キョン「もう我慢の限界だ! ……漏れそう」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:26:15.66 ID:VuKVBoDG0

キョン「昼に食ったエビフライが痛んでいたんだろうか……?」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:29:30.65 ID:VuKVBoDG0

ハルヒ「ねえキョン。さっきから震えてるけど、どうかしたの?」

キョン「え? 別に?」

ハルヒ「別にってことないでしょ。具合悪いの?」

キョン「そんなことないし! 誰もウンコを我慢してなんかいないし! 放っておいてくれ!」

ハルヒ「……あ、そう」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:35:43.54 ID:VuKVBoDG0

くそっ。強がるべきではなかったか?

だが、どうやってトイレに行けばいいんだ!

まだ五時間目の授業が始まったばっかりだ。
あと四十分間も我慢できるのか?

マジで漏れそうだ……。

だが、間違ってもここで教師に「トイレ行きたいんですけど」なんて言っちゃ駄目だ!

そのことは小学校で学んだ。
授業中にトイレに行ったせいで、ずっといじめられてきたんだ。

二度と思い出したくない小学生時代と同じ轍を踏むわけにはいかない!

頑張れ俺!
きっと俺なら我慢できる!

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:38:39.24 ID:VuKVBoDG0



ぷーっ。


ハルヒ「……ねえ、キョン」

キョン「何だ?」

ハルヒ「今の音、何?」

キョン「音って、何が?」

ハルヒ「今、あんた、オナラしたよね?」

キョン「してねえし! 授業中にオナラなんてするわけないじゃん!」

ハルヒ「でも、臭いんだけど……」

キョン「ああ、そういう魂胆か。本当はハルヒ、お前がオナラしたんだろう?
    その罪を俺になすりつけるつもりだな!?」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:42:44.40 ID:VuKVBoDG0

ハルヒ「はあ? 私がオナラなんてするわけないでしょ!」

キョン「俺だってしてないし!」

ハルヒ「じゃあ、誰なのよ」

教師「こらそこ! 後ろの方、うるさいぞ!」

キョン「……すみません」

ハルヒ「(小声で)本当にあんたじゃないの?」

キョン「断じて違う」

ハルヒ「……そう。疑ったりして悪かったわ。この話は、もうこれでやめましょう」


よっしゃああああああ!

とりあえず、咄嗟にハルヒに罪をなすりつけようとしたおかげで、
オナラの犯人が俺だということがバレずにすんだぜ!

だが、問題はここからだ。

ハルヒは既に、俺を疑い始めている。

これ以上不審な挙動を見せたら、こいつウンコしたいんじゃね? と思われてしまう!

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:46:03.64 ID:VuKVBoDG0

ああ、それにしても、オナラなんてするんじゃなかった……。

どうして我慢できなかったんだ俺。

これじゃあ、
「先生。気分が悪いんで保健室に行ってきます」
と教室を抜け出してトイレに直行する作戦を実行することもできないじゃないか。

今さら「保健室」なんて言っても、信じてもらえるわけがない。

どうせトイレだろ……って思われちまう。

やっぱり、オナラをしてしまう前に、保健室作戦を実行するべきだったか。
今となっては後の祭りだ。
そのことは考えないようにしよう。

保健室作戦は諦めて、早く次の作戦を考えなければ!

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:50:01.63 ID:VuKVBoDG0

うっ……。

腹部の痛みが、尋常じゃないレベルに達してきた。

これは無理だ。
あと38分も我慢できるわけがない。

何とかして自然に教室を抜け出して、トイレに行く方法を考えないと。

ああ、避難訓練でもあればなあ……。

待てよ? 避難訓練? その手があったか。

非常ベルを鳴らせばいいんだ。
いやしかし、非常ベルは廊下にしかない。
教室の後ろの方の席にいたまま鳴らすのは不可能か……。

いや、その応用を考えるんだ。

爆破予告というのはどうだろう?

『この学校に爆弾を仕掛けた。あと十分で爆発する』
という電話があれば、学校側は生徒を避難させようとするんじゃないだろうか?

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:53:49.32 ID:VuKVBoDG0

爆破予告。

もう俺に残された手段は、それしかないのかもしれない。

授業中にトイレに行った男。
と、
自分の学校に爆破予告を出した男。
の二者択一なら、俺は後者を選ぶ!

とりあえず教師から見えない位置で、携帯を開いて……。


うおおっ! 俺は馬鹿か!

自分の学校の電話番号なんて登録してるわけないじゃん!

くそっ。貴重な時間を、また無駄にしてしまった。

授業が終わるまで、残り35分か。
絶対我慢できない。

直腸が破裂するのと、授業中にトイレに行くのと、どっちが恥ずかしいだろう?

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 04:57:47.57 ID:VuKVBoDG0

あっ……。
また波が来た。

さっきは油断して、オナラをしちまったからな。
今度こそ我慢を――いや無理だ。
やっぱりオナラを出すしかない。

しかし、音を出すのは駄目だ。
何とかして、すかしっ屁にしないと。

俺ならできる! ちゃんとすかしてみせる!


ぷっ。


駄目じゃん俺!

ハルヒ「……キョン」

キョン「またオナラの音が聞こえたな。犯人は誰だよ、まったく」

ハルヒ「あのさあ……」

キョン「おい谷口! お前、オナラしただろう!?」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:01:39.79 ID:VuKVBoDG0

谷口「はあ!? 藪から棒に、何だよキョン」

キョン「谷口の癖に藪から棒にとか小難しい言葉使うんじゃねえ!
    お前、神聖なる教室でオナラをしただろう!」

谷口「してねえし」

キョン「嘘つくんじゃない! おいハルヒ! お前もオナラの音を聞いただろう?」

ハルヒ「聞いたけど……」

キョン「谷口の席の方から聞こえたよな?」

ハルヒ「まあ、前の方から聞こえたのは事実だけど……」

教師「またお前か! いい加減に静かにしろ!」

キョン「でも先生、教室でオナラをした奴がいるんですよ!?」

教師「オナラくらいいいじゃないか」

キョン「そんなわけにはいきません! 同じ教室にいる我々は、
    強制的にそいつの腸内の臭いを嗅がされることになるんですよ!」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:07:53.20 ID:VuKVBoDG0

どうして俺は自ら墓穴を掘ってしまうんだ。

しかし、探偵役を演じている限りは、
俺が犯人ではないかという疑いが向けられることはないはずだ。

と、思いたい。


教師「分かった、分かった。窓を開けろ。それでいいだろ?」

キョン「……分かりました。とりあえず、それでいいです」

俺は窓を開けた。

ふう。これで、オナラの臭いは消えるはずだ。
臭いさえ消えれば、ハルヒも俺に対する疑いをそのうち忘れるだろう。

それより、早くトイレ以外の理由で教室を出る方法を考えないと……。

そうだ!

鼻血だ! それならウンコよりは恥ずかしくないし、自然に出られる!

