1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 19:35:46.09 ID:5pN18gPZ0
12月、例年より幾分寒い冬で身が凍るかのような風が吹く坂道
俺は学校に用があり、といってもSOS団の集まりではなく単に学校に忘れ物をし面倒だと思いながらも坂道を憂鬱に上っていた
生徒の姿は無く、学校がある日のような活気やらはどこへやら一人コートのポケットに手を突っ込みトボトボと歩いていた
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 19:38:44.36 ID:5pN18gPZ0
今日はSOS団の部活はない
久々の休日だと思っていた矢先、宿題を忘れるというへまをしてしまった
「・・・最悪だ」こんな天気予報のお姉さんも身を縮ませる気温の中外に出るなんて憂鬱以外のなにものでもない
まあ宿題くらいいいか、といっそ諦めてしまうのも一手だがいかんせん成績がこれ以上下がってしまうと母親からどんなことを言われるかわからない
今の俺にはそれが一番堪えた
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/27(月) 19:42:28.20 ID:5pN18gPZ0
そして今に至るのだが、やっぱりやめておけばよかったかなと今更ながら後悔している
身を震わせながら坂を上り、道を進んでいくと校門の前に見知った人影があった
「・・・長門?」今日は部活は無かったはず、長門も忘れ物か?
なんて馬鹿な思考をした自分に呆れながら歩を早める
校門を少しくぐった所で長門に追いつき声をかける
「長門、どうした忘れ物か?」長門はこちらを振り向くと淡々な口調で「違う」と言った
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 19:46:04.64 ID:5pN18gPZ0
「でも、今日は部活休みだろ?なにか他に用があるのか?」
「用は特にない」そうか、じゃあなんでこんな寒い中わざわざ学校まで来る必要があるのだろうか
「部室に行くのか?」「そう」
部室で何をするのだろうか
いや、多分読書だろうな。それ以外を部室で自主的にする長門の想像はつかなかった
そして俺はどうしてかこの時、部室で一人本を読む長門を放って一人で帰路に着くことを考えられなかった
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 19:51:01.00 ID:5pN18gPZ0
「じゃあ俺も忘れ物を取ったら部室に顔だすよ」長門と二人、休日を過ごすのも悪くはない
「そう」相変わらず淡々な返事を貰い俺たちは別れた
忘れ物の宿題は机のなかで教科書とノートの間に苦しそうな体制で挟まれていた
「そうだ、長門に宿題手伝ってもらおう」
我ながらいいアイディアだ長門の宇宙的な存在の前では宿題なんて取るに足らないだろう
意気揚々に教室を抜け出し部室棟へ向かう、たとえ建物の中でも外の世界の気温は遮断できないわけで、部室の前に着くころには体が暖を求めていた
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 19:56:28.61 ID:5pN18gPZ0
ガチャリと冷たいドアを開けると長門が点けてくれたのだろう、ストーブの暖かさがドアの外の冷気を押しのけるのが分かった
急いでドアを閉めると長門がこちらを見たかと思うとすぐに手元の本に目線を落とした
俺もいつもの所定の席に着く
いつもならマイエンジェル心のオアシス朝比奈先輩がお茶を出してくれるのだがそれはまたの機会にとっておくとしよう
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 20:04:44.34 ID:5pN18gPZ0
自分でお茶の葉を急須にいれ沸かしたお湯を注ぐとお茶特有の香りが立ち上る
それを長門と俺の分茶碗に注ぎ長門へ渡す
「ありがとう」「おう」長門はお茶を受け取ると一口、それを見て俺もお茶を一口飲む
凍えきった体に熱々のお茶が染みていくのが分かる
一息ついたところで長門に疑問をぶつける
「部活の無い日でも部室に来るのか?」「いつもではない」
「そうか」いつもこんなところで一人本を読む長門を想像するのは容易かった
なんせ彼女は、俺たちがここを部室にする前から、いや、彼女が観察の目的でこの世に生まれてからずっと一人で本を読んでいたのだろうから
