1 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:01:04.00 ID:tuaHk6Xd0
キョン「エスエス? 聞きなれない言葉だが」
長門「ネット上で書かれる小説のようなもの。 ショート小説」
キョン「小説ねえ………」
それは、文芸部の活動か?
まあ、元々文芸部なのだから不思議ではないが。
長門「私の個人的な趣味。 部の活動とは違う」
趣味。
長門が趣味と言ったか。
2 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:02:56.06 ID:tuaHk6Xd0
いつだったか、コンピ研の奴らとのこともあったし、
以前から長門にも趣味は存在した。
もはや驚くことでもないのか。
キョン「………見ていいかな」
長門「拒否はしない」
キョン「ふむ。」
どれどれ。
3 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:04:21.25 ID:tuaHk6Xd0
「んっ……」
次第に痛みも失せ、快感が身体を支配する。
言葉など交わさなかったが
彼と私の腰の動きが完全に一つになり、さらなる快楽を求める。
具体的な意味も持たない、日本語の役割を果たしていない呻き声のような声が
コミュニケーションとしての役割を果たしている不思議な時間だった。
彼は私の体の向きを変え
キョン「えっと………長門、これって」
長門「………濡れ場。」
4 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:06:31.75 ID:tuaHk6Xd0
長門「濡れ場。」
キョン「………。」
長門「………芝居や演劇において、情事のしぐさを
キョン「大丈夫だ! 知ってるから!」
うーん………
まあ、そういうシーンもあるのだろう。
普通の小説でも、かなり官能的なシーンがあったりするのは事実だ。
それは俺も知っていることであり、
問題はない。
小説を書くというのは、つまりそういうことだ。
5 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:08:14.50 ID:tuaHk6Xd0
長門「私の小説では、興味をそそられない?」
キョン「いや、そんなことは………」
長門がこんな文章を書けることにびっくりしただけだ。
まだちょっとしか読んでないし。
長門の文章を知るために。
もう少し続きを読んでみよう。
落ち着いていこう。
彼は私の上に乗って言った。
「長門………俺、もう………」
「あなたはもう限界に近い。 射精を許可する」
キョン「ちょっ……! ちょっと待て、ちょっと待ってくれ長門」
長門「待つ。」
6 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:11:02.35 ID:tuaHk6Xd0
長門「待つ。」
キョン「あ、ああ………。」
長門「『宇宙人の並べた文章なんて気持ち悪いったらないぜ』」
キョン「お、思ってないぞそんなこと」
長門「心拍数が平常時と異なる」
異なるわい。
そりゃ異なるわい。
7 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:13:56.49 ID:tuaHk6Xd0
長門「『宇宙人が日本語を使っている時点で滑稽だ。 インコに人語で罵られる方がまだ好感が持てる』」
キョン「日本語はいいんだよ! そうじゃなくて、ちょっとびっくりしちまっただけだ」
長門「何か、問題点があるなら指摘するといい。」
キョン「あ、ああ………。 これはその、実在する人物がモデルなのか?」
長門「………想像に任せる」
8 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:14:50.05 ID:tuaHk6Xd0
キョン「想像に任せる、ね………」
お前らしくない感じがするんだが。
長門「以前の私らしくは、ない」
………いや、しかし長門が少しずつ変わってきているのは、
俺も嬉しく思っていたことである。
長門が成長するのはいいことだ。
長門「ヒューマノイドインターフェースは定期的にアップデートがなされている」
アップデートと来たか。
9 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:16:50.17 ID:tuaHk6Xd0
長門「地球での活動のため、より人間に近い存在なる」
キョン「………まあ、そう言われると確かに自然の成り行きなのかもしれないが」
長門「あなたにも、もっと近づける」
キョン「………?」
長門「………これ。」
コピー用紙の束。
ひもで綴じられている。
長門「SS、印刷した。 帰ったら、読んで」
俺の人生の中でも一番ぶっ飛んだ宿題が配られた。
10 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/06(金) 07:19:42.03 ID:tuaHk6Xd0
キョン「あー、ちょっと聞くが長門、これは受け取らないといけないものなのか………?」
長門「家でゆっくり読むといい」
俺は爆弾を持って帰らなければならないらしい。
いや、正直に言うと、読みたいという気持ちが一ミリもないわけではないのだ。
長門が書いた文章、饒舌な長門を知りたいという気持ちはある。
しかし、嫌な予感しかしない。
このまま静かに終わって欲しい。
だがそうはならないんだろうなという、確信にも似た何か。
『やっほー! 有希!!と、………あれ? あんたにしては早いわね』
ばーん、と、ドアが打楽器のような音を響かせながら開いた。
15 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:00:19.20 ID:BU3PnQD/0
俺が所属するSOS団のメンバーは5人。
大人数とは言い難い。
だから、というわけではないが、
そろそろドアの開け方だけで、それが誰なのか予想することもできるようになってきた
そんな時期というか、段階に入っている。
雰囲気というかオーラと言うか、そういう非科学的なエネルギーについては否定から入る俺ではあるが、
それでもこいつは。
こいつだけは、不思議エネルギーを常に撒き散らしていることを否定できない。
俺は長門から受け取ったコピー用紙を全力で制服の内側に押し込み、
自分の腹のあたりに固定した。
手で押さえればずり落ちない。
このまましばらく押さえて………、さて、やり過ごせるか。
ハルヒ「何やってんの?」
キョン「何もやっていないぞ」
棒読みである。
心臓がバクバクしているが、落ち着いて対応しろ、俺。
面倒なことは、勘弁だろ?
