のび太「羽生蛇村?」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:09:14.57 ID:JICdZaHU0

立てるのミスってた
最初は誤字修正版なんで見てくれてた人は適当に見逃しちゃって構わないです
SIREN1のSS、ネタばれあるんでいやな人は見ないの推奨

セミの鳴き声もいよいよ高まり、うだるような暑さがアスファルトを焼く夏休み中盤。

のび太達は、スネオの家でアクション映画鑑賞をしていた。

ジャイアン「うっおー、すっげー!!」

のび太「カッコいい〜!」

しずか「そお?ちょっと野蛮すぎないかしら?」

スネオ「そんなことないよ!ほら、見てよこのワイヤーアクション!カッコいいなぁ」

のび太「この撮影場所ってどこなんだろう?随分沢山の場所を移動しているけれど」

スネオ「それがさ〜、どうやら羽生蛇村っていう所で撮影されているらしいんだけど、
パパに頼んでも撮影場所へ連れて行ってくれないんだよ」

しずか「あら、それはどうして?」

スネオ「この羽生蛇村ってところは三方が山に囲まれてるから、今の時期は
雷とかが雨による土砂崩れが危なくてあんまり近寄りたくないって言うんだよ。
この映画も冬に取られたものらしいし、夏場は滅多な事が無いと近寄らないらしいよ」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:09:32.14 ID:JICdZaHU0

のび太「へぇ〜、なんか、怖そうなところなんだね」

ジャイアン「でもよ、噂によると、羽生蛇村にはすっげーお宝があるらしいぜ!」

しずか「お宝?」

ジャイアン「なんでも、焔薙?とかいう世界でも類を見ないほどの名刀があるんだってよ!!」

のび太「名刀かぁ〜、ちょっとおっかないけど、見てみたいや」

スネオ「へぇ、そんな噂もあるんだ。ちょっと羽生蛇村に行ってみたくなってきた」

しずか「そう?わたしはなんだか怖いからあまり行きたくないわ・・・それに、噂では
土着信仰を今でもやってるっていうじゃない」

のび太「土着信仰?」

スネオ「その土地だけに伝わる信仰さ。古い土地の集落では残っているっていうね。
羽生陀村も結構古くからあるから、それもあるかもね」

ジャイアン「うおーっ、なんだか面白そうなところじゃねえか!行って探検したいぜ!」

スネオ「うん、まあ確かに色々謎の多い場所だし、もしかしたらジャイアンの言う名刀や、
それ以外にも大発見があるかもしれないね。でも、いけないんじゃどうしようもないよ。
パパに頼んでもダメなんだから、他の人でもどうせダメさ」

のび太「それなら、ドラえもんに頼んでみようよ!」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:09:44.95 ID:JICdZaHU0

しずか「ドラちゃんに?」

のび太「ドラえもんのどこでもドアで羽生蛇村にすぐに行けるし、危なくなっても秘密道具で
何とかしてもらえるんだからさ!」

ジャイアン「そう言えばそうだな!さっそく頼んでみようぜ!」

しずか「ちょっと怖いけど、ドラちゃんがいるなら大丈夫よね・・・」

スネオ「じゃあ準備してからのび太の家に集合だね!」

一同「おーっ!!」

この時のび太達はまだ知らなかった。

この軽い気持ちでした行動のせいで、どれだけの恐怖を体験する事になるかを。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:10:10.19 ID:JICdZaHU0


――――――――――数時間後

ドラえもん「それじゃあみんな準備は良い?」

一同「うん!」

ドラえもん「・・・・今回はなんかちょっと嫌な予感がするんだ。皆、ぼくから離れないでね」

しずか「ちょっと、怖いこと言わないでよ・・・」

ドラえもん「ごめん、でもなんか胸騒ぎがするんだよ」

のび太「最近どら焼き食べてないからじゃない?」

ジャイアン「はは、ありうるな!」

スネオ「この冒険が終わったら、ママに頼んでたらふく食べさせてあげるよ!」

ドラえもん「!!たらふく!どら焼き!!ぬふふ!」

のび太「もうっ、涎は良いから早く行こうよ!」

ドラえもん「ごめんごめん、それじゃあ出発ー!・・・・・の前に、心配だから皆に一つずつ
秘密道具を渡しておくよ。出来れば使う事にならないと良いけど」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:10:36.07 ID:JICdZaHU0

のび太「もうっ、ドラえもんったら心配性なんだから!」

ドラえもん「そうかもしれないけど、備えあればうれいなしって言うでしょ?」

しずか「そうね、あるのとないのじゃ全然違うわ」

ドラえもん「それじゃあ、のび太君にはこれ、ジャイアンにはこれ・・・」

一通り配り終わった後、ドラえもんはこほんと咳払いをしてもう一度ドアに向き直った。

ドラえもん「それじゃあ、改めて出発ーー!」

一同は瞬時に羽生蛇村へと移動した。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:11:17.95 ID:JICdZaHU0

のび太達の荷物は
のび太=秘密道具、ショックガン
スネオ=秘密道具、ペンライト、財布
ジャイアン=秘密道具、バット、ボール
しずか=秘密道具、ペンライト
ドラえもん=ポケットその他

【野比のび太 前日/14:00:21 蛭ノ塚 県道333号線】

のび太「ここが羽生蛇村かぁ〜」

しずか「なんか・・・イメージと違う」

スネオ「うん、空気が美味しいし、緑も凄い綺麗だね」

ドラえもん(やっぱりさっきの胸騒ぎは杞憂だったんだね。よかったよかった)

ジャイアン「んー、こんなにも綺麗な場所だと、歌いたくなるな!!」

のび太「え゛!?」

ジャイアン「なんだよぉー、歌っちゃ悪いってのかよ!」

スネオ「そうじゃないけど・・・ああ、もうお好きにどうぞ・・・」

ジャイアン「すぅ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・お゛れ゛は゛ジャイア〜〜〜ン゛!!!」

ジャイアン以外の一同「うわああああああああ!!」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:11:28.77 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「がきだいしょおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・

ジャイアン「ん、なんだぁ!?」

のび太「ね、ねえドラえもん!?なななんかか地面揺れてててないかな!?」

ドラえもん「マズイ!今の振動で土砂崩れが起きたのかもしれない!」

スネオ「ええええー!?どうにかならないの!?」

ドラえもん「そんな事言ったって・・・とりあえずみんなタケコプターを付けて!」

言うが早いか、ドラえもんは皆に素早くタケコプターを配り、頭につけさせた。

しずか「崩れてきたわ!早く飛んで!」プルルルルルーーーー

のび太「わっわっわわぁーーーー!!」プルルルルーーーー

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:11:41.57 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「おわっ!上空も風がヤバいっ!!」プルルルルルーーーーーー

ドラえもん「土砂崩れの影響だ!皆、飛ばされないように気をつけて!」プルルルルルーーーー

スネオ「そんな事言ったって・・・・・・う、うわああああああああ」プルルルr・・・・

ビュオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

尋常ではない風が、間一髪上空に逃れたのび太達を容赦なく襲う。

その風の強さに押し負けて、スネオが森の方向へ飛ばされてしまう。

のび太「ス、スネオ!う、うわあああああ!!」ビュン!!

ドラえもん「ダメだ、この風、普通じゃないぞ!!」

しずか「た、助けt・・・・・いやあああああああああ」ビュン!!

ジャイアン「こんのぉーー!・・・・飛ばされてたまrかーーーーーーちゃーーーーーん!!」ビュン!!

ドラえもん「み、みんなバラバラに・・・・・うわああああああ」ビュン!!

最後まで残ったドラえもんも、無情にも吹き飛ばされてしまう。

五感ごと吹き飛ばされていく中で、ドラえもんはハッキリと何かが笑う声を聞いた。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:11:52.72 ID:JICdZaHU0

【八尾 比沙子 前日16:18:12】
「邪魔が入った気がするわ」

「くれぐれも儀式の邪魔はさせないようにね」

「失敗は許されないのよ」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:12:10.24 ID:JICdZaHU0

【野比のび太 初日/4:09:54 刈割 切通】

のび太「う・・・・う〜〜ん、ここは?」

気がつくと、のび太は川の近くで横たわっていた。

のび太「崩れた山は・・・見当たらない、か」

辺りを見回しても土砂崩れが起きた山は見当たらなかった。

どうやら随分と遠くまで飛ばされたらしい。

のび太「と、ともかく誰かと合流しないと!ひひ、一人でいるのは怖いし・・・」

出来るだけ物音をたてないようにひっそりと歩き出す。

気がついてから、なんだか妙に空気が重たい。

それに、来た時よりもずっと霧が深く、言い知れぬ暗さが漂っているように思う。

のび太(何も出ませんように・・・)

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:12:26.39 ID:JICdZaHU0

無意識にポケットの中に突っ込んでいたショックガンと、ドラえもんから貰った名刀“電光丸”を握りしめる。

もしかしたらこれらを使う事になるかもしれない。

黒い不安に包まれる中、漠然とそう考えていると

ガサガサッ

川の上の土手で草が動いた。

風も吹いていないのに。

のび太「だ、誰!?」

上ずった声でたずねてから、しまったと思った。

何故なら、声を発することで、当然ながら相手に気づかれてしまうのだから。

ガサガサッ・・・・ガサッ

人影が、草むらから出てくる。

目を爛々と光らせながら、絶えず紅い涙を流し続ける人が。

屍人「み゛ぃづげだぁ♪」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:12:38.41 ID:JICdZaHU0

瞬間、時が止まる。

血の涙。青白い顔。手に収まる鋭い鎌。

のび太「う、うわああああああああああああ!?」

護身用に持っていたショックガンを出すこともなく、のび太は叫び声をあげながら逃げだした。

のび太(な、なな、な、なんだあれ・・!!
目から、チが、血が、血が!!!)

何度も転びながらも必死に川沿いの道を走る。

見てしまった、ショッキングな映像を振り払うかのように。

しかし、現実は非情だった。

のび太「う、ううう、うああああ・・・!?」

突然の頭痛が襲ってきて、立っていることすらままならなくなる。

脳味噌を直接揺さぶられるかのような、酷い痛み。

のび太「う、うう、うん・・・・?」

痛みの中で、のび太はふと自分の視界がぼやけて、何処か違う場所をみている事に気づく。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:12:55.30 ID:JICdZaHU0

それは、どこか・・・・そう、どこか、違う視界。

自分。そう、自分を正面から見る事の出来る視界。

正面から?そんなことあり得ない。だって、ぼくの視界にぼくがうつるわけがないじゃないか。

じゃあ・・・この視界は、誰の視界?

思い至るより先に、答が見つかる。

自分の視界を取り戻したのび太の前に、先程みたのとは違う、しかし同じ様に眼から血を流して笑っている人間がいたのだ。

屍人「いヒッ♪」

のび太「ど、ドラえもーーーーーん!!!!」

先程と同じように叫びながら逃げようとする。

が、頭痛と持ち前の運動神経の悪さによって転んでしまう。

のび太「あ、あわ、あわわわわわわわ・・・・・・」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:13:07.39 ID:JICdZaHU0

殺されてしまう。

直感的にのび太はそう感じた。

そうである事が当然かのように、その仮定は事実としてすんなりと心に入って来た。

なんとか。なんとかしなければ。

真っ白になった頭を懸命に動かして思考する。

生きるための術を。

のび太「こ、これでも食らえ!!」

ポケットから咄嗟に取り出したショックガンを屍人相手に2発撃ちこむ。

ドヒュンドヒュン!

軽快な音を立てて発射された銃弾は過たず屍人の眉間へ当たり、バチバチという電気特有の音を発して屍人の意識を奪っていった。

ドサッ

意識を奪われた屍人は糸の切れた人形のようにその場に倒れ込む。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:13:19.86 ID:JICdZaHU0

屍人といえど、元は人間。

意識を失えば人と同じように倒れるのだ。

のび太「い、今の内に・・・・」

よろよろともたつきながら立ち上がり、その場から走り去る。

さっき屍人が追いかけてきた方向とは逆方向に。

ズボンの一部を、川の水とは違うものでぬらしながら。

のび太(ドラえもんに・・・・・・ドラえもんにあわなくちゃ!)

それだけを、一心に考えながら。

地獄の姿を見せ始めた、この世界から逃げ出すために。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:15:35.85 ID:JICdZaHU0

【剛田 武 初日/10:00:00 蛭ノ塚 大字波羅宿方面】

ジャイアン「はっ!」

気がつくと、森の茂みの中で横たわっていた。

体の節々が軽く痛む所と空の具合を見ると、飛ばされてから暫く気絶していたのだろうという事が分かった。

ジャイアン「全く、いってえなあーちくしょう!
でも、遠くに飛ばされなかったのと、背負ったバットを飛ばされなかったのは幸運か」

元気に素振りを2,3本してみる。

体に酷い痛みは無く、バットは思ったとおりの軽快な音を立てて振れた。

平地ではなく、木々が生い茂る所に落ちたのが痛みが少ない理由かもしれない。

ジャイアン「のび太達は皆結構遠くに飛ばされてたみたいだったな・・・
怪我してるかもしれねえし、とっとと探しに行ってやらないと」

起きてからすぐに他人の心配をし、行動を開始できる。

無意識からなるその行動は、他人から見れば十分に称賛されるものであったろう。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:15:56.76 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「先ずはスネオが飛んでいった方向を探しに行ってみるか。
一番、近そうな場所に飛んでいったみたいだったしな」

スネオが飛んでいった方向を大雑把に思い出しながら歩いて行く。

ジャイアン「ドラえもんに貰った道具が、探査系のなら良かったんだけどな。
当てもなく彷徨うなんて銀河鉄道以来だ」

ガサガサと、大きく音を立てて歩きまわる。

その音は、遠く離れた屍人にも伝わった。

ジャイアン「向こうの方にやぐらが見えるな・・・・それに集落も。
もしかしたら人がいるのか?」

櫓には確かに人がいた。

人ではあるが、人ならざる者が。

屍人「うっひひひひひ!」

パァン!!

ジャイアン「おおおっ!?」

破裂音と共に、ジャイアンの足下の土が吹き飛んだ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:17:33.28 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「な、なんだなんだぁ!?」

動揺しながらも、生物的本能にしたがって近くの物陰に隠れる。

ジャイアン「あ、あれはアクション映画で出てきた拳銃の弾が着弾した時の動きと同じだ・・・」

手足から血の気が引き、足が震える。

幾ら豪胆なガキ大将といえど、命を狙われていると理解してしまっては、体の震えを抑える事など出来なかった。

ジャイアン「か、かあちゃん・・・・」

弱弱しく呟いて、ポケットの中の秘密道具を握りしめる。

そして、気づく。

握りしめた道具が、今の状況に相応しい道具であると。

ジャイアン「こ、これを使えば何とかなるかもしれない!」

そっと、握りしめた秘密道具を頭にかぶり、先程狙撃された場所へ恐る恐る出てみる。

狙撃音は―――――――――

―――――――――――響かなかった。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:18:28.16 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「やった・・・やっぱり効果があった!」

被った秘密道具は石ころ帽子。

あらゆる気配を消し、気にされなくなる道具。

ジャイアン「あんのやろう・・・俺様を狙いやがって!!
ギタギタにしてやるからなぁ!!」

命の危険が去り、冷たい気持ちが去った後の心に残るのは、激しい憤怒。

ガキ大将のプライドが、持ち前の気の強さが、火を吹いた。

ジャイアン「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」ダダダダダダッ

道の真ん中を、咆哮しながら駆け抜けていく。

狙撃元であろう、櫓へ向けて。

ジャイアン「いたっ、アイツだな!」

程無くして櫓の上に人影を見つけた。

そこまで近づいても狙撃される素振りも起きないのは、流石石ころ帽子と言うべきか。

ジャイアン「アイツ・・・・目から血を流してやがる!
ば、化けものかぁ!?」

一瞬、その異形の姿に驚くも。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:19:48.61 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「人じゃねえって事は、思い切りぶっ叩いても良いってことだよな」

残酷な笑みを、支配者たる暴君の笑みを浮かべて、櫓を登っていく。

ジャイアン「覚悟はできてんだろうなぁ〜〜〜?」

屍人の後ろに立ち、ゆっくりと呟く。

ジャイアン「ぬおぅりゃぁあああ!!」

ブンッッ!!

素振りした時と同じような軽快な音が鳴り。

ゴシャッ!!

