イチロー「ヤンキース」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:21:46.07 ID:dVJdRXdYP

イチロー「20代前半の選手が多いこのチームに、来年以降、僕がいるべきではないのではないかと…」

イチロー・スズキ、38歳、外野手、メジャーリーガー。
現代野球においてシーズン262安打、10年連続200安打といった二度と破られないだろうとされる記録を複数樹立した生ける伝説
彼は7月23日のこの日、長年親しんだシアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースに移籍
彼は自らトレードを志願して最下位が続いていたマリナーズから名門ヤンキースへ移った
このニュースは日米を通じて驚きの声で迎えられる。しかし、イチローの心中はさらに穏やかではなかった

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:23:09.16 ID:dVJdRXdYP

イチロー「一番勝ってないチームから一番勝ってるチームへ」

イチロー(マリナーズで優勝したかった。だけど、もう僕の年齢を考えれば…)

イチローといえど年齢には勝てない。彼はメジャー移籍した最初の年にこそ地区優勝したがポストシーズン途中で敗退。それ以降マリナーズは転落の一途をたどる。
彼は1800万ドルの年俸のうち500万ドルを球団に貸し付け、補強費の足しとした。しかし、そこで来たのはフィギンズといったそびえ立つ糞であった

イチロー「さて、それよりもヤンキースのクラブハウスで挨拶しなきゃな」

イチローはこの日、慣れ親しんだホーム、マリナーズのクラブハウスではなく、ヤンキースのクラブハウスへと向かっていた
いつも慣れ親しんでいるはずのセーフコ・フィールドがまるではじめてきた世界のように見える、そういえばビジター用のクラブハウスには入ったことはなかったか

???「おお、イチローじゃないか、まさかほんとうに来てくれるとは思わなかった!」

ドアをノックして開くと、何やら懐かしい声が聞こえてきた。この声は遠い昔の戦友のものだ

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:23:58.51 ID:dVJdRXdYP

イチロー「その声!?……フレディじゃないか、8年ぶりか!」

ガルシア「そうだぜ、久しぶりだな。色々と積もる話しはあると思うが、まずは一つ、ヤンキースへようこそ。」

フレディ・ガルシア、35歳、投手、2004年途中にホワイトソックスへトレードされたマリナーズの元エース。紆余曲折を経て昨年からヤンキースでプレーしている
イチローがマリナーズに来た年はマリナーズのエースとして、共に地区優勝に貢献していた

イチロー「しかし、フレディも変わったな。マリナーズを去ってから、元気にしていたか?」

ガルシア「俺は大丈夫さ……それよりも俺が心残りなのは、マリナーズを去るその年に、お前はとんでもないことをしでかしたことだな。あの中に俺も居たかった」

イチロー「仕方ないさ。あのGMだ、あの最悪のGM、ビル・バベシがいたから」

とんでもないこと、それはイチローが二度と破られないだろうとされていた記録の一つであるジョージ・シスラーの持つシーズン最多安打記録を84年ぶりに破ったことである。
イチローは歴史的偉業賞と言う異名を持つコミッショナー特別表彰を受けた。そして、フレディ・ガルシアは2004年6月にトレードされてしまっていたのだ。
そしてビル・バベシ、このGMこそ、マリナーズを暗黒の底に叩き落す張本人だが、ここでは割愛する。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:24:38.59 ID:dVJdRXdYP

???「おお、やっと来たのか。遅かったじゃないか」

イチロー「アレックス!Aロッドじゃないか!」

アレックス・ロドリゲス、通称Aロッド、36歳、三塁手。ヤンキースのスラッガーである。彼もまた2000年までマリナーズでプレーしていた
その後イチローと入れ替わる形でレンジャーズ移籍を経てヤンキースへと入る。現在メジャーでの最高額年俸選手でもある

Aロッド「何だ、結局君がヤンキースに来るのが最初だったな」

イチロー「はは、そうだな。早くヤンキースに慣れないと」

Aロッド「辛かっただろ。だから早く来ればよかったのに」

イチローは実は1999年に一度マリナーズのお試しキャンプに参加している、Aロッドとはそこで友人となり、
イチローにとってはケン・グリフィー・ジュニアと並ぶ昔なじみの親友であった、Aロッドもまたマリナーズに残した唯一の心残りとしてイチローをあげていたほどである

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:25:27.22 ID:dVJdRXdYP

Aロッド「えっと、イチのロッカーは、ここだ」

イチロー「えっと、ここか、あ!」

イチローは自分の視界に見覚えのある人物が目に入った

イチロー「ソリアーノ!それにイバニェス!」

ソリアーノ「ああ、来てたのか!ようこそヤンキースへ!」

イバニェス「またプレーできて嬉しいよ。イチ。」

ラファエル・ソリアーノ、32歳、投手、2004年を含め、2006年までイチローのチームメイト。ブレーブスに放出された後、レイズを経て去年からヤンキースに加わっていた
クローザーのマリアノ・リベラの故障に伴い、彼の代役として現在ヤンキースでクローザーを務めている。

ラウル・イバニェス、40歳、外野手、マリナーズでキャリアをスタートし、一旦ロイヤルズに移籍した後、2004年からマリナーズに復帰
イチローの伝説のシーズンに居合わせ、2008年まで在籍、マリナーズ野手陣の中でイチローと共にマリナーズの良心だった

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:26:54.58 ID:dVJdRXdYP

イチロー「僕のロッカー、ソリアーノとイバニェスの間か」

イバニェス「何だ?注文でもしたか?」

イチロー「いや、頼んではいないよ。どこがロッカーでも一緒さ」

ソリアーノ「相変わらずクールだな、イチは」

イチロー「確かにどこでも一緒だけど、それでもこういう配慮をしてくれるのは嬉しいよ。前のチームでは……いや、よそう。」

Aロッド「にしても、こうして近くにいるとわかるけど、随分老けたな。イチ」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:27:39.02 ID:dVJdRXdYP

イチロー「僕ももう、今年39になるから」

ソリアーノ「そうじゃなくて、白髪が増えたというか、顔もやつれてるし」

ガルシア「なんかひどく疲れてる顔がする。今日はたしかに大変な一日だったけど、そうじゃなくてこうもっと長年溜め込んでいた疲れがどっと出てる感じだよ」

イバニェス「一緒だった4年くらい前でもこんな老けてなかったよ」

イチロー「・・・・・。」

???「イチ、君はもうヤンキースの一員だし、ここはマリナーズのクラブハウスじゃないんだ。どんなことでも相談にのるよ」

ガルシア「あ!キャプテン!」

ジーター「辛いことがあったなら正直に話した方がいいこともある。このチームはイチが残した功績くらいわかってる選手ばかりだ」

デレク・ジーター、38歳、遊撃手、日本ではZIPHITのコマーシャルで有名な人だろうか。ヤンキース一筋でプレーするニューヨーク・ヤンキースの現キャプテン
現役MLB選手の中では最多安打を誇り、イチローなどと並んで将来の殿堂入り・永久欠番は確実視されている大選手である

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:28:52.35 ID:dVJdRXdYP

イバニェス「大方、スケープゴートにされたんじゃないのか?」

イチロー「・・・・・。」

ソリアーノ「その様子だと、そうだろうな。そうじゃなきゃ、イチは今、シアトルのクラブハウスにいるはずだ」

イチロー「さすがに、元チームメイトにはごまかせないか。ここ最近、野球をやっていても少しも楽しくないんだ。達成感が得られないんだ…」

???「イチローさんの気持ちは分かります。僕も援護がないとさんざんあることないこと。」

ジーター「おお、黒田か。ちょうどイチローの話をしてたところなんだ」

黒田博樹、37歳、投手、広島東洋カープに在籍し、ロサンゼルス・ドジャースに移籍、今年からニューヨーク・ヤンキースへ移籍
今年も援護に恵まれないながらも、これまでのキャリアで最も良い成績を残しており、エースサバシアをも凌ぐ活躍を見せている

黒田「しかし驚いたよ、ついさっきまでどうやってイチローさんを打ち取るかってことを考えてたのに、いきなりうちに寝返ってるんだから」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:30:04.69 ID:dVJdRXdYP

