1 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:43:14.55 ID:uVWx78U5o
ハルヒが偽物語8話を観た、というお話です。
8話を観てからの方が楽しめると思います。
それでは、始めます。
2 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:45:20.08 ID:uVWx78U5o
部室に俺と長門とハルヒの3人だけしかいないある日のことだった。
その日古泉と朝比奈さんは用事があるとかでいなかったのである。
珍しくハルヒがPCにイヤホンを繋げて何してるのかと思ったら急にこんなことを言った。
「キョン、歯磨きプレイって知ってる?」
…は?
聞いたことがなかった。プレイというからにはそっち系のネタなんだろうけどな…
一応聞いておくか。
「いや、知らないな。何だそれ?」
「まぁ普通知らないわよね。とりあえずこっち来て、これ観なさい」
ハルヒに呼ばれるがまま、俺は椅子を持ってハルヒの隣に置いて腰掛けた。
PCからイヤホンを外したハルヒはどうやら観ていたアニメを最初から再生するボタンを押したようだ。
『阿良々木月火の正体を開示することによって…』
どこからツッコめばいいのか分からないが、とりあえずこれは俺に何かのアニメの1話を観せようとしているわけではないらしい。
「この辺は今回は関係ないから飛ばすわね」
丁度オープニングが終わったところに飛ばしたようだ。一発で決めるとは…こいつ何回も観たな、さては。
気の抜けるBGMと共になにやら男が登場した。机に向かっているようだ…と思ったらドアを蹴破って、
『兄ちゃん、あたしにして欲しいことないかな?』
とのたまう女が出てきた。どうやら先ほどの男の妹のようだ。
聞くのが遅れたが、一応聞いたほうがよさそうだ。
「…なあハルヒ、これ…何?」
「『偽物語』っていうアニメの第8話よ。まあいいから観てなさい」
ふーん…深夜アニメだろうか。俺は全然その時間のアニメを観たことがないな。
画面では先程の妹…阿良々木火憐と言ったか、そいつがスカートを履いていることに兄が驚愕しているシーンに移っていた。
そんなことで驚くのか?
「この子、普段はずっとジャージなのよ」
少なくとも俺の愚妹とは大違いな運動大好きっ子、らしい。それにしてもずっとってのはどうなんだろうな…
それにしてもこの兄、驚き過ぎだろう。だが、熱いな…顔芸はする必要があるのかよく分からんけどな。
なんでスカートを?という質問に、
『可愛いだろ?』
妹が威圧的に言った。俺の妹には流石にこんな風に育ってほしくはないな。
少し経って、妹が兄にすごい勢いで抱きついた。待て、骨が砕けてるぞ。いやいやこれはイメージ映像なんだろうけど。そうと信じたい。
『…神原』
兄のほうが説明したところによると、彼の1歳下の後輩の名前…らしい。
格闘技の全国選手で、地元の星だとかなんとか。すごいな。屈強な男なんだろうか?
妹の方は神原という人物をどうしても紹介してもらいたいらしい。何としてでも…なようだ。
『分かった、じゃあ処女やる、兄ちゃんにあたしの処女やるからぁ!』
兄が蹴りを入れた。
『妹の処女なんざいるかぁ!』
…俺だって妹に言われたら蹴り飛ばすだろうな。重ね重ね言うがこんな風には育ってほしくないものだ。
「ふふっ」
ハルヒがちょっと笑っている。
「笑い事じゃないぞ妹がいる俺としては」
「アニメだから別にいいじゃない。それよりちゃんと画面観なさいよ」
へいへい。団長様に言われて画面に向き直ると、少し話が進んでしまっていたようだ。
3 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:46:14.23 ID:uVWx78U5o
妹のほうがベッドで飛び跳ねている。ベッドが壊れるぞ、それやると。ガキの頃同じ事をして壊してしまった俺が言うんだから間違いない。
兄は紹介するつもりはないらしい。その理由は
『それは神原が一般的にはあまりに知られていない性癖を僕は立場上知ってしまっているから故の理由である』
だそうだ。少し気になるな。何だろうか。
諦めろ、と諭す兄の腹に妹は突きを入れた。痛そうだな。頑張れ兄さん。
『話し合い以外にあたしの念を通す方法があるってのか?』
通すのは確定なんだな。
『なら勝負しかねえか…揉めたら勝負だろう、僕達の場合は』
良い奴だなぁこの兄貴。俺なら嫌なものは嫌だからチャンスなんかくれてやらん。
つーかハルヒ、いつまで俺に観させる気だ?
