1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 20:47:19.66 ID:MbkrKxJl0
ある日、マスオは会社の用事で外に出ていた。
マスオ(う〜ん、しまったなぁ)
マスオ(さっきの得意先での案件が思ったより早く片付いたから)
マスオ(次の得意先へ行く時間まで、中途半端に時間が空いちゃったよ……)
マスオ(喫茶店でも探して時間を潰すしかないか……)スタスタ
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 20:54:41.58 ID:MbkrKxJl0
マスオ(お、あそこの看板『カフェ』って書いてあるぞ! よかったぁ〜)タタタッ
マスオ(いや、ちょっとちがうぞ? これは──)
マスオ「ネットカフェ……?」
マスオ「どれどれ……」
マスオ「インターネットの他に、漫画も読めて、軽食やドリンクもあるのか……」
マスオ「入ったことないけど、他に時間を潰せそうな場所はなさそうだしなぁ」
マスオ「よぉし、入ろう!」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:02:12.30 ID:MbkrKxJl0
店員A「いらっしゃいませ〜!」
マスオ(ううむ、やっぱり普通の喫茶店とか様子がちがうなぁ)
店員A「お客様、当店は初めてでいらっしゃいますか?」
マスオ「初めてです」
店員A「当店会員登録が必要となりますが、よろしいですか?」
マスオ「はい」
マスオ(会員登録なんて要るのか……ちょっと面倒だなぁ)
店員A「では、身分証明書のご提示とこちらの用紙に必要事項のご記入をお願いします」
マスオ「分かりました」
マスオ(たまたま免許証を持っててよかったぁ……)
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:12:36.06 ID:MbkrKxJl0
会員登録を終え、個室に案内されるマスオ。
マスオ「えぇと君、コーヒーを飲みたいんだけどどうしたらいいかな」
店員A「当店セルフサービスでして、あちらにドリンクバーがございます」
マスオ「一杯あたりいくらなんだい?」
店員A「そちら部屋の使用料に含まれておりまして、飲み放題となっています」
マスオ「えぇーっ! 飲み放題なのかい!?」
店員A「はい」
マスオ「だいたい分かったよ。どうもありがとう」
店員A「では、ごゆっくりどうぞ」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:17:16.49 ID:MbkrKxJl0
マスオ(リクライニングシート……聞き慣れない名前だけど)スッ
マスオ(うん、これはなかなかくつろげそうだ)ギチッ
マスオ(時間はもう少しあるけど……)
マスオ(ちょうどいい時間潰し場所になりそうだ)
マスオ(じゃあまず、コーヒーを持ってこようかな)
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:23:22.03 ID:MbkrKxJl0
ドリンクバーにやってきたマスオ。
マスオ(へぇ〜)
マスオ(コーヒーだけじゃなく、お茶にジュース、色々あるんだなぁ)
マスオ(じゃあ、とりあえずコーヒーにしようかな)
マスオ(えぇと、どこを押せばいいんだ……?)
マスオ(これか?)ポチッ
ジョロロロ…
マスオ「うわっちぃっ!」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:29:04.67 ID:MbkrKxJl0
店員A「お客様、大丈夫ですか!」
マスオ「あちち……大丈夫です。すいませぇん」
マスオ(やれやれ、こういう機械をあまり使ったことがないからなぁ)
マスオ(今度は慎重に、と……)
コポコポ…
マスオ(よし、ちゃんとカップに入ったぞ)
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:35:01.38 ID:MbkrKxJl0
個室に戻り、コーヒーを飲むマスオ。
マスオ「ずずっ……」
マスオ「う〜ん……」
マスオ(大して美味しくはないな)
マスオ(ま、飲み放題だし贅沢は言ってられない、か……)
マスオ(せっかくだし、なにか漫画でも読もうかな)
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:42:46.83 ID:MbkrKxJl0
本棚を物色するマスオ。
マスオ(う〜ん、知らない漫画ばかりだなぁ)
マスオ(さすがにぼくが子供だった頃にあったような漫画は、ほとんどないなぁ)
マスオ(最近は漫画なんて読んでないしなぁ)
マスオ(どれが面白いのか、さっぱり分からない)
マスオ(家に帰ったら、カツオ君やワカメちゃんに聞いてみるとするか……)
マスオ(漫画はまた今度にしよう)
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:50:09.62 ID:MbkrKxJl0
マスオ(さ〜て気を取り直して……)
マスオ(せっかくの飲み放題だし、いっぱい飲むぞぉ〜!)
