1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:16:30.04 ID:26YbxV2/O
ハルヒ「あたしってツンデレというよりデレデレよね」
キョン「いいから服を着ろ!」
ハルヒ「何よ。本当は見たい癖に。こっち向きなさい」
キョン「妹が来たらどう説明すんだ!頼むから服を着てくれ!」
ハルヒ「ちぇっ…着たわよ」
キョン「嘘をつけ!」
ハルヒ「何でわかったのよ。あ、さてはこっそり見たわね!キョンのえっちぃ!」
キョン「…………トイレ行って来るからその間に着てろよ…」ガチャバタン
キョン「(どうしてこうなった…デレ過ぎだろ…)」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:19:44.79 ID:26YbxV2/O
キョン「はぁすっきりした。お、ちゃんと服を着てくれたか」
ハルヒ「………」ギロ
キョン「………」ビクッ
ハルヒ「何よこれ」
キョン「(ゲッ!谷口から借りたエロ本!)」
キョン「いやこれはだな」
ハルヒ「言い訳すんな!」
キョン「(まだ何も言ってないぞ…)」
ハルヒ「あたしというものがありながら、こんな本を…許せないわ!」
キョン「(さっきまでデレてたのにマジギレかよ…)」
ハルヒ「こんな…こんな本を…」ペラリ
ハルヒ「…わ…すごい…こんなに大きい…の…?」カァァ
キョン「………」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:23:13.74 ID:26YbxV2/O
ハルヒ「……///」ペラリ
キョン「………」
ハルヒ「こ、こんな体勢で…」ドキドキ
キョン「あの…ハルヒさん」
ハルヒ「!」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:29:00.31 ID:26YbxV2/O
ハルヒ「と、とにかく絶対に許さない!絶対によ!」
キョン「………」
ハルヒ「何が許せないって…」ペラリ
キョン「………」
ハルヒ「この女の胸があたしよりデカイってことよ!絶対にその内垂れるんだからこんな胸!ふざけんじゃないわよ!」
キョン「(何かずれてきたな…)」
ハルヒ「あたしの方が張りがあって形も良くて…」ブツブツ
キョン「やれやれ…」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:35:03.75 ID:26YbxV2/O
キョン「で、どうしたら許してくれるんだ…?」
ハルヒ「許さないわ!」
キョン「おいおい…」
ハルヒ「でもあたしは悪魔じゃないからチャンスを一度だけあげる」
キョン「チャンス?なんだそれは」
ハルヒ「3日以内にあたしを犯しなさい」
キョン「な!」
ハルヒ「あたしを傷つけたんだから当然でしょ!」ギロリ
ハルヒ「いい?キョン。もし3日過ぎたら…」
キョン「杉田ら…?」
ハルヒ「離婚だから!!ふんだ!」ガチャバタン
キョン「………」
キョン「俺結婚してたっけ…」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:39:52.37 ID:26YbxV2/O
キョン「というわけなんだ…どうすりゃいい?」
古泉「はは、せっかく悩みを聞いてあげようと思ったのに、のろけ話をされるとはね。あなたには是非死んでいただきたい」ニコ
キョン「お前…最近ひどいよな…」
古泉「あなたのおかげです。凉宮さんはあなたと交際し始めてからは能力を失ったかのように精神が安定しています」
キョン「それとお前が俺に対して暴言を吐くのがどう関係しているんだ」
古泉「嫉妬ですよ」
キョン「え?」
古泉「冗談です」
キョン「はぁ」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:41:34.15 ID:26YbxV2/O
古泉「何にせよ頑張って下さい。いくら凉宮さんの精神が安定しているとはいっても、あなた絡みだと何が起こるか分かりませんからね」
キョン「頑張ってと言われてもねぇ…」
長門「頑張って」
キョン「長門…(いつの間に)」
みくる「キョン君…」
キョン「!(朝比奈さんまで!)」
みくる「この先きっと辛い…本当に辛いことがあると思います…でも凉宮さんと一緒に乗り越えて…グスッ、ヒック…頑張ってぐだざい゛」
キョン「あ、ありがとうございます頑張ります(未来人にそんなこと言われたら笑えないんですが…)」
ハルヒ「お待たせー!!」バァン
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:42:53.86 ID:26YbxV2/O
〜放課後〜
ハルヒ「じゃあ今日は終わり!行くわよキョン!」
キョン「お、おう」
古泉「ではごゆっくり」
朝比奈「キョン君ファイト!」
長門「ゴム」
キョン「!?」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:44:30.53 ID:26YbxV2/O
ハルヒ「そうだ。今日あたしん家に来ない?」
キョン「(む…これは誘われてるのだろうか…)」
キョン「誰か家にいるのか?」
ハルヒ「そりゃ誰かいるわよ」
キョン「(ホッとしたような残念なような…)」
ハルヒ「こっちよ」
キョン「(そういや俺ハルヒの家行ったことないな。ちょっと楽しみだな)」
キョン「(何か怪しい所に来たぞ…こんな所に住んでるのか…)」
ハルヒ「ここがあたしの家よ!」
キョン「へぇ…ずいぶんデカイな…ってラブホじゃねぇか!!!!」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:50:41.44 ID:26YbxV2/O
ハルヒ「何言ってんのよ。ここがあたしの家よ。ただいま〜」
キョン「え、ガチでそうなの?」
受付「おかえり…えっ?」
キョン「明らかに違うよね!?受付の人思わずおかえりって言っちゃったけど明らかに戸惑ってるよね!?」
ハルヒ「さぁ行くわよキョン!」
キョン「ちょっと待…引きずるなぁぁぁぁぁぁ」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:53:30.08 ID:26YbxV2/O
ハルヒ「このベッド中々座り心地が良いわね。あんたも座りなさいよ」
キョン「(とうとうここまで来てしまった…)」
ハルヒ「ねぇ、付き合い始めた日覚えてる?」
キョン「え?」
ハルヒ「あたしは覚えてるよ。そして一生忘れないと思う。あんたったらいきなりあたしのこと抱き締めて…」
次の瞬間ハルヒをベッドに押し倒していた。
「ちょ、キョン、まだシャワー浴びてなi…んっ」
俺は夢中になってハルヒの唇に俺のを重ね合わせていた。
あの日のことを思い出さないように。
あの日の、悪夢を。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 19:56:38.72 ID:26YbxV2/O
「死んで下さい。ハルヒさん」
何だ…この状況は…
何で古泉がハルヒに銃を向けてるんだ…
「ふざけんな!どういうことか説明しろ古泉!」
「世界が終わろうとしているのですよ。もう9割が閉鎖空間に覆われています。あと30分…ってとこですか」
な…に…?
「あなたとの愛娘を亡くされたことがよっぽどショックだったのでしょう…ハルヒさんは絶望し世界を作り替えると決めたようです」
で、でもおかしいだろ!
それでどうしてハルヒを殺すって結論に達したんだ!
ハルヒが死んだら世界が終わるとか言ってなかったか?!
ハルヒを殺したら結局世界は滅びちまうだろ!
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:01:27.56 ID:26YbxV2/O
「それはあくまでも仮説です。ハルヒさんを殺してもそのまま世界が存在し続ける可能性はゼロではありません。しかしこのままでは間違いなく世界は終わります。ならいっそのこと…というわけです」
古泉は無表情で語り続ける。
「分かって下さい。世界のためです」
「分からねぇよ!お前は世界のためなら仲間を平気で殺せるような奴だったのかよ!」
「平気なわけないでしょう!!!!」
古泉がこれまでの固い表情を一気に崩した。
そうか…こいつも苦しいんだ…
もしかしたら上からの命令かもしれない…
本当はこんなことしたくないんだ…
だったら…
「だったら話し合おう!まだ間に合う!誰もが笑って、誰もが望む最高のハッピーエンドってやつを探そう!」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:06:55.65 ID:26YbxV2/O
「無理ですよ」
何故だ!