16 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:03:03.77 ID:BU3PnQD/0
ハルヒ「ふーん。」
ハルヒはすぐに俺から目を離して、長門の方に目をやる。
俺の不自然さには気づかなかったようだ。
わずかな時間だが、安堵する。
ハルヒ「有希、何の話してたの?」
俺では埒が明かないから長門から攻める気か。
ハルヒ「あ、いや………言い方が悪かったわね。 えーと、有希」
言葉を選んでいる。
長門「なに」
ハルヒ「………こいつに何か、変なことされなかった?」
それで言い方を良くしたつもりなのかお前は。
17 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:05:49.05 ID:BU3PnQD/0
長門「変なこと、とは」
ハルヒ「………ん。 まあ、大丈夫みたいね。 でも気をつけなさいよ?」
お前に気をつけろと言いたい。
俺は無害だよ。
お前よりはな。
それくらい自覚している。
「おや、どうかされたのですか?」
ドアの方から新しい声がした。
SOS団の部室に集まったのはこれで4人目か。
18 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:08:29.12 ID:BU3PnQD/0
キョン「遅かったな古泉」
古泉「クラスでちょっとやることがありましてね」
ここで上手く話を古泉側に振って俺と長門から意識を逸らせれば理想的なのだが――
とか何とか考えていたら、古泉の方から振って来た。
古泉「おや、体調でも悪いのですか?」
キョン「ん?」
古泉「いえ、その手………意味がないのなら、いいのですが」
俺の下腹部。
ああ、なるほど。
俺が、腹が痛くて押さえてるように見えたのか。
19 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:12:45.58 ID:BU3PnQD/0
キョン「ああ、ちょっと………そ、そうなんだ。 腹が痛くてな、情けない話だが」
チャンスだ。
この言い訳で自然にこの部屋から失礼するとしよう。
小説という名の爆弾と一緒におさらばするとしよう。
ナイスだぜ古泉。
今度コーヒーくらいならおごってやるぞ。
ハルヒ「あれ。 有希………、パソコンで何か?」
長門「少し、書いていた」
20 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:13:51.33 ID:BU3PnQD/0
ハルヒ「ふうん………、団のホームページとかいじってたの?」
長門「あのサイトのソースは書き変えていない。 書いたのは個人的な、趣味の文章」
ハルヒ「へえ………! それって、できた? 完成したの?」
長門「作業はまだ、途中」
ハルヒ「………ちょっとだけ読んでいい?」
有希「拒否はしない」
21 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:17:03.74 ID:BU3PnQD/0
ハルヒ「有希の書いた小説を見るのも久しぶりね」
好きなお菓子を買ってあげるよと親に言われた幼稚園児みたいな笑顔で、
画面をのぞきこもうとしているそいつの肩を、
俺は掴んだ。
パソコンの画面から引き離した。
沈黙。
空間の停止。
そして………、
ハルヒはゆっくりと振り向く。
あからさまに迷惑そうである。
ハルヒ「な、何よ………」
キョン「あー………アレだ。 ほら、いい天気だよなぁ、今日って」
22 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:20:36.79 ID:BU3PnQD/0
キョン「いやあ、マジでいい天気だ。 こんな日は部屋の中でパソコンなんて見てたら、そんなことやってたら
バチが当たる。 俺はそう思うんだよ」
ハルヒ「………」
キョン「こういう日には外で何か大きいことをやるべきなんじゃないか?
