1 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 20:26:58.60 ID:4Of3x2AO
☆火曜日 教室 二時間目
人間には好きな色がある。
かがみなら菫色と黒色、つかさなら白色、みゆきさんなら橙色って感じで。ちなみに私は赤色と黒色が大好きだった。
小さな頃からその二色を強く好んでいた。
こなた「んっ」
一瞬、私の視界が白く塗り潰される。眩しい。
光源はつかさの銀色の手鏡だった。つかさは悪戯っ子みたいな笑顔を私に向ける。
つかさが授業中に私へちょっかいを出すのは珍しい。
だけど私だって黙っちゃ居ない。黒井先生の目を盗んで鞄から自分の銀鏡を取り出して角度を調整する。
…………………ここだ!
反射光がつかさの左目を捉えた。つかさも負けじと銀鏡で再反射させてくる。おのれ、なまちょこざいな!
亀進行でマジキチオナニーします。
2 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/24(水) 20:36:14.49 ID:4Of3x2AO
ななこ「お前らは授業中に何をしとるんや!」
がつん! 教科書の面がつかさのおでこを、資料集の角が私のつむじを直撃した。
こなた「さ、流石に資料集の角はないんじゃないですか」
ななこ「何ぬかしとるんや、自分が悪いんやろが」
こなた「すみませんでした…」
ななこ「二人とも鏡は没収! 授業に集中せいっ」
つかさのせいで怒られた。いや、自分が乗ったのがいけないんだけどさ。
3 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 20:43:23.69 ID:4Of3x2AO
二年以上の付き合いで気付いたらことだけど、黒井先生はチョークの粉で自分の所持品が汚れることを嫌う。
だから先生は携帯するチョークの全てに銀色のグリップを装着していた。
だから先生が板書をするたびに銀色が黒板の上を舞うように動いた。
見惚れてしまうほど美しい輝き。長時間眺めていると目がチカチカするんだけど、ついつい目で追いかけてしまう。
何気なくペン回しをすると反射光が私の網膜を刺激した。
4 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 20:51:31.71 ID:4Of3x2AO
☆同日 家庭科 三四時間目
野菜を切る、切る、切る切る切る。
野菜が音を立てて崩れていく。ざく、ざく、ざくざくざく。
かがみ「あんた達、また黒井先生に怒られてたでしょ」
つかさ「あはは、油断しちゃった」
かがみ「ちゃんと授業に参加しなさいよ」
つかさ「はーい」
かがみ「こなた、あんたもよ?」
私が包丁を動かせばそれに応える野菜達。
ざくざくざく、ざくざくざく、ざくざくざくざくざくざくざく。
野菜の水分が包丁に纏わり付くと、その部分が光をきらきらと反射してなんだか嬉しい気分になってくる。
ざくざくざくざくざくざくざく、楽しい。
かがみ「こなた…?」
5 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 20:57:36.44 ID:4Of3x2AO
みゆき「泉さんの千切りはお店で出てくるのと同じくらいきめ細かですね」
つかさ「うわぁっ本当だ、凄いなこなちゃん」
かがみ「むぅ…私も料理勉強しようかな」
ざく、ざく、楽しいな。楽しいと思えるからこそ私は料理を得意になったのだろう。
かがみが「お母さんが居ないから苦労したのね」なんて妄想をしたこともあったが全然そんなことはない。
私は純粋に料理が好きなのだ。ものを好きであることに理由なんか要らないよね。
家庭科の古錆びた包丁が鈍く光を反射した。
6 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 21:04:45.33 ID:4Of3x2AO
かがみ「こなたー」
切る野菜が無くなった。包丁を動かす理由も無くなってしまった。
私は包丁を顔の高さまで持ち上げて光にかざした。
刃先はギラリと華やかだ。角度を変えれば異った部分が光る。
でも、使い古された学校の包丁ではこれが限界だね。黒ずみが私の嗜好を阻害する。
かがみ「ちょっとこなた…?」
こなた「惜しいなぁ」
かがみ「えっ?」
7 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 21:15:36.23 ID:4Of3x2AO
こなた「えっ?」
かがみ「何が惜しいの?」
こなた「私そんなこと言った?」
かがみ「…刃物眺めながらにやにやして」
こなた「あぁ、ごめん、ただの思い出し笑いだよ」
かがみ「ハタから見るとただの怪しい人だから気をつけなさいよ」
顔にでてたか。
こなた「失敬失敬………かがみ」
かがみ「何…?」
8 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 21:19:40.75 ID:4Of3x2AO
こなた「炒めすぎじゃない? 焦げるよ」
かがみ「えっあっやばっ!」
9 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 21:44:56.52 ID:4Of3x2AO
展開ミスた…
この流れで続き気になってる人居る? 居たら続けるけど居なさそうだな
12 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 22:04:16.59 ID:4Of3x2AO
☆同日 自宅
こなた「ただいま!」
そうじろう「おかえりー」
こなた「ゆーちゃんまだ帰ってないんだ?」
そうじ「みなみちゃんの家に寄って帰ってくるらしいぞ」
こなた「そんじゃ、お父さん何が食べたい?」
そうじ「肉料理かな」
こなた「おっけー」
そう言って私は料理の支度を始める。着替え、手荒い、うがい。
それからマイ包丁を棚から取り出すと、料理漫画よろしくの刃物捌きでくるくる回してからまな板にたたき付けた。
以前に、この突き立てる時の音が小気味いいと言ったら、ゆーちゃんが本気で苦笑いをしたのを思い出した。
ゆーちゃん暴力的な
の嫌いだから仕方ないよね。
13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 22:13:06.47 ID:4Of3x2AO
☆
台所で大きな音が聞こえた。またこなただろう。
最近、何の漫画の影響だろうか刃物に凝っているらしい。
一過性のものだとは思うのだが、我が子が危なげな趣味に片足を突っ込んだと考えるといい気はしない。
本人は隠そうとしているらしいから追求はしないが、たぶんゆーちゃんも気付いているだろう。
……いや、やはり、最低限の助言くらいはしておくべきか?
ゆたか「ただいまー」
こなた「おかえりなさい、もうちょっとしたらご飯出来るからねー」
15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 22:20:49.53 ID:4Of3x2AO
そうじ「ゆーちゃん、ちょっといいかな?」
ゆたか「はい?」
そうじ「こなたのことなんだがな…」
ゆたか「…お姉ちゃんの」
そうじ「最近、ちょっと様子がおかしくないか?」
ゆたか「や…やっぱり、そうですよね。私もちょっと気になってたんです」
そうじ「どんな風に?」
ゆたか「その、包丁をじっと見詰めてたり…部屋でナイフを研いてたり、です」
そうじ「部屋でナイフ? そんなの隠しもってたのか…」
ゆたか「たぶん、結構いろいろな種類をもってるかも」
参った。こりゃかなりどっぷり浸かってかもしれないな。
正直、もうちょっと穏やかに趣味にして欲しい。
16 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 22:33:35.54 ID:4Of3x2AO
そうじ「他に何かあるかな? そうなった理由、とかさ」
ゆたか「私にはちょっと…今度かがみ先輩達にあたってみます」
そうじ「悪いけどお願いするよ。趣味が趣味だけに心配でね」
ゆたか「いえ、私も気になってるので。何もないとは思うんですけど」
こなた「二人してなんの話してるの…?」
…!!
そうじ「こ、こなた飯、出来たのか?」
こなた「うん、覚めちゃわないうちに食べよ」
ゆたか「私も着替えたらすぐに行くね」
こなた「ういー」
今、こなたに何か声をかけた方がいいだろうか。
しかし、それは我が子を疑っていると自白するようなものでもある。
だが俺には見つからないように隠しもってるナイフや奇妙な行動を考えると………。
17 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/24(水) 23:18:48.41 ID:4Of3x2AO
☆翌日 学校 休み時間
ゆたか「かがみ先輩」
あら、ゆたかちゃん?
ゆたか「ちょっとだけお尋ねしてもいいですか?」
ゆたかちゃんから私に話しかけてくるなんて珍しいわね。
ゆたか「こなたお姉ちゃんのことなんだけど、かくがくしかじか、でして…」
ゆたかちゃんの話を聞いて私自信の表情が険しくなっていくのを感じる。
刃物を眺めてにやにや笑ってるのが日常茶飯事で、自室ではネトゲもせずに遊んでる?
おかし過ぎるでしょうよ。
かがみ「こなたの奴家でもそんな調子なのね…」
ゆたか「も?」
かがみ「それがさ、昨日の家庭科の時間にも包丁眺めてにやにやしてたのよ」
ゆたか「そうなんですか…」
かがみ「具体的に刃物で何かをしたりとかは、ないのよね?」
ゆたか「そういったことは一切ないです」
ゆたかちゃんが少しだく語気を荒げた。
そりゃ従姉妹をそんな風に言われたんじゃいい気はしないわよね。
かがみ「ごめん、言い方が悪かったわ」
ゆたか「あぁ、いえ、すみません」
かがみ「何か気付いたら私の方から連絡するわね」
ゆたか「ありがとうございます」
こなた「へえ、私自身は隠してたつもりなんだけで、バレちゃうもんなんだね?」
かがみ「あ……」
ゆたか「あ…あう…こなたお姉ちゃん……」
こなた「にゃはは、ちょっと派手だったかな〜?」
18 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 11:03:05.90 ID:v7zcVU60
かがみ「えっと、その…」
こなた「いやーこのタイミングでごまかしは無理でしょー」
そりゃそうか。
かがみ「隠そうとしてたって、どうして隠す必要があるの?」
こなた「え? いやだって世間的に見てあまりいい趣味とはいえないでしょ?」
かがみ「普段ならそんなの気にも留めないじゃないの。教室で雑誌後ろのエロページ開いてる時は私のほが焦ったわ」
こなた「あはは、アレは簡便してよ…。いや、ね? 私自身は人の趣味なんだからほっといてって感じなんけどさ」
こなた「今ハマってる趣味を知られたらゆーちゃんとかかがみん、お父さんが変な心配するかなと思ってさ」
ゆたか「…あ」
こなた「別に人に言いふらすような趣味でもないし私の中で楽しめばそれでいいかなって思っただけだよ」
かがみ「そう、だったの」
ゆたか「そっか、そうだよね。なのに変な探りいれてごめんね」
こなた「あはは、でもまあ、心配してくれてありがと」
こなた「やっぱり友達にくらいはオープンにした方がいいのかな? 逆に迷惑かけちゃったみたいで…」
かがみ「いや、隠してたほうがいいでしょうね。家族とか私は気にしないけど、拒否反応示す人オタ趣味暴露するより多いと思うわよ」
こなた「そっかー。刃物みてニヤニヤする癖だけ直さないとね」
それなのよね。
フィギュアとかマンガ本を眺めてニヤニヤしるのがこなただから
それが普通といえば普通なのかもしれないけど、普通、刃物が好きだからってそれを眺めただけでニヤニヤするものかしら?
かがみ「あんた、まさか鞄に入れて持ち歩いたりしてないでしょうね」
こなた「…うん、そんなことしてないよ」
こなたが目を逸らして私の問いに答えた。
こんにゃろ。
かがみ「持ち物検査ね」
こなた「ど、どうかご勘弁を…」
20 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 17:04:19.11 ID:TJ6li6AO
☆昼休み 黒井教室
こなた「ち、ちょっと私の鞄勝手に漁ら無いでよ」
かがみ「あっ! あんたこれ」
私がこなたの鞄から取り出したのは折り畳み式のサバイバルナイフ。
よく洋画なんかで見かける奴で部分部分がギザギザになっている。
かがみ「あんたこれ銃刀法違反じゃ」
こなた「これは5.6cmでギリギリセーフだよ」
かがみ「使いもしないもん持ち歩いて…あんた明日これ持ってきたら没収ね」
こなた「むぅ…」
つかさ「こなちゃんとお姉ちゃん何してるの?」
かがみ「うぉっと! つかさには関係ない関係ない」
つかさ「えー、いーじゃん見せてよ」
こなかが「だめだめ」
つかさ「えー」
21 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 17:42:15.13 ID:TJ6li6AO
☆下校時
かがみ「セバスチャンが臭くってさ〜」
こなた「あはは臭かったよねー」
つかさ「あっ見て見て、あの子可愛くない!?」
かがみ「捨て犬相手しちゃだめよ。なんの病気を持ってるか分からないのに」
こなた「かがみんはシビアだなぁ」
つかさ「なでなで」
こなた「そしてその忠告も虚しく無に帰りましたとさ」
かがみ「はぁ、やれやれだわ…」
22 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 18:24:41.12 ID:TJ6li6AO
こなた「つかさは可愛いの好きだよね」
犬「くぅ〜ん」
つかさ「そうだ、みてみて、非売品の限定版リラッタヌストラップをまつりお姉ちゃんにもらったんだ」
つかさは嬉しそうに最新機種の携帯電話を取り出した。
この子は全力で女子高生やってるね。
こなた「ホントだ、良かったね」
つかさ「うん!」
その瞬間だった。
ガプッという効果音が相応しい動作で、その仔犬がストラップを食いちぎり飲み込んだのは。
つかさ「」
かがみ「ぁ…あー」
こなた「………ご愁傷様、です」
犬畜生「はふっはふっ」
場が凍りついた。
24 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 22:01:45.55 ID:TJ6li6AO
つかさ「あぅ、ぁうあ、あわああぁぁぁん!!」
かがみ「つかさ、何処行くの!? ちょっと待ちなさいよ!」
泣きながらこの場を立ち去る妹をおい、姉もその場から姿を消してしまった。
後に残されたのは私とこの駄犬だけ。
こなた「とんでもないことやらかしちゃったね? 君は」
駄犬「わぅん?」
こなた「つかさも可哀相に…」
駄犬「くぅ〜ん」
そういえばこの子は携帯ストラップを胃袋に入れたままで大丈夫なのかな?
誰かの飼い犬なら医者にかかって除去してもらうんだろうけど、この子は捨て犬だ。
薄禿げた体毛と黒ずんだ体。首輪なんて装着しておらず骨も浮き出しみすぼらしい。
間違いなく捨て犬だ。
こなた「最近の塗料にはどんな化学物質が使われてるかわからないから危険なんだよ」
犬「くぅん?」
こなた「ま、わかるわけないよね」
このまま放置すれば確実に死ぬ。死ななくても体調を崩す。
体調を崩した捨て犬はやっぱり生きる糧を得られず死ぬ。
…やっぱりこのままじゃ可哀相だ。うん、異物は除去しなきゃだよね。
こなた「私もつかさも君も笑顔で一石三鳥って訳だ♪」
犬「?」
私の左手でぴかぴかと煌めく銀色が、初めての任務を任されて喜んだ。
そんな気がした。
25 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 22:32:54.12 ID:TJ6li6AO
☆翌日 学校
こなた「おっはよー!」
かがみ「おはよ、こなた。えらくご機嫌ね?」
こなた「ふふふん♪」
つかさ「おはよー…」
こなた「つかさは…元気ないね……」
かがみ「この子まだ昨日のこと気にしてるのよ」
つかさ「まつりお姉ちゃんは許してくれたんだけど、やっぱ残念で」
こなた「昨日のストラップまだ気にしてたんだ…」
全く我が妹ながら情けないわね。
今度かわりのストラップでも買ってやるか。…ん?