強か殴りつけられた屍人の体がひしゃげる音がして。

ドサッ・・・・・

最後に屍人が倒れる音がして。

再び辺りは静寂に包まれた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:20:18.34 ID:JICdZaHU0

ジャイアン「お前の物は俺の物。俺様のものも俺のものだ」

ジャイアニズムのっとり屍人から猟銃を奪い取る。

それから、ふんすと一息吐いて櫓を降りて目指していた道の先へと行く。

ジャイアン「こんな化け物がいるんなら、益々皆が心配になるな。
待ってろ、今俺様が行ってやるからな!」

地獄の中でも猛々しく。

鼻歌歌って跋扈する。

ガキ大将は、今もどこかで苦しんでいるであろう仲間を想いながら、道を只管進んでいった。

目の前ひらけている、集落へと向かって。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:20:38.75 ID:JICdZaHU0

【源 静香 初日/11:57:32 蛭ノ塚 県道333号線】

しずか「ダメだわ・・・誰もいないしどこでもドアもない・・・・」

飛ばされてから気絶すること無かったしずかは、飛んでいる時の僅かな記憶を頼りにここまで戻ってきていた。

誰かがいる事を願って。

しかし、戻って来たもののそこに人影は無く、あるのは公然とした静寂だけだった。

しずか「誰の視界もないし・・・・ここにはいないみたいね」

視界ジャック試みるも、ジャック出来る視界は無く頭の中にはノイズが広がるだけだった。

しずか「最初は何かと思ったけど、結構この能力も使えるわね」

その適応力は、秀才だから故か。

起きてからしずかはすぐに視界ジャックを習得し、その能力を最大限に引き出して屍人の群れを避けてここまで来ていた。

しずか「早くのび太さん達に会わないと・・・・心配だわ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:20:56.99 ID:JICdZaHU0

ざくざくと足下の土をかき分けながら懸命に歩いて行く。

しずか「ん、あそこの上へ行けば道が良く見えるかしら」

上を見上げると、土砂崩れの影響で少しだけ視界が開けそうな場所が見えた。

転ばないように、必死に上へと登っていく。

もしかしたら、のび太達がいるかもしれない。

もしかしたら、何か解決の糸口が見つかるかもしれない。

もしかしたら、希望が見つかるかもしれない。

そう思って登っていった。

その先には。

しずか「なに・・・・・これ・・・」

目の前に広がる紅い海。

そこへぞろぞろと移動する人達。

これが『海送り』と呼ばれる事象であるのをしずかは知らなかったが、それが異常な光景だというのは理解出来た。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:21:15.19 ID:JICdZaHU0

そもそもここ羽生陀村は内陸のはずなのに、今は辺り一面を全て紅い海で囲まれている。

それはこの異常な事態を視覚に伝えるとともに、逃げ場が無い事を象徴している様にも思えた。

???「誰か、誰かいるのかい!?」

あまりの光景に言葉を失っていると、後ろから声をかけられた。

今まできいてきた屍人のそれと違う、確かな人間の声で。

しずか「います、いますよ!」

振り向いて、声を出した主の元へと駆けよる。

声をかけた人物は目から血も流していなかったし、同伴者を連れているがその子も異常は無いようだった。

しずか「ああ、わたしの他にも無事な人がいたのね!」

やっと仲間と呼べそうな人物達に出会えた。

その事実は、少なからずしずかを勇気づけ、沈んでいた心に一筋の希望を与えた。

???「あなたも、無事だったんですね」

声をかけてきた人物の後ろに隠れていた少女が、ようやく警戒を解いたかのように話しかけてきた。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:22:27.20 ID:JICdZaHU0

???「私、サイレンがなってからずっと逃げてて、それでこの人に出会って・・・」

少女の言葉は要領を得なかったが、言いたかった事はなんとなく理解出来た。

この子も、わたしと同じなのだ。

気づかぬうちに、理不尽な現象の被害者になって。

不安で不安で、やっと誰かに会えて。

牧野「自己紹介が遅れたね。僕は牧野、牧野 慶。この村で求道師をやっているんだ。
それでこの子は――――」

前田「前田友子、です。両親と喧嘩して、家を出たら、こんな目に」

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!

友子が言い終えるか言い終えないかのうちに、けたたましいサイレンが、島全体に鳴り響いた。

3人「う、うあああ!!」

サイレンの音は脳を蝕み、心を苛む。

最初の時ほど頭痛は酷くないものの、それでも脳を揺さぶる事には変わりなかった。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:23:00.51 ID:JICdZaHU0

屍人「う゛ああ゛ーー」

サイレンの音に呼応するかのように、遠くで屍人の声が聞こえた。

牧野「ここは危ない、はやく逃げよう!えっと―――」

しずか「源 静香です。そうですね、早く逃げましょう!」

タタッと近くの石を蹴り、走り出す。

その姿は、男である牧野よりも逞しく見えた。

牧野「ちょっと、比沙子さんに似ているかも知れない・・・」

そんな事を呟きながら、牧野もあとを追った。

友子も、置いてかれないようにそれについて行く。

進んで、進んで、進んで。

隠れて、隠れて、隠れて。

暫く進んでいくと、大きな段差があった。

牧野ならばよじ登れそうだったが、小学生と中学生の女の子には到底登れそうにない程度に大きい崖が。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:23:20.36 ID:JICdZaHU0

牧野「僕が先に登るよ。あとから引っ張ってあげる」

よっこらしょっと、頼りなくよじ登る。

しずか(なんか、頼りない人ね・・・のび太さんみたい?ううん、のび太さんは
こういうときは凄く頼りになるわ)

未だ安否の知れない友人の姿を目の前の男に重ねて、首を振った。

ガラッ

牧野「おっと・・・」

脚を踏み外したのか、牧野が足下にあった崖の石を転がしてしまった。

日常生活ならば気にも留めない些細な音。

そんな音でも、この非日常の異常世界では、十分に危機を招く要因となり得た。

前田「狙われてる!!」

キュイン!!

友子が叫ぶと同時に、牧野が登りきった崖の辺りに銃弾が当たる。

牧野「う、うわぁ!」

情けない悲鳴をあげて牧野は後ずさる。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:26:00.92 ID:JICdZaHU0

しずか(ダメ、頼れない!)

瞬間的に、判断する。

牧野さんは、求道師と名乗った男は、今この場で私達の命を助けてくれるものではないと。

しずか「友子さん、こっちよ!」

牧野が登った崖によじ登る事は諦めて、狙撃手のいる方とは別の場所へ走っていく。

前田「え、でも牧野さんがっ!」

牧野「僕なら大丈夫、二人で逃げて!」

へっぴり腰になりながら、牧野が叫ぶ。

牧野は心のどこかで安心していた。

これなら自分は狙われにくいだろうと。

危険を冒して助けなくても平気だと。

表には出さずとも、確かに思っていた。

タタタタタッ!!

脚音を響かせてしずかと友子は逃げ出した。

牧野も何とか立ちあがって逃げ出した。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:26:17.14 ID:JICdZaHU0

狙撃手は懸命に追おうとするも、どちらを狙うか決めあぐねて、両方とも逃がしてしまった。

屍人の知能がそこまで高くなかったのが幸いしたのだろう。

逃げる。

逃げる。

その場から。

現実から。

しずかと友子、牧野はそれぞれ別の道を逃げる。

その先に待つものは希望か、絶望か。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:27:22.75 ID:JICdZaHU0

【骨川 スネ夫 前日/11:49:42 蛇ノ首谷 折臥ノ森】

スネオ「んぐ、ここは・・・・?」

目が覚めると、スネオは深い森の中に居た。

辺りは鬱蒼としていて、聞こえるのは生き物の鳴き声と土を掘る音だけだった。

スネオ「んあ、土を掘る音?」

シャク、シャク、シャク・・・・・

近くから、絶えず土を掘る音が聞こえてくる。

スネオ「もしかして、工事か何かやってるのかな。この地域じゃまだショベルカー
なんてなさそうだしね。ここがどこだかきいてみよう」

上手くいけば集落に招き入れてもらえるかもしれない。

そんな淡い期待を抱きながら音の元へと身を進ませる。

音の先でスネオを待ち受けていたのは、確かに人だった。

声をかければ、反応してくれるだろう。

ただ、とても声をかける気にはならなかった。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:28:51.80 ID:JICdZaHU0

スネオ「あ、あれ、あれれ、あれって・・・・」

土を掘り続ける男の傍らにあるビニールシート。

底からはみ出る、肌色の何か。

月明かりに照らされて浮かび上がるそれは、そう、人の――――――

スネオ「あ、ああ、あ、ああ・・・・」

ドサッ

スネオは、また気絶してしまった。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:29:21.53 ID:JICdZaHU0

【骨川スネオ 初日9:00:00 蛇ノ首谷 折臥ノ森】

スネオ「んあ、ママぁ・・・?」

スネオが再び目を覚ますと、そこは倒れたままの場所だった。

もしかしたら夢であってくれたらと思っていたが、現実はそこまで甘いものではなかった。

スネオ「ど、どど、どうするべきなんだろう・・・」

通報か、知らぬふりか。

どちらにしても、危険が伴う事には変わりなかった。

スネオ「とりあえず、本当に人だったのか確かめてみよう。もしかしたら、起きぬけで
幻想を見てたのかも知れないし」

そうであってくれと祈りながら、恐る恐る現場を見てみる。

そこには、散乱したビニールシートと土塊があるだけだった。

スネオ「ホッ・・・やっぱり見間違えか何かだったんだ。
はは、そんな人なんて埋めるわけないよな・・・」

胸を撫でおろすと、今度は何か違和感に襲われた。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:29:39.53 ID:JICdZaHU0

スネオ「な、なんだろう・・・視界が・・・・」

視界が変わる。

自分の物ではなく、どこか別のものに。

スネオ(誰かの・・・視界・・・?なんでぼく、人の視界みてるんだろ?)

疑問を解く術をみつける前に、事態は動いて行く。

スネオ(視界の端にぼくのトンガリが・・・!?)

慌てて、自分の視界を取り戻す。

音をたてないように視界の元を探ると、人影が見えた。

目に血を湛えて、にやりと笑う人影が。

スネオ(ばっ、化けものっ!!)

声を出さずに叫ぶ。

正確には、恐怖のあまり声を出せなかったが正しいが。

スネオ(良くわからないけど、何かとてつもなくヤバい状態みたいだ!
一刻も早くここから逃げないと!)

だが、気づかれないように移動するのは不可能に近かった。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:30:05.17 ID:JICdZaHU0

化けもの、屍人はすでに近くまで来ている。

更に足下には枯れ枝や木の葉の類が散乱している。

身じろぎひとつするにも音を伴う状況なのだ。

スネオ(仕方ない・・・ここはちょっともったいないけど・・・)

そう言って、ポケットから財布を取り出す。

スネオ(10円硬貨を・・・・音を出さないように・・・・)

そっと掌に10円硬貨五枚ほど乗せる。

スネオ(どこでもいいから、ここ以外の所へ・・・!)

あくまで音をたてないように、それら五枚を思い切り投げた。

チャリーン!チャリーン!チャリーン!

投げられた10円玉は遠くへと落ち、音を立てる。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:30:23.05 ID:JICdZaHU0

コンクリートに落ちた時のような鋭い音はしないものの、地面の石にぶつかった10円玉は音を立てる。

その音量は、屍人の注意を引くには十分だった。

屍人「うへぇ、うへえへぇ!」

ぬらぬらと纏わりつくような笑い声のようなものを発しながら、音のした方へと屍人が向かっていく。

スネオ(今の内に・・!)

屍人がある程度離れたのを見届けると、その場からそっと逃げ去った。

不名誉ながら逃げるのにはなれていたので、思ったよりも静かに逃げる事が出来た。

スネオ(ジャイアンのお陰かな・・・・感謝はしないけど)

胸にしまっていたペンライトを使って薄暗いあぜ道を通り抜ける。

視界ジャックを使って、見つからないように進みながら。

暫く進むと、固いアスファルトの上に降り立つ事が出来た。

どうやら、道路に出る事が出来たらしい。

スネオ(安心は出来ないけど、山道を歩くよりはマシかな。
もしかしたら、車が通りかかってくれるかもしれないし)

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:30:48.86 ID:JICdZaHU0

一段落ついてほっと胸をなでおろしていると、車が置いてあるのが見えた。

スネオ「何か使えそうなものが置いてないかな」

動かないとはわかっていても、これを調べない手は無い。

今は地図の一つだけでも欲しい状況なのだ。

スネオ「うーん、特にめぼしいものはないな・・・・
なんだいなんだい!こんな高そうな車のっちゃってさ!」

そうやって車に傷でも付けてやろうかと考えたところで、助士席の下に何かがあるのを発見した。

スネオ「これは・・・・発煙筒かぁ。なんかに使えるかな、持っておこう」

発煙筒を乱暴にポケットに突っ込み、車の先に見える道に向かおうとする。

が。

スネオ(霧で良く見えないけど、誰かいるみたいだ!)

視界ジャックをして相手がどのような奴なのか確認する。

スネオ(やっぱり化けものか・・・手に持っているのは、猟銃!?そんなバカな!ここは日本なんだぞ!?)

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:31:10.93 ID:JICdZaHU0

山々に囲まれた辺境の地ならばあり得ない話ではないと思いつつも、日常からかけ離れ過ぎている

その黒光りする砲身に、思わず身震いする。

スネオ(そのまま突っ込む事は出来ない・・・・仕方ない、ドラえもんの道具を使わせて貰おう)

ポケットから四角い塊と、ゲームのコントローラーのようなものを取り出す。

スネオ(ははっ、ぼくの家はお金持ちだからね。ポケットも上等な生地で作られてるから
多少大きいものでも入れる事が出来るのさ!・・・・ってぼくは誰に自慢してるんだろう)

言いながら、ポケットから取り出した塊をちぎってミニチュアの車のような形にする。

スネオ「それじゃあ行って来い!ラジコン粘土!」

コントローラーを操作して、小さいミニチュアの車を操作する。

向かうはもちろん、屍人の元。

屍人「お゛!?おあ゛あ?」

突然迫ってくる小さい物体に多少驚きながらも、屍人は容赦なく猟銃を構える。

タターン!!タターン!!

2発、3発と銃弾を撃つも、小さな物体はまるで打たれるのが分かっているかのように弾をよけてしまう。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:32:39.47 ID:JICdZaHU0

スネオ(ははっ、視界ジャックされてる事に気づいてないでやんの。
標準があった時に曲がるだけでいいんだから、簡単だい!)

タターン!タターン!!

尚も撃ち続けるも、一向に当たる気配は無かった。

屍人「あう゛お゛ぇ゛が!」

ついに憤慨して、屍人は猟銃を投げ捨てて踏みつぶしにかかった。

しかし、それすらも小さい物体は避けてすいすいと逃げて行ってしまう。

屍人「お゛う゛え゛、おう゛あ゛!」

踏みつぶせない苛立ちに、我を忘れて追いかける屍人。

ただ一心に踏みつぶすために追いかけていく。

その先に、川へと続く崖があるのにも気づかずに。

屍人「お゛うぇあ゛!」

崖の縁でちょろちょろと動く小さな物体を踏みつぶそうと、奇妙なダンスを踊る屍人。

ドズン、ドズンと音が経つほどに力を込めて踏みしめる脚が、崖の縁で持つわけもなく。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:33:05.21 ID:JICdZaHU0

屍人「あお゛、うあ゛、え゛う!・・・・・あ゛?」

疲れ果てた脚は意志に反して硬直し、屍人の体制を大きく揺るがせた。

上半身だけが動こうとし、下半身だけが止まっている。

そんな体制を維持出来るはずもなく。

屍人「あ゛あああ゛あ゛あああーーー・・・・」

情けない声と共に、屍人は崖の下、川の中へと落ちていった。

スネオ「化けものって案外バカなんだなぁ。なんかちょっとだけ、怖がって損した気分」

屍人の捨てていった一発だけしか残っていない猟銃を拾い、先へと進む。

猟銃に気を取られていたスネオは気づかなかった。

近くの看板に、この先宮田医院と書かれていた事を。

そして彼が向かう先が、惨劇の舞台であることも。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:33:19.99 ID:JICdZaHU0

【宮田 司郎 初日/3:34:17 蛇ノ首谷 折臥ノ森】

宮田「こんなところにガキが・・・
見られていたとしたら、殺すべきか?
いや、これ以上証拠を残す必要は無い。
それに、死体がどこへ行ったのかも気になる。
どうせその辺でのたれ死ぬだろうから、気にする必要もないか」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:33:44.42 ID:JICdZaHU0

【ドラえもん ??? ???】

ドラえもん「」

ドラえもん「」

ドラえもん「」


???「こ、こいつぁ・・・?」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:34:12.92 ID:JICdZaHU0

【源 静香 初日/???? 蛭ノ塚 県道333号線】

しずか「そう、じゃあお母さん達と喧嘩して・・・」

前田「うん、些細なことでなんだけどね」

しずか「今は、もう会いたいんでしょう?」

前田「うん、淋しいよ。お父さんとお母さん、大丈夫かなぁ・・・」

しずか「きっと大丈夫よ!心配しちゃダメ。どんどん悲しくなってしまうわ」

前田「そうよね・・・。しずかちゃん、なんだか強いね」

しずか「強い?」

前田「こんな状況なのに敢然と立ち向かってて・・・私より年上のお姉さんみたい」

しずか「ちょっとだけ、冒険してるからね」

くすりと笑い、遠くを見る。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:34:36.17 ID:JICdZaHU0

靄にかかった道も、今だけは静かに見守ってくれてるように見えた。

前田「ねえ、この変な状況が去ったら、お話きかせてよ。冒険の」

しずか「ええ、約束するわ」

前田「・・・・・生きましょうね」

しずか「もちろんよ!・・・・・あら?」

しずかが前に目を向けると、そこには一人の女性が立っていた。

一瞬屍人かと思って身構えたが、近づいてくる女性は穏やかな笑みを顔に浮かべているだけで、

屍人のそれのようなものは全く見受けられなかった。

???「あなたたち・・・大丈夫だった?」

前田「八尾様!」

しずか「八尾様?」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:34:54.30 ID:JICdZaHU0

