1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:37:57.24 ID:F++gjb6c0
地球をアイスピックでつついたとしたら、ちょうど良い感じにカチ割れるんじゃないかというくらいに冷え切った朝だった。
谷口「よっ、キョン」
キョン「よう、谷口」
谷口「今日が何月何日がお前知ってるか?」
キョン「12月17日だが、それがどうした?」
谷口「どうしたもこうしたもねえ。一週間後に胸が躍るような日がやってくるのを、お前は知らんのか?」
クリスマスイブにクリスマスパーティとして鍋大会を行なうことを昨日ハルヒに話されたことを思い出した。
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:38:55.79 ID:F++gjb6c0
谷口「涼宮のやりそうなことだな。部室で鍋大会か。ま、マジで教師どもには見つからないようにしろよ。また面倒なことになるぜ」
キョン「なんならお前も来るか?」
谷口「いやあ悪いなあ、キョン。クリスマスイブに変な仲間内で集まって鍋をつつきあうなんて、モテない連中のするこった。
残念だが、俺はもうそっち側の男じゃなくなっちまった」
まさかとは思うが。
谷口「そのまさかってヤツだと思ってくれ。俺のスケジュール帳の二十四日には赤いハートマークが刻まれているぜ。
いや悪い。マジで悪い。ほんと、すまねえーなあー」
俺はがっくりときた。俺がハルヒに振り回されてる間に谷口には彼女ができていた。
しかし翌日、もっとがっくりくることが起こることを俺は知る由もなかった。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:39:56.15 ID:F++gjb6c0
翌日
妹「朝ご飯はちゃんと食べろって、お母さんが。シャミも、ご飯できてるよ」
こんな感じでいつものように学校に登校する。まさか俺にとってこれが最後の登校になってしまう。
登校だけではない。家族と食事をするのもこの朝が最後になってしまった・・・
キョン「よう、谷口。どうした? 風邪か?」
谷口「……む、キョンか。ての通り風邪状態だ。本当は休みたかったんだが、親父がうるさくてな。」
キョン「昨日まで元気いっぱいだったのに、突然の風邪があったもんだな」
谷口「何言ってやがる。昨日も調子はよくなかったぞ。ゲホゲホン」
キョン「ん……そうだったか?イブの予定を嬉しそうに語ってただろ。まあ、デートまでには治せよ。そんなチャンスは滅多に到来しないだろうからな」
谷口「デートだあ? なんのことだ。ゲホ。イブに予定なんかねえぞ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:40:27.53 ID:F++gjb6c0
キョン「光陽園の彼女がいるって・・・」
谷口「おい、キョン。マジでおめーは何言ってんだ? そんなもん俺は知らねえ」
昨日の晩にでもフラれたんだろうか?
キョン「やっぱ鍋大会に参加するか? 今ならまだ間に合うぞ」
谷口「鍋ってなんだ? どこでする大会だよ、それ。聞いた覚えはねえな……」
それくらいショックなのだろうと思って俺はこれくらいにしといた。
いつのまにか一年五組には風邪が蔓延していて、ハルヒまで病欠している。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:40:58.56 ID:F++gjb6c0
昼休み
国木田「休みみたいだから、ここに座ってもいいよね」
いつもは谷口と国木田と弁当と食べることが多いが、谷口は風邪が悪化して保健室へ。
どうやら風邪は1週間前から流行っていたらしい。俺は知らなかった。
というより今日は周りの様子がおかしい。ハルヒ以外の全人類が困ることが起きるのではないかと予感していた。
しかし困るのは俺だけだった。12月18日の昼休み。形を伴った悪い前兆が、教室のドアを開いた。
「うん、もう大丈夫よ。午前中に病院で点滴打ってもらったらすぐによくなったわ。家にいてもヒマだから、午後の授業だけでも受けようと思って」
国木田「あ、どかないと」
「どうしたの?幽霊でも見たような顔をしているわよ?それとも、わたしの顔に何かついてる?」
キョン「待て!どうしてお前がここにいる」
