1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:27:21.18 ID:jongqAto0
団室中に異臭が漂う。
古泉君の足元には、ゲル状の茶色い物質が今もなお、ぽたぽたと落ちていた。
「朝比奈さん。すいませんが、雑巾で床の掃除をお願いします」
「は、はい」
「俺は古泉を着替えさせてきますので……いいな、ハルヒ?」
「う、うん。頼むわ、キョン」
「ほら、古泉。ズボンとパンツ脱いで、とりあえず俺のジャージをはけ」
「……ふぐっ……すびば……せん……」
「いいから、ほら。じゃ、いくぞ」
キョンが古泉君の肩を支え、団室から出て行いった。
みくるちゃんが雑巾を絞って床を拭き始める。
「……手伝う」
「長門さん、汚れちゃいますよ」
「平気」
……まさか、古泉君がウンコを漏らすなんて。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:32:40.83 ID:jongqAto0
あたしも床の掃除を手伝い、あらかた綺麗になった頃。
キョンと古泉君が帰ってきた。
古泉くんはうなだれていて、何も話そうとはしない。
「とりあえず。シャワー借りて身体は洗った。汚れたズボンとパンツは?」
「ビニール袋に入れてある」
「そっか。ありがとな、長門」
「……古泉くん、大丈夫ですか?」
みくるちゃんのかけた声に、古泉君はびくっとする。
「……あ…・・・う」
「朝比奈さん。俺が、こいつを送っていきます。いいよな、ハルヒ」
「うん。男の子同士の方がいいでしょうしね」
「……あんまり、気にしないでいいんですよ、古泉くん」
「そう」
結局、古泉君はそれから一言も喋らなかった。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:37:35.08 ID:jongqAto0
「まさか、古泉君がウンコ漏らすとはね……」
「人間ですもの。仕方がないと思います」
「……古泉一樹は、傷ついていると思われる」
「ま、このことにはあまり触れないほうがいいでしょうね」
「それでいいんでしょうか?」
「みくるちゃん?」
「わたしたちは、SOS団の仲間です。お友達なんです! 何か、できる事があるはずです!」
「……私もそう思う」
「そうね。……あたしたちで、古泉君の心の傷を、癒してあげましょう!」
そうは言ったものの、どうすればいいのか、あたしには分からなかった。
高校生になって、女子の目の前でウンコを漏らした古泉君。
彼の心は、既にボロボロだろう。
あたしたちに、何ができるのだろうか?
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:40:37.84 ID:jongqAto0
――
俺は古泉を連れて、こいつの家まで向かっている。
いつものこいつらしくなく、うなだれて、その顔は見えない。
ブレザーの上着に、ジャージのズボン。
……笑えねえよな。
「なあ古泉」
「……」
「気にする事はないぞ?」
「……」
「みんな、あれくらいの事で笑ったりするもんか」
「……」
「なあ。元気出せよ」
「……から」
「ん?」
「もう……お終いですから」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:44:38.10 ID:jongqAto0
「お終い?」
「……涼宮さんが望んでいた僕の役割……好青年のイエスマン」
「まあな」
「それが……目の前で、ウンコを漏らしたんですよ……」
「……」
「もう……世界はお終いなんです……!」
「……閉鎖空間は?」
「……え?」
「閉鎖空間は発生してんのか?」
「……いえ……感知できませんが」
「なら。大丈夫ってことだよ」
「……どういう意味ですか」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:49:04.58 ID:jongqAto0
「ハルヒの奴がお前に幻滅したのなら、閉鎖空間ができてもおかしくはない」
「……」
「でも、今現在はできていない」
「……」
「何でか、分かるか?」
「……」
「あいつはお前に幻滅なんかしてない。むしろお前の事を心配してるんだよ」
「僕を……心配……?」
「大切な仲間……友達が、目の前で糞を漏らした」
「その事実より、漏らした本人の心の傷を心配してるんだ。そうじゃなきゃ、今頃ぎゃーぎゃー喚いてるところだ」
「……そう……ですかね」
「そうだよ。俺たちを、誰だと思ってる?」
「固い絆で結ばれた……SOS団だぜ?」
「……は……は」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 01:54:31.61 ID:jongqAto0
「ここでいいのか」
「はい……ありがとうございます」
「明日は……学校に来いよ?」
「! ……はい!」
彼は僕を家まで送り届けてくれた後、そしてそれ以前にも、優しい言葉をかけてくれた。
