古泉「どどすこすこすこ!どどすこすこすこ!どどすこすこすこ!」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/01(火) 23:58:57.07 ID:Q9BltP0m0

「ラブッ……注・入!」

古泉君が団室に入ってくるなり、こんなおかしな行動をとるとは思いもしなかった。
あたしはもちろん、みくるちゃんもキョンも呆然としている。
あの有希でさえ、本から視線を外し古泉君を見つめていた。

「……ええと、それ。楽しんご、だっけか」

ようやくキョンが口を開いた。
少なくとも室内の空気が和らいだ気がする。

「どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! ラブッ……注・にゅぅぅぅぅぅ!」

気がしただけだった。

古泉君はくねくねと動き、それはまるでキチガイとしか言いようがない様子だった。
よく見ると、古泉君の目は空ろで焦点が合ってなく、それでいてぎらぎらと輝いていた。

キョンと視線が合う。
一体、古泉くんに何が起きているのだろうか?

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 00:06:22.20 ID:t3GDou1Q0

キョンは肩をすくめ、古泉君に近寄った。

「なあ、古泉。ちょっと冗談が過ぎるぞ」

キョンの手が古泉君に触れようとした、その瞬間。

「新羽田空港ッ!」

瞬時に古泉君は床に座り込み、両足を大きく開き、叫んだ。

「古泉……?」

キョンも気がついているのだろう、今日の古泉君が普通ではない事を。

「こ、古泉君……?」

みくるちゃんはぷるぷる震え、有希はその視線を古泉君から外そうとはしない。

明らかに古泉君は異常をきたしていた。
あたしは喉をごくりと鳴らす。

こんな不思議が飛び込んでくるなんて。

不謹慎かもしれないけれど、あたしは今、とってもわくわくしていた。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 00:16:44.92 ID:t3GDou1Q0

「古泉! おいっ聞こえてるのか、古泉!」

キョンの呼びかけにも応じず、古泉君は足を開いたり閉じたりしている。

さて。

古泉君の異変は一体何が原因なのだろう?

宇宙人のせい?

未来人のせい?

超能力者のせい?

……どれも当てはまらないような気がする。

どの未確認不思議人間も、古泉君にこんな事をさせるメリットはないだろう。

とすれば。

答えは一つ。

古泉君の、個人的な異常。

「おいっ、ハルヒ! 古泉がおかしいぞ!」

キョン、分かってる。
古泉君は今も足を閉じたり開いたりを繰り返している。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 00:24:55.09 ID:t3GDou1Q0

「きゅ、救急車、救急車を呼びましょう!」

みくるちゃんが携帯を取り出した。
あたしはその携帯を奪い取り、叩き折る。

「ハルヒ! 何をするんだ!?」

キョンが叫ぶ。

「……救急車なんて呼んじゃだめよ」

そう。
病院なんかに連れて行かれたら、あたしが面白くない。
狂った古泉君という玩具は、誰にも渡さない。

「まだ、古泉君が本当におかしくなったって決まったわけじゃないわ」

キョンやみくるちゃんが納得できるように言わなくては。

「もしかしたら、ただふざけているだけかもしれないし」

しかし、それはないだろう。
古泉君の顔は普段のものと違い、キチガイ特有の、あの独特な表情を浮かべている。
街で見かけることはあっても、近づくことはなかった、キチガイという存在。
下手に刺激して、もしもの事があれば、厄介な事になるからだ。
でも。
古泉君なら。
あたしはSOS団団長として、団員の為にという名目で、思う存分キチガイを楽しめる。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 00:35:22.26 ID:t3GDou1Q0

あたしは立ち上がり、カーテンを閉める。

「キョン、鍵を閉めて。……人に見られたらまずいでしょう?」

眉をひそめながらも、キョンは扉の鍵を閉める。
見られたらまずい、というのはキョンにとっては古泉君の為なのだろうけど、本当は違う。

あたしのやる事が部外者に見られたらまずいのだ。

後々、古泉君が本物のキチガイとして社会に受け入れられる時。
あたしがする行動が誰かに見られていては、人権がどうのと五月蝿い連中が非難の声を浴びせてくるだろう。

しかし、これで外界からシャットアウトされた空間ができた。
あたしは思う存分、キチガイを玩具にする事ができる。

いつの間にか立ち上がり、くねくねと身体をよじらせている古泉君に、近づいてみる。

「ハルヒ。気をつけろ」

「分かってる」

古泉君は、あたしが近づいても反応しなかった。
忙しなく視線は動き、唇の端に泡がついている。

あたしは古泉君の顔を、思い切りひっぱたいた。

海老の様に跳ねる古泉君。

得体のしれない感覚が、あたしの背筋を下から上へと伝わった。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 00:47:36.88 ID:t3GDou1Q0