「どういうこと? わたしがいたらおかしいかしら。それとも、わたしの風邪がもっと長引けばよかったのに、つていう意味? それ、どういうことなの?」
キョン「そうじゃない。風邪なんかどうでもいい。それではなくて……」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:41:44.79 ID:F++gjb6c0
国木田「本当に変だよ。さっきからキョンの言ってることはおかしいよ、やっぱり」
キョン「国木田、お前はこいつを見て何とも思わないのか?ここにいるはずのない奴じゃねえか!」
国木田「……キョンさあ、ちょっと休んでただけでクラスメイトの顔を忘れちゃったりしたら失礼だよ。いるはずのない、ってどういうこと? ずっと同じクラスにいたじゃん」
忘れやしないさ。かつての殺人未遂犯を。
長門との戦いに敗れて消滅し、表向きはカナダに転校したことになった、かつての委員長。朝倉涼子が、ここにいた。
朝倉「お弁当食べながらうたた寝してたんでしょう。悪い夢でも見てたんじゃない?顔を洗ってきたらすっきりするわよ。」
キョン「いらん。それよりどういうことか教えろ。何もかもをだ。特にどうしてお前がハルヒの席に鞄を置くのか言ってくれ。それはお前の机じゃない。ハルヒのだ」
朝倉「ハルヒって誰のことなの? そんな愛称の人がいたかしらね」
国木田「聞いたことないなあ。ハルヒさんねえ。どんな字を書くんだい?」
キョン「お前たち、涼宮ハルヒを忘れたのか? どうやったらあんなやつを忘れることができるんだ……」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:42:33.56 ID:F++gjb6c0
国木田「そんな人はこのクラスにはいないよ。それにこの席はこの前の席替えのときから朝倉さんの席なんだよ。
どっか他のクラスと勘違いしてるんじゃないの?」
朝倉「国木田くん、ちょっと机の中を見てくれる? 端っこのほうにクラス名簿があるわ」
国木田が取り出した小冊子を俺はひったくった。
・・・ない。涼宮ハルヒの名前がクラス名簿から消えている。
キョン「……国木田、頬をつねってくれ。」
と言おうとしたとき・・・
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:42:56.68 ID:F++gjb6c0
(パシン)
小野「朝倉さんの悪口を言う奴は俺が許さん!」
クラスメートの小野に思いっきりビンタされた。かなり痛かった。ハルヒの10倍くらいだろうか。
国木田「小野くん、やりすぎだよ。キョン、大丈夫?」
キョン「大丈夫だ!」
国木田につねってもらう手間が省けたと思うことにしよう。しかし目は覚めない。朝倉はまだそこにいる。
「ちくしょう」
俺は近くにいた数人にハルヒのことを聞いたが誰も知らない。
さらに1年6組に行ったが長門もいない。もしかして長門も消えてしまったか?
1年9組に行こうとしたがなんと教室自体が消えていた。参るしかない。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:44:08.43 ID:F++gjb6c0
放課後、階段を下り、一階にたどり着いた俺は、そこで一筋の光明を見いだして走り出した。
キョン「朝比奈さん!」
こんな嬉しいことが他にあるか。俺の女神兼眼精疲労回復薬が対面から歩いてくる。
さらに鶴屋さんの姿まであることだ。
俺は目を見開く朝比奈さんの両肩をがっしとばかりに鷲づかみにした。
みくる「ひえっ!」
キョン「ハルヒがいないんですよっ! 古泉なんか漂流教室になってます! 長門はまだ確認してませんが、
朝倉がいて、どうも学校の様子自体が変なんです。あなたは俺の朝比奈さんですよね!?」
みくる「えっ? あっ、ひっ。えっ。ちょ、その……」
キョン「だから、あなたは未来から来た朝比奈さんですよね!?」
みくる「……未来って? 何のことでしょう。それより放してくだ……さい」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:44:32.86 ID:F++gjb6c0
鶴屋「ちょいとっ少年!いきなりはダメだよっ。ごらん、うちのみくるがすっかり怯えてるよっ」
キョン「あの、鶴屋さん……?」
鶴屋「あれ。あたしを知ってるの?」