「ハルヒさんがそんな状態なのにどう話し合おうと?」
俺は横にいるハルヒを見た。
ハルヒはまるで魂が抜けてしまったかのような無表情で銃口を向けている古泉をただただ見ていた。
俺達の目の前で娘が事故で死んでからずっとこうだ。
精神が完全に崩壊してしまったのだ。
「あなたとハルヒさんが結婚された時はこれからずっと平穏な世界が続いていくと思っていましたが…残念です」
そう言いながら古泉は今度は俺に銃口を向けた。
「そういうわけで部屋から出ていってもらえませんか?」
「嫌だ。例え人類を犠牲にしても俺はハルヒを失いたくない。そしてお前を殺人犯にしたくない」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:14:38.13 ID:26YbxV2/O
「やはり認めてくれませんか…では、お願いします」
いきなり機関と思われる二人が部屋に入ってきて俺の腕を掴む。
「離せ!くっ、ハルヒ!」
抵抗もむなしく、俺は部屋から引きずり出されていく。
離せよ!俺はハルヒに話さなきゃならないことがたくさんあるんだ!
「ハルヒ!13年前の七夕覚えてるか?!あれ、俺だったんだ!ジョン・スミスは俺だったんだハルヒ!」
ハルヒがみるみる離れていく。
そして、古泉の指が引き金にかかる。
「やめろ!古泉!やめてくれ!ハルヒ!目を覚ませ!ハル…」
室内に銃声が響いた。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:20:57.15 ID:26YbxV2/O
「ハルヒ!!」
ん…
ここは…部室…?
夢…だったのか?
「なによ!いきなり人の名前叫んじゃって、びっくりするじゃないの!」
振り返ると眉を吊り上げた、いつも見慣れた顔がそこにあった。
そして気が付けばハルヒを抱き締めてい…
おっとこれは余計だな。
ったく…結局あの日の悪夢を思い出しちまった…
頭を抱えながら悶々としていると、産まれたままの姿で俺の横で寝ているお姫さまが、
「ん…キョン…」
俺の夢でも見てるのか?
思わず口元が緩む。
こいつの寝顔を眺めているとさっきまでの不安が嘘のように吹き飛んだ。
こんな幸せがずっと続けばいい、そんなことを想いながら俺は目蓋を閉じる。
だが、命には必ず終わりがあるのと同様、永遠の幸せなど存在しないことを俺は思い知らされることとなる。
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:23:08.33 ID:26YbxV2/O
「ハルヒが死んだ?」
遅刻寸前で慌てて教室に入るととんでもない話が耳に入ってきた。
「おい谷口!笑えない冗談はやめろ!」
そのとんでもない話をしてきた張本人に詰め寄る。
すると谷口は泣きながら、
「冗談じゃねぇよ…俺の目の前で凉宮は小学生をかばってトラックに…すまねぇ…!助けられなくて…本当に…」
そこから先のことはあまり覚えていない。
葬式を終え、いつのまにか家で寝ていた。
不思議と涙は出なかった。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:25:27.89 ID:26YbxV2/O
家に引きこもって3日目に初めて泣いた。
やっと現実を受け入れた…
いや受け入れてしまったのだ。
「ハルヒ…うぅ…どうして死んじまったんだ…」
目から止めどなく涙が溢れ出てきた。
涙が渇れるくらい泣くとはまさにこのことなのであろう。
メシも一切食わず、既に時計の針は7時をまわっている。
「ハルヒ…俺を置いていくなよ…」
「ずっと傍にいてくれるって言ったじゃないか…」
「それは言ってないわよ」
そうだったな…
それは言ってな…
顔を上げると凉宮ハルヒがいた。
いや、正確に言うと凉宮ハルヒが──浮いていた──。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
俺は絶叫した。
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:37:45.69 ID:26YbxV2/O
「キョン君!?」
俺の絶叫を聞き妹が階段を駆け上ってきた。
そして哀れみの表情を浮かべ、
「キョン君…ハルにゃんのことは本当に残念だったと思う…私だって悲しいよ…でもいつまでもそんなんじゃ天国のハルにゃんも悲しむよ…」
そのハルにゃんは現在進行型でニヤニヤしてるのだが…
「夕飯食べに来てね」
そう言って妹は下りていった。
「あんな大声出して、あんたって本当に面白いわね」
ハルヒはふわふわと浮かびながらケラケラ笑う。
「どういうことだ…お前は…その…幽霊なのか」
「どうやらそうみたいね。トラックにはねられたと思ったらプカプカ浮いてるんだもの」
まさか化けて出てくるとは思わなかった…
俺は忘れていたのだ。
こいつには神様のようなトンデモパワーがあるということを。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:48:11.93 ID:26YbxV2/O
翌日、俺はSOS団のメンバーにハルヒのことを説明した。
「つまり凉宮さんは見えないけどそこにいるんですか?」
そうだ。
「キョン君…良かったですぅ…目に生気がなかったし学校にも来ないから…」
ご心配かけました朝比奈さん。
「……………」
長門は何か疑問を持っているような顔をしていたが、幽霊ハルヒの声が俺の思考を中断させた。
「とにかく、みんな!これからも頑張っていきましょう!」
俺の非日常は終わってなかった。
やれやれ…
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 20:50:20.84 ID:26YbxV2/O
ここで幽霊ハルヒとの一日を紹介したいと思う。
朝。
「う…」
「キョン朝よ起きなさい」
「ぐ……はぁ…はぁ…ハルヒ…金縛りで起こすのはやめてくれないか…」
「早く起きないあんたが悪いんでしょ。ほらさっさと着替える」
ハルヒは毎朝金縛りで俺を起こす。
これなら妹のプレスのがマシだな…
そんなことを考えながら制服に着替えトイレに向かい、用を足していると、
「キョン。朝立ちしてるからちゃんと押さえないと噴水みたいに飛び散っちゃうわよ」
おっと危ない。
すまんな…って
「なんでお前がいるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「何よせっかく注意してあげたのに」
「いいから出てけ!!」
もうやだこんな刺激的な朝…
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 21:09:43.92 ID:26YbxV2/O
冷たい視線を送る家族を尻目にちゃっちゃっと朝食を済まし逃げるように家を出る。
ハルヒが死んだせいで頭がおかしくなったと思われてるのだろうが、仕方ない。
朝のトイレで「出てけぇ!!」とか叫ぶんだもんな。
どうみてもキチガイです。
「はぁ」
ため息をつきながら自転車に股がると…
「ハルヒ。お前は飛べるんだからわざわざ俺の後ろに乗る必要がないだろ」
「意外と飛ぶの疲れるのよ。気分的に」
そうかい、と流し自転車をこぎ始める。
正直今のこいつは何をするか分からないから乗せたくなかったのだが…
そう思った矢先、急に目の前が真っ暗になった。
「だ〜れだ♪」
「馬鹿!手を離せ!前が見えない!」
次の瞬間何かにぶつかり俺は自転車から転げ落ちる。
「痛ぇ…!」
と言ったのは俺ではなく、金髪、腰パン、鼻ピアスの…つまりDQNだった。
えれぇのにぶつかっちまった…
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 22:08:23.14 ID:26YbxV2/O
これはヤバいと思い、謝罪マシンガンを撃とうとしたところに先制攻撃を受ける。
「てめえどこ見てチャリこいでんだ!殺されてぇのか?!ホァァン!?〇☆△#%£」
途中から何を言ってるのか分からなかったが相当怒ってるようだ。
まぁ当然だな。
俺だって見ず知らずの他人にチャリで突進されたら怒るだろう。
どう考えても俺が悪かったのでひたすら謝っていると、DQNは気が済んだのか渋々去っていった。
やれやれ…
すると事故の原因の張本人が
「情けないわねぇ…ペコペコと平謝りなんて」
「お前のせいだろうが!!!!」
もう少し声を抑えれば良かったと思ってももう遅い。
「んだとゴルァ!!!!」
自分に言われたと勘違いしたDQNが追いかけてきた。
さっきも言ったがもう一回言わせてくれ…
もうやだこんな刺激的な朝…
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 22:13:42.72 ID:26YbxV2/O
チャリでDQNを振り切り学校に着いた頃にはもう疲れ果てていた。
そんなわけで授業中に休憩を取るのは仕方ないだろう。
腕を枕にしてさぁ寝ようという時に何やら背中に大きく柔らかいマシュマロが二つ…
(ってなにやってんだ!)
