1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/18(木) 22:20:29.99 ID:0QdAp5X20
新幹線と電車を乗り継ぎ、更に駅からバスに揺られる事数時間。
俺と勝俣は漸く地に足を着いた。
「ふぅん……。ここが雛見沢ね。カブトムシ沢山捕れそうだな〜」
俺達の目の前に広がるのは、圧倒的『自然』。
最近、都会暮らしにすっかり馴染んちまった俺と勝俣にとって、
まさに心が洗われるような景色だった。
「それにアッコさんもいませんしね〜」
そんな自然に感動したのか、勝俣も嬉々として思わず本音を漏らす。
なんて正直な奴なんだ。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/18(木) 22:29:21.19 ID:0QdAp5X20
「……フン。んな事言ってると追いかけて来ちまうかもしんねーぞ」
浮かれている勝俣に俺も少しちょっかいを掛けてみる。
「え〜〜〜、冗談は止めて下さいよ。翔さ〜ん!!!ちょっと言って
みただけじゃないすっか〜!?」
相変わらずアッコの話題になると声のト―ンが上がる。可愛い奴め。
しかし、それにしてもアッコの奴、勝俣の気持ちを一人占めしやがって。
羨ましいぞ、この野郎。
……だがまぁ良いだろう。あいつは今頃アデランスのCMを撮っている筈。
ここまで来るのに時間が掛かる。
「まぁ、あいつが来ようが来まいが、事件は俺が解決しちゃうんだけどね」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/18(木) 22:36:32.98 ID:0QdAp5X20
「おっ、気合入ってるっすね!?」
「ははっ。当たり前だろ?この俺直々にご指名が下ったんだからよ」
「流石、翔さん!まさか警察関係者の人から殺人事件の解決を頼まれるなんて
凄いっすね〜!!!」
「まね♪」
「……にしても、本当にここなんすか!?凄い田舎っすよ!とても毎年人が
死んでるようには見えないっすけど」
「……だな。なんつーか、ココ」
「はいはいはい!!!」
「な〜んか、すんげぇでかいカブトムシ捕れそうな気がするんだよね」
「いやいやいや、そ〜じゃないですよね!?今、事件の話してましたよね!?」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/18(木) 22:43:27.76 ID:0QdAp5X20
「わりわり♪オレ山見るとさ、ど〜もカブトムシの事考えちまうんだわ」
「も〜しっかりして下さいよ!!!殺人事件なんすよ!?殺人事件!!!」
そう俺に勝俣は声を荒げる。どうやらこいつもかなり気合が入っているようだ。
……頼もしい奴。
「へへっ、分かってるって♪ま、全部俺に任せときなぁ」
「ホントですかぁ、事件ほっぽって途中でカブトムシ捕りに行かないで
下さいよぅ!?」
「♪」
「大丈夫かなぁ!?」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/18(木) 22:51:54.50 ID:0QdAp5X20
バスを降りて30分、カブトムシ談義に花を咲かせた俺達だったが
いい加減喉も乾いた事もあって、取りあえず俺に依頼を頼んできた警察官
に会いに行くことにした。
「どうも、大石です。なるほど、あなたがあの……」
「えぇ、皆のアイドル、哀川翔です」
「友達の勝俣です」
そして、そんな感じに適当に挨拶を交わして、俺達はソッコー事件についての
情報を尋ねてみる。
「それで今回の事件についてですが……」
「毎年人が死んでるって、本当なんすかぁ!!!???」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/18(木) 23:02:02.70 ID:0QdAp5X20
「えぇ、実は……」
大石と名乗った刑事は笑顔とも苦虫を噛み潰したとも言えない複雑な表情で
語り出す。
「この地域は、毎年夏になると、『綿流し』というお祭りをやるんですがね……」
お祭り……その単語を聞いただけで胸が躍る。きっと勝俣も興奮しているだろう。
だが今はこの刑事の話を聞いている所だ。いきなり話の腰を折るのもまずい。
足が妙にソワソワするが、俺達はぐっと我慢した。
「お祭りの晩、毎年必ず……人が死ぬんですよ」
やべぇ、無性に肝試しやりたくなって来た。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/18(木) 23:11:08.76 ID:0QdAp5X20
「マジッすか!?それマジッすか!!!???」
「えらく、マジです」
興奮を抑えきれなくなったのか、勝俣が大石さんに大声で尋ねる。
さっきからちっとも話が進まねぇ。
「落ちつけよ♪勝俣ぁ」
そんな勝俣を優しくたしなめるカッコイイ俺。そして、そんな俺達
を横目に大石さんは話を続ける。
「……しかも、それだけじゃありません。毎年人が死ぬと同時に、
行方不明……いえ、失踪者も出るんですよ」
………。どうやらこりゃ、事件を解決しない事にはカブトムシを
捕まえるのは難しそうだな。
こんな感じで誰か書いてくれたら俺が喜ぶ
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 00:40:24.26 ID:sROtQuMD0
それから数時間後……
大石さんの話も程々に俺達はさっそく雛見沢を見て廻る事にした……なんて、
まぁ実は大石さんの話もそこまで具体的な話じゃなかったからだ。
大石さんによると、この雛見沢では毎年、死者と失踪者が一名ずつ出るとの事。
つまり、オヤシロサマの怒りに触れた罪人が一人処刑され、もう一人がオヤシロ
サマの怒りを鎮めるため、生贄として失踪するんだと。
馬鹿馬鹿しい話だ。そんなの神様がする所業じゃねぇ。
神様っつーのはもっとこう、なんてゆーか、そう!格好良いもんなんだよ。俺達
人間からしてみればさ。
それがなんだよ。罪人を殺すとか、生贄を出せとか、頭おかしいんじゃねーのか?
「……はぁ」
思わず溜息が出るぜ。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 00:51:02.08 ID:sROtQuMD0
「どーしたんすか!翔さん!!!溜息なんて吐いちゃって!!!」
勝俣は相も変わらず元気良く、そんな俺の前を歩く。短パンで。……コイツ、
蚊に刺されたりしねぇのかなぁ?
あっ、先にウナコーア塗ってんのか!成程な。
「ちょっと翔さん!!!聞いてます!?翔さんってば!!!」
「聞いてるよぅ!心配すんなって!ちょっと歩き疲れただけだ!」
「えっ!?マジすか?大丈夫っすか!?そんなんじゃカブトムシ捕まえる
前にへばっちまいませんか?」
……こいつ、まだカブトムシの事なんて考えてやがったのか。
「心配すんな!少し休んだら平気だから!」
そう言って、少し物想いにふけながら俺は空を見上げる。
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 01:00:11.02 ID:sROtQuMD0
が、次の瞬間
パシャリ
という音が俺を現実に呼び戻す。
「「誰だ!?」」
勝俣と俺は同時に叫ぶ。マジで誰だよ。俺達芸能人だよ?前もって言ってくれたら
ポーズとか取るのに。
だが、音のする方を振り向いた俺は唖然とする。
迷彩服にカメラに眼鏡……そして何より、服からはちきれんばかりのムキムキと
した筋肉。
間違いない……ガチホモだ!犯られる!!!