2人とも俺のことを知らない。混乱した俺はとんでもないことを口走ってしまった。
キョン「朝比奈さん、あなたの胸のここらへんに星形のホクロがあるはずです。ありますよね? できたらそれ見せてもらえれば----」
朝比奈さんに思いっきり殴られた。グーで。さらに
鶴屋「馬鹿野郎!」
直後に鶴屋さんにもビンタを浴びせられた。朝比奈さんと、さきほどの小野を超える痛さだった。
信じられない。朝比奈さんや鶴屋さんがこれほど凶暴だったとは。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:45:31.41 ID:F++gjb6c0
1日に3発も食らったことで。すっかり俺の頬は腫れ上がっている。
呟きを吐いて俺が向かう先はただ一つ。部室棟、通称旧館にある文芸部部室。
そこに長門がいなければ、俺に何ができるというのだろう。
俺はノックを省略し、勢いよく扉を開いた。
キョン「いてくれたか……」
パイプ椅子に座り、長テーブルの片隅で本を広げている小柄な人影を。
驚いた表情で口を開け、眼鏡のレンズ越しに俺を凝視する長門有希を。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:46:10.66 ID:F++gjb6c0
キョン「長門」
長門「なに?」
キョン「教えてくれ。お前は俺を知っているか?」
長門「知っている」
キョン「実は俺もお前のことなら多少なりとも知っているんだ。言わせてもらっていいか?」
長門「…………」
キョン「お前は人間ではなく、宇宙人に造られた生体アンドロイドだ。魔法みたいな力をいくらでも使ってくれた。
ホームラン専用バットとか、カマドウマ空間への侵入とか……」
キョン「……それが俺の知っているお前だ。違ったか?」
長門「ごめんなさい。」
長門「わたしは知らない。あなたが五組の生徒であるのは知っている。時折見かけたから。
でもそれ以上のことをわたしは知らない。わたしはここでは、初めてあなたと会話する」
キョン「……てことは、お前は宇宙人じゃないのか? 涼宮ハルヒという名前に何でもいい、覚えはないか?」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:46:47.00 ID:F++gjb6c0
キョン「思い出してくれ。昨日と今日で世界が変わっちまってる。ハルヒの代わりに朝倉がいるんだよ。
この選手交代を誰が采配した?
朝倉が復活しているんだからお前も何か知ってるはずだ。朝倉はお前の同類なんだろう?」
長門「やめて……」
我に返った。いつしか長門は壁に背を付けており、つまり俺は無意識のうちに長門をそこまで追い込んでしまっていたようだ。
なんてことを俺はしている。これではまるで暴漢じゃないか。
誰かに見られでもしたら即刻後ろに手が回ると同時に社会的制裁を受けること必至だ。
二人きりの文芸部室でおとなしい女子部員に襲いかかった外道な畜生野郎。客観的に見てそれ以外の何者でもない。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:48:01.21 ID:F++gjb6c0
・・・なんて考えてるうちに
バシン
杉田「お前は何をやってる!」
遅かった。偶然通りかかった杉田先生に見つかってしまった。
しかもよりにもよって学校一の体罰教師に見つかったのは不運すぎる。
強いビンタを受けた俺は文芸部室に倒れこむ。小野、朝比奈さん、鶴屋さんに続いて本日4発目である。
今まで親父や教師やハルヒにはさんざん殴られたが、1日に4回も別々の人間に殴られたのは生まれて初めてだ。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:48:21.02 ID:F++gjb6c0
杉田「この野郎!(バシン)お前は今何したかわかってのか!(バシン)暴漢だぞ!(バシン)」
次々跳んでくる往復ビンタ。もうやめてくれ。俺のライフはゼロだ!
杉田「生活指導室にこい。お前には厳しい処分が待っている!」
俺は杉田先生に連れて行かれ、校長先生に信じられないことを言われる。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:49:16.56 ID:F++gjb6c0
校長「本日付けで退学とする」
何と言うことか。退学処分だと?