「涼宮さんっ!」

みくるちゃんが声を張上げる。

「……古泉君。ふざけているんなら、それくらいでやめといたほうがいいわよ」

これは嘘だ。
既に古泉君がふざけているなんて状態じゃないのは、見て分かってる。
それでも言わなければならないのは、体面を取り繕うため。
あたしだって加害者にはなりたくはない。
そのための、演技。

「ハルヒ、古泉は……」

キョンにはもう分かってるはず。
でもだめ。
あたしの楽しみを、獲物を取り上げさせたりなんてさせない。

古泉君は、あたしを呆然と見上げている。
その顔には普段の知性は全く見られなかった。

あたしは確信する。

――今の古泉君は、本物のキチガイだと。

性的興奮にも似た何かが、あたしの中で膨らんでいく。
徹底的に遊ばせてもらうわよ、古泉君。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 00:58:40.23 ID:t3GDou1Q0

「ねえ古泉君。どうしてあんな事をしたの?」

あたしは聞く。
答えが返ってこないのを分かっているのに。

「……あんっ♪」

気持ちの悪い声を出す古泉君。
前に電車で見た、キチガイを思い出す。
奇声を上げ、よたよた動き回るキチガイ。
あんなのがこの世の中に存在するなんて。
それこそ「不思議」以外の何物でもない。

「……何よそれ。さっきの、やってみなさいよ。どどすこすこすこ、だっけ?」

「おいハルヒ! やめろ!」

キョンが割ってはいる。
やめてよ、あたしはこの玩具で遊びたいの。

そう言いいたいのを我慢して、あたしはキョンを押しのける。

「さあ、やってみなさい、古泉君!」

あたしのビンタで座り込んでいた古泉君は、にゅるりと立ち上がった。
そしてさっきのを、またやり始めた。

「どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! らぁぶちゅうううううにゅううううううううっ!」

唇から泡が吹き出し、涎が床へと滴り落ちる。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 01:13:30.76 ID:t3GDou1Q0

「それしかできないの? 古泉君、別の事をやって見せてよ」

ラブ注入、の形で固まっている古泉君に命令を与える。

今までの古泉君は、確かにあたしの言う事を何でも聞いてくれるイエスマンだった。
けれど、そんな古泉君をあたしは好きじゃなかった。
うっすらと浮かべた笑みの向こうで。
何を考えているのか分かったものじゃない。
どんな無茶を言っても、忠実にこなす謎の美形転校生。

そんなのには飽き飽きしていた。

ふと思う。

もしかして、これも古泉君のサービス精神なのかも。
あたしがキチガイを玩具にしたいと思っていたその事実を、どこかで知り。
キチガイを演じているんじゃないか。

もしそうなら。

あたしは騙されている事になる。
それを確かめるべく、あたしは掃除道具入れから箒を出して構えた。

突く。

鳩尾に完全に入ったその一撃は、渾身の力を込めてやったものだった。
もし演じているなら、ここで素が出るはず。
それほどの一撃だ。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 01:22:27.56 ID:t3GDou1Q0

「あぁああぁああぁああぁぁっぁぁぁぁっぁああああっ」

古泉君はのた打ち回る。
ヒィヒィ言いながら口から吐瀉物を出す。
そしてびちびち、と音を立てながら異臭と明らかなズボンの膨らみが、古泉君が脱糞した事を教えてくれた。

