157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 16:31:55.34 ID:+/1cLVzuP
キョン「明日持ってきてやる。驚くなよ!」ダッ
ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン!?どこ行くのよ!」
キョン「帰って明日の準備だ!じゃあな」ピャー
ハルヒ「ま、待ちなさ〜〜〜い!!!」ピャー
―――――
キョン「はぁ、はぁ……ようやく撒いたか。ったく、名鉄まで経由して帰宅する羽目になるとは」
brrrrrr
キョン「なっ、車だとッ!?」
ガー
古泉「やあ、どうも僕です」
キョン「なんだお前か」
古泉「あなたを追いかけて青森まで行ってしまいましたよ」
キョン「何の用だ?」
古泉「もちろん部室での件ですよ」
古泉「いったい何を見せる気なのか、事前にチェックさせて貰いますよ。過労死はごめんですからね」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 16:44:13.08 ID:+/1cLVzuP
バラバラ
古泉「これはまた……見事なまでに痴態ですね」
キョン「まーな」
古泉「見たところ、僕の知る佐々木さんとくらべて、随分お若く……いえ、幼く見えますが」
キョン「中2の頃だからな」
古泉「なるほど、確かに貴方は佐々木さんと肉体関係を持っていたようですね」
キョン「初めからそういってるだろーが、疑ってたのか? 俺が部室で言ったことを」
古泉「疑ってますよ」
キョン「あー……?」
古泉「ひとつ、質問……いえ、確認をさせてください」
古泉「あなた、童貞ですよね?」
キョン「……」
161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 16:55:57.20 ID:+/1cLVzuP
キョン「はあ……古泉。お前はまさか、これがフォトショかなにかで作った合成写真だとでもいうのか?」
キョン「俺が部室を出てから、さっきまでハルヒと県をまたぐ追いかけっこをしてたのは知ってるだろーが」
キョン「こんなもんをシコシコ作ってる暇がいつあったっていうんだ? それとも、前々から俺がこんなもんを用意していたとでも?」
古泉「いえ、この写真は本物ですよ」
古泉「もしもこれが贋物だとしたら……あなたが、自分が童貞でないことを決定付ける目的で作ったものだとするなら」
古泉「たとえばもし僕なら、もっと決定的な姿のものを作りますね」
キョン「……」
古泉「古い言い方をして見ましょうか」
古泉「この写真、どれも……"Bまで"のように見えますね」
古泉「少なくとも、"C"だとはっきりわかる姿のものは、一枚もありません」
古泉「まあ、あなたが佐々木さんと"Bまで"行っていた、その事実だけで、涼宮さんはかなり動揺なさるでしょうから?」
古泉「あるいは、これでも押し通せるかもしれませんねえ」
古泉「しかし、僕の知る涼宮さんは、なかなか諦めが悪い方です」
古泉「おそらく、主張するでしょうね。この写真が偽装されたものであると。あるいは、気づくかもしれません」
古泉「"Cの証明"がなされていないということにも」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 17:07:10.56 ID:+/1cLVzuP
キョン「古泉、何が言いたい?」
古泉「もうひとつ、質問させてもらっていいでしょうか?」
キョン「よくない、帰れ」
古泉「あなたが明日、提示しようとしている"証拠"は、これで全部ですか?」
キョン「……はあ」
―――――
佐々木「それで、君は……その」
佐々木「……"したい"のか? キョン……ぼく、と」
―――――
キョン「中2のころなんてのは、若気の至りさ」
キョン「誰もが人生で一番バカな年代だ、少なくとも野郎って生き物においてはな」
キョン「だから"許され"るべきだ。"忘れちまうことを許されるべき"なんだよ。あの頃やらかした馬鹿なんてのは」
キョン「そんな主張が通らないのも分かってる。だけど、"そう"なんだ」
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 17:23:50.83 ID:+/1cLVzuP
古泉「DVD、ですか」
古泉「映像は確実ですからね。写真と違って、偽装はとても難しい。最新のCG技術を駆使したところで、実際に撮影した映像にみせかけることは不可能でしょう」
古泉「確かに、これは決定的な証拠になり得る」
キョン「ああ…………」
カチャカチャ
古泉「見せていただけるんですか?」
キョン「……みたいんじゃないのか?」