キョン「たった1回でいきなり退学ですか?」
校長「1回じゃないだろ!パソコンを強奪したり、よその家に忍び込んだり、2ヶ月前は神社で発砲事件。
そして今日は女子生徒への暴力行為。」
わけがわからない。最後の1件はともかく、それ以外は全てハルヒがやったことだ。しかしなぜか俺がやったことにされてる。
校長「はい、これだ。」
俺は一枚の白紙の紙を渡された。
キョン「なんですかこれは?」
校長「見ればわかるだろ。退学届けだよ。温情として自主退学扱いにしてやる。今すぐこれに名前書け。」
言われるまま俺は退学届を書き、校長に手渡した。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:50:00.32 ID:F++gjb6c0
杉田「最後に長門さんに謝罪しなさい」
杉田先生に文芸部室に連れて行かれ
キョン「長門、本当すまなかった。」
俺は何度も頭を下げた。
杉田「許すなんてのは無理だろうが、こいつは退学にした。」
俺は荷物をまとめて学校を出た。あまりに突然すぎる退学宣告に困惑していた。
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:50:40.18 ID:F++gjb6c0
そして家についたときさらに困惑する事態が。
父「学校から聞いたぞ!」
母「退学になるなんて情けないよ・・・」
妹「お兄ちゃん最低!」
玄関にはバックが並べられていた
父「もうお前はニートなんだ!ニートなんかうちの子じゃない。さっさと出て行け!」
キョン「そんな。いきなり追い出されても、行くとこねえよ。」
父「転校先か、仕事を見つけてくるまで帰ってくるな!」
俺は荷物とともに家から放り出された。ドアには鍵がかけられた。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:51:13.68 ID:F++gjb6c0
キョン「いきなりすぎだよ。もう少し俺の話を聞いてくれ!」
最後に少しだけドアが開いて、父が一言口にした。
父「解散!」
そして再び鍵をかけられる。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:52:31.36 ID:F++gjb6c0
まだ頭の整理がつかない状況で、今日の出来事を振り返る。
友達がみんなおかしくなって、ハルヒが消えてに朝倉がいた。
俺は混乱して朝倉と朝比奈さんと長門に当たった結果、4人の人間に殴られ、退学処分を受けた。
そして退学に怒った親父に家から追い出された。
なんてこった。1日で世界が変わったどころか学校も家も失ってしまった。こんな急展開があるだろうか。
俺にはもう今日寝る場所もない。近くの公園にでも野宿するしかないだろう。俺は光陽園公園の滑り台で一夜を過ごすことにした。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:56:58.03 ID:F++gjb6c0
翌日、朝の7時に目が覚める。いつもより早い目覚めだ。昨日の昼以降何も食っていないせいだろう。
早く目が覚めても、もう学校に行く必要もないのだ。
とりあえずコンビにで食料は調達したが、俺の小遣いはあとどらくらい持つかわからない。
親父には転校先か仕事を見つけるまで帰ってくるなと言われている。とりあえずハローワークへ。
しかし周りの人にも相手にされず。
さらに参考書を探しに図書館にも行った。5月に長門とこの場所に行ったことが思い出される。
あのときはハルヒに振り回されて本当大変だった。しかし今は別の意味で大変である。
今まで平日の昼間の街を歩くことなんてなかったから新鮮だった。
結局収穫はなし。ただ暇を潰すだけで終わった。
昨日起こった出来事がまだ自分の中では信じられないでいた。
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/08(木) 23:59:22.62 ID:F++gjb6c0
夕方、公園にいると・・・
朝倉「あら、こんなところでどうしたの?」
キョン「朝倉か。教室以外でお前の顔を見るなんて、想定外だぞ。」
朝倉「わたしはこの近くに住んでるけど、あなたはなんでここに?」
そうか。長門や朝倉のマンションはこの近くだったな
キョン「親父に新たな進路を見つけるまで帰ってくるなと家から追い出された」
朝倉「それは大変ね。で、見つかったの?」
キョン「見つからないよ。俺頭よくないし、中卒じゃどうにもならん。」
朝倉「はあ、こうやってホームレスができあがって行くのね」
キョン「チッ、うっせーな。 ・・・今の俺には重たいよその言葉」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:01:05.65 ID:HkBE/wZX0
夜になった。またコンビニで水やパンを買う。こういう生活があと何日できるだろうか?