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:12:03.57 ID:VuKVBoDG0

だがしかし、自然に鼻血を出すのも意外と難しいんだよなあ。

鼻をほじったからと言って鼻血が出るとは限らないし、
何より、授業中に鼻をほじっているところを見られるのは、
ある意味ウンコより恥ずかしい。

まずは指で鼻の下をこすってみるか。
……駄目だな。
この程度では鼻血は出ないか。

さりげなく机に突っ伏し、その状態で腕に鼻をぶつければ――。

痛いだけだった。
鼻血なんか出ないじゃないか。

エロいことを考えると鼻血が出るというのは、嘘だって知ってるし……。

最初の考えに戻って、鼻に指を入れ、爪で粘膜を傷つけるしかないか。

問題は、いかにして自然に、鼻に指を入れるかだな。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:17:02.57 ID:VuKVBoDG0

そうこうしているうちに、授業も残り30分を切ったか。
意外と我慢できそうな気が――いやいややっぱり無理でした。

とりあえず、消しゴムを落として、それを探すふりをしながら鼻に指を突っ込めば、
角度的に見られる心配はないだろう。

よし、その作戦で行くか。

まずは、さりげなく消しゴムを落として――。

隣の席の奴「はい」

キョン「あ、ありがとう……」

拾うんじゃねえ!
空気読めよ!
何で俺が消しゴム落としたのか、察してくれよ!

もういい!

机に突っ伏して寝てるふりをしながら、見えないように鼻に指を入れるしかないか。

教師「おいおい。五時間目だから眠いのは分かるが、ちゃんと目を醒ませよ」

ちくしょう! 馬鹿教師め死んじまえ!

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:20:16.19 ID:VuKVBoDG0

いや待て。
これは願ってもない展開だ。

キョン「昨日あまり寝てなくて……」

教師「言い訳にならんぞ」

キョン「ちょっと顔を洗ってきてもいいですか?」

よし、これなら自然に教室を出て行けるぞ!

教師「馬鹿言うな。眠いなら、その場で立ってろ」

キョン「……マジですか?」

教師「マジだ。早く立て」

え。
何この空気。
冗談じゃなくて、本当に立たなきゃいけないの?

うおおっ。
椅子を後ろにズラしただけでも、振動で腹に刺激が行く。

座っている状態でも苦しかったのに、立ってると余計に苦しいし……。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:26:29.40 ID:VuKVBoDG0

教師「背筋を伸ばして、シャキッとしろ」

キョン「はい……」

背筋を伸ばせとか、俺に死ねって言ってるようなもんだぞ。

いいからてめえは授業に集中してろよクズ教師が。

こいつ、絶対俺がウンコしたいの分かってて意地悪してるだろ。
ちくしょうちくしょう。
今度お前の家に忍び込んでシャンプーを脱毛剤と摩り替えてやろうか!

っていうか、またオナラが出そうだし!

だが、今回は窓が開いているから、前回よりは臭いは目立たないはずだ。
問題は音だな。

ちゃんとすかすことができるかどうか……。
そこに、これから三年間の俺の高校生活の全てがかかっている!

ええい、いくぞ!

……やった、成功した。音が出なかったぞ!

でも、何か変だな。

まさか、これって――。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:28:06.47 ID:VuKVBoDG0

ヤ バ イ 。


漏  ら  し  た  。


ウンコを漏らした。
授業中に。
立たされている状態で。
真後ろにはハルヒがいるのに。
高校一年生の初夏なのに。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:30:55.13 ID:VuKVBoDG0

終わった。
人生終わった。

いやいやいやいやいやいやいや。

待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て。

まだ終わったとは限らないぞ。

現に、誰もまだ俺がウンコを漏らしたことに気付いてないじゃないか。
音はしなかったし、量も少なかったし、意外といけるんじゃないのか?

窓が開いているから、臭いも少ないはずだし――。


国木田「ねえキョン。ちょっと寒くなってきたから、窓閉めてくれない?」

キョン「くにきだああああああああああああ!」

国木田「え、何?」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:35:41.51 ID:VuKVBoDG0

落ち着け。
落ち着くんだ俺。

大声を出してはいけない。

腹に負担がかかるし、何よりも目立つ。

いま目立つのは致命傷だ。

キョン「いや……何でもないんだ」

国木田「そう。じゃあ、早く窓を閉めてよ」

窓を閉めるわけにはいかない。
絶対にだ。

窓を閉めたら、ウンコの臭いが教室中に充満して、
今度こそ犯人探しに発展するに決まっている。

キョン「あー……俺は暑くて暑くて死にそうだから、窓を閉めたくないんだが」

国木田「僕、ちょっと風邪気味なんだけど」

谷口「おいキョン。意地悪なこと言ってないで、さっさと窓を閉めてやれよ」

意地悪してるのはお前らの方だ!

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:39:52.46 ID:VuKVBoDG0

キョン「寒いなら服をもう一枚着ればいいだろ」

国木田「まだ夏服じゃないか」

キョン「体操服があるだろ? 今日の二時間目は体育だったし」

国木田「体操服は半袖半ズボンだから、着替えたら余計に寒くなっちゃうよ」

キョン「制服の下に体操服を着るんだよ」

国木田「ああ、なるほど。でも今は授業中だから」

くそっ。
国木田のくせに、今日はやけに突っかかってくるじゃないか。

いや待て。
災い転じて福となすということわざを思い出せ!

この状況を最大限に有効活用するんだ!

キョン「先生。国木田が制服の下に体操服を着たいって言ってるんですけど」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:44:09.83 ID:VuKVBoDG0

教師「またお前か。着替えたいなら着替えればいいじゃないか」

キョン「いえ、俺じゃなくて国木田が着替えたいんです。
    でも、今は授業中ですから、トイレで着替えた方がいいかと思って。
    それで、俺も付き添いに――」

国木田「僕はそんなこと言ってないよ。ただ、窓を閉めて欲しいだけ」

教師「窓を閉めろ」

キョン「でも、あの――」

教師「早く閉めろ」

キョン「はい……。あの、もう目は覚めたんで、座ってもいいですか?」

教師「分かった、分かった。座ればいいから、窓を閉めろ」

キョン「……はい」

もうどうにでもなれ。

とりあえず、ズボンが染みになったところをハルヒに見られないように、座らないとな……。

って、俺は馬鹿か!
座ったら状況が悪化するじゃないか!

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:51:28.04 ID:VuKVBoDG0

座るとはどういうことだ?

それは、パンツと尻の間にある物体に体重をかけて引き伸ばすということに他ならない!

体重をかけたらどうなる?
水っぽいウンコはパンツを貫通し、ズボンに染みができる。

臭いもひどくなる。
言い逃れができなくなる。

座っちゃ駄目だ!