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 01:14:04.61 ID:sROtQuMD0
「おっとすまない、僕の名前は富竹。フリーのカメラマンだ」
男はのうのうと自己紹介を始めやがった。……誘ってやがるぜ。
くそっ!俺達を犯して、そのカメラのレンズに裸体と痴態を納める気だな?
「翔さん!こいつガチホモですよ!どうします?通報しますか!?」
勝俣もこの男のオーラに気付いたのか、携帯電話を握りしめながら叫ぶ。
だがどうする?警察に通報しても間に合うのか?
「ちっ!仕方ねぇ。お前は逃げろ勝俣!ここは俺が何とかする!!!」
「翔さん!!!そんな!!!???」
「え……あの……ガチホモ?いや、僕は……」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 01:24:30.87 ID:sROtQuMD0
「おいおいおい、見くびって貰っちゃ困るな。これでも俺は皆のアイドル、
哀川翔なんだからさ。おめぇがガチホモだなんてのは、一目見りゃすぐに
分かるさ」
「翔さん……カッコいいっす!!!」
「へへっ、よせよ勝俣ぁ。照れるじゃねーか」
「哀川……翔……なるほど、あなたが……」
「?」
あん?なんかガチホモの様子が変わったぞ?どうかしたのか?
「僕からもお願いします。どうか、どうかオヤシロサマの祟りを止めて下さい!!!」
あん?なんだか話が変な方向に向かいだしぞ、おい。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 01:35:10.14 ID:sROtQuMD0
「あなたの事は大石さんから既に報告を受けています。なんでも事件を
解決してもらう為にわざわざお越しいただいたとか」
「いや、まぁそうなんだけどねぇ……って、お宅もしかして大石さんの
知り合い?まさか刑事なのか?」
「え〜〜〜〜!!!この人刑事なんですかぁ?俺、只のガチホモかと思っ
ちゃいましたよ〜!!!」
「おめぇは少し黙ってな、勝俣」
「……はい、すんません」
「それで、あぁ、なんつったかな、あんた」
「富竹です」
「あぁ、そうそう富竹さん!あんた、警察関係者ってことで良いのかな?」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 01:46:00.07 ID:sROtQuMD0
「刑事……そうですね、大石さんとはまた違うんですが……まぁ、その様に
捉えて頂いても、今のところ特別不都合はありません」
「……成程ね」
「ご理解頂けたようですね」
「まね♪」
「ちょ、良いんすか、翔さん!?こんな奴の言う事信じちゃって!!!」
「だから黙ってろって」
「……はい」
「なぁ富竹さん、少しばかり世間話がしたいんだが良いかな?」
「……構いませんよ。哀川さん」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 01:59:25.71 ID:sROtQuMD0
そんなこんなで俺達はガチムチカメラマンこと富竹さんから事情聴取する事と
なった。
「まず、あんたの意見を聞かせて欲しいんだけどさぁ。あんたさっきオヤシロ
サマの祟りっつたけど、本当にこの連続怪死事件、オヤシロサマなんて神様が
起してるんだと思ってるのか?」
「……そうですね。少なくともそのような存在が認められるのなら、オヤシロ
サマの祟り説の方を信じてしまうかもしれません」
富竹さんは暗い表情で質問に答える。
「成程成程〜つまり、あんたはこの事件、祟りじゃなくて人間の仕業だと考え
てる訳だ」
「……まぁ、そうですね」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 08:59:34.36 ID:sROtQuMD0
「しかし富竹さん。そりゃまた何でだい?この村の住人は勿論、警察でも
大石さん以外は皆、オヤシロサマの祟りを信じてるみたいだぜ」
「…………」
俺の問いかけに富竹さんは黙って俯く。
「大石さんは事件の発端である、ダム建設を仕切ってたおやっさんと面識
があったみたいだから事件性を疑っちゃいるが、それでも今のところは
お手上げ状態」
「俺にしてみたところで、毎年これだけ人が死んだり失踪したりすると、
最早オヤシロサマってのを本気で信じちまいそうだ」
「ですよね!!!ってゆーか、毎年人が死んでるんすよ!?人間の仕業なら
どんな殺し屋なんだよっ!?つー話っすよね!?」
「これ絶対祟りっすよ!間違いないっす!!!」
勝俣、だから黙ってろって。
「……そうでしょうか?」
「あん?」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 09:11:26.30 ID:sROtQuMD0
「こんなのが祟りだなんだとしたら、救われませんよ」
……こいつ、何か事情を知ってそうだな。……うっし。
「なぁ富竹さん、あんたはn……」
「あっ!富竹さんだ〜こんにちは〜♪」
「おいおい、誰だよあの人。なぁレナ?」
そう尋ねようとした矢先に、俺の声を若い声が遮る。ちっ、最近の子供は
マナーがなってねぇぜ。だがまぁ仕方ねぇ。許してやんよ。俺、子供好き
だからね。
「ちょ、そこのガキ!!!今翔さんが話t……」
「やめな、勝俣ぁ。子供相手にムキになんなよぉ」
「す、すんません。……つい」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 09:34:10.13 ID:sROtQuMD0
「……へっ、おし。今日はもう帰るぞ、勝俣」
「え?え?ちょっと翔さん!?」
富竹さんからもう少し色々話を聞きたかったが仕方ない。またの機会にしよう。
なぁに、大石さんと繋がりがあるってんなら、いつでも会えるでしょ。
「じゃあ、またな富竹さん。あんたとはまた何処かで会いそうな気がするぜ」
「は、はぁ……でも……」
「えっ!?翔さん本当にもう帰っちゃうんすか!?」
「当たり前だ。子供達の前で血生臭い話なんて俺ぁしたくねーんだよ」
そんな感じにキメながら、俺は富竹さんと少年達に背を向けて歩き出す。
「ちょっと待って下さいよ〜〜〜〜!!!!!」
後ろから聞こえてくる勝俣の声が、酷く心地よく感じられる。
あぁ、成程ね。『物語』はこんな風に始まるのか。
〜〜〜勝俣のなく頃に 勝俣隠し編 OP 完〜〜〜
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 09:44:26.42 ID:sROtQuMD0
〜〜〜TIPS 1〜〜〜
「え〜と、今日の撮影は〜〜〜っと」
「どーも、お疲れ様です。アッコさん」
「あ、マネージャー。アデランスの撮影の後ってまだ何かあったっけ?」
「えーと、……午後にハウスのカニ玉の撮影もありますね」
「あっ、そ〜だっけ〜〜〜。すっかり忘れてたわ〜」
「時間に遅れないようにお願いします」
「ん、任せといて〜」
「有難うございます」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 09:55:15.01 ID:sROtQuMD0
「それにしてもココんとこ仕事多くない?たまにはゆっくり休みたい
んだけど」
「そうですね、スケジュール調整頑張ってみますが」
「お願いねー。はぁ、にしても……どっか田舎にでも行って思いっきり
羽伸ばしたいわぁ」
「羽伸ばしですか」
「あっ、そう言えばマネージャー知ってる?勝俣と翔さんの話!」
「勝俣さんと哀川さんですか?存じ上げていませんが……」
「なんでもあの二人さぁ、雛見沢だったっかな?そこ行って事件解決して
くるらしいのよ」
「じ、事件ですか?」
「そっ!!!しかも只の事件じゃなくて殺人事件なんだって」
「いぃぃぃぃ!!!???ななな、何考えてんですか!?仮にも芸能人
ですよ?それがなんで殺人事件なんて!?」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 10:04:45.12 ID:sROtQuMD0
「さぁ?」
「さぁって……」
「ま、あの二人だから心配いらないでしょ♪今頃どうせカブトムシでも
追いかけまわしんじゃないの?」
「そう……でしょうか」
「あ〜あ、撮影終わったらあたしも行こっかな〜、雛見沢」
「や、やめて下さい!アッコさんにもしもの事があったら!!!」
「ははっ、冗談冗談♪さてと……んじゃそろそろ現場に入りますか!」
「ちょ、アッコさん!?本当に冗談なんですよね!?」
「フッフーン♪」
「アッコさぁぁぁん!!!???」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 10:13:08.31 ID:sROtQuMD0
〜〜〜勝俣のなく頃に 勝俣隠し編 第一部〜〜〜
暑い。暑いぜ、コンチクショウ。
「あ、暑いっすね〜翔さん」
黙れ勝俣。んな言葉を口に出したらさらに暑くなった感じがするじゃねーか。
俺は勝俣を一瞥しながら部屋に備え付けられている温度計に目をやる。
気温 摂氏38度……。ウソだろ?
