいだろう、それくらい」
ゲンドウ「……普通のものではない」
冬月「普通のものではない写メールとはなんだ」
ゲンドウ「……」
冬月「……」
ゲンドウ「……いかがわしいものだ」
冬月「なるほど、自画撮りの猥褻画像の心配をしているのか」
ゲンドウ「ああ」
綾波「……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:00:14.50 ID:3n4jki2OP
冬月「しかしだな。レイがそのような画像を撮ると思うか?」
ゲンドウ「……若気の至り、というものもある」
冬月「なるほど。レイ、そのようなことはしないと誓えるか」
綾波「……」
冬月「レイ?」
綾波「自画撮りの猥褻画像、とはなんですか」
冬月「……」
綾波「……」
冬月「自らの裸体を、携帯電話に付属されたカメラで収めることだ」
綾波「……」
冬月「レイ?」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:02:30.92 ID:3n4jki2OP
綾波「その行為によって、私はなんらかの利益を得ることがありますか」
冬月「……お前は知らんが、性的興奮を覚える輩はいるようだな」
綾波「……」
冬月「……」
綾波「私は、自画撮りの猥褻画像を、携帯電話に付属されたカメラで収めないことを誓えます」
冬月「だそうだが?」
ゲンドウ「……レイにその気はなくても、周囲の人間は分からない」
冬月「周囲の人間……?」
ゲンドウ「……猥褻画像を送れ、と懇願してくる人間がいるかもしれない」
冬月「いないだろう。それにレイはお前の息子と……」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:04:42.76 ID:3n4jki2OP
冬月「……」
ゲンドウ「……」
冬月「まさか、碇。お前、ユイ君に―――」
ゲンドウ「レイ」
綾波「はい」
ゲンドウ「携帯電話の購入を許可しよう」
綾波「ありがとうございます」
ゲンドウ「職員の者を手配する。ショップへ同行させろ」
綾波「わかりました。失礼します」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:06:55.99 ID:3n4jki2OP
冬月「……」
ゲンドウ「……」
冬月「なぜ突然、購入を許可した」
ゲンドウ「……メリットがあると考えたからだ」
冬月「というと?」
ゲンドウ「定時連絡、緊急連絡時の使用。GPSによる場所把握などだ」
冬月「なるほど。それ故に携帯電話を持たせる親も多いと聞くから納得だ」
ゲンドウ「ああ……」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:09:09.43 ID:3n4jki2OP
冬月「碇」
ゲンドウ「……なんだ」
冬月「その理由でレイに購入を許可したと、神に誓って言えるか?」
ゲンドウ「……」
冬月「もしやと思うが、話を終わらせるために慌てて」
ゲンドウ「―――私は神など認めない」
冬月「……」
ゲンドウ「……」
冬月「そうだったな」
ゲンドウ「ああ」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:11:16.92 ID:3n4jki2OP
綾波「碇君」
シンジ「綾波、どうかしたの?」
綾波「……NERVに行くのね」
シンジ「うん。テストがあるから。綾波もだよね」
綾波「ええ」
シンジ「それじゃ、一緒に行こうか」
綾波「ええ」
綾波「……」
シンジ「……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:13:24.22 ID:3n4jki2OP
シンジ「でも、珍しいね」
綾波「……?」
シンジ「あっ、ほら、綾波の方からさ、話しかけてきてくれるの」
綾波「……」
シンジ「用がある時は違うけど、こういう時にって、あんまりなかったから」
綾波「……迷惑?」
シンジ「ううん! そんなことないよ! むしろ嬉しいっていうか、その」
綾波「……」
シンジ「うん……その、嬉しかったんだ」
綾波「……そう」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:15:47.42 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「碇君―――」
シンジ「綾波は―――」
綾波「……ごめんなさい」
シンジ「う、ううん! こっちこそ、ごめん……」
綾波「……」
シンジ「……」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:18:29.34 ID:3n4jki2OP
シンジ「……それで、なんだったの?」
綾波「え?」
シンジ「いや、ほら、なにか言いかけてたから」
綾波「……」
シンジ「……?」
綾波「……碇君は、なんて言おうとしたの?」
シンジ「え、僕?」
綾波「……」
シンジ「僕は、くだらないことだよ。他愛ないこと」
綾波「……」
シンジ「だからさ、綾波の話を聞かせてよ」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:20:38.28 ID:3n4jki2OP
綾波「……駄目」
シンジ「え?」
綾波「くだらないことでも、いいの。話を聞かせて」
シンジ「綾波……」
綾波「……駄目?」
シンジ「そんなことないよ、でも、本当に大した話じゃなくてさ」
綾波「……」
シンジ「セカンドインパクトでさ、日本の気候は夏だけになったでしょ」
綾波「ええ」
シンジ「もしも冬があったなら、綾波は……なんていうか、とても、その、冬に似合いそうだなって思ったんだ」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:22:41.09 ID:3n4jki2OP