古泉「そうですね……僕の役割を考えれば、僕はそのDVDの中身を見なくてはなりません」
古泉「ですが、"僕"は……となると、すこし返事に困ります」
古泉「ですから、未然に……質問をさせてください」
キョン「好きにしろ」
古泉「……そのDVDが証明するのは、"何"なんでしょうか」
古泉「あなたが"何"であることを証明するのでしょうか?」
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 17:33:20.60 ID:+/1cLVzuP
――――
キョン「佐々木……悪かった、悪かったよ」
佐々木「ひっく……ごめ、んね……キョン……」
佐々木「ぼくが、怖がりだから……血が出たら、こわくって……」ぼろぼろ
佐々木「キョンに、させてあげられなくて……ひっく……」
……―ジ―――――――――――――…………
――――
キョン「……AVってあるだろ?」
古泉「ええ。詳しくはありませんがね」
キョン「佐々木に……似てる女優がいたんだよな」
キョン「誰だったかな……小野だか、杉田だか、白石だか……とにかく、バカな話ばっかしてた仲間の誰かが、俺に無理矢理貸してったんだ」
古泉「……質問の答えは?」
キョン「……こいつが、証明するのは、"俺が童貞じゃない"なんてことじゃない」
キョン「俺が、佐々木も知らない……"最低の男だった"ってことだけだよ」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 17:42:22.46 ID:+/1cLVzuP
――――
キョン「なあ……なんていうか、ぶしつけなんだがな」
古泉「はい、なんでしょうか?」
キョン「お前は―――どうなんだ?」
古泉「どう、とは、どういう意味で?」
キョン「……童貞なのか? って話だよ」
古泉「おや……これはまた、過激な質問ですね」
キョン「いいから、答えろよ。俺にあそこまで言わせておいて、お前は何も喋らないってーのか?」
古泉「……そうですね。ぼくはご存知のとおり、中学一年生のころからは、もっぱら今の身分ですから」
古泉「まっとうに経験をする暇などありませんでしたよ」
キョン「答えになってないな」
古泉「……少し照れくさいですね。わかりました、答えますよ」
古泉「僕は、"違い"ます」
キョン「……相手は?」
古泉「それは……お教えする気分には、なれませんね。今は、まだ」
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 17:49:57.29 ID:+/1cLVzuP
キョン「まだ?」
古泉「ええ。もしかしたら、気が変わる日も来るかもしれませんから、そう言っておきます」
キョン「……これは、俺の勝手な想像なんだがな。お前は、中一から今まで、ハルヒに付きっ切りなんだよな?」
キョン「お前の周りにいて、俺の知ってる限りで、お前の相手になりそうな人ってーと……それはもしかして」
古泉「ではまた後日」ピャー
キョン「あっテメェ!」
キョン「……はあ」
キョン「…………何やってんだか。どうして俺があいつに、こんな話までせにゃならんのだ」
prrrrr…
妹「キョンくーん? でんわー」
キョン「おお、携帯電話じゃないか。まだ起きてたのか、もう十一時だぞ」
電話「キョン君のお部屋からずーっと電話の音がしてるから、起きちゃったんだよぉ」
キョン「なんと、そりゃすまんかったな。しかし、こんな時間にそこまでしつこく鳴らす不届きものは……一人しかいねーか」
電妹「ふあーあ……キョン君こそはやくおやすみーだよ? じゃーねー」ピャー
prrrrrrrrrrr……
キョン「……ふむ」
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 17:54:21.01 ID:+/1cLVzuP
prrrrrrrrrrr
キョン「……覚悟決めるか」
キョン「成長しないとな。あの頃から……」
prrrrrrrr…………ピッ
『ちょっと、キョ―――』
キョン「あー、なんだ。いきなりで悪いんだが、聴いてくれないか」
キョン「俺、実は童貞なんだ」
キョン「つーかな。起たないんだよ」
キョン「理由?」
キョン「聴いたって面白くもない、つまらない話だよ」
俺の嘘つきは、すこしだけ治って―――しかし、もうしばらく、完治にはいたらなそうだ。
全部の嘘を明かせる日は、はたして、いつかやってくるだろうか?
fin.
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/30(土) 17:57:11.07 ID:+/1cLVzuP
『インポテンツ・ラプソディー編』 完
スレお返しいたします。