古泉「また団室で……」


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1 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:01:24.90 ID:u9378YZl0


───晴れ、フェリーのデッキ 大学二年の夏

フェリーの波を割く音、どこかでカモメの鳴く声


キョン「なつかしいな」

古泉「そうですね、実に四年ぶりになります」

キョン「あの頃はまさか大学に入ってまでお前らと付き合いがあるなんて思ってもなかったよ」

古泉「僕はこうなるべく行動してきましたが? 事態の安定が機関の目的でしたから」

キョン「そうかい」

古泉「……ふふ、しかし僕が涼宮さんとこのような関係になるとは思ってもみませんでしたよ」

キョン「お前はいつまでたっても“さん”付けなんだな。そろそろ名前で呼んでみたらどうだ?」

古泉「慣れないことをすると足を攣ってしまいます。それに、呼称なんて些細なものだと思いませんか?」

キョン「……そうかい」

2 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:02:35.50 ID:G3y73jsl0


キョン「……随分良い天気だな」

古泉「そうですね。前々から日程も決めてしまっていましたし、もし雨でも降ったらどうしようかと思いましたよ」

キョン「これも涼宮のお望みなのかね」

古泉「……さて、それはどうでしょうか。なんにせよ晴天であることは良いことです。素直に喜ぶこととしましょう」

キョン「そうだな。だがどうしてこの日程だったんだ? 8月12日にしたことには何か意味があるのか?」

古泉「特別な意味がある訳ではないんですが、この日程でなければ館が空いていなかったんですよ」

キョン「なんだ、あの館、別の目的にも使ってるのか?」

古泉「そりゃそうですよ。組織の資金だって無尽蔵ではありませんからね、なるべく限り資源資本は有効活用しなければなりません」

キョン「言われてみるとそうだな。で、あの館は何に使ってるんだ? そんなに多くの利用方法もなさそうだが」

古泉「そうでもありませんよ。あの館は高級コテージとして貸し出しています。都内からそれなりの近さにあるということで人気があるんですよ」

キョン「確かに立地は悪くないな。涼宮の欲求を満たすためだけに使うのでは、あの土地も浮かばれないだろうよ」

古泉「ごもっともです。とはいえ、あの島自体、涼宮さんのために存在するのかもしれませんが」

キョン「お前の涼宮創造論は聞きあきたよ」


3 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:04:05.89 ID:G3y73jsl0


古泉「しかし本当に良い天気ですね」

キョン「四年前を思い出しちまうな。あの殺人事件ごっこには冷やりとさせられたぜ」

古泉「ふふっ、でも楽しめたでしょう?」

キョン「終わってみればな。でもあの時はそれどころじゃなかったぞ。ブラックジョークもいいところだ」

古泉「あれぐらいしないと、あの頃の涼宮さんは収まりがつきませんでしたから」

キョン「確かにな。だがもうあんなイベントは御免被りたいぞ」

古泉「ご心配なく。あの時とは違い、事態は安定しておりますので」

キョン「……そうかい」

古泉「あの時と違うといえば、妹さんは何故連れてこられなかったんですか? 今回は正式な招待状を送らせていただいたのですが」

キョン「……妹はちょっと今ふさぎこんでいてな」

古泉「そうだったんですか。何があったんです?」

キョン「三日前にシャミセンが死んだんだ」

4 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:06:43.07 ID:u9378YZl0


古泉「シャミセンというと、あの人語を解する不思議な猫ですか?」

キョン「もう随分とアイツが喋るところは見てなかったけどな。とにかく、シャミセンはうちの居間でお亡くなりになった。四年前の地点でもう年をくってたんだ。寿命だったのさ」

古泉「貴方はずいぶんと平静でいられるのですね」

キョン「俺だって随分へこんだぞ。だが妹が部屋に閉じこもってるのに、何故俺までへこんでばかりいられるんだ?」

古泉「……そうですね」

キョン「俺にとっては高1からの付き合いだったが、妹は小5からだからな。それに妹はシャミセンにべったりだったし、妹が未だに引きずっているのは、よくわからんがそういうのも関係しているのかもしれん」