夢の中だけでもよかった。あいつなら他人の夢に出てくることだって無意識にやってのけるだろう。
「いてもいなくても迷惑なんだから、肝心なときくらい出しゃばってこいよな。たまには俺の願いを聞いてくれてもいいだろうが……」
「なんてこった」
俺はハルヒに会いたかった。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:03:08.51 ID:HkBE/wZX0
12月20日、世界がおかしくなって3日目。俺が何もかもを失って2日目。
俺の小遣いも底をついてきた。あまりにも早くないか。午前中はぼんやり過ごして昼過ぎ
谷口「よう!」
谷口だ。確か今日から短縮授業に入ったはずだから学校は終わったのだろう。
キョン「谷口、風邪は大丈夫なのか? ていうかお前が何でここに?」
谷口「風邪は大丈夫だ。お前が退学になったのを聞いて気の毒に思ってな、一言声かけてやろうと思って。
そしたら家を追い出されたと聞いて、お前が行きそうな場所に来てみた。本当同情するぜ。」
キョン「同情するなら金をくれ」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:04:31.22 ID:HkBE/wZX0
谷口「なんじゃそりゃ。ところで一昨日何やら騒いでたんだってな。朝倉がいるとかいないとか言って半狂乱だったんだって?」
キョン「まあな」
谷口「その場にいたかったぜ。お前が殴られて退学になるとこなんてそうそう見れないもんな。」
お前はドSか
谷口「国木田に聞くと、誰かの代わりに朝倉がいるのがおかしいとかいう話だったそうだな。ハルヒとかいう。」
キョン「その名前を蒸し返さないでくれるか」
谷口「ハルヒってのはひょっとして涼宮ハルヒのことか?」
キョン「おい谷口、お前は今、何と言った?」
谷口「だから涼宮だろ。東中にいたイカレ女だ。中学ではずっと同じクラスでなあ。そういや今頃何してんだろうな。
で、なんでキョンがあいつのことを知ってんだ。」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:08:20.53 ID:HkBE/wZX0
キョン「どこだ。あいつはどこにいる。」
谷口「お前あいつに一目惚れでもしたのか?やめといた方がいいぞ。
あいつは中学時代にな」
キョン「学校に忍び込んで落書きしたんだろ。そんなことはどうでもいい。
ハルヒの居場所はどこだ。どこに行きやがった?」
谷口「光陽園学院だ。まあ、頭はよかったからな。バリバリの進学校にお行きなきった」
なんでこんなことに気付かなかったか。てっきりこの世界から消えたのかと思ったぜ。
学校も家もなくなったが、ハルヒに会えるならそれだけでいい。
俺はすぐさま光陽園学院へと向かった。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:10:48.63 ID:HkBE/wZX0
そして見つけた。見覚えのある顔を。
キョン「おい」
ハルヒ「誰よあんた。あたしは知らない男から、おい、なんて呼ばれる筋合いまるでなしよ。ナンパなら他を当たってくんない?」
やはりこいつは俺のことを知らない。さらに隣にいた古泉に話しかけた。
キョン「お前とも、初めましてになるのか」
古泉「そのようですね。でも僕は多少あなたのこと知ってます。」
キョン「え、本当か?」
古泉「はい。暴漢で北高を退学になった男子生徒ですね。うちの学校で今有名ですよ。」
なんじゃそりゃ。俺があの日混乱してよからぬ行動に出たことがここの連中にまで知られてたとは。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:11:48.39 ID:HkBE/wZX0
キョン「ハルヒ」
ハルヒ「名前で呼ばないでよ。悪いけどニートには興味ありません。」
初対面でニート・・・ ていうかその言葉にデジャブが・・・
キョン「待ってくれ。」
ハルヒ「しつこいわよ」
キョン「三年前の七夕を覚えているか?あの日、お前は中学校に忍び込んで校庭に白線で絵を描いたよな」
ハルヒ「そんなの、誰だって知ってるわ。だからどうだっていうのよ」
キョン「夜の学校に潜り込んだのはお前だけじゃなかったはずだ。女の子を背負った男が一緒にいて、お前はそいつと絵文字を描いた。
それは彦星と織姫宛のメッセージだ。内容はたぶん 『わたしはここにいる』」
ハルヒ「どうして知ってんのよ。誰から聞いたの?