そうこうしているうちに、ヤンキースの選手たちが集まってきた。新しい仲間であるイチローに挨拶するためなのだが、その前に訳ありの話が繰り広げられていた
他の選手達も、イチローたちの会話を静かに聞いていた。

Aロッド「しかし、どうしてイチがシアトルでスケープゴートにされたんだ?イチはチームの顔だろ?あんなチームでもよく頑張ってたじゃないか」

イバニェス「彼らが言うに、イチローはただ個人記録に固執してるだけだ。とね」

ジーター「酷い話だね。僕達打者は打席に経てば6割以上はアウトになるんだ、そんな世界でヒットを積み重ねて批判されたらたまったものじゃない」

ソリアーノ「ただ、彼が一時期一部から嫌われてたのは事実さ。…………みんな強制放出されたがね」

ジーター「ラウルとラファエルはどうして?」

イバニェス「私は普通に契約切れで移籍しただけだし、ソリアーノはバベシの野郎が勝手に放出したんだ」

ガルシア「俺がいない間にそんな事が、でも、それだけでどうして彼は嫌われなきゃいけないんだ!?いくらなんでも理不尽じゃないか」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:31:29.56 ID:dVJdRXdYP

イバニェス「イチは野球道具を大事にする人でね。ただ、シアトルの若手やコーチは意識が低いんだよ。彼のグラブの上に平気で座り込んだりしてな」

ジーター「それはまた酷いね。イチが怒るのも無理は無いだろう。ヤンキースだったらあり得ないよ。」

Aロッド「それでイチがそういった意識を作らせようとしたら逆恨みを買ったと!?」

イチロー「ああ、他にも試合前の練習でバットを使わずにギターを使う選手までいてね。僕も注意したんだけど無視した挙句、ふざけてギターを壊したんだ」

ジーター「・・・・・。」

彼の話を聞いていた新しいチームメイトたちの空気は暗くなる。彼がシアトルで受けてきた理不尽な仕打ちは察するに余りある
チームが低迷するに従って、華々しくデビューし、走攻守全てで魅せ、世界記録も打ち立て、ずっとチームの顔であった彼に対するリスペクトはなくなっていった
それどころか、そうした功績をダシにして批判の矢面に立たせたのである。チームが勝てない原因を功労者に押し付ける。日本でも横浜や暗黒阪神でよくあったことである。イチローは続ける。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:32:57.62 ID:dVJdRXdYP

イチロー「ある日、またいつもの様にチームは負けてね。クラブハウスで反省会をしようかと思ってたんだけど、若い選手がカードゲームに講じててね。僕は注意したんだけど」

ガルシア「まさかそれでイチは恨まれたのかい?」

イバニェス「フレディ、残念だけど、どうやらそれは事実みたいなんだ。それどころか地元メディアが便乗したんだ。シルバをダシにして反イチローの急先鋒にしたんだ。彼はイチローに車を譲ってもらったくらいの仲なのに」

イチロー「ジュニアがマリナーズに戻ってきた時、今から2年前、彼が引退するときにもそうだった。試合中に居眠りしていたから、代打を出せなかったとね。僕も見てたし監督も、彼も否定したのに、報道がひとり歩きしたんだ」

Aロッド「そ、そんな事があったのか!」

イチロー「ジュニアは追い詰められていったよ。だからシーズン途中に引退さ。あんなジュニア、見たく……なかった。」

ケン・グリフィー・ジュニア。マリナーズで活躍し、セーフコ・フィールドはジュニアが建てた家と言われる。マリナーズ移籍後も地元では絶大な人気を誇り、ステロイドとは無縁のままに本塁打を量産したイチローが尊敬する偉大な選手だった
明るくお調子者な性格で、将来の殿堂入りが確実視されていた。2009年、現役最後の思い出としてマリナーズに戻ったが、2010年には地元紙にスケープゴートにされ、追われるように引退してしまった

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:33:59.82 ID:dVJdRXdYP

Aロッド「俺もシアトルにいた時、彼とは少しいざこざがあった。でも、いくら俺でもジュニアの功績くらいわかってるし、少なくともこんなことして追い詰めることが非常識だってことくらいわかってる!」

イバニェス「イチやジュニアを尊重できないなんて、それは野球に対する冒涜じゃないか!」

ヤンキースの選手たちはひとえに驚きを隠せない。到底ヤンキースでは考えられないようなことである。チームが負けてて反省会を開こうともせずカードゲームに没頭し、それを注意したイチローを逆恨みする
そして地元紙も彼にチームが勝てない責任をなすりつけた。全てが、狂っていた。野球少年だったイチローは「野球をやっていても少しも楽しくない。達成感が得られない」と感じ、不眠症にまで追い込まれていた

ジーター「イチはどうしてそんな意識の低いチームに今までいたんだい?」

イチロー「2001年、あの栄光を忘れられなかったんだよ。あの一年は僕にとって最高だった。だけど、もう僕にも時間はない」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:35:05.99 ID:dVJdRXdYP

2001年のマリナーズも116勝という史上最多の勝数で地区優勝しており、この偉業をチームとしてコミッショナー特別表彰を受けた
イチローは二度コミッショナー特別表彰を受けた史上唯一の選手である。
イチローも自らの限界が近づいていることを悟っていた。昨年、10年間連続で続いていた200安打の記録も途切れ、いよいよ厳しいシーズンとなってきた
いや、むしろこの年まで毎年活躍し続けた事自体が素晴らしいことなのかもしれない。イチローは将来、選手として最高の栄誉である野球殿堂入りを達成するだろう
そして最後に一つ、素晴らしいチームで終わりたかったのだろうか

ジラルディ「おお、みんな集まっとるな。じゃあ早速、今日のミーティングだ」

ジョー・ジラルディ、47歳、ヤンキース監督。名監督、ジョー・トーリの跡を継ぎ監督に就任したヤンキースの監督に就任
また、マーリンズの監督も一年のみ努めており、首脳陣とは非常に仲が悪かったがナ・リーグの最優秀監督賞を受賞した経歴もある

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:36:43.29 ID:dVJdRXdYP

一方、マリナーズのクラブハウスは、イチローが来ないことを不振に思っていた

シーガー「どうしたんだ?いつもならもう来てるはずなのに、イチローさん遅いですね。」

TV「速報です、シアトル・マリナーズのイチロー選手が今日、ニューヨーク・ヤンキースへと移籍することが決定しました!」

川崎「え、そんな!イチローさんが…………!」

カイル・シーガー、24歳、三塁手、マリナーズの「期待の若手」の一人、2011年にメジャーデビューした
川崎宗則、31歳、遊撃手、昨年オフにFAでマリナーズに移籍、その際「イチロー選手と同じチームだけを希望しています」「ちょっとストーカーみたいで気持ち悪いかもしれない。でもしょうがないですね」
といった名言を残し、ネット上では「ホモリン」と言われている

ソーンダース「そんなバカな!彼はチームの顔だぞ!彼が、彼がここからいなくなるなんて…!」

アクリー「落ち着くんだソーン。僕だって信じられないさ」

ヘルナンデス「そうだ。俺が見てくる、きっと彼はまだシアトルのクラブハウスにいるはずだ。」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:37:42.99 ID:dVJdRXdYP

マイケル・ソーンダース、25歳、外野手、カナダ出身の大リーガーで、2009年にメジャーデビューしたマリナーズ「期待の若手」の一人、チームの中でも特にイチローへのあこがれが強かった
ダスティン・アクリー、24歳、二塁手、2011年よりメジャー昇格した若手選手、ノースカロライナ大学時代は3年連続4割を記録したことのある将来有望な選手である
フェリックス・ヘルナンデス、26歳、投手、マリナーズの絶対的エースで同じベネズエラ出身のフレディ・ガルシアに憧れてマリナーズに入団、2005年に19歳でメジャーデビューした後サイ・ヤング賞を受賞するなど
実力派のエースであり、投手の顔であった。マリナーズのセーフコフィールドの一角にはキングスコートもあり、今年の年俸はイチローより高かった。イチローが去った後、完全試合も記録している