授業中なので小声で背後霊に訴える。
「あててんのよ」
一度は言われて見たかった言葉がこんなにも腹立たしいのは何故だろう。
このままだと授業中に俺のジョン・スミスが覚醒してしまう。
(いいからどけ!さもないと)
「さもないと?」
背後霊はニヤニヤしていた。
ちくしょう…
こいつわかってやってやがる…
まずいぞ…
完全にジョンが覚醒しちまった…
もしこんな状態で教師に当てられたら…
「よ〜し、じゃこの問題をキョン。前に出て解いてくれ」
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 22:19:16.36 ID:26YbxV2/O
ポケットに手を入れて押さえるという好プレーで難を逃れた俺は谷口と国木田と一緒に弁当をつついていた。
「ようキョン。お前数学で指されて前に出た時何でポケットに手を突っ込んでたんだ?」
谷口が古泉とはまた違った、いやらしいニヤケ面をして話しかけてきた。
なんのことだ、と惚けておこう。
すると
「俺もあれには困るんだよな〜。もう夏だしさ、薄着じゃん?あれはねぇよな〜。無理だろ」
く…こいつ…
何でバレたかは今のセリフでよく分かった。
こいつにとっては日常なのだ。
「何の話?」
ポカンとしている国木田を見ると、あぁ俺は谷口と同類になっちまったんだなぁと悲しくなってきた。
「でもま、元気になってくれて良かったぜ」
ハルヒが死んでから(本当は目の前にいるんだが)、こいつらは急に優しくなった。
きっと俺のことを気遣ってくれてるのだろう。
いい友人を持てて良かったと心から思う。
そういや妙にハルヒが静かなのが気になるな…
何か企んでいるのだろうか。
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 22:28:02.26 ID:26YbxV2/O
放課後になるといつも通り部室に向かう。
読書をしている長門。
一応5人分のお茶を入れる朝比奈さん。
相変わらずボードゲームが弱い古泉。
ネットサーフィンをするハルヒ。
ハルヒが見える俺にとっては以前と変わらぬ日常だ。
しっかしまぁ…幽霊でもネットって出来んだな…
一体何を見てんだ?
気になって覗いてみると
「幽霊だけど質問ある?なんだこれ」
するとハルヒは楽しそうに、
「ふふふ…まさか本当に幽霊がスレ立てしてるとは思ってもみないでしょうね…」
「涼宮さんは何をなされてるのですか?」
興味を持ったのか、古泉が聞いてきた。
「………」
ハルヒが答えないので俺が教えてやる。
「幽霊としてネットユーザーとコミュニケーションをとっているらしい。しかも男の振りをして」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 22:39:11.33 ID:26YbxV2/O
はは、面白いことしますね、と古泉が微笑む。
「涼宮さん…あの…一応お茶入れたんですが…」
「………」
ネットに夢中になっているのかハルヒは気付いてないようだ。
「ハルヒ、朝比奈さんがお茶を入れてくれたぞ」
「え、あ、ありがとうみくるちゃん。飲めないから香りだけ楽しませてもらうわ」
皆ハルヒの姿が見えず、声も聞こえないので俺が通訳みたいな感じで伝えることになっている。
「ありがとうって言ってますよ」
「良かったぁ…」
安堵する朝比奈さん。
後は本当にいつも通りの団活だから割愛させていただこう。
とまぁこんな感じで慌ただしくも平穏な毎日を送ってる。
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 22:51:43.45 ID:26YbxV2/O
あれから一ヶ月程経ち、幽霊ハルヒとの共同生活にも慣れてきた。
珍しくハルヒがいない部室で俺は朝比奈さんのお茶を飲みながら古泉と将棋を指していた。
俺が王手飛車取りをかけたところで勝負を諦めたのか古泉が話しかけてきた。
「今日は涼宮さんおられないのですか?」
「あぁ。今日は部室に来ないらしい。東京まで散歩してくるそうだ」
変なことしてなきゃいいが…
「鬼の居ぬ間に洗濯、ではありませんが一応涼宮さんがいない間にあなたに言わなければならないことがあります」
急に古泉の顔が真面目になる。
お前のその真面目な顔を見ると嫌な予感しかしないな…
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:06:29.22 ID:26YbxV2/O
「単刀直入に言います。涼宮ハルヒはこの世に存在していないんです」
今さらだな。
そんなのわかっている。
「そういう意味ではありません。文字通り存在しないってことです」
はぁ?
何を言ってるのかさっぱり分からないぞ古泉。
すると今まで黙っていた長門が口を開いた。
「あなたが涼宮ハルヒの説明をした時のことを覚えてる?」
あぁ覚えている。
いきなり目の前に幽霊ハルヒが現れた次の日のことだろ?
「私はあの時あなたがいかにも涼宮ハルヒが目の前に存在しているかのような説明をしていることに疑問を感じた」
そういえば長門はそんな表情をしていたな…
「あの時室内に霊体エネルギーを感じなかったから」
え…?
古泉が追い討ちをかける。
「つまりあなたが見ていた涼宮さんは幻なのですよ」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:11:54.16 ID:26YbxV2/O
そんなわけあるか!
ハルヒは確かに俺の目の前に!
インターネットだってしていたんだぞ!
「冷静に考えて下さい。幽霊がパソコンを使えると思いますか?」
「実際にやっていたんだから仕方ないだろ!履歴だってちゃんと」
無…い…
昨日の記録さえも…
「あなたは幻を見ていたんですよ。涼宮ハルヒとそれに関わるもの全て…幻だったんです」
そんなはずはない!
履歴は誰かが消したんだ!
「ではもう一つ…涼宮さんは僕達の問いかけに答えてくれましたか?」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:28:16.37 ID:26YbxV2/O
「…!」
そういえばあいつ…
朝比奈さんのお茶に気付かなかったり、古泉の質問を無視していたような…
「僕の仮説が正しければ涼宮さんはあなた以外の人間に反応していないはずです」
谷口や国木田との会話にも一切口を挟んで来なかった…
「何故ならあなたの見ているのは涼宮さんが死ぬ間際に生み出したあなただけの涼宮ハルヒだからです。恐らく涼宮さんはあなたに忘れられたくないと願ったのでしょう…」
俺だけの…
だから他の人間にはハルヒは見えないのか…?
そしてハルヒも俺以外の人間が見えないってのか…?
「ですから…見える見えないではなく…」
そ も そ も 涼 宮 さ ん は こ の 世 に は も う 存 在 し て い な い の で す 。
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:31:56.81 ID:26YbxV2/O
衝撃の事実を突きつけられた俺は無心で街をさ迷っていた。
もう辺りは真っ暗だ。
「懐かしいな…」
たいして昔ではないのだが、あれから随分と経った気がする。
俺は気が付けば東中に来ていた。
ここで中学生ハルヒと校庭に落書きしたんだっけ…
すると校庭に見慣れたシルエットがあった。
「ハルヒ!」
「!」
「何してんだこんなところで」
俺も人のことを言えたもんじゃないが。
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:35:53.83 ID:26YbxV2/O
「な、なんだ…あんたか…」
おどおどした様子でハルヒが言う。
「こんな時間にこんな場所で何してんのよ」
質問を質問で返すなよ…
「俺は…そうだな…星を眺めながら散歩してたらいつの間にかこんなところまで来てたんだよ」
嘘ではない。
半分本当だ。
「星、ねぇ…あんたはそんなロマンチストだとは思わないけど?」
「ほっとけ」
あはは、とハルヒが実にいい笑顔で笑う。
そういえば俺はこれにやられたんだっけ。
ここでさっきの古泉の言葉が頭を過る。
幻。
この俺の大好きな笑顔も幻だっていうのか。
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:42:30.07 ID:26YbxV2/O
「でも丁度良かったわ。あんたがここに来てくれて」
俺が色々考えているとハルヒが喋り出した。
「どういうことだ?」
「あたし…そろそろいこうと思うの。約一ヶ月、あんたといれて楽しかったわ」
成仏するってことか?