まさか。……あんた、名前は?」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:12:39.52 ID:HkBE/wZX0
キョン「ジョン・スミス」
俺が名乗るべき固有名詞はこれしかない。やや苦しげになってしまったのは容赦して欲しいね。
ハルヒ「あんたが? あのジョンだって言うの? 東中で……あれを手伝ってくれた……変な高校生……」
繋がった。
キョン「詳しいわけを話したい。これから時間あるか?」
何とか聞いてもらうことができた。
ハルヒ「どうしてあたしが考えた宇宙人語が読めたの?」
キョン「翻訳してくれた奴がいたんだよ。
宇宙人に造られた対人類コミュニケート用ヒューマノイドインターフェイス……だったかな」
そしてそれまでの経緯を話す。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:17:49.36 ID:HkBE/wZX0
ハルヒ「何それ。バカじゃないの?妄言にしか聞こえないわね。
しかもあんたが退学になった原因はあたしにあるって言いたいの?」
古泉「それを先生に話したらどうですか?100%信じてもらえないでしょうがね。」
やはりそううまくはいかなかった。そりゃそうだろう。
俺の記憶にはなくても、この世界ではさんざん迷惑をかけてるようだからな。
ハルヒ「でもそっちの方も面白そうね。 その長門さんと朝比奈さんに会えるなら、信じてあげてもいいわよ。」
珍しくハルヒが応じてくれた。しかし
古泉「涼宮さん、それはまずいですよ。この方は長門さんへの暴力行為で退学になったのですから。」
古泉の言うとおりハルヒの要求には答えられない。
その2人は被害者で俺は加害者ということになってる。再び俺が近づこうものならすぐに止められるだろう。
ましてや俺は退学になった。もう北高の校舎に入ることも許されない。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:20:11.11 ID:HkBE/wZX0
キョン「すまん。やっぱりこの話はなかったことにしてくれ。」
周りは沈黙する
キョン「でもお前たちに会えてよかった。俺の記憶の中では大切な仲間だからな。」
古泉「そうですか。それではこの辺で失礼します。」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:21:11.16 ID:HkBE/wZX0
家を失って3回目の夜が来た。ハルヒや古泉と再会できたのはいいが、俺はニートでホームレスのままだ。
思えば一昨日の昼、もし近くに谷口がいたらその時点でハルヒの居場所を突き止めることができただろう。
そしたら俺は錯乱することなく、退学にならずにすんだかもしれない。なんということだ。
とはいえ、たらればを言っていても仕方ない。突然世界が変わったことを考慮しても、
朝比奈さんと長門に過剰に当たってしまったのは俺が悪い。
新たな道をみつけるまで家に帰ることはできない。俺の実力じゃ無理だ。
もう生きててもしょうがない。死んでしまいたい。そんなことを思いながら眠りについた。
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:23:47.38 ID:HkBE/wZX0
長門「声をかけてくれて嬉しかった。」
夢の中で声が聞こえる。この声は長門か。しかし俺の知る長門と違ってかなり感情豊かだ。
長門「あなたが退学になったのを残念に思う」
なぜだ?俺はお前を襲ったんだぞ。
ここの世界の長門も少し奇妙なようだ。
ハルヒ「ねえ、ジョン」
ハルヒは光陽園の制服だ。呼び方もいつもと違う。
キョン「その呼び方やめてくれないか」
ハルヒ「キョンよりジョンの方がかっこいいじゃない。誰よ、そんなダサいあだ名考えたの?」
いつものように罵倒されてるのになぜか心地いい。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:25:39.77 ID:HkBE/wZX0
ハルヒ「今は辛いだろうけど、いつまでもクヨクヨしてないで、次の目標を見つけなきゃダメよ。
まだいくらでもやり直せるんだから!」
その言葉に心を打たれた。まさかハルヒに励まされるとは。
キョン「ありがとう。本当にありがとう!」
何で俺泣いてるんだ?
これは夢だ。しかしものすごく心地よかった。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:28:20.59 ID:HkBE/wZX0
妹「お兄ちゃんどうしてんのかな」
母「もうお兄ちゃんはいいの。どうせ公園にでも泊まってるんでしょ」
父「絶対に許さん!」
妹「まあ、いいよね。」
結局俺に救いの手が舞い降りることはなかった
終わり(続きは皆さんご想像下さい)
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/09(金) 00:31:41.90 ID:HkBE/wZX0
とりあえずキョンになんかむかついたのでこんな悲劇的なSS考えてみました
まあ期待してた方はすいません