「何言ってんの、ここからがあたしが観させたいところよ」
じゃあここまでの10分弱は必要なかったんじゃないのか…いや、まあ暇だから別にいいがな。
『ちょっと待ってろ、道具を用意する』
と言って兄が勝負に持ってきたものは妹の歯ブラシと歯磨き粉だった。
『まさか…兄ちゃん…その歯ブラシをあたしの尻に突き立てるつもりか!?』
なんだと!?
と、俺も驚いているとすぐさま兄は
『いや、お前の兄ちゃんはそんな恐ろしいことは考えない』
と否定した。まあそうだろうとは思ってたさ。…本当だからな。
壮大なBGMと共に勝負の方法を説明した兄によると、勝負の内容とは
『お前の歯を、僕が磨くのだ』
他人に歯を磨かれることには心理的抵抗が生じる。それに5分間耐えれば妹の勝ち、5分以内に妹が音を上げれば兄の勝ち、ということらしい。
ふむ。これってそんなにキツイことなんだろうか?一見妹が有利に見える。
『僕が先に音を上げたときはお前の勝ちってことでいいよ』
歯を磨く方が音を上げるはずがない、と俺は思うんだが。
5 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:47:25.57 ID:uVWx78U5o
「こっからよ」
ハルヒは俺に言う。少し心の準備をしつつ画面を凝視することにした。
兄は妹をベッドに座らせ、自分もその隣に座った。距離は…近いな。まあ今から歯磨きをしようってんだから当然か。
勝負が始まった。
歯を磨かれた妹は始まってすぐ喘ぎ声に似た何かを漏らした。…なんで?
『今頃気づいたか?しかし手遅れだぜ、火憐ちゃん。何せ体の外側ではなく体の内側を弄るのだ。非常にわかりやすく言ってしまうと、快感が生じるのである』
口にしてはいないが、兄の脳内で考えていることはこんなことらしい。
もしかしてこの兄貴、変態か?いやもうほぼ確実にそうだろうな。
それにしても…これ、なんかエロいな。歯磨きってこんなにエロいことだったのか。
時間が経過するに連れて兄のほうが音を上げそうになっていた。音を上げると言うよりは妹の喘ぎ声のような何かにドキドキして集中が出来なくなっている、と言ったほうが正しいか。確かに、正直俺もちょっとヤバイ。隣にハルヒがいなかったらかなりピンチだったと思う。俺のいろいろな何かが。
『あれ、あれあれ?ひょっとしてだけど、僕の妹って世界一可愛いんじゃね』
と言った後に兄は
『羽川と勝負できる人類なんかいるわけねーだろ!』
と葛藤していた。羽川というのは誰だろう。
「あ、ちなみにこの男彼女いるから。羽川さんじゃない人がね」
何だと。今までただの変態野郎だと思っていたが、とんだ変態の浮気野郎じゃねえか!
少し殺意が湧いたのは内緒だ。彼女は大切にしたほうがいいと思うぞ…。
葛藤の末、なんだかんだでそういう気分に二人はなってしまったらしく、兄は妹をベッドに押し倒した。歯磨きしながら。
『にいひゃん…いいよ』
これはOKということだろう。なぜハルヒはこんなアニメを俺に観させているんだ…。
妹の胸に兄の手が触れるか触れないか…というギリギリのところで新しい人物が登場した。
まぁ、そうだろうな。止めが入るとは思っていたさ。…もちろん本当に思っていたぞ。
ていうか、誰?