古泉「立ち入ったことをお聞きして申し訳ありませんでした」

キョン「そんなに気にすることでもないさ。シャミセンとおまえは無関係じゃないんだ、今でなくてもそのうち話すことになってただろうよ」

古泉「そういっていただけると助かります」

キョン「おう。……風が気持ちいいな。あとどれぐらいだっけか?」

古泉「もうあと30分程度で到着しますよ」

キョン「そっか」

タタタッ

長門「キョン、みっけ!」ガシッ

キョン「のわっ! 突然腰に抱きつくな! 長門!」

6 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:08:27.47 ID:u9378YZl0


長門「だって気づいたら中にいなくなってたんだもん。たくさん探したんだよ?」

キョン「そんなに探すところもないじゃないか。それに長門が眠っちまったからだろ?」

長門「僕が寝ちゃったら、置いてけぼりでどっかいっちゃうわけ?」

キョン「そういう訳じゃないが……。ほら、こんだけ天気が良けりゃ外に出たくもなるじゃないか」

長門「……むー、それなら僕も起こしてくれればよかったのに」

キョン「あんまり気持ちよさそうに寝てたから起こすのが忍ばれたんだよ。それに揺れが苦手だっていってただろ? 寝れて良かったじゃないか」

長門「でも……」

キョン「分かった分かった。次からはちゃんと起こすから、それでいいか?」

長門「な、なんか投げやり……」

古泉「まぁまぁ、彼が外に出たくなるのもわかりますし、長門さんが眠くなるのもよくわかりますよ。この晴天下であればね」


7 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:11:10.20 ID:u9378YZl0


キョン「そういや他のみんなは?」

長門「涼宮さんと朝比奈さんは昔のアルバムをみてたよ。なつかしーなつかしーって言ってた」

キョン「昔の?」

長門「そう。えっと、四年前にもこの孤島に来たんでしょ? その時の写真だって」

キョン「……そうか。しかしえらい前のものを持ち出してきたな。涼宮らしくもない」

古泉「時には感傷に浸るのも良いではありませんか。今回あの島で再び合宿することにしたのも、実は僕のちょっとした思い出巡りも兼ねているんですよ」

キョン「いるよな、20歳になったからって自分がえらく変わってしまったと思いこむ奴。お前もそうだったとはね」

古泉「ふふ、そこまでのことではありませんよ。……ただ少し、自分の価値観に正直になりたいと思っただけです」

キョン「え?」

古泉「楽しいことをしたいんですよ、僕も。ただそれだけです」

キョン「よくわからんな」

古泉「ふふ、そのうちにあなたにもわかりますよ」

キョン「……何が言いたい」

古泉「さあて、ね。あ、涼宮さんたちがデッキに出てきましたよ」


9 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:13:20.17 ID:u9378YZl0


ハルヒ「おー! 風が気持ちいーわねー!」

朝比奈「そうですねー」

キョン「涼宮、懐かしいもの持ってきてるらしいじゃないか。俺にも見せてくれよ」

ハルヒ「うん? あ、写真のこと? あれ持ってきたのあたしじゃないわ」

朝比奈「わたしが持ってきたの。合宿の準備をしてたら、偶然出てきたんです」

ハルヒ「合宿の写真だけじゃないわよ? ミクルちゃんの秘蔵写真やらが搭載されたSOS団の高校卒業アルバム!」

キョン「ん? そんなもんあったっけか?」

古泉「それなら僕も持ってますよ。確か、卒業式の後に涼宮さんから受け取った記憶があります」

長門「あ、そういえば僕の家にもあったよ? 本棚に入ってたと思う」

キョン「おいおい、そんなの聞いてないぞ!」

ハルヒ「あっれぇ? キョンには渡してなかったっけ?」

キョン「断固として受け取っておらん!」

ハルヒ「じゃあ渡してないんでしょうね。いいじゃないの。別にいまさらいらないでしょ?」

キョン「今とか昔とかそういう問題じゃないだろ。俺の高校生活の記録と言っても過言じゃないってのに」


11 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:16:10.61 ID:u9378YZl0


ハルヒ「ふぅん。あんたも案外SOS団に重きを置いてたのね」

キョン「お前のせいだろうが! 放課後のほとんどすべてをSOS団に費やすことになったのは誰のせいだ! 全く」

ハルヒ「他にもいろいろと持ってきたかったんだけど、見つけられなかったのよねぇ。残念だわー、ミクルちゃんの映画のディスク、どこ行っちゃったのかしら」

キョン「……お前はいつまでたっても人の話を聞かない癖は治らないな」

ハルヒ「いいのよ細かいことは! とにかく、あんたたちは私に付いて来さえすればいいのよ! それでこれまでだって楽しくやってきたじゃないの!」

古泉「おっしゃる通りで。確かに高校時代は慌ただしく身魂が随分と擦り減りましたが、思い返せばよき思い出ばかりかと」

ハルヒ「そうよね! キョンもいっくんぐらい素直になりなさいよ!」

キョン「やれやれ。お前はいつまでたっても子供のままだな」

ハルヒ「何それ、どーゆう意味よ?」

キョン「別に? 大した意味はない。この合宿も先が思いやられる、ってだけだ」

ハルヒ「久々のSOS団のイベントなのに、その無気力さは一体なんなの? 世が世なら市中曳きまわしの上、お尻を金属バットで100回ぶんなぐられてるところよ!」

キョン「金属バットはどの時代に渡来したんだろうね」

古泉「……」


12 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:18:14.71 ID:u9378YZl0


───ボートへの中継所

古泉「新川さん、お久し振りです」

ハルヒ「あ! あの時の執事じゃない!?」

新川「こんにちは、本日はようこそおいで下さいました。皆さんお元気そうでなによりです。それに随分落ち着かれて、もう大人のように扱った方がよろしいのでしょうな?」

古泉「……あれ、森さんはどうしたんですか?」

新川「森? ああ、以前に一緒にパートタイムで入っていたメイドでございますね。彼女はあれ以来顔を合わせてございません」

古泉「……」

ハルヒ「ん? じゃあ新川さんはどうしてまた今日迎えに来てくれたの?」

新川「わたくしは多丸圭一氏に専属で雇われることになったのです」

ハルヒ「そうなんだ? じゃあずっとあの館にいるの? 一年中?」

新川「いえ、そうではありません。主人があの館に滞在するのは中長期の休暇が取れた際でございます。普段は都内の邸宅にて執事をやらせていただいております」

ハルヒ「へぇー。なんか色々なとこいけて楽しそうね!」

新川「左様であるかもしれません。ささ、立ち話もなんですし、続きはボートの方でいたしましょう」


13 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:20:19.66 ID:u9378YZl0


───ボート

波を割く音。激しくはないものの、フェリーよりも強い揺れ。


長門「……あー、僕、やっぱり舟苦手だよう」

キョン「腕、掴まるか?」

長門「ありがとう。……少し楽になったかも」

新川「しかし皆さんお変わりになられましたな」

ハルヒ「そう? そうでもないわよ?」

新川「いえいえ。四年ぶりにお会いした私からすれば、皆さんまるで別人のように成長しておられます」

ハルヒ「ふぅん。そんなもんかしら」

新川「特にそこのお嬢さん、前に来られた時はもっと物静かで自分を抑えておられましたが、今はずいぶんと皆さんに馴染まれたように見えます」

長門「……ん? 僕のこと?」

新川「左様で。船酔いは大丈夫ですかな?」

長門「ん、ありがと。大丈夫……キョンの腕にしがみついてれば」

新川「……左様で」


15 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:22:56.61 ID:u9378YZl0


新川「どうでしょう、もう少しスピードを抑えれば揺れも抑えられるやもしれませんが、スピードを落としましょうか?」

長門「……え? 僕に気を使ってくれてるの? ありがと、大丈夫だよ」

新川「しかしキョンさんの負荷もあるやもしれませんし……」

ハルヒ「だーいじょうぶ。キョンは、むしろ嬉しいぐらいよねぇ?」

キョン「ええ、心配しなくても大丈夫ですよ、新川さん」

新川「……はぁ」

キョン「俺はコイツの彼氏ですから」

ハルヒ「……」

新川「さ、左様でございましたか。やや、お節介焼きを申し訳ない。老婆心だと思ってお忘れください。……いや、四年も経つと色々あるものですなぁ」

キョン「そうですね。思いもよらないことばかりですよ」

長門「……ふふ」

朝比奈「あ、あそこ! あれ島ですよね? わ、わ、久しぶりだなぁー!」



古泉(この四年間で、我々の関係は大きく変わりましたね)


17 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:25:03.93 ID:u9378YZl0


古泉(確かに維持しようというのは難しかった。皆、立ち位置が変わりましたからね。朝比奈さんは表向きには就職したことになっていますが、実際のところそのほとんどの時間を未来に戻って過ごすようになったようになりましたし。

大学入学当初、涼宮さんは高校時代と同じようにSOS団を結成しました。そのころの彼女は四年前に匹敵する行動力や強引さを持っており、大学が保有する膨大な数のサークル室の一つを当たり前のように手中におさめました。

実際、彼女は高校時代と同じ関係を維持しようとしたものと推測しています。やり尽くした感があった高校時代が終わり、大学生活という新たなステップに入ったことを彼女は喜んでいるように見えました。

ふふ、入学した時には僕もSOS団の活動が幅を少し広げるのだろう、その程度の認識しか抱いていませんでした。

……ですが、こうまで上手くいかなくなるとは。さて、責任は誰に有ったのでしょうね? ふふ)


18 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:27:07.97 ID:u9378YZl0


新川「さて、到着しました。気を付けてボートからお降り下さい」

キョン「古泉、先に降りてくれ。俺は長門の手を引いてやらにゃならん」

古泉「了解しました。それではお言葉に甘えて」

ハルヒ「……いっくん! ちょっと手を貸してくんない?」

古泉「おっと、申し訳ありません。掴まってください、揺れますからお気をつけて」

キョン「ったく古泉は涼宮の彼氏だろう? いちいちかしこまりすぎだぞ」

ハルヒ「そこらへんの日本語喋れないような若者たちとは違うの! ね?」

古泉「ふふ、お褒めに預かり光栄ですよ」


古泉(思わぬことに……僕は涼宮さんの彼氏になってしまいました。でもそれがSOS団の楽しき日々─僕は本当にそう思っていたのですよ─が瓦解する始まりだったのではありません)

古泉(何が始まりだったか、貴方は分かっているのでしょう?)


19 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:29:11.79 ID:u9378YZl0


───館、男子が泊まる客間


キョン「……なんでお前と同じ部屋に泊まらなければならんのだ。説明してもらいたい」

古泉「はて、四年前と同じではありませんか。何かご不満でも?」

キョン「あの頃は高校生だっただろうが。今は大学生、そして彼氏彼女だぞ? どうして違う部屋に泊まる必要があるんだよ」

古泉「なるほど、長門さんと同じ部屋で泊まりたいと」

キョン「当然だろ。お前だって涼宮と同じ部屋がいいと思ってるんじゃないのか?」

古泉「……僕の意思は置いておいたとして、すると朝比奈さんはどうするんです?」

キョン「……あ」

古泉「空き部屋はありますし移っていただくことも可能ですが」

キョン「……そういうわけにもいかんだろ。今のままでいいさ」

古泉「この島にいる間ぐらい誰彼が付き合ってることなんて忘れて、SOS団として楽しもうじゃありませんか」

キョン「やれやれ」

古泉「んふ」


20 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:31:19.48 ID:u9378YZl0


───海


ハルヒ「やっと来たわね! 女の子より遅いってどういうことよ! 罰ゲームとして砂に埋まりなさい!」

キョン「おいおい、古泉も遅れてきただろうが。こいつも埋めるのか?」

ハルヒ「何いってんの! キョンだけに決まってるじゃないの!」

キョン「ちくしょう、何差別なんだこのやろう」

ハルヒ「顔よ!」

キョン「はっきり言うな!」


22 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:33:23.17 ID:u9378YZl0


古泉「まぁまぁ、顔がすべてではないというじゃありませんか」

キョン「お前が言うセリフか! それにお前には断固言われたくない!」

朝比奈「キョン君、顔がすべてじゃありませんよ。ね?」

キョン「朝比奈さんまで! しかも、ね?ってシャベル持って言わないで下さいよ!」

長門「キョン! ほら、ここらへん陽辺りがよくて気持ちよさそうじゃない? ここに穴を掘ろうよ!」

キョン「家を買おうよ! みたいなノリで言うな! 俺は蟹でもなんでもないぞ!」

古泉「うーん、実に良さそうな土地に見えますが……他の人が埋まってないのが不思議なぐらいです」

キョン「穴だけに穴場ってか!」

ハルヒ「いいから埋まりなさい! 団長命令よっ! ほーらっ! とりゃー!」


23 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:35:30.02 ID:u9378YZl0


キョン「結局いつもこうなるんだよな」

古泉「苦しくはありませんか?」

キョン「苦しくはないが……。縦に掘った穴に埋められたのは初めてだぜ。正直生きた心地がしない」

古泉「ここらは満ち潮になったら波が届くようになりますから、気をつけてくださいね」

キョン「気をつけようがないだろ! それに夜まで埋めとくつもりか!」

古泉「冗談ですよ」

キョン「当たり前だ、まったく」

長門「キョンいいなぁ、僕も埋まりたいよ。キョンが出た後僕が埋まってもいい?」

キョン「やめとけ、俺サイズの穴にお前が入ったら本当に死ぬぞ」

長門「た、たしかにそうかも」

ハルヒ「さーて、次は西瓜割りでもやろうかしら! キョン、西瓜割りの西瓜役やりなさい!」

キョン「割れたら果肉の代わりにひどいものが飛び出すぞ!」

ハルヒ「いいじゃない、リアルで。ほら、目隠しするわよ」

キョン「いや、ほらじゃないだろ、なんで俺が目隠しするんだ、逆だろ逆。いや、逆でもないな、俺は西瓜じゃないんだから」


25 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:37:41.18 ID:u9378YZl0


ハルヒ「それじゃ、割る役は勿論団長の私でいいわよね?」

古泉「ふふ、お任せしますよ」

長門「僕は西瓜が食べられればそれでいいよ!」

朝比奈「私では手元が狂っちゃいそうですから遠慮しますぅ」

ハルヒ「満場一致ね! それじゃあいくわよ!」

キョン「ちっがーう! だから違う! 俺は断固反対だ!」

ハルヒ「西瓜に投票権はないわ」

キョン「俺は西瓜じゃないぞ! いや、本当に冗談じゃすまなくなるから! やめろ!」

ハルヒ「あーあー、西瓜の言葉はわかりません」

キョン「おい! 助けろ古泉! わかるだろ? 流石の俺でもたんこぶじゃ済まないぞ!」

古泉「新川さんは医師の資格も持っていますし、応急処置ぐらいはなんとかなりますよ」

キョン「そういう問題じゃない! 第一応急処置が済んでも病院にいける場所じゃないだろここは! いや、やっぱりそういう問題じゃない! 人道的な問題だ!」

ハルヒ「西瓜道とは、割られることにみつけたり!」

キョン「だから西瓜じゃないって! いやだ! だから、えっと、そうじゃないだろ! ほら! 俺西瓜アレルギーなんだよ、あー痒い痒くてたまらない! だから西瓜割りなんてやめよう!」


27 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:39:47.21 ID:u9378YZl0


ハルヒ「ゴチャゴチャうるさいわね! いいから行くわよ! SOS団ばんざーい!」

キョン「ぎゃー!」

パカッ


キョン「……あれ、目隠しが赤く染まってる気がする……」

長門「キョン! キョン! 大丈夫? ねぇ!? 聞こえる!?」

キョン「……俺……くそっ、この血の量なら助かりそうもないな……」

朝比奈「キョン君!」

キョン「こんなことで死ぬなら……アイツに……」

古泉「……」

ハルヒ「キョン! いつまでそーしてんのよ! さっさと起きなさい!」

キョン「死に際までそれかよ、やれやれ、報われないな俺も」


29 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:42:14.43 ID:u9378YZl0


ハルヒ「……はぁ。相変わらず冗談が通じないわね。有希! 目隠し取ってあげて」

長門「うん!」

スルスルスルスル

キョン「まぶし……ここは天国か? ってみんな? みんなも死んだのか?」

ハルヒ「そんな訳ないじゃない。ちょっと横見てみなさいよ」

キョン「横? って……なんだこの赤と緑と黒な奴は」

ハルヒ「ちょっと! SOS団ならもっと思考を張り巡らせなさいよ!」

キョン「えっと……仮面ライダーBLACK RXの死骸?」

古泉「ずいぶんと思考が飛びますね。残念ながらハズレですが、見事です」

長門「どこらへんが見事なの???」」


31 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:44:17.21 ID:u9378YZl0


キョン「すまん、混乱して状況がよくわからん。なんだこれは」

古泉「どこからどう見ても西瓜じゃありませんか。しかも奇麗に割れている、ね」

キョン「どーゆうことだ?」

ハルヒ「あんたに目隠しした後、西瓜を横に置いて。それを叩き割った、って訳」

キョン「……」

古泉「ちょっとしたジョークですよ」

キョン「……悪趣味すぎるぞまったく」

ハルヒ「何? 本気で頭をかちわられると思った訳?」

キョン「お前ならやりかねないだろうが!」

ハルヒ「な、何よ! ちょっと場を盛り上げようとしただけじゃないの!」

キョン「手元が滑ってたら今ごろ俺はどうなってると思う!」

ハルヒ「SOS団の団長である私がそんなミスする訳ないわっ! あんたとは違うんだから!」

キョン「!! ……もういい。お前とはまともな会話はできん。とにかくこっからさっさと出せ」


33 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:46:38.71 ID:u9378YZl0


ハルヒ「何その言い方!? あんたはSOS団の団員なんだから、黙って私に従ってればいいの!」

キョン「何がSOS団だ。大学入ってから全然活動もしてないじゃねーか」

ハルヒ「それは……」

キョン「とにかく、さっさと出せ。もうこんなところに一秒たりとも埋まってたくないね」

ハルヒ「……もういい。あんたなんか一生そこに埋まってなさい! フンッ」

タッタッタッタ

35 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:48:57.59 ID:u9378YZl0


キョン「……」

朝比奈「い、今掘り出しますね」

キョン「ありがとうございます」

古泉「まったく貴方という人は。このようなこと日常茶飯事だったではありませんか」

キョン「……久々だったし、ついカッとなっちまったんだよ。そういや、閉鎖空間はいいのか?」

古泉「え? あ、ああ。さっき携帯が鳴っていましたが、流石にこの島から駆けつけるわけにもいきませんので」

キョン「携帯? 海にそんなもん持ってきたのか?」

古泉「……あちらのバックに入れてあるんですよ。万が一のこともありますから」

キョン「……そうかい」


36 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:51:03.75 ID:u9378YZl0


古泉「さあ手を」

キョン「すまんな」

グッ ザッザッ(キョンが穴から這い出る)

