国木田「運命の学園祭?」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 00:19:55.19 ID:LnasaaIbO

数週間前…SOS団部室

キョン「学園祭の日程が延長?」

古泉「ええ、今年は2日間の日程だそうですよ」

キョン「しかし2日と言ったって…」

古泉「僕たちの展示物はそのままで大丈夫ですよ。ステージでの催し物が変わる…だけですよ」

キョン「今年から?」

古泉「今年スポンサーが一気に増えた事が理由のようですね。かなり豪勢な使い方するらしいですよ」

キョン「へえ…そいつは楽しみだな。賑やかなのはいい事だ」

古泉「そうですね、さらに…おっと失礼、着信が…」

古泉「ええ…はい…」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 00:22:01.61 ID:LnasaaIbO

キョン「またバイトか?」

古泉「いえ…今回はちょっと話が…まあ、機関からの話であるのは確かです」

キョン「で…さっきの話の続きは?気になるんだが…」

古泉「ふふっ…それは当日のお楽しみという事で。では僕はこれで…」

古泉はササッと部室から出ていってしまった

キョン「…なんだよあいつ。…俺も帰るか」



古泉「…森さん、お話とは?」

森「機関からの命令よ…」

古泉「…こういった形で指令とは、珍しいですね」

森「今回はちょっと事情が違うのよ。一度しか言わないわよ…」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 00:25:28.85 ID:LnasaaIbO



古泉「…涼宮ハルヒを脅迫しろ?意味がわかりません…」

森「私も具体的な事は聞かされていないわ。命令はそれだけ。何か質問は?」

古泉「…それによって何か世界のためにプラスになるのですか?」

森「少なくとも、マイナスにはならないわ。ある一定期間…に限ってね」

古泉「?」

森「…学園祭よ」

古泉「学園祭…ですか?」

森「正確には学園祭前日の1日が加わって…計3日間。その間閉鎖空間は発生しない」

古泉「そんなの、わかるんですか?」

森「ええ。それは絶対よ、保証してもいい」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 00:28:35.42 ID:LnasaaIbO

古泉「森さんがそう言うなら深くは聞きませんが…彼女を脅迫する理由とは?」

森「…彼女には光が必要なのよ」

古泉「どういう意味です?」

森「その3日間で…彼女に人の優しさを見せるのよ」

古泉「優しさ…それと脅迫は矛盾していませんか?」

森「彼女を一度不安にさせ…優しさを見せる。それだけで人は安心するものよ」
古泉「その状況を機関自ら作る…工作作業みたいなものですか」

森「空間が発生しない…その時に彼女がどういう反応を示すか、実験的な意味も含んでるのよ」

古泉「空間が発生しなければ…ある程度は無理もできるでしょうけど…」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 00:31:53.44 ID:LnasaaIbO

古泉「…つまり、学園祭終了までに、彼女に不安と優しさを見せろと」

森「ええ。これは口外禁止。あなたに課せられた…任務よ」

古泉「はい…もう一度聞きます。その間閉鎖空間は絶対発生しないんですね?」

森「しないわ。その期間は学園祭に集中しなさい」

古泉「はい…」

森「…これに失敗したら…」

古泉「…」

森「世界が爆発するわ。以上」

古泉「…」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 00:37:36.64 ID:LnasaaIbO

学園祭前日

お昼過ぎ…学校は学園祭の準備で賑わいを見せていた

午前中は授業、午後から準備…というのが今日の日程だった

ここ最近、閉鎖空間のお呼びがかからない

かかったとしても、すぐに連絡が来て出番が無い…と言われてしまう

学園祭が近付くにつれて安定してるのか?

おかげで時間ができ、学園祭の準備を終わらせていられたのでそっちの気は楽でしたが…


古泉「…しかし、気が進みませんね。脅迫などとは…」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 00:44:47.31 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「…どうしたの、古泉君?」

キョン「体調でも悪いのか?」

古泉「…いえ、大丈夫です(でもやらねば…)」

古泉「実はちょっと涼宮さん…学園祭の事で話が…」

チラリ、と彼の方に目線を向ける

キョン「…俺はお邪魔か。まあ、無理はするなよ?」

古泉「すいません、助かります…」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 00:54:22.22 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「どうしたのよ?」

古泉「涼宮さん…実はですね…(僕の言い方一つ…ですよね)」

ハルヒ「なによ?」

古泉「…実は、彼があなたの事を嫌っているのですよ」

ハルヒ「…は?彼ってキョン?」

古泉「はい…こんな事を言うのもどうかと思いましたが…」

ハルヒ「…」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 01:00:36.82 ID:LnasaaIbO

古泉「最近の活動にうんざりしているようですよ。おまけに涼宮さんの悪口まで…」

ハルヒ「…!」

古泉「…この学園祭が終わったら団を抜けると言ってましたしね」

ハルヒ「…何よ、あのバカ…それ本当なの!?」

古泉「はい…」

ハルヒ「…古泉君が言うなら、嘘じゃないわよね…」

古泉(すいません、今回だけは嘘なんですよ…)

ハルヒ「…辞めたいならそれでいいわよ。はっきり言えばいいのに…」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 01:07:11.84 ID:LnasaaIbO

古泉「…少し彼を説得してみますよ。まだ期間はありますから…」

ハルヒ「そう…お願いね。…私は、今日は帰るわ」

古泉「ええ…明日またお話しますよ」



キョン「…どうしたんだハルヒは?なんか不機嫌だったぞ」
古泉「ええ…体調が悪いそうですよ。明日は学園祭ですし早めに帰ったようです」

キョン「そうか…」

古泉「はい」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 01:13:26.52 ID:LnasaaIbO

キョン「…お前もなんか顔色悪いな。連日の準備で疲れてるんじゃないか?」

古泉「そうですね…今日は僕も失礼しますよ。もう準備もないですしね」

キョン「そうか?俺は映画の編集…まあ、家でやっちまうから俺も帰るよ。また明日だな」

古泉「ええ…では」

古泉「…僕も今日は帰りますかね」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 01:22:17.39 ID:LnasaaIbO

学園祭1日目

あまり落ち着けない不安からか、早めに学校に来てしまう

古泉「…学園祭、ですか」

外ではちらほらと生徒が見える

早朝から準備しているようだ

古泉「…そう言えば僕も舞台があるんでしたね」

演じる…自分に与えられた役割を

そのうちの片方は演技だ。所詮舞台の上での

もう一方は…人を騙す演技。最悪だ

古泉「…考えても仕方ありませんね」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 01:29:44.95 ID:LnasaaIbO

昨日の電話中…

古泉『…というのが今日の報告です』

森『…まだヌルいわね』

古泉「え…まだ脅迫するんですか?」

森『まだ2日あるのよ。もう少し彼女の心情を深く動かしてみたいのよ…』

古泉『難しいですね…』

森『揺さぶりには成功してるじゃないの』

古泉『…本当に閉鎖空間は発生してませんね』

森『ええ、だからこそ…ね。古泉も少し心苦しいと思うけど…』

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 01:39:35.94 ID:LnasaaIbO

古泉『…機関の命令なら、仕方ないですよ』

森『お願いね。また明日報告を聞くわ…』


脅迫…確かに彼女は不安定になったでしょう

…そこから彼女を救う?光を見せる?

僕にそんな事ができるのでしょうか…

今日はどう脅迫しましょうか…

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 01:42:12.79 ID:LnasaaIbO

一人部室に向かい、少しだけボーッとしていた…



しばらくするとその彼が来る

キョン「お…古泉。早いな」

古泉「…ええあなたも。その様子だと、徹夜ですか?」

キョン「ああ…意外と時間がかかっちまったよ」

古泉「なるほど…」

その時一つの考えが浮かんだ

彼を…脅迫?