キョン「先生、すみません。やっぱり、また眠くなってきたんで、立っててもいいですか?」

教師「お前なあ、いい加減にしろ! どれだけ授業を妨害すれば気が済むんだ! 早く座れ!」

キョン「はい……」

こうなったら――。

空 気 椅 子 だ 。

それしかない。
授業が終わるまでの20分ちょっとの間、空気椅子をして持ちこたえるんだ!

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 05:56:22.47 ID:VuKVBoDG0

よし、とりあえず、数ミリだけ隙間を残して、座ったように見せかけることができたぞ。

後は、少しでも長く、窓を開けた状態を保たないと……。

国木田「ねえキョン。座ったんだから、早く窓を閉めてよ」

谷口「おい涼宮、お前が閉めてやれよ」

ハルヒ「何で私が……。まったくもう、しょうがないわね」

こんなときに限って、何でハルヒは素直に言うことを聞くんだよ!
お前いつもとキャラ違うじゃん!
絶対に谷口の言うことなんて無視するタイプのキャラじゃん!
何で窓を閉めちゃうんだよこの野郎!
さてはお前ら、グルになってるな?
みんなで共謀して俺をいじめて楽しんでるんだろ?
そうか分かったぞ!
昼休みに弁当を食ってるときに、
谷口か国木田のどちらかが俺の弁当に下剤を仕込んだんだろ!?
ハルヒの指示か!? そうなのか!?
みんなで俺がウンコを我慢してるところを見て楽しんでたんだろ!
そうかそうかお前らはそんな奴らだったのか死ねよちくしょうおおおおおおおおおお!

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:01:21.38 ID:VuKVBoDG0

やべえ。

まだ1分も経ってないのに、もう空気椅子をしてるのが苦しくなってきた。

空気椅子ってこんなにキツかったっけ?

ああ、そうか。
筋肉が肛門に集中してるから、腹筋に血液が集まらないのか。

っていうか、この体勢苦しすぎる。
腹に力を入れたらウンコが出そうになるのは、
小学生でも知ってることじゃないか。

ああどうしよう。
涙目になってきた。
高校一年生にもなってマジで泣いてるよ俺。

あと20分か……。

もう嫌だ。死にたい。

ハルヒ「先生!」

突然、ハルヒが手を挙げた。
ハルヒ。お前はいったい何をしようとしているんだ……?

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:07:13.10 ID:VuKVBoDG0

キョンがウンコを漏らしました!
とでも言うつもりか?

ああ、言いたければ言えばいいさ。
そうして俺はウンコマンという渾名を付けられ、
学校裏サイトにウンコを漏らしてる画像を曝され、
学校中から白い目で見られるんだ。

母親には、
『高校生にもなってウンコを漏らすなんて!』
って怒られるんだ。

妹には、
『お兄ちゃんのせいで私までいじめられてるんだよ!』
って泣かれるんだ。

谷口や国木田も、もう俺と弁当を食べてくれないだろう。
一人ぼっちになった俺は、毎日昼休みは便所飯になるんだろうなあ。

遠足のときは、
『こいつウンコを漏らすかもしれないから前の方の補助席にしようぜwww』
って言われるんだ。

修学旅行のときには、
『ウンコ漏らすかもしれない奴と同じ班なんて絶対嫌だしwwww』
って避けられるんだ。

そして自然と不登校になって……。人生終わった。
さあ、ハルヒ。
もう死刑執行のボタンを押してもいいぞ。心の準備はできたから。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:11:40.01 ID:VuKVBoDG0

教師「どうした?」

ハルヒ「気分が悪いから、保健室に行きたいんですけど」

ハルヒ……?

教師「分かった。ええと、このクラスの保険委員は――」

ハルヒ「付き添いは、キョンでいいです」

ハルヒ!
お前って奴は……!
俺がウンコを漏らしたことに気付いて、救いの手を差し伸べてくれたんだな……?

教師「ああ、そうか。まあ、こいつはうるさいし、ちょうどいいか。行ってこい」

ハルヒ「さあ、キョン。早く行きましょ」

どうしよう。
何か感動して泣けてきた。
ハルヒがこんなにいい奴だったなんて。

俺はハルヒに手を引っ張られた。

――え。
ちょっと待て。
そんなに強く引っ張るなよ。
今の俺は普通の状態じゃないんだぞ。
空気椅子をしていたせいで、脚に力が入らないんだぞ。
そんなに強く引っ張ったら――。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:16:59.40 ID:VuKVBoDG0

俺は、脚に力が入らず、倒れた。

前向きに。

その方向には、斜め後ろの奴の机があった。
俺の腹が、その机の角に当たる。

今までの人生で経験もしたことがないような勢いで、
ウンコが漏れた。

音もあり得なかった。
きっと隣のクラスまで聞こえただろう。

それだけじゃない。
ウンコだけじゃなかったんだ。
オシッコまで漏らしてしまったんだ。

水のしたたる音が聞こえた。
ズボンが熱くなる。

一瞬の間を置いて、教室の中がパニックになった。

当事者であるはずの俺だけが、声も出さずに放心していた。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:20:16.88 ID:VuKVBoDG0

谷口「漏らしたぞ! キョンがウンコと小便を漏らしたぞ!」

谷口が大声で実況している。
隣のクラスどころか、学年中に筒抜けだろう。

ハルヒ「いやあっ! 触んないでよ!」

自分から手を握っていたくせに、ハルヒは乱暴に俺の手を払った。

支えを失った俺は、そのままの状態で倒れた。
床にできていた水溜りの中に、俺は体ごと突っ込んだ。

キョン「……あは」

もうね。
笑うしかないよね。

キョン「あはははははははははははははは!」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:23:24.44 ID:VuKVBoDG0

もしもこれが、漫画とか小説だったならば、
教室で盛大に漏らしたところで話は終わっていただろう。

だけど、現実はそれからが怖いんだ。

ハルヒを含めて、女子はみんな悲鳴を上げながら教室の外に逃げていった。

男子も、残っているのは、谷口とか国木田とか、ほんの数人だけだ。

いや、教師も残っているか。

教師「ええと……」

ああ、困った顔をしてる。
どうせこいつは自分の保身のことしか考えてないんだ。

俺が何度もSOSサインを出し続けていたのに、無視していたんだからな。
責任の半分くらいは、このクズ教師にあると言ってもいいだろう。
さあ、この教師は、俺にどんな謝罪をしてくれるんだろうか?

教師「担任の岡部先生を呼んでくるから、しばらくそのままで待っていなさい」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:28:49.39 ID:VuKVBoDG0

しばらくそのままで待っていなさい?
それ、俺に向かって言ってるの?

教師は本当に、教室から逃げていった。

俺、全身がウンコとオシッコで汚れてるんだぜ?
この状態で岡部が来るのを待てと?