かがみ「なにニヤニヤしてんのよ…」
こなた「ふふふ? それはねぇっ、じゃじゃーん!」
盛大な掛け声と共にこなたがとりだしたのは、昨日、犬食べられてしまったはずのつかさのストラップだった。
私てつかさは度肝を抜かれた顔になる。
かがみ「あんたそれ…」
つかさ「どうしたの、こなちゃん」
こなたは嬉しそうに答える。
こなた「つかさが余りに不憫なもんで、家の中を漁ったらなんと我が机の中から
出てきたのです!」
こなた「そういえば何かの景品で貰ったような、と思って心当たりを探したら本当にその通りで驚いちゃったよ」
こなた「つかさはラッキーだったね、これ、あげるよ!」
26 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 22:37:45.29 ID:TJ6li6AO
つかさ「え、本当にいいの?」
こなた「どうぞどうぞ、私が持ってても豚に真珠だからね」
かがみ「よかったじゃないの、つかさ。こなたもいいとこあるわね」
妹の嬉しそうな顔を見てると私も嬉しくなってきた。
こなたには感謝しなくちゃね。
つかさ「えへへ♪ ありがとうこなちゃん!」
かがみ「ありがとうね、助かったわ」
こなた「わはは、礼には及ばんよ」
27 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 23:26:40.57 ID:TJ6li6AO
☆下校時
こなた「そんじゃ帰ろっか」
みゆき「私とかがみさんは委員会がありますので」
こなた「そなんだお仕事頑張ってね。つかさ帰ろー」
つかさ「うん!」
☆
かがみ「あー、保護者会の冊子の製本くらい業者に頼めっての私立高校のくせに、何百冊あるのよコレ」
みゆき「全委員借り出しての作業ですから一人頭は大分楽かと」
かがみ「いや、そうなんだけどね…」
女生徒「柊さんホッチキス取ってもらっていい?」
かがみ「ほい」
女生徒「ありがとー」
かがみ「みゆきはあと何冊?」
みゆき「まだ半分くらいかと」
かがみ「早…」
女生徒「はい、助かったわ」
かがみ「もういいの?」
女生徒「うん。あ、そうそう、聞いた?」
かがみ「何を?」
女生徒「なんかバスおりてから駅までにライトーンあるじゃん?」
かがみ「ああ、いつ見てもガッラガラの?」
女生徒「そうそう、そんでね、その横の路地にある従業員用の扉があるんだけど」
かがみ(昨日、捨て犬がいた…)
女生徒「そこに犬の切り裂かれた死体があったらしいの!」
28 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/02/25(木) 23:27:59.02 ID:TJ6li6AO
かがみ「へっ?」
女生徒「あれ、怖くなかった?」
かがみ「あーいや…」
女生徒「柊さんって普段から全然怖がらないから、ちょっと驚かせようと思ったんだけどダメだったかぁ」
かがみ「え、嘘話(うそば)?」
女生徒「んん? 小耳に挟んだだけだから本当か嘘かはわからないけど、まあ普通に考えたら無いわよね」
女生徒「そんなチープな事しても皆すぐに忘れちゃうし、誰も得しないわ」
かがみ「なんだ、ビックリした…」
女生徒「驚いてくれたんなら話したかいがあったわね」
かがみ「残酷なのは控えた方がいいわよ」
女生徒「以後気をつけてまっす♪」
かがみ「…」
かがみ「まさかだけど、確認だけして帰るか…」
29 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 23:36:57.56 ID:TJ6li6AO
☆柊家
つかさ「ただいまぁ」
まつり「おかえりー、かがみは?」
つかさ「委員会があるから遅れるって」
まつり「そなんだ。………つかさ」
つかさ「?」
まつり「随分機嫌いいね。もう立ち直ったか?」
つかさ「あ、それなんだけどね!」
つかさ「じゃーん! なんと同じ型のリラッタヌストラップをこなちゃんが私にプレゼントしてくれたんだよ!」
まつり「へ?」
つかさ「どうしたの?」
まつり「あのストラップさ、私の友達が趣味で作ったやつだから全く同じストラップは無いはずだよ」
つかさ「えっ?」
まつり「メーカーのリラッタヌじゃなくて非正規品なんだよ」
つかさ「え、でも全く同じやつをこなちゃんがくれたんだよ?」
まつり「えっ」
つかさ「えっ」
31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/25(木) 23:54:37.89 ID:TJ6li6AO
☆ライトーン横
……血痕がある。
女生徒の教えてくれた場所に大量の血痕が付着していた。
洗い流したが流しきれなかった。そんな感じの血の痕が。
かがみ「だからって犬のとは限らないけど…」
従業員「何やってんスか? コッチは従業員専用なんで表回って下さいね」
かがみ「あのっ…」
従業員「なんスか?」
感じ悪いな。
かがみ「ここに、犬居ませんでしたか?」
従業員「いや? 朝から居ますけど見てないッスね。血なら大量でかなり焦りましたよ」
かがみ「血なら大量?」
従業員「そーッス。朝、俺が入ろうとしたらここ一体血だらけだったんスよ。バケツで流したけど臭いとれるまで相当かかりましたよ」
かがみ「誰の血か分かりますか?」
従業員「さっきからなんなんスか。知りませんよそんなの」
そう言ってチャラ男は店の中ひ消えていった。
なんの血か分からない血……。
人なら事件や大々的な噂になっててもおかしくない量の出血だが。
かがみ「所詮は女子高生の噂…」
もし犬だとして、ここで切り裂いた犬の死体は何処にならバレずに隠せるだろうか。
いや、噂になってるのだから、誰かが死体を目撃したことになる?
それとも謎の血痕に尾鰭(おひれ)がついただけの話?
かがみ「……もう少しだけ路地の奥にいってみますか」
33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 10:12:09.18 ID:iLtKjAAO
委員会のせいで時間帯が遅いこともあって、路地の奥は殆ど暗闇であった。
たぶん、大通りの方からは私のことがまともに視認出来ないだろう。
かがみ「携帯のライトを使わないと足元がちゃんと見えないわ」
携帯のライト機能を実用したのは今回が初めてかもしれない。
しかし全くの無駄機能だ、とも現状では言えなくなった。
かがみ「文明の理器最高」
携帯が足元を、行く先を煌々とてらす。
血痕を見たせいもあって、あるはずのない不気味な気配を感じる。
かがみ「いや…」
私は嫌な気分になってふと振り返る。
夕方の、殆ど夜の今に女子高生が一人で路地裏を歩いている。
よくよく考えればあまりよろしくない状況だ。
かがみ「はやく終わらせよ」
35 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 22:46:14.87 ID:iLtKjAAO
路地の奥へ進めは進むほどに私の心配の種はどんどんと成長していった。
進めば進む程に臭うのだ。怪しさが増すという意味でも臭うし、異臭が鼻をつくという意味でも言葉の通りである。
かがみ「冗談じゃないわよ…」
これは異臭なんて度合いを遥かに越えている。
私はセーラー服のポケットからハンカチを取り出して鼻にあてがった。
悪臭はそれでも止まることを知らない。
歩数を進めた分だけ気分が悪くなる。
わりかし歩いたところで悪臭がピークを迎えた。
濃い。
臭いの元はすぐ近くにあった。
青かった、大きな、蓋のされたごみ箱、ポリバケツ。
この狭い路地の空間を腐臭が支配していた。
かがみ「…」
この蓋を開けば答えがでる。
この蓋を開けば腐った食べ物が姿を現すに違いない。
何を躊躇する必要がある。臭いならもう慣れただろう。
かがみ「早く…確認して、家に帰るのよ………」
激臭を前に私のハンカチはなんの仕事も果していなかった。
自身の唾を飲む男が聞こえる。
手を汚したくはない。
私は直接のタッチを回避すべく、蓋の取っ手にハンカチを当てて開封する。
赤いポリバケツはギチギチと音を立てて開かれた。
36 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:15:12.26 ID:iLtKjAAO
かがみ「……」
赤赤黒犬赤黒赤赤黒黒赤黒赤犬赤赤赤…………犬?
犬か?
犬だったものか。
かがみ「………」
蓋が手を離れて地に落ちる。
ハンカチもそれに付随する。
かたん。
かがみ「…………」
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐっちゃぐちゃ。
赤と黒が犬だったモノに張り付きてらてらと光る。
犬だったモノが携帯の光を受けて白く反射する。
バケツにたまった液体はまだ乾いていないらしい。
かがみ「……………」
切り裂き死体?
なにがよ。
透明度0の粘体につつまれたソレは頭以外が海に沈んでよく見えない。
死体の状態なんて確認できるわけがなかった。
かがみ「…………うぷっ」
我慢の、限界だった。
吐いたら、少しはマシに、なる、かし………っ。
38 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:26:38.39 ID:iLtKjAAO
かがみ「はぁ、はあっ」
そうだ、血の海のせいで私は死体の状況をよく確認できなかった。
私は死体の状況を確認できなかった。
切り裂き死体だったかどうかなんて私には分からなかった。
かがみ「切り裂き死体だなんて根拠はどこにも無いッ!!」
帰ろう、明日は英語の宿題があったわね。
どうせ、こなたのやつは、みせてくれー、だなんてせがんでくるんしょうね。
ふふ。
40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:51:30.37 ID:iLtKjAAO
☆柊家
かがみ「ただいまー」
つかさ「おかえり、お疲れ様ー」
かがみ「いやー疲れたわ」
まつり「委員になんかなるもんじゃないよねー」
かがみ「楽しくはないけど、やりがいあるわよー、面倒だけど、確かにダルいわね」
まつり「なんじゃそりゃ」
つかさ「あっお姉ちゃんそういえば、こなちゃんに貰ったストラップってかくがくしかじかなんだけど不思議だよね」
かがみ「まつり姉さんの友人のオリジナル?」
まつり「そうそう、普通に考えてこなたちゃんが持ってる訳がないんだけどさ…」
………
つかさ「お姉ちゃんが下剤でも飲ませたんじゃないのとか言うんだよ〜! 酷いよねっ!」
………
まつり「いや、でも普通そうでもしないと有り得な」
かがみ「偶然よ。素人の発想なんか既存の製品に依存してるからね」
つかさ「だよね〜」
まつり「いやでも塗りの粗い所とか一緒」
かがみ「姉さんの記憶違いでしょ? 私お風呂入ってくるわ」
つかさ「私も宿題してこよっと」
まつり「ち、ちょっと!」
まつり「……そういうレベルじゃないんだって………」
41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/26(金) 23:59:33.37 ID:iLtKjAAO
☆翌日 学校
こなた「かーがみん!」
かがみ「はい、三時間目には一旦返してね」
こなた「うぉっ! なんで宿題借りにきたって分かったの!?」
かがみ「あんたの考えなんてお見通しよ」
こなた「ありがと、かがみ様っ!」
かがみ「えぇい、ひっつくな!」
42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:07:58.34 ID:FoWRNEAO
かがみ「あ、私ちょっと格ゲ鍛えたのよ」
こなた「へぇ、そんじゃ明日やる?」
こなたはふふんと不敵に笑う。
かがみ「あんたん家でいい?」
こなた「いや明日は父さんの担当の人が来るからウチは無理」
かがみ「じゃ、ウチおいで」
こなた「ういうい〜」
43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:14:43.55 ID:FoWRNEAO
☆翌日 休日 柊家
こなた「お邪魔しま〜す」
来た。
かがみ「上がって上がって」
つかさ「こなちゃん今日クッキー焼いたから食べてってよ」
こなた「おぉ、かたじけないのぅ」
つかさ「えへへ前のお返しだよ」
そう言ってつかさは嬉しそうに携帯を取り出した。お礼ねぇ…。
あのストラップ、出所が怪しすぎるでしょうよ。
まつり「いらっしゃい…」
こなた「ども、お邪魔します」
まつり「…」
44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:39:35.09 ID:FoWRNEAO
かがみ「ぐおおぉぉっ!!」
こなた「いやーかがみんもまだまだだね」
前に比べれば大分強くなったけど、まだ甘いなあ。
かがみ「基本コンボはマスターしたハズなのに…」
つかさ「二人共凄すぎて私には何がなんだか」
つかさは弱すぎるんだけどね。
こなた「ちゃんと択も張ってかなきゃ、通用しないよ?」
かがみ「はぁ〜あ、トイレ行ってくる」
つかさ「私もちょっと用事かも」
かがみの部屋に一人取り残された訳だけど、相変わらずの整理された部屋で主の性格が見て取れた。
こんこん、とドアが鳴る。
こなた「はい?」
まつり「こなたちゃん、ちょっといいかな?」
こなた「はい?」
ドアを開いて見えたのは、確か上から二番目のまつりさんだった。
私とこの人の接点なんてかがみとつかさの二人だけなんだけどなんの用だろう。
こなた「どうしました?」
まつり「…つかさのストラップなんだけどね」
ストラップのお礼かな? つかさはお姉ちゃんに好かれてるねー。
こなた「いえいえ…」
まつり「何処でどうやって入手したの?」
こなた「え?」
まつり「いやね、アレをどうやって手に入れたのかな?って」
こなた「まつりさんはどうやってつかさにプレゼントする分を?」
まつり「私の友人が自主制作したやつを貰ったんだよね」
………あれ、詰んだ?
45 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 00:59:15.94 ID:FoWRNEAO
まつり「こなたちゃんは?」
こなた「………」
言い訳が、思い付かない。
【友人を通して貰ったから詳しく出所は分からない】でいいだろうか。
いや、かがみとつかさには【何かの景品で貰ったような】と説明してしまっている。
こなた「……ぁ」
まつり「ねぇ」
【記憶にない】はどうだ。
いや、どうごまかした所で、この人が私の事を訝しく思っていることに変わりはない。
こんな質問をしている時点で、しかもあのストラップの出所が彼女の友人という時点で私は殆ど黒の烙印を押されて…。
違う、考え過ぎだ。
この人が私を怪しく思うのはただ単に二個あるはずの無いものだからだ。
【私のやったこと】などは微塵も認知していないはずだ。
………下剤を飲ませたはどうだ?
しかしそれだと、つかさ達にそんなものをプレゼントしたことに…。
そうか私はそれを疑われている………?
体中が汗をかいて心臓がバクバクと煩い。
こなた「…」
まつり「なんで言えないの?」
腹をかっ裂きました、よりかは何百倍もましだ。
言ってしまえ。
こなた「げ……」
まつり「げ?」
こなた「下ざ」
かがみ「ねえ? なにやってんの?」
46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 01:33:44.94 ID:FoWRNEAO
こなた「かがみ」
まつり「かがみ、調度あのストラップの出所を」
かがみ「何やってんのよ…!」
まつり「いやだから」
かがみ「だから!! あれは素人が作ったオモチャだから発想が既存品に依存していてそれがたまたまこなたがプレゼントした奴だったの!!!」
こなた「え?」
まつり「あんな塗りムラの多い製品なんて有り得ない。たしてや、細かいミスの位置とかが完全に記憶と一致するなんて…」
かがみは何を言っている?
かがみ「は? だったら何だって言いたいの?」
無理がある。どうしてそんな破綻寸前の理論で私を守ろうとするの?
かがみ「姉さんはアレがつかさの手元にあることをどういい風に説明するつもりなのよ!?」
かがみには、理論をでっちあげてまで私を守る必要があることになる。
かがみ「まさか一昨日の下剤云々、本気でいうつもりじゃないでしょうね!?」
私の読みは、当たりだった…。
ということは、かがみが必死なのは私をそんな人物だと思いたくないから?
………それなら、つじつまは合う。
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 01:49:09.00 ID:FoWRNEAO
こなた「たぶん、かがみの言う通りじゃないかな? 私はあれ、何かの景品で貰っただけだから詳しくわかんないけど」
まつり(そんな都合のいい話……)
まつり(………いや、追求しつ何になる)
まつり(誰も知らなければ、誰も気にしなければそれで終わるんだ)
まつり(………私さえ、何も考えなければ……重大事件でもないし……………)
まつり「分かった、もういいよ。ごめんねこなたゃん」
彼女はそのまま一階へとおりていった。
こなた「…」
かがみ「…」
空気が重たい。
かがみが心の底で私の事を怪しく思っているのは間違いないだろう。
でなきゃ、あんなでまかせ…。
かがみ「へんな所で頑固な姉でゴメンネ?」
こなた「あはは…かがみと似てるじゃん」
かがみ「……私を頑固と言うか、コンニャロ」
こなた「むふふ」
これは形式上の会話だ。
………かがみになら、本当のこと話しても大丈夫かな。
こなた「かがみ」
つかさ「クッキー完成したよ! 食べて食べてー」
こなた「おおぉ! ありがとー」
かがみ「おいしっ」
いや、それにはリスクしかない。
話す必要性はない。
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 02:07:17.44 ID:FoWRNEAO
☆柊家 スマブラ中
かがみ「こなた、メール来てるわよ」
こなた「本当だ」
つかさ「あ、ピチュウ可愛い」
Fromかがみん『あんた、犬殺したでしょ』
こなた「…!……!!」
つかさ「ぁ、こなちゃんが自滅した、珍しいね」
Fromこなたん『何のこと(笑)』
Fromかがみん『ストラップ。あと、死体見た』
Fromこなたん『ごめん』
Fromかがみん『私に何を謝ってるの? むしろ感謝しなさいよ』
Fromこなたん『そうだね、さっきはありがとう』
Fromかがみん『私、あんたが周りの人間に変な目で見られるのは嫌。もう同じようなことはしないで』
Fromこなたん『分かった。心配かけてごめん』
Fromかがみん『それで、なんでそんなことをしたの?』
Fromこなたん『サバイバルナイフを使ってみたかった。あと、どうせ死ぬ犬だったのと、つかさが可哀相だったから』
かがみ(つかさが可哀相だったから………か)
かがみは今どんな気持ちで私とメールをしているのだろうか。
つかさ「二人ともメールしながらなのに勝てないよぉ…」
51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 11:34:37.48 ID:FoWRNEAO
☆
いつからだろう、私の好きな色には赤と黒だけでなく銀も含まれるようになっていた。
銀が色に含まれるのかって話は無しの方向で…。
52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 12:02:09.81 ID:FoWRNEAO
☆翌日 休日 かがみの部屋
パッパララッパッパッパパッパパ-♪
メール一件『峰岸あやの』
From峰岸あやの『水曜日の事なんだけど、柊ちゃん達ライトーン横の路地に居た?』
文字を見た瞬間、心臓が止まるかと思った。
水曜日はストラップが動いた日、こなたが犬を殺した日のことだ。
なんで?