形はどうあれ、涼宮ハルヒにその内容が伝われば…

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 01:55:08.67 ID:LnasaaIbO

キョン「…古泉?」

古泉「…今からあなたに大事な話をします」

キョン「はあ…またハルヒの事か?」

古泉「はい。昨夜彼女から連絡はありましたか?」

キョン「いや、特に何も…」

古泉「…実はあなたに、機関から疑いがかけられているのですよ」

キョン「…は?何の疑いだよ」

古泉「あなたが彼女にとって、不必要な存在である、と…」

キョン「…」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 02:04:26.44 ID:LnasaaIbO

古泉「信じられないかもしれませんが…調査の結果、どうもそのようだと…」

キョン「不必要ってことは、俺はSOS団にはもういらないって事だよな?」

古泉「彼女は表には出してませんが…機関が言うには…」

キョン「…そうかい。それなら、俺は部を辞めるよ」

古泉「待って下さい…もう少し彼女に話をしてみますよ。間に中立の人間がたった方がいいでしょう?」

キョン「…すまんな、古泉。頼むよ」

古泉「ええ…幸い学園祭中は自由に動けますからね」

キョン「悪いな…何かあったら知らせてくれ。それまでは、普通にふるまってるよ」

古泉「ええ。お願いしますね」

そう言って彼は部室を出ていった

古泉(…さて、これからどうしましょうか…)

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 02:11:28.66 ID:LnasaaIbO

1日目

午前中

自分の気持ちがゴタゴタした中、学園祭がスタートした

今年は賑やかなものだった

増えたスポンサーの中には有名なクレープ屋やファーストフード店等もあり…

広告費変わりに学校まで出張出店している

古泉「なるほど、豪華なものですね…」

一人で歩いている…舞台までは少し時間がある

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 02:20:28.17 ID:LnasaaIbO

お店をブラリと見ていると、涼宮ハルヒの姿があった

ハルヒ「…あら、古泉君」

古泉「涼宮さん…あれから彼に少し話をしましたが…」

ハルヒ「キョンはなんて言ってたの?!」

古泉「やはり…辞める、と言うこといってましたね」

ハルヒ「そう…別にあんなのがいなくなっても…」

古泉「それは本心ですか?」

ハルヒ「…ちょっとだけ違うわ。キョンがいないと、少しだけ退屈になりそう」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 02:25:54.61 ID:LnasaaIbO

古泉「それなら、彼も喜ぶと思いますよ」

ハルヒ「え?どうしてよ?」

古泉「彼とちょっと話をしましてね。どうしても辞めるのか、と聞いたら…」

ハルヒ「…」

古泉「僕が話を聞いてみて、ほんの少しでも残ってほしい話題が出たら…残ると言ってました」

ハルヒ「そ、それ本当なの?」

古泉「ええ…涼宮さんが少しでも素直な気持ちを見せてくれたら…という風でしたね」

ハルヒ「…」

古泉「多少の恥ずかしさがあったかもしれませんが…彼が戻るなら話しても大丈夫ですよね?」

ハルヒ「そ、そうね…あ、やっぱり…」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 02:37:46.97 ID:LnasaaIbO

古泉「はい?」

ハルヒ「私が直接…キョンに言うわ。だから古泉君は…きっかけだけ話してくれないかしら?」

古泉「きっかけ…ですか?」

ハルヒ「少し話題を出して…それとなくキョンに意識だけさせてほしいの…お願いできるかしら?」

古泉「なるほど、脈絡が無いのも困りますよね。いいですよ」

ハルヒ「よかった!あ…あと…夕方4時に部室に来るようにも言ってもらえないかしら?」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 02:45:02.55 ID:LnasaaIbO

古泉「ええ。その時に話すのですか?」

ハルヒ「夕方まで忙しくて…途中で帰られちゃったら嫌だし…」

古泉「わかりました。彼をひき止めておきますから、ご安心を」

ハルヒ「ありがとう!あ…じゃあそろそろ行くわ。またね!」

彼女は元気に駆けていく

光を浴びた植物のような活発さ…

でもほんの少しだけ雨雲が出ていたのを彼女は知らない

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 02:50:50.31 ID:LnasaaIbO

午後過ぎ

やはり雨が降ってきた

黒い雲が空を覆っている

少しだけ肌寒い…しかし今は彼を探す事が最優先だ

なかなか彼は見つからない

そして…

キョン「…お、古泉か?」

古泉「はい、降ってきましたね」

彼は体育館の前にいた。ちょうど中から出てきた所のようだ

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 02:56:58.99 ID:LnasaaIbO

古泉「はい、降ってきましたね」

彼は体育館の前にいた。ちょうど中から出てきた所のようだ

古泉「…中は何をやってたんです?」

キョン「よくわからん音楽ばっかだ。よく休めたから移動してきちまったよ」

古泉「ほう…なら少しお話しませんか。涼宮さんと少し話をしたので…」

キョン「ハルヒか…そうだな。部室にでも行くか…」

歩く背中…ステージからは少し寂しげな歌声が聞こえてきたような気がした

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:03:19.68 ID:LnasaaIbO

部室

キョン「で…ハルヒはなんだって?」

古泉「残念ながら事態は変わっていません…彼女もあまりいい印象は持ってないですね」

キョン「そう…か…」

古泉「寂しいですか?」

キョン「あれだけドタバタした日常が無くなるかと思うと、少しな…」

古泉「もう辞める話ですか?」

キョン「そりゃあ不必要ならな…ストレス溜めてバイト増やすのも悪いし、な…」

古泉(やはり落ち込みます、か…)

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:08:07.93 ID:LnasaaIbO

古泉「あの、実は一つ彼女から話を聞きましてね…」

キョン「ん…なんだ?」

古泉「今まで、迷惑かけてごめん、と…」



彼がどう捉えてくれるか、それだけが頼りでした

キョン「…ハハッ、今さら謝られてもな。ああ…なんか虚しいもんだな」

古泉「…」

見ると時計は15時37分…

もしかしたら彼女は早めに来るかもしれない

古泉「…僕は失礼します。あの、何かあったらご相談にのりますので」

キョン「ああ…俺は少し頭を冷やしてから帰るよ…」

古泉「…」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 03:16:31.77 ID:LnasaaIbO

―バタン

帰ろうとした瞬間、部室のドアが開く

ハルヒ「…!」

キョン「…!」

古泉「…」

少しの沈黙

キョン「…ハルヒか」

ハルヒ「え、ええ。2人ともこんな所にいたのね?」

古泉「そろそろ僕は帰ろうと思ってたんですよ…では…」

キョン「俺も帰るよ」

ハルヒ「え…ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:23:26.28 ID:LnasaaIbO

キョン「…なんだ、それも団長命令か?」

ハルヒ「そ、そうよ…だからさっさと…」

キョン「ハァ…」

ハルヒ「な、何よそのため息…」

キョン「もう疲れたよ、そういう態度もな」

ハルヒ「だ…だって私は団長なんだから…」

キョン「…もういいよ。帰ろうぜ古泉」
彼はさっさと歩きだしてしまう

本当にこの場から去るように

ハルヒ「ま、待って…待ってってば!」
彼女は走りながら追っていく

キョン「…もう俺はいらないんだろ?」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:29:10.95 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「そ、そんな事言ってないじゃない!何勘違いしてるのよ、バカ!」

キョン「怒るって事は思いあたる節があるって事だろ?」

ハルヒ「無いわよ…これは素直な気持ちよ、信じて?」

キョン「…素直になられても、もう虚しいだけだ」

古泉「…」

ハルヒ「…なんでそんなに怒ってるのよ…私素直に…」

キョン「もういいんだよ。じゃあな」

彼は急ぎ足で帰ってしまう…今度は彼女も追いかけない



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:36:44.70 ID:LnasaaIbO



涼宮さんと、2人学校を出る

もう殆どの生徒は見当たらない

ハルヒ「…ねえ古泉君…」

古泉「はい、なんですか?」

ハルヒ「…私素直になったわよね…?」

古泉「彼からしたら、まだ素直ではないのかもしれませんよ?」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:43:16.14 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「だって…!私が話す前に勝手に帰っちゃったじゃない…!」

古泉「…涼宮さんが、先ほど、100グラムの素直さを出したとしましょう」

ハルヒ「え…うん…」

古泉「しかし、彼からして見ればその重さは10グラムだった…という事ではないでしょうか?」

ハルヒ「…伝わってないってこと?」

古泉「想いは、相手がどう感じたかによって変わってしまいます」

ハルヒ「…」

古泉「伝わらなければ、それは素直であるとは言えません。相手にとっては…ね」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:51:02.88 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「でも…あれだけ嫌ってたらもう…」