でもお前は…
「なんで急に…」
「急じゃないわ。一ヶ月前からずっとこの日にいこうって決めていたの」
そうか…
今日は
七夕──。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:46:41.89 ID:26YbxV2/O
「というわけでキョン!あたしにベタ惚れしてるあんたは悲しいでしょうが、これでお別れよ!」
相変わらず笑顔で話し続けるハルヒ。
もう二度と会えないと思うと…
いかん、視界がボヤけて…
俺はハルヒに抱き締められていた。
「バカね…そんな顔すんじゃないわよ…安心しなさい。とりあえず次の御盆にでも帰って来てやるわよ」
俺は幻のはずのハルヒからぬくもりを感じた。
そして確信した。
こいつは幻なんかじゃない。
こいつは涼宮ハルヒ本人だ。
確かめたい。
「ハルヒ」
「なに?」
「俺、ジョン・スミスなんだ。あの日お前と一緒に校庭に落書きしたのは俺なんだよハルヒ」
次の瞬間、ハルヒが消失した。
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/30(火) 23:51:35.12 ID:26YbxV2/O
「ハルヒ…?」
いやハルヒが消えただけではなかった。
灰色の空…
「閉鎖空間…だと…?」
何がどうなったんだ。
やはりあのハルヒは幻ではなかったというのか?
いずれにせよ前回の経験からするとこの展開はまずいはずだ。
世界が終わるかもしれない。
とりあえず俺は北高へ急いだ。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 00:09:55.14 ID:qsuReJ4NO
心臓破りの坂を登りやっとのことで北高に着いたが今のところ神人は見当たらなかった。ハルヒも。
前回と同じように部室に向かうとさっそく不格好な古泉がどこからともなく現れた。
「どうも。待ってましたよ」
「これはどういうことだ。一体何が起こってるんだ」
「手っ取り早く言うと、前回と同じ事が起こっています」
世界滅亡ってことか…
「でもお前、ハルヒは幻だって言ったじゃないか。それとも他の原因があるのか?」
「いえ、十中八九涼宮さんが原因でしょう。時に、幻の涼宮さんと何かありませんでしたか?」
…俺の正体を明かした……
「なるほど。これで僕の新たな仮説は確信へと変わりましたよ」
幻の凉宮ハルヒは生前と同じく神の能力を持っている。
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 00:37:12.99 ID:qsuReJ4NO
幻のハルヒが神の能力を持っている…だと…?
「おかしいと思ってたんです。機関は涼宮ハルヒが死ねば世界は終わると考えてましたから。でもこれで納得です。神は死んでなかった。あなたの中で生き続けていたのですよ」
俺は…どうしたらいい?
「涼宮さんを見つけて説得して下さい。前回戻ってこれたあなたなら必ず出来ます」
ということはやはりここにハルヒはいるのか?
「はい。急いで下さい。もう時間がくぁwせdrftgyふじこlp;」
「古泉!」
消えちまった…
早くハルヒを探さないと。
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:13:39.58 ID:qsuReJ4NO
部室にいないのならグランドだ。
直感でそう思った。
すると案の定ハルヒはグランドの真ん中にポツンと立っていた。
ちょうどあの辺りは前回俺が…
「ハルヒ!」
「キョン…」
神人が出る前にけりを付けないと。
と意気込んでいるとハルヒから話しかけてきた。
「あんたがジョン・スミスだとは思わなかったわ。似たような雰囲気は感じてたけど…ということはずっと前に言ってたみくるちゃんが未来人ってのも本当ね?みくるちゃんの力で中学生のあたしに会いに来たんでしょ?」
しまった…
全部バレてる…
俺がバラしたんだが…
「あと有希が宇宙人ってのも古泉君が超能力者ってのも本当ね?」
灰色の空が青白く光出した。
奴だ…とうとう神人が出た。
急がないと…俺はハルヒの肩をつかんで
「ハルヒ!元の世界に帰ろう!?」
ハルヒは無言で俺を見つめている。
ハルヒ…何でそんな悲しそうな顔をするんだよ…
俺は耐えられなくなりハルヒにキスをした。
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:41:08.62 ID:qsuReJ4NO
前回はこの後ベッドの上にいたが、俺の耳には神人の破壊活動のけたたましい轟音が響き渡る。
戻れていない。
俺は唇を離した。
「元の世界に帰るなんてあたしは無理だよ…だってあたしは元の世界では…」
『死んでるんだよ?』
ハルヒは泣きそうな顔をしながら喋り続ける。
「宇宙人…未来人…超能力者…みんなあたしの近くにいたのに…不思議がすぐそこにあったのに…あたしだけ死ぬなんて…」
俺はどう声をかけていいか分からなかった。
「それだけじゃない…やっぱりあたし、あんたと離れたくないよ…もっとあんたに愛されたいよ…」
まいった。
さっきのキスは逆効果だったようだ。
俺はこんな顔をしているハルヒに元の世界に帰って死んでくれなんて言えない。
古泉、すまん。
俺は──世界を救うことを失敗した──。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:53:00.48 ID:qsuReJ4NO
俺は今ハルヒと学校の屋上に来ている。
グランドにいた神人は多重影分身でもしたのだろうか、もう数え切れない程の数になって遠くの街までも破壊している。
大した奴だ…
「まさにこの世の終わりって感じね」
まぁな。
「でも何でかしら…とても神秘的…」
神人は遠くで次々ビルをなぎ倒していた。
それを狩る赤い玉はもちろん存在しない。
だがこうしている内にも閉鎖空間は拡大し続け、もうじき世界を覆いつくすだろう。
そうなれば古泉が以前言った通り世界崩壊だ。
こうもあっさり世界が終わるなんてね。
未だに実感が沸かない。
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:54:02.94 ID:qsuReJ4NO
「わぁ…綺麗…」
ハルヒがポソッと呟く。
地平線の彼方が明るくなってきた。
日の出だ。
あの太陽が登った瞬間、全てが終わる。
なんとなくそんな気がした。
「今まで…色々あったわね…」
あぁ。
野球したり、孤島に行ったり、映画撮ったり。
ハルヒには言えないが夏休みがループしたり。
世界が改変されたり。
本当に色々あった。
でも、もうこれで最後だ。
なんか寂しい気もするな。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 01:55:57.85 ID:qsuReJ4NO
「あんたは…これまでの人生楽しかった?」
「平凡だったが中々楽しかったぞ」
「宇宙人、未来人、超能力者と一緒の生活が平凡なわけないでしょ…」
呆れ顔でハルヒが言う。
確かにな。
「で?お前はどうなんだ?」
「あたしも楽しかったわ。特にあんたに出会ってから」
光栄だね。
「あんたに出会えて本当に良かったわ。色あせていた人生に少しずつ色が着いていったんですもの」
「俺だって…お前に会えて良かった」
大変なこともたくさんあったが、今はそう言い切れる。
「大好きよ。キョン」
「俺も」
それから先は言うことが出来なかった。
目の前が朝日で真っ白になった。
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:26:46.24 ID:qsuReJ4NO
ん…朝か…
ちょっと早いがすっきりしているので起きることにする。
「…………」
いやいやいやいや。
おかしいだろ。
世界は間違いなく滅びたはずだ。
なのになんで俺はいつも通りの朝を向かえてるんだ。
昨日のは幻術だったのか?
それとも完全催眠か?
………
まぁいい。
とにかく学校には行かないと。
ただ気になることが一つ。
いやもっとあるんだがここは一つだけ言わせてくれ。
この世界にはハルヒはいるのか?
もし奇跡的に元の世界に帰ってきたのだとしたら、ハルヒは…
急いで学校に行き、まるで合格発表の受験生のように、恐る恐るハルヒの席を確認すると…
花瓶が置いてあった。
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:41:46.14 ID:qsuReJ4NO
どうやら元の世界に戻ってきたらしい。
良かった良かった。
俺のせいで人類が滅亡なんてなったらどうしようかと思ってたからな。
本当に良かった。
そう自分に言い聞かせ机に突っ伏した。
「出席取るぞー」
岡部が教室に入って来たようだが、そんなのどうでもいい。
「キョン。おいキョン。珍しいな寝てるのか」
俺は岡部を華麗にスルーした。
「じゃあ…涼宮」
「はい」
!?
