ハルヒ「夢じゃない」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 00:56:37.94 ID:uY/N95iB0

長門の家には、ハルヒを除くSOS団のメンバーが集まっていた。
キョンはどこか嬉しそうな、それでいて寂しそうな古泉とみくるの顔と、
いつも通りの表情の長門の顔を見比べている。

キョン「またハルヒが何かやらかしたのか?」

古泉「いえ、どちらかというとその逆です」

キョン「どういうことだ」

古泉「涼宮さんの能力が、ほぼ無くなってしまった様なのです」

キョン「…そうなのか?」

古泉「ええ、実はその傾向は3カ月ほど前からあったのです。
   あなたと涼宮さんは隠していたつもりかもしれませんが、
   お二人がお付き合いを始めた頃からです」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 01:13:56.52 ID:uY/N95iB0

キョン「…知ってたのか」

古泉「ええ、そして一週間前。久しぶりに神人が現れたと思ったら、
   その神人が突然粉々に砕け散るように消えていきました。
   僕の特殊な能力もその時を境に一緒にね」

キョン「…一週間前か」

古泉「何があったかをいちいち聞くのは野暮なことですが、
   その日はお二人が、本当の意味で心も身体も結ばれたのでしょう?」

キョン「十分野暮なこと聞いてんじゃねぇか」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 01:15:06.99 ID:uY/N95iB0

古泉「これは失礼。ただ僕も晴れてこれで普通の高校生です。
   機関の人間に頼みこんで、北高で残りの高校生活を送らせてもらうこと
   になりましたが…これからはあなたと普通の友人として楽しく過ごしたいものです」

キョン「そうか、まぁよかったなと言っておこう」

みくる「あ、あのキョン君」

キョン「どうしました、朝比奈さん」

みくる「私はね、もう少ししたらお別れなの。未来に帰らなきゃいけないの」

キョン「そうですか…残念です」

みくる「本当に今までありがとう。残りわずかですがよろしくお願いします」

みくるの目からは涙が溢れていた。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 01:16:44.18 ID:uY/N95iB0

キョン「長門。お前も宇宙に帰っちまうのか?」

長門「おそらくいずれはそうなる。しかし、涼宮ハルヒという因子の能力が消滅
   したことによる事後経過のデータが必要。よって後10年間は私はこの
   地球上で観測を続けなければいけない」

キョン「そうか…じゃあ一緒に北高を卒業することになるんだな」

長門「…おそらく」

古泉「今日のところは話はこれだけです。まぁ今まで通りSOS団として、
   あなた達と過ごしていけたらと、今の僕はそう願っていますよ。
   朝比奈さんがいないのは寂しいですが」

キョン「…そうだな、じゃあ今日は帰るよ。朝比奈さん、突然いなくなるのは
    無しですよ」
みくる「はい」

この時、未来人であるみくるでさえも予測出来ない、イレギュラーで
不幸な出来事が起こるなど、誰も知るところではなかった。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 01:31:31.84 ID:uY/N95iB0

夜道を一人でキョンは歩いて自分の家へ向かう。何故だかやけにサイレンの音が聞こえた。

キョン(朝比奈さんがいなくなると知ったら、ハルヒの奴どういう態度とるんだろうな)

サイレンの音が近づいてくる。「そこの車止まりなさい」とスピーカーの籠った声が聞こえる。

キョン(こりゃずいぶん近いな)

そう思いながら、十字路にキョンが差し掛かったその瞬間だった。
物凄いタイヤの擦れる音と共に、乗用車が思い切り横滑りを起こした。
キョンの身体に鉄の塊がぶつかる。
車とブロック塀に挟まれたキョンは朦朧とした意識で思った。

        「ああ、ハルヒごめんな」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 01:43:07.59 ID:uY/N95iB0

           〜ハルヒ宅〜

ハルヒ(キョンの奴、メールは5分以内に返せっていつも言ってるのに…死刑だわ)

ハルヒが風呂にでも入ろうとした、その時だった。

           ピリリリピリリリ

ハルヒ(電話?キョンの奴、よっぽどアタシの声が聞きたいのね)