綾波「私は、冬に似合う?」
シンジ「うん。本当に、なんとなくそう思っただけなんだけど」
綾波「……」
シンジ「ごめんね、変な話しちゃって」
綾波「いいえ。碇君の話、もっと聞きたいわ」
シンジ「……そうなの?」
綾波「ええ」
シンジ「そっか……」
綾波「……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:24:44.13 ID:3n4jki2OP
シンジ「それで、綾波はなんの話だったの?」
綾波「……」
シンジ「……綾波?」
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……携帯」
シンジ「え?」
綾波「携帯電話を買ったの」
シンジ「へぇ、そうなんだ」
綾波「……」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:26:48.73 ID:3n4jki2OP
シンジ「どういうのを買ったの?」
綾波「……これ」ゴソゴソ
シンジ「わっ、凄いや。最新のやつだね」
綾波「……そうなの?」
シンジ「うん、ほら、僕のやつはだいぶ古いんだ。数年前のやつだから」
綾波「……そう」
シンジ「でも、綾波が携帯電話を持つって、ちょっと意外だな」
綾波「……」
シンジ「あ、なんか失礼だったね。ごめん」
綾波「いいえ」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:28:59.26 ID:3n4jki2OP
シンジ「でも、どうして携帯電話を買ったの?」
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……」
シンジ「綾波?」
綾波「……定時連絡」
シンジ「定時連絡?」
綾波「定時連絡をするために」
シンジ「そうなんだ。でも、定時には家に戻ってるから家電でいいんじゃないの?」
綾波「……緊急連絡も、出来るから」
シンジ「そっか。父さんたちも心配性だなぁ」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:31:27.21 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
冬月『レイ、お前はもしかして碇の息子のために携帯電話が欲しいのか』
綾波『……』
冬月『安心しろ。碇にはなにも言わん』
綾波『……クラスの人が、携帯電話を使って連絡を取っていると』
冬月『電話や、メールなどだな』
綾波『親密な人は、そうすると』
冬月『ふむ、まぁ今時の若いものなら当たり前のコミュニケーションだろうな』
綾波『だから、私も……』
冬月『なるほど』
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:33:55.00 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
冬月『好きにするといい』
綾波『はい、しかし……』
冬月『なんだ?』
綾波『私は、碇君の連絡先を知りません』
冬月『それは問題ない』
綾波『なぜですか』
冬月『碇の息子も、お前のことを憎からず思っている。携帯電話を買ったといえば、碇の息子の方から尋ねてくるだろう』
綾波『……』
綾波『……』
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:36:11.63 ID:3n4jki2OP
シンジ「でも、そうだね。携帯電話は便利だもんね」
綾波「……」
シンジ「最初はとっつきにくいところもあるかもしれないけど、すぐに生活の必需品になるよ」
綾波「……」
シンジ「僕も、最初は持ち歩くのも煩わしいとさえ思っていたんだけど」
綾波「……」
シンジ「今では、ないと不安になるくらいだよ」
綾波「……」
シンジ「……綾波?」
綾波「碇君」
シンジ「うん」
綾波「私、携帯電話を買ったの」
シンジ「…………うん、知ってるけど」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:38:23.53 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……碇君」
シンジ「う、うん」
綾波「私、携帯電話を買ったの」
シンジ「……知ってるよ」
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……私、携帯電話を」
シンジ「―――どうしちゃったんだよ、綾波!!」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:41:01.84 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
シンジ「ど、どこか体の調子でも悪いの!?」
綾波「いいえ」
シンジ「熱があるとか」
綾波「いいえ」
シンジ「じゃあ、どうしてなんだよ!」
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……私、携帯電話を」
シンジ「―――綾波ぃ!!」ガシィ
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:43:50.38 ID:3n4jki2OP
アスカ「ちょ、ちょ、ちょっと往来の場でなにやってんのよバカシンジ!!」
シンジ「あ、アスカ! 助けてよ! 綾波がなんか変なんだ!!」
アスカ「はぁ!? ファーストが変なのはいつものことでしょ!?」
シンジ「そういうことじゃなくて、なんか……とにかく、変なんだ!!」
アスカ「変なのはアンタの方だと思うけど……」
綾波「……」
アスカ「で、そこんとこどうなの、ファースト」
綾波「……特に変わりないわ」