俺は振り向いた。
死んだはずのハルヒがいた。
そして数日間、枕に顔を埋めて足をバタバタさせることとなる黒歴史を作ってしまった。
「出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺はクラスメートの面前で椅子から転げ落ち絶叫したのだ。
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 02:50:43.07 ID:qsuReJ4NO
教室がシ〜ンと静まり返った。
だが俺はそんなのお構い無しにポカンとしているハルヒに当たり前のことを尋ねた。
「ハルヒ…なのか…?」
「そ、そうよ」
「幽霊じゃないのか?」
「はぁ?」
涼宮ハルヒが生きていた。
俺は泣きながらハルヒに抱きついた。
クラスメートの目の前で。
「う…良かった…」
「ちょ、ちょ、なによ!離れなさいばかぁ!」
後から聞いた話だとあの花瓶は岡部が置いたもので、ハルヒの机が一番日当たりが良かったからだそうだ。
紛らわしいことしやがって…
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:02:27.85 ID:qsuReJ4NO
放課後。
ハルヒは掃除当番。
俺はすぐさま部室へ向かった。
もちろん昨日の出来事の真実を知るために。
部室に入ると長門と古泉がいた。
「昨日はありがとうございました。あなたに賭けて良かった」
やはり昨日のは夢でも幻術でも完全催眠でもなかった。
「だが古泉。俺は世界を救った覚えはない。むしろ終わらせてしまったはずなんだが」
「そうですね。あなたは世界を救うのに失敗した…しかし最後にどんでん返しを起こしたのです」
もったいぶらずにさっさと教えろ。
何が起こったんだ。
「つまりです。今我々のいるこの世界は涼宮さんが新たに創造した世界なのですよ」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:19:44.47 ID:qsuReJ4NO
ハルヒが新たに作った世界…?
「昨日世界は崩壊しました。それは確かです。今でもゾッとしますよ…閉鎖空間でもないのに神人が現れた時は」
全然怖そうな素振りを見せずに古泉は自分の前髪をいじる。
「神人は瞬く間に増えていき破壊活動を開始したのです。逃げ惑う人々。灰色の空に光る青白い光。絶望的な光景が広がっていました。しかし気が付けば僕は朝ベッドの上にいたんですよ。ま、一般人にこの記憶は残っていないでしょうが」
はしょり過ぎだろ。
まぁ俺もそんな感じだったが…
「で?ここが新たな世界って証拠は…」
言ってる途中で気付いた。
決定的な証拠があるじゃないか。
「ハルヒか…」
「そうです。涼宮さんが生きていること。彼女は自分を生き返らせるために世界を崩壊させて再構築したんです」
巻き込まれた全人類はたまったもんじゃないがな…
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 03:41:31.45 ID:qsuReJ4NO
それにしても…
「再構築したって割りにはハルヒ以外は以前の世界となんら変わらないな」
「そうですね。僕はそれについてあなたに感謝してるんです。あなたのおかげで涼宮さんは元の世界に愛着を抱いてくれた…だからほぼ同じ世界を構成したんです」
愛着ね…
そういや最後の局面でそれらしきことあいつ言ってたな…
ん?
「ほぼ同じ世界ってことは違うところもあるのか?」
「二点だけね。一つはもちろん涼宮さんが生きていること。そして」
『あなたですよ』
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 04:09:08.26 ID:qsuReJ4NO
「は?」
思わずすっとんきょうな声をあげる。
俺のどこが違うってんだ。
古泉は得意気に語り出した。
「よ〜く考えて下さい。何故僕はここにいるんですか?」
「だからハルヒが再構築したんだろ?」
「その通りです。僕の肉体はあちらで滅び、そしてこっちで再び構成された…記憶もそのままにね。ですが、あなたのその身体はどうやって出来たんですか?」
こいつの意図が全く理解出来ないのは俺が頭悪いからなのだろうか。
「だからお前と同じだろ?」
「違いますよ。もう一度思い出して下さい。僕らが死ぬ時あなたはどこにいましたか?」
閉鎖空間だろ?
「そうです。あなたは肉体が滅びる前に涼宮さんと閉鎖空間という新世界に一足早く来ていたわけです。元の世界の身体のままでね」
何がいいたい。
「つまりあなたの身体はこの新世界で構成されたものではない。そういうのを一般的に言うと」
この先古泉が言おうとしていることはさすがの俺でも予想がついた。
『異世界人』
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 04:28:08.09 ID:qsuReJ4NO
正直あきれたね。
そんな理由で異世界人にされちゃかなわん。
「残念ながら俺はどっからどう見ても普通の人間だ」
「それでも定義上は異世界人です」
納得出来ず、古泉に反論を加えようと口を開いた瞬間、ドゥッギャーンとドアが開いた音とともに台風と天使が現れた。
「遅れてごめーん!」
「涼宮さん…ドア壊れちゃいますよぉ」
部室にまたいつもの5人が集まった。
さっきは散々駄々をこねようとしていたが、俺は異世界人とかどうでもいいんだ。
宇宙人と未来人と超能力者と…
そして神様みたいなお姫様と居られればな。
─完─
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 04:30:57.48 ID:qsuReJ4NO
キリがいいのでとりあえず今日は寝ます。
完、とか書いちゃったけどまだ続くので昼ぐらいまで保守していただけたら嬉しいです。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:23:38.41 ID:qsuReJ4NO
「ふぅ…」
仕事がやっと終わり一息つく。
今日は早上がりだから助かるぜ。
大学を卒業して社会に出て早6年。
結婚もしたし子供も出来たし順調に普通の人生を送っている。
おっと、呑気に人生を振り返っている場合ではない。
何故なら今日は早く帰って、今まで仕事ばかり優先していた罰として家族サービスという名の大出費をしなければならないのだ。
というわけでここはお先に失礼する。
会社仲間に挨拶をしてオフィスを出ると夕日の向こうから2つの影が猛スピードで接近してきた。
嫁のハルヒと娘の…
っておい。
速すぎないか、これは!
ぶつかる!
「ぐぁ!」
二人の突進を受けて俺はぶっ飛んだ。
その上にプレスまでくらう。
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:24:25.31 ID:qsuReJ4NO
「どうやらあたしの勝ちのようね!」
「あたしの方がママより先だもん!ね、キョン君?」
俺に乗っかりながらケンカをおっ始めやがった。
周りの生暖かい視線が痛い…
うわ、上司もニヤニヤしながら見てる…
なんて羞恥プレイだ…
「いいからどけぇ!」
二人を払いのける。
畜生…身体中が痛い…
これほどのパワーが一体どこにあるのか。
ハルヒは俺を引き起こし、さっ行くわよ!とズンズン歩き出した。
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:27:19.63 ID:qsuReJ4NO
「ったく…少しは自重しろよ。怪我でもしたらどうすんだ」
と信号待ちしながら説教をする。
「だってあんたに早く会いたかったんだもん!ね〜」
「ね〜」
これは反則だ…
俺は二人の可愛さにノックアウトされたのであった。
こんな幸せのつかの間、悲劇は突然やってきた。
「それよりキョン、あんた今日の予定覚えてるん」
ハルヒが言い終わる前に信号が青に変わった。
娘が走りだす。
そこに白のワゴンが突っ込んできた。
「おい!戻れ!」
俺の声もむなしく、娘は宙を舞う。
目の前が鮮血で真っ赤に染まった。
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:28:09.20 ID:qsuReJ4NO
「はっ!」
俺は飛び起きた。
寝巻きは汗でびっしょりだ。
息も荒い。
「何だ今のは…」
夢…なのか?
