蝉「この涼宮ハルヒってのを殺ればいいんだな?」


メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:キョン「……時よ止まれ」

ツイート

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 16:04:28.42 ID:jYINSS8u0

蝉 vs 朝倉
鯨 vs 長門
槿 vs 古泉

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 16:18:43.84 ID:jYINSS8u0

蝉「なんだよ、ただの女子高生じゃねーか」
蝉「なんで俺がこんな奴を殺さなきゃいけねーんだ!おい、岩西!」バンッ
岩西「うるせぇな、お前は…いちいち文句言ってるヒマがあんなら、
   さっさと仕事に行ってさっさと終わらせて土産買ってこい」
蝉「ちっ、偉そうに命令すんな!」

バタンッ……

蝉「…ったく、何様のつもりだよ、岩西の野郎。俺はてめーの操り人形
  じゃねえっての」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 16:21:41.12 ID:jYINSS8u0

蝉「…西宮北高校?ここに通ってんのか。日のあるうちはダメだな。
  夜になってから、適当な場所で済ませるか…」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 16:32:21.31 ID:jYINSS8u0

元:伊坂幸太郎の小説「グラスホッパー」
コミック化もされており、サンデーの漫画「魔王ジュブナイルリミックス」
にも何人かの登場人物が出てきている。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 16:37:11.27 ID:jYINSS8u0

長門「」パタン
ハルヒ「ん、よし!今日の団活はここまで!明日も遅れずに集合しなさいよ!
    それじゃ、みくるちゃん。部屋の鍵、よろしくね!」
みくる「わかりました〜」

キョン「長門、それ、何読んでんだ?」
長門「………」スッ
キョン「『罪と罰』…?随分とまた、難しげな奴だな」
長門「読みたければ、私が終わった後に貸す」
キョン「いや、やめとく」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 16:42:02.42 ID:jYINSS8u0

キョン「それにしても、冷え込んできたな…」
古泉「それでは、お先に失礼します」
キョン「ああ」

ポツ……

キョン「ん?」

ポツポツ……
ザアアアッ………

キョン「うわ、降り出してきやがった」
ハルヒ「ちょっとキョン!あんた、傘持ってない?」
キョン「待ってろ。玄関に置き傘が…」

ピカッ!

みくる「ひゃあっ!」
古泉「雷が光ったようですね」
キョン「おいおい、天気予報じゃ晴れだったはずだが…」
ハルヒ「キョン!早くしなさい!」
キョン「わかったわかった。そう急かすな」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 16:46:16.20 ID:jYINSS8u0

ザアアアアアア………

キョン「当然のことだが、一本しかない」
ハルヒ「言わなくても分かってるわよ。二人で差しましょ」
キョン「ああ」

みくる「涼宮さん、キョンくん、また明日〜」
長門「また…」
ハルヒ「二人とも、気をつけてね」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 16:50:14.33 ID:jYINSS8u0

キョン「大雨だな」
ハルヒ「そうね。ちょっとキョン、もう少しそっち寄りなさいよ。雨に
    濡れちゃうじゃない」
キョン「無理を言うな。こっちもギリギリなんだ」
ハルヒ「はぁ…。あたしも傘、持ってくればよかった」
キョン「お前も置き傘しておけばいいじゃないか」
ハルヒ「いやよ!盗まれたくないじゃない」
キョン「俺は一度も盗まれたことは無いけどな」

ザアアアアアア………

蝉「………」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 16:54:23.31 ID:jYINSS8u0

キョン「水溜まり、踏まないように気をつけろよ」
ハルヒ「踏まないわよ、あんたじゃあるまいし」
キョン「なんだそりゃ」
ハルヒ「いっつもぼーっとしてるでしょ」
キョン「俺だって、水溜まりぐらい避けて歩くさ」
ハルヒ「ほらそこ」

バシャッ

キョン「うわっ!」
ハルヒ「ほら、言ったそばから」
キョン「今のはお前の方を向いていたからだ」
ハルヒ「何よ、あたしのせいにする気?」
キョン「今のは…ん?前から人が来るな」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 16:57:46.78 ID:jYINSS8u0

千葉「………」

キョン「おい、ハルヒ。道が狭いからもっとこっち寄れ」
ハルヒ「傘、ぶつからないかしら」
キョン「たぶん大丈夫だろ」

千葉「………」
キョン「………」
ハルヒ「………」

ザアアアアアアア………

ハルヒ「今、通り過ぎた人の顔、見た?」
キョン「ん?いや、見なかったが」
ハルヒ「すっごい美形だったわよ。芸能人かしら?」
キョン「おいおい、あんまり人様の顔をじろじろ見るもんじゃないぞ」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 17:01:09.54 ID:jYINSS8u0

ハルヒ「あんたもあのくらい美形だったら、SOS団の知名度アップに
    役立つのにねぇ」
キョン「悪かったな。この顔は生まれつきなんだ。文句は俺の親に言ってくれ」
ハルヒ「顔の造形以前の問題よ。つまんなそうな顔をしてたら、どんなに
    ハンサムな男でもカッコ悪く見えるわよ」
キョン「そうかい」
ハルヒ「ただ、今の人、ちょっと変だったけど」
キョン「変?」
ハルヒ「ええ。なんだか、背筋が寒くなるような、人間離れした感じだった」
キョン「へ〜ぇ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 17:04:22.99 ID:jYINSS8u0

ハルヒ「ちょっと、何よその気の無い返事は!」
キョン「どうでもいいだろ、傘を引っ張るな。俺がずぶ濡れになる」
ハルヒ「もしかしたら、今の人、宇宙人かもしれないじゃない」
キョン「そんなに近所に宇宙人が溢れているなら、今頃日本は宇宙人で
    埋め尽くされているさ」
ハルヒ「名前聞いとくんだった!もったいないことしたわ」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 17:08:45.91 ID:jYINSS8u0

ザアアアアア………

キョン「お、少し小降りになってきたか?」
ハルヒ「真っ暗ね。急ぎましょ」
キョン「ああ、そうd」
蝉「おい、お前、涼宮って奴か?」
キョン「うわっ!(び、びびった!いきなり後ろから話しかけてくんなよ)」
ハルヒ「だ、誰?何よいきなり…」
蝉「とりあえず自己紹介。

蝉「俺は『蝉』!ちょっとお前を刺しに来た」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 17:16:20.41 ID:jYINSS8u0

キョン「………へ?」
ハルヒ「せみ?え、何よ、刺しに来たって…」
蝉「で?お前、なんで俺に殺られんの?」ズイッ
ハルヒ「は…?」
蝉「だからさ、なんでお前は殺されなきゃならねーのかって、聞いてんだよ」
ハルヒ「な、何言ってんの?何よ、殺されるって…」
蝉「お前を殺すように言われて来てんだよ」
キョン「お、おい、ちょっと待てよ。なんだ、お前?誰なんだよ」
蝉「だァから『蝉』だって名乗ってんだろ?」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 17:21:27.76 ID:jYINSS8u0

キョン(意味が分からん…。なんだ、コイツ?また、ハルヒ絡みか?)
キョン「言われて来たって…。誰にだよ?」
蝉「岩西だよ」
ハルヒ「誰よ、それ?わけわかんない」
蝉「俺の上司だよ。っつうか、俺と岩西しかいねえけどよ。あいつが仕事を
  引き受けてきて、俺が仕事をやるんだ。これ、おかしいよな。そう
  思わねえか?労働は俺で、あいつはやらねえんだぜ。おかしいよな」
キョン(よく喋るな…)
ハルヒ「し、仕事って何?」
蝉「殺しだよ、殺し。俺は殺し屋なんだ」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 17:32:30.99 ID:jYINSS8u0

蝉「俺はお前を殺しに来ただけなんだ。仕事なんだって」
ハルヒ「殺しにって…。冗談でしょ?何よそれ」
蝉「俺は頼まれただけなんだよ。よく知らねえんだ。岩西はほんとに何にも
  教えてくれねえんだって」
キョン「お、おいハルヒ!相手にしない方が…」
ハルヒ「何よそれ!?意味分かんないわよ!誰なのよ、その岩西ってのは?」
キョン「」
蝉「だから俺の上司だよ。こいつがまたロクな情報寄越さねェんだよ。
  いつもだぜ?いっつも!!ムカつくよな?」
ハルヒ「………」
蝉「今回も、お前の通ってる高校の名前と、顔写真渡してきただけだ。そんで、
  例の、あれだよ。ジャック・クリスピンだ」
ハルヒ「…な、なにスピン?」
蝉「お前も知らねぇか。だよな。俺も知らねえ。なのに、あの馬鹿は何かと
  言えば、そいつの言葉を引用すんだよ。何とかってバンドで歌を歌ってた
  奴らしいんだけどさ。知らねえよな。とにかく、岩西はそいつの歌詞
  ばっかり、気にしてるんだよなあ。ジャック・クリスピン曰く、だよ。
  いつだってそうだ。ジャック・クリスピン曰く、『二十代の男は、知らない
  ことが多い方が幸福だ』とかのたまいやがる。ムカつくんだよ、ふざけんな
  っつうの」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 17:39:32.39 ID:jYINSS8u0

蝉「依頼人が誰なのか、どういう理由で依頼してきたのか、そんな話は
  まったく教えてもらえねえんだ。コンビニの店員が、自分の売ってる
  菓子パンの製造方法を知らねえのと似てるよな。いや、似てねえか」
キョン(話、長っ……!)
蝉「とにかくさ、ムカつくんだよ。俺はあいつの人形じゃねーっつうの!」
ハルヒ「………!」ぞくっ
蝉「だから、殺す前に知ってやるのさ。お前が死ぬ理由」チキッ
蝉「岩西に話したら驚くだろうなァ。『なんでお前がそんなこと知ってる!?』
  ってよ。ははっ!楽しみだ」
蝉「なあ、教えてくれよ、涼宮ハルヒ」ニイ
ハルヒ「!!」ビクッ
キョン「走るぞ、ハルヒ!!」ガッ
ハルヒ「―――!」ダダッ
蝉「お?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 17:44:16.88 ID:jYINSS8u0

ハルヒ「……っ!!な、何なのよ、アイツ!?」
キョン「俺が知るか!とにかく、逃げるぞ!なんかヤバそうだ!」

ザアアアアアアア………

ガタッ
キョン「うわっ!」
ハルヒ「きゃっ!!」
キョン「いてて…、やべえ、工事中…!行き止まりだ」
カツカツ……

蝉「お――い、涼宮」

ハルヒ&キョン「!!」ビクッ

蝉「答えろよ。なんでお前は殺されるんだ?」カツカツカツ

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 17:51:39.38 ID:jYINSS8u0

蝉「んんっ…?」

ザアアアアアアアア………

蝉「ちっ、面倒くせえな」

キョン(いいか、ハルヒ?音立てるなよ)
ハルヒ(分かってるわよ!あいつ、こっちに来てるかしら?)
キョン(分からん。また雨の勢いが強くなってきやがった)
ハルヒ(それにしても、助かったわね。用水路側に下りれる梯子があって)
キョン(ああ、まさしく地獄に仏って奴だ)
ハルヒ(どうする?近くに交番なんてあったかしら)
キョン(分からんが、いつまでもこうしちゃいられないだろ。人のいる場所を
    探すしかない)
ヒュッ…
ハルヒ&キョン「!!」
とんっ
蝉「みっけ」
キョン「うっ、うわあああっ!!」ガシッ ダダダッ
ハルヒ「ち、ちょっとキョン!腕痛いっ」
蝉「ムリムリ。俺からは逃げられないって」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 18:03:01.45 ID:jYINSS8u0

蝉「そっちは行き止まり…って、聞いてねえか。しようがねェなあ」

キョン「はァ…はァ…う、ウソだろ…」
ハルヒ「ど、どうすんのよ…。梯子も何も、無いじゃない!」
キョン「どうするったって……」
蝉「どうしようもねェよ」
キョン「っ!!」
ハルヒ「い、いやっ…来ないでよ!何なのよ、あんた!?」
蝉「さっきから何度も説明してんだろうが」
ハルヒ「なんで…なんであたしが殺されなきゃいけないのよ!?意味分かんない!
    納得いかないわよ!!」
蝉「ぐちゃぐちゃうるせえなあ」カツッ
蝉「うるさすぎ」
ハルヒ「うっ……うぅっ……」
キョン「は、ハルヒ…」
蝉「納得いったら大人しく刺されます、なんて言わねえだろ?お前」
キョン「………!」
蝉「なんかもう、めんどくさくなっちまったしなァ」ヒュッ
蝉「お前が死ぬ理由は知らねえが…もういいや」

蝉「殺すよ」

キョン「ま、待った!」
ハルヒ「……キョン?」
蝉「?ん、ああ。お前はいいよ。邪魔だからどいてろ。お前は依頼対象外だ」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 18:06:15.94 ID:jYINSS8u0

キョン「悪いが…そうはいかない」
蝉「………あ〜ぁ、聞いてなかったか?俺は今こう言ったんだ」

邪 魔 だ か ら ど い て ろ

キョン「………」
ハルヒ「キョン……!ダメよ、キョンっ!!」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 18:09:56.41 ID:jYINSS8u0

蝉「………」
キョン「………」
蝉「………あ〜…面倒くせェなあ、ったく……」
ハルヒ「うっ……うっ………」
蝉「言っとくがな?そいつ庇ったって無駄だぜ?俺も一応、プロなんでね」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 18:40:50.64 ID:jYINSS8u0

キョン「プロ……?なんだよそれ…ふざけんな!人殺しにプロもアマもあるかよ!」
蝉「あるよ。まあ、納得いかねぇのも分かるけどよ。俺も一応、この仕事で飯を
  食ってんだ。親に養われて学校に通ってるお前には分かんねえだろうけどよ」
キョン「………」
蝉「そこの涼宮ハルヒを殺してくれってさ、頼まれてんだよ。その分の料金も
  もらっているんだとよ。そうそう、でもよ、聞いてくれよ。俺に入ってくる
  金は、全額ってわけじゃねえんだぜ。これって、おかしいよな」
キョン(どうする?どうすりゃいい?見た感じ、長門や朝倉みたいなトンデモ宇宙
    能力を持ってるようには見えない。いざとなりゃ、体当たりでも食らわして、
    脇を駆け抜ければ…)

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/11/28(土) 18:54:17.93 ID:jYINSS8u0

蝉「あ、あと、言っとくぜ。俺の横をそいつ引っ張って通り抜けられると思うなよ?
  俺を倒そうとしても無駄だ。お前じゃ、俺には勝てない」
キョン(ミエミエかよ…。畜生っ、どうすりゃいい…!?)
蝉「ま、お前には手を出さねえんだから、余計なことはせずに黙って見てればいい。
  俺のことを警察に言ったって構わねえよ。そんなことで捕まるほどバカじゃねえんだ」
ハルヒ「………」バタッ
キョン「!? おっ、おい、ハルヒ!?」
蝉「ああ、ビビって気ィ失ったか。丁度いいじゃねえか。寝てる間に死ねるなら、楽だろ?」
キョン「ま、待てよ!お前…、女にまで手を出すのか!?」
蝉「は?」
キョン(時間だ。時間を稼ぐしかない!何か喋って、時間を稼がないと…)
キョン「こいつはただの女子高生だ!どこにでもいる、普通の……我が儘な女子高生だ!
    金のためにこいつを殺すのか!?」
蝉「意味分かんねーよ。映画の見すぎだな。『殺すのは、女と子供以外』ってか?
  そんなの、プロにあるまじきことだっつうの」
キョン「………」
蝉「医者が手術する時に、『男は治しません』なんて、言わねえだろうが。
  何がNo women,no kidsだよ。そんなの差別だよな。俺はあんな殺し屋なんて
  大っ嫌いだね」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 18:59:00.20 ID:jYINSS8u0

蝉「さ、分かったろ?邪魔だからどいとけ。すぐ済ますからよ」
キョン「くっ……!」バッ
蝉「……何のつもりだ?」
キョン「お前、さっき言ったよな。自分はプロだって。プロなら、依頼の対象外
    は殺さないんだろ?俺は、依頼の対象外なんだろ?お前に、俺は殺せない。
    ハルヒを殺すなら、先に俺を殺せよ。どうだ?できないだろ?」
蝉「…お前、馬鹿か?」
キョン「馬鹿だよ、大馬鹿だ。自分でもよく分かってる」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:04:08.81 ID:jYINSS8u0

蝉「そういう意味じゃねえよ」
キョン「なに?」
蝉「そんな程度で、後ろの女を護れていると思ってんのか?」
ヒュッ
キョン(はっ、早っ!!)
ブシュッ
キョン「うわっ!!」
蝉「殺すのは無理だがよ。殺す以外のことなら、別に問題ねェだろ?要は、お前の
  心臓が動いてさえいれば、手足を刻もうが耳を切り落とそうが、自由だ。こっちも
  仕事なんでな」
キョン「痛ぅ………」
蝉「今はわざと腕を狙った。次はもう少し痛む場所を切り刻むぜ?早めに諦めた方がいい」
キョン(なんだよコイツ……!?冗談じゃねえっ!)
蝉「それじゃあ、次……」
ヒュオッ

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:09:29.23 ID:jYINSS8u0

ガキッ………!!



蝉「……誰だ、お前?」
長門「彼女は私の観察対象。あなたの手にかけさせるわけにはいかない」
キョン「なが…と……?」
長門「遅くなって申し訳ない」
蝉「おい、お前、どこから現れた?上からじゃねえよな。気づいたら目の前に
  いやがった…」
長門「………」
蝉「ただのガキじゃねえな!何モンだ!!?」
長門「あなたに説明する必要はない」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:23:28.61 ID:jYINSS8u0

キョン「お、おい長門!こいつは……」
長門「待って」
蝉「次から次へと邪魔が入りやがるな。女子高生一人殺すのに、こんなに
  手間取るとはな」
長門「………」
蝉「お前、妙な眼をしてるな。何考えてるのか読めねえ。それに、ナイフの刃先を
  手で止めやがった。ただものじゃあなさそうだな」
長門「あなたが知る必要はない。我々の目的は自律進化の可能性である
   涼宮ハルヒの観察。彼女に危害を加えるのであれば、見過ごすわけには
   いかない」
蝉「何言ってんだか全然分かんねェが、てめェの事情なんざ…」
バッ
蝉「俺が知るかよ」
長門「」ヒュッ

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:25:05.33 ID:jYINSS8u0

ブルルルルルルル………

蝉「」ピタッ
長門「!!」
キョン「!!」
蝉「………」
キョン(携帯…?俺のじゃないな。ハルヒのも違う。と、すると…)
蝉「チッ」ピッ
蝉「なんだ!?」
??「俺だ、岩西」
蝉「分かってる!俺の携帯にかけてくるのなんて、お前ぐらいだ!!」
岩西「実は涼宮って小娘の件なんだがよ。今、依頼人から電話があってな」
蝉「ああ!?」
蝉「……………」
キョン「………?」
蝉「! なんだって…!?」

蝉「ふざけるなァ!!!」
キョン「………!!」ビクッ

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:37:29.91 ID:jYINSS8u0

蝉「……………」
蝉「…チッ、分かったよ」
蝉「分かったって……うるせェよ、クリスピンはもういいっつうの」
蝉「ああ…ああ、それじゃあな」ピッ
キョン「………!」
長門「………」
蝉「…依頼主から連絡があったんだと。そいつが目ェ覚ましたら教えてやれ」
キョン「へ?」

蝉「涼宮ハルヒを殺すのはキャンセルだとよ」

キョン「なっ!?」
蝉「俺も詳しいことは分からねえ。例によって、岩西のバカからの連絡だからな。
  ま、とにかく、依頼がキャンセルになったからにはもう、そいつを追い回す
  必要もなくなった。俺はもう戻る。あばよ」
スッ
キョン「………」

ザアアアアアアア………

キョン「…雨、まだ降ってたんだな」
長門「彼女を…」
キョン「ああ、そうだな。おい、ハルヒ!目を覚ませ!大丈夫か?」
ハルヒ「ぅ………」
長門「…問題はない。おそらく、強い精神的なショックにより一時的に意識を
   失っただけと思われる」
キョン「そうか。なら、安心だな。また助けられちまったな、長門」
長門「気にしなくていい。彼女のためでもあった」
キョン「そりゃあまあ、そうかもしれないが、俺も助かったよ。ありがとな」
長門「………」コクッ

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:44:10.79 ID:jYINSS8u0

キョン「とりあえず、ハルヒを家まで運ばないとな。と言っても、俺は
    ハルヒの家の場所を知らないんだが…」
??「それならば、我々にお任せください」
キョン「ん?お、お前は!」
古泉「遅くなり、申し訳ありません」
キョン「古泉…」
長門「私が呼んだ」
古泉「はい。機関のメンバーが、既にこの辺りの警備を強化していますので、
   もう心配要りませんよ。涼宮さんも、ご自宅までお送りします」
キョン「そうか…。助かったのか、俺は…」ヘナヘナ…
古泉「とりあえず、上にもどりましょう。ここはその…、匂いもあまりよく

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:46:25.36 ID:jYINSS8u0

   ありませんし」
キョン「ああ、そうだな。古泉、手を貸してもらえるか」
古泉「勿論ですよ。涼宮さんを上まで運びましょう」
キョン「いや、その…」
古泉「はい?」
キョン「…腰が抜けて、立てないんだ。助けてくれ…」
古泉「…大丈夫ですよ。もう、心配は要りません」グッ
キョン「悪いな…」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:49:59.80 ID:jYINSS8u0

古泉「詳しい話は、明日伺います。今はゆっくりと休んだ方がいいですよ。
   おや、腕に怪我をされているようですね。機関の車に、応急処置用の
   器具が積んであります」
キョン「何から何まで、悪いな」
古泉「とんでもありませんよ」ニコッ
古泉「機関のメンバーとして、そして何より…」

古泉「貴方の親友として、当然のことです」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 19:54:29.40 ID:jYINSS8u0

キョンって、ハルヒの家知りませんよね?念のため…

古泉「こちらです」
森「キョン君、お久しぶりですね」
キョン「森さん!」
森「怪我の手当てをしますから、ちょっと腕を捲ってください」

森「…はい、これで大丈夫ですよ」
キョン「助かりました。ありがとうございます」
森「どういたしまして」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:02:27.70 ID:jYINSS8u0

長門「私は涼宮ハルヒに付き添う。彼女が目を覚ました後に、事情を説明する
   必要がある」
古泉「そうですね。よろしくお願いします。彼は、我々が責任を持って、ご自宅
   まで送り届けます」
キョン「すまんな」

車中…
キョン「しかし、ハルヒの親にはなんて説明する?」
古泉「涼宮さんが不審人物に襲われていたところを、運よく通りかかった
   長門さんが助けて、警察を呼んだ、とでもするでしょう。事実、警察
   にもちゃんと連絡しました。機関の面々が、事情聴取を代わりに請け負って
   くれています」
キョン「そうか。まあ、不審人物に襲われたってのは、間違いじゃないしな」
古泉「…今はとりあえず、ゆっくり休むことです。疲れたでしょう?」
キョン「ああ。一生分の疲労を一気に味わった気分だ」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:06:27.84 ID:jYINSS8u0

キョン宅…
古泉「それでは、僕はこれで」
キョン「ああ、助かった。恩に着る」

妹「キョンくんお帰りー!」
キョン「ああ、ただいま」
妹「あれ?手、怪我したの?」
キョン「え?あ、ああ。ちょっとドジってな」
妹「痛くない?大丈夫?」
キョン「平気だよ…平気だ」
妹「…キョンくん?」

ガチャッ
スタスタ
ばふっ(ベッドに倒れ込む音)

キョン「大丈夫だよな?もう、大丈夫なんだよな……?」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:18:39.33 ID:jYINSS8u0

ブルルルルル………

キョン「!!?」ビクッ
キョン「携帯?ハルヒか誰かか…」
ピッ
キョン「もしもし…」
??「くつくつ…久しぶりだね、キョン。僕のことを覚えているかい?」
キョン「佐々木…!?」
佐々木「随分と驚いているみたいだが、やっぱり予想外だったかな?」
キョン「あ、ああ…。ちょっと今日はいろいろあったもんでな」
佐々木「…?大丈夫かい?何か、疲れているような声をしているが」
キョン「ああ、平気だ。もう、大丈夫だ」
佐々木「言っておくが、僕は君のことを親友として認識している。親友の身に
    困ったことがあれば、相談に乗るのが親友たるものだ。何か悩みでも
    あるのなら、僕でよければ相談に乗るよ?」
キョン「ああ。すまん、心配はいらない。平気だ…」
佐々木「……そうかい。それなら、いいんだ」
キョン「ああ。で、どうした?用事があって、電話をしたんじゃないのか?」
佐々木「ああ、なに、大した用事じゃないんだ。ただ、なんとなく、久しぶりに
    親友の声を聞きたくなってね」
キョン「……?」
佐々木「くつくつ。まあ、退屈していたのもあってね。君とちょっと話でもしようか
    と思って電話をした次第なのだが、疲れているようならまた今度にしよう。
    先程も言った通り、大した要件は無いんだ」
キョン「そうか、まあ、いつでも好きな時に電話してくれ。俺も、お前の声を久々に
    聞けて、なんだか安心したよ」
佐々木「くつくつ、それは嬉しいね。それじゃあ、キョン。また……」
キョン「ああ」ピッ

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:26:25.28 ID:jYINSS8u0

ブルルルルル………
キョン「うわっ!ま、またかよ…」ピッ
ハルヒ「キョン!?今家にいる!?無事なの!?怪我はない!?」
キョン「お、おい落ち着け!声のボリュームを下げろ!俺の耳がイカレちまう」
ハルヒ「その様子だと、平気そうね。まったく…、心配させるんじゃないわよ!」
キョン「お互い様だろう。お前は、平気なのか?」
ハルヒ「当ったり前よ!SOS団団長たるもの、そう簡単にへばったりしないわ!
    まあ、あの時は流石にちょっと堪えたけど…」
キョン「ああ。あそこに偶然長門が通りかかってなければ、ヤバかったかもな」
ハルヒ「本当!!有希が警察を呼んでくれてなきゃ、あの変なウサギ耳コートの奴に
    何をされてたか…。まったくこの国はどうなってんのよ!!あんな奴が平気で
    街を歩けるなんて、どうかしてるとしか思えないわ!政治家は何をやってんのよ!」
キョン「落ち着け、ハルヒ。とりあえず、二人とも無事でよかったじゃないか」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:32:18.49 ID:jYINSS8u0

ハルヒ「それとアンタ、家に着いたならすぐにあたしに電話しなさいよ!
    あたしがかけてもしばらく通話中だったし、団長様よりほかの人間
    を優先するなんて、たるんでるわよ!」
キョン「悪かったよ…。俺も今日は流石に疲れてて、そこまで頭が回らなかった
    んだ。まあ、お前が元気そうで何よりだ。詳しい話は、また明日にしよう」
ハルヒ「…そうね。分かったわ。じゃあ、また明日」
キョン「ああ、じゃあな」ピッ

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:35:38.49 ID:jYINSS8u0

キョン「…痛っ!うっかり動かすと痛むな」
キョン「うちの親には黙っておくか。変に心配をかけてもアレだし、ハルヒ
    絡みの奴だとしたら、家族を巻き込むわけにもいかないしな」
キョン「は〜ぁ……やれやれ、疲れたぜ」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:37:36.62 ID:jYINSS8u0

ザアアアアアアアア………

キョン「雨…まだ止まないな」

ザアアアアアアアア………

千葉「………」
パシャパシャパシャ……

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:42:25.98 ID:jYINSS8u0

翌日、学校…

キョン「やれやれ、まだ降ってやがるぜ。朝から憂鬱な気分にさせやがって」
谷口「よお、キョン。おはよう」
国木田「おはよう」
キョン「ああ、おはよう」
谷口「昨日、近所で通り魔事件があったって噂、お前聞いたか?」
キョン「通り魔…?ん、いや、聞いてないな。どういう噂だ?」
谷口「なんでも、ヘンな耳の付いたコートを着た奴が、ナイフ持ってうちの
   生徒に襲いかかったらしいぜ。誰なのかは分からんが」
国木田「怖いことをする奴がいるもんだよね」
キョン「そうだな…。そんな奴には近寄らない方がいい」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:45:40.29 ID:jYINSS8u0

谷口「あれ?キョンお前、腕ケガしてねーか?」
キョン「ん?ああ…」
谷口「ははァ…。さては涼宮とケンカしたか」
キョン「馬鹿言うな。喧嘩したからってこんな怪我を作るわけがないだろう」
谷口「ハハハ!あいつを本気で怒らせたらそのくらいの怪我じゃ済まないかもな」
キョン「笑い事じゃねーよ…」
国木田「痛くないのかい?」
キョン「ああ、触らない分には平気だ」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:49:49.59 ID:jYINSS8u0

教室…
キョン「よっ、ハルヒ」
ハルヒ「おはよ。いつも通りの顔ね」
キョン「ああ、いつも通りだ。心配はいらん」
ハルヒ「それは?」
キョン「ん?ああ、大したことは無い」
ハルヒ「…あいつにやられたの?」
谷口「おい、何の話だ?あいつって…」
ハルヒ「あんたはどっか行ってなさいよ!」
谷口「おお、怖っ…」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 20:54:37.37 ID:jYINSS8u0

キョン「ほんのかすり傷みたいなもんだ。手当もしてもらったし、一晩経ったら
    それほど痛くなくなった」
ハルヒ「そう、それなら良かったわ」ホッ
キョン「なんだ、心配してくれたのか?」
ハルヒ「なっ、そ、そりゃそうよ!なんてったって、あんたはSOS団の貴重な雑用
    だもの。大怪我でもされたら、仕事を任せられなくなるわ」
キョン「ま、感謝しておくさ。お前も怪我は無かったみたいだしな」
ハルヒ「そうだ!あんた、あたしが気絶してる間に、ヘンなことしなかったでしょうね!?」
キョン「するわけないだろ。第一、あの場には長門もいたんだ」
ハルヒ「ふん、まあ、それなら一応信用しておくわ」
キョン「やれやれ…」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:06:12.90 ID:jYINSS8u0

昼休み…
古泉「失礼…よろしいですか?」
キョン「ああ、そろそろ来る頃だと思っていた」

キョン「屋上か、ここなら安心だな」
古泉「はい、周りに聞かれる心配もありません」

古泉「まず、報告を…。貴方の言う『蝉』という人物の本名・経歴・居住地…、
   すべては、結論から言うと、不明です」
キョン「………」
古泉「機関のネットワークを使い、徹底的に調査をしましたが、詳しい情報は
   何も…」
キョン「…そうか」
古泉「正直、これには我々も驚いています。涼宮さんを狙う様々な組織の存在は、
   以前にもお話しした通り、いくつか我々も把握しています。ですが、この
   ような相手は未だ嘗て、聞いたこともありません。殺し屋、と名乗っていた
   ことから察するに、おそらくその人物は、裏の世界の住人、とも呼ぶべき人間
   でしょう」
キョン「ハルヒの奴…、そんなヤバい奴からも狙われているってことか」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:13:41.11 ID:jYINSS8u0

古泉「警察からの事情聴取の際にも、長門さんが相手の服装や顔立ちなどを
   しっかり伝えてくれたそうですが、警察にもそのような犯人像の心当たり
   は無いらしく、捜査は難航しているようです」
キョン「しかし、あいつは、依頼はキャンセルされたと言ってたんだが…」
古泉「それはおそらく、長門さんのおかげでしょう」
キョン「長門の?」
古泉「はい。これは想像ですが、あの場で貴方方の状況を遠くから観察して
   いた者がいるのではないかと、僕は考えています」
キョン「なんだと?」
古泉「涼宮さんはただの人間ではありません。もし彼女の存在を邪魔に思う
   人間が、殺し屋を雇って彼女を殺させようとした場合、相手を完全に
   信用して任せることはできないと思うんです」
キョン「ハルヒの能力があるからか?」
古泉「はい。突発的に発動する彼女の能力のことを知っているものならば、
   いかに腕の立つ殺し屋を雇っていても、それに任せきることはしない
   でしょう。邪魔が入らないかどうか、うまくやり遂げられるかどうか、
   遠くから観察していた可能性が高い」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:19:38.65 ID:jYINSS8u0

キョン「つまり、あの状況を遠くから眺めていた奴がいたということか?」
古泉「あくまでも可能性の話ですが、僕はそう思います。蝉と名乗るその
   殺し屋も、あくまで人間ですから、ヒューマノイドインターフェース
   である長門さんと対峙すれば、勝負は見えています。無駄に戦わせる
   ことはさせず、依頼をキャンセルして、計画を断念したという方が
   理にかなっているとは思いませんか?」
キョン「確かにな」

※説明していなくてすみません。屋上と言っていますが、外は雨が降って
 いるので、二人は実際は屋上へ出るドアの前辺りに座って、弁当を食べ
 ながら話をしているとお考えください。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:26:23.37 ID:jYINSS8u0

古泉「涼宮さんは、これからはしばらくご両親が車で送り迎えをしてくださる
   ようです。雨続きですから丁度よいですね。勿論、機関のメンバーも
   総力を挙げて涼宮さんの護衛をしています。あくまでも、気づかれない
   ように、ね」
キョン「それなら、当面あいつの心配は要らないな。ところで古泉、もうひとつ
    質問がある」
古泉「はい、なんでしょう」
キョン「さっきも話したが、ハルヒには願望を現実化する能力があるんだろ?
    あの殺し屋に襲われた時に、その能力でどうとでもなったはずだ。
    ましてや、命の危険に曝されていたんだぞ?なんであの時、ハルヒの
    能力は発動しなかった?」
古泉「……そうですね。話しておいた方がよいでしょう」カチャ…
古泉「実は、現在涼宮さんの能力は、次第に失われつつあります」
キョン「なに?初耳だぞ」
古泉「はい、お話しなくて申し訳ありません。彼女の能力は、少しずつでは
   ありますが、沈静化しているんです。今では、閉鎖空間もほとんど
   発生していません」
キョン「そういえば、お前がバイトに行く回数が、ここ最近めっきり減ったな」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:30:30.06 ID:jYINSS8u0

古泉「はい。機関としては、内部で何回か議論が交わされましたが、一応は
   これを良い傾向として、全面的に受け入れる体制になっています」
キョン「ハルヒは神なんかじゃなく、文字通り普通の女子高校生になってきて
    いるというわけか」
古泉「はい。僕個人としても、涼宮さんからこのまま『力』が消えてくれること
   を願っているんです。それでもSOS団が消えることはありませんからね」
キョン「そりゃあ、そうだろうな。なら、むしろいいニュースだな」
古泉「いえ、そうでもないんです…」
キョン「なに…?」
古泉「実は、そう簡単に解決できる問題でもなくて…」
キョン「どういうことだ?」
古泉「すみませんが、これに関しては今はまだ詳しく話せません。いずれ必ず」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:33:07.07 ID:jYINSS8u0

キョン「……そうか。まあ、お前らにも、いろいろあるだろうしな」
古泉「申し訳ありません」
キョン「まあ、俺としては、ああいった物騒な奴にさえ襲われなければ、
    それでいいんだがな。ハルヒの無茶苦茶に付き合わされるのも
    大変だが、ナイフを持った殺し屋に襲われるくらいならハルヒ
    の方がずっとマシだ」
古泉「クスッ…そうですね」
キョン「さて、昼休みももうじき終わりだ。戻ろうぜ」
古泉「ええ」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:42:31.47 ID:jYINSS8u0

放課後…
みくる「キョンくん!心配しましたよ、連絡受けて…」
キョン「すみません、朝比奈さん。この通り、ピンピンしてますよ」
みくる「良かったぁ…」
古泉「未来の方から、何か連絡は?」
みくる「詳しいことは禁則事項ですが、この一件に関しては、我々も情報が
    乏しいんです。というより、ほとんど連絡も来てないんですが…」
キョン「心配しても仕方がないですよ。まあ、俺が言うのもなんですが…」
みくる「…とりあえず、お茶、いれますね」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:43:26.30 ID:jYINSS8u0

一時間後…

ハルヒ「ちょっとキョン!パソコンが動かなくなっちゃったわ」
キョン「なに?おいおい、乱暴に使ったんじゃないだろうな」
ハルヒ「普通にいつも通りに使ってただけなのに」
キョン「う〜む、本当だ。マウスが固まっちまってるな。長門はどこだ?」
ハルヒ「隣よ。コンピ研に入り浸ってるわ」
キョン「よし、元々は向こうのパソコンだしな。壊れた時は、直すのも向こうの
    方が得意だろ。俺が頼んでみる」
ハルヒ「頼んだわ。みくるちゃん、お茶のお代わり頂戴!」
みくる「は〜い」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 21:47:28.32 ID:jYINSS8u0

ハルヒ「はぁ、パソコンが無いとヒマねぇ」
キョン「パソコンがあってもヒマだろうが」
ハルヒ「違うのよ。あたしはちゃんと、日々ネットの世界に不思議が無いか
    確認してるのよ。でも、それが無いから、手持無沙汰だわ」
キョン「校内を探索したらどうだ?前は俺にやらせたんだから、今日は自分で
    行ってきてみろよ」
ハルヒ「馬鹿ねえ。学校の中でなんて、そうそう不思議が見つかるはずがない
    じゃない。不思議がそんなにゴロゴロ転がってれば、今頃この部室は
    不思議で埋まってるわよ」
キョン(あの時のこいつは一体何だったんだ…)
古泉「んっふ」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 22:26:36.76 ID:jYINSS8u0

戻りました。続けます。

ハルヒ「まあでも、気晴らしに校内を歩いてみるのもいいわね。ちょっと
    出てくるわ」
キョン「ああ、ついでに購買で…」
ハルヒ「言っておくけど、団長をパシリに使おうなんて、百年早いわよ?」
バタン!
キョン「…まったく、あいつのタフさにはあきれるな」
古泉「そこがまた、彼女のチャームポーイントでもありますがね」
キョン「さっきも、ほとんど無理やり修理を承諾させたしな。パソコン一式
    押しつけられて運んで行ったコンピ研部員のあの表情はしばらく
    記憶に残るぞ」
古泉「あちらで長門さんが直してくれるそうですから、じきに戻ってくるでしょう」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 22:34:53.58 ID:jYINSS8u0

数十分後…
キョン「お前は相変わらずこういったボードゲームは弱いな」
古泉「いやはや、これでもそれなりに研究してはいるのですが…」
ガチャ
キョン「お、パソコンが戻ってきたぞ。修理が済んだらしいな」
古泉「長門さんも一緒ですか」
スタスタ……ストン
長門「………」スッ
キョン「来た途端に読書開始か」
??「ここに置いていいかな」
キョン「あ、ああ(ん?さっきの奴とは違うな。馴れ馴れしい口調だが、
   嫌味もない。こんな奴、コンピ研にいたか?)」
??「部員が一人、体調を崩していて…。今だけ手伝っているんだ」
キョン「へぇ…あ、コンセントとかケーブルの接続は……」
??「俺がやるよ」
古泉「これは助かりますね」
キョン「ああ」
カチャカチャ…

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 22:38:51.53 ID:jYINSS8u0

キョン(とは言っても、見ているだけじゃ、文字通り手持無沙汰だな)
キョン「いつもこんな手伝いをやっているのか?」
??「本当は、調査をするのが」
キョン(調査…?何の調査だ?パソコンが壊れていないか、いちいち調査して
    回っているってことか?)
キョン「調査?」
??「答えは決まっているのに、わざわざ調査をすることほど、面倒なことはない」
キョン(なんだ、愚痴か?しかし変な奴だな)
古泉「………」
長門「………」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 22:44:06.31 ID:jYINSS8u0

キョン(顔はまあ、俺が言うのもなんだが、なかなかに整った顔立ちだ。
    鋭敏というか、クールな感じがする。コンピ研なんかには勿体ないな)
ぶるっ………
キョン「?」
古泉「どうしました?」
キョン「いや…、風邪かな?突然、なんだか肌寒く感じた」
キョン(鳥肌が立ってやがる。そんなにこの部屋寒いか?)
??「じゃあ、これで」
キョン「ああ、どうも」
??「今回は、あんまり調査の時間が割けなくて、自分としては納得がいかない」
キョン「? パソコンの調査のことか?あんた、名前は?」
??「千葉、というんだ」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 22:48:03.69 ID:jYINSS8u0

スタスタスタ……ガチャ…バタン

キョン「随分背筋の伸びた奴だったな。何年なのか聞くの忘れたが。後で
    誰かに聞いてみるか」
長門「………」
キョン「どうした?長門。お前も、あいつが気になるのか?」
長門「……別に」
キョン「………?」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:08:07.98 ID:jYINSS8u0

ガチャ
ハルヒ「は〜ぁ、やっぱりダメね。不思議なんて、そうそう簡単には見つから
    ないわ」
キョン「さっき俺をバカ呼ばわりしておいて、結局不思議探しをしてきたのか」
ハルヒ「不思議探しはついでよ、ついで。あくまで、校舎内を散歩してきたの」
キョン「やれやれ、そうかい…」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:17:13.27 ID:jYINSS8u0