まあ、お腹の中のものはあらかた出しちゃったから、
もうトイレに行く必要はないけどね。

でも放置プレイはないだろ。

俺はゆっくりと立ち上がった。

国木田「ひぃっ!」

国木田は恐れをなしたように、俺から距離を取った。

もはや国木田にとっては、俺は友達なんかじゃないんだろうな。
ただのウンコを漏らした男子高校生に過ぎないんだろうな。

いいよ。
分かるよ。
俺だって、例えば谷口とかが教室でウンコを漏らしたら、
同じ反応を取っちゃうよ。

だから、俺は国木田を許すよ。
とにかく、道を開けてくれ。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:32:54.62 ID:VuKVBoDG0

国木田「うわああああああっ! 来ないでよ!」

国木田が大声を上げながら、逃げた。

教室の戸は閉まっていた。
廊下に避難した生徒達が閉めたのだ。
俺のウンコとオシッコの臭いを嗅ぎたくなかったからだろう。

俺は、戸に手を伸ばした。

谷口「おい、お前、汚い手で戸を触るんじゃねえよ!」

お前、か。
もうニックネームですら呼んでくれないんだな。
俺にはもう、そんな価値はないんだな。
あのニックネームは嫌いだったけど、それでも、
お前なんて呼ばれるよりはマシだったと、今になって思う。

キョン「じゃあ、開けてくれ」

谷口を振り返ると、俺が歩いた場所には、ナメクジが這ったような跡が残っていた。
うわあ、マジで汚ねえ。

クラスメートにこんな奴がいたら、俺なら徹底的にネタにするね。
それが今の俺。

あはははははははははははははは!

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:40:39.41 ID:VuKVBoDG0

谷口「俺が、教室の戸を開けなきゃいけないのか?」

キョン「だって、お前は俺に戸に触れて欲しくないんだろ?」

谷口「そりゃそうだ」

キョン「なら、お前が開けるしかない。論理的帰結。分かる?」

谷口「ああ、そうだよな……」

谷口は慎重に足元を見ながら、俺の方へ近寄ってきた。

そして――。
俺は、汚物にまみれた手を、谷口の方へ差し出した。

谷口「うわっ!」

俺の突然の行動に驚いた谷口は、ナメクジの跡を踏み、足を滑らせた。
谷口は尻餅をつく。
ナメクジの跡に向かって。

キョン「あはははははははははははははは!」

谷口「くそっ、汚ねええええ! 憶えてろよ!」

谷口は捨て台詞を吐きながら、教室の戸を乱暴に開けて飛び出していった。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:46:38.68 ID:VuKVBoDG0

男子A「おい、ウンコ野郎が来たぞ!」

開いた戸の近くに俺が立っていることに気付いた男子Aが、
大声で他の生徒達に知らせる。

おそらく、この男子Aは見張りをしていたのだろう。

教室からすぐ外の廊下には、女子は一人も残っていなかった。
別の教室か、階段あたりに避難しているのだろう。

俺が教室から出ると、男子Aも走って逃げていった。

俺は肩を落として廊下を歩く。
ズボンが脚にまとわりついて、歩きにくい。
ああ、俺はまるで苦行僧だ。

他の教室の戸が開いて、俺を凝視している。
みんな、口々に臭いとか汚いとか叫んでいる。
もう授業にならないのだろう、教師達も生徒を止めようとはしなかった。
他の教室の近くに行くふりをすると、慌てて戸を閉めるのが愉快だ。

まだ五時間目は終わっていない。

五時間目が始まったばかりのときは、
まさかこんなことになるなんて思ってなかったのに。

あの頃に戻りたいぜ。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:53:57.52 ID:VuKVBoDG0

俺は男子トイレを目指していた。

ずっと行きたくてたまらなかった場所だ。

もう便意はないが、それでも男子トイレに行きたかった。

トイレに行けば、こんな臭いを発していてもさほど不自然ではない。
水も石鹸もある。
個室もある。
そして何より、一人になれる。

そうだ。

俺はずっと、一人になりたかったんだ。

もうすぐ、願いが叶うはずだ。

ふと、群衆の中に、見覚えのある生徒を見つけた。
古泉だった。

古泉は、道端に放置された犬の糞を見るような目つきで、俺を見ていた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 06:58:43.46 ID:VuKVBoDG0

キョン「古泉……」

俺は無意識に、古泉を呼んでいた。

しかし、古泉は見事に無視をした。
他人のふりをした。
同じ部活のメンバーだと他の生徒に知られるのを恐れているような様子だった。

そうかそうか。
お前がそのつもりなら、こっちにも考えがあるぞ。

キョン「古泉。俺、ウンコ漏らしちゃったぜ」。オシッコも。凄いだろ?

古泉は相変わらず無視している。

古泉って誰ですか? って顔をしている。

キョン「ほら古泉、ハイタッチしようぜ!」

俺は手を振り上げた。
モーゼの十戒のように群集が割れる。

古泉「俺に近寄るんじゃねえ!」

古泉は近くにあった誰かの鞄を、俺に向かって投げつけた。
いつもとキャラが違った。

古泉。もう敬語キャラはやめたのか。
俺も他人を見下すキャラは引退みたいだから、お互い様かな。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:03:36.42 ID:VuKVBoDG0

もういい。古泉にはもう何も期待しない。
俺は泣きながら男子トイレを目指した。
誰かの視線を感じて顔を上げると、長門を見つけた。

長門はいつもと同じ無表情で、俺を見ていた。

キョン「長門……」

長門は古泉と違って、俺を無視しなかった。

長門「今日のあなたは、いつもと様子が違う」

キョン「そうなんだよ。俺、ウンコ漏らしちゃったんだよ」

長門「ウンコって何?」

キョン「もしかして、長門はウンコしないのか?」

長門「しない」

キョン「そうかそうか。あんなもん、しなくてすむなら、しない方がいいぞ」

長門「そう」

キョン「長門にお願いがあるんだが、俺がウンコを漏らしたという事実を、
    なかったことにしてくれないだろうか?」

長門「世界を改変して欲しい、ということ?」

キョン「頼む。一生のお願いだ!」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:11:22.54 ID:VuKVBoDG0

長門「それはできない」

キョン「できない……だと?」

長門「そう」

キョン「何でできないんだよ!」

長門「私の役目は、観測だから」

キョン「でも、俺が朝倉に襲われたときは助けてくれたじゃないか!」

長門「あのときは特別。朝倉は私のバックアップだったから私に責任があった」

キョン「だけど、ハルヒが世界を再構築しようとしたときも、ヒントをくれただろ?」

長門「あくまでもヒントをあげただけ。それ以上のことはしてない」

キョン「ヒント程度のことでもいいから、この状況を何とかしてくれ!」

長門「今回、あなたが教室でウンコを漏らしたことにより、涼宮ハルヒに異変が起きた」

キョン「ハルヒに……? まあ、自分と手を繋いでる奴がウンコ漏らしたら、誰だってそうかもしれないけど」

長門「非常に興味深いデータが取れた。私は、今後も涼宮ハルヒを観測し続けなければならない」

キョン「俺よりもハルヒの方が大事なのか……?」

長門「そう」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:16:52.07 ID:VuKVBoDG0