アクリー「そ、そんな…!」

果たして、マリナーズのクラブハウスに、イチローの姿はなく、そして彼がいたはずのロッカーには何もなかった。

???「何してる、もうすぐ試合だぞ。MLBはトレードが多いんだ。一人の選手がいなくなったことくらいで騒ぎすぎだぞお前ら。」

川崎「で、ですが監督!」

ウェッジ「いいじゃないか。彼がいなくなったことで君たちもチャンスが増えるんだぞ。むしろこれを期に頑張ればいいじゃないか」

ソーンダース(そういう問題じゃない。)

ライアン「彼の移籍は決まったんだ。もう今更戻ってこないんだ。」

ミルウッド「全く、俺の登板日に飛んだ騒ぎを起こしやがって。」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:38:38.61 ID:dVJdRXdYP

エリック・ウェッジ、44歳、マリナーズ監督。重度の左右病であり、また自らの非を頑として認めず「アクリーボブルヘッド事件」や「岩隈の謎干し」などが問題となっている。
ブレンダン・ライアン、30歳、遊撃手。100万ドルの守備と5セントの打撃と言われるほどの選手で、非常に守備がよいが打率は1割台と低迷している。ウェッジのお気に入りの一人
ケビン・ミルウッド、37歳、投手、マリナーズの先発ローテーションの一人で通称「ミルウッドおじさん」イチローが去ったことでマリナーズの最年長選手となった

イチローは胸に「New York」と書かれたユニフォームを着ている。本来なら緑のマリナーズユニフォームに身を包んでいるはずだが、彼はもうヤンキースの選手だった

イチロー「さ、練習だ!」

ジーター「どれ、打撃練習を見せてくれるかい?」

Aロッド「またホームランを連発するんだろ。全く」

この日、セーフコ・フィールドに来た一部のマリナーズファンは驚いただろう。もし朝のニュースを知らなければいきなりイチローがヤンキースに寝返り、背番号が31になっているのだから。

イチロー「うん、順調だ。さ、勝つぞ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:39:30.06 ID:dVJdRXdYP

イチローは8番ライトで先発出場した。今までは上位打線を任されていたが、ヤンキースでは8番打者、しかも先発が左投手ならベンチスタートもあると言う条件だ
しかし、イチローにとってむしろそっちのほうが居心地が良かった。ヤンキースにはジーターがいる、Aロッドがいる。イチローの功績を理解してくれるスター選手がたくさんいる
何より、ソリアーノ、ガルシア、イバニェスといった懐かしい旧友たちがいたのだ。

イチローはシアトルのファンからスタンディングオベーションを受ける。敵地セーフコフィールドで、ヤンキースの選手として。
イチローはゆっくりとファンにお辞儀をし、打席に入る。

ミルウッド(いつも味方にいたイチロー。今日は敵。だが、これでいい…)

イチロー(センター前!)

早速ヒットを打つイチロー。

イチロー(やれやれ、この歓声。なんだかんだで僕のことを好いていてくれたんだな。だけどごめんよ、僕はもうここには戻らない)

イチローは白髪の増えた自身の髪を気にしながらもファンの声援に答え、報道陣に写真を取られる。いや、この白髪を見せつけるように。
イチローのヒットを換算してた「イチメーター」が最後の更新をはじめる。そういえば、彼女はヤンキースが嫌いだったか。だが今のイチローにそれを考える余裕などなかった。
そう、彼は今ファーストランナーだ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:41:28.92 ID:dVJdRXdYP

イチロー(ケビン!隙だらけだぞ!)

イチローは走る。二塁へ。滑り込みセーフ。早速盗塁を決めた。敵であるイチローにマリナーズのファンたちは歓声を上げる。

イチロー(愚かだ、失ってはじめて大切さに気づく。僕をここまで追い込んでおいて、虫が良すぎる)


イチロー「結局今日は1安打か……。」

ジラルディ「慣れない環境だ。いきなり結果出せなんて言わないし、今の君は8番打者だ、気負い過ぎなくてもいいぞ」

イバニェス「監督の言うとおりだ。このチームは自分が打てなくても他の打者が打ってくれるし、一人で背負いこまなくていいんだ」

ソリアーノ「確かにニューヨークのメディアは厳しいが、それでも結果を出せば褒めるし何より誰か一人に原因をなすりつけるなんてことはしない」

ガルシア「明日は俺とキングの投げ合いか。懐かしいな、2001年」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:42:21.98 ID:dVJdRXdYP

翌日

イチロー「あだっ!」

イチローはヘルナンデスから脚に死球を受ける。

イチロー(おいおい、しっかりしてくれよ)

ジーター「うお!」

ジーターもその後死球、一塁へ歩く。しかし、問題はその次であった。

ゴッ!明らかにそれまでとは違う異音

Aロッド「ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ」

手首を抑えうずくまる、それと同時にセーフコ・フィールドでは歓声が上がる。最高額の長期契約でシアトルから移籍したAロッドは地元では悪者だった。もう12年も前のことであるにもかかわらず。
つまり、Aロッドにぶつけて怪我をさせたヘルナンデスに歓声をあげていたのだ

ウェッジ(さて、次はこのヘルナンデスだな…)

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:44:06.86 ID:dVJdRXdYP

三連戦最終日

ジラルディ「今日は、Aロッドが怪我したので試しにイチローを1番で起用する」

イチロー「ほ、本当ですか!?」

ジラルディ「いや、あくまで試しだ。色々な打順を試したいし、明日からはまた8番に戻すよ」

イチロー「…今日は岩隈とか。彼にも、ムネにも悪いことはしたな。だが仕方ない。このままここにいたら僕はストレスで壊れてただろうから」

イチローはヤンキースに来て全てから解放されることを望んだ。今年、岩隈が来て、川崎は自分のためだけに2億円を捨ててまでマリナーズを選んだ。
しかし、イチローは不眠症に陥っていた。思えば、野球が楽しいって思ったことがここ数年なかった。イチローは日本人であるから言葉よりも成績でチームを引っ張ろうとした
しかし、そうしたチームが不振状態でもせめて個人成績をと思っていたイチローの行動は「自分勝手」と曲解された。もう、自分のメッセージはシアトルには届かない
今年、契約最終年、昨年の不振を払拭しようとしてた矢先、開幕から3番打者を言い渡され更にチームが勝てない原因をウェッジに押し付けられた。曰く、イチローがいるからチームは負けるのだ。と
白くなりつつあった自分の頭を鏡で見ながら、シアトルへの未練を確実になくしていく。自分は今、ヤンキースなんだ。ここなら、ストレスも少なくなる。皆がケアしてくれる

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:46:07.76 ID:dVJdRXdYP

イチロー(うーん、今日もまだ一安打……あ、あれ?もうこんなに時間がたってたのか!)

イチローはふと時計を見て気づいた。試合開始時間からもうこんなに時間がたっていた。イチローは自身がこんなにゲームに集中し、勝つという明確な目標に向けて戦ったことは久しぶりだということを思い出した
終戦モードのマリナーズではなく、優勝を目指すヤンキースだからこそだろうか。自身の充実を自覚し始めたのだ

イチロー「ふう、今日でセーフコともお別れだな」

長年親しんだセーフコ・フィールド。イチローが出場するのはこの日が最後だ。不思議と未練はなくなっていた。そうだ、次からはヤンキー・スタジアムでピンストライプのユニフォームでプレーするのだ

ジラルディ「イチ、わかってるとは思うが、今後はスタメンを外れることもある。最も、去年今年の君の成績を見たら、試合に出すぎだと私は思うが」

イチロー「・・・そら選手ですから、休ませてくださいなんて言えないですよ」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:47:49.59 ID:dVJdRXdYP

ジーター「おいおい、イチは今年39歳だろ!?」

イバニェス「なんだこれは?大量点差があるのにフルイニング出場させてるぞこれ!」

ヤンキースの選手はベテランの高齢選手が多い。そうでなくてもメジャーの過酷な日程を考えれば時折休ませるのは常識である。

イチロー「僕を休ませようって話になると、ウェッジと個人面談さ。で、僕に休みたいかどうか聞く。僕も選手ですからなかなか休みたいなんて言えないじゃないですか」

ジラルディ「ひどい、ひどすぎるじゃないかそれは!しかもイチローは勝てない原因をなすりつけられてたんだろ!?何で、何でこんな理不尽なチームがあるか!!!」

ジラルディは怒りに身を震わせてた。休養を与えるということの重要性はヤンキースの監督は身にしみてわかってるはずだ。ジーターやAロッドは何度も休養をもらってる
もちろん休養といっても、DH休養やベンチスタートでの休養もあるが、イチローはそれすら殆どもらえない日々だったのだ