これが友達……なんだろうか? 家の鍵を開け、玄関で靴を脱ぎ、部屋に入る。
そこには、森さんがいた。
「森……さん……」
「古泉。一部始終は知ってるわ」
「その……僕は……」
「済んでしまった事を嘆くより、これからの事を考えるのよ」
「……はい」
「そのビニール袋、貸して。洗うわ」
「え……でも」
「言うとおりになさい」
「……はい」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:00:57.29 ID:jongqAto0
森さんは汚れた衣服を水洗いすると、洗濯機に放り込んだ。
申し訳ない気持ちで、胸が押しつぶされそうだった。
「……最近、貴方の身体の調子がおかしいのは知っていたわ」
「ジャンクフードに、不摂生な生活……これじゃ下痢して漏らすのも当たり前よ」
「貴方の担当としての責任は私にあるから、酷くは言えないけど」
「いえ! これは僕の責任で……」
「責任うんぬんより、これからは漏らさない事を考えましょう」
「そうね……食生活の改善はもちろんだけど」
「トイレトレーニングをし直しましょう」
「は? ……えっと」
「ここにオマルを用意しておいたわ」
「さ。これに用を足しなさい」
「ちゃんとできるかどうか、見ててあげる」
これは何かの試練なのか。
屈辱的ではあるが、僕に抗う術は無かった。
下半身のみ全て脱ぎ、オマルに座る。
傍から見ると滑稽に思われるかもしれないが、僕と森さんは大真面目だった。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:04:35.29 ID:jongqAto0
「踏ん張りなさい」
「はい……ふんっ……」
ポチャン ポチャン
ほんの少し、軟便が出た。
それもそうだ。団室で、大量に出したのだから。
でも。
僕は踏ん張った。
ジョロジョロジョロ……
尿が出た。
止まらなかった。
五分くらいは出ていたと思う。
森さんの目は、冷ややかだった。
「それだけ?」
「……はい」
「ま、今はそれでいいわ」
「とりあえず、明日からはこれを使用しなさい」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:23:07.91 ID:jongqAto0
森さんが取り出したのは、成人用紙オムツだった。
僕が? オムツ?
笑い出したくなるのを抑える。
糞を漏らす男には、オムツは確かに必要だからだ。
「じゃ、私は帰るから」
「はい」
「……ご飯、作っておいたから。チンして食べなさい」
「あ……何から何まで、ありがとうございます」
「馬鹿ね……」
森さんが帰った後、僕は久しぶりに誰かが僕の為に作った手料理を食べた。
とても美味しかった。
涙が出た。
嬉しいのと、悔しいのと、どちらの涙だったのか。
風呂に入り、丹念にお尻を洗い、眠った。
明日は、学校に行かなくてはならない。
彼と約束したから。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:28:11.33 ID:jongqAto0
――
「古泉くん、来てますかね」
「どうだろ? ショックで寝込んでなきゃいいんだけどね」
登校中、みくるちゃんと出くわしたあたしは、
朝の挨拶のすぐ後に始まった問題について話し始めた。
「だいたい、ウンコなんて人間誰でも出すものなのよ」
「みくるちゃんだって、臭っさいウンコを毎日出してるんでしょ」
「ふええ、毎日じゃありませんよ! 一週間おきです!」
「便秘って辛いわよね……そういう意味じゃ、古泉君の下痢便は羨ましいわ」
「人前で漏らしたら、そんな事は言えないかと思いますよ?」
「まあ……ね。問題は、古泉君に、どう接するかよ」
「いつも通り……じゃ駄目なんですか?」
「変にお漏らしに触れないことが、かえって気を使わせる事になるわ」
「だから……できれば笑って済ませられるようにしたいのよ」
「笑って、ですか」
「そう。なんてことのない、普通のミスって事にしてしまうのが一番なのよ」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:32:14.06 ID:jongqAto0
「あ、長門さん。おはようございます」
「有希……何それ? 携帯?」
「昨日、撮った動画……」
「こっこれ! 古泉くんが漏らした場面じゃないですか!」
「即刻、消すべきです! こんなの残しておいたら……!」
「待って、みくるちゃん!」
「え」
「使えるかもしれない……この動画……!」
あたしの脳裏には、一つのアイディアが浮かんでいた。
もしかしたら、古泉君に致命的なダメージを与えてしまうかもしれない。
だけど――。
これしか方法は無い。
詳しい説明を二人にして、後は団室に古泉君が来るのを祈るしかなかった。
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:37:18.61 ID:jongqAto0
――
長い長い坂道を、汗を流しながら歩く。
今日は古泉は来るだろうか?