キョン「ったく、偉い目にあったぜ」

長門「キョン! せっかく海に来たんだから、もっと遊ぼうよー!」

キョン「俺は疲れててだな……」

古泉「そんなことは言わず。少しは長門さんに構ってあげたらどうです? 彼氏なんですから」

キョン「わかったわかった。朝比奈さんも一緒に遊びましょう」

朝比奈「いいんですかぁ?」

キョン「当たり前じゃないですか。なぁ?」

長門「もっちろんだよ! 僕ビーチボール持ってきたんだ! 一緒にキョンをとっちめよっ!」

古泉「それでは僕も……」

キョン「お前はダメだ」


38 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:53:10.95 ID:u9378YZl0


古泉「なぜです?」

キョン「俺が長門の彼氏であるように、お前は涼宮の彼氏だろうが」

古泉「……つまり、彼女の機嫌を直してきて欲しいと?」

キョン「……」

古泉「……」

キョン「……あーそうだよ! 俺には非がなかったがな、このままの空気じゃ朝比奈さんや長門に悪いだろうが」

古泉「まったく素直じゃありませんね。わかりました、それでは僕は涼宮さんのことを追うことにしますよ」

キョン「頼む」

古泉「僕の分の西瓜、とっておいてくださいね」

キョン「ああ」

長門「おーいキョーンー! なーにやってるのさ! 早くー!」

キョン「わかったわかった! それじゃ、任せたからな」

タッタッタッ

古泉「……さて、彼女はどちらに行ったのでしょうね……」


39 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:55:16.35 ID:u9378YZl0


───女子部屋、羽布団にくるまっているハルヒ

ハルヒ「……」

古泉「……こんなところにいましたか」

ハルヒ「……やっぱり……」

古泉「ええ、彼は来ませんでした。でも彼は貴方に謝りたいと言っていましたよ?」

ハルヒ「……じゃあなんで自分で来ないのよ」

古泉「彼は素直じゃありませんから。貴方も知っているでしょう?」

ハルヒ「……」

古泉「せっかくこんなに天気が良いのですから、外に出て皆で遊びませんか? 久々にSOS団が集合したんですから、一人でいては勿体ありませんよ」

ハルヒ「……いっくん、もっと近くに来て」

古泉「はい? ええ、わかりました」

ハルヒ「……ねぇ」

古泉「なんですか?」


ハルヒ「抱いて?」


42 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:57:25.51 ID:u9378YZl0


古泉「涼宮さん……」

ハルヒ「ねぇ、抱いてよ」

古泉「……」

古泉はハルヒのことを後ろから優しく抱き締める。

ハルヒ「ねぇ、こんなんじゃ足りないんだけど」

古泉「……」

ハルヒ「まだ駄目なの……?」

古泉「……はい」

ハルヒ「それは……私のせい?」

古泉「いいえ、貴方はとても魅力的な女性です」

ハルヒ「客観的な評価なんていいの。いっくんは私のことどう思ってるのよ?」

古泉「勿論、好きです」

ハルヒ「じゃあなんで……」

古泉「初めての時が奇跡だったんです。それまでも、それからも、あの時のようなことはありませんでした」


43 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 00:59:37.13 ID:u9378YZl0


ハルヒ「……あ」

古泉「一緒になることはできませんが……」

ハルヒ「ん……」

古泉「貴方のことを慰めてあげたい」

ハルヒ「そんな……ん」

古泉「いいんです、私は貴方のことが好きですから。貴方のためになら……」

ハルヒ「いっくん……」

古泉「自分のことなんてどうでもいいんです。貴方の幸せが、僕の幸せなんですよ」


44 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:01:44.34 ID:u9378YZl0


ハルヒ「……」

古泉「……これまでも、これからも」

ハルヒ「……うわぁん」ポロポロッ

古泉「……」

ハルヒ「……ごめん、ごめんね、古泉君……」

古泉「謝ることはありませんよ。さぁ……」

ハルヒ「ごめん、ごめんなさい……」


古泉(その時、彼女が何を謝っていたか分かりますか?)


45 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:03:59.03 ID:u9378YZl0


───砂浜

長門「あ! 古泉君と涼宮さんだ! おーい! こっちこっちー!」

古泉「すみません、遅くなってしまって」

キョン「……それで、どうだったんだ?」


ハルヒ「みんな待たせたわね! ちょっと部屋に忘れ物しちゃって! さあガンガン遊ぶわよ!」


古泉「見てのとおりです」

キョン「まったく、切り替えの早い奴だ」

古泉「……貴方も彼女の笑顔一つで随分人が変わるように見えますが?」

キョン「そ、そんな訳あるか!」

古泉「ふふ」

長門「おーい二人とも何してんのさ! せっかくみんな揃ったんだから、みんなで遊ぼうよ!」

キョン「おうっ」


46 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:06:03.87 ID:u9378YZl0


ハルヒ「エターナルフォースブリザード! とぉーう!」

キョン「ビーチボールと一緒に砂投げつけるのはやめなさいっ!」

長門「凄いっ! ただの砂なのに氷の砂に見えるよっ!」

キョン「そこ、むやみやたらに感心しない!」

朝比奈「ひぇー、目に砂が入りましたぁ……。目がぁ、目がぁ」

キョン「誰かー誰かームスカ大佐に目薬をー!」

……


キョン「ったく疲れたぜ」

ハルヒ「ちょっと休憩したらすぐにまた何かするからね! 何か!」

キョン「無計画の塊だなお前は。一体何をする気だ」

ハルヒ「それは団員のあんたが考えなさいよ」

キョン「俺に丸投げかよ。それじゃー日光浴しながら昼寝でも……」

ハルヒ「却下。そもそもあんたの意見なんてどーでもいいの」

キョン「だろうと思いましたよ、ええ」


48 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:08:13.69 ID:u9378YZl0


古泉「それでは私がその何かを提供させていただきましょう」

ハルヒ「流石いっくんね! 計算通りっ!」

キョン「えらい他人まかせな計算通りだなぁおい」

古泉「皆さん、これからちょっとしたゲームをしませんか?」

長門「ゲーム?」

朝比奈「いったいどんなゲームなんですかぁ?」

古泉「それはですね……ずばり、宝探しです!」

キョン「なんとも切り出しづらそうな提案だな。主にインパクト的に」

古泉「それは言いっこなしです」


49 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:10:20.11 ID:u9378YZl0


長門「でも面白そうだねっ!」

古泉「ルールは簡単です。ここにくじがありますので、二人一組になっていただきます。そしてそれぞれ一枚ずつ宝の位置が記された地図を渡します。先に宝を見つけ出したチームの勝ち、ということで。シンプルでしょう?」

朝比奈「えっと、でも五人いますけど」

古泉「僕は宝の隠し場所を知っていますから、今回のゲームは外から眺めさせていただきますよ」

キョン「なるほどね」

古泉「宝の地図はこの島全体を示しており、目印となるものが記号で記されています。やや複雑になってはいますが、SOS団のみなさんなら陽が落ちるまでには見つけられると思いますよ」