キョン「長門って……そんなに冷たい奴だったのか」

長門「私は情報統合思念体だから、体温は低い」

キョン「そういう意味の冷たいじゃないんだが……」

長門「もう行っていい?」

キョン「行くって、どこに?」

長門「今はまだ授業中」

キョン「まあ、そうだけど……」

長門「頑張って」

キョン「ああ、頑張るよ……」


長門が冷たかったことがショックだった。

長門は俺のことが好きなんじゃないかとか自惚れていた自分が恥ずかしかった。
いや、もしかすると、本当に、長門は俺を好きだったのかもしれない。

しかしそれは、俺がウンコを漏らす前の話だ。
ウンコを漏らす前と後で、俺は違う人間になってしまったのだ。

長門は、そのことを教えてくれた。
ありがとう、長門。
きっと、これからは、目も合わせてくれないんだろうな……。

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:21:54.83 ID:VuKVBoDG0

長門に見捨てられた俺は、その場にうずくまり、泣き出した。

もう嫌だ。
本気で死にたい。
消えたい。
誰か、俺を殺してくれ。

岡部「キョン!」

担任に呼ばれた。
体育の授業中だったらしく、岡部はジャージ姿だった。
あの教師に呼ばれて、慌てて駆けつけたのだろう。

キョン「岡部先生……。今は一人にしてください」

岡部「何を言ってるんだ。さあ、こっちに来なさい」

俺は岡部に手を引っ張られた。

キョン「触らないでください。汚いですよ」

岡部「いいから来い!」

俺は強引に岡部に手を引っ張られた。
ハンドボール部の顧問らしい、ごつごつとした、男らしい手だった。

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:28:20.81 ID:VuKVBoDG0

俺が連れて行かれたのは、プールだった。
ちなみに、俺は上履きのままで外に出た。

今日は気温が低いので、プールは使っていなかった。

岡部はプールのシャワーを出した。

岡部「ポケットに携帯とか財布があったら、出しておけ」

キョン「はい……」

俺はプールサイドに携帯と財布を置いた。
どちらもひどく汚れている。
財布はともかく、携帯はもう壊れているかもしれない。

岡部「今、シャンプーと石鹸を持ってきてやるから、先にシャワーを浴びてろ」

キョン「どうも……」

岡部が走り去ると、俺は恐る恐るシャワーに近づいた。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:34:23.79 ID:VuKVBoDG0

シャワーの水は、とても綺麗だった。
今日は曇りなのに、うっすらと虹ができていた。

指先で水に触れてみる。
岡部が気を遣ってお湯も少し出してくれたらしく、
それほど冷たくはなかった。

ああ、水というのは、こんなにも綺麗なのか。

俺のように汚れきった人間が、水を汚してもいいのだろうか。

そんなことを考えながら、上履きと靴下を脱いだ。
他の服は着たまま、シャワーに飛び込んだ。

全身が清められていくように感じた。

しばらくして、岡部が戻ってきた。
俺は小さいシャンプーと石鹸を手渡された。

キョン「もしかして、これ、先生の私物なんじゃ……」

岡部「気にするな。いいから、さっさと身体を洗え」

キョン「……どうも」

岡部って、こんなにいい奴だったのか。

いやいや騙されるな俺!
誰も信用してはいけないということを、
ハルヒや谷口や国木田や古泉や長門に教えてもらったじゃないか!

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:43:02.17 ID:VuKVBoDG0

こんなに優しい、父親のような表情をしてるけど、
岡部だって本当は俺のことを嘲笑っているに違いない。

こいつ高校生にもなって授業中にウンコ漏らしてやんのwwwww
とか思っているに違いない。

もう騙されないぞ。

岡部「あと必要なのは……バスタオルと着替えだな」

キョン「着替えは体操服があるけど、バスタオルは――」

岡部「ああ、心配しなくていい。いま持ってきてやるからな。
    もし寒かったら、もっとお湯を出してもいいからな。待ってろよ」

岡部は相変わらず、優しい表情をして去っていった。

だが、俺は騙されない。
きっと、岡部は俺を陥れるために何かしに行ったんだ。

いったい何をするつもりなんだろう?
カメラを持ってきて、俺の情けない姿を撮ろうとしているのか?
それをネタに脅迫するつもりなのか?

あるいは、俺の体操服を教室で糞尿まみれにするんじゃないだろうな?
喜ばせておいて突き落とす、よくあるパターンだ。

あ り 得 る 。

岡部が戻ってくる前に、ここから逃げよう。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:48:09.10 ID:VuKVBoDG0

しかし、逃亡するにも、濡れた服ではな……。

シャツやズボンが身体にまとわりついて、気持ち悪い。

しょうがない。



全裸でいいか。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 07:57:32.24 ID:VuKVBoDG0

俺は汚れた服を脱ぎ捨てた。

仮性包茎や腋毛も含めて、全てをさらけ出した。

ああ、何て清々しい気分なのだろう。

今まで俺は、つまらない常識に囚われるあまり、
大切なものを見失っていたのかもしれない。

そもそも、排泄を恥ずかしがる動物は、人間だけだ。
ウンコを漏らしたからどうだっていうんだ。

そして、服を着る動物も、人間だけだ。
全裸こそが生き物として正しい姿なのだ。

俺はようやく、そのことを悟った。

この境地に達しただけでも、教室でウンコを漏らしたことは、
無駄ではなかったのかもしれない。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 08:04:25.12 ID:VuKVBoDG0

さて、早く身体を洗ってしまおう。

俺は岡部に借りたシャンプーと石鹸で、
素早く、汚れた場所を洗った。

シャワーで洗い流すと、修行僧のように満たされた気持ちになった。

もちろん、俺を陥れようとしている岡部が
戻ってくるのを待つつもりはなかった。

俺はそのまま、プールを出た。

そこに、朝比奈さんと鶴屋さんがいた。

みくる「きゃあああああああああああああっ!」

鶴屋「きょ、キョン君!? 何をやっているんだい!?」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 08:13:56.24 ID:VuKVBoDG0

キョン「朝比奈さんと鶴屋さんの方こそ、何をやっているんですか?
     授業中でしょう?」

鶴屋「わ、私たちは、体育の授業中に、
    岡部先生がいなくなっちゃったから、捜していたんだよ」

みくる「そんなことはいいから、早く服を着てください!」

キョン「どうしてですか?」

鶴屋「え?」

キョン「どうして、服を着ないといけないんですか?」

みくる「え? えええ? だって、服を着ないと、見えちゃうじゃないですか」

キョン「何が見えるんですか?」

みくる「だから、その……」

キョン「遠慮せずに、隅々まで見てください。憧れの上級生二人に、
    俺の生まれたままの姿を見てもらう機会なんて、
    滅多にありませんからね」

俺はさり気なく、水を浴びて縮こまったチンコを伸ばした。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 08:21:29.60 ID:VuKVBoDG0