前田「この村の求導女様で、とても優しい人なのよ!ああ、こんなところで会えるなんて・・・」

八尾「怖かったでしょう?もう大丈夫だわ・・・」

そういって、友子の事を八尾は優しく抱きしめた。

慈愛に満ちたその姿は、聖母にすら見えた。

しかし。

しずか(何かしら・・・・凄いいやな感じがする・・・)

最初は、求導という言葉を聞いて、不甲斐ない牧野を連想したからだと思った。

八尾「そこのお嬢さんも・・・・もう大丈夫よ」

だが、どうやらそれはあまり関係ないと思い直した。

しずかは、八尾に声をかけられた瞬間何か掴まれる様な錯覚を感じた。

堕とされる様な、絡め取られる様な感触を。


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:35:11.73 ID:JICdZaHU0

八尾「さあ、こっちへいらっしゃい。安全な場所があるの」

そう言って、八尾は奥へと進んでいく。

前田「大丈夫よ、八尾様は、求導女様だもの」

友子がいぶかしむしずかの手を引いて八尾を追う。

タッタッタッタッタ・・・・

規則正しく響く足音三つ。

何時の間にか、柔らかく感じていた気配が、重く苦しいものに変っていた。

八尾「ここよ」

どれだけ歩いただろうか、そろそろ足も限界に近付いたあたりで、小さな小屋についた。

小屋、というよりも小さな社だろうか。

ある種の怖さすら感じるその建物の扉を開けると、八尾は入るように促してきた。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:35:32.22 ID:JICdZaHU0

前田「八尾様は入られないのですか?」

八尾「私は、いいわ。他にもまだ道に迷っている人を、助けなければならないもの」

前田「でも、危険ですよ!!」

八尾「それでもやらなければならないわ。それが私の務めだもの」

凛とした調子で八尾は言った。

八尾「さあ、お入りなさい」

促されるままに、前田としずかは小屋へと入る。

扉を閉める際に、八尾は顔に微笑を湛えたまま言った。

八尾「痛いのは一瞬。あとは素敵な世界へ行けるわ」

前田「え・・・・?」

ガチャン

扉のしまる音に続いて

カチャン

鍵のしまる音がする。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:36:36.44 ID:JICdZaHU0

それから一呼吸置いて。

屍人達「うわ゛え゛お゛あ゛!!」

小屋の奥から何体かの屍人が湧き出てくる。

まるで餌が来たとでも言うかのように。

屍人達は声を張り上げて近づいてくる。

前田「いやあああああああ!!!!!」

しずか「やっぱり・・・・騙されたんだわ・・・」

絶望。

信じていた人に裏切られる気持ち。

心の奥底を、黒色が塗りつぶそうとする。

しずか「・・・・・・・・ここで」

しずかの心は、黒色には塗りつぶせない。

しずか「ここで止まるわけにはいかないわ!」

小さな冒険が培ってきた心は、命の危機に頻しても、未だ輝きを失わない。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:37:00.91 ID:JICdZaHU0

しずか「ドラちゃん!!力を貸して!!」

スカートの辺りに付いているポケットを探り、ドラえもんから受け取った秘密道具を取り出す。

どんなものをも止める道具を。

しずか「相手ストッパー!!」

ピタアッ!!

しずかが相手ストッパーを屍人達に当てると、屍人達の動きは、たちまちのうちにとまってしまった。

正確には、屍人達の足が止まってしまった。

しずか「今の内よ!」

何が何だかわからないという様子の友子の手を、今度はしずかが強く引いて、走り出す。

屍人に捕まらないように屍人の横を通り抜け、奥の部屋へとつき抜ける。

その先にあるのは――――――




――――――――長年の放置により、腐りきって脆くなった壁が。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:37:54.80 ID:JICdZaHU0

しずか「女の子のする事じゃないけど・・・・友子さん、せーのでぶつかるわよ!」

前田「う、うん」

しずか「・・・・・せーのっ」

ドンッ!!ガシャーン!!

予想よりもはるかに呆気なく壊れた壁を突き抜けて、しずか達は外へと脱出した。

しずか「いったぁーい・・・・友子さん大丈夫?」

前田「私は大丈夫・・・でもあなたは一体・・・?
どうやって化けものの足をとめたの?」

しずか「説明はあとよ!今は、ここから逃げましょう!」

もう一度友子の手を取り、走り出すしずか。

その姿に、友子は求導女の影を見た。

前田(もしかしたら、この人が本当の・・・・・・・?)

答は今はまだ、出る事は無い。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:38:33.45 ID:JICdZaHU0

第一章、異界 終

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/06(水) 22:39:29.31 ID:JICdZaHU0

【野比 のび太初日/23:33:21 刈割 廃倉庫】

のび太「随分変なところまで来ちゃったなぁ・・・」

休んだり、軽く寝たりしながらドラえもんをさがしてかなりの距離を歩いたのび太だったが、ドラえもんも皆も一向に見つけることが出来なかった。

のび太「役に立ちそうなものも見つからないし・・・・ライターは1つ見つかったけど」

夜も更けてきていて、ライター一つでどうにかなる暗さでもない。

のび太「足下くらいは見えるけどさ・・・・燃料もそんなに入ってないから、無駄遣いは出来ないし」

ぼやきながら歩き続けると、足下にジャリっという何か金属片を踏みつけた感触があった。

のび太「ん、何だろうこれ・・・・・鍵?」

踏みつけたのは、何かの鍵。

のび太「何の鍵だろう・・・・もしかしてあの車の・・・・?」

鍵を拾った所から少し先の斜面に、車が見えた。


123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 00:55:22.62 ID:xSBPy5VB0

もしかしたらあの車の持ち主が落としたのかもしれない。

そう思い、車に近づいてみる。

あきますように。

そう願い鍵を車のドアに差し込む。

ガチャ・・・・・・ギィ

僅かに軋む音がして、鍵が回った。

のび太「あ、開いた!」

急いで車に乗り込んで、中を探る。

何か使えるものは無いかと。

のび太「ううーん、暗くてよく見えないよ」

元々目が悪いのび太なのだ、暗がりではダッシュボードの中などは到底見る事が出来ない。

のび太「車のエンジンをつけて、中の電気をつけてみよう」

そうすれば自分にも見えるはず。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 00:56:19.25 ID:xSBPy5VB0

たどたどしくも視界ジャックで周りを確認して安全な事を悟ったのび太は、勢いよく車のキーを回して、エンジンをかけた。

右足を、無意識のうちにアクセルに乗せたまま。

ブルルルルルルン!!ブオオオオオン!!!

エンジンをふかすと同時に、アクセルを入れられた車は勢いよく発進した。

のび太「うわわわわっ、なんでぇ!?」

急に発進した車に不安定な体制ののび太がついていけるはずもなく。

ズザザザザザザ!!ドッシャーーーーーーン!!

勢いづいた車は止まることなく斜面を滑り落ちて、のび太を吹き飛ばしながら斜面の下にある隆起した地面へ追突した。

のび太「あいちちちち・・・・・・なんだよ、もう!勝手に動いちゃって!」

折角何か手に入ると思ったのに。

やり場のない怒りをその場の地面にぶつけ、土を蹴っ飛ばす。



屍人「う゛あん゛?」

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 00:58:19.25 ID:xSBPy5VB0

不幸とは連鎖するものだと言ったのは誰か。

のび太の蹴った土は遠くへ吹き飛び、音を聞きつけてきた屍人の頭にぶつかった。

のび太「うわあああ〜〜〜〜ん!!」ダダダダダッ

逃げる。

逃げる。

遠くまで。

くたくたになった足を動かすのは、生存本能か、それとも長年培ってきた逃げることへの執念か。

走って走って。

逃げて逃げて。

のび太「はぁ・・・・はぁ・・・・・・はぁはぁ・・・はぁ・・・」

視界ジャックしても何も引っかからない事に気づく頃にはのび太の息はすっかりあがっていた。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 00:59:55.64 ID:xSBPy5VB0

のび太「はぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・・もう、嫌だよ・・・・ドラえもん」

この地獄へ来てから幾度となく呼ぶ友の名前。

返事は未だにない。

カツンッ

返事の代わりか、近くで物音がした。

固いもの同士が当たる、そんな音。

のび太「な、ななな何?」

震えながら、そっと物音のしたほうをみる。

のび太「なんだろう・・・・灯ろう?」

そこにあったのは、その場に似つかわしくない、灯ろうだった。

のび太「火を、付けてみようかな」

何故だかそうしなきゃいけない気がして。

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:01:18.31 ID:xSBPy5VB0

ライターを使ってそっと灯ろうに火をつけた。

すると。

シュワーーーーー・・・・・

何とも言えない音が鳴り、灯ろうから得体の知れない白い物体が舞い上がった。

のび太「うわ゛−、なんかやっちゃったー!?」

何かイケないものでも召喚してしまったのか。

全身が硬直してその場から動けなくなる。

のび太「・・・・・・・」

のび太「・・・・・・」

のび太「・・・・・・?」

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:03:05.00 ID:xSBPy5VB0

暫く何が起こるかと身構えてみたものの、全く何も起こらない。

物音ひとつせず、視界ジャックをしてみてもうつるのはノイズだけ。

のび太「は、ははは、ははははは!
な〜んだ、ただの埃かな。びっくりした〜」

大げさに笑いながら、その場をあとにする。

この時の行動が、奇跡ともいえるタイミングでの行動は。

後に重大な意味を持つことを、のび太が知る事は無い。

のび太「それにしても大分走って疲れちゃったな・・・・
高台みたいなところがあるし、そこで一休みしよう」

ゆっくりと歩みを進めて近くに見える高台(といっても地面が隆起しているだけの場所だが)に行く。

のび太「ふぅ、これでやっとゆっくりいられるかな」

高台の上に腰をおろし、来てからの事を考える。

のび太(どうすればこの場所から帰れるんだろう・・・
ドラえもんもいないし、スペアポケットもない。
皆に会う事も出来ないし、会うのは皆怪物ばかり。いやになっちゃうよ)

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:04:15.78 ID:xSBPy5VB0

こんなところに来たいなど言わなければよかった。

今更すぎる後悔が胸を刺す。

のび太「・・・・・・・・ん?」

どことなく暗い気持ちに浸かっていると、ぼんやりと自分の見ている物と違う視界が浮かび上がった。

のび太(ジャックしてみよう・・・)

意識を集中させて、脳裏に浮かび上がる視界を捉える。

のび太(女の人が見える視界と、女の子が見える視界・・・隣り合っているのかな?)

2つ捉えた視界をそれぞれ見てみると、それはとても似ていた。

視界の状況から察するに、おそらく2人並んで歩いているのだろう。

のび太(・・・・・・そう言えばこの人達、目から血を流していない!
それだけじゃない、ちゃんと言葉も話しているみたいだぞ!もしかして、この人達――――)

生きている人かもしれない。

言葉を出すよりも早く高台を蹴って視界の元へ向かう。

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:06:24.81 ID:xSBPy5VB0

やっと、ここにきて初めて普通の人に会える。

不安にくじけそうになっていたのび太の心に、僅かな希望が芽生えた。

のび太「はっ・・・はっ・・・・はぁ・・・確かここら辺に・・・・いたっ!!
・・・・・でも何だろう、様子が変だ」

高台からでうまく見えないものの、女の子が何やらビニールシートのかぶさったリヤカーの中に乗せられていた。

そして、一緒に居る女の人がその場を離れると、何と女の子が入ったリヤカーを、屍人がもって運んでいった。

のび太(大変だ!女の子が連れてかれちゃうよ!)

屍人を狙撃しようとポケットからショックガンを取り出すのび太。

その引き金を引く前に、女の人が声をあげた。

???「春海ちゃん!!」

声をあげながら、近くにある給油車のクラクションを鳴らした。

???「先生が・・・絶対助けてあげるからね!」

給油車のハンドルに手をかけながら、女性が叫ぶ。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:08:03.15 ID:xSBPy5VB0

その声に反応して、近くに居た屍人が一斉に女性の方を向く。

のび太(あ、あの人。まさか!)

屍人の注意をひきつけるために自爆する気だ―――――

のび太「そんなこと、させてたまるもんか!!」

ショックガンを構え、立て続けに放つ。

ドシュンドシュンドシュン!!!

1人、2人、3人。

狙われた屍人は全員被弾して倒れていく。

のび太「今の内に逃げて!!」

いきなり屍人が倒れていく状況に戸惑っている女性に向かって叫ぶ。

のび太(さっきの子が乗ったリヤカーは・・・・ダメだ、もういない!)

目と視界ジャックを駆使して探すも、女の子が乗っていると思わしきリヤカーは見当たらなかった。

のび太「ここにいたらぼくも危ないかしら・・・・ひとまず身を隠せる所を探そう」

高台から身を翻し、斜面を下りていく。

すると、遠くから先程屍人に囲まれていた女性が走って来た。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:10:59.39 ID:xSBPy5VB0

???「待って!!」

ザッザッザッと意外に早いスピードでこちらへ駆けてくる。

近くで顔を見てもはやり血の涙を流していない事に安心する。

???「ハァ・・・・ハァ・・・んっ・・・あなた・・・・は・・?
助けてくれたの・・・・?」

息を切らせながら、女の人が質問してくる。

のび太「ぼくは、野比のび太って言います。訳あって、遠い所からここに来たんですけど、帰れなくなってしまって・・・」

高遠「のび太君・・・・か。私は、高遠玲子っていうの。この村で教師をやっている」

のび太「先生でしたか・・・・」

この人が先生で、あの子が生徒だというのなら。

あの先生の無茶な行動も、どことなく納得することが出来た。

勿論、自分の担任の先生を思い浮かべたわけではないが。

のび太「あの子は、どうしてリヤカーに?」

高遠「貨物に紛れた方が遠くへ逃げれるから・・・この近くに学校があるんだけど、そこが凄い危なくて・・・」

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:11:50.57 ID:xSBPy5VB0

のび太「そうだったんですか・・・・
あ、その学校に、ぼくたちみたいな元気な人はいませんでしたか?
あとは、青色のロボットとか」

高遠「・・・・残念ながら見てないわ。あなたのお友達なの?」

のび太「ええ、かけがえのない友達です」

高遠「そうなの・・・
わかったわ、私も一緒に探してあげる」

のび太「え、良いんですか?」

高遠「教師として、子供をこんな場所に一人で放っておけないわ」

教師として、ね。

自嘲気味に自分の言葉を反芻する高遠に少し疑問を抱きながらも、ここは素直に甘える事にした。

のび太自身、ずっと一人で心細かったのだ。

どんな人であろうとも、近くに居てくれて悪い事は無い。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:13:52.52 ID:xSBPy5VB0

のび太「大体、どこら辺に人がいきやすいとかありませんか?
ここの土地感が無いから、どこに行けばいいかわからなくて・・・」

高遠「それなら、ここからちょっと遠いけど蛇ノ首谷なんかがいいかもしれないわね。
川沿いに進むと、自然とそこへ着くから」

のび太「そうなんですか・・・・
じゃあ、案内たのんでもいいでしょうか?」

高遠「勿論よ。気をつけていきましょうね」

こうしてのび太達は、2人連れだって蛇ノ首谷へと向かう事になった。

物語の進む先は、まだ見えない。




【八尾 比沙子 初日/23:59:59 ???】

「とても嫌な空気がするわ」

「忌々しい気分になるの」

「時間の歪みもある気がする」

「なんとしても儀式は成功させないと」

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:15:16.35 ID:xSBPy5VB0

【骨川スネオ 初日/22:48:01 宮田病院前】

スネオ「なんだろう・・・この建物」

スネオが見上げた先には、大きな建物が聳え立っていた。

病院にも刑務所にも見えるその建物は、他の場所と同じく絶えず重く暗い雰囲気を醸し出している。

スネオ「なんだか、入りたくないなぁ・・・」

目の前に入口が見えるも、踏ん切りがつかず中々前に進む事が出来ない。

スネオ「人がいるかもしれないけれど、当然その逆もあるんだし・・・」

仮にこの病院(または刑務所)に人がいたとして、それが全て屍人になっていたとしたら。

スネオ(とてもじゃないけど、助からないぞ!)

うろうろと辺りを歩き回って、時々建物を見上げて。

やっぱりやめようと踏ん切りをつけて踵を返そうとした時。

ガシャーーン!!

???「いやっ!!」

短い悲鳴と、ガラスの割れる音が闇夜に響く。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:17:21.11 ID:xSBPy5VB0

スネオ「な、なんだぁ!?」

振り向きかけた体を向き直し、建物の窓を見る。

窓に割れた形跡はないものの、意識を集中させていると何かが走る音が聞こえてきた。

タタッ、タタッ、タタッ、タタッ

足音は、二つ。

スネオ(誰かが、襲われているのかもしれない!)