ハルヒは発信者の名前も見ずに、慌てて電話をとる。

ハルヒ「こらバカキョン!なんですぐメール返さないのよ」

古泉「すいません。僕です、古泉です」

ハルヒ「あっあら古泉君?ごめんね、どうかしたのかしら」

古泉「涼宮さん。落ち着いて聞いてくださいね」

ハルヒ「何よ、古泉君にしては怖い声ね」

古泉「彼が…交通事故に遭って病院に運ばれています」

ハルヒ「彼って…キョン!キョンなの?」

古泉「はい」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 01:55:18.91 ID:uY/N95iB0

息を切らしながら病院に辿り着いたハルヒは、暗い顔をした古泉と長門と、
声をあげて泣いているみくるとキョンの妹の姿を見つけた。

ハルヒ「古泉君。キョンは、キョンはどこなの?どうせ軽い怪我なんでしょ?
    何とかいいなさいよ古泉君っ!」

古泉の顔が歪む。ハルヒが目を見つめると、彼の目に涙が溜まっているのを見つけた。

古泉「…亡くなりました、彼はたった今息を…引き取りました」

ハルヒ「そんな、うそよ。ねぇウソでしょ?この部屋にいるんでしょ」

古泉「涼宮さん、そこはご両親以外は今は入れません」

ハルヒはその言葉を無視して、扉の向こうに駆ける。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 02:09:37.48 ID:uY/N95iB0

医師「こらっ君、何をやってるんだ!」

ハルヒ「キョン、キョンはどこ?」

家を訪ねた時に会ったことのあるキョンの母親と、初めて見るキョンの父親と
目が合った。二人とも涙で顔が濡れている。そして、ハルヒはゆっくりと視線を落とす。

ハルヒ「あ、ああ」

身体は緑色のシートで覆われ、キョンの顔だけが覗いている。
傷だらけだが、あの優しい表情はキョンだとハルヒ思った。
そして、あれはもう生きている人間の顔ではないということも。

医師「気持ちは分かるが、君は外に出ていなさい」

力無くハルヒはその部屋を後にした。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 02:17:50.62 ID:uY/N95iB0

フラフラと歩くハルヒを、古泉が支える。

古泉「涼宮さん、大丈夫ですか?涼宮さん!」

ハルヒ「キョンが、キョンが死んじゃった。どうしよう、どうすればいいの」

古泉「…」

ハルヒ「アタシがいっつも死刑だ、とかそんなこといってたから…キョンがキョンがぁ」

古泉「そんなことはない!悪いのは無茶な運転で事故を起こした馬鹿のせいだ」

古泉の今まで見たこともない剣幕と言葉使いに、一瞬全員が静まり返ったが、
ハルヒの泣き声と共に、またみくるも妹も、そして古泉も泣き始めた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 02:29:23.99 ID:uY/N95iB0

キョンの通夜と葬儀も終わり、ハルヒはキョンの親に頼んで、キョンの部屋に一人でいる。
ベッドに腰掛けると、まだキョンの温もりが残っている気がした。

ハルヒ「ふふ、キョン。アタシね、キョンが死んでから一睡もしてないのよ、
    何かもう疲れちゃった」

ハルヒは鞄から包丁を取り出すと、自分の首にそれを突き付ける。

ハルヒ「部屋を汚しちゃってごめんね。でもどうしてもここで死にたいの。
    今いくからね」

ハルヒが決心して目を瞑った時だった。

        (馬鹿なことはやめろ!)

ハルヒ「キョン?今の声キョン」

ハルヒが思わず目を開けると、そこには一番会いたかった人物が立っていた。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 02:42:40.69 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「キョン、キョン生きてたのね」

ハルヒが抱きつこうとすると、ハルヒはキョンの身体をすりぬけて転んだ。

キョン(馬鹿!気をつけろよ。俺は死んじまってるよ)

ハルヒ「でも、ここにいるじゃない。よかったぁキョン」

キョン(どうやらお前にだけは俺の声や姿が見えるようになったらしいな。
    必死で死ぬなって念じてたからかな)

ハルヒ「どういうこと?」

キョン(俺な、死んでからもずっとお前とか、SOS団のそばにいたんだぜ。
    でもまぁお前らには声も聞こえないし、姿ももちろん見えなかったろうけど)

