1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:26:31.59 ID:lEeyln1l0
(キョン)
入学して早1年。
まともな高校生活を送っている奴ならこの時期は
もうすぐ訪れる春休みの予定にウキウキしたり、
来年は誰と同じクラスになるのかな〜なんて想像したりで
浮かれ気分真っ最中の季節であるはずだが、
俺はというとちっともそんな気分に浸ることもできず、
いつものように憂鬱を引きずりながら部室へと足を運ぶのだった。
その原因は学年末試験の結果が想像以上に悪かったこと、
アホの谷口に奇跡的に彼女ができて毎日のろけられてること、
妹に初潮が到来して家族が微妙な空気に包まれたこと・・・。
まぁいろいろあるが、俺の気分を高揚させないその最大の原因は
もちろん・・・あの女だ。
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:27:13.43 ID:lEeyln1l0
====SOS団部室====
キョン「うい〜っす」
みくる「こんにちは〜」
長門「・・・・・・」
古泉「やぁ、今日は遅かったですね」
キョン「委員会が長引いてな」
「俺のことはともかくハルヒもまだ来てないのか?」
古泉「おや?聞いてませんか?涼宮さんは今日は欠席するみたいですよ」
キョン「ハルヒが?何も聞いてないぞ」
(最近ハルヒは部活に来ないことが多いな。
また何か良からぬことを企んでなきゃいいんだが…)
古泉「何やら用ができたとやらで今日の部活は来ないと昼休みに言いにきましたが」
キョン「あのやろう…わざわざ他のクラスの古泉には知らせるくせに
すぐ前の席の俺には何も言わずに帰るのかよ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:30:22.35 ID:lEeyln1l0
(キョン)
まぁハルヒ抜きの部活も静かでいいもんだ。
少なくともまた厄介事に巻き込まれる危険性も減るわけだし、
朝比奈さんといつも以上に仲良くしたりもできるチャンスでもある。
そう…このときはまだ事の深刻さをわかっていなかった。
みくる「お茶どうぞ〜」
キョン「ありがとうございます」ズズー
キョン「今日のはいつも以上に美味しい気がします」
みくる「よかった〜おかわりもしてくださいね」ニコッ
古泉「ところで、涼宮さんがいないのでちょうどいい機会なのですが、
貴方にお聞きしたいことがあるのです」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:32:50.13 ID:lEeyln1l0
キョン「何だよ急に真面目な顔して…またハルヒのことか?」
古泉「御察しが良くて助かります」
キョン「まぁおまえが俺に何か聞いてくるときはだいたいハルヒ絡みだからな」
古泉「おや?言われてみれば確かにそうかもしれませんね」
キョン「で、なんなんだよ?朝比奈さんや長門に聞かれてもいいことなのか?」
古泉「むしろ皆さんに伺いたいことなので、その方が助かります」
みくる「?」
長門「・・・・・・」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:35:32.00 ID:lEeyln1l0
古泉「実はここのところ閉鎖空間がまったく発生していないのです」
「いや、もちろんそれ自体は大変喜ばしいことなのですが“減っている”のではなく
“ゼロ”、つまり涼宮さんの気分にまったく抑揚がないということになります」
キョン「よくわからんが、それはいいことじゃないか?ハルヒが気分良く生活してるってことだろ」
古泉「以前お話ししたことがあるかと思いますが、涼宮さんの精神状態がどんなに安定していても
閉鎖空間は少なからず発生していたのです」
キョン「・・・・・・」
古泉「例えば昼間は何事もなく生活していても、眠っているときに悪夢を見たことが原因で
夜中に発生する閉鎖空間もあったのです」
古泉「涼宮さんに限らず、日常生活でまったくストレスを感じなかったり
記憶しているか否かは別として悪夢すら見ない、なんてことは有り得ないことです」
キョン「言っている言葉の意味はわかるが・・・つまり何が言いたいんだ?」
古泉「正直なところ僕も何が起きているのかはわかりません」
キョン「おまえ・・・」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:39:55.96 ID:lEeyln1l0
古泉「ただ、何かしらの異常事態であるという可能性があるのです」
キョン「ハルヒが大人しいと異常事態なのか?」
古泉「涼宮さんの精神状態が尋常でないくらいに安定している、というだけなら
まったく問題ないのですが、先程も申し上げましたようにそれが有り得ない
くらいのレベルであることが問題なんです」
「これはひとつの可能性ですが、閉鎖空間に代わる別の形で、