なんでなんでなんで?
なんであやのは私にこんな質問をするの?
犬の噂を友人などから耳にした?
いや、それだけでは犬と私達の間に関連性が無い。
私にこんな質問をする意味が分からない、質問をする理由にならない。
あやのは【犬と私を結ぶ何かを知っていることになる】。
しかもあやのは水曜日のあの場所に着目している…。
かがみ「違う…」
違う。
あやのはただ単に水曜日のことを私に尋ねただけだ。
【犬のことを知っているとは限らない。】
From柊かがみ『そんなこと一々覚えてないわよ(笑)』
From峰岸あやの『じゃ、木曜日、柊ちゃんは同じ路地に居たよね?』
な、なんなのよコイツ。
コイツ何をどこまで知って、なんのつもりでこんなメールを…!!」
53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 16:17:22.56 ID:FoWRNEAO
☆
みさお「柊はなんて言ってる?」
あやの「一通目は覚えてないで、二通目はまだ返ってきてないわ」
あやの「ねぇ、みさちゃん見間違えじゃないの?」
みさお「紫ツインテと黄色のでかリボンに青チビロン毛の三人組と言ったらあいつらしか居ないと思うぜ」
あやの「でもまさか泉ちゃんが…」
みさお「いやでも確かに見たんだってば、三人組のチビだけが残って犬つかまえて路地奥に入っていくのを」
みさお「しかも次の日に柊が路地に入って行くのをあやのも見たって言ったじゃん」
みさお「あいつら絶対怪しいよ」
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 16:18:25.18 ID:FoWRNEAO
あやの「そんな状況証拠だけで…」
みさお「犬の死体と血痕が見つかったって噂が流れたのも、ちびっ子が路地奥に入って行ったその次の日なんだろ?」
みさお「偶然とかそんなレベルじゃないって!」
あやの「でも私達は犬の死体なんか見てないし、泉ちゃんが何かしたのを直接見たわけでもないわ」
あやの「やっぱりいい加減な推測でしかないと思う」
みさお「じゃあ、あやのは全部ただの偶然にするつもりか?」
あやの「泉ちゃんが犬を連れていって、どこかに置いたあとに誰かが悪戯でやったって考えるのが普通だと思うよ」
みさお「じゃあ、その次の日の柊は?」
あやの「…噂を聞き付けて興味本位で、とか」
みさお「柊が興味本位だけでそんなのに関わると思うか? むしろあいつは噂とか言い伝えを馬鹿にする部類の人間だと思うぜ」
あやの「みさちゃんは…そんなに泉ちゃんを犯人にしたいの?」
みさお「そ、そうじゃねぇよ! だからこうやって確認取ってるんじゃないか…」
あやの「柊ちゃん、どうして違うってハッキリ返してくれないのかしら…」
みさお「………あやの」
あやの「みさちゃん?」
みさお「路地に血も犬もいなけりゃ噂そのものが嘘ってことになるんだよな?」
あやの「そういうことになる……かな」
みさお「私、路地奥行って確認してくる」
55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 18:38:03.18 ID:FoWRNEAO
☆
みさお「確かここだよな」
私は心して歩を進める。
薄くらいこんな路地、用がないかぎりだれも踏み入れやしないだろう。
夜間は見通しが悪く危険極まりない造りだ。
持ってきた懐中電灯が活躍する。
みさお「せいぜいライトーンの店員が通るくらいか」
そこで私は見たくないものを発見してしまった。
黒く染まった従業員用通用口の足元を懐中電灯が照らし出す。
もとは赤かったのだろう。
日数がたって薄くはなっているがまだ視認できる状態だ。
みさお「なんで発見出来ちまうんだよ…」
もちろん、血があるからといって犬のとは限らないし、柊達が関わっているとも限らない。
しかし、無ければ、「人騒がせな偶然か、重なったもんだなぁ」で済む話だったのだ。
みさお「…犬は居ないな。もう少し奥か?」
グロテスクな物体を見ても悲鳴を上げない心構えをして奥へと突き進む。
そして少し歩いた所でソレが見えてきた。
大きなポリバケツだ。
ところどころ赤黒い、青かったはずのポリバケツだ。
中身の予想はついている。
無惨な姿になった犬が居たのだろう。
しかし、そんなことは、どうでもよかった。
そんな些細なことはどうでも良くなってしまった。
だって、
なあ柊、その黒いポリ袋には何が入ってるんだ?。
なあちびっ子、そんな大きなスコップを持ち歩いてどうするんだ?
二人とも、
それは随分と赤黒い手袋なんだな?
なんで、発見できちまうんだよ―――。
57 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/27(土) 23:55:49.12 ID:FoWRNEAO
みさお「おい…」
二人が弾けたように私の方を見た。
柊の目には驚愕が湛えられている。
ちびっ子の表情は髪がかかってよく分からない。
かがみ「なんでこんな所に居るのよ…」
みさお「まさかと思って見に来たら最悪の後継を見ちまったよ」
こなた「まさかって?」
みさお「その袋の中、犬だろ?」
柊は唇を噛みながら視線を私の足元へと移す。
ちびっ子が髪をかきあげながら質問に応えた。
こなた「さあ?」
答えてはくれない。
みさお「さあって、無理があるだろ。誰かが見に来る前に隠蔽するつもりだったんじゃないのか?」
かがみ「…」
みさお「なんでそんなことしたんだよ」
こなた「…」
みさお「答えろよ」
かがみ「それは…」
みさお「柊はちびっ子を庇ってんのか知らないけど、最初にやらかしたのはちびっ子だろ? 私はちびっ子に理由を聞いてんだよ!」
58 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 00:03:24.56 ID:XalFakAO
こなた「…」
みさお「なあ」
こなた「…」
みさお「なあ!」
ちびっ子がスコップを捨てた。
かがみ「こなた…?」
みさお「諦めたか?」
こなた「かがみん」
59 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 00:25:48.97 ID:XalFakAO
こなた「それを持って走って逃げて」
かがみ「えっ」
みさお「えっ」
コイツは馬鹿か?
こなた「先に袋を持って予定の場所に行ってて。頃合いを見て私も後を追うから」
かがみ「え? でもっ」
柊は眉間にシワを寄せながら私を凝視した。
理解不能。そんな感じの表情。
柊のその反応は当然のものだった。
こなた「いいから早く走って!!」
かがみ「わ、分かったけど、ちゃんと連絡よこしなさいよ!?」
柊が駆け出すより早く、速く私の方がスタートを切る―――。
柊も慌てて場を去ろうとするが遅い、遅過ぎる。
みさお「大切なことを忘れてないか!? 私は陸上部だぜ!!」
柊は決して鈍いわけではないが、袋を担いで私から逃げ切れるわけがない!
私と柊の距離は瞬く間に縮んでいく。
しかし、それでも、ちびっ子の奴は不敵な笑みを崩さなかった。
こなた「大切なことを忘れてるのはみさきちの方だよ」
私が近づけば近づく程にちびっ子の笑みが大きくなっていく。
何を企んでいるのか知らないが、止まるわけにはいかない。
私は全力でちびっ子の横を通り抜ける。
力加減をする余裕はない。力一杯両手で押し退ける。
通り抜けて柊に手を伸ばす―――
60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 01:16:03.07 ID:XalFakAO
手を伸ばして、私は体が宙に浮くのを感じた。
視界が回転する、柊が少しずつ離れていく、視界から柊が消えて、代わりにちびっ子の体が目に入る。
そのまま落下する。
落下する直前、髪の毛を引っつかみ上げられる。
痛覚が、電流が走る。
落下。
胴体がアスファルトに叩き付けられる。
鈍痛が走る。
頭は地に着かない。
みさお「つ!!」
何が起きたのか、一瞬理解が出来なかった。
体が地面について数瞬後、私は投げられた事に気が付いた。
こなた「受け身は取れてるじゃん」
みさお「…」
そういえばコイツ、運動神経抜群の格闘技経験者なんだった。
62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 01:42:36.39 ID:XalFakAO
痛いし唖然とした気持ちになりそうだけどそうはいかない。
今は柊を追いかけることだけを考えなければ。
しかし、髪は痛いのを我慢して力づくにその場を離れようとするも体か言うことをきかない。
みさお「なん…っ!」
ちびっ子が足元や関節に力を加えるだけでバランスが崩れそうになる。
私、柔道なんかしたことないぞ。
逃れ方が分からない!!
63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 01:43:42.02 ID:XalFakAO
みさお「くそ、放せ!」
こなた「無理な相談!」
均衡を失い尻餅をつく。
みさお「いたっ!」
こなた「痛いだけなんだから大人しくしてなよ」
みさお「っていうか、どうせ埋めて隠すつもりだろうけどそんなの意味ないぜ?」
こなた「なにが?」
みさお「あからさまな事しといてまだシラを切るつもりかよ」
こなた「みさきち…」
みさお「なんだよ」
こなた「誰も犬の死体なんて見てないんだよ、分かる? みさきち憶測を裏付けるものはどこにも無いんだよ」
みさお「はあ? 見てなくたって明らかだろ」
こなた「それじゃ通用しないんだよ」
ちびっ子のドヤ顔が腹立たしい。
こなた「大体、みさきちがこれ以上今回の件に関わって何になるのさ? 利益ないよね? 諦めてよ」
私はそういうトンチみたいな屁理屈だとか建前だとかが大嫌いだ。
そんなの私が認めない。
柊に迷惑かけといて何を言ってるんだコイツは。
利益? 知ったこっちゃないね。
64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 01:53:23.79 ID:XalFakAO
みさお「ちびっ子」
隙有りだ。
私は全体重でちびっ子を突き飛ばす。
ちびっ子の体勢が一気に崩れる。
私はすぐさま柊の行った道を追いかけた。
☆
みさきちが単純というか分かりやすいというか、真っ直ぐな奴で助かった。
私はスコップを広って、かがみんやみさきちとは逆の方向から路地を抜け出した。
☆
柊を見失ってから最初の十字路で私は絶望した。
みさお「帰ろう…」
66 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 02:31:17.22 ID:XalFakAO
☆
とぅるるるるる♪
あやの「みさちゃん、どうだった?」
みさお「黒だった」
あやの「え?」
みさお「犬をやったのはちびっ子だし、柊もそれに関わってれか、そうでなくても庇ってるかしてる」
あやの「どうしてそこまで」
みさお「黒いポリ袋とスコップ担いで赤黒く染まった手袋を装着。それだけで十分だろ」
あやの「嘘…」
みさお「確実にあいつらだったぜ。会話もした。血痕は残ってたけど死体は見てない。袋の中だろうな」
あやの「……それで?」
みさお「念のため死体確認してやろうとしたら逃げられちまったよ。今からそっち戻るな」
あやの「うん、もうあと30分したらご飯出来るから早目にね」
みさお「おーサンキュ、じゃな」
ぴっ♪
みさお「明日からどんな顔して柊に顔合わせたらいいんだろ…」
68 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 15:27:48.72 ID:XalFakAO
☆
居た居た。
こなた「逃げ切れたみたいだね、良かった良かった」
かがみ「あんた日下部に怪我させてないでしょうね?」
こなた「たぶん大丈夫、それより早く埋めちゃおっか」
かがみ「そうね」
暗闇の中、懐中電灯一方で作業を開始する。
死体を回収するより先に穴だけは開けて置いたので、一旦穴を隠すために被せた土砂を軽く取り除くだけでいい。
こなた「袋かして」
かがみから袋を受けとって、がさがさと音を立てながら中身を取り出す。
流石に血は乾ききっているが臭いの方が相変わらずだ。激臭が鼻を刺す。
こなた「良いよ…」
時間経過のせいで潤いが失われたのが実に残念ではあるが、それでも赤と黒のコントラストは私を興奮させた。
ぺろんとめくれたお腹が艶かしい。
ああ、生のこの子はもっともっと私を愉しませてくれたのだろう。
半殺しでないことが、殺したてでもないことが余りにも悔しい。
最初にナイフでこれを裂いた時はゆっくり吟味する余裕がなかったのだ。
初体験なんて本当にあっという間だった。
69 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 15:52:01.72 ID:XalFakAO
駄目だ駄目だ、これじゃあ全然足りやしない。
あの新鮮な光が無いんだよ。体も硬すぎる。新鮮さが感じられない。
もっと…もっと柔らかい新鮮な体を………。
かがみ「こなた!」
かがみが私の名前を強く呼んで、私はハッとした。
タチの悪いことにまた自分だけの世界に入っていたようだ。
犬と私しか見えなくなっていた。
かがみ「ぼけっと眺めてないで早く埋めなさいよ」
こなた「そうだね」
かがみが溜息をつきながら自身の眉間を指で摘んだ。
こなた「なんか仕事疲れのおっさんみたいだよ?」
かがみ「うっさい!」
かがみのゲンコツが私の側頭部を直撃した。
こんな私に普通の友達として接してくれるかがみの優しさが嬉しかった。
かがみはぶつぶつ言いながらも私の横で笑ってくれる。
柔らかそうなほっぺだなぁ。
71 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 22:51:04.55 ID:XalFakAO
☆翌日 月曜日 学校
昨日の夜からみさちゃんの元気がない。
柊ちゃんと泉ちゃんのことが原因だと思う。
なんて励ませばいいか思いつかない。
私は、みさちゃんを挟んだ話で聞いただけだから、みさちゃん程に大きなショックではなかった。
あやの「みさちゃんが気にすることじゃないわ」
みさお「いや、気にしてるとかじゃなくてなんであいつ達がって感じでな」
みさちゃんが深々と溜息をついた。
似合わない仕草。
みさお「あやのだったら」
かがみ「おいっす、おはよ」
あやの「あ、おはよう」
みさお「…」
柊ちゃんは何事もなく、いつもの様にみさちゃんや私に挨拶を交わす。
みさちゃんは挨拶も目線も柊ちゃんとは交わさない。
あやの「あの、柊ちゃん」
かがみ「ん、どした?」
こんなに普通に接されると何が何なのか分からなくなりそうになる。
72 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/02/28(日) 23:02:12.51 ID:XalFakAO
あやの「昨日、みさちゃんと」
かがみ「…水曜日と木曜日の路地に居たところを見られたりと色々あったけどさ」
かがみ「決定的なことは何も無かったのよ」
みさお「ちびっ子と同じこと言うんだな…」
かがみ「何もなかったのよ、忘れなさい。その方がみんな楽でしょ?」
みさお「ただの現実逃避じゃないかよ」
かがみ「だったらさぁ、そうだったと認めるとして、認めて誰が得するのよ?」
かがみ「忘れちゃえばいいじゃない」
みさお「話にならねぇ…」
あやの「柊ちゃんはそれでいいの? 泉ちゃんにすき放題させたままでいいの?」
かがみ「…あいつがもうやらないって言ったんだからそれでいいのよ」
これで終わりならそれでいいのかも知れない。
追求したところで何もないなら、忘れちゃえばいいのかもしれない。
あやの「そっか…」
73 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/01(月) 00:17:12.31 ID:X4nEJUAO
☆
あれ以降、私達の学校生活は本当に何も無かったかのようにおくられている。
こなたも私も日下部もあやのも通常の学生生活を営んでいた
。
みさおとこなたは口を利かなくったが、それ以外にはなんの異常も見受けられない。
本当に全てを無かったことにしてしまえる。そんな気さえしてしまっていた。
こんな噂が流れるまでは。
『最近この地域で大量の野良動物が切り殺されてるらしいぜ』
74 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/01(月) 00:34:55.83 ID:X4nEJUAO
その噂を聞いた私はすぐにこなたを問い詰めようして、躊躇した。
こなたは確かに言ってくれたはずだ。もう、あんなことはしないと。
なのに私はこなたを疑うのか?