ハルヒ「幽霊なの?」

キョン(多分な。宇宙人でも超能力者でも未来人でもなくて、幽霊だ)

ハルヒ「幽霊でもいい。キョン、ずっとそばにいてくれるよね?」

キョン(ああ、出来る限りな)

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 02:54:50.35 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「嬉しい…アタシ、これで生きていけると思う」

キョン(そりゃあよかった。ただ人前では話かけるなよ。
   お前が頭おかしくなっちまったと思われるぞ)

ハルヒ「ふん、変人扱いなんて慣れてるわよ」

キョン(自覚あったんだな)

ハルヒ「うるさいバカキョン!うふふ」

妹「ハルにゃん、声がしたけどどうかしたの?」

ハルヒ「ふふ、妹ちゃん。今キョンとお話してるのよ」

妹「…ハルにゃん。わたしも辛いけど、しっかりしてね」

キョン(おい、俺の姿はお前しか見えないんだぞ!)

ハルヒ「ふふ、そうだったわね」

妹(ハルにゃんかわいそう)

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 03:05:33.54 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「じゃあ帰るわよ!」

キョン(帰るって?)

ハルヒ「アタシの家に決まってるじゃないの。ずっとそばにいるって言ったじゃない」

キョン(ああ、そうだったな。でもいいのか?)

ハルヒ「幽霊なんだから、食事もトイレの世話もしなくていいのよね?楽なもんじゃない」

キョン(俺は犬か!そうじゃなくてお前が寝る時も風呂入る時も…トイレの時もいることになるんだぞ?)

ハルヒ「別にいいわよ。それにアンタが死ぬ前に、その…あんなことしちゃったんだし
   今更恥ずかしがることなんてないわ」

こうして二人の同棲生活は幕を開けたのだった。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 03:15:57.44 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「ただいまー」

ハルヒ母「おかえり、ハルちゃん。辛いかもしれないけど元気出してね」

キョン(くくっ、お前家ではハルちゃんって呼ばれてんのかよ?)

ハルヒ「くっちょっと、もう高校生なんだからハルちゃんは止めてよ」

ハルヒ母「辛かったらお母さんに、すぐ話すのよ。いつもみたいに眠れないときは
    一緒に寝てあげるからね」

ハルヒ「ちょっ、もうそんな。笑うなバカキョン!」

ハルヒ母「大丈夫?ハルちゃん」

ハルヒ「ア、アタシちょっと寝るから!」

ハルヒは急いで自分の部屋へと向かった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 09:31:02.96 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「あー疲れた。ちょっとキョン、何ニヤニヤしてんのよ」

キョン(いや、お前が家では甘えん坊なんだと思ったらな)

ハルヒ「うるさい!お袋が子離れ出来ないだけよ」

キョン(無理してお袋なんて言わなくていいぞ。ハルちゃん)

ハルヒ「うるさいバカキョン…うっうぅぐす」

キョン(お前、泣いてるのか?ごめん。俺が悪かったから泣くなよ)

ハルヒ「違うの…まだキョンと話が出来るんだと思ったら、アタシ嬉しくて…嬉しいよキョン」

キョン「ハルヒ…」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 09:47:03.95 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「せっかくキョンがここにいるのに、泣いちゃってカッコ悪いわねアタシ。
    ちょっと寝るわ」

キョン(ああ、そうした方がいい。お前全然寝てないだろう)

ハルヒ「キョン、一緒に寝よう」

キョン(布団かぶれないんだけどな)

ハルヒ「隣で横になる位は出来るでしょ?早く!」

キョン(わかったよ)

ハルヒ「キョン。これからも毎日こうして寝ようね」

キョン(…ああ)

ハルヒがキョンにキスをする。何も感触もない、傍から見ればハルヒが目を瞑って
顎をただ少しつき出しているだけのキスだ。

ハルヒ「うふふ、幸せ」

キョンはこの時すでに気づいていた。ハルヒだって、一人の健康的な女性であること。
そして、本物の人の温もりを、いつかはハルヒが求めるのだということを。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 10:01:14.46 ID:uY/N95iB0