俺はよろつきながらリビングに向かった。
「ったく…せっかくの休日なのにこんな時間まで…ほんと、ダメ人間ねぇ」
「キョン君おはよ〜!」
俺はハルヒの口撃を避け、娘を抱き締めた。
「ふぇっ?」
良かった…夢だった…
ハルヒが変な目で見てるだろうがそんなの関係ない。
俺はしばらくそのままでいた。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:29:07.39 ID:qsuReJ4NO
俺の行動をどう思ったのか、ハルヒと娘はいつもと違い外出をせがまなかった。
これには救われた。
金銭的な面だけでなく、今朝の夢のせいで精神面もピンチだったからな。
俺達は珍しく今日一日、家でゆっくり過ごした。
しかし…あの夢は何だったのだろう…
あんなリアルな夢今まで一度も見たことが…
あった。
高校の時。
娘が死んで古泉がハルヒを殺すというとんでもない内容だ。
そして今日の夢…
明らかに前回の夢の前の出来事だ。
冷や汗が吹き出してきた。
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:30:11.31 ID:qsuReJ4NO
そんなこんなで月曜がやってきた。
月曜。
なんて憂鬱な響きだ。
ハルヒに叩き起こされ朝飯を食いにリビングに行くと、娘が家を出るところだった。
「あ、キョン君。こんな時間まで寝てるなんて、ほんとダメ人間ねぇ〜」
ママの真似をするな。
あといい加減、キョン君ってのやめなさい。
ったく…
ハルヒめ余計なことばかり吹き込みやがって…
「車…特に白いのには気を付けろよ」
「はぁい!いってきまーっす!」
と言って娘は家を飛び出していった。
この元気はハルヒ譲りかね…
「早くしなさーい!冷めちゃうでしょ!」
こっちも相変わらず元気がいいね…
と感心していると魔の手が忍び寄る。
「痛ててて!耳を引っ張るな!」
俺はハルヒに引きずられていったのであった。
しかし…さっきまでの憂鬱な気分がどっかいっちまったな。
何でだろうね。
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:31:21.68 ID:qsuReJ4NO
「じゃあ行ってくる」
ハルヒの朝飯でエネルギーをチャージしたのでさっそく出発する。
「うん。あっ!そうだ!」
何か閃いたらしい。
嫌な予感がするな…
「いってきますのキスは?」
ハルヒはニヤリと小悪魔的な笑みを浮かべる。
「ばっ!結婚して何年経つと思ってんだ!新婚じゃあるまいし!」
「別にいいわよ…ただの冗談よ…」
シュンとするハルヒ。
ちょっと拒否し過ぎたか…
仕方ない…
「早く行きなさいよ。遅刻しちゃ…むっ」
「い…いってきます///」
「いってらっしゃい///」
俺は駅に向かって全速力で駆け出した。
別に恥ずかしいからじゃないぞ。
勘違いするなよ。
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:32:24.70 ID:qsuReJ4NO
会社に行くと見せかけて俺は今とある喫茶店にいた。
「お呼びいただいて光栄です」
古泉がコーヒーをすすりながら言う。
「言っておくが、俺がお前を呼んだのは長門はいないし朝比奈さんは未来に帰っちゃったからだぞ。いわば消去法だ」
古泉は相変わらずですねと一息いれ、
「で、僕を呼んだということはハルヒさんがらみということですか?」
「ハルヒかどうかは分からんが…」
俺は例のリアルな夢について説明した。
二回目の夢の説明の時古泉の顔は心なしかひきつっていた。
「というわけなんだが…どう思う?」
「ふむ…これはあれじゃないですか?ほら、テレビでもよく見る…」
『予知夢』
夢が現実になったり、夢が未来を見せたりするあれだ。
ということは近い未来に夢と同じことが起こるかもしれんってことか…
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:33:22.93 ID:qsuReJ4NO
「なに、そんなに悲観することではありません」
どういうことだ?
「これから起こることが分かってるのなら対策が打てるでしょう?」
確かに。
だが具体的にはどうすりゃいいんだ?
俺は会社があるし…
「こういう時こそ機関に任せて下さい。僕らはそのためにいるんですから」
でもいいのか?
機関の人間だってそれぞれの生活があるだろう?
古泉はさらりととんでもないことを言ってのける。
「僕らは無職ですよ?」
そうか。
なら頼む。
「じゃなくて!!!」
何だって?!
無職?!
いわゆるニートか?!
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:34:17.21 ID:qsuReJ4NO
「いや、ちゃんと機関で働いてますよ?ですが、どんなお仕事されてるんですか?超能力の機関です。なんて言えないでしょう?ですから記録上は無職ってことになってるんです」
なるほどな。
超能力の機関とか言ったら厨二病の痛い奴どころでは済まされないだろう。
薬の疑いがかかるかもしれん。
あと気になることが一つ。
「機関って儲かるのか?」
「我々の機関は今や世界規模ですのでそれなりには。しかし正直な話最近はリーマンショックのせいで厳しいですね…政府はろくに経済政策しませんし…ママのこずかいちっとはよこせっての」
リアルな話はやめろ!!
「話が逸れましたね。というわけで機関に全て頼っていただいて結構です。これが僕らの仕事なんです」
あぁ…
心置きなく頼めるよ…
「では具体的な状況を教えて下さい」
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:35:05.39 ID:qsuReJ4NO
まず…
天気は晴れ。
あいつらは薄着だったから季節は夏だと思う。
時間帯は夕方だったな。
事故の場所は俺の会社の前の大通りの横断歩道。
白いワゴンが信号が青にも関わらず突っ込んできた。
「とりあえずこんなもんか…」
古泉がメモをとる。
下手くそだな…
「これだけ分かっていれば大丈夫でしょう。機関総動員でお守りします」
すまん。
恩にきる。
「では。さっそく機関に報告しないといけないので失礼します。あなたも注意して下さいね」
と言って古泉はさっそうと立ち去った。
伝票を残したまま。
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:35:59.27 ID:qsuReJ4NO
あれから三ヶ月経過し、もう九月の下旬だ。
俺は喫茶店で古泉から事後報告を受けていた。
「結局何にもなかったな…」
「そうですね」
「あれはただの夢だったのだろうか」
「それならそれでいいんですが」
だよな…
だがあれが普通の夢とは思えないんだ…
「う〜ん…しかし今年は残暑もなく、もう薄着でいられるほど暑くありませんよ?」
そうだ。
もう夢の条件に合う季節は終わった。
やはりただの夢として片付けるしかないのか…
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:36:51.62 ID:qsuReJ4NO
「もしかしたら来年かもしれませんし、まだ分からないですよ」
来年の夏までこの不安を引きずらなきゃならんのか…
「来年の夏も機関総出であなた方を護衛しますのでそう神経質にならないで下さい」
ニコッと笑う古泉。
感謝してもしきれないな。
「ならこれまでのゲームの僕の負け分、全てチャラにしてくれません?」
そりゃだめだ。
総額176万801円きっちり払ってもらうぞ。
「そんなに無理ですよ…」
弱いくせに賭けまくって負けまくったお前が悪い。
それに俺は一生かかってくれても構わないぜ?
そう、一生な。
こう言うと、俺の意図に気付いたのか古泉は柔らかく微笑んだ。
「言われなくともそのつもりです」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:37:31.83 ID:qsuReJ4NO
古泉が帰った後の喫茶店で俺はまだ夢について考えていた。
おかしい…
どう考えてもあの夢には何かある…
お前の仕業か?
ハルヒ。
もしかしてこれは未来のハルヒからの警告なんだろうか?
ま、とりあえず今年は何もなかったんだ。
来年のことを今考えてもしょうがない。
そう結論づけた俺は喫茶店を出ようとした時──目の前に──北高のセーラー服を着た──あいつが──
ここまで認識したところで俺は激しい目眩に襲われた。
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:38:19.55 ID:qsuReJ4NO
「………」
あれ?
俺はなんでこんなところにいるんだっけ?
