ハルヒ「中韓が攻めてくるわよ!」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/16(水) 23:42:50.41 ID:scvrMQME0


キョン「は? チューカン?」

ハルヒ「シナチョンよ! シナチョン共が日本に戦争を仕掛けてくるの!」

キョン「……ほぉ〜そうなのか。それで?」

ハルヒ「それで? じゃないわよ! あんた平和ボケしすぎなのよ!
    こうしてる間にもミンスの日本滅亡計画が進行しているのよ!」

元からキチガイじみていた奴だったが、とうとう本格的に狂ったのかこいつは。
何を言ってるのかさっぱりわからん。救急車を呼んだ方がいいか?


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/16(水) 23:47:26.77 ID:scvrMQME0


ハルヒ「いい? 情弱のあんたに説明してあげる。現在の政権与党である民主党は、
    中韓に操られているの。これは由々しき事態だわ。もちろん菅も、鳩山も、小沢も、全員朝鮮人なのよ。
    ま、これぐらいは知ってるかしらね」

いや初耳だし物凄く嘘くさいんだが……

ハルヒ「ミンスは中韓の指示通りに日本を弱体化させて、日本民族を根絶やしにしようとしているのよ!
    外国人参政権、子供手当て、高校無償化、在日特権などなど……これらの反日政策は
    全て日本を崩壊させるための手段なのよ。古泉くんは頭がいいから分かるわよね?」

古泉「いやあ、僕も政治方面は不勉強なもので」

古泉がかすかに眉間に皺を寄せながら答える。
このハルヒの狂いっぷりはヤツにも想定外のようだ。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/16(水) 23:56:57.38 ID:scvrMQME0


ハルヒ「なら私が教えてあげるわ! あたしもネットで真実に目覚めたの
    みんなで真実を学びましょう!」

ハルヒはパソコンのディスプレイを我々に向け、
なにやら動画を再生しはじめた」

みくる「ニコニコ……動画?」

そうして我々は2時間に渡り民主党の正体どうとかいう出来の悪いプロパガンダ動画を
見せられる。途中から眠くなってきたので内容はよく覚えちゃいないが、
民主党と在日がどーのこーので誰が朝鮮人で特権がなんたらという、実につまらないシロモノであった。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:04:09.38 ID:VCDZj4kw0


ハルヒ「これでみんなも少しは情強になったわね! じゃ、今日はこれにて解散!」

鼻歌を口ずさみながら上機嫌で帰っていくハルヒ。
退屈な動画を長時間見せられぐったりの我々。
朝比奈さんなど、この時代の政治事情にあまり詳しくないらしく
律儀にメモを取っていたようで、大層お疲れのようだ。

キョン「おい、ハルヒは一体どうしちまったんだ」

古泉「きっと、愛国心に目覚められたのでしょう」

『僕にはお手上げですよ』といった様子で投げやり気味に言いやがる。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:09:44.69 ID:VCDZj4kw0


キョン「愛国だかなんだかしらんが、俺たちにとっては暗黒だ。
    なんとかならんのか」

古泉「涼宮さんは情熱を持て余しておられるのですよ。そのやり場が愛国活動なのでしょう。
   どうです、あなたが涼宮さんの情熱を愛という形で受け止めてみては」

キョン「断る」

やれやれ、と肩をすくめる古泉。
なんだか知らんが、ハルヒの気まぐれで俺たちを振り回さないでくれよな。
お前だけが面白いような活動は一人でやってほしいぜ。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:16:03.87 ID:VCDZj4kw0


さて翌日、

ハルヒ「キョン!10時に駅前集合よ! プラカードを忘れないようにね。 オーバー♪」

昼までたっぷり寝てやろうと思った休日の朝、ハルヒからの電話に叩き起され、
いつものように一方的に要件を告げられた。……プラカード? なんだそりゃ。

渋々駅前に着くと、既に皆集合している。
ほんとヒマなんだな、お前ら。

ハルヒ「遅い、罰金!」

お約束のセリフを受け流しつつ、一体何をするつもりなのか聞いてみると

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:23:34.07 ID:VCDZj4kw0


ハルヒ「今日は反日チョンの集会を粉砕するのよ! 気合入れていくわよ!」

は? 反日? 粉砕? 物騒なことをするんじゃあないだろうな。

ハルヒ「臆していては日本を守ることはできないわ! 死んだら靖国で会いましょう!」

恐ろしい事を言うな。朝比奈さんがガクガク震えているじゃないか。

ハルヒ「ちょっとキョン、あんたプラカード持って来てないの? 持ってこいっていったじゃないの!」

キョン「そんなもんが家にある方がおかしいだろ」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:31:59.71 ID:VCDZj4kw0


古泉「どうぞ、皆さんの分をお持ちしましたのでお使いください」

ハルヒ「あら古泉くん、気がきくわね。さすが副団長ね!」

お前どっからそんなもん持ってきたんだよ。森さんや荒川さんに急いで作らせたのか?

ハルヒ「有希、今からあたしがいうことをマジックでプラカードに書いて頂戴」

長門「わかった」

ハルヒ「いい? 一枚目は『ゴキブリ朝鮮人の売春婦は半島へ帰れ!』よ」

キョン「……」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:40:55.08 ID:VCDZj4kw0


とても世間様の前で言えないような酷い文言を書くように命じるハルヒ。
言われるがまま淡々と、明朝体のような綺麗過ぎる字でプラカードに書き込む長門。

ハルヒ「うーん。これじゃあちょっとお上品すぎるわね。キョン、あんた書きなさい。
    字ヘタでしょ。その方がゲバ文字っぽい迫力が出ていいかもしれないわ」

ゲバ文字ってのはよくわからんがこんなもん書きたくない。
つーか字のヘタさなら古泉の方がよっぽどだぞ。

ハルヒ「いけない。デモに遅れちゃうわ! 電車の中で書きなさい1」

周りの乗客に恥ずかしいプラカードの表面を見られないようにしつつ
アレな文言を書きながら、3駅ほど離れた市街地に向かう。
一体なにをさせられるんだよ……。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:44:27.75 ID:VCDZj4kw0


改札を抜けると、50人ほどの人間がプラカードや日の丸を手に……
日の丸……? ともかく、集まっていた。

ハルヒ「こっんにちわー! デモに参加しにきましたっ!」

元気一杯に主催者らしき中年男性に挨拶するハルヒ。
それにしても、奇異な集団だ。罵詈雑言としか思えない内容のプラカードや
日の丸を持った、老若男女。若い男声、それも色白のオタク風男性が多い気がする。
迷彩服やよくわからないコスプレをしている者までいる。なんなんだこいつら。

キョン「おいハルヒ、これはなんだ? こいつらは何者だ?」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 00:57:48.40 ID:VCDZj4kw0


ハルヒ「在日特権の廃止を求める市民の会よ。 みんな国を守るためなら命を惜しまない
    最強の国士軍団だわ!」

……あっ、そう。お目出度い連中なんだな。

キョン「で、その国士とやらと何をするんだ?」

ハルヒ「だ・か・ら、反日チョンの集会を粉砕するのよ! これから向こうの通りで
    自称従軍慰安婦の乞食チョン共とサヨクの支援者が集会するわ。
    それを我々が粉砕するのよ! いいわね?」

キョン「粉砕とか言われてもな。厄介ごとはごめんだぞ」

ハルヒ「あほら、始まるわよ! みんないくわよ!」

キョン「はぁ……」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:04:16.24 ID:VCDZj4kw0


ゾロゾロと行進する奇妙なデモ集団に混じって歩く我々。
これ、知り合いに見られると説明に困るんだが。
周りを見るとタオルやサングラスで顔を隠した奴も多いし、
こうなるとわかってりゃ何か用意してくりゃあよかったで。
朝比奈さんは既に顔面蒼白でうつむいてるし。

やがてデモ集団が大通りにさしかかると、反対側の歩道にいる
市民団体らしき集団目掛け、メガホンを取り出しヤジリ出した。

「おらーー! 嘘つき朝鮮人! さっさと半島に帰れーーー!!」

「帰れーーー!」

「ダニ・ゴキブリ・ウジ虫朝鮮人! ゴミはゴミ箱へ! ゴキブリは朝鮮半島に!!
 反日朝鮮人を日本からた〜たきだせえ〜〜〜!!」

「た〜たきだせえ〜〜〜!!」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:14:14.80 ID:VCDZj4kw0


聞くに耐えない下品なシュプレヒコールを浴びせるナントカ会の皆さん。
なんなんだこいつら、正気なのか?