そして僕らにもわからないところでストレスを解消しているのかもしれないのです」
キョン「それはそれでおまえも余計な仕事が減っていいじゃないか」
古泉「僕個人としてはそうかもしれませんが・・・以前貴方が寸前で止めてくれたような
世界の改変が知らず知らずに進んでいる、という可能性もあるとしたら・・・?」
キョン「・・・・・・!」
古泉「まぁこれはあくまでも可能性のひとつに過ぎません」
「最悪の場合、そういうことも有り得る、という程度のお話です」
キョン「相変わらずいちいち仰々しい話し方をするんじゃない!」
「で、俺たちに聞きたいことって何なんだよ?」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:41:55.82 ID:lEeyln1l0
古泉「実は最近の異様な事態の原因を探るために機関で涼宮さんの監視を強めたんです」
キョン「それはそれはご苦労なこって」
古泉「いくら要注意人物といっても彼女も一人の人間です。
プライベートには極力踏み込まないようにしてきたのですが、
そうも言ってられなくなってきたのでね」
キョン「プライベートって…どこまで監視してるんだよ?」
古泉「ほぼ、全てです」
キョン「はぁ?じゃあ何か?おまえらはあいつの一挙手一投足を全て見てるのか?」
みくる「さすがにそれは…」
古泉「ええ、機関の中でもそれはやりすぎではないかと揉めに揉めましたよ」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:43:32.90 ID:lEeyln1l0
(キョン)
こいつらはハルヒのあんな姿やこんな姿も…!
ちょっとうらやま…いやいや!そんなことはどうでもいい!
古泉「言っておきますが、僕は最後まで、いや今でも反対の姿勢を貫いているんですよ」
キョン「とか言いながら監視してる一味でもあるんだろおまえは!」
古泉「おや?ずいぶん喰いついてきますね?」
キョン「あたりまえだ!クラスメイトが私生活を覗かれてるんだぞ」
古泉「ふふ…ただのクラスメイト、ではないと思いますが?」
キョン「てめぇ…」
古泉「すみません、冗談です」
「話を最後まで聞いて頂きたいのですが、
確かに我々は涼宮さんの全てを監視しようと試みました」
「ところが、です」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:45:38.53 ID:lEeyln1l0
古泉「貴方が危惧されていますように“全て”を監視しようとしていたのですが
何故か数日に一度、彼女を完全に見失ってしまう時間ができてしまうのです」
キョン「見失う?なんでだよ?」
古泉「それがわからないのです」
「最新危機を駆使し人手も最大に駆り出し、
まさに機関の総力を挙げてCIAも真っ青の追跡をしているのですが
何故かブランクが必ず生まれてしまう…」
キョン「なんだそりゃ?」
古泉「通常なら考えられないことですが、相手はあの涼宮さんです」
キョン「あいつのチカラがそうさせてるってことか?」
古泉「そう考えるのが自然でしょう?」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:47:49.51 ID:lEeyln1l0
みくる「でも涼宮さんは監視に気づいていないんですよね?」
古泉「そのはずです。
その証拠に監視下における涼宮さんは無防備なほどに全てを曝け出しています」
キョン「いちいちいやらしい言い方をするな」
古泉「失礼しました」
みくる「ではなんで…」
古泉「さぁ?それがさっぱりわからないのです。そこで…」
キョン「俺たちが何か知らないかっていうわけか?」
古泉「その通りです」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:48:46.54 ID:lEeyln1l0
キョン「言っておくが、俺は何も知らんぞ。
そもそもそんな話自体、今初めて聞いたんだからな」
古泉「正直にお話ししますが、今回は貴方にはさほど期待していません」
キョン「なに?」
古泉「御存知のように、涼宮さんに注目しているのは我々だけではありません」
キョン「つまり…」
古泉「そう、朝比奈さん、そして長門さん」
みくる「ふぇ?」
長門「・・・・・・」
古泉「お二人なら、我々の知らない何かを掴んでいる可能性もあるかと思いましてね」
「それでこうして恥を忍んで伺おうと思ったわけです」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:50:26.88 ID:lEeyln1l0
みくる「わ、わ、わたしは何も…し、し、知りません」オドオド
キョン(いかにも何か知っていそうなリアクションだが
たぶんこの人の場合は本当に知らないんだろうな)
古泉「些細なことで構わないのですが、最近の涼宮さんが何か変わったことはありませんか?」
みくる「えぇ…っと…」