ジーター「落ち着いてください監督。今の彼はヤンキースですよ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:48:53.85 ID:dVJdRXdYP

一方のマリナーズ

ウェッジ「失礼します」

ズレンシック「おお、ウェッジか。して、どうだ?」

ジャック・ズレンシック、61歳。シアトル・マリナーズのGMだが手腕はバベシよりましと言う程度。イチローが貸した金でフィギンズなどを獲得していた

ウェッジ「はい、イチローがいなくなりましたので、これを期にチームに一体感をもたらせようと思います」

ズレンシック「ふむ、しかしショックも大きいのでは?さすがにシーズン途中に放出されるとは想定外だ。しかもこのトレード、GMより上だったからな」

ウェッジ「いえいえ、岩隈が先発に入ってから投手陣が好調です。多少の貧打でも少ない点数を守りきれるでしょう」

ズレンシック「なるほど、ではベイカーには投手陣の好調を隠蔽させてイチローを批判させよう」

ウェッジ「そうですね。どうせイチローはもう復活できないでしょう。ニューヨークで恥をかかせて更にいじめるって手法をとりましょう。…………本音を言うとジャップが球団の顔など俺のプライドも許さんしな」

ズレンシック「はっはっは。よう言うわい。俺たちは任天堂に助けてもらってるのによ」

ウェッジ「ま、どっちにしろ俺達の失敗は全部あいつに押し付けるのが利口ってもんだよ。こういうチームにこういう選手が一人いると楽だよな」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:50:15.50 ID:dVJdRXdYP

ヤンキー・スタジアム

ヤンキー・スタジアムでは、一部のファンが初回の守備についたヤンキースの選手たちの名前を呼び上げるロールコールが行っている
イチローはピンストライプのユニフォームでプレーすると共に、このロールコールも初体験だ

イチロー(この声援、雰囲気、やはり自分がチームに入ると違う)

ロールコールに応えながら、イチローはヤンキースの重みを自覚し続ける。古巣マリナーズでも何度もこの球場に入ったが、やはり味方になると重みは違う。

イチロー(そろそろマルチヒットがほしいなあ。怪我人も多いし…)

マリナーズ

ウェッジ「チームは勝ってます。対するヤンキースは苦戦中です」

ズレンシック「よし、ヤンキースの怪我人続出を隠蔽して、イチローの呪いと叩くようにベイカーに指示しておけ」

ウェッジ「わかっております」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:51:37.84 ID:dVJdRXdYP

7月31日

ライアン(よし!打率が二割に乗った!)

ウェッジ(よし、俺のお気に入りが2割だ。これで全員2割に乗ったぞ!)

ウェッジ「というわけで、今日はシャンパンファイトするぞ!全員2割のお祝いだ!」

ヘルナンデス「か、監督!2、2割でシャンパンですか!?」

ミルウッド「そうだよ。何が悪いってんだ。1割台がいなくなったことの何が悪い?」

ソーンダース「そ、そういう問題じゃ…!」

ウェッジ「馬鹿者が!今のマリナーズは浮いてる奴がいなくなってかつてない一体感が必要なんだよ!」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:52:35.81 ID:dVJdRXdYP

ヘルナンデス「監督、そういう言い方はいくらなんでも…!」

ウェッジ「参加したくないなら無理強いはしないが。わかってるだろうな!?」

マリナーズは連勝していた。というのも、投手陣の好調と成績の悪いチームと当たっていたからだ
しかし、メディアはヤンキースの怪我人続出による苦戦と合わせ、「イチローの呪い」「かつてない一体感」と宣伝
イチローはスケープゴートだった。マリナーズにいない今でさえ。
マリナーズはブレンダン・ライアンが打率が二割に乗ったことでシャンパンファイトを実施した。そんな事で浮かれてたのだ

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:54:21.81 ID:dVJdRXdYP

ヤンキー・スタジアムでオリオールズ戦、イチローの打席

イチロー(よし、この球!)

イチローが打った打球はヤンキー・スタジアムの右翼席に届くホームランとなる。サイレンの音が響き渡りながらイチローはメジャー通算100号本塁打を打つ。

イチロー(うーん、結局ホームランだけの1安打か、チームも負けたし、正念場だな)

ジーター「チームが苦境でも変わらずプレーするもんだ」

イチロー「大丈夫だ、今更言われなくてもわかってるよ」

テシェイラ「悪いな、俺も明日から数日試合に出れないかもしれん」

イチロー「テシェ、無理はしないでくれよ」

テシェイラ「わかってるさ。それにしても、イチといるとレンジャーズにいた頃のあの日を思い出すよ」

マーク・テシェイラ32歳、一塁手、2003年からテキサス・レンジャースでプレー、2009年よりヤンキース。2004年10月1日の伝説の試合ではレンジャーズの一塁手としてイチローに握手を求めた

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:55:50.04 ID:dVJdRXdYP

8月10日、エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム

テイムズ(何とか取った、よし、ショートに!)

ライアン(あ、しまった。セカンドランナーもやっちゃったけどまあいいか)

ヘルナンデス「おい、ライト、バックホーム!…!おい何やってんだよもう!」

ウェッジ(うむ、次のターゲットはヘルナンデスにしよう。ライアンのシャンパンにも異議を唱えてたし、何よりこいつイチローより年俸高いからな)

ウェッジは考えていた。自分に責任が及ばないようにするためにはどうしたらいいか。そのためには誰か一人に責任を被せればよい。
実際ウェッジは次の登板で完全試合を達成したヘルナンデスを見て、ライアン他内野陣を呼びつけ、適当に手を抜くように言った

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:57:28.48 ID:dVJdRXdYP

サバシア「うう、左肘が。すまない。明日からまたDL入りだ」

CCサバシア、32歳、投手。2007年にはサイヤング賞も受賞した。ヤンキースではエースとなっているが今年は黒田より勝敗以外の成績は防御率、WHIPともに低くなっている

ジーター(僕の脚も、頼むぞ、もう少し持ってくれ!)

ガルシア「サバシア、ちゃんと休めよ」

黒田「これで二回目だぞ。しっかりしてくれよ。ペティットもまだ戻ってないし、僕だって限界があるのに」

イチロー(ここに来てエースがDL、ますます苦しいな)

ジーター「レイズとオリオールズとのゲーム差は縮まる一方だな。どうしたものか」

Aロッド「悪い、俺の方は9月になりそうだ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/26(金) 23:59:14.43 ID:dVJdRXdYP

テシェイラ「俺が戻ってきた矢先、か。イチ、君は本当に怪我しないが、どうすれば故障しないんだい?」

イチロー「普段から故障しないように気をつけることだよ。そのためには若い頃から気を使わないと。怪我してからじゃ遅い」

イバニェス「やはり日頃の積み重ねか…」

オリオールズは追いかける、ヤンキースは逃げる。ゲーム差は徐々に縮まってきた。テシェイラもちょくちょく故障するようになった
ヤンキースは苦戦していた、マリナーズの好調と合わせて「イチローの呪い」と。

イチロー(くそ、僕が何とかしないと…!絶対に、ウェッジの、ベイカーの思い通りにはさせない!)

第一章 新天地 完

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:00:11.34 ID:wnp38IkeP

9月19日、本拠地ヤンキー・スタジアム。前日の試合が雨で流れ今日はダブルヘッダーが組まれた。

ジラルディ「今日は脚が心配だからジーターを休養させる。イチが代わりに1番だ」

イチローはこれより少し前にもジーターとの1、2番コンビを演じこれで一番起用は三度目だ。

イチロー(いずれにしても、監督が僕のことを買ってくれてるんだ。そろそろ結果を出さないと)

イチローは最初の数日を過ごし、みんなが大人で経験を積んでいると実感していた。そしてジーターが、Aロッドが、ソリアーノが、イバニェスが、ガルシアが
ロビンソン・カノやカーティス・グランダーソンもニック・スウィッシャーも途中移籍の自分に優しくしてくれていた。
ジーターが言っていた「イチは僕やリベラと同じようにいつかクーパーズタウンに行くんだ、そこにいける選手は限られてる。本当に卓越した選手だけがそこに行ける。イチを尊重するのは選手として、いや野球人として当然なんだよ」
でも、このままでは自分は来期戻ってくるブレット・ガードナーの代役のままだ。このチームに来年も残りたい。せっかくのチャンスだ、これを逃さない手はない。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:01:38.75 ID:dVJdRXdYP

第一打席

イチロー(一番打者だから、何はともあれヒットで塁に出ないとな)

イチロー(よし!)