私の悩みをヨソに日下部が再び件の話で騒ぎはじめる。
みさお「柊が甘やかすからアイツはまたこんなことをしたんだよ!」
やめて、まだこなたと決まったわけじゃない。
みさお「まだそんなこと言ってるのか! ここで止めなきゃアイツまたエスカレートはするぜ! それでもいいのかよ!?」
良くない、いい訳がない。
みさお「だったらアイツを止めてやれんのは、柊しか居ないじゃねぇか」
みさお「目を逸らして大丈夫な訳がなかったんだよ!」
77 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/02(火) 09:35:46.97 ID:SAXkAEAO
☆
かがみ「こなた、ちょっと話があるんだけど」
こなた「……何?」
かがみ「あんたも知ってるわよね、最近野良犬とかがたくさん殺されてるの」
こなた「ああ、あっちこっちに死体が放置されてるらしいね。陵桜でも生の死体見ちゃった人多いらしいじゃん」
かがみ「そういう話がしたいわけじゃないのは分かってるでしょ」
こなたは後頭部を人差し指でぽりぽり掻きながら応える。
こなた「いや、まぁね」
かがみ「率直に聞くけどあんたなの? あんたじゃないの?」
こなた「私のこと疑うの?」
こなたは人差し指の動きを止めて応えた。
こなたが私の目をじっと見上げる。目に特別な表情はない。
かがみ「一回やらかした人間の言う台詞か?」
こなた「それもそうだね。あはは、やっぱり駄目か」
こなた「テキトーにごまかしたかったんだけどなぁ」
やっぱりか。
私は別段驚きはしなかった。
予想も覚悟も出来てて当然の流れだったからね。
78 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/02(火) 11:52:08.88 ID:SAXkAEAO
かがみ「あんたもうしないって言ったじゃん」
私は語気を少し強めて言う。
かがみ「なんでこんなことするの。理由は?」
こなた「今回のことはかがみには関係ない」
かがみ「本気で言ってんの?」
こなた「……前回のは感謝してるし約束を破ったことも謝る」
かがみ「謝るならもうやめて…」
こなた「…」
こなたは何も言わない。
頷いてもくれない。顔は俯き加減で目は窓の外の赤い夕日を見ていた。
地平線との傾斜が殆どない太陽は教室に大きな黒い影を作っている。
私も太陽を眺めたが眩しくて目を逸らした。
かがみ「なんとか言いなさいよ」
こなた「綺麗だよね」
かがみ「風景の話なんかしてないわよ」
こなた「赤と黒の世界の中に何かが輝いてる構図ってすごく興奮する」
かがみ「は? 何わけの分かんないことを」
こなた「その輝きが銀なら一番、白でも見劣りしないね」
こなたが何を言いたいのか分からない。
何故か話を逸らしたいだけだろうとも思えなかった。
79 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/02(火) 15:46:28.63 ID:SAXkAEAO
こなた「かがみんもそう思わない?」
視線を私に戻したこなたは半笑いで私に同意を求めた。
かがみ「なんの話をしてるのか分からないわ」
こなた「別に何か限定的な状況下での話をしてるわけじゃないよ」
こなた「かがみんも黒色好きだよね? みたいな軽いノリの質問だよ」
かがみ「今みたいな夕日でもいいの? それなら嫌いではないわね」
こなた「好き? 赤と黒の中に銀が煌めくのは好き?」
どうしてか知らないが、やたらと色にこだわってくる。
しかもシチュエーションが非常に理解し難い。
かがみ「他に具体例でもなきゃ分からないわよそんなの。色だけじゃ決められないわ」
そこまで言って私は話が逸れている事に気がついた。
かがみ「って! 私の質問にまだ応えてないわよ!!」
こなた「私はダーイ好キだよ」
会話が噛み合わない。
それ自体はいつものことなのだが、今日はなんだか不気味な位にちぐはぐだった。
かがみ「いいから答えなさい!」
こなた「分っからないかな〜。なんだったら実演してあげようか? 見せたげよっか? きっとかがみも癖になっちゃうよ?」
何を
こなた「私の見てきた世界をさぁ♪」
こなたは満面のにやにやでそう言うと、鞄の中から両刄のナイフをとりだした。
84 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/02(火) 17:24:24.38 ID:SAXkAEAO
かがみ「あんた、またそんな長いサバイバルナイフ持ち出して!」
こなた「違う違う、これはサバイバルナイフじゃなくてハンティングナイフって言うんだよ」
そんなの知るか!
かがみ「てかソレ何pあるのよ!? 絶対にアウトだろ!」
こなた「えっと、たしか25.0pだったような」
かがみ「なっ」
目茶苦茶長いじゃない!
完璧にキレた私は私は相手がナイフ持ちの格闘技経験者であることも忘れて、頭上に肘撃ちを落とした。
「ごっ」と鈍い音がした。
こなた「〜〜〜〜〜ッ!!!」
無言でその場にしゃがみこんで頭を抱えるこなたから私はナイフを取り上げようとする。
しかしこのナイフ、よく見ると持ち手がナックルみたいな形になっており、
四つの輪に指を通したこなたの手がそう簡単に放れてくれそうにはなかった。
かがみ「没収するから放しなさい」
こなた「ヤだ…」
我が儘な糞餓鬼みたいな駄々をこねるな
かがみ「こんなの日常生活には使わないでしょ!」
それでもこなたは手を離さない。
こなた「これ9000円もしたんだよ!? 没収されたらたまんないよ!」
かがみ「ぬうぅっ…!」
単純な力では私の方が強いハズなのに粘るわねこいつ。
誰だよこんな形状の柄(え)を考えた奴。
86 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/02(火) 21:51:33.40 ID:SAXkAEAO
私が両手でこなたの指を一本一本外しにかかったとき脛に激痛が走った。
私が怯んだ隙にこなたは体勢を立て直す。
かがみ「脛蹴りは禁術だとあれほどっ…!」
脛がずきずきする。
こなた「ふふふ、伝家の宝刀をくれてやるわけにはいかんのだよ」
私も禁術とか言っちゃったけど、チャラけたノリでうやむやにしてやるつもりは無い。
かがみ「何が宝刀か。早くナイフを渡しなさい!」
こなた「だぁかぁらぁ実演するんだって!」
私が再び真剣な顔になって要求すると、
こなたも眉間にシワを寄せて強く拒絶した。
かがみ「あぁ? 赤だの黒だのになんでナイフが」
私はそこまで言ってはたと気がつく。
私に向けられたナイフの先端が光を受けてキラリと銀に反射した。
かがみ「もしかしてそのナイフがあんたの言う銀なわけ?」
こなたの猫口が「あはー」とだらし無く開く。
87 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/02(火) 22:17:33.56 ID:SAXkAEAO
こなた「やっと分かってくれたんだ? ねね、綺麗でしょ!?」
こなたは嬉々として私に同意を求める。
しかし私にとってのナイフはただ恐ろしいだけの存在だった。
距離こそは開いているが、私を捉えた矛先など邪悪にしか見えない。
かがみ「分からないわ。そんな長くて鋭いの怖いだけよ。夕日だけの方がよっぽどか見栄……え………」
私はこなたの豹変を見逃さなかった。
というか、見落とせる訳が、ない。
88 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/02(火) 22:21:41.13 ID:SAXkAEAO
こなた「へぇ…?へぇ?へぇ〜?へーナルホド!!」
かがみ「えっ、あ…」
憤怒?哀感?落胆?諦観?喜楽?憤慨?悲観?絶望?達観?悦楽?
こなた「酷いよかがみ」
こなた「とっておきだったからね」
こなた「でもがっかりだな」
こなた「仕方ないよね」
こなた「大丈夫きっと綺麗だよ」
こなた「だって許せない」
こなた「ひどいもうダメだよ」
こなた「何にも無かったんだ」
こなた「でもそういうもんかもね」
こなた「あはっ考えただけでぞくぞくするよ」
何がスイッチだったかなんて考える余裕もない。
こんなこなた見たことない。
こんな表情の人間は私の周りに知らない。
混乱した頭でも直感で分かる。
逃げろ。
逃げろ。
逃げろ。
逃げろ私ッ!!!
こなたの袖から飛び出したスローイングダガーが私の左リボンを切り裂いた。
91 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 17:40:17.12 ID:kNPdxEAO
かがみ「ひっ」
地面にひらひら落ちるリボンを見ては私は息を呑んだ。
一本間違えれば顔に当たっていただろう。
逃げなければならないのに足がすくんで動かない。
かがみ「あ、あんた何考えて…!」
こなた「かがみん酷いよー」
かがみ「何が…」
こなた「かがみんなら分かってくれると思ったのになー!」
かがみ「気に喰わないからって今のはないでしょ!」
こなたがナイフを片手に私の方へ歩いてくる。
私は殆どその場を動けない。一歩だけでも後ろ向きに下がろうとして教壇に躓いた。
そのまま派手な転倒を披露する。
かがみ「痛っ」
こなた「そんなに怖がらなくていいじゃん」
こなたが苦笑いしながら私の真ん前にしゃがみ込んだ。
ナイフの切っ先が私の喉元に触れる。
92 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 21:04:24.42 ID:kNPdxEAO
かがみ「やめて頂戴…」
こなた「ん〜ふふふ」
こなたがナイフの平らな部分で私の頬を叩いていて反応を愉しむ。
こなた「まあ、さっきのはカッとなってやり過ぎたよ。ごめんね?」
かがみ「悪かったと思うならこのナイフをしまって頂戴」
力付くで突き飛ばすなりして逃げようなどという発想は無かった。
先程のような目にあっていれば当然の考えだろう。
新しい刃物が出てくる可能性は無視できない。
こなた「うん、いいよ。かがみんをココでどうにかしてやろうってつもりでもないしね」
こなたの発言を聞いて私は一先ず胸を撫で下ろす。
しかしこなたはハンティングナイフを鞄に入れた代わり、スカートのポケットから小さな折り畳みナイフを取り出した。
非常に奇抜な設計で綺麗に折り畳んだ状態ではただの四角い箱にしか見えない。
一体どれだけ隠し持っているのだろうか。
93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 21:32:49.22 ID:kNPdxEAO
かがみ「こ、今度はなんなのよ…」
こなた「面白い造りでしょ? 誰もナイフだとは思わない」
そう言いながら手首のスナップを利かせると、箱が変型して刃は姿を現した。
こなた「バネと止め具が効いてるから逆に動かすにはー…って構造の話はどうでもいいか」
こなた「ほらかがみ、立って立って」
こなたはナイフを握っていない右手の方で私の体を引っ張り立ち上がらせる。
それから私の後ろについて箱を私の腰にあてがった。
かがみ「何のつもり? こんなことやめてよ……」
こなた「ちょっと来て欲しい場所があるんだよね」
こなた「私はかがみに道を教えて、その後ろからついて行く」
こなた「だからさ」
腰の箱をぎゅっと食い込みそうな位押し込んでくる。
こなた「逆らっちゃヤだよ?」
94 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/04(木) 23:52:08.48 ID:kNPdxEAO
こなたの指示に従って教室からでたとき横から声をかけられた。日下部達だ。
みさお「話は済んだのか?」
こなた「みさきちと峰岸さんまだ学校に居たんだ?」
みさお「友達がお前みたいな奴に会いに行くって分かってて、放って帰れるワケないだろ」
こなた「酷い言い草だなぁ、グサッとくるよ」
へらへら笑いながら言うがそうは見えない。
みさお「柊、話はついたのか? また前みたいなことしてないよな」
かがみ「え…と」
私が口を開くより早く箱が強く押し当てられた。
こなたが箱を一捻りするだけで刃物が確実に突き刺さる。
箱は日下部や峰岸からは見えていない。
見えても着眼してくれる確率は極めて低いだろう。
こなたの目線は日下部を捉えたままだし口も開いては居ないが箱が持ち主の意思を伝えてくる。
かがみ「こなたも…反省してるって言うし……もう大丈夫でしょ」
みさお「何が大丈夫なんだよ」
あやの「前も、もうしないって言ったんだよね?」
こなた(今の私には発言力が無いからかがみんに頑張って貰わなきゃね)
95 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:05:12.37 ID:nyfHggAO
かがみ「いや…今回は………ナイフも全部……処分するって話で」
みさお「そんなの包丁でもカッターでもできるじゃん」
かがみ「でも……ほら、えーと………」
みさお「結局そうやってまたなあなあにするんだろ? ちびっ子がエスカレートしていくだけじゃん」
こなた「いや、流石の私も今回はまずかったかな〜みたいな風には」
みさお「お前は黙ってろ」
こなた「怖っ」
こなたがオーバーに肩をすくめてみせた。
それが気に喰わず日下部は大きく舌打ちをする。
かがみ「でも、他にどうしろって言うのよ」
みさお「親とか学校に言うとかあるだろ」
かがみ「それは駄目ッ!!!」
私は廊下中に響き渡る程の叫び声をあげた。
真横にいたこなただけではなく、距離をおいて対面の日下部と峰岸までもがソレに怯む。
こなた「か、かがみ?」
みさお「……だから甘いって言うんだよ………」
96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:29:54.05 ID:nyfHggAO
かがみ「学校に言ったら停学とか退学とかになるかもだし…親に言うのはいくらなんでも……」
みさお「そんだけのことをやってるんじゃん」
かがみ「あと一年もしないうちに卒業なのにそんなのないわ。あんまりよ……」
日下部とか峰岸よりもこなたの視線が気になる。
感情移入しすぎだろうか。気持ち悪がられてないだろうか。
みさお「そいつが同じ学校の生徒っていう事の方があんまりだぜ。いつなにするか分かったもんじゃない」
引き笑いが聞こえた。
こなた「くふふっふふふふっ」
みさお「何がおかしいんだよ」
こなた「あはははっ、可笑しいというより嬉しいというか愉快かなぁ?」
こなたは目尻を拭った。
笑い泣き?
こなた「………かがみん優し過ぎでしょ」
98 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 00:48:57.68 ID:nyfHggAO
こなた「………みさきち」
みさお「何だよ?」
こなた「もうさ、父さんに言いなり学校に言うなりしちゃってもいいよ」
かがみ「こなた!?」
みさお「いや、お前がイイとかダメとか決める問題じゃないし」
こなた「そうだけど……でも…お願い。一週間だけ時間をちょうだい」
みさお「?」
かがみ「何言ってるのよ! あんた退学とかなっちゃうかもしれないのよ?」
こなた「陵桜の生徒であるうちにどうしてもやりたい事があるんだよね」
みさお「勝手なこと言うなよ、柊に迷惑かけてんだぞ!? 要らない心配させられて、死体隠すの手伝されて、それでもまだ懲りな」
かがみ「私は迷惑だなんて思ってない!!」
みさお「マジ意味分かんねぇ! 柊はなんでそんな奴のために一生懸命になるんだよ!」
かがみ「こなたは私の親友だから!!」
99 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/05(金) 01:18:54.47 ID:nyfHggAO
こなた「うぉ、さっきからかがみには驚かされっぱなしだぁ……」
こなたがお得意の茶化しすら忘れて目を見開いている。
日下部は……泣いていた。
みさお「なんだよ、なんなんだよ……!!」
あやの「みさちゃん…」
みさお(中学のときからずっと同じクラスで五年間やってきた私達のことなんか覚えてもなかった癖にこんな奴だけの為に必死になって必死になって…!!)