アスカ「でしょうねぇ」
綾波「……」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:46:12.77 ID:3n4jki2OP
アスカ「あれ、その手に持ってるのってなに?」
綾波「……携帯電話。買ったの」
アスカ「へぇー。ファーストもちょっとは現代人っぽくなったじゃない!」
綾波「……」
アスカ「ま、せっかくだからこのアスカ様がアドレスの交換してあげるわ。やり方わかる?」
綾波「問題ないわ。説明書は全部読んだから」
アスカ「うげっ、あれを全部? そういうとこが変なのよねー……」
綾波「……」
アスカ「じゃあ、赤外線、ほら」
綾波「ええ」
アスカ「……」ピピッ
綾波「……」ピピッ
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:48:24.43 ID:3n4jki2OP
アスカ「ん、よし。ちゃんと登録しておきなさいよね」
綾波「ええ」
アスカ「じゃ、私は先に行くけど、あんたたちもさっさと来なさいよ。ぱぱっと終わらせてすぐ帰りたいんだから」
綾波「ええ」
シンジ「あ、うん……」
アスカ「ふんふふーん♪」スタスタ
綾波「……」
シンジ「……」
綾波「……」
シンジ「……」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:50:34.20 ID:3n4jki2OP
シンジ「……えっと」
綾波「……」
シンジ「あ、そうだ、綾波。僕もアドレスのこうか―――」
綾波「―――かまわないわ」
シンジ「……そ、そっか。じゃあ交換しよう」
綾波「ええ」
シンジ「……」ピピッ
綾波「……」ピピッ
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:53:10.05 ID:3n4jki2OP
シンジ「うん、これで大丈夫みたいだね」
綾波「ええ」
シンジ「……綾波のアドレスが携帯にあるって、ちょっと変な気分だな」
綾波「……」
シンジ「もちろん嫌ってことじゃなくて、その」
綾波「嬉しい?」
シンジ「……そうだね。今日は嬉しいことがいっぱいみたいだ」
綾波「……そう」
シンジ「綾波は、どうかな」
綾波「……よくわからないわ」
シンジ「そっか」
綾波「ごめんなさい」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:55:18.00 ID:3n4jki2OP
綾波「碇君」
シンジ「……?」
綾波「今日、送ってもいい?」
シンジ「え?」
綾波「メール」
シンジ「ああ、うん、全然構わないよ!」
綾波「そう」
シンジ「うん、楽しみにしてる」
綾波「……ええ」
シンジ「……」テクテク
綾波「……」テクテク
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:57:26.53 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
綾波「……」
綾波「……碇君に、メール」
綾波「……」ピッ
綾波「……」
綾波「……碇君の、アドレス」
綾波「……」ピタ
綾波「……」
綾波「…………送る内容が、分からない」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 19:59:43.49 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
綾波「……」
綾波「……!」
綾波「説明書……」
綾波「……」ペラ
綾波「メール、送る内容」
綾波「……」
綾波「…………載ってない」
綾波「……」
綾波「なぜ」
綾波「……」
綾波「……不良品?」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:03:02.19 ID:3n4jki2OP
シンジ「……そういえば綾波、後でメール送るって言ってたな……」
シンジ「……」
シンジ「……」ソワソワ
シンジ「……」
シンジ「……」
シンジ「……!!」ブルブル
シンジ「来た!」
シンジ「内容は……」
『 』
シンジ「……か、空メール?」
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:05:14.70 ID:3n4jki2OP
綾波「……!」ブルブル
綾波「……碇君から、返信」
綾波「……」ピッ
綾波「……」
『あ、綾波?』
綾波「……」
綾波「……?」
綾波「……」
綾波「返信」
『なに』
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:07:55.64 ID:3n4jki2OP
綾波「……!」ブルブル
綾波「碇君、メールを打つのが早いのね」
綾波「……」
『いや、空メールだったから』
綾波「……」
綾波「空メールとは、なに」
綾波「……」
綾波「説明書……」
綾波「……」
綾波「……載ってない」
綾波「……不良品」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:11:15.83 ID:3n4jki2OP
『空メールとは、なに』
綾波「直接聞けば、いいのね」
綾波「……」
綾波「……」
綾波「……」
綾波「……!」ブルブル
『なにも書いてないメールのことだよ』
綾波「……そう、あれが空メール」
綾波「……」
綾波「……」
綾波「覚えたわ」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:13:48.12 ID:3n4jki2OP
シンジ「そっか、綾波は空メールを知らなかったんだ」
シンジ「……」
シンジ「実は嫌われてる? とか思っちゃった……」
シンジ「……」
シンジ「……!」ブルブル
シンジ「来た!」