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/02/27(月) 20:10:54.92 ID:5pN18gPZ0
そう思うととても、彼女を放ってはおけない
あの世界が変った日からずっと、そう思っては具体的な行動を起こせない自分がいた
しばらく長門を観察していた
本を真剣に読む長門はそうだな、文学少女のあるべき姿そのままで、本を読む姿勢も完璧、スリムで顔立ちも良く・・・
あ、目がすごい綺麗だ。髪も長門の整った顔立ちを目立たせる綺麗な色で柔らかそうで良い匂いがするんだろうな、ショートカットがすごい似合うけどロングの長門も見てみたいな
結婚したら髪を伸ばしてもらって将来的にはポニーテールができるくらいの長さまで、いや逆に今くらいの長さで髪を束ねてもらってポニテを作ってもなかなか・・・だがやはりあんなに綺麗な髪なら・・・いやしかし・・・。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 20:17:11.84 ID:5pN18gPZ0
しまった、妄想に浸ってしまい寝てしまったようだ
起きようとすると肩からタオルケットがずり落ちた、長門が掛けてくれたのかな
時計を見ると短い方の針が1つ進んでしまっていた
長門は・・・1時間前のまま変らずそこにいて本を読んでいた
「長門、タオル掛けてくれてありがとな」長門は顔を上げ「いい」と、目と目が合うとやはり思ってしまう、彼女になにか出来ないかと
そうだ、あるじゃないか長門が喜びそうな場所が、こんな人の居ない寂しい場所で本を読むことなんてないんだ
「長門、この後用事はあるか?」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 20:23:09.42 ID:5pN18gPZ0
「ない」「じゃあ、図書館行こうぜ。ここより暖かいし、近くには食事できる所もある。
「なんか奢ってやるよ」「・・・行く」多分この時俺は、学校へ向かっていた時の憂鬱な気分はどこへやら、陽気な気分で長門に微笑んでいたと思う。
ストーブを消し、火の元を確認して部室のドアに長門が鍵を掛ける。
相変わらずの凍るような寒さだが今はそんなことは気にならなかった。部室棟を抜け、下駄箱で靴を履き替える
外に出ると、「雪だ・・・」空から白い雪の結晶が街へ降り注ぐように落ちていた。
視界の前を細やかな結晶が覆い隠し遠くの風景は良く見えないくらいの降り様だ。
雪に夢中になっているといつの間にか長門が隣にいて肩がぶつかるくらいの距離まで近かった。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 20:26:53.94 ID:5pN18gPZ0
「長門?」「・・・」返事はなく、長門もこの雪に魅入っていた
そういえば、俺が朝倉に刺されて入院した病院でもこうやって二人、屋上で寄り添って街に降る雪を見たよなそれ以来の雪景色だ
「長門、あの日も雪を見たよな。こうやって二人、病院の屋上でさ」「・・・覚えている」
「・・・綺麗だな、雪」「・・・そう」しばらくの間二人で雪景色を眺めていた
それはとても穏やかな時間で、心地よかった
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 20:30:56.58 ID:5pN18gPZ0
「そろそろ行くか、長門」「・・・」コク
長門が頷き一緒に歩き出す、帰るときも二人で寄り添って、肩がぶつかりそうだけど気にせず
手なんて繋いでしまいたかったがまたの機会にしよう
時間はたっぷりある、図書館だって何回も行けるし雪はまた来年も降る
降らなかったら待とうとしよう
雪と同じ名を持つこの少女と―
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 20:33:00.35 ID:5pN18gPZ0
キョン「ということで、俺たち付き合うことになった」
長門「なった」
古泉「いや、突然だなおい」
キョン「長門今日はこのあとどうする?」
長門「また、図書館へ」
キョン「了解。また一緒に本読もうな」ナデナデ
長門「・・・」コクリ
古泉「どどど、どうしよう涼宮さんになんて言ったら・・・」
朝比奈「おしまい♪」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/02/27(月) 20:36:16.24 ID:5pN18gPZ0
ご視聴ありがとうございました
ハルヒSS最近少ないんで誰か書いてください