ハルヒと一緒に登校をするために、古泉、みくる、長門の三人はハルヒの家へと
向かっていた。

古泉「そうですか、では朝比奈さんはまだ未来に帰れないんですね」

みくる「はい、これ以上涼宮さんを取り巻く状況を変化させるのは危険のようですし、
    何より私もそばにいたいんです」

古泉「すみません。僕があの日いちいち彼を呼びださなければ…こんなことには」

みくる「もう止めましょうその話は。さぁ涼宮さんの家につきましたよ」

古泉「まだ泣いているかもしれませんね」

みくる「私、どう涼宮さんに接すればいいんでしょうか…」

古泉「とにかく、今は彼女の傍にいましょう」

みくる「…そうですね」

           ピンポーン

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 10:18:36.99 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「あら、みんなおっはよー!迎えに来てくれたの?感心じゃない、鞄取ってくるから待ってて」

ハルヒのあまりの元気さに、長門すらも少し目を大きく見開いている。

みくる「…随分元気でしたね」

古泉「はい、しかしああいう元気は精神の不安定さから起こる躁状態かもしれません。
   まだ安心は出来ないですよ」

みくる「そうなんですか…」

キョン(それはないと思うぞ古泉。お前はあれこれ考え過ぎだ。ってやっぱり聞こえないよな。
    もしかしたら長門ならって思ったんだが、見えてないみたいだし。
    まぁこうして朝比奈さんを穴があくほどジロジロ見れるのは特権だな)

ハルヒ「なにやってんのよ!バカキョン」

キョン(ひっいや、これは)

ハルヒ「帰ったらお説教よ。みくるちゃんキョンが覗くと悪いから、今日からは
   メイド服に着替えなくていいわ」

みくる「…涼宮さん?」

古泉「やはり、少し不安定な状態のようです」ヒソヒソ

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 10:43:15.14 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「なにコソコソ話してるのよ?早く学校にいくわよ!」

古泉「…そうですね」

ハルヒ「そういえば、もうすぐ文化祭と体育祭よね。今年は映画を撮る時間がないから展示物でも作る位にするとして、
    体育祭では、部活対抗の仮装競争にでるわよ!」

古泉「それはいいですね」

ハルヒ「そうでしょ!みくるちゃんに何を着せようかしら。ピッチピチのレオタードなんてどう?」

みくる「ふぇぇ、恥ずかしいです」

キョン(ハルヒ、お前わかってるな)

ハルヒ「この変態。…アタシが今度見せてやるわよ」

古泉・みくる・長門「…」



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 11:10:22.78 ID:uY/N95iB0

その後、学校でも度々キョンに対してハルヒが大声をあげることがあったので、
その度に周りの人間は驚いた顔をしたが、ハルヒはまったく意に介さなかった。

            〜ハルヒの部屋〜

ハルヒ「ふぅーなんか今日は一日疲れたわね。クラスの連中もやけに優しくしてきて気持ち悪かったし」

キョン(お前なぁ、授業中に俺に話しかけるのは止めろよ)

ハルヒ「だから途中で筆談にしてあげたじゃない。ほら見てよノート3ページ分も使っちゃったわ」

キョン(…これでテストの点がいいんだから不思議だ。…ハルヒ?何、暗い顔してんだ?)

ハルヒ「ううん。キョンが文字をかける時にね、こういう風に授業中、手紙とか筆談の
    やり取りしたかったなぁとか思っちゃった。贅沢だよねアタシ」

キョン(俺もしたかったよ)

ハルヒ「本当?ふふ、嬉しい」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 11:22:36.67 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「ねぇキョン?アンタ今日、みくるちゃんのレオタードの話にえらい食いついてたわよね」

キョン(あれは…別に、その何というか)

ハルヒ「…幽霊でもエッチなこと興味あるの?」

キョン(何をいっとるんだお前は。まぁ、死んでも男は男だしな、
    坊さんにお経を唱えてもらったが煩悩は脱しなかったようだな)

ハルヒ「エッチ…してみる?」

キョン(無理だよ。お前に触れることすらできないのに)

ハルヒ「精神的な興奮なら得られるかもしれないじゃない」

そういうとハルヒはおもむろに服を脱ぎはじめた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 11:32:13.08 ID:uY/N95iB0

