1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:19:26.54 ID:NXJwOQfeP
ハルヒ「死んだふりをするのは間違い。本当は面と向かって立ち向かった方が効果的なのよ」
熊の着ぐるみを纏ったハルヒはそう言い放った。
無論、下半身は裸である。
ハルヒ「あと鈴ね。ちゃりちゃり鳴らして歩いてればそもそも出会わないって話」
YAMAHA YBR-318モデルの鈴を両手に装着し、腕を痙攣させるようにして奏で始める。
しゃんしゃんしゃん
しゃんしゃんしゃん
ハルヒ「ところでピザまだ?」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:21:45.85 ID:NXJwOQfeP
キョン「もうすぐ来ると思うんだが」
ハルヒ「もうお腹ぺこぺこよ。さっさとしてほしいわ」
古泉「おや、お揃いで」ヌルッ
キョン「揃ってないぞ」
ハルヒ「古泉くん、あっちの様子はどう?」
今現在、文芸部部室には三人の人間が存在している。
つまり、涼宮ハルヒ、古泉一樹、俺の三人だ。
長門と朝比奈さんは買い出しに行ってしまった。もう戻る事も無いだろう。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:28:10.71 ID:NXJwOQfeP
古泉「依然として状況は芳しくありません」
キョン「お前、それ」
古泉「?」
キョン「かっこいいな」
古泉「この毛皮ですか?これなら服のサカゼンで叩き売りされてましたよ」
キョン「違う違う。お前のその言い方」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:34:00.66 ID:NXJwOQfeP
古泉「言い方?」
キョン「依然として……芳しくありません……」キリッ
ハルヒ「あっははは」
古泉「言ってみたかったんですよ」
キョン「ふふっ、んふふふふ」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:38:07.32 ID:NXJwOQfeP
ハルヒ「……」カチャカチャ
キョン「何やってんだ」
ハルヒ「見れば分かるでしょ」カチャカチャ
キョン「全く分からんな……」
古泉「あれですか?あの、結構前に流行った」
ハルヒ「……」カチャカチャ
机の上にけばけばしい色の大小様々なブロックが並べられている。
レゴブロックのようだが、よく見ると細部が違う。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:43:58.56 ID:NXJwOQfeP
ハルヒ「……」カチャカチャ
キョン「おお」
ハルヒ「できた!」
古泉「おお〜」パチパチパチパチ
ハルヒ「ちょっと待って、撮るから」
キョン「今にも崩れそうだぞ」
ハルヒ「大丈夫。大丈夫だから」
古泉「大丈夫ですね」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:50:35.66 ID:NXJwOQfeP
そうこうしてるうちにピザが来た。
トッピングはトマトとチーズのオードソックス。臭いが室内に充満する。
谷口「2800円です」
ハルヒ「キョン払ってくれない?」
キョン「なんで俺が」
古泉「いやいや、ここは私が払いましょう」
ハルヒ「ダメ。キョンが払うことに意味があるのよ。キョンが払わなければならないのよ」
キョン「仕方ねえなぁ」
財布の中には五千円札が一枚と、五十円硬貨が四枚ほど存在していた。
俺は何を考えているのか全く表情の読めない樋口一葉をバイトに差し出し、ピザの箱を受け取った。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 19:58:19.80 ID:NXJwOQfeP
谷口「有難う御座いました」
ハルヒ「おいしそうね」
俺の金がピザへと変換されたということは、こいつらは俺の金を摂取しているのと同じだろうか。
それにしても全裸に毛皮一枚の古泉は寒そうだ。さぞピザが美味く感じることだろう。
ハルヒ「ハフッ ハフッ」
古泉「ほほっ、ほいひいへふね」
ハルヒ「あっつ!!!」
口からこぼれたピザの欠片、つまり、蒸気を発しながら回転落下するパン生地の熱塊が、
剥き出しの下半身に付着したのだ。流石のハルヒも悲鳴を上げる。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 20:06:36.97 ID:NXJwOQfeP
ハルヒ「あつい、とって。これ」
キョン「へいへい」
ハルヒ「ティシューどこ?」
やれやれまったく。食べ物を口からこぼすなんて餓鬼じゃねえんだから。
て言うかなんでこいつ下半身裸なんだ?