『 』
シンジ「え」
シンジ「また……?」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:15:59.56 ID:3n4jki2OP
シンジ「なんだろ、これ」
シンジ「嫌がらせ……な訳ないよね」
シンジ「きっと、なにか意味が……」
シンジ「でも、そんなの分からないよ」
シンジ「どうすれば……」
シンジ「……!」ブルブル
シンジ「また、綾波から……三通も?」
『 』
『 』
『 』
シンジ「なんだよ……なんなんだよ!」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:18:18.33 ID:3n4jki2OP
『どうしちゃったんだよ、綾波!』
『なに』
『なに、じゃないよ! どうして空メールばっかり送るのさ!』
『いけない?』
『え……そ、そうだね。空メールは迷惑メールの一つだから』
『迷惑メール』
『うん』
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:21:07.93 ID:3n4jki2OP
綾波「迷惑メール」
綾波「それは、説明書に載っていたはず」
綾波「……」ペラ
綾波「……迷惑メール」
綾波「……」
綾波「……それは、嫌がらせのメール」
綾波「……それは、とてもよくないこと」
綾波「……」
綾波「碇君に、迷惑をかけてしまった」
綾波「……」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:23:23.56 ID:3n4jki2OP
『ごめんなさい』
『あ、もしかして知らなかったの? それなら別にいいんだ』
『ごめんなさい』
『うん、気にしてないから』
『ごめんなさい』
『綾波』
『ごめんなさい』
『綾波!!』
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:32:20.96 ID:3n4jki2OP
『なに』
『連投はよくないよ!』
『連投』
『同じ文章を何度も送ることだよ!』
『連投、覚えたわ』
『う、うん、これからは気をつけてくれると嬉しいな』
『わかった』
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:35:29.02 ID:3n4jki2OP
『携帯電話には慣れた?』
『ええ』
『そういえば、説明書も全部読んだって言ってたもんね』
『ええ』
『すごいね、僕はなにか分からない時にたまに開く程度だよ』
『そう』
『色々な機能があるでしょ?』
『ええ』
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:37:35.77 ID:3n4jki2OP
『でも、中には全く使わない機能もあるよね』
『ええ』
『その機能をなくして、もうちょっと安くしてくれればいいのにって思っちゃうんだ』
『そう』
『でも、きっと僕が使わない機能を便利に思っている人がいるんだよね』
『ええ』
『僕がそう思うからって、なくなればって考えるのは、自分勝手かな』
『わからないわ』
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:40:21.27 ID:3n4jki2OP
『誰かにとって必要なものは、誰かにとって不必要なんだって考えると、ちょっと怖いよね』
『碇君』
『なに?』
『もう寝るから』
『あ、そうだね。もう遅いしね』
『おやすみなさい』
『おやすみ、綾波』
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:43:10.43 ID:3n4jki2OP
シンジ「なにか失礼なこと言ったかな」
シンジ「ちょっと強めに注意しちゃったし」
シンジ「でも、綾波っていつもこんな感じな気もするし」
シンジ「……」
シンジ「うう……胸がモヤモヤする」
シンジ「……」
シンジ「明日、学校で会う綾波は普通かな」
シンジ「なにも変わってないといいけど」
シンジ「……」
シンジ「……もう寝よう」
シンジ「…………」スゥ
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:45:26.60 ID:3n4jki2OP
綾波「メール」
綾波「初めてのメール」
綾波「碇君とのメール」
綾波「……」
綾波「碇君は、嬉しい?」
綾波「……」
綾波「……私は、よくわからない」
綾波「……」
綾波「もう寝ないと」
綾波「……」
綾波「…………」
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:47:51.27 ID:3n4jki2OP
プルルル
綾波「!」ガバッ
綾波「メール……」
綾波「……ではない」
綾波「電話」
綾波「……碇司令?」
綾波「……」ピッ
綾波「もしもし」
『…………』
綾波「碇司令ですか」
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:50:11.11 ID:3n4jki2OP
『ああ』
綾波「なんですか」
『……』
綾波「……」
『レイ』
綾波「はい」
『携帯電話の調子はどうだ』
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:52:41.81 ID:3n4jki2OP
綾波「好調です」
『そうか』
綾波「はい」
『……』
綾波「……」
『……シンジ』
綾波「はい」
『シンジと連絡を取り合っているのか』
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:54:49.83 ID:3n4jki2OP
綾波「はい」
『そうか』
綾波「はい」
『……調子はどうだ?』
綾波「……」
『……』