確実にそうだと思うぞ。 だって、俺たちSOS団はそういう存在だろ?」
ハルヒ「………」
キョン「そ、そうだ! 野球。 野球しようぜ! 去年使ったグローブがそこの段ボールの中に
あるからさ」
ハルヒ「………」
23 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:25:37.02 ID:BU3PnQD/0
俺は喋る。
一生分喋ったような、しかしその実、何も喋っていないような、スッカスカな感覚だった。
俺が喋っている気がしなかった。
ハルヒは見慣れない生物を観察するような目で俺を見ていた。
俺の話を静かに、落ち着いて聞いていた。
本来は………本当なら。
こいつは人の話を聞くようなタイプではない。
でも俺をじっと見つめて話を聞いている。
なんというか………、いつもと違うのだ。
部室の空気が明らかにおかしい。
24 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:28:52.69 ID:BU3PnQD/0
そして、原因は俺である。
俺が絶対に言わないようなことをずっとまくしたてたのは、他ならぬ俺である。
………いや、でも、だって、しょうがないだろ。
じゃあどうすればよかったんだよ!
あの小説見られたら、やばいだろうが!
ハルヒ「ねえ、キョン」
キョン「はい」
ハルヒ「だいたいわかったわ」
なんだと?
25 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/07(土) 05:31:03.43 ID:BU3PnQD/0
ハルヒ「わかったわ」
キョン「何がだ」
ハルヒ「わかったの。 あんたは命令して、その………、それを書かせたんでしょ!」
キョン「はあ?」
何だ。 何を言ってる?
ハルヒ「あんたが有希に命令して、無理矢理いやらしい文章を書かせたんでしょ!」
キョン「どっ………!?」
どんだけ迷惑な思考回路してんだ、こいつは!?
33 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 22:08:35.08 ID:bHGC7sK40
いままでのあらすじ。
長門が書いた小説をハルヒに見られないようにしなきゃいけない!
がんばれ俺(キョン)。
見られたら、なんかこう………非常にマズイ!
しかしこの女、俺が長門に無理矢理書かせたんじゃないのか、とかふざけた因縁つけてきた。
ええい、厄介なやつだよお前は
34 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 22:16:20.53 ID:bHGC7sK40
キョン「んなことするわけないだろ!」
ハルヒ「ん………まあ、そうよね」
いくらあんたでも有希にそんなことをするほど落ちぶれちゃいないわよね、と続ける。
なんなんだ、俺のこの扱いは。
ていうか、朝比奈さんの胸をおもちゃにしてたお前がどんな顔してそんな台詞を吐いているのか。
――と思って顔を見る。
割といつも通りの顔だった。
35 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 22:19:10.92 ID:bHGC7sK40
ハルヒ「………なによ? 私の顔に何かついてる?」
キョン「何も。 普通過ぎて俺はがっかりだよ」
ハルヒ「?」
キョン「いや、なんでもない」
ハルヒ「そ。 ―――有希、見せて」
キョン「いや駄目だって」
36 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 22:24:13.44 ID:bHGC7sK40
ハルヒ「有希が見てもいいって言うんだから、あんたが口出しするのは変でしょ」
キョン「そりゃお前そうだけど、ほら………」
ハルヒ「じゃあなんであんた、隠すのよ! おかしいじゃない!」
キョン「隠してるわけじゃないが、いや、まだ見ない方がいいんだって!」
ハルヒ「なんなの? やっぱりあんた、有希に何かしたの?」
キョン「いや、それは………」
『あのぉ……どうかされたんですか?』
37 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 22:39:18.75 ID:bHGC7sK40
ハルヒとグダグダやってるせいで気づくのが遅れたみたいだが、
どうやらSOS団員は全員集合したらしい。
キョン「いや、別に………なんでもないんですよ朝比奈さん」
みくる「ええと、その………ごめんなさい。 実はさっきからずっと、聞いていたんです。」
げ。
みくる「声をかけづらい雰囲気というか、なんというか………」
まあ割り込みづらい感じではあったのだろう。
しかし俺は、割り込んで欲しかった。
入ってきてくれてありがとう、朝比奈さん!
38 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 22:49:25.57 ID:bHGC7sK40
簡単に状況を聞いた後、朝比奈さんは言った。
みくる「私なら、私だったらですよ? その……、出来上がった小説を読みたいなぁ、作りかけじゃなくて」
思ったことをただ呟いただけのような感じだった。
が、十分な助け舟だった。
キョン「長門! お前のその小説、さっき作業中って言わなかったか?」
長門「言った。」
よし!