古泉「…彼とこのまま別れるのは嫌なのでしょう?」

ハルヒ「嫌よ…キョンがいない学校なんて…いらないもの…」

古泉「彼の前でも、それくらい素直になれれば伝わりますよ。200…300グラムと表現してけば彼もわかってくれます」

ハルヒ「…そうね、もう一度明日話してみるわ。学校来るかしらキョン…」

古泉「僕がまた話してみますよ。あまり変なことも言えないので、学校に来るかどうかだけ…」

ハルヒ「ありがとう…ここ数日古泉君にも頼りっぱなしね」
古泉「いえ…彼がいなくなるのはやはり寂しいですから、ね」

嘘を言っているうちに、自分がどういう人間かわからなくなる

少なくとも最後の言葉は本心なのでしょう―

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 03:55:48.65 ID:LnasaaIbO

通話

古泉『…以上です』

森『…』

古泉『何か問題でも…?』

森『いえ…問題ないわ。他に何か変わった事は?』

古泉『…ありませんね』

森『そう…なの?』

古泉『はい…しかし、これでいいんですか?』

森『…何が?』

古泉『僕の行動が、脅迫という概念に沿っていますかね?』

森『ええ、彼女を不安定にさせればいいのよ』

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 04:01:15.15 ID:LnasaaIbO

古泉『そうですか…』

森『手に負えなかったら助けてあげるわよ』

古泉『今のところは大丈夫です。では明日にまた…』

森『ええ…』



そう言えば彼に連絡をするのを忘れていた

これは報告に含まなかったが…まあいいだろう

…ピリリリリ

キョン『もしもし、古泉か?』

古泉『ええ…今日は大変でしたね』

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 04:10:05.80 ID:LnasaaIbO

キョン『ああ…もういいんだよ』

古泉『…明日は学校に来ないつもりですか?』

キョン『するどいな。どうせ学園祭だ…休んでもいいだろ』

古泉『…彼女、謝りたがってましたよ』

キョン『…』

古泉『それと、機関の調査でも…復活の兆しがある、と…』

キョン『な、仲直りできるのか?』

古泉『ええ…お互い素直になれば、ですけど…』

キョン『素直なあ…』

古泉『ええ…』

キョン『なあ古泉。別にお前を疑うわけじゃないんだが…』

―疑う?


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 04:16:58.46 ID:LnasaaIbO

古泉『…はい?』

キョン『なんか今回のお前は抽象的すぎないか?…その、表現がさ』

古泉『…どういう意味です?』

キョン『機関ってのはもっと…そうだな、原因やら理由をはっきり言う印象が俺にはある』

古泉『ええ…』

キョン『何か隠し事をしているんじゃないか?』

古泉『…そんな事はありませんよ。抽象的に感じるのは、今回が心の問題だからですよ』

キョン『心ねぇ…』
古泉『奥底まではわからないものですよ…だから近くで、涼宮さんを見張る役が必要という事です』

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 04:20:57.98 ID:LnasaaIbO

キョン『なるほどな…疑って悪かったな』

古泉『いえ…彼女はあなたに伝えたがってましたよ。色んな事を』

キョン『…本当か?』

古泉『ええ、それを聞くために明日はぜひ…』

キョン『ああ…お前に免じて行くとするよ』

古泉『ありがとうございます。では…』

キョン『ああ、悪いな、また明日』


彼に突っ込まれるとは思わなかった

抽象的…言われてみれば確かに変だ

心の問題…と誤魔化したが…

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 04:25:40.98 ID:LnasaaIbO

学園祭2日目

午前

昨日の雨が嘘のようだ

空には太陽が笑っている

古泉「さて…今日も歩き回りますかね」

とりあえず彼と彼女…どちらかを探さなければならなかった

…しかし見つからない

確かに今日は強制参加ではない。来てなくても無理はない

しかし来ているはず…そう信じて歩き回る

しかし会えたのは違う人物だった

長門「…」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 04:35:57.35 ID:LnasaaIbO

古泉「おや、長門さん」

この3日間、朝比奈さんや長門さんと話す余裕が無かった

彼女達も自分も活動が忙しかったからだ

長門「…彼と涼宮ハルヒを探している」

古泉「奇遇ですね。僕もですよ」

長門「…実はこれを渡したい」

そう言って長門が見せたのは2枚のチケットだった

古泉「これは…?」

長門「夕方から行われる、ライブのチケット…昨日バンドの手伝いをしたら貰った」

古泉「へえ…そんなことが」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 04:42:43.63 ID:LnasaaIbO

長門「涼宮ハルヒがすぐに会場を離れたため、私が2人分預かっている」

古泉「…」

長門「私は興味が無いから、彼と2人で…と思い探し回っていた」

古泉「そうですか…最近2人とも仲がよろしくないみたいでしてね…いい機会かもしれません」

長門「…」

スッと長門はチケットを渡してくる

長門「私より貴方の方が適任。渡しておく」

古泉「…ええ。彼らと会う約束もしてますしね」

長門「じゃあ…私はこれで」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 04:52:01.34 ID:LnasaaIbO

正午辺り

…ふとグラウンドに目をやると目的の2人

並びながら歩いてくる

そこにゆっくりと近付いていく

古泉「よかった、お二人を探していたんですよ」

キョン「よう古泉、何かあったのか?」

古泉「実は…これ、ライブのチケットなんですけど…」

ハルヒ「…確か夕方からアーティストが来るのよね」

古泉「ええ、今回は広告費も多いですからね…学校が呼んだようです」

キョン「で、そのチケットがどうしたんだ?」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 04:56:17.54 ID:LnasaaIbO

古泉「僕も行きたかったんですが時間が合わなくて…変わりにお二人に行って欲しいのですよ」

キョン「え…そ…」

ハルヒ「そうね。それならありがたく使わせてもらうわ。行きましょうキョン」

彼が何かを言う前に、彼女はチケットを取って歩き出してしまう

古泉「…彼女なりの優しさですよ」

キョン「…ああ、何となくわかってるよ」

古泉「その様子だと、心配ないようですね」

キョン「ああ、さっきちょっと話してな…まあ、礼を言うよ」

古泉「実は長門さんから預かった物なんですよ」

キョン「そうだったのか…見かけたら礼を言っとくよ」

古泉「ええ…あ、ライブの後は校庭に行って下さいね?」

キョン「ん…何かあるのか?」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 05:03:03.59 ID:LnasaaIbO

古泉「…以前話せなかった…」

ハルヒ「キョン!早く来なさいよ!」

古泉「…また言いそびれましたね。とにかく校庭です。グランドとも言いますね」

キョン「はぁ…モヤモヤするな、わかったよ」

トボトボと彼は歩き出した

でもその後ろ姿は昨日の彼とは全く違って見えた

古泉(…さて)

ピリリリリ

古泉『はいもしもし?ええ…今から…わかりました』

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 05:05:17.42 ID:LnasaaIbO

暗くなり始めた夕方

広いグランドの中央には木が重なった巨大な薪の建物

キャンプファイアーのための用意がされていた

キョン「…こんな事までやるのか」

ハルヒ「へえ…面白そうじゃないの!」

古泉「ええ、夜の学園祭…それが今年の目玉ですよ」

キョン「言ってたのはこれか…秘密にする必要もないだろ」

古泉「ちょっとしたサプライズですよ。フォークダンスはありませんが…雰囲気は最高でしょう」

キョン「こっちから願い下げだ」

ハルヒ「すごいわね…いつ火をつけるのかしら?」

古泉「そろそろ点火ですよ…ほら…」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 05:13:35.29 ID:LnasaaIbO

そう言うと、最初は小さな火

そして段々と大きくなっていく炎が目の前に現れた

ハルヒ「…綺麗ね」

キョン「ああ…」

古泉(…僕は用事があるので失礼しますよ)

キョン(!おい、ちょっと…)

古泉(大事な用事ですよ。それに邪魔者は…ね)

キョン(…勝手にしろ)

ハルヒ「あ、音楽…いいわねこういう雰囲気…好きよ」

キョン「あ、ああ…そうだな」

古泉「…」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 05:24:32.59 ID:LnasaaIbO