ハルヒ「あ、パソコン直ってきたのね!どれどれ…」
古泉「さて、もうひと勝負どうです?」
キョン「ふん、何度でも返り討ちにしてやるさ」
みくる「お茶のお代わり、置いておきますね〜」
長門「………」ペラッ

キョン(なんか、こうしてると、昨日のことが嘘みたいだな)

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:24:31.77 ID:jYINSS8u0

長門「」パタン
ハルヒ「あら、もうこんな時間ね。よし、じゃあ今日はもう解散!」
キョン「結局、あれから一回も俺に勝てなかったな」
古泉「明日こそは、負けませんよ」
ハルヒ「ほら、二人とも!みくるちゃんが着替えるから、さっさと出なさい」

キョン「おい、ハルヒ。お前の親が迎えに来てるぞ」
ハルヒ「あ、いっけない!じゃ、みくるちゃん!戸締りよろしくね」
みくる「は〜い」

キョン「おいおい、まだ降ってるぜ」
古泉「今朝からずっとですね」
キョン「こんなに降られると、頭にカビが生えそうだ」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:29:07.27 ID:jYINSS8u0

長門「………」ツンツン
キョン「ん?長門……どうした?」
長門「これから、時間はある?」
キョン「ああ、今日はまだそんなに遅くないしな。どうかしたか?」
長門「これから一緒に来てほしい」
キョン「…ハルヒ絡みか?それとも、あの事件絡みか?」
長門「どちらとも言える?詳しくは、私の部屋で話す」

長門のマンション…
キョン(相変わらず、デカいマンションだ)
ガチャッ
長門「入って…」
キョン「ああ」

朝倉「あら、長門さん。お帰りなさい」

キョン「!!?」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:35:48.80 ID:jYINSS8u0

朝倉「あら、キョン君。いらっしゃい」
キョン「あ、あ、あさ、あさk……」
朝倉「ちょっとぉ!挨拶ぐらいしたらどうなの?訪ねてきておいて」
キョン「お、お前がなぜここに……?」
朝倉「幽霊を見るような目はやめてよ。ちょっと傷付くんだけど…」
長門「彼女は紛れもない朝倉涼子本人。詳しくは中で話す」


朝倉「…というわけで、長門さん一人ではこの先不安だということもあって、
   特別に私が再構築されたというワケ。分かった?」
キョン「分かったような、分からないような…」
長門「彼女の力は以前に比べて格段に下がっている。暴走する危険性も無い。信じて」
キョン「まあ、長門がそう言うなら、大丈夫か…」
朝倉「ひどぉい。私が言っても信じないのに、長門さんが言うことは信じるの?」
キョン「俺は過去二回もお前に襲われているからな、信じろと言う方が酷だろう。
    おまけに、俺はつい昨日ナイフを持った殺し屋に殺されかかっているんだ」

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:41:47.75 ID:jYINSS8u0

朝倉「過去二回って言っても、二回目のは厳密にはこの私とは別人でしょ?」
キョン「そりゃあそうだが…」
長門「本題はまだ先。続けても?」
キョン「ああ、すまん。続けてくれ」
長門「情報統合思念体は、事態を重く見ている。涼宮ハルヒにとっての鍵である
   貴方の身に危険が迫っていることと、涼宮ハルヒの力が弱まっていること。
   そこで、朝倉涼子には貴方の護衛を任せることにした」
キョン「朝倉が、俺を…護衛?」
朝倉「そうよ。以前に比べればパワーダウンしてるけど、それでも普通の人間に
   比べれば、私の力はずっと上なの。だから、貴方の身辺警護をすることに
   したってわけ」

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:48:20.50 ID:jYINSS8u0

長門「既に情報操作で、カナダから日本に戻ってきたということになっている。
   彼女が貴方のクラスに戻っても、誰も違和感を抱かない」
朝倉「私がキョン君を直接護衛して、その間に長門さんが、敵の正体を探る。
   他の人たちも独自に調査を続けているんでしょ?だったら、いずれは
   敵の姿が見えてくるわ。貴方を襲った殺し屋の雇い主もね」
キョン「宇宙人の護衛か…。そりゃあ、確かに心強いが、信用していいんだろうな」
長門「問題無い。私が責任を持つ」
朝倉「どう?まだ何か文句がある?」
キョン「…いいや、分かった。任せるさ」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/28(土) 23:56:40.62 ID:jYINSS8u0

某アパートにて…

ブルルルルルル………
 ブルルルルルル………

ブルルルピッ

「おい、仕事が入ったぞ!さっさと事務所に来い!」
のそっ…
「………なんだよバカ、うるっせェなぁ…殺すぞ」

「ははは、『殺すぞ』か…。人殺しが口にすると、洒落にならねェ台詞だよな」

               「蝉」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:03:41.65 ID:09IjwnMZ0

蝉「仕事だぁ?岩西、お前、さっき一仕事終えたばかりの人間に、またすぐ
  仕事を頼むってのは、どういう神経なんだっつうの!」
岩西「うるせェなお前は。ホント蝉みてェに!みんみんうるせェ!!」

岩西「言うなればな、俺が司令官で、お前が兵士だ。普通ならそんな口利く
   家来はなぁ、首を切られて無職になるか、首を斬られて首なし死体に
   なるかどっちかなんだよ!」
蝉「だったらさっさとそうすればいいだろ!できねェくせに!!」
岩西「蝉」

「お前に仕事を斡旋してるのは俺なんだぜ?」

蝉「俺一人だってどうにかなる!!」
岩西「いいや、ならねェ」

 「なるもんか」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:09:05.57 ID:09IjwnMZ0

蝉「……誰を殺るんだ?」
岩西「それを説明するから、さっさと来いって言ってるんだ」
蝉「チッ…」チラッ

 しじみ「ぷく…ぷく…ぷく……」

蝉「………」
岩西「分かったな?とにかく今から事務所に来い!!詳しい話はそれからだ!」
蝉「!」
岩西「どうせお前、大したことしてたわけじゃねぇんだろ?アパートでテレビ
   観てただけだろうが」
蝉「しじみだ」
岩西「あ?」
蝉「しじみを見てたんだ」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:11:58.94 ID:09IjwnMZ0

岩西「しじみにチャンネルがあるのかよ!お前の明日のメシのことはどうでもいい」
蝉「むっ、うるせぇよバカ!」
岩西「1時までにこっちに来いよ、いいな!」ガチャン!
蝉「チッ……」

蝉「1時……あと四十分ぐらいか」

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:17:19.22 ID:09IjwnMZ0

蝉は、ときどき思う。
人もしじみみたいに呼吸しているのが見て取れれば、
もう少し生きている実感があるんじゃねぇかな、と。
行き交う人が口からぷくぷくと呼吸を見せていたら
暴力もふるいにくいだろうな、と。
蝉(絶対そうだ)
でも―――

でも、俺はそのしじみを食っちまうけど。

ちゃんと息をして生きてるあいつらを
俺はいつか殺して食って生きるんだ

蝉(それってすげえ重要なことじゃねえかな。そういうのを、もっと誰もが
  自覚すりゃいいのにな…)

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:20:31.39 ID:09IjwnMZ0

岩西「よぉ。時間通りだな、蝉」
蝉「………」
岩西「ジャック・クリスピン曰く、『時間を守れば身を守る』だ」
蝉「ケッ…くっだらねぇ!!」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:26:08.27 ID:09IjwnMZ0

蝉「それで?今度は誰を殺すんだ。また途中でキャンセルなんてことになったら、
  承知しねぇからな」
岩西「当たり前だ。俺だってそうそうそんなくだらない依頼ばかり請けてられるか」
蝉「……なんだよ、また女じゃねえか。なあ岩西、どうして俺がやる仕事ってのは、
  こんなのばっかりなんだよ。女子供とか、一家ごと殺すだとかさ。面倒なんだぜ。
  今日だって、最後に殺した女がうだうだうるさくて、たまらなかった」
岩西「他の奴らが嫌がるからだよ」
蝉「嫌がる?」
岩西「罪の無い女とか、子供を殺すのを、嫌がるんだよ」
蝉「はあ?」

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:30:37.56 ID:09IjwnMZ0

蝉「何で、子供が殺せねえんだよ?子供だって、いずれは大人になるんだぜ?
  何歳なら、殺していいんだ?犬とか猫を殺すのを嫌がるのならまだ分かる
  けどよ、人なんて年齢とか性別に関係なく、人だ」
岩西「だろ。おまえはそういうの、気にしねえだろ。だから、引き受けるんだよ。
   俺たちみてえな、小さな業者ってのはよ、そうやって、他の奴らがやらねえ
   仕事を請け負っていくしかねえんだよ。つまり、あれだ、『隙間を探せ』
   ってやつだ」
蝉(どうせ、それも引用だろ)
蝉「おまえは楽でいいよな。何もやらねえんだから」
岩西「鵜飼いってのは、鵜じゃなくて、飼っている方が偉いんだ」
蝉「俺は鵜じゃなくて蝉だっての」
岩西「うるせえな」
蝉「うるせえさ、蝉だからな」

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:40:58.55 ID:09IjwnMZ0

蝉「しかし、この女、見覚えがあるな…」
岩西「どうせ、あのポルノ雑誌屋で見た奴のどれかだろうよ」
蝉「ちげェよ!!そんなんじゃねぇ、もっと別の場所でだ」
岩西「なんでもいい。仕事の手順だ、さっさと頭にたたき込め」
蝉「………」
岩西「それほど面倒でもないだろ?依頼主の奴が、標的をマンションの
   ロビーに誘い出す。そのまま部屋まで同行して、部屋の中で
   刺し殺せばいい」
蝉「やっぱりこいつ、どこかで見たことがあるな…」
岩西「まだ言ってんのか?お前に高校生の知り合いなんていねェだろうが」
蝉「なんて読むんだ、これ?『ながもん』か?」
岩西「バカ。『ながと』だよ、『ながと』。山口県の半分の旧国名と一緒だ」

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 00:45:12.13 ID:09IjwnMZ0

とりあえず今日はここまでで寝ることにします。
明日まで残っててくれるといいけど…。
こんな駄文スレにここまでお付き合いいただいた方々、本当に感謝してます。
まだ殺し屋が蝉しか登場していないので、まだまだ続けたいです。
誰か一人でも呼んでくれる人がいれば、頑張って続けようと思います。

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 09:22:56.76 ID:09IjwnMZ0

お待たせしてすみません。それでは、続けていきます。

蝉「それで?その『ながと』さんはなんで俺に殺されるんだ?」
岩西「そんなことはお前は知らなくていいんだよ。いいからさっさと仕事に行け。
   ジャック・クリスピンも言ってるだろうが、『s」
蝉「あーあー分かった分かった!!クリスピンはもういいっつうの!行きゃあいいんだろ!」
岩西「おい、蝉」
蝉「なんだよ、まだ何かあんのか!?」
岩西「土産を忘れんなよ」
蝉「………分かってるっつうの」

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 09:29:41.59 ID:09IjwnMZ0

時は戻って長門のマンション…
長門「貴方は普段通りにしていればいい。特に気にする必要はない」
朝倉「そうよ。面倒なことは私たちがやるから、心配しないで」
キョン「ああ。他の奴らには説明してあるのか?」
長門「古泉一樹、朝比奈みくるに対しては、私の方から連絡をしておく。
   涼宮ハルヒは明日の朝礼で説明を受けるはず。なので問題ない」
朝倉「キョン君の場合は、直接呼んで説明した方が分かりやすいかと思ってね」
キョン「まあ、確かにな。話に聞くだけよりは、目で見た相手の方が信用できる」
朝倉「それじゃあ、また明日ね」

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 09:31:24.93 ID:09IjwnMZ0

ザアアアアアアア………
キョン「この雨が降り止むことが本当にあるのか心配になってきたな…」

キョン「さて。さっさと帰るとするか」


??「………」

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 09:45:05.26 ID:09IjwnMZ0

キョン「ただいま」
妹「お帰り―!」
キョン「こらこら、いきなり抱きつくんじゃありません」
妹「えへへー」
キョン「部屋に鞄置いてくるから、先に行ってろよ」
妹「すぐご飯だからねー」
キョン「あいよ」

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 09:49:56.75 ID:09IjwnMZ0

夕食後…
キョン「今日はどうやら平和に終えられそうだな。これで空が晴れてれば
    言うことは無いんだが…」

ブルルルルルル……

キョン「ん?携帯……誰からだ?」
キョン「着信は…佐々木?」ピッ
キョン「もしもし」
佐々木「やあ、キョン。夕食の時間帯に悪いね」
キョン「いや、もう済ませたところだ」
佐々木「それは丁度良かった。実は一つ頼みがあるんだが」
キョン「頼み?なんだ、何かあったのか?」
佐々木「雨天の中君を家から出させなければならないことは心が痛むけれどね。
    今、君に会って話さなければならないことがあるんだ」
キョン「? ああ、分かった」
佐々木「悪いね。実は僕、今、君の家の前にいるんだ」
キョン「何?おいおい、早く言えよ。雨の中だってのに」
佐々木「心配無いよ。傘もあるし、何人か連れがいるんだ」

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 09:53:59.25 ID:09IjwnMZ0

佐々木「君の家にあがらせてもらうのは、時間も時間だし気が引ける。
    駅前の喫茶店なんて、どうだろう?」
キョン「ああ、別にいいぞ。少し、待っててくれ」ピッ

キョン「ちょっと外出てくる」
母「こんな時間に?外は雨降ってるわよ!」
キョン「すぐ戻る。仲間が外で呼んでるんだ」

ガチャ
キョン「悪いな、待たせ……」
橘「お久しぶりですね、キョンさん」
藤原「ふっくっく…。久しぶりだな」
周防「―――」
キョン「お前ら……おい、佐々木、一体」
佐々木「驚かせてすまないね。事情はすぐに説明するよ。実は――車を用意して
    もらっている」

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 09:59:03.47 ID:09IjwnMZ0

喫茶店にて…
キョン「佐々木。話ってのは、こいつらがいなければダメなのか?」
佐々木「君が彼女たちをあまりよく思っていないことも十分承知している。
    その上で呼んだんだ」
橘「そう邪険にしなくてもいいじゃないですか。別にあなたに何かしようなんて
  思ってはいませんよ」
キョン「どうだかな。俺はお前らのやったことを忘れるつもりは無いぞ。この誘拐犯め!」
橘「………」
キョン「よくまあふんぞり返って道の真ん中を歩けるもんだな。お前は犯罪者だぞ?
    社会的には、お前の顔には犯罪者のレッテルが貼られているんだ!その上、
    佐々木を神呼ばわりして…」
佐々木「まあまあ、キョン。その話は、また後にしようじゃないか。今日は、そういう
    話で呼んだんじゃないんだ」
キョン「………」

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:06:35.37 ID:09IjwnMZ0

橘「キョンさん、近頃、危ない人に襲われたりしませんでしたか?」
キョン「!? なっ……」
佐々木「昨日電話をした時、君はナイフを持った不審な人物に襲われた直後
    だったんだろう?橘さんから聞いたんだ」
キョン「おい、なんでそれを知ってる?」
橘「我々の組織の力を甘く見てもらっては困るのです。これでも、優秀な情報網が
  張られているんですよ」
藤原「ふっくっく。この時代も物騒なものだな」
キョン「……それで、俺に何が言いたいんだ?」
佐々木「キョン、落ち着いて聞いてほしいんだ」

橘「涼宮さんと貴方を襲った殺し屋を雇ったのは、古泉君の所属する、
  機関の方々です」

キョン「……何?聞き間違えたかもしれない。もう一度言ってみろ」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:11:55.10 ID:09IjwnMZ0

佐々木「キョン。君の耳はそんなに悪くないはずだ。勿論、いきなり言われた
    ことを信じたくない気持は分かるが…」
キョン「もう一度、言ってみろ。俺は今そう言った。おい、橘」
橘「……貴方と涼宮さんに殺し屋を仕向けたのは、古泉君の所属する機関だと
  言ったんです」
キョン「あ〜……、新手の冗談か?今、お前のところの情報網は凄いということを
    言ったばかりだよな。お前ら全員、一度目と耳の検査をしてもらった方が
    いい。それと、頭もな。あまり寝ぼけた事ばかり言ってると…」
橘「キョンさん、落ち着いてください。言ってることが混乱してますよ」
キョン「おかしいのはお前らの方だ。古泉が俺に殺し屋をけしかけただと?」
橘「正確には、彼の所属する『機関』が、です」

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:16:42.93 ID:09IjwnMZ0

キョン「いよいよおかしくなっちまったのか?機関はハルヒを護るのが仕事
    だろうが。そのための集まりだ。それがハルヒを殺すために殺し屋を
    雇って仕向けるだと?馬鹿か、お前。俺の妹にだって、説明すれば
    これくらい理解できるさ。『ありえない』し『笑えない』。今、お前の
    言った冗談は十点中零点だ。あるいはもっと酷い。採点基準に達してないな」
佐々木「キョン。僕はさっき言ったはずだ」

「落ち着いて聞いてほしいんだ」

キョン「………」
橘「勿論、信じられなくて当然です。あちらも巧妙に仕掛けていますからね」

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:21:52.18 ID:09IjwnMZ0

キョン「仕掛ける?」
橘「キョンさん。考えてみてください。機関で働いている人々も、人間なんです。
  正規の労働ではない上に、命の危険まで伴うあの閉鎖空間での仕事。会社員
  と違って、労働時間がきっちり決まっているわけでもありません。涼宮さんの
  機嫌次第で、労働内容が大きく変わるんです」
キョン「知ってるさ、そんなことは」
橘「なら、これも分かりますね。機関の方々だって、我慢の限界というものがある
  んです。たった一人の、我が儘な女子高生のために自分たちの生活も何もかも
  犠牲にして、時には仲間内から怪我人や死人が出ることだってあります。おまけ
  に個人の事情なんて機関の中では尊重されない。古泉君だって、いろいろと自分
  を犠牲にしていることがあるはずですよ」

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:28:51.29 ID:09IjwnMZ0

橘「なのに、涼宮さんときたら、どうです?命を張ってまで護る価値のある
  人ですか?」
キョン「!!」ガタッ
佐々木「キョン」ジロッ
キョン「………」
橘「自己中心的かつ傍若無人。常識にも欠け、社会的にも馴染めない人です。
  そんな女子高生のために、何人もの人間が自分を犠牲にしているんですよ。
  おまけに、タチの悪いことに彼女は自分の力を認識していない。だから誰も
  文句を言う矛先が無いんです。あんな人を神と呼べますか?自分の気分次第で、
  この世界も、すべての生き物も一瞬で消してしまい、自分の満足する世界にだけ
  籠もって生きるような人を、本当に神と呼んでいいんですか?」
キョン「う………」
橘「機関の方々の中にも、薄々それに気づいていた人たちがいたはずです。なぜこんな
  辛い思いをしてまであんな女子高生のために自分を犠牲にしなければならないのか。
  勿論、憎むべきは『力』であって、彼女自身ではない、と考える人だっていたでしょう。
  けど、そんなことは綺麗事なのです。彼女は、世界を統べることができるような器じゃ
  ない」

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:37:52.22 ID:09IjwnMZ0

キョン「だから……、殺し屋を雇ったと?」
橘「裏の世界のプロとあれば、お金さえ出せば詳しい事情を話さずとも
  引き受けてくれるところだってあるんですよ。まあ、そんな相手に
  頼まずとも、はした金で人を殺す人なんて、世の中にゴロゴロいます
  けどね」
キョン「………」
橘「機関の方々は、ついに立ち上がったのです。神の紛い物を始末すべきで
  あることに、ようやく気付いたのです!だから、殺し屋を雇って、彼女を
  殺させようとしたわけなのです」
藤原「既に聞いているかもしれないがな、涼宮ハルヒの『力』は、既にだいぶ
   弱まってきている」
橘「そうなのです。彼女の力は次第に弱まっています。だから、やるなら今のうちが
  一番良いのです。最近は大規模な閉鎖空間も発生していないそうじゃありませんか」
キョン「………」
橘「『世界の災厄の、諸悪の根源は涼宮ハルヒ』。機関の方々の考えは、そういった結論
  に帰結したのでしょう。結果、涼宮さんは殺し屋に狙われた。しかし、途中で妨害が
  入ったのです」
キョン「長門か……」
橘「はい、彼女もそうですが、何より、貴方の存在ですよ、キョン君」
キョン「俺?」

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:42:35.51 ID:09IjwnMZ0

佐々木「君は、身を挺して涼宮さんを庇ったそうじゃないか」
橘「そう。それで機関の方々も冷静になったのでしょう。貴方は一般人です。
  巻き込んでしまっては大変ですからね。機関の方々にとっては、貴方も
  また涼宮さんの被害者。つまりは、『仲間』なんです」
橘「加えて、長門さんの出現で、機関の方々も慌てた。想定外の事態だった
  みたいですしね。それで、殺し屋への依頼はキャンセルされ、涼宮さんは
  事情も知らずに生き延びたというわけです」
佐々木「どうだい?僕も最初に聞いた時は信じられなかったが、よく考えてみると
    納得のいく話じゃないかな」
キョン「………」

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:48:45.38 ID:09IjwnMZ0

橘「今回の失敗がありますから、機関の方々もまたすぐ行動を起こすような
  ことは無いでしょう。しばらくは、また様子を見始めると思いますよ。
  キョンさん、分かったでしょう?涼宮さんに『力』を持たせておいても、
  何の得にもならないのです。むしろ、またこのような事件を引き起こす
  だけです」
キョン「…しかし、ハルヒの力は落ち着いてきてるんだろ?もう少し、様子を
    見れば、そのうち消えてなくなるかも知れないじゃないか」
藤原「ふっくっく……。その考え方が甘いんだよ。そんなに簡単にいくと
   思うか?」
キョン「なに?」
橘「キョンさん。弱まっているとはいえ、涼宮さんが『力』を持っていること
  に変わりは無いんです。突然暴走することだってあり得るわけです。悠長な
  ことを言っている余裕は、今の機関には無いんですよ」

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:53:54.61 ID:09IjwnMZ0

橘「スポンサーからの資金援助にも、限界があります。機関の方々だって、
  本業があるわけですし、自分の生活をこれ以上犠牲にしたくないんですよ。
  涼宮さんの力がこのまま消えてなくなる保証もありません。また強まって
  しまったら、以前のように、彼女がストレスを感じるたびに神人との戦い
  に駆り出される」
藤原「そのためには、力が弱まっている今が、最大のチャンスだということだ」
キョン「……ウソだろ?だからって……」
橘「勿論ですよ、キョンさん。だからと言って、涼宮さんを殺していいという
  道理はありません。涼宮さんだって、『力』が無ければただの人間です。
  彼女を殺すことは、法的にも、倫理的にも許されることではないのです」

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 10:57:42.91 ID:09IjwnMZ0

佐々木「キョン。前に言っただろ?僕は君を親友として認識している。
    親友にとって大事な人間が、命の危険に曝されているのに、みすみす
    見殺す真似を僕はしたくない。いや、絶対にそんなことはさせないよ」
キョン「佐々木…」
橘「キョンさん。本当なら、今ここで、涼宮さんの『力』を佐々木さんに譲渡する
  話を承知してもらいたいのですが、今はその話はよしましょう。とにかく、
  涼宮さんの安全の確保が大事です。我々も協力します。機関の方々を、誤った
  方向へ進ませてはいけないのです」
キョン「………」

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:05:28.74 ID:09IjwnMZ0

橘「もっとも、いきなりの話ですから、混乱することも多いでしょう。今日は
  もう遅いですし、また後日にしましょう。よく考えておいてください。
  我々を信用して涼宮さんを助けるか、機関の方々を信用して、最悪の結果を
  見るか、どちらかですよ、キョンさん。選ばなければならない時が、必ず
  来ます」
キョン「………ああ」
佐々木「こんな時間に呼び出して、すまなかったね。家まで送ってもらおう」
キョン「そうだな。……ん?」
佐々木「?」

キョン「あれは…間違いない。千葉さん!」
橘「へ?」

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:08:57.06 ID:09IjwnMZ0


千葉「………」
キョン「奇遇だな。こんなところで会うなんて」
橘「し、知り合いの方ですか?」
キョン「ああ、北高の…あ、何年生でしたっけ」
千葉「三年だ」
キョン「あ、やっぱり。すいません、部室でタメ口利いて…」
千葉「気にしなくていい」

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:11:53.69 ID:09IjwnMZ0

千葉「そっちは、君の友人か?」
キョン「あ、はい」
佐々木「は、初めまして。佐々木と言います。彼とは、中学の時の友達で…」
千葉「………」じっ
佐々木「!!」ドキッ
千葉「……そうか。まあ、あまり夜遅くまで、家の外にいない方がいい。
   校則で、決まっているんだろう?」
佐々木「あ、はい。すみません」
キョン「千葉さん、こんな所で何を?」
千葉「ミュージック…」
キョン「へ?」

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:17:25.67 ID:09IjwnMZ0

千葉「この店の中で流れているミュージックを聴きに来たんだ」
キョン「は……はぁ(ミュージック……)」
千葉「………」
周防「―――!!」ぞくっ
千葉「………」
キョン「なんか…、急に寒くなりましたね。冷房ついてるわけでもないだろうに…」
佐々木「き、キョン!その人の言うとおり、あまり遅くならない方が…」
キョン「あ、ああ。そうだな。じゃあ、千葉さん。また今度」
千葉「ああ」

周防「―――」
橘「九曜さん…?どうかしたんですか?」
周防「何でも――ない――」ビクビクッ
橘「………?」

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:22:35.07 ID:09IjwnMZ0

キョン宅前にて…
佐々木「まだ雨がやまないね…」
キョン「ああ、しつこいくらい降り続けだ」
佐々木「それじゃあ、気をつけて」
キョン「気をつけるも何も、玄関の前だろうが。何を気をつけるんだ」
佐々木「そういうことじゃないよ。さっきの話さ」
キョン「……ああ。まあ、俺はお前のことは信用しているからな。お前が
    橘の話を信用するなら、まあ、俺も考えておくさ」
佐々木「君からそういう言葉を聞けると、僕としても嬉しいよ。それじゃ」

ガロォォン(ワゴン車のドアを閉める音)
ブオォォォォォン…………

キョン「………」
ガチャ
キョン「…ただいま」
妹「あ、キョンくん、どこ行ってたの?」
キョン「…大した所じゃないさ」
妹「ふーん」

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:28:48.04 ID:09IjwnMZ0

時刻 24:10…
キョン(寝付けねえな…当然か。あんな話を聞いた後だ)

――涼宮さんと貴方を襲った殺し屋を雇ったのは、古泉君の所属する、機関の方々です――

キョン(橘は今一つ信用できないところがあるが、しかしあいつの話も、
    まんざら出鱈目には聞こえなかった。何より、あの佐々木が信用
    している)

――ふっくっく……。その考え方が甘いんだよ――

キョン(ちっ……あの暗黒微笑の未来人め。言いたいようにいいやがって…)

キョン(……………)

キョン(古泉は、あの笑顔の下に、何を考えているんだろうな…。今日ほど、
    人の心が読めるようになりたいと思ったことはないぜ)

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:40:33.09 ID:09IjwnMZ0

同時刻、ハルヒ宅…
ハルヒ「あ、そう言えば、日曜日の不思議探索の予定、皆に言っとくの忘れてたわ」

ハルヒ「あたしってばドジねぇ…。今からメールしようかしら。キョンとか絶対
    寝てるわよね…。まあ、いっか。メールなら明日の朝でも気づくでしょうし」
ハルヒ「ふんふ〜ん……」

窓の外にて…
??「蜂…蜂…とんで来た…頭の用心…御用心……下駄ぬいで投げろ」
??「…投げても駄目だ…頭の用心……御用心………」

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:44:40.55 ID:09IjwnMZ0

時刻 24:52…
蝉「ふぅ…八分前か。充分だろ」
??「蝉さん…ですか?」
蝉「ん?ああ、あんたが依頼人か。相手はどこだ?」
??「じきに下りてきますよ。よろしくお願いしますね」

橘「手筈は整っていますから」

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:50:08.44 ID:09IjwnMZ0

同時刻、機関所有のビル内にて…
森「古泉、遅くまで手伝わせて、悪かったわね」
古泉「いえ、気にしないでください。以前に比べれば、ずっと楽になりましたしね」
森「ええ。涼宮さんの『力』がこのまま静かに沈静化の一途を辿ってくれれば、
  これからはもっと楽になるでしょうね」
古泉「ふふ。そのためにも、彼にはもう少し頑張ってもらいたいところですが」
森「クスッ。そうね」

新川「仕事は片付きましたか?」
古泉「はい。もうじき終わります」
新川「私は、先に失礼させていただきますが、よろしいですかな?」
古泉「はい。新川さんも、お疲れ様です」

191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 11:54:05.64 ID:09IjwnMZ0

新川「それでは、くれぐれも無理はなさらないように…」
ガチャッ、バタン
カツカツカツ
新川(おっと、荷物を取りに行かねば…)
カツカツカツ
ガチャッ
??「」ペラッ
新川「!」
??「」パラッ

ザアアアアアアアア………

新川「……どなたでございますかな?」
??「………」パタンッ

         『罪と罰』

194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:00:32.52 ID:09IjwnMZ0

さる食らってしまいました…

??「」ガタッ
新川「!?」ザッ

??「………」すた…すた…すた…

         『人は誰でも死にたがっている。』

新川「あ、貴方は一体…!?誰なのですか!!?」
??「……………」

            「鯨」

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:06:20.44 ID:09IjwnMZ0

時刻 01:00…
橘「あ、エレベーターが動いてますね。多分、そこから来ると思いますよ」
蝉「なんでもいいさ。さっさと終わらせてえんだ」
橘「焦りは禁物ですよ♪何事にもね……」

チーン………

橘「さあ、着いたみたいですよ」

ガーーッ……

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:17:23.64 ID:09IjwnMZ0

戻りました。続けます。

朝倉「あら、待たせてしまったみたいね。ごめんなさい」

橘「………は?」
蝉「………?」

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:21:10.59 ID:09IjwnMZ0

朝倉「あ、自己紹介が遅れたわね。私は朝倉涼子。長門さんの友達よ。
   橘さん、だったわね。長門さんなら部屋で待ってるわ。行きましょ?」
橘「え、あっ!そうなんですか。すいません、ビックリしちゃって…」
橘(え、何?誰ですか、この人…!?なんで長門さん本人が来ないんですか?
  非常識にもホドがあるでしょ!人を使って呼びに来させるなんて、何を
  考えているんですか!?これじゃあ計画に支障が出るじゃないですか…)
蝉「おい、呼ばれてんじゃねぇか。行くぞ」トンッ
橘「へっ?あ、はい!すみません」

朝倉「………」ニコッ

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:25:45.00 ID:09IjwnMZ0

エレベーター『ドアが閉まります……』

橘(マズいですね…。エレベーターの中じゃあ、こっそり打ち合わせなんか
  できそうにないじゃないですか。困りました…。まあ、私がこっそり
  この人を部屋の外に呼び出して、その間にこの殺し屋さんに部屋の中で
  長門さんを片付けてもらえばいいんですが、しかしこの殺し屋さん、
  あんまり頭良さそうじゃないし…。私の考えを読んでくれるかどうか…)
蝉「………」
朝倉「どうしたの?橘さん。何か、考え込んでいるみたいだけど…」
橘「ひぇっ!?あ、いえいえっ!なんでもないですよぉ」
朝倉「そう?それならいいけど」ニコッ
橘「あははぁ……(笑顔怖ッ!なに、この人…)」

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:30:02.45 ID:09IjwnMZ0

チーン………
朝倉「さ、着いたわよ。行きましょ」
橘「はい……」
蝉「………」
スタスタスタ……

朝倉「この部屋よ」ガチャッ
橘「あ、じゃあ、お邪魔しま〜す…」
蝉「………」

橘「……き、綺麗な部屋ですね(というより何も置いてませんね)」
朝倉「長門さんって、あんまり物を置かないみたいなの。だから、必要最低限
   の物しか置いてないのよ。変わってるでしょ?」
橘「あ、はは……そうですね。ところで、その長門さんは?」
朝倉「うん、居ないわよ」ニコッ

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:33:01.44 ID:09IjwnMZ0

橘「………はい?」
朝倉「長門さんは、ここには居ないわ。今、出掛けてるの。いつ戻るかは、未定」
橘「えっ、え……ど、どういうk」
朝倉「もうそろそろ本音を出してもいいんじゃない?わざわざ、人目に着かない
   部屋の中にまで案内してあげたんだから」
蝉「へっ……分かってやがったのか」
橘「なっ…な……」
朝倉「勿論、分かっていたわ。貴方の正体も知っているわよ、橘さん」ニコッ
橘「!!」ビクッ

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:36:46.82 ID:09IjwnMZ0

朝倉「随分と甘く見られたものね。確かに、長門さんは以前に比べて弱体化
   しているし、貴方は知らないかもしれないけど、私も再生された今は
   最初に比べて随分力が落ちてる。けどね……」

朝倉「ただの人間相手に後れをとるほど弱ってはいないわよ?」スッ

橘「ちょ、ちょっと待ってください!落ち着きましょうよ、ね?と、とりあえず
  そのナイフをこっちに向けるのやめてくださいよ」
蝉「お前がまず落ちつけよ。つまり何か?俺の仕事の相手はここには居なくて、
  俺たちは最初からこうなるように仕向けられていたってことか?」
朝倉「そういうこと♪物分かりが良くて助かるわ」

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 12:42:29.41 ID:09IjwnMZ0

朝倉「貴方達が何をたくらんでいるのかは知らないけど、大体想像はつくわね。
   キョン君を呼び出して、いろいろ吹き込んだみたいじゃない。知ってるのよ?」
橘「な、なんで……?」
朝倉「ある人に頼んで、『調査』してもらったの。その人、というより人じゃないけど、
   彼は電波に乗った会話を聞き取ったり、いろいろと便利な力を持っていてね?
   貴方達が妙なまねをしようとしていることを長門さんが察知して、彼を監視に
   つけてくれたのよ」
橘「」

マンション前にて…
『どうだ?』
千葉「可、だな」
『そうか』
千葉「ちゃんと調査をした結果だ」
『みんな、そう言うよ』

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:01:49.49 ID:09IjwnMZ0

さるさん

朝倉「もう説明はいいでしょ?じゃ、そういうことだから」

       「死んで♪」ヒュッ

ガギインッ!!
朝倉「!!」
蝉「………よく分からねぇが、お前、俺を騙しやがったのか?」ギギギ…
橘「ひぃっ……!!ち、違いますよ!!わ、私だって、こんな…」
朝倉「貴方もナイフを持ってたの…」パッ
蝉「………」ザッ

215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:06:23.17 ID:09IjwnMZ0

ひゅおっ   ガギイィィンッ!!

蝉「俺とナイフでやり合うのかよ…、お前、強いのか?」ギギギギ……
朝倉「さあ、どうでしょうね…。試してみたいの?」
ダダッ
蝉「んん?」
橘「ハア、ハア……!」

蝉「おい」
橘「!」ビクッ

ボゴオォッ!