うだるような暑さが、俺と勝俣が借りたホテルの一室に立ち込めていた。
どうやら空調が壊れたらしい。ついてない。
「も……ダメ……」
いつもは暑いの大好き。半袖短パン元気な勝俣もさすがに参ったのか、ぐったり
と項垂れる。
俺ももう限界に近い……。
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 10:41:25.30 ID:sROtQuMD0
仕方なく部屋を出る。外も暑いが部屋の中に比べりゃまだマシだ。
「ふぅ……」
外気に触れながらほっと一息つく。あぁ大分楽だ。
しかし、
「しょ、翔さ〜ん。置いてかないで下さいよ〜」
勝俣も暑さに耐えかねたのか後に続く。
「ってぇおい!馬鹿お前!!!」
「えっ!?」
言うが早いが、ドアがバタンと音を立てて閉まる。
「……マジかよ」
「え?俺なんかしました?」
部屋の鍵は無情にもきっちりと掛かり、鍵を持たずに外に出た俺達は
締め出されてしまった。今日は本当についてねぇ。
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 10:53:29.88 ID:sROtQuMD0
「どうしたんです、翔さん?」
「んでもねぇよ。ちょっとフロントまで行ってくる」
「え!?あぁ、エアコンの修理呼びに行くんすね!?俺も行きますよ!
部屋暑いですし!」
こいつ……自分が何をしたのかまだ気付いてねぇのか。
俺がツッコミ役に回るって、どういう事だよ!?
「はぁ……ま、好きにしろや」
「うすっ!!!」
んな訳で俺達はホテルのフロントに向かった訳なんだが……
「おいおい、どーしたんだよ、これは……」
「人いっねぇぇぇぇ〜〜〜〜!!!!なになに!?かくれんぼしてんの、皆!?」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 11:06:28.94 ID:sROtQuMD0
「勝俣ぁ、少しは落ち着け♪」
「でもでも!ホテルのフロントに誰も居ないとかってふざけてますよ!!!」
「まぁなぁ。だがいねぇもんは仕方ねぇだろ。ホラあれだ、全員でトイレとか
飯とか、それとかカブトムシでも捕りに行ってんじゃねぇのか?」
「マジッすか!?客ほったらかしにして自分達だけでムシ捕まえに行くとか
ひどくないっすか!!!???」
「だが現にいないんだから仕方ねぇだろ」
「うぅぅぅ。ハァ、またあの暑い部屋に戻るのかぁ。つらいっすわ」
……コイツ、いい加減気付かないと俺より頭悪いと思われんぞ。
けどまぁ、そこがこいつの可愛い所なんだけどね。
「ま、良いじゃねーか。まだお日様も昇ってるしよぉ。従業員戻って来るまで、
散歩でもしようぜ」
「……そうっすね」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 16:53:22.89 ID:sROtQuMD0
というごくあっさりとした理由で俺達はホテルを後にした。
ところで俺達が今いる場所だが、実は雛見沢ではない。雛見沢の隣町、興宮
という場所だ。
大石さんが勤務する署がある街と言えば、少しは納得してくれる人もいる
だろうか。
まぁなんで雛見沢に宿をとらなかったってーと。
「いんや〜、けどやっぱり雛見沢より随分活気がありますねぇ〜」
「だな」
言葉の通り、雛見沢はさすが雛見沢『村』と呼ばれる場所なだけあって、宿泊
できるような施設がないんだな、コレが。
つー訳で、大石さんの紹介もあって、まぁこの興宮駅前のホテルに部屋を借り
たんだな。
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 17:05:09.07 ID:sROtQuMD0
「じゃあ翔さんどこから回ります?オレ暑いからなるべく涼しいとこ巡りたい
んすけど!!!」
勝俣は暑い部屋から解放された所為か、元気良く俺の腕を引っ張る。
どうやらさっさと冷房の効いた場所に行きたいみたいだ。
やれやれ、折角ドタバタした都会から自然あふれる田舎に来たっていうのにコイツは。
「なんだお前、もうバテタのか?昼に雛見沢のダム建設現場見に行った時は
あんなにはしゃいでたのに」
「なはははははh……いや〜〜〜ちょっとテンション上げ過ぎちゃって。へへっ」
だがコイツの御茶目な顔を見ちまうと、なんだか許しても良い気がしてくるから
不思議だ。
オレァこいつに甘過ぎるのかもしんねぇや。
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 17:16:47.48 ID:sROtQuMD0
と、勝俣に腕を引っ張られながら歩いていると妙な人だかりが出来ている事に
気付く。やべぇ。そういや変装もなんもしてねぇ。俺達が芸能人だってばれち
まったみたいだ。
「ま、変装してても俺の溢れるオーラは隠しきれないんだけどね」
「ナニ言ってるんすか、翔さん!?」
「あん?何ってサイン攻めだろーがよ。ファンには優しくするのが、芸能人って
もんだろ!」
「いやいやいや!!!その子供たち、そこの店に入りたがってんじゃないすか?
丁度翔さんが邪魔で入れないんすよ!」
「あんだと!?」
勝俣の台詞に反論しようと顔を上げた俺の目には、畜生!確かに子供達が俺を
避けるように店になだれ込んでいやがる。
俺は無視かよ!?