みさお「もうお前のことなんか知らねーよ! 勝手にしろ!」
そう言って日下部は私達の横を抜けると階段を走っておりていった。
峰岸も一言だけ残して日下部のあとを追う。
あやの「泉ちゃん、柊ちゃんに免じてみさちゃんには一週間だけ待つように言っておくわ。でも、それだけ。あとは知らないから」
峰岸のあんな険しい顔、初めて見たかもしれない。
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 21:34:12.73 ID:WJY6gsAO
こなた「帰ろっか」
こなたは箱をポケットに戻してそう言う。
かがみ「来てほしい場所っていうのは?」
こなた「気が変わった。また連絡するよ」
かがみ「あんた、万が一退学とかになっちゃっても本当にいいの?」
こなた「まぁ勿体ないかなとは思う、けど………んー、陵桜自体にはあんまし未練、ないかも」
かがみ「学校来ても授業に参加せず、寝てるか遊んでるかだったしそんなもんなのかしらね」
私は残念だわ。
それにあんたのお父さんも親戚のゆたかちゃんも苦労することになるわよ。
こなた「先生はネット友達、つかさとみゆきさんは……事を知られたらダメになっちゃうかも。だけどかがみんはずっと仲良しで居てくれるでしょ?」
こなたは寂しそうに笑う。
それならば、こんな表情をする位ならばどうしてああも残酷な事をしたのだろうか。
ああ、でももしかしたら―――
かがみ「後悔はしてる?」
こなた「いんや」
しかし即答だった。
111 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/11(木) 22:00:51.98 ID:TFihZkAO
☆
結局、こなたからの連絡があったのは期限(になると思われる)二日前だった。
それまでの間は以前のような普通の学校生活が送られたわけだが、今回ばかりは完全にいつも通りとはいかなかった。
日下部は殆ど私と口をきかなくなり、こなたと峰岸も私との間にぎこちなさが生じた。
クラスの友人やつかさとみゆきに心配もされたが、当然何ともないで押し通した。
無理はあっただろうがむやみに広める必要のある話ではない。
Fromこなた「今日、来てほしい所があるから二人で帰ろう」
時間がないのでそろそろだろうとは思っていた。
しかし、あいつはこんな時までギリギリだな。
期限がすぎても受けとってもらえる課題てはワケが違うというのに。
日下部が一週間待ってくれる保証もなかったし、本当、いい加減な奴ね。
112 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/11(木) 22:20:48.67 ID:TFihZkAO
かがみ「こなたー帰るわよ」
こなた「おけ、行こっか」
つかさ「あ、待って〜」
かがみ「ごめん。今日は二人で寄るところがあるから」
つかさ「そうなんだ」
アニメイトかな?
つかさ「それじゃゆきちゃん帰ろー」
みゆき「はい。お二人ともお気を付けて。」
こなた「悪いね、ほんじゃまた」
今日の晩ご飯何にしようかな。
お父さんとお母さんが出かけてるから…。
みゆき「つかささん」
あ、まつりお姉ちゃんも大学のサークルがあるから…。
みゆき「つかささん」
つかさ「どうしたの?」
みゆき「かがみさんと泉さん、最近、様子がおかしかったですよね」
つかさ「……うん、確かにね」
つかさ「お姉ちゃんコッチの教室に来てなくて、アッチの教室にも居ない日あったよね? あの日お弁当食べてなかったんだよ」
つかさ「でも家だと体調が悪い感じじゃなかったし、悩みがあったのかも…」
みゆき「C組の方から日下部さんや峰岸さんとの仲もおかしかったと聞いています」
つかさ「あっそういえば、その時私が日下部さんにお姉ちゃんの居場所聞いたら『柊の居場所なんか知るかよ!』って怒鳴られちゃった」
みゆき「かがみさんに何かあったのでしょうか?」
つかさ「分からないや…。でも今日はこなちゃんと二人で寄り道するみたいだし、もう大丈夫じゃないかな?」
みゆき「……そうですね。むやみに首を挟むのも良くないですね」
つかさ「帰ろっか」
113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/11(木) 22:36:34.48 ID:TFihZkAO
☆
私はかがみを連れながら普段あまり通らない道を歩いている。
歩きながら、定期的に後ろを振り返っては背後を確認する。
気にし過ぎると逆に怪しく見えてしまうものだと分かっててもついやってしまう。
かがみ「何、そんなに後ろが気になるの?」
こなた「んー、いやまぁね」
確認せずには居られないんだよね。
かがみ「そんなに人に見られたくないのに、私が見ちゃってもいいの?」
こなた「……かがみんは既に色々見ちゃって知っちゃってるしね」
かがみ「今更か」
かがみ以外に見せたくないってワケではない。
むしろ見せ付けてあげたいくらいだけど、その時に邪魔者は要らない。無粋だ。
こなた「こっちだよ」
かがみ「なんかどんどん町並みが怪しくなってくんだけど大丈夫でしょうね」
こなた「大丈夫だと思う?」
かがみ「…思えないわね」
こなた「ですよねー。今までの流れ的に考えてそろそろ私か、かがみか、みさきちに死亡フラグだね!」
かがみ「主導を握ってるに近いお前が言うと不吉だからやめてくれないか」
114 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/11(木) 22:45:57.29 ID:TFihZkAO
☆
こなた「ついた、ここだよ」
かがみ「なにここ…」
見上げる私の前にそびえ立つのは、所謂ひとつの廃屋だった。
塗装はほどほどで木目が目立つ木造建築の二階建てアパートだったものだ。たぶん。
かがみ「これ、廃墟ってやつよね?」
こなた「うん。街中には珍しい昭和の面影が趣深い」
かがみ「知らんがな。リフォームの匠もお手上げね」
こなた「さ、入るよ」
かがみ「は? 嫌よ」
こなた「え? 来てくれないの?」
かがみ「中なの?」
こなた「うん、そだよ」
かがみ「あー……はぁ…」
嫌な溜息がでたもんだ。
かがみ「ちゃっちゃと済ませるわよ」
115 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/11(木) 23:00:43.67 ID:TFihZkAO
☆廃屋の中
こなた「たっだいまー」
かがみ「何言っ臭ッ!?」
ツッコミかけてむせた。
これは『あの時』の比ですらない。
眩暈を誘う程の刺激臭だ。
よくみると窓という窓が木で打ち付けられており、玄関の隙間もゴムだかゴミだかて封をされている。
こなた「かがみん早く早く、奥だよ」
かがみ「待っ…この臭いなんなの? どうにかならないの? あんたよく平気ね」
どうにかなりそうだ。
こなた「私は慣れちゃったかな。むしろ親しみ深いくらいにね♪」
ああ、臭いの時点で分かってはいたが、今のこなたの表情を見て確信した。
この奥にはさぞかし大量の犬と猫がいらっしゃるのだろう。
かがみ「マスクくらい用意してなさいよ…」
こなた「これは失礼いたしました」
………あー、見たくない。
が、ここまで来てそれはないだろう。
『このこなたを前にして』その選択肢はありえない。
こなたがドアノブに手をかけた。
かがみ「その部屋?」
こなた「うん、うん、うんうん、そうだよ」
かがみ「覚悟するわ」
私は鼻をつまんだ。
117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/11(木) 23:34:16.62 ID:TFihZkAO
☆部屋
中を見て私は後悔した。
塞ぐべきは嗅覚ではなく視覚であったと。
表現するのも馬鹿馬鹿しい。描写するのも回りくどい。
ナイフで壁に飾られた野良猫とか、中身をくり抜いただけの野良犬カーペットwith頭にナイフとか、骨のジェンガとかああいちいち煩雑ね。
その他バリエーションに富む死体がたくさんで十分よ。
かがみ「…………あんた頭おかしいわ」
こなた「自覚してるよ」
かがみ「こりゃ、治らないわね」
こなた「最初の出来事の後の二日間だけは我慢したんだけどなぁー」
私は部屋の中央のベッドに目を止めた。
それだけは普通の家にも置かれているような代物で、血にも狂気にも染まっていないのが不調和だった。
私は不完全な公開ショーに招待された?
こなた「この部屋、まだ出来上がってないんだよね」
こなた「ここまで作るの大変だったんだよ」
違う! 私が公開ショーに招待されるワケがない!!
118 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/12(金) 00:05:28.89 ID:V6VaVgAO
疲れるようなことはなにもしてないのに息は荒いし汗は流れる。
足元は不覚で体は半無重力。
肌がぴりぴりと痛い。
こなた「世界の中心で愛を叫ぶって映画かドラマあったじゃん? 私、あれのタイトル好きなんだよね」
かがみ「急になんの話」
声が震える。
こなた「世界がなんだか世間がどうだかしらないけど私はこの人が大好きなんだす助けて下さいこの人が全てなんですって感じ?」
かがみ「私は見てないわよ」
検討はつかなくもない。
こなた「まあ、とどのつまり自身の主張をなりふりかまわず叫ぶわけだよ」
かがみ「ファンに怒られるぞ」
こなた「好きだよかがみん」
かがみ「…」
こなた「こんな私にここまで付き合ってくれるのは世界中探してもかがみんだけ」
かがみ「大袈裟な」
あー逃げ出したいわ。
こなた「いやいや、本心からそう思うよ」
かがみ「そりゃどーも」
死亡フラグびんびんじゃないのよ。
どこで仕入れたのかしらこんなもの。
私の背中に日本刀が触れてなければ走って逃げるんだけどなあ。
119 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/12(金) 00:19:36.79 ID:V6VaVgAO
こなた「かがみん、ベッドに転がって」
かがみ「嫌って言ったら?」
こなた「まあ日本刀にものを言わせる感じかな?」
かがみ「……分かったわよ」
力と体格どなら十分に勝機はある。
隙を見て、隙を見て逃げ出すしかない。
幸い玄関の鍵は開いたままだし携帯だってポケットに入ってるからチャンスは多い。
こなた「早くー」
みね打ちがストンと軽く背中にいれられる。
かがみ「わ、分かったから脅かさないで」
私が大人しくベッドに上がるとメシッと床が音をたてた。
かがみ「…」
こなた「…」
かがみ「ねぇ、この廃屋」
こなた「た、たぶん大丈夫!!」
まあ、今更舞台の変えようもないか。
こなた「それじゃ始めるよー」
そう言うとこなたは日本刀を脇に置き、自身もベッドに上がって私の体に身体を預けてきた。
えっ…?
129 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/12(金) 13:07:38.06 ID:V6VaVgAO
ちょ、何何(なになに)何(なん)なの!?
かがみ「え、えっと、こなたさん?」
こなた「そのまま殺されると思った?」
こなたの顔が私の胸元位に乗っている。
いやまあ殺されてやるつもりは無かったけどさ。
かがみ「正直ヤバいかと思った…」
こなた「んふふ」
不敵に笑ったこなたは私の胸を鷲掴みにした。
かがみ「なっえっちょっ!!」
こなた「かがみって結構あるよね。希少価値とは言い張ってきたもののなんか悔しい」
かがみ「馬鹿はなせ!」
こなた「よいではないか、よいではないか」
こなたの顔を両手で持ち上げて
かがみ「ふんっ!」
こなた「ふがっ!」
頭突いた。
こなた「〜〜〜〜ッ! かがみん喧嘩スペック絶対高い……!」
かがみ「いいから退け!」
私は腹筋に力を入れて起き上がる。
それにつれてこなたは私の太股の上にこっちを向いて座る形となった。
こうしてみると、本当に小さいわね。
かがみ「で、結局あんたは何がしたいのよ」
こなた「いやかがみんの体を触り尽くそうかと」
クレヨンしんちゃん宜しくのグリグリ攻撃をお見舞いする。
こなた「痛い痛い痛い痛い痛いっ!」
かがみ「もっかい聞く、お前は何がしたい!?」
134 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/13(土) 22:30:57.99 ID:AWjFvgAO
こんなところ早く出ていきたいのに話の面倒臭くなるやつめ。
こなた「いやぁ、かがみの喘ぎ声が聞いてみたいなーなんて」
かがみ「いいから真面目に答えろ」
こなた「いや到って本気だよ」
かがみ「はあ?」
さっきから何なの。
本当にこいつマジで言ってんの?
色々と冗談じゃないわよ…。
こなた「言ったよね。かがみ、好きだよって。これは友達としてって意味じゃないよ」
友達してじゃないってどういう、いやどうもこうもアレしかない、わよね?
こなたの真っ直ぐな視線が私の居心地を悪くする。
かがみ「な、あんた何を…」
そうだとするとかなり意味が分からない。話の流れとか告るタイミングとかなんか色々とぐちゃぐちゃすぎるだろ。
かと言って今のこいつはおちゃらけこなたでもないし。
つかこのタイミング云々以前にこいつにまさかそんな趣味が、いや、この部屋の参事と比べればマシ?
とかじゃなくて、えっ? 何? 私がこなたに告られてる系?
かがみ「えっと、えー」
何て言ったらいい。
かがみ「え……あんた…そっちの気が…………えっあ!いやのはやとちりよねゴメン!」
何この流れ。
完全にカオスだわ。もういや誰か助けて。
135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/13(土) 22:52:41.71 ID:AWjFvgAO
そのあともなんかパニクッて「えっと」とか「あー」とか意味のない言葉を紡いだ気がするけど殆ど何も考えられてなかったから何を言ったか自分でもあまり分からない。
結局どっちなの、私のはやとちり? それともやっぱりそういう意味?
私が一人で勝手に目を回していると、こなたが私に抱き着いてきた。手が背中に回されている。
かがみ「…ちょ、こなた?」
女同士なのに私はどうしてこんなに緊張してるんだ。
落ち着け自分。
こなた「かがみって急な出来事に極端に弱いよね。特に恥ずかしい系」
かがみ「うっさい……」
こなた「やっぱりかがみは可愛いなぁ」
かがみ「ひ、人をおちょくるのも大概に!」
こなた「耳、真っ赤だよ?」
かがみ「〜〜〜っ!」
こなたの真骨頂、ニヤニヤ笑いと私いじりが炸裂する。
もう何回目か分からないやりとりなのに慣れる気がしない。
こいつに言われるだけでどうしてこんなにくすぐったいのだろうか。
ごほんっ
とりあえず咳ばらいで流れを区切って問う。
抱き着かれているので顔と顔が実に近いが我慢。
心臓に悪いから早く解きたいけどさ。
かがみ「こ、こなたの『好き』ってのはどういう意味?」
こなた「かがみは何だと思った?」
かがみ「私から言えるわけないだろ。発言者が明確にしろ」
だってこんなの言えるわけないでしょ。
外してたら確実に爆死できる自信がある。
こなた「かがみは照れ屋さんだね」
こなたが私の目をじって見つめる。
猫口が可愛らしい。
こなた「私の『好き』の意味はねー」
136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/13(土) 23:35:10.25 ID:AWjFvgAO
こなた「人間として好き、かな?」
かがみ「…よく意味が」
こなた「いやなんかこうイッツパーフェクトみたいな」
かがみ「…よく意味が」
こなた「優しいし、真面目だし、可愛いし、面倒見いいし、勉強できるし、今だって普通だったらここまでついて来てくれないよ。すごくいい人」
だから、それを友人てしてか恋愛対象としてとか家族としてとかの分類をしろよと。
かがみ「はぁ……あんただからここまで相手してやってんのよ」
あー結局こいつは何がしたいんだ。
頑張れ私、流され過ぎだ。
こなた「かがみん先日の件以来、やや大胆ですね?」
かがみ「ほっとけ」
確かにもう話がややこしくなってなんか面倒で吹っ切れてきた感は否めない。
でも今こんな状態のこいつを相手できるのは私くらいなもんでしょ。
なら、しっかりと付き合ってやらなきゃね。
あーでも黒井先生なら怒りの鉄拳で、みゆきなら聖人君子の悟りでこなたを矯正できそうな気もするわね。
かがみ「でもさ、パーフェクトって理由ならみゆきじゃないの? そもそも私なんか欠点まみれだぞ」
こなた「いやーあれは人間の模範解答って感じがして無機質というか、壊し甲斐がないかなみたいな」
146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/25(木) 09:15:57.40 ID:LHfStEAO
かがみ「は? 壊……!?」
完全に油断していたと思う。
こなたの飄々とした態度に流された感もあるけど、なにより目の前人間がこなただったから油断した。
気のおけない親友を危険人物として警戒し続けるなんて無理があったのだろう。
こなたの腕の動きにだけは注意していたハズなんだけどね。
あっ、と思った時には長い針状の物が私の左腕をベッドに串刺していた。
かがみ「ひ、いぁ、ぃあ゛あああ゛あ゛ああ゛ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああッ!!!」
痛い、痛い、痛すぎて言葉にならない。
こんな激痛生まれて初めてだ。
痛い以外の感情が痛いに塗り潰される。
白いシーツが鮮血に塗り潰される。
こなた「あは、かがみんは凄く綺麗な声で無くんだね」
痛い痛い痛い、黙れサイコ野郎。
かがみ「うあっひぐぅあ゛あ゛あああ…」
こなた「ははっ何言ってるか分かんないよ?」
へらへらしやがって。
人の腕を刺して、何が面白い!