橘「ぶへっ!!」ズザザーッ

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:09:19.79 ID:09IjwnMZ0

蝉「残念だったな。逃がすかよ」
橘「あっ、あうっ……うぅ…」
蝉「素手で殴ったのは手加減したわけじゃねぇ。歩幅がそうだったんだ。
  わかってんだろうな?」
橘「ひぃっ!」
蝉「自分だけ逃げようなんて、ムシが良すぎんだろ。説明してもらわねぇとな」

220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:14:33.73 ID:09IjwnMZ0

朝倉「あら?説明なら、さっきした通りよ」
蝉「そうじゃねぇ。俺は1時までにここに来るように言われて、それで『ながと』という
  名の奴を殺すように言われて来た。しかし、そいつはここに居なくて、俺は今、無駄
  働きをさせられてる。依頼内容に嘘を混ぜられちゃ困るんだよな。ったく、これだから
  岩西の奴は信用できねぇんだ。何がジャック・クリスピンだよ。マトモな依頼の一つ
  でも持ってきやがれってんだ」
朝倉「その話、全部聞かなきゃ駄目?」
橘「い、依頼追加です!!お金なら払いますから、そ、その人も殺してください!早く!!」

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:17:14.40 ID:09IjwnMZ0

朝倉「あら、怖いこと言うのね。お仕置きが必要かしら…」
蝉「正式な依頼なら一応岩西を通してくれねェと困るんだがな…。ま、そうも言って
  られねぇか」
朝倉「面倒ね。情報操作で一度に壊しちゃおうかしら」
橘「………!」
朝倉「それじゃ、さよなら♪」

222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:20:27.77 ID:09IjwnMZ0

一同「……………」

朝倉「………あ、あら?」
蝉「なんだよ、何かやるつもりだったんじゃないのか?」
橘「………」ニヤッ
朝倉「…どういうこと?暴走の防止のために力は弱められているとはいえ、
   情報操作そのものは可能なはずなのに…」
蝉「なんだか知らねェが、何もしてこないなら」ヒュッ
朝倉「!!」
蝉「それまでだな」

ブシュッ………

224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:25:54.81 ID:09IjwnMZ0

朝倉「くっ………!」
蝉「素早いじゃねぇか」
朝倉「…なぜなの?情報操作ができない……」
橘「あはっ、あははっ!ざまァ見やがれなのです!」
朝倉「!?」
橘「我々が、貴方達を相手に、何も準備なしで乗り込んでくるとでも、
  思っていたのですか?九曜さん、出てきていいですよ」
周防「―――」スッ
朝倉「………!天蓋領域の…」
橘「あなたはねェ、もう情報操作は使えないんですよ。この部屋の中ではね。
  いざという時のために、九曜さんにバックアップをお願いしていたんです。
  情報操作が使えなくなるように、ね。おかげで、他の行動は全部制限されて
  しまったみたいで、そこから動けませんが」
朝倉「…弱ったわね。全然気付かなかったわ」

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:32:34.69 ID:09IjwnMZ0

橘「本当は、長門さんを真っ先に始末する予定だったんですが、その予定が
  全部狂っちゃいましたよ。貴方のおかげでね、朝倉さん。でも、いいです。
  貴方を先に殺して、後で長門さんも後を追わせてあげますよ。大体、どこに
  いるかは予想できますし。手は打ってあります」
朝倉「………」
橘「さあ、蝉さん。殺しちゃってください!」
蝉「話が見えねェが…まぁ、いいか」
朝倉「ふ…ふふ……」
橘「!?」
朝倉「その娘は、そこから動けないのね?だったら、同じじゃない。私の
   情報操作を妨害する代わりに、自分もそこから動けない。なら、簡単に
   殺せるじゃない。あっは、なんで気付かないのかしらね」
蝉「………」
朝倉「情報操作が使えなくても、貴方達なんて、私一人で十分よ」

226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:38:50.32 ID:09IjwnMZ0

時刻 01:00 機関所有のビル内にて…

新川「」ブラン ブラン……

鯨「………」
カツカツカツ…
鯨「……!」
藤原「ふっくっく…。便利な能力だな」
鯨「………」
藤原「僕はまだ仕事がある。その調子なら、任せておいても大丈夫そうだな。
   先に行かせてもらうぞ」
鯨「………ああ」
藤原「………」
カツカツカツ……

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 13:41:59.98 ID:09IjwnMZ0

鯨「………」
ガチャ
すたすたすた……

森「忘れ物は無いかしら…大丈夫そうね」
ガチャリ
森「あら、古泉かしら?先へ行ってていいわよ。すぐ行くから…」
バサッ
森「?」

カツン――ー

「好きに書け」
鯨「お前の遺書を」

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:02:39.88 ID:09IjwnMZ0

森「………だ」
ピルルルル……
森「!!」バッ、ピッ
古泉『森さん、どうしました?外で待っているのですが』
森「古泉!あなt…」
鯨「」すっ
森「!!」ビクッ
古泉『もしもし、森さ…』ピッ

鯨「飛び降りだ」

森「!」
鯨「お前は飛び降りて自殺するんだ」

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:06:38.73 ID:09IjwnMZ0

森「なっ!あなたまさか……殺し屋!?」
鯨「殺し屋?違うな。俺は、『自殺屋』と呼ばれている」カツッ

鯨「俺の両目を見ると、自分の中に抱えている罪悪感や無力感が増長して、
  生きていることを苦痛に感じると言われたことがある」

鯨「俺は自殺を強要する『能力』を持っているんだろう」

森「!!」ビクッ
鯨「さぁ」ぐっ

         「  俺  を  見  ろ  」

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:10:15.69 ID:09IjwnMZ0

きいぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいん――――ー

森「あっ……あぁぁ…………」ぶるぶるぶるぶる

鯨「そして……お前の不安を解放しろ…」

森「はっ……はっ……はぁっ……はぁっ……」ぶるぶるぶるぶる

鯨「心配事を消す方法は一つだ」

      「 お 前 が 、 死 ね ば い い … 」


233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:24:37.64 ID:09IjwnMZ0

時刻01:15 長門の部屋にて…
きいんっ  ガキッ  ギィンッ!!  ギャリイィイン!
蝉「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
朝倉「はっ…はぁっ…はぁっ…」
橘「うっ……」
朝倉「や……やるじゃない…人間のくせに……」
蝉「はっ、まるで、自分が人間じゃねェみてぇな言い方だな」
朝倉「ええ、そうよ?私は、人間じゃない…」
蝉「そうかよ」ヒュッ
ガキッ!!
橘「うぅっ…いつまでかかるんですか!?さっさと終わらせてくださいよ!
  プロなんでしょ?そんな女一人に、どれだけ時間かける気ですか!?」

235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:29:58.62 ID:09IjwnMZ0

蝉「うるせェな、お前も刺されてぇのか?」ジロッ
橘「ひっ!」ビクッ
朝倉「ほらほらっ、よそ見してていいわけ?」ひゅっ
蝉「うおっ」バッ
ビシュッ……
蝉「ちっ…」
朝倉「あははっ、上手に避けるじゃない」

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:34:55.72 ID:09IjwnMZ0

蝉(ナイフの振り方に無駄な動きが無ェな…扱いに慣れてやがる)
朝倉「情報操作が使えれば、動けなくして、じわじわと切り刻めるんだけどねェ」
蝉(けど、遅いな。見えすぎだって)
ひゅっ
サッ
朝倉「えっ………?」

蝉「終わりだな」

ドスッ

238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:41:32.80 ID:09IjwnMZ0

朝倉「ごぶっ………!」
ぱしゅっ
ドサッ
朝倉「う…嘘……?何コレ…?そんな……」
蝉「うるせェな、早く死ねよ」ヒュッ
朝倉「長門さ……ごm」
ブシュッ

蝉「……終わったぜ」
橘「は、はは、ははは!や、やったのです!これで、敵を一人、片付けたのです!
  あははははっ!」
周防「朝倉涼子――の―死亡を――確認――」スウッ
橘「あははっ!情報操作が使えなきゃあ、弱っちぃじゃないですか!あはははっ!
  九曜さん、やりましたよっ!お手柄です!!あっははははは」

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:46:23.46 ID:09IjwnMZ0

蝉「いつまで馬鹿みてぇに笑ってやがんだ。さっさと金を払えよ。仕事の追加分だ」
橘「まだですよ。もう一人、残っているじゃないですか。長門さんを殺してからでないと、
  報酬は払えないのです」
蝉「払えないのですってお前、馬鹿にしてんのか?」
橘「あなた、プロでしょ?」
蝉「……チッ」
橘「さあ、ほら、早く!長門さんを追うのです!手柄を横取りされちゃいますよ!」

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:53:31.26 ID:09IjwnMZ0

時刻 01:10 機関所有のビル、ロビーにて…
古泉(森さん、遅いですね。何かあったのでしょうか)
古泉「携帯で呼んでみるとしましょう」
プルルルルッ……ガチャッ
古泉「あ、もしもし森さん、どうしました?外で待っているのですが」
森『古泉!あなt…』
古泉「もしもし、森さ…」ブツッ
ツーツーツー……
古泉「もしや、森さんの身に何か…!」
カツカツカツ……

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 14:57:09.24 ID:09IjwnMZ0

古泉「エレベーターは、片方空いていますね」
エレベーター『ドアが閉まります』
ガーッ……

(隣のエレベーター到着)
ポーン
隣のエレベーター『一階です』
スウゥーッ……
カツカツカツ
藤原「さて、行くとするか」
カツカツカツ………

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:00:05.94 ID:09IjwnMZ0

古泉「上の階だと、流石に時間がかかりますね…」
古泉「………」

ひゅぅぅっ

古泉「?」
森「」
古泉「!!?」



ドチャッ

248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:04:51.06 ID:09IjwnMZ0

古泉「――――――!!!」

古泉「森―――さん――?」

古泉(今、窓の外を落ちて行ったのは。いや、そんな馬鹿な。そんな……。
   そんなことは、そんなことって……!そんな……)

ポーン
エレベーター『42階です』

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:18:37.75 ID:09IjwnMZ0

ガチャ
鯨「」
古泉「………」
鯨「!」

古泉「貴方ですか?森さんを突き落としたのは」
鯨「…………自殺だ」
古泉「…………ほぅ」
ヒュッ
鯨「!」
ザザッ
古泉「しらばっくれる必要はありませんよ。分かりますから。貴方の気配は
   まともじゃない。貴方、『殺し屋』ですね?」
鯨「………いいや、違う」

古泉「しらばっくれなくていいって言ってんだろ」

鯨「………」
古泉「ここなら、もう演技をする必要も無いからな」ギリッ……
ツカツカツカ

古泉「死んで詫びろよ」

鯨「………」

254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:33:14.77 ID:09IjwnMZ0

同時刻、周辺廃ビル内にて…
藤原「………」
??「見て来たわ」
藤原「………!む、そうか。ごくろ……!」
??「? 何?」
藤原「スズメバチ……下着をつけろ。殺し屋といえど、品位を疑われる行動は
   慎んでもらわないと困る。大体、お前は」
ガシッ
スズメバチ「あなたみたいな雑魚に『お前』なんて呼ばれると屈辱感で倒れそうよ…」
藤原「!!? あがぎぐが…や、やめろ!離せ!どこをつかんで…お、やめ…あぅっ!!」
バタッ
藤原「ぐぉぉ…くっそぉ〜!野蛮な現地人めェ……これだからこの時代の人間は…」

255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:40:23.93 ID:09IjwnMZ0

スズメバチ「涼宮ハルヒは家に居る。周囲に何人か警備と思しき人間がいたから、
      全員動けなくしてきたわ。でも、ギリギリ生かしておけなんて言われた
      から、ストレス溜まってるの。あなたでそれを晴らしたい気分なんだけど…」
藤原「……冗談はやめろ。それより、用意が整っているのなら、さっさと始めないとな」
スズメバチ「…ふふ、始まるわ。じわじわじわじわ、追いつめないと…」

257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:46:14.20 ID:09IjwnMZ0

時刻 01:15 機関所有のビル42階の一室にて…
鯨「」スッ
古泉「逃がすかァッ!!」ヒュッ
鯨「………」ス・・・
がしっ
古泉「!! なっ……」
ぶぅんっ
ドガァッ!
古泉「なっ!…げほっ!」ずるる…

鯨「俺を見ろ」

古泉「!」

鯨「 人 は 誰 で も 死 に た が っ て い る ん だ 」

258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:50:02.95 ID:09IjwnMZ0

鯨「人は  誰でも   死にたがっているんだ」

古泉「ふ、ふざけるな!なら、お前が死ねば…」
古泉「!」

ズズズ……

古泉(窓の外に…森さん!?)

  古泉……貴方が早く来てくれなかったから、私はホラ、
   こんな姿になっちゃったわよ?
 貴方のせいよ? 上に、機関に何て説明するの?

古泉「!!」

259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:54:04.92 ID:09IjwnMZ0

   きっともうすぐ電話がかかってくるわ…
    いつもみたいに…

古泉(幻覚!?なんだ…どうして!?)

  あなたに「次」はあるの?

古泉「!!?」

 機関から必要とされなくなったら、貴方はどうするの?
  行く場所はあるの?貴方を必要とする場所は本当にあるの?

古泉(幻覚だ…耳を貸すな!)

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 15:57:58.00 ID:09IjwnMZ0

  涼宮さんは、本当に貴方を必要としているの?
   ただ、珍しい時期に転校してきたから、誘い入れただけ。そうじゃない?

 貴方はいつも笑顔の鎧をまとい、素の自分を隠してきた。
    そのせいで本当の友人はできない。誰にも本音を話せない。

   それは誰のせい?涼宮さん?

    いいえ違うわ。貴方のせいよ。

古泉「う…うぁ………」ガタガタ…

262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:02:05.40 ID:09IjwnMZ0

   貴方は所詮、使い捨ての手駒でしょう?機関には必要とされてなどいない。
  貴方の代わりはいくらでもいるものね。そうでしょう?

      貴方は機関の中でも優秀なメンバーだけど、「超能力者」という
       肩書を失ったら、果たして一人で生きていけるの?
     貴方を定義づけるものは無くなるんじゃない?

    こちら側にも居場所がなくなったら、貴方…
              どこへ行くの?

古泉「……………!!」ハァハァハァ……

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:04:13.85 ID:09IjwnMZ0

「人は  誰でも     死にたがっている」
古泉「!!」
「人は
古泉「…………誰でも…」ハアハアハア…

   「 死 に た が っ て い る 」

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:06:55.24 ID:09IjwnMZ0

   さあ、そこに銃が置いてあるじゃないか

 丁度いい   それで自分を撃って死ね
    楽になれる

   さあ  死ね    撃って死ね

古泉「ハッ…ハッ…ハッ……」

    ブルルルルルルル……ブルルルルルル………

古泉「!!」ビクッ

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:11:36.59 ID:09IjwnMZ0

    機関からの電話だぞ?  出るのか、いいや、出れないよな。
      出たら存在全てが否定される



  [ 森「いい?今日からこれが、貴方の携帯よ」        ]
  [ 森「仕事で必要な情報は、こちらから回すわ。」      ]
  [ 森「知ってる?世の中、情報を集めた人間が生き残るのよ」 ]
  [ 森「いいわね古泉、必ず出るのよ」            ]

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:17:35.33 ID:09IjwnMZ0

   出たら終わりだ    仲間を殺され、みすみすそれを見逃した
    お前に次はない
 ブルルルル   ブルルルルル
    ほら、電話が鳴ってる
   お前の居場所はもうないと告げるために
      出たら絶望するだけだ  その前に自分を撃て
さあ、早く撃つんだ。撃って死ね。
    死ね    死ね     死ね    死ね
古泉「そうだ、死ぬんだ…電話ももう出なくていい…神人と戦う必要も……
   演技をする必要も……涼宮さんのご機嫌取りも…しなくていいんだ…
   自由なんだ…」
  ブルルル[ い い わ ね 古 泉 ]ルルルルル
古泉「僕は…」
  ブルルル[ 必 ず 出 る の よ ]ルルルルル
古泉「…僕っは…」

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:21:29.28 ID:09IjwnMZ0

ピッ

古泉「」
ポロッ
ガチャッ
古泉「はっ!!」
古泉「………………え?」
バッ
古泉「………………!携帯……な………鳴って…ない…僕……何して……?」

271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:25:12.46 ID:09IjwnMZ0

古泉「!!!  あの男……」
ダダダッ
ガチャッ

鯨「………」
エレベーター『ドアが閉まります』
ガーッ……
古泉「待てええええええぇぇぇぇェ!!!」

ドンッ  ドンッ  ドンッ  ドンッ
  キィンッ キィンッ キィンッ キィンッ

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:31:14.22 ID:09IjwnMZ0

カキッ…カキンッ……カキッ………
古泉「ハッ……ハッ……ハッ……」
     ブルルルルルル
古泉「!」ギクッ
      ブルルルルルル
古泉(また…鳴ってないのに……音が………)
ドプッ………
古泉(!!? 足元に血溜まりが…さっきまで無かったのに!!)
古泉(この幻覚も幻聴も、全部あの大男が…!?)
ブルルルルル    ブルルルルル
古泉(僕はまだ、「帰って来れて」ないのか!?)
ブルルルルル
古泉「くっそ…」
    「 ち く し ょ オ ォ ! ! ! 」

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:36:08.30 ID:09IjwnMZ0

時刻 01:20 住宅街の道路上にて…
キョン「なあ、長門。そろそろ説明してくれてもいいんじゃないか?」
長門「………」
キョン「こんな時間に、しかも俺の部屋の窓から侵入してくるなんて、
    一歩間違えれば泥棒だぞ?」
長門「時間が無かったため、ああするしか無かった。許してほしい」
キョン「で、今、俺たちはどこへ向かっているんだ?」
長門「涼宮ハルヒの家」

275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 16:40:35.31 ID:09IjwnMZ0

キョン「ハルヒの家?ああ、そう言えば、日曜の不思議探索の連絡メールが
    来てたな。まさかそれのことじゃないよな?」
長門「それは無関係。もっと重大かつ緊急の用件」
キョン「そうか…ん?あれは…」
みくる「キョン君!待ってましたよ」
キョン「朝比奈さん。朝比奈さんも長門に呼ばれたんですか?」
喜緑「私が連れて来たんです」
キョン「喜緑さん…!」

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:01:16.13 ID:09IjwnMZ0

長門「もう一度言う。事態は急を要する。よって、喜緑江美理の協力を要請した」
キョン「おい、古泉と朝倉はどうした?あいつらも呼んだ方が…」
喜緑「古泉君とは、先程から連絡が取れなくなっています。携帯の電源を切って
   いるらしく、繋がらないんです。それと……」
キョン「………?」
長門「朝倉涼子は死亡した可能性が高い」
キョン&みくる「!!?」
長門「午前01:08 23秒において、朝倉涼子との回線接続が断たれた。恐らく、
   天蓋領域による情報操作の妨害に遭ったと思われる」
キョン「天蓋領域…?あの、周防九曜とか言う奴か!」

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:17:09.57 ID:09IjwnMZ0

キョン(待てよ…なぜこのタイミングであいつが朝倉を襲うんだ?たとえ敵対関係
    の相手でも、機関のゴタゴタがある今この時に、そんな騒動起こしてどうする?
    橘の話は信じていいのか?俺は何を信じればいいんだ?)
みくる「そんな…一体、何が起きているんですか?」
長門「私も、事の全容を把握できたわけではない。しかしまず、貴方に話しておきたい
   ことがある」
キョン「……俺に?」
長門「貴方が昨日の夜に橘京子から受けた説明を、全面的に信用しないでほしい」
キョン「……!なぜ、それを」
長門「朝倉涼子が言ったはず。面倒なことは私たちがやると。貴方を護ることも、
   我々の役目」

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:20:16.03 ID:09IjwnMZ0

長門「古泉一樹が現在連絡を寄越さないのは、恐らく彼もまた、危険な状況に
   あるためと思われる」
キョン「古泉が、危険な状況?どういうことだよ、そりゃあ……」
喜緑「説明はまた後で。どうやら、のんびりお話をしている暇は無さそうですから」
キョン「!!」

藤原「ふっくっく。気づかれていたか」
キョン「……どういうことだ?」

「佐々木」

282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:23:55.10 ID:09IjwnMZ0

佐々木「くっくっ……。流石、長門さんは気づくのが早かったね。簡単にバレて
    しまったみたいだ」
キョン「おい、佐々木。なんだよそりゃあ。お前、なんでこんな場所に居るんだ?」
佐々木「君は気にする必要はないよ、キョン。君の周りに居る邪魔な小虫を払った
    後で、ゆっくりと説明するから」
キョン「何を言って……」
喜緑「キョンさん。分かりませんか?今回の一連の事件、黒幕は、彼女なんですよ」
キョン「………はい?」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:29:54.80 ID:09IjwnMZ0

キョン(OK、OK、落ち着け俺。よく分からなくなってきた。喜緑さんは今、
    なんて言った?『黒幕は、彼女』と言ったな。黒幕?彼女?何だそりゃ。
    意味が分からんぞ、大体、一連の事件って、何だよそれ。俺はあのナイフ
    野郎に襲われただけだが、アレ以外に何か起きているってのか?俺の知らない
    所で?古泉が今ここに居ないことや、橘が妙な話をしてきたことや、朝倉が
    死んだかもしれないってことが、それに関係してんのか?)
佐々木「君が悩む必要はない。全部、綺麗に解消するんだから」
キョン「待ってくれ。何を言ってるのかサッパリだ。意味が分からん。誰か、俺にも分かる
    ように三行で説明しろ」

284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:35:03.16 ID:09IjwnMZ0

佐々木「ふむ。君がそれをお望みなら、そうしよう。
    1.僕は君を自分のものにしたいと思った
    2.橘さんの組織の力を使って、腕の立つ殺し屋を雇い、邪魔ものを消す算段を付けた
    3.涼宮さんの始末をしようとここに来たところ、今、君が僕の目の前に居る
    これでどうだい?」
キョン「」
みくる「え?え?じゃ、邪魔ものって…」
佐々木「勿論、貴方も含むわよ。朝比奈みくるさん」
キョン「冗談だろ……?冗談だって言ってくれよ……」

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:41:24.69 ID:09IjwnMZ0

ひゅぅっ  ストッ
スズメバチ「ねぇ王様。まだなの?まだ、お楽しみの時間じゃないのかしら?」
佐々木「もうすぐよ、待ちなさい。スズメバチ。じきに始まるから」
キョン「おい、佐々木。そいつは…」
佐々木「ああ、紹介しよう。キョン。彼女は、スズメバチ。僕が雇った殺し屋さ」
キョン「雇った……?」
佐々木「そう。涼宮さんを襲った蝉という殺し屋がいただろう?彼も、僕が雇ったんだ」
スズメバチ「」
キョン(同じだ…。あの目、身に纏う空気……。あのナイフ野郎とよく似てる)
佐々木「これから、涼宮さんを殺そうと思うんだ。一緒に見物しようじゃないか、キョン」

287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:49:32.95 ID:09IjwnMZ0

時刻 01:27 長門のマンション前にて…
橘「はぁ〜…うっかりしていたのです。彼女を殺す前に、長門さんの居場所を
  聞いておくべきだったのに」
蝉「俺は知らねぇぞ?殺せと言われたから殺したんだ。相手の居場所も分からねえ
  くせに殺せとは、ひどい依頼だな」
橘「なっ!?あなただって、何も考えずにナイフ振り回してただけじゃないですか!
  そのくせ、やたらと時間がかかったし!何が腕の立つ殺し屋ですか、全然、大した
  ことないじゃないですか!」
ヒュッ
橘「ひぃっ!?」
蝉「口が過ぎるぜ、小娘?誰を前にしてんのか、分かってんだろうな」

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 17:54:04.69 ID:09IjwnMZ0

橘「な、ナイフを下してくださいよ!私は貴方の依頼主ですよ!?貴方の上司に
  言いつけますよ!?」
蝉「ぐっ」ギクッ

蝉「くそっ。どいつもこいつもムカつくぜ。岩西の野郎、面倒くせえ仕事
  させやがって!」

295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 18:25:43.61 ID:09IjwnMZ0

戻りました。色々世界観に矛盾があったりしてすみません。
書けるだけ書ききろうと思います。

〜♪♪♪♪
橘「あ。私の携帯」ピッ
橘「もしもし…、あ、佐々木さんですか。え?…あ、はい。ええ、実はちょっと
  アクシデントがありまして…。ええ、はい。あ、それは大丈夫です。え?
  あ、そうそう。その朝倉さん。はい、大丈夫。死んだのはちゃんと確認しました。
  はい、九曜さんもいましたし…。はい、はい。あ、はい、分かりました…はい」ピッ
蝉「なんだ?」
橘「長門さんが見つかったそうですが、こちらで処理するので、もう追う必要はないと…」
蝉「なんだよそりゃあ…。俺の仕事はどうなるんだ?」
橘「多分、報酬は朝倉さんの分だけになるかと…」
蝉「っざけんな!いちいち方針変えやがって、こんな依頼があるかよ!!」
橘「ひぃっ!す、すみません」ビクッ

296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 18:34:29.85 ID:09IjwnMZ0

ブルルルル………ピッ
蝉「なんだ!?」
岩西『ああ、蝉。今、依頼主の方から連絡があってな。長門さんとやらを狙うのは
   ナシだそうだ』
蝉「なっ!てめェ、またそういう依頼だったじゃねェか!!いい加減にしやがれ!
  大体お前はいつもいつも俺を道具みたいに扱いやがってな、今回だって、相手が
  信用できるかどうかも分からねェうちから依頼を請けるからそういうことになるんだ!
  一体どういう依頼の請け負い方してんだテメェは!!」
岩西『そんなのァお前は知らなくていいんだよ』
蝉「『無関心でいるな。さもなければ明日には歌も取り上げられる』ってジャクソンも言ってた
  んじゃねーのかよ!!」
岩西『ジャック・クリスピンだ。声でけぇよ、アホ」
蝉「ちっ!」

298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 18:41:46.53 ID:09IjwnMZ0

蝉「なァ、俺だけ労働させられて、結果無駄働きで、金だけ岩西が取るんだぜ?
  お前もおかしいと思うよなァ」
橘「へ!?あ、え〜と、そ、そうですねぇ……」
蝉「こういうの、何て言うんだっけか。さ、さく」
橘「搾取?」
蝉「そうそれだ。搾取だ」
岩西『おい、どうした?蝉』
蝉「うるせェ、こっちの話だ」
岩西『先方も最初の依頼金に別な奴を殺した分、さらにキャンセル料まで上乗せして
   払ってくれたわけだからな、結果としては大儲けだ。そんなわけだから、お前、
   文句言ってる暇があったら、さっさと土産買って帰って来るんだ。いいな』
蝉「なんだよバァカ!サクシュやろー!!」
岩西『搾取?はは、蝉のくせに難しい言葉知ってるじゃねえか』
蝉「うるさい!」ピッ
蝉「ちっ!バカにしやがって!あのアホ中年!」

299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 18:43:40.62 ID:09IjwnMZ0

蝉「おいっ!」
橘「ぴいっ!!な、なんです……?」

蝉「ここら辺に、土産物売ってる店ってあるか?」

301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 18:52:45.46 ID:09IjwnMZ0

時刻 01:30 住宅街道路上(ハルヒ宅の前)にて…
佐々木「じきに橘さんと周防さんもここに来るだろうから、そうすれば全員揃う。
    この乱痴気騒ぎも、これで終焉だよ」
喜緑(古泉君がいませんけどね…。どこにいるんでしょう、彼は)
キョン「おい、佐々木。目を覚ませよ。お前、どうかしてるぜ。お前は、俺の知っている
    お前は、こんなことをする奴じゃない。橘たちからいろいろ話を持ちかけられても、
    聞き流していたじゃないか。神になんか興味が無いって…」
佐々木「勿論、僕は神になど興味が無いよ。なりたいとは思わないし、居てほしいとも思わない。
    自分に願望を現実化させるような能力があったとしても、使いたいとは思わないね。
    僕は、ほしいものは自分の力で手に入れる主義なんだ。そして、それが本当にほしいものなら、
    どんな手段を使ってでも、手に入れる」
キョン「佐々木……」

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:00:58.95 ID:09IjwnMZ0

キョン(冗談じゃない。あの、人一倍欲望に無頓着で、人一倍理性的で、人一倍
    小難しい話が大好きなあの佐々木が、そんな馬鹿みたいな理由で、ここまで
    暴走するか?組織の力を使って殺し屋を雇うなんて、ふざけているにもほどが
    ある。違う。こいつは佐々木じゃない。佐々木はこんなことを考える奴じゃ…)
長門「聞いて」
キョン「!! 長門…?」
長門「このままでは危険。涼宮ハルヒを敵の手に渡すわけにはいかない。何としても、彼女を
   先に助け出す必要がある」
キョン「………」

304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:06:53.03 ID:09IjwnMZ0

橘「佐々木さん、遅くなりました!」
周防「――遅くな――った――」
キョン「!!」
佐々木「橘さん、周防さん、来たわね。では、キョン。先に訊こう。
    君は、どちらの側に着くのかな?」

キョン「………」

――選ばなければならない時が、必ず来ます――

キョン(今がその時ってか。いや、そんなはずはない!)
キョン「佐々木。俺は、本物のお前の側に着く。今のお前は、佐々木じゃない。
    悪いが、俺はSOS団も、佐々木も、両方とも裏切れねぇんだよ。だから、
    お前の目を覚まさせてやる」

306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:17:34.04 ID:09IjwnMZ0

佐々木「くっくっくっ……。なるほど。いや、素晴らしい。実にいいよ、キョン。
    きっとそんな答えが返ってくるんじゃないかと思っていたんだ。やっぱり
    君は僕が見込んだだけのことはあるね」
キョン「………」
佐々木「けど、君は、やはり分かっていない」
キョン「なに?」
佐々木「君は、僕が普段見せているあの『僕』が、本当の僕の姿だと、本気で
    思っていたのかい?」
キョン「………」
橘「佐々木さん……」
佐々木「親は僕を、とにかく上位の学校へ入れて、エリートタイプの人間にする
    ことだけを考えている。休日も平日も関係ない。僕の自由意思なんて、
    これっぽっちも考えてはもらえないんだ。本当に理解し合える友人なんて、
    今の高校には一人もいないよ。周囲が退屈で仕方が無かった」

307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:24:12.42 ID:09IjwnMZ0

佐々木「勿論、親の考えだってわかるさ。僕の考え方がただの甘えに過ぎないという
    ことだって重々承知しているし、結局のところ、良い大学には入った方が
    就職の時にも、それからの人生にも役立つんだ。けど、それがなんだい?
    僕は、親の満足のいく子供になるためにこの世に生まれてきたわけじゃないんだ。
    僕には、僕の生き方があっていいはずだ。いや、無くてはいけない。くだらない
    友人ではなく、君のように、僕の話を受け入れてくれて、僕をより高めてくれる
    友人と付き合っていた方が、ずっと建設的じゃないか!」
橘「そ、そうですよ!佐々木さん。もっともです」
佐々木「口を挟まないでくれるかな、橘さん」
橘「」

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:34:16.60 ID:09IjwnMZ0

佐々木「だから、決めたんだ。もう、『いい子』を演じる必要はないだろう?
    神の力なんかに興味は無いけれど、それを崇めて集ってくる連中を利用する
    ことならできる。僕は、僕の力で、カラを打ち破るのさ。何もかもまっさらにして、
    その上で君と一緒にいたいんだ。精算するんだよ」
キョン「………」
佐々木「神なんかより、むしろ、魔王の方がよっぽどいいじゃないか。僕は、手段を選ぶつもりは
    ない。君を手に入れるためだったら、何だってしようじゃないか。戦争を起こしたって
    いいくらいだ。他の人間がどれだけ死のうと、構わないよ。ふっ切ったんだ」
キョン「………そうか」
長門「迷っている暇は無い。今、ここで決断して」
キョン「……………ああ」

309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:38:37.47 ID:09IjwnMZ0

キョン「悪いが、佐々木。俺の中学以来の親友は、どうやらどこか遠くへ
    行っちまったらしい。今のお前は、俺の知らない人間だ。だから」
佐々木「………」
キョン「お前は俺が止めてやるさ!佐々木…!」

        「 対 決 だ ! 」

310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:45:39.05 ID:09IjwnMZ0

佐々木「……くっくっくっ。そうかい、残念だね。なら、いいだろう。応じようじゃないか。
    スズメバチ!もう我慢しなくていい。涼宮ハルヒを殺しておいで。ただし、一息に
    殺しちゃダメだよ?僕の親友を僕のもとから奪っていった、一番の原因だ。だから、
    時間をかけてじわじわと殺すんだ。君になら、できるだろう?」
スズメバチ「王様の命令ならば……」
タンッ
長門「させない」
ヒュッ
スズメバチ「邪魔をするの?なら、容赦しないわ」
喜緑「私は長門さんを援護します!キョン君、朝比奈さん、急いで涼宮さんの家に!」
キョン「分かりました!」
周防「行かせ――ない―」
喜緑「貴方の相手は私ですよ」

313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:52:32.09 ID:09IjwnMZ0

キョン「…とは言っても、家の中に既に敵がいたりとか、しませんよね」
みくる「機関の方々が涼宮さんの警護のために家の周りを固めていたらしいんですが、
    一人もいなくなっているんです。ただ、喜緑さんと私が到着したときには、
    家の敷地内には敵は居ないと喜緑さんが言ってました」
キョン「分かりました!さっさと行って、さっさと連れ出しましょう」
ガチャガチャ
キョン「あっ……当たり前か。ドアの鍵…」
すっ  ガチャリ
キョン「!…長門」
長門「急いで」ヒュバッ

314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 19:58:33.04 ID:09IjwnMZ0

ダダダッ
キョン「ハルヒ!おい、ハルヒ!」
みくる「涼宮さ〜ん!どの部屋ですか!?」
ガタッ
キョン「ん?こっちか…」スッ

スズメバチ「どぉしたの?誰かお探し?」

キョン「!!? う、うわっ……」
みくる「きゃあっ!!」

315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:03:13.52 ID:09IjwnMZ0

スズメバチ「ふふ…ねェ、今どんな気分?言ってみて、ほら」
キョン「あ……あ…」ガクッ
スズメバチ「…ああ…いい顔…」
みくる「キョン君、に、逃げ……」
スズメバチ「警察が来るまでゆっくりと遊ばせてもらうわ」
ドガァッ
スズメバチ「!!?」
長門「そうはさせない」
キョン「長門!」
長門「彼女の部屋は二階。恐らく両親はもう手遅れ。彼女だけでも連れて逃げて」

316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:10:18.36 ID:09IjwnMZ0

キョン「て、手遅れって…」
スズメバチ「ふ、ふふ…。勘の鋭い姉様。あなたの言う通り。騒がれると困るから、
      涼宮ハルヒの両親はさっき、先に始末しておいたわ。私が大事に大事に
      調合した『毒』。今頃、苦しんでいるハズよ?間近で見れないのが残念
      だけど」スッ
キョン(靴の爪先に……針!?)
スズメバチ「次は、あなたたちの番…」
キョン「くっ……長門、すまん!ここは任せるぞ!朝比奈さん!!」ガシッ
みくる「ひゃっ!」

スズメバチ「まあ、薄情な兄様…」
長門「あなたの話に付き合っている暇は無い」

317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:14:05.63 ID:09IjwnMZ0

バァァンッ
ハルヒ「きゃあっ!?」
キョン「ハルヒ!無事か!?」
みくる「涼宮さん!」
ハルヒ「な、何よ…へ?キョンに、みくるちゃん?え?今、何時?なんで…」
キョン「悪い!詳しい話は後だ、何も言わずについて来てくれ!」
ハルヒ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!なんなのよ、いきなり!?」
キョン「朝比奈さん、階段の下にはあいつが居る。二階の窓から出ましょう!」
みくる「は、はい!」
ハルヒ「勝手に話を進めるんじゃないわよ!なんなのよ、一体!?」

319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:17:38.95 ID:09IjwnMZ0

キョン「こう言えば分かるか?あのナイフ野郎の仲間が、お前を襲いに来たんだ!
    家の中に来てるんだよ!だから、急いで逃げるんだ」
ハルヒ「い、意味分かんない!あんたたちがいる理由になってないじゃない!それに、
    警察呼ばなきゃいけないでしょ!?親だって…」
キョン「………」
ハルヒ「な、何よ…?へ?下の部屋にあたしの親が…」
キョン「ハルヒ。頼む、今は、俺たちについて来てくれ!」

322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:23:12.92 ID:09IjwnMZ0

ハルヒ「……どういうこと?お父さんと、お母さんが、下に居るのよ…?
    置いて行けないじゃない!ちゃんと目を見て話してよ!!」
キョン「ハルヒ……」
ハルヒ「ねえ、早く一階に…」
バツンッ!
ハルヒ「え………?」バタッ
キョン「は……ハルヒ!?」
長門「一時的に意識を奪った。今は彼女を説得している時間が無い」
キョン「長門!…すまん、助かった」

324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:26:43.37 ID:09IjwnMZ0

長門「先程の殺し屋はまだ動ける。しかし、相手をしている余裕はない。
   今は逃げることに専念する」
キョン「喜緑さんは?」
長門「……急いで」
キョン「!! ………ああ」
カララ…
キョン「朝比奈さん、大丈夫ですか?」
みくる「はい、なんとか…」
長門「………」

325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:30:02.86 ID:09IjwnMZ0

キョン「よし、物置伝いに下りれたな。しかし、これからどうする?
    連中、すぐに追ってくるだろ」
長門「迎えが来ている」
キョン「迎え?」

??「キョンく〜ん、こっちだよぉ!!」

キョン「あの声は……!」
鶴屋「早く!急いでこっちに来るっさ!」
キョン「鶴屋さん!助かります…」
鶴屋「ハルにゃんも無事だね…とりあえず、みんな乗って!すぐに発進するよ」
バタンッ
ブロオオオォォォ………

326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:34:09.65 ID:09IjwnMZ0

キョン「本当に助かりました。感謝します、鶴屋さん」
鶴屋「いいっていいって、そんなの。それより、これからが大変だよ?」
キョン「はい…。鶴屋さん、事情はどのくらい把握しているんですか?」
鶴屋「君の友達が悪い組織を利用して、殺し屋を雇って、ハルにゃんやSOS団の
   みんなを狙っているってことぐらいかな」
キョン「じゃあ、ほとんど全部ですね……」
鶴屋「それより、一樹君は?一緒じゃないのかい?」
キョン「………」
みくる「連絡が取れないんです…。携帯の電源を切っているらしくて……」
鶴屋「そっか……。まあでも、一樹君のことだ!きっとどこかで、無事に居るはずだよ」
キョン「……はい」

327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:39:04.30 ID:09IjwnMZ0

運転手「お嬢様、このまま、お屋敷まででよろしいですかな?」
鶴屋「うん。そうして」
運転手「かしこまりました」

鶴屋「とりあえず、ウチに来れば安心だよ。今はまあ、詳しいことは聞かないから」
キョン「……すみません」
鶴屋「気にしなくていいっさ!」
キョン「…………」

みくる「…………あっ」
鶴屋「? どうしたんだい、みくる?」
みくる「あれ……古泉君じゃ…」

328 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 20:41:44.90 ID:09IjwnMZ0

キョン「…本当だ。間違いありませんよ」
鶴屋「ちょっとここで車を停めてくれるかい?」
運転手「かしこまりました」
キキィーッ……
バンッ
キョン「古泉の奴、あんなところで何を…」

古泉「ブツブツブツ……」

キョン「?」
古泉「電話…が…」

古泉「電話がずっと…鳴り止まないんだ…ずっと…………」

333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 21:40:22.99 ID:bkG1gTqz0

繋がらなくなってて、大変でした。

古泉「電話がずっと…鳴り止まないんだ…」
キョン「!? 古泉……?」
古泉「電源切ったのに………どうして…」ブツブツ
キョン「おい……古泉」
古泉「うるさいんだ…うるさすぎる……おかしくなりそうだ…」
キョン「おい!古泉、大丈夫か」
古泉「!」ビクッ
キョン「どうしてこんな所にいるんだ?」
古泉「………」

   「 ど う し て こ ん な 所 に い る ん だ ? 」

古泉「!!?」

334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 21:43:37.30 ID:bkG1gTqz0

古泉「うわああああっ!!!」ジャカッ
みくる「ひゃあああっ」ビクッ
キョン「うぉわっ!待て待て古泉!!俺だ!分からないか!?」
古泉「はっ!!?」ピタッ…

みくる「はわわわ…」
古泉「……………貴方は…」ハァ…ハァ…
キョン「古泉……とりあえず落ち着け…銃を下してくれ…人目に付く」

335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 21:51:56.87 ID:bkG1gTqz0

古泉「……………無事、だったんですね」ストンッ
キョン「お前、どうしたんだ?大丈夫か?」
古泉「……すみませんが、今は、近寄らないでもらえますか。
   今の僕では、うっかり貴方を撃ってしまいかねない……」
キョン「古泉……」
古泉「今は……人の顔なんか見たくないんです………。僕は…結局、自分に
   自信が持てなかった……。貴方が羨ましいですよ……」
キョン「………」
古泉「ふ、ふふ……いっそ人形のように操られて生きていれば、そりゃあ楽でしょうけど、
   そんな人間に価値なんか無いでしょう?これっぽっちもね!」

古泉「生きている意味が、無いのなら…いっそ死んでしまった方が…」

337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 21:58:24.67 ID:bkG1gTqz0

ザッ
古泉「! 近寄らないでくださいって…」

キョン「考えろ!」

古泉「………?」
キョン「死んでるみたいに生きたくないなら、どうすりゃいいか考えろ」
古泉「………考える?」
キョン「俺には、ハルヒみたいなブッ飛んだ能力は無い。長門みたいなスーパー
    宇宙パワーも、朝比奈さんみたいな時間移動能力も、お前みたいな超能力も
    無い。だがな、代わりに一つ、俺には武器があるんだ」
古泉「………」
キョン「考えること。それだけだ。それだけが、俺のたった一つの武器だ」
古泉「………」
キョン「誰から何を言われようと、結局、決めるのは自分だろ?選ぶのは自分だろ?
    自分でやるしかないんだ。古泉」
キョン「俺は、戦うことに決めた。自分で選んだ。お前はどうする?」
古泉「………」

339 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 22:01:53.42 ID:bkG1gTqz0

キョン「俺の選択は間違っているかもしれない。けど、自分で考えて、自分で選んだ。
    そうしたら」

   「 対 決 す る し か 、 な い じ ゃ な い か 」

古泉「………!!」
キョン「………」
古泉「………対決…」

みくる「………」
古泉「」ガタッ
みくる「!!」ビクッ

341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 22:08:30.87 ID:bkG1gTqz0

古泉(未だに幻覚と幻聴は消えない…。手からは血液が溢れ出してくるし、
   携帯は鳴り続けている。しかし、ここで口を開かなければ、彼には
   伝えられない…!)