ドリンクバーで次々にコーヒーやお茶を飲むマスオ。
店員A「………」
店員A「あの人、すごい勢いでおかわりしてるな」ヒソヒソ
店員B「元取ろうとしてるんじゃないか?」ヒソヒソ
店員A「バイキングじゃないんだから……」ヒソヒソ
店員B「ああいう人ほどお腹壊して、かえって損をするんだよな」ヒソヒソ
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 21:57:14.38 ID:MbkrKxJl0
だんだんとリラックスしてきたマスオ。
マスオ(最初はなんか狭苦しかったけど)
マスオ(慣れてくると、居心地がよくなってきたぞ)
マスオ(喫茶店で一杯コーヒーを飲むと、500円くらいするのを考えると)
マスオ(場合によってはお得になるのかもしれない)
マスオ(ネットカフェ、入ってみて正解だったなぁ……)
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:03:07.27 ID:MbkrKxJl0
しかし、マスオは肝心なことを忘れていた。
マスオ(え〜と、今の時間は、と……)
マスオ「ま、まずいっ!」ガバッ
マスオ「もうこんな時間だったのかぁっ!」
あわてて会計を済ませ、店から出ていくマスオ。
店員A「おおかた時間潰すためにここに入ったら、潰しすぎたってとこだろうな」
店員B「おっちょこちょいな人もいたもんだ」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:10:26.86 ID:MbkrKxJl0
ハッハッハッハッハ……!
磯野家の食卓に笑い声が響く。
波平「そりゃあ、危なかったな。マスオ君」
マスオ「えぇ、もう少しで取引先との約束の時間に遅れるところでしたよ」
カツオ「マスオ兄さん、ネットカフェってそんなによかったの?」
マスオ「ちょっと窮屈だけど居心地は悪くなかったね」
ワカメ「私も行きた〜い」
タラオ「ぼくも行きたいですぅ」
サザエ「あんたたちは普段から漫画や絵本を読んでるでしょうが」
フネ「お茶やジュースも家で飲めるでしょうに」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:15:08.53 ID:MbkrKxJl0
布団に入り、カツオは考える。
カツオ(ネットカフェか……)
カツオ(漫画読み放題でジュース飲み放題なんてまるで天国じゃないか)
カツオ(一度行ってみたいなぁ)
カツオ(でも、そんなお金どこにもないし)
カツオ(明日学校が終わったら、どんなものか外から見てみようかな)
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:22:14.91 ID:MbkrKxJl0
翌日の放課後、カツオは町に出てネットカフェの前に来た。
カツオ「あったぞ!」
カツオ(ぼくらの町にもあったんだなぁ、ネットカフェ)
カツオ(いいなぁ、一度でいいから入ってみたいなぁ)
カツオ(一時間でだいたい500円か)
カツオ(とてもじゃないけどぼくのお小遣いじゃムリだ)
カツオ(マスオ兄さんに頼むってのも手だけど、すぐ姉さんにバレそうだし)
カツオ(なにかいい方法はないものか……)
すると、ネットカフェの中から意外な人物が出てきた。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:27:19.75 ID:MbkrKxJl0
カツオ「甚六さん!?」
甚六「カ、カツオ君!」
カツオ「甚六さん、なんでこんなところにいるの?」
甚六「ちょっとパソコンで調べ物をしていてね、ハハ」
カツオ「本当にぃ?」
甚六「……カツオ君にはかなわないなぁ」
甚六「勉強で図書館に行くっていって、ついネットカフェに来ちゃったんだ」
甚六「ごめん、オヤジたちには内緒にしといてくれ……」
カツオ「分かった、ナイショにしといてあげる」