みくる「そ、そんな……」

キョン「俺のチンコ、どうですか? 今は皮を被ってますけど、
     緊急時にはちゃんと自然に剥けるんですよ」

みくる「大きいですけど……。でも、ここは学校だし……」

キョン「遠慮しなくていいですよ。朝比奈さんだって興味あるでしょ?
     もっと近くで見てください」

突然、鶴屋さんに殴られた。
痛かった。

鶴屋「いい加減にしなよ! いったい何があったんだい!?」

鶴屋さんに殴られたせいか、急に悟りが解けてしまった。

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 08:29:50.58 ID:VuKVBoDG0

キョン「えーと、どこから話せばいいのか……」

俺は両手でチンコを隠した。

鶴屋「最初から話してみなよ」

急に恥ずかしくなってきて逃げ出したいのだが、
ちゃんと説明しないと、鶴屋さんは解放してくれそうにない。

キョン「俺、教室で、ウンコを漏らしちゃったんです」

鶴屋「……それで?」

キョン「大騒ぎになって、そしたら、岡部がここに連れてきてくれたんです」

朝比奈「ああ、それでプールにいたんですね」

キョン「そうです」

鶴屋「そうかい。大変だったね。事情は分かったけど、
    全裸で徘徊するのは感心しないなあ」

キョン「え……? 軽蔑しないんですか? 俺、高校生にもなって、
     授業中に教室でウンコ漏らしちゃったんですよ?」

鶴屋「そんなの気にすることないっさ!」

あれ? 鶴屋さんってこんな喋り方だったっけ?
平静を装っているけど、やっぱり動揺してるのかな?

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 08:41:13.94 ID:VuKVBoDG0

キョン「でも、俺、もう生きていく自信ないです。
     これから三年間は、いや、下手すると一生、
     確実にウンコにちなんだ渾名を付けられるでしょう?
     卒業文集とかにもこの事件が載っちゃうだろうし、
     そしたらもう、就職もできないです」

鶴屋「キョン君、考えすぎだよ」

キョン「でも、ぶっちゃけ、本当は引いてるでしょ?」

鶴屋「うーん……まあ、ちょっとはね」

今すぐ喉を掻っ切って死のう。

鶴屋「でも、ウンコを我慢できないことって、誰にでもあるよ。
    それが、たまたま授業中に重なっちゃって、
    恥ずかしくて先生にトイレに行きます、って言えなかったんだろ?
    そんなの、しょうがないよ。誰にだってある……というのは
    言い過ぎかもしれないけど、誰の身に起こったっておかしくないんだから」

キョン「鶴屋さん……」

鶴屋「でも、全裸で徘徊して、みくるに執拗なまでに
    チンコを見せつけたことは、話が別だよ?」

キョン「あ――そうですよね。戻ります」

鶴屋「先生にも報告しておくからね?」

キョン「はい……」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 08:48:47.91 ID:VuKVBoDG0

鶴屋さんは、やっぱり凄い人だった。

キョン「これから俺、どうなるのかな……」

シャワーの場所に戻った俺は、シャワーを止め、
濡れた服でチンコを隠した状態でしゃがんでいた。

やがて、バスタオルと体操服を持った岡部がやってきた。

岡部「さっき、鶴屋と朝比奈に聞いたんだが……」

キョン「俺が露出狂になっていた、って話ですか?」

岡部「それは、本当なのか?」

キョン「俺がやりました」

岡部「そうか……。教室で糞尿を漏らしたことは、
    生理現象だから仕方がないが、
    全裸で女子生徒に露出していたことに関しては、
    俺にも庇いきれないな……」

キョン「もういいです。人生終わりましたから」

岡部「とにかく、身体を拭いて、服を着ろ」

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 09:03:34.81 ID:VuKVBoDG0

キョン「はい……」

岡部「どうした? >>146>>148のようなウンコマンは
    放っておいて、早く身体を拭け」

キョン「そうじゃなくて、もしかして、このバスタオルって」

岡部「俺が使ってる奴だ。嫌か?」

キョン「いえ、別に嫌じゃないです。ただ、
    先生のバスタオルを汚しちゃうな、って思って」

岡部「そんなこと気にするな」

キョン「はい……」

岡部はやっぱりいい奴だったのか。
さっきは疑心暗鬼になっていて、疑って悪かったと思った。

岡部「もうすぐ、五時間目が終わるな」

俺がノーパンで半ズボンを穿いているときに、岡部が言った。

キョン「教室は、どうなってますか?」

岡部「悪いが、そのままだ」

キョン「汚れたままですか……。ハルヒや谷口や国木田たちは?」

岡部「とりあえず、特別教室に避難させている」

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 09:09:44.58 ID:VuKVBoDG0

俺はウンコ関係のエピはないけど、
コンビニでゲロを吐いたことならあるな。

二日酔いで死にそうなときにコンビニ行って、
ジュース買ってレジに置いて、
お金を出そうとしたらその場で吐いた。

そのコンビニには二度と行かなかった。

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 09:14:52.04 ID:VuKVBoDG0

キョン「俺のせいで、ひどいことになっちゃいましたね」

岡部「ああ……。よし、服を着終わったな。
    一緒に教室に戻って、掃除をしようか」

キョン「えっ。先生も手伝ってくれるんですか?」

岡部「当たり前だろ。担任だからな」

キョン「すみません」

岡部「いちいち気にするな。掃除が終わったら、
    今日はもう帰っていいからな」

キョン「六時間目と七時間目は――」

岡部「お前も辛いだろうから、休めばいい」

キョン「ありがとうございます……」

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 09:23:19.35 ID:VuKVBoDG0

休み時間になると教室に戻りにくくなるので、
俺と岡部は廊下を走った。

何とか、チャイムが鳴り終わる前に、教室に戻ることができた。

改めて見ると、教室の中はひどい有様だった。

おそらく岡部が気を利かせて窓を開けてくれていたおかげで、
臭いは少なかったが、机や椅子が散乱し、その爆心地に、
俺が産み落としたものが放置されていた。

キョン「あの、先生。本当に俺、一人で掃除できますから……」

岡部「何回同じことを言わせる気だ? ID:mjFl86vIiもウザいし、
    さっさと終わらせるぞ」

もしかして――。

もしかして岡部は、俺を監視しているのではないだろうか。

ちょっと目を離した隙に、朝比奈さんと鶴屋さんにあんなことを
したのだから、疑われても仕方がないが。

岡部「これを使え。俺は水を汲んでくる」

岡部は俺に手袋を渡すと、バケツを片手に教室を出て行った。

……なんだ。やっぱり、いい奴じゃないか。

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 09:29:50.59 ID:VuKVBoDG0

俺は手袋を嵌めると、掃除をしやすいように
机や椅子を移動させ始めた。

そこへ、戸の開く音が聞こえた。

岡部かと思ったが、違った。

キョン「……ハルヒ」

ハルヒ「気安く名前を呼ばないでよ」

キョン「そうか……。そうだよな」

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 18:53:56.04 ID:WdSXS1DM0

>>179の続き。

ハルヒ「みくるちゃんに聞いたわよ? あんた、スカトロだけじゃなくて、
     露出にも目覚めたんだって?」

キョン「いや、それは誤解だ」

ハルヒ「何が誤解なのよ。教室でウンコとオシッコ漏らしたくせに」

キョン「それは……」

ハルヒ「今だって、半ズボンの下はノーパンなんでしょ? この変態!」

どうしよう。
また泣けてきた。

しかし、半ズボンの下がノーパンなのは事実なので、反論の余地はない。
それにしても、あれだな。
半ズボンの裏の生地ってごわごわしてるから、何か変な感触だな。
どこにチンコを収めればいいのかよく分からんし……。