長門「わわ! 僕こういうゲーム大好き! やろうっ! やろうっ! キョンと僕がチームね!」

キョン「くじでチームを決めるって言ってるでしょっ!」

長門「えぇー、だってキョンは僕の彼氏じゃないかぁ!」

朝比奈「ゲームに彼氏も彼女も関係ありません。そうですよね?」

長門「……ちぇっ。いいもん、僕が自分で引き当てるから!」


50 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:12:32.54 ID:u9378YZl0


古泉「ということで、くじびきの結果……」

朝比奈「長門さん、私とチームですね!」

長門「……」

ハルヒ「キョ、キョン! あたしの足を引っ張ったりしたら死刑だから!」

キョン「俺のセリフだ。一人で突っ走って崖から落ちても今度はたすけんからな!」

古泉「それではみなさん、健闘を祈りますよ。ゲームスタートです!」

長門「こうなったら絶対キョン達には負けないもん! いこう、朝比奈さんっ!」

朝比奈「ふぇー、置いてかないでくださーい」

ハルヒ「あたしたちも行くわよ! 団員が団長に勝とうなんて100年早いってこと、彼女らに知らしめてやらなきゃね! 主に体に!」

キョン「体罰反対っ!」


古泉「僕は館にいますので何かあれば……っと、もう皆さんどこかに行ってしまいましたか。やれやれ」


52 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:14:35.95 ID:u9378YZl0


───館、皆に明かされていない監視部屋

ガチャッ

古泉「おつかれさまです」

新川「ああ、おつかれ」

古泉「やれやれ、ようやく少し休めます」

新川「ほら、お前のためにお茶を入れておいた。夏に熱いものでわるいが、それしかなくてね」

古泉「とんでもない、ありがとうございます」

ズズッ

古泉「ふぅ、安まりますね」

新川「それはよかった。……ところで、何か私に聞きたいことがあるのではないか?」

古泉「おっと、いきなりですね」

新川「余り時間もないからな」

古泉「……お聞きしてもよろしいのですか?」

新川「私に答えられることであればね」


54 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:16:42.68 ID:u9378YZl0


古泉「それでは遠慮なく失礼します」

新川「ああ」

古泉「森さんは何故いないのですか? 私は機関に対し、三年前のなるべく限りの再現を要求したのですが」

新川「これが機関の"なるべく限り"だ」

古泉「……そうですか。つまり、機関は……」

新川「お前の想像している通りだ。お前は涼宮ハルヒ付きの人間ということで、常に前線にいたから気付かなかったかもしれんが……」

古泉「機関は縮小している……のですか」

新川「そうだ」

古泉「理由は? 資金難ですか?」

新川「そうではない。機関の必要性が低下し、この機関の存在が皆から忘れられつつあるのだ。我らが機関の存在を認識した時と同じように、突然にね」


55 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:19:09.04 ID:u9378YZl0


古泉「……それは……」

新川「君も分かっているだろう。ずばりだ……」

古泉「……いえ、それ以上言わなくて結構です」

新川「……そうか。そういえば、なぜ彼と長門有希があのような関係になっているのだ?」

古泉「それは……」

新川「それに、お前と涼宮ハルヒの関係についても、機関に詳しい情報を伝えていないようだな」

古泉「……」

新川「別に話したくないのならばいいが」

古泉「いえ、お話しましょう。僕も機関の一員ですから……。涼宮ハルヒを神とし、その力の秘密を探る機関の……」


57 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:21:00.34 ID:u9378YZl0


───回想 一人暮らししている古泉のアパート 玄関


古泉「珍しいですね、貴方が僕の家にくるなんて」

キョン「すまん、終電を逃しちまって……」

古泉「それはそれは……。こんなところでなんですから、上がってください」

キョン「悪いな……。それと、もう一人いるんだが……」

古泉「? どなたですか?」

キョン、背負っている女の子を古泉に見せる

長門「……スゥスゥ」

古泉「ああ、長門さんですか」

キョン「一緒に上がってもいいか?」

古泉「勿論ですとも。どうぞ」


59 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:23:04.87 ID:u9378YZl0


───部屋

古泉「珍しく長門さんが眠っているようですね。一体何があったんですか?」

キョン「……新歓コンパがあってな」

古泉「ふむ」

キョン「それにハルヒと俺と長門で参加したんだよ。ハルヒが大学生の実力とやらを知りたい、といいだしてな」

古泉「なるほど、なぜ僕を誘ってくれなかったんです?」

キョン「ん? あ、ああ。すまん」

古泉「やれやれ」

キョン「とにかく、そこの駅前にある飲み屋で、飲み会に参加した訳だ」

古泉「まだ未成年だということはこの際触れない方がいいのでしょうね」

キョン「大学一年も二年もかわりゃしないだろう」

古泉「そうですね。ただSOS団で飲みをしたことがなかったな、と思いまして」


61 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:24:26.46 ID:u9378YZl0


キョン「そうだ。そこなんだよ。俺達はお互いが酒に強いかどうかも知らないで飲み会に行ったのさ。それが間違いだった」

古泉「……要点を得られませんね。何が言いたいのですか?」

キョン「……ハルヒは酒に弱かった」

古泉「それで?」

キョン「……」

古泉「……何か話したくないことでもあったのですか?」

キョン「……」

古泉「なら、無理やりに聞こうとは思いません。長門さんも貴方も疲れているようですし、布団を出しますから横になったらいかがです?」

キョン「……」

古泉「おっと、客用に二つの布団を買い置きしてありますので、あしからず」

キョン「……」

65 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:27:39.28 ID:u9378YZl0

古泉「さぁ、長門さんをこちらに」

キョン「……すまんな」

古泉「いえいえ。困ったときはお互い様ですよ」

ヨッコイセ

長門「……スゥスゥ」

古泉「さあ、貴方もお休みになった方がいいですよ。もう夜も遅いですしね」

キョン「お前はどうするんだ?」

古泉「僕はいつもこの椅子に座って眠ることにしているので」

キョン「嘘つけ」

古泉「ふふ。さあ、電気を消しますよ?」

キョン「……すまん」


68 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:29:08.18 ID:u9378YZl0


───暗闇

古泉「……」

キョン「……」

古泉「……」

キョン「……今日な」

古泉「……はい」

キョン「……ハルヒが……」

古泉「……」

キョン「ハルヒが、酔いの勢いでチラっと言ったんだ」

古泉「……何と、おっしゃったんです?」

キョン「……彼氏を作るのって、楽しいかな? って」

古泉「……それは」


69 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:30:45.98 ID:u9378YZl0


キョン「それで、キョンはどう思う? なんて言ってきて……」

古泉「なんとお答えになったのですか?」

キョン「高一の時は、恋は病なんて言ってた奴が、何を今更。俺はそう思った」

古泉「……」

キョン「そう思ったけど、そう言えなかったんだ。俺はずっと目の前のビールを見つめてたんだが、視界の端にはずっとハルヒが映ってた」

古泉「……」

キョン「ハルヒはずっと俺の顔を見てた。そしたら俺……」

古泉「……」

キョン「おれ、怖くなっちまって……」

古泉「……」


71 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:32:53.70 ID:u9378YZl0


キョン「なんかもう全部がぶっ壊れていくのを感じたよ。それでいてもたってもいられなくなって……」

古泉「どうしたんですか?」

キョン「……長門の手を握って、外に飛び出しちまったんだ」

古泉「何も答えずですか?」

キョン「……ああ」

古泉「それで、今ここに?」

キョン「……実は……」

長門「……ん、んー」

古泉「……?」


長門「ん……キョン……ふふっ……スゥスゥ」


古泉「……これは……?」


73 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:33:39.03 ID:u9378YZl0


キョン「飲み屋を飛び出して、二人で公園のベンチに座ってたら、突然性格がガラリと変わったんだ」

古泉「性格が……?」

キョン「……ああ。それに……」


長門「……キョン……大好き……スゥスゥ」


古泉「……なるほど」

キョン「……いきなり俺に抱きついてきたんだ。俺のこと好き好きいいながらさ」

古泉「?」

キョン「それで……つい……」

古泉「まさか」


76 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:35:45.36 ID:u9378YZl0


キョン「飲みの後で、ちょっとやけっぱちになってて……」

古泉「……どこまでやったのです?」

キョン「……」

古泉「……まさか」

キョン「……ああ」

古泉「何故そんなことを……」

キョン「……すまん」

古泉「僕に謝られても困りますよ。それで、どうするのです?

キョン「俺……コイツと付き合うことにする」


78 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:37:45.53 ID:u9378YZl0


古泉「……」

キョン「……」

古泉「涼宮さんはどうするのです……?」

キョン「今まで通りに……なんとか頑張るさ」

古泉「……」

キョン「俺、SOS団が好きなんだよ……」

古泉「だから、これまで通りの関係をなんとか続けていくために、涼宮さんと近づきすぎずに長門さんと付き合う、と?」

キョン「そうすればハルヒだってもう俺のことを……」

古泉「貴方は涼宮さんのことをどう思っているのです?」

キョン「……」

古泉「こうなってしまったものはどうしようもありませんね。また明日にでも考えることにして、今日は休みましょう」

キョン「……」


79 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:39:50.27 ID:u9378YZl0


───早朝

古泉「まだ始発があるかわかりませんよ?」

キョン「いや、もしどっかでハルヒがオールしてたら、そろそろ店を出てくる頃だし。拾っていってやらなきゃいけないしな」

長門「うぅーん、キョン、僕まだ眠いんだけど」

古泉「……」

キョン「と、とにかく。世話になった。また連絡する」

古泉「はい」

長門「古泉君、ありがとねー」

古泉「……はい」

ガチャッ タッタッタッタッタ


古泉「……もうひと眠りしますか」


81 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:41:51.87 ID:u9378YZl0


古泉「……そういえば、珍しく機関から閉鎖空間発生の連絡が来ませんでした」

古泉「何か嫌な予感がします……」


ピンポーン

古泉「?」

ガチャッ

古泉「何か忘れ……!!」

ハルヒ「……」

古泉「……おはようございます、何か……」


ハルヒ「付き合ってくんない?」

古泉「……」


古泉(あの日全てが壊れはじめました。貴方はまさか気づいていなかった訳じゃありませんよね?)


82 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:44:10.47 ID:u9378YZl0


───

新川「……そんなことがあったのか」

古泉「ええ。かれこれ、もう一年以上前の話になりますね」

新川「なぜ機関に連絡しなかった?」

古泉「……とても嫌な予感がしたからですよ」

新川「想像通り、機関は今悲惨なことになっている。その発端がそんな出来事だったとは」

古泉「情報を伝えた方が良かったでしょうか?」

新川「かわらんかっただろう。実際、機関にはもう彼女のために動き回れるだけの余力がないのだから」

古泉「……残念です」


85 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:45:33.50 ID:u9378YZl0


新川「さて、それでは私は書類を整理しなければならない」

古泉「……書類、ですか? せっかくこのような島に来たのです、涼宮さんたちから解放されている今ぐらい、ゆっくりとしたらいかがです?」

新川「……森は」

古泉「?」

新川「森は、私と共にこの島へ来るハズだった」

古泉「あ……」

新川「しかしつい一週間前のことだ。連絡を取った時に言われたよ。どなたですか? とね」

古泉「森さんが……そんな……」

新川「私がいつそうなるかも分からん。引き継ぎの書類は常に作っておかなければならない」

古泉「……」

新川「では失礼するよ。役割は果たすから安心しろ」

ガチャッ


86 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:47:54.27 ID:u9378YZl0

古泉「……やれやれ、さて皆さんはどーしていますかね」

───監視カメラによる島中の映像がスクリーンに分割されて映し出されている

  朝比奈「ふぇーん、まってくださいよぉ、わたし、もう、疲れて……。ちょっと休憩しませんかぁー?」

  長門「えぇー、まだ大丈夫だよ! 安心して、僕はまだ頑張れるから!」

  朝比奈「いや、長門さんは確かに大丈夫かもしれないですけど、わたしが……」

古泉「ふふ、長門さんたちは相変わらずですね」

古泉「……。長門さんはいつになったら……」

古泉「長門さんがこうなってしまったのも、やはり涼宮さんが……」

古泉「私もいずれ、機関のことを忘れてしまうのでしょうか……。すると私は……」

古泉「おっと、こちらは涼宮さんたちの映像ですね」

古泉「もう宝の場所までたどり着くとは……流石です」


87 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:50:07.01 ID:u9378YZl0


───監視映像 岩場

  ハルヒ「確かにここら辺のハズだわ。少し休憩しましょう」

  キョン「しかし中々骨が折れる宝探しを用意したもんだな、古泉も」

  ハルヒ「SOS団副団長である古泉君が下らない出し物を用意する訳ないじゃないの! あんたとは違うのよあんたとは」

  キョン「へいへい」

  ハルヒ「ふんふーん♪ あたしの手にかかれば宝探しなんてお茶の子さいさいよ! ワトソン君、お茶!」

  キョン「まだ見つかった訳でもないのに、いっちょ前に探偵気取りかよ」

  ハルヒ「ここがバッテン印のついてる場所なのは間違いないわ! 私の長年の勘がそう言ってるもの!」

  キョン「やれやれ、一体長年何を探してるんだろうねぇ」

  ハルヒ「あんたは昔っからいちいち細かいわねぇ。まーいーわ、とにかくお茶!」

  キョン「はいよ。ほらっ」ヒョイッ

  ハルヒ「よっと。ゴクゴク。ップハー! やっぱり自然の中の一杯は最高ねー!」

95 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:13:07.38 ID:w8g58iz90

  キョン「じゃあ俺も一服させてもらおうかね」

  カチッカチッ スッ フー

  ハルヒ「あんた煙草なんて吸うようになったの?」

  キョン「ストレスだらけの世の中だからな」

  ハルヒ「何? なんか悩みでもある訳?」

  キョン「そりゃ誰だって悩みの一つや二つあるだろうさ」

  ハルヒ「ふぅーん……。……まったく仕方ないな、聞いてあげるわよ」

  キョン「ん? 何を?」

  ハルヒ「だーかーら! あんたのちっぽけな悩みとやらを聞いてあげる、って言ってるのよ」

  キョン「別にそんなもん頼んだ覚えはないぞ」

  ハルヒ「あたしは団長なんだから部下の悩みを聞くのは当然のことじゃない」

  キョン「まったく。しかし、そーだなぁ。ひとつ言うなら……」

  ハルヒ「ほら、さっさと言いなさい! これは団長命令よ!」

  キョン「最近あんまりおもしろくないんだ。なんとかならんかね?」


89 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 01:54:22.82 ID:u9378YZl0