全ての衣服を脱ぎ終えたハルヒは、ベッドに横たわると両手を広げた。

ハルヒ「キョン…来て。アタシの上に重なって」

キョン(わかった)

ハルヒはキョンの顔を見つめると、おもむろに自分の胸をゆっくりと揉み始める。

ハルヒ「お願い…名前呼んで」

キョン(ハルヒ…)

ハルヒ「もっと何回もぉ。お願い、キョン」

ハルヒのもう片方の手は、いつの間にか股間に伸びていた。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 11:42:26.82 ID:uY/N95iB0

絶頂を向かえたハルヒは、裸のままベッドの上でぐったりとしている。

ハルヒ「ごめんね、キョン。これじゃアタシだけが気持ち良くなってるだけだよね」

キョン(そんなことないさ。お前の姿メチャメチャ綺麗だったぞ。
    俺も興奮しすぎて、なんか気持ち良くなっちまったよ)

ハルヒ「本当?」

キョン(ああ、もう一回見たいくらいだ)

ハルヒ「アンタ、前よりもスケベになったんじゃない?」

キョン(お経を唱えた坊さんが、生臭だったのかもな)

その晩、傍から見ればただの自慰行為を、ハルヒは幸せそうな顔で夜更けまで続けた。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 12:15:01.85 ID:uY/N95iB0

              〜一ヶ月後〜

文化祭・体育祭と続いた慌ただしい日々が、夕暮れの校庭でのフォークダンスで、
フィナーレを迎えようとしている。ハルヒは楽しそうな男女の輪を、遠巻きから見つめていた。

ハルヒ「アタシ達もやりたかったわね。アンタ、ダンス下手そうだけどね」

キョン(失礼な、中学時代にフォークダンスが上手いって女子から褒められた位だ)

ハルヒ「ふふ、本当かしら。なんならやってみましょうか?ほら、手を握ってるつもり」

キョン(おいおい、マジかよ?)

ハルヒ「ほら、早く!」

少し遠くから聞こえる音楽に合わせて、ぎこちなく二人が踊る。
ハルヒの目が潤んで、夕日に反射した気がキョンはした。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 12:34:34.22 ID:uY/N95iB0

その時だった。誰かが駆けてくる足音が聞こえた。ハルヒとキョンは思わずその方向を向く。

古泉「涼宮さん、こんな所にいたんですね」

古泉が息を切らしながら、ハルヒに微笑む。

ハルヒ「…古泉君、どうかしたの?」

古泉「僕とフォークダンスを一緒に踊ってくれませんか?せっかくの体育祭ですし」

ハルヒ「…でも」

ハルヒはキョンの方を見る。

キョン(ハルヒ、踊ってやれよ。かわいい団員の頼みだろ)

ハルヒ「…」

古泉「さぁ、早く行きましょう。終わってしまいますよ」

古泉にハルヒは強引に手を引かれた。ハルヒはされるがままに校庭へと連れ出されていく。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 12:45:44.21 ID:uY/N95iB0

グラウンドで踊るハルヒと古泉を、キョンは見つめていた。

キョン(やっぱり絵になるよなぁ。悔しいがさすが美男美女だ)

キョンは寂しさを押し込めるように、いつか来るであろうその時のことを考えた。

キョン(なんだかんだで、古泉の奴は頼りになるしな…)

古泉「SOS団の団長とこうして踊れるなんて、僕は幸せ者です」

ハルヒ「ふふ、無理しなくていいのよ古泉君。アタシはもう元気だから」

古泉「しかし…」

ハルヒ「ほら、音楽終わったわよ。アタシ用事があるから帰るわね!」

古泉「…涼宮さん」

久しぶりに握った男の手は、なんて暖かくて大きいのだろう。
そんなことを一瞬とはいえ考えてしまったハルヒは、自己嫌悪に陥りそうだった。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 12:57:47.80 ID:uY/N95iB0

何故かお互いに口数の少ない帰り道で、キョンはハルヒにある提案をした。

キョン(なぁハルヒ。ちょっと俺の家によって欲しいんだが)

ハルヒ「アンタの家がどうかしたの?」

キョン(俺の部屋の机の中にな、ボロいペンケースがあるんだ。それをお前に貰ってほしいんだ)