古泉「………………森さんと……新川さんが………殺されました……」
キョン「!! …………そうか…」
古泉「二人だけではありません……機関の主要なメンバーの大半は……既に
   殺されているでしょう……僕のミスです………」
キョン「……………」
古泉「……僕は………すぐ近くに居ながら……二人を救えませんでした………
   相手にも逃げられ………このザマです……」

343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 22:16:27.62 ID:bkG1gTqz0

キョン「…古泉、俺は、お前のフォローはできない」
古泉「………」
キョン「正直、俺の方もいろいろとあって、まいってるんだ。だから、お前の
    今の状況が大変なのも分かるが、俺はお前の手助けはできない」
古泉「……はい」
キョン「だが、SOS団は全員、無事だ。車の中に、ハルヒと長門と鶴屋さんが
    いる。まだ、戦えるんだ。敵の正体も分かってる。俺は、やるしかないと
    思ってる。お前はどうだ?」
古泉「………」


古泉「…どうやら、僕も、やるしかないみたいですね………」
キョン「対決か?」

古泉「はい」

344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 22:17:41.82 ID:bkG1gTqz0

ブルルルル……
ブルr…
b………

キョン「なら、行こう。まずは、互いの知っていることを話さないとな」

古泉「………はっ」スッ
  携帯「――――――」
古泉「………幻覚が…消えてる………」

345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 22:19:38.18 ID:bkG1gTqz0

すみません、また少し空けます。
本当に、文才なくて、原文そのまま丸写し。切ってつないで貼っているだけの
文章で、不快に思われて当然だと思います。うざうざしい文章ばかり書いて
本当にすみません。でも、始めたからには終わらせたいです。
どうか、お許しください。

353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 23:07:32.91 ID:bkG1gTqz0

戻りました。温かい言葉をありがとうございます。
SS初心者で、皆さんに不快な思いをさせることが多々あると思いますが、
皆さんのおかげで元気が出ました。
多少アレンジを加えたりして、なんとか少しでもオリジナリティのある
話にしようと思います。
アンチの意見もちゃんと受け止めることにしています。気に入らないことが
あったら野次でも何でも書き込んでください。プラスに受け止めて
努力しようと思います。
もうしばらくしたら、続きを書きます。

357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 23:18:08.42 ID:bkG1gTqz0

お待たせしました。続きから行きます。

鶴屋「一樹君!無事だったんだねっ!!良かったっさ〜」
古泉「ご心配をおかけして、申し訳ありません」
鶴屋「いいよいいよ!元気そうで何よりにょろ!」
キョン「とりあえず、これでSOS団全員が揃ったな」
長門「まず、これからの方針と、相手への対策を考えるべき」
キョン「ああ、そうだな。だがその前に、古泉に、現在の状況を教えておかないとな…」

358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 23:25:06.72 ID:bkG1gTqz0

古泉「……なるほど。事態は何とか呑み込めました」
キョン「相手は……佐々木は、殺し屋を何人も雇っているようだ。あの『蝉』って
    奴の他にも、毒針を使う女の殺し屋がいた。たしか…」
長門「『スズメバチ』と呼ばれていた。涼宮ハルヒの両親を殺害した犯人」
キョン「そう、そいつだ。許すわけにはいかない。ハルヒのためにも、な」
みくる「喜緑さん、無事だといいんですが…」
キョン「………」
長門「……彼女は自ら望んであの場に残った。彼女一人の力では、天蓋領域の
   インターフェースを抑えきれるとは思えない。しかし、我々を逃がすための
   苦渋の選択だった。私も、あの場に残るべきだったかもしれない」
キョン「馬鹿を言うな、長門!喜緑さんが俺たちを助けるために残ってくれたのなら、
    尚更だ。彼女のためにも、生き残った俺たちが戦わなきゃいけないだろう」
長門「………」

360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 23:36:29.13 ID:bkG1gTqz0

キョン「そうだ、古泉。お前の方は、どんな感じだったんだ?」
古泉「先程も言った通り、機関はほぼ壊滅状態です。森さんや新川さんといった、
   機関の中でも特に重要な人たちが、殺害されてしまいましたから…」
キョン「相手は?やっぱり殺し屋か?」
古泉「僕がそう問い質した時、否定していましたが、どういう意味での否定だったのかは、
   今となると分かりません。ですが、少なくとも、人の死を見慣れている相手だったのは
   確かです。僕も、危うく死にかけました」
キョン「恐ろしい奴だな…。外見は?」
古泉「身長が2メートル近い大男で、左目に黒い眼帯をしていました。服装は上から下まで
   黒づくめで、頭に黒い帽子をかぶっていましたね。何より気をつけるべきは、相手の
   目です」
キョン「目?」
古泉「あの目を見てから、僕はついさっきまで、幻覚と幻聴に襲われて、気が狂う寸前でした。
   武器や体術に頼るような奴ではなく、何かこう、特殊な能力のようなものを持っている
   ようです」

361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 23:40:49.08 ID:bkG1gTqz0

キョン「………そうか、手強いな」
古泉「ええ。身長の割に、動きも素早いので、侮れません。何より、あの時僕は、
   仲間を殺されたショックで錯乱していたこともあって、冷静さに欠けて
   いたんです。僕らしくもない…」
キョン「気にすんな。誰だって、そういう時もあるさ」
みくる「あの、話を割って悪いんですけど…」
キョン「朝比奈さん、どうしました?」
みくる「涼宮さん、どうしますか?」
キョン「あぁ……そうでしたね」

362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 23:46:26.35 ID:bkG1gTqz0

古泉「……こうなっては、包み隠さず全てお話しした方が良いでしょうか」
キョン「そうだな…。こいつには、両親が殺されたことも全部話さないといけない」
古泉「恐らく、彼女の精神には耐え難いストレスになるでしょう。機関がこの状態では、
   彼女の作りだす閉鎖空間を処理できる自信がありませんが」
キョン「どちらにしろ、こいつが目を覚ましたら、教えないわけにはいかないだろ?」
古泉「……そうですね。一応、覚悟はしておきます」
長門「………」
みくる「………」

鶴屋「みんな、着いたよ」

364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/29(日) 23:53:18.81 ID:bkG1gTqz0

古泉「お世話になります」
鶴屋「気にしなくていいよっ!こんな時こそ、助け合わなきゃねっ!」
キョン「ハルヒは俺が運ぶ。長門、ドア開けてくれ」

鶴屋邸にて、時刻 04:30…
ハルヒ「ぅ………」
キョン「ハルヒ、目ェ覚めたか?」
ハルヒ「キョン……?あれ、さっきのって……夢?ここは……」
キョン「……ハルヒ、ここは鶴屋さんの家だ」
ハルヒ「え?」
キョン「とりあえず、起きるか」
ハルヒ「どういうこと?なんでみんな居るの?」

370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:02:51.19 ID:fymn/KVf0

古泉「涼宮さん、おはようございます。目を覚ましたばかりのあなたに、
   少々酷かもしれませんが、お話ししなければならないことがあります」
ハルヒ「古泉君…?どういうこと……話って?」
キョン「ハルヒ、いいか、落ち着いて聞いてくれ。今から大事なことを話すんだ。
    頼むから、口を挟まずに、気をしっかり持って聞いてくれ。ゆっくり話すから…」
ハルヒ「……………」


ハルヒ「……………」
キョン「これで、話は全部だ。今話したことの中に、何一つ嘘は無い。作り話も無い。
    隠していることも無い。これで本当に全部だ。いいか?」
ハルヒ「な……何よ、それ………。みんなして、何よ?からかってるの?あたしを」
キョン「SOS団の中には、仲間をこんなやり方でからかう奴は一人もいない。
    それは、お前自身が、一番よく分かっていることだよな」
ハルヒ「…………でも……でも、そんな……だって…」ぶるぶる……

372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:06:36.87 ID:fymn/KVf0

キョン「ハルヒ、すまん」ギュッ
ハルヒ「………!!」
キョン「本当に、すまん!俺が悪かったんだ。佐々木の異変に気付けなかったのも、
    お前の両親を助けられなかったのも、全部、元はと言えば、俺の責任だ。
    何を言われようとも構わん。殴られてもいい。俺が悪いんだ、ハルヒ!」
ハルヒ「キョン……泣いてるの………?」
キョン「……………」
ハルヒ「なんで……アンタが泣いてんのよ……」ぽろぽろ……
キョン「く……ぅぅ………」ブルブル……
ハルヒ「ふざけんじゃないわよ……アンタに今…泣かれたら……
    文句の一つも…言えないじゃない」ぽろぽろ……

374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:09:18.63 ID:fymn/KVf0

古泉「………」
みくる「…ぅ……ヒック……ぅぅ……」ゴシゴシ…
長門「……………」

キョン「すまん……ハルヒ…すまん……」
ハルヒ「…怒る前から……謝ってんじゃないわよ……」

378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:14:08.00 ID:fymn/KVf0

ハルヒ「…………しばらく………一人にしてもらえる?」
キョン「………分かった」

古泉「………」
キョン「………古泉、閉鎖空間は?」
古泉「もう、何があっても驚かないと思っていましたがね。結局、また驚かされましたよ」
古泉「閉鎖空間は、発生していません」
キョン「………」
古泉「涼宮さんの力が弱まっているとはいえ、閉鎖空間の発生は避けられないと
   思っていました。それだけに、驚きですよ。彼女の精神は、今、安定しています」
キョン「………」
古泉「貴方のおかげでしょうかね。なんにせよ、助かりました」

381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:19:24.56 ID:fymn/KVf0

トンットンットンッ…
鶴屋「……二人とも、ちょっといいかい?」

鶴屋「その、さ。殺し屋、とか、そういうのはよく分かんないんだけど…。
   助けになってくれるかもしれない心当たりが、一つあるんだよ」
古泉「助け、ですか?」
鶴屋「まあ、お金がかかるんだけどね。あ、その点は心配しなくていいよ。
   あたしがちゃんとその辺は手配するから」
キョン「……心当たりというのは?」
鶴屋「あたしもあんまり詳しくはないんだけどね。殺し屋、とか、そういった
   裏の世界の事情通っていうのかな?とにかく、そういったヤバ気な世界の
   情報を扱っている人がいるんだよ」

384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:23:50.60 ID:fymn/KVf0

鶴屋「『情報屋』って言うのかな?お金さえ払えば、どんな情報でも売ってくれる
   裏の世界のプロフェッショナルがいるんだよ」
キョン「情報屋、ですか。なんていう人なんですか?
鶴屋「本名は知らないよ。そういった世界では、独特の呼び名があるらしくてね、
   その人は、『桃』って呼ばれてる」
古泉「桃……」
鶴屋「その人に会いに行けば、何か教えてくれるかもしれない」

386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:30:01.41 ID:fymn/KVf0

古泉「なるほど。貴重な情報をありがとうございます」
鶴屋「ううん。少しでも、役に立てれば嬉しいな、と思ってさ。ハルにゃんの
   様子はどう?」
キョン「……落ち着いてはいるようです。今は、部屋に一人籠もっています」
鶴屋「そっか…。辛いだろうね」
キョン「……………」
鶴屋「けどね。キョン君。自分を責めちゃダメだよ?」
キョン「鶴屋さん……」
鶴屋「過ぎたことを、あの時こうしておけばよかった、とか、後から悔んだって、
   もうどうにもならないんだから。『覆水盆に返らず』って言うじゃないか」
キョン「……はい」

388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:37:39.95 ID:fymn/KVf0

古泉「……空が明るくなってきましたね。もうすっかり、朝になってしまいました」
キョン「そうだな。慌ただしい夜だったからな」
鶴屋「もうじき朝ごはんだよ。みくるや有希っこにも、声掛けといてね」
キョン「はい」

キョン「ぅ……今になって眠気が……」
ドンッ
ハルヒ「ちょっとキョン!なに寝ぼけた顔してんのよ!シャキッとしなさい、シャキッと!!」
キョン「うわっ!!は、ハルヒ…!?」
古泉「涼宮さん、具合は大丈夫なんですか?」
ハルヒ「元々、どこも悪くなんかないわよ。たしかに、いきなりのことでショックではあったけど、
    でも、あたしはSOS団の団長だもの!あたしがいつまでも落ち込んでたら、みんなだって
    困るでしょ?あたし一人だったら、耐えられなかったかもしれないけど、みんながいるもの。
    あたしは、前を向いて行くことにするわ。それしかないもの」
キョン「ハルヒ……」
ハルヒ「ねえ、キョン」

     「 や る し か な い じ ゃ な い 」

389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:40:49.03 ID:fymn/KVf0

キョン「……………」
ハルヒ「それにしても、みんながみんな、どうして黙ってたのよ!こんな身近に、
    宇宙人、未来人、超能力者が固まってたなんて!!今まで勿体ないこと
    してたわ!ちょっと古泉君、超能力見せてみなさいよ!」
古泉「いやはや、これは弱りましたね……」
キョン「ハルヒ……お前ってやっぱり、強いんだな」

390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 00:48:02.03 ID:fymn/KVf0

明日、学校があるので、今日はここまでにしておきます。
見てくれていた方々、本当にありがとうございました。
正直、もっと叩かれたり荒らされたりするんじゃないかと不安でもあったので、
たくさん支援してくれる人がいて本当に感謝しています。
明日は多分、夕方ごろになると思います。それまで、スレが残っていることを
願います。途中からかなり自分でもグダグダになっていると思える場所があって
頭を悩ませましたが、途中で投げ出すのだけは嫌なので、なんとか書き終えたいと
思っています。自分は原作小説もコミックも、もちろんハルヒシリーズも大好きです。
それぞれの作品のファンの方々に不快な思いをさせる描写があっただろうと思います。
それについては、深くお詫び申し上げます。
それでは、駄文失礼しました。

416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 16:43:24.00 ID:fymn/KVf0

只今戻りました。遅くなってすみません。
スレの保守をありがとうございます。頑張って、続けていこうと思います。
気に入らない方も大勢いらっしゃるかと思いますが、どうか、書き終えるまで
見守ってください。お願いします。

418 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 16:51:48.41 ID:fymn/KVf0

前回から、続けます。

キョン「ハルヒ。とりあえず、鶴屋さんが朝飯を御馳走してくれるそうだから、
    まずは落ち着こうぜ。これからどうするかも、みんなで考えないと
    いけないからな」
ハルヒ「そんなの決まってるわよ!SOS団で力を合わせて、あたしの家族を
    奪った奴らをボッコボコにしてやるのよ!!」
キョン「それは否定しないが、しかしだな。相手はプロの殺し屋なんだ。対抗策も
    まだ何も考えちゃいない。それに、だ。こっちは味方の大半を失っているんだ。
    ヘタに動いたら、あっという間に全滅だぞ?」
ハルヒ「むぅ……。それはそうだけど、何か考えがあるわけ?」
キョン「それをこれから考えるんだ」

419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:00:06.50 ID:fymn/KVf0

キョン「お前の願望現実化能力が弱まっている今は、それをアテにすることも
    できない。今、俺たちがすべきことは、あの殺し屋連中の情報を集める
    ことだ。それから、どうするかを決める。機関のフォローが無いと、警察
    も頼りにはできない。何より、向こうだってそれの対策ぐらいしているだろう
    からな」
古泉「『桃』という名の情報屋にまず接触しましょう。全てはそれからです」
涼宮「情報屋?」
古泉「裏の世界の事情に精通した人物なのだそうです。今日はその人に会いに行く
   つもりなのですが…」
涼宮「なるほど。蛇の道は蛇に訊けってことね」

420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:06:39.43 ID:fymn/KVf0

朝食の席…
鶴屋「ハルにゃんっ!もう大丈夫なのかい?」
ハルヒ「おかげさまで、復活したわ!心配かけてごめんね、鶴ちゃん!」
みくる「涼宮さん、良かったです!あたし、心配で心配で…」
ハルヒ「もう平気よ、みくるちゃん!あたしがへこたれてたら、SOS団が
    回らないわ!辛くても、みんながいれば乗り越えられるもの」
長門「………」

キョン「長門、やっぱり、朝倉達のことを気にしてるのか?」
長門「………」
キョン「俺には、お前たちの間の絆というか、繋がりの深さについては、
    よく分からん。お前たちにしか分からないんだろうし、俺が口を挟む
    ことでもないだろうしな」
長門「………」

421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:15:16.81 ID:fymn/KVf0

キョン「でもよ、長門。これだけは言っとくぞ。俺たちは、お前を必要としている。
    SOS団には、お前という仲間が、必要不可欠なんだ。
    お前の能力だけじゃない。『長門有希』というメンバーがいて、五人揃って、
    初めてSOS団は動けるんだ。それだけは、忘れないでくれ」
長門「……………」コクッ

食後…
ハルヒ「でも、本当にあたしにそんな不思議な力があるのかしらね…。それって、
    自覚してもいいもんなの?」
古泉「本当は、打ち明けることに対して抵抗がありました。貴方の精神が、真実を
   知るという強いストレスに耐えられなかった場合、何が起こるか分かりません
   でしたからね。力が弱まっているため、世界崩壊とまではいかなくても、大規模な
   閉鎖空間の発生は考えられました。機関が壊滅の危機に瀕している今、もし
   閉鎖空間が発生すれば、僕一人ででも神人に立ち向かう覚悟はしていましたよ」
ハルヒ「………」

422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:22:11.41 ID:fymn/KVf0

古泉「しかし、事実はそうはならなかった。貴方の精神力が、ストレスの大きさを
   上回ったのです。ですがやはり、彼の影響も少なからずあったとは思いますがね」クスッ
ハルヒ「キョンの……?あ、ちょ、ちょっと何笑ってるのよ、古泉君!」
古泉「…失礼。とにかく、当面は安心していいと思います。今は何よりこの事態の収束を
   第一に考えねばなりませんから、僕も正直、貴方の精神面でのケアには気を回せない
   かもしれません。申し訳ありませんが……」
ハルヒ「平気よ、古泉君。みんながいれば、あたしは大丈夫。気を遣わなくてもいいわよ」
古泉「……ありがとうございます」
ハルヒ「そうそう。もう全部分かっちゃったんだし、無理してその口調で喋るのもやめたら?」
古泉「あっ、これですか…。いやぁ、実は、慣れるとこっちの方が楽でしてね。変に意識するより、
   今はこの方がいいかと思いまして。全て片付いた時に、本当の僕をお見せしますよ」
ハルヒ「そう…。ま、古泉君がそれでいいなら構わないわ!」

423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:29:21.02 ID:fymn/KVf0

鶴屋「キョン君、古泉君。車は用意してあるけど、本当に行くのかい?」
キョン「はい。少しでも手掛かりになることが得られれば、心強いですからね」
古泉「お手数をおかけしますが…」
鶴屋「ううん、そんなことは気にしなくていいんだ。ただ、ウチに居る分は
   安全だと思うし、あまり無理をしない方がいいんじゃないかな〜、なんて…」
キョン「…鶴屋さん。お気遣いは嬉しいですが、あまり貴方に迷惑ばかりかけられませんよ」
鶴屋「そんな、キョン君!迷惑だなんて…」
キョン「それに、これは、俺達で解決すべきことだと思うんです。相手が恐ろしい奴ばかり
    だってことはよく分かってるし、もしかしたら、全く敵わないかもしれない。けど、
    やらなくて後悔するより、やって後悔した方がいいって、ある奴から言われたことが
    あるんです。ずっと逃げ回っているわけにもいきませんしね」

425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:34:41.86 ID:fymn/KVf0

鶴屋「…そうかい。分かった!ならもう、余計な口出しはしないよ。鶴屋家が
   全力でサポートするから、頑張るんだよ!」
キョン「はい」

ハルヒ「え?あんたと古泉君の、二人だけで行くの?」
キョン「ああ。そんなに大勢でドヤドヤ行ったって、動きにくいだろ。それに、
    少人数の方が目立たない。鶴屋さんが一緒に行ってくれるそうだから、
    大丈夫だ」
ハルヒ「……そう、分かったわ。くれぐれも、無茶しちゃだめよ?」
キョン「いつも無茶をするのはお前の方だろ?」
ハルヒ「う、うるさいわね!減らず口を叩いてるヒマがあるなら、さっさと行って
    戻って来なさいよ!いい!?危なくなったらすぐに連絡するのよ!」
キョン(連絡したところでどうしようもないんだがな。まあ、アイツなりの気遣いだろうな)

427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:39:53.18 ID:fymn/KVf0

車中にて…
鶴屋「まず、着いたら驚くことが二つあると思うよ」
古泉「? 何ですか?」
鶴屋「一つは、着いた先。もう一つは、着いた先に居る人」
キョン&古泉「………?」

ブオオオオォォォン………キキイィィッ……

鶴屋「さ、着いたよ!」
キョン「? え、このビルですか?」
古泉「まあ、確かに意外ですけど…」
鶴屋「違う違う。こっちのビルと、そっちのビルの間に、ホラ!隙間があるでしょ?」
古泉「ああ、なるほど。車では入れませんね」
鶴屋「そういうこと。まさか、この車をそこの目の前に停められないからね」

428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:43:56.60 ID:fymn/KVf0

鶴屋「ここから先は歩きだよ。でも、そんなに長くないから」
古泉「なるほど、情報屋ともなると、人目につきやすい場所では困るわけで…」
ブオォォォォォン……
   パッパーーー…………
  ガヤガヤ………
古泉「………」
キョン「……大通りに面してるように見えるんですが」
鶴屋「そうだよ。まさか、いかにも光のささないビルとビルの谷間にひっそりと
   あるとでも思ったかい?」
キョン(普通はそうじゃないんですか…?まあ、普通の職業とは言えないだろうが)

429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 17:50:43.42 ID:fymn/KVf0

   『アダルトショップ 桃』

キョン「つ……鶴屋さん」
古泉「ここって……」
キョン&古泉『エロ本屋じゃないですか……』
鶴屋「うん。表向きはねっ。まさか、看板に『情報屋』なんて書くわけには
   いかないからね」
キョン「はぁ……」
鶴屋「本当は朝方に訪ねるような場所じゃないんだけど、今回は特別だよ。
   この辺り一帯は鶴屋家の護衛がこっそり固めているから、敵に見つかる
   心配もない。さ、入るよ」
キョン(金持ちってスゲェ………)

431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 18:07:33.90 ID:fymn/KVf0

カツン……カツン……カツン………
鶴屋「きっとここの店主なら、教えてくれるよ。君たちの知りたいことを」
ガチャッ   キイイイィィィ………

カツカツカツ……

??「いらっしゃい。待ってたよ、嬢ちゃん。久しぶりだねぇ。
   そっちの二人が電話で言ってたお客かい?」

キョン(この人が……『桃』!?なんだこりゃ…。肥満なんてレベルじゃねーぞ!
    座ってる椅子もでけぇけど、それにしてもなんだこの巨体…。しかも
    キセルで煙草吸ってやがる…)
古泉(これはたしかに驚きですね…。着ている服も、下着なのかワンピースなのか
   区別がつきませんし、何より、これだけ露出度が高いのに、性的ないやらしさが
   感じられませんね。この人は、椅子から動くことがあるんでしょうか)

436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 18:42:13.97 ID:fymn/KVf0

お待たせしました。続けます。

鶴屋「はい、桃さん。約束通り、料金はお支払いします」
キョン(鶴屋さんがこんな風に喋るのは初めて見るな…)
桃「どれ、それじゃあ聞こうか。何を知りたいんだい?」
キョン「……殺し屋のことを」
桃「ほぅ………」

437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 18:47:00.97 ID:fymn/KVf0

キョン「知りたいのは三人いるんです。『蝉』って奴と、『スズメバチ』って女と…」
古泉「もう一人は、名前を知りません。黒づくめで、左目に眼帯をした大男です」
桃「なるほどねぇ……」
キョン「……知ってますか?」
古泉「………」
桃「もちろん…知ってるわよ。一応、私も名の通った情報屋だもの。いいわ、教えてあげる」
キョン「ほ、本当ですか!?オバ………いや、お姉さん!!」
桃「ええ、本当さ。あらあら、可愛いわねぇ」
古泉「………」ホッ…

438 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 18:53:45.25 ID:fymn/KVf0

桃「まず、『蝉』からいこうか。こいつはナイフ使いの殺し屋でね。名前の通り、
  いったん喋り出すと、蝉みたいにみんみんうるさくて止まらないのさ。でも、
  腕は確かだ。岩西って男と組んで、事務所を開いてる。まあ、あまり大仕事を
  頼まれることはないみたいだね。所謂、『隙間産業』ってヤツさ」
古泉「……念のため、その事務所の場所も教えていただけませんか?」
桃「いいけど、追加料金がかかるよ。それなりにデカい情報だからねぇ」
古泉「あ………」
鶴屋「かまいません。お支払いします」
古泉「鶴屋さん……!」
鶴屋「………」コクッ
古泉「……すみません」

439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:04:04.48 ID:fymn/KVf0

桃「……ほら、書いといたよ。このマンションの、603号室。そこが、岩西事務所だ。
  岩西が蝉の上司で、蝉に仕事をふっている。蝉は岩西を、カマキリみたいな顔だって
  しょっちゅう言ってるね」
古泉「ありがとうございます」
桃「いちいち礼は言わなくていいよ。まだ聞くことはあるんだろう?」
古泉「はい」
桃「次は『スズメバチ』だったね。こいつは、そこの坊やがさっき言った通り、
  女の殺し屋だ。それも、まだ小娘だね。足技と毒を使うと聞いてる。物騒な
  もんだ。直接見たことはないけど、なかなか頭のネジが吹き飛んじまってる
  奴らしいよ。気をつけた方がいい。今は誰かに雇われているのかねぇ」

440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:13:53.07 ID:fymn/KVf0

キョン「潜伏先は?」
桃「それは私にも分からない。多分、雇っている奴のすぐ傍にいるんじゃないかい?
  殺し屋といえども、誰それを殺すという依頼ばかりを請けるわけじゃない。誰かの
  護衛とか、そういったものも請け負うことが多いからね」
キョン「……そうですか」
桃「さて、最後は名前は分からないと言ったね」
古泉「はい」
桃「でも、ま、特徴がそれだけ分かっていれば、まず間違いないね。そいつは『鯨』だ」
古泉「鯨……?」
桃「そう。左目に眼帯をしている大男と言えば、まず間違いないね。自殺屋だ。こいつは
  有名だね。自殺をさせる専門の男だよ。お偉方に頼まれて、相手を自殺させる」
古泉「自殺……させる……?」
桃「そう。でかくて、物騒な男だって。私は遠くから、一度だけ見たよ。本当に鯨みたいだった」ケラケラ

441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:20:28.69 ID:fymn/KVf0

キョン(海で実物の鯨を見たことがあるのとはワケが違うだろうが…)
桃「こいつの居場所も知りたいかい?」
古泉「……お願いします」
桃「…待ってな」

桃「ほら、これだ」
古泉「ありがとうございます。鶴屋さんも、本当に……」
鶴屋「いいんだよ、心配しなくて。桃さん、私からも、ありがとうございます」
桃「いい子たちじゃないか。ま、たらふく料金をいただいたし、嬢ちゃんとの
  よしみで、こぼれ話を一つと、忠告を一つ、してあげるよ」
キョン「………?」

442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:26:38.68 ID:fymn/KVf0

桃「まず一つ。これは忠告だけどね、あんたたち、気をつけた方がいい」
キョン「………!」
桃「殺し屋連中を雇って人を追い回している奴がいるんだろ?何が目的かなんて
  知らないし興味もないけど、近いうち、ここは戦場になるよ」
古泉「戦場……ですか」
桃「戦場と言っても、ミサイルや銃弾が飛び交うわけじゃない。人々の目に触れない
  場所での、静かな殺し合い、とでも言おうか」
鶴屋「……………」
桃「ま、とにかく、気を付けるに越したことはないさ。私は誰の味方でもない。
  求められた情報を売るだけさ」

443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:33:08.06 ID:fymn/KVf0

桃「もう一つ。これはまあ、噂話に近いけどね。今のゴタゴタに乗じて、『押し屋』も
  この町に入ってるかもしれない」
キョン&古泉「『押し屋』……?」
桃「私もよく知らないんだけどさ。背中を押して、殺すらしい。でも、あんまり情報が
  ないから、都市伝説というか、でまかせみたいなものって説もある」
キョン「………」
桃「だから、今の話にはお代は要らないよ。知ったところで何になる話でもないからね」
キョン「…そうですか」

445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:40:01.87 ID:fymn/KVf0

キョン「お姉さん!」
桃「?」
キョン「ありがとうございました!」バッ
桃「…」
キョン「鶴屋さんも!ありがとうございました!」バッ
古泉「……二人とも、どうも、ありがとうございました」バッ
鶴屋「………」
桃「気を付けるんだよ、坊や」ふ――ーっ…
キョン「はい!」
桃「そっちの坊やもね」
古泉「はい」
桃「嬢ちゃん。今後とも、御贔屓に」
鶴屋「はい……」

446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:51:33.92 ID:fymn/KVf0

ガチャッ   バタンッ……
桃「………」
スッ カチカチカチッ…
桃「……もしもし………私。そう、桃よ」
桃「殺し屋について嗅ぎ回ってる奴らが来たわ。ええ、言われた通り、
  貴方の居場所は伝えてない。まあ、向こうも聞いてこなかったけど」
桃「ええ、ええ。そう、なら問題ないわね。私も後は知らないわ。貴方の好きに
  やれば?ええ……」
桃「」ピッ

桃「――私は誰の味方でもない。求められた情報を売るだけ――」

447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 19:56:14.11 ID:fymn/KVf0

鶴屋「――っふうぅ〜!息が詰まるかと思ったよ…」
キョン(一瞬で素に戻った…!)
古泉「おかげで、必要な情報は手に入りました。感謝しますよ、鶴屋さん」
鶴屋「やだなぁ、一樹君。そんなの、気にしなくていいって!そんなに何回も
   感謝されちゃあ、くすぐったいよっ」
キョン「とりあえず戻りましょう、鶴屋さん。ハルヒ達にも説明しないと…」
古泉「いえ。ちょっと、待ってもらえますか?」

448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:00:01.85 ID:fymn/KVf0

鶴屋「? どうかしたのかい?一樹君」
キョン「忘れ物でもしたか?」
古泉「いえ……聞いてもらえるでしょうか?」
鶴屋&キョン「……………」



キョン「……本気で言ってんのか、古泉?相手は、朝倉を殺した奴だぞ!?」
鶴屋「きょ、キョン君、声が大きいっさ!」
古泉「本気です。僕の本心から、言っています」
キョン「お前………」

450 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:05:45.00 ID:fymn/KVf0

鶴屋「一樹君……。君には、君の考えがあるんだね?」
古泉「はい……」
鶴屋「分かった。なら、協力するよ」
キョン「鶴屋さんっ!?」
鶴屋「ただし、危険なことは分かっているよね?殺されるかもしれないよ?」
古泉「いまさら、僕がそんなことを気にすると思いますか?」
鶴屋「……そうだね、ごめん。馬鹿なこと、聞いちゃったね」
古泉「いえ………」
鶴屋「ただ、一度家に戻ってもいいかい?用意が必要だから」
古泉「はい。……鶴屋さん、本当に、何もかもお世話になって、申し訳ありません。
   必ず、このご恩はお返しします」
鶴屋「古泉君…。謝らなくていいよ。ただ、自分をしっかり保つんだよ?」
古泉「……はい」

451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:09:57.95 ID:fymn/KVf0

鶴屋邸にて…
ハルヒ「キョン!帰って来たのね、早かったじゃない。って、あれ?あんただけ?」
キョン「ああ。少し事情があってな。二人は別の用事に行くってんで、またすぐに
    出て行った」
ハルヒ「別の用事?何それ」
キョン「……さぁな。とにかく、色々と情報が入ったから、説明するぞ。みんな呼んでくれ」

455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:26:15.37 ID:fymn/KVf0

某マンションの6階、603号室にて

 『人生を有意義にする一番の武器は礼儀だ』
 「お前、これが、誰の言葉か知ってるか?」シボッ スウゥゥッ プハァァ〜……
古泉「………」

岩西「ジャック・クリスピン。かの有名なロックミュージシャンだ」

岩西「なのにお前ときたらどうだよ、坊主?ウチに突然やって来て、その上
  『蝉さんに会わせてくれ』の一点張り。挨拶もしねぇでよ」
古泉「………」クルッ ツカツカツカ
ガチャッ
バタン……
岩西「?」
ガチャッ
バタン ツカツカツカ……
古泉「こんにちは。初めまして。お邪魔します」ペコリッ
岩西「もう、遅えよ」

458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:34:14.78 ID:fymn/KVf0

古泉「………」
岩西「はぁっ…だいたいだな、お前みたいのがどうしてウチのこと知ってる。
   どうやって知った?」
古泉「お金の力で」
岩西「…ほォう。『お金の力』でなァ」

岩西「まあ、とにかくだ。まず、『 帰 れ 。』さっさとな」
古泉「そうはいきませんよ。僕はどうしても蝉さんに会って…」
岩西「」スッ
古泉「!!」ビクッ
岩西「ここに来たってことは、分かってんだろ?ここはアレだよ。金をもらって
   人殺し(しごと)を引き受ける所だ。お前みてぇなガキには用事が無ェだろ?
   だからよ、と っ と と 帰 れ ! 」

459 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:38:47.82 ID:fymn/KVf0

岩西「お前も迷惑だよなぁ」
古泉「!」クルッ

岩西「蝉」

古泉「………!!」
蝉「おい、なんだよこいつ?仕事の話があるんじゃねぇのかよ、岩西」
岩西「こいつは招かれざる客ってやつだ」
蝉「へ〜ぇ…お前、誰だ?」
古泉「…貴方は僕のことを知らないでしょうが、僕は貴方のことをよく知っています」
蝉「………」

460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:45:04.45 ID:fymn/KVf0

古泉「僕の仲間が…大勢死んだんです……」
蝉「へぇ、まあ、そーゆーこともあるだろうな。で、何の用だよ?」
古泉「!? ……は?そういうことも…?」
蝉「? なんだよ?そりゃ死ぬだろ、生きてんだから。人は死ぬんだ、みんな死ぬ」
岩西「くっ」ニヤニヤ
古泉「〜〜〜!! こ、殺されたんですよ!」
蝉「それだって珍しいことじゃねえさ。俺だって依頼を請けて人を殺すし」
古泉「くっ………!!]
蝉「不死身の超人なんていない。死ぬことだって殺されることだって、普通にあるだろ。
  お前みてェなガキが考えているよりよっぽど、この世の中はひでェもんなんだよ」

461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:52:59.43 ID:fymn/KVf0

岩西「ひひっ、無駄だ。蝉はお前らとは違う。いくら話したって噛み合わねえよ。
   分かったろ、坊主?さっさと出ていけ」
古泉「 う る さ い っ ! ! 」
岩西「?」
蝉「………」
古泉「人殺しのあんたには分からないかもしれないがな!僕には全然普通のことじゃ
   ないんだよっ!!僕の仲間は、あんたと同じ殺し屋に殺されたんだ!それだけ
   じゃない!あんたも僕の仲間を一人、殺してるんだよ!!」

 蝉「    黙    れ    」

古泉「!!」ビクッ

464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 20:58:40.75 ID:fymn/KVf0

蝉「グチャグチャうるせえよ。うるさすぎ。刺されてえのか?」
古泉「………」
蝉「それじゃあ何か?お前、わざわざ仇討ちするためにノコノコここまで
  やって来たってわけか?馬鹿じゃねぇの?」
古泉「……………」
蝉「どうした?やるならかかって来いよ。やらねェなら帰れ。そして二度と来るな」
古泉「………あんたは、何を考えるんだ?人を殺す時に」
蝉「? どういう質問だよ」
古泉「殺す時は、言い訳を考えたり、理屈を考えたり、そういうことをするのか?」
蝉「するわけねえだろうが」
古泉「何も考えずに、人を殺せるのか?」

465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:03:16.03 ID:fymn/KVf0

蝉(なんだよコイツ……面倒くせェな…)わしゃわしゃ…
蝉「あのな、俺は頭が悪いからよ。難しいことから逃げるのは得意なんだよ。
  だから、そういう時は考えるのをやめるわけだ。人を殺すのがいいこと
  なのか、悪いことなのか、そういうのは考えねえんだよ。
  仕事だから、やる。それだけだ」
古泉「……あんたは、壊れてる………」
岩西「ひひひっ、それは言えてるな」
蝉「うるせェな、岩西!俺は壊れてるんじゃねえ、発展途上なんだ!」

蝉「ったく、人を人形みたいに言いやがって」

467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:08:20.59 ID:fymn/KVf0

蝉「おい、お前。名前は?」
古泉「古泉……一樹………」
蝉「古泉か。お前、俺がお前の仲間を殺した犯人で、それでどうする?仇討ちを
  するのか?」
古泉「………」
蝉「それならお前も、立派な人殺しじゃねえか」
古泉「……仕事の依頼を………しに来たんだ…」
蝉「は?」
岩西「何?」

468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:12:00.44 ID:fymn/KVf0

古泉「あんたに…仕事を頼みに来たんだよ」
蝉「………」
岩西「……ああ、ついに頭がイカレたか」
古泉「嘘じゃないっ!」
ドンッ!

古泉「このバッグに、一億円入ってる」

岩西「………」ポロッ
蝉「………」
古泉「これで、あんたを雇いに来た」

470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:18:45.79 ID:fymn/KVf0

蝉「……仲間の仇打ちに、仲間を殺した奴を雇うのか?」
古泉「僕は……あんたを許すつもりはない。けど、今の僕たちには、敵と戦う力が無い。
   だから、あんたを雇いに来たんだ」
蝉「許す、ね。お前に許してくれと頼んだ覚えは無ェし、お前が人を許せるほど偉いのか
  どうかは俺は知らねえ。けどな、雇う相手にいちいち人殺しのやり方をぶつぶつ
  言ってくる奴からなんて、雇われてェとは思わねえよ」ガラッ ガサガサ…
岩西「お、おいっ、蝉!勝手に机の引き出しをいじるんじゃ…て、おいっ!」
パチッ ジャッジャッ
ガチンッ
古泉「!!」ビクッ
蝉「こいつはリボルバーだ。分かるよな?タマは一発。いつ出てくるかは分からねえ」

471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:21:57.80 ID:fymn/KVf0

蝉「さあ…」
ツカツカツカ
古泉「………!」
ピタッ
蝉「見せろよ」ぐいっ
古泉「………!?」
蝉「お前の覚悟を、人を殺す勇気を…」スクッ
古泉「………」
蝉「おらっ!撃ってみろ!」

蝉「この、おっさんを」
岩西「………!!?」

472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:29:37.33 ID:fymn/KVf0

岩西「バッ!!おま……」
蝉「撃てたら、お前の依頼、請けてやr岩西「おぉい!」
岩西「勝手に話を進めんな!俺が死んで一番困るのは誰だ?お前だろうが!」
蝉「/// 調子にのんな。バカじゃねぇの…」
岩西「バカはお前だ――!!」
蝉「うるせぇな!怒鳴るなよ!発射される確率は六分の一だぜ?当たりゃしねえって!」
岩西「当たるかもしれないだろうが!」

岩西「おい、蝉。あんまり上司をバカにするもんじゃねえぞ。クビにされたいのか?
   路頭に迷って野垂れ死ぬぞ?いいのか?」ぎゅ――――っ
蝉「んぎっ。いてェ、やめろ!耳引っ張んなっ!!」

476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:37:15.67 ID:fymn/KVf0

古泉「ぅ……ぅぁ……」ガチガチガチ……
蝉「ま…待てって。ほら、見ろ」
岩西「〜〜〜!」

古泉「こ……殺す…?僕が……」
古泉(あ、あの時僕は撃った。エレベーターの中のあの男めがけて撃った。
   で、でもでも、あの時は、あの時僕は夢中だったんだ!殺すとか、
   人を殺すとか、冷静に考えられる状況じゃなかった!そ、それに当たりも
   しなかった。僕は、人殺しなんて……で、でも、森さんは?新川さんは?
   機関の皆は?殺されたんだぞ?僕がやらなきゃ、誰がやるんだ?
   誰が、あの『鯨』を…誰が、あいつを雇った奴を……)ガタガタ

蝉「なっ?どうせ口先だけの奴だ。撃てやしねぇ。あれなら、あいつも諦めて
  帰るだろ。作戦だよ、作戦」ひそひそ
岩西「こんな穴だらけの作戦あるか!!」

477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:40:00.25 ID:fymn/KVf0

古泉「そうだ……僕がやらなきゃ………」

蝉&岩西「えっ」

スクッ   ガチッ

古泉「僕が――――!!!」

蝉「ありゃ?」
岩西(こンの馬鹿野郎が!)