綾波「……よく、わかりません」
『……そうか』
綾波「はい」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 20:57:28.56 ID:3n4jki2OP
『……シンジに』
綾波「はい」
『シンジにも、新しい携帯電話を……』
綾波「……」
『……』
綾波「碇司令?」
『切るぞ』
綾波「……はい」プツッ
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:00:05.63 ID:3n4jki2OP
綾波「……?」
綾波「……携帯電話」
綾波「メールだけではない」
綾波「電話」
綾波「会話も、出来る……」
綾波「必要は、ある?」
綾波「分からない……」
綾波「……」
綾波「……もう、寝ないと」
綾波「…………」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:02:28.71 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「……♪」
アスカ「なに、ニヤニヤしてんのよ!」スパン
ヒカリ「痛い!」
アスカ「馬鹿面しちゃってみっともない」
ヒカリ「酷いよ、アスカぁ……」
アスカ「で、なになに。なんで浮かれてるの?」
ヒカリ「浮かれてるって、別にそういう訳じゃないけど……」
アスカ「じゃあ、なによ」
ヒカリ「その、ちょっと思い出し笑い? っていうのかな、そんな感じ」
アスカ「あ、なーんか嫌なよかーん」
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:05:21.69 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「なにそれ」
アスカ「どうせ『スズハラガー』とか言い出すんでしょ?」
ヒカリ「わ、ちょっと声が大きいよ!!」ガバッ
アスカ「痛い痛い! 分かったから手を離して!」
ヒカリ「アスカは、ホントにもう……」
アスカ「でも、そうなんでしょ」
ヒカリ「う、うーん、まぁそうかな? そうなのかも」
アスカ「もったいぶらない!」
ヒカリ「わ、わぁ、そうです! その通りです!」
アスカ「やっぱり……」
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:08:31.99 ID:3n4jki2OP
アスカ「で、なにがあったの」
ヒカリ「昨日ね、勉強して、もうそろそろ寝ようって思ってたらね」
アスカ「うんうん」
ヒカリ「鈴原から、電話があって」
アスカ「おおー」
ヒカリ「どうしたの? って聞いたの」
アスカ「うん」
ヒカリ「『別に用はないんやけど』って」
アスカ「……」
ヒカリ「用もないのに電話してくるんだ、って言ったらさ」
アスカ「……」
ヒカリ「『用がなかったら電話しちゃあかんか?』って」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:11:30.69 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「ほんと、それだけでさ」
アスカ「……」
ヒカリ「その後は、特になにも言わずに、おやすみって言っただけなんだけど」
アスカ「……」
ヒカリ「どういうつもりだったのかなって」
アスカ「……」
ヒカリ「考えてたら、いつの間にかに寝ちゃってて」
アスカ「……」
ヒカリ「で、朝になって、学校に来たのはいいんだけど」
アスカ「……」
ヒカリ「なんか今も、鈴原からの電話を耳に当てている感触がね、離れなくて」
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:14:02.53 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「ふふふ、それだけ」
アスカ「……」
ヒカリ「……アスカ?」
アスカ「鈴原は……まだ登校してきてないわよね」
ヒカリ「え? う、うん、まだみたいね」
アスカ「良かった……」
ヒカリ「どうして?」
アスカ「顔見たら、ぶん殴っちゃいそうだから」
ヒカリ「どうして!?」
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:16:37.80 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「やめてよ、アスカ! 酷いよ!」
アスカ「私がうけた精神ダメージは一発分の拳をはるかに超えているわよ」
ヒカリ「自分で聞いてきたんじゃない」
アスカ「こんなに堂々と惚気られるとは思わなかったわ」
ヒカリ「惚気って……私は別に、そんな……」
アスカ「これが惚気じゃなかったらなんなのよ?」
ヒカリ「うう……どうせ否定しても認めてくれないんでしょ……惚気でいいよ、もう……」
アスカ「朝から胃がもたれそうだわ、まったく」
綾波「…………」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:19:17.52 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
ヒカリ「わっ!」
アスカ「ファ、ファースト!? いつからそこに!?」
綾波「……」
アスカ「な、なによ、なんとか言いなさいよ!」
綾波「……」
アスカ「……?」
綾波「……電話」
ヒカリ「え?」
綾波「あなたは、電話をしているのね」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:21:39.91 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「う、うん、してる、かな」
綾波「なぜ」