ハルヒ「とにかく、あんたみたいな変態をSOS団の団員にしていたら、
     SOS団の評判まで下がっちゃうわ。そんなわけで、あんたはクビよ!」

キョン「そ、そんな……」

ハルヒや古泉はともかく、朝比奈さんや長門との接点が失われるのは辛すぎる。

253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:00:54.84 ID:WdSXS1DM0

ハルヒ「……と思ったんだけど、みくるちゃんは、
     それは可哀想だって言うのよね」

キョン「え?」

朝比奈さんが俺を庇ってくれたのか?
……まあ、朝比奈さんは他のメンバーと違って、
糞尿まみれになった俺の姿は見てないからな。

ハルヒ「だから、クビじゃなくて、降格にするわ」

キョン「降格と言うと……」

ハルヒ「昨日までのあんたは、SOS団の正式な団員だったけど、
     今日付けで団員見習いに格下げにするから」

キョン「それって、何が違うんだ?」

ハルヒ「団員見習いは、正式な団員になるために、
     試験をパスしなきゃいけないのよ」

キョン「それって、明らかに今考えた設定だろ……」

ハルヒ「だって、スレが残ってるなんて思わなかったんだもの。
     しょうがないじゃない。それで、試験受けるの? 受けないの?」

キョン「受ける! 受けるよ!」

ここでSOS団から外されたら、マジで孤独な三年間を送ることになるしな……。
最初はあんなに嫌だったけど、部活に入っておいてよかったぜ。

257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:06:23.97 ID:WdSXS1DM0

ハルヒ「言ったわね?」

ハルヒは嫌な笑い方をした。
お気に入りの虫を見つけ、いたぶることに快感を覚えた、
猫のような笑い方だった。

キョン「あ、ああ……。試験はいつなんだ?」

どうしよう。
早くも後悔し始めている俺がいる。

ハルヒ「試験は明日からよ」

キョン「いきなり明日とは、急だな。っていうか、明日『から』?」

ハルヒ「試験は二週間かけて行われるわ」

キョン「二週間だと!? 俺は、いったい何をやらされるんだ!」

ハルヒ「まず、最初の週、つまり明日から一週間は、
     あんたにはオムツを着用して生活してもらうわ」

キョン「オムツ……? おつむの間違いじゃなくて?」

ハルヒ「オムツと言ったのよ。お・む・つ!」

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:15:30.37 ID:WdSXS1DM0

キョン「ちょ、ちょっと待て。俺は高校一年生なんだが」

ハルヒ「はあ!? その高校一年生にもなって、
     授業中に教室で漏らした脱糞野郎は、どこの誰なのかしら?」

キョン「俺です……」

ハルヒ「そうよね、あんたよね。キョンはたぶん、
     しばらく停学になるでしょう。停学が解けて戻ってきても、
     あんたに話しかけてくれる心優しい人がいるとでも思ってるの?」

キョン「いえ……」

ハルヒ「でしょ? だったら、あんたが言うべき言葉は何なのかしら?
     あんたのウンコが詰まっている頭でも少しは想像できない?」

キョン「ありがとうございます!」

ハルヒ「そうそう。それでいいのよ。じゃあ、もうすぐ六時間目の授業が
     始まるから、行くわね」

ハルヒは満足げな笑みを浮かべて、
台風が過ぎ去った後のような教室から出て行った。

入れ違いに、岡部が入ってくる。

岡部「今、涼宮とすれ違ったが、何かあったのか?」

キョン「いえ、何もないです……」

265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:24:22.97 ID:WdSXS1DM0

これって、あれだよな?
ハルヒは試験とか言ってたけど、要するにいじめなんだよな?

ああ、小学生時代の悪夢が蘇る。

一時間前には、普通に授業を受けていたのが懐かしい。
さようなら、俺の高校生活。

今のうちに、岡部に相談した方がいいだろうか?

岡部ならいい奴だし、信用できそうだ……。
いや、いい奴だからこそ、迷惑をかけるわけにはいかない。

俺の糞尿を黙々と拭き取る岡部を見て、そう思った。

とにかく、二週間。
二週間耐えれば、SOS団に復帰できるんだから、
岡部には頼らず、自分で何とかするんだ!


岡部「……よし、こんなもんだろ」

仕上げに消臭スプレーを撒き散らし、岡部はそう言った。

岡部「じゃあ、次は二年生の教室に行くか」

キョン「え?」

岡部「朝比奈と鶴屋に謝りに行かないといけないだろ?」

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:33:51.50 ID:WdSXS1DM0

キョン「あ――そうか。そうですよね」

岡部「お前、土下座できるよな?」

キョン「え?」

岡部「他に人のいない場所をセッティングしてやるから、
    土下座して謝れ。朝比奈の方はともかく、
    鶴屋家の逆鱗に触れると命が危ないからな」

キョン「分かりました……」

岡部「それと、二人が出て行くまで、絶対に頭を
    上げるんじゃないぞ。今度はスカートの中を覗いた
    と訴えられるからな」


それから俺は、授業を抜け出してきてもらった
朝比奈さんと鶴屋さんに、土下座をした。

みくる「キョン君、もういいから、頭をあげてください」

岡部「こいつもこうやって反省してるから――」

鶴屋「みくるがいいって言うんなら、私もいいよ」

キョン「ありがとうございます……」

俺は泣きながら言った。
もう死にたい。

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:40:29.91 ID:WdSXS1DM0

それから俺は、校長から一週間の停学を言い渡された。

岡部「一週間で済んでよかったな」

岡部はそう言ったが、俺はもう、学校に通う気力がなかった。
せめて、ハルヒの試験が終わる二週間にして欲しかったと思った。

岡部「もう帰っていいが、どうする? 親御さんに迎えに来てもらうか?」

キョン「いえいえ! 自転車で帰ります!」

こんなときに親に迎えに来てもらうとか、拷問にもほどがある。

岡部「そうか。じゃあ、気をつけて帰れよ」

この「気をつけて」という言葉の前には、ウンコを漏らさないように、
という前置きが省略されているのでは――いや、もう疑うのはやめよう。
キリがない。

俺は、人気のない通学路を、一人で歩いた。

親にも連絡が行っている。
できるだけ、帰宅する時間帯を遅らせたかった。

妹「あれ、お兄ちゃん? 今日は随分と早いんだね」

背後から妹に話しかけられた。

そうか。
この時間は、小学生の帰宅時間なのか。

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:41:23.10 ID:WdSXS1DM0

間違えたああああああああ!