480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:43:17.64 ID:fymn/KVf0

古泉「………」ピタッ
蝉「なんだ、こりゃ?もしかして作戦失敗?」
岩西「見りゃわかるだろ!おら、なんとかして来い!」
蝉「チッ」ザッ

蝉「!」
古泉「―――――」
蝉「……………」

蝉「」スッ
岩西「おっおい、蝉!何してやがる!何ナイフしまってんだ!」

483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 21:50:03.09 ID:fymn/KVf0

蝉「」スッ
古泉「!!」
蝉「おい、古泉。俺の右手は今、お前の銃口に向いてる。ナイフ使えなくなっちまったら、
  俺は殺し屋廃業だ」

 「 そ う な っ た ら 、 生 き て る 意 味 も な い 」

蝉「だから、もし『当たり』が出てこの利き手がイカれた時は、ここで首切って死んでやる」

古泉「―――!」
岩西「!!」
蝉「別に頭でも心臓でも好きなトコにその銃を向けてくれてかまわねえけど、俺が、すぐに
  死んじまったら、お前は満足できねェだろ?俺は、お前の仇なんだ。だから、これでいいよな?」
岩西「おいっ、蝉!!」
蝉「こーゆー目をした奴にゃ、負けたくねえんだ」ニヤッ

484 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 22:00:08.53 ID:fymn/KVf0

蝉「どこを狙うにせよ、引き金を引いた時に一発目でタマが出れば、俺は死ぬことになる。
  お前に度胸があるところを確認できれば、お前を認めてやる」
古泉「――ー」
蝉「おい、岩西。止めんなよ!お前の言いなりにはならねえんだからなっ!今度こそ!本当に!!」
岩西「ハァ………」ヤレヤレ

古泉「引き金を引けば、依頼を引き受けてくれるんですね?」
蝉「ああ、撃てたらな、どうし……」
古泉「」ぐっ

 カシンッ カシンッ カシンッ カシンッ パ ン ッ ……………

485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 22:05:17.51 ID:fymn/KVf0

蝉「――――」
古泉「………」
アアァン……アァァン………ァァァン…………
し――ーん……

岩西「ふぅ―――…危ねぇ危ねぇ」
蝉「なっ!てめっ、岩っ…!!」
岩西「まさかいきなりやってくるとはな…寿命が縮んだぜ」
蝉「何してんだよ、バカ―――!!」
岩西「 黙 れ 。こんなトコで流血騒ぎはこめんなんだよ。この絨毯いくらすると
   思ってる!!」
蝉「はぁ?」イラッ

486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 22:11:29.15 ID:fymn/KVf0

岩西「しっかし、坊主。お前、なかなかの食わせモンだな。お前、今、わざと
   ハズしただろ?」
古泉「………」
岩西「咄嗟にこいつを後ろに引っ張って避けたが、そんなことしなくても、お前、
   最初から当てる気無かったな?しかも、当たりが出るまで一気に引き金
   引きやがって…最近の若いのは、いったいどうなってんだよ?」
蝉「………」

古泉「………」
ニコッ
  「 今 死 な れ て は 、 困 り ま す か ら ね 」

495 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 23:24:46.31 ID:fymn/KVf0

戻りました。続きを書きます。

時は戻り…午前02:45 光陽園駅前公園にて…
スタスタスタ…
藤原「………」
スッ
鯨「……………また依頼か?」
藤原「!」
鯨「次は誰を殺す?」

藤原「ふっくっく……。殺すんじゃない……………『死ぬ』んだ」

藤原「そうだろう…鯨」
鯨「………」

497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 23:30:40.74 ID:fymn/KVf0

藤原「まだ機関の残党がうろちょろしている。目障りなんだよ。我々の行動に
   支障が出ても困る。場所は、もう分かっている」
鯨「………そうか」
藤原「頼んだぞ」


藤原「………」
橘「藤原君……」
藤原「! 橘京子…君か」
橘「例の件は?」
藤原「ああ、心配要らん。あの連中もまた、間違いなく、自殺する」
橘「自殺…?やっぱり、あの『自殺屋』に依頼を?」
藤原「アレは使えるぞ。最高峰と呼ばれる殺し屋とは違うようだが、働きは十分だ」
橘「……少々やり過ぎじゃないですか?佐々木さんに報告もせず、独断で――」
藤原「 黙 れ 」

498 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 23:34:25.15 ID:fymn/KVf0

橘「…!」
藤原「君には君の、僕には僕のやり方がある。互いに口出しはしないと決めたはずだ。
   我々はあくまで互いの利害のために協力しているに過ぎない。僕のやり方に
   口を挟むな」
スタスタスタ…
橘「……………」

502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 23:41:45.35 ID:fymn/KVf0

午前10:20 鶴屋邸にて…
キョン「これで、得られた情報は全てだ。とりあえず、三人の殺し屋のことが
    ある程度分かった」
みくる「えぇっと……『蝉』さんに『スズメバチ』さんに『鯨』さん、ですか」
ハルヒ「『さん』付けしなくていいわよ、みくるちゃん。殺し屋なんかに」
みくる「あっ、す、すみません!」
長門「『蝉』と『スズメバチ』はともかく、聞いた限りでは『鯨』という男が
    最も厄介だと思われる」
ハルヒ「そうね。古泉君の話も総合すると、目を見ただけで相手を自殺させられるんでしょ?
    普通の人間じゃ、太刀打ちできないわ」
キョン「ああ。そうだな…」

503 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/11/30(月) 23:49:18.33 ID:fymn/KVf0

みくる「三人のうち、二人は、居場所が分かっているんですね」
キョン「ええ」
ハルヒ「ちょっと!光陽園駅前公園ってどういうことよ!?あそこに住んでるわけ!?」
キョン「いや、住んでるのかどうかは知らんが…。まあ、確かに、そう書いてあるな」
ハルヒ「その『桃』っていう人、どういう人だったのよ。不親切にもほどがあるわ!相手の
    弱点とかぐらい、教えてくれればよかったのに」
キョン「無茶言うな。弱点のある奴が殺し屋なんかできるわけないだろう」
みくる「それにしても、古泉君と鶴屋さん、遅いですねぇ…」
ハルヒ「ホントに、どこに何しに行ったのよ!こんな時に……」
キョン「………」

504 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 00:02:46.23 ID:fymn/KVf0

鶴屋「たっだいまあ〜!」

一同「!!」
ダダダッ
ハルヒ「ちょっと鶴ちゃん!どこ行ってたのよ!?心配したじゃない!」
鶴屋「いや〜、ゴメンゴメン!ちょっと外で用事を済ませて来たんだ」
ハルヒ「用事って……こんな時に何やってたのよ!」
古泉「申し訳ありません。涼宮さん。僕の勝手で……」
ハルヒ「古泉君?」
キョン「ああ、ハルヒ。まあ、とりあえず部屋に戻ってから話そうじゃないか」
ハルヒ「う〜……」

505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 00:05:13.34 ID:ZWUkD+X10

ハルヒ「早く部屋に来てよね!先に行って待ってるから…」
鶴屋「分かったにょろ!すぐ行くっさ!」

キョン「古泉。うまくいったのか?」
古泉「はい。おかげさまで」
キョン「……そうか。いつ、説明するつもりだ?」
古泉「今はまだ…。すみませんが、もうしばらく待っていただけませんか?」
キョン「…分かった」

506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 00:14:21.45 ID:ZWUkD+X10

キョン「!! そうだ、大切なことを忘れていた。鶴屋さん、電話借りてもいいですか?」
鶴屋「いいよっ。あ、そうか!夜遅くに抜け出してきたのに、家に連絡入れてなかったね」
キョン「はい。うっかり忘れてました。ハルヒの前で、家族の話を出すのもどうかと思って、
    そのまま…」
鶴屋「今頃心配してるよ?警察に連絡してるかも…」
長門「その心配はない」
キョン「うわっ!な、長門!いつの間に…」
長門「廊下の途中で、貴方達が来ないことに気付き、様子を見に戻ってきた」
キョン「そ、そうか…。で、心配が無いってのは?」
長門「貴方の部屋に、情報操作を施してきた。貴方の家族が貴方の部屋に足を踏み入れた瞬間、
   貴方の家族は貴方という存在に対するあらゆる記憶を失うようになっている」
キョン「………意味が分からんのだが」
長門「つまり、貴方の部屋に入った人間は、貴方と言う存在に関する記憶を失い、貴方の不在を
   心配したりすることが無くなる。学校の方へも自動的に欠席届が出されるようになっている。
   すべてが片付いたら、貴方が家に戻ればその情報操作は解除される」
キョン「……俺の知らぬ間にいろいろ気を遣わせたみたいだな」
長門「問題ない。私の独断」

509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 00:20:23.59 ID:ZWUkD+X10

長門「ただ、涼宮ハルヒに対してそれを行えなかったのは私のミス。彼女の家族を
   犠牲にしてしまった。私があの場に居ながら…」
キョン「長門、自分を責めるのはよせよ。それだったら、俺だって真っ先にハルヒの
    家の中に駆け込んだのに、結局何もできなかったんだぞ?しかし、それを
    いつまでも引きずっていたら、ハルヒも今度こそ立ち直れなくなっちまう。
    俺たちは、支え合ってなんとか自分を保っているんだ。今のおれたちは、
    そうするしかないんだ」
鶴屋「そうだよ!有希っこはなんにも悪くなんてないよ。誰も責めたりなんかしない。
   みんなで、力を合わせなきゃ!そうでしょ?キョン君」
キョン「ええ!」

510 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 00:23:38.37 ID:ZWUkD+X10

長門「……分かった。気遣いに感謝する」
キョン「とりあえず、行こう。ハルヒをあまり待たせると、酷い目に遭わされるからな」
鶴屋「そうだね。行こう、有希っこ!」
長門「………」コクッ

長門「………」

511 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 00:30:02.86 ID:ZWUkD+X10

ハルヒ「やっと来たわね。それで、鶴ちゃん!一体、遅くなった理由は何だったの?」
鶴屋「実はね、みんながウチに居る間に、色々と必要になると思って、買い揃えて来たんだ」
ハルヒ「へ?」
鶴屋「気に入ってもらえるかどうか分かんないけど、服とか、あ、キョン君の分は一樹君に
   見繕ってもらったよ。それから、他にも色々と…」
ハルヒ「鶴ちゃん…」
鶴屋「にょろっ!?ど、どしたのハルにゃん……?」
ハルヒ「ぐすっ……ありがと………あたしたちのために……そんなことまで………」
みくる「す、涼宮さん……」
鶴屋「な、なにも泣くことないじゃないかっ。気にしなくていいんだよ、ハルにゃん!
   だって、友達じゃないか!困ってたら、助けるのなんて当たり前だよ。それに、
   あたしにとってハルにゃんは親友なんだからさっ!親友のためならこのくらい、
   何でもないよ!」
ハルヒ「うぅっ……!鶴ちゃ〜ん!」

512 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 00:38:00.71 ID:ZWUkD+X10

えらく中途半端ですが、朝が早いので、今日はここまでにしておきます。
テンポが遅いうえに、無駄に時間ばかりかけてすみません。
今日(今、日付変わっちゃってますね)は昨日よりも再開時間がもっと
遅くなるかもしれませんが、待っていていただけると嬉しいです。
ストーリーや、キャラクターの扱いについて、不満を持たれた方。
本当にすみません。心の底から謝ります。
ですが、なんとしても完結させたいので、どうか、見守ってください。
さすがにもう一日で完結させるのはキツそうですが、なるべく早めに
完結させたいと思っています。それでは、また。

554 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 19:23:46.37 ID:ZWUkD+X10

遅くなって申し訳ありませんでした。>>1です。ただいま、戻りました。
保守してくださった方々、本当にありがとうございます。
続けていこうと思います。

数分後、別の部屋にて…
キョン「鶴屋さん、本当にいいんですか?」
鶴屋「何がだい?キョン君」
キョン「俺たちのことですよ。というか、原因は俺ですけど…」
鶴屋「………」
キョン「SOS団は完全に、佐々木に敵として認識されてます。俺たちを匿っている
    いる鶴屋さんにだって、いつ、危険が及ぶか知れない。それでも、いいんですか?」
鶴屋「……キョン君、それは本気で言ってるのかい?だとしたら、お姉さん、いくらなんでも
   怒るよ?」
キョン「………!」
鶴屋「いまさらあたしが、この期に及んで自分の身の安全の心配なんて、してると思うかい?
   あたしは、友達のために命を張る覚悟なんて、有希っこから説明を受けた時にできてたんだよ」
キョン「………」

556 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 19:28:38.57 ID:ZWUkD+X10

鶴屋「君たちが、今までにも色々な問題に直面して、大変な思いをしてきていたのも
   よく知ってるし、まあ、正直殺し屋なんてものまで関わってくるとは
   思わなかったけど、それでもいずれは、そういった荒っぽいことに巻き込まれる
   こともあるんじゃないかと思ってた。ずっと前から、覚悟してたのさ」
キョン「鶴屋さん……」
鶴屋「キョン君。お姉さんから一つ、お願いだよ。まず、何でもかんでもいちいち謝ったり
   お礼を言ったり、しないこと。互いが助け合うのは当たり前なんだから、ね」
キョン「………はい」
鶴屋「それともう一つ」
キョン「………」
鶴屋「ハルにゃんのことは、頼んだよ」
キョン「……任せといてください」

557 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 20:03:57.20 ID:ZWUkD+X10

再び、全員の居る座敷にて…
キョン「なんだ長門、また読書か」
長門「……今は他にすることが無い」ペラッ
キョン「そりゃま、そうだな…」

キョン「あれ、谷口からメールが来てる…そうか、あいつはこのことを知らないんだよな。
    サボりだと思ってやがる……」カチカチ…
キョン「適当に、風邪でも引いたことにしとくか」
ハルヒ「ねぇ、キョン。あんたの家族とか、大丈夫なわけ?」
キョン「!! ……ああ、長門がとりあえず、俺の不在に疑問を抱かれないように
    対処してくれてる」
ハルヒ「そう。それなら、大丈夫ね……有希はなんでもできるのね」
長門「………貴方の家族は、私のせいで」
ハルヒ「有希!そういう意味で言ったんじゃないわ!有希が自分を責めることなんて
    ないの。今は純粋に、誉めただけよ!それに、家の外で騒ぎが起きてるのに、
    気付かずに寝てたあたしだって悪いわよ。……ううん、こればっかりは、誰を
    あたしたちの中の誰を責めても意味がないわ」
キョン「………」

561 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 20:24:37.03 ID:ZWUkD+X10

鶴屋「みんな、お昼だよ。相談とかは、その後にするっさ!」
ハルヒ「はーい!さ、みんな行くわよ!腹が減っては戦はできぬって言うからね!」
トントントン…
みくる「…涼宮さん、本当はまだ辛いはずなのに。強いですよね」
キョン「ええ。俺には真似できそうにないですよ。いつもは、騒がしくて人の迷惑も
    考えないで、滅茶苦茶なことばかり思いつく奴だとばかり思ってましたが、
    あいつの心の中にはきっと、強い芯があるんですよ」
古泉「確かに、この短時間で立ち直れたのは、奇跡に近いですね。もっとも、僕も
   危うく再起不能になるところだったわけですが」
キョン「お前はなんだかんだ言って、自分で何でもできるじゃないか」
古泉「おやおや、そんなことはありませんよ。僕が立ち直れたのも、どなたかのおかげ
   ですからね」

562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 20:32:45.99 ID:ZWUkD+X10

昼食後…
キョン「ここにいると、追われているって実感が沸かなくなるな」
古泉「確かに、そうですね。鶴屋さんが奮発して、我々に御馳走してくれますから」
キョン「ふわあぁ……やっぱ眠いな。昨日は結局ほとんど眠れずじまいだったからな」
古泉「夜が明けてから、すぐに情報屋に向かいましたからね。疲れているんでしょう。
   なんなら、ひと眠りしたらどうです?」
キョン「お前こそ、休んだ方がいいんじゃないのか?」
古泉「僕は、機関の仕事で慣れていますから。二、三日不眠不休で働いたこともあります
   からね」
キョン「それでも、精神を休ませといた方がいいだろう」
古泉「お気遣い、感謝しますよ」
キョン「……なあ、古泉。一つ聞いていいか?」
古泉「? なんでしょう」

563 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 20:39:16.01 ID:ZWUkD+X10

キョン「お前のところの機関は、ハルヒを神同然に認識していたと言ったな」
古泉「以前、お話ししましたね」
キョン「本当のところ、機関ではハルヒに対してどういう感情を抱いていたんだ?」
古泉「……と、言いますと?」
キョン「ハルヒはあの通り、我が儘な性格だろ?おまけに、自分の力について自覚が
    無い。機関の連中は、さんざんあいつに振り回されたわけだろ?やっぱり、
    あいつのことをよく思わない人間だっていたんじゃないか?」
古泉「…それは、例の橘京子から聞かされたという話と関係していますか?」
キョン「全く関係ないと言えば、嘘になる。しかし、元々気になっていたことでもある。
    どんなに仕事一筋の冷静沈着な人間だって、やっぱり我慢の限界とか、あるだろ?」
古泉「そうですね…。確かに、涼宮さんをよく思っていない人間も、機関の内部にはいました」
キョン「やっぱり、そうか……」

564 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 20:45:00.23 ID:ZWUkD+X10

古泉「機関の中でも、年齢を重ねている人にとっては、女子高生を神と崇め、
   彼女のために自身の生活を犠牲にすることが耐え難かったようです。
   仕事に抵抗を感じている人も少なくはありませんでした。みんな、色々と
   事情がありますからね」
キョン「…だろうな」
古泉「実を言うと僕も、最初は機関で働く仕事が嫌で嫌で、仕方がなかったんです」
キョン「………」
古泉「ある日突然、得体のしれない能力が自分に宿ったのを感じ、そのまま機関からの
   お迎えに連れられて、本部まで行きました。親元から引き離され、親しい友人たちとも
   別れることになりましたし、慣れない一人暮らしも最初は苦労をしました。あの頃は
   涼宮さんの顔も知りませんでしたし、僕をこんな目に遭わせるその相手に対して、
   ひどく憤ったものです」

565 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 20:52:36.15 ID:ZWUkD+X10

古泉「そんな状態だった僕に、手とり足とり色々教えてくださったのが、
   森さんと新川さんでした。特に、森さんは年が近いこともあって、
   私生活では実の姉のように様々な面倒を見てくれましたよ」
キョン「……そうだったのか」
古泉「新川さんも、なかなかメンバーに馴染めない僕に真っ先に声をかけてくれて、
   親身になって接してくれました。僕も、最初は心を開かなかったのですが、
   次第に仲間と打ち解け合えるようになりましてね」
古泉「ただ、いざ仕事となると、二人は完全に別人でしたね。もう、身に纏う空気が
   一瞬で変化するんです。切り替えが早いなんてものじゃない。さっきまで穏やかな
   表情で談笑していた二人が、次の瞬間には野生のチーターか何かのような、
   研ぎ澄まされた顔つきになるんです。驚きましたね、あれは」
キョン「想像もできないな…」
古泉「フフッ。そうでしょうね」

566 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 20:59:13.21 ID:ZWUkD+X10

古泉「そんな感じで、僕は機関のメンバーとして活動していくようになったんです。
   初めて神人殲滅に駆り出された時は、本当に怖かったですよ」
キョン「そうだろうな」
古泉「神人への恐怖は、そのままその神人を生み出している人物への恐怖に直結しました。
   こんな恐ろしい怪物を生み出している相手は、さぞや恐ろしい人間なのだろうと…」クスクスッ
キョン「はははっ!確かにそうだろうな!」
古泉「はい。ですから、初めて涼宮さんを見た時の驚きと言ったら、それはもう…」
キョン「予想通りだったってわけか?」
古泉「まさか!全然逆ですよ、逆。こんなに素敵な女性が存在するのかと、驚いたんです」
キョン「……時々、お前の考えは分からんな」
古泉「天真爛漫で、明るく太陽のような印象を受けました。そして、一瞬で考えも変わったんです」
キョン「?」
古泉「この笑顔を護るためなら、自分の命を投げ出してもかまわない、とね」
キョン「………」

567 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 21:05:58.24 ID:ZWUkD+X10

古泉「最初は、これは恋愛感情なのかと本気で悩みました。許されるはずの無い
   ことでしたし、何より、彼女には想い人がいたわけですからね」
キョン「何?あいつに、そんな奴がいたのか?」
古泉「………。とにかく、僕は悩んだんです。そして、自分の中で結論を付けました。
   『これは恋愛感情とは違う』とね」
キョン「じゃあ、なんだったんだ?」
古泉「……年の離れた兄が、幼い妹に対して抱く親愛の情、のようなものだと解釈しました。
   ちょうど、貴方と貴方の妹さんのような感じです」
キョン「ほぉ。それで納得できるとは、やはりお前は凄いな」
古泉(……納得できるわけがないじゃないですか。気を使っているというのに、
   本当に鈍感な方ですね)

570 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 21:16:06.36 ID:ZWUkD+X10

キョン「お前も、大変な思いをしていたんだな。結局俺は、自分は何もしていない
    くせに、いつもボヤいていただけだったわけだ」
古泉「そんなことはありませんよ。貴方だって、大変なこともあったでしょうし、
   自我を殺して彼女に合わせていたことだってあったはずです」
キョン「喫茶店の飲食代を奢るのと、閉鎖空間で命がけで戦うのとでは、比べるまでも
    ないだろうが」
古泉「それは比べることじゃないでしょう。むしろ、貴方はいつも事の中心にいたにも
   関わらず、常に我々三人――長門さんと朝比奈さんと僕から仲間外れにされて、
   重要なことを知らされずに付き合わされていたことが多かった。悪いことをしたと
   思っています。貴方だって、辛かったでしょうにね」
キョン「………そんなことは…」
古泉「思えば、僕はずっと皆さんに嘘をつき続けていたことになりますね。偽りの自分を
   見せて、彼女に本当のことを伝えずに、今まで過ごしていました。ですが、全てを
   彼女に話した今となっては、なんだか妙に清々しいんです。胸の中が透き通ったような
   感じ、と言いましょうか」
キョン「もうあいつに書く仕事をする必要はなくなったわけだしな」
古泉「ええ」

571 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 21:25:20.31 ID:ZWUkD+X10

「書く仕事」って…。致命的な誤植でした。「隠し事」です。

古泉「おまけに、一番心配だった彼女の精神面での影響は、思ったほどマイナスでは
   なかった。勿論、彼女自身の精神力の強さもあるでしょうが、やはり一番の
   要因は、貴方だと思います」
キョン「さっきも、そんなことを言っていたな」
古泉「貴方が、誰よりも涼宮さんの心の支えになったんですよ。前から言っている通り、
   彼女は貴方を選んでいるわけですからね」
キョン「………」
古泉「説明は、もういいですか?機関の中には、彼女のことを本当に大切に思っている
   メンバーが大勢いるんです。勿論、私的な不満から彼女を手に掛けようなどと考える
   輩は一人もいません」
キョン「ああ。よく分かった。済まなかったな、色々訊いて」
古泉「いえ。むしろ僕としても、貴方に話せて良かったと思っていますよ」

577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 22:56:17.04 ID:ZWUkD+X10

戻りました。お待たせしてすみません。
続けます。

キョン「確かに、今までこんな風に、腹を割ってお前と話すことなんて無かったな」
古泉「今のは一方的に僕が喋ってましたがね。まあ、そうですね」
キョン「これが全て片付いたら、その口調も変えるのか?」
古泉「そうですね。涼宮さんにも同じことを言われました。彼女と約束しましたし、
   以前から貴方とは素の自分で話したいと思っていましたから、そうなると思います」
キョン「それは楽しみだな。敬語を使わないお前なんて、ちょっと想像できないが…」
ハルヒ「ねえねえ、何の話?今、あたしの名前を言ってなかった?」
キョン「うわっ!ハルヒ、いつの間に……!?いきなり背後から話しかけるなよ」
ハルヒ「近づく時に、足音で気付きなさいよ」
古泉「これは失礼。話すのに夢中で、全く気付きませんでした」

579 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:03:24.64 ID:ZWUkD+X10

ハルヒ「それで、何の話よ?」
キョン「いや、大した話じゃないんだ。今のは…」
古泉「ええ、気になさるほどではありませんよ、涼宮さん」
ハルヒ「ちょっと!隠し事はやめなさいよ、もう全部知ってるんだから!
    いざという時に知らないことがあったら困るでしょ?」
キョン「いや、そういう話じゃないんだ。本当に」
古泉「ええ、何と言いますか…。男同士の、だべり合いですよ」
ハルヒ「余計に気になるわね……。何を話してたの?エッチなことじゃないでしょうね」
キョン「そんなわけあるか!お前は俺たちをどういう目で見てるんだ」
ハルヒ「ふぅ〜ん……ま、いいわ。嘘はついてないみたいだし」
古泉「おや、分かりますか?」
ハルヒ「もちろん!なんてったって、あたしはSOS団の団長よ?団員が嘘をついてるか
    どうかなんて、一目瞭然よ!」
キョン(やれやれ…。古泉を目の前にして言う台詞じゃないな)

580 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:07:24.91 ID:ZWUkD+X10

古泉「随分長く、話し込んでしまいましたね。そろそろ、あちらの部屋に戻りますか」
キョン「そうだな。これからどうするかについての相談も、続けないと……」

みくる「みんな〜!大変ですっ、早く来てくださ〜い!」

キョン&古泉「!!」
ハルヒ「みくるちゃんの声……?何かあったのかしら」
キョン「行こう。座敷からだ……」

581 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:09:16.00 ID:ZWUkD+X10

ダダダッ
キョン「朝比奈さん!どうしたんですか?」
ハルヒ「みくるちゃん!何があったの?」
古泉「………?」

みくる「長門さんが……長門さんが………」

ハルヒ「有希が?一体どうしたの?」

みくる「長門さんが……いなくなっちゃったんです……!!」

582 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:14:25.71 ID:ZWUkD+X10

キョン「長門が………いなくなった……?」
古泉「それはどういう……」
みくる「さっきまで、この部屋に二人で居たんです。それで、私がトイレに行って
    戻ってきたら、いなくなってて……。どこを探してもいないんです」
ハルヒ「落ち着いてよ、みくるちゃん!まだ、いなくなったとは限らないわ。どこか、
    別の部屋に居るのかも…。ほら、このお屋敷は広いから、迷子になったとか…」
キョン「長門がか?あいつに限って、それはないだろう」
ハルヒ「じゃ、じゃあ、興味本位で探検してるとか…あの子、そういうの案外好きそうじゃない」
古泉「いくら長門さんとは言え、この状況でそれはありえないでしょう。朝比奈さん、さきほどは
   どうしてあのような大声を?」
みくる「テーブルの上を見てください……」
キョン「? ……あっ」
みくる「キョン君たちが持って帰って来たメモ紙が……無くなってるんです…」

583 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:21:00.48 ID:ZWUkD+X10

キョン「……『蝉』と『鯨』の居場所をメモった紙だ。桃さんから貰ってきた奴…」
ハルヒ「そんな……どっか、その辺に落ちてるんじゃない?」
みくる「探しました!風で飛ばされたんじゃないかと思って、部屋中探したんです!
    でも、見つからないんです……。それに、長門さん、なんだか思いつめてるような
    顔をしてて……うっ……うぅっ……」
ハルヒ「な、泣かないで、みくるちゃん。大丈夫よ。きっと、そのうちひょっこり姿を現すから。
    あたしたちを置いて、有希がいなくなったりしないわよ」
キョン「……それは分からない」
ハルヒ「ちょっとキョン!?」
キョン「俺たちは、あいつが自分を責めないように、色々と声をかけた。だから、あいつは余計に
    自分を許せなかったのかもしれない。俺たちに、気を遣わせてると思って……」
ハルヒ「そんな……」
古泉「……探しましょう。まだ、屋敷の外には出ていないかもしれません。いくら長門さんとは言え、
   今の状況下で彼女を一人出歩かせておくことは、危険極まりない」

584 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:28:31.05 ID:ZWUkD+X10

鶴屋「にょろーん!みくるっ、似合いそうな服を持って……あれ?みんな、どうしたの?
   深刻そうな顔して…。何かあった?そう言えば、有希っこは?」
キョン「鶴屋さん、長門がいなくなっちまったんです」
鶴屋「えっ………?」
古泉「この屋敷には、侵入者への警戒用に防犯カメラが設置してありましたね?彼女の姿が
   映っているかもしれません。確認させてもらえますか?」
鶴屋「わ、分かったにょろ!すぐに用意させるっさ!」

キョン「……間違いない。これは長門だ」
みくる「そんなぁ……」
鶴屋「ちょっと!警備員は何をしてるっさ!?なんで止めなかったんだい!?」
警備員「も、申し訳ありません!!ちゃんと確認していたハズなんですが……」
鶴屋「ハズじゃダメなんだよ!!あたしの友達に何かあったらどうすんのさ!!?」
警備員「ひいぃっ!!お、お許しくださいぃ〜!!!」
古泉「恐らく、情報操作でしょう。彼女は不可視フィールドを使って、人間の目を
   掻い潜ることができます。カメラには映像が残りますが、監視員の目には映らない
   のでしょう」
ハルヒ「何ボサッとしてるのよ!すぐに後を追わなきゃ!!」

585 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:34:46.61 ID:ZWUkD+X10

キョン「待て、ハルヒ!焦りは禁物だ。第一、肝心のメモを長門が持ってっちまった。
    これじゃ、後を追おうにも場所が…」
鶴屋「それなら大丈夫だよ。念のために、帰ってからそのメモのコピーをとっといたから」
ハルヒ「ナイスよ、鶴ちゃん!それなら、有希の後を負えるわ!」
古泉「彼女がどういうつもりなのかは分かりませんが、なんにせよ、放っておくわけには
   いきませんね。鶴屋さん、車を出してもらえますか?」
鶴屋「合点承知だよ!!ただし、二手に分かれるとか、そういうのはダメだからね。全員で
   一緒に行動すること!万が一、はぐれたりしたら、それこそミイラ取りがミイラになる
   ようなもんだからね」
ハルヒ「分かったわ!なら、なおのこと、急がなきゃ!!」

586 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:38:48.86 ID:ZWUkD+X10

某マンションにて…
長門(603号室……。ここで間違いない………)
ピンポーン……
長門「………」

し―――――ん……

長門「………」
ピンポーン……

し―――――――ん………

587 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:41:17.64 ID:ZWUkD+X10

長門「……………」
ピンポーン……
ピンポンピンポーン………
ピンポンピンポンピンポーン…………

長門(留守……?)
長門(情報操作……ドアの鍵を解除………)
ガチャッ
長門「………」
ギイィッ

588 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/01(火) 23:45:31.31 ID:ZWUkD+X10

『…………………』

長門(やはり、留守…)
長門(行き先の手がかりになるものは……無し)
長門(………)

バタンッ
スタスタスタ…

カツンカツンカツン……
岩西「さァて、出前でも取るとするか…」
蝉「岩西!たまには豪勢な食事でもおごれよ。上司だろ?」
岩西(このガキ…こんな時ばっかり!)
岩西「………ん?鍵が……開いてる…?」
蝉「?」

589 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:00:55.01 ID:seFZUfUV0

岩西「おい、蝉。お前、出るときに鍵が閉まっていたか、確認したか?」
蝉「はァ?するわけねーだろ。てめェの部屋だろうが、自分で確認しやがれ」
岩西「マズイぞ、こりゃあ……。空き巣にでも狙われてたら…」ギイィ
蝉「はっ!空き巣が入って、何を盗っていくんだよ?現金は置かねえし、パソコンだって
  いつも持ち歩いてるじゃねーか。ま、盗むとしたら、せいぜいお前のお気に入りの絨毯
  ぐらいのもんだろ」
岩西「……ふむ。確かに、荒らされた形跡は無ェな。盗られた物もなし」
蝉「だァから、盗る物がそもそも無ェだろうが!金目の物が置いてありゃ、俺が真っ先に
  持っていくっつーの!」
岩西「しっかし妙だな……。俺は出るとき、確かに鍵をかけたハズだ。とすると、誰かが
   この部屋に侵入したということは間違いない。じゃあ、なぜ、何も盗らず、部屋も
   荒らさずに出て行ったんだ?」
蝉「きっと、アレだろ。お前の部屋が悪趣味すぎて、気分が悪くなって逃げてったんだ」ケラケラ
岩西「……蝉、お前今日、昼飯抜きな」

592 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:09:09.25 ID:seFZUfUV0

光陽園駅前公園にて…
スタスタスタ…
長門「………」

長門「!」

長門「………」スタスタスタ…

鯨「……………」ペラッ

長門「……………」ギッ

鯨「……………」

長門「……………」

593 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:13:02.14 ID:seFZUfUV0

長門「……………その本…」

鯨「……………」ペラッ

長門「私も読んだ」

鯨「……………そうか」

長門「『十字路へ行って、みんなにお辞儀をして、大地に接吻しなさい。だって、
   あなたは大地に対しても罪を犯したんですもの、それから世間の人々に向かって
   大声で、「わたしは人殺しです」と言いなさい』」

鯨「……………よく、覚えているな」

594 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:16:56.24 ID:seFZUfUV0

長門「……一度読んだ本の内容は、忘れない」

鯨「……………そうか」パタンッ

             『 罪 と 罰 』

鯨「俺は、世の中で、小説と呼ばれるものは、これしか読んだことがない」

長門「………」

鯨「誇張でも、自慢でも、卑下でもない」

鯨「これしか読んだことがないんだ」

595 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:20:47.18 ID:seFZUfUV0

長門「………ちなみに、その本は題名を逆さに読むと、『唾と蜜』になる」

鯨「……………気がつかなかった」

長門「………」

鯨「……………」

長門「………貴方が、鯨?」

鯨「……………そうだ」

長門「………なるほど、大きい」

鯨「鯨が小さいと思ったのか」

596 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:28:54.16 ID:seFZUfUV0

長門「………」

鯨「……………」

ヒュッ バッ

長門「………」ジリッ…
鯨「……………」スッ…
長門「………私という個体には、貴方に対しての恨みはない。しかし、こうせざるを得ない」
鯨「……………」

長門(先程のたび重なる情報操作の使用により、情報統合思念体から警告が発せられた。
   今の私は、しばらくの間、満足に情報操作を行えない。しかし、この男と互角に
   戦えるのは私しかいない。ヒューマノイドインターフェースである私には『自殺』の
   概念がない。故に、この男を相手に戦えるのは、私だけ。身体能力が常人よりも
   高い分、私の方が有利のはず)
長門「………」じりっ
鯨「……………」ぐいっ

597 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:32:24.24 ID:seFZUfUV0

ひゅっ
ヒュッ  シュバッ
鯨「……………」
長門(隙だらけ…)
ヒュッ

がしっ

長門(………!?)
鯨「俺の目を…」

           「  見  ろ  」

長門(!! 問題ない。私には通じない。私には…)

598 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:35:27.82 ID:seFZUfUV0

   本当にそうか?

長門「!!?」

  お前は自分の力を過信している
     お前は本当に、この男に勝てるのか?

長門(これは……そんなはずはない。私にはこの男の能力は通じないはず)

        そうか?お前に通じないという保証がどこにある?
      お前には、感情が芽生え始めている。
       人間でもないくせに、人間と同じように、感情がな。

長門「………!!」

602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:40:31.63 ID:seFZUfUV0

    ヒューマノイドインターフェースに感情は必要ない。
     それは全てバグだ。修復が必要だ。お前にはバグが生じている。
   お前はバグの塊だ。お前は、不要な物を背負い過ぎている。

  余計な荷物は降ろすべきだ。何もかも投げ捨てて、楽になりたくないか?
     誰からも縛られない。自由を手にしたくはないか?

長門「そんなことは……私は…」

   お前は消されるぞ?お前はかつて、暴走した。
      涼宮ハルヒの力を利用し、世界をつくりかえたことがある。
    もう一度、同じことが起きないと言えるか?
        彼を、危険な目に遭わせないと断言できるか?

606 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:45:28.65 ID:seFZUfUV0

長門「……………!!」ブルブルブルブル…

きいいいぃぃぃぃぃぃぃぃん………

     消される前に、自分で自分を殺せ
       お前は痛みを感じない
      死ぬことは怖くない  生まれてきた時のことを思い出せ

    生まれてきた時、怖かったか?痛かったか?
       違うだろう  生まれることと死ぬことは似ている
          怖くもないし、痛くもない
     死は、快楽だ   苦痛ではない  さあ、死ね

    人 は 誰 で も 、 死 に た が っ て い る

610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 00:59:38.62 ID:seFZUfUV0

長門「……あ………ぁ……」

    お前の力なら、自分の手で自分の首を絞めて死ねるはずだ
          情報操作を使うまでもない
   死んでいった仲間の後を追うんだ  お前が来るのを待っている

長門「朝倉涼子……?喜緑江美理………?」

 駄目!死ぬわけにはいかない。彼女たちのためにも、目の前の敵を倒さないと…。

              『 倒 す ? 』

          『 何 の た め ? 復 讐 ? 』

    『 結 局 、 そ の 復 讐 も で き な い く せ に 』

612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 01:02:54.46 ID:seFZUfUV0

   ああ、そうか
       死が目前に迫ってきた時
    貴方達も、今の私と同じことを考えたのだ

     世界や目に映る全て
   そしてもしかしたら 自分自身にも絶望して……

   そうか……  貴方達も 自ら死を望んだのか…
     なら、私も早く続かなければ…

長門「待ってて……涼子………江美理……」

    きっと……   貴方達も喜んでくれる……

614 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 01:07:00.99 ID:seFZUfUV0

    『――ちょっと!勝手に決めないでよ、長門さん!』
     『そうですよ!失礼しちゃいます』
   『何で私たちが 死にたがらないといけないのよ(ですか)?』


長門「………あ……」ピタッ

鯨「……………!?」

長門「涼子……?江美理………?」ぽろぽろ…

615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 01:09:39.84 ID:seFZUfUV0

鯨「……………」

長門「……これは、何?なぜ、目から水滴が……?」ぽろぽろ……

鯨「……………」すっ
クルッ
カツカツカツ…

長門「待って」

鯨「!」ピタッ……

長門「貴方に話がある」

617 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 01:14:39.80 ID:seFZUfUV0

どうも。今回はここまでにしておこうかと思います。
本当は今回中に押し屋も登場させたかったのですが、間に合いませんでした。
すみません。
殺し屋無双なせいで、ハルヒ側のファンの方々に嫌な思いをさせることがある
かも知れませんが、二次創作ということで、どうか、平にお許しください。
(というか、全てはキャラクターを活かせない>>1の技量不足が原因です)
如何様に罵られようとも、受け入れるつもりですので、気に入らない点などあったら、
いくらでもぶつけてください。できそうであれば、改善しようと思います。
今日は、昼ごろ、遅くとも夕方になる前には再開できると思います。
見てくれた方々、どうもありがとうございました。
できれば、次回で話のめどを立てたいと思っています。
もうしばらく、お付き合い願えれば幸いです。どうか、見守ってください。
それでは。

642 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 13:06:27.40 ID:seFZUfUV0

今、戻りました。早速続きに取り掛かります。
>>641 すみません。一応、ハルヒと混ぜてあることや、序盤での橘の話のことも考えて、
    彼らの会話の描写も入れた方が感情移入しやすいかと思ったのですが、よく考えたら、
    こんな原文丸写ししまくりの駄作に感情移入も何もあったもんじゃないですよね。
    テンポを悪くしたようで、申し訳ありません。これ以降からは、なるべく無駄な
    描写は省くようにします。

一同、車内にて…
ハルヒ「ここから近いところなら、やっぱり光陽園駅前公園よね」
鶴屋「そうだね。先にそっちから見に行こう」
みくる「……長門さん」
鶴屋「大丈夫だよ、みくる!有希っこは強いから、そんなに簡単にやられたりしないよ。
   きっと、大丈夫!」
みくる「………そうだといいんですけど…」

643 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 13:16:32.45 ID:seFZUfUV0

キョン「………」
古泉「……まさか、彼女が単独行動をとるとは…。流石に、予想外でしたね」
キョン「…ああ。俺は結局、あいつに対して何もしてやることができていなかったんだな」
古泉「貴方が気になさることではありませんよ。彼女を見つけて事情を聞かないことには、
   理由も分かりませんからね」
キョン「ああ…」
ハルヒ「ああもう、全く!有希ったら、どうして一人で行っちゃったのよ!」
みくる「きっと……彼女なりに、何か考えがあったんだと思います」
ハルヒ「それにしたって、誰かに相談とか……無理よね。あの子の性格じゃ、
    誰かに相談するなんて………」

644 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 13:33:38.46 ID:seFZUfUV0

お礼を言い忘れていました。たくさんの保守を、ありがとうございます。
完結に向けて、頑張ります。

一同「……………」
鶴屋「もうっ!みんなして何さ!そんなんじゃいくら探したって有希っこが
   見つからないよ!過ぎたこととか、後のことは今考えたってどうしようも
   ないじゃないか。今は、今すべきことを考えるんだよ!」
ハルヒ「………うん」

キョン(長門……無事でいてくれよ………)

646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 13:57:47.63 ID:seFZUfUV0

>>645 力強い御意見を、ありがとうございます。自分、不安症なもので、
    読んでもらう立場だと特に、相手に不快な思いをさせないか心配に
    なってしまって…。ですが、確かに、自分が書き始めた作品を自分が
    責任もってまとめないと、意味がないですね。ありがどうございます。
    全ては、完結させてから考えます。まずは、やりたいようにやってみます。


運転手「お嬢様、じきに光陽園駅前公園に到着いたしますが…」
鶴屋「うん。みんな、降りる準備はできてるかい?」
ハルヒ「万端よ。はやく有希を探さないと」

バタンッ
鶴屋「……昼間なのに、人が少ないね」
キョン「通りの方には結構いましたよ。今日はたまたまじゃないですか?」
ハルヒ「それより、有希を探さなきゃ!この辺にいなければ、もう別の場所に
    行っちゃってるかもしれないし……って、あっ!」
キョン「ん?どうした!?」
ハルヒ「あれ……有希じゃない?」

647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 14:05:57.98 ID:seFZUfUV0

長門「………」

キョン「…ああ、間違いない!長門だ!」
みくる「長門さんっ!」
ハルヒ「ちょっと、有希!待ちなさい!!」

長門「………!」

ハルヒ「やっと見つけたわよ!もうっ、何やってるのよ!!心配したじゃない!」
長門「………申し訳ない」
ハルヒ「ここって、『自殺屋』が居る場所でしょ?普通の人たちならともかく、
    今のあたしたちは一人でこんな場所に来たらダメよ!狙われてるのよ?」
みくる「長門さん……ふぇぇ……良かったァ………」
キョン「まあ、とりあえず見つかって良かったぜ。どうやら怪我も無いみたいだしな」
ハルヒ「そうよ。有希、危ない目には遭わなかった?まさか、殺し屋と遭遇したとか…」
古泉「………」

長門「……何も、無かった…」
ハルヒ「………そう」ホッ
みくる「本当に、良かったです……長門さん…」
鶴屋「とりあえず、車に戻ろうよ。今の私たちは、人目に付かない方がいいでしょ?」
古泉「そうですね。それこそ、もたもたしていたら殺し屋が通りかかるかもしれない」

648 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 14:13:23.34 ID:seFZUfUV0

ハルヒ「いい?もう、勝手に一人で行動したりしたらダメよ!分かった?」
長門「分かった」
ハルヒ「本当にもう!……ああ、無事で良かったわ。これでひとまず安心ね」
キョン「よし、車に戻るぞ」

キョン「おい、長門。何してるんだ?もうみんな車に戻ってるぞ。お前も早く…」
長門「…後で、二人で話がしたい」
キョン「……? ああ、分かった。皆には話せないことなんだな」
長門「………」コクッ

バタンッ
鶴屋「みんな、乗ったね?それじゃ、出していいよ」
運転手「かしこまりました」グイッ
ブロロロロオォォォォッ……


鯨「……………」

649 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 14:36:27.90 ID:seFZUfUV0

古泉「詳しい話は、屋敷に到着してから伺いましょう。今は皆さんも、長門さんが
   見つかったことで安心しておられるようですから」
キョン「そうだな…。ハルヒも、それでいいだろ?」
ハルヒ「ええ。有希は見つかったんだから、事情を訊くのは後でいいわ」
鶴屋「やっぱりSOS団は、みんなが揃っていないとね!」


キョン「………!なあ、おい」
古泉「……何です?」
キョン「目の前のスクランブル交差点の、あっち側に居る奴……」
古泉「ああ、谷口君ですね。今日は確か、学校が午前で放課だった気が…」
キョン「違う。その隣だ」

キョン「あれ、藤原じゃないか?」

650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 14:41:28.62 ID:seFZUfUV0

古泉「………あの、橘京子や周防九曜とともに行動していた未来人ですか?」
キョン「ああ。遠くて少し分かりにくいが……」

キョン「!!」ビクッ

ハルヒ「きゃっ!ちょっとキョン、いきなり動かないでよ!」
キョン「あいつが今、こっちを見た……。まずいぞ、こっちに気付いてる!!」
みくる「………!?」
古泉「まさか……あの距離で、我々のことに気付くはずが…」
キョン「あいつ一人とは、限らないだろう。遠くで監視している奴がいるのかもしれない。
    今、俺と目が合った……」
古泉「まさか……」

651 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 14:49:40.03 ID:seFZUfUV0

キョン「あいつ、笑いやがった……俺たちに気付いている!鶴屋さん、このままじゃまずいっ!」
鶴屋「お、落ち着きなよキョン君!気のせいだよ、いくらなんだって、向こうからこっちが
   見えるはずないよ。それに、こっちは車なんだしさ。追いつかれるわけ……」
キョン「あいつらは普通の人間とは違うんです!周防九曜や、殺し屋だって、この近くにいる
    かも知れない」
古泉「仮にそうだとしても、こんなに大勢人間が居る中では、彼には何もできませんよ。
   こんな街中で、昼間から騒ぎを起こすわけにはいかないはずです」
キョン「……ちょっと確かめてみるか。運転手さん、道路の脇に、車寄せてもらえますか?」
鶴屋「ちょっと、キョン君!?」
キョン「大丈夫です。バレないように、こっそり見るだけですから」

652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 14:55:52.96 ID:seFZUfUV0

運転手「お嬢様……」
鶴屋「……分かったよ」

キョン「助かります」
鶴屋「どの人?私はその人、見たことがないから」
キョン「ホラ、谷口があそこに突っ立ってるでしょ?」
鶴屋「あ、ホントだ。信号待ちしてるね」
ハルヒ「まっすぐ家に帰ればいいのに…。遊びに来てるのかしら?」
キョン「あいつの斜め前に立っている、あの男です。あいつ」
古泉「……確かに、言われてみればそんな気も…」
キョン「ちょっと、降りてみますね」バタン
鶴屋「ちょっと、キョン君!もし、本当に気付かれていたら…」

653 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:05:11.02 ID:seFZUfUV0

谷口サイド…
谷口(はぁ〜……結局、フられちまったな。なかなか、いい彼女って見つからねえ
   もんだなぁ。俺という男の魅力に気付かないなんて、本当に女って奴は……)
谷口(今日はもう、仕方がない。キョンも国木田もいないから一人だが、ゲーセンでも
   行ってこの傷心を癒やすとするか。ん?なんだ、あの車。馬鹿に高そうな奴だなぁ…)
谷口(いいなぁ。俺も、あんなでけぇ車乗り回したりしてみてえなぁ……。それで、助手席に
   彼女を乗せて、こう……。って、なんでキョンが降りてくんだよ。なんだアイツ。
   メールじゃ、風邪で休むとか言っといて、ぴんぴんしてんじゃねーか。あんな高そうな
   車から降りてきやがって…。待てよ、あれ、鶴屋さんとこの車か?うっひょ〜、なんだよ
   アイツ!学校サボって鶴屋さんとお出かけか!?しかし、それなら多分、涼宮たちも一緒
   だよな…。それなら、朝比奈さんとかにも会えるじゃねえか!よし、決めた!俺もゲーセンは
   やめて、あいつらに入れてもらおう)
谷口「お――――い!」(お、気付いた!)