第二打席

イチロー(打てる!打てるんだ!)

アンディ・ペティットの復帰戦、イチローは順調にヒットを重ね、チームもリードしていた。しかし8回、点差を詰められ、なおも二死満塁のピンチ

イチロー(何とか耐えてくれよ、うわ、こっちに飛んできたぞ!)

イチローは本能的に駆けこむ、ハーフライナー。難しい打球。落とす訳にはいかない

イチローはその短い時間で反射神経を頼りにボールを慎重に確実に素早く補給した

ヤンキー・スタジアムが歓声に包まれていた。4打数3安打。守備でも活躍。追加点にも貢献。これ以上のない成果だった

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:04:23.26 ID:wnp38IkeP

ジーター「いや、今日はイチに助けられたよ。」

ペティット「ああ、骨折で離脱してから、今日みたいな復帰戦を飾れてよかった」

アンディ・ペティット、40歳、投手。ヤンキースのベテラン投手で一昨年引退宣言をしたものの、今年現役に復帰していた。ポストシーズン最多勝利投手であり、頼れるベテラン投手である

イチロー「さ、第二試合だ」

ジーター「第二試合では、僕も守る、イチはもう一度8番だよ」

イチロー「そうか、とにかく結果を出さないと。そのために勝つ。勝つために打つ、守る、走る」

Aロッド「しかしキャプテン、脚は大丈夫なのか?」

ジーター「僕は無理なんて言ってられないよ。むしろ第一試合休めたのは大きいよ」

ソリアーノ「無理しないでくれよ。キャプテンいなくなったらこのチームは終わりだ」

ジーター「分かってるよ。だけど僕も…………いやよそう」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:07:07.01 ID:wnp38IkeP

第二試合、イチローはジーターがスタメンのため、定位置の8番へ

イチロー(打てる、打てるぞ!)

第一打席、第二打席ヒット。試合は最初ブルージェイズが先制し、一進一退。しかし、イチローは何が来ても打てる気がした。何をやっても大丈夫、彼は自信を取り戻しつつ合った
イチロー、その男、火がついた時、誰も手がつけられない。2004年はまさにそういう年であった。
そして迎えた第三打席

イチロー「よし行ける!またヒットだ、今なら、走っても!」

イチローは走る、二塁へ向けて。キャッチャーが投げるが間に合わない。

イチロー(テンションあがってきた)

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:08:33.44 ID:wnp38IkeP

そのまま一気に三塁へ、打席に入っていた打者は止めの姿勢を送るが、ボールは落ちる球で既にイチローは三塁を陥れた後だった
第四打席、ツーアウト三塁、同点一打勝ち越しのチャンスで4打席目に回ってきた

イチロー(よし、このボールだ!)

イチローの打ったボールはレフト前に綺麗に落ち、三塁ランナーが帰ってくる。よし、これで勝てる!

イチロー(ツーアウトだが、今ならいつ走ってもアウトにならない自信がある!ここはアピールしなきゃな!)

イチローは全力疾走する、キャッチャーは投げる。セーフ

捕手(な、なんなんだコイツは、あ、三盗!)

三塁に投げる、三塁手がタッチする

塁審「セーフ!」

ヤンキー・スタジアムが歓声に包まれていた。それとは対照的に、ブルージェイズの補手は絶望の顔をしていた。明日も打たれる。そう感じていたのだ
試合はヤンキースが連勝した。これでオリオールズを引き離せる

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:10:59.02 ID:wnp38IkeP

ジーター「すごいなイチ、どうやったんだ?」

イチロー「いやー、今日という日が終わるのが残念ですね」

Aロッド「何言ってるんだよwwww」

イバニェス「うむ、明日も試合だしな。私もそろそろ打たないと」

ガルシア「はは、今日のイチローみたいに打てれば俺達投手陣も大助かりだがね」

ソリアーノ「案外、イバも打ちそうな雰囲気あるけどな」

イチロー「はっはっはっはwwwww」

ジーター「さ、明日も試合だぞ、明日も勝たなきゃいけない。負ける訳にはいかないからな」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:14:14.64 ID:wnp38IkeP

9月20日

第一打席 ヤンキース2点ビハインド、ランナー無し
イチロー(まだ打順は8番、今日も打たないとな。これで終わってたら下位のままだ)

イチロー(よし、こうすれば二塁打を狙える!)

イチロー(思ったより伸びなかった……ってえ!?)

イチローが打った打球は、ふらふらと上がり、そのままスタンド・インした。ホームランだ

イチロー(あれ、セーフコなら二塁打か下手したら外野フライだと思ったんだが)

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:15:07.65 ID:wnp38IkeP

ヤンキー・スタジアムはベーブ・ルースが建てた家、左打者のホームランが入りやすくなっていたのだ。

ひとまず、ホームへ帰るとジーターが待っていた

ジーター「すごいな、いったいどうしたんだ!?」

イチロー「久しぶりの感覚、これが野球って感じだよ」

ジーター「はは、僕も200安打達成したし、後に続くぞ」

第二打席 1点ビハインド、しかしノーアウト満塁

イチロー(絶好のチャンス、ここで打たない訳にはいかない)

相手投手は絶望感しかなかった、だが、抑えない訳にはいかない。だが、相手はイチローだった

引っ張った打球はそのまま二塁打へ、ヤンキースは勝ち越し、ヤンキー・スタジアムは歓声に包まれていた

その後、ニック・スウィッシャーの満塁ホームランなどでチームも勝利、第三打席に連続安打は途絶えたが、それでも十分だった。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:18:02.57 ID:wnp38IkeP

ジラルディ「皆に発表することがある。一つ目は、ガードナーがもうじき戻ってくるかもしれない」

ジーター「だ、大丈夫なんですか?イチも彼の代わりとしてきたのに」

ジラルディ「しばらくは代走と守備からはじめることにする。それから、イチローはこのまま好調なら二番打者への昇格も考えてる」

イチロー「え、本当ですか!?」

ジラルディ「さすがにこの成績で評価しないなんて無理だ。一番打者は引き続きジーターが、三番もAロッドのままにする。」

Aロッド「そうすると、より機動力を重視した攻撃ができるな」

ソリアーノ「いや、むしろこの打順が本来の打順だったかもしれない」

イバニェス「それにしても、オールスターみたいな打線だな」

イチロー(テンションあがってきた)

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:21:07.47 ID:wnp38IkeP

9月21日

第一打席 イチロー

イチロー(あ、ピッチャーゴロ!)