あいつなら来るだろう。
古泉の強さ……精神的なものを含めて、それを俺は知っている。
前方に、見覚えのある背中が見えた。
「よっ、古泉」
「おや、おはようございます」
いつもの古泉だ。
「……昨日は、面倒をおかけしてしまって」
「何を言うか。いつもは俺が助けられてるんだろうが。たまには借りを返させろ」
「……ありがとうございます」
だから礼を言うな。
しかし、古泉のズボンが妙に膨らんでいる。
何なんだろうか?
問い詰めるのは止めにした。
これ以上、お漏らしについて触れる事はないだろう。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:41:04.89 ID:jongqAto0
――
教室につくと、ハルヒが迫ってきた。
「キョン。古泉君はどうだった?」
「ああ。昨日は凹んでたけど、今朝は来てた。いつもの古泉に戻ってたよ」
「そう……」
「なあ、あの件だけど」
「大丈夫。分かってるから」
「ならいいんだ。……お前、古泉を嫌いになったか?」
「そんな訳ないでしょ。あんたより頼りになる副団長よ」
「へいへい」
予鈴が鳴り、授業が始まった。
放課後、あいつは団室に来るはずだ。
いつも道理、ボードゲームをしよう。
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:46:13.00 ID:jongqAto0
――
授業が終わり、僕は掃除当番だった事を思い出す。
手早く済ませ、団室に行かなければならない。
お漏らしの件は、大丈夫だろう。
彼らは、仲間で友達だ。
オムツをはいてきたお陰で、今日は二度も漏らしたけれど、事なきを済んでいる。
ありがとうございます、森さん。
団室への廊下を歩く。
階段を下りる。
オムツの中身が少しチャポチャポするが、まだ大丈夫。
扉をノック。
「どうぞー入っていいわよー」
涼宮さんの声だ。
いつも通りに扉を開け、入る。
「すみません。掃除当番で遅れてしまいました」
「そんなの適当に済ませちゃえばいいのに! 古泉君は真面目ね!」
いつも通りのやりとり。
しかし、これが幸せってものなんだろう。
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:51:06.43 ID:jongqAto0
――
「よう、古泉。今日はどのゲームで勝負をする?」
キョンが言う。
でも、今日はゲームどころじゃないの。
問題を片付けなくてはならない。
「今日は、鑑賞会をするわ!」
「なんだ? 聞いてないぞ?」
「言わなかったもの! さ、有希! プロジェクターをセットして!」
有希は素早くカーテンを閉め、スクリーンを吊り下げる。
みくるちゃんはお茶を入れている。
「明かりを消して!」
「その前に、皆さんお茶をどうぞ〜」
みくるちゃんがお茶を配る。
準備は整った。
皆、お茶を啜りながらスクリーンに向かう。
スタート。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 02:55:07.60 ID:jongqAto0
『ああっ、あっあっ』
『どうした古泉?』
『あっあのあのあの』
『お、おい!』
ブチャブチャブチャブリブリブリブリブリブリ……
古泉君の、お漏らし現場の動画だ。
有希が撮ったのを、映写した。
古泉君を見ると、身体は固まり、顔は真っ白だった。
ごめん、古泉君。
「……何だよ……何なんだよ、これは!」
キョンが怒鳴る。
うん、分かってる。
でもね。
必要な事なの。
「お前、自分が何をしたのか分かってるのか!」
ええ。勿論よ。
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 03:02:19.23 ID:jongqAto0
「ふぐっ……だめですぅ……」
みくるちゃんが一番? 早いのね。
「私も……限界……」
有希、ありがとう。
「あ……何だ、これ……」
キョン。説明してなくて悪かったわね。