  ハルヒ「は? え? 何それ」

  キョン「いや、なんでもない。忘れてくれ」


古泉「……煮え切りませんね。思ったよりも、良い方向に転がっていかない」


   キョン「……あれ? ここらへん人がいた形跡がないか?」

   ハルヒ「古泉君が準備するときに残してったんじゃないの?」

   キョン「そういやここは俺達が雨の日に落ちた場所じゃないか?」

   ハルヒ「そういえばそうね。あ、あった! 宝箱発見!」

   キョン「まったく。今度はしゃいで落ちても、わざわざ助けてやらんからな」

   ハルヒ「ふふん、そんなのキョンに言われるまでもないわ! キョンこそ、落ちてもだれにも知らせてあげないからね!」

   キョン「知らせるぐらいはしろよ!


古泉「久々に見た満面の笑みですが……」

古泉「さて……どれだけの助けになってくれたでしょうか」

97 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:16:35.23 ID:w8g58iz90


───夜 食堂


ハルヒ「やっぱりあたしが見つけちゃったわね! そりゃそうよ、なんてったって団長なんだから!」

長門「涼宮さんたちが知ってる場所にあるなんてズルいよ……」

ハルヒ「なんか言った?」

長門「別にぃ……」

朝比奈「それで中身はなんだったんですかぁ?」

ハルヒ「そうそう、それなんだけど。鍵がかかってて開かないのよ」

キョン「どうだ、長門? なんとか開けられないか?」

長門「? なんで涼宮さんが開けられないのに僕が開けられるのさ?」

キョン「そ、そりゃそうか。そうだよな」

古泉「……」


98 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:18:21.41 ID:w8g58iz90


長門「それより古泉君に開けてもらった方が早いんじゃない? だってこの企画の主催者さんだしさ」

キョン「言われてみりゃそうだな、おい古泉」

古泉「ごもっともで。やや、鍵なんて締めた記憶はなかったんですよ。ですが結果的には良かったかもしれませんね」

キョン「なんでだ?」

古泉「宝箱を見つけたのが涼宮さんと貴方のチームであったとしても、中身を見るのはみんなでの方が楽しいと思いませんか?」

ハルヒ「それもそうかもね! それで、何が中に入ってるの?」

古泉「これが鍵です。どうぞ」

ハルヒ「OK! それじゃ開けるわよ! 近くばよって目にも見よ! おりゃー!」

ガチャッ

キョン「……これは?」

古泉「見てのとおりですよ」

ハルヒ「……団長のバッジ……」


99 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:19:38.05 ID:w8g58iz90


古泉「大学に入って、涼宮さんが腕章をつけているのを見なくなって、さびしく思っていたんですよ」

ハルヒ「だ、だって私服に腕章って……」

朝比奈「さすがに恥ずかしいですよね」

古泉「ふふ、なので今回はバッグなどにつけられるバッジを用意させていただきました」

キョン「なるほど、これならオシャレに見えないこともないな」

ハルヒ「……」

古泉「……お気に召しませんでしたか?」

ハルヒ「……そんな訳ないじゃない! いっくん最高! 大好き!」

ガシッ ダキツクッ

古泉「それは良かった。是非また大学でもSOS団を盛り上げていきましょう」

ハルヒ「そうね!」


古泉(それでも……まだ願いは叶いませんでした)


100 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:20:36.61 ID:w8g58iz90


ハルヒ「こんな夜なら、何か面白いことがありそうね!」

キョン「おいおい、いきなりかよ」

ハルヒ「隕石とか落っこちてこないかしら!」

キョン「とんだ面白いことだなおい」

長門「面白そう!」

キョン「その脳天に直下するかもしれないのにか?」

長門「そしたらかわすもん」

キョン「昔のお前ならできたかもな」

長門「ん?」

キョン「いや、なんでもない」


101 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:21:27.29 ID:w8g58iz90


古泉「ふふ、流れ星にお願いでもしてみたらいいんじゃないですか?」

ハルヒ「そうね、こんなに星が綺麗な夜なら流れ星の一つぐらい……」

ハルヒ、窓から外を眺める

ハルヒ「……あ!!」

キョン「どうした?」

ハルヒ「今、流れ星が見えた気がしたの!」

キョン「まさか、そんな都合がいいことが……って、おい! 今の!」

ハルヒ「ね! そうよね!」

古泉「流星群かもしれませんね」

ハルヒ「外! 外に行くわよ!」


102 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:22:43.64 ID:w8g58iz90


───外 屋敷の前

長門「うわー! すごい! ホントに流星群だ!」

キョン「まさか……本当に流れ星が見えるとはね」

ハルヒ「みんな! 呆けてないで願い事! 願い事するの!」

長門「まっかせて! 蒼星石の出番が増えますように蒼星石の出番が増えますように蒼星石の出番が増えますように!」


キョン「……おいおい、涼宮のやつ、まさか隕石の落下をお願いする気じゃ……」コソコソ

古泉「恐らくそうするでしょうね、さっきの話の流れからしますと」コソコソ

キョン「まずいんじゃないか? そんなことになったら……」コソコソ

古泉「さぁ、何も起こらないよりずっと楽しいと思いますが」コソコソ

キョン「お前……」

古泉「……」


古泉(……そして、何も起こりませんでした)