見ればハルヒも目を吊り上げて必死に連呼している。
どうしちまったんだよお前。

警官「はいはい、ここから出ないで! 出ないでー!」

「なんだお前!! 警察のくせに反日朝鮮人の味方すんのかぁーー!?
取り締まるならあっち取り締まれよぉーーー!! この税金泥棒!」

沢山の警官隊がワラワラと寄ってきて押し問答が始まる。
おいおい……まさか逮捕とかされないだろうな。
ハルヒを見ると、警官に掴みかからんとする勢いで何やらギャーギャー喚いている。


ハルヒ「あんた朝鮮人でしょ!! 警察手帳見せなさいよ!!
    チョン警察!! 恥を知りなさい!!」


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:21:01.20 ID:VCDZj4kw0


そのハルヒを困った顔をしながら古泉が必死に制止している。
俺に助けを求める視線を送ってくるが、すまん。頑張ってくれ。俺は関わりたくない。

ナントカ会のデモ隊が警官に制止されてこれないと安心したのか、
向こう側の市民団体からも挑発のヤジが飛ぶ。

「アホ右翼がぁーーー!! 口だけかぁーーー!! いつでもやったんどーーー!!」

「お前らが帰れやヴォケーーー!! チンカス右翼ーーー!!」

負けじとヤジり返すなんとか会。

「キムチ臭いんじゃあほんだらぁーーー!!」

「いてまうぞわれぇーーー!!」


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:26:46.96 ID:VCDZj4kw0


……どっちもチンピラの喧嘩かよ、品性も何もあったもんじゃない。
その後もチョンだの右翼だの実にくだらない応酬を続けていたが、
警察の解散命令にさんざん抵抗した挙句、逮捕をちらつかせてきたとのことで
解散となった。

ハルヒ「ほんっとあの糞チョン共ムカツクわね!! チョン警官がいなかったら
    ボコボコにしてやったのに!!」

マジで新聞に載るからやめろ。

ハルヒ「それにあんたたち、ちゃんとシュプレヒコールしなさいよ!
    ぜんっぜんっ声出てなかったわよ!」

長門が『ゴキブル朝鮮人をた〜たきだせえ〜』とか言ってたら卒倒するわい。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:31:54.12 ID:VCDZj4kw0


キョン「あのなあ、ハルヒ」

ハルヒ「何よ」

キョン「こんな事して何の意味があるんだ?」

ハルヒ「はぁ……?」

キョン「愛国だか政治運動だか知らんが、チンピラバカの集まりにしかみえん。
    それに……ああいう差別主義みたいなのは好かん。もうやめろ」

ハルヒ「……あんた、まさか……チョン……? ねえ、あんたチョンだったの!?」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:38:38.09 ID:VCDZj4kw0


キョン「俺は日本人だ! つーか、なにが愛国だ! お前らはただ差別して
    騒いで発散したいだけじゃないのか? そんな奴らに日本人の代表ヅラされる方が迷惑だぜ」

ハルヒ「あんた……サヨクに洗脳されてるのよ!! 日教組に!! チョンに!!
    あたしがあんたの腐ったサヨク根性を……」

キョン「いい加減にしろ! もう、やめろ。目を覚ませよ、ハルヒ」

ハルヒ「なによ……なによなによなによなによなによぉーーーーーっ!!
    日本が危ないのに!! 中韓が攻めてくるのに!! 何もわかってない!!
    何も分かってないわよーーーーーーっ!!」

そう言って走り去っていくハルヒ。ちょっと言い過ぎただろうか?
いやしかし、これぐらいのお灸は据えんとだな。


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:45:07.69 ID:VCDZj4kw0


みくる「きょ、キョンくん、不味いですよぅ……」

キョン「しかしですね……またこんな事やらされるのはご免でしょう?」

みくる「それはそうですけど……」

古泉「やれやれ、しばらくアルバイトが忙しくなりそうですよ。
   早めに仲直りしてくださいね?」

それからといったもの、ハルヒはずっとふさぎ込んでいやがる。
古泉は連日連夜の出動で忙しそうだし、まあハルヒもいい加減反省しただろうから
そろそと和解しようと声を掛けたのは数日後のことだった。

俺のあの一言が、あんな恐ろしい事態を招いてしまうなんてな。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:52:26.19 ID:VCDZj4kw0


キョン「……ハルヒ」

ハルヒ「……」

キョン「……チューカン、攻めてこないじゃないか」

ハルヒ「……」

キョン「そんなこと、起こりゃしないって、な? 目を覚ませよ」

ハルヒ「……」


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 01:57:54.33 ID:VCDZj4kw0


翌日、朝いつものように妹に起こされたのだが、
いつもは聞くことの無い言葉を耳にした。

妹「キョンく〜〜ん あーさーだーよー!
  せんそーだよーーー!!」

キョン「もうちょっと寝かせ……せんそう?」

妹「テレビでやってるよ〜。せんそ〜!」

キョン「は、はぁ?」

まさか、まさか、まさか!
TVを付けてみる………耳に飛び込んできたのは

『……対馬に侵攻した韓国軍は、陸上自衛隊の対馬警備隊と交戦、
双方の被害については現在不明ですが、対馬警備隊の被害が甚大との未確認情報も……』


キョン「なんてこった……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 02:07:29.60 ID:VCDZj4kw0


その時携帯電話が鳴った。ハルヒからの着信だ。

ハルヒ「おっはよー! ねえ、TV見た? あたしの言った通りでしょ?
    ね? ね? どーよ! あんた、謝りなさいよ!」

キョン「……」

ハルヒ「あ、今日学校休校になるみたいだから、SOS団は全員あんたの家に集合ね!
    チョンとの戦争についての作戦会議をするわよ! おーばー♪」

キョン「……」

なんちゅうことになっちまったんだ……。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 02:13:18.75 ID:VCDZj4kw0


『……中国も北朝鮮に続き、韓国を支持する声明を発表し、陸海空軍の派遣を既に開始したとの
情報も入ってきています。首相官邸では管総理とオバマ大統領が緊急電話会談が行われ、
在日米軍の出動を含め対応協議中の模様です』

ハルヒ「問題は、管含めミンスの連中はみんなシナチョンの手先で、
    この戦争を手引した張本人だってことよ! 一刻も早くクーデターを起こして
    現政権を倒さないと、手遅れになってしまうわ!」

……既に手遅れじゃないのか。どうせこれからお前のシナリオ道理に事が運ぶんだろう?
どんな恐ろしい事になるか想像も付かん。
そもそも政権が中韓の手先であるなら、わざわざ戦争なんてしなくても
日本を乗っ取れるんじゃないのか? なんて事をハルヒに言っても仕方ないか……

ハルヒ「あー早く本土上陸してきたシナチョンの虫ケラ共をバリバリと銃殺したいわ!」

まさかそれが目的なのか? SOS歩兵団とかマジで勘弁してくれよな……。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 02:20:58.19 ID:VCDZj4kw0