「あたしも、もう駄目ぇ!」
ブリブリブリギュルギュルギュルギュルギュルボルボルボルボル……
あたし、みくるちゃん、有希、キョンが、同時に下痢便を漏らした。
団室は、昨日の比ではない臭さに包まれた。
「え……? あの、え?」
古泉君が戸惑っている。
何が起きたのか、どうしていいのか分からないんだろう。
だから、わたしは言った。
「古泉君! あなた以外、全員ウンコを漏らしたわ! 綺麗にするの、手伝って!」
そう。みくるちゃんのお茶には、超強力な下剤を致死量ギリギリまで入れてあった。
下剤が入っていないお茶を飲んだ古泉君だけが、漏らしていない。
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 03:06:38.98 ID:jongqAto0
「図ったな、ハルヒ……」
「ふふふ……団員は一蓮托生よ……」
「と、止まりません……!」
「お腹、痛い……」
さあ! 古泉君! 今こそみんなの世話を焼いて、昨日の失敗を取り返すのよ!
それしかないの! ウンコなんて、誰でもするんだから!
だけど。
古泉君は。
青白い顔に引きつった笑顔を浮かべ。
叫んだ。
「馬鹿にしてんじゃねぇえええええええっ!」
ちょっと、古泉君。
馬鹿になんかしてない。
わたしは、みくるちゃんは、有希は――。
古泉君が団室から飛び出す。
あたしたちは、漏らしながらも彼を追った。
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 03:12:00.88 ID:jongqAto0
――
屋上。
古泉はこんなところまで走ってきやがった。
俺たちは糞を漏らしてるんだ。
走らせんなよ。
まあ、気持ちは分からんでもないが。
「古泉君、話を……」
「うるさい! みんな僕を馬鹿にして! 糞漏らし野郎って思っているんでしょう!」
「そんな事ありません!」
「……これは、SOS団員の皆が同じ立場でありたいという」
「はっ! これを見てくださいよ!」
古泉君はズボンを脱いだ。
オムツをしていた。
「貴方達は、下剤か何かで漏らしを再現したんでしょうが、僕は違う!」
「デフォルトでお漏らし体質なんですよ! はははははっ!」
「面白いでしょう? 笑いたければ遠慮は要りませんよ? というか笑え!」
……古泉君っ!
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/14(水) 03:19:22.57 ID:jongqAto0
――
それからの事は、あまり覚えていない。
俺が覚えているのは、古泉がオムツを脱ぎ、振り回しながら屋上から飛び降りたところまでだ。
ああ、古泉は死んじゃいない。
落下の最中に、漏らした下痢便がクッションになり、両手両足とあばら全部と頭蓋骨陥没で済んだ。
俺たちは、団室で話し合っている。
古泉が退院してきたら。
どう出迎えるかを。
「だから、やっぱりみんなで漏らすの!」
「それは駄目だったろうが。触れずにおくのが一番だ」
「宿便が全部出てスッキリしました〜」
「SOS団全員の脱糞動画が撮れて満足」
古泉よ。
俺たちは、お前の仲間で、友達だ。
だから――。
帰って来いよ、この団室へ。
糞漏らしでもオムツでも、構わない。
お前はたった一人のお前なんだから。
【End】
108 名前:南部十四朗 ◆pTqMLhEhmY [sage] 投稿日:2010/07/14(水) 03:21:54.09 ID:jongqAto0
仲良しSOS団が書きたくて書きました。
中学の頃の経験を元にしましたが、何故か心が痛いです。
優しくされると余計に……ですよね。
ご覧になった方々、どうもありがとうございました。
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/14(水) 03:24:24.10 ID:jongqAto0
漏らしてもエンガチョされなかった良い思い出です。
いい友人でした(過去形)。