SOS団部室

古泉「…」

森「外…参加しないの?」

古泉「ええ…もう仕事は終わりましたから」

森「そう」

古泉「…」

森「…」

古泉「あの、森さん」

森「何?」

古泉「今回の事、本当に機関の命令なんですか?」

森「…」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 05:33:06.66 ID:LnasaaIbO

古泉「機関の事を疑うわけではありませんが…今回は始めから変でした」

森「何が変なの?」

古泉「まず…指令が抽象的すぎです…脅迫しろ、とだけ」

森「…」

古泉「思えばこの時から疑うべきでした。その脅迫が思う通りの形で無かったら?」

森「今回の内容は充分脅迫と認められるわ。彼女は不安に陥っていった」

古泉「…では僕が彼女を脅迫しなかったら?」

森「…」

古泉「確かに脅迫して…彼女に優しさを見せられなかったら世界は爆発するかもしれません」

古泉「しかし脅迫しなかった場合…何かが変わったのでしょうか?」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 05:41:37.65 ID:LnasaaIbO

森「調査のためよ。それ以上の意味はないわ」

古泉「…調査。それが一番の違和感でした」

森「…」

古泉「この話は本当に機関が関わっているのですか…?」

森「いいえ」

古泉「…!」

森「機関は関わってないわ」

古泉「それは…どうして…」

森「…質問には答えてあげる。聞かれた事しか言わないけど」

古泉「それなら…今回の命令の意味を」

森「彼女がどういう行動をとるか…それを見たかっただけよ。追い込まれる様子を…ね」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 05:53:18.18 ID:LnasaaIbO

古泉「答えになっていません。なぜ彼女を追い込むのです…?」

森「…ここ数週間閉鎖空間が全く発生してないのは知ってるわね?」

古泉「ええ…」

森「彼女自身に何か原因がある…そう考えた私が調査のため仕向けたのよ」

古泉「…本当にそれだけですか?」

森「本当よ」

古泉「…いえ、あなたは嘘をついている」

森「…」

古泉「調査だとか機関だとか…そんな言葉ばかりを持ち出すあなたは始めてです…」

森「…だから何?」

古泉「後ろ楯を常に構える…そこに違和感を感じただけですよ」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 06:01:26.80 ID:LnasaaIbO

森「…あなたは動きすぎよ」

古泉「…どういう意味です?」

森「あなたのした行動を思い出しなさい。涼宮ハルヒを脅迫…大事な人間との仲違い…」

古泉「それは命令で…」

森「あなたも後ろ楯を使うのね。何でも命令命令…でもそれは相手には伝わらない事よ」

古泉「伝わらない…?」

森「あなたは独断で涼宮ハルヒの事情に介入…閉鎖空間が発生しないのをいい事に…ね」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 06:09:19.73 ID:LnasaaIbO

古泉「今回は僕の単独行動だと?」

森「ええ。あとは私が機関に報告すれば…あなたは終わりよ」

古泉「…どうしてあなたがそんな事を?」

森「…世界を壊したかったのよ。ただそれだけ。破壊願望よ」

古泉「理解できませんね」

森「あら、あなたも結構楽しんで脅迫してたんでない?」

古泉「…」

森「普段彼女に気を使ってばかり…その煩わしさから一時期でも解放されたんだから…」

古泉「森さんの願望も、楽しんでという理由からですか?」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 06:18:01.26 ID:LnasaaIbO

森「たまにね…あるのよ。自分の持ち物を壊したくなる時が…」

古泉「涼宮さんと僕を利用して、その願望を実現したかったわけですか…」

森「おおっぴらに動けば私が機関に目をつけられる…あなたを抽象的に動かすしかなかったのよ」

古泉「それで全てが壊れると思ったんですか?」

森「まさか。あなたには現場を荒らして欲しかっただけよ?」

古泉「…」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 06:24:22.15 ID:LnasaaIbO

支援ありがとうございます

森「ねえ、古泉くん?」

古泉「は、はい…?」

森「あなたが任務に失敗したら…どうなるか知ってるわよね?」

古泉「…世界の…爆発?」

森「よく覚えてたわね」

古泉「…全部森さんの独断でしょう」

森「ううん、本当に爆発するのよ」

古泉「え…」

時計の秒針が20時丁度をさした

―カチッ

森「バイバイ、古泉」

ドン

音とともに、目の前は真っ白になって全てが終わった



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 06:29:16.93 ID:LnasaaIbO



いつからだろう

私がそれに気付いたのは

最初はちょっとしたきっかけだった

少し急いでいた帰り道

信号が青から赤になりそうな時

待って

そう願った…

いつまでも信号は点滅したまま、青だった

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 06:38:35.11 ID:LnasaaIbO

道を渡り終えると信号は赤に変わった

偶然だろう

でももしかしたら…

そのもしかしたらが、ちょっとした神様のイタズラだったのかもしれない

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 06:43:27.18 ID:LnasaaIbO

学園祭…数週間前

ハルヒ(…明日の授業は憂鬱ね)

ハルヒ(休んじゃおうかしら…でもそれだとキョンに会えない…)

ハルヒ(…午後の授業がなくればいいのよ。…なんて、無理な話よね)

翌日、学校に行くと午後の授業が休み…

一気に自由な時間が増える形となった

ハルヒ(…嘘。ホントに叶っちゃった。これ偶然かしら?)

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 06:53:23.57 ID:LnasaaIbO

ハルヒ(…偶然よね。どうせなら…もっと大きな事お願いすればよかったかな)

ハルヒ(そうね…じゃあ明日キョンからたくさん話してくれますように)

…次の日

キョン「なあ、ハルヒ…」



キョン「ハルヒ、さっきの時間さ…」



キョン「なあ、放課後どっかに…」

…話しかけてくれた

偶然?

確かに話してくれるなんてよくあるものね

じゃあ…ちょっと非現実的な事を考えてみよう

…毎日幸せでいられますように

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 07:04:35.81 ID:LnasaaIbO

うん…分かりにくいけど、願望なんてこれくらいがいいのよね

その日から学園祭まで、不思議と色々な事が上手くいった気がした

失敗もない、ストレスもあまり無い…

なんだか毎日が暖かい

ハルヒ(世界って、こんなに楽しかったのね…)

幸せを感じる日々

でも学園祭前日、ちょっとだけ事件が起こった

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 07:14:09.09 ID:LnasaaIbO

学園祭前日

昼の準備

古泉「…」

部員が一人沈んだ様子でいる…たまらず声をかける

ハルヒ「…どうしたの、古泉君?」

キョン「体調でも悪いのか?」

古泉「…いえ、大丈夫です」

古泉「実はちょっと涼宮さん…学園祭の事で話が…」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 07:17:32.24 ID:LnasaaIbO

チラリ、と目線がキョンの方を向く

キョン「…俺はお邪魔か。まあ、無理はするなよ?」

古泉「すいません、助かります…」



要約するとこうだった
キョンが私の事を嫌っている…SOS団を辞めたがっている

少し信じられなかったが、彼の言う事は信頼できる

だから余計につらかった

…その日は早めに帰った

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 07:18:58.18 ID:LnasaaIbO

ハルヒ(…なによ、キョンのバカ…はっきり言えばいいのに)

ハルヒ(…明日顔合わせ辛いな…)

ハルヒ(…学校なんて無くなっちゃえばいいのに…)

ハルヒ(…)

ハルヒ(…でも学園祭は行かなきゃダメよね)

ハルヒ(うん…)

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 07:26:45.80 ID:LnasaaIbO

学園祭1日目

午前

学校に着くと、もう学園祭は始まっていた

お店で賑わう、普段とは違う風景

ハルヒ(…私も準備しなきゃ)

衣装に着替え、ビラ配り…途中で古泉君を見かける


ハルヒ「…あら、古泉君」

古泉「涼宮さん…あれから彼と少し話をしましたよ」



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 07:39:25.90 ID:LnasaaIbO



内容は、やはり辞めたいが私が素直になれば…という話だった

夕方4時に約束を取り付けて、その場は別れた

…あら、玄関で何か揉めている…

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 07:44:51.78 ID:LnasaaIbO

…成り行きでステージに上がった事しか今は覚えていない

慣れないギターを持って…広い体育館

なんだか人が多い

ハルヒ(これだけ人がいればもしかしたらキョンも…)