ハルヒ「妹ちゃんもWACに志願してみる? 今は女も戦う時代よ!」

妹「わっく〜? それってわくわくするー?」

ハルヒ「ええ、チョンをぶっ殺せるなんて最高にワクワクするわ!」

妹「やりたい〜! わっくやりたい〜!」

キョン「やめんか!」

不味い。この事態はマジで不味いぞ。

キョン「おい、なんとかならんのか……」

古泉「涼宮さんが望んだ事です、どうにもなりませんよ。
   それに、機関でもこのまま涼宮さんの選択に身を委ねるべきという意見と、
   事態の修正を図るべきという意見で割れています」


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 02:31:10.72 ID:VCDZj4kw0


キョン「このままだと、この国が、いや、世界がめちゃくちゃになっちまうぞ!
    いいのか? 人類が戦争で滅亡してしまっても!?」

長門「涼宮ハルヒは人類の滅亡を望んでいるわけではない。
   彼女にとって好ましくない世界改変が起こりうる可能性はゼロ。
   情報統合思念体も観測を望んでいる」

キョン「で、でもな! 長門、お前の力でなんとかできんのか!?」

長門「涼宮ハルヒの改変能力に介入することは不可能」

キョン「だがお前は以前に……あ、いや、すまん」

長門「……あの時のようなことはもう出来ない。涼宮ハルヒの能力を盗み出す事も。
   ある方法を用いる以外は因果の軌道修正は行えない」」


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 02:45:59.96 ID:VCDZj4kw0


キョン「それは、なんだ?」

長門「……どちらにせよ、私には決定権がない。無理、と言っていい」

くそっ……長門でもだめとなると……。

みくる「うぅう……戦争だなんて……こわいですぅ……」

まあ……言っちゃ悪いがあてにならんしな。

『……首相官邸で、ただ今より管総理の国民に向けての緊急会見が始まる模様です』

ハルヒ「チョンの手先が何を言い出すのか見物だわ!」


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 02:59:37.09 ID:VCDZj4kw0


管『えー、日本国民の皆さん』

管『あなたたち"チョッパリ"は、我々韓民族にとても酷い事をしましたね。
我々から国を、文化を、名前を、言葉を奪い、男は殺し、女は犯しました』

鳩山『あなたたちの犯した罪は、未来永劫消えません。我々はあなたたちを絶対に許しません』

小沢『これは我々の"チョッパリ"に対する復讐だ!!』

管『日本国民の皆さんには、苦しみながら死んでもらいますはっはっは!』

ハルヒ「やはり正体を現したわね……! チョンはなんて卑劣なの!!」

狂ってる。完全に狂ってやがる。最高につまらない三文芝居であり超低劣なギャグにしか見えないが、
これは現実だ。ハルヒの望んだ……。ハルヒ、お前はここまでおかしい奴だったのか?

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 03:11:44.33 ID:VCDZj4kw0


『視聴者からの問い合わせが殺到しておりますが、ただ今の映像は演出ではありません!
し、信じられませんが、本当の……な、なにを……キャアッ! やめ……』

テレビには、特殊部隊のような格好の男たちが自動小銃を乱射し、報道陣を殺戮する映像が映し出される。

鳩山『おやおや、3Kさんと黄泉売さんの記者さんは死んでしまいましたね』

管『以後の政府広報は、我々の同胞であるアカヒ新聞とテロ朝を通してお伝えしますので』

ハルヒ「この……糞チョン共……! 許せない……! みんな、愛国者たちを集めて決起するわよ!
    チョンに神国を穢させやしないわ!」

キョン「……」

アカヒ新聞はたしか民主党叩きしてただろう? なんて突っ込む気力なんて微塵もない。
この、この、この悪夢は……いつになったら、覚めるんだ……。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 03:16:44.17 ID:VCDZj4kw0


半分放心状態で我々はハルヒの言うがままに家の外に出る。
向かう先は首相官邸だそうである……。
俺はもちろん、古泉も何だか半分人生を諦めたような表情をしているし、
朝比奈さんは今にも泡を吹いて倒れそうである。その朝比奈さんを
ささえてやってる長門でさえ、浮かばない顔をしているように見える。

ハルヒ「我々日本人の手に、この国を取り戻すのよ!」

額に日の丸の鉢巻を巻いたハルヒだけが唯一自信に満ち溢れており、
もはや我々はこいつの言うがままである。

ハルヒ「なんてこと……! 在日チョン共が暴れまわってるわ!」

見ると、商店が尽く荒らされている。
コンビニから商品を強奪する、エラが張った細い目の民族衣装を着たいかにもステレオタイプな韓国人たち。
こんな住民見たことないんだが、どこから沸いて……言うまでもないか。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 03:29:32.32 ID:VCDZj4kw0


「キャァァァァ!!」

突如響き渡る女性の悲鳴。

「騒ぐなニダ! チョパーリ女は全てウリたちがいただくニダ!」

今にも若い女性をレイプしようとしている、現実ではありえない口調の韓国人。
ハルヒはそれを見るやいなや、猛ダッシュして……

「アイゴーーーーー!!」

ハルヒ「9cm民族のくせして汚い遺伝子を撒き散らすんじゃないわよ!
    ぶっ殺してあげる!」

本当に殺しそうな勢いでレイプ犯を殴る蹴るしだすので、慌てて止める。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 03:36:37.12 ID:VCDZj4kw0


キョン「お、おい! 死んでしまうぞ! 人殺しになりたいのか!
    もう伸びてるし、あとは警察に任せてだな……」

ハルヒ「警察なんて帰化チョンと層化だらけだからあてにならないわ!
    それにこいつらは人じゃないの! チョウセンヒトモドキよ!」

わけのわからん事を喚き続けるハルヒを、古泉と二人がかりでなんとか制止する。

ハルヒ「はぁ……はぁ……まあいいわ。今はこんな小物に構ってる場合じゃないしね。
    さあ、反日チョンの親玉共を倒しにいくわよ!」


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 03:40:58.77 ID:VCDZj4kw0


そんなこんなで首相官邸の前まで到着する。
あたりは……おびただしい数の死体、死体、死体。

キョン「うっ……!」

古泉「激しい戦闘があったようですね……」

みくる「なな、長門さん、何も見えませぇ〜ん!」

長門「……」

朝比奈さんの両目を手で塞ぐ長門。
さすがにこんな光景を朝比奈さんに見せるわけにはいかないからな……。

ハルヒ「中は……一体どうなっているの……?」


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 03:49:53.98 ID:VCDZj4kw0


そこら中に倒れている亡骸を踏まないように、中に踏み入る。
どうやら戦闘の音らしきものは聞こえない。

ハルヒ「みんな、何かあったらあたしの後ろに隠れなさい」

何かあったらってお前丸腰だろう。
まあ長門がいればどうとでもなるとは思うが……。

ハルヒを先頭に、官邸内を奥へと進む。
総理大臣の執務室の扉の前にたどり着くと、何やら中から話し声がする。

ハルヒ「誰か……いる。チョン共……?」

その時、

「誰だ!?」

執務室の前から威圧するような声が響いた。
数人がドカドカとこちらに向かってくる足音。
ヤバい! 気づかれた―!



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 03:59:16.74 ID:VCDZj4kw0


扉が勢い良く開かれ、迷彩服の男が我々に小銃の銃口を向ける。
撃たれる― そう思った瞬間、長門が我々の前に立っていた。

「貴様ら、何者……ん?」

ハルヒ「……あなたは……?」

迷彩服の男と、ハルヒが何か気づいたような顔で見つめ合っている。
一体どういうことだ? ……待てよ、俺もどこかでこの男を見たような……

ハルヒ「酒井……会長?」

「君は、確かこの間のデモの……」

古泉「そういえばあの方、この前いらっしゃいましたね、ほら、メガホンで叫んでいた……」

古泉が少し安堵したような表情でささやいてくる。
確かにこの前のデモのオッサンだ。
だが、なんでこんなところにいるんだ?