カツオ「でもその代わり──」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:33:12.20 ID:MbkrKxJl0
子供部屋──
ワカメ「えぇ〜いいなぁ〜」
ワカメ「お兄ちゃんばっかりずる〜い」
カツオ「一時間だけだったけど、まるで夢のような空間だったよ」
カツオ「ま、ワカメもチャンスがあったら一度行ってみるといいよ」
カツオ「普段読まないような漫画もいっぱい読めたしね」
ワカメ「ちぇっ」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:40:13.92 ID:MbkrKxJl0
タラオ「カツオ兄ちゃん、ネットカフェに行ったですか?」
カツオ「うん、面白かったよ」
タラオ「ぼくも行きたいですぅ」
カツオ「う〜ん、タラちゃんにはまだ早いかなぁ」
カツオ「漫画はあるけど絵本はないし、タラちゃんが行ってもつまらないと思うよ」
タラオ「早くないですよ!」
タラオ「ママに頼んでぼくも行くでぇ〜す!」ダッ
カツオ「タ、タラちゃん!?」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:45:28.09 ID:MbkrKxJl0
サザエ「あら、どうしたのタラちゃん?」
フネ「もうすぐ晩ご飯だから、オヤツはダメよ」
タラオ「ちがうですよ」
タラオ「ぼくもネットカフェに行きたいですぅ」
サザエ「タラちゃんにはまだ早いわよ」
フネ「絵本なら、おばあちゃんが読んであげますよ」
タラオ「早くないです。だってカツオ兄ちゃんはネットカフェ行ったですよ」
サザエ&フネ「え……?」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:51:18.02 ID:MbkrKxJl0
カツオ(今のうちに逃げよう……)コソコソ
サザエ「カツオ!」
カツオ(しまった……!)
カツオ「な、なんだい姉さん……?」
サザエ「今タラちゃんから聞いたわよ」
サザエ「あんた、ネットカフェに行ったってどういうことなの?」
カツオ「うぅ……」
カツオ「じ、実は──」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 22:58:16.68 ID:MbkrKxJl0
波平「バッカモン!!!」ドンッ!
波平「ネットカフェにいたことをナイショにする代わりに」
波平「甚六君からお金をもらってカフェに入るとは、なんという浅ましいヤツだ!」
波平「あとで伊佐坂先生の家に行って、甚六君にお金を返してこい!」
カツオ「は、はいぃ……」ショボーン
サザエ「まったく呆れたものだわ!」
フネ「タラちゃんが教えてくれてよかったよ」
マスオ(ぼくの話を聞いて、行きたくなっちゃったんだろうなぁ)
マスオ(カツオ君には、悪いことしちゃったなぁ)
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 23:03:39.51 ID:MbkrKxJl0
翌日──
波平(今日は仕事が早く終わったな)
波平(駅前でちょっと一杯やっていくか……)キョロキョロ
波平「ん?」
ネットカフェを発見した波平。
波平「あれが噂のネットカフェか」
波平「一度体験しておくのも悪くはなかろう」スタスタ
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/03/19(月) 23:08:19.80 ID:MbkrKxJl0
ジョロロロ…
波平「?」
波平「変な水道だな。いくら押してもコーヒーばかり出てきよるぞ」
波平「ワシは手を洗いたいんだが」
店員「お、お客様、それは水道ではなくドリンクバーでございます!」
波平(う〜む、よく分からん)
波平(やっぱりワシはネットカフェより屋台の方が性に合っとるようだ)
<おわり>