654 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:09:01.35 ID:seFZUfUV0

キョンサイド…
キョン(谷口ッ!?あの馬鹿、何いきなり叫んでんだ!あれじゃあ、
    十中八九怪しまれて…ホラ見ろ!周りの奴から凝視されてるじゃねえか。
    なんで気にしないそぶりしてんだよ!畜生、あの馬鹿……ん?)

藤原「……………」

キョン(うおっ!?やべっ、無茶苦茶こっち見てやがる!ありゃ、百パーセント
    気付いてるじゃねーか!いや、気付かない方がおかしいか…)
キョン(やべえっ!あの馬鹿のせいで完全に見つかった!まずい、まずいっ!)

655 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:15:56.76 ID:seFZUfUV0

バタンッ
鶴屋「キョン君!車から出たりしたら、気付かれちゃうじゃ…」
キョン「すみませんっ!手遅れです、気付かれました!谷口のバカがこっちに
    気付いて、それで大声出しやがって…」
ハルヒ「なにやってんのよ、あのバカ!アンタもなんでもっと慎重にしなかったのよ!」
古泉「まずいですね…。このままでは危険です。車を尾行でもされたら…」
キョン「すまんっ!やっちまった……」
長門「まずは様子を見た方がいい。相手の出方が分からないうちは、下手な行動は避けるべき」
キョン「長門……」

656 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:18:56.31 ID:seFZUfUV0

谷口サイド…
谷口(なんだよ、あいつ。また車ん中に引っ込んじまった。さては、俺を仲間に
   入れないつもりだな?あの野郎、自分だけいい思いしやがって…。この
   谷口様がそう簡単に諦めると思うなよ?」
谷口(ん………?)

藤原「ふっくっく……。まさか、自分から姿を見せてくるとはな…」

谷口(なんだコイツ…気色悪っ……。どんな笑い方だよ)

658 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:43:14.06 ID:seFZUfUV0

キョンサイド…
古泉「もし、彼の周囲に護衛や、あるいは監視用の人員が配置されているとしたら、
   この車に対して注意が向けられているはずです。発進したら、周囲に気を配って
   ください。何があるか分かりませんから…」
キョン「ああ、そうだな。あいつ、まだこっちをじっと見てやがる」
古泉「手元などに注意してください。何かを取り出したり、合図をするような素振りを
   見せたら、危険です」
キョン「ああ……分かっ……?」
古泉「………?」

キョン(なんだ?おいおい、信号はまだ赤じゃないか。なに車道に踏み出してんだよ)
キョン(お前らの時代じゃどうだか知らないが、今車道に出たりしたら…って、おいっ!)

キョン「危ねえっ!!」

    ド  ン  ッ  ………

659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:48:14.89 ID:seFZUfUV0

谷口サイド…
谷口(なんだか一人でブツブツ呟いてやがるぜ。雰囲気もヤバそうだし、近寄らねえ
   方がいいな。こういう奴は、無視するに限る。面倒事に巻き込まれんのは……)
谷口(っておいっ!こいつ、車道に飛び出しやがった!!危ねえっ!!)

藤原「……………?」

キ・キイイィィィィィィ……………

藤原「!!?」

谷口(と、トラックがっ……!!)

    ド  ン  ッ  ………

660 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:51:45.47 ID:seFZUfUV0

キョンサイド…
ハルヒ「……………」ポカーン…
キョン「……………」ポカーン…
古泉「……………」ポカーン…
みくる「……………」ポカーン…
長門「……………」
鶴屋「……………」ポカーン…
運転手「……………」ポカーン…

キョン「………轢かれた……あいつ………」

661 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 15:58:15.05 ID:seFZUfUV0

キョン(なんだ?今、何が起きたんだ?)
キョン(藤原が、突然、車に撥ねられた。ああ、そうだ。その通りだ。今、見ていた)
キョン(何故だ?)
キョン(歩行者信号はまだ赤のままだ。目の前をビュンビュン車が過ぎ去っていく中、
    あいつ、まるで、こっちに歩き出したように見えた)
キョン(一歩、二歩と踏み出すのが見えた。その直後、轢かれた)

古泉「貴方には、見えましたか……?」
キョン「え」
古泉「見えましたよね」
キョン「見えたって、たった今、目の前で轢かれたじゃねえか。あの、ムカつく
    未来人の、藤原が。いきなり、こっちに歩いて来ようとして…」
古泉「違います」

古泉「彼を押した人間が、見えましたよね?」

663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 16:05:33.78 ID:seFZUfUV0

キョン「……押した?」
古泉「見えませんでしたか?彼の背後の人間が」

古泉「今、彼は、誰かに押されたんですよ」

キョン「―――押された?あいつが?」

キョン(向こう側はまだ騒然としている。当たり前だよな。目の前で、人がいきなり
    道路に飛び出して、大型トラックに撥ね飛ばされたんだ。ここからでも分かる。
    即死だ。助かるわけがない。空中に居る時点で、あいつの首があさっての方向を
    向いていた。不格好に吹き飛んで、地面に頭から叩きつけられた。一連の流れを、
    全部見ていたんだ。その中に、あいつを押した奴がいた?本当かよ、古泉)
キョン「本当に、そんな奴がいたのか?」
古泉「『いる』んです。まだあそこに。まだ、います。あの場所から立ち去ろうとしています」

665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 16:20:27.10 ID:seFZUfUV0

キョン「………本当だ。一人だけ、周りと逆の方向に向かってるやつがいる」
古泉「周りの誰も、気付いた様子がありません。おそらく、彼から目を離さなかった
   僕だけが気付けたのでは…」
キョン「…何故、押したんだ?あいつ、何者なんだ?」
ハルヒ「あんな人前で……なんでバレないわけ!?なんで周りの人は、誰も気付かないのよ!」
古泉「桃さんが……言っていた………」
一同「!?」
古泉「人を背後から押して、死に至らしめる専門の殺し屋…」

666 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 16:28:38.71 ID:seFZUfUV0

某マンションの6階、603号室にて…
岩西「押し屋?」モグモグ
蝉「ほう、押ひ屋」ズルズルッ…
岩西「おい、蝉!スープを飛ばすな!俺の部屋を汚すんじゃねえ!」
蝉(うるせェな…)フキフキ…
蝉「こないだ会った時、『桃』が言ってたんだ。今の混乱に乗じて、押し屋も
  この町に入ってるかもしれないって……」
岩西「そう言えば、前に来たあのガキも、それに関係しているんだったな」
蝉「桃も、背中を押して殺すらしいってことぐらいしか知らねえらしいんだけど…」

668 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 16:39:09.39 ID:seFZUfUV0

蝉「本当にそんな奴いるのか?噂じゃ、都市伝説ってか、でまかせみたいなもんだって
  言われてるじゃねえか」ズルズル……
岩西「………お前、知ってるか?この業界の、最高峰って言われる殺し屋の話」
蝉「業界?人殺しに、業界も何もあるかよ」ズズーッ…
岩西「…そいつの正体も、依頼方法もよく分からねえが、受けた依頼は絶対にしくじらない!
   かわりに、法外な報酬を要求する、クライアント泣かせの嫌な奴って噂だ」モグッ…
蝉「……それと、俺の話に何の関係があるんだよ」カチャッ
岩西「俺は、その押し屋こそが、業界最高峰と言われる殺し屋なんじゃねえかと、睨んでる」
蝉「………」
岩西「まっ、お前もさっさと、それぐらいに一丁前になってみろってこった」
蝉「///なっ……!俺が半人前だって言うのかよっ!?」
岩西「鵜飼いより偉い、ムカツク鵜だっているんだよ、稀にな。せっかく使ってやってんだ、
   お前だって、そのくらいになってもらわなきゃ困るんだよ」モグモグ…
蝉「………業界最高峰ねぇ……」

669 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 16:50:05.91 ID:seFZUfUV0

スクランブル交差点前にて、キョンサイド…
キョン「『押し屋』……とか言う奴か?」
古泉「もし、そのような仕事のプロがいるのだとなれば、あれがまさしくそうだとは
   思えませんか?あれだけの人間がいて、一人も気付かないなんて…」
キョン「確かに、そうだな…。すぐ隣にいた谷口も、気付いていない様子だった」チラッ
ハルヒ「あいつ、いつまであそこにいるつもりよ…」
キョン「さっきあそこで大声で叫んでたが、それから動かなくなっちまったな」
古泉「今は、彼の話をしている余裕はありませんよ!あの、押した男を追いましょう!」
鶴屋「こ、古泉君!何言ってるっさ!?」
キョン「そうだ古泉!いきなり何を言い出すんだ」
古泉「幸い、彼が撥ねられたことで注意があそこに集まっています。今なら、我々が外に出ても
   気付かれませんし、追っても来ないでしょう。何より、急がないと見失ってしまいます!」

670 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 16:54:15.51 ID:seFZUfUV0

キョン「だからって……何も追う必要はないだろう?」
古泉「じゃあ、放っておくんですか?あの未来人は確かに敵ですが、目の前で
   人を押して車に撥ねさせた相手を、みすみす逃すんですか?今、負わなければ、
   そうなりますよ」
キョン「古泉………」
ハルヒ「……分かったわ!古泉君がそう言うなら、皆でそいつを追いましょう!」
キョン「なっ!?ハルヒ、お前」
ハルヒ「追いかけて捕まえてから、何であんなことをしたのかとか、色々訊き出すのよ!
    謎に満ちた相手なら、あたしたちにとって有益な情報を持っているかもしれないじゃない!」
キョン(……いつもの不思議探しとは違うんだぜ?ハルヒ)

671 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 16:58:49.23 ID:seFZUfUV0

長門「……私も、追うことに賛成する」
キョン「長門、お前まで…」
長門「少なくとも、藤原と名乗るあの未来人は我々と敵対関係にあった。
   その彼を殺害した相手が、我々にとっての敵とは限らない。もし、
   プロの殺し屋であれば、彼らは金で動く。我々の力になってくれる
   かもしれない」
古泉「………なるほど。もっともな意見ですね。敵方が殺し屋を雇ってくる
   のであれば、こちらも殺し屋を雇う。今の我々にとっては、悪くない
   考えです。毒を以て毒を制す、ということですか」
キョン「……………」

672 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:02:38.23 ID:seFZUfUV0

長門「正確には、その慣用句は『悪事をおさえるのに、悪事をもってすること』を指す。
   故に、その用法は……」
キョン「分かった。分かったよ。追えばいいんだろ?」
みくる「みんながそうするなら、私も追います。なんだか、気になるし…」
古泉「決まりですね。急ぎましょう、鶴屋さん……?」
鶴屋「………」
鶴屋「分かった。ただそのかわり、みんなで一緒に行動するんだよ?何かあったら、
   すぐに連絡を寄越すこと。いいね?」
古泉「勿論です」

673 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:07:48.56 ID:seFZUfUV0

鶴屋「困ったことがあったら、いつでも呼んでね。すぐに車で駆けつけ…」
バタンッ  バタンバタンッ
鶴屋「………」
運転手「大丈夫でしょうか…」
鶴屋「……ハルにゃんたちを信じるしかないよ」

674 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:12:27.32 ID:seFZUfUV0

谷口サイド…
谷口「…………う…」

  『 う わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! 』

通行人A「救急車だ!救急車を呼べ!!」
通行人B「きゅうきゅうしゃ―――っ!!」
通行人A「馬鹿っ!落ち着け、電話で呼ぶんだよ!」
野次馬A「なんだ、どうした」
野次馬B「車に人が轢かれたんだって」
通行人C「人が急に飛び出したんだ!!」
通行人B「うげぇ……直で見ちまった…」ウプッ…

676 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:25:47.80 ID:seFZUfUV0

通行人D「気が付いたらあの人が道路に出てて…」
野次馬C「人が轢かれた?」
野次馬D「ひでえ。あれじゃ、もう助からねえよ」
通行人B「う…えっ………」
ザワザワ……ザワザワザワ………

谷口(マジかよ……!おいおい、勘弁してくれって!真昼間からグロいモン
   見せやがって…。こりゃしばらくメシが喉を通らねえわ。にしても、
   なんでいきなり車道に飛び出してんだよ。自殺か?なんかブツブツ
   言ってたし、気違いだったのか?う〜わ、マジでひでぇな。ありゃ…)
警官「下がってください!下がって―――!」
谷口(あれ多分、キョンたちも見てるよな…。あいつらも気の毒にな〜。
   声かけてくっか。でも、さすがにこれじゃあ俺も混ぜてくれなんて言えない
   しな。やめとくか…。あれ、あいつら?車から降りてるじゃねーか)
谷口「お―――」
橘「貴方、キョンさんのお友達ですよね」

677 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:33:36.32 ID:seFZUfUV0

谷口「!?」ビクッ
谷口「えっ?あっ……(びびった!いきなり後ろから声かけてくんなよ)」
橘「大丈夫ですか?ひどかったですねぇ、今の。撥ねられた人、私の知り合い
  なんですよ」
谷口「へ?あ、そ、そうなんだ(なんだよ。よく見りゃ結構可愛いじゃねえか)」
橘「まさか、こんなことになるなんて…」うるうる…
谷口「!?」ドキッ
  (涙目で上目づかいだと!?そいつは反則だぜ!)
橘「ねぇ。聞きたいことがあるんです。見てたんでしょ?今の」
谷口「あ、ああ!バッチリ見てたとも!いいぜ、なんだって答えるぜ!」キュピーン!
橘「じゃあ、ちょっとついて来てもらえます?車が用意してあるのです……」スッ…

678 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:44:15.50 ID:seFZUfUV0

藤原が撥ねられた場所から200メートルほど後方にて、SOS団サイド…
ハルヒ「古泉君!見失ってないわよね?」ハアッハアッ…
古泉「はいっ!しっかり追っています!」ハァハァ…
キョン「追うと決めたからには、逃がしてたまるか!」
ダダダッ……
??「………」スタスタ… すうっ……
SOS団「!?」
古泉「そこの角を、右に曲がりました!」
ダダダッ……
バッ
SOS団「………」
キョン「………っ!」
ハルヒ「いない……」
古泉「そんな!今、確かに…」
キョン「ああ、俺も見てた。こっちに曲がったはずだ」
みくる「道が、二手に分かれてます!」
古泉「右か、左ですね…」
キョン「どっちに行ったんだ…長門、分からないか?」
長門「……相手の位置検索が不可能。詳細がつかめない。こんなことはありえない…」
キョン「長門にも正体不明ってことか?そんな奴がいるのかよ…」

679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:47:09.80 ID:seFZUfUV0

古泉「長門さんにも相手の足取りがつかめないとなると、ここは我々も二手に
   分かれるしか……」
ハルヒ「駄目よ!鶴屋さんと約束したじゃない、みんなで一緒に行動するって!」
キョン「しかし、相手がどっちへ行ったか分からないんだぞ?」
ハルヒ「………左よ」
古泉「え?」
みくる「涼宮さん……?」
ハルヒ「左へ行ったわ。あたしには分かる…。行くわよ!」ダダッ
キョン「お、おい!待て、ハルヒ!!」

680 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 17:50:43.15 ID:seFZUfUV0

キョン「ハルヒ!分かるって、どういうことだよ!?」タッタッタッ
ハルヒ「なんとなく、左だって思うのよ。あ、ホラ!」

??「………」スタスタ…

古泉「……驚きましたね。涼宮さんの能力が働いているのでしょうか?」
キョン「まあ、多分そうだろうな。それ以外には、考えられない…」
ハルヒ「なんでもいいわ!ここまで来て、逃がしはしないわよ!!」
みくる「ふえぇ……涼宮さん、すごいです……」
長門「………」

681 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 18:01:07.58 ID:seFZUfUV0

キョン「………!また、見失った……」
古泉「くっ……どっちに……!」
ハルヒ「待って……こっちよ!」バッ
ダダダッ……

キョン「今度は!?」
ハルヒ「………こっち!」
ダダダッ……

キョン「ハァ……ハァ………」
古泉「え……駅に着きましたね…」ゼェゼェ…
長門「……改札を通った」
ハルヒ「追うわよ!みくるちゃん、切符を買って!お金は……これで足りるはず!」スッ
みくる「えっ!?大丈夫なんですか……?」
ハルヒ「分かるのよ。あいつの選ぶ道も、どこで電車を降りるのかも、これから何をすれば
    いいのかも、全部!ぜぇ〜んぶ!!」

682 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 18:03:08.57 ID:seFZUfUV0

キョン「…朝比奈さん、今はこいつを信じましょう」
みくる「! 分かりました!」
ハルヒ「頼んだわよ。あいつがどの電車に乗るのか、確かめなくちゃ!」バッ
キョン「!? ちょ、待てハルヒ!切符入れなきゃ改札通れないだろうが!!」
ブーッ ガシャンッ
ハルヒ「何よ!こっちは急いでんのよ!?」
キョン「何に怒ってるんだ、何に……」

687 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 18:46:04.70 ID:seFZUfUV0

戻りました。それでは、続けます。

ハルヒ「ようやく乗れたわね…」
キョン「お前があそこで駅員相手に食ってかからなければ、もっと早く乗れた
    はずなんだがな」
ハルヒ「うるさいわね……結果的に乗れたんだからいいでしょ?」
古泉「相手の乗っている電車まで分かるとは、驚きましたよ」
ハルヒ「本当にね。自分でも不思議なんだけど、自然と分かっちゃうのよ。相手の
    乗っている電車から、今居る車両から、座ってる席から、全部ね」
キョン「座っている席は目で見りゃ分かるだろ」
ハルヒ「見なくてもあたしは分かるの!」

688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 18:51:54.22 ID:seFZUfUV0

また言い忘れてました…。 保守、ありがとうございます。

みくる「涼宮さん、あんまり大きな声を出すと、バレちゃいますよ!」オロオロ
ハルヒ「大丈夫よ。わざと離れた席に座ったんだから」
古泉「五人分座れるだけのスペースがあって、良かったですね」
キョン「全くだ。俺もさすがにこれ以上は立ってられなそうだからな…」
長門「全体的に電車内はあまり混んではいない」
ハルヒ「確かにそうね。これなら、見失う心配はないわ」
キョン「なあ、ハルヒ。思うんだが」
ハルヒ「なに?」
キョン「俺たちは、これから殺し屋の住処に乗り込むわけだろ?」
ハルヒ「そうなるわね」
キョン「俺たち五人だけで、大丈夫だろうか…」

689 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 18:56:28.85 ID:seFZUfUV0

ハルヒ「何かあったら携帯で呼べって、鶴屋さんが言ってたじゃない」
キョン「それでもだ。呼んだらすぐに目の前に助けが到着するわけじゃないだろ?」
ハルヒ「それはそうね」
キョン「もし、相手が実は複数人いて、俺たちが待ち伏せされていたらどうする?」
古泉「………」
ハルヒ「……それでも、行くわ。たとえ待ち伏せされていようと、行くわ。だって、
    やるしかないじゃない」
キョン「……そうか、そうだな。そうだよな。やるしかない、か」
古泉「…そうですね、やるしかない」
みくる「…やるしかない、です」
長門「…やるしかない」

691 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 19:01:56.97 ID:seFZUfUV0

訂正:鶴屋さん→鶴ちゃん ハルヒは鶴屋さんをこう呼んでますよね。失礼しました。

ガタンガタン……
電車内アナウンス『間もなく、○○駅。○○駅です。お降りの方は、お忘れ物の無いように――』
??「………」

ハルヒ「……あの様子だと、次の駅で降りるみたいね」
キョン「そうか?俺には、特に分からんが…」
みくる「涼宮さんには、分かるんですか?」
ハルヒ「分かるわ。なんとなくだけど…」
古泉「念のため、こちらも降りる用意をしておきましょう」

692 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 19:11:08.75 ID:seFZUfUV0

ガタンガタン……キキ・キキイイイィィィィィィィ……
プシューッ……
ざわざわ ドヤドヤ……

??「」

ハルヒ「降りたわ。追うわよ!」
キョン「ああ」スクッ

??「………」

ハルヒ「また歩くみたいね。みんな、大丈夫?」
みくる「私はまだ平気ですよ」
長門「私も問題ない」
古泉「僕もです」
キョン「日ごろ、あの坂道で鍛えている甲斐があって、なんとか大丈夫だ」

693 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 19:16:57.96 ID:seFZUfUV0

数十分後……

??「………」スタスタ…

ハルヒ「…気味が悪いわね。曲がり角で曲がるたびに、いちいち姿が消えるなんて」
古泉「ええ。何より、長門さんでさえ捕捉できないとなると、人間なのかどうかさえ
   怪しく感じます」
キョン「気配も足音も無い。静かすぎて、存在そのものを薄く感じるくらいだ」
みくる「なんだか、幽霊みたいです……」
長門「少なくとも、人間であることは確か…ただし、何か特別な能力を持っている可能性がある」

694 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 19:22:47.55 ID:seFZUfUV0

??「………」スタスタ…
カチャ… バタン……

ハルヒ「……着いた…?」
キョン「おいおい、嘘だろ……?……何だよ、これ」
古泉「玄関には、子供用の自転車に……サッカーボール…?」
みくる「そんな……」
長門「………」
キョン「押し屋の家だろ?…殺し屋の自宅なんだろ?」
キョン「これじゃあまるで、子供がいて家族がいる……普通の家じゃないか―――」

697 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 19:36:17.75 ID:seFZUfUV0

裏通りの廃ビルにて…
ドンッ
谷口「いてっ!」ドタッ
橘「………」
谷口「な、何すんだよ!いきなり乱暴な……ここどこだよ?聞きたいことがあるんじゃ
   なかったのか?」
橘「はぁ?やれやれ、まだそんなことを言ってるんですか?随分とお頭の血のめぐりが
  悪いみたいですね。そんなんだから、簡単に騙されるのです」
谷口「は? だ、騙す?なんだよ、そりゃ……」
ガチャガチャ…
谷口「? な、なんだよ。誰だよ、そいつら…」
柴「………」
土佐「………」
橘「話を聞きたいなんて、あんなの嘘に決まってるじゃないですか。あんまり
  簡単についてくるから、てっきりこっちが騙されているんじゃないかと心配
  したぐらいですよ。でも、そんな心配は要らなかったみたいですね」

698 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 19:45:26.35 ID:seFZUfUV0

谷口「嘘って……ど、どういうことだよ?説明しろよ!?」
橘「あ、嘘って言っても、彼と知り合いだって言うのは本当ですよ?ま、彼を
  殺すように押し屋に依頼したのは私ですけど」
谷口「……? は? オシヤ? 何言って……」
橘「彼は独断専行が過ぎたんです。勝手にバカ高い殺し屋を雇って、勝手に私の
  ところの組織のお金を使っていくんですよ?信じられます?佐々木さんに
  許可も得ずに」
谷口「は?佐々木……?そう言えば、キョンの中学ン時の女友達に、そう言う名の奴が…」
橘「とにかくです。藤原君は用済みになったんです。だから、始末したのです。私が。
  あの時、彼がちゃんと死ぬのを見届けるために、あの場に居たんですよ。そしたら、
  貴方を見つけたのです。以前、資料を見たときに貴方の顔を知っていましたから、
  貴方と判断するのは楽でした。そして、思いついたんです。この計画を」
谷口「……計画?お前、何言ってんだよ。意味分かんねえって…」

701 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 19:56:37.41 ID:seFZUfUV0

橘「藤原君もねぇ…。死ぬ直前に、キョンさんたちを発見したとか言って、
  連絡寄越してきたんですよ。でも、どこにいるのか尋ねても、『ふっくっく。
  そのうち分かるさ』とか言ってきて、で、結局分からずじまい。だって、彼、
  死んじゃいましたから。こっちは分かるはずないですよね。まったく、
  情報を出し惜しみするから、こういうことになるのです」
谷口「………」ポカーン…
橘「ま、いいのです。今からそれを調べるための方法をとるわけですから♪」
谷口「お、おい、待てよ。何する気だよ、俺に。おいっ……おいっ!」
橘「うるさいですねぇ…。これだから、男は嫌いなのです。うるさいし、下品だし、
  臭いし……。仕事上の付き合いはしますけど、それ以外はイヤですね。吐き気が
  します」
土佐「………」ガチャガチャ…
柴「………」ガチャガチャ…
谷口「ひっ………!」
橘「だから、そんな吐き気のするあなたに朗報です」

「この人たちが、あなたを芸術的に分解してくれるそうです」クスクス…

703 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:04:54.79 ID:seFZUfUV0

住宅街、押し屋宅(?)前にて…
ハルヒ「………」すぅっ…
ピンポーン
SOS団「……………」
し―――――ん……

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン……
SOS団「……………」
し―――――ん……

ドンッ!
ハルヒ「ちょっと!出て来なさいよ!いるんでしょ!?話があるのよ!!」ドンドンッ
キョン「おい、よせ!ハルヒ。近所迷惑だ。周りにも家があるんだぞ?」
ハルヒ「でも、家の中に入って行ったのは間違いないわよ?呼んでるんだから、
    出て来なさいよ!」ドンドンッ
古泉「まさか居留守が通じると思っているわけではないでしょうが…」
キョン「そうだな。うるさいと一言、文句ぐらい言いに来ても良さそうなもんだが」
ハルヒ「ああ、もう!埒が明かないわ!こうなったら、窓でもぶち破って…」
少年「お姉ちゃん」

704 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:10:03.22 ID:seFZUfUV0

ハルヒ「へ?」

少年「ここ、僕達の家だけど…何か用?」
少年2「………」

キョン(この家の子供か?いつの間に背後に…)
みくる(背中に羽根がついてる…可愛い///)

少年「誰?お父さんの知り合い?」
ハルヒ「………お父さん…?」チクッ…
   (お父さんって……)
少年「ねえってば」
ハルヒ「あ!え…と…そう。あたし、君達のお父さんに会いに…」
??「俺に何か用か?」

705 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:22:50.51 ID:seFZUfUV0

ハルヒ「!!?」ビクッ
キョン「なっ!?」
古泉「………!」
みくる「ぴゃっ………!?」
長門「………」

??「………」

キョン(やべぇ……知らんうちに挟まれてた!逃げ場無ェじゃねえか!)
ハルヒ「あぁっと……その…」
??「話があると言っていたな。なら、中で話そう」スイッ
ガチャッ……
ハルヒ「………」
キョン(どういうつもりだ?まさか、中へ入れて俺たちを…。しかし、子供が
    いる目の前じゃ、いくらなんでも……)
キョン「ハルヒ、とりあえず、入っとこう」
ハルヒ「!! ん、そうね…。やるしかない…」

706 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:29:17.60 ID:seFZUfUV0

キョン(いくら殺し屋と言えど、子供の前で迂闊に他所の人間を殺したりしないだろ…。
    俺たちは、見かけはただの高校生のはずだしな)
??「………」スタスタスタ…
キョン(しかし、この家に踏み込んで、父親が殺人者だと宣告すんのか…。気が引けるな)

ガチャ
??「リビングで話そう」
ハルヒ「………」コクッ
スタスタスタ…
女性「あら、いらっしゃい」カチャカチャ…
ハルヒ(奥さんかしら?若いわね、女子大生みたい…)

708 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:34:45.29 ID:seFZUfUV0

??「…妻の、すみれだ」
すみれ「ごめんなさいね。ウチの人がなかなか玄関に出ていかなくて…」
ハルヒ「は……はぁ…」

少年「お母さ―――ん!お腹すいた――!」

すみれ「はいはい。今、ご飯にするわよ」パタパタ…
少年「ねえねえ、お姉ちゃんたち、何しに来たの?もしかして、ドロボー?」
少年2「お兄ちゃん、ドロボーは玄関からは入らないよ」
ハルヒ「えっ!?いや、ちが……」
すみれ「健太郎、孝次郎!バカなこと言ってないで、お料理、テーブルに運んで!」
健太郎「は―――い!」
孝次郎「はぁい」
ハルヒ「……………」

709 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:39:31.01 ID:seFZUfUV0

健太郎「お母さん!俺の、大盛りだよ!おおもり―――!」
孝次郎「僕はふつう」
すみれ「はいはい」
ハルヒ「……………」

   母「ハルヒ、これ、テーブルに運んで頂戴!」
 ハルヒ「はーい!あ、お母さん!それ、あたしの大盛りにして!」
   母「はいはい」
   父「ただいまー」
 ハルヒ「あ、お父さん!お帰りなさーい!」

ハルヒ「……………」

710 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:44:47.13 ID:seFZUfUV0

すみれ「あなたたちも、夕飯食べてってね。たくさん作ってあるから」
キョン「えっ?あ、すいません。じゃあ……(たくさんって、こっち五人だぞ?)」
古泉「……とりあえず、合わせておいた方が良さそうですね」
キョン「…だな。おい、ハルヒ。………ハルヒ?」

ハルヒ「……………」ぽろぽろ…

キョン「お、おいっ……」
すみれ「あらあら、どうしたの?」
みくる「涼宮さん―――!」
孝次郎「お姉ちゃん、泣いてるの……?」

ハルヒ「ぐすっ……うっ……ぐうっ…う――――……!」

711 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:52:43.85 ID:seFZUfUV0

??「……どうしたんだ?」

ハルヒ「――――――――………!!」
ごしごしっ
ガタッ
??「!」
ハルヒ「あ、あなたに聞きたいことがって、追って来たのよ!まず、あなた……」
??「あさがお」
ハルヒ「……へ?」
槿「それが名前だ。『むくげ(槿)』と書いて、あさがおと読む」
ハルヒ「…あ、そう……。槿さん、あたしたち、あなたが交差点で…」
槿「」すっ
ハルヒ「!?」
槿「人の名前を聞いておいて名乗らない相手は、信用しない主義なんだ」
ハルヒ「……涼宮…ハルヒ……」

714 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 20:58:00.14 ID:seFZUfUV0

槿「では、涼宮ハルヒ。君に質問しよう」
ハルヒ「え?」

槿「君の『能力』は、なんだ?」

ハルヒ「え………」
SOS団「………!!」
槿「君達が、俺を追っていることには気付いていた。まず、君達は最初の角で、
  俺を見失ったはずだ」
古泉(!! ……当たっている)
キョン「…俺たちを、撒くつもりだったのか?」
槿「追わせるつもりはなかった」

715 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 21:08:48.69 ID:seFZUfUV0

槿「それからも、俺の乗る電車、乗っている車両まで追ってきた。降りる駅は
  目で確認できたかもしれないが、その後も君達は追ってきた。何度も、君達は
  俺を見失ったはずだ。だが、今、君達はここにいる」
ハルヒ「………」
槿「俺は、追わせるつもりはなかった。
  つまり、普通の人間には、俺を追って来れるはずがないんだ」
ハルヒ「う………」
古泉(普通の人間には、ですか。やはり、この槿という人物も何か特殊な能力の
   持ち主というわけですね)
槿「涼宮ハルヒ。君の能力はなんだ?」

717 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 21:16:32.23 ID:seFZUfUV0

ハルヒ「……あなたに言う必要はないでしょ?そんなことより、どうしてあの
    交差点で人を…」
健太郎「『キョンへ、日曜日はいつも通りに、喫茶店へ集合。遅れたら罰金』…。
    ねえ、これ、誰からのメール?」
孝次郎「きっと彼女からだよ」
ハルヒ「!?」
キョン「あっ!俺の携帯、いつの間に!?」
健太郎「『キョン、この前のDVD、サイコーだったろ?また、あのシリーズ
    貸してやるからな』これは?」ドタドタ
キョン「と、友達からだよ!返せ―――!」ドタドタ
孝次郎「きっとエッチなDVDだよ」
キョン「断じてちが―――う!!」

718 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 21:21:03.51 ID:seFZUfUV0

古泉「おやおや、これは微笑ましい光景ですね」
キョン「おいこら、何を笑ってやがる!お前も手伝え!!」
健太郎「ねえねえ、キョンってお兄ちゃんの名前なの?」
キョン「いや、それは…」
健太郎「ヘンな名前―――!アハハハハ―――!バカジャナイノ――!!」
孝次郎「くすくす」
キョン(………屈辱だ)

ハルヒ「………」
ちらっ…
槿「………」
ハルヒ「………」

721 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 21:31:39.75 ID:seFZUfUV0

すみれ「ねえ、とりあえず座ったら?
    難しい話は、みんなでご飯食べてからにしましょうよ」カチャ
健太郎「食べる、食べる―――!!」ポイッ
孝次郎「僕も!」
キョン「おわっ、携帯投げるな!」キャッチ…
キョン(危ねぇ、画像フォルダを見られたら俺は終わりだ。電源切っとこ…)

ハルヒ「………あの…」
槿「…食べていけばいい…」

健太郎「お兄ちゃんたちも!早く、早く!」
キョン「分かった分かった、そう急かすな…」
古泉「折角ですから、頂戴しましょうか」
みくる「…そうですね」
長門「………」ぐぎゅるるる……

ハルヒ「……………わ…わかったわよ…」

723 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 21:42:22.73 ID:seFZUfUV0

>>1に、それぞれのメンバーが対決する図式になっていますが、実はその通りに
対決してはいません。イメージ的に共通するキャラクター同士を並べてみた感じです。

裏通りの廃ビルにて…
『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか電源が入っていないためかかりません』
橘「う〜ん、おかしいですね。キョンさんの電話に繋がらないのです」
谷口「お、おい!返せよ、俺の携帯!」
橘「………」ツカツカツカ…
谷口「だいたい、こんなことしてタダで済むと思って…」
橘「うるさいですよぉ〜」
カチャカチャ…
土佐「クックック……」
柴「ヒヒヒ……」
谷口「お、おい……何やって…」
みりっ……

724 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 21:48:56.42 ID:seFZUfUV0

谷口「!! おおおい、おお俺の指に、な何するつもりだよ…」
柴「そうだな…まずはオーソドックスなやり方として、軽く爪でも剥がすか」
土佐「痛かったら痛いと言っていいぞ。それを聞くのも楽しみの一つだ」ヒヒヒ…
谷口「あ……ぁ………」ブルブル…
橘「別に聞かなくてもいずれ分かることですけど、一応、儀礼的に聞いておきますね」

橘「キョンさんは、どこですか?」
谷口「し…知ら……な…」
みりりっ…
谷口「!!?」ビクッ

橘「 ど こ で す か ? 」

727 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 21:58:44.02 ID:seFZUfUV0

谷口「ひぃ………し……知らない……本当だ…しらな」
         び   つ   っ
谷口「ッ!!! ああああっ!!!  ああああああああああああああああっ!!!」
橘「………」

谷口「うっ……うぅ…………なんで……俺が…何したってんだよォ……」
橘「強いて言うなら、あの場に居たのが悪いですね」
谷口「ううっ……ぐっ………くぅっ………」
橘「あなたに詳しい事情の説明はいらないと思いますので、無駄なお喋りは
  やめておきます。まあ、一つだけ教えてあげるとすれば、あなたは餌です」
谷口「ぅぐ……え………餌……?」
橘「はい。キョンさんを呼び出すためのね。あなた、一応は彼と仲がいいんでしょう?」
谷口「あいつが……何をやったんだよ…?」
橘「それも、あなたは知らなくていいんです。はいじゃあ、続き行きますよぉ」

730 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 22:08:34.08 ID:seFZUfUV0

谷口「待て待て待てっ!!なんだよ、それ!?アイツを呼び出すって…
   お前、誰なんだよ!!」
橘「だから、あなたは知らなくていいんですってば。本当に、頭悪いですね」
カチャカチャ
橘「キョンさんが来れば、一応あなたは解放しますよ?居られても邪魔なので。
  キョンさんが来なければ、やっぱり居られても邪魔なので、殺して臓器売買にでも使うか、
  手足を切り取って置物にでもして売ります。それなりに値がつきますから」
谷口「おっ……置物って…お、お前……」
橘「じゃあまた、あんまり意味ないけど一応、聞きますね」

橘「キョンさんは、どこにいるのですか?」

733 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 22:22:19.58 ID:seFZUfUV0

槿の家にて…
ハルヒ「御馳走様!すっごく美味しかったわ」
すみれ「あら、そう?それは良かったわ」ニコッ
みくる「本当に美味しかったです。今度、作り方教わってもいいですか?」
すみれ「いいわよ。女の子は、色々な料理ができた方がいいからね」
健太郎「うちのお母さんは、なんでも料理が得意なんだよ」
長門(皿に残ったクリームソースが名残惜しい…。しかし、ここは我慢)カチャ
キョン(ハルヒの奴、食事を始めたら急に元気になり出したな)
古泉(まさか、後を追った殺し屋の家で夕食を御馳走になるとは…)
槿「………」

734 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 22:27:57.33 ID:seFZUfUV0

孝次郎「………」カキカキ…
ハルヒ「孝次郎君、何を書いてるの?」
孝次郎「…カブトムシ当てるの」すっ
ハルヒ「カブトムシ?」
すみれ「この二人は、昆虫のシールを集めるのが趣味なの。それで、ダブった
    シールを十枚送ると、カブトムシが当たるんだって。珍しい気持ち悪い
    やつなの」
ハルヒ「へぇ〜…」
長門「ユニーク……」
孝次郎「ヘラクレスオオカブトムシ…」

孝次郎「これ、何て読むの?」
ハルヒ「どれどれ?これはねぇ――」

735 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 22:37:29.15 ID:seFZUfUV0

キョン「うおおおぉぉぉぉっ!」カチカチカチ……
健太郎「………」カチッ カチカチッ
『KO!YOU LOSE!』
キョン「だあっ!また負けたーっ!!」
健太郎「お兄ちゃん、ゲーム弱いね…」
キョン(お前が強すぎるんだよ…)
長門「どいて。次は私」
キョン「おう、任せたぞ。長門」
長門「………」ピッ
『CONTINUE!!』
健太郎「よォしっ!」

数秒後…
『KO!YOU LOSE!』
健太郎「いょっし!僕の勝ち!!」
長門「………」ピッ
『CONTINUE!』
健太郎「えっ!?」
長門「……もう一回」

737 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 22:41:11.37 ID:seFZUfUV0

数分後…
『KO!YOU LOSE!』
健太郎「よっしゃー!十連勝!」
孝次郎「お兄ちゃん強い!」
長門「………」ピッ
『CONTINUE!』
健太郎「あっ!」
長門「もう一回」
健太郎「またあ?何度やっても俺には勝てないって!!」
長門「私が勝つまでやる」
キョン「おいおい、長門……。大人げないぞ…」

740 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 22:50:21.05 ID:seFZUfUV0