ぼんやりとだが、そう思う。

悲鳴は女性のものだった。

スネオ「も、もしかしたらしずかちゃんが・・・・!」

可能性は十分にあり得た。

スネオ「こ、このままじゃ危ない!」

急いで病院のドアを通過し、音の聞こえた方へと向かう。


ヤバい第二章終わる前にまたボボンに投げ込まれそう

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:30:20.78 ID:xSBPy5VB0

普段のスネオなら、何もせずにただ聞かぬふりをして逃げていただろう。

しかし、今のスネオは敢然と立ち向かう事を決めていた。

ここに来るまでに、何体かの屍人を相手に出来ていたから。

逃げてばかりの自分ではなく、たち向かう自分を知ることが出来たから。

皮肉にもこの怪異は、スネオの精神を大きく成長させる要因になったのだ。

スネオ「どこだどこだどこだ〜?」スススススス・・・・・・

音をたてず、早く動く。

ペンライトをかざしながら音に聞き耳を立てる。

スネオ「どこだどこだ・・・・・んん?」

―――――――――――コツン、コツン、コツン

微かに耳が音を捉える。

アスファルトを蹴る音。

人の歩く音。

いや、頻度からして走る音だろう。

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:31:52.13 ID:xSBPy5VB0

スネオ「丁度この真上の辺りか・・・・行くべきかな」

近くの階段に足をかけて、止まる。

スネオ「いや、待てよ・・・。もし、相手が屍人だったら、無事じゃ済まないかもしれないぞ」

足音を聞く限り相手は走っている。

女性といっても大人だ。

スネオの足では、追いつかれてしまう可能性も十分にある。

スネオ(視界ジャックをしても、息が荒いせいか良くわからないし・・・どうしようかな)

一瞬考えてから、はたと思いつく。

スネオ(ラジコン粘土を工夫すれば・・・・!)

ラジコン粘土は、ある程度形を自由に決める事が出来る。

それはつまり、走れる、または動ける造形であれば何でも構わないということ。

たとえ、文字の形であったとしても。


155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:34:41.80 ID:xSBPy5VB0

スネオ(視界ジャックで大体の位置を確認して・・・あとは届くまでやるだけさ!)

失敗すれば、最悪こちらの位置がばれるかもしれない。

そんな不安を織り交ぜながら、ラジコン粘土を発進させる。

賭けだった。

ウイーーーーーン・・・・・・

僅かな音を立てて、ラジコン粘土が動き出す。

階段を上り、通路を駆け抜け、ラジコン粘土は行く。

音の聞こえた方へ。

スネオの託したメッセージを伝えるために。

ウイーーーーーーーン・・・・・・ピタッ

スネオ(・・・・・・・・・・・・・・・接触したぞ!!)

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:36:29.55 ID:xSBPy5VB0

視界ジャックにより、接触を確認するスネオ。

スネオ(さぁ、読むかな!)

???「・・・・はぁ・・・・はぁ・・・こ、これは・・・
文字・・・?よめる?・・・・・なにが・・・・?」

スネオ(よし、人だぁ!)

歓喜して、階段を上って声の主の元へ行く。

書いた文字は、『よめる?』。

確かに、声の主は読んでくれた。

賭けは、成功したのだ。

タタタタタッ

走って階段を駆け上がり、幾許かの通路を越え進むと、通路の端に女の人がしゃがみ込んでいた。

スネオ「はっ・・・・・はっ・・・はっ、だ、大丈夫ですか?」

???「え、あ、ああ、大丈夫よ。あ、あなたは?」

イキナリ息を切らせながら走って来た子供の質問にうろたえながらも、女性はしっかりと大丈夫と言った。


158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:37:24.34 ID:xSBPy5VB0

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
スネオ「ぼ、ぼくは骨川スネオって言います。わけあって友達と離れちゃって困ってたんです。
それにしてもちゃんとした人がいるなんて・・・」

恩田「私は恩田理沙。この診療所に勤めている姉に会いに来たんだけれど・・・」

そこで言葉を切って、女性が俯く。

スネオ「だけれど・・・・?」

空気を察せず、スネオが追及しようとした時。

答はそちらからやってきた。

???「キョオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーー!?!!?!!?」

スネオ「な、なんだ!?」

耳をつんざくような音がスネオの来た方向から聞こえてくる。

これは何の音なのか?

人の声でもなく、何かが壊れた音でもなく。

独特で、不快な音。

スネオ「な、なんだあれ・・・・ひ、人なの・・・?」

恩田「・・・・・・・・・・・・お姉ちゃん」

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:41:10.03 ID:xSBPy5VB0

スネオ「え?」

ぽつりと、恩田が呟く。

遠くに見える、人影に向かって。

聞き間違いかと思った。

聞き間違いであってほしかった。

お姉ちゃんと呼ばれた人影は、遠くからゆっくりと迫ってくる。

鳴き声のようなものを響かせながら。

顔であろう部分に、バナナのような胎動する物体を貼り付けながら。

恩田「美奈お姉ちゃん!」

恩田が異形の屍人に向かって叫ぶ。

自分の事を思い出させるかのように。

本当に姉なのか確認するかのように。

美奈「キョエエエエエエエエエエエエウウウウウウウウ!!!!!!」

答えるように、甲高い音を立てて美奈と呼ばれた屍人が鳴く。

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:42:22.74 ID:xSBPy5VB0

スネオ「な、なんて・・・なんてことだよ・・・・・」

やるせない気持ちと、言いようのない恐怖がスネオの胸の中に渦巻く。

親しいものが異形化する。

そのショックはどの位なのだろうか。

たとえば、のび太が屍人になってしまったら?

ジャイアンが、しずかちゃんが、屍人になってしまったら?

スネオ「・・・・・耐えられない)

それは心の呟きか。

それとも喉から出た絶望の言葉か。

立ちつくし逃げようとしない恩田とゆっくりと近づいてくる美奈。

その両方を一瞥してから、恩田の手を無理やり引っ張る。

スネオ「に、逃げようよ恩田さん!」


163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:43:15.07 ID:xSBPy5VB0

その言葉は果たして恩田にいったのか。

もしかしたら、現実を受け止めたくない自分にいったのかもしれない。

恩田「ここの奥に非常階段があったわ!」

ようやく正気を取り戻したのか、恩田が奥の道を指さす。

その案内に従って、全力で走る。

ダダダダダダダダダダダダッ

通路を降り、非常階段を下り、一階へと降りる。

スネオ「この先はどうするのさ!」

恩田「こっちよ!こっちに行けば宮田先生と牧野さんがいるわ!」

恩田に促されるままに、走り出す。

走り出しざまに視界ジャックをして美奈の視界を見ると、的確にこちらの方へ歩いて来ていた。

スネオ(参ったな、他の怪物より頭が良いみたいだぞ・・・・
体が人間っぽくないやつは知能が高いのかな)

少し距離を開ければ捲けた他の屍人とは違い、美奈は的確に追いかけてきた。

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:44:21.26 ID:xSBPy5VB0

ダダダダダダダダッ

走る。

決して早くは無いけれど、力を振り絞って走る。

殺されないために。

明日を生き抜くために。

恩田「扉はすぐ先よ!頑張って!」ダダダダダダ

スネオ「はぁっ・・・・はぁっ・・・・・はっ・・・うわっ」ダダダダダ・・・・ズドッ

ここまで来るのに疲労した足はスネオの意志に反し止まってしまい、スネオは盛大に転んでしまう。

恩田「スネオ君っ!!」

スネオ「早く人を呼んできて!!」

起き上がっても満足に足が動かないと判断したスネオは、恩田に早くいくように促す。

ここで両方が止まってしまっては、最悪の結末になりかねない。

スネオ「く、なんだってこんなところで・・・・」ズルズルズル・・・・

足を引きずりながら這うように進む。

ゆっくりとしか進めないその速度では、追跡してくる屍人を捲く事など出来るはずもなく。

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:45:09.20 ID:xSBPy5VB0

美奈「ウウウウウウウエエエエエエエエエエエエエエウウウウウウウウウウ!!」

程無くして、スネオは美奈に追いつかれてしまった。

残忍な捕食者はいつの間にか手に持っていた大型のスコップをカツリと響かせて、鳴く。

獲物を捕まえた喜びを表現するかのように。

弱きものを甚振れるであろう状況に高揚しているかのように。

スネオ「あ、あ、マ、ママァーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

必死に逃げようとするも、足は動かず腰も立たない。

手に持っていたペンライトを投げつけるも、そんな抵抗など一瞬の隙作りにもならない。

スネオ「あ、あ、や、ヤバい・・・・本当に・・・・」

生物としての本能か。

スネオの意識が徐々に幕を下ろしていく。

せめて最後は痛みを感じないようにとする、儚い防衛本能の表れか。

混濁していく意識の中でスネオが見たものは。

いつか月明かりに照らされていた男が何かを投げる姿と、牧師姿の男が自分に手を差し伸べる姿だった。


173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:48:30.85 ID:xSBPy5VB0

【志村 晃 第2日/0:00:00 蛭ノ塚 県道333号線】

ドラえもん「」

志村「まだ、死ねねえよなぁ・・・・」

ドラえもん「」

志村「お前さんを見てると、なんだか懐かしい感じになっちまう」

ドラえもん「」

志村「どうせ尽きる命だ、最後に何をしてもいいだろう」

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:48:47.84 ID:xSBPy5VB0

【宮田 司郎 初日/23:03:48 宮田病院 第一病棟一階廊下】

宮田(コイツ・・・・森で寝てたやつじゃないか・・・
こんなところまで何しに来たって言うんだ?
俺をつけて来たのか、それとも偶然なのか。
もう少し様子を見て、何か言ってくるようなら殺すか)


第二章、接触 終

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 01:53:37.45 ID:xSBPy5VB0

3回猿食らったしとりあえず今日はここまで
これで書き溜め半分位投下した
明日も同じ様に投下していきます
ちなみに言ってしまうとこのSSに多門さんは登場しません
それ以外の主要キャラは全員登場します
はやくツンデレ美耶子ちゃん出したいのに出番が当分後で吊りたい

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 15:59:43.68 ID:xSBPy5VB0

【剛田 武 第2日3:33:00 蛭ノ塚 水蛭子神社湧水】

ジャイアン「全く、いやな水だぜ」

バットでこんこんと沸き出る紅い水を切り、吐き捨てる。

ジャイアン「多門さんに教えてもらってなかったら、危うく飲んでたかもしれねえな」

数時間前、ジャイアンは竹内多門と名乗る男と、その自称助手の安野依子と名乗る女性に出会っていた。

そして、ここが何であるのか、この赤い水がどのような効果をもたらす恐れがあるのかを、断片的ながら聞いていた。

ジャイアン「多門さんに聞いてもあいつらを見てねえって言ってたしな・・・
本当に皆どこにいっちまったんだよ」

探しても見つからぬ仲間達。

増えていく屍人。

ともすれば覗く不安を拭うように、ジャイアンは歌い始めた。

ジャイアン「俺は゛ジャイ゛ーーーーーーア゛ン!!!!!
ガーーーーーーーキ大将゛ッッ!! 天下ッ無敵の゛ッ男だぜーーーーーーーー!!!!!!」




???「な、なによこの怪音波はぁーーーーー!?」

251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:00:45.91 ID:xSBPy5VB0

泉の向こう側で、女の人と思しき声が聞こえてきた。

ジャイアン「なにぃー!?俺様の美声を怪音波だと〜〜!?
この野郎、ぶん殴ってやる!」

鼻息荒く、声の方向へと走っていく。

そこには、今にも紅い水に入りそうな女性がいた。

ジャイアン「おい、それに触れちゃダメだ!」

女性を引っ張って、紅い水からひきはがす。

女性は、狂ったように手足をじたばたさせながら抵抗する。

???「離してよっ!私は永遠の若さを手に入れたいの!!」

ジャイアン「この水に浸かったってそんなもの手に入んねえよ!
化けものになりたいのか!」

???「う、嘘よっ!この水に浸かれば永遠の若さが手に入るって・・・」

ジャイアン「そんなわけあるか!化物になっちまっておしまいだぁ!
あれが永遠の若さだってんなら、そうなのかも知れねえけどな!」


保守大感謝。猿&ボボンと戦いながら投下していきます。

254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:03:28.44 ID:xSBPy5VB0

???「そ、そんな・・・・・じゃあ私がここに来た意味なんて・・・
そもそもなかったというの・・・?」

女性の抵抗が止み、がっくりとうなだれる。

ジャイアン「悪い事は言わねえから、考えなおしなよ。
それはそうと、俺様の美声を怪音波と言ってくれたのは貴女様ですかぁ〜?」パキポキ

先程とは打って変わって綺麗な、しかし怒気の籠った声でたずねる。

指の骨を、下手をすればお前もこうなるぞといわんばかりに鳴らしながら。

その威圧感はこの怪異の中一層磨かれており、大人である女性を気押すに十分なものになっていた。

???「う・・・・・あ、あれはちょっと耳がおかしくて変に聞こえてしまったの!
ほら、こんな状況でしょ?今思い出したら、良い声だったわっ!」

ジャイアン「むふふ、そうだろそうだろ!そうだと思ってたぜ。
そう言えば、お姉さんの名前は?俺は剛田武。友達からはジャイアンって呼ばれてるから、ジャイアンで良いぜ」

美浜「美浜奈保子よ。元グラビアアイドル、今はTVレポーターをやってるわ」

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:04:39.00 ID:xSBPy5VB0

ジャイアン「美浜奈保子・・・・もしかして、ドラマのハートはドキ土器に出演してた方ですか!?」

美浜「あら、知ってるの?こんな小さな子供にまで知ってもらえてるなんて、やっぱり私は人気者だったのね。
それが今じゃ・・・・・・」

心霊番組レポーターなんてやらされて。

こんな目にあって。

ジャイアン「今は、どんなお仕事をなさってるんですか?」

すっかり敬語になったジャイアンを一瞥してから、自嘲気味に言う。

美浜「言った通り、TVレポーター。ここに来たのも、心霊番組のレポーターに抜擢されたからよ」

ジャイアン「へぇ〜、じゃあここから出れたら、この体験を語るんですね。
その時は、俺のことも言って下さいよ!」

無邪気にジャイアンが言う。

その姿を見て、美浜はピンと思いつく。

美浜(そうよ、この怪異を話せばまた有名になれるはずよ。
もし信じてもらえなかったとしても、携帯小説や語り手として売り出せばイケるはず。
私にはその才能があるのだから!うっふふふふ!)

258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:05:52.50 ID:xSBPy5VB0

急に美浜の顔が引き締まり、体に力が沸きだす。

ジャイアン「どうしたんですか?」

美浜「絶対にこの怪異から抜け出すわよ!ジャイアン君!
私はまだ終わっちゃいないのよ!!」

意気揚々と歩きだす美浜に一瞬呆然としながらも、ついて行く。

ジャイアン(急に元気になったぞ・・・
まあ、落ち込まれてるよりはいいわな!)

また一人、小さな少年達によって救われた人が増えた。

この物語は、どこへ行くというのだろうか。

幾共のループを繰り返してそれでもいけなかった先へ、いけるのだろうか。

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:08:06.99 ID:xSBPy5VB0


【野比のび太 第2日/9:55:43 蛇ノ首谷 吊り橋】

のび太「ぜ、ぜぜぜぜ絶対渡れないよー!」

弱り切った声をあげるのび太の目の前には、吊り橋が有った。

壊れそうな、頼りない吊り橋が。

ぎしぎしと音を立てて多少の風でも揺れるそれは、幾らこの怪異の中成長したといえども、のび太に渡れるものではなかった。

高遠「でも、ここを渡らなかったら大分遠回りする必要があるかもよ?
まだ友達にも会ってないんだから、そこまで時間は使えないでしょ。
ね、先生が手を握っててあげるから」

のび太「それはそうだけど絶対に渡れないよ!落ちたら大変だし!
ね、先生、ここは諦めて遠回りしようよぉ〜」

そう懇願するのび太。

こう言われては玲子には無理強いする事は出来ない。

高遠「うーん、仕方ないわね。遠回りしましょう」

263 名前:このシーンは原作と位置関係を多少変えています[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:10:55.72 ID:xSBPy5VB0

のび太「ホント!?流石先生!」

ぱあっとのび太の表情が明るくなる。

高遠(・・・・こんな異変の中でもこんなに明るくなれるなんて。
つくづく不思議な子ね。でも、いやな感じはしない。むしろ、凄く暖かくて素敵だわ)

ぼんやりとそんな事を考えながら、近くの丘を歩いて行く。

すると。

のび太「しっ、先生待って」

前を歩いていたのび太が立ち止まり、真剣な顔で何かを探るかのように辺りを見回した。

のび太(今、誰かの視界が過ぎった気がする。誰だろう)

視界ジャックをして辺りを探る。

前、右、左、後ろ・・・・・後ろだ。

のび太(さっきの橋の、反対側かな?立ち止まってる)

ゆっくりと、見つからないように丘の端へと移動する。

見れば、成程男の人が立っていた。

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:13:50.66 ID:xSBPy5VB0

目から血を流していない所を見れば、普通の人のようだ。

のび太(やった!また普通の人を見つけたぞ!)

そう思いのび太が接触を起こす前に、2人の男女が橋の反対側、のび太達のいる方から出てきて、その男に接触した。

のび太(また人が!?男の人の視界をジャックして見るに、この二人も普通の人もみたい)

普通の人が、一気に3人も。

のび太(皆で集まれば、十分化けもの達にも対抗できるはず!)