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 04:13:03.61 ID:VCDZj4kw0


ハルヒ「なーんだ、もっと早く来ればよかったわ! あたしがチョン共をぶっ殺そうと思ってたのに!」

酒井「ははは、国家の危機だから居ても立ってもいられなくってね。
    会の連中や、保守人脈に声を掛けて愛国義勇軍を結成して突入したんだ」

ハルヒ「さすが日本最高の愛国者の人たちね、素敵だわ! そういえばみんな、見たことある人ばかりね!
     確かあの人は……」

「ニコ生配信者のミギーです、初めまして」

ハルヒ「きゃー! あの有名なニコ生主のミギーさんね! 保守トークをよく聞いてたわ!」

「ブロガーのカミカゼです、どうも」

ハルヒ「保守ブロガーの大物カミカゼさん! もちろん知ってるわ!」

「2ちゃんのコテ、憂国マンです」

ハルヒ「東亜の超有名コテじゃない! ホロン部狩りで有名よね!」


キョン「なあ……なんなんだこれ。頭が痛くなってきたんだが……」

古泉「同感です……」



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 04:24:04.96 ID:VCDZj4kw0


「ちーっす、国士Pです」

ハルヒ「ボカロに愛国ソングを歌わせる素敵なPよね!」

「UYOUYO0721だ、よろしく」

ハルヒ「ツイッターの保守の大御所だわ!」

「ホッシュートφ★っす」

ハルヒ「ニュー速+の愛国記者じゃない! ……凄いメンバーだわ、まさにドリームチームね!」

酒井「我々保守のメンバーで、新たな日本を、真の日本を建国し、
    シナチョン共と戦おうと思っている。涼宮さん、君たちも仲間に加わってくれるかい?」

ハルヒ「ええ、もちろんよ! 光栄だわ! SOS団一同、日本に命を捧げる覚悟よ!」


キョン「……」

古泉「……」

みくる「……」

長門「……」



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 04:50:54.54 ID:VCDZj4kw0


――これが、ムチャクチャに狂った史上最狂の国家、『超日本皇国』が誕生した経緯だ。

あれから一ヶ月が経った。
まだ中韓朝との戦争は続いている。日本……じゃなかった、超日本皇国と米ユーロ台湾連合軍は、次第に
中韓朝連合軍との戦いに勝利を重ね、ソウル陥落の一報にハルヒ……いや、涼宮陸軍大将兼、反日分子統制局長は上機嫌だった。

ハルヒ「ふんふんふーん♪」

キョン「……」

ハルヒ「ねえキョン、いつまで意地張ってるつもりよ? いい加減反日思想は捨てなさいよ」

キョン「うるさい」



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 04:51:59.06 ID:VCDZj4kw0


ハルヒ「あんた一生そこにいるつもり? ねえ、楽になりなさいってば」

キョン「涼宮閣下の考えにはついていけないもんでな」

ハルヒ「あんたが考えを改めたら、あたしの側に置いてあげるわよ。いい暮らしができるわよ。
    特別に、あんただけ……特別に、ハルヒって呼んでもいいから、ねぇ今あたし機嫌いいのよ」

キョン「断る」

ハルヒ「……なによ! あたしがせっかく……フン、そこで野垂れ死になさい、バカキョン!」

キョン「……」


俺は今、暗く冷たい牢に閉じ込められている。
何故かって? ハルヒに、国のやり方に反発したからさ。


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 05:03:51.65 ID:VCDZj4kw0


そりゃあ俺だってこんな最低の暮らしは嫌だ。
でもな……


キョン「反日分子統制法……?」

ハルヒ「そうよ、素晴らしい新法なのよ! これで我が超日本皇国はビューティフルでストロングな国家になるわ!」

キョン「どうせロクな法律じゃあないんだろ……」

ハルヒ「バカ言わないでよ、迅速で、実用的で、今までどんな国家も成しえ無かった素晴らしい法よ!
     見せてあげる、ついてらっしゃい」

キョン「な、何を見せるつもりだ……」

ハルヒに付いていくと、そこは劣悪な環境の収容所のような場所であった。
狭い空間に老若男女がギッシリと詰め込まれ、皆一様に虚ろな目をしている。

ハルヒ「ギャーギャー騒がないように薬物を投与してあるわ。ゆくゆくはコストカットのために
    別の方法に切り替えたいけどね、どうせ処分されるんだし」





86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 05:19:41.88 ID:VCDZj4kw0

キョン「処分ってお前……というか、あの人達が何をしたっていうんだ?」

ハルヒ「何って、反日思想のクズ共よ。あいつらはB級だけど、これが主な罪状よ」

キョン「……パチンコ関連企業経営者、日教組員、層化学会員、電U社員、ゲンタイ記者……
    これが、どうしたんだ……?」

ハルヒ「国家に仇なす反日分子共よ、だから……」

キョン「だから……?」

ハルヒ「こうするのよ」

耳障りな機械音があたりに響く。人々が押し込まれているスペースの天井から、沢山の回転する刃が降下する」

キョン「おい……?」

半分意識のないような収容者たちも、目前に迫る死に対してパニックに陥るが、それもほんの数秒。
事務的に処理される食肉のように、赤いカタマリへと変化していく。

キョン「う……うわあああああああああああああああああっ!!」

ハルヒ「A級はすんごい苦しんで死ぬんだけどね、彼らには割と人道的な方法でやってあげるの」



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 05:35:17.32 ID:VCDZj4kw0


つま先まで処理されたあと、床が傾斜し、溝にずるずると入り込んでいく「それ」

ハルヒ「これは加工されて、C級の労働者たちのエサになるのよ。エコでしょ?」

キョン「う……うおぇええっ!!」

ハルヒ「ねぇキョン、あんた今の見て酷いとおもった?」

キョン「おぇぇえええっ!!」

ハルヒ「でもね、世の中には、真面目に頑張って、お国のために貢献してる人たちが大勢いる一方で、
     国家を食い物にしたり、国を他所の国に売渡したりする奴も大勢いるのよ。
     それってズルいと思わない? ズルってよくないわよね? そういう奴は魂が汚れてると思うの」

キョン「うっ……おぇぇえっ!! はぁっ……!」

ハルヒ「だから、こうやって最期にお国の役に立てたら、彼らの魂は救われると思うの。
     どんなにズルい奴だって、ミカドの赤子として生まれたなら、大和民族の血が流れているなら、
     誇り高い死を与えてあげるべきだと思うの! ねぇキョン、あんたもそう思うわよね?」

キョン「……お前は……」

ハルヒ「うん」

キョン「狂ってる……」

ハルヒ「へ……」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 06:04:24.98 ID:VCDZj4kw0


そんなわけで、俺はここにブチ込まれている。
ああ畜生、一体なんだってハルヒはあんなクソッタレな奴になっちまったんだ!
あいつは人に迷惑は掛けても、人が悲しむ事、ましてや命を奪うなんて事……。

キョン「ああ! クソッタレ!!」

ガン、と壁を殴り付ける。

古泉「あまり怒ると寿命が縮みますよ」

隣の牢の古泉が話しかけてくる。
お前はどうしてそんなに平静でいられるんだ。

古泉「僕もそろそろ精神的に限界が近いですよ。ですがまあ、
   命まで奪われる事はないでしょうし、なんといっても長門さんが居ますから」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 12:35:33.38 ID:VCDZj4kw0