103 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:23:42.00 ID:w8g58iz90


───夜 男子部屋


ハルヒ「じゃー、後片付けよろしくー! おやすみー!」

朝比奈「おやすみなさい」

長門「もっと一緒にいたいよぉおう」

朝比奈「ささ、行きますよ」

長門「ちぇー。じゃあ、キョン、また明日ね! 古泉君も!」

ガチャッ

キョン「まったく……自分が一番食い散らかした菓子だってのに」

古泉「……コーヒーでも、いかがです?」

キョン「ああ、ありがたくいただくよ。ありがとさん」ゴクゴクッ

古泉「……」

キョン「どうした?」


105 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:24:54.09 ID:w8g58iz90


古泉「あ、いや、そういえば、貴方は何を流れ星に願ったのだろうか、と思いまして」

キョン「な、なんでそんなことが気になるんだよ」

古泉「……いえ、別に。ちょっとした興味ですよ」

キョン「……まだ一年前のことを気にしてるのか?」

古泉「気にしている? 貴方はずいぶん軽いことのように扱いますね。泣きそうな顔をして部屋に上がりこんできたというのに」

キョン「そうだっけか? 覚えてないね」

古泉「……それで、何を願ったんです?」

キョン「なんだよ、しつこいな。どうでもいいだろ」


106 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:26:07.49 ID:w8g58iz90


古泉「……」

キョン「……そういや、宝箱の場所に人の形跡があったぞ。あれ、お前の残した奴か? まさか四年前に見た人影が関係してるんじゃないだろうな」

古泉「話をそらさないでください」

キョン「……随分怖い顔してるな」

古泉「えらく、マジですから」

キョン「……いいだろう。教えてやるよ。俺はこう願った」

古泉「……」

キョン「ずっとあいつと一緒にいられるように、ってな」

古泉「……そうですか」

107 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:29:01.64 ID:u9378YZl0


キョン「……お前は何を願ったんだ?」

古泉「知りたいですか?」

キョン「ああ知りたいね」

古泉「僕の願いは至ってシンプルです。貴方がそんな願いを抱かないように、とお祈りしました」

キョン「なんだと……?」

古泉「貴方に一つ質問があります」

キョン「なんだよ」

古泉「その"ずっと"というのはいつまでを指すのでしょうか?」

キョン「それは……」

古泉「ふむ。それは明日までではいけませんか?」

キョン「……」

古泉「あるいはこの瞬間までの"ずっと"ではいけないんですか?」


108 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:31:34.72 ID:u9378YZl0


キョン「それはダメだ」

古泉「そうでしょうね。ならいつなら一緒にいられなくなってもいいんですか? 死んだら?」

キョン「……」

古泉「まさか一緒に死にたいとでもいうのですか? あの世でも一緒にいたいと?」

キョン「そんな訳……」

古泉「それではいつになったらお別れすることができるんですか?」

キョン「……それは……」

古泉「いずれは別れが訪れます。そんなの小学生だって知ってる。貴方はいつまでこの不毛な関係に固執するつもりなので?」

キョン「不毛だと?」

古泉「違いますか? つまらない関係ですよ。なんといってもつまらない毎日を量産している点に罪を感じますね」


109 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:34:29.01 ID:u9378YZl0


古泉「毎日大学に通い、帰りに団室によって、そして家に帰る。25文字で語れる毎日です。これを365回コピーして一年間を語れますよ」

キョン「……」

古泉「……それでも、この関係を続けたいと?」

キョン「……それでもずっと一緒にいたいと思ってる。それがどんな関係であったとしても」

古泉「この関係が終わった時に、貴方に何が残るというのです?」

キョン「分からん! だが下手に動いたら一緒にいられなくなる!」

古泉「一緒にいたいだけですか」

キョン「……ああ」

古泉「そうですか」

キョン「……ああ」

古泉「用があるので、部屋を出ます。この会話は忘れてください」

キョン「……」


110 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:36:36.49 ID:u9378YZl0


───皆に明かされていない監視部屋

古泉「……」

新川「お前か」

古泉「ええ。新川さんにお願いがありまして、やってきました」

新川「なんだ? 見ての通り、書類作成で忙しい」

古泉「もう引き継ぎ書類を作っても無駄ですよ」

新川「なんだと?」

古泉「貴方の後を引き継ぐ人はもういませんから」

新川「……まさか」

古泉「ついさっき本部に連絡を取りました。非常時の回線も含め、すべてが通じませんでした」

新川「……ついにこの時が来てしまったか」

古泉「おそらく、涼宮さんと最も距離の近い私たちを除き、すべての機関の人間の記憶は失われたと思われます」


112 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:38:52.63 ID:u9378YZl0


新川「……もう我々も長くは持ちそうにないな……。少なくとも私はもう……。それで、頼みとはなんだ?」

古泉「……この島を、脱出してください」

新川「……なぜ?」

古泉「外に出すわけにはいかない人がいます。ボートには地図や適切な機器が備え付けられていますから、途中で記憶を失っても無事に港までたどり着けるでしょう」

新川「しかし、そしたらお前らが乗るボートが」

古泉「時間がないのでしょう? 急いでくださいよ、僕も時間がないのですから。大丈夫です、迎えは本土の警察にでも電話しますよ」

新川「分かった。今すぐにボートに向かおう」

古泉「お願いします」

新川「古泉。お前はよくやった。涼宮ハルヒの力が失われたのはお前のせいではない」

古泉「……ありがとうございます」

新川「では、達者でな」

ガチャッ タッタッタッタッタ


113 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:41:15.73 ID:u9378YZl0


───男部屋

ガチャッ

キョン「……んあ? 古泉か」

古泉「随分眠たそうですね?」

キョン「よくわからんが、眠気が凄いんだ……」

古泉「では今日はもう寝るとしましょうか。電気を消しますね」

キョン「……ああ」

古泉「……おやすみなさい」

キョン「……おやすみ」


114 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:43:37.47 ID:u9378YZl0


───夜中 暗闇


キョン「ZZzzz.....」

古泉「……」

古泉「また……団室で……」

ガチャッ タッタッタッタ


キョン「ZZzzz...」


115 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:46:02.79 ID:u9378YZl0


───

?「おい、おい」

キョン「ん……ここは……俺の家のリビング?」

?「ふむ、その通りだ」

キョン「お前は……シャミセンか」

シャミセン「ほほう、名を覚えていてくれたとは思わなんだ」

キョン「当たり前だ。しかしお前は確か……」

シャミセン「そう。ついこの間、お亡くなりになった」

キョン「自分に尊敬語を使うんじゃない」

シャミセン「自分がこのように人と話をしている以上、死んだ自分は別物と考えても相違あるまい」

キョン「確かにそうだな」

シャミセン「随分物わかりがよくなった。ここが夢であることもそろそろ分かっただろうか?」

キョン「そうか、やっぱり夢か」


116 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:48:15.33 ID:u9378YZl0


シャミセン「まずは礼を言わなければならんな。丁重に弔ってくれてありがとう。わざわざペットの墓地にまで入れてもらい、ペット冥利に尽きると言わざるおえまい」

キョン「動物の墓地に入れるのと庭に埋めるの、どちらが良いか聞いておけばよかったな」

シャミセン「とんでもない。私は非常に満足している。仮に庭に埋めてもらったとしても同じように感じたであろうが」

キョン「……そうか、それは良かった」

シャミセン「……ふむ。本当はお前の夢ではなく、妹さんの夢に出てきたかったのだがな」

キョン「なんだ、寂しいことを言ってくれるなよ」

シャミセン「そうではない。私はお前と、素晴らしい別れをすることができたと思っているのだ」

キョン「素晴らしい別れ?」

シャミセン「そうだ。私はお前との関係において、何一つの悔いも残っていない」


117 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:50:18.60 ID:u9378YZl0


キョン「……妹とは違うのか?」

シャミセン「残念ながら、多いに悔いが残っているのだ」

キョン「何故だ?」

シャミセン「……今妹さんはふさぎこんでいるだろう?」

キョン「今どうかわからんが、少なくとも俺が家を出た時は、部屋に閉じこもっていたな」

シャミセン「それが私にとっての悔いなのだ」

キョン「何も死んだのはお前のせいじゃないだろう」

シャミセン「左様。当たり前だが、命とは永遠ではない。ましてや猫の身、短いとは言わないが決して長い命でもない」

キョン「お前一体何歳なんだ?」

シャミセン「年齢など瑣末な問題だ。猫が年を数えているというのも、お前の勝手な思い込みにすぎない」

キョン「相変わらず手厳しいな」

シャミセン「うむ……。私にとってはどうあれ、妹さんにとっては長い時間であったと思うのだ。私と過ごした時間は」

119 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:55:49.21 ID:f4FuGlrH0


キョン「4年近くか……。それに、お前にべったりだったからな」

シャミセン「それだけの時間をかけて……妹さんと別れの準備をこなすことができなかったことが、私には非常に悔しいのだ」

キョン「別れの準備? なんだそれは」

シャミセン「私とおまえの間ではそれが済んでいる」

キョン「ふむ……何をやったっけかな」

シャミセン「お前にとっては無意識な、些細なことであったのかもしれんな」

キョン「……もしかして、お前が好きな猫缶を買ってくるようにしたことか?」

シャミセン「うむ」

キョン「そ、そんなことで別れの準備が済んだってのかよ」

シャミセン「そうだ」

キョン「随分安い別れの準備だな」

シャミセン「値段が安かれ、その行為は決して安価でちゃちな代物ではなかった。何故ならこの4年間、私が体調を崩すまでお前は猫缶を買ってくることはなかった」


120 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:56:54.64 ID:f4FuGlrH0


キョン「悪かったよ。それで喜んでもらえるならもっと早く買ってくれば良かった」

シャミセン「そうではない。少年よ、お前は自分が本来持っている物を隠しすぎる」

キョン「本来持っている物?」

シャミセン「優しさだ! お前はとても優しい! 私がお前の猫缶を買ってくるという行為で一体何が嬉しかったか?それはお前が猫缶を買ってこないまでも、私が普段どのような猫缶を好んでいるかを観察していたことがわかったからだ!」

キョン「それは……」

シャミセン「そして残り短いかもしれない時間を、少しでも幸せに過ごせるように配慮してくれたこと。それこそが別れの準備だ」

キョン「……」

シャミセン「愛なのだ。別れの準備とは、相手に愛を伝えることなのだよ。私にはお前の愛が大いに伝わった。そしておそらく、私の愛もお前には伝わっただろう」

キョン「お前の愛なんて……」

シャミセン「嫌な言い方をするようだが。私がお前の家にとどまった。それだけの行為でも、お前は私からの愛を感じたはずだ。お互いの信頼関係は、愛が伝わるのを容易にするのだ」

キョン「……まあな」


121 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 02:58:42.52 ID:f4FuGlrH0


シャミセン「だが事情も何も知らない妹さんには……私の愛は伝わらなかった。それは私が別れの準備を怠った証拠であるといえるだろう」

キョン「それをお前は悔やんでいたのか」

シャミセン「私も人との別れは初めてであったからな……。これほど難しいものとは思わなんだ」

キョン「やれやれ。俺が妹にはよく言っておいてやるよ」

シャミセン「……すまない。よろしく頼む」

キョン「ああ、任せろ」

シャミセン「別れの準備ができるのは生きている間だけだ。死とは生の中に存在するということをつくづく思い知った。生きるということは、常に死ぬことを意識することなのかもしれんな」

キョン「別れの準備、か」

シャミセン「少年よ、若さは物ごとの終わりに靄をかけるものだ。……後悔なきようにな」

キョン「……ああ。善処するよ」

シャミセン「ふふ。最後にようやく素直な言葉を聞けた。くれぐれも妹さんにもよろしく……これで私も……」


…………きて!」

……ョン! 起きて!」


124 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:01:02.51 ID:f4FuGlrH0


61


───部屋


ハルヒ「キョン! 起きて!」

キョン「な、ハ、ハルヒ? こんな時間にどうしたんだ」

ハルヒ「とにかく起きて! 大変なことになっちゃったのよ!」

キョン「大変なこと……? そういえば古泉は??」

ハルヒ「とにかく! さっさと着替えて食堂に来て!」

キョン「わ、わかった」


125 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:02:24.63 ID:f4FuGlrH0


───食堂

キョン「ど、どうした! 何があったんだ!」

長門「キョ、キョン! 良かった、無事だったんだねぇ……本当に良かった……ぐすっ」

キョン「無事……? 無事じゃない人がいるのか? おいまさか、4年前のような……」

古泉「……いえ、今度はあのようなブラックジョークじゃありません。ぐっ……」

キョン「古泉……お前、どうしたんだ!? その上半身の包帯で……」

古泉「……何者かに撃たれました」

キョン「なんだと……?」

長門「キョンたちは聞こえなかったの? ものすごく大きな銃声がして、みんなハネ起きたんだよ??」

ハルヒ「それでその場にかけつけたら、いっくんが倒れてたのよ」

キョン「なんだか今日はぐっすり眠ってたから、気づかなかったのかもしれん……」


126 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:04:12.16 ID:f4FuGlrH0


古泉「犯人は玄関から外に出て行きました……ぐっ」

キョン「いったいなんだってこんな時間に、部屋を出ていたんだよ?」

古泉「新川さんに少し話がありまして……」

キョン「新川さんに……? そういえば新川さんは?」

ハルヒ「それが、新川さんもどこにも見当たらないのよ」

古泉「なんですって!?」

長門「窓から見たんだけど、ボートもなくなってるみたい」

ハルヒ「もしかして、新川さんはボートに乗って逃げたんじゃ……」

古泉「新川さんはそんな人じゃないと思います。もしかしたら新川さんも……」

朝比奈「ふぇーんふぇーん!」


128 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:05:33.43 ID:f4FuGlrH0


古泉「本土に電話は?」

長門「したよ! でも到着まで6時間かかるって……」

古泉「そうですか……」

ハルヒ「いっくん、耐えられそう?」

古泉「お気遣いありがとうございます。こんな傷ぐらい、大丈夫ですよ」

キョン「しかし、一体犯人はどこに潜んでたんだ……」

古泉「潜んでいたとは限りませんね。もしかしたら、ボートでこの夜の間にやってきて、どこかに止めているのかもしれません」

キョン「そうか。可能性を考えるといくらでもあり得るな……」


129 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:06:59.14 ID:f4FuGlrH0


ハルヒ「そういえば! キョン、覚えてる??」

キョン「何をだ?」

ハルヒ「4年前、この島を去る時に見た人影のことよ!」

キョン「……ああ、覚えているとも」

ハルヒ「もしかして……ずっと昔からこの島に住みついてる殺人犯がいたのかもしれない!」

古泉「……まさか」

キョン「いや……ありえるかもしれん。宝箱を見つけた場所を覚えてるか? あそこには火を起こしたりした跡があった。もしかしたらあそこに……」


132 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:08:43.54 ID:f4FuGlrH0


ハルヒ「キョン! 行くわよ! 犯人を捕まえないといけないわ!」

キョン「おいおい、無鉄砲すぎるぞ! もし見つけたところで、相手は拳銃を持ってるんだろ? 相手をしようがないじゃないか!」

ハルヒ「この暗闇よ? 相手に見つからないようにすればなんとかなるわよ!」

古泉「ちょ、ちょっと待って下さい! もしかしたらボートで逃げたのかもしれない! それに6時間待てば警察だってくるんですよ!?」

ハルヒ「朝比奈さんを見て? こんなに震えちゃってる……。古泉君だって6時間もこんな状態でいさせる訳にはいかないじゃない! 逃げたなら逃げたで、この島が安全なことを確認しなくちゃ!」