かがみ「ふざげん゛な゛ッ!!」
私は力の限りこなたを突き飛ばした。
私の右腕で大きく横に押されたこなたの体がベッドを離れて宙に浮く。
こなたは顔に苦痛の表情を浮かべてから音を立てて着地した。
こなた「痛〜、これが火事場の馬鹿力って奴かぁ」
こなたは左脇腹を押さえながら立ち上がる。
私も立ち上がろうとしたが串刺しになった腕にそれを阻止される。
かがみ「痛゛…!!」
こなた「ふふ…痛くて抜けないよね。カエシがついてるから無理するともっと凄い事になっちゃうよ?」
苦悶の表情を浮かべる私に背を向けて
こなたは部屋に備え付けられたタンスからひとつの注射器をとりだした。
148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/25(木) 16:34:36.78 ID:LHfStEAO
☆
あのあと気になってやっぱり後を付けちゃったけどなんだろうココ。
たぶんもう廃屋になってるんだろうけど、学校から歩いてける範囲にこんな場所があるなんて知らなかった。
つかさ「お姉ちゃんとこなちゃんこんな所になんの用があるのかな」
みゆき「何か特別な場所なのでしょうか」
つかさ「趣はあるよね、ちょっと怖いかもだけど」
ゆきちゃんがついて来るとは思わなかったけどね。
ゆきちゃんも二人の事が心配なんだね。
みゆき「それにしても困りましたね。流石に中に勝手に入る訳にもいきませんし」
つかさ「このまま出てくるの待ってる?」
みゆき「そうですね、物陰に隠れて出入口を確認してるほうがいいでしょうね」
つかさ「んー中に何があるのかな…」
150 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/25(木) 21:52:01.65 ID:LHfStEAO
あ゛あああ゛あ゛ああ゛ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああッ!!
つかさ「え」
みゆき「つ、つかささん今の声は…」
つかさ「………お姉ちゃん、だよね、どうしたんだろ?」
みゆき「外までハッキリ聞こえるなんて相当大きな声ですよ」
つかさ「えっ何かあったのかな!?」
みゆき「……古い建物ですから珍しい虫がでた、とかでしょうか」
つかさ「……かなぁ、それにしては大袈裟過」
ドス!
つかさ「ゆ、ゆきちゃんまた何か音が!」
みゆき「……とても放置できませんね。つかささん中へ行きましょう」
つかさ「うん。大丈夫かな」
みゆき「管理されていない廃屋なら不審者がたむろしていた可能性もあります」
つかさ「そんな!」
みゆき「携帯電話だけはしっかり握っておいてください、行きますよ」
私とゆきちゃんは携帯電話を右手に廃屋の扉を開いた。
151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/25(木) 22:20:46.16 ID:LHfStEAO
☆
私もつかささんも扉を開くと同時に鼻を押さました。
並々ならぬ刺激臭が空気中に充満していたからです。
みゆき「これは一体…」
つかさ「うぷっ」
正直に言いますと手で押さえてどうにかなる度合いはとうに越えています。
みゆき「扉が多いですね」
つかさ「……廊下の右にも左にも一杯だね」
どれから調べればよいのでしょうか。
右手の階段を上った二階の可能性もありますが、ああも朽ちて不安定になった階段、出来ることならば使いたくな
かがみ「お願いだからやめて頂戴!」
みゆき「!」
今のはもう揺るぎありません。かがみさんの声でした。
かがみさんの発言の内容が私とつかささんに危機感を植え付けます。
私の携帯には「110」の文字。あとひとつボタンをプッシュするだけで繋がります。
152 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/25(木) 22:29:44.65 ID:LHfStEAO
つかさ「お姉ちゃん!? お姉ちゃん大丈夫!?」
みゆき「かがみさん、泉さん! どちらにいらっしゃるんですか!?」
かがみ「つかさとみゆき!? 何やってんのこんな所で! 早く逃げ……あがっ!!」
みゆき「かがみさん!? かがみさん!!」
方向は左の奥の方。これは一刻を争う事態です。
私は携帯のボタンを押して音源地を駆け足で探しながら携帯に耳をあてます。
みゆき「お二方ともどちらにいらっしゃるんですか!? 声を出して下さい!」
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん!!」
かがみ「馬っ…こっちくんな! ココから出て行って警察を!!」
みゆき「大丈夫です、警察に今繋げて…い……?」
おかしい。
おかしい。
どうしてまだ繋がっていないんですか。
つかさ「ゆきちゃん!!」
どうして街の木造建築の地上一階で
電波が届かないんですか?
つーっつーっつーっ
みゆき「つかささん!」
つかさ「ココ電波届いてないの!?」
つかささんの携帯もダメですか…!
153 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/25(木) 22:41:39.41 ID:LHfStEAO
かがみ「痛っ! あんた達、早く外に出…ぎぃ………外で、ないと、電波がと…が、ぎゃあああああああああ!!!」
みゆき「くっ!」
先にすすみたいのは山々ですが最悪の場合を考えると警察を呼ばないわけにはいきません。
みゆき「外に戻って警察に連絡をして下さい! 私はお二方の元へッ」
つかさ「うん!」
つかささんが一人で廃屋の外へと向かいます。
みゆき「かがみさん! 今行きますから泉さんも安心して下さい!」
みゆき「かがみさん!?」
みゆき「泉さん!?」
みゆき「返事をして下さいぃッ!!」
こなた「えっあ、嫌、嫌ああああああ゛あ! 嫌だ! 嫌だっやめて、やめてよ!! ひぎっいあああ!!」
今度は泉さんの悲鳴。
つかさ「こなちゃん!?」
みゆき「つかささん、止まらず行って下さい!」
つかさ「あ、あうっ」
ひとつの扉の前でブレーキをかけます。
ここです、この扉から声がします。
ノブに手をかけて…
みゆき「大丈夫ですか!?」
160 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 12:20:16.84 ID:0e1Ajls0
☆
みゆき「大丈夫ですか!?」
ガチャッ!ガチャガチャガチャ!
みゆき「鍵がかかって…!」
みゆきさんが外から必死に扉を開こうとする。
さっきから扉がガタガタと煩い。蹴ったり突進したりしてるんだと思う。
みゆきさんって本当いい人だよね。
出来過ぎでなんか怖いところもあるけど基本いい人。
まあ、それはおいといて、今はつかさだ。
つかさもいわゆるいい人だけどちょっと頭ゆるいよね。
扱いやすくて困る。
こなた「あうっ、痛っ痛いよ! 助けっ助けて!」
みゆき「今開けますから耐えてください!」
こなた「ひとりじゃ無理! みゆきさんもっやられちゃうよ!!」
つかさ「!」
みゆき「!? どういう状況なんですか!?」
こなた「どっちみち、一人で壊せるような扉じゃっないし一人じゃ駄あ゛ッ! うぐ…あああ!!」
私は注射器の用意をしながらみゆきさんとの会話を続ける。
んー、注射器の針も綺麗だけど遊びの余地がないからどうにも駄目。
どの注射器も似た形ばっかで用意するときに選択肢がなかったんだよね。
こなた「痛い痛い痛い痛い! 嫌だもうヤだよ!! 助けて、誰か助けて!!」
こなた「つかさ! みゆきさん!! つかさぁ! 助けてよつかさあッ!!!」
つかさ「〜〜〜〜! こなちゃん!」
つかさの足音がまたこっちに近づいてきた。
単純って可愛いけどこういうとき迷惑だよね。
黙って一目散に外向かってれば今頃警察に連絡ついてる頃なのに。
流石のみゆきさんでも内心キレてるだろなー。
おっと、危ない…薬をこぼすところだったよ。心臓に悪い。
161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 12:21:52.03 ID:0e1Ajls0
みゆき「つかささん、どうして戻ってきたんですか!」
つかさ「だって扉一人じゃ開かないんでしょ!? それに一人じゃ危ないって…!」
こなた「あ゛あ゛あ゛、ぎっいいぃぁあああ!!」
みゆき「!! つかささん1.2.3で扉にタックルしますよ!」
つかさ「う、うん!」
みゆき「扉が壊れたらすぐに走って外に出てください! いいですね!?」
つかさ「うん!」
みゆきさんも完全に冷静さを失ってる。
つかさそこに放置してみゆきさん一人でやった方が絶対に早いでしょ。
笑い声が漏れそうになるの必死に抑える。
つかさのボケのせいでどっかの漫才みたいになってるよ。
みゆき「行きますよ! 1―――2―――」
さて、注射器は揃ったし早くおいで。
私の時間を邪魔した罰に面白いものを見せてあげる。
つかさは耐えられないかも…。ま、勝手に後をつけて来る方が悪いんだけどね?
みゆき「3ッ!!」
擬音にするのも難しい、木がしなって折れて割れて裂ける複雑な破壊音が辺りに響き渡った。
二人はどんな表情をするんだろうね。みゆきさんは口が悪そうだから適当になんかハメよう。
つかさは無害そうだね。私の作った毛皮椅子に縛ってあげるからしっかり記憶にやきつけてなよ。
こなた「あっはは! 二人ともいらっしゃイっ!!」
163 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 18:23:18.04 ID:KsD1BgAO
☆
駄目、来ちゃ駄目。扉を壊してはいけない。
そう警告したいのに体に力が入らない。口に噛まされた変な球体のせいで言葉が紡げない。
みゆき「1―――2―――3ッ!!」
駄目、壊れないで!
そう願う私に力はなく、扉は虚しく悲鳴を上げた。
バンッ!!
みゆき「お二方ともご無事ですか!?」
こなた「あっはは! 二人ともいらっしゃイ!!」
みゆき「えっ、泉さん!?」
力一杯のタックルで体勢を崩したつかさの腕にこなたの手が伸びる。
みゆきもつかさもまだ状況把握ができていない。
こなたの腕を振り払うようなことはしないだろう。
強くなった異臭、ベッドにふす私、迫るこなたの手、部屋に散らばる死体、
同時に複数を認識した二人が親友が全ての元凶である可能性を探る余裕なんて持ち合わせているハズもなく―――
つかさ「え?」
こなた「はーい二人ともストップね」
つかさを引っ捕らえたこなたはつかさの首に厳ついナイフを突き付けた。
165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 20:58:24.39 ID:KsD1BgAO
つかさ「ふぇっ…?」
突然のことに固まるつかさ。
みゆきはもう状況を理解できたのだろうか。
こなた「みゆきさん、かがみの隣まで行ってくれるかな?」
みゆき「泉さん一体何を……」
こなた「ほらほら、つかさの可愛い顔が傷物になっちゃうよ―」
刃物の平らな部位でつかさの頬をぺちぺちと叩く。
いつぞや私がやられたやつだ。あれはかなり恐ろしいものかある。
みゆき「何をしているんですか、馬鹿な真似はやめて下さい」
こなた「あれ、ゆきさんって脅しじゃ取り合ってくれない系? もっと冷静な人かと思ってたけど」
こなたの猫口がによによと動く。
みゆき、こなたは本気よ。お願いだから下手な真似はしないで頂戴。
こなたは私の妹の頬っぺに刃をたてた。私だけならまだしもつかさまで…勘弁してよ……。
かがみ「んー! んー!」
みゆき「かがみさんちゃんと意識が…!」
こなた「何か言いたいことがあるんじゃないの? 口に嵌めてるボール外してあげなよ?」
みゆき「…」
みゆきだって分かっているのだろう。
部屋の奥に行ってはマズいこと、出口から離れてはマズいことくらい。
しかし今はつかさが人質に捕られている。逆らってただで済むとは思えない。
こなた「ほら早く。つかさがどうなってもいいの?」
つかさ「ゆきちゃん…」
みゆき「分かりまし」
つかさ「私のことは気にしないで…!」
こなたが顔が引き攣らせた。
167 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 21:31:56.50 ID:KsD1BgAO
こなた「はっ、何イキッてんの? 幸せな頭してるね。ドラマの見すぎじゃないの? 自分がタダじゃ済まないよ?」
つかさ「だってこのままじゃお姉ちゃんの出血が危ないもん! 自分の顔くらいどうなったったっていい!!」
つかさ…!
みゆき「確かにこのままではかがみさんの左肩の出血が…。」
みゆき「泉さん、せめてかがみさんを救急車に」
こなた「五月蝿い! 何してんの早くかがみの横に行けって言ってんじゃん! つかさ殺しちゃうよ!?」
つかさ「ゆきちゃん早く救急車と警察に連絡しに行って! お姉ちゃんを助けて!!」
つかさはそう言いながら力一杯暴れ始めた。
体格で劣るこなたは人質を抑えるのにかなり手こずっている。
つかさの肘がこなたの顔に入った。
こなた「ぐぅ…マジで刺すって言ってんでしょ! 大人しくして!」
人質に一度手をつけてしまえば一気にその効力が失われる。
だからこなたも出来るだけつかさには傷をつけようとしない。
ただし脅し程度の小傷ならば話は別だ。
こなた「いい加減にしろ!!」
こなたはナイフを握っている方の腕を強く引いた。
つかさ「んぅッ…!」
つかさの左頬に紅い一線が引かれた。
更にそこから鮮血が流れだす。
こなた「これ以上抵抗したらグサッとあっちゃうよ!?」
こなたは息が切れ始めていた。
あの体格差の人間を自分の元へ引き付けようとしていては当然か。
私はどうしてこんな大切な時につかさの力になれないの?
私が望みを託して視線を移した先に―――――みゆきは居なかった。
みゆきは走りだしていた。
168 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 21:47:13.57 ID:KsD1BgAO
つかさ「ゆきちゃん早く行ってッ!!」
こなた「みゆき部屋ァでたらつかさ[ピーーー]ぞ!」
みゆき「すぐに戻ります! つかささん耐えて下さい!」
みゆきが二人の横を駆け抜けた。最早こなたの言葉はなんの効力も果していない。
こなたの敗北は確定的した。
どんなに足の速いこなたでも、息切れした今ではみゆきに追いつけるハズがなかった。
みゆきだって才色兼備の万能人間だ。足の速さは一般のそれを軽く凌駕している。
しかし、つかさが危ない。私のせいで可愛い妹の命が危ない!!
こなた「行かせるもんか!」
銀色の閃光がつかさを切り裂いた。
174 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/26(金) 22:31:39.50 ID:KsD1BgAO
つかさ「ゆきちゃん早く行ってッ!!」
こなた「みゆき部屋ァでたらつかさ殺すぞ!」
みゆき「すぐに戻ります! つかささん耐えて下さい!」
みゆきが二人の横を駆け抜けた。最早こなたの言葉はなんの効力も果していない。
こなたの敗北は確定的した。
どんなに足の速いこなたでも、息切れした今ではみゆきに追いつけるハズがなかった。
みゆきだって才色兼備の万能人間だ。足の速さは一般のそれを軽く凌駕している。
しかし、つかさが危ない。私のせいで可愛い妹の命が危ない!!
こなた「行かせるもんか!」
銀色の閃光がつかさを切り裂いた。
175 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 22:45:31.43 ID:KsD1BgAO
つかさの太股から赤い血が一気に吐き出される。
つかさが足元から崩れ落ちていく。
しかしそれでもつかさはめげはしない。
こなたの服を掴んで放さない。
今度はつかさの反撃だった。
つかさ「えへへ、こなちゃんは行かせないよ…」
やめて、無理しないで! 私は大丈夫だから!
こなた「はぁっはぁっ、しつこい!」
こなたがつかさの手首に刃を立てた。
つかさ「う゛あ゛あ゛あぁ!」
それでも手は離さない。
手首にたてた刃を握る腕に全身でしがみついた。
こなた「あ゛あ゛あ゛マジ時間ないって!」
こなたの踵落としがつかさの後頭部に入る。
衝撃で地面に叩きつけられたつかさはさらに前頭部を床に打ち付ける。
二人とももうやめて、お願いだから!