ハルヒ「……………」ぼ―――っ
槿「………君は、混ざらないのか?」
ハルヒ「え?あ、うん。見てるだけでいいわ」
槿「そうか……」
ハルヒ「………ねえ、さっき、あたしの能力がどうのこうのって、言ってたわよね?」
槿「………」
ハルヒ「教えてあげるわ。と言っても、あたしも今朝知ったばかりなんだけど」
槿「………」

槿「……………」
ハルヒ「あたしが知っていることはこれで全部。いまだに、自分でも実感がわかないけどね。
    あたしは願ったことを実現させる能力を持っていて、そのあたしの周りに、あたしが
    望んだことで、宇宙人、未来人、超能力者が集まってきている。こんな話、信じられ
    ないかもしれないけど…」
槿「………」

751 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/02(水) 23:53:28.50 ID:seFZUfUV0

戻りました。今夜のうちに書けるだけ書いて、明日にはなんとか完結させたい
と思います。このスレ内になんとか収めきれるように努力します。

みくる「へぇ〜、こうやると、うまくできるんですね」
すみれ「そう。流石、覚えが早いわね。やっぱり、好きな子に作ってあげたりするの?」
みくる「えっ!?ち、違いますよ、自分でやってみるだけです……」アセアセ…
すみれ「ふふっ、隠さなくてもいいのに」
みくる「///」

古泉「長門さん、いくらなんでも、子供相手にそこまでムキになるのはどうかと…」
長門「ムキにはなっていない」
キョン「いや、なってるだろ…。お前、もしかして相当な負けず嫌いだな?」
健太郎「お姉ちゃん、負けず嫌いなの?あははっ、お父さんとおんなじだ!」
孝次郎「くすくす」
長門「………」

754 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:00:55.21 ID:5/OHPjXA0

ハルヒ「…全く、何やってんのよ。みんなして……」
槿「君が特別な能力を持っているのは、間違いないだろう」
ハルヒ「………!」
槿「俺の正体は、君が思っている通りだ。君の仲間たちも、気付いているんだろう」
ハルヒ「………」
槿「………俺のことを、業界で最高峰、と呼ぶ人間がいる。しかし、俺は思うんだ。
  本当に強いのは、自然の力だと」
ハルヒ「自然……?自然って、山とか川とか、そういう自然?」
槿「そうだ。たとえば、台風も自然だろう。毎年やって来て、あちこちに被害をもたらすが、
  俺達にそれを止めるすべはない」
ハルヒ「………」
槿「君の力は、世界を滅ぼす可能性を秘めていると言ったな。君の意思次第で、この世を消すことも
  できる、と」
ハルヒ「……あたしに、そんな自覚はないんだけどね」

755 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:03:55.59 ID:5/OHPjXA0

槿「だが、得てして人は……自分が得た物を自分だけが得た物と思い込む」
ハルヒ「………」
槿「涼宮ハルヒ」
ハルヒ「………何?」

槿「特別なのが自分だけだと思うのは、浅はかだ」

ハルヒ「………」

756 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:04:50.81 ID:5/OHPjXA0

槿「だが、得てして人は……自分が得た物を自分だけが得た物と思い込む」
ハルヒ「………」
槿「涼宮ハルヒ」
ハルヒ「………何?」

槿「特別なのが自分だけだと思うのは、浅はかだ」

ハルヒ「………」

759 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:19:23.13 ID:5/OHPjXA0

連投すみません。残り少ないというのに…。

槿「……君は、この部屋に来た時、泣いていたな」
ハルヒ「………」
槿「あれは、何故、泣いていたんだ?」
ハルヒ(普段なら、『理由なんてどうでもいいでしょ』って言うところだけど…。
    なんだろう。この人の前では、嘘とかつけなくなる気がする…)
槿「………」
ハルヒ「……家族のことを、思い出して…」
槿「………」
ハルヒ「あたしの家族、今日の、まだ明るくなる前に、殺されたの。お父さんと、お母さん。
    それも、あたしが知らないところで。同じ家の中に居たのに、あたしが知らないうちに。
    バカだよね。あたしには、こんなヘンな能力なんかあったって、なんにもできない。
    死んだ二人を生き返らせることも、二人が殺される前の時間に戻すことも…」

761 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:24:56.11 ID:5/OHPjXA0

槿「……毎年、この国では110万人が死ぬ」
ハルヒ「………」
槿「その内、自殺が3万人。事故死が4万人。癌が30万人」
ハルヒ「………」ごくっ…
槿「多くの人間は普段身近に意識しないが、死は特別なことじゃない。
  常に身近に存在し続けている」
ハルヒ「……それは、あたしに対する慰め…?」
槿「誰もが、いつか大切な者の死を知る。そういう風に世界はできてる。
  ただ、それだけのことだ――」

槿「――気を悪くしたか」
ハルヒ「………いいえ……」ぽろぽろ…

762 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:27:17.76 ID:5/OHPjXA0

すみれ「二人して、何のお話?」パタパタ…
ハルヒ「あ、いえ……」ごしごし
槿「………」
すみれ「それにしても、あなた達がこの人をつけてきたのには驚いたわ。わざと
    追わせたならともかく、この人が後をつけられるなんて、考えられないもの」
ハルヒ「………え?」
すみれ「気付いているんでしょう?この人がどういう仕事をしている人か」
ハルヒ「あなたは……いいえ、あなたたちは…何者なの?」

763 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:35:22.46 ID:5/OHPjXA0

すみれ「そうね。話してもいいわ。あなたたち、面白そうだから。ただ、あなたたちの
    ことも聞かせてくれる?」
槿「……俺は、既に聞いた」
すみれ「あら?そうなの?」
ハルヒ「いいですよ。もう一回、話します。最初から、最後まで…」


ハルヒ「みんな!そろそろ帰るわよ!鶴屋さんに連絡入れたから」
キョン「ん、そうか。話は済んだのか?」
ハルヒ「必要なことは、全部ね。後で、鶴屋さんも含めて、みんなに話すわ」
キョン「……そうか」
古泉「結局、僕らは遊びに来ただけみたいでしたね」
キョン「まったくだな。つーか、俺、ほとんどあの人と喋ってねえし…」
長門「パスタ……美味しかった」
みくる「美味しかったですね。今度、家で作ってみようかな」
すみれ「みんな、またいつでも来てね。歓迎するわよ」
ハルヒ「槿さん、すみれさん、健太郎君に孝次郎君。みんな、ありがとう!」

764 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 00:42:50.10 ID:5/OHPjXA0

すみれ「あなた達の今の状況からすると、次に会った時は、もしかしたらあなたが、
    私達や…この人の雇い主になることがあるかもしれないわね」
ハルヒ「もしその必要が出てきたら、真っ先に頼みに来るわ」
健太郎「ふふん、言っとくけど、僕らは高いよ?お金、払えるの?」
ハルヒ「そうね。その時によるけど、できれば割引サービスしてもらえると、助かるわ」
健太郎「あははっ、バカジャナイノー!」

キョン「あ、槿さん。藤原の件で依頼した奴のことって、やっぱ秘密ですか?」
槿「ああ。仕事だからな」
古泉「……話だけは聞いていましたが、『押し屋』という仕事があることは、貴方に
   会ってようやく分かりましたよ」
槿「………『押し屋』というのは、馬鹿馬鹿しい呼び名だな。そう、思わないか?」
キョン「俺は、分かりやすくていいと思うがな」
健太郎「あはははは!バカジャナイノ―――――」

785 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 13:44:58.34 ID:5/OHPjXA0

思ったより早く戻れました。たくさんの保守と、温かい言葉をありがとうございます。
これを活力に、今日中になんとかして完結させようと思います。それでは、
始めようと思います。

キョン「鶴屋さんは、ここの場所知らないだろ?」
ハルヒ「ええ。だから、駅の前で待っててもらうことにしたわ」
古泉「では、駅までは歩きですね」
槿「……なら、車で送っていこう」
ハルヒ「え?そんな、悪いわよ」
槿「構わない。辺りはもう暗くなっている。子供だけで歩くべきじゃない。
  ここから駅までは、かなり距離がある」
キョン「……折角だし、乗せてもらおうぜ。ハルヒ「
ハルヒ「そうね…。それなら、乗せてもらおうかしら」

786 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 13:53:56.28 ID:5/OHPjXA0

キョン(車があるなら、なぜ歩いて帰ってきたんだ?……ああ、尾行されやすく
    なるからか。あの能力は、乗り物に乗っていては意味がないんだろうな)
槿「………全員、乗ったか?」
ハルヒ「OKよ!」
槿「駅まででいいんだな」
ブロロロロ……
キョン(一緒に晩飯食うだけで、殺し屋とこんなに親しくなれるってのも、
    ある意味すごいことだな)

ハルヒ「乗る前に見たけど、この車、色がきれいだったわね」
みくる「黄緑色で、優しい感じでしたね」
ハルヒ「バッタみたいな色をしてたわ」
槿「――バッタの群集相というやつを知っているか」
ハルヒ「?」

787 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:00:39.44 ID:5/OHPjXA0

槿「トノサマバッタは、普通緑色をしている。だが彼らは、お互いが密集した
  場所で育つと、「群集相」と呼ばれるタイプになる」
ハルヒ「群集相……?」
キョン(突然、何を言い出すかと思えば、バッタの話?)
槿「そいつらは黒くて翅(はね)が長く、おまけに、凶暴だ。大移動をして、
  あちこちのものを食い散らかす」
ハルヒ「………」
槿「そいつらは、仲間の死骸だって食う」
みくる「ふぇ………」ビクッ…
槿「俺は、人間にも当てはまると思っている」
ブロロロロ…

788 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:06:55.37 ID:5/OHPjXA0

ハルヒ「人とバッタが、同じなわけ?」
槿「人間も密集して暮らしていると、おかしくなる。バッタは翅が伸びて遠くへ
  逃げられるが、人間は出来ない。―――ただ、凶暴になるだけだ」
古泉「…人間は、その…群集相ばかりだということでしょうか?」
槿「都会は特にな」
ハルヒ「人間も、数が減れば……穏やかになると思う?」
槿「なるだろうな」
キョン(………!だから、人間を殺すのか?群集相になった人間を元に戻すために?
    人間の数を減らそうとして?そんなことが許されると思ってんのかよ!)
槿「……俺を、軽蔑しているか?」
キョン「………!?」

789 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:14:02.21 ID:5/OHPjXA0

槿「依頼次第で、誰でも躊躇なく殺す。異常者で、殺人犯で、許されない存在だと思うか?」
キョン「……………」
槿「………俺は、好き好んで殺しをやる趣味はない。群集相になった人間を減らして、穏やかな
  社会を取り戻す…そんな使命感に突き動かされているわけでもない。この仕事をやる理由は、
  技術的な適性、とでもいうべきだな」
キョン「………」
槿「涼宮ハルヒには、全てを話した。後で、君がみんなに話してやってくれ」
ハルヒ「………」コクッ

槿「……駅に着いたぞ」
ハルヒ「今日は、ありがとうございました」ペコリッ
槿「……そうだ。孝次郎から、これを渡されていた」スッ
キョン「…昆虫シール?」

790 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:22:17.48 ID:5/OHPjXA0

槿「一番たくさんダブっているから、一枚くれるそうだ」
ハルヒ「ふふっ。あの子らしいわね」
みくる「可愛かったですよね。最初、女の子かと思いました」
ハルヒ「小動物みたいに可愛かったわね。そう言えば、槿さん、聞いていい?」
槿「……なんだ?」
ハルヒ「孝次郎君って、喋るときいつも小声だけど、あれって何で?」
槿「あれは、俺が教えたんだ」
ハルヒ「何を?」
槿「本当に大事なことは、小声でも届くものだ、と」
キョン(そういうものか……なら、ハルヒは見習った方がいいな)
槿「大声で怒鳴る政治家の言うことを、人が聞くか?」
ハルヒ「政治家の言うことなんて、誰も聞かないじゃない」
槿「本当に困っている人間は、大声は出せない」

792 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:29:36.21 ID:5/OHPjXA0

駅のホームにて…
ハルヒ「向こうの駅の西口に、鶴屋さんが車を停めてくれてるらしいわ」
キョン「まだ、電車が入るまでしばらく時間があるな」
ハルヒ「あたし、喉乾いちゃった。みんなも何か飲む?」
みくる「いいですね。売店を見に行きましょうか」
キョン「古泉、悪いが、缶コーヒー頼めるか?」
古泉「かしこまりました。長門さんは?」
長門「……私はレモンティー」
ハルヒ「まったくキョンは…。有希はともかく、あんたは雑用の分際で、副団長の
    古泉君をパシリにするわけ?」
キョン「たまにはいいだろ?」
ハルヒ「今回だけよ?次からは、自分で買いに行きなさい」
キョン「やれやれ…」

793 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:40:20.21 ID:5/OHPjXA0

ハルヒ「ちょっとキョン!?聞いてるの?」
キョン「へいへい」
ハルヒ「返事は一回よ!」
キョン「そんなに叫ばなくても聞こえてるって。槿さんも言ってたじゃないか。
    『本当に大事なことは小声でも届くものだ』ってよ」
ハルヒ「あんたは大声で言わないと聞かないじゃない」
キョン「聞いてるさ。それより、急がないと電車が来るぞ?」
ハルヒ「そうね。無駄話ばっかりしてられないわ。急ぎましょ」タタタッ

キョン「行ったぜ、長門」
長門「!」
キョン「二人で話がしたいって言ってただろ?三人とも、売店の方に行った。
    ここからなら向こうが良く見えるし、かと言って、何話してるかなんて
    聞こえない。どうだ?」
長門「……感謝する」
キョン「いいさ。それより、話してみろよ。大事なことなんだろう?」
長門「…………実は」

794 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:45:48.91 ID:5/OHPjXA0

長門「―――――」
キョン「……………」
長門「……以上が、あの時、公園で起こった事の全て」
キョン「………そうか」
長門「貴方には……いえ、貴方達には、申し訳ないことをしたと思っている。
   特に、古泉一樹に対しては、何と言って謝罪すれば良いか、想像もつかない」
キョン「………」
長門「まず、貴方に相談して、意見を聞こうと思った。申し訳ない」
キョン「………分かった。とりあえず今は、俺の心の中だけに留めておく。今はまだ、
    誰にも言わずにおく」
長門「………」
キョン「だが、時が来ればいずれ、全員に話す必要があるな。それは分かるだろ?」
長門「………」コクッ

795 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:51:27.90 ID:5/OHPjXA0

キョン「俺は、お前が裏切ったなんて思っちゃいない。お前は、自分の考えで、
    正しいと思ったことをしたんだ。それしかないと判断した。まあ、確かに
    勝手な行動ではあるが、それでも今のおれたちは圧倒的に不利な状況だ。
    それを覆すためには、そのくらいの行動と、覚悟が必要になる」
長門「………」
キョン「俺は、自分でも、覚悟ができているのかどうかが分からない」
長門「………」
キョン「『蝉』に襲われてから二日しか経ってないのに、もう何年もの時間を
    過ごしたような気分だ。それくらい、色々なことがあり過ぎた」
長門「………」
キョン「鶴屋さんのところに戻ったら、ハルヒから槿さんとその家族のことについて、
    もっと詳しい話を聞かないといけないしな。まだまだ、弱音を吐いてる場合じゃ
    なさそうだ」

797 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 14:59:17.34 ID:5/OHPjXA0

長門「……周囲が間違っていて、目の前にどうしても納得できないことがあって……、
   それに気付いているのが自分だけの時、少しでもそれを変える力が自分にあるなら、
   やるしかない………」
キョン「………」
長門「涼宮ハルヒがそう言っていた。これは、貴方にも当てはまる」
キョン「俺に?」
長門「昨年、私が涼宮ハルヒの『能力』を利用して世界を改変させた時、貴方は
   まさにその状況だった。周囲が全て誤りであり、周囲の誰もがそれに気付いて
   いない中、貴方一人だけがその事実に気付いている状況。貴方はそれでも、
   一人で対決した」
キョン「あの時は、お前や未来の朝比奈さんの手助けがあったからな」
長門「それでも、あれは貴方にしかできないこと。他の誰にも、同じことはできない」
キョン「………」

798 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 15:04:47.04 ID:5/OHPjXA0

長門「貴方はあの時、あの世界にとどまらずに、こちらの世界に戻ってくることを
   選択した。貴方にとっての住むべき世界は、ここであるということ。ならば、
   貴方は自分が生きるこの世界を、自分が生きるために、変えていく必要がある」
キョン「………そうだな。俺は、何事も一歩退いてばかりだったが、そろそろ逃げても
    いられなくなってきたようだ。ここからは、進むだけだな」
長門「そう」

ハルヒ「手間取ったわ。売店のおばちゃんが電話してて、なかなか会計が始まらなかったの」
キョン「いいさ。時間はまだある。それに、言うほど長くは待たなかったからな」
古泉「頼まれた物は、これでよろしかったですか?」
キョン「ああ、サンキュ。ほら、長門。こっちはお前のだ」ヒョイ
長門「……感謝する」

799 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 15:12:44.86 ID:5/OHPjXA0

みくる「あったまりますね〜」
ハルヒ「寒い日は、体の内側から温めるのが一番ね!」
プアーーーーーン……
ガタンゴトンガタンゴトン……
古泉「電車のご到着ですよ」
キョン「ああ。さて、行くとしようぜ」

一時間ほど後、鶴屋邸にて…
鶴屋「……なるほどねぇ。それは、驚きだったね」
古泉「槿さんはともかく、すみれさんや子供達は普通の家族だと思っていたのですが…」
みくる「あの人たちが、そうだったんですか?全然、気付きませんでした…」
ハルヒ「まあ、仕事の時以外は普通にしてるって言ってたから。あれはきっと、
    演技じゃなくて本当の姿だったと思うわ。他にも仲間が、大勢いるんですって」
キョン「雇うにはどのくらいかかるんだろうな…」
鶴屋「言っとくけど、お金の心配は要らないからね。どんなことでも、必要とあらば
   いくらでも出すから、その時はちゃんと言ってよ、ハルにゃん!」
ハルヒ「鶴ちゃん……!ありがとう」

800 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 15:28:06.14 ID:5/OHPjXA0

古泉「一家全員が、仕事のプロなわけですね」
キョン「今までの俺たちだったら、到底関わり合いの無い話だな」
鶴屋「とりあえずさ。今日は休もうよ。夕飯を食べて来たんなら、今日は早めに
   寝た方がいいっさ。みんな、疲れてるみたいだし」
ハルヒ「そうね。そう言えば、あたしはともかく、みんなは丸一日寝てないじゃない。
    いざという時に倒れたりでもしたら、大変だわ」
キョン「そうだな。今日はこれで終わりにするか」

同時刻、キョン宅前にて…
橘「………はい、そうです。家にはいないのです。やはり、家には帰らずに、別な場所に
  姿を隠しているみたいです。はい。それと、妙なのですが、彼の家族に彼のことについて
  尋ねてみても、彼のことなど知らないといった様子で…。はい、嘘をついている雰囲気でも
  ありませんでした。はい。分かっていますよ、彼の家族には手は出していません。はい。
  はい。そうです、携帯も繋がらないままで…」

802 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 15:37:12.90 ID:5/OHPjXA0

橘『どうしますか?』
佐々木「そうね。仕方ないわ、待っていても無駄みたいだし、戻って来てくれる?」
橘『分かりました』
佐々木「それじゃあ、待っているわね」プツッ
佐々木「………」

佐々木「くっくっくっ……。キョン、君は、僕の目を逃れて、一体どこに隠れているんだい?
    どこへ隠れようとも、必ず見つけ出してあげるよ。君はもう、僕の物なんだ」

数十分後…
橘「只今戻りました。佐々木さん」
佐々木「御苦労様。わざわざ見に行かせて悪かったわね」
橘「とんでもありません!佐々木さんのためなら、どこへだって飛んで行きますよ」
佐々木「……貴方は、私のために尽くしてくれるわよね?」
橘「藤原君のことですか?心配なのは分かりますが、あまり気にしない方が…」
佐々木「私は、聞いているの。どうなの?尽くしてくれるの?くれないの?」
橘「……佐々木さん、私は、あなたの味方ですよ。あなたの命令なら、どんなことだって
  聞くのです!」
佐々木「それを聞いて安心したわ」

804 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 15:59:58.12 ID:5/OHPjXA0

>>803 応援、ありがとうございます。自分も、スレ内に収めるために内容を
    疎かにはしたくありませんので、うまい具合に調整しながら書こうと
    思っています。一応、入りきるとは思います。

鶴屋邸にて…
キョン(はぁ、やっと眠れると思っていたが……やっぱ慣れない部屋は寝付けねえな…)
キョン(というか広すぎっ!古泉と二人で使ってんのに、スペース余り過ぎだろ。
    何畳あるんだよ、この部屋……修学旅行の部屋に二人で泊まっているみたいな
    気分だな。そんな贅沢な修学旅行なら、大歓迎だがな)
キョン(しかし……困った。まさか長門まで、古泉と同じようなことを考えていたとはな。
    それも、互いが互いに怨恨のある相手じゃねえか。素直に相手の考えを理解できるとは
    思えないしな…。どうしたもんか)

806 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 16:20:10.54 ID:5/OHPjXA0

翌朝…
キョン「z……zz………」
バタンッ
ハルヒ「キョン!起きなさい、もう朝になったわよ!」
キョン「…ん………あと十分だけ……」
ハルヒ「十分寝たってそんなに変わらないじゃない。早く、起きなさい!
    朝ごはんの用意も済んでるわよ」
キョン「う〜………」

古泉「おはようございます」
キョン「ああ、おはよう。早いな、お前……」
古泉「早起きは三文の得と言いますからね」
キョン「今も時代に三文得したって意味ないだろ……まだ眠い…」

807 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 16:31:03.75 ID:5/OHPjXA0

キョン「今も〜」→キョン「今の〜」 誤植です。うっかりしました、すみません。

鶴屋「あっ、キョン君。起きたね」
キョン「あ、おはようございます」
鶴屋「顔はもう洗ってきた?なら、今からご飯装うから、ちょっと待ってて!」
キョン「はい」

朝食後…
ハルヒ「よし。朝ごはんも食べたし、これで準備万端ね!」
キョン「準備万端、か…。なあハルヒ、俺達は、これからどうするべきなんだろうな」
ハルヒ「は?どうするって……」
キョン「今、俺達は敵から、いや、はっきり言おう。佐々木から逃げている。あいつの
    目の届かない場所に隠れて、やり過ごしているわけだ」
ハルヒ「………」

808 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 16:39:50.31 ID:5/OHPjXA0

キョン「いつまでもこのままじゃいられないだろ?情報も集めたし、力になって
    くれそうな人間の心当たりもある。そろそろ、実行に移るべきだと思うんだ」
ハルヒ「実行………」
キョン「対決だよ。佐々木と、対決するんだ。俺達は」
キョン(ただ、その前に古泉と長門の方を解決させないとな。あいつらは、お互いが
    お互いを騙していることを知らない。それを、互いに納得させないといけない)
ハルヒ「そうね。そろそろ、そのことも考えないといけないわ。あたしだって、相手を
    許せない。絶対に…」
古泉「………」
みくる「………」
長門「………」
キョン「ああ。俺だって、同じ気持ちだ……」

810 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 16:46:54.97 ID:5/OHPjXA0

数分後…
キョン(………ん。そう言えば、昨日から携帯の電源、切りっぱなしだったな。
    谷口辺りから何かきてると困るしな、見とくか…)
ピッ
キョン(ん?……着信履歴がたくさんあるな。全部、谷口からだ。あいつ、そんなに
    あの場所に居た俺のことが気になったのかよ…。メールも一通届いてるな)
カチッ
キョン(動画添付?何を送って来てんだよ、あの馬鹿は…)
カチッ
キョン「………」
キョン「!!? こっ、これは……!!?」
ハルヒ「? どうしたのよ、キョン」

811 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 16:52:07.15 ID:5/OHPjXA0

ハルヒ「谷口の奴、ヘンなメールでも送ってきたの?……って……何よコレ?」
キョン「………!」
みくる「? どうしたんですか?」

     谷口『……………』

みくる「!! これって……」
ハルヒ「間違いないわよ……。顔は袋をかぶせられてて分からないけど、制服とか
    体つきから見ても…」
キョン「静かに!何か、声が聞こえる…」

     谷口『………うっ……うぅ……』スポッ…

キョン(紙袋を外された……)
ハルヒ「!! 間違いないわ……谷口よ……」

     谷口『………キョン……助けてくれェ……』

812 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 16:55:52.81 ID:5/OHPjXA0

     谷口『キョン………た、助けてくれ……』

キョン「………!! な、なんだよ、これ……」

     ??『キョンさ〜ん♪』

      橘『この人がこうなってるの……あなたのせいですよ?』

キョン「!! た……橘!!?」
みくる「そんな……」

      橘『たっぷり反省してくださいねぇ〜』クスクス

キョン「……どういうことだ。なんで、谷口があいつに…」
ピリリリリリリリッ

813 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:06:02.26 ID:5/OHPjXA0

キョン「!! 着信だ……」ピッ
キョン「もしもし!」
橘『ああ〜、やっと繋がりましたね。まったく、携帯の電源は切っちゃダメですよ、キョンさん』
キョン「橘っ!!てめぇ、谷口に……」
橘『心配要りませんよ。まだ生きてますから。声、聞きます?』
 『……………』
谷口『………きょ……ん……』
キョン「谷口っ!?」
谷口『たすっ…助けてくれ…こいつら…おかしいんだよ……俺に………お前の
   居場所……教えろ…とか……言ってきやがって…』
キョン「!!!」
谷口『なんとかっ………してくれよ……俺が…知ってるわけ……ないだろ……!?』
  『……………』
橘『このことは、警察に言っても無駄ですからね?我々の組織もそれなりの力があるのです。
  お偉いさん方に、こういったことを黙認してもらえるくらいはね』
キョン「―――――っっ!」

815 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:15:07.73 ID:5/OHPjXA0

橘『ねえ、キョンさん。この人、大事なお友達なんでしょ?お友達をこんな目に
  遭わせるのは、よくないですよねぇ。そこで、相談なのです。取引をしましょう』
キョン「………何?」
橘『あなたの身柄と、このお友達を、交換しましょう。そしたら、お友達は解放してあげます』
キョン「……………」
ハルヒ「………?」
橘『嫌なら、この人には死んでもらいますよ?まあ、簡単に死んでもらうって言いましたが、
  そんなに楽には死なせません。私の趣味ではありませんが、こちらには、そうやって人間を
  じっくり時間をかけて殺すのが好きな兵隊がたくさんいるのです。機関の方々の何人かは、
  そうやって殺さずに生け捕りにして、色々な用途に使いましたから』
キョン「………てめェ……!!」
橘『お友達を助けたいなら、今から言う場所まで来てください。もちろん、一人でね?』

816 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:23:23.38 ID:5/OHPjXA0

ツーッ……ツーッ……ツーッ………
キョン「………俺のせいだ」
ハルヒ「き、キョン……谷口は?あいつは、無事なの?なんであんなことになってるの?」
キョン「……あいつはきっと、交差点の所で、橘に声をかけられたんだ…。俺の居場所を
    訊き出すため……いや、違う。俺を……誘い出すために……」
ハルヒ「………!」
キョン「……俺があの時……車から降りてなければ………こんなことには…」
古泉「過ぎたことを言っていても仕方が無いでしょう」
キョン「!! 古泉……」
古泉「場所はどこです?呼び出された場所は……」

古泉「ふむ。その場所なら、多少の知識があります」
キョン「なに?」
古泉「橘京子の組織が所有する廃ビルです。あちらの組織が、非合法的な活動を
   する上でよく利用する場所ですね。機関にもいくらか情報が入っていました」
キョン「………」

817 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:31:08.79 ID:5/OHPjXA0

古泉「一人で来い、と言っていることから、二人以上で言った場合は谷口君は
   即、殺されると思っていた方がいいでしょう。相手も周囲に気を配って
   いるはずですから」
キョン「……俺は行く。あいつを巻き込んじまったのは、俺のせいだ。谷口は、
    この件には無関係だ。なのに、橘の野郎が……」
古泉「『野郎』は男性を指す語ですよ。それはともかく、行くのであれば、何かしら
   酷い目に遭わされる覚悟はしておいてください。恐らく佐々木さんの命令でしょうから、
   貴方が殺されることにはならないとは思いますが、それでも注意は必要です」
ハルヒ「ちょっと、古泉君!?まさか、本当に一人で行かせるわけじゃないわよね!」
古泉「相手は、一人で来いと言っているのでしょう?なら、一人で行かせるしかないじゃないですか。
   谷口君を救うためです。元々は、貴方の責任でしょう?」スッ
キョン「!!」
古泉「………」
キョン「………」
キョン「……ああ、そうだな」

818 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:35:48.34 ID:5/OHPjXA0

ハルヒ「古泉君……?あなた、何言って……」
キョン「いいんだ。ハルヒ。古泉の言う通りだ。俺が行って、谷口を助ける。
    それしかないだろう?今は、それしか方法が無い」
ハルヒ「あるわよ!何か、方法があるはずよ!!いくらなんでも……」
古泉「建物の見える場所までは、僕と鶴屋さんでお送りしましょう。そこからは、
   貴方一人で行ってください」
キョン「ああ、そうする」
ハルヒ「……そんな」

長門「私も行く」
古泉「………!」
ハルヒ「有希!そうよ、一人でなんて行かせられないわ!こっそりどこか別の入口から
    侵入して……」
長門「勘違いしないで。一緒に車に乗っていくだけ。建物にまではついて行かない」
ハルヒ「……………」

819 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:42:35.66 ID:5/OHPjXA0

キョン「平気だ、ハルヒ。何とかなる」
ハルヒ「そんな悠長なこと言ってられる状況じゃないでしょ……?なんで、そんなに
    落ち着いてるのよ……」
キョン「落ち着いてはいないさ。谷口が心配だ。今、こうしている間にも、あいつは
    拷問されているかもしれない」
古泉「その可能性は高いですね。橘京子の言うことが本当ならば、拷問に携わるような
   人間は情報を得られる得られないにかかわらず、相手を痛めつけることに悦びを
   感じるようですから」
みくる「でも、キョン君一人じゃ、心配です……」
キョン「大丈夫ですよ、朝比奈さん。とりあえず、ハルヒと一緒にここに残ってください」
ハルヒ「……何か、考えがあるわけ?」
キョン「………まぁな」
ハルヒ「……分かった。あんたを信じるわ」

820 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:45:16.71 ID:5/OHPjXA0

廊下にて…
古泉「………」スタスタ…

長門「古泉一樹…」

古泉「………」ピタッ

長門「貴方に、言わなければならないことがある」

古泉「………」

古泉「実は、僕もです」

821 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:52:04.19 ID:5/OHPjXA0

数分後…
鶴屋「そんな……谷口君が…?」
キョン「はい。俺は、あいつを助けに行きます」
鶴屋「……何か、考えはあるんだろうね?」
キョン「一応、今までの準備は無駄にはならないだろうと思いますよ」
鶴屋「…そう」
キョン「鶴屋さんには、特にお金の面で、とんでもなくお世話になりましたね」
鶴屋「……まだまだ、必要になるんじゃないかい?」
キョン「はい。とんでもない額の大金が必要になります」
鶴屋「………ふふっ、もう謝らなくなったね」
キョン「これが全部片付いたら、地面に穴掘ってそこに頭突っ込んで土下座しますよ」
鶴屋「土下座は要らないけど、何かお金以外の物で、お返しが欲しいかな…」
キョン「…と、言うと?」
鶴屋「んー………キョン君とデートとか…」ボソッ…
キョン「え?」
鶴屋「!! な、何でもないっさ!それより、行くなら急がなきゃね!」

822 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 17:54:54.69 ID:5/OHPjXA0

車中にて…
キョン「……………」
古泉「………」
長門「………」
鶴屋「………」

運転手「……見えてまいりました。あそこの建物ですな?」

キョン「………古泉、どうだ?」
古泉「はい、多分、間違いありませんね」

キョン「よし」

827 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 18:30:27.19 ID:5/OHPjXA0

戻りました。お待たせしてすみません。続けます。

バタン
キョン「………」
スタスタスタ…

ザッ
キョン「………」
ギイィ……
土佐「……入れ」
キョン「………」
スタスタスタ…

キョン「谷口………」
谷口「キョン………お前……」ゲホッゲホッ…
橘「やっと会えましたね、キョンさん。『遅れたら、罰金!』でしたっけ?
  SOS団のルール。ぷっ……きゃはははっ!」
キョン「………」

828 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 18:36:54.42 ID:5/OHPjXA0

橘「約束通り、この人は解放します。一応、約束は約束ですからね」
カチャカチャ…
谷口「ぅ……キョン……俺……」
キョン「悪かったな、谷口。こんなことに関わらせちまって…。お前、指……」
谷口「キョン!お前、こいつら、なんなんだよ!お前、こいつらと知り合いなのか?」
キョン「……真ん中の女は知り合いだが、両脇の男は知らん」
土佐「………」
柴「………」
谷口「うっ………」
橘「さっさと出て行ったらどうです?あなたはもう自由ですよ。それとも、ここで
  さっきの続きを受けたいですか?」
谷口「ひっ!! ……でも、キョン……お前は……」
キョン「俺のことはいいから、さっさと外に出ろ。向こうへ行くと、車が停まってる。
    高そうな奴だから、見れば分かるはずだ。そこに、迎えが待ってる」
谷口「………」
キョン「早く、行け!」
谷口「うっ………くっ………!」クルッ
ダダダダッ…

829 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 18:45:02.93 ID:5/OHPjXA0

橘「優しいんですねぇ。お友達のために、自ら犠牲になるなんて…」
キョン「………谷口は、本当に何も知らなかったんだ。それを、お前……」
橘「いいじゃないですか、あれぐらい。爪なら、剥いでもまた生えてくるでしょ?」
キョン「………!?」
橘「ここにいる二人を好きにさせたら、彼、今頃原型とどめてませんよ?それに比べれば、
  爪を剥ぐなんて、人道的な方法じゃないですか」
キョン「………」
橘「ねぇキョンさん?まさか、佐々木さんから命令されているからって、私があなたに
  手を出さないだろうなんて、高をくくってはいませんよね?佐々木さん相手に、あんな
  啖呵を切ったわけですから」
キョン「………」
橘「私はね、佐々木さんを何より第一に考えるんです。だから、彼女に仇なす人間は、たとえ
  彼女の親友であろうと、容赦はしないつもりです。いくらでも誤魔化す方法はありますから。
  事故とか、抵抗が激しかったためにやむを得ず、とかね」
キョン「………」

830 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 18:55:28.35 ID:5/OHPjXA0

橘「まあ、大人しくついて来るんであれば、骨の一、二本くらいで許してあげても
  いいですけど。何しろ、私達をここまで手こずらせてくれたわけですからね」
キョン「………」
橘「ああ、でもやっぱり殺しちゃってもいいかな?行方不明って手もありますしね。
  死体がまったく見つからないようにする方法もあるのです。涼宮さんと違って、
  佐々木さんはまだ『能力』が完全には覚醒していないし、自力であなたを探す
  ことはまず無理。これ、いいですね!」
柴「おい、話長ェな!どっちなんだよ、やっていいのか悪いのか」
橘「ああ、すみません。どうぞ、好きにしていいですよ」
土佐「よォし、やっとか。殺していいとなれば、俄然ヤル気も出てくるってもんだ」
柴「ヘヘ…まァ、とりあえず座れよ。時間はたっぷりあるからよ……」
キョン「………」スタスタ… ギッ
橘「そこに、さっきの彼が座っていたのです。まあ、爪以外にも色々痛めつけましたけど、
  後遺症の残るような大きな傷は無いでしょうね。貴方のおかげなんだから、彼は感謝
  しないといけませんね」
キョン「………なぁ…次にそこのドアから入って来る奴は……男と女、どっちだと思う?」

831 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:02:51.20 ID:5/OHPjXA0

橘「はぁ?あなた、馬鹿ですか?こんな場所に、誰も来るはずがないじゃないですか。
  わざわざ周囲に見張りを立てて、あなた以外に誰かが来れば連絡するようにまで
  しているんですよ?昼間から薄暗いような場所ですし、近くに杉林があって人が
  近寄らないから、この場所は重宝してるんです」
キョン「………」
橘「無駄な時間稼ぎはやめましょうよ。あなた、どうせもうすぐ…」

     カツン…

橘「――っ!?」
キョン「……………」

    カツン…… カツン…… カツン…… カツン……

            カツン………

833 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:08:10.79 ID:5/OHPjXA0

キョン「答えは………、男だ」

橘(……監視の部下からは何の連絡も無い。なのに、何故?もしや、最初から
  この建物の中に?いえ、それはあり得ないのです。携帯で知らせるまで、
  キョンさんは友人が拷問されていることは知らなかったはずですから…。
  私達が来る前から仲間が潜んでいたとは考えられません。だとすると……)
橘「………」くいっ
柴「………」コクッ
スッ……
柴「………」
バンッ
柴「…………誰も、いねェじゃねえか」

834 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:12:37.68 ID:5/OHPjXA0

柴「おい、ガキ!てめえデタラメ言いやがっ――」クルッ
ひゅっ
橘「!!? 後ろっ!!!」
柴「え――……」
ヒュパッ
柴「―――――――!」
ドサッ……
橘「あ……あ………」ガタガタ…

土佐「…お前、誰だ?」

蝉「俺は蝉。このビルの中に居る人間を、殺すように依頼を受けた」
キョン「………」
蝉「お前ら、皆殺しだ」

836 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:19:07.54 ID:5/OHPjXA0

橘「なっ、な……なんで?なんであなたが……ここに…」

土佐「チッ、面倒臭ェな」スッ
蝉「へえ、お前もナイフ使うのか」
土佐「仕事の邪魔なんだよ、お前」ヒュッ
蝉「よっ…と」ひょいっ
土佐「ッ……クソが……」ブンッ
蝉「間に合わないっつうの」ヒュッ
ぱしゅっ
土佐「あ―――……」
ドサッ
蝉「なんだ、強くねーじゃん」
キョン「………」
蝉「よう、また会ったな。助けに来たぜ。感動しただろ」

837 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:23:49.67 ID:5/OHPjXA0

橘「ひぃっ!」ダダッ…
蝉「おいおい…学習しろよ、お前」スッ…

キョン「待った」

蝉「?」
橘「あぅ……あぅぅ………」ズリッ
キョン「谷口を直接痛めつけたのは、その二人だろ?……もう、いいんだ…」
蝉「……そうかよ。ま、俺は別にどっちでもいいんだがな」
橘「!!」バッ

橘「お、覚えてろよ!今日のこと、絶対後悔させてやるからな!!」バンッ

蝉「おおっ……怖っ!」
キョン「………」

841 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:31:46.52 ID:5/OHPjXA0

数十秒前、待機中の車にて…
谷口「………」トボトボ……
鶴屋「!! 谷口君!こっちこっち!!」
谷口「! 鶴屋さんっ!」
鶴屋「無事だったんだねっ!?良かったっさ〜!!」ひしっ
谷口「………」
鶴屋「ああっ!手、痛いでしょ?可哀相に……ひどい奴らだね。
   さ、車に乗って!」
谷口「つ、鶴屋さん……俺、おれ……」フルフル……
鶴屋「谷口君……?」
谷口「おれ……キョンを………おいて来ちまった……おれ…何やってんだろ…
   相手が……ヤバい奴だってことぐらい………分かってんのに……おれ…
   あいつの友達なのに……」ヒック……グスッ………
鶴屋「谷口君……大丈夫だよ………キョン君はきっと、大丈夫…」

842 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:37:27.91 ID:5/OHPjXA0

廃ビル内にて…
古泉「橘京子は、逃がしてしまったのですか?」カツカツ…
キョン「! ああ、いいんだ。今はまだ、な」
古泉「……そうですか」
長門「………」スタスタ…
キョン「長門……」
蝉「ん?長門?へぇ、お前が長門か。ああ、やっぱり見たことがある顔だな。
  お前ら二人とも、一度俺に依頼が来て、キャンセルになっただろ?」
キョン「……長門を殺す依頼?」
蝉「ああ。まあ、誰からかは言えねえけど」
キョン「いや、いい。大体、分かるからな……」
古泉「蝉さん。ありがとうございました。これで、今回の分は終わりです」
蝉「そうか。じゃあな」スタスタ…
長門「………」

キョン「長門……追わなくていいのか?」
長門「………いい」

845 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:44:50.80 ID:5/OHPjXA0

キョン「……お前ら、お互いの秘密を話したんだな」
古泉「ええ。長門さんも僕も、結局考えることは同じでした」
長門「彼らに我々の仲間を殺されたことに変わりはない。しかし、彼らはプロ」
古泉「『殺し屋』は、金をもらって人を殺す仕事です。彼らは、依頼されて人を殺す。
   僕達が真に倒すべきは、依頼をした張本人。そういう考え方です」
キョン「……それで、納得はいくのか?」
古泉「完璧に納得できると言えば嘘になりますが、しかし、今は個人的な恨みで足並みを
   乱しているわけにはいかないんですよ。それに、僕は結局、仲間に嘘をついていました。
   裏切っていたことに変わりはないです」
長門「それについては私も同じ。だから、おあいこ」
キョン「……そうか。結局俺はまた、何もできないままだったな」