キョン(クラスでも特に変わらないいつものハルヒだ。
授業中はたいてい後ろから寝息が聞こえてくるし昼休みは一人でどこかへ消える。
そしてたまに突拍子もないことを提案してくる。
だけどそれがいつものハルヒであり、これまでだってずっとそうだった。
しいて言うなら…)
古泉「例えば、部活を休んだ日に何処で何をしているか、とか」
キョン(そうだ!最近SOS団に顔を出さない日が多い!)
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:52:43.21 ID:lEeyln1l0
みくる「そう言えば…最近たまに休みますね、涼宮さん」
古泉「そうなんです。我々もこの変化には気づいていました」
キョン「で、あいつは部活休んで何してるんだ?」
古泉「実はそれだけがわからないのですよ」
キョン「どういうことだ?」
古泉「さきほどお話ししたブランクができる日。
それは必ず部活を休んだ日に発生しているのです」
「その他の日は100%監視ができています。
起床から就寝まで、一秒も不穏な行動を取ることはありません。
もっとも、考えてることまではわかりかねますが…」
キョン「つまり部活を休んだ日にあいつが何かしでかしてる、ってことか?」
古泉「その可能性が高い、と我々は考えています」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:54:44.10 ID:lEeyln1l0
(キョン)
まったく…相変わらず人騒がせなやつだ。
この場にいなくても迷惑をかけるなんて。
それにしても本当に何をやってるんだハルヒは?
そもそもあいつがプライベートに何をしてるかなんて考えたこともなかった。
宇宙人や未来人を探して街をウロウロするくらいなら構わんが、
また俺たち、いや全人類を巻き込むようなことを企んでるんじゃないだろうな。
キョン「長門、おまえは何か知ってるか?」
長門「・・・・・・何も」
キョン「何か気づいたこととかないか?」
長門「・・・・・・ない」
(キョン)
長門でもわからないことがあるのか?
そもそも今の長門の受け答えはなんか違和感があるが…まぁ気のせいか。
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:56:38.61 ID:lEeyln1l0
====翌朝の登校時====
キョン(ハルヒはもう来てるだろう。
古泉みたいに変に探らずに直に聞けばいいんだ)
谷口「うい〜っす」
キョン「なんだおまえか…」
谷口「相変わらずしけたツラしてんなキョン!」
キョン「悪かったな」
谷口「そんなことだからいつまでたってもおまえには彼女のひとりもできないんだよ」
キョン「また女の話か」
谷口「まっ、俺のようになりたければそれなりの努力をしろってこった!」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 22:57:53.29 ID:lEeyln1l0
キョン「はいはい、わかったよ」
「ところで谷口、おまえいつになったらその彼女とやらを見せてくれるんだよ?」
谷口「えっ?そ、それはそのうち…な」
キョン「そんなもったいつけるほどの女なのか?」
谷口「あ、あたぼうよ!なんてったって俺のハニーだぜ!」
まっ、そのうちお披露目してやんよ」
キョン(やれやれ…興味もなくはないが今はハルヒの方を片付けないとな)
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:00:01.49 ID:lEeyln1l0
====教室====
キョン(お、いたいた)
キョン「おいハルヒ!」
ハルヒ「…挨拶もなしになによ?」
キョン「昨日は部活休んで何してたんだ?」
ハルヒ「!」
キョン「昨日だけじゃない。最近部活に来ないことが多いじゃないか」
ハルヒ「う、うるさいわね!何処で何してようがあたしの勝手でしょ!」
キョン「SOS団はおまえが作ったんだろうが」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:02:57.92 ID:lEeyln1l0
ハルヒ「それは…悪いと思ってるわよ」
キョン(少なからず気にはしてたんだな)
キョン「で、何してたんだ?」
ハルヒ「べ、別にいいでしょ、なんでも」
キョン「よくねーよ。みんな心配してるんだぞ」
ハルヒ「……そう」
キョン「そうだぞ、団長として団員に説明する義務があるはずだ!」
ハルヒ「…でも…言えないのよ!」
キョン「!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:05:14.23 ID:lEeyln1l0
キョン「なんでだよ!」
ハルヒ「うるさいわね!あんたはそんなこと気にしなくていいのよ!」
キョン「くっ…!そうかよ!もう勝手にしろ!」
(キョン)
なんだっていうんだハルヒのやつ!