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 17:23:41.94 ID:sROtQuMD0
「畜生!なんだってんだ、この店!!!」
「アレじゃないすっか!?あの店先の張り紙。なんか店の中でイベントやってる
みたいっすよ?」
「張り紙だぁ!?」
勝俣の指さす方向に視線を向ける。……確かにイベント案内用の張り紙が窓に
張ってある。イベントの日時は今日の日付。
「ちっ!これかぁ」
「楽しそうっすね!!!」
嬉々として声のボリュームを上げる勝俣。本当にこいつはゲーム好きだなぁ、おい。
……まぁ、俺もなんだけどね。
どうだ、ちょっくら覗いてっみっか!!!
「行くか、勝俣ぁ!!!」
「うっす!!!」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 17:37:37.79 ID:sROtQuMD0
が、俺と勝俣が店に足を踏み入れた瞬間。
「よしっ!じゃあこの勝負、園崎魅音が預からせてもらうよっ!!!」
という言葉と共に、バラバラと散りだす子供達。
「んだぁ!?どういう事だこりゃ」
「もしかして終わったんじゃないっすか!?もう夕方ですし!」
「な〜に〜!!!???まだ遊んでねーぞ!!!」
「仕方ないですよ、翔さん!イベントなんすから!!!」
くそぉ、一足遅かったか……。一体どんな遊びをしてたんだ、この子供達は。
気になるぜ。
もしかしてカブトムシとクワガタの対決ゲームとかじゃなかっただろうな。
それだったら俺も無茶苦茶参加したかった。
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 17:55:53.13 ID:sROtQuMD0
「……ってちょっと待て」
「どうしました、翔さん?」
「どうしたもこうしたもあるか。今誰か、園崎って言わなかったか?」
「へ?言いました、そんなの?」
園崎……大石さんが怪しいと睨んでいる御三家の一角。雛見沢ダム建設反対派
のリーダー格であり、実質、村長以上に雛見沢の実権を握っているらしいが。
「ん?誰かあたしの名前呼んだ?」
俺達の会話に割って入る様な形で少女が振り向く。長い緑の髪を頭の上で束ねて
綺麗なポニーテールを作っているが、もしかしてこの子が!?
「えっと、あたし園崎魅音っていいますけど、あたしに何か御用ですか?」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 18:15:58.15 ID:sROtQuMD0
〜〜〜〜〜〜
さて、時間と場所は変わるがここは興宮にある喫茶店、エンジェルモートだ。
何故俺達がここにいるかって!?
まぁ話せば長くなるんだがよ。
「あっ!昼過ぎにあったオジサンじゃん!!!」
と魅音ちゃんの隣にいた男の子が俺を指さして叫んだんだよね。するとそれに
つられるようにもう隣にいた女の子も
「あぅあぅ!ダム建設現場跡地にいた人かな?かな?」
てな感じで俺と勝俣に話しかけてきたんだ。するってーと園崎魅音ちゃんが
「あれ?あんた達の知り合い?」
「うん!この人たち富竹さんとお話してたんだけどね?レナと圭一君がお邪魔
しちゃったの!」
「いや、あれはレナが勝手に……」
「ふ〜〜ん、良く分かんないけど、とにかく二人がこの人たちに迷惑かけちゃった
んだね?」
「いや、だから俺は!!!」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 18:28:42.08 ID:sROtQuMD0
「シャラーップ!圭ちゃん!言い訳は見苦しいよ?」
「ぐっ……」
「おじさん達!どうやらうちの部員達が迷惑かけちゃったみたいだね。この子達の
代表として謝るよ」
と、突然場を仕切りだし
「それでどうかな?あたしこれからバイトなんで行けないんだけどさ、この子達に
案内させるから美味しい喫茶店でお茶でも?あ〜〜〜勿論お代は心配しないで!
その店、あたしの顔が効くからさ♪店のレジで園崎魅音の紹介でって言えばタダに
なるから♪」
「えっ!?それマジ!?行きましょうよ翔さん!!!」
「ま、だからってあんまり高いものは頼まないでね〜一人1000円までだよ?」
「あらら、でもまぁ折角ですから行きましょうよ!ね、翔さんっ!!!」
「あ、あぁ。そうだな……」
てな感じでまぁ、話がトントン拍子に進んでだな。今に至るってわけだ。あり?
そんなに長くなかったな。
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 18:43:06.89 ID:sROtQuMD0
にしても、勝俣の奴……
「で、そん時魅音が!!!!!」
「ギャハハハハハハ!!!!!マジ!?ねぇそれマジ!?」
「も〜圭一君、魅音ちゃんの悪口言っちゃ駄目じゃないかな?かな?」
「ち〜がうって!これは一種の愛情表現なんだよ、レナ!」
「うぁ、あ、愛情表現なのかな、かな!?」
「そう!愛情表現!!!親が子供の成長見るとさ、なんか人に自慢したくなるだろ!?
それだよ!!!」
「そ、そうなのかな?かな?」
「おっしゃ〜〜〜〜〜〜!!!!良いぞ圭一く〜〜〜ん!!!!もっと盛り上がる話は
無いのか〜〜〜〜!?」
「おっ!?乗り気ですね、勝俣さん!!!」
「かたくるっしいな、カッちゃんでいいよ、カッちゃんで!!!!」
「ははははははははははは!!!!!じゃこんなのはどうです!?カッちゃん!?」
すっかりこの子達と意気投合しやがって。妬けるじゃねぇか、畜生。
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 20:01:51.39 ID:sROtQuMD0
「あら翔さん、どうしまして?」
「もしかしてお腹が痛くて食べられないのですか?なら僕が食べてあげるのですよ!
にぱ〜☆」
「ん!?ははっ…んにゃちょっとな。勝俣を取られた気分でよ」
「あらあら、翔さん圭一さんとレナさんに嫉妬してますですの?」
「みみっちい男なのです☆にぱぱ〜」
一人寂しそうに背中で語る俺に話しかけてくれたこの子達は北条沙都子ちゃんと古手梨花
ちゃんだ。この子達も魅音ちゃんが率いる部活メンバーで、圭一君とレナちゃんと一緒に
俺達をこの店まで案内してくれた良い子たちだ。
二人共まだ年端のいかない女の子達で、俺も自分の家族を思い出す。
あいつら、ちゃんと飯食ってっかな?
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 20:17:46.81 ID:sROtQuMD0
「ぅ……また遠い目をしだしましたですのね」
「翔は僕達に気を使わせるイケないイケない子なのです!」
「ははっ、悪いな。気ぃ使わせちまってよぉ」
俺は二人の頭をグシグシと撫でる。
「なっ!?なにをするんですの突然!?」
「ぅぅぅぅぅ、髪がグチャグチャになったのです」
「ひひひひひひひひひひwwwwww」
可愛いガキンチョ共だぜ!