でも私は願うのを止めた

ハルヒ(…今は、顔合わせない方がいいのよね)

ドラムとギターの音が響く

心地よいイントロ…彼女は精一杯歌い出した

外はいつの間にか大雨になっていた

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 07:52:21.89 ID:LnasaaIbO

15時36分

ステージが終わると、走って部室に向かっていた

もうキョンはいるかもしれない。待たせているかもしれない

そう考えるといてもたってもいられない…

―バタン

扉を開けると、そこには男性が2人

ハルヒ「…!」

キョン「…!」

古泉「…」

古泉君…彼は多分キョンに話をしててくれたんだろう

キョン「…ハルヒか」

その口調はどこか冷たい


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 08:05:20.61 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「え、ええ。2人ともこんな所にいたのね?」

言葉はちょっと上ずっている…緊張してるのだろうか

古泉「そろそろ僕は帰ろうと思ってたんですよ…では…」

キョン「俺も帰るよ」

ハルヒ「え…ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

キョン「…なんだ、それも団長命令か?」

ハルヒ「そ、そうよ…だからさっさと…」

違う

キョン「ハァ…」

ハルヒ「な、何よそのため息…」

キョン「もう疲れたよ、そういう態度もな」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 08:12:41.42 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「だ…だって私は団長なんだから…」

違う…

キョン「…もういいよ。帰ろうぜ古泉」
振り切るように去っていく彼を、追いかけるしかなかった


ハルヒ「ま、待って…待ってってば!」
走りながら追いかけていく

キョン「…もう俺はいらないんだろ?」
いらない…?私はそんな事は一言も言っていない

願ってもいない

ハルヒ「そ、そんな事言ってないじゃない!何勘違いしてるのよ、バカ!」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 08:17:11.49 ID:LnasaaIbO

キョン「怒るって事は思いあたる節があるって事だろ?」

ハルヒ「無いわよ…これは素直な気持ちよ、信じて?」

少し弱気になる…なんだか彼が冷たい

キョン「…素直になられても、もう虚しいだけだ」

古泉「…」

ハルヒ「…なんでそんなに怒ってるのよ…私素直に…」

キョン「もういいんだよ。じゃあな」

そう言って彼は一人で歩き出してしまう

いろんな物を置き去りにし、取り残されてしまう

…そんな事願ってないのに

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 08:39:43.96 ID:LnasaaIbO

…結局彼は話をほとんど聞かず帰ってしまった

アドバイスされた、素直な気持ちなど出す暇もなく…

帰り道もただ彼に悩みを聞いてもらって歩いていた

相手に気持ちを見せてもそれは伝わるかわからない…

それならばもっと気持ちを込めて伝えるしかないのだ、と…言われた


86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 08:45:31.00 ID:LnasaaIbO

学園祭2日目

ボーッと…目を覚ます

時計は9時半過ぎをさしている

普段なら遅刻だが、学園祭…2日目は自由登校の安心感がありつい寝過ごしてしまった

ハルヒ「…学校行こう」

身だしなみを整え、さっさと学校に出かける

昨日の雨が嘘のようにあがっている

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 08:51:12.02 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「太陽気持ちいい…」

一人道をぽかぽかと歩いていく

ハルヒ「…キョンはやっぱいないのかな」

口に出して呟いた瞬間…道の先に見慣れた姿が見える

ハルヒ「…キョン?」

キョン「…」

つかつかと、ハルヒは歩み寄っていく

ハルヒ「こんな時間に登校なんて、珍しいわね」

キョン「自由登校だからついゆっくりとな…ハルヒこそ」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 08:56:26.83 ID:LnasaaIbO

昨夜…ハルヒ宅

ハルヒ(…もっと素直に?素直…気持ちを…)

ハルヒ(お願いしてみようかしら…明日は素直でいられますように)

ハルヒ(…なんてね。後は…やっぱり一緒に登校したいなぁ…)
ハルヒ(お願いって2つ有効なのかしら…まあ、いいわ)

布団に入りながら、ずっと素直な会話のシミュレーションをしていた



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 09:04:01.22 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「わ、私は…キョンに会えたらいいなって思いながら歩いてたから…」

キョン「え…」

ハルヒ「…本当よ」

キョン「…」

少し態度が違う…そう感じ取ったのだろう

昨日の事を怒るでもなく、彼とは普通に歩いていた

一緒に歩ける道はこんなにも暖かくて、こんなにも楽しいものなんだ…

私たちは少しゆっくりと学校に向かった

時間を噛みしめるよう、2人で話ながらゆっくりと歩いていた

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 09:09:28.06 ID:LnasaaIbO

学校に着くと変わらない賑やかさ

少しだけ日常に戻った気がした

向こうからは、気の知れた友人が近付いてくる

古泉「よかった、お二人を探していたんですよ」

キョン「よう古泉、何かあったのか?」

古泉「実は…これ、ライブのチケットなんですけど…」

ハルヒ「…確か夕方からアーティストが来るのよね」

彼がそのチケットを譲ってくれるというのだ

…彼からチケットを受けとると、足早に歩き出してしまう

心臓が早い

…後ろからまだキョンはついてこない


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 09:15:47.78 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「キョン!早くついてきなさいよ!」

ちょっとだけ乱暴に叫んだ

友人の前だからいいだろう

彼はすぐに追い付いてきた

ライブが始まるまでの時間、2人で学園祭を見て回った

一緒にクレープを食べて…のんびり学校を歩いて…

ライブの時間までも含めて、ゆっくり幸せに…キョンと過ごした

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 09:24:00.33 ID:LnasaaIbO

暗くなり始めた夕方

広いグランドの中央には木が重なった巨大な薪の建物

キャンプファイアーのための用意がされていた

キョン「…こんな事までやるのか」

ハルヒ「へえ…面白そうじゃないの!」

古泉「ええ、夜の学園祭…それが今年の目玉ですよ」

キョン「言ってたのはこれか…秘密にする必要もないだろ」

古泉「ちょっとしたサプライズですよ。フォークダンスはありませんが…雰囲気は最高でしょう」

キョン「こっちから願い下げだ」

ハルヒ「すごいわね…いつ火をつけるのかしら?」

古泉「そろそろ点火ですよ…ほら…」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 09:26:04.58 ID:LnasaaIbO

そう言うと、最初は小さな火

そして段々と大きくなっていく炎が目の前に現れた

ハルヒ「…綺麗ね」

キョン「ああ…」



ハルヒ「あ、音楽…いいわねこういう雰囲気…好きよ」

キョン「あ、ああ…そうだな」

ハルヒ「あれ、古泉君は?」

キョン「なんだか忙しいんだとさ」

ハルヒ「そう…」

キョン「…ん、ハルヒ、ちょっとすまん電話だ」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 09:33:31.05 ID:LnasaaIbO

…誰からだろう

ちょっと離れてしまったため、会話の内容はよくわからない

しかしすぐに電話を終え、こちらに戻ってきた

ハルヒ「どうしたの?」

キョン「いや、よくわからん事を聞かれて…まあ、たいした事じゃないさ」

ハルヒ「そう…」

キョン「…」

ハルヒ「あのねキョン…私、最近変だったのよ」

キョン「ん…何がだ?」

ハルヒ「私の思った通りになるのよ。日常が…まるで私が神様になったみたいなの」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 09:41:01.34 ID:LnasaaIbO

キョン「…!」

ハルヒ「学園祭で…喧嘩して、こんな学校いらないって考えた事もあったわ」

キョン「ハルヒ、それは…」

ハルヒ「でも、キョンと仲直りしたいって思ったら叶ったのよ!一緒に歩きたいって思った叶ったのよ」

キョン「…」

ハルヒ「…やっぱり変かな、こんなのってさ」

キョン「神様に頼るなんて、お前らしくないじゃないか」

ハルヒ「…」

キョン「俺も仲直りしたかった…ハルヒも気持ちは同じ。それだけの事さ」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 09:49:25.99 ID:LnasaaIbO

ハルヒ「…そうよね。何でも思い通りになるだけじゃあ、つまらないものね」

キョン「お互い素直になると、意外と簡単なのかもしれないな、仲直りってのは」

ハルヒ「…そうね」

炎が揺らめいている

優しい風が吹いている

ハルヒ「夜の炎って綺麗ね…」

キョン「ああ、学園祭終わっちまったな」

ハルヒ「まだ…終わってないわよ」

キョン「ん…」

ハルヒ「私、もう一度だけ素直にならなきゃ…」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 09:59:13.66 ID:LnasaaIbO