俺にも言えないようなことをしてやがるのか?
それとも俺だから言えないのか?
まぁ勝手にすればいいんだ。
世界が終わろうが改変されようが知ったこっちゃないぜ。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:07:36.47 ID:lEeyln1l0
====昼休み====
(キョン)
まったくイライラするぜ。
谷口ののろけに付き合うのも面倒だし散歩でもするか…。
って、いつの間にか部室に来てしまった。
ギィ
キョン「おう、長門」
長門「・・・・・・」
キョン「まったく、逆におまえはいつも変わらず本を読んでるな」
長門「・・・・・・逆に?」
キョン「昨日古泉が言ってたろ?ハルヒは確かに様子がおかしいんだよ」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:08:34.33 ID:lEeyln1l0
長門「・・・・・・そのことで話がある」
キョン「ハルヒのことでか?」
長門「・・・・・・」コクリ
キョン「なんだ?」
長門「今夜・・・わたしの家に来て」
キョン「ここじゃ話せないことなのか?」
長門「・・・・・・」コクリ
キョン「別に構わんが…」
長門「・・・・・・待ってる」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:09:30.94 ID:lEeyln1l0
====放課後====
(キョン)
ハルヒのやつ、今日も部活休みやがった…。
遅くなるのも悪いし長門のマンションに向かうか。
スタスタ
ん…あれはハルヒ?
キョン「よう、何してんだ?」
ハルヒ「…あんたを待ってたのよ」
キョン「こんなところで待たなくても部室に来ればみんないたんだぞ」
ハルヒ「みんなに伝える前に、あんたに先に話そうと思ったのよ」
キョン「なにをだよ?」
ハルヒ「……あたし…SOS団を辞めるわ」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:15:57.04 ID:lEeyln1l0
キョン「…なに?」
ハルヒ「だから、SOS団を辞めることにしたの」
キョン「なに言ってんだおまえ?」
ハルヒ「ずっと考えていたんだけど、一度しかない高校生活をもっと充実したものにしたいの」
キョン「それが目的でおまえが作ったのがSOS団だろうが!」
ハルヒ「そうだけど…なんか違うかなって感じ始めたの」
キョン「!」
ハルヒ「確かにSOS団は楽しいんだけど、高校生なんだからもっと
楽しいこともあるんじゃないかって思うのよ!
友達と遊んだり、スポーツを頑張ったり、あと…恋愛とかもしたい」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:17:47.39 ID:lEeyln1l0
(キョン)
何を言ってるんだこいつは?
というかこいつは本当に涼宮ハルヒなのか?
俺の知ってるハルヒはこんなこと言うやつじゃない。
そもそも入学当初に俺が言って否定してきたことじゃないか!
キョン「ハルヒ、おまえそれ本気で言ってるのか?」
ハルヒ「本気もなにも、キョン、あんたもそう思わない?