5人揃えば怖いものが無い。

その事を幾度もの冒険で知っているのび太は3人に自分の存在を知らせようと駆けだす。

しかし、次の瞬間。

のび太「!?」

のび太達の反対側の橋に居た男が懐から拳銃を取り出した。

銃口の向く先は―――――――――


―――――――――化けものではなく、2人の男女の、男の方へ。

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:15:45.29 ID:xSBPy5VB0

のび太「な、なにしてるんだ!!」

本能的に危険を感じ取り、ポケットからショックガンを取り出す。

他人や周囲の危険を感知し、行動に移すことが出来る。

根が優しいのび太だからこそ体現することのできた芸当だった。

瞬時に狙いを定め一発撃ち込む。

バシュン!!

放たれた弾は一直線に男の構えた銃へ向かっていき。

バチィン!!

人に当たった時とはまた違う軽快な音を立てて、男の持っていた銃を川底へ跳ね飛ばした。

???「チッ、誰だ邪魔すんのは!!」

今にも殺さんばかりの憎悪を込めて、銃を飛ばされた男が叫ぶ。

のび太「う、動くな!動いたら撃つぞ!」

丘から飛び出しながらのびたが言う。

266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:18:21.66 ID:xSBPy5VB0

声を震わせながら。

しかし手元のショックガンを、全くのブレなく男にむけながら。

???「・・・ちっくしょう!!」

形勢不利とみたのか、男は捨てゼリフを吐きながら逃げだした。

のび太「・・・・・・・ふぃ〜」

その背に追撃をかけることなく、のび太は緊張を大きく吐き出した。

高遠「のび太君!大丈夫!?」

あとから追いかけてきた玲子が心配そうな顔で聞く。

のび太「大丈夫、全く問題ないよ」

にこりと笑いながら親指を立てる。

???「ありがとう、助かったよ」

銃を突きつけられた男が、言った。

のび太「どうして銃なんか突き付けられたんですか?
あの人、化けものになっている様には見えなかったのに」

???「コイツを取り戻したくて、俺を狙ったんだと思う」

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:20:40.17 ID:xSBPy5VB0

そう言って、隣に居る女の子を見る。

???「お前も、よそ者だな」

ぶっきらぼうに、女の子がのび太に向けて言った。

のび太「お、おまえって・・・そうだけどさ」

いきなりあんた呼ばわりされて困惑するのび太に、男の方が慌ててフォローする。

???「コイツ、村の儀式の為にあんまり人と関わった事が無いから口のきき方とかあんまり出来てなくて」

???「コイツって言うな。名前で呼べ。恭也」

女性は恭也と呼ばれた人物を睨みながら訂正を求めた。

ただし、睨んだ目に特別怒気が籠っているわけではなかった。

それよりも、どちらかというと子供が拗ねた時に含める感情の方が大きく思えた。

のび太(何だかんだで、良い感じの2人なんだな)

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:36:02.27 ID:xSBPy5VB0

須田「そういえば、自己紹介してなかったか。俺は須田恭也って言います。
夏休みを利用してこの村に来てました」

夏休み。

その単語がチクリとのび太の胸を刺したが、表情は穏やかなままのび太も自己紹介した。

追って玲子が自己紹介したあと、最後にぞんざいな口の聞き方をしていた女の子が、名乗った。

美耶子「・・・神代 美耶子。」

その名前を聞いて、玲子が反応した。

高遠「・・・・・みや、ちゃん?」

そう呟いた玲子に、美耶子も反応した。

美耶子「何故その呼び方を知っている!誰から聞いた!?」

高遠は視線を一度宙に浮かせてから、答えた。

高遠「貴女がみやちゃんだったの・・・・。春海ちゃん。四方田 春海ちゃんから聞いたの。
秘密だって言われてたけど・・・・」

美耶子「春海は無事なのか!」

高遠「今の所無事だと思うわ。断言は出来ないけど・・・」

美耶子「そうか、無事なのか」

275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:42:13.09 ID:xSBPy5VB0

初めて、美耶子がほっとした表情を見せた。

のび太(顔は可愛いけど、性格がなぁ。やっぱりしずかちゃんの方がいいや)

そんな勝手な批評をしていると、南の方を見て、恭也が声をあげた。

須田「あれ、なんだろうあれ・・・・
前に見た時になかった気がするけど」

その声に反応して皆が一斉に南を見る。

遠くにみえたのは、建物、というより集落。

光を避けるかのように板をすき間なく繋ぎ合わせたそれは、いびつな形で高く広く広がっていた。

のび太「なんだろう、あれ・・・」

美耶子「おそらく、屍人達が光を避けるために作ったんだろう」

のび太「屍人?」

美耶子「街中を徘徊している化けものだ。お前も会っただろ」

のび太「あの化け物の名前は、屍人って言うのか・・・」

高遠「このまま放っておいたら、どこまでも肥大化しそうよね・・・」

高遠が言うのを皮きりに、皆が一斉に顔を見合わせた。

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:49:39.22 ID:xSBPy5VB0

言葉を出さなくても、目が物語っている。

皆思っている事は一緒であると。

のび太「なんだか、いかなきゃいけない気がする」

須田「俺もだ」

高遠「何かに、呼ばれてるみたい」

美耶子「なんでだろう。行きたいなんて思わないのに。
いかなきゃいけない気がする」

のび太「・・・・・・・・いこう」

遠くの建物を見据え、のび太歩き出す。

それを追いかけるように他の3人も歩き出す。

何かに呼び寄せられるように、4人は歪な建物、屍人の巣へと向かい始めた。

のび太(あそこに行けば、皆に会える気がする)

その気持ちは、叶うのか。


279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:53:04.17 ID:xSBPy5VB0

【八尾 比沙子 第2日/10:07:23 蛇ノ首谷 吊り橋付近】

八尾「美耶子を、奪還できなかったのね」

???「くっ、次はなんとかする!」

八尾「その必要は無いわ」

???「え?」

八尾「亜矢子を使う」

???「そんな、待てっ!次は絶対に・・・」

八尾「もう時間が無いの。
儀式を執り行うわ。ついてらっしゃい」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 16:57:15.79 ID:xSBPy5VB0

【源 しずか 第2日7:00:00 刈割 不入谷教会前】

しずか「本当に良かったの?」

前田「うん、いいの」

教会に隠れていた両親と無事再開した友子は、親と仲直りをした。

しかし、親の一緒にここで隠れていようという誘いを断り、友達を探すしずかと共に行動する事を選んだ。

しずか「見つかるまでどれだけの時間がかかるかもわからないのよ?
無理をしてついて来なくても・・・」

心配そうに友子を見るしずかの手を握り、友子が言う。

前田「しずかちゃんのお陰で私は助かったの。我儘を聞いてもらってお母さん達も探してもらった。
そこまでされたのに、私だけ何もしないなんていやだわ」

握る手の力を強くして、一呼吸間をおいてから知子が言葉を続ける。

前田「それに私達・・・・友達でしょう?」




第三章 重なる歯車 終

288 名前:きっと入った屍人は石田さんのはず[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:04:01.62 ID:xSBPy5VB0

【剛田 武 第2日/8:21:11 蛭ノ塚 大字粗戸前】

ジャイアン「もう少しであの建物に着くな」

美浜「もう疲れたわよー!少し休まない?」

ジャイアン「そうだな。中に入ったらどうなるかわからないし少し休むか」

どっかりとその場に腰をおろして、目的の建物を遠目に見る。

ジャイアンもまた、何か呼ばれている気がして屍人の巣へと向かっていた。

ジャイアン「一体、あの場所に何が有るんだろうな」

独りでに口をついた言葉に答えたのは美浜ではなく、老人の声だった。

???「多分、儀式により呼ばれる御主様だろうな」

美浜「あ、あんたは志村!あんたのせいで危うく大変な事になりかけたんだからね!」

志村と呼ばれた老人は美浜の言葉を意に介さず、小型のリヤカーのようなものをジャイアンに見せた。

志村「あんた、この機械に見覚えは無いか?」


290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:06:44.15 ID:xSBPy5VB0

志村が見せたリヤカーに乗っていたのは。

ジャイアンの目に飛び込んで来たものは。

はぐれてからずっと連絡のつかなかった友の一人。

ジャイアン「ど、どど、ドラえもん!!」



動かなくなったドラえもんだった。

志村「知っているようだな。合石岳の方で拾ったんだが、妙に愛着がわいちまってな。
ここまで持ってきたんだ」

そう言ってリヤカーからゆっくりとドラえもんを下ろす。

ジャイアン「ドラえもん!」

ドラえもん「」

ゆり起してみるが反応は無い。

志村「結構な距離歩いてきたんだが、一向に反応が無くてな。
やっぱりもうこわれちまってるのか?」


292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:08:29.50 ID:xSBPy5VB0

ジャイアン「そんな簡単に壊れるはずは無いんだけれど・・・」

言いながらふと、思い出した。

ドラえもんは、ある場所を引っ張られると行動停止になる。

ジャイアン「もしかしたら、落下した時に何かに引っかかって引っ張られたのかも」

僅かな可能性に賭けて、ドラえもんの尻尾を引っ張ってみる。


ウイーーーーーーーーーン!!!


耳障りな音が鳴り響き、ドラえもんの目に光が宿る。

機能が、復活した。

ドラえもん「あれ、ぼくは・・・・?」

ジャイアン「ドラえも〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!」ギュウウウウウ!

ドラえもん「わっ、どうしたのさジャイアン!」

ジャイアン「このやろう、しんぱいさせやがってよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:11:19.71 ID:xSBPy5VB0

ひとしきり友との再会を(一方的だが)よろこんだあと、ジャイアンは現状について説明した。

志村と美浜の説明も合わさって大体の状況を整理したドラえもんは大きく息を吐いてから言葉を発した。

ドラえもん「にわかには信じられない話だけれど、この異常な空と建物を見る限り信じるしかなさそうだね
ポケットが使えればいいんだけれど、メンテを怠っていたからか、衝撃に耐えられなくて殆ど機能してないんだ」

ジャイアン「肝心な時はいっつもそれだな!」

ドラえもん「そんなこと言ったって・・・・。少し出せるものはあるから、それで何とかしよう」

四次元ポケットに手を突っ込んで、何かを探す。

ドラえもん「お医者さん鞄〜!」

美浜「すごい、そんな小さなポケットのどこからそんな大きな物を出したの!?」

ジャイアン「ドラえもんのポケットは四次元空間に繋がってて、色んなものを取り出せるんだぜ!」

志村「俄かには信じがてえけど、見せられた上にこの状況じゃ、信じちまうな・・・」

ドラえもん「とりあえずこれで皆最低限の治療と回復は出来るから、万全の状態にしてから先へ進もう。
本当は、どんな病気にでも効く薬を使って起きたけれど、寝てる場合じゃないしね」

全員の状態を診察して適切な薬をだしたあと、ドラえもんは渋い顔をした。

ドラえもん「どうやら、君達の体にはお医者さん鞄では治せないものがあるようだね。
この異変が終わったら、皆に薬をあげるよ」

299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:14:07.76 ID:xSBPy5VB0

ジャイアン「いいんだ、視界ジャック出来なくなったら困るしな。
さて、少しだけ仮眠をとったら、突撃しようぜ!
化物は皆、俺様がギタギタにしてやる!」

言うや否や、いびきを立てて寝始める。

のび太並みの寝の速さに驚きながら、ドラえもんが立ちあがる。

ドラえもん「ぼくが見張りをしておくから、みなさんは寝てて下さい。
今まで寝てたんだから、ぼくも働かないとね」

美浜「それじゃあお言葉に甘えさせてお貰うわ。おやすみなさ〜い」

志村「俺も軽く寝るとするか」

全員が寝る体制に入ったのを確認してから、ドラえもんは辺りを見回す。

ドラえもん(のび太君。待ってて。ぼくが絶対に助けるからね!)

物語は、一つの場所へとゆっくりと進んでいく。

301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:20:50.15 ID:xSBPy5VB0

【骨川 スネオ 第2日/0:15:28 宮田医院第一病棟診察室】

スネオ「う・・・うん」

怪異に巻き込まれてから3度目。

気絶慣れのようなものをしていたスネオは早い段階で意識が戻ってきた。

スネオ「ぼ、ぼく生きてる!?化けものになってない!?」

ぺたぺたと顔を触るも変な様子は無く、あるのは何時もの(自称)美形の顔だけだった。

恩田「あら、もう起きて大丈夫なの?」

恩田がベッドの脇から声をかけてくる。

スネオ「恩田さんも無事だったんですか?」

恩田「ええ、牧野さんと宮田さんに助けてもらえたので」

恩田の横、少し離れた位置に居る男を一瞥しながら言った。

牧野「僕は、何もしてませんよ・・・・・
儀式も出来ず、女の子を見捨てて、また今も助けることも出来なかった。
僕は・・・僕は・・・・」

スネオ「女の子を、見捨てた・・・?」

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:24:56.42 ID:xSBPy5VB0

その言葉が引っかかった。

スネオ「もしかしてその子、ピンク色の服を着た小学生じゃなかった?」

牧野「ああ、一人はそんな服装だったよ・・・」

スネオ「しずかちゃんだ・・・」

思わず、息をのむ。

牧野「君、あのしずかって子と知り合いだったのかい!?」

スネオ「知り合いもなにも、一緒にここへ来た友達さ!
やいお前、しずかちゃんを見捨てて逃げてきたって言うんなら、許さないぞ!!」

布団から飛び起きて、牧野を詰るスネオ。

詰られた牧野は俯いて、

牧野「仕方なかったんだ・・・・
鉄砲を持ったやつに襲われてたから・・・」

と弁明した。

スネオ「ふざけるな!だからって女の子を置いて逃げるなんて、最低だぞ!!」


306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:30:37.10 ID:xSBPy5VB0

今にも牧野に殴りかからんばかりの勢いでスネオが批難する。

スネオ「お前大人なんだろ!だったら、ぼくたち子供を身を呈して守るものじゃないのか!」

強く批難するスネオを落ち着かせようと、恩田が口を開こうとした。

すると。

美奈「キュウアアアアアアアアアアエエエエエエエエエエ!!!!!」

耳障りな鳴き声をあげながら、再び美奈が現れた。

3人「う、うわあああああああ!!」

診察室の出入り口は一つ。

その場所には今美奈がいる。

窓は全てしまっていて、スコップを持っていて臨戦態勢の美奈を避けて開けるなど出来る筈が無い。

スネオ「お、おしまいだぁ・・・・・・」

頼みの綱の宮田と呼ばれる人物はいないらしく、視界ジャックしてもいる気配は無い。

309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:34:35.75 ID:xSBPy5VB0

美奈「ウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオ!!」

ゆっくりと恩田に近づいていく美奈。

捉えるように。

逃がさぬように。

スネオ「う、うわああああああ!!」

枕を投げて体当たりするスネオだったが、屍人である美奈にそんな攻撃が通用するはずもなく、簡単にあしらわれてしまう。

スネオ「くうぅ〜、恩田さん、早く逃げて!」

なおも足を蹴飛ばしたりして時間稼ぎしようとするスネオだったが。

美奈「エエエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンン!!!!」ブンッ

スネオ「ぎゃあ!」バキィ!!

ドシャ!

美奈の振るったスコップに殴りつけられ、地面へ叩きつけられてしまう。

スネオ「う・・・うう・・・・・」

絶対的絶望。

恩田さんは恐怖で逃げれず、牧野は固まっていて、自分は地面に倒れている。

313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:39:22.27 ID:xSBPy5VB0

どう足掻いても絶望な状況に、スネオは涙を流した。

スネオ(みんな殺されちゃうんだ・・・・こいつに)

ならばせめて。

最初に殺される役であろう。

他の人が死ぬのを見る前に、自分が最初になろう。

そう思って立ちあがろうとした矢先、奇跡は起こった。

牧野「えーーーーーーい!!!」

いつの間にか鉄パイプをもっていた牧野が、美奈の頭を思い切り殴りつけた。

スネオ「牧野さんっ!?」

美奈「ウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオ!!!?!?!!??!」

突然の不意打ちに、美奈の体が大きく揺らぐ。

絶対的に無害だと思っていたものの反抗。

それは、屍人にとっても精神的にも肉体的にも大きなダメージとなり得た。

319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:47:40.46 ID:xSBPy5VB0

牧野「このっ、このっ、このぉ、このぉぉ!!
僕だって・・・・・僕だって・・・・・僕だってぇぇぇ!」

へたれだと思っていた人が。

しずかちゃんを見捨てた酷い奴だと思っていた人が。

敢然と屍人に向かい戦っている。

夢にも見えるその光景を現実だと教えてくれたのは、美奈が持っていたスコップが落ちる音だった。

ガシャン!