そうだ。
古泉と久しぶりに喫茶店で会って高校時代の話に花を咲かせていたんだった。
しかし…さっきこの世のものとは思えないほど恐ろしいものを見たような…見なかったような…
ヴー、ヴー
携帯のバイブが鳴り出した。
「はいもしも(ry」
「キョン!今どこにいんのよ!さっきあんたの会社から電話かかって来たわよ!まだ会社に来てないって!」
しまった…
会社に何にも連絡いれてなかった…
「まさか浮気!?許せないわ!帰ってきたら見てなさいよ!地獄より辛い罰ゲームが待ってるんだから!」
この世のものとは思えないほど恐ろしいものってこれのことか…
その後俺はすぐに家に帰って誤解を解いたが、心配させた罰として一晩中付き合わされた。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:39:39.84 ID:qsuReJ4NO
あくる日の朝。
俺はいつもより一時間も早く布団を出た。
別に俺が健康的な生活に目覚めたわけでなく、娘と嫁のダブルプレスで起こされたわけでもない。
暑いのだ。
もう十月だってのに…
地球温暖化は思ってる以上に深刻かもしれん。
朝飯を食いにリビングに向かうと、扇風機の前を陣取っているハルヒの姿が目に入った。
「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜」
何やってんだあいつ…
「あ゛〜〜………!!!」
どうやら俺に気付いたようだ。
「なによ…」
………
「なによ!!!」
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:40:42.72 ID:qsuReJ4NO
俺は腹の痛みを堪えて朝飯を食っていた。
ったく…
いくら恥ずかしいからってみぞおちに三発も入れることないだろ…
「う、うるさいわね!」
ハルヒが頬を染めて俺を睨む。
そんな顔したって可愛いだけだぞ。
「大体ねぇ、十月だってのに暑いのが悪いのよ!この時期にクーラーってのは抵抗あるし、扇風機つけるしかないでしょ?で、扇風機っていったらあれでしょ?あれをしないと扇風機に失礼だわ!」
必死に言い訳しているハルヒをニヤニヤ眺めていると、娘が話かけてきた。
「今日はお仕事早いんでしょ?」
あぁ。
「ほんとにほんと?嘘だったら死刑だからね!」
安心しろ。
例え上司の命令でも無視して帰ってくるから。
すると間髪を入れずにハルヒも乱入してきた。
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 12:41:25.58 ID:qsuReJ4NO
「あ、そうだキョン。今日からの予定はちゃんと頭に入ってるんでしょうね」
分かってるさ。
今日の夕食は焼肉食い放題。
次の日から一泊二日でディズニーランド。
「わーい、ディズニーランドだぁ!」
娘がハルヒ譲りのとびっきりの笑顔を見せる。
「あ、遅刻しちゃうから早く行きなさい」
「やば!いってきます!」
と娘はパンをくわえながらあわてて家を出ていった。
曲がり角で変な男にぶつかるなよ。
父さん、何するか分からんぞ。
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:23:07.04 ID:qsuReJ4NO
「下らないこと言ってないであんたも準備しなさい」
と呆れ顔のハルヒに急かされて支度を終える。
「5時には帰ってこれると思うから」
「あの娘も学校終わるの早いし、迎えにいってあげる。そしてそのまま食べにいきましょう」
あんたのおごりでね…とハルヒはニヤリと笑う。
分かってるさ…
高校時代からずっとそうだもんな…
ん!?
「じゃあいってくるぞ///」
「いってらっしゃい////」
うむ。
いつも通りの朝だ。
俺はスキップしたい気持ちをなんとか抑えて会社へ向かった。
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:24:07.40 ID:qsuReJ4NO
「ふぅ…」
仕事がやっと終わり一息つく。
今日は早上がりだから助かるぜ。
大学を卒業して社会に出て早6年。
結婚もしたし子供も出来たし順調に普通の人生を送っている。
おっと、呑気に人生を振り返っている場合ではない。
何故なら今日は早く帰って、今まで仕事ばかり優先していた罰として家族サービスという名の大出費をしなければならないのだ。
というわけでここはお先に失礼する。
会社仲間に挨拶をしてオフィスを出ると夕日の向こうから2つの影が猛スピードで接近してきた。
嫁のハルヒと娘の…
っておい。
速すぎないか、これは!
ぶつかる!
「ぐぁ!」
二人の突進を受けて俺はぶっ飛んだ。
その上にプレスまでくらう。
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:24:43.17 ID:qsuReJ4NO
「どうやらあたしの勝ちのようね!」
「あたしの方がママより先だもん!ね、キョン君?」
俺に乗っかりながらケンカをおっ始めやがった。
周りの生暖かい視線が痛い…
うわ、上司もニヤニヤしながら見てる…
なんて羞恥プレイだ…
「いいからどけぇ!」
二人を払いのける。
畜生…身体中が痛い…
これほどのパワーが一体どこにあるのか。
ハルヒは俺を引き起こし、さっ行くわよ!とズンズン歩き出した。
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:25:53.17 ID:qsuReJ4NO
「ったく…少しは自重しろよ。怪我でもしたらどうすんだ」
と歩きながら説教をする。
「だってあんたに早く会いたかったんだもん!ね〜」
「ね〜」
これは反則だ…
俺は二人の可愛さにノックアウトされたのであった。
ん?
俺はここで違和感を感じた。
何かおかしい。
なんとなくそんな気がした。
ま、デジャヴかなんかだろう。
よくあることだ。
仲良くおしゃべりしている娘と嫁を眺めていると信号が見えてきた。
それと同時に心拍数が急激に上がってきた。
あの信号に着いたら何か起こる。
これまたなんとなく、そんな気がした。
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:26:53.68 ID:qsuReJ4NO
「どうしたの?顔色悪いわよ?」
不安が顔に出てしまったらしい。
ハルヒが心配して聞いてきた。
「お前らがどんだけ食うかを想像したら恐ろしくなっただけだ」
とりあえず誤魔化しておく。
しかしこうしている内にも俺達は信号に近づいていく。
何だ…
何が起こるんだ…
信号まで残り30メートル…
いいのか?
このまま行っていいのか?
残り10…9…8…7…6…5…
もうダメだ。
間に合わない。
信号まで残り、0。
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:27:46.74 ID:qsuReJ4NO
………
あれ?
何も起こらない。
やっぱり気のせいだったのか。
ホッと胸を撫で下ろしていると、視界に白いワゴンが入ってきた。
すると次の瞬間、様々な映像がフラッシュバックした。
青になる信号──走り出す娘──迫り来る白いワゴン──宙を舞う娘──。
我に帰ると信号は青になっていた。
娘が走り出す。
「おい!戻れ!」
こう怒鳴った時、俺は既に動き出していた。
白いワゴンが近づいてくる。
ワゴンに接触する寸前で娘の手をつかみ、全力で引く。
全てがスローモーションだった。
何か死ぬ直前みたいだな。
俺は娘と入れ替わる形で道路に体が投げ出される。
そこで俺の意識が途絶えた。
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:28:58.95 ID:qsuReJ4NO
あたしは今手術室の前にいる。
キョンが担ぎ込まれてから六時間。
一向に手術が終わる気配がない。
娘は泣き疲れてあたしの膝の上で寝ている。
どうしてこうなったのだろう。
本当なら今頃は久しぶりの旅行を楽しみに布団の中でぐっすり眠っているはずだったのに。
手術中のランプが消え、中から包帯でぐるぐる巻きのキョンが運ばれてきた。
「キョン!」
「奥様ですか」
医者が近寄ってきた。
「キョンは!?キョンは大丈夫なの!?」
「………」
何で黙ってるの…?
「ねぇ…」
「恐らく…今夜がヤマかと…」
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:29:59.78 ID:qsuReJ4NO
医者はそれから内蔵の損傷が、とか説明を始めたが全く頭には入って来なかった。
とりあえずあたしは娘を抱え病院を出ることにした。
病院にいたらキョンの死を目の当たりにしてしまうから。
呆然としながら玄関に向かうと、古泉君が立っていた。
「どうも。お時間よろしいですか?」
あたしは黙ってうなずき古泉君の車に乗り込んだ。
「大変でしたね…」
「うん…でも大丈夫よ…キョンなら大丈夫。だって高校の階段で落ちた時だって」
無理やり笑顔を作る。
「本当にそう思ってるんですか?」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:34:41.62 ID:qsuReJ4NO
「どういう意味よ」
古泉君は今まで見たことがない挑発的な態度で、
「本当は諦めてるんじゃないんですか?本当は彼が死んじゃうって思ってるんじゃないんですか?」
あたしは頭に血が上って古泉君の胸ぐらを掴んだ。
「そんなわけないでしょ!?次言ったらいくら古泉君でも許さないわ!」
古泉君が表情を変えずにあたしを見つめてくる。
諦めてる?ふざけんじゃないわよ!
あたしがいつ諦めた…
「あ…」
そうだ…あたし…諦めてる…
だから病院から逃げ出したんだ…
動揺していると胸ぐらを掴んでいたあたしの手を握って、古泉が放った言葉。
「ハルヒさん…あなたが彼を信じてあげなくて、誰が彼を信じるんですか?」
優しい、だけど強い言葉。
そうだ。あたしが諦めてどうするんだ。
「古泉君」
「はい」
「娘を頼むわ」
「任せて下さい」
それと…
「ありがとう」
あたしは車を降りて病院に戻るために走り出した。
140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:35:55.12 ID:qsuReJ4NO
病院に入るとあたしはすぐに立ち止まった。
「あんた…」
朝倉涼子。
確か高校の時カナダに転校した優等生がそこにいた。
「こんばんは涼宮さん。あ、今は違うんだっけ?」
あの頃と同じ笑顔で話しかけてくる。
「偶然ね。本当はゆっくり話したいけど今取り込んでて。ごめん先行かせてもらうわ」
踏み出そうとした足が動かなかった。
いや、それどこじゃない。
周りが急に真っ暗になった。
「こちらこそごめんなさいね。あなたを行かせるわけにはいかないの」
「何をしたの」
「う〜ん…分かりやすく言うなら異空間を作ってあなたを閉じ込めたって感じ?あなたが現実世界にいて能力を使われちゃ困るのよ。今はね」
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:38:10.06 ID:qsuReJ4NO
異空間?