「む〜〜〜」
脹れっ面も可愛いなぁ、おい。
「ったく、可愛い奴だよ、お前さん達は!」
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 20:28:38.42 ID:sROtQuMD0
「でも、翔と勝俣はここに何をしに来たですか?見たところ二人共お仕事を
しに来たようには見えないのですよ」
「ん、……まぁな。ははh……」
一瞬こんなに俺達に懐いてくれてる子たちだ。事件の事を話そうとも考えたが
俺はぐっと逸る気持ちを押し殺す。
馬鹿だな、俺は。悪戯に子供達の好奇心を持て囃そうだなんて考えちまうとは。
腐ってやがる。
そう、心で一拍置いてから『別にただの観光だよ』と答えようとしたのだが、
「いや〜〜〜、実は俺達、雛見沢で起こってる謎の連続怪死事件の真相を解明
しに来たんだよね!!!!」
と、いつの間にこっちの会話に参加していたのか、俺よりも先に勝俣が大声で
答えやがった。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 20:38:21.53 ID:sROtQuMD0
次の瞬間、シンと、店の空気が一気に冷却されたかのように鎮まり返った。
「え?あれ?あれ?」
店の中でする音はさっきからボリュームの変わらない勝俣の声のみ。
痛い。痛いぜ。空気がピリピリしてやがる。こんなのドラマの撮影でも、
映画の撮影でも味わった経験がねぇ!!!
「……あの、圭一君?レナちゃん?」
勝俣もこの空気に漸く気付いたのかおどおどしながら話しかける。このチキン
野郎が!!!
……にしても、やべぇ、むっちゃやべぇ。
何故かは分からないが、背筋がゾクゾクする。なんなんだよ一体!!!
不意にあまりの居心地の悪さに目配せをしてみる俺。
けど、俺はこん時、んなことしちゃいけなかったんだと思い知らされたよ。
…………見てる!観察している!!!監視している!!!!!
店中の奴らが、このテーブル……いや、俺と勝俣を凝視している。
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 20:54:21.27 ID:sROtQuMD0
一応これでも俺達芸能人だからさ。人に見られるのは慣れてるんだよね。職業柄。
でもさ、これは違うわ。違いすぎる。
ファンや一般の人からの視線ってのは、もっとこう『きゃ〜翔さ〜〜ん』とか
『あれ!?もしかしてあの人、翔さんじゃ!?』みたいなさ。なんつーかな、
感情っつーの?そんな分かりあえるような、お互いの気持ちが確認出来る様な
もんなんだよね。
けど…………。
今俺達が置かれてる状況は普段と全然違う。
ただ、見られてる。観察されてる……だけ。俺達の言動、一挙手一動を。
感情も理解も理由すらも!んなもんへったくれもねぇ、只々、『敵』を見る様な、
己の中の『異物』を見る様な、そんな感じで観察されてる。
……居心地悪ぃぜ。
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 21:21:56.02 ID:sROtQuMD0
……どの位の時間が経過したのだろう。さっきから時計の秒針が時を
刻む音がヤケにでかく聞こえる。
チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ
くそぅ、頭ん中、冷や汗かいてやがる。おい、もういいだろうがよ。
早くその冷めた目で見つめるのを止めやがれ!!!
もう15分は経っただろ!?いや、実はまだ5分しか経っちゃいねぇのか?
それともそれすらまだ経っちゃいなくて、本当の本当は30秒とか!?
チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ
うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、息苦しい!死ぬっ!これマジで死ぬって!?
誰か……何とかしてくれ……。
そんな俺の願いが届いたのかどうかは不明だが、結果としてこの空間は次の瞬間、
あっけなく終わりを告げた。彼女の一声で……。
「なるほど〜そうだったんですか!なら頑張って欲しいのですよ☆にぱ〜」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/19(金) 21:37:17.81 ID:sROtQuMD0
〜〜〜〜〜〜
その後、俺達がどうやってこのホテルまで帰って来たのか、正確には記憶していない。
なんせ梨花ちゃんの一声で皆の視線が戻ったのを確認すると、圭一君達との挨拶も
そこそこに、逃げるようにあの場を離れたからだ。
「いや〜〜〜怖かったすねぇ、なんすかアレ!!!???」
「…………さぁな。だがよぅ」
だが、今回の事件が並々ならねぇレベルだってのは痛い程肌で実感できた。
今回の事件、軽い気持ちで引き受けて、解決したらカブトムシでも捕まえてこうと
思ってたが、もしかしたらそんな暇なんぞ無くなっちまうかもしんねぇぜ。
「だけど、なんです?」
「んにゃ、もしかしたら、カブトムシはお預けかもしんねぇつー話さ」
せめて、今年の犠牲者が出るのだけは、なんとしても防ぎたいとこだよな……。
なぁ、勝俣?
〜〜〜勝俣のなく頃に 勝俣隠し編 第一部 完〜〜〜
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 11:58:39.53 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜TIPS 2〜〜〜
「あぁ〜〜や〜っと撮影終わった〜〜〜」
「お疲れ様です、アッコさん」
「あ〜〜〜、ドッコイショ」
「今日もばっちり決まってましたよ。流石ですね」
「あ、分かる?マネージャー」
「そりゃ勿論。マネージャーですから」
「ははははは」
「それで明日のスケジュールですが……」
「ちょっとちょっとぉ、あんた今撮影終わったばっかりだってのに、
直に次の仕事の話?もっとあたしを労いなさいよ!」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 12:09:13.92 ID:XFhbOXbm0
「それが聞いて下さい!明日半日OFFになりましたよ!夕方からの一本だけです!」
「え?それマジで言ってんの?」
「はい!えらくマジです」
「っしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!じゃ、明日は仕事終わったら皆で飲み会だ!!!