キョン「……」
ハルヒ「どうかしたの?」
キョン「……」
古泉「ふもっ、も、もいしいれすっ。はふっ」
キョン「……」
ハルヒ「キョン?」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 20:16:18.21 ID:NXJwOQfeP
一方その頃
東京都千代田区では
長門「高砂屋っ!!」
みくる「三代目っ!!」
パチパチパチパチパチパチ…
長門「たこっ、高屋!!」
みくる「音羽屋!!」
長門「九代目っ!!」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 20:28:48.69 ID:NXJwOQfeP
キョン「あ、わりぃちょっと意識飛んでた」
ハルヒ「しっかりしなさいよ」
古泉「むほっ、むふっ、ふっ、ふまぁいへす」
キョン「ちょっと横になるわ。あんまり寝てないんでな」
ハルヒ「おやすみ」
薄れていく意識の中で、俺は長門のことを考えた。
長門の白い肌の上をソーセージのようなミールワームが這っていく光景が、何度もフラッシュバックされた。
長門「起きて」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 20:38:12.65 ID:NXJwOQfeP
キョン「……ん?」
長門「起きて」
キョン「長門……?帰ってきたのか」
長門「今私はあなたの意識に直接交信を試みている。肉体はここに無い」
キョン「ああ……夢の中か」
長門「そう」
夢の中の長門は随分と不細工に見えた。
肌は汚いし、頬はむくんでいてまるで×××のようだ。
ウエディングドレスが雑巾のように小汚い。ブーケの花は全てペンペン草だ。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 20:47:14.22 ID:NXJwOQfeP
キョン「ところで何の用だ?」
長門「あなたたちが今置かれている空間について」
キョン「ああ、そんな話か」
長門「鍵が必要」
キョン「ドアが閉まってるもんな」
長門「それと、パスワードが必要」
キョン「ああ……」
長門「……」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 20:50:36.38 ID:NXJwOQfeP
キョン「それだけか?」
長門「それだけ」
キョン「長門。そっちはどうだ?戻れそうか?」
長門「おそらく、不可能」
キョン「なんで?」
長門「歌舞伎の舞台は始まってしまうと外に出られない」
キョン「無理やりにでも出ればいいじゃないか。トイレだか法事とか何か言って」
長門「不可能」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 20:58:21.03 ID:NXJwOQfeP
キョン「何でも出来るんだろ?やることやったならさっさとしろよ馬鹿」
不細工な長門は見てるだけでも腹が立つ。
顔を握り潰したい衝動がふつふつと胸の内に湧いてくる。
長門「そう……」
蚊の鳴くような声でそう言った長門は次第に膨張を始めた。
口から紙吹雪が漏れ始めている。飛び出した目玉は豆腐のように濁っている。
キョン「おい、待て」
長門「……」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 21:05:44.72 ID:NXJwOQfeP
目を覚ますと、部室の中が腐ったチーズの臭いでいっぱいで、
最早視界の1メートル先が見えない。ゴールデンレトリバーの色をした霧が充満している。
キョン「……」
キョン「……おーい、誰か」
キョン「……」
古泉「ここです、ここ」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 21:15:24.50 ID:NXJwOQfeP
しばらくして抽象的な古泉の声が遠くから響いてきた。
古泉「面倒なことになりましたね」
キョン「説明してもらおうか」
古泉「きっと奴らです。そうに違いない」
キョン「奴らか」
古泉「奴らです」
それにしても古泉が言う『奴ら』とは一体どこのどいつらのことなんだろうか。
金色の毛皮をたすき掛けに身に付けている古泉の頭はどう考えても欠陥品だった。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 21:22:27.40 ID:NXJwOQfeP
ギュルリッ ギュルリッ
キョン「なんだ」
古泉「なんでしょうね」
後ろの方から不快な金属音が断続的に流れている。
稼働するハンドドリルを頭に押し付けられている感覚。
古泉「行きます?」
キョン「いや、いいだろう」
古泉「……」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 21:28:36.22 ID:NXJwOQfeP
キョン「どうせ面倒だろ」
古泉「そう、ですね」
キョン「なんで残念そうなんだよ」
古泉「……」
黙って真桑瓜の漬物を食べる古泉。ボリボリうるさい。
ところでハルヒは?トイレか何か別の場所へ移動したのだろうか。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 21:59:36.64 ID:NXJwOQfeP
キョン「……」
古泉「そう。そうでしたよ」
キョン「……」
古泉「先程から涼宮さんの姿を見ないのです。一体これはどうしたことでしょう?」
キョン「ああ……」
古泉「飲まれたようですね」
キョン「多分な」
古泉「これいくらでした?」
キョン「さんきゅっぱ」
古泉「ほぉ」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 22:09:18.73 ID:NXJwOQfeP
みくる「ごめんください〜」ガチャッ
キョン「おかえりなさい」
みくる「すみません。遅くなっちゃって」
古泉「大丈夫でしたか?」
みくる「大丈夫でした」
不快な臭いは開けられた扉の向こうへと吸い込まれて消えた。
朝比奈さんが帰ってきたのだ。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 22:15:11.25 ID:NXJwOQfeP
キョン「どうでした?」
みくる「もう大変でしたよ。服汚れちゃうし」
古泉「その服どこで買いました?サカゼンですか?」
みくる「いえ。高島屋で」
古泉「なぜですか?」
みくる「はい。帰りに寄ったんです……あれ、長門さんは」
キョン「長門はいませんよ?」
古泉「ノミが酷いです!この服!この服!」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/08/21(日) 22:27:56.49 ID:NXJwOQfeP
朝比奈さんのベージュ色のマフラーから目視できるほどのノミたちが威勢良く跳ねて俺の顔面に飛びつく。
血を吸われている音が耳に届いている。じゅるじゅるうるせえ虫共だ。
古泉「バルサンを焚きましょうか」
みくる「水は?」
古泉「水筒があります」
キョン「朝比奈さん、ムヒ持ってます?」
みくる「手伝いましょうか?」
古泉「いえいえ、結構です」
みくる「なんかすみません」
古泉「貴女が気を遣う必要はありませんよ」
キョン「……」