朝比奈「キュゥウウウゥウ」

キョン「お前な……だからって……」

ハルヒ「ビビってるなら付いてこなくていいわ! あたし一人でもいくから!」

キョン「わかった! わかったから! 古泉、他のみんなを頼む!」


135 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:10:17.13 ID:f4FuGlrH0


───宝箱があった崖へと続く道 暗闇

ハルヒ「犯人に気づかれないようにしないといけないから、ライトは使わないわよ」

キョン「分かったよ。躓いたりしないよう気をつけろよ」

ハルヒ「あんたこそ、暗闇だからって変な気起こさないでよね」

キョン「当たり前だろ。こんな事態だってのに」

ハルヒ「……ふん」

キョン「気をつけろよ、別にあの場所にいるとは限らないんだ。そこの影に潜んでるかも……」

ハルヒ「そうだ、キョン、これ」

キョン「これは……サバイバルナイフじゃないか! どうしたんだこれ?」


136 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:11:28.60 ID:f4FuGlrH0


ハルヒ「栓抜きとか色々ついてるやつね。便利だから一応持ってきておいたのよ」

キョン「何故俺に?」

ハルヒ「あんた男でしょ? いざってときは盾になりなさいよ!」

キョン「お前は団長だろうが、部下を守れよ……。だがまあいい、預かっておくよ」

キョン「ほら、もうすぐ見えてくるぞ」

ハルヒ「案外近いわね……」

キョン「足音に気をつけろよ」

ハルヒ「分かってるわ、キョンの癖に生意気よ」


138 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:14:46.67 ID:u9378YZl0


キョン「……誰かいるのが見えるか?」

ハルヒ「ここからじゃ分かんない……もう少し近くにいかなくちゃ」

キョン「辺りに気をつけろよ、どこに潜んでるかわからんからな」

ハルヒ「キョンはあっちの方見て、私こっち見るから」

キョン「りょーかいだ」


───崖上

キョン「どうやら、いないみたいだな」

ハルヒ「……ふぅ。良かったわ」

キョン「なんだ、犯人を見つけたかったんじゃないのか?」

ハルヒ「それもあるけど……この島が安全だって方が大切よ」

キョン「それもそうだな」


139 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:16:25.05 ID:u9378YZl0


ハルヒ「あーあ、安心したら気が抜けちゃった。ちょっと座って休んでいきましょう」

キョン「安全だって知らせに戻った方がいいんじゃないか?」

ハルヒ「少しよ、少しぐらいいいじゃない」

キョン「……それもそうかもな」

ヨッコラセッ ヨッコラセッ

ハルヒ「……」

キョン「……」

ハルヒ「なんでそんなに離れて座るのよ」

キョン「お前がさっき変な気起こすな、っつったんだろうが」

ハルヒ「近くにすわったら変な気起こす訳?」

キョン「0.5%ぐらい可能性が増えるかもな」

ハルヒ「ふぅーん……」


140 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:17:49.69 ID:u9378YZl0


キョン「第一、友達の彼女に手を出すほど酷い人間じゃないつもりだ」

ハルヒ「……」

キョン「お前にも古泉がいるだろうが。仲良いんだろ?」

ハルヒ「どーなのかしらね」

キョン「おいおい、お前な」

ハルヒ「……キョンは」

キョン「ん?」

ハルヒ「もう有希とセックスしたの?」

キョン「そういうこと聞くか、普通」


143 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:19:09.55 ID:u9378YZl0


ハルヒ「どーなのよ」

キョン「そりゃ、一年ちょいも付き合ってればな」

ハルヒ「何回?」

キョン「何回って……」

ハルヒ「数えきれないぐらい?」

キョン「……まぁな」

ハルヒ「そう……ふぅーん」

キョン「お前こそ、古泉とはどうなんだよ?」

ハルヒ「……教えない」

キョン「は?」

ハルヒ「なんでそんなことキョンに教えなきゃいけないのよ」

キョン「お、お前な」


146 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:20:27.25 ID:u9378YZl0


ハルヒ「それでさ」

キョン「ああ?」

ハルヒ「キョンは……」

キョン「なんだよ」

ハルヒ「有希のことが……好きなの?」

キョン「……どうしてそんなこと聞くんだ?」

ハルヒ「だって……有希、高校の頃から比べて、随分変わったじゃない?」

キョン「そうだな」

ハルヒ「その……すんごく可愛らしい子になったから……」

キョン「……まぁ、随分素直に感情表現するようになったな」

ハルヒ「……人を好きになってもらったらそんなになるのかなぁ、と思ったのよ」

キョン「……」

ハルヒ「あーあ、なんでもない。忘れて」


147 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:21:52.00 ID:u9378YZl0


キョン(好きになってもらったら……変わる……。そうじゃない)

キョン(なら変わるのは俺の方のハズだ……)

キョン(おれは長門に愛されてる。それは間違いないからだ)

キョン(じゃあ変わるのは好きになってもらった方じゃなくて……)

ハルヒ「あーあ、随分時間使っちゃったわね。さ、早く帰りましょ」

キョン「あ、ああ」


長門「キョーン! キョーン! どこー!」


キョン「ん? 長門?」

ハルヒ「どーやらあんたのことが好きすぎて、探しに来ちゃったみたいね」

キョン「……」


149 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:22:32.07 ID:u9378YZl0


ハルヒ「ほら、迎えに行ってあげなさいよ」

キョン「……ああ」


長門「キョーン! キョーン!」

キョン「おーい! 長門! こっちだ!」

長門「キョン! あ、見つけた! 今そっち行くから!」

キョン「こけないように足元に気をつけろよ」

長門「大丈夫だもん! こけてもキョンが抱き起こしてくれれば、むしろプラスだもん!」

キョン「おいおい、ホントに気をつけろって」

タッタッタッタ

長門「キョン、つかまえ……」


ダーーーーーーーン! バタッ


キョン「え?」


150 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:23:13.10 ID:u9378YZl0


長門「あ……あ……」

キョン「長門!」

ダダダダダッ

長門「キョ、キョン……」

キョン「長門! 大丈夫か! どっから撃たれたんだ、畜生!」

長門「お腹が……痛いよ……」

キョン「お腹? ……!! お前……」

長門「う……う……キョン……ウプッ」ポタポタッ

キョン「しゃ、喋るな! 今館につれてって手当てしてやるから!」


152 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:23:54.94 ID:u9378YZl0


ハルヒ「キョン! 大丈夫なの!?」

キョン「大丈夫じゃない! 俺は長門を脊負って走る! お前は先に館に戻って古泉に救急手当の道具を出してもらっててくれ!」

ハルヒ「分かった! でも、銃はどこから撃たれたの!?」

キョン「わからん! 見つからん! 距離も計算できんし、気を付けて急いで館に戻るしかない!」

長門「ごめん……キョン……ウッ」ポタポタポタッ

キョン「喋るなって言ってるだろ! お前のことは俺が助けてやるから!! 絶対にだ!」

ハルヒ「……」

キョン「涼宮! 走れ!」

ハルヒ「わ、わかった! 先に行ってるから! 気を付けてね!」

キョン「お前もな!」

タッタッタッタッタ

156 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:25:44.49 ID:f4FuGlrH0


───館へと続く道

ダダダダダダダダ

キョン「ハァハァハァハァ。さ、流石ハルヒだ。あっという間に見えなくなった」

キョン「ハァハァハァハァ。絶対、絶対助けてやるからな、長門!」

長門「……う……う……」ポタポタ

キョン「大丈夫、大丈夫だから。絶対、大丈夫、だから。ハァ、ハァ」

キョン「こんなところで……こんなところで……」

長門「……キョン……」ポタポタポタ……

キョン「くそっ! くそっ! もっと、もっと急がないと!」

長門「……キョン……もう、大丈夫、だから」ポタポタポタ

キョン「!! なーに言ってるんだよ! いつもの元気はどうしたんだよ!」


159 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:26:44.08 ID:f4FuGlrH0


長門「……う……もう……僕……」

キョン「おいおいおいおいおい! やめろ! よせ! あきらめるな! ……あきらめないでくれよ!」

長門「……いいんだよ……もう……」

キョン「何が良いもんか! 何にも、何にも良くなんかないぞ!」

長門「だって……こんなに……幸せだから……」

キョン「……幸せ……?」

長門「……だって……こんなに……あったかいから……」

キョン「……」

長門「キョン……好きだよ? 僕は……キョンのことが……大好きだよ?」


162 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:28:19.29 ID:f4FuGlrH0


キョン「……」

長門「いいんだ、キョンが僕のことを……同じ様には見てないとしても……」

キョン「そんなこと! 俺はお前が!」

長門「ううん、いいんだよ、そんなの……だって……こんなにあったかくて……」

キョン「……俺は、お前が……」

長門「キョンが僕を思う気持ちが……こんなにあったかいなんて……」

キョン「……うぁぅ……。すまん、すまん長門……」

長門「謝らないで……僕は……しあわ……せ……」

キョン「長門!? 長門!! おい!」

長門「……」

キョン「……ぅぁぁああああ」

キョン「俺は……! 俺って野郎は……!」


164 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:29:12.11 ID:f4FuGlrH0


キョン「……長門……」

キョン「畜生……」

ガサッ

キョン「!?」


バーーーーン(銃声)


