1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:27:36.86 ID:tkay9gzC0
あの猫型ロボットがいなくなって
毎日がつまらなくなった
暇になったぶん、勉強がはかどって仕方がなく
かつて落ちこぼれだった僕は
今ではあの源さんと同じ進学校に通っている
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:30:51.78 ID:tkay9gzC0
僕はいつしか彼女のことを、名前ではなく苗字で呼ぶようになっていた。
夏休みの度に世界を救っていた僕たちの絆も
所詮はこんな程度の、思い違いに過ぎなかった。
全ては幻想だった。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:34:07.95 ID:tkay9gzC0
みんなが離れていくような気がした。
いや、それはもはや一抹の寂しさですらなく
手に取って握りしめることのできる、確かな実感だった。
郷田も骨川も、そして出木杉も、自分の道を歩き始めている。
そんな中で僕は動き出せずにいた。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:37:14.84 ID:tkay9gzC0
そもそも僕自身、源さんと同じ学校に進学する必要はなかったのだ。
もっと上の学校だって、いくつかはあった筈だ。
それでも僕が、源さんについていく形で進学したのは
それこそ卑しい妄執でしかない。
あの日の思い出にしがみつきたいだけなのだ。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:41:28.41 ID:tkay9gzC0
僕はそろそろ、気づき始めていた。
そもそも、あのロボットがいなければ
僕たちの青春が交錯することなど、ありえなかった。
郷田と骨川は意地悪なクラスメイトのままで
源さんは、決して手の届くことがない高嶺の花のままで
出木杉は、違う世界の住人のままで
僕たちは本来、そうあるべきだったのだと、気づき始めていた
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:44:05.37 ID:tkay9gzC0
そうあるべきだった。
それを捻じ曲げてしまった張本人である、未来からの来訪者が
忽然と姿を消した今、僕たちの日常は何らかの修正力により
本来の姿を取り戻しつつあるにすぎないのだ。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:47:19.57 ID:tkay9gzC0
小学校の頃の同級生なんて
常識的に考えればそんなものだ。
大人になって、街ですれ違ったって気づかないし
もし気づいたとしても、なんとなしに素通りしてしまう
僕らの絆とやらも、所詮はその程度なんだなあ、と
空しさに浸った。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:52:42.74 ID:tkay9gzC0
どいつもこいつも変わっちまった。
まるであのロボットのことを忘れてしまったみたいに。
なんでもない毎日を生きて、恋人ができたら何の変哲もないセックスをして
どうでもいい子供を作って、家庭をもって
そうやってなんでもないような人生を送って、死んでいくんだろう。
あんまりだ。僕たちは、そんなんじゃなかったろうに
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:56:44.99 ID:tkay9gzC0
あの夏、僕たちは何回も世界を救っただろう。
それなのに、誰にも認められず人ごみに埋もれて
世界を構成するピースの一つに成り下がるんだぜ?
あんまりだ。そんなのごめんだ。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 22:59:53.07 ID:tkay9gzC0
僕の引き金は宇宙を救った。
それさえも、あの日の何でもない思い出になって
消え去るのだとしたら
いったい僕は何を誇って生きればいい?
僕が何者なのか。それさえもわからなくなってくる
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 23:04:14.60 ID:tkay9gzC0
僕は、天井を見上げながら、あのロボットの名前を呟こうとした。
だけど、声が出なかった。
驚くべきことに、僕は奴の名前を忘れていた。
なんだかすべてが馬鹿馬鹿しくなってきた。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 23:09:59.13 ID:tkay9gzC0
一番変わってしまったのは、紛れもないこの僕だ。
そのことに気づいてしまった。
仲間の絆だの思い出など、口では聞こえのいいことを語っていながら
結局、あのロボットのことも、仲間たちのことも
自分を非日常に連れ出してくれる便利な道具としか思っていなかったのだ。
全ては、自分が特別であるために。
源さんと同じ学校に進学したのも、思い出にしがみつくなんて生ぬるいものじゃない。
期待していたんだ。再び、源さんが僕を非日常に連れ出してくれるかもしれないと
もっといえば、一回くらいセックスをさせてくれるかもしれないと、期待していたんだ。
僕は屑だ。
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/07/18(水) 23:13:26.59 ID:tkay9gzC0
僕は畳の上にふて寝をして、ズボンとパンツをおろした。
そして自慰をはじめ、精液をぶちまけてしまった。
畳の藁の隙間に染み込んでいく精液を、ティッシュペーパーでふき取りながら
僕は泣いた。
おしまい