「おい、やめろハルヒ!」

キョンがあたしの肩を掴んだ。

「やめる? 何を?」

「古泉は明らかにおかしい! どこかに知らせるべきだ!」

やめて。

「そうでもないわよ。いつもこんな感じだったじゃない?」

そんなわけは無い。
だけど、ここでやめたくはない。

「いつもと全然違うだろうが! それに、なんにしたって暴力を振るうのは駄目だ!」

キョン。
ああ、キョン!
あんたは優しいのね。
こんなキチガイに、そんなに気遣うなんて。
でも、今はそれが邪魔。
何とか言いくるめなくてはならない。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 01:36:20.10 ID:t3GDou1Q0

「何言ってるの? これはもう古泉君じゃないのよ!
 キチガイなの! 分かる? キチガイなの!
 キチガイには人権なんて無いし、その存在はあたしたちの迷惑になるだけ!
 なら! キチガイで楽んだ分、キチガイもその存在を有効活用できて幸せなのよ!」

「なっ……ハルヒ、お前……!」

しまった。
本音が出てしまった。
でも、もう止まらない。

「知ってる? キチガイって何も出来ないの! 他人に迷惑をかける事意外、何にも!
 だったら、周りが考えてあげればいいのよ! キチガイの活用方法を!
 見てよ、この阿呆面! 涎を垂らして、よたよたして、何の為に生きてるのか分かんないでしょ!
 でも、見てて面白いのは確かね! あたしは前から思ってた! キチガイで遊びたいって!
 誤解しないでね! キチガイ『で』遊びたいのよ? キチガイ『と』遊びたいわけじゃないの!
 宇宙人や未来人、超能力者に異世界人はなかなか見つからないけど、キチガイは実在する!
 キチガイは不思議なのよ! その不思議をあたしから取り上げようとするんなら、キョンだって許さないんだから!」

言った。
言っちゃった。
キョンはあたしを凝視している。
嫌われたのだろうか。軽蔑したのだろうか。
でも、これがあたしなんだ。

キョンが、口を開いた。

「……確かにな。お前の言う事も、一理ある」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 01:56:45.13 ID:t3GDou1Q0

そんな! キョンが分かってくれるなんて!

「じゃあ、一緒にキチガイで遊びましょう、キョン!」

きっとあたしは今までの人生の中で、一番の笑顔を浮かべていたに違いない。
キョンと一緒にキチガイで遊べる。
これほど嬉しい事は無いんだから。

衝撃と共に、火薬のような匂いがした。
あたしの身体は一瞬、宙に浮かび、何か柔らかいものに当たって倒れこむ。
その柔らかいものからする涎と吐瀉物と排泄物の匂いで古泉君だと分かった。

あたしは鼻に手をやった。
いつもの手触りは無く、鈍痛と潰れた鼻の形が代わりに伝わってくる。
ありえないほどの量の鼻血が吹き出ていた。

「あ……え……?」

キョンが指の骨を鳴らしながら呟いた。

「俺もな、キチガイで遊びたかったんだ。
 他人に迷惑をかけ、それが当然としか思えないキチガイ。
 そいつを殴って、蹴ってみたらどういう反応をするのか、見てみたかったんだ。
 だからなぁ、……一緒にキチガイで遊んでくれるか、団長さんよ?」

嘘、嘘だ。
あたしはキチガイなんかじゃない。
古泉君みたいな、奇怪な行動をするのがキチガイだ。

「キョン! あたしは……!」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 02:17:08.54 ID:t3GDou1Q0

息が出来なくなる。
キョンの蹴りが、あたしの鳩尾に入り、横隔膜にショックを与えたからだ。

身体をくの字に折り曲げ、苦痛に耐える。

「が……ちが……う……」

「どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! ラブ・ちゅううにゅうう!」

上からキョンの声が聞こえる。

「この古泉とお前、どこが違うって?
 俺たちは迷惑してたんだ。お前の身勝手な我侭に振り回されて、それでも我慢していた。
 古泉がこんな……キチガイになっちまったのもお前のせいだと思うぞ?
 なんせこいつは、一番お前に振り回されていたと言えるやつだからな」

「そん……な! 嘘よ! みくるちゃん! 有希! 違うわよね!」

何とか息を整え、顔を上げる。
窓の外の夕日が逆光となり、キョンたちの顔がよく見えない。

みくるちゃんの声。

「……正直、涼宮さんは迷惑な存在だと思います。
 何がSOS団専属メイドですか? 意味が分からないです。
 今でも覚えてますよ、コンピ研で無理やりパソコンを奪った時の事。
 ……本当に、何度死にたいと思った事か」