ああいざとなったら、長門になんとかしてもらえばここを出られるだろうな。
そん時はハルヒが死に物狂いで探し出すだろうが。

キョン「俺たちはまだいいとして、朝比奈さんが心配だぜ」

みくる「私はだいじょうぶ……です。キョンくん」

古泉「少し痩せられましたが、長門さんが診た様子では健康に異常はないようです」

キョン「本当に大丈夫ですか? 無理しないでくださいね」

みくる「ありがとう……」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 12:46:17.21 ID:VCDZj4kw0


キョン「それにしても、なんでそっちは3人まとめてで、こっちは俺一人なんだ」

古泉「そんなの、わかりきった事ではありませんか?」

キョン「全然わからん」

古泉「あなたが他の女性と同室では、涼宮さんは一日中気になって仕方がないと想いますよ」

キョン「どういう意味だ」

古泉「そのままの意味ですよ。以前も申しましたが、あなたは涼宮さんの気持ちを受け止めて
   あげるべきだったと思います。そうすれば、このようなことにならなかったかもしれません」


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 12:51:26.04 ID:VCDZj4kw0


キョン「……俺の、せいだって言うのか」

古泉「……すいません、少々気が立っていて……あなたを責めるつもりは……謝ります」

キョン「いや……いいさ」

でも……俺のせいかもな……

「気持ちの通わない相手と結ばれるのは、悲しいことだよキョン」

キョン「……え?」

この声はなんだ? と思った瞬間、牢の壁の一部が砂のようにサラサラと崩れだす。

佐々木「囚われの君を救出にきたよ、親友」

キョン「……佐々木!」

壁の向こうから、佐々木と……九曜とかいうあの怪しい宇宙人が姿を現した。
何故、一体どうして!?


123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 14:33:31.59 ID:VCDZj4kw0


九曜「――」

九曜が牢の壁をこん、と叩くと壁がバラバラと崩れる。
となりの牢と繋がり、驚く古泉と朝比奈さん。
九曜と長門はじっとにらめっこを始めやがった。

佐々木「もっと早く助けにきたかったんだが、長門さんによる
    何とか言う防壁で、思いのほか手間取ったよ」

キョン「長門が? どういうことだ」

長門「……」

佐々木「とりあえず、話は後さ。さあ逃げよう、みなさんも」

キョン「あ、ああ……」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 14:47:14.12 ID:VCDZj4kw0

佐々木たちが入ってきた穴の中に案内されてついていくと、中は真っ暗だ。
一体これはどこまで続いてるんだ? 薄気味悪いぜ。なぜ佐々木が助けに来てくれたのかも不明だしな……

佐々木「さて、この先はちょっと危ないから待っておくれ」

九曜「対放射線障壁――展開……した」

キョン「放射線? おい、どこに連れて……」

突然視界が明るくなった。そして目前に広がる景色は

キョン「……なんだ、これは」

佐々木「あれこれ説明するよりも、何が起こっているのか見せた方が
     君を説得しやすいと思ってね」

倒壊したビル、溶けた飴のように変形した鉄、破壊の限りを尽くされたような一面の廃墟。
黒コゲの「何か」や「何かの一部」があちこちに散乱している。

佐々木「キョン、ここは大阪さ」

キョン「な、なんだって……これが……大阪?」

佐々木「ああ、核が投下された。500万人の人たちが、死んだよ」



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 14:57:03.42 ID:VCDZj4kw0


キョン「核だって……そんな! 中国か? 中国にやられたのか!?」

佐々木「いいや、違うさ」

キョン「じゃ、じゃあ韓国、それとも北朝鮮か?」

佐々木「やったのは、日本政府の連中さ」

キョン「は……?」

佐々木「奴らは、民族浄化と称した大量殺戮を行っているのさ。
     大阪の人たちは日本人ではない、とかいう根拠の無い滅茶苦茶な理由でこうされたよ」

キョン「馬鹿な、幾ら何でも、そんな!」

佐々木「だがこの凄惨な光景は現実さ、キョン。 君に頼みがある……我々に、力を貸してくれないかい?」

キョン「だ、だがどうしろって言うんだ、佐々木、お前の目的は一体何だ?」



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 15:10:35.20 ID:VCDZj4kw0


佐々木「僕は東アジアだけでなく、日本の人たちも救いたい。これ以上悪魔のような所業を起こさせたくないんだ。
     韓国人としてではなく、地球人類として、世界に平和を取り戻したい」

え? 今何て言った。

佐々木「……キョン、隠すつもりはなかったんだが、以前は言う機会がなかったんだ。
     僕は、在日韓国人さ。佐々木は通名で、本当の苗字は李なんだ」

キョン「韓国人……佐々木が……」

佐々木「僕は大統領の親戚筋でね。現在、中韓朝の首脳はこの戦争を止めたがっている」

キョン「戦争を止める? だ、だが、仕掛けてきたのはそっちじゃあないのか?」

佐々木「涼宮さんの世界を改変する能力によってね。だが、九曜さんのおかげで、
     首脳たちは正気を取り戻した。既に、和平を行うように日本政府に使者を送ったよ」

キョン「じゃあ、この戦争は終わるのか?」

佐々木「日本政府は、使者を『ひき肉』にして送り返してきたよ。つまり、話が通じないってことさ」

キョン「な……!」





     

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 15:51:28.55 ID:VCDZj4kw0


佐々木「もう、日本の暴走は止まらない。東アジアの人間が一人残らず死ぬまで殺戮を続けるつもりだよ。
     奴らを止めるには、君の協力が必要だ、力を……貸してくれないかい?」

キョン「だが……それは敵国に協力しろってことだろう? それって、売国奴じゃないのか……。
    国を売るなんて、そんな真似!」

佐々木「キョン、君まで涼宮さんたちのような思想に毒されたのかい?」

キョン「それは違う、違うが……けどな!」

佐々木「キョン、君にとって、『国』ってどういうものだい?」

キョン「俺にとっての……国って……」

佐々木「国家とは一部の権力者の者じゃない。民衆のためにあるんだ。人がいるから国が成り立つ、そうだろう?
     君の家族を、友人を、同胞を苦しめる存在、そいつらこそが、真の売国奴だよ,キョン」

甘っちょろい左翼思想みたいな事を真面目な顔して言いやがる。
でも、そうだな。左翼だとかそんなの関係ない、お前の言うとおりだと思うぜ、佐々木。

キョン「……わかった。でも協力って、どうすりゃいいんだ?」
    

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 16:32:44.66 ID:VCDZj4kw0

佐々木「ありがとう、キョン。君はやはり僕の親友だよ。
     とりあえず、そうだね。長門さんに九曜さんの邪魔をしないよう、お願いしてもらえないかい?
     僕たちが言っても聞いてくれそうにないからね」

キョン「長門が……邪魔? どういうことだ?」

長門「……涼宮ハルヒの身を守るため。天蓋領域は涼宮ハルヒという存在の消滅を厭わない。
   あなたたちが涼宮ハルヒによる改変を阻止しようとするなら、それは想定される事態」

キョン「ハルヒを消滅って……そんなまさか、な、なあ佐々木」

佐々木「その、まさかだよキョン」

キョン「え……」

佐々木「涼宮さんを殺害しないと、この戦争は終わらない」

キョン「そ、そんな馬鹿な話があるか! ええい、さっきの事は撤回する! 協力なんてせん!」

佐々木「何億、何十人という人間が犠牲になってもかい?」

キョン「そ、それは……でも、ハルヒだぞ! ハルヒを殺せだなんて! できるわけ……」


136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 16:46:48.00 ID:VCDZj4kw0