もっともっと普通の高校生が、みんなが楽しんでるような
高校生活を送りたいと思わない?」
キョン「SOS団はどうするんだ?おまえが団長なんだぞ」
ハルヒ「知らないわよ。みんなが続けたいなら続ければいいと思うし、
そうでないなら解散すればいいでしょ?」
キョン「!」
ハルヒ「とにかくあたしは今日限りで辞めるから、みんなにもそう伝えといて」
キョン「お、おいハルヒ…」
ハルヒ「じゃああたし人を待たせてるから、また明日ね!」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:19:35.12 ID:lEeyln1l0
(キョン)
走り去っていくハルヒを追いかけることもできなかった。
こういうのを絶句というのだろう。
どうなってやがるんだ!
古泉の言っていた異常事態ってのはこのことなのか?
変わったのは世界ではなくハルヒなのか?
それともまた夢でも見せられているのか?
そうなら早く覚めてくれ!こんなの…ハルヒじゃねぇ!
そうだ…!長門の家に行かなければ。
あいつはなんでこうなったのか知ってるんだろう。
そしてどうすれば元に戻るのかも…。
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:24:00.48 ID:lEeyln1l0
====長門のマンション====
(キョン)
ここに来るのは久しぶりだな。
去年の年末、あのハルヒが消えたとき以来か。
どうせならまたハルヒがいなくなった、とかの方が気が楽だ。
今は目の前にいるのにいなくなっちまったようなもんだからな…。
ピンポーン
キョン「えぇっと…」
ウイーン
キョン「おぉ開いた」
ガチャ
長門「・・・・・・どうぞ」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:27:34.91 ID:lEeyln1l0
キョン(相変わらず何もない部屋だ。
でも今日ばかりはその方が安心するぜ。
これで長門まで変わっちまってたら気が狂うだろうからな)
長門「・・・・・・座って」
キョン「ああ」
長門「お茶・・・・・・飲んで」
キョン「ああ」
長門「・・・・・・おいしい?」
キョン「ああ」
キョン(このやりとり、いつもの長門だな)
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:31:12.70 ID:lEeyln1l0
キョン「さっそくだが長門、ハルヒについての話ってなんだ?」
長門「・・・・・・」
キョン「俺からも聞きたいことが山のようにあるが、まずはおまえの話を聞かせてくれ」
長門「・・・・・・ごめんなさい」
キョン「?」
「どうしてあやまるんだ?」
長門「・・・・・・」
「涼宮ハルヒの異常の原因は・・・わたし」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:39:16.26 ID:lEeyln1l0
キョン(長門が原因でハルヒがおかしくなった…?)
キョン「どういうことだ長門?
去年ハルヒが消えたときみたいにまたどこかおかしくなったのか?」
長門「そうではない」
「今のわたしにエラーなどは観測されない」
キョン「じゃあなんだよ?」
長門「情報統合思念体は涼宮ハルヒの観測を続ける中で
ある一定の条件を加えることで涼宮ハルヒがどのような
情報操作と情報生産、及び行動を取るのかに興味を抱いた。
そしてわたしが昨年末に行った世界情報の改ざんの要領で
その条件を涼宮ハルヒに加えるという実験を行った」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:46:29.66 ID:lEeyln1l0
キョン「…また難しい言葉を…。
つまり今回はおまえの独断ではなく、おまえは上司の指示に従ったってことか?」
長門「・・・・・・一部を除いてはそういうことになる」
キョン「一部ってなんだよ?」
長門「その実験に関する一部の詳細設定の決定はわたしに一任された。
そしてわたしは涼宮ハルヒの周辺環境情報を基に
今回の実験に必要な条件や人選を行い、決定した。
従ってその結果に対する責任の大部分はわたしにある」
キョン「で、ハルヒに加えた条件ってなんなんだ?」
長門「・・・・・・恋愛」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:57:04.72 ID:lEeyln1l0
キョン「なっ…恋愛?」
長門「情報統合思念体は地球人類の大半が抱く恋愛感情に興味を抱いていた。
異性や他人という概念を持たない情報統合思念体にとって
怒りや悲しみといった感情は理解の範疇ではあるが、恋愛感情はそうではない。
情報統合思念体によって作られたわたしもまた同じ。
そんな未知のものが重要な観察対象である涼宮ハルヒにも以前から存在し
ときに精神状態を大きく左右するそれの解明を急ぐという選択をした」
キョン「ちょっと待て!ということはおまえがハルヒに恋愛をさせたってことか?」
長門「・・・・・・そう」
キョン「そんなことできるのかよ?」
長門「難しいことではない。
涼宮ハルヒのある近しい人物に対する見方を美化するように操作しただけ」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:04:44.47 ID:qaX97iw40
キョン「待て待て!」
長門「・・・・・・」
キョン「百歩譲ってハルヒが恋愛するのはいいとしよう。
だが今のあいつの変わりようは彼氏ができたとかいうレベルじゃないぞ!