848 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:52:44.12 ID:5/OHPjXA0

古泉「そんなことはありませんよ。貴方がいたからこそ、うまくいったんです」
キョン「……相変わらず、気を遣うのがうまいな」
古泉「今のは、世辞ではありませんよ。僕の、本心です」
キョン「………まあ、そういうことにしておいてやるよ」ガタッ
キョン「なんだか、今ので吹っ切れたなぁ……」
古泉「とりあえず、戻りましょう。鶴屋さん達を待たせていますからね」

852 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 19:59:10.30 ID:5/OHPjXA0

車内にて…
キョン「谷口、少しの間、辛抱してくれ。長門、見てやってくれるか?」
長門「………問題ない。この程度の傷の治癒は、造作もないこと。情報操作の
   使用許可は下りている」
谷口「な、なんだよ、ジョーホーソーサって……」
パアアッ……
谷口「!? 傷が、無くなって……って、爪が元通りになってるじゃねーか!
   何したんだよ!?」
キョン「顔や身体の傷も、みんな無くなってるはずだ。良かったな、谷口」
谷口「」ポカーン…
長門「彼はしばらく、我々と共に行動させた方がいい。一人にさせるのは危険」
キョン「ああ、そうだな。また橘が同じことを企まないとも限らないしな…」
鶴屋「怪我が治って良かったね、谷口君!」
谷口「はぁ……。どうも……」
鶴屋「ただ、家に帰れるまでもうしばらくかかっちゃうけど、いいかい?」
谷口「なんだかよく分からないんで、説明してもらえますか?」
キョン「それについては、谷口。また、後で話す」

858 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 20:15:22.45 ID:5/OHPjXA0

ブロロロロ……
鶴屋「ハルにゃんとみくるも待ってるだろうからね。急いでウチに戻るよ」
ピリリリリリ……
キョン「ん?携帯が鳴ってる…」ピッ
キョン「ハルヒから……?もしもし、どうした?」
ハルヒ『キョン!今、どこ!?』
キョン「谷口なら取り返したよ。今、そっちに戻ってる途中だ」
ハルヒ『戻って来ちゃダメよ!あたしたちの居場所がバレたの!!』
キョン「!!?」
古泉「? どうしました……?」
キョン「ハルヒ、とりあえず落ち着け!一体、それはどういう……」
ハルヒ『………!切るわっ、とにかく、こっちに来ちゃダメだから!分かっt』ブツッ
ツーツーツー……
キョン「………」
谷口「お、おい、どうしたんだ?涼宮たちに、何かあったのかよ」
キョン「鶴屋さんの屋敷がバレた…」
一同「!!?」

859 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 20:21:18.47 ID:5/OHPjXA0

鶴屋「キョン君、それはどういう…」
キョン「分かりません。ハルヒがしきりに、戻って来るなと…」
古泉「まさか……尾行されていたのでは…?」
キョン「それなら、タイミングがおかしい。なんで今になって踏み込んで来るんだ?」
長門「………佐々木の能力」
キョン「なに?」
長門「涼宮ハルヒと同じく、相手の居場所や行き先を探ったり、自身の目的の場所、物を
   探り当てる能力が覚醒した可能性がある」
キョン「……しかし、橘は、佐々木はまだ能力が覚醒していないって…」
古泉「考えてもみてください。涼宮さんの能力だって、突然に発生したものなんです。
   佐々木さんの場合も、自身の必要性から、突如として発現した可能性は否めません」
谷口「おい、さっきから能力、能力って、何の話だよ?俺にはさっぱり…」
キョン「嘘だろ?このままじゃ……」
鶴屋「急いで!もっとスピード出して!早くっ!!」

860 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 20:27:31.41 ID:5/OHPjXA0

キョン「佐々木の奴、あんだけ堂々と、自分の能力は使うつもりはないみたいな
    こと言っておきながら、結局能力頼りかよ…」
古泉「彼女はあくまで、自身の能力を活用して世界を統べたり、頂点に立とうという
   欲求に対して興味が無い、と言いたかったのでしょう。自身の目的のためには、
   手段を選ばないと言ったのならば、あくまで目的を達するための手段の一つと
   して利用しているに過ぎないのかもしれません。まあ、まだはっきりと分かった
   わけではありませんから、これは憶測ですが…。同じ能力を持っている者同士、
   引き付け合うようなものがあるのかもしれません」
キョン「このままじゃまずい…。急がないと」

鶴屋邸にて…
キキイーッ  バタン
鶴屋「ああっ!みんなっ!!」
使用人「ううっ………」
鶴屋「しっかりして!」
使用人「お嬢様……申し訳…ありません……」
古泉「これは……」
キョン「間違いなさそうだな」

863 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 20:38:51.37 ID:5/OHPjXA0

使用人「お…お嬢様の……お客様を…お守りできず……」
鶴屋「もういいよ!もういいから、喋らないでっ!!」ぽろぽろ…
使用人「……申し訳…あり、ま……」ガクッ…
鶴屋「―――――っ!! いやあああああああっ!!!」

古泉「……部屋の中に、土足で踏み入った跡がありました。それもかなりの大人数です。
   涼宮さんや朝比奈さんに繋がる手がかりは、何も……」
長門「こちらも同じく」
谷口「お前ら、鶴屋さんの家に泊まってたのか…。二人とも、誘拐されたのか!?」
キョン「……どうもそうらしいな。…畜生っ!」
ピリリリリリリ……
キョン「!!」バッ
『着信:涼宮ハルヒ』
キョン「…」ピッ
佐々木『やあ、キョン。分かるかい?僕だよ』
キョン「分かるさ。やってくれやがったな、お前……」
佐々木『くっくっくっ。まあそう、怒らないでもらいたいな。君に会いたくて
    そちらに向かったのに、居ないものだから、先に君の大切な友人を
    こちらにお招きしたんだ』
キョン「二人に手出ししてみろ。いくらお前でも…」
佐々木『心配要らないよ。二人とも、手足こそ縛ってあるが、あとは何もしていない。
    楽しみは最後まで取っておかないとね。君がこちらに到着するまでは、彼女達に
    手は出さないことを誓おうじゃないか』
キョン「誓う、だと?どの口が言いやがる!」
佐々木『くっくっくっ。普段は不感症の君が、今日はいつになくご機嫌斜めだね。まあ、
    いいさ。仲間のために熱くなれるのも、君のいいところだ』

865 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 20:45:36.67 ID:5/OHPjXA0

キョン「佐々木…。悪いが、今の俺はお前のその癇に障る喋り方に気の利いた
    返事を返すことは出来そうもない。居場所を教えろ。今すぐ乗りこんでいって、
    お前の仲間も何もかも、叩き潰してやる」
佐々木『威勢のいいことだ。素晴らしいね。君が自分から僕のもとに来たがってくれるとはね。
    くっくっくっ。光栄に思うべきかな?』
キョン「 さ っ さ と 居 場 所 を 言 え っ ! ! ! 」
佐々木『聞こえているよ、キョン。耳元で怒鳴らないでほしいな。僕の耳はそんなに頑丈な構造は
    していないんだ。僕の耳が聞こえなくなったら、君の声が聞けなくなる』
キョン「……………」
佐々木『くっくっくっ。冗談はここまでにしておこう。居場所なら、涼宮さん達が居た部屋の中に
    記してあるはずだよ?すぐに分かる場所にね……』
キョン「なんだと……?」
佐々木『それでは、今度はそこで、直接会って話そうじゃないか。我が生涯においての一番の親友よ』

867 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 20:50:59.08 ID:5/OHPjXA0

キョン「………」スタスタスタ…
古泉「? どうなさったのです?」
キョン「この部屋の中のどこかに、佐々木の居場所が書かれているらしい」
古泉「……先程見たときには、そのような物は見当たりませんでしたが…」
長門「………」
谷口「なんなんだよ、誘拐しといて、行き先も教えやがらねえとは、ヘンな
   誘拐犯だな。ああ、くっそ、ずっと縛られてたから身体が痛くて…」ぐぐっ…
谷口「ん?」

谷口「おい、天井…」
キョン「どうした?って……マジかよ、こりゃ……」

868 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 21:02:44.86 ID:5/OHPjXA0

古泉「………天井一面に…」
キョン「ああ……デカデカと書いてあるぜ。住所が。ご丁寧に、地図まで添えて」
谷口「うわっ!おい、キョン!これ、血で書いてあるぜ!」
長門「……血液を照合した結果、涼宮ハルヒと朝比奈みくるの血液とは不一致。
   この屋敷の使用人達のものと思われる」
谷口(えっ?なんで二人の血のことなんか知ってんだ?)
古泉「床に飛び散っている血痕は、天井から落ちてきた滴ですか…」
キョン「……悪趣味にもほどがあるぜ。ふざけたことをしやがる」

鶴屋「……うっ………ぅ……」ヒック…ヒック…
キョン「………鶴屋さん、あなたは、これからどうしますか?」
鶴屋「!! ……キョン君…」
キョン「俺達は、二人を助けに行きます。お世話になっといて何ですが、今は、
    ここであなたの傍にいることもできません。今、助けられる奴がいるから
    には、それしか考えられないんです」
鶴屋「……………」ごしごしっ
キョン「鶴屋さん………」
鶴屋「私は……次期、鶴屋家当主なんだ……だから、こんな所でへばってられない。
   ………本当は、立ってるのもやっとなくらいだけど、それでも……キョン君達が
   戦ってるのに、私だけ泣いてられないよ……」
キョン(この人は、本当に強いな。俺には、真似できない……)
鶴屋「……行こうじゃないか。やってやろうじゃないか!こんなふざけた真似をする
   奴らなんて、一人残らず、やっつけにさ!!」

869 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 21:07:20.18 ID:5/OHPjXA0

キョン「古泉、長門。どうやら、いよいよ対決の時が来たみたいだな」
古泉「そうですね……。彼にも、会いに行く必要があります」
長門「……道は記憶している。家までは辿り着ける」
谷口「彼?まだ他に、誰かいるのか?」
キョン「ああ。そうだ。あの人も呼ばないといけないな」

運転手「……お嬢様」
鶴屋「大丈夫……平気。みんなに、ついて行かないと。車を……」
運転手「……かしこまりました」

870 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 21:14:54.93 ID:5/OHPjXA0

橘京子の組織(表向きは大財閥)が所有するビル内にて…
佐々木「どう?美しいでしょう?この景色。この部屋からの眺めが、
    このビルの中では一番美しいのよ」
ハルヒ「……どっちを見ても、ビルしかないじゃない」
佐々木「だからいいのよ。この高さからだと、下を歩く人間も見えない。車の騒音も、
    人間のざわめく声も届かない。そして、そういった人間達が作り上げたビルの
    大群を一望できる。まさに、自分が神にでもなったような気分でしょう?」
ハルヒ「………」
佐々木「勿論、私は神になんて興味はない。神や王といったものは、頂点に君臨するからには、
    その下にいる人間達から嫌でも崇められる。そして、そういった人間達の面倒まで
    見なければいけない。私は、そういったわずらわしいものが大嫌いなの。貴方もそうじゃない?」
みくる「私達を、どうするつもりなんですか?」
佐々木「今はまだ、どうもするつもりはないわ。お楽しみは、彼が来てからね」

871 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 21:24:15.97 ID:5/OHPjXA0

ハルヒ「……来るかどうか、分からないわよ?あたしが来るなって言っといたから」
佐々木「それで来ないような人間を、貴方は好きになったりするの?」
ハルヒ「………」
佐々木「…そうだ、紹介しておかないと。スズメバチ、来なさい!」
ひゅっ
スズメバチ「王様、何か御用?」
ハルヒ「………!!!」
みくる「ひっ……!!」ビクッ
佐々木「名前はもう知っているはずだから、誰なのかも分かるわよね?貴方の、
    ご両親の命を奪った相手。スズメバチ、御挨拶は?」
スズメバチ「うふふ……綺麗で気の毒な姉様………貴方のお父様とお母様は、
      私の一刺しで、苦しみ悶えながら息絶えたのよ?貴方の名を呼びながら…」
ハルヒ「うっ……う………」ブルブル
佐々木「もしかすると、これが最後の対面かも知れないから、会わせてあげようと
    思ったのだけれど、震えるほどに嬉しい?」ニコニコ

872 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 21:26:49.30 ID:5/OHPjXA0

住宅街、槿の家にて…
キョン「教えてほしいんだ。あんたを雇うには、いくらかかるのか………」

キョン「どんな額でも、払う」

槿「……………」

880 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:08:56.96 ID:5/OHPjXA0

戻りました。保守ありがとうございます。
それではいよいよ、クライマックス行きます。

ガチャ バタン
キョン「」
古泉「………」
キョン「! …何かあったのか?」
古泉「先程、閉鎖空間の発生を確認しました」
キョン「!!」
古泉「状況は分かりませんが、涼宮さんの精神に何らかの過剰なストレスが
   かかったのは確かです」
キョン「そうか…急がないとな」
古泉「ただ、彼女は今や、自身の力を自覚しています。どうやら自分の意思で、
   必死に閉鎖空間の拡大を抑えているようです」
キョン「………!」

883 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:25:14.23 ID:5/OHPjXA0

橘京子の組織が所有するビル内にて…

ハルヒ「………」
――得てして人は……自分が得た物を自分だけが得た物と思い込む――

ハルヒ「………」
――特別なのが自分だけだと思うのは、浅はかだ――

ハルヒ「………」
――俺は、人間にも当てはまると思っている――

みくる(涼宮さん……。!! ポケットの中に…)
みくる(これなら…!)

886 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:29:38.14 ID:5/OHPjXA0

槿の家の前にて…
ポツ……ポツ………ポッポッポッ………
ザアアアアアアアアア………
キョン「なんだよ、また降ってきやがった」
古泉「いつの間にか、晴れていたと思ったら、またですか」
キョン「…鶴屋さん。準備はできました。急ぎましょう」
鶴屋「うん」
ブロロロロロ……

キョン「………」
キョン(ん?今、通り過ぎたCDショップから出てきたのは、千葉さんじゃなかったか?)
キョン(喫茶店でもわざわざ音楽を聴きに来たとか言ってたしな。よっぽど音楽好きなんだな)

ブロロロロロ…

889 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:39:41.92 ID:5/OHPjXA0

橘京子の組織が所有するビル前にて…
運転手「到着いたしました…」
鶴屋「キョン君、いつ行くんだい?」
キョン「もうしばらく、待っていてください。じきに来ます」
鶴屋「?」

…ウ〜ウ〜ウ〜

鶴屋「…パトカーのサイレンの音?」
谷口「なんだよ、お前。あの家に何しに行ったかと思えば、警察呼びに行ってたのか?」
キョン「まだだ……まだ、待ってろ」

ビル内にて…
警官「令状です」
社員A「……なんです、これ。うちの会社は、こんなことはしてませんよ!」
警官「容疑がかかっている以上、それで引き下がるわけにはいきませんのでね。
   調べさせてもらいますよ。武器・薬物類の密輸の形跡が無いか、書類なども
   押収させてもらいます。それでは…」ズイッ
社員B「ち、ちょっと!待ってくださいよ!!」
ガヤガヤ…
鶴屋「きょ、キョン君…なんだか騒ぎになってるけど……あれ?キョン君?」
谷口「ん?あ、あいつ、いつの間に……?古泉まで、いなくなってやがる…」

890 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:45:45.77 ID:5/OHPjXA0

社員A「いくらなんでも、横暴だ!容疑がかかってるって言ったって、こんなやり方…」
警官「おや、公務執行妨害になりますよ?証拠提出義務がうんたらかんたら…」

社員B「お、おい!うちは企業秘密が多いんだ!そこは入っちゃいかん!!」
警官「どいてください!捜査に入ります!」

キョン「うまく入り込めたな…」
古泉「ええ。ですが、約束の時間になるまでは、先へ進まない方がいいでしょう」
キョン「ああ」


みくる(ポケットに入ってたこの裁縫鋏で、なんとか、手枷を切って、涼宮さんと一緒に
    逃げないと……!)
ハルヒ「………」
みくる(切れない〜!!)
周防「何やってるの?」
みくる「!!?」ビクッ

周防「何――やってるの―――?」

892 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:52:39.75 ID:5/OHPjXA0

キョン「……時間だな。よし、行くぞ古泉!」
古泉「はい!」
ダダダッ…
キョン「うまくいってるみたいだな」
古泉「そのようです」

キョン「そろそろ、ロビーで騒ぎが起きてる頃だ…」

ロビーにて…
社員(正体は組織のメンバー)「うわあああああっ!!」
社員(上に同じく)「な、なんだこいつはっ!」
ビュッ   ビシュッ
蝉「………」
社員(正体ry)「ひ、ひぃっ!」
社員()「おいっ!あんたら、警察だろうが!!そいつ、取り押さえろ!!」
警官隊「…………」
社員「お、おいっ!何ボサッとしてんだ!!ナイフ持ってんだぞそいつ!
   今、目の前で人を刺してんだろうが!!逮捕しろよ!おいっ!!」

し―――――ん…

社員「……な…………どうして、どうして誰も……」

くすくすくす…

895 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:55:48.19 ID:5/OHPjXA0

社員「!!!」ビクッ

孝次郎「バッカジャナイノー?」

孝次郎「くすくす」
健太郎「あははっ」

社員「!!? (こ、子供……?)」

蝉(一人百万、百人殺して一億か……。割りにいいっちゃ割りにいいが、
  面倒だな…。さっさと終わらせて帰らねえと、また岩西がうるせェからな)
蝉「さっさと殺すか」ニヤッ

896 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 22:58:54.36 ID:5/OHPjXA0

キョン「長門!ハルヒはどっちだ!?」
長門「こっち。急いで、彼女達が危ない…」

??「どこへ行くの?貴方達…」

キョン「!!」
ふわっ
スズメバチ「…貴方達も、あの姉様の仲間なの?」
キョン「お前はっ!!」
長門「………」スッ
古泉「待ってください」
長門「?」
キョン「おい、古泉……」
古泉「ここは僕が引き受けます」

898 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:05:23.53 ID:5/OHPjXA0

キョン「!? 無茶言うな、敵うわけないだろ!」
長門「私がやる。貴方は先に…」
古泉「いえ。僕がやります」
キョン&長門「………」
スズメバチ「くすくす。そうね。私がその兄様と遊んでいる間、他の二人は
      逃げる時間が増えるわ。いいんじゃない?」
キョン「…古泉。秘策でもあんのか?」
古泉「秘策とは言えないかもしれませんが、考えはあります」
キョン「そうか…。なら、お前を信じるしかなさそうだな。行くぞ、長門!」
長門「………」
ダダダッ
スズメバチ「強くて真っ直ぐで素敵な兄様……。貴方みたいな人、大好き……。
      でも、ごめんなさいね。私は、貴方を殺さないといけない…」

900 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:09:20.74 ID:5/OHPjXA0

古泉「…貴方は、どうしてそんなことをするのですか?」
スズメバチ「どうして……?そんなの、お仕事だからよ」
古泉「そうですか…」
クルッ
スズメバチ「!?」
ダダダッ…
スズメバチ「…面白い人」
バッ
古泉(間に合うか……?いや、間に合わせなければならないっ!!)
スズメバチ「逃がさないわよ?兄様……」
カンカンカン・・・・・・
古泉「あと少しっ……!」
スズメバチ「ふふ。追いついたわよ、兄様……」ぴょんっ
ドカッ
古泉「うわっ!」
ドサッ…

902 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:13:44.65 ID:5/OHPjXA0

古泉「くっ……」
スズメバチ「さあ兄様…窒息プレイのお時間でしてよ」
ガッ ズン
古泉(うぐっ!)
スズメバチ「私の毒、思う存分味わって…」
古泉「………フッ」
スズメバチ「っ!?」
すうううぅぅっ………
スズメバチ「なっ、何!?」
古泉「これだけ密着していれば、容易に引きずり込めますね」

ヒュウウウウゥゥゥゥゥ………

スズメバチ「こ、ここは……」
古泉「『我々』はここを、閉鎖空間と呼んでいます」

904 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:19:27.43 ID:5/OHPjXA0

スズメバチ「なっ、何?何、それ……」
古泉「この状況で、涼宮さんに過剰なストレスを与える原因となるものは、
   やはり貴方でしょう。彼女のご両親を殺害した張本人である、貴方です」
スズメバチ「……答えなさい。ここは、どこなの?」
古泉「涼宮さんが、自身の心の中に膨れ上がったストレスを、現実世界へと持ちださない
   ようにするための、文字通り閉鎖された空間です」
スズメバチ「!!」ダッ
ベキッ
スズメバチ「!?」
古泉「見えない壁に阻まれたでしょう?もう、出られませんよ。貴方の力ではね。
   そして御覧なさい。あれが、涼宮さんのストレスの象徴です」
スズメバチ「……な、何?あれ………」ガタガタガタ……
古泉「神人。彼女の怒りや悲しみといった、負の感情の体現者ですよ」

古泉「さあ、涼宮さん。もう我慢する必要はありませんよ。貴方自身の手で、
   この憎き仇敵を討ち果たす時です」

神人「!」ピクンッ

907 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:24:23.77 ID:5/OHPjXA0

神人「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ」ズシンッ ズシンッ
スズメバチ「ひっ………!」ビクッ
古泉「ここまで貴方を連れてくるのに苦労しましたが、まさか素直に後を追ってくるとは…。
   おかげで、助かりましたよ。今や、涼宮さんは、自身の作り出した閉鎖空間の中でさえも、
   ある程度は操れるようになっています。今や、あの神人は涼宮さん自身。蜂である貴方は、
   文字通り虫ケラ同然というわけです。貴方が踏みつぶされる様子を、僕はのんびりと眺めさせて
   いただきますよ」ニコッ   スウウゥゥッ……
スズメバチ「ま、待って!待ってェ!!」
ズシンッ  ズシンッ……
スズメバチ「いやぁっ!!来ないで!!来ないでェ!!!」
古泉「どうしました?自慢の毒針で、なんとかすればいいじゃないですか」

「 い や あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ っ 」

             ズ  シ  ン  ッ

910 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:29:39.08 ID:5/OHPjXA0

一階、ロビーにて…
社員(最後の一人)「ひっ!ひぃっ!ひぃぃぃ………」ヨタヨタ…
蝉「………」スタスタ
社員「ま、待ってくれ!なんでだ!?なんでこんなことをっ!あんた、誰なんだ!?」
蝉「俺は蝉…お前らを殺しに来たんだ。そーゆー仕事なんだよ」
社員「ひぃっ!た、助けてっ!!助けてくれ!!お願いします、助けて…」
蝉「ダメだっつーの。今、言っただろうが」

蝉「仕事なんだって」    ザッ

社員「――――っ」ドサッ

912 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:34:54.12 ID:5/OHPjXA0

(佐々木曰く)VIPルームにて…
周防「逃げ――ては――ダメ―――」ざわざわ…
みくる「いっ、いやっ……!来ないで!」
周防「逃げる――なら―――痛めつけ――ても―――いいと―佐々木が――言った―」
みくる「ひぃっ!!」
バァンッ
キョン「二人ともっ!無事かっ!?」
周防「―――!」
みくる「キョン君!?」
ハルヒ「ハッ!?キョン……?」
キョン「おいっ、お前!その二人から離れ……」
シュッ
キョン「うわっ!?」ドガッ
みくる「キョン君!!」
周防「そこから先は――入ってはいけない―――」

913 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:37:37.63 ID:5/OHPjXA0

キョン「……ぐっ……!」
周防「動くと―――痛い――」
キョン「………動かなくても痛いんだがな…具体的に、何をするつもりだ?」
周防「――骨を――折るか―――手足を――千切る――」
みくる「!!」ビクッ
キョン「…………ククッ」
周防「?」
キョン「ははっ、ははははははははっ!!」
みくる「……キョン君?」

915 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:42:30.13 ID:5/OHPjXA0

キョン「俺の手脚を千切るのか!なら、やってみろよ。その程度で、俺が諦めるとでも
    思ってんのか?このコンブ髪宇宙人が!」
周防「―――」
キョン「俺は、二人を助けに来たんだ。佐々木が手段を選ばないなら、俺だってそうさ。
    二人を助けるためになら、なんだってやる。吹っつ切れたんだ。ほら………」
ガチャ ギイイ……
ズッ…
キョン「 次 は お 前 の 番 だ 、 天 蓋 領 域 」
鯨「……………」
周防「――――!」
長門「……無駄。貴方の能力は私が封じている。今の貴方は、並みの地球人と
   なんら変わらない」
みくる「長門さんっ!」
ハルヒ「有希まで……」

919 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:45:44.11 ID:5/OHPjXA0

鯨「……………」ザッ……
ガシッ
周防「――あ―――」
鯨「」ぐいっ

鯨「俺の目を」

        「    見    ろ    」

鯨「お前の罪を、のぞき込め」

周防「―――これは――何―――?私には――理解不能―――」
周防「これ――は―――」

922 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:49:51.40 ID:5/OHPjXA0

ざわ………ざわ………ざわ……
人は…誰でも……死にたがっている………
精算だ……精算しろ…………
人は誰でも死にたがっている………

周防「―――――――――――――――」

精算だ 人は誰でも死にたがっている 精算しろ 人は誰でも死にたがっている
も死にたがっている 人は誰でも死にたがっている 精算だ 人は誰でも死にた
精算だ 人は誰でも死にたがっている 精算しろ 人は誰でも死にたがっている
も死にたがっている 人は誰でも死にたがっている 精算だ 人は誰でも死にた

周防「」

925 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:52:16.54 ID:5/OHPjXA0

佐々木「………」カツカツカツ……
ガチャッ
佐々木「周防さん、あな……」ピタッ

周防「」

佐々木「えっ………?」
キョン「よぉ、遅かったな。佐々木」

佐々木「………これは?」

キョン「宇宙人の自殺現場だ。なかなかいい絵面だろ?」

928 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/03(木) 23:58:07.68 ID:5/OHPjXA0

佐々木「………」フラッ…
キョン「やれやれ、鶴屋さんにはどうやって返せばいいかな。気の遠くなるような
    金額だからなぁ」
佐々木「………くっくっくっ…。君にはやはり、驚かされるね」
キョン「………」
佐々木「いつの間に……これだけの準備をしておいたんだい?みんな、僕が以前に
    雇っていた殺し屋たちじゃないか」
キョン「……殺し屋は金をもらうために人を殺す。誰か、特定個人の下につくなんて
    ことは、本来あり得ない」
スタスタ…
古泉「あのスズメバチという殺し屋だけは、特別だったようですがね」
キョン「うまくやったのか?」
古泉「僕がここにいるということが、その証拠です。残念ながら、彼女『だったもの』は
   閉鎖空間の中に置き去りなので、お見せできませんが…」
キョン「……なるほどな。見たくないから、別にいい」
ハルヒ「……古泉君」
古泉「はい、なんでしょう」
ハルヒ「………ありがとう…」
古泉「…どういたしまして」
キョン「おいおい、ハルヒ。俺には礼はナシかよ」

931 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:04:37.50 ID:vm1Bcz2y0

佐々木「くっくっくっ。いや、素晴らしい。実に良いチームプレーだったよ」
キョン「誉めても何も出ないさ」
佐々木「あの、大量の警察官は何だったんだい?小さな子供まで混じっていたが…」
キョン「ああ、あいつらか。あれは『劇団』と言ってな。まあ、分かりやすく言うなら、
    プロのサクラだ」
佐々木「サクラ……?」
キョン「ああ。頼まれれば、どんな役柄でも演じてくれる。今回は、警察官の役をやってもらった」
佐々木「なるほど、ね」
キョン「佐々木。お前も、外見だけに惑わされない方がいい。警察官の格好をした奴が、全員警察官とは
    限らないんだ。今回もそうだ。実際、あの連中、捜査だとか何だとか好き放題言ってたが、
    落ち着いて聞いてみるとデタラメばっかり喋ってたぜ?よく、あれで騙せたもんだ」
佐々木「……建物内の警備システムや、センサーが反応していなかったのも?」
キョン「ああ、あの連中に頼んどいた。捜査だと言い張ってうまく侵入し、時間内に警備システムを解除して、
    俺達の侵入するタイミングを作ってくれた。流石だな」

935 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:11:01.16 ID:vm1Bcz2y0

佐々木「……まいったよ。僕の後ろ盾は、何もかも無くなってしまったね」
キョン「気付かれるんじゃないかと、内心では心配だったんだがな。橘が、組織はお偉いさんと
    繋がっているから、警察に捕まることなんて無いなんて言ってたし。まあ、いきなり
    あの状況になれば、誰でも驚くとは思うけどな」
ハルヒ「…どうやら、あたしたちの勝ちみたいね。佐々木さん」
佐々木「ふふ。さっきまでそこに蹲って震えていた人の言う台詞には聞こえないわね」
ハルヒ「………」
佐々木「ねえ、キョン。君は、暴力は悪いことだと思うかい?」
キョン「……そりゃ、悪いことなんじゃないか?今の俺には曖昧だが」
佐々木「どうして、悪いことだと思う?」
キョン「そりゃ、暴力をふるわれた人間が気の毒だからだろ」
佐々木「それだよ」ニコッ

937 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:18:03.27 ID:vm1Bcz2y0

佐々木「いいかい、そこが大事な点だ。可哀相なのは暴力をふるわれた方で、僕じゃない。
    そうだろう?殺人でも、なんでもそうだ。可哀相なのは、やられた方で、僕じゃない」
キョン「………」
佐々木「僕は気持ちいいだけで、苦しいのは別の人間なんだ。犯罪の快楽は僕にあって、犯罪の
    被害は、僕の外部にある。ということは、暴力も、殺人も、悪じゃない」
キョン「いや、意味が分からん……」
佐々木「批評家のモーリス・ブランショがマルキ・ド・サドについて語った言葉が、まさにそうなんだ。
    すなわち『サドの哲学は、利益とそれから完璧なエゴイズムのそれである』と。『各人は、己の
    快楽以外の掟を持たないのだ』とね」
キョン「何を言ってるんだ、こいつは……」

939 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:24:15.47 ID:vm1Bcz2y0

佐々木「よく、相手の気持ちを考えて、なんていう人間がいるだろう?優しさは、
    想像力だ、とかね」
キョン「まさにその通りじゃないか」
佐々木「違うんだよ、キョン。言っておくが、僕は想像力の塊だよ。想像力が服を着て
    歩いているようなものだ。痛めつけられたり、これから殺される相手が、どれくらい
    苦痛を感じるのか、想像することができる」
キョン「それで?」
佐々木「僕はさらにその先を考えるんだ。その苦痛を受けている被害者は僕じゃない、ということを
    僕は知っているんだ。僕はそこまで想像できるわけだ。相手の気持ちを想像して、自分の
    苦しみに感じるなんて、それこそ想像力が足りてないよ。もっと想像力を働かせれば、その
    苦しんでいるのは自分ではない、ということまで理解できるはずなのに。そうだろう?」
キョン「……それが、お前の考え方なわけか」
佐々木「君になら理解してもらえると思っていた。君は、僕の考えをいつでも一番よく理解してくれた
    じゃないか。だから、君を選んだんだ。君も、僕と一緒で、加害者の立場になってくれると。
    そう期待していた。僕の期待を裏切るのかい、キョン?」
キョン「ああ、悪いが、今追いつめられてるのは、お前の方だぜ?佐々木」

941 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:29:06.74 ID:vm1Bcz2y0

ハルヒ「長々と喋った割には、くだらない持論だったわね」
キョン「ああ。佐々木。お前がもし芸人で、ここがスタジオだったら、今頃お前は
    ステージ前の観客に弁当の食べがらを投げつけられているところだ。政治家の
    演説よりもわけが分からん。だが、不思議と聞いていて眠くならん辺りは、
    さすがお前と言うべきか」
佐々木「………それは光栄だよ、キョン」
キョン「で、どうするんだ?部下はいなくなったが、お前にはまだ『能力』があるだろ?
    対決しないのか?お前を裏切った『元・親友』を前にして」
佐々木「……今は、やめておくよ。どうやら、確かに僕は追いつめられているようだ」クルッ
タッタッタッ…
キョン「………」
鯨「おい。いいのか?このまま逃がしても………」
キョン「逃がす?」

943 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:32:41.02 ID:vm1Bcz2y0

佐々木「……こんなはずじゃなかったのに……こんなのは嘘だ……」

キョン「逃げられやしないさ」

ピッ
佐々木「……もしもし、橘さん?今からすぐに、地下の駐車場に車で迎えに来てくれる?
    ええ、頼んだわ。急いでね!」ピッ

キョン「俺からは」

地下・駐車場にて…
佐々木「……まだかしら。あ!あれね……」

すっ

佐々木「橘さ―――」

とんっ

佐々木「?」

945 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:36:03.89 ID:vm1Bcz2y0

社屋内、別室にて…
橘「はい、……はい!分かりました!地下ですね?はい」ピッ
橘「車借りますよ?」
社員「え?貴方、運転できましたっけ?」
橘「失礼な!確かに免許は取れませんが、運転ぐらいできるのです!」
バタンッ…

地下駐車場にて…
橘「佐々木さん、いませんね……。詳しい場所、聞いとけば良かった…」
ブロロロロ…
橘「おかしいなぁ…。一体どこに――」

佐々木「」ヨタヨタ…

橘「!!?」

ドンッ………

948 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:40:33.67 ID:vm1Bcz2y0

橘「―――――――え?」

キキイ――――ッ!

橘「――――――嘘……」
バタンッ
橘「……嘘でしょ…?さ、佐々木さん?違いますよね?佐々木さんじゃありませんよね…?
  え………?」

佐々木「」

橘「……あはは……嘘でしょ?佐々木さん……また、いつものように、私をからかってるんでしょ?
  そうですよね……私が佐々木さんを轢いちゃうなんて……ありえないですもん……ちゃんと前見て
  運転してたし……佐々木さんは藤原君なんかと違って、道路に急に飛び出したりしないし………
  押し屋に押されたわけじゃないんだから……押し屋……?」
ビクッ キョロキョロ……
橘「………」
橘「あはっ………あははっ………ねぇ、佐々木さぁん……返事してくださいよぉ〜……」

橘「ささきさ〜ん……」

951 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:45:04.48 ID:vm1Bcz2y0

数日後…
橘「ブツブツブツ……」
アナウンス『4番線に電車が入ります。4番線に…』
橘「ブツブツブツ……」
駅員「おい、君!危ないから、線の内側にさがりなさい」
橘「ブツブツブツ……」
駅員「おい、君ってば……あ、危ないぞ!」
橘「ブツブツブツ……ぇ?」

プアアアアアアアアン……

橘「あ――――」ゴツンッ        ……ドサッ


千葉「………」
千葉「………」ピッ
千葉「………ああ、見届けた。あれは、事故死だな。ああ、ああ、今から帰還する」ピッ

ザアアアアアアアアアアア………

955 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:50:01.52 ID:vm1Bcz2y0

さらに数日後…
キョン「………」
古泉「どうしたんだい?ボーッとして」
キョン「ん?ああ。なんだか、あれが遠い昔のことだったみたいな気がしてな」
古泉「ああ。あれか……。僕も、そんな感じがするよ」
キョン「なんか、夢でも見てたみたいだよな…」
古泉「新聞の記事、見た?女子高生が、電車にはねられて死んだやつ」
キョン「ああ。間抜けな死に方だよな」
古泉「あの記事がある分には、あれが夢じゃなかったと言えるんじゃない?」
キョン「まあそれ以前に、ハルヒがあのシールをまだ持ってるしな」
古泉「ああ、孝次郎君から貰った奴だっけ。トノサマバッタの」
キョン「ダブりの」
キョン&古泉「ぷっ」
はははははは……

958 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 00:55:59.23 ID:vm1Bcz2y0

キョン「結局、俺、何もやらなかったよな」
古泉「その台詞は、あれからもう何度も聞いたよ。耳にタコができるくらい」
キョン「しかしだな。お前はえらい大役を果たしたじゃないか。俺なんて、
    あの宇宙人に壁に磔にされて、佐々木の話に合槌を打ってただけだぞ?」
古泉「気にすること無いんじゃないかな。君が来てから、涼宮さんはすごく安心したって
   言ってたし。やっぱり、無駄ではなかったんだよ」
キョン「慰めるな。みじめになる」
古泉「アハハ。そんなんじゃないって」
ハルヒ「あら、二人とも、早いじゃない」
キョン「ああ。たまにはお前より早く着こうと思ってな」
ハルヒ「生意気ね、キョンのくせに」
キョン「なんだそりゃ。結局、俺は何をやっても文句を言われるんだな」
古泉「それはそれで、微笑ましいんだけどね」
ハルヒ「古泉君も、だいぶその話し方に慣れてきたじゃない」
古泉「まあね。今でも、たまにクセで敬語が出るとき、あるけど」
ハルヒ「徐々に慣れればいいのよ」

959 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 01:04:51.92 ID:vm1Bcz2y0

みくる「すいませ〜ん、待たせちゃいましたー」
長門「遅くなってごめん……」
鶴屋「いや〜、道が混んでたにょろ」
ハルヒ「よし、全員揃ったわね!それじゃ、恒例のSOS団大合宿に出発よ!」
キョン「いつから恒例になったんだ…」
ハルヒ「ボヤボヤしてると、置いてくわよ!」
みくる「あっ、ねえあれ!あの二人、健太郎君と孝次郎君じゃないですか?」
ハルヒ「え、どこ?」
キョン「道路の反対側のあの二人か。確かに、そんな感じだな」
ハルヒ「試してみようかしら。『バカジャナイノー』!!」
キョン「おい、バカ!やめろハルヒ!」

   「バカジャナイノー」

長門「……間違いない」
鶴屋「へえ、あの二人がそうなんだ!」

   「バカジャナイノー」

キョン「孝次郎も叫んでるな。なんだよ、あいつ。大きな声も出せるんじゃないか」
古泉「涼宮さん、あんまり道路に出ない方がいいよ。それじゃあまるで、押し屋に押される
   みたいじゃないか」
ハルヒ「お〜い!」ブンブン

(終)

975 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 01:12:04.10 ID:vm1Bcz2y0

>>1です。一応、これで、土曜日から始まって6日間に渡ったこの話は終わりです。
まず、一言。
「ごめんなさい。すみませんでした。」
文才は無いわ、構想力は無いわ、でお話しにならない自分が、調子に乗ってSSなど
書いてしまい、結果、こんなまとまりのない、無理やり終わらせたような話になって
しまいました。
やっぱり、ただ好きだからという理由で思いつくままに書いたりすると、こうなりますね。
あとがきとか、そういったものを嫌う方もおられるかと思いますが、一応、書き終えた者として
挨拶だけはしておきたいので、お許しください。
自分はハルヒも伊坂幸太郎のシリーズも両方とも好きですが、読んでくださった方々の中で、
自分の好きな子の作品をこんな駄作にしやがってこの野郎という方がおられましたら、力の限り
>>1を罵ってください。本当に、こんな駄文スレになってしまい、(しかも途中でだいぶグダって
いました)両方の原作に申し訳ないですが、とりあえず、完結だけはさせようという決意のもとで、
なんとか書き終えました。応援、保守、助言等してくださった心やさしい方々、本当にありがとうございました。

985 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/04(金) 01:21:09.25 ID:vm1Bcz2y0

あとがきの続きです。当初は、佐々木団そのものを悪役にするつもりは
無かったのですが、書いてる途中で、どういうわけか佐々木達を悪役の
方に回してしまい、結果、佐々木ファンやハルヒファンの方々にかなり
不快な思いをさせることとなってしまいました。深くお詫び申し上げます。
他にも、重要な会話を結局後に活かせていなかったり、登場人物の魅力を
今一つつかめていなかったりで、原作を知っている人にも知らない人にも
意味不明なできになってしまいました。
自分の力なんてこんなもんだと、思い知らされた感じです。
読んでいて腹の立つ思いをした方々も多いと思いますが、当然のことです。
読み返していて、自分でもなんでこんな展開にしたんだと思う部分が多いです。
とりあえず完結だけはさせましたが、自分はまだまだ力不足。
身の程を知りました。
それでも、こんな自分の書くSSを応援してくれた皆さんに非常に感謝しています。
結局、原作とコミックのグラスホッパーに原作とコミックの魔王と、全部ごちゃ混ぜに
なった感じで、余計に分かりにくい方々が多かったのではと思います。
千葉がたびたび登場したのは、個人的に好きだからなのと、展開を読ませにくくできるのではと
思ったからです。あと、殺し屋軍団は結局、スズメバチと柴、土佐以外は誰も死んでません。
あまりにも個々のキャラクターの存在が大きすぎて、自分では到底扱い切れない人も多くいました。
これからは、もっと精進して、人の目に触れさせても恥ずかしくないような文章を書けるようにして
行きたいと思います。
以上、長々と済みませんでした。ありがとうございました。



ツイート

メニュー
トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:キョン「最近みんなに避けられてるような気がするんだが」