美奈「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアグキョエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

盛大な悲鳴をあげて倒れる美奈。

恩田「お姉ちゃん!!」

その光景に悲鳴を上げる恩田。

スネオ「い、今のうちだ!」

起き上がり恩田の手を取って逃がそうとするスネオ。

しかし、恩田はその場から動こうとしなかった。

恩田「お姉ちゃんが!お姉ちゃんが!!」


320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:52:29.15 ID:xSBPy5VB0

こんな姿になっても、実の姉への情を捨てきれない恩田は、子供のようにいやいやをした。

牧野「今は、どうすることも出来ません!」

そんな恩田の手を、牧野も引っ張っていく。

2人に引っ張られた恩田は、半ば強制的に診察室から連れ出された。

スネオ「これからどうします!?」

牧野「もうここは危険です!どこでもいいから遠くへ逃げよう!」

放心状態の恩田をつれて2人は病院を飛び出した。

3人は向かう先を決めずに出ていった。

運命の悪戯か、必然か。

三人の向かう足の先には、屍人の巣が悠然と待ち構えていた。


第4章 変わる運命 終


322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 17:59:20.39 ID:xSBPy5VB0

【野比のび太 第2日/20:31:33 大字粗戸 眞魚川周辺】
のび太「ついに、来ちゃったね」

目の前にそびえる巨大な建物に威圧感を感じながら、のび太が呟く。

来る途中に皆に会えたらと淡い期待を抱いていたが、ついに会う事なくここまで到着してしまった。

須田「でっかい建物だな・・・・美耶子、絶対に俺から離れるなよ」

美耶子「言われなくてもそのつもりだ、バカ」

高遠「春海ちゃん、大丈夫かしらね・・・」

のび太「待っててねみんな・・・・・・」

いつの間にかふり出していた雷雨をものともせず、屍人の巣へと足を踏み入れていく。

全ては、皆と会うために。

平穏な日常に戻るために。


323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:04:04.66 ID:xSBPy5VB0

【骨川 スネオ 第2日/18:22:45 大字粗戸 眞魚川周辺】

スネオ「全く、嫌な雨だなぁ、もうっ!」

全身を濡らす雨に嫌悪感を抱きながら、スネオは屍人の巣の前で仁王立ちする。

スネオ「ヤバそうな建物だけれど、なんかここに皆がいそうな気がするんだよなぁ」

それは完全なる勘。

一つとして根拠のないもの。

だが、スネオはここに皆がいると強く感じ取っていた。

それは、長年共に過ごしてきた仲間の見えない力なのか。

牧野「バールだけじゃ心もとなくないかな・・・・」

牧野が不安そうに尋ねる。

スネオ「さっきから多数の視界をジャック出来てるんだ。
ここには結構な量の化けものがいる。見つかったらどんな武器を持っててもおしまいさ」

恩田「それもそうね・・・・」

スネオ「今更だけどさ、皆着いて来なくても良いんだよ?
多分この先は凄く危ない。道中見たような犬みたいなやつや飛んでる奴もいっぱいいると思う」

324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:04:44.10 ID:xSBPy5VB0

牧野「良いんです、僕は。何故か僕も、呼ばれているような気がして」

ハッキリとした口調で牧野が言う。

それは、ループした世界でも牧野が見せられなかった勇気。

小さな一人の男の子から貰った勇気。

求導師として、本来持ち得ているはずの勇気。

恩田「今更私一人で置いて行かないでくださいよ・・・・
一人でいる方が、よっぽど危険です」

姉は既に屍人と化してしまい、頼るもののいない状況。

確かに屍人の巣は危険だが、一人でいる方がそれよりもはるかに危険だ。

一人では、いつ頭脳屍人(ブレイン)や羽屍人、などに見つかって殺されてしまうかわからない。

今この場で恩田に残されている選択肢は、ついて行くしかないのだ。

スネオ「じゃあ、何があるかわからないけど、進んでみようか。
この冒険が終わったら、ママに頼んで僕の勇士を本にして貰うんだ。くふふ!!」

326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:10:10.40 ID:xSBPy5VB0

【源 静香 第2日/19:11:42 大字粗戸 眞魚川周辺】

しずか「酷い雨ねー・・・・」

壊れかけの屋根の下に座りながら、しずかが呟く。

前田「止みそうにないね・・・」

しずか「咄嗟に建物の中に入っちゃったけど、とても危ない場所みたい。
さっきから視界ジャックで周りを見たけど、四方八方に怪物がいるわ」

前田「でも、今更この雨の中彷徨うわけにもいかないでしょ?」

しずか「そうね。それに、なんだから呼ばれている気がするの」

前田「呼ばれている気がする?」

しずか「そう。ドラちゃん達がよんでいる気がするの。ここだよって」

前田「しずかちゃんが言うならそうなのかもね」

しずか「こんな事言うなんて、気味悪いでしょう?」

前田「ううん、全然。しずかちゃんだもん」

しずか「ふふ、ありがとう。じゃあ、そろそろいきましょう」

2人で立ちあがって、屍人の巣の中へ入っていく。

中に居るであろう、友達に会える事を信じて。

329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:14:06.14 ID:xSBPy5VB0

【剛田 武 第2日/18:00:01 大字粗戸 眞魚川周辺】

ジャイアン「やっとこの時が来たな!」ブンブンッ

バットを大きく振り回しながら、息をまく。

ドラえもん「打ち入りに行くんじゃないんだから・・・・
あくまでも穏便に、だよ?」

志村「お前さんは、来なくても良いんだぞ?」

美浜「今更おいて行くとか止めてよ!折角あんたと違ってたのもしそうな人達に会えたんだから!
あんたこそ、来なくてもいいのよ?」

志村「どうせ化けもんになるなら、せめて若い者の助けになったって良いだろう」

ドラえもん「まあまあ、穏便に・・・
これから先どうなるかわからないんだから、仲間割れしている場合じゃないよ」

ジャイアン「そうだぞ、なんたって化けもの退治に行くんだからな!」

ドラえもん「違うでしょ!あくまでも目的は中を調べてのび太君達がいないか確かめるだけ、だよ」

331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:17:09.81 ID:xSBPy5VB0

ジャイアン「そう言えばそうだったな」

ドラえもん「んもぅ・・・・」

美浜「ん、雨?」

ぽつぽつと水滴が落ちてきて、ドラえもん達の体を濡らし始める。

志村「ふり出しそうだな・・・・
早いとこ入った方が良い」

ジャイアン「そうだな、行こうぜドラえもん!」

ドラえもん「そうだね!」

美浜「ま、待ちなさいよっ!おいてくなんて許さないわよ!!」

何とも緊張感のない会話を繰り広げたあと、全員で屍人の巣に向かっていく。

仲間同士が出会うのは、すぐそこに迫っていた。



第五章 集結 終

332 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:17:57.24 ID:xSBPy5VB0

【野比のび太 第3日/0:00:00 屍人ノ巣 水鏡】

幾つもの道を越えて。

幾つもの苦難を越えて。

のび太達は屍人ノ巣の最深部へとやってきた。

そこでは、八尾 比沙子が丁度儀式を終えたところだった。

八尾「ちょっと遅かったわね。今儀式は終わった所よ」

冷酷に伝えながら、美耶子を睨む。

八尾「あんたが余計な事をしなければ、儀式は速やかに終わったのに・・・」

美耶子「誰がお前の思い通りになんかなってやるもんか!」

八尾「まあ、それももういいわ。堕辰子様は復活なされたのだから」

微笑む八尾の言葉に重なるように、広間の中央にあるガラスのような物体に横たわっていた人が燃え上がる。

???「亜矢子!!」

334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:23:10.11 ID:xSBPy5VB0

八尾の後ろに佇んでいた男が声をあげる。

その声に反応すること無く人は燃え上がり、その焔の先から何か物体が現れ始めた。

八尾「ああ・・・・・堕辰子様・・・・・・」

光悦とした表情で八尾が呟く。

堕辰子「ギッィギィ!!ウイッ!ギュウウウ!!」

堕辰子と呼ばれた存在が徐々に形を作り出し、完成していく。

須田「な、なんだアイツ・・・・」

高遠「なにあれ・・・・」

異形蠢く村を進んできたのび太達ですらも、異常だと思える生物がそこに誕生した。

堕辰子「ギュウウウウウウウウウ!!!」

八尾「どうしたの?罪は洗い流されたのでは・・・・?」

堕辰子が暴れ、もがく。

まるで理性がないかのように。

八尾「そんな、復活は完全ではなかったというの・・・・?」

338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:32:44.18 ID:xSBPy5VB0

困惑する八尾の仮説を証明するかのように、堕辰子が暴れ狂う。

???「ぐわあああああ!!!」ドシャア!!

堕辰子の突進を受け、八尾の後ろに居た男が壁に叩きつけられる。

高遠「逃げましょう!」

高遠の声を皮切りに、全員で逃げていく。

勝てない。

誰もが直感的にそう思った。

堕辰子「キュウェ!!グググググッ!!」

そんなのび太達を追い詰めるかのように、堕辰子が行く手をふさぐ。

のび太「くらえっ!!」

バシュンバシュン!

ショックガンを二発立て続けに撃ち込む。

だが堕辰子には効いた様子もなく、一瞬の隙を作ることも出来なかった。

美耶子「ダメだ、そんなものじゃ傷つけられない!」

341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:38:56.52 ID:xSBPy5VB0

須田「くっ・・・どうすれば・・・・」

のび太(このままじゃ・・・・皆やられちゃうよ!!)

ショックガンが聞かなかったという事は、名刀“電光丸”も効果は薄いだろう。

他に持っている物は無く、頼れる物は無い。

唯一つあるとすれば。

のび太「・・・・・・・・」

無理やりにでも、頼れるものを作り出そうとするならば。

のび太「・・・・・・・」

頼れるものは、一つだけあった。

のび太「ドラえもーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっっ!!!」

助けを呼ぶ、声だけが。


343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:40:42.18 ID:xSBPy5VB0

その声は、どこまで響いたのだろうか?

その空間だけ?

屍人の巣の中だけ?

羽生蛇村の中だけ?

それが分かる者はいない。

ただ、その声はしっかりと役目を果たすことが出来た。

助けを呼ぶ声を、伝えることが出来た。

ドラえもん「のび太くーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!」

遠くから、声が返ってくる。

その声はどんどん近付いてきて―――――――――――




―――――――――――ついに、会えた。

345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:42:30.12 ID:xSBPy5VB0

ドラえもん「のび太くんっ!!」

堕辰子を挟んだ向こう側に、ドラえもんとジャイアン、それに2人の男女が見えた。

のび太「ドラえもん、ジャイアン!!」

ジャイアン「なんだコイツはぁ!?」

のび太「堕辰子って言って、ショックガンが効かない化けものなんだ!
なんとかしてよドラえもん!」

ドラえもん「んん、化けもの相手かぁ・・・・
なんかないかなんかないかなんかないか」

必死に未だ機能を回復していないポケットを探るドラえもん。

ドラえもん「なんかないかなんかないか・・・・・・あ、これならどうだっ!」

ドラえもんが取り出したのは細いステッキだった。

須田「なんかポケットから取り出したぞっ」

のび太「ドラえもんはポケットから何でも取り出せるんだけど・・・・
そんなもの出しても意味無いよ!」

346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:43:19.71 ID:xSBPy5VB0

頼りないステッキ。

傍から見ればただの棒だ。

堕辰子「グイッキュウ!!」

堕辰子すらも笑っているように見えた。

そんなもので何が出来るのかと。

それが普通のステッキならば、何もできなかっただろう。

それが秘密道具の『神様ステッキ』でなかったのなら。

ドラえもん「皆、目をつむってね!
光を最大にして攻撃だあぁぁぁぁぁ!!!!」


ピッカーーーーーーー!!!


辺り一面が眩い光に包まれる。

限りなく太陽と同じ様に作られた光。

全てを照らす光。

349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:45:58.24 ID:xSBPy5VB0

その光は、現世の攻撃など受け付けない堕辰子の体を焼き、致命的なダメージを与えた。

堕辰子「ギュウウウウウウウウエエエエエエエエエエエエエ!!!!」ジタバタジタバタッ

もがきながら光から逃げようとする堕辰子。

しかし、室内をいっぱいに照らす聖なる光から身を避ける事は出来なかった。

堕辰子「ギュウウウウウアアアアアアアアアアアアア!!!」ドプンッ

出てきた場所である、部屋の中央のガラスのような場所へと入っていく堕辰子。

ドラえもん「逃がさないぞ!」

唯一目を開けていられるドラえもんだけが追撃をかけようとするが、どうやってもガラスの中へは入れなかった。

ドラえもん「あ、ステッキの電池が!」

入る方法を模索していくうちにステッキの電気が切れて、輝きが失われる。

ピカーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブツンッ

光は失われ、辺りはまた薄暗い元の状態に戻ってしまった。

350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:47:20.66 ID:xSBPy5VB0

八尾「よくも・・・・よくも堕辰子様を・・・・・」ドプン

ふらふらとよろけりながら、八尾もガラスの中へと入っていく。

ジャイアン「にゃろう!待ちやがれ!!」ブンッ

慌てて追いかけてバットを振るも、ガラスには傷一つ付けることが出来なかった。

のび太「どうやって、この中に入ったんだろう・・・・」

こんこんと紅い水を湛えるガラスを触ってみるも、人が入れるような感じは一切なかった。

美耶子「多分、この中に入るには堕辰子の血が必要なんだと思う」

美耶子が同じ様にガラスに触れながら言った。

志村「堕辰子の血・・・?」

美耶子「あの生き物の生贄か、あの生き物の血だ」

高遠「でも、あの化け物は逃げちゃったし、生贄・・・ここに居た子なら、消えてしまったわ」

美耶子「そうだ。だから、多分この中にはもう入れない」

353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:55:35.49 ID:xSBPy5VB0

ジャイアン「なんだってんだよ!それじゃあ追い込んだのにダメじゃねえか!」

のび太「何か他に方法は無いのかな?」

美耶子「あればやっている!」

須田「どうするかなぁ・・・・」

全員が全員、途方に暮れてしまった。

ここまで来て、追う術が無くなってしまうとは。

そこへ、更に2人の訪問者が現れた。

しずか「あら、そこに居るのは・・・・・のび太さん!?」

のび太「しずかちゃん!!」

しずかちゃんも無事だったんだ。

喜びと共に、再開を喜びあうドラえもんとのび太とジャイアンとしずか。

しずかにも状況を話し、どうすればいいか打開策を聞いてみる。

しずか「抜け穴フープを使えばいいんじゃないかしら」

しずかが、おずおずという。

354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:56:12.44 ID:xSBPy5VB0

抜け穴フープ。

かつてしずかがブリキの世界を冒険していた時に使ったフープ。

壁などにつければ、思い通りの場所へ通してくれるフープ。

ドラえもん「その手が有ったかぁ!」

ポンと手をならし、ポケットを探る。

取り出せてくれ。

4人はそう思いながらドラえもんの手の先をじっと見つめる。

須田達も、意味がわからないながらも状況を打開してくれるかもしれない不思議な青い生き物の手先をじっと見つける。

程無くして、ドラえもんが笑顔になった。

ドラえもん「抜け穴フープ〜!」

のび太「やったあ!とり出せたんだね!!」

ジャイアン「あとは誰が行くか、だな」


356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 18:57:56.00 ID:xSBPy5VB0

須田「俺は行くよ!」

美耶子「恭也が行くなら、私も行く」

美浜「私はヤバそうだからパス・・・」

志村「俺はここで残ろう。屍人が来て誰も身を守れるものがいないのはこまるだろうしな」

しずか「私も行くわ!」

のび太「しずかちゃんはここに残ってて!」

しずか「いやよ、私も戦う!」

のび太「ここから先はなにかがあるかわからないんだ。そんな所に、しずかちゃんをいかせるわけにはいかない」

しずか「私だってここまで来たのよ!」

ジャイアン「しずかちゃん、のび太の言う事を聞いてやれよ!」

しずか「でもぉ・・・・・」

のび太「大丈夫、ちゃんとかえってくるさ!」

しずか「・・・・・約束よ」

のび太「うん!」

高遠「私はこっちで待っているわ。正直行っても足手まといにしかなりそうもないから・・・」

358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:01:09.81 ID:xSBPy5VB0

ドラえもん「じゃあ行くメンバーは、須田さん、美耶子さん、のび太君、ジャイアン、それに僕でいいね?」

のび太「待った!」

ドラえもん「?」

のび太「ドラえもんも、ここに居て」

ドラえもん「どうしてだい?」

のび太「こっちに残る人達の中で抜け穴フープの使い方を知っているのはしずかちゃんだけなのは心配だよ。
それに、ドラえもんがいなかったら、もし向こう側で堕辰子を逃がしちゃったときどうしようもなくなっちゃうでしょ?」

ドラえもん「それは・・・そうだけど・・・・」

のび太「あと、スネオの事を探してあげて欲しい。
向こうじゃ、落ち着いて探査道具も出せないでしょ?」

ドラえもん「・・・・・・そうだね」

のび太「大丈夫だよ、絶対に帰ってくる」

もう一度眩しい笑顔で笑う。

359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:02:42.36 ID:xSBPy5VB0

のび太「それじゃあ、いってくるよ」

ジャイアン「絶対倒してくるからな!」

須田「よーし、やってやるぜ!」

美耶子「恭也、頑張ろう」

ドラえもん「のび太君、皆、気をつけてね」

しずか「くれぐれも気をつけてね」

志村「こっちは任せろ」

美浜「私はまだ死ねないんだから、頑張ってよね!」

高遠「無理せず、危なくなったら戻ってきてもいいのよ」

それぞれ思い思いの言葉を交わし、決戦の地へ向かう。

のび太「じゃあ、行くよ!」

決意を込めた目を輝かせ、ガラスの先、いんふぇるのへと向かう。

最終決戦が、始まる。



第5章 危機、再会、決戦 終


360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:06:42.56 ID:xSBPy5VB0

ここで状態、道具の纏めをします

のび太:ショックガン、名刀”電光丸”所持
ドラえもん:ポケット不調
スネオ:ラジコン粘土所持
ジャイアン:石ころ帽子、バット、ボール
須田:血の契約済み、猟銃所持
美耶子:ケルブ既になし
志村:猟銃所持
美浜・高遠・恩田:所持物無し


364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:13:08.95 ID:xSBPy5VB0

【野比 のび太 第3日目/10:00:00 いんふぇるの】

のび太「ここは・・・・・・・・」

抜け穴フープを使った先。

堕辰子の逃げた、ガラスのような床の先。

そこは、綺麗な花の咲き乱れる幻想的な場所だった。

須田「なんか凄いな。みたこともない綺麗な花でいっぱいだ」

ジャイアン「表向きは、良い場所だな。
ここで野球がしたいぜ」

ここを何も知らぬ人が見たら何と思うだろうか。

人の近づけぬ神の園。

幻想的な光景に包まれた現世ならぬ場所。

そう、それは人の言葉にすれば『楽園』と呼ぶにふさわしい場所だった。

須田「・・・・・・・あ、あれ!」

咲き乱れる花の先、視界でギリギリ捉えられる程度の位置に神はいた。

八尾に寄りそわれながら、息絶え絶えで辛うじて生きていると言った状態に見えた。


365 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:14:22.18 ID:xSBPy5VB0

のび太「あと少しみたいだ!」

予想以上に弱っている堕辰子を見て、のび太が喜ぶ。

これならば、いけるかもしれない。

そう思い堕辰子に近づこうとしたその時。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

急に地面が揺れ始め、不気味な声が響いた。

八尾「あなた達・・・・こんなところまでついて来て・・・・・絶対に許さないわ」

ズガァン!!!