まさに人が変わったみたいだったし…
それにSOS団を辞めるとまで言い出したんだぞ!」
長門「・・・・・・それが情報統合思念体にとっての誤算だった」
キョン「誤算?」
長門「恋愛をさせることによって涼宮ハルヒの能力の大半は失われてしまった。
加えて地球上における不思議なことに対する興味もほぼ消失してしまった」
キョン「…どういうことだ?」
長門「今の涼宮ハルヒは・・・・・・不思議なことに特に興味もなく、
そして何の能力も持たない、ただの高校生となってしまった」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:11:40.82 ID:qaX97iw40
キョン「なっ…なんだと…?」
キョン「ハルヒが普通の高校生になった?」
長門「・・・・・・」コクリ
キョン「恋愛しただけでか?」
長門「・・・・・・」コクリ
キョン「そんなことがあるのか?なんでだ?」
長門「何故このようになったのかは現在解明を急いでいるが、まだわからない。
おそらくこの先も解明できないと予想される。
情報統合思念体にとって恋愛感情は未知のもの。
同時に涼宮ハルヒの能力もまた未知のものだった。
その組み合わせを同時に解明させることは、おそらく不可能」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:17:25.94 ID:qaX97iw40
キョン(ハルヒが恋愛、そして普通の女子高生になった…だと?
どうなってんだ?そしてこれからどうなるんだ?)
キョン「…で、それは元に戻せるのか?」
長門「・・・・・・不可能」
キョン「…えっ?」
長門「現段階ではその手段は発見されていない」
キョン「じゃあハルヒはずっとこのままってことなのか?」
長門「・・・・・・」コクリ
キョン「じゃあSOS団に戻ってくるってことも…」
長門「通常の思考を持つ女子高校生であれば、その可能性は限りなくゼロに近い」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:30:00.96 ID:qaX97iw40
キョン(なんてこった…ハルヒがまともになったらそれはもうハルヒじゃないだろ。
それにしてもなんで恋愛なんかでこうも変わっちまうんだ?
ん…?…恋愛?)