「妹2号の月火ちゃん。火憐ちゃんが着てる服の持ち主よ」
あぁ、ちょっと前に名前は出ていたな。それに、この話で一番最初に出てきた名前じゃないか。
6 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:48:40.13 ID:uVWx78U5o
とにかく、妹2号の介入によってこの勝負は中断された。
彼女は
『二人とも、ちょっとそのままの姿勢で待っててくれるかな?すぐにコンビニ行って千枚通しを買ってくるから』
と笑顔で行ってその場を走って去っていった。
怖い。何なんだこの一家。みんなおかしいだろ…。
と、ここでハルヒが動画の再生を中止した。
「どう、分かった?」
「何が」
「歯磨きプレイよ」
「さっきの歯磨きのあれか?」
「そうよ」
分かることは分かったがそれが何だと言うんだ。ハルヒに尋ねると、
「あたしに同じ事をしなさい」
「…は?勝負したいのか?」
「勝負ってわけじゃなくて…うーん…まぁ、そういうことでもいいけどね」
「何が目的だ」
理由もなしに人の歯を磨けるものか。ましてやさっきあんなシーンを観てしまった後で。
「秘密よ」
何らかの企みがあるんだろうが、こいつはどうも言う気はないらしい。
「1回でいいから」
他人の歯を磨くなんてことを何度もしてたまるものか。
気が進まない俺はこう言った。
「長門に磨いてもらえばいいじゃないか」
長門の方を見ると、数mm単位でこちらに視線を向けた…ような気がした。
いきなり振ってすまんな。
「別に歯を綺麗にしてもらいたいんじゃないのよ。キョンがやるから意味があるの!歯自体はさっき自分で磨いてきたし」
纏めるとこいつは俺に歯磨き、という行為をして欲しいようだ。
面倒になった俺はとうとう折れて、
「ちょっとだけだぞ」
と言ってしまった。言ったあとにすぐ後悔したがもう遅い。
「じゃあほら、はい。あたしの歯ブラシ。綺麗にするのが目的じゃないから水に漬けなくていいわよ。あと言い忘れてたけど5分間ね。有希、5分経ったらキョンに言って」
バッグから袋を取り出し、そこから歯ブラシを取り出したハルヒ。
長門は少し頷いたようだ。タイマー扱いかよ…。
こっち来て、とハルヒは俺を部室中央のテーブルに招いた。
7 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:49:49.00 ID:uVWx78U5o
テーブルに俺とハルヒは座る。…なあ、本当にやるのか?
「ほら、早く」
やる気満々だな…もう俺も腹を決めた方が良さそうだ。
「…口を開けろ」
「あーん」
ハルヒは口を開けたところで、俺の右手がちょっと震えてきた。ていうか、歯磨き粉の匂いがする。本当に磨いてきたようだ。
歯ブラシをハルヒの口内に差し入れる。
シャコシャコと音を出しながら歯を磨く。何やってるんだろうな、俺。
ハルヒはと言うと、さっき観たアニメの妹1号程では無いが時々
「あ…っ」だの、
「…んっ」だのといった声を漏らしていた。
いかん、俺の方も変な気持ちになってきた。第一に歯を磨いている以上顔が近い。なんだか良い匂いが歯磨き粉の匂いと混じっているし、
喘ぎ声に似た声も近くで聞いている。頬が赤くなっていることからこいつもちょっとは恥ずかしいようだ。
が、しかし。俺のほうが頬が赤くなっている気がする。顔が熱くて敵わん。
…おっと。ハルヒの体勢が少しふらついたので左手で首を支えた。触れた途端に体がビクッとなったんだがどういうことだろうな。
左手で首を支えつつ、右手で歯ブラシを動かす。
今までそんなに意識したことはなかったように思うが、こいつも可愛いところはあるんだよな…。
高1の始まって間もない頃、こいつとヘンテコ空間に閉じ込められてそこから脱出するためにハルヒとキスをしたことが俺にはある。
あの時は脱出のため、という理由でキスをした。ハルヒのことをどう思っていたかというと黙ってれば可愛いくらいの認識だったはずだ。
今の俺は…こいつの色々な面を見て認識を少し改めたところがある。ハルヒは俺を嫌ってはいないようだし(嫌っているなら追い出すはずだからな)、ひょっとしたら俺とハルヒはそういった彼氏彼女という関係を結ぶことも可能なのかもしれない。
8 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:51:29.34 ID:uVWx78U5o
「なぁハルヒ」
あえて歯ブラシを入れたままこいつに話しかけてみた。
「あ、あによ…」