それでもイチローは全力疾走する、僅かな内野安打にかけて。しかし、どうも様子がおかしい。
イチローは、自分がセーフになりボールを相手ピッチャーのシャツの中に入れたということに気づくのにそう時間はかからなかった


イチロー(うーん、今日は二安打だが、1打席目は運だし2打席目はヘまして走塁死だし、あまりいい内容とはいえないな)

ジーター「イチ、監督が呼んでる」

イチロー「ん?」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:23:54.46 ID:wnp38IkeP

ジラルディ「明日から、二番打者としてプレーして欲しい。最近好調で実は今日も試したかったんだが、運も味方してきてるからね」

テシェイラ「おお、イチ、おめでとう」

サバシア「なに、イチの実力なら当然さ」

黒田「むしろ、あれがイチローさん本来の打撃ですよ」

イチローは久々の感覚を味わっていた。いままでどうして忘れていたんだろう。これが野球じゃないか。打ってチームも勝って優勝に向かう
マリナーズの頃忘れていた遠い少年の頃の記憶、その野球の楽しさ、ヤンキースに来てそれを確実に思い出していた

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:26:01.99 ID:wnp38IkeP

マリナーズ

ズレンシック「ウェッジ、これはどういうことかね!?」

ウェッジ「そ、そう言われましても、彼はヤンキースですから」

ズレンシック「このままでは、我々は完全に悪者だぞ、9月に入ってから勝ててないし、どうするんだよ!?」

ウェッジ「ど、どうやら投手陣も力尽きてきたみたいで(本当はヘルナンデスいじめを優先させたなんて言えない)」

ズレンシック「ヘルナンデスいじめも大事なのはわかるが、これでは完全に我々に矛先が向かうぞ!」

ウェッジ「そ、そうだ、セーフコ・フィールドに責任をなすりつけましょう!」

ズレンシック「そ、そうだな、前々から投手優利すぎるって言われてたし、このままじゃうちに野手は来てもらえなくなる、よし狭くしようそうしよう!」

ウェッジ「シアトル・タイムズのベイカーにはセーフこの件だけ伝えておこう。俺たちが悪いと思われたらおしまいだ」

彼らは自分たちの保身しか考えていなかった。結局、イチローの代わりに獲得した二人の投手も鳴かず飛ばず。失ったのはチームの顔だけだった。イチローはヤンキースで復活したのだ

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:28:13.38 ID:wnp38IkeP

9月22日

イチロー(せっかく二番打者に抜擢になったんだ。結果を出さないとな)

イチロー(よし、この打球!)

イチローの打った打球はまたしてもヤンキー・スタジアムのライトスタンドに吸い込まれていった。

第二打席

イチロー(低めの球!これはこうだ!)

イチローは低めのたまをまるでゴルフのように掬いあげてヒットにする。久々に出た得意技だ。どうやら今の自分は最高に調子がいいみたいだ。そして何より楽しい
オリオールズは相変わらずぴったりくっついてるがそれでも、毎日負けられない状況で試合ができることはとても幸せだと。今の自分は一番の幸福ものだと思っていた

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:31:47.46 ID:wnp38IkeP

イバニェス「よし、このボール!」

イバニェス(思い出したぞ、俺も打てるぞ!)

イチローの親友、ラウル・イバニェスもそれに呼応する、ホームランを打ち、アスレチックスと激闘を演じる。
そして、試合は延長戦へともつれ込んだ

ガルシア「行ってくる。必ず抑えてくるよ」

イバニェス「ああ、フレディなら大丈夫だ。先発に中継ぎに、よくやってくれてるしな」

しかし、その願いは虚しかった。ホームランを三本浴び、4点差になった。客はどんどんと帰って行ってしまった

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:32:52.22 ID:wnp38IkeP

ガルシア「くそ、ちくしょう!どうして!何故!?」

ジーター「気に病むなフレディ」

ジラルディ「そうだ、もっと胸を張るんだ。今からお前たちが取られた点を取り返す」

ガルシア「でも、1回しかチャンスがないのに4点も!」

イチロー「フレディ、僕が信じられないかい?12年前、共に戦った僕が」

イバニェス「僕が信じられないかい?僕はもう一回だけホームランが打てる気がするんだ」

Aロッド「フレディが取られた点は、俺達が取り返す。なぜなら俺達は…」

イチロー「ニューヨーク・ヤンキースだから!」

ソリアーノ「大丈夫だ、皆を信じよう。ここは一人で気に病むチームじゃない」

イチロー・スズキ、ラウル・イバニェス、アレックス・ロドリゲス、ラファエル・ソリアーノ

ガルシアはかつて同じチームのマリナーズにいて、そしてそこを出て活き活きとしている選手たちに励まされた。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:34:30.44 ID:wnp38IkeP

イチロー(言ったからには、活躍しないとな!)

イチローはバットに当てる、セカンドの面白いところに転がる、先頭打者、まずは内野安打!

Aロッド(俺も続くぜ!)

Aロッド、ヒット

カノ(よし、四球!)

カノ、四球

相手投手「あ!」

相手投手、ワイルドピッチで二三塁、3点差

その後、犠牲フライで二点差と迫りランナー二塁においてバッターはラウル・イバニェス

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:36:32.22 ID:wnp38IkeP

イバニェス(神よ、もう一度、我に奇跡を)

イバニェスはホームランが打てる。そう思い始めてた。そう、ここ一番で。イチローがあれだけ活躍できるならと

イバニェスの打った打球はひと目で分かる特大なホームランとなった。奇跡を信じた僅かなヤンキースファンたちが踊り狂う中、同点に追いついたのだ!

イバニェス「奇跡だ、奇跡が起きたんだ」

イチロー「奇跡なんかじゃないよ。イバは元々、こういう場面に強かったじゃないか」

ジーター「そうだな。とにかく、追いつけただけでもよしとしよう」

次の投手はしっかりと抑え、迎えたその裏。先頭打者が出塁し、打者はジーター。代走には今日メジャーデビューの若手、メルキー・メサ

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:38:01.81 ID:wnp38IkeP

ジーター(確実にバントして、イチにつなげよう。そうすればサヨナラだ!)

ジーターがしっかり送りバントを決める。そしてバッターはイチロー。しかし、ここで信じられない出来事が起こった

イチロー(え、敬遠!?お、おいおい、僕の後ろはAロッドだぞ)

イチローが目にした光景、紛れもなくキャッチャーは立ち上がり、自分を敬遠している。しかし、自分の後ろにいるのはAロッド、史上最年少で500本塁打をうちメジャー最高年俸のスラッガーのあのAロッドだ
イチローは初めて、自分の置かれている好調ぶりに気づいた。無我夢中で野球を楽しんでいたが、冷静に考えてみれば、この敬遠もあり得るだろう

Aロッド(舐めやがって。そううまくは行かないぜ)

Aロッド(センター前!やったぞ!サヨナラだ!)

ベンチの選手たちも飛び出していた、しかし、様子がおかしい、三塁ランナーが慌ててサードに戻っている
何と、代走のメサが三塁を踏み忘れてしまっていた。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:41:03.16 ID:wnp38IkeP

だがまだ一死満塁、外野フライでもサヨナラの場面で打者はロビンソン・カノ

カノのあたりはピッチャーゴロ、ピッチャーは体制を崩しながらも本塁に投げ込みメサフォースアウト。ツーアウト満塁に。三塁ランナーはイチロー

イチロー(ヌニェス、頼むぞ)

バッターは内野手のヌニェス

ヌニェス「!」

ヌニェスの打った打球はファーストゴロに思われた、しかし、イレギュラーバウンドした打球を一塁手がエラー、ヌニェスは喜びながら一塁へ向かい、イチローがホームに返ってきた

直ぐにチームメイトを祝福しにいくイチロー。素晴らしい勝利だった。疲れた。でも、何よりも楽しい勝利だった。
本当ならあのダブルヘッダーから出っぱなしで休ませなきゃいけないのに、そんな事も忘れる気分の良さだった。これで、オリオールズにも並ばれずに済んだ

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:44:48.32 ID:wnp38IkeP

このあとの日程は、敵地ロジャースセンターでブルージェイズとの4連戦、其の後ホームに戻りレッドソックスと3連戦だ

黒田(ちょっと疲れてきたかな、次のレッドソックス戦、最終戦は大丈夫か。それまでにチームが決めてくれれば)

結果は2勝2敗、最下位ブルージェイズに2敗は痛かった。結果的に10月1日にはオリオールズと並んで三連戦に持ち込むことに

10月1日、第一戦

イチロー(うーん、1安打か。でもチームも勝てた。それが良かった)

イチロー(オリオールズは負けた。これで再び単独首位)

これで、明日あさってと連勝すれば地区優勝が決定、あるいはオリオールズが2回負けるか。いずれにせよプレーオフの進出は決定している

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:47:37.55 ID:wnp38IkeP

10月2日、第二戦

イチロー(得点のチャンス、次は僕の打席だが…)

イチロー(や、やったー!)