能力?
何を言ってるの?
「そもそもあなたの娘が即死してくれれば問題はなかったのだけど…」
あれは…あんたの仕業なの…
「失敗しちゃったけどね。だってキョン君、私の情報操作が効かないんですもの。記憶は途中で戻っちゃうし、物理的な情報操作に関しては全く上手くいかなかったわ」
「容態を悪化させてさっさと死んで貰おうと思ったのに…彼の身体は他の人間とは違うのかしら。だからキョン君が死ぬまで大人しくしててね」
何だかよくわからないけど、こいつが娘を殺そうとしたんだ。
それどころかキョンまでも…
許さない…絶対に許さない!
「無駄よ。ここは私の情報制御下の空間。能力を発動させたりはしないわ。そして長門さんの助けも来ない。だってあの娘消えちゃったもの」
有希…が消えた?
「あの娘は犠牲になったのよ…あなたの犠牲にね。この計画の唯一の反対派だから情報統合思念体に消却されたの」
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:39:06.86 ID:qsuReJ4NO
朝倉が喋り終わると同時に暗闇に光のヒビが入り、そこから有希が飛び込んできた。
「有希!」
「下がって」
あたしを庇うように前に立つ。
「へぇ、驚いたわね。消えたと思ったのに。でも私の情報制御下で何が出来るの?前回のようなヘマはしないわよ」
「前回とは違う」
「確かにね。前回私はただのバックアップだったけど、今回はこの計画のトップ。そしてあなたは反逆者…全く反対ね」
「そうじゃない」
「じゃあなんなのよ!?」
朝倉が有希にものすごいスピードで襲いかかる。
それに何とか対応する有希。
描写するのがめんどくさいので簡単に言わせてもらうと、まるでドラゴンボールのようだった。
「今回もあらかじめ崩壊因子を仕込んだようだけど、前回とは比べ物にならないほどの完璧な空間よ?それに私はまだ力の30%も出してないわ」
「私もまだ本気じゃない」
「あっそ。じゃあもう死になさい」
『紅蓮波動・ファイアーストーム!』
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:42:16.14 ID:qsuReJ4NO
朝倉がジャンプの主人公っぽく厨二な技名を叫ぶと、一瞬にして有希が炎に包まれる。
「有希!!」
「長門さんはもうダメよ。今のはただの炎じゃない。いわば崩壊因子を具現化した炎。長門さんは消え去っ…」
煙の中から無傷の有希が出てきた。
「なんで…」
「彼女のおかげ」
と有希があたしを指さす。
「彼女が私の無事を祈ってくれた」
「ここは私の情報制御下よ!そんなはずはないわ!」
「そう。涼宮ハルヒの能力は我々の常識を遥かに越えている。刺激を与えるべきではない」
すると暗闇にちょうど人一人が出られるほどの光が現れた。
「確かにこの空間は前回以上に完璧だった。人一人逃がす穴を作るだけでも攻性情報を使い果たしあなたと戦うことは困難だったが、彼女が私を守ってくれると信じていた」
有希が今度は光を指さし、
「行って。この先に元の世界がある」
でも…あなたは?
「私は大丈夫。あなたが私の無事を祈っててくれれば死なない。それより早く戻って彼の傍にいてあげて」
分かった。ありがとう…!
あたしは光の穴に飛び込んだ。
今思うとものすごい体験をしているが、あたしの頭の中はキョンのことで一杯になった。
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:43:51.74 ID:qsuReJ4NO
光を出ると深夜の病院だった。
「ハルヒさん!」
声の方を振り返るとずっと音信不通だったみくるちゃんがいた。
「急いでいるのは分かってます。でも、これだけは聞いて。絶対に諦めないで」
あたしは黙ってうなずきキョンの病室へと走った。
ありがとうみくるちゃん。
あたしは絶対に諦めないわ!
廊下の先にキョンの病室が見えてきた。
あたしの足は自然と止まってしまった。
何だか中が慌ただしい。
泣いてる看護婦もいる。
そして──
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
それでもあたしは前に進み出した。
『あなたが彼を信じてあげなくて、誰が彼を信じてあげるんですか?』
『絶対に諦めないで』
二人の声が頭を過る。
あたしはためらわずに病室に入った。
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:46:11.34 ID:qsuReJ4NO
「よ、よぉ」
そこにはさっきまで死にそうだったとは思えない、ピンピンした間抜け面がベッドの上に座っていた。
「う…うわぁぁぁぁぁキョぉぉぉぉぉぉン!!」
緊張の糸が切れたあたしは泣きながらキョンに抱きついた。
キョンは黙ってあたしの頭を撫でる。
良かった…本当に良かった…!
医者の話を聞くと数秒前、完全にキョンの心臓は停止したそうだ。
しかしあたしが病室に入ったのと同時に起き上がったらしい。
「あんたって不思議な奴よね。何となくジョンに似てるわ」
「ジョン?」
とキョンが首を傾げる。
「あたしの出会った初めての不思議よ。もう一度会いたかったのに見つからなかったけど」
「そりゃそのジョン・スミスって奴はラッキーだな。見つかってたらこの俺みたくお前に引っ張りまわされてたんだからな」
「………」
あたしの沈黙を怒りと受け取ったのか、キョンは「いや俺は楽しいけどな」などフォローをいれる。
そしてあたしは満面の笑みでこう言った。
「当然よ!」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:48:01.64 ID:qsuReJ4NO
「ったく…いい歳こいて迷子かよ…」
俺は今家族との約束通りディズニーランドに来ている。
ハルヒは冒頭の通り迷子だ。
むやみに動き回ってもしょうがないので娘とベンチで休んでる。
「ママいないね、キョン君」
あぁ、と頷きながら俺はこれまでのことを思い返していた。
俺は事故にあって意識を失ってたのでこれは長門から聞いた話なのだが、俺はあの後朝倉に殺されかけたらしい。
何のアクションも起こさないハルヒに痺れを切らし、とうとう統合思念体が急進派の意見を受け入れたのだ。
しかし俺は世界崩壊の件で一応異世界人という属性を持っていたせいなのか、何故か奴の情報操作とやらが効かず、やむを得ず俺が死ぬまでハルヒを閉じ込めようとしてたわけだ。
それを朝比奈さんに連れて来られた消える前の過去の長門が阻止してくれたらしい。
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:50:13.14 ID:qsuReJ4NO
そして俺が見たあの夢。
あれはやはり未来のハルヒからの警告なのだろうか?
それともあの夢は実は現実だったのだが、ハルヒが死ぬ間際に俺の「ジョン・スミス」に反応し夢オチにして時を戻したのだろうか?
長門が思念体に無事戻り、朝比奈さんが未来に帰り、古泉が始末書に追われている今では真実を知る由もない。
しかし、色々大変だったがこれで全て終わったのだ。
そう信じたい。
「んにしてもあいつ何やってんだ…」
ピンポンパンポン。
アナウンスが入った。
『東京からお越しの…ええとキョンさん。お連れ様がお呼びでございます』
何で俺が迷子になったみたいになってんだ…
あとこんな時までキョンかよ…
『至急…えっ、あっ、ちょっと』
『キョン!聞いてんの!?』
何やってんだあのバカ!
マイク奪いやがって!
だが俺は次の瞬間硬直する。
『あんた!あたしがいつまで待っていたか分かる!?もう13年よ!?早く迎えにきなさい!ジョン・スミス!』
─完─
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/31(水) 13:51:50.97 ID:qsuReJ4NO
以上です。
こんな凡作を最後まで読んでくれてありがとうございます。
保守して下さった方々にも重ねて感謝します。
本当にありがとうございました。