キョン「長門、恋愛っていうからには相手がいるだろう。誰なんだ?」
長門「・・・・・・谷口」
キョン「なっ…なんだと…!」
長門「あなたのクラスの谷口」
キョン(そういえば彼女ができたって言い始めたのとハルヒが部活に来なくなった時期は近いが…)
キョン「な、なんであいつなんだ?」
長門「涼宮ハルヒの周辺の人物に違和感を持たれないように人選すると最も適していた。
中学生のころから現在も同じクラスで、家も近い。
何より以前から谷口は涼宮ハルヒの容姿を褒め称える発言を周囲にしていた」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:41:26.05 ID:qaX97iw40
キョン「言われてみればそうだが…。
でも他にいなかったのかよ?古泉でも良かっただろう?」
長門「古泉一樹は涼宮ハルヒを監視する組織に属する者なので選択から排除した」
キョン「そ、それなら…俺は、俺ならどうなんだ!」
(キョン)
そうだ…今俺がこんなに動揺しているのはハルヒは俺に気があると心のどこかで思っていたからだ。
だからこそ閉鎖空間からも戻ってこれたし、SOS団にも選ばれたんだ。
そのことは長門であればわかっていたはず。
そして…そしてきっと俺もハルヒのことが…
長門「確かに情報統合思念体はあなたを選択した。
あなたが涼宮ハルヒに選ばれた存在であったことは誰もが認める事実。
・・・・・・あなたを選択から外したのはわたしの独断」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:50:34.11 ID:qaX97iw40
キョン「…どういうことだ?」
長門「涼宮ハルヒの中にあなたが、そしてあなたの中に涼宮ハルヒが
恋愛対象として存在していたことは情報統合思念体も予測できていた。
恋愛関係となった場合に周辺人物から最も自然に見られるのがあなたである
確率が最も高いという予測数値も出ていた」
キョン「なら…なんで…」
長門「・・・・・・それが許せなかった」
キョン「…!?」
長門「・・・・・・うまく言語化できない」
「・・・・・・しかしエラーでもない」
「・・・・・・従って説明することができない」
「・・・・・・でも・・・・・・わたしはそう決めた」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:57:46.39 ID:qaX97iw40
長門「涼宮ハルヒの能力や特殊思考が失われてしまったことはアクシデント。
だがそれ以外は実験開始当初からの計画通り」
キョン「…長門?」
長門「普通の人間となり恋愛対象者ができた涼宮ハルヒにとって
今のあなたは必要のないただのクラスメイトにすぎない」
キョン「…!本当に、もう元には戻せないのか?」
長門「・・・・・・不可能。
仮に可能であったとしても・・・・・・わたしはそれを拒否する」
キョン「な、なんでだ…」
長門「これより当実験の最終プログラムを実行する」
キョン「最終…プログラム?」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:06:41.21 ID:qaX97iw40
長門「昨年末、あなたは改変後の世界の涼宮ハルヒではなく現在の涼宮ハルヒを選択した。
そして改変後の世界のわたしではなく今のわたしを選択した」
キョン「……」
長門「・・・・・・あなたの中の恋愛対象としての涼宮ハルヒを消去する」
キョン「な…長門…」
長門「そしてその場所に・・・・・・わたしという存在を埋め込む」
キョン「じょ、冗談だろ?やめてくれよ…長門!」
長門「冗談ではない」
キョン「なんでだよ!何のためにそんなことするんだ!?」
長門「・・・・・・わからない」
「・・・・・・うまく言語化できない」
「・・・・・・でもエラーではない」
「・・・・・・だから・・・・・・説明できない」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:18:57.56 ID:qaX97iw40
キョン「そんなことしたらおまえの親玉が許さないだろう!」
長門「情報統合思念体は能力を失った涼宮ハルヒの観測を取りやめることを決定した。
同時にわたしもその役目を終えることになった。
涼宮ハルヒの特殊能力に関する人々の記憶を削除するのがわたしの最後の仕事」
キョン「そ、そんなこと…!」
長門「朝比奈みくるは元の時間平面に帰還し、古泉一樹は何の能力も持たない人間となる」
キョン「長門…おまえは…」
長門「わたしは今回の、そしてこれまでの全ての役割に対しての褒賞をひとつだけ要求した」
キョン「褒賞?」
長門「それが・・・・・・あなたと同じ人間になること」
キョン「…長門」
長門「終了と同時に・・・・・・わたしはただの人間になる・・・・・・あなたと同じ、ただの人間に」
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:26:13.20 ID:qaX97iw40
キョン「長門…それがおまえの本当に望んだことなのか?
自分でもわからないところでまたおかしくなってたりとか、
親玉に言わされてるとか…そんなんじゃないのか?」
長門「・・・・・・それらの可能性は低い」
キョン「……」
長門「わたしの中の情報を・・・・・・言語化するのなら・・・・・・」
「わたしはここにいる わたしをちゃんと見て」
長門「・・・・・・最終プログラム、起動」
〜〜〜Fin〜〜〜
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:28:21.08 ID:qaX97iw40
サーセンwwwwww
もうちょっと先まで構想を練っていたのですが疲れたのでここで終了しますwwwww
初めてSSスレたててみたんですがこんなにしんどいものとは・・・w