イチローは大喜びする。これで二連勝、オリオールズも勝利し、最終戦。ヤンキースが勝つかオリオールズが負ければ地区優勝が決定する。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:49:31.37 ID:wnp38IkeP

10月3日、第三戦、先発は黒田

黒田(大事な試合だ、壊す訳にはいかない)

黒田は丁寧なピッチングを心がけ、レッドソックスの打線を着実に抑えていく

チームはレッドソックスの松阪を攻略し、早くも大量リードを奪う

イチロー(まだヒットは出てない、試合の速報によればオリオールズも9回裏負けている。このまま負けてくれれば僕達の優勝だ)

ジラルディ「イチ、交代するか?この点差だし。休みは重要だぞ」

イチロー「いえ、もう『イチ』打席だけ、チャンスを下さい」

ジラルディ「まあ、点差が点差だから凡退しても怒らないが、いけるのか?」

イチロー「ええ。僕もヒット無しはかっこ悪いですからね。それに、最後までグラウンドに立ちたいんです」

ジラルディ「…………そうだな、君はずっとこの時を待ち望んでいたんだから」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:53:04.86 ID:wnp38IkeP

イチロー(言われたからには)

ボールカウントが3ボールになる、だがここで四球は選ばない

イチロー(なぜなら僕は、二塁打が打てるから!)

イチローの打球は外野に飛び、長打コースに。タイムリー二塁打でダメ押しの追加点だ。

イチロー(ん?どうしたんだ?)

その直後、ヤンキー・スタジアムがどっと沸き返る。二塁ベースを踏みながらイチローはスコアボードを見た

Aロッド(俺にスタオベ?何故こんな時に、あ、そういうことか)

表示は、タンパベイ・レイズがボルチモア・オリオールズに勝利したことを表示していた。つまり、ヤンキースの地区優勝が決定したのだ
イチローがタイムリーを打ったその直後、オリオールズが負けたのであった

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:55:03.74 ID:wnp38IkeP

イチロー「よし、これで後は気持よく勝ちたいな」

ジーター「いや、イチここからが本番だ」

イチロー「と言うと?」

ジーター「……練習試合は、終わりだってことだよ」

9回表、最後のピッチャーはフレディ・ガルシア。大量点差でリード、既に優勝は決まっている

しっかりとしめ、最終戦を勝利で飾った。

イチロー(これから、シャンパンファイトか)

黒田(やったぞ、ヤンキースで活躍した!)

ソリアーノ(リベラさん、俺もちゃんとクローザー出来たぜ)

イバニェス(ああ、いける、いけるぞ)

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 00:59:02.96 ID:wnp38IkeP

イチローは2001年もマリナーズで地区優勝をしているが、ちょうど9/11に同時多発テロの影響でシャンパンファイトは自粛していた
つまり、メジャーでは自身初となるシャンパンファイトだ
しかし、不思議と冷静だった。何故だろうか。ジーターや他のチームメイトと接していて、自分がヤンキース色に染められていることに気づいた
マリナーズの最悪だった晩年から抜け出し、ニューヨークの新天地で輝きながらも、自分がやっとヤンキースの一員になったと思い始めたのだ
そしてイチローはさっきのジーターの言葉を思い出した「練習試合は終わりだ」と

第二章 練習試合は終わりだ 完

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:01:17.22 ID:wnp38IkeP

メジャーリーグのポストシーズンはまずア・リーグとナ・リーグで東中西のそれぞれの地区優勝チームと優勝チーム以外で最も勝率の高い2チームをワイルドカードとする
つまりこの時点で合計10チームとなる。まずワイルドカード同士で1試合のプレーオフを戦い、勝ったチームと合わせて4チームでまずディビジョンシリーズを戦う
全5試合で先に3勝したチームが次のリーグチャンピオンシリーズに進出。そこで全7試合先に4勝したチームがリーグチャンピオンとしてワールドシリーズに進出
ワールドシリーズでは全7試合先に4勝したチームがワールドチャンピオンとなる

イチロー(初戦の相手はオリオールズか)

ジーター「ここからが本番だ、さ、行くぞみんな」

一同「おう!」

イチロー(結局ガルシアは25人に残れずか。ガードナーも戻ってきたし、さて。)

オリオールズとの初戦は敵地に乗り込んで試合する。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:04:02.15 ID:wnp38IkeP

ジラルディ「イチ、全試合に上位でスタメンしてもらう。僕は信頼してるぞ」

イチロー「ええ!」

この頃になると、イチローは完全に信頼を勝ち取っていた。誤報でイチローがスタメン落ちするような報道がなされたら凄まじい勢いでヤンキースファンが抗議するように、彼の残留待望論は日増しに高まっていた

敵地でイチローの名前が読み上げられる。観客はジーターやAロッドに負けないくらいにブーイングする。それだけイチローが活躍してる証拠だ

イチロー(これは気持ちいい)

イチローはこのブーイングを、一番気持ちいい瞬間だと思った。やはり、大舞台で倒しがいがある敵だと認識してくれていることなのだから。

サバシア「任せておけよ。俺が抑えるからな」

Aロッド「ああ、俺も打つぜ」

イチローは打つ、サバシアが抑える。イチローも打点を上げる。初戦は勝った

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:06:12.93 ID:wnp38IkeP

第二戦

両チーム無得点でむかえ、イチローはランナー一塁、バッターカノ

カノ(よし!)

ライトを破る長打コース。イチローは二塁を蹴る

イチロー(ベースコーチは回している!よし本塁へ!)

イチローから見ればライト方向は真後ろに当たる、ベースコーチの指示に従うしかない

しかし、一塁から中継されたボールはイチローが本塁へ到達するはるか手前で捕手の元へ

絶・体・絶・命だった

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:08:11.52 ID:wnp38IkeP

イチロー(アウトになる訳にはいかない!)

捕手がタッチする、とっさに右に避ける、よし、触れてない

イチローはオーバーランしてしまう、イチローは左手で本塁を狙うが捕手が阻もうとする

左手を諦めとっさにジャンプし右手で本塁をかする。捕手のタッチは、交わしていた

審判「セーフ!セーフ!」

アウトが、セーフになった

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:10:44.33 ID:wnp38IkeP

ペティット(イチローの走塁もあったしな。失点したくないが!)

ペティットはポストシーズン最多勝投手でもある。しかし、さすがのペティットも一点差というのは厳しいものもある

イチローの奮闘もむなしく、チームは敗れた


第三戦、延長にもつれ込みながらもヤンキースの勝ち

イチロー(うーん当たりが止まってるなあ)

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:13:36.68 ID:wnp38IkeP

イバニェス「うーん、私とジーターとテシェくらいしか元気なのがいないな」

特にロビンソン・カノ、カーティス・グランダーソン、ニック・スウィッシャー、アレックス・ロドリゲスの不調が深刻だった
この時もイチローは一時ポストシーズン打率1割台まで落ちる

第四戦、勝てばリーグチャンピオンシリーズ進出も延長の末敗れる

イチロー(うーん、感じは悪くないんだけど)

そして運命の第五戦、チームは3−1で勝利した

イチロー(ただ、このままだと、次のリーグチャンピオンシリーズで…)

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:17:38.68 ID:wnp38IkeP

10月13日 ヤンキー・スタジアム、リーグチャンピオンシリーズ第一戦、相手はデトロイト・タイガース

ジーター(どうも脚の調子が悪い大丈夫かな。頼む、持ってくれよ)

試合は5回まで膠着状態、しかし6回表、デルモン・ヤングに2ランホームランを浴び8回にも2点を追加されてしまう

イチロー(9回裏、もう後がない)

先頭のラッセル・マーティンが出塁、ジーターは倒れるが打者はイチロー

イチロー(頼む!)