―心臓が鳴っている

早く、早く…

ハルヒ「あのね、私…キョンの事が…」

―カチッ

屋上の時計が20時を差した

ハルヒ「―」

キョン「…!」

―ドン

激しい爆発音と共に、光が広がる

私はその言葉を伝えながら…目の前がただ真っ白に染まった




100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 10:11:23.35 ID:LnasaaIbO

支援感謝です


学園祭前日

準備時間

気だるい午前の授業を終わらせ、僕たち2人は準備で賑わう学校をブラブラしていた


国木田「…明日は学園祭だね」

谷口「ああ、こういう雰囲気は好きだぜ」

国木田「谷口は学校に来る女の子が目的でしょ?」

谷口「当たり前だろ、学校内に美人も多いが来客としてくるお姉さまなんてもう…!」

国木田「わかったわかった。明日は楽しみだね」

谷口「あとな、今日…風に遊ばれるスカートの中身を見ちまってよ…それがな…」

国木田「…はいはい。僕はこれから先生に呼ばれてるから行くよ」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 10:31:34.89 ID:LnasaaIbO

谷口「あっ、おいちょっと待てよ!…くそっ、ノリの悪い奴だぜ」

…夕方近くの放課後

国木田「ふぅ…学園祭の準備が無いからって僕をコキ使いすぎだよ…」

言われた用事を済ませ、教室に戻っていく

谷口「…ん、国木田。まだ学校にいたのか」

国木田「そういう谷口こそ。準備も無いのに残ってたの?」

谷口「いやぁ、準備してるとこにチョッカイ出すのが面白くてな。周りがもうみんな帰っちまったからさ」

確かに、学校には人影はほとんど無い

国木田「そう…あ、ちょっと僕教室行ってから帰るからさ」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 10:37:25.27 ID:LnasaaIbO

谷口「ああ、俺も教室行くから付き合うぜ」

男2人廊下を歩き出す

―ガラッ

教室に入るとまず目についたのが…

学園祭の飾りもそうだが、部屋の中央に…

大きな、黒い箱?

国木田「…ねえ、何かなこれ?」

谷口「さあ?出し物の一つじゃねえの?」

国木田「…こんなのあったっけ?何か金属みたいにテカテカしてる箱だし」

谷口「まあ、開けてみればわかるさ。道具箱かもしれないだろ?」

国木田「…道具箱、ねぇ…」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 10:42:10.51 ID:LnasaaIbO

何だか黒く不気味に光その箱を開けてはいけないような気はしたが…

谷口「よっ、と」

彼はすぐに開けてしまう



……

デジタル表示された秒数

複雑に要り組んだコード

ピッ、ピッという規則正しい電子音…

谷口「こいつぁ…爆弾…か?」

国木田「え…いやいやわけがわからないよ。こんな…」

でも生徒が作ったものにしては手がかかり過ぎている

1日2日の工作でできるような物でないのは、素人にもわかる

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 10:47:03.21 ID:LnasaaIbO

国木田「…ねえ、タイマー、あと4分だよ!」

谷口「…!とにかくヤバい、逃げるぞ国木田!」

国木田「うん!非常ベル鳴らして避難を…って、あれ…」

さっき入ってきたはずの出口が無い

国木田「…閉じ込められた?」

谷口「…みたいだな」

ピッ、という電子音は相変わらず止まらない

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 10:58:42.83 ID:LnasaaIbO

谷口「…しゃあねえこれを止めるしか」

国木田「止めるって言ったって…」

谷口「見ろよ、この赤と青のコード…」

国木田「…確かに映画ではよく見るけど」

谷口「これのどっちかを切れば爆弾は解除されるはずだ」

国木田「…そうなの?」

谷口「知らん。そこまでの知識しか無いからな。今はジタバタできないだろ」

国木田「…妙に落ち着いてるね」

谷口「変な話、現実味がなくてな…夢でも見てるみたいなんだ」

国木田「それは僕も同感だよ。でも出られないのは困るよね」

谷口「とりあえず…どっちを切るか、だが…」

国木田「うん…赤か青か…」

時間はあと1分しかない

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 11:08:31.39 ID:LnasaaIbO

谷口「…俺が決めていいか?」

国木田「うん、任せるよ。考えてもわからないから、ね」

谷口「よし…」

そう言って谷口は…

青のコードを切る

―バチン



タイマーは止まっている

どうやら助かったようだ

教室の出入口もいつの間にか元に戻っている

国木田「ふぅ…止まったね」

谷口「ああ…内心ドキドキだったけどな」

緊張がとけて、僕たちはその場にヘタリ込んでしまった

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 11:17:59.18 ID:LnasaaIbO

国木田「…にしても、なんで青を切ったの?」

谷口「ああ、今日見えたスカートの中が青だったんだよ!」

国木田「…」

谷口「いやあ、そういう意味だと2重でラッキーだな…っておい国木田、待てよ!」

国木田「はいはい。安全なうちに僕は帰るよ。じゃあ、また明日ね」

谷口「おい、これどうするんだよ?」

国木田「…本当に出し物だったのかもよ。もしかしたら赤を切ってもよかったのかもね?」

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 11:24:38.80 ID:LnasaaIbO

谷口「…」

国木田「明日聞けばいいじゃない。じゃあ、またね」

谷口の手前ああは言ったけど

あれは絶対に本物だ

イタズラ?なんで僕たちのクラスに?

…考えてもわからない

僕はそのまま家に帰った

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 11:29:07.11 ID:LnasaaIbO

学園祭1日目

昨日の事が気になって、少し早めに学校に着いてしまった

もう他に準備している生徒もちらほらといる

国木田「…」

谷口「よお、国木田も早いんだな」

国木田「やあ、おはよう。少し気になってね」

谷口「だな…」

教室に入ると…箱がない

そこだけ何も無かったように

谷口「あ…?」

国木田「…無いね」

谷口「…」

国木田「夢?」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 11:40:55.59 ID:LnasaaIbO

谷口「そんなわけあるかよ、俺がこの手で…しかし消えてるんじゃ何も言えないよな」

国木田「ね…せっかくの学園祭だからさ。楽しむ事に専念しない?」

谷口「だな…よくわからんけど、遊んで忘れるか」

そこから僕たちはキョンと合流して…

なんだっけ、水と焼きそばとメイドさんを堪能した気がする

とにかく友人と学園祭をエンジョイしていた

そこからキョンは一人どこかへ行ってしまう

谷口「…学園祭といえばナンパだよな」

国木田「ああ、僕はパス。谷口一人で…その友達を…」

多分こんな会話をしていた…と思う

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 11:47:51.62 ID:LnasaaIbO

そこからは一人で学園祭をまわっていた

…窓の外はいつの間にか暗く、雨が降りだしている

国木田「…雨ね」

暗くなる学校。この雰囲気が、僕は好きだ

校舎の少し湿った匂い…雨の匂い…

国木田「いいなぁ…」

時計を見るともう16時近くになっていた

国木田「…そろそろ帰ろうかな。明日もあるし」

学校内に残っている生徒はあまりいない
その時背中から声をかけられた

谷口「よう、国木田」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 11:58:15.58 ID:LnasaaIbO

国木田「や…どうだったナンパ」

谷口「…20戦20敗だ…くそっ、見る目ねえよなぁ…天気が悪いんだよ、クソ!」

国木田「…」

彼はこの天気は嫌いなようだ

谷口「くそっ、帰ろうぜ。明日だ明日!」

国木田「そうだね、じゃあ…」

そう言って歩き出す

いつもの廊下、帰り道

でも少し雰囲気が違う…部室…扉が開いている

ドアが開いてるだけでこんなに違和感を感じるのか…

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 12:05:01.05 ID:LnasaaIbO

開いてれば覗いてしまう。それが人間心理だろう

国木田「…えっ?」

谷口「ん…どうし…」

部屋の中の机の上には…昨日と同じ黒い箱

国木田「…ここは、涼宮さんたちの部室だよね?」

谷口「あ、ああ…あいつらの…なのか?」

足は自然と部屋の中へ向かう

背中で扉がしまる音がした

谷口「…またかよ」

国木田「…」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 12:14:11.69 ID:LnasaaIbO