「み、みくるちゃん……!」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 02:29:05.65 ID:t3GDou1Q0

有希の声。

「文芸部を乗っ取られたのは別に構わない。
 それは私も許可した事だから。しかし私はその時に言ったはず。
 本が読めればそれでいい、と。
 しかし、あなたはSOS団の団活だと言っては、ゆっくり本が読めるはずの休日に街に呼び出し、
 私の貴重な時間を無駄にした。
 私だけではなく、古泉一樹や朝比奈みくるもそう。
 そして彼に至っては、毎回食事を奢らされて財政面でも迷惑をかけられていた。
 これがキチガイの所業でなくてなんだというの?」

「ゆ……有希ぃ……!」

「分かっただろ、ハルヒ。
 一番のキチガイ、それはお前自身だったんだよ」

嘘、嘘、嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!
みんなだって楽しくやってきたじゃないの!
それが迷惑だったって言うの!?

「新羽田空港ッ!」

「五月蝿いっ! 古泉君は黙ってて!」

「言うなれば、こいつが一番の犠牲者だよな。
 ハルヒと同じレベルに……キチガイになっちまったんだから」

そう言うと、キョンは壁に立てかけてあったバット―あたしが野球部から借りパチしてきたやつ―を掴んで素振りをした。

「何回くらい耐えられるんだろうな、ハルヒ。キチガイなら百回バットで殴られても平気そうだが」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 02:38:56.11 ID:t3GDou1Q0

その声には冗談の欠片も無かった。

信じたくは無かったものの、キョンは本気であたしをバットで殴るつもりだ。
どうして?
迷惑だったなら、何で今まであたしに付き合ってくれてたの?
そして今、何でその鬱憤を晴らそうとするの?

「どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! どどすこすこすこ!」

立てない。
後ずさりすると、くねくねと身体を捩じらせて絶叫している古泉君にぶつかった。

邪魔よ! どいて!
声にならない叫びもキチガイになった古泉くんには届かない。

「らぁぁぁぁぁぁぁぶっ、ちゅぅぅぅぅにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

逆光で表情の分からないキョンが、バットを振りながら近づいてくる。

「助けて……みくるちゃん……有希……キョン……!」

「新羽田空港ッ! アハッ♪」

あたしは気がついた。
古泉君だけじゃないんだ。
みんな狂ってしまったんだ。

キョンがバットを振り上げた。

あたしは、自分の頭蓋骨が砕ける音を聞いた。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 02:46:50.96 ID:t3GDou1Q0

―――

「ん……ここは……?」

気がつくと、知らない部屋にいた。
消毒薬の独特な匂い。
病院なのだろうか。

人の気配を感じて、起きようとした。
身体に力が入らない。

「あ……涼宮、さん? 目が覚めたんですか!」

声のした方に視線を向けると、恐らく看護士だろう女性が目を見開いていた。

「あの……」

「ちょっと待っててくださいね、先生を呼んできますから! それにご家族の方にも連絡を……」

慌しく部屋を出て行った看護士の背中を見送りながら、あたしは頭に手を当てた。

変だ。

キョンにバットで殴られたはずなのに、包帯も巻かれていない。
それどころか、こぶ一つ出来ていない。
もしかして、眠っている間に治ってしまったんだろうか。

それにしても、身体に力が入らない。
起き上がる事すら、出来なかった。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 02:58:44.91 ID:t3GDou1Q0

医者がやってきた。

「あの、あたしはどれくらい眠っていたの?」

あたしが聞くと、医者は子供に話しかけるような口調で喋り出した。

「涼宮ハルヒちゃん。君は、ずっと長い間眠っていたんだよ」

「……どういう事?」

医者はゆっくり、『子供』に聞かせるように言う。

「君がお父さんと野球観戦に行った時、観客席にボールが飛び込んだんだ。
 そして、そのボールは運悪く、君の頭に当たった。
 怪我自体は大した事はなかったんだが、君は意識を失い、目を覚まさなかった。
 ハルヒちゃん。君は自分が小学生だと思っているだろうが、実はもう高校生のはずの年なんだよ」

……は?