ヒカリ「……え?」
綾波「なぜ電話をするの」
ヒカリ「なぜって」
綾波「用がないのに、なぜ電話をするの」
綾波「用がないのに、なぜ電話をされて嬉しそうなの」
綾波「用がないのに……」
綾波「わからない」
綾波「…………」
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:24:03.51 ID:3n4jki2OP
アスカ「ふん、この色ボケちゃんの考えてることなんて、ファーストには一生わかりっこないわよ」
ヒカリ「あ、アスカ!」
綾波「……私には、一生、分からない」
アスカ「……」
ヒカリ「……」
綾波「……」
アスカ「…………ま、そうね、最近のアンタなら、分かんないでもないかもね」
ヒカリ「……!」
綾波「……」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:27:04.67 ID:3n4jki2OP
アスカ「してみたらいいじゃない、電話」
綾波「……」
アスカ「やってみて初めて気付くこともあるわよ」
綾波「……」
アスカ「少女よ、大志を抱けってね」
綾波「……そう」
綾波「……」
綾波「……」スタスタ
ヒカリ「アスカ、それ、なんか色々違う……」
アスカ「語感が伝わればいいの!」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:29:41.57 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「でも、ビックリしたなぁ。綾波さんから話しかけてくるなんて」
アスカ「そうねぇ」
ヒカリ「電話、なんで気になったんだろ?」
アスカ「……アイツ、最近、携帯電話を買ったのよ」
ヒカリ「え、そうなの!?」
アスカ「ええ」
ヒカリ「へー、そうなんだ、意外って言ったら悪いけど」
アスカ「意外よ。驚天動地。青天の霹靂ね」
ヒカリ「言い過ぎだよー」
アスカ「だって、そうじゃない」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:32:18.69 ID:3n4jki2OP
ヒカリ「でも、そっか、綾波さんが……」
アスカ「……」
ヒカリ「ね、私、綾波さんにアドレス聞いてもいいと思う?」
アスカ「そんなの、好きにしたらいいじゃない」
ヒカリ「えー」
アスカ「なんなら、私が教えてあげるわよ」
ヒカリ「えっ、アスカは知ってるんだ」
アスカ「ま、ね」
ヒカリ「へー、そうなんだ〜」
アスカ「ニヤニヤすなっ!」ポカッ
ヒカリ「いたっ」
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:34:56.94 ID:3n4jki2OP
アスカ「で、どうすんの、ホラ」
ヒカリ「駄目だよ、自分で聞くもん」
アスカ「そうなの? なんで?」
ヒカリ「コミュニケーションって、そういうものでしょ?」
アスカ「ふぅん」
ヒカリ「自分から行動しないと、ね」
アスカ「あっそ。好きにしなさいよ」
ヒカリ「ふふっ、好きにするわ」
ヒカリ「―――ねぇ、綾波さん!」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 21:37:07.30 ID:3n4jki2OP
シンジ「もうすぐ六時か……」
シンジ「ちょっと遅くなっちゃったな」
シンジ「早く帰ってご飯作らないと」
シンジ「アスカに、怒られるし……」
シンジ「……!」ブルブル
シンジ「電話だ……」
シンジ「誰だろ」
シンジ「……綾波!?」ピッ
177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/27(火) 21:57:08.79 ID:3n4jki2OP
シンジ「も、もしもし?」
『……』
シンジ「綾波、だよね?」
『……』
シンジ「どうしたの?」
『……』
シンジ「……綾波?」
180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/27(火) 21:59:45.69 ID:3n4jki2OP
『綾波レイ。午後4時半帰宅。午後六時現在、自宅にて待機中』
シンジ「……!?」
『作戦指示がなければ、このまま自宅にて待機を続行する』
シンジ「……」
『……』
シンジ「えっと……」
『……』
シンジ「それって、定時連絡……?」
184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/27(火) 22:03:32.68 ID:3n4jki2OP
シンジ「もしかしてなんだけど……」
『……』
シンジ「電話番号、間違ってないかな……?」
『……』
シンジ「……」
『……あなたは、碇君』
シンジ「あ、うん、碇シンジです」
『……間違ってないわ』
シンジ「……そ、そうなんだ」
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/11/27(火) 22:06:18.03 ID:3n4jki2OP
『……電話、切るわ』
シンジ「えっと、うん、じゃあ、さよなら」プツッ
シンジ「……なんだったんだろ、今の」
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:08:31.43 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
綾波「電話」
綾波「用のない、電話」
綾波「……」
綾波「碇君は、嬉しい?」
綾波「……」
綾波「……」
綾波「…………」
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:11:39.16 ID:3n4jki2OP
アスカ「シンジー」
シンジ「なに?」
アスカ「ご飯、まだ?」