中身は…昨日と同じ配線をした物体だった

タイマーも残り2分を示している

谷口「なあ…これ、本当に爆弾なのか?」

国木田「そうかもしれないし、違うかもしれないね。僕にはわからないよ」

谷口「…」

タイマーは進んでいく

本物の爆弾ではないかもしれない…でも、緊張感迫るモノがあるのも事実だ

谷口「とにかく…もう一回爆弾を解除だ…」

国木田「う、うん…でも次はどっちのコードを切るの?また青でいいのかな?」

谷口「…今日はスカートの中も見えなかったからなぁ…」

国木田「そんなバカな事言ってないで…」

時間は残り40秒だ

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 12:26:29.74 ID:LnasaaIbO

谷口「…国木田に任せるよ。今日は俺負けっぱなしだから」

そういって谷口は僕にハサミを手渡した

国木田「う、うん…」

もう迷ってる時間も無い

僕は…

赤いコードを切った

―カチッ

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 12:27:41.18 ID:LnasaaIbO



タイマーは止まっている

どうやら成功したようだ

谷口「ふぅ…今回も生き延びたか」

国木田「あははっ、そうだね」

谷口「しっかしこれ、本当に爆発すんのか?コード切れば安全なんじゃねえの?」

国木田「どうだろうね…でもこの見た目は不気味すぎるよ」

谷口「…確かに、遊びで作れるものじゃないよな」

国木田「…明日キョン達に聞いてみようか?」

谷口「そうだな…キョンなり涼宮なり、来るだろう」

国木田「うん…」

僕たちはそう言いながら学校の外に出た

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 12:37:31.53 ID:LnasaaIbO

学園祭2日目

今日で学園祭は最後だ

自由登校という、ゆったりとした雰囲気からか、僕は午後に学校に着いた

国木田「結構人はいるんだね…さて、探さないと…」

僕はキョンを探すことにした

電話に連絡すればよかったのかもしれないけど、やはりブラブラしたい気持ちもあったのだ



国木田「…見つからないな」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 12:47:39.38 ID:LnasaaIbO

そこそこ歩き回っても、会えない

時間はもう16時過ぎだ…

国木田「谷口もいないみたいだし、帰ろうかなぁ…」

外を歩いているとその時

谷口「お、国木田か。来てたんだな」

国木田「あ…今来たの?」

谷口「ああ、ついゆっくりと…ゲーセンで時間潰しをな」

国木田「もう夕方だよ」

大学に行ったら、まずサボるタイプだろう、と僕は感じた

谷口「まあ、そう言うなって。キョンと会ったか?」

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 12:51:07.84 ID:LnasaaIbO

国木田「ん…探したけどいなかったよ」

谷口「そうか…あの黒い箱は?」

国木田「探してないよ。あんないきなり現れたような…わからない物なんて」

谷口「まあ、そうだな…しかしあれは何なんだろうな。変な空間みたいな感じだったよな」

外でそんな話していると、一人の女性が近付いてくる

?「こんにちは」

谷口「こ、こんにちは!どうしました!僕たちに…いえ、僕に何かご用ですか!」

国木田「…わかりやすい」

?「いえ…実はお二人の会話が聞こえてしまって…」

谷口「はい?」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 13:00:02.50 ID:LnasaaIbO

?「いえ、何か空間や箱がどうとかって…何かあったんですか?」

谷口「なあに、ちょっと学園祭の出し物の話をしてただけですよ!まるで本物そっくりの…」

国木田「…谷口」

谷口「あ…いや、まあハラハラするただのアトラクションですよ!」

アトラクション…遊園地じゃないんだから…

?「そうなんですか、そんな危ない見せ物があるのですね」

谷口「ええ、そんな危険からお守りするために、是非僕がエスコートを…」

?「では、私はこれで。ありがとうございました」

そう言って彼女はサッサと学校の中へ入ってしまう

国木田「…さっきの人、なんか変じゃなかった?」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 13:10:54.46 ID:LnasaaIbO