磨かれながらハルヒは答える。
「俺さ、」
と喋ってる途中で俺の左肩が叩かれた…というか、触られた。
驚いて後ろを見ると長門が立っていたので、触ったのはこいつだろう。正直、いることを忘れていたのは内緒だ。
「ど、どうした長門…?」歯ブラシを出しつつ動揺しながら聞くとその答えは
「時間。5分が経過した。」だった。
そういえば時間制限があるのも忘れていた。俺とハルヒが
「そうか、すまんな長門」
「あ、ありがと有希」
とほぼ同時に答えたところで長門は元々座っていた椅子に戻って行った。
「で…キョン、なに?」
「は?」
「さっき何か言いかけたでしょ」
「あぁ…えっと…ん?何を言おうとしたのか忘れた」
「思い出しなさいよ、気になるじゃない」
うーむ、何を言おうとしてたんだったか俺は。
「思い出したらまた話すさ」
「ならいいけど、早めに思い出しなさいよね」
こういうのは得てして随分時間が経ってから思い出すものだ。しかし何だが恥ずかしいことを口にしそうになっていたような気がするから思い出すのは出来れば避けたい。
「うがいしてくる」
そう行ってハルヒは自分の歯ブラシを俺から奪い取り部室を出て行った。俺はというとようやく気分が落ち着き椅子に座ってくつろいでいた。
朝比奈さんが淹れてくれるお茶が飲みたい所ではあるが、あいにく本人がいないので俺は席を立ち自分でお茶を入れてそれを飲んだ。
ぬるくて不味く、一気に飲んでしまったところでハルヒが帰ってきた。
「今日はもう帰りましょ」
と言い放ち、PCをシャットダウンして鞄を持ったので俺も慌てて湯のみを洗い、鞄を手に持った。
長門も準備が完了した所で3人で部室を後にした。やれやれ、なんだか疲れちまったぜ。
9 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:53:28.00 ID:uVWx78U5o
「ってなことが昨日あったんだが」
と、俺は古泉に話した。場所は部室ではなく学校の自販機前のベンチだ。
「どういう意図があったのやら」
一応こいつに聞いてみておこう。自称ハルヒのことを中学時代から監視している機関の一員だし、見解くらいは聞いておこう。
「おそらくですが」この前置き好きだよなこいつ。
「涼宮さんはあなたとの精神的距離を測りたかったのではないでしょうか」
「どういうことだ」
「心理的抵抗に勝ち、歯磨きを受け入れ続けられるか、それにあなたが歯を磨き続けられるか」
ふむ…。
「涼宮さんらしい実に頭のいい方法だと思いますよ。互いが互いをどう思っているかを一度に調べられるのですから」
「お前の仮説が正しいとすると、俺もハルヒも互いのことを嫌ってはいないということか」
「それ以上だと思いますよ。あなたはまだ気づいていないのかもしれませんけどね。」
…馬鹿馬鹿しい。俺がハルヒを好きで、ハルヒが俺を好いているってことだろ?そんなことはないと思うけどな。特に前者が。
「普通そこは後者を否定するところだと思いますよ」
と、こいつは苦笑しつつ俺に言った。どうやら俺は普通では無いらしいな。
というような会話を終えた所で俺らは部室に足を向けた。
少し気まずさを感じつつ部室のドアを開けると凄いことになっていた。
ハルヒが朝比奈さんの歯を磨いている光景が繰り広げられていたのである。笑いながら磨いているハルヒと半泣きで磨かれている朝比奈さん。朝比奈さんの顔が真っ赤である。
…やれやれ。明日は長門かもな。
10 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/23(金) 23:55:28.82 ID:uVWx78U5o
短いけど終わりです。
初SSなのでクオリティは低いと思いますが、何か感想などありましたらよろしくお願いします。
14 名前: ◆S/8TFCzg22[] 投稿日:2012/03/24(土) 00:18:29.25 ID:4MHRxJDQo
キョンが磨かれる方も書いてみようとは思ったのですが、恥ずかしがり屋なので途中でギブしそうですね。
明日までこのスレあれば続きっぽいのを書いてみようとは思いますが、無くなってても新スレで続ける可能性もあります。
(というかvipではないのでそんなに早くスレなくなったりしない…んでしょうか?)
21 名前: ◆S/8TFCzg22[sage] 投稿日:2012/04/08(日) 20:16:19.50 ID:7Irg7xYMo
なかなか書けそうにないので、一端完結とさせていただきます。
次が完成したらまたスレ建てます。