古泉「……死んでいった人、これから死ぬかもしれない人にも、家族や友人がいたでしょう。
   その人達の悲しみを背負えますか?。 決断……しませんか?」

キョン「古泉、お前まで! おい! ハルヒは神様じゃなかったのか!? 神様を殺せってのか?」

古泉「もう……嫌なんです。数え切れないほどの人たちが死ぬのは、もう……」

みくる「……」

キョン「畜生……ハルヒが……ハルヒが死んでもいいってのかよ、畜生……!」

佐々木「キョン、全人類が幸福ならばどんなに素晴らしい事かと思う。でもそれは理想論だ。
     人間は欲深い、必ず他の人間を犠牲にしてでも自分はよくありたいと思う生き物なんだ。
     その人が『我慢』すれば、他の多くの人達は少しでも幸福に近づく、そうだろう?
     だから、涼宮さんに『我慢』してもらうしかないんだ」

キョン「クソッタレ……右も左も自分の意見ばかり押し通しやがって! 結局お前らみんな一緒じゃねえか!
    自分たちのために他人を不幸にする! 殺す! そうやって永遠に左右でいがみあってろ!!」



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 17:47:52.70 ID:VCDZj4kw0


佐々木「キョン、落ち着いてくれ……」

キョン「もう知らん、知らん! どうにでもなっちまえ!」

古泉「あなた、無責任すぎますよ」

突然、古泉に思い切り顔を張られる。

キョン「いってえ! てめえ、なにしやがる!」

古泉「そうやって責任を放棄することがあなたの選択ならば、とても残念です」

キョン「責任つったって……俺に、そんな……」


145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 17:48:44.33 ID:VCDZj4kw0


古泉「あなたは今、世界の命運を握っている。その決定権がある。
   なのに、それから逃げようとしている。それは罪深い事ですよ」

キョン「仲間を殺すって言われて、ハイそうですかと頷けるか! バカ野郎!」

古泉「ならば、涼宮さんの暴挙を肯定するという事でしょう。それならそれで構いません。
   あなたがそれを選んだなら諦めもつきます。僕たちにはどうすることも出来ないのですから」

キョン「それは……」

古泉「選挙だって、投票する事によって民意が反映されるんですよ。
   あなたは、『どうせ自分の一票じゃ何も変わらない』と言って投票に行かない人と同じ、無責任な人間です。
   もっとも、我々未成年には投票券はありませんがね」


146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 17:56:00.58 ID:VCDZj4kw0


キョン「……わかったよ。決めた」

古泉「どうされるおつもりですか?」

キョン「長門、九曜の邪魔をしないでやってくれ。ハルヒの事は……その……」

長門「……」

キョン「頼む!」

長門「……わかった。あなたがそう言うのなら」

佐々木「キョン、すまない……」

キョン「……」

すまん……ハルヒ。お前はちょっと、悪さをしすぎたんだ。

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 18:02:57.80 ID:VCDZj4kw0


佐々木がどこやらに無線で連絡をする。

佐々木「僕だ。基地に待機させてある五個師団に出動命令を出してくれ。
    転送は1400に開始する。……ああ、よろしく」

キョン「一体、どうするんだ?」

佐々木「日本政府の拠点である皇居を制圧する。
    権力を集中させすぎている奴らだ、上層部さえ抑えればこの戦争は終わる」

キョン「軍隊で……ハルヒを殺すのか?」

佐々木「それができるなら、長門さんが防壁を解いてすぐに暗殺を行うさ。
    仮にも神のごとき存在である涼宮さんだ、通常の手段では殺せない」

キョン「じゃ、じゃあお手上げじゃないのか!?」

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 18:13:39.42 ID:VCDZj4kw0


佐々木「方法はあるさ」

キョン「それは何だ……?」

佐々木「"鍵"である君が直接涼宮さんを殺害するんだ」

キョン「な……」


皇居付近に停車した装甲車の中で、俺は佐々木に手渡された冷たい感触の
拳銃をじっと見つめ、思い悩んでいた。

俺が……ハルヒを……殺す……?


160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 18:22:01.00 ID:VCDZj4kw0


佐々木「転送が開始されてから3分後に突入を開始するよ」

キョン「あ、ああ……」

軍服に身を包んだ佐々木がそう告げる。
俺も都市迷彩を着させられている。胸には防弾ベストの感触。

佐々木「九曜さん、よろしく……」

九曜「――了解」

九曜の能力により、遥か遠く離れた韓国の基地から、大人数の部隊が転送される。
地鳴りのように響く突入の足音。皇居制圧作戦が開始された。

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 18:27:55.00 ID:VCDZj4kw0


佐々木「第一師団は皇居庭園内の親衛隊を掃討せよ! 第二師団は宮殿及び庁舎内に突入、
    皇族を発見次第、最優先で保護せよ!」

キョン「皇族も……殺すのか?」

佐々木「そんな事はしないさ。彼らは日本人の尊敬の対象だ。
    我々の敵は酒井総統や涼宮さんを始めとする、日本政府の中枢だけさ。
    ……もっとも、これは戦争だ、皇居内の日本軍が抵抗した場合、
    犠牲が出る事はやむを得ない」

キョン「……」

佐々木「よし、僕たちも行こう」

キョン「ああ……」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 18:39:38.30 ID:VCDZj4kw0


銃弾が飛び交う皇居内を、俺たちを乗せた装甲車が奥へと進んでいく。
もっとも戦闘が激しかったのは最初だけで、じきに投降する日本兵が
ゾロゾロと連行されるのが目に付く。

佐々木「どうやら、思った以上に敵兵の士気は低下しているようだ。
    まあ、あの圧政じゃ無理もないがね……。犠牲が少なくて済みそうだ」

そう言って安堵した表情を見せる佐々木。
……やはりお前も、敵だからって人が死ぬところは見たくないんだな……。

佐々木「キョン、そろそろ出る、準備を!」

右手の拳銃を握り締める。撃てるか? 俺にハルヒが撃てるのか……?


167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 18:49:16.66 ID:VCDZj4kw0


装甲車は宮殿内に突入し停車する。
佐々木が勢い良くドアを開き、降りるように促しながら無線交信する。

佐々木「涼宮さんは見つかったか!? ……よし、わかった。
    2階の東の部屋で彼女を包囲しているようだ、いこう!」

キョン「あ、ああ……!」

佐々木と階段を駆け上がる。既に宮殿内は完全に制圧されている様子で、
束縛され連行される政府高官たちが目に入る。


佐々木「ここだ!」

豪華な広い部屋の中には、小銃を構えた突撃部隊と、銃口を向けられ怯える少女と幼い子供。
その少女はもちろん

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 18:53:49.41 ID:VCDZj4kw0


キョン「ハルヒ……」

ガクガクと震えながらも、泣いている小さな男の子を抱きかかえ必死の形相で守るハルヒ。

ハルヒ「殿下だけは……殿下だけは……お願いだから……!」

その男の子はどうやら、ミカドの跡継ぎらしい。
自分にしがみつく小さな子供を、身を呈して守るハルヒ。
お前にまだそんな心が残って……

いや、ハルヒはずっとハルヒだったんだ。強引でワガママだけど、
誰かを思いやれる優しいハルヒ。ずっとお前のままだったんだ。
でも、その方向が無茶苦茶に狂っちまっただけなんだ……!

佐々木「キョン……」

キョン「わかってる……」

ああ、わかってるさ、わかってるとも! 今更やめるなんて出来ないってな!