谷口「そうかぁ?凛とした感じが素敵だったぜ…」

国木田「…全く相手にされてなかったけどね。もう学園祭も終わりなのに、学校に入っていったし…」

谷口「…」

国木田「あの箱の事気にしてたみたいだし…それに、危ない見せ物って…」

谷口「あれ…俺、爆弾の事話したっけ?」

国木田「ううん、ただ女の子口説いてただけだよ」

谷口「…俺たちも、行くか」

谷口は校舎の中に入っていく

僕も追いかけて学校に入った

多分もうこの扉の外には出られないんだろうと、何となく僕にはわかった

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 13:20:28.47 ID:LnasaaIbO

僕たちは手分けして学校中を探す事にした

さっき会った謎の女性

そして例の黒い箱

国木田「…はぁ、学園祭の日になにやってるんだろう」

考えてみれば、この3日にした事は、爆弾解除とほんの少し学園祭を楽しんだだけ

国木田「まあ…嫌いじゃないけどさ」

何となく、誰もいない学校というのが好きだった

…でも人がいなさすぎる

誰一人、学校に入ったはずのさっきの女性も見当たらない

時計はもう19時を過ぎた辺りだろうか

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 13:31:56.64 ID:LnasaaIbO

ピリリリリ

―その時携帯電話がなった

国木田『もしもし、谷口?』

谷口『見つかったか?』

国木田『ううん、なにも無いよ。学校にも…誰もいない』

谷口『そうだな…こっちも、ちょっと外に出ようかと思ったら、扉が開かなかったんだよ』

国木田『…やっぱりあの箱あるのかもね』

谷口『一回合流しようぜ』

教室で落ち合い、時計を見る

もうすぐ夜の8時だ…

谷口「大体の教室は探したぜ…」

国木田「あれだけ目立つ箱だからね…見落としは無いと思うんだけど」

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 13:45:12.30 ID:LnasaaIbO

谷口「そうだな…以前あったのは俺たちの教室…SOS団の部室…」

国木田「…」

僕は携帯電話を取りだし、ある人物に電話をした

国木田「ああ、もしもし…うん、突然悪いね…」

谷口「?」

国木田『うん…そっか、わかったありがとう』

谷口「…今のは?」

国木田「キョンだよ。今日会ってなかったからね」

谷口「で、何話してたんだ?」

国木田「教室と部室以外で、どこか適当な場所を聞いたんだよ」

谷口「…?」

国木田「直感だよ。もう何となく、ね」

谷口「で…あいつはどこを?」

国木田「それはね…」

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 13:52:16.23 ID:LnasaaIbO

―バタン

谷口「確かに、屋上はまだ探してなかったな」

国木田「うん。あとはもうここくらいしか…」

屋上…目の前に、これ見よがしに黒い箱が置いてある

谷口「あったぞ!」

国木田「…あの女の人はいないみたいだね」

箱を開くと…この3日で見慣れた作りの機械仕掛け

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 14:03:49.95 ID:LnasaaIbO

谷口「…全く同じ作りだな」

国木田「そうだね。じゃあコードを早く…」

谷口「その前に…昨日お前が赤を切った理由はなんなんだ?」

国木田「ん…一昨日と同じ青を切るのが何となく怖くて…ね」

谷口「じゃあ、昨日青を切ってたら爆発してたのか?」

国木田「…さあ?」

谷口「青、赤と来たから…今回は青か?いや、また赤か…」

国木田「…」

昨日までの僕たちなら、迷わずににどちらかを切っていただろう

でも今は…あの女性に会った事で変な不信感が生まれてしまった

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 14:18:27.79 ID:LnasaaIbO

谷口「赤か、青か…」

国木田「また青に戻るんじゃないの?」

谷口「いや、普通の2択と考えて赤も…」

…僕たちは迷っていた

国木田「キョンに好きな色でも聞いておけばよかったかな」

谷口「…好きな色ねぇ…」

タイマーの終わりは刻一刻と迫っている

国木田「…じゃあ、僕たちの好きな色にしようか。それで決めない?」

谷口「…そうだな。お前どっちを切る?」

国木田「そうだね、僕は…」

谷口「俺はな…」

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 14:24:55.48 ID:LnasaaIbO



谷口「…」

国木田「…ホントにそれでいいの?」

谷口「いいんじゃねえの?もう時間も無いしな…」

国木田「そうだね」

タイマーがそろそろ0になってしまう

僕たちは右手に力を入れた

―カチッ

その時

ドン


…と、激しい爆発とともに

僕たちの目の前が真っ白になっていった



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 14:42:19.29 ID:LnasaaIbO

ドーン、という大きな音の後…


目の前の空には

大きな花

夜空に鮮やかな花火が浮かんでいる

赤、青、紫…咲いている

森「…なに、これ?」

古泉「爆発…の正体ですか?」

森「違うわよ…だって本当に…」

古泉「…」

彼女は何かを言おうとしたが、すぐに言葉を飲み込んだ

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 21:31:33.19 ID:LnasaaIbO

遅くなりました。支援ありがとうございます


森「…涼宮ハルヒは…」

古泉「?」

森「自分の能力に気付き始めていたのよ」

古泉「!それは…いつから?」

森「この学園祭の数週間前ね…それを知って今回の事を考えたのよ」

古泉「それなら…何か世界に影響が…」

森「彼女はそんな大きな事を望まなかったわ、日々の幸せ…これだけよ」

古泉「…閉鎖空間が発生しなかった理由は彼女が幸せだったから?」

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 21:34:47.58 ID:LnasaaIbO

森「幸せでストレスが無かったのか…彼女が能力を意識した事によって空間が発生しにくくなったのか…」

古泉「後者はあり得る話なんですか?」

森「可能性は充分あるわ。意識と関係があるのかもって…正解はわからないけど、空間が発生してないのは事実よ」

古泉「閉鎖空間の存在自体が…無かったと?」

森「…そうかもね。でももういいわ。何だか疲れちゃった」

古泉「…」

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 21:42:59.50 ID:LnasaaIbO

黙って古泉は部室から出ていこうとする

その背中から、少し小さな声が響いてくる

森「…待ちなさい。私に協力しない?そうすれば機関も…」

言葉を遮るように…

古泉「僕は森さんのためには何もできませんよ。僕はあの2人の笑顔が好きなのです。それに…」

森「…?」

古泉「こんな景色の前で口げんかなど…不粋というものでしょう?」

森「…」

彼女はその場に座り込んで、花火を見つめていた

自分は彼らの待つ…炎の場所へ向かった

窓の外では綺麗な花火が空を彩っている

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 21:47:29.63 ID:LnasaaIbO

歩いている途中…窓から炎の場所が見える

遠くからだが、なんとなく見える2人の男女…手を繋ぎながら空を見上げている

自分に脅迫など似合わない…2人が笑ってくれるなら

そう考えると、彼もいつもの笑顔になっていた

また明日から、いつもの世界が始まるのだ

いや、少し何かが違う世界かもしれない

でも遠くに見える炎と、花火の優しさに比べればどうでもいい事だった…

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 21:52:33.91 ID:LnasaaIbO

―地面では炎が揺らめき、空では花が咲いている

ハルヒ「花火…綺麗…!」

キョン「こんなことまでやるのか今年は。古泉、これを…」

ハルヒ「…」

キョン「…」

しばらくは花火に見いってしまった

空を染める何重もの光

彼女にはその光がとても優しく感じて…

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 21:59:30.62 ID:LnasaaIbO

炎…まだ心臓が早い、でも聞かなくちゃ…

ハルヒ「さっきの言葉…聞こえなかった?」

キョン「…いや、聞こえた」

ハルヒ「…返事」

キョン「そうだな…」

彼は私の手を取り、グッと引き寄せる

ハルヒ「あっ…」

キョン「俺は口下手だからな。これが返事だ」

ハルヒ「ずるいわよ…私はちゃんと言ったのに」

キョン「…わかったよ。じゃあ…ハルヒ、俺も…」

キョン「ハルヒの事が…」

―ドーン

その時また、大きな花火があがった

2人の言葉は聞こえない

ただ手を繋ぎあって…いつまでも空に咲いた光り見つめていた

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 22:03:59.47 ID:LnasaaIbO

ドーン

ドーン

屋上に寝転がる僕たちの上には

鮮やかすぎる程の火の祭り

国木田「…花火だ」

谷口「だな…」

箱の中の時計は止まっている

谷口「…もう20時か…」

国木田「ね…」


中には赤と青…その両方のコードが切られている

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 22:10:38.53 ID:LnasaaIbO

国木田「両方切ってよかったのかな?」
谷口「さあ…失敗した時の事なんて考えたくないね」

国木田「そだね…」

谷口「な…」

国木田「この3日間、僕たちって爆弾解除しかしてないよね」

谷口「…本当に爆弾だったらな」

国木田「学校を走り回って、谷口とここまで来てさ…結構楽しかったよ」

谷口「ああ…俺も、悪い気はしなかったぜ」

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 22:19:47.77 ID:LnasaaIbO

国木田「ちょっと変わった学園祭だったね」

谷口「だな…もしかしたら、運命の学園祭ってやつかもな」

国木田「運命の学園祭?」

谷口「明日から、俺たちの生き方…いや俺たちだけじゃない。誰か他の…」

国木田「…」

谷口「この学園祭に参加した、誰かの運命が変わったりとか、な」

国木田「なにそれ…でも、今は何があっても驚かないや」

笑う僕たちの空には、花火が舞っている
本当に綺麗な花火だ

国木田「これもイベントの一つかな?」

谷口「多分な…グランドでも何か夜のイベントをやってるみたいだぜ」

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 22:23:01.42 ID:LnasaaIbO

国木田「そうなんだ…花火なんて、学校にしては頑張ってるよね」

谷口「来年こそは…女の子と…」

国木田「…明日から、運命が変わるといいね」

そこからどう帰ったかは覚えていない

でも帰る前に、あの黒い箱はもう無くなっていた



…後日、興味本意で調べた事だが

本物の時限爆弾は赤と青のコードを切る…などと簡単な作りでは無い言う

コードやらアースやら…とにかく複雑なものらしい

あれは本当に爆弾だったのか

誰が用意したのか

日常に慣れすぎてしまっていた僕にはわからなかった

でもこの手で、この足で…夜の学校を走り回った事を

見上げた花火のことを、僕は忘れない


157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 22:26:31.64 ID:LnasaaIbO

20時

?場所

ドーン

頭上には花火があがっている

長門「…」

朝倉「こんなところで、なにやってるのよ?」

長門「…」

朝倉「なんでこんな事を、わざわざするのよ?」

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[age] 投稿日:2010/04/07(水) 22:33:21.08 ID:LnasaaIbO

長門「…」

朝倉「人の視覚、聴覚に直接花火の情報を流すなんて…」

長門「…見たくなったから」

朝倉「花火を?」

長門「―コク」

朝倉「そう…」



長門「花火…」

朝倉「ん…」

長門「遠く、儚く、愛おしいもの…」

朝倉「…」

長門「光を見せなければいけないような気がしたから…」

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 22:42:27.61 ID:LnasaaIbO

朝倉「誰に、何のために?」

長門「わからない…」

朝倉「わからないのに、ここで花火をあげてるの?」

長門「ここだけではない、この花火は…今日本全国にあがっている事になっている」

朝倉「?」

長門「なぜだか…そうしなければいけないような気がした」
朝倉「抽象的ね」

長門「…私にもわからない」

朝倉「でも、そういうのも嫌いじゃないわよ…」

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 22:52:16.18 ID:LnasaaIbO

長門「…」

朝倉「今は、この花火をゆっくり見上げていましょう」



花火はずっとあがっていた

夜の闇を照らしながら

誰もがお祭りの後を名残惜しむよう、その花火を見ていた

失意のまま…

窓から見える炎と友を見つめながら…

大切な人と手を繋ぎながら…

友情を噛み締めながら…

遠くから光をあげながら…


いつまでも空に輝く

同じ花火を私たちは見ていた



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/07(水) 23:01:17.47 ID:LnasaaIbO

これで終了となります

読んで下さった方、支援してくださった方本当にありがとうございました

今回は反省点ばかりですが、お付き合い頂き本当に感謝です



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