ハルヒ「なんでそんなものを?」

キョン(まぁいいからさ)

ハルヒはキョンの言われるままに、あれこれとキョンの両親に言い訳をしながら、
そのペンケースを持ち帰ることが出来た。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:09:50.51 ID:uY/N95iB0

           〜ハルヒ宅〜

ハルヒ「このペンケースがどうかしたの?」

キョン(まぁいいから、開けてみな」

ハルヒがふたを開けると、その中にはくしゃくしゃになった一万円札や五千円札が
入っていた。

ハルヒ「ちょっとキョン!こんなの勝手に持ってきたらアタシ泥棒じゃない」

キョン(持ち主がいいって言ってんだから、別にいいんだよ)

ハルヒ「別にお金なんていらないわよ」

キョン(これでさ、お前にプレゼント買おうと思ってたんだよ。
    日曜にでもさ、街で何かこれで買えよ。俺からプレゼント出来ないからさ)

ハルヒ「…ホントにいいの?」

キョン(ああ、お前何か欲しいもの無いのか)

ハルヒ「…指輪」

キョン(指輪か、まぁ安物になるが…お前も女らしいとこあるじゃないか)

ハルヒ「それを、結婚指輪にしましょう」



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:30:19.68 ID:uY/N95iB0

日曜日、結局まともな宝石店では買える指輪がなかったので、地元の中高生ご用達の
アクセサリーショップで、少し高価なペアのリングをハルヒは買った。

キョン(おいおい、いちいちペアのにしなくても。俺は着けられないんだぞ)

ハルヒ「結婚指輪なんだから二つ買うのが当たり前でしょ!」

キョン(なぁハルヒ、結婚指輪をつけるついでに誓ってくれ)

ハルヒ「なによ、プロポーズなら指輪買う前にしなさいよ」

キョン(これからどんな辛いことがあっても、
    この指輪をみたら元気を出して、絶対に生きるってことを誓ってくれ)

ハルヒ「なにそれ、アンタがいるんだから別に辛いことなんてあるわけないじゃない」

キョン(いいから、誓ってくれ)

ハルヒ「なによ?わかったわ、元気に生き続けることを誓います!これでいい?」

キョン(ああ、ありがとう)

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:49:41.17 ID:uY/N95iB0

            〜数ヵ月後・冬〜

ハルヒ「おーっす!ってあれ、古泉君だけ?」

古泉「ええ、長門さんと朝比奈さんは今日は用事があって来られないそうです」

ハルヒ「ふーんそうなんだ。じゃあ今日はもう休みにしましょうか。古泉君も帰っていいわよ」

古泉「ちょっと待って下さい。もうすぐお湯が沸くので、お茶でも飲みながら少し話でもしませんか?」

ハルヒ「…そうね。じゃあちょっとだけ」

ハルヒがいつもの席に着こうとすると、古泉が自分の近くにある椅子を差し出した。

古泉「どうぞ、こちらに」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:59:58.65 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「…ありがとう」

古泉「もうすぐ僕らも三年生ですね。この部屋とも後一年でお別れです」

ハルヒ「そうね」

古泉「まだ彼のことが好きですか?」

ハルヒの目を、古泉はまっすぐ見つめる。

ハルヒ「…ええ、大好きよ」

キョンは静かに二人の会話に耳を傾けている。

古泉「…僕じゃ駄目ですか?」

ハルヒ「何を言ってるの?古泉君」

古泉「僕は彼の代わりになれませんか?僕はあなたのことが好きなんです。
   彼の代わりでも何でもいい!だから僕ともっと一緒にいてくれませんか」

古泉は立ちあがり、ハルヒに強く抱きついた。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:12:36.77 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「ちょっと、古泉君!やめて、お願いだから止めてよ。キョン助けてぇ」

古泉「なんでここにいない人間のことを言い続けるんですか?
   目の前に、目の前に僕という生身の男がいるじゃないですか?
   なんで頼りにしてくれないんですか!」