良かったらマネージャーも来なよ!!!つ〜か来なさい!!!」
「い、良いんですか?私も参加しちゃって……」
「何言ってんのよ!!!!あたしのお願い聞いてスケジュール調整しといてくれた
んでしょ!?だったら黙って参加しとけば良いのよ!!!!」
「あ、ありがとうございます!!!」
「よ〜〜〜し、じゃあ暇そうな奴らに連絡しとくかぁ!!!!」
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 12:19:22.16 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜勝俣のなく頃に 勝俣隠し編 第二部〜〜〜
さて、今日も今日とて朝早くに目が覚めた俺はホテルのカーテンに
手を掛ける。
……ふむ、まだ外は暗い。
お日様は昇ってねぇみたいだ。ひひひ、どうやら俺の勝ちだな。
「う……ん」
っと、いけねぇいけねぇ、隣で勝俣も寝てるんだった。
こいつは俺と同じくらいに早起きする習慣があるわけじゃねぇから
起しちゃ可哀想だな。うん。
で、時計は〜っと。おっ、あったあった。おぉ、まだ5時過ぎか。
どうりで辺りがまだ暗い筈だぜ。
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 12:30:43.61 ID:XFhbOXbm0
「ふむ……勝俣もまだ起きないだろうし、散歩でもするかぁ♪」
田舎の新鮮な朝の空気を吸う為に、俺は一人、部屋をでた。勿論、
部屋の鍵を持って。
まだ部屋に勝俣がいるが、あいつは信用ならねぇから
「じゃぁ、この鍵ヨロシクぅ〜♪」
と、フロントに部屋の鍵を預ける。鍵を勝手に持ち出した事について
あいつは怒るかもしんねぇが、んなもん知ったこっちゃねぇ。
あいつも大人だ。いざとなりゃ自分で何とかするだろ。
それにしても……
「おぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!」
思わず声が出ちまうぜ。なんて気持ちの良い朝なんだ。ホテルを飛び出した
俺の頬を、爽やかな風が撫でる。
「くすぐってぇ♪」
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 12:55:36.66 ID:XFhbOXbm0
「…………。ししっ♪うしししししししし♪」
「咲〜きほ〜こるは〜なは〜 フフフフフフフ フフフヒ〜ヒ」
お天道様との勝負に勝ったってのも手伝って、今日の俺は凄く気分がいい。
自然と鼻歌が零れる。
「フッフフフフフ〜〜〜♪」
だけど、
あぁ、事件なんてなけりゃ、ここも雛見沢も無茶苦茶良い場所なのになぁ…。
自然もあるし、今俺がいる隣町の興宮には活気あふれる店が商店街にも並んでる。
避暑地にはもってこいの場所だ。
なのになんで事件なんか……。
……なんて、そんな考えが頭をよぎる。……本当、残念だよ。
「雛見沢連続怪死事件ね……オーケー。引き受けてやるとは言ったものの……」
「どうすっかなぁ?」
何から手を付けていいのやら……困ったもんだぜ。
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 13:26:17.38 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜〜〜〜
現在の時刻は午前7時ちょい過ぎ。俺が日課である散歩を1時間半ほど終えて
勝俣と二人、ホテルで朝食を取っているとこだ。
「モグモグ……ンック……でも相変わらず翔さん、朝早いっすね〜〜〜!!!!」
「まね♪」
食事中にもかかわらず、いつもと同じく大声で話しかける勝俣に、俺は優しく
微笑みながらカラカラに乾いた喉をアイスコーヒーで潤す。
散歩つったって、途中から事件のことで頭が一杯だったからな。
乾いた喉に流れ込む冷たいコーヒーは、疲れた俺の頭を癒してくれる。
「ふぅ……うんめぇ」
しかし、そんな俺の安らいだ気分を
「で、どうでした!!!???何か面白そうな場所ありましたか!?」
勝俣の馬鹿でかい声が鬱にさせる。こいつ……ここに何しに来たのか分かってんのか?
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 13:33:02.97 ID:XFhbOXbm0
「……まぁそうだな。ここはカブトムシとかクワガタよりも蝉が多そうだかんな。
虫捕り網とか調達しといた方が良いかもしれねぇぞ」
けど後輩の純粋な気持ちを踏みにじる訳にはいかねぇ。俺は精一杯の笑顔で
勝俣に答えた。
「いやいやいや!!!面白そうな場所ってそういう意味じゃないですよ!!!!
事件に関係ありそうな場所についてですって!!!」
「…………」
くそぅ。もしかして、コイツ、俺を馬鹿にしてんじゃねぇのか?腹立ってきた。
普通、面白そうな場所ありましたか?なんて聞かれたら、遊ぶ場所だと思うじゃねーか。
そうだろ!?間違ってるか、俺!?
「あれ?どうしたんです、翔さん?顔怖いっすよ!?」
おめぇの所為だよ、この馬鹿。
「翔さんってばぁ〜〜〜〜〜!!!!!」
う、うぜぇ。
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 13:47:29.10 ID:XFhbOXbm0
「……ん?」
とここで、勝俣の半分叫び声にも近い様な質問を受けていた俺だが、周囲の気配
に感づく。やべぇ、これは昨日と同じ……。
「翔さんってばぁ〜〜〜〜〜!!!!!」
勝俣はまだ目が覚めてあまり時間が経ってないから、頭が半分寝ぼけたままなのか、
周囲の変化にまだ気づいていない。
チッ……。
頭の中で舌打ちをしつつ、急いで席を立つ。
「ちょ、翔さん!?」
どうやら、ここや雛見沢じゃあ、この事件……連続怪死事件ってのは禁句みたいだな。
俺も無茶苦茶口が堅いとは言えねぇが、それよりも何よりも……
「オレまだ食ってんすよ〜〜〜!?」
こいつの声のでかさは致命的だな、こりゃ♪
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 14:08:00.87 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜〜〜〜
食い意地の張った勝俣を急かして、逃げるようにホテルから出た俺達は
一路、雛見沢に向かった。
そうなんだよね。
事件は興宮で起きてるんじゃない!雛見沢で起きてるんだ!!!
ギバだったら多分こう言うだろうな。
ま、そんなもん言われるまでもなく、情報収集するには雛見沢に向かう
しかねぇなんて分かり切っちゃいるんだが。
「でも、遠いっすよね〜。隣町……じゃなかった隣村なのに」
「まぁ、ここら辺は山が多いからな。何処に行くにしろ一山越えなくちゃ
なんねぇからよぅ」
「あぁ〜遠いなぁ!!!」
しかし雛見沢へ向かう同中、こんな感じに勝俣は、すっかり都会に馴染んだ
都会っ子らしく、バスに揺られながらひたすらにブチブチと文句を並べる。
情けねぇ。その短パンは飾りなのかよ!?
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 14:30:08.61 ID:XFhbOXbm0
「って、やっと到着か〜!!!」
俺が勝俣に現代人、都会人に何が足りないかというのをコンコンと説明して
やろうとした矢先にブロロロロと偉く年季の入ったエンジンが止まる。
けっ、タイミング良い事この上ねぇや。到着したみたいだな。
「ま、到着したんなら仕方ねぇか!……うしっ!じゃあ行くか、勝俣!」
「はいっ!!!」
リュックサックとポーチ、そして、もしもの時に備えての虫捕り網と虫籠を携え、
いざバスを降りる。戦闘準備はとっくに整ってるぜ。
「…………」
「あん?」
しかし俺達がバスを降りる際、運転手と目があう。運転手はナニ食わぬ顔で冷めた目
と薄ら笑みを浮かべながら俺達を見比べる。
クソッ!どうやら、昨日の喫茶店や今朝のホテルでの言動は村中、街中に広まった
みたいだ。この運転手も俺達を観察する者ってことかよ!?……やれやれだぜ。
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 14:53:13.06 ID:XFhbOXbm0
「どうしたんすか、翔さん!?早く行きましょうよ〜〜〜!!!」
「ん、そ、そうだな。悪い悪い」
そう言いながら、運転手の敵意に未だ気付いていない勝俣の声に急かされるように、
バスを降りる。
……ふむ。にしても、毎回あんな敵意まんまんで運ばれるならいっそ、チャリでも
購入すべきかもしれねぇや。ここでの生活が長引きそうだったら、それも視野に入れ
とこうかな。
「……でも、ま。先ずはチャリの心配よりも、事件の早期解決を考えなくちゃな!」
「?」
俺は勝俣に聞こえない程度に一人呟き、気合を入れる。
やってやろうじゃね〜か。オヤシロサマだろうがなんだろうが、来いよ!
俺が解決してやっかっらさぁ!!!