のび太達と堕辰子、八尾を隔てるように石の柱が地面から現れる。

???「くっくっく、へっへへへへへへへ!!!」

それと同時に、石の蔭から一人の屍人が姿を見せる。

それは、かつて須田と美耶子を襲った男。

のび太が銃で撃退した男。

美耶子「淳!!」

神代淳にそっくりの容貌をしていた。

367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:17:14.69 ID:xSBPy5VB0

淳「うおりゃあ!」ブンッ

手に持っていた刀を一振りして、淳が吼える。

美耶子「焔薙を持ちだしたのか!?」

淳の持っている刀を見て、美耶子が驚く。

ジャイアン「焔薙・・・・?そりゃ噂に聞いてた名刀じゃねえのか!?」

美耶子「焔薙は神代家に代々伝わる名刀だ。
まさか持ちだされているとは・・・」

淳「うへへへへへ、くくくくくくく!!」

どうだと言わんばかりに名刀を前へ突き出し、笑う。

そんな態度の淳を前に、のび太が一歩前に踏み出した。

のび太「ここは僕に任せて」

ジャイアン「おいおい、相手は刀を持ってるんだぞ!
後ろには猟銃だって担いでる!」

のび太「だからこそ僕の出番なのさ」

368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:18:39.87 ID:xSBPy5VB0

ポケットから名刀“電光丸”を取り出し、スイッチを入れる。

今まで使われなかった名刀は、出番が来た事を歓喜するかのように手の中で震えた。

のび太「早くいって!堕辰子に八尾が何かしようとしてる!」

はるか向こうで、堕辰子が光り始めていた。

八尾が祈りをささげ、何かをしている様だった。

ジャイアン「・・・・・・・・・・負けたらぶっ飛ばすかんな!!」

そう強くいって、堕辰子の元へと走り出す。

淳「うおりゃあ!!」

ここは通さないぞと言わんばかりに淳が猟銃を構えようとするが。

のび太「お前の相手はぼくだ!」

369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:19:37.63 ID:xSBPy5VB0

ショックガンを放ち、淳の動きをけん制する。

須田「俺達も行こう!」

須田も美耶子の手を掴んで走り出す。

淳はどちらか一方でも仕留めようと焔薙を振ろうとするが、それものび太の電光丸に防がれてしまう。

淳「うおおおおおおおおおおっ!!」

邪魔をされて怒り狂い、のび太を威圧する淳。

のび太「そんな怒られ方じゃ怖くないやい!
ママの方がよっぽど怖いよっ!」

負けじと淳を見返して立ちふさがるのび太。

絶対不利の戦いが、はじまった。

373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:23:06.78 ID:xSBPy5VB0


ジャイアン「復活する前に殴り倒すぞ!」

ジャイアンはバットを構え、須田は猟銃を構える。

が、一足遅かった。

堕辰子「グウククククククケィオ!!!」

サイレンのような鳴き声を響かせて、瀕死の堕辰子が起き上がる。

真っ白い光を纏いながら。

八尾「ああ、復活なされたのね・・・・
実は、全て返されたのね」

八尾が堕辰子を見上げながらとけた笑みを漏らす。

美耶子「そんな。完全に治ってる・・・・」

復活した姿よりも美しく、歪な姿で舞う堕辰子。

それは謀らずも、その場に居る全員に完全なる復活を遂げた事を告げた。

376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:26:43.76 ID:xSBPy5VB0

ジャイアン「こんにゃろー!」カキーン!

ポケットに入れて置いたボールバットで打ってを堕辰子にぶつける。

バシュウ!!

ジャイアンが渾身の力を込めて放ったボールは、堕辰子に届く前に消し飛ばされてしまった。

須田「くらえっ!」バンッバンッ!!

これならどうだと須田が猟銃で堕辰子を狙うが、それも傷一つ負わせることが出来なかった。

八尾「無駄よ。神に現世の物の攻撃がきくとでも思ってるの?」

嘲るように八尾が言う。

ジャイアン「それならこれでどうだ!」

石ころ帽子を被り、一時的に姿を消す。

堕辰子「!?キュオオオオオグイックゥ!?」

目の前に居た少年が消えて驚く堕辰子。

ジャイアン「くんの〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」

堕辰子の死角となる後ろから、ジャイアンがフルスイングのバットを叩きこむ。

379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:37:59.97 ID:xSBPy5VB0

それがただの生き物相手であったのならば、おそらく耐えられるものはいなかったであろう。

ただの生き物相手ならば、の話だが。

バシュウ!!

何かが燃えるような音がして、ジャイアンのバットの堕辰子に触れた部分が消し飛ぶ。

ジャイアン「げえぇ!?なんだこりゃあ!」

堕辰子「グググググイィ!!」

無駄だと言わんばかりに堕辰子がけたたましく吠える。

須田「くそっ、どうすればいいんだ・・・・!」

美耶子「宇理炎があれば・・・・・」

八尾「無駄よ。宇理炎は封印したもの。もう堕辰子様を止められるものは無いわ」

八尾も勝ち誇ったように高笑いをする。

八尾「向こうでも決着がついたみたいだし、もう終わりにしましょう」

言葉に釣られてのび太の方を見ると、淳がのび太の電光丸を撃ち飛ばしていた。

381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:42:05.22 ID:xSBPy5VB0

淳「くっけけけけけえけええっけけえ!!!」

のび太「うぅ〜・・・・・」

電光丸の電池は切れ、ショックガンは既に弾切れ。

不死身の敵を相手に善戦したのび太だったが、限界が来てしまった。

のび太(やっぱり僕じゃダメだったのかな・・・・?)

なにをやってもだめ。

いつも失敗ばかり。

今回も、そうなってしまうのか。

のび太「やっぱり僕は・・・・・・何もできないのかな・・・?」

手に持った弾切れのショックガンが、滑り落ちる。

それが地面に落ちる前に、のび太は肩を叩かれた。



スネオ「良く頑張ったじゃないか。お陰で間に合ったよ。
のび太にしては上出来だ」

388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:46:12.43 ID:xSBPy5VB0

のび太「え・・・・・・?」

いないと思っていた友。

最後まで行方がわからなかった友。

それが今、のび太の肩を叩いた。

牧野「須田さん!これを受け取ってください!」

牧野が何かの像を持ちながら須田に駆け寄る。

淳「おえええあああああ!!」

牧野を先にいかせないように刀を振り被る淳だったが、3度目の邪魔をされてしまった。

ゴシャア!

鈍い音がして、ネイルハンマーが淳の頭に当たる。

宮田「邪魔をするな」

スネオの脇からもう一人、男が出てきた。

392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:48:38.95 ID:xSBPy5VB0

のび太「え・・・・えっ?」

スネオ「真打ちってのは最後に登場するもんなのさ。
今の僕カッコ良かっただろ?」

笑いながらスネオがポケットから銃を取り出す。

その姿は、何故だかとても大きく見えた。

スネオ「ほら、お前の銃だよ」

空気ピストルが、のび太に手渡される。

何度も使った愛用の銃。

時には危機を救ってくれた銃。

一度くだけた心が、再構成されていく。

のび太「・・・・・・・・・・・・えーーーーーーーーーーい!!!」

バシュウッッ!!!

声と共に発射された弾は淳の額へと一直線へ進む。

淳「ぐわぁぁああ!!」

ショックガンのダメージが溜まっていた淳が耐えきれなくなり、倒れる。

394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:51:46.49 ID:xSBPy5VB0

宮田「今のうちだな」

宮田が倒れた淳に駆け寄り、焔薙を奪う。

宮田「俺が、俺としてやるべきことを、やり遂げる」

焔薙を持って走り出す。

求導師にはなれなくても。

兄のようにはなれなくても。

宮田司郎は、宮田司郎として生きていく。

小さな子供に教えられた事を胸に、宮田は走り出した。

八尾「ぞろぞろと集まって・・・・・うっとおしいわ!」

宇理炎と焔薙が揃ってしまった危機感に苛まれながら、八尾が吐き捨てる。

八尾「仕方ない。堕辰子様!そのお姿を!!」

堕辰子「キュオオオオオオオオオゥオケェ!!」

八尾が言うとともに、堕辰子の姿が消えていく。

396 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:53:16.25 ID:xSBPy5VB0

須田「逃げるのか!?」

美耶子「違う!視界はまだ消えてない!見えないだけだ!」

八尾「ゆっくり一人づつ殺してやるわ!」

完全に消えた堕辰子。

影も残さず消えたそれをみつけるのは、不可能だ。

これだけの人数が、いなければの話だが。

牧野「須田さん!これを!!」

牧野が須田に銅像を渡す。

須田「これは?」

美耶子「宇理炎だ!!」

宇理炎。

使用者の魂と引き換えに全てを浄化する神の力。

須田は既に神代の呪いで不死身になっている。

それはつまり、宇理炎を無制限に使えると言う事になり得た。


398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:56:03.71 ID:xSBPy5VB0

宮田「おいガキ、これを使え」

宮田がジャイアンに刀を渡す。

名刀、焔薙を。

ジャイアン「お、俺でいいのか?って、な、なんだぁ!?」

ジャイアンが焔薙を持った瞬間、刀身が白く燃え上がり始めた。

宮田「木る伝の力だ。それなら堕辰子の首を落とせる」

木る伝というのが何かわからなかったが、刀身からあふれ出る力がぼんやりとジャイアンに勇気を与えた。

ジャイアン「へへ、やっぱ最後は俺様じゃねえとな!!」

バットを振るった時と同じように、焔薙をブンッとふる。

ジャイアン「一度こんな刀、持ってみたかったんだ」


400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 19:58:55.37 ID:xSBPy5VB0

美耶子「私が視界ジャックをして堕辰子の場所を伝える!」

美耶子が言いだす。

宮田「俺も手伝おう」

牧野「私もやります」

宮田と牧野が続いて言う。

のび太「僕が援護射撃で隙を作るよ!」

スネオ「僕も手伝うよ!」

のび太が空気ピストルを構え、スネオも空気ピストルを構える。

須田「動きが止まったら宇理炎を撃つ!」

ジャイアン「最後は俺様が叩ききってやる!」

誰が示したわけでもなく。

それぞれが自分の出来る事をやる。

即席の布陣は、神を越える力となる。

405 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:01:39.10 ID:xSBPy5VB0

堕辰子「キュウウウウウグイエグエエエエエエ!!」

姿を消した堕辰子が、耳障りな声で鳴く。

それは、全員の頭を例外なく苛んでいった。

それでも、誰一人として隙を作る事はしない。

どう足掻いても絶望。

その状況を打開するため。

明日を生き、逃げ場なんて無いこの状況から抜けだすために。

誰一人未来を諦めなかった。

美耶子・宮田・牧野「・・・・・・・・・そこだ!」

3人が同時に指をさす。

V字型に並んでいた3人が示した方向は、1点で結ばれていた。

のび太「うわああああ!!!」パァンパァン!!

スネオ「てやあああああ!!」パァンパァン!!

2人が示された場所に一斉に空気ピストルを放つ。

410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:06:09.73 ID:xSBPy5VB0

堕辰子「キュウエエウイギイイ!??!??」

この世のものではあるが、ずっと未来で作られる道具は堕辰子に少量だが隙を作らせた。

ダメージこそ与えられないものの、須田が宇理炎を撃つまでの間を十分に稼ぐことが出来た。

須田「全部・・・・終わらせてやる!!」カッ

須田が掲げた宇理炎が光り、堕辰子のいるであろう場所に煉獄の焔を作りだした。

堕辰子「グェエェェェェェェエェエエエェエエエ!!!!!」ボオオオオオオオオッ!!

全てを浄化する焔に包まれて、堕辰子がもがく。

ジャイアン「俺に任せろ!!」

強く強く踏み込んで、刀を一閃、走らせる。

スパァン!!

宇理炎と同じく全てを浄化する力を持った刀は、過たず堕辰子の首を切り落とした。

堕辰子「オアspj0qジ0jdクァjファニfhンフィアニアンpc!!??!?!?!?!!?"?!"?!」

断末魔の悲鳴をあげて、堕辰子が倒れる。

忌々しい、サイレンの音を島中に響かせて。

消えていた姿が現れ、ずたぼろの体を地面に咲き誇る花に沈めた。


413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:09:21.97 ID:xSBPy5VB0

暫くぴくぴくと痙攣していた体はやがて静かに―――――――













―――――――――――――――――――止まった。


414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:10:12.68 ID:xSBPy5VB0

のび太「・・・・・・・・・」

スネオ「・・・・・・」

須田「や・・・・・やったのか・・・・・・・?」

宮田「・・・・・・・そのようだな」

美耶子「・・・・・・・・倒したのか」

牧野「・・・・・・・・み、みたいですね」

ジャイアン「・・・・・・・・・・・・おおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!!!」

全員の感情が爆発する。

7人「やったぞーーーーーーーーっっ!!!!」

全ての元凶と思われる敵を。

神を、倒した。

418 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:13:09.66 ID:xSBPy5VB0

八尾「・・・・・・・堕辰子様」

倒された神を呆然と見つめる八尾の容姿は、醜悪な老婆へと変わっていた。

八尾「不死もなくなり・・・・復活した堕辰子様も倒され・・・・・
でも、次の世界では・・・・・・」

ふらふらと堕辰子の頭を抱えた八尾は、その場に結界のようなものを出した。

八尾「次の世界では・・・・・・・」

須田「ヤバい、逃げるつもりかっ!」

ジャイアン「逃がさねえぞ!!」

ジャイアンが追おうとするものの、到底間に合う速さではなかった。

そのまま結界に居ればの話であったが。






ドラえもん「空気砲!!」ドカンッ

422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:18:03.69 ID:xSBPy5VB0

ドラえもんの声と共に、八尾の体がはねとばされる。

結界から飛ばされた八尾は、当然他の世界に行くことが出来ない。

ドラえもん「いまだ!」

須田「宇理炎の焔よ!!」

須田の言葉と共に、八尾が宇理炎の青白い焔に包まれる。

八尾「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!」

壮絶な叫びと共に、八尾の体が燃え尽きる。

皮肉にも、幾人もの娘を堕辰子の生贄として燃やしてきた八尾は、浄化の焔によってもやしつくされて死んだ。

のび太「ドラえもん!」

ドラえもん「タイムパトロールの人から電話があってね。
八尾は時間と空間を渡れるって聞いたから、いてもたってもいられなくなって」

スネオ「全く、ちょっとひやひやしちゃったよ」

美耶子「これで、全部終わったんだな」

須田「ああ、多分な」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・

424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:18:46.44 ID:xSBPy5VB0

激しい戦いを終えたのび太達をなお追い詰めるように、地面が揺れた。

のび太「な、なんだぁ!?」

ドラえもん「神を失ったから、常世が崩壊し始めてるんだ!」

スネオ「早く逃げよう!」

ジャイアン「ここまで来て生き埋めなんて勘弁だぜ!!」

穴抜けフープに向かって全員で走る。

生きるために。

明日を迎えるために。

426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:22:40.78 ID:xSBPy5VB0

のび太「助かったぁ〜〜」

数十秒後、のび太達全員が出てすぐに、常世は崩壊して消え去った。

それは図らずも、堕辰子が完全に死んだ事を表していた。

しずか「のび太さん、皆無事だった!?」

のび太「もちろん!約束したもの」

スネオ「あー、本当に疲れたよー。
もうこりごり」

ジャイアン「この名刀、貰っちまっていいのかな!」

スネオ「いや、だめでしょ」

志村「本当にやっちまうとは・・・・・大したもんだ」

宮田「・・・・・牧野さん」

牧野「・・・・なんですか?」

宮田「俺は、俺としていきます」

牧野「・・・・・・・・・わかりました」


427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:23:25.47 ID:xSBPy5VB0

美耶子「本当に、全て終わったんだな」

須田「そうみたいだな。これで美耶子も外に出れるな」

恩田「助かったのね・・・私達」

高遠「本当に・・・・よくやってくれました」

美浜「やっと帰れるのねー!!もう私疲れたーーー!!」

思い思いの会話をして、全員で喜びを分かち合う。

ドラえもん「まだ上に屍人はいるみたいだから、安全そうな場所へどこでもドアでうつってから
何でも治せる薬を飲もう!」

のび太「そうだね!」

須田「何でも治せる薬・・・・?どこでもドア・・・・?」

スネオ「ああ、説明はドアの向こうでするよ。
今は早く朝日が見たいから」

ジャイアン「そう言えばもうそんな時間か。うおーっ、腹減ったぜ!」

ドラえもん「はいはい、後で出してあげるから。
それじゃあ一旦帰ろう!!」

ガチャ

第六章 因果律の崩壊 終

430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:25:16.04 ID:xSBPy5VB0

【後日 三隅日報】
羽生蛇村を襲った土砂災害の生存者4名を発見しました。

男性一人、女性一人、女児二人という事です。

男性は意識障害を患っていたようですが、それ以外の生存者は無事だという事です。

更に、自衛隊は13人の男女を発見したようですが、大型のヘリで助けに行ったときには既に姿を消していたそうです。

自衛隊は、引き続き調査を続けるとのことです。



のび太「だってさ、ドラえもん」

ドラえもん「寝てる時に帰って来れるとは予想外だったなぁ・・・」

のび太「まあ、良いじゃん。皆元気なんだし!」

ドラえもん「そうだね」

のび太「それじゃあ、ジャイアン達に誘われてるから野球行ってきます!」

ドラえもん「あ、のび太君宿題!・・・・・・今日くらい許してあげようかな」



エピローグ 終

434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:27:09.22 ID:xSBPy5VB0

【埋まっていないアーカイブ】
スネオと宮田、牧野は何をしていたのか?