つかさ「………っ!」
つかさの体から力が失われるのがハッキリと見て取れた。
こなた「ッらぁ!」
最後の蹴りが下腹部に入ってつかさの体を持ち上げる。
私は見ていられず目をつぶった。
つかさ「」
176 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:21:36.83 ID:KsD1BgAO
☆
こなた「はぁっはぁっ待てっ!」
みゆき「!」
彼女がもう部屋を出て来ているということはつかささんは最悪…………私は絶対に捕まる訳にはいきませんね。
それにしてもなんて足の速い。
すでに息を切らしているハズなのに徐々ではあるものの距離を縮めてきます。
こなた「ゼェッはっ!」
それでももう限界でしょう。
足がもつれて来ていますよ。スピードも下り坂ですね。
私は携帯を取り出して119を打ち込みます。
扉まであと数歩。彼女との距離は軽く10m以上。
これを詰めるのは短距離ランナーでも無理でしょう。
みゆき「泉さん観念して下さい」
私は扉に手を掛けます。今度は鍵がかかっているハズもなくノブは素直に反応し、扉が何かに引っ掛かることもありませんでした。
これでお二方が助かれる!
携帯のボタンを押し込―――――
こなた「届けぇッ!!」
177 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/26(金) 23:38:29.38 ID:KsD1BgAO
☆
背中に激痛が走りました。
思わず携帯から手が離れてしまいます。
体の力が抜けて膝から倒れ込みます。
みゆき「っあぁ?」
こなた「はあっはあっ」
扉は開いた、外も見えています。
肝心の携帯も電波の届く範囲にあります。
しかし、私の体が廃屋を出ていない。
私の手が携帯に届きません。
みゆき「まだ、あと一歩…!」
伸ばした手の二の腕に新たな激痛が走ります。
しかし、それでも気にしている暇はありません。
押すべきボタンは後一つ!
そのまま携帯に手を伸ばしたら、伸ばしたその手に新たな激痛が―――ナイフが刺さります。
彼女の足音が真後ろに聞こえます。
見ると私の手に刺さっているのはスローイングダガーの類でした。
こんなものまで用意しているなんて。
みゆき「届いて下さい!」
痛みも構わず手を伸ばします。
間に合って下さい。彼女はもう気配の感じられる距離まで来ています。
こなた 「ぜぃっはぁっ…まだ! 往生際の…はぁっ悪い゛!!!」
Pi
届きました。
183 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 16:59:41.83 ID:BMB88kAO
☆
コールから殆ど間髪なく携帯から男性の声が鳴り響く。
少し距離は遠いものの十分に聞こえる範囲内。みゆきの声も十分に届く距離だ。
『消防ですか救急ですか?』
みゆき「ッ」
『もしもし?』
みゆき「…!」
『もしもし、どうかしましたか?』
こなた「くっ!」
みゆき「ぅぅぅ…!」
こなたはみゆきの背に乗って、後ろから両腕を前に回しクロスさせてみゆきの首を絞める。
みゆきも活きている方の手で抵抗を見せるが片手では力がたりない。
こうなっては体格差も体力差も何ら役目を果たさなかった。
みゆきの喉からは掠れるような呻き声しか出ない。
『間違いなら切りますよー?』
みゆき「!!」
180度違った二つの表情が携帯を見つめる。
こなたは期待を篭めて、みゆきは希望を篭めた。
まだ、みゆきは諦めない。
激痛も流血も構わず自分の手からスローイングダガーを引き抜いた。
瞬間的に体中の筋肉に強い力が入り、こなたの腕を引きはがす。
しかしそれが目的ではない。持ち直したナイフでこなたの左腕を縦に引き裂いた。
一気緩む。
『つーっつーっつーっ』
こなた「いっキャアアアアアア!!」
みゆき「ゲホッゲホッ!」
通話は切れたがまだ終わってはいない。
こういう時、緊急番号は必ず折り返し電話をかけてくる!
みゆきは再び携帯電話に手を伸ばした。
こなたも右手にナイフを握りしめて携帯電話に、みゆきの動かせる手にじり寄る。
『トゥルルルルル♪』
186 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 23:23:09.78 ID:BMB88kAO
☆
みゆきさんが死に物狂いで携帯電話に手を伸ばす。
させるわけにはいかない。
ここまでやって豚箱行きになるだけなんてまっぱらごめんだ。やれるとこまでやってやる。
みゆき「はあっはあっ!」
狙いを、定めて、右腕を、最大まで、振り上げて、振り下ろす。
こなた「ああああッ!」
ダンッ!
みゆき「あ…ああ……!」
こなた「はっ悪いね、みゆきさんっ…」
188 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/27(土) 23:57:35.50 ID:BMB88kAO
こなた「みゆきさんなら携帯の買い替えくらい余裕でしょ?」
ナイフに貫かれた携帯は部品をバラ巻きながらその機能を停止した。
空間に私とみゆきさんの乱れた呼吸だけが煩い。
みゆきさんはまだ足掻く。ここから離れて第三者に直接連絡を取るつもりかな?
ま、させないけどさ。
こなた「もう諦めなよ」
私のナイフをみゆきさんのふくらはぎに落とした。
流石にアキレス腱だけ可哀相だからは回避しておいてあげる。
みゆき「つ…!!」
こなた「ご愁傷様。惜しかったね」
私はみゆきさんの両足を両脇に抱えてかがみの居る部屋へと引きずっていく。
布と地面の擦れる音がして、爪が地面に引っ掛かる音がした。私はスンと小さく鼻息をつく。
こなた「猫じゃないんだから大人しく引きずられてよ。時間稼ぎにもならない粘りなんてアホらしいだけだよ」
みゆき「…」
ギリギリと歯を食いしばる音が今にも聞こえてきそうだよ。
みゆきさんをほどほどの所まで引っ張ってから一度手を離した。
こなた「滅多に居ないけど万が一通行人に見られたら大変だからね」
ギィ…バタン……
189 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 00:30:35.88 ID:ekAQRIAO
☆
何かを引きずる音と一人分の足音が近づいてくる。
みゆき? …こなた?
壊れた扉から立ち姿を見せたのはこなたの方だった。
みゆきは引きずられる格好となっていた。
こなた「かがみんただいま〜♪」
こなたはにへらっといつものように可愛く笑う。
左の腕から血を流しながら、四人種類の赤が混じった血溜まりに立って私に微笑みかける。
それからみゆきを地面に放って私の横に来た。
口に噛まされていたボールが外される。涎が一気に零れてコポッて嫌な音をたてた。
かがみ「かふっ…つかさとみゆきだけは助けてお願い!」
みゆき「かがみさん…」
こなたはあからさまに嫌そうな顔をして目線をみゆきの方へ向けた。
こなた「第一声が二人の事だなんて、かがみに大切に思って貰えるなんてなんか妬ましいなー」
かがみ「そ、それは…」
こなた「いいよ。別に元から[ピーーー]つもりはなかったし」
かがみ「じゃあ早く救急車を…!」
こなた「あ、それは無理」
こなたは私に背を向けた。
かがみ「このままじゃ二人とも出血が危ないわ!」
こなた「もーまんたい」
みゆき「…注射器?」
こなたは得意げ注射器を取り出す。
こなた「かがみに使った薬と同じやつ結構たくさん予備があるからね」
190 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 00:38:38.15 ID:ekAQRIAO
かがみ「私が打たれたやつって…」
こなた「二種類打ったじゃん? ほら、みゆきさん腕を出して」
針の先から溶液が溢れだす。
みゆき「大人しく打たれるわけがないでしょう」
みゆきは両腕を後ろに回した。
かがみ「結局なんの薬なの? 言いなさいよ」
こなたは構わずみゆきの足に針を刺した。
みゆき「やめて下さい!」
かがみ「せめてなんの薬か教えなさいよ!」
こなた「動いて折れて死んでも私知らないよ」
みゆきは抵抗をやめた。
こなた「はいっいきますよー」
みゆき「んっ…」
191 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 00:52:32.04 ID:ekAQRIAO
効果がでるまでにそう時間はかからなかった。
みゆきがくたっと体の力を失った。
みゆき「こ、これは…一体何を」
こなた「筋肉弛緩剤」
ウインクしながらこなたはそういう。
さらに次の注射器をみゆきの傷口付近にあてがった。
みゆき「今度は何を」
こなた「止血剤だよ。みゆきさんとつかさはこれたっぷり打っとけば問題ないね」
みゆきにした作業をつかさにも始める。
つかさはまだ気を失ったままだ。
かがみ「……じゃあ私の左肩も」
こなた「うん、傷口はでかいけど薬が効いてるからまだ大丈夫だよ」
理解できなかった。
こなたは結局何がしたいのか。それが今だに分かっていない。
それが物凄く私達の居心地を悪くする。
みゆき「泉さん、あなたは一体何がしたいのですか?」
こなた「…」
かがみ「いい加減ちゃんと話してくれてもいいんじゃないの?」
こなた「……そうだね」
192 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 01:15:13.03 ID:ekAQRIAO
こなた「聞いて驚け見て笑えってね」
つかさへの手当てを終えたこなたは注射器とナイフを枕の横に置いて私の上に身を預けた。
そして語り始める。
こなた「最初、自分の趣味に気付いた時は自分自身にドン引きしそうな気分だったよ」
こなた「ただ単純にアクションゲームが好きなのかと思ったらそうじゃなかったんだよね」
こなた「殺すのが気持ちいいんだよ。刃と血のコントラストに沈む誰かを見てるだけでイキそうになっちゃうんだよね」
は…?
こなた「凄いんだよ。過激にすればするほど頂上を知らないから、やればやるほど新しい世界が見えてくるんだよね」
みゆき「……」
こなた「格ゲやっただけで下着が駄目になっちゃうレベルに達した時はガチで自分が怖くなったりもしたけどね」
こなた「でもね、ゲームじゃイケないんだ。だから最後はいつも玩具か自分の手でやってたんだよ」
何の話。聞きたくない。
こなた「物理的刺激無しで初めてイッたのがいつだかわかる?」
かがみ「…」
みゆき「…」
こなた「分かる?」
かがみ「知らないわよそんなの…」
みゆき「分かりかねます」
こなた「かがみがドジで自分の手を切った時だよ。私もまさか調理実習中にやられるとは思わなかった」
こなたがくふふと笑った。
194 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 01:27:33.93 ID:ekAQRIAO
私の体中に鳥肌がたっているのが分かる。
気持ち悪い。
こなた「やばいよねー、あの時は本当にビックリしたよ。頭が真っ白になってチカチカしてさ気が狂いそうだった」
その時点で発狂してるわね。
こなた「まああとは予想付くと思うけど、手順にならってエスカレートしていった感じだよ」
手順って何の話だよ。
つかさ「ねぇ、そんな理由でお姉ちゃんを巻き込んだの…?」
かがみ「つかさ…!」
こなた「あれっ? おはよー」
つかさ「ねえ!!!」
こなた「まあ半分当たりかな」
つかさ「半分って何」
こなた「最初は犬とか猫でも最高にキマッてたんだけど、かがみの時の衝撃が強くて次第に足りなくなってさ」
こなた「まあ今みたいな感じ。その半分ってのはね、もういいや……って」
195 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 01:42:46.02 ID:ekAQRIAO
つかさ「は?」
こなた「つかさ、もし自分が人を殺さずにはいられない体になっちゃったらどうする?」
つかさ「そんな状況が有り得ないよ」
こなた「普通そうなんだけどさ、私だってこんなの予想もしてなかったよ。だからなったという仮定でさ」
つかさ「私だったら…自分が死ぬ。人に迷惑かけたくない」
こなた「でしょー? 私もさぁ、こりゃ駄目だって思ったんだよね」
こなた「それで終わりにしようと思って自分の手首スパッといったら血が溢れて、あはっ、結局そこで頭ん中スパークしちゃった」
こなた「目が覚めたら股間びっしょびしょに濡らしてるし、腕は水につけ損ねて気を失ったから血まみれながらも固まっちゃってんの」
こなた「………」
こなた「………趣味キチガイだとかそんなんじゃなくて、ガチで頭オカシクなるかと思った」
こなた「はは、自分斬って絶頂とかマジ意味わかんないし!!!」
こなた「でもね」
こなた「血を見てるとそんなこと、どうでもよくなっちゃうんだ」
こなたは私の肩を撫でた。
196 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 02:00:15.66 ID:ekAQRIAO
かがみ「それでこんなこと…を?」
こなた「ただ死ぬのは嫌になったから」
こなた「引き金になったかがみと一緒に死ねたらいいなーって」
こなた「どちらか片方だけでも凄いことになるのにっていうか今も頭ん中チカチカしてんだけどね? 二人一緒になれたらどうなるのかな?」
かがみ「なっ!」
つかさ「お願いやめてよ!!」
みゆき「そんな目茶苦茶な理由で!」
こなた「二人はそこで見てなよ。私とかがみで逝くんだ」
こなた「死ぬことが最高の快楽なら死ぬのなんか怖くない。 それで全部終わるんなら、かがみと一緒に全てが終わらせられるなら本望だ!」
かがみ「何勝手に泣いてるのよ意味わかんない! 一人で自己完結してんじゃないわよ!!」
こなたは構わず脇の日本刀を抜刀する。
ありえないありえないありえない! こんなキチガイと心中なんて出来るか!!