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 15:12:39.03 ID:XFhbOXbm0
「ふん!決まったな。……ところで勝俣ぁ」
「なんすか、翔さん!?」
「情報、どこ行ったら集まるんだ?」
「…………」
「早く答えろよぉ」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
ええええええええええええええええええええええええええええええ!!!???」
「ちょ、おまっ!?ナニ大声出してんの!?うっせぇよ」
「あっ!?す、すんません!!!いやでも!!!」
「だから五月蠅いんだって!」
「は、はいぃ。いやでも翔さん!?だったら何でここ来たんすかぁ!?」
「何でって、情報を仕入れに来たに決まってんだろぉ?」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 15:29:09.53 ID:XFhbOXbm0
「いやいやいやいや!!!だったら先に情報集める場所くらい確認してから
来ましょうよ〜〜〜〜!!!!」
来ましょうよ〜〜〜!!!キマショウヨ〜〜〜!!!キマショウヨーーー!!!
…………それから、勝俣の叫び声がそこらの山に反響してから20分が経過した。
「ふぅっ!……ふぅっ!……長い……」
「ひひひひひ、健康に良いじゃねーか」
「そりゃ、翔さんはそうかもしんないすけど……オレ、こんなに荷物持ってんすから
……はぁ……はぁっ!」
さてさて、バスから降りてしばらく途方に暮れていた俺達だが、今は元気よく、長い
階段を登っている。
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 15:40:53.25 ID:XFhbOXbm0
ふぅ……
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 16:09:59.53 ID:XFhbOXbm0
最近台本形式のSSばっかり書いてたからイマイチ地の文が書きにくい
のんびり書いてく
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 20:17:22.99 ID:XFhbOXbm0
なんで階段なんか登ってるって?まぁ、あまり突っ込んだ事は聞かないでくれ。
ただ単に行く当てもなかった俺達の目に最初に飛び込んできたのが、この長い長い
階段有する神社だっただけなんでな。
「ふぅっ!……ふぅっ!……」
「ひひひひひ、頑張れ勝俣!登り切ったら蝉取りして遊ぶんだからよ!」
「ちょ!?もしかして、俺達、神社で蝉取りするためにこの階段登ってたんすか!?」
「たりめーだろ、それ以外になんで階段登んなくちゃいけねぇんだよ」
「ふぅっ!……ふぅっ!……俺はてっきり……この神社の神主さんあたりに情報聞く
のかと思ってましたよ!」
あんだと!?お前蝉取りしたくて俺に着いてきたんじゃねぇのかよ……と、声に
出しそうになったが、慌ててそれを引っ込める。
……神主に事件の話を聞く?……そういえば雛見沢村の神社の神主夫婦が事件の被害者
だったな。
191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 20:27:40.76 ID:XFhbOXbm0
盲点だったぜ!!!やるじゃねぇか勝俣!
だとすると、今の神主に事情を聞いたら、何か事件について分かる
かもしんねぇ。
「うしっ!!!勝俣、お前蝉取りは我慢できるか?」
「へっ!?は、はぁまぁ我慢出来ますけど!?」
けっ、やっぱりこいつ、可愛い奴だな。顔を赤くしながら上目遣いで
ハァハァと呼吸を荒げながら俺の意見に従ってくれるなんてよぅ!!!
「よしよしよし!!!んじゃ、まずは先に神主さんに話を聞くぞ!!!
あっと心配はすんな!?ちゃんと後で蝉取りはすっからな!!!」
「へ?あぁ、ありがとうございます」
こうして俺達は、勝俣の的確なアドバイスにより、意気揚々と神社への
階段を更に登って行く。
もしかしたら、今日の俺達、最高についてるのかもしんねぇ!
そんな風に考えながら……。
195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 20:37:30.14 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜〜〜〜
……結果から話そう。やっぱり俺達はついてなかった。
何故かといえば、この神社にはもう神主さんがいないんだってさ。
「ったくよぅ!折角あの長ぇ階段登り切ったってのに!!!神主がいなきゃ
この神社の行事とかはどうすんだよ!!!代理くらいいねぇのか!?」
俺の堪忍袋の尾はすでにクライマックス!今にも理性が吹っ飛びそうだ!
「まぁまぁ翔さん、落ち着いて……」
「これが落ち着いてられっか!?いいか、勝俣。良く聞け」
「う、うす!!!」
普段の俺なら、優しい後輩の言葉にも耳を傾けただろうが、今回は無理だ。
裏切られた感がハンパねぇ!
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 20:48:20.42 ID:XFhbOXbm0
「お前、昨日大石さんの話を覚えてねぇか?」
「お、大石さんの話っすか!?」
「おうよ!!!」
昨日の会話を覚えてりゃ、誰もが腸煮えくり返るっつーもんだ。なぁオイ?
「え、え〜〜〜と、毎年人が死んで失踪者が出るって話ですか?」
「違う!!!んなもんよりもっと重要な話だ!!!」
「へっ!?それより重要な話ですか……え〜〜っと、じゃああれっすか!?
実は園崎家がダム工事に賛成派だった奴らを祟りに見せかけて始末している
可能性が高いって奴っすか!?」
こいつは本当に頭のネジが外れてんのか!?
「バカヤロウ!!!違うだろ!神社の神主がいないって事は……お祭りが
開かれねぇって事だろうが!!!!!」
そう……焼きそばもタコ焼きもリンゴ飴もワタ飴も……射的も輪投げも金魚
すくいも!!!!!
祭りが開かれない事には、どれも食えねぇし、遊ぶことも出来ねぇんだぞ!?
199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 20:57:45.34 ID:XFhbOXbm0
「いや、あの……翔さん!?」
「畜生!畜生ぉぉ!!!!なんだよ、人がせっかく楽しみにしてたってのによ……」
「あの〜、翔さん?」
俺は打ちのめされた。非常な現実に……。だから……
「だから勝俣ぁ!!!!」
「は、はい!なんすか!?」
だから、今くらいは……
「今くらいは、自由に生きても、良いよな?」
「へ?」
「うっしゃぁぁぁぁ!!!!祭りで遊べない分、今ここで遊んどくぞぉぉぉ!!!!」
「ちょ、しょ、翔さん!?」
「アミ持てぇぇぇぇ!!!!蝉捕まえっぞぉぉぉぉぉ!!!!」
自分の気持ちに正直に生きよう。そうしよう。
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:09:29.37 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜〜〜〜
そんな風に始めた蝉取りだったが、夢中になっていると時間の経つのは早い
もので、昼前から始めた筈なのに、辺りはとっぷり夕焼けに染まり出していた。
今では俺と勝俣はお互い別行動をとっており、勝俣は神社の裏側にある雑木林を、
俺はおそらく神主がいれば参拝者も訪れるだろう長い階段付近で己の技を磨いている。
ま、神主はいない筈なのに、参拝者はたまに来るんだけどね。
んなもん、セミ取りから比べたら些細な事さ。
ミーンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン
ミーンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン
ミーンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン
ミーンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン
ミーンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン ミンミンミンミンミンミン
「へっ♪にしても、賑やかになってきたなぁ」
既に30匹以上は放り込んでいるだろうムシカゴを覗いて、一人悦に入る。
俺はカブトムシやクワガタが好きなんだが、存外、セミも中々良いかもしんねぇ。
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:23:05.19 ID:XFhbOXbm0
んな気分になりながら俺は
「うししししししししwwwww皆いい声で鳴くぜ♪」
と、ムシカゴのセミと睨めっこしていたんだが……
「あら、そんなに大量のひぐらしの鳴き声なんて、気持ち悪いだけじゃない」
なんて……背後からバッサリ切り捨てられちまった。
「誰だ!!!???」
自分の趣味や趣向を完璧に否定された気分になった俺は、ヤケクソ気味に叫び
ながら振り向く。一体誰だよ!?