イチローの打った打球はライトスタンドへ、ポストシーズン自身初ホームランだ。これで2点差

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:20:22.86 ID:wnp38IkeP

テシェイラ(うん、ここはランナーいないし四球を選ぼう、頼むぞイバニェス)

イバニェス(私は何度もこういう場面を経験してきた。そういえばディビジョンシリーズでも決めたよな)

イバニェスは数日前黒田とイチローからこう言われた「漫画の主人公」みたいだと

イチローは言う「いやもう本当にイイ奴なんですよ。本当にイイ奴って実はあんまりいない。嫌いな人がいないタイプって、実際は本当にいい人では無いケースが多くてね。
でもあの人(イバニェス)は本当にいい人。珍しいタイプですよ。絶対に彼の事を悪く言う人はいないと思うんですが、かといって薄っぺらい人でもない。稀有な人だと思いますね」

果たして、イバニェスはまたもや2ランホームランを打ち、試合を土壇場でひっくり返した。試合はいよいよ延長戦へ

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:23:48.69 ID:wnp38IkeP

いつだって神は残酷だ。旧約聖書にあるヤハウェは暴虐的で感情的でそれでいて独善的でもあった
試合は延長戦へともつれ込んだまでは良かった。

バッターは今年、カール・ヤストレムスキー以来の45年ぶり三冠王のミゲル・カブレラ
打球はショート正面、ジーター。なんてことのないプレーだった

ジーター「うぐっ!!!!!」

今まで無理してきたつけが回ってきた。立ち上がることが出来ない。周りが皆パニックになった

ジーター(頼むよ、まだ試合は終わってないんだよ。動いてくれよ、なあ!このままじゃチームが、チームが!)

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:26:13.04 ID:wnp38IkeP

トレーナーに抱えられジーターは球場を後にする。絶対的信頼を寄せるキャプテンなきヤンキースは烏合の衆だった
試合は12回にタイガースが2点を勝ち越し。6−4で破れてしまった

ジーター「す、すまない。本当に済まない!」

イチロー「・・・・・。」

ジラルディ「・・・・・。」

ジーター「悪い、イチ、少しだけイチと話しがしたい」

ジラルディ「じゃあ、私たちは監督室にいる」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:27:42.34 ID:wnp38IkeP

ジーター「こうやって、二人で話すのもはじめてか」

イチロー「気分は?」

ジーター「聞かないでくれ。イチも同じだろう」

イチロー「・・・・・。」

ジーター「イチは本当に頑丈だよ。羨ましいよ。いつだったか怪我してからじゃ遅いって言ってたよな」

イチロー「ああ」

ジーター「見ての通り、僕はもう怪我で残りのポストシーズンにでられない」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:29:07.23 ID:wnp38IkeP

ジーター「無理を承知でイチにお願いがあるんだ」

イチロー「何だい?」

ジーター「これを、受け取って欲しい」

イチロー「こ、これは?」

ジーター「ニューヨーク・ヤンキースの主将(キャプテン)に送られるものだ」

イチロー「な、何故僕に!?」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:32:46.14 ID:wnp38IkeP

ジーター「イチが来る前、リベラが大怪我したのは知ってるだろ?そして僕もこのザマだ」

イチロー「・・・・・。」

ジーター「もう、クーパーズタウンに行ける切符を持ってる選手は君しかいない。Aロッドは、こう言っちゃ悪いが薬に手を出してしまってる」

イチロー「む、無理だよ!それなら、カノーに!彼なら生え抜きだし僕なんか3ヶ月しか…!」

ジーター「カノーはダメさ。彼は今絶不調だ。それに実績もまだまだ足りないよ」

イチロー「む、無茶を言わないでくれ、知っているだろ、僕が、僕がそういうのに向いてないってことくらい。僕がここまでこれたのもジーターの存在が大きかったからで!」

ジーター「わかってる。分かってるよ。だけど、君はこのニューヨークの3ヶ月で本当に野球が復活しただけなのかい?」

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:36:04.40 ID:wnp38IkeP

ジーター「イチはこの3ヶ月間、みるみるうちに若返っていくのが見えたよ」

イチロー「でも僕は…」

ジーター「まだやれるってことを証明したじゃないかイチは」

イチロー「じゃあ、ペティットに!」

ジーター「彼は今季復帰したばかりだし、やはりヒト成長ホルモンに手を出した過去がある」

イチロー「でも、そうだとしても、少なくとも僕にこういうのは向いてないんだ」

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:39:48.23 ID:wnp38IkeP

イチローの頭には一つのトラウマがあった2009年のことだ
この年、イチローは第2回WBCに出場、第一回から引き続いてチームリーダーを務めた
しかし、開幕時から不調でメディアからは「国民の心配事」と囁かれた
最終的に最後の最後でそれを払拭はしたものの、自身はストレスから胃潰瘍となりメジャーで唯一DL入りした苦い経験を持っている

イチロー「本当は、マリナーズにいた時もわかってた。僕はジーターにはなれないって。このチームにいてそう思って」

イチローは、シアトルで孤独を感じることが多かったのだ。そして、ジーターに憧れてもいた。ヤンキースに来てその偉大さは改めて認識したばかりだ
そのジーターが、何故自分を臨時のキャプテンにしようとしてるのか。わからなかった

ジーター「僕はね、確かに信頼を集めてないと言っちゃえば嘘になる。だけど、難しいことはしてないさ。ただ背中で語るものだ」

イチロー「でも、僕の前のチームでは…」

ジーター「それは、前のチームがおかしかっただけだ。そうだろう?」

イチロー「・・・・・。」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:43:11.98 ID:wnp38IkeP

ジーター「イチを臨時のキャプテンにする理由はただひとつ。もうこのチームでクーパーズタウンにいく切符を持つ選手は君しかいない」

ジーター「気負わなくてもいい。だけど、なにもしないでもない。だが、僕は出来ると信じてる」

イチロー「・・・・・。」

ジーター「君は、イチロー・スズキだろ?マリナーズでずっとチームの顔だったじゃないか。何を今更臆することはあるんだい?」

イチローは、断りきれず、キャプテンのマークを渋々と受け取った


ジラルディ「遅かったぞ、何を話し込んでいたんだ?」

イチロー「えっと…」

1.キャプテンの証を見せる
2.黙っている
>>140

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:47:31.31 ID:wnp38IkeP

イチロー「・・・・・。」

ジラルディ「ん?まあいい。プライベートだし深くは詮索しない」

イチロー(ごめんよ、僕には出来ないよ)

第2戦、ヤンキー・スタジアム、イチローはジーターの代わりに1番へ、先発は黒田

イチロー(・・・・・。)

黒田(援護がない、もう無理だ!)

黒田は3失点だったがチームは一点も得点できず、イチローは無安打だった

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:50:02.85 ID:wnp38IkeP

第三試合、相手投手はエース・バーランダー

ヒューズ(1点先制されてしまった!)

イチロー(うーん、テシェイラ、セーフティバントくらいしないとなあ)

打順を入れ替え、不調の選手を下ろしたものの噛み合わず9回まで2点差

9回表、一点を返しなおもランナー二人、バッターはイバニェス

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:52:17.38 ID:wnp38IkeP

イバニェスのバットは虚しく空を切った。ゲームセット。ついにヤンキースは崖っぷち

イチロー「・・・・・。」

最後の砦、ラウル・イバニェスも力尽きた。イチローがマルチヒットは打ったものの、クローザーのコークを打ち崩しきれなかった
イチローは、諦めかけていた。そうだ、僕がキャプテン?何を考えているんだジーターは。そう思っていた
いや、もう本当は分かっていたのかもしれない、ジーターが無理をして壊れて、もうその時点でこのチームは…


雨で流れ二日後の第四試合

サバシア「それじゃあ、投げてくる」

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:56:58.46 ID:wnp38IkeP

敵地、コメリカ・パークで迎えたタイガース戦
先発サバシアが大量失点、打線も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響く敵チームファンの歓声、どこからか聞こえる「ワールドシリーズ優勝だ!」の声
無言で帰り始める選手たちの中、キャプテンを託されたはずだったイチローは一人ベンチで泣いていた
ジーターの声にこたえきれずごまかし、偽り、隠蔽、そして信頼出来るチームメイト達の崩壊…
今のヤンキースは呼ん連敗をし、ワールドチャンピオンへの夢は途絶えた
「どうすりゃよかったんだ…」イチローは悔し涙を流し続けた

天の声が聞こえる

川崎「だから言ったじゃないですか、イチローさんはなんでもやれるって。怖がるイチローさんはイチローさんじゃないよ」

BADEND

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 01:58:05.95 ID:wnp38IkeP

これにて完です。最後まで支援していただきありがとうございました

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/10/27(土) 02:06:16.61 ID:wnp38IkeP

本SSはおおむね事実には法ってますが基本フィクションです
実際に選手たちがこのような会話をしたわけではありませんのでご了承ください

わかってるとは思うけど一応…ね



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