シンジ「今、作り始めるところだけど」
アスカ「えー」
シンジ「えーって……まだ夕方だよ」
アスカ「今日の私は特別お腹が減ったの!!」
シンジ「そんなの知らないよ……」
アスカ「それくらい把握しなさいよ、このバカ」
シンジ「無茶言わないでよ」
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:14:24.41 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」ソワソワ
アスカ「……?」
シンジ「……」
アスカ「……なにソワソワしてんの?」
シンジ「あ、うん、そろそろ時間だから」
アスカ「時間……?」
シンジ「……!」ブルブル
シンジ「あ、もしもし」ピッ
アスカ「……?」
199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:16:56.75 ID:3n4jki2OP
シンジ「うん、いつも御苦労さま」
アスカ「……」
シンジ「うん、それじゃあね」ピッ
アスカ「……」
シンジ「じゃあ、ご飯、作るね」
アスカ「……いや、待ちなさいよ」
シンジ「え?」
アスカ「今のなによ」
シンジ「電話のこと?」
アスカ「そうに決まってるでしょ」
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:19:31.71 ID:3n4jki2OP
シンジ「ああ、綾波からの定時連絡」
アスカ「なんだファースト……って、え、なに?」
シンジ「だから、定時連絡」
アスカ「はぁ!? なんで定時連絡がバカシンジの携帯に来るのよ!」
シンジ「知らないけど、なんかそういうことみたい」
アスカ「……!? それをあんたはNERVに報告するの!?」
シンジ「しないけど……」
アスカ「じゃあ、なんの意味があるのよ!」
シンジ「ごめん、正直、僕にもわかんない……」
アスカ「なに、それ……」
203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:22:37.17 ID:3n4jki2OP
シンジ「もしかしたら、携帯電話を使ってみたいだけなのかも」
アスカ「……」
シンジ「それならさ、僕が相手になるくらい、いいだろ?」
アスカ「……」
シンジ「時間も短いから、綾波の電話代だって、大したことないだろうし」
アスカ「……」
シンジ「それに―――」
アスカ「―――黙って」
シンジ「……え?」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:26:01.69 ID:3n4jki2OP
アスカ「分かった、全部分かったわ、そういうことなのね」
シンジ「アスカ……?」
アスカ「もう、ほんと、あのバカ。思考回路どうなってんのよ」
シンジ「アスカ、一体なにが」
アスカ「知らない。バカとバカとで大バカやってるっていう話でしょ」
シンジ「なんの話だよ」
アスカ「いいから、さっさとご飯作りなさいよ!!」
シンジ「え、わ、わかったよ。もう、なんなんだよ……」
アスカ「……はぁ」
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:28:41.51 ID:3n4jki2OP
アスカ「……」ゴソゴソ
アスカ「……」
アスカ「……」
アスカ「……」ピッ
アスカ「……」
アスカ「……」
アスカ「……もしもし」
『……』
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:31:10.39 ID:3n4jki2OP
アスカ「バカファースト?」
『……ええ』
アスカ「アンタって、ほんとバカね」
『……』
アスカ「アンタのやってること、ぜーんぶ! 無駄!」
『……』
アスカ「……アンタの電話じゃ、バカシンジは嬉しくなんか、なんないわよ」
『……!』
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:33:46.55 ID:3n4jki2OP
『……私は、間違ってる?』
アスカ「ええ、大間違い。ピクリとも正解に掠ってないわね」
『……』
アスカ「用のない電話って言うのは、無駄な電話のことを言うんじゃないの」
『……』
アスカ「その、中身がないけど、嬉しいっていうか……一緒に話すことが、目的っていうか……」
『……』
アスカ「あああああ!! アンタだってあるでしょ! バカシンジと他愛ない話をしたことくらい!!」
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:37:10.71 ID:3n4jki2OP
『他愛ない、話』
アスカ「そうよ」
『……』
アスカ「……」
『……冬』
アスカ「あん?」
『碇君が、私に……冬が似合うって言ったわ』
アスカ「……ふぅん」
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:41:39.69 ID:3n4jki2OP
アスカ「そういう話をすればいいよ」
『……弐号機の人も、他愛ない話は、嬉しい?』
アスカ「まぁ、悪くはない……っていうか、その弐号機の人っていう呼び方、止めなさいよ」
『……』
アスカ「私も、あんたのこと、ファーストじゃなくて、レ……レイって、呼ぶから」
『……』
アスカ「だから、あんたも、私のこと……」
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:43:53.72 ID:3n4jki2OP
『……』
アスカ「その……」
『……アスカ』
アスカ「……!!」
『……』
アスカ「……な、なによ」
『ありがとう』プツッ
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:46:12.87 ID:3n4jki2OP