……だが振り向いた先には、あまりにも俺の予想外の奴が立っていた。
「ふふっ……」
「なっ!?」
そう、俺の視線のその先には、梨花ちゃんが、いや古手梨花が、少女と呼ぶには
あまりにもかけ離れている面妖な表情で、俺を見ていたんだ……。
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:25:31.20 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜勝俣のなく頃に 勝俣隠し編 第二部 完〜〜〜
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:34:02.52 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜TIPS 3〜〜〜
「しゃ〜〜〜〜〜〜!!!!お疲れぇぇぇぇええええ〜〜〜〜〜!!!!」
「お疲れさまで〜す!!!」
「お疲れっす、アッコさん!!!!」
「んじゃ、皆ジョッキ持った!?いくわよぉ!!!!せ〜〜〜の!!!」
「「「「「「かんぱ〜〜〜〜い♪」」」」」
「……グッグッグッ……プハ〜〜〜〜〜!!!んまいっ!!!」
「さすがアッコさん!い〜い飲みっぷり!!!」
「こらこらこら〜〜〜〜あたしの事は良いから!!!あんたも飲みなさいよ!!!」
「えっ!?私ですか?私はちょっと……」
「あに言ってんのよ!!!い〜から飲んだ飲んだ!!!そ〜れイッキ♪イッキ♪」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅ……ゴィゴィゴィ……プハー」
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:41:01.51 ID:XFhbOXbm0
「なーんだ、あんたも中々いけんじゃん!」
「は、はひぃ……」
「ホラ、まだまだあるんだから、飲んで飲んで♪」
「ちょ、ア、アッコさん!?そんなに注がないで下さいよぅ」
「なに〜〜〜!?あんた、あたしの酒が飲めないっての!?」
「い、いえそういう訳じゃ……」
「だったら飲みましょう!!!つぶれるまで!!!!」
「ひ、ひえ〜〜〜〜!?」
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 22:00:13.85 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜勝俣のなく頃に 勝俣隠し編 第三部〜〜〜
人間ってのはいつだって孤独と闘わなくちゃならねぇ。
最後の最後まで、本当に頼れるのは自分しかいねぇからだ。
最後の最後まで、俺を信じててくれるのは、テメェしかいねぇからだ。
最後の最後まで、俺を支えてくれるのは、テメェが自分が培ってきた努力だけだからだ。
なんて、幼いころの俺はそんなことばかりを考えていた。
だから俺は強くなりたかったし、
だから俺は、そんな人間になろうと努力した。
だから俺はそんな大人に、そんな皆から尊敬される様な、理想的な父親になりたかったんだ。
一人で何でも出来て、一人で全部解決しちまって、一人で皆の笑顔を守れる、そんな
スーパーヒーローに……憧れた。
今思えば、今考えてみても、随分と傲慢な子供だと思う。
世の中がなんだって自分の思い通りになると思ってたんだからさ。
傲慢で我儘で意地っ張りで、そして頑固なガキだった……。
世の中なんてのは、ちっとも自分の思い通りになるようなもんでもないのに……。
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 22:08:18.95 ID:XFhbOXbm0
……頬をゆっくりと伝う涙で目が覚める。
「おはよう……ございます」
朝の挨拶を見慣れない天井に向かって呟く。あぁ、そういえばまたホテルに
泊ってたんだったな。
「おいしょ……っと」
毎日の日課であるお日様との勝負を確認するために、勝俣を起こさないように
窓に近づき手を伸ばす。
「そっか……雨かよ」
既にお日様が出ているのかどうかも分からない天気に一層心が沈む。
「ちっ……これじゃ散歩もどうするか考えちまうじゃねぇか」
一人悪態をつきながら、もう一度ベッドに身を沈める。
「夢……久し振りだな」
そう、独り言のおまけつきで。
219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 22:21:59.77 ID:XFhbOXbm0
隣じゃあさっきから
「んが……ちょ、ダメですって翔さ〜ん……むにゃむにゃ」
勝俣が夢の中でも俺にイジれらてんのか、バタバタと手足を動かす。
ったく、どんな夢見てんだろうなぁ、こいつは?
……楽しい夢だったら、良いのにな。
「はっ!……ナイーブになるなんて、俺らしくねぇ」
自分の頭にコツンと握りこぶしを当て、部屋に置いてやる時計に目を向ける。
天気の所為でイマイチ時間が分からなかったが、それでも最近の日の出の時間
は知ってるから、確認くれぇはしとこうと思ったんだ。
一応勝負だからよ。
「さてと……何時かなぁ〜〜〜?」
見ると時計の針は……午前6時13分を指していた。
いつもより随分と遅い目覚めだった事に、この時漸く気が付いた。
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 23:38:19.52 ID:XFhbOXbm0
〜〜〜〜〜〜
昨日と同じようにホテルのレストランで朝食をとり終わった俺達は、
二人図書館でボーっと過ごしていた。
なんで図書館かって?
ま、情報集めっつっても、雨降ってちゃ村の人間も外でのんびりくつろいだり、
用事も無いのにわざわざ濡れるために外に出る筈もねぇだろうしな。
だったら、ここらの地方新聞が閲覧できる図書館で調べ物した方が効率が
良いと思ったんだよ、俺は。
そしてそれに何より、昨日の梨花ちゃんの台詞に興味を惹かれるものが
あったからな。
んな訳で、調べ物の真っ最中。真っ最中。
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/20(土) 23:48:09.69 ID:XFhbOXbm0
けど勝俣の奴は流石に焦りを感じたのか、さっきから俺に
「翔さん翔さん!良いんすか?こんなにのんびりしてて!?昨日から
俺達遊んでばっかすよ!?」
って小言をグチグチと言い続けやがる。
やれやれ、お前ももうちょっと頭を使ってくれよな……昨日みたいにさ。
「まぁまぁ、雨降ってんだし、良いじゃねぇか。それに図書館でも結構
情報集まるかもしんねーじゃねーか……ホラ、この新聞の記事、読んでみろよ。
雛見沢村の住人、結束してダム作業員に対し妨害活動を行う!尚、作業員の
現場監督である……って、この記事は!?」
「どうしたんです?……ってこりゃあ大いs……ムガッ!?」
「シッ!……声のトーンを下げろ、勝俣」
「ふ……ふひはへぇん」