しかし、筋肉弛緩剤で緩んだ私の体は抵抗の術を持たない。
綺麗な日本刀が容赦なく私とこいつの体を貫いた。
197 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 02:17:34.58 ID:ekAQRIAO
こなた「が、あひぃっ…!!」
かがみ「あ゛あ゛……あ゛……………!」
つかさ「お姉ちゃん!!」
みゆき「かがみさん!!」
かがみ「なんでっ………なんでこんな…!」
こなた「あ、あはははっ、はっ………すご」
かがみ「嫌だ…………助けて、つかさ……こんな死に方ヤだよぉ…………」
こなたの口からゴポゴポと泡立った血が吐き出され、それな私の顔にかかった。
こなた「かがみぃーつかさひゃなくへ、わらひを見へコポォッ」
かがみ「私は…絶対っ死なないわ……一人でっ…勝手に…死んでろ………。私はつかさと、みゆきと、いのり姉さんと………」
こなた「しょーらね、かがみはまだ死ななひ。ゴプッ私が先に逝くとか見てもらうんはっ、それからだもんへ」
そういってこなたは私に新たな注射を刺した。
多分止血剤だろう。
かがみ「誰が…あんたの………ことなんか!!」
つかさ「お姉ちゃん死んじゃヤだよぉ!」
そうね、つかさの為にも私はまだまだ[ピーーー]ないわ。
198 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 02:20:49.45 ID:ekAQRIAO
こなた「が、あひぃっ…!!」
かがみ「あ゛あ゛……あ゛……………!」
つかさ「お姉ちゃん!!」
みゆき「かがみさん!!」
かがみ「なんでっ………なんでこんな…!」
こなた「あ、あはははっ、はっ………すご」
かがみ「嫌だ…………助けて、つかさ……こんな死に方ヤだよぉ…………」
こなたの口からゴポゴポと泡立った血が吐き出され、それな私の顔にかかった。
こなた「かがみぃーつかさひゃなくへ、わらひを見へコポォッ」
かがみ「私は…絶対っ死なないわ……一人でっ…勝手に…死んでろ………。私はつかさと、みゆきと、いのり姉さんと………」
こなた「しょーらね、かがみはまだ死ななひ。ゴプッ私が先に逝くとか見てもらうんはっ、それからだもんへ」
そういってこなたは私に新たな注射を刺した。
多分止血剤だろう。
かがみ「誰が…あんたの………ことなんか!!」
つかさ「お姉ちゃん死んじゃヤだよぉ!」
そうね、つかさの為にも私はまだまだ死ねないわ。
201 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 12:45:38.30 ID:ekAQRIAO
でも、この状況を打開する手段がない。
筋肉弛緩剤の効力は一体いつまで続くのだろうか。
かがみ「はっはあっあんた、生きて、帰ったら、覚えてなさいよ!」
こなた「あはっ無理、らよ、かがみもお腹貫通しちゃってるれひょ?」
こなたの息と私の息がだんだん荒くなる。
止血しててもやっぱりこれは危険なレベルなんだろう。
体に力が入りにくくなってきた。
こなたが両手を私の頬にあてる。
こなた「そんなことより、わらひの名前呼んで。どうせ死ぬなら最高の死に方がいい……」
かがみ「知らないわ、死ぬなら勝手に一人で死んで頂戴」
こなた「んっふふ、かがみは結局死ぬ時まれツンデレを貫くんらね」
かがみ「あんたにいい顔をする必要なんてないわ、ツンデレでもない」
こなた「必要はなくても、理由はあるひょね」
かがみ「はっ、無いわよ」
こなた「つれないねぇ」
こなたは最後の一本を手に握りしめた。
かがみ「また、注射? 跡が残るからやめてくれないかしら。私にはまだ先があるのよ…」
こなた「まだ言ってゆ……筋肉弛緩が治るまでにこの傷で生きていられると思うの? それまで誰も呼べないんだよ」
みゆき「……」
かがみ「私は止血してるし、あんたなんかより血もたくさんあるわっ。あんたは一人で寂しく[ピーーー]ばいい!」
こなた「折角ここまでしたんだから寂しいのはヤだよ…」
最後の注射器は私の首筋に打ち込まれた。
203 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 13:28:13.19 ID:ekAQRIAO
かがみ「今度は何よ」
こなた「んっふふ」
こなたは笑って答えない。
つかさ「お姉ちゃんに何をしたの?」
こなた「かがみ、陵桜に入って出会ってから色々あったひょね」
かがみ「……ちょっと前までは最高の思い出ばかりだったわ。卒業アルバムにあんたの姿があるのかもしれないと思うとゾッとするけど」
こなた「修学旅行で撮っら学年写真とかにはもう写っちゃってるもんね」
つかさ「ねぇ、何を打ったの?」
こなた「ひょーひえば、あの、みんなで撮ったプリクラ覚えへる?」
かがみ「あぁ、あったわね。帰ったらあんただけ切り取っとくわ」
こなた「私とかがみのドアップらから私が消えた意味なくない? "ウィーラブかがみ"の文字も切れちゃうじゃん」
かがみ「あんなこっ恥ずかしいもん要らないわ」
こなた「本当は嬉しくてどっかに張ってんでひょ?」
つかさ「ねぇってば!」
かがみ「うっさい、あんたはいつも私をからかうんだから」
つかさ「お姉ちゃんも何呑気な会話してるの!?」
204 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 13:46:59.82 ID:ekAQRIAO
こなた「だって可愛いんらもん」
かがみ「ばっ、かわ…可愛!」
こなた「んっふふイイ反応らねー大好きらよ。かがみは私の事、しゅき?」
かがみ「こんなことしといて聞くことか?」
つかさ「お姉ちゃん…?」
こなた「色々あったじゃん。一緒に海行ったの覚えへる?」
かがみ「あんたのスクール水着とつかさのフナムシが印象的ね」
こなた「映画見に行ったのは?」
かがみ「こなた=アホ毛の図式に気付いた日だったわ。あとつかさ煩すぎ」
こなた「あのあとのスイーツ食べ放題はヤバかった」
かがみ「あの後2キロ太った、店員死ね」
こなた「あっはは、そんな八つ当たりな」
かがみ「むかつく声だったのはまだ覚えてるわ」
こなた「スイーツと言えばみゆきさん家とみなみちゃん家のケーキ半端ないよね」
かがみ「私達がたまに奮発して買ってくるケーキの何倍も美味しい奴を私達全員分用意するんだから頭が下がるわ」
こなた「才色兼備のブルジョワ聖人君子」
かがみ「そこまで揃ってるともう漫画のキャラみたいね」
205 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 14:05:12.71 ID:ekAQRIAO
他にも数えきれない位たくさんあった。
初めてこいつの部屋に上がった時の衝撃は忘れられない。
今になってどうしてこんなことを思い出すのかは分からない。
だけどすごく楽しかったことを今の出来事のように思い出せる。
なんだかすごくいい気分だ。
かがみ「あーははっ、幸せねー」
こなた「誰もが思ってることひゃのに、しょれでもやっぱり自分が一番幸せって思えちゃうよね」
かがみ「まー人間そんなもんでしょ、ふふ」
こなた「かがみぃ私の名前を呼んれ」
かがみ「何? こなた」
つかさ「……!」
こなた「うっふふ、楽しいねかがみん」
かがみ「そうね、こなた」
こなた「かがみ幸せだよね」
かがみ「こなたと一緒なんだから当たり前じゃない」
つかさ「お姉ちゃんに何をしたの!!?」
こなた「すっごく気持ちひい」
かがみ「それは無いわ。でも最高の気分」
走馬灯ってやつかしら。目の前のこなたとの楽しかった想い出が一気にリフレインされる。
忘れかけていたような些細なことですら強く強く鮮明に蘇る。
207 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 14:22:16.91 ID:ekAQRIAO
他にも数えきれない位たくさんあった。
初めてこいつの部屋に上がった時の衝撃は忘れられない。
今になってどうしてこんなことを思い出すのかは分からない。
だけどすごく楽しかったことを今の出来事のように思い出せる。
こなた「っかがみー?」
なにこれ団長腕章? 誕生日を祝ってくれるのは嬉しいけどこれはないわね。まあこなたらしくていいけどさ。
ってお前は何をしとるんだ心臓に悪いからやめい!
こなた「あらーちょっと、強すぎたかな…?」
かがみ「はは、あははは」
こなた「むう…過去の私ばっか見てないでさ…ほらかがみん起きて!」
つかさ「こなちゃんまさか…」
こなた「んふふ、ちょっろらけ幸せに慣れるお薬を入れたんら♪ 悲しそう顔をしてたからね?」
つかさ「」
みゆき「なんてことを…」
かがみ「んはっこなたぁ?」
あー頭ん中がチカチカしてう。
あうあぁやばいやばいやばいやばいやばいッきたきたきたきたきた!
こなた「ほらぁかがみぃ私の顔を見て名前を呼んで。かがみの一番の親友は誰? 私は誰? 今の感情を共感できるのは私だけだよ」
かがみ「こなたっこなたこなたぁ、怖い頭トンじゃうこなたっ!」
こなた「大丈夫、私はいるから安心して」
かがみ「ひっいぅっこなたぁ!」
こなた「ほら、トンじゃえ♪」
ああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああ
209 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 14:42:32.80 ID:ekAQRIAO
☆
かがみ「ひ………」
―――――――――
―――――――――
―――――――――
こなた「…あーららぁ、目ん球ひっくり返しちゃってかーわいっ」
かがみ「―あぁ―――――ぁ」
つかさ「……す、…ロス、殺す殺す殺す殺す殺す殺してやる!!」
みゆき「つかささんお気を確かに!」
つかさ「これ以上お姉ちゃんに触るな!! グチャグチャにしてやる!!」
こなた「………体が動くようになったらご自由に」
こなた「まぁ、尤もその時まで」
かがみ「―――こなたっ」
こなた「かがみん? 思ったより早いお戻りだね」
かがみ「はっはあっはぁっ…こなた」
こなた「…どうしたの?」
こなたが私の汗ばんだ髪を書き上げる。
かがみ「はっ気持ちいいかって効いたわよ…ね」
こなた「うん」
かがみ「私は、はぁっ最高に、気持ちがいいわっ呼吸がはぁっままならない位…」
こなた「それはよかった、私も一人は嫌だからね」
かがみ「でも、こなたはぁっどうしてそんなに、静かなの?」
こなたはふわりと笑った。
210 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 15:05:09.35 ID:ekAQRIAO
こなた「私はもう終わるんだよ」
かがみ「…えっ? 気持ちいいの終わっちゃうの?」
こなた「ううん、私は今だって体が宙を飛んでて頭の中は花火なんだよぉ」
こなた「でもねえ、もう足りないんだよ。命が足りないんだ」
こなた「私はね、薬も刺激も無くていい。ただそこに削る命があればよかったんだよ。それさえできれば私は天にも昇る思いだった」
かがみ「はあっはぁっ……分からないわ」
こなた「大丈夫、かがみなら分かるよ。かがみ気持ちよかったでしょ? 今だってサイコーでしょ?」
かがみ「うんっ」
こなた「だからちょっと手段が違うだけ。過程は違うけど今、かがみと私は一緒だよ」
かがみ「一緒?」
つかさ「違う、お姉ちゃんはこんな奴と一緒なんかじゃない…!」
こなた「うん一緒。だから私を独りにしないで。分かり会えるたった一人の親友だからかがみを選んだんだ…」
こなた「一緒にいこ。先に私がいくから私を見てて。一人は怖い。共感する人間の居ないことがどれだけ寂しいのか良い人には分からないんだ」
211 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/03/28(日) 15:20:35.15 ID:ekAQRIAO
こなた「だから私はここに終わる。最高の終幕だね。究極の悦楽の時、死ぬ時だけは分かって貰いたかったんだ。私をちゃんと見てくれる人が居る………」
かがみ「いや、死なないでっ、こなたが死ぬなんて嫌!」
こなた「ふふっ嬉しいね………悲しい?」
かがみ「当たり前よ!」
こなた「本当に悲しいの? 違うでしょ。気持ちいい、でしょ」
こなた「死に行く友人が気持ちいい。自分から失われる赤い血が気持ちいい」
こなた「私達は死が悲しいんじゃない。死が気持ちいい自分を分かって貰えないことが悲しいんだ。でも、今なら一人じゃない。二人居る」
こなた「かがみ、悲しいの? それとも気持ちいいの?」
かがみ「…」
かがみ「気持ちいいわ、頭の中には幸せしかないの」
こなた「そう…私達は共感できる人さえ居れば何も怖くない。自分の死さえも幸福だよ……」
こなたの瞼がトロンとしてきた。
嫌だ死なないで、嫌? いや、こなたの血が気持ちいい。
こなた「……ふふふっ瞼が重たいや」
かがみ「死ぬの?」
こなた「………うん私はもういくよ。……向こうで…待ってるから……」
かがみ「安心して。私が見てるから。独りにさせないわ」
こなた「……うん…」
誰も分かってくれない寂しい世界なんて要らない。
ただ、最期くらい心許せる共感者に看取られたい。
それさえ叶えば全てが快楽。
こなた「 」
212 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 15:48:43.59 ID:ekAQRIAO
☆
「どうせまた悪戯電話だろ」
「勘弁して欲しいッスよね」
「さっきもタクシー代わりにされかけたんだぜ」
「通報があったのはこの辺ッスね」
「何にもないじゃないか、やられたな」
「はぁ〜万が一の時に問題になるてはいえ、悪戯とわかってて対応するのはキツイッスね」
「まったくだ……へえ、これ100パー木造のアパートじゃん今時珍しい」
「もう廃屋ですけどね……ん?」
「どうした」
「入口に携帯電話っぽい物が」
「あぁっ? マジかよありゃ破損してるぜ…」
「なんであんな状態に」
「ちょっと廃屋見てくるわ」
「あっハイ」
「おいヤバいぞ警察と増援呼べ!! 女子高生が血まみれで四人倒れてやがる!!」
「なっ!? 了解ッス!!」
「青髪が息してなくて、紫の二つくくりも体温が低い! ショートとピンクは次の車でまわす、担架!!」
213 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 16:06:51.72 ID:ekAQRIAO
☆
「難しい顔してますけど難事件ですか?」
「いやぁ〜? もう犯人も凶器も被害者も全て判明しています」
「だったらもう終わりじゃないですか」
「いえいえ〜ところがですねぇ、凶器の仕入れ先と動機が謎につつまれたままなんです」
「最近流行の何となく、とかついカッとなって、って奴じゃないんですか?」
「キミは本当に馬鹿ですね〜。もいいいから鑑識の結果とか聞いてきなさい」
「いえ、是非推理を聞かせて下さい」
「…いいですか? 何となくや勢いの犯行に、わざわざ状況に対応するための薬や多岐に渡る凶器を用意する人はいませんし、
私達はそれを計画的犯行と呼びます。キミは一から出直した方がいい。早くいきなさい」
「んーふふ、動機が皆目検討もつかない事件なんていつ以来でしょう…」
「お三方が目を覚ますのを待つしかありませんね」
「犯人は自分だけが死ぬように仕向けたのか、はたまた一人殺し損ねたのか…んふふ気になりますね」
221 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 21:55:32.82 ID:ekAQRIAO
☆病室
「え〜その他に分かることは?」
かがみ「…たぶんありません。何か思い出したらこちらから連絡します」
言って分かる内容ではない。
「分かりました。んっふふん〜不思議ですねー。普通、ここまで用意周到な犯人というものは何か大きな目的を抱えているのものです」
かがみ「知りませんよ。一人で死ぬのがとてつもなく怖かったと言ってはいましたけど」
「貴女に打った薬の説明がつきません」
話す必要はない。
かがみ「またその話ですか。あいつかなりトんでましたから意味なく打っただけかもしれませんよ」
「そうですか。まぁまた話したくなったら何時でも話して下さい。事件自体は解決していますからね」
「話したいもなにも知りませんから」
「はいそういうことにしておきましょー」
「あぁ、あと薬の依存性というものは恐らく貴女が覚悟しているよりも遥かに凶悪なものですー。絶対に負けないようにして下さいー。それではお大事に」
ガラガラ…
刑事がでていった入れ代わりにノックがあった。
つかさ「つかさだけど入っていい?」
かがみ「うん、入って入って」
222 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 22:19:52.85 ID:ekAQRIAO
つかさ「体、どう?」
かがみ「駄目ね、まだ一人では生活できないわ。お腹の傷が開いて入院延長なんてのも笑えないから養生してるわ」
つかさ「内臓が無傷でよかったね」
かがみ「不幸中の幸いね。私それでも死にかけたんでしょ?」
つかさ「でも乗り切った」
かがみ「そうね、この傷が治ったら三人どっか遊―――」
つかさ「お姉ちゃん?」
来た。来た来た来た。
かがみ「はあっはあっ…!!」
つかさ「お姉ちゃん! ナースコール、ナース!!」
かがみ「まって、つかさ…大丈夫だから……」
つかさ「でも…」
かがみ「大丈夫、大丈夫」
つかさ「…」
かがみ「あーはあっ…キツイってレベルじゃないわ…」
つかさ「収まった?」
かがみ「まだちょっと変だけど大丈夫よ」
つかさ「フラッシュバック…だっけ?」
かがみ「だっけ? じゃないわよ中学と高校でこれでもかっていうくらい講習受けたでしょ」
つかさ「……ぁはは…ごめん」
かがみ「本当ヤバいときはもう会話にならなかったり暴れだしたりするだろうから、その時は大人を呼んで頂戴」
つかさ「…うん」
普通は感情が高ぶった時やお酒を飲んだときによく発症するんだけど、私の場合どういう訳が発生条件が人より多いらしい。
225 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/03/28(日) 22:42:48.23 ID:ekAQRIAO
かがみ「つーかあの馬鹿はなんていう名前の薬を打ったのかしらね?」
つかさ「お姉ちゃんダメだよ!」
かがみ「あはは違う違う。別に名前を知って探そうってんじゃないわ。
ただね、たった一回なのに症状が重たすぎるのよ。覚醒剤『乱用』時レベルの後遺症らしいわよ? これ」
つかさ「……本当、笑いながら死んでったとかムカつく話だよね」
かがみ「最悪の置き土産もらっちゃったわね。あの世で会ったらタコ殴りにしてや…………あんた指の傷どうしたの?」
つかさ「この間、ゆきちゃんにうささんリンゴの難しい方作ってあげてたらやっちゃった」
かがみ「手首まだ包帯とれてないんだから無理しちゃダメよ」
つかさ「はーい、そうだ包帯巻き直そ」
かがみ「外でやって!」
つかさ「え…?」
かがみ「ここで包帯を解いちゃダメ…頼むから出てって」
つかさ「うん……どうかしたの?
かがみ「あんたは関係ないから」
つかさ「そっか、じゃあまた後でね」
かがみ「うん」
あれ以来、こなたとの思い出と人の血は私の中でフラッシュバックの強い鍵となっていた。
医者には精神的外傷からくるフラッシュバックと薬物からくるフラッシュバックの両方が私の頭に刻み込まれている説明されているのだが…。
かがみ「………医者の目もふしあなね」
『死に行く友人が気持ちいい、自分から失われる赤い血が気持ちいい』
226 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/28(日) 22:54:08.27 ID:ekAQRIAO
うん、中盤を超絶カオスにしたわりには収まったハズ。
ちゃんと落ちてるよね!? 期待に添えてなかったらごめんなさい一応これがトゥルーエンドです。
人を殺してイク人なんか居るのかな?
グロシーン書いてる時は俺のもオッキしてたけど流石にイケる気がしない。