39 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 22:55:12.40 ID:bHGC7sK40
キョン「………ハルヒ。」
ハルヒ「………ん。」
キョン「小説は完成してないそうだ」
ハルヒ「だから何よ」
キョン「いや、だからな? 楽しみは後に取っておいた方がいい。 今日のところは………」
ハルヒ「なに? 有希の小説はつまらないって言いたいの?」
キョン「そうじゃなくてだな」
40 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 23:04:27.04 ID:bHGC7sK40
キョン「長門、その小説の出来は100%か?」
長門「………現状では52%」
ハルヒ「………」
有希がまだ出来ていないって言うのなら仕方ないわね、と言ってハルヒはそっぽを向いた。
ハルヒ「………出来たら見せること。 団長命令だから。」
長門「………完成したら。」
41 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 23:19:58.00 ID:bHGC7sK40
その後はハルヒは長門のパソコンなど目もくれず、団長席にどかっと座り込んだ。
古泉「………お身体は大丈夫なんですか?」
キョン「………ん。 俺に言ったのか?」
あ、そうか、腹を抑えっぱなしだったのか。
古泉(団長に見つからないうちに、隠しに行った方がいいですよ)
………わかってやがったのか。
言われなくても出ていくさ。
42 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 23:36:20.68 ID:bHGC7sK40
その後は適当に団の活動を済ませて(活動なんて特になかったが
団長がそう言うのならこれも活動なのだろう)普通に家に帰った。
夜は布団に入って、今日会ったことを少しだけ思い出しながら眠りにつく。
――が、眠りにつけなかった。
43 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/04/18(水) 23:43:47.15 ID:bHGC7sK40
どういうことか。
いや、俺も説明するような余裕とかそんなに持ってないんだよ。
持っていたくない。
こういう時は驚き立ち尽くしている阿呆を気取っていた方が楽な人生なのかもしれないしさ。
はあ………
校舎だ。 校舎が見える。
しかし、俺以外に生徒の姿はない。
阿呆を気取っても誰も見てくれないんじゃ意味がない。
何度か来たことがあるな………、何度目だこれで。
あーあ。
これは、
キョン「閉鎖空間だ………。」
52 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 02:14:31.31 ID:6YTu3YAf0
閉鎖空間である。
俺は一応、学校の敷地の外に出ようとして、見えない壁があるのを確認して、
ああ、やっぱり出れないなぁと落ち込んでから校舎の中に進んだ。
さて、どうしようかね。
見た限り神人は出ていないみたいだ、建物を壊す音も聞こえない。
だから危険は少なそうだが、この後どうなるか、どうすれば我が家のベッドに戻れるかが
わからない分、性質が悪いかもしれない。
53 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 02:24:52.44 ID:6YTu3YAf0
「なにか、ヒントがないかな………脱出の」
「今日会ったことを思い出してみれば良いのでは?」
………突然後ろから声をかけるなよ。
たぶんびっくりするだろ?
嫌に優しい声だったから驚きレベルは低かったが。
谷口とかと違って、ボリュームが抑えられている笑い声を漏らす古泉。
正確には、いつも見ている古泉ではなく、古泉の意志?が話を続ける。
「すみませんね。 何しろ今は、足音を立てるための足がないものですから」
54 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 02:36:07.64 ID:6YTu3YAf0
「こんな赤い球じゃなく、面と向かってあなたと喋っている時間の方が欲しいのですが
そのほうが、楽しいじゃないですか。 自分の頬の筋肉が持ち上がっている感じなんかが。」
「………なあ、俺はどうすればいい?」
「ふう。 涼宮さんが原因だということはわかりますね?」
「………ああ」
「あなたが原因だということもわかりますね」
「………ああ?」
55 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 02:45:38.80 ID:6YTu3YAf0
なんだよそれ。 もったいぶらずに教えてくれよ。
「さあ――、私もこの状況のすべてを把握いるわけではありませんので。」
いや………、でもお前は言うなれば、涼宮の精神状態のプロだろ?