アスカ「……はぁ」
アスカ「……」
アスカ「……なに、緊張してんだろ、私」
アスカ「……」
アスカ「……慣れあいとか」
アスカ「……」
アスカ「馬鹿らしいって、思ってたのに」
アスカ「……」
アスカ「一人が好きって、一人で大丈夫って、そう思ってたはずなのに」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:50:52.85 ID:3n4jki2OP
アスカ「……」
アスカ「……」
アスカ「……嬉しい、か」
アスカ「……」
アスカ「……」
アスカ「……」
アスカ「後は、アンタたちで勝手にしなさいよ」
アスカ「バカシンジ」
アスカ「……バカ、レイ」
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:53:03.03 ID:3n4jki2OP
シンジ「……!」ブルブル
シンジ「……電話だ」
シンジ「……」
シンジ「綾波!?」
シンジ「また、どうして……」
シンジ「……」ピッ
シンジ「もしもし」
『……』
243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:55:15.87 ID:3n4jki2OP
シンジ「……綾波、だよね」
『……』
シンジ「どうしたの、なにか伝え忘れ?」
『……』
シンジ「……」
『……』
シンジ「……綾波?」
『…………今日は少し、風が強かったわ』
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 22:58:04.43 ID:3n4jki2OP
シンジ「……え?」
『……』
シンジ「……えっと」
『……初号機って、紫色なのね』
シンジ「……うん」
『……』
シンジ「……」
251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:00:48.36 ID:3n4jki2OP
『……分からないの』
シンジ「え?」
『なにを話せばいいのか、分からない』
シンジ「……そっか」
『……』
シンジ「じゃあ、綾波は、どうして僕に電話してきてくれるの?」
『……』
253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:03:07.40 ID:3n4jki2OP
綾波「なぜ」
綾波「……」
綾波「なぜ、私は碇君に電話するの」
綾波「……」
綾波「……」
綾波「会話」
綾波「……」
綾波「音」
綾波「……」
綾波「…………声」
255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:05:55.53 ID:3n4jki2OP
『……声』
シンジ「え?」
『碇君の声、聞きたいから』
シンジ「……!」
『安心、するから』
シンジ「……そう、なんだ」
『……』
シンジ「……」
259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:09:27.65 ID:3n4jki2OP
シンジ「僕も」
『……』
シンジ「僕も、もっと、綾波の声が聞きたいよ」
『……』
シンジ「もっと、色んな事を話してみたい」
『……』
シンジ「綾波のこと、知りたいんだ。……もっと、もっと」
『……』
261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:11:36.26 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」
『……』
シンジ「……あの―――」
ガチャ
「―――ただいまー」
シンジ「!」
シンジ「ミサトさん、帰ってきた……」
267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:13:43.10 ID:3n4jki2OP
シンジ「……ごめん、早くご飯、作らないと」
『……ええ』
シンジ「……」
『……』
シンジ「こ、今度は、僕の方から、電話するから!」
『……!』
シンジ「また、ゆっくり話そう。……それじゃ」
『……ええ』プツッ
269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:16:14.85 ID:3n4jki2OP
シンジ「……」プルプル
シンジ「……ははっ、手が震えてる」
シンジ「……」
シンジ「心臓も、ドクドクいってるし」
シンジ「足だって、ガクガクする」
シンジ「……」
シンジ「……でも、嫌じゃない」
シンジ「嫌じゃ、ないんだ……」
271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:18:24.42 ID:3n4jki2OP
綾波「……」トクトク
綾波「……」
綾波「……鼓動が、早いわ」
綾波「……」
綾波「体の不調」
綾波「……」
綾波「では、ないのね」
綾波「……」
綾波「これが、きっと、嬉しいという気持ち」
272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:20:42.09 ID:3n4jki2OP
綾波「……」
綾波「……携帯電話」
綾波「……」
綾波「……」
綾波「いつでも、聞こえる」
綾波「いつでも、話せる」
綾波「……」
綾波「……」
綾波「……いつでも、一緒」
終劇
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 23:23:34.09 ID:3n4jki2OP
オワタ。忍法帳っていきなりレベル下げられるんだな。ビックリした。
けっきょく、アスカに良いとこあげちゃうから俺ってやつは。
エヴァQ熱ももうちょいで消化できそうだから頑張るわ。猿よけ支援ありがとでした。