古泉がハルヒの白い首筋を貪る。そして、無理やりに口づけをした。
ハルヒは抵抗しながらも、古泉の唇はなんて熱いんだろうと思った。

その瞬間だけ、ハルヒはキョンがそこに居るのだということを、忘れてしまった。

ハルヒが力を込めて古泉を突き飛ばす。

ハルヒ「いい加減にして!アタシは、アタシはいつまでもキョンが好きなの」

古泉「涼宮さん…」

ハルヒは勢いよくドアを開け、廊下を駆けて行った。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:29:16.23 ID:uY/N95iB0

ハルヒ「キョン、ごめんねぇ。アタシ無理矢理だけど、あんなことして…」

ハルヒが息を切らしながら喋るが、何の返事もかえってこない。

ハルヒ「キョン、キョン?どこにいるの。何か返事をして…」

誰の声も聞こえない。校庭で練習をしている野球部の金属バットの音だけが聞こえた。

ハルヒ「お願い、こんなときに意地悪しないでよ!お願い、お願いだからぁ」

ハルヒは廊下で大声をあげて泣いた。
それでもキョンの姿も声も戻ることはなかった。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:44:52.03 ID:uY/N95iB0

三日間、ハルヒはキョンが戻ってくるのを眠らずに待ち続けたが、
結局キョンが現れることはなかった。
ハルヒは自分の部屋で、首に包丁を突き付けている。

ハルヒ「ねぇキョン。アタシ死んじゃうよ。嫌だったら前みたいに止めてよ」

涙がハルヒの頬をつたう。

ハルヒ「やっぱりこないのね。…じゃあアタシの方から行くね」

包丁を握る手に、ハルヒは力をこめた。その時、机の上でなにかが光った。
ハルヒが不意に力を緩めそこを見ると、キョンと買ったペアリングの片方が光ったようだった。

(これからどんな辛いことがあっても、
    この指輪をみたら元気を出して、絶対に生きるってことを誓ってくれ)

  (なによ?わかったわ、元気に生き続けることを誓います!これでいい?)

ハルヒ「う、ううう」

いつの間にか包丁は、床に落ちていた。








84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:54:20.84 ID:uY/N95iB0

             〜四年後〜

公園で無邪気に遊ぶ子供たちを、ハルヒは優しい目で見守っている。
高校を卒業し、女子短大に入学したハルヒは、保育士になっていた。

男の子「すずみやせんせい!すごいものみつけたよ」

ハルヒ「あら、何かしら?見せて見せて」

男の子「ほら、よつばのクローバー!すごいでしょ」

ハルヒ「ホントだぁ。よく見つけたわね」

男の子「せんせいにあげるね!プレゼント」

その子の笑った顔は、どことなくキョンに似ているとハルヒは思った。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:12:17.95 ID:uY/N95iB0

仕事が終わり、保育園を後にしようとしたハルヒは、後ろから声をかけられた。

古泉「やぁ、お久しぶりですね」

ハルヒ「…古泉君」

古泉「高校を卒業して以来ですか。まぁ三年のときはほとんど会話もありませんでしたが」

公園のベンチで缶コーヒーを飲みながら、二人は昔話を少しした。

古泉「まだ、彼のことが好きですか?」

ハルヒ「まぁ、そうね」

古泉「僕が入り込む余地は?」

ハルヒ「ふふ、一切ないわね。でもねどうやらキョンは、アタシと古泉君をくっつけようとしたかったみたい。
    アイツの思い通りにはさせないけどね」

古泉「そうですか…残念です。一生独身を通す気ですか?」

ハルヒ「さあね、わからないわ。でもちょっといいなって思う人からプロポーズ
    されたんだけどね」

古泉「そうなんですか?」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:20:54.15 ID:uY/N95iB0

ハルヒはシャツの胸ポケットから何かを取り出すと。それを古泉の目の前に見せつけた。

ハルヒ「ほら、プロポーズの時に貰っちゃったわ」

古泉「四葉のクローバー?…ふふ、そういうことですか」

ハルヒ「いいでしょう?」

古泉「はい、とっても」

ハルヒ「じゃあ明日も早いから、帰るわね。バイバイ」

古泉「はい…さようなら」

古泉は見えなくなるまでハルヒの背中を目で追い続けた。
見えなくなるその直前、ハルヒの隣にキョンがいたように見えた。



           完

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:58:22.64 ID:uY/N95iB0

保守してくれた人どうもありがとうございました。



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