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 23:01:11.74 ID:VCDZj4kw0


キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「――!」

ハルヒと目が合う。
驚いて目を見開き、さらに体を震わせる。

ハルヒ「なんで……キョンが……チョンと一緒なの……」

キョン「……」

ハルヒ「キョン……あんた……チョン……だったのね……」

キョン「……ハルヒ、許せ」

ハルヒ「キョンがキョンがチョンだなんてイヤ……イヤ……」


199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 23:05:06.45 ID:VCDZj4kw0


泣き崩れるハルヒに近づき、ド素人でも当たりそうな距離で心臓へと銃口を向ける。

ハルヒ「キョンが……チョン……キョン……チョン」

キョン「ハルヒ、もういい……休め」

パン! と乾いた音。ハルヒの胸が赤く染まる。

キョン「ぐっ……ハルヒ……すまん、すまん……」

涙でよく見えなかったが、致命傷だろう。じきにハルヒは……死ぬ。

ハルヒ「キョン……チョン……死んじゃえ……みんな……死んじゃえ……
    みんな……死ね……死ね……しね……し……」

何かをぶつぶつと呟いたあと、目を見開き、動かなくなった。

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 23:09:47.24 ID:VCDZj4kw0


佐々木「キョン……こんな事をさせてしまって……本当に……」

キョン「仕方……ないさ」

俺の震えの止まらない手をそっと握る佐々木。

佐々木「これで……平和が訪れる。君は、英雄さ」

その時、無線が入る。

佐々木「ちょっと失礼……どうした? ……なん……だって!?」

キョン「何か……あったのか?」

佐々木「キョン、逃げよう! 急いで!」

キョン「ど、どうしたって言うんだ……」


208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 23:19:18.35 ID:VCDZj4kw0


佐々木「世界中全ての核ミサイルが発射されようとしている。照準は……全世界だ」

キョン「そ、そんなふざけた話があるかよ!」

数分後、長門たちと合流する。ミサイルが飛んで来てもこいつなら何とか出来そうだからな……。


長門「結論を言うと、核ミサイルの発射中止及び軌道修正は不可能」

キョン「そ、そんな……お前でもダメなのか?」

長門「涼宮ハルヒが死の間際、改変能力により因果律を操作した。
    "決まっていること”は覆せない」

みくる「規定事項……なんですね」

古泉「長門、情報統合思念体の判断は?」

長門「涼宮ハルヒの死亡と同時に、その存在を抹消された」

キョン「長門の親玉が、消えたってのか!?」

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 23:28:28.70 ID:VCDZj4kw0


長門「そう、おそらくは天蓋領域も」

九曜「――」

古泉「何か策は……ないんですか?」

長門「核ミサイルの影響が最大限に弱まる範囲まで退避したのち、私が防壁を展開する。
    だが、情報統合思念体の支援がない現在では、成功確率は低い」

キョン「影響が弱まる範囲……そうだ! シェルターだ! 核シェルターに避難すれば……」

佐々木「それはダメなんだキョン……シェルターは……」

キョン「一体どうして?」

佐々木「世界中のシェルター、それだけじゃない。地下鉄、地下通路、地下空洞が液状化して塞がってしまってるそうだ。
     原因は……涼宮さんの置き土産というほかにないだろうね」

キョン「馬鹿な!!」

ハルヒの野郎……なんて陰湿なことをしやがる! そんなの、お前らしくないだろうに……

    

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 23:40:24.97 ID:VCDZj4kw0


その時、長門が突然俺と朝比奈さんの頭を抑えつけて
地面に押し倒した。

キョン「うわっ!」

みくる「きゃぁ!」

長門「伏せて」

キョン「え……」

長門「北西15キロの地点に核ミサイルが着弾する」

刹那、遠くの方に閃光が見えた。またたくまに光球となって膨れ上がる。
古泉と佐々木も即座に地面に伏せる。やがて訪れる衝撃波。

佐々木「どうやら、始まったようだ……世界の終わりが」

長門は衝撃波のくる方向に立ちはだかり、シールドのようなものを展開する。
長門が守ってくれなかったら、熱線と放射線で一瞬のうちに絶命していだろう。


218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/17(木) 23:52:52.30 ID:VCDZj4kw0


衝撃波が通り過ぎたあと、顔を上げて周囲を見渡すと、遙か遠方に
キノコ雲が3つも上がってやがる。

長門「まだ、たくさんくる」

今の放射線を防いだせいか、長門に疲れの色が浮かんで見える。
親玉がいなくなったせいで長門の力も落ちているのか……

キョン「くそっ! こんなのどうしたらいいんだよ!! どうしたら!!」

古泉「もし……この間近に核ミサイルが直撃したら、長門さんと九曜さんで
    防ぐことは可能ですか?」

長門「一回が限度……それも、確証はない」

キョン「畜生……もう……ダメなのかよ!!」

224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:01:32.82 ID:xdk/15qv0


九曜「――白頭山」

佐々木「……え?」

九曜「白頭山――特異点」

佐々木「九曜さん、白頭山がどうしたんだい?」

キョン「その……ペクトゥサン? ってのはなんなんだ」

佐々木「北韓の両江道にある山で、韓民族の聖地なんだ」

キョン「聖地って……そんなもんなんの意味が」

九曜「あなたなら――わかるでしょう……?」

九曜が長門に視線を向ける。何だか知らないが意味を汲み取ったのか、
何かを考えるような仕草をする。

長門「北緯41度東経128度、白頭山。特異な磁場の発生が見られる。
    その場所ならば……放射線を防げるかもしれない」

キョン「ほ、本当か!?」


229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:12:06.58 ID:xdk/15qv0


佐々木「九曜さん、そこにみんなを! いや、救えるだけの全ての人たちを転送してくれないか!」

九曜「今の――私には……できない」

佐々木「そ、そうか……」

キョン「それは、どこにあるんだ? 車でいける距離か!?」

佐々木「さっきも言ったけど、北韓……北朝鮮さ」

キョン「……無理……だな」

佐々木「……ああ」

ひょっとしたら助かるかもしれないという思いも、杞憂に終わった。
もうこのまま、世界と共に終りを迎えるしかないのか……。

佐々木「……」

九曜「……」

佐々木と九曜が何か目配せをしているのが見えたが、そんな事より
死ぬ前に何ができるのか、考える……か。


231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:18:19.48 ID:xdk/15qv0


みくる「……あれ?」

キョン「……」

みくる「あのぅ……あんなもの、ありましたっけ……?」

キョン「……」

何があろうと、もうどうでもいいです、朝比奈さん……

みくる「あれ、飛行機じゃ……」

飛行機? そんなものあるわけが……

古泉「……戦闘機、F-15……ですかね、いつのまに……?」

キョン「な……戦闘機?」

まるでいきなりそこに現れたかのような、一機の戦闘機がそこにあった。
なんなんだ……一体!?