「そこまで大層な物ではありませんよ。 実際、上手くいかないことの方が多いといいますか………」
しかしなあ。
「それでも原因を予想、推察するならば………、そうですね、
『とある部員が作った非常に面白い小説を、涼宮さんに見せずに自分だけで楽しもうとしている。
そういう態度をとる人物が身近にいる』
――とまあ、そんな具合でしょうか」
………………。
56 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 02:53:49.13 ID:6YTu3YAf0
「仲間外れにされた、と思っているのでしょう」
「いや、お前それ、ちょっと待てよ。 そんなことで凹むような奴じゃねえだろ」
「ふふ、確かに大げさな表現ではあります。」
しかしですよ? 小説の続きがなかなか見れないというのは、
それはもう気になって気になって仕方がない。
そういうものではありませんか?
「………まあ、ちょっとはわかるけど」
57 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 03:23:23.53 ID:6YTu3YAf0
「それ以外にないでしょう? ここ数日で、涼宮さんの心にストレス………変化を与えるようなことは」
………確かに、長門の小説を隠したその日の夜にこれだ。
閉鎖空間だ。
そう考えるのは自然か。
わかりやすいくらいだ。
ん、待てよ?
長門か。
「………部室に行ってみる。 あそこならパソコンがある。」
58 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 03:38:13.19 ID:6YTu3YAf0
階段を上がってSOS団の部室に向かう。
「どうされるおつもりですか?」
「どうするっていうか、するつもりはないんだ俺は。」
前みたいに長門が全部やってくれる気がする。
yuki.nと書かれた文字列が、いつだったかと同じようにヒントをくれるんじゃないかと、
そう思う。
「こういうことが起きるたびに長門に頼りっぱなしって言うのも、なんだかな、とは思うんだが」
「いえ、今回は長門さんに責任を負わせても構いませんよ」
「え?」
「だって彼女が原因じゃないですか」
「………。」
59 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 03:58:44.49 ID:6YTu3YAf0
言われてみればそうだった。
長門があんな文章を部室で堂々と打ち込んだり印刷したものを俺に手渡したりしなければ
あんなに俺の心臓に負担がかかることはなかった。
「まあ、小説の書き手にも、いろいろあるのでしょうが」
………色々ねぇ。
色々あるんですよ。
定期的に本屋を彷徨い続けていたけれど
物語シリーズの新作………よつぎダークが3月か4月に出るかなと思ってたら出ないものだから
SS書くモチベーションが下がって
偶然目に入った驚愕の前編後編を今頃になって買って急にそっちを書きたくなったり
そんな感じでSSをいくつかほったらかしにした過去があって………
………え、何それ。 長門の話?
いえ、本編と全然関係ない話です。
………じゃあなんでしたんだよ
さあ………。
60 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 04:22:40.64 ID:6YTu3YAf0
そういえばお前………、長門の小説のことだけどさ。
「はい、なんでしょうか」
………読んだな?
「何故ですか?」
惚けんなよ。 どうやって見つけたんだ。 俺しかわからない場所に隠したのに
「そんな場所があるんですか。 是非、上陸してみたいところですね」
………。
61 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 04:38:58.52 ID:6YTu3YAf0
「大丈夫ですって。 機関の人間で廻し読みしたとか、そんなことしていませんから」
そんなことされたら俺は気が狂ってしまうわ。
「森さんが顔真っ赤にしながら熟読してたとか、そういうこともありませんから」
キャラが崩れている気がするぞ、大丈夫か?
「大丈夫ですよ。 あなたをおちょくるのが好きな、いつもの僕です」
俺は鼻で笑ってやった。
部室はもう目の前だ。
62 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 04:50:12.35 ID:6YTu3YAf0
部室からは、ほんの少しだが光が漏れていた。
念のためノックをして、返事がないことを確認して中に入る。
やはり誰もいない。
ただ、パソコンの画面から放たれる白っぽい光だけは意志を放っていた。
「では、僕はこれで」
「行くのか?」
「ふふふ、僕も一緒に、彼女の書いた文章を拝見していいのですか?」
「………外して欲しい」
「ご武運を」
はにかんだまま赤い球は消えて、部室には俺と画面だけが残った。
63 名前:窓 ◆W8J6cxD/Bs[saga] 投稿日:2012/05/02(水) 04:56:06.13 ID:6YTu3YAf0
yuki.nが現れてくれるのかと期待していたが、画面はあの時と違っていた。
あのときは黒い画面とチャットしていたが、今回は薄い緑色の画面。
何のサイトだ?
ええと………
「SS速報VIP………?」
はて、さっぱりわからん。
74 名前:まどちくび ◆W8J6cxD/Bs[saga sage] 投稿日:2012/07/15(日) 03:37:34.20 ID:oNLUSQ5O0
見当たらなかったから落ちたと思ってた
すいませんっした
また書く………と思う。