多門と依子はどうして脱出出来たのか?

知子は何をしていたのか?

440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:32:44.53 ID:xSBPy5VB0

To be next loop.....................


とりあえず大筋のSSとしてはこの物語は終了です
アーカイブは一応出しましたが書き溜めしてないので何とも・・・・といった状況
それにしてもSIRENの時間軸がこまか過ぎて調整で死ぬかと思った
原作に沿ったように流してるんで暇な人は見比べてみると面白いかもです

441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 20:37:14.35 ID:t6hYEEMb0

>>430
「男性一人、女性一人、女児二人」の女児二人って春海と知子か?

447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 21:01:33.98 ID:xSBPy5VB0

>>441
そうです
知子ちゃんを女児と表現するのはあれかなとは思いましたが他に思い浮かばなかったので


ちなみに>>1はSIRENを美浜ステージに初めて来るぐらいまでしかやってません
あんな理不尽ホラゲ―出来る気がしねえ

463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:46:09.76 ID:xSBPy5VB0

アーカイブ1つ書き終えたんで投下します

464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:46:31.12 ID:xSBPy5VB0

続章 再び地獄へ

【骨川スネオ 第2日目/23:32:11 屍人の巣 中央交差点】

スネオ「参ったな・・・・」

屍人の巣に入ってから3時間あまり。

スネオ達3人は完全に迷ってしまった。

スネオ「どこから入って来たかすらわからないよ・・・・
建物の形が歪すぎるんだよ!」

恩田「それにやっぱり化けものの数も多すぎるわ・・・
覚悟はしてたけれど、隠れて逃げ続けるのがこんなに地理感覚を無くすなんて」

牧野「本当に、もう疲れましたよ・・・」

今までに類を見ないほどに多い屍人。

しかも、その殆どが頭脳屍人や犬屍人等の海還りを終わらせて屍人化を強めた奴らばかり。

そんな者達を相手にしながら、複雑で歪な巣を迷わず進めという方が無理な話であった。

466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:47:57.02 ID:xSBPy5VB0

そんな者達を相手にしながら、複雑で歪な巣を迷わず進めという方が無理な話であった。

スネオ「せめて、目印みたいなものがあればなぁ・・・」

周囲を見回しても、継ぎはぎだらけの板に意味をもたない看板など、目印になりそうなものもなかった。

恩田「これじゃあ帰ることも探索することもままなりませんね・・・」

牧野「このまま出られなかったらどうしよう・・・・」

牧野が弱音を吐いて辺りに屍人がいないかきょろきょろと見まわしていると。

ガサッ

牧野「ひっ・・・・・!?」

近くの塀の向こうで、草が動く音がした。

恩田「どうしました!?」

スネオ「敵かぁ!?」

慌てて視界ジャックをして周囲を見回すスネオ。

すると、一人の人物の視点をジャックする事が出来た。

467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:51:02.51 ID:xSBPy5VB0

その人物は、ゆっくりとこちらへ向かってきた。

宮田「牧野さんに恩田さん。それに・・・・・うちの病院で倒れてた子ですか。
偶然が続きますね」

病院で会った時とは違う雰囲気をした宮田が、そこにはいた。

恩田「宮田先生も無事だったんですね・・・・」

宮田「ええ、コイツもありましたしね」

そう言って宮田は手に持っていた拳銃をチャキリと鳴らした。

それから、ゆっくりと言葉を吐きだした。

重く、暗い、呪詛の言葉。

宮田「俺は、牧野さんになりたかった」

牧野「・・・・・!?」

牧野の反応を見ずに言葉を続ける宮田。

宮田「いつでも俺は同じ顔に頭を下げている自分が空しかった・・・」

牧野「私は・・・・・何もわからず、求められた役柄をこなしてただけだよ・・・
逆だったら、こんなこと・・・」

468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:52:14.91 ID:xSBPy5VB0

牧野も、何時も思っていた。

責任を押し付けられる立場が、自分でなければと。

期待される立場が、自分ではなければと。

宮田「俺は俺としてやれる事を全てやりました
これで、この舞台から退場することとしますよ。」

カチャ、っと拳銃の引き金を引く。

宮田「宮田司郎という存在には、ここで死んでもらいます」

拳銃の向く先は――――――――





―――――――――――――――――牧野へ。

恩田「な、何してるんですか先生っ!!」

宮田「言ったとおりです。宮田司郎という存在にはもう死んでもらうんです。
あとは私が、求導師としての使命を全うします」

宮田は、ここに来るまでに先代の神の花嫁(儀式の生贄)である美耶子にあい、宇理炎を託された。

それは、本来ならば牧野がしなければならなかったこと。


470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:55:46.01 ID:xSBPy5VB0

牧野が拒み続けて、やらなかったこと。

それを行った宮田は、求導師に真になるべきは自分だと思ったのだ。

いや、もはや宮田の中では自身は牧野、求導師になっているのかもしれない。

宮田「もう宮田という存在はいりません。必要なのは、牧野慶という求導師の存在。
安心してください、あとはキチンと引き継ぎますよ」





スネオ「・・・・・・いい加減にしろっ」

スネオが小さな声でいい、牧野の前に立つ。

スネオ「なにわけのわからない事言ってるんだよ。
宮田さんは宮田さんでしょ?それ以外のなんだって言うのさ!
牧野さんは牧野さん、僕は僕。なるべきとかならないべきとか、意味分かんないよ!」

宮田「判る筈が無い。どうしようもなく押しつけられた劣等感を感じたことのない人間に。
俺の気持ちがわかってたまるか」

銃口を少し下ろし、今度はスネオにむける。

それでもスネオは口を閉ざさず、敢然と言い放った。

471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:56:55.81 ID:xSBPy5VB0

スネオ「劣等感なんて常に感じてるよ!パパもママも凄い人だ!スネツグ兄さんも凄い!
それに比べて僕は何もできない!!何時もパパ達の影に隠れて何かするしかない!!」

劣等感。

それはスネオにも存在していた。

お金持ちの重圧。期待。そして―――――――――無関心。

自分を自分としてみてくれない、そんな恐怖。

スネオ「それでも僕は僕に誇りを持っている!他の誰かになろうなんて思わない!!
そりゃ確かにのび太やジャイアンみたいになりたいと思う事はある・・・・・けどっ!
自分を捨ててまで、誰かを傷つけてまでなりたいなんて思った事は無い!」

だけどそんな重圧にも負けないで。

そんな悲しい境遇にも負けないで。

スネオは胸をはる。

自分が骨川 スネ夫である事に。

自分が、変えようもない自分である事に。

472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:58:03.61 ID:xSBPy5VB0

宮田「・・・・・・・くそっ!」

何時も影で兄を見ていた自分と、スネオが重なる。

コンプレックスを受け止めたフリをしていた自分が笑う。

宮田「邪魔だっ!!」

バァン!!

宮田の拳銃が火を噴く。

スネオ「うわあああ!!」バシュッ

スネオの腕の辺りを弾は貫いて、地面を抉り取った。

恩田「スネオ君!!」

牧野「宮田!」

同時に叫ぶ2人を傷ついていないほうの手で制して、スネオが言う。

スネオ「諦めないでよ。まだまだ宮田さんにはやることがあるんだろうからさ。
考えてみてよ、宮田さんにしか出来ないこと」

撃たれてもなお、スネオは説得する。

475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 22:59:07.51 ID:xSBPy5VB0

誰でもない、宮田自身に向けて。

求導師も暗部も医師も関係ない、宮田という存在に向けて。

宮田(俺にしか・・・・・出来ないこと)

求導師も関係なく。

宮田という存在も関係なく。

宮田「俺が・・・・・出来ること・・・・」

カシャーン

宮田の手から拳銃が滑り落ち、がっくりとうなだれる。

宮田「俺は・・・・・何をしようとしていたんだろうな」

恩田「スネオ君、大丈夫?」

スネオ「平気平気、ジャイアンに殴られた時の事を考えれば・・・やっぱいた〜い!!」


477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:02:06.45 ID:xSBPy5VB0

牧野「・・・・・・ごめんなさい」

牧野が手をついて宮田に謝った。

牧野「ぼくが、不甲斐ないから・・・・・・」

宮田「・・・・・・顔を、あげて下さい」

牧野が顔をあげた瞬間。

ドグシャア!!!!

強烈な蹴りが牧野の顔面を捉えた。

恩田「!!」

しかし、牧野は体制を立て直すと、もう一度顔を差し出した。

牧野「・・・・・・一撃じゃ、無いでしょう?」

宮田「じゃあ、もう一発」

ドシャア!

次は宮田の顔を、思い切り殴り飛ばした。

そして。

宮田「これで、チャラにしましょう」

479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:02:53.92 ID:xSBPy5VB0

倒れた牧野に、宮田が手を差し伸べる。

それは、男同士の、兄弟同士の憂さの晴らし方。

積年の恨みを晴らす、一番温和な解決方法。

宮田「これからは俺は俺として生きます。求導師の弟ではなく、宮田司郎として」

そう牧野に告げてから、スネオに向き直り、

宮田「済まなかった」

頭を下げた。

スネオ「気にしてないよ。よそ者が口出したんだから」

軽く笑って見せる。

宮田はそれを見るとすぐに下げた頭を戻し、

宮田「この騒ぎで屍人が来るかも知れない。早く先へ行くぞ」

そう口走って早々に歩き始めてしまった。


480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:03:29.34 ID:xSBPy5VB0

恩田「何なんですか、あの態度はっ!」

一人状況についていけなかった恩田は不平をもらしたが、牧野とスネオは何も言わずに着いて行った。

スネオ(多分、これから宮田さんは色々なものを背負っていくんだろう。
それは、宮田さんの一生をかけても償いきれないと思うけど、宮田さんなら何とかしてくれると思う)

ぼんやりと宮田の先を考えながら、スネオはまた先へと進み始めた。

歩いて歩いて。

隠れて隠れて。

途中沢山の爆薬を拾ったりしながら暫く進むと、視界が開けてきた。

スネオ「何だろう・・・・ここ」

こんこんと濁った紅い水をため続ける場所。

宮田「・・・・ダムだ」

村の地理と場所の雰囲気を感じ取り、宮田が言う。

ダムというには、その建物の底は異常だった。

恩田「ねぇ・・・・・ダムの水の中・・・何かいるよ・・・・・」

481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:07:19.18 ID:xSBPy5VB0

紅く濁った水の中で蠢く影。

それは、27年前に異界に引きずり込まれた人達だった。

スネオ「酷い・・・・」

そんな事は知らないスネオ達だったが、水の底で苦しむようにもがく影達を見て、なぜだか胸が締め付けられた。

スネオ「何とか出来ないかなぁ・・・・」

周りを見てみるも、ダムの水門を開ける装置の類は無かった。

宮田「爆破、するしかないようだな」

宮田は着ていた白衣の裏側から、持ってきた爆薬を取りだした。

スネオ「どうせなら、屍人の巣に当たるようにしないかな?」

スネオが提案する。

牧野「そんなことしたら、友達が溺れちゃわないかい?」

スネオ「大丈夫、ここからあの位置の水門を爆破すれば、水は第一階層を襲うだけにとどまるはず。
一階層に人がいてもしがみつくものも沢山あるしね」

そう言って水門の所まで行く。

482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:08:22.44 ID:xSBPy5VB0

宮田「爆破するぞ」

爆薬を仕掛け、水門を吹っ飛ばす。

水は文字通り堰を切って飛び出していき、屍人の巣を襲った。

同時に、水の引いたダムの底から、人影が見え始めた。

牧野「あれは・・・・・人・・・・?」

宮田「化けものか」

スネオ「ちょっと違うと思う、完全に化けものにはなってないみたい」

恩田「ずっと、ダムの底で化けものにならないように頑張っていたって事・・・・?」

宮田「永遠に生きるのは、永遠に苦しむのと一緒だな・・・」

牧野「・・・・・・救いましょう、彼らを」

スネオ「どうするのさ?」

牧野「・・・・・・・私の命と引き換えに、宇理炎の焔を使います」

恩田「宇理炎・・・?それより、命と引き換えってどういう事!?」

宮田「宇理炎は使用者の命と引き換えに、全てを浄化する焔を発生させるんだ」

スネオ「ええええ!?い、い、命と引き換え!?」

488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:14:30.94 ID:xSBPy5VB0

牧野「彼らを助けられるのなら安いものです。それが求導師の務めです」

そう言って牧野は笑い、それから宮田に向かって手を出した。

牧野「いまさらですが、宇理炎を下さい。
全て、終わらせますから」

だが。宮田はその手を無視して、ダムからおり始めた。

牧野「宮田さん!?何してるんですか!」

宮田「犠牲になるのは、俺一人で十分だ」

白衣をはためかせ、ダムの下へと降りる。

せめてもの償いをするために。

人々を救済するために。

宮田「煉獄の焔・・・・俺の命と引き換えだ・・・」

手元の宇理炎を掲げ、全てを浄化しようとした時、牧野が割って入った。

牧野「煉獄の焔よ!僕の命も共に!!」

2人を宇理炎から出た光が包み、魂を奪っていく。

489 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:15:10.95 ID:xSBPy5VB0

2人を宇理炎から出た光が包み、魂を奪っていく。

スネオ「宮田さん!牧野さん!!」

ダムの底に穴があき、そこから浄化の焔が舞い上がる。

哀れなる人々を救済するために。

全てを暖かな命の焔で燃やしつくすために。

ボシュウウウウウウウウウウウウ!!!!!

舞い上がる命。

輝く生命。

スネオ「宮田さん!牧野さん!!大丈夫ですか!?」

宮田「バカやろう・・・邪魔しやがって・・・・」

牧野「ぼくたちは・・・・兄弟ですから・・・・・」

2人の魂を半分ずつ吸った宇理炎は益々輝きを増し、その場に居るもの全てを浄化していった。


490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:15:39.94 ID:xSBPy5VB0

スネオ「ここに居たら僕達も危なそうだな・・・逃げよう!」

恩田「でも、2人は動ける感じじゃないですよ!」

スネオ「動かす必要なんてないさ!ちょっと手伝って!」

そう言ってポケットから取り出すのは、ラジコン粘土。

残っていた分を全て使って、小さなボートを作る。

恩田「凄い・・・・なにこれ・・・」

スネオ「ちょっとした未来の道具さ。さあ、2人を乗せて。
ちょっと危ない渓流下りだ!」

それからダムから流された水をたどって屍人の巣に戻った4人はドラえもん達と遭遇し、最後の決戦へと挑んでいく。

アーカイブ 01 羽生蛇村求導師伝説 complete

494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:23:49.45 ID:xSBPy5VB0

以上、矛盾点を一応解消したアーカイブでした
かき起こすとわかるけど爆薬が有りましたー水門爆破出来まーすって都合よ過ぎると思う
SIREN自体細部まで作り込まれてるんだからもっと気を使って欲しかった

500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/07(木) 23:38:39.51 ID:xSBPy5VB0

33人殺しを次元のねじれと時間軸の歪みを基点にした設定を元に説明すると
のび太達が介入する前のSDKは三十三人殺しをやっていますがのび太達の時間軸のSDKは33人殺しをしていません
これにより別次元の人が××村33人殺しを目撃できずループがここで止まります
求められてる説明と違ったらごめんなさい



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