232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:23:45.52 ID:xdk/15qv0


皆でその戦闘機に駆け寄る。

古泉「動き……そうですかね」

キョン「ちょっと待て、動いたとして、こんなもの誰が操縦出来るっていうんだ!?」

佐々木「訓練機なら何度か操縦したことがあるよ」

何だって? 佐々木が戦闘機の操縦? そんな馬鹿な……

みくる「でもこれ、二人乗りに見えます……」

キョン「ですね……」

狭いコクピットには座席は二つしか無い。
余分に乗せられるとしたら、シートベルト無しでも平気そうな宇宙人ぐらいだろう。
人間には、無理だ……。



238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:29:50.48 ID:xdk/15qv0


操縦出来るのは佐々木、もう一人乗るとしたら……

キョン「朝比奈さん、乗ってください!」

みくる「いいえ、キョンくんが乗ってください」

キョン「俺はいいですから! 朝比奈さん早く!」

みくる「私は……本来ここにいるはずのない、未来の人間です。私が生き伸びるべきではありません……」

キョン「そんなの関係ありませんよ!」

古泉「朝比奈さんの言うとおり、あなたが乗るべきです。なんせあなたは……鍵。
    神に選ばれし人間なのですから」

キョン「俺はただの人間だ! ふざけた事を言うな!」

長門「彼らは、私が守る。あなたが乗って」

キョン「長門……お前まで……」

なんなんだよ、俺を特別扱いするなよ! 俺は……何の変哲もない、ただの……

239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:37:09.43 ID:xdk/15qv0

古泉「長門さんを信じますよ、僕らは後で向かいますから」

みくる「きっと、生き延びてみせますから、心配しないで」

キョン「無茶だ! そんなの、無茶だって!」

長門「大丈夫、信じて」

キョン「でも……そんなの俺は嫌だ……嫌なんだよ!」

佐々木「キョン!!」

初めて聞くような佐々木の怒号。そのまま襟首を掴まれる。

佐々木「グズグズ言ってたらみんな死んでまう!! 君は仲間を信じられないのか!!
     今君がするべき事は一つじゃないのか!!」

キョン「……」

佐々木「キョン!!」

キョン「わかった。……長門、古泉と朝比奈さんを、頼む」

長門「了解した」

俺には長門の瞳が、別れを告げているように見えた。

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:43:18.43 ID:xdk/15qv0


佐々木「キョン、ヘルメットの紐はしっかり締めてくれ。マスクも外さないように」

キョン「ああ……」

長門、古泉、朝比奈さんの姿が小さくなっていく。
長門……本当に頼んだぞ……

佐々木「九曜さん、電磁波の影響で計器類が上手く作動しないようだ。
     ナビゲートは頼んだよ」

九曜「わかった――」

キョン「……」

戦闘機はどんどん高度を上げている。長門たちの姿はもう見えない。

九曜「――落ちる……ミサイル」

キョン「え……」




244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 00:55:41.24 ID:xdk/15qv0


閃光と衝撃、機体がガタガタと揺れる。

佐々木「大丈夫、大丈夫だよ、キョン」

……長門たちのいたあたりに、巨大なキノコ雲が立ち上っている……

キョン「長門……長門ぉぉおおおおおお!!」

無事で……無事でいてくれ……。

やがて、俺たちを乗せた戦闘機は高度一万メートルほどの上空に達する。

佐々木「見てごらん……人の生み出した兵器の恐ろしさだよ」

地表のあちこちから上がるキノコ雲。ビル群はグチャグチャに破壊しつくされ、
業火に焼き尽くされたかのような荒れ狂った地表は、まるで地獄絵図だ。

キョン「これが……日本なのか? こんなに……こんなになっちまったのか……?」

もはや死の匂いしか感じられない、生けるものの存在しないであろう大地を目の当たりにすると、
涙が止まらなかった。これが国を思う気持ち、愛国心だってことに、今の今気づいた。


245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 01:02:16.95 ID:xdk/15qv0


佐々木「キョン」

キョン「……」

もはや返事をする気力もないぐらい、精神はボロボロだ。

佐々木「知っているかい? 人類の祖先。人類の誕生した場所を」

キョン「……さあ」

佐々木「韓国人であり、韓半島だよ。人類の起源は大韓民国にあるのさ」

キョン「……」

俺はあまり勉強が得意ではないが、佐々木の言ってる事がデタラメだってのはわかる。
だが何故、今そんな話をする? なんの意味がある?

佐々木「そして、今向かっている白頭山が、まさにその地なんだ。何か運命めいたものを
     感じないかい? くつくつ」

何故笑う……? 佐々木もこんな状況でおかしくなってしまったのか?

佐々木「いや、ほんの雑学さ。気にしないでくれ。くつくつ」


254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 01:18:50.74 ID:xdk/15qv0


佐々木「ついたよ、キョン。ここが白頭山だ」

キョン「ああ……」

山の頂上にある、湖のほとりに戦闘機は降り立つ。

佐々木「いい景色だろう?」

キョン「すまん……今はそんな気分じゃない。長門たちのことが心配でな……」

佐々木「彼らなら、きっと大丈夫さ。信じよう、キョン」

キョン「……」

佐々木、急にどうした、何故そんなに平静でいられるんだ、お前……
今だって、あちこちにミサイルが落ちているのが目視できる。
ここだって、いつミサイルが飛んでくるか……



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 01:21:48.45 ID:xdk/15qv0


佐々木「怖いかい?」

キョン「そりゃ、怖いさ……生き延びられる保証なんて……」

佐々木「きっと九曜さんが守ってくれるさ、ね、九曜さん」

九曜「――だいじょうぶ」

キョン「……」

九曜も今見ると、薄気味悪く思えてくる。何か、とても嫌な感覚だ。

佐々木「キョン、一つお願いがあるんだ」

キョン「なんだ……?」

佐々木「もし生き延びられたら、僕と結婚してくれないかい?」

キョン「お前、こんな状況で何を……うわっ!!」

瞬間、至近距離にミサイルが落ちた。



257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 01:28:32.10 ID:xdk/15qv0


大気がプラズマ化する超高温の真っ只中。
地獄のような光景の中

――佐々木は、不気味にくつくつと笑っていた。




……どれほどの時間が経っただろう。
気がつくと、周りの景色は一変していた。
木々は焼失し、剥き出しの岩肌の形を変えている。
ここが爆心地であったろうその光景だが、俺は生きている……。

佐々木「おはよう、キョン」

キョン「佐々木……」

佐々木「ずいぶん長い間、眠っていたね。目を覚ましてくれないかと心配したよ」

キョン「ミサイルは……?」



261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 01:34:10.49 ID:xdk/15qv0


佐々木「もう、ずいぶんと落ちてないようだよ。どうやら終わったようだね」

キョン「終わった? 本当か?」

佐々木「保証はできない、でもおそらくは、ね」

キョン「九曜は、どうした?」

佐々木「九曜さんは僕らを守って……」

キョン「そう……か……長門たちは、どうなったろう……」

佐々木「わからない……無事でいてくれると信じよう」

キョン「探しに……探しにいかないと……」

佐々木「駄目だキョン。この聖地を出たら、放射線にやられてしまう。
     ここだけが安全なんだ、ここだけが、ね……」

キョン「そんな……」

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 02:19:57.87 ID:xdk/15qv0

鳥のさえずりも、虫の鳴き声も聞こえない。
死んだ大地。死んだ空。ひょっとして、俺たち以外の生物は絶滅してしまったんじゃないのか?
そんな思いがよぎる。

キョン「これから……どうしたらいいんだ……」

佐々木「僕たちが、人類の新しい歴史を作るんだ。それが残された我々に与えられた使命だと思わないかい?」

キョン「人類の……新しい歴史?」

佐々木「そう、差し詰め僕らは檀君と熊女……いや、アダムとイブと言ったところだね」

キョン「なあ……佐々木、俺は不安だ。不安なんだ……」

佐々木「大丈夫だよ、キョン。さあこっちにおいで。僕が側にいてあげるよ」

キョン「佐々木……佐々木……」

佐々木「良い子だ、キョン。良い子だ……くつくつ」


293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/18(金) 02:32:41.55 ID:xdk/15qv0


――半万年後。



「……から約5000年前、白頭山に降り立った檀君が……」

「ね、チョン。この授業終わったらデモに直行するわよ!」

「またかよ……。チュンイル、お前さあ、いい加減飽きないのか? グックパ活動」

「何言ってるのよ! チョッパリ共を粉砕しないといけないのよ! チョン、あなたもしかしてチョッパリ?」

「ちげーよ。ああ、どうして人間ってのはいつもいつも争いや差別を繰り返すのかねえ。
愚かな生き物だぜ。ほんと」

「なによそれ、哲学? つまんないわね。ああもう、居ても立ってもいられないわ! いくわよチョン!」

「お、おい! チュンイル! まだ授業中……おいって!」




おしまい。



304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/18(金) 02:42:59.06 ID:xdk/15qv0

イデオロギー的な事を何か言うと荒れそうなので、「読んでくれてありがとう」とだけ言っておくよ!
保守してくれた人もありがとう! ノシ



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