「何を馬鹿な事を言うのよ! あたしはちゃんと中学にも行ったし、高校も通ってた!
 疑うなら北高の在校生名簿でも調べて御覧なさいよ!」

医者は看護士と目配せをした。

「混乱するのも無理はない。焦らず、現実を確認するんだ」

そう言うと医者はあたしの腕に注射をした。

あたしは、また深い眠りに落ちた。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 03:12:26.88 ID:t3GDou1Q0

あれから数週間が過ぎた。

あたしの両親がやってきて、色んな話をした。
けれど、あたしは間違いなく、小学生の時に昏睡し、この歳になるまで眠り込んでいたのだという。

だったら、キョンは? 古泉君は? みくるちゃんは? 有希は?

あたしは声を荒げ、暴れた。
SOS団が存在しない、そんな事があっていいのだろうか?

しかし、あたしの身体は細く痩せていて、それだけ長い年月を眠りに費やしていたのだという証拠に思えてならなかった。

更には、小学生時代の友達がお見舞いにきて、これが現実だという事を否が応でも信じざるを得なかった。

――SOS団は、無かったのだ。

けれどあたしは、それで良かったのだと思い始めていた。
誰かを振り回し、その事に気がつかないまま、あんな最後を迎えるなんて。

それこそゾッとする。

古泉君やみくるちゃん、有希、そしてキョンが、あたしの夢の中の存在だと言う事はとても悲しい事だ。
だけどしょうがないじゃない、もうどうする事も出来ないんだから。

もし、いつか。
現実の世界でみんなに会えたなら。
今度は迷惑をかけないようにしたいと思う。

あんなキチガイじみた光景は、もう二度と見たくないから。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 03:22:04.15 ID:t3GDou1Q0

―――

「さて、久しぶり……というか初めまして、と言うべきなのかな?」

「そうですね。少なくとも僕たちは、この世界では出会っていないのですから」

「涼宮ハルヒの最後の情報爆発……世界が書き換えられても、私たちの記憶は残っている」

「やっぱり、涼宮さんも覚えているんでしょうかぁ?」

「恐らく。しかし、今の彼女にはもう力は無い」

「お前がキチガイになっちまったあの世界は、無かった事にされちまったんだな」

「しかし、僕にとっては良かったですよ。キチガイのまま、一生を過ごすはめにならなくて済んだのですから」

「それで、みなさんはどうされるんですかぁ?」

「涼宮ハルヒは、もう普通の人間と変わり無い」

「性格は変わってないんだろうな」

「……しかし、SOS団も思い返せば楽しかったような気がします」

「キチガイになっちまった奴が言う台詞かよ。 ……で、どうするんだ。ハルヒに、会いに行くのか?」

「そうですね……それは……」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/03/02(水) 03:31:14.98 ID:t3GDou1Q0

―――

北校に編入して、数ヶ月。
あたしはぼんやりと時間を過ごしていた。

「涼宮さん、体調はどう?」

クラス委員の女子が話しかけてくる。
できるだけ名前を覚えようとは思っているけど、それは難しい事だった。

あの、長い長い夢の中の、個性的な奴らに比べれば現実の友人関係なんてとても希薄なものだ。
適当な返事をしておき、ホームルームが始まるのを待つ。

教師が入ってくる。

「今日は、みんなに転校生を紹介する」

教室がざわめく。

「入ってきなさい。―-。」

あたしは目を見張った。
だって、そこにいたのは……。

「どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! どどすこすこすこ! ラブ注入♪
 初めまして、古泉一樹です!」

あたしは無意識の内に「新羽田空港!」をやっていた。

 −End−

51 名前:南部十四朗 ◆pTqMLhEhmY [sage] 投稿日:2011/03/02(水) 03:38:53.92 ID:t3GDou1Q0

 知的障害者の方々=キチガイではないんですよね。
 知能の高いキチガイのほうがより多く存在すると思いますし。
 そしてそのほうがより怖いんです、本当に。
 キチガイという単語を多く使いましたが、言葉狩りを恐れるよりも、使い倒したいと思って使いました。
 では。



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