キョン「がっ……!」

キョン「ぐ……お……」

?「……」

キョン「お前が……長門を……」

?「……」

165 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:30:55.81 ID:fRVXG7eW0


仮面をつけた?が座り込んだキョンにゆっくりと近づいていく

キョン「お前、なんで仮面なんか……」

?「……」

キョン「どこのどいつだか知らんが……ぐ……なんで……俺達を……」

?「……」

キョン「なんで長門を……撃ちやがった……!」

?「……」


167 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:32:12.60 ID:fRVXG7eW0


キョン「殺すなら……殺せよ……ただし……他の仲間には手を出さないでくれ」

?「……」

キョン「といっても、聞いてくれる様子には見えないな……」

カチャッ キョンの眉間に銃を突き付ける

?「……」

キョン「降参だよ降参……」


キョン「するかああああああああああああああああああ!!!」

グサッ

?「……ぐ!!!」


171 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:34:48.44 ID:fRVXG7eW0


キョン「銃程じゃないかもしれんが……サバイバルナイフだって十分効くだろう……!」

?「……う……ぐ……」

?とキョンの取っ組み合い

キョン「お前のせいで……長門が……!ぐっ」

?「……」

キョン「絶対許さないからな……!」

?「……ぐ、う」


172 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:35:53.36 ID:fRVXG7eW0


キョン、銃を奪い取り?の頭に付きつける。

キョン「はぁ、はぁ」

?「……」

キョン「仮面を取れよ」

?「……」

キョン「仮面をとれ、と言っているのがきこえないのか!」

?「……」


?「やれやれ。グッ」スッ

キョン「な、お前は……!」


古泉「まさか貴方がサバイバルナイフを持っているなんて、思いませんでしたよ」


173 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:37:05.38 ID:fRVXG7eW0


キョン「古泉……何故だ!?」

古泉「……」

キョン「なんでお前が……長門を……!」

古泉「貴方が僕をせめることができるのですか?」

キョン「なんだと?」

古泉「……僕だってこんなことしたくありませんでした」

キョン「いったい何が目的なんだ!」

古泉「僕は……僕はただみんなと一緒にいたかっただけです」

キョン「なんだと?」

古泉「貴方と同じですよ。僕は皆と変わらぬ、楽しいSOS団であり続けたかった」


175 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:38:25.49 ID:fRVXG7eW0


キョン「それで何故、長門を殺す必要があったんだ……!?」

古泉「グッ……。長門さんを殺す気なんて、ありませんでした……」

キョン「何?」

古泉「僕が殺したかったのは……貴方ですから……」

キョン「な、何を……。なぜ……」

古泉「貴方は……何も気づいていないのですか……?」

キョン「何をだ?」

古泉「全く貴方という男は……」

キョン「説明しろ! さっきから要点を得ないことばかり言いやがって」

古泉「貴方のせいで……涼宮さんは力を失ったんですよ……」

キョン「なんだと!?」


176 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:40:08.28 ID:u9378YZl0


古泉「覚えてらっしゃるでしょう? ……あの日のことを。長門さんを連れて僕の家にやってきた、あの日」

キョン「……ああ」

古泉「あの日……涼宮さんは願望をかなえる力を失いました……」

キョン「……」

古泉「言い変えましょう……。涼宮さんは……この世を本気で楽しむことを……あきらめた……」

キョン「……」

古泉「前進することをあきらめた……。そのことに魅力を感じなくなった……」

キョン「……」

古泉「世界を変えることを望まなくなった。彼女は……世界の理不尽さを受け入れてしまったんですよ……グッ」

キョン「涼宮が……」


177 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:40:48.94 ID:u9378YZl0


古泉「彼女も貴方と同じ……」

キョン「……」

古泉「ずっと一緒にいられれば、それで良いと、自分の立ち位置から動くことに恐れを感じるように……なり……」

キョン「……」

古泉「……ウグ、グ、ア、ハァ。あれ、なんで僕はこんなところで……血を……痛い……」ポタポタポタ

キョン「……古泉……お前……」

古泉「貴方は……そうだ……ここは孤島で……彼女……そうだ……彼を……殺さないと……う、ぐっ」

キョン「……」

古泉「彼を殺して……彼女……名前……あれ……なんで……そうだ、涼宮さんだ……」

キョン「古泉……まさか……」

古泉「そうだ……貴方を……。そうか、失敗したんですね……」


178 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:41:31.32 ID:u9378YZl0


キョン「お前……記憶が……?」

古泉「そうなんですよ……涼宮さんに関する記憶は……機関は……彼女の能力の発現と共に自然と芽生えました……」

キョン「涼宮の力がなくなったら……」

古泉「ふふ……ふ……ぅぅ……。ひっく……ヒグッ……忘れたくない……忘れたくないのに……」

キョン「……」

古泉「全部、全部貴方の……!」

キョン「すまん……」

古泉「……ホントはこんなこと言いたくなかったのに……ああ……胸が焼けるように……」

キョン「古泉……!」

古泉「苦しい……くぅ……覚悟はしてました……この計画を練った時から……」


180 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:42:12.92 ID:u9378YZl0


キョン「古泉! おい……! ぐっ」

古泉「はぁはぁ……ごめんなさい、貴方には……ひどいことを……こんなこと……」

キョン「しっかりしろ古泉……!」

古泉「グッ……くぅ……あ……」

キョン「古泉……どうすれば……ちくしょう」

古泉「……許してください……」

キョン「ええい! 古泉! こっちを見ろ!」

古泉「……?」


キョン「お前のことが好きだ……! お前のことを信じてる……!」


181 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:42:53.80 ID:u9378YZl0


古泉「ぷ……う……はは……なんですか……それ」

キョン「お前はどうだ!」

古泉「貴方を……信じていますよ……」

キョン「……任せろ!」

古泉「……ふふ……あれ……おかしいですね……苦しさが……」

キョン「……古泉!」

古泉「ありがとう……ではまた……どこかで……」

キョン「古泉!」

古泉「……」

キョン「……任せろ……」


183 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:43:35.08 ID:u9378YZl0


キョン「ハルヒは……館か……グッ」

キョン「ぐあ、う……」

キョン「まだ終わっちゃいない! まだ終わっちゃいないぞ……!」

キョン「古泉……長門……!」

キョン「俺はお前らとの別れに満足なんざしていないんだ……!」

キョン「まだSOS団を終わらせてなんかやらん……!」

ダッダッダッダッダ  ポタポタポタ


186 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:44:18.38 ID:u9378YZl0


───館

ガチャッ


キョン「……ただいま」

ハルヒ「キョン! 有希は? 古泉君もいないんだけど!」

キョン「奴らは……先に帰った……」

ハルヒ「は? ってどうしたのよその傷!」

キョン「ハル……ヒ……」

ハルヒ「喋んないで! ああああ、えーっと、ああもう、どうすればいいのかしら、キョンが、キョンが死んじゃう!」

キョン「ハルヒ……肩を貸してくれ……」

ハルヒ「ほら、掴まりなさいよ! こっち、ここに包帯とか用意してあるから! 急いで」

ガシッ


188 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:44:59.85 ID:u9378YZl0


キョン「ハルヒ……ぐっ」

ハルヒ「喋んないでってば! お願いだから!」

キョン「一度しか言えないから……よく聞けよ」

ハルヒ「……」


キョン「愛してる」 チュッ


ハルヒ「……え?」

キョン「俺は伝えたからな……俺の勝ちだ……。

悔しかったら……返してみやがれ……!」


バタッ


190 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:46:00.41 ID:u9378YZl0


ハルヒ「キョン……?」

ハルヒ「キョン……!」

ハルヒ「……」

朝比奈「……涼宮さん、みんなどこにいったんですかぁ?」←床に布団引いて寝込んでる

ハルヒ「……勝手にどっか行ったわよ」

朝比奈「そうなんですか……ひどいですね」

ハルヒ「そうね……やり逃げなんて、団長相手にいい度胸してるじゃないの……」

ハルヒ「絶対許さない」



ハルヒ「絶対やりかえしてやるんだからーーーーーーーーーーーーー!」


191 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:46:42.29 ID:u9378YZl0


───館 男部屋


?「起きなさい! いつまで寝てんのよ!」

キョン「……あと5分……」

?「いい加減にしなさい! おりゃー」ビシッ

キョン「あいたー!」



ハルヒ「やーっと起きたのね! もうすぐ出発の時間なんだから、ぱっぱと着替えて下に来なさいよ! まったくだらしないんだから!」

タッタッタッタッ


古泉「おはようございます」

キョン「……ああ、おはよう。どういう具合か説明してくれないか?」

193 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:48:38.44 ID:fRVXG7eW0


古泉「簡単なことです。大学二年の夏、再びやってきた孤島から帰る日の朝ですよ」

キョン「……時間的には正常にすぎているようだな。それで、昨晩の出来事はどーなった?」

古泉「ふふ、おおむね大成功です。長門さんからは珍しくビンタを頂戴しましたが」

キョン「そうだ! 長門、それにお前! なんで生きてるんだ!?」

古泉「それを言うなら貴方もそうでしょうに」

キョン「そういやそうだな」

古泉「簡単に説明するなら、涼宮さんに力が戻った、といえば早いでしょうか」

キョン「……そうか」

古泉「それに伴い統合思念体もまた涼宮さんの観察に力を入れ始め、長門さんに力が戻りました。性格も元に戻ってしまったようです」

キョン「……そうか」


196 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:50:03.70 ID:fRVXG7eW0


古泉「機関も多くの人員が戻ってきました。それにより警察の方にお越しいただくことなく、また新川さんのボートで帰れることになりました」

キョン「何よりだ」

古泉「長門さんが生きているのは、統合思念体の力です。僕が生命を取り戻せたのも、長門さんが生命力に力添えしてくれたようですね」

キョン「ふぅん。ん? じゃあ俺は?」

古泉「貴方は、勿論彼女の願い事の力、ですよ」

キョン「……そういやハルヒが力を失っていたってのに、流星群に出会えたのはどういう訳だ?」

古泉「そういうスケジュールでここにやってきたんですよ。8月12日の夜から13日の未明にかけてが、ペルセウス座流星群の最も観測される時間帯なんです」

キョン「すべて計算通りだったって訳か」

古泉「すべての企画は涼宮さんの力を取り戻すために組んだものだったんですよ。……結局最終手段に頼ることになってしまい、貴方にはみっともないところを見られてしまいましたね」

キョン「いいさ」

古泉「それでは……僕は準備ができましたので、先に下へ行っていますね」

キョン「あいよ」

古泉「どうやら廊下で誰かが貴方を待っているようですので、余り待たせないようにしてくださいね」

キョン「……そうかい」


197 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:51:23.80 ID:fRVXG7eW0


───廊下

ガチャッ バシッ


キョン「いて! いきなり何するんだお前は!」

ハルヒ「遅い! どれだけ待たせるのよ!」

キョン「待ってるなんて言ってなかったじゃないか。勝手に待ってたのはそっちの方だろうが!」

ハルヒ「細かいことをうだうだうるさいわね!」

キョン「それで何の用だ?」

ハルヒ「それは……!」


200 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:52:39.34 ID:fRVXG7eW0


キョン「何も用がないなら、みんな下にいるんだから、さっさと行くぞ」

ハルヒ「ええと……」

キョン「ふぅ。じゃあ先に行くからな」

ハルヒ「……ええい、キョン! こっち見なさい!」

キョン「あ?」


チュッ


ハルヒ「バーカ! あんたがあたしに勝とうなんて100年早いのよ! ふんっ!」



203 名前:1 ◆kVDydGKdwc [] 投稿日:2010/02/28(日) 03:54:17.08 ID:u9378YZl0

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
猿さんくらいまくってWILLCOMとPCを梯子しながら書きこみました。

少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。本当にありがとうございました。



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