お兄ちゃんじゃなくてキョン君だったあああああああああああああああ

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:50:46.63 ID:WdSXS1DM0

ミヨキチ「こんにちは……」

キョン「ああ、ミヨキチも一緒だったのか」

俺と妹とミヨキチは、三人でとぼとぼと歩く。

何だ、この重い空気は。
それに、妙な感じがする。

キョン「……何か変だな」

妹「何が変なの、お兄ちゃん」

キョン「お前、俺のことをお兄ちゃんなんて呼んだっけ?」

妹「あ」

沈黙が流れた。
ミヨキチの方を見ると、俺と目を合わせてくれない。

ミヨキチ「……ごめん。私、やっぱり帰る」

妹「え。遊ぶ約束してたのに……」

ミヨキチ「ごめん。また今度」

ミヨキチは俺から逃げるように走り去っていった。
ミヨキチを見送る妹の目に、みるみるうちに涙が溜まっていく。

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 19:58:03.24 ID:WdSXS1DM0

妹「うっ、うっ……」

妹はその場にしゃがみ込み、泣き出してしまった。

キョン「おい、こんなところで泣くなよ」

泣きたいのは俺の方なんだぞ。
そう思いながら、妹の肩に手を乗せる。
妹は乱暴に、その手を振り払った。

妹「触らないで! お兄ちゃんなんか大っ嫌い!」

相変わらず、妹は俺のことをお兄ちゃんと呼び続ける。
キョン君と呼ばれるよりも嬉しいはずなのに、
心に冷たい風が吹き抜けていく。

キョン「……お前、知ってるのか」

妹「うん……」

キョン「誰から聞いた」

妹「私のクラスメートのお姉ちゃんが、北高に通ってるの」

キョン「そうか……」

妹「クラスメートに言われたけど、私、信じてなかったのに。
  でも、こんな時間に一人で帰ってるってことは、
  やっぱり、お兄ちゃんは、授業中に教室でウンコとオシッコを漏らして、
  全裸でゲロと鼻血とせーえきを撒き散らして暴れたんだよね?」

285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 20:06:41.22 ID:WdSXS1DM0

キョン「ちょ、ちょっと待て! 俺が何をしたって?」

妹「だから、授業中に教室で、ウンチとオシッコを漏らして――」

キョン「その後だよその後!」

妹「『俺、ウンコ漏らしちゃったぜwwwフヒヒwwww』
  って叫びながら服を脱いで、ウンチを素手で掴んで、
  誰彼かまわず無差別に放り投げて、笑ってたんでしょ?」

キョン「そんなことはしてない!」

妹「隠さないでよ、私、知ってるんだから。
  全裸になってウンチを投げただけじゃなくて、
  それを笑いながら食べたんでしょ?」

キョン「だからそんなことしてないってば!」

妹「おまけに、興奮しておちんちんを大きくして、
  そこからせーえきって言うのを飛ばして遊んでたんでしょ?」

キョン「そんなことしてないのに……」

妹「ウンチが小さくなってきたら、今度は鼻におちんちんを突っ込んで
  鼻血を噴き出して、ゲロでげーじゅつてきな絵を書いたんでしょ?」

キョン「もう勘弁してください」

290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 20:13:53.95 ID:WdSXS1DM0

妹「まだまだたくさんあるんだけど」

キョン「それは全部でたらめだ」

妹「じゃあ、お兄ちゃんが教室でウンコを漏らしたっていうのも――」

キョン「残念ながら、それは本当だ」

妹「そっか……」

妹は肩を落として歩き始めた。
とりあえず泣き止んでくれたので、俺は一安心だった。
しかし、これから先、何を話せばいいのだろう。

妹「ねえ、お兄ちゃん」

キョン「何だ?」

妹「戸籍を抜くのって、どうすればいいの?」

キョン「それはだな、市役所に行って――ちょっと待て」

妹「市役所に行って、ちょっと待てばいいの?」

キョン「そうじゃない。俺と兄妹でいたくないということか?」

妹「だって、そうしないと、明日から学校通えないし……」

293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 20:21:13.58 ID:WdSXS1DM0

キョン「俺だって、もう学校通えないよ。明日から停学だし」

妹「中卒?」

キョン「それは低学歴」

妹「パケット代?」

キョン「それは定額」

妹「だいとーりょー」

キョン「それは帝王学」

妹「99円ショップ」

キョン「それは低額」

妹「じゃあ結局、停学って何なの?」

キョン「学校に通わせてもらえないんだよ」

妹「教室でウンチとオシッコを漏らしたから?」

キョン「いや、それはお咎めなしなんだけど、その後で、
     上級生の女子に全裸を見せたから……。ん? どうした?」

妹「近寄らないでください。もうあなたを兄だとは思いません。
  二度と話しかけないでください。さようなら」

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 20:29:14.36 ID:WdSXS1DM0

妹は全速力で走り去っていった。

キョン「さよなら……」

さようなら。
俺の平穏な高校生活。
兄としての尊厳。
友情。努力。勝利。

もう俺には、ささやかな幸せを楽しむことすら許されないのか……。

家に帰っても、妹はいなかった。
おそらく、どこかで時間を潰しているのだろう。
俺もそうすればよかった。

とりあえず、お風呂に入ろうかな。
やっぱり、プールのシャワーだけじゃ綺麗になった気がしないし。

俺は浴槽の残り湯を抜き、掃除をし、湯船にお湯を張った。

全身をボディーソープで洗い、お湯に浸かる。

疲労が洗い流されていくような気がした。

そこへ、誰かが帰宅する音が聞こえた。
妹が帰ってきたのだろうか?

違った。母親だった。

308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 20:38:39.54 ID:WdSXS1DM0

気遣うような感じの、遠慮がちなノックの音が聞こえた。

母「キョン。いるの?」

キョン「……はい」

母「今日は、大変だったわね」

キョン「……ああ」

母「ゆっくり休めばいいからね」

キョン「……うん」

母「ちゃんと身体を洗うのよ?」

キョン「分かってるよ」

何この空気。
いたたまれないにも程がある。
母の優しさが、余計に俺の傷口をえぐっていく。
これなら、何やってんのよ馬鹿息子!
って感じで怒鳴られた方がマシだよ。

俺は頭からお湯に浸かり、嗚咽を消した。

312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 20:46:36.30 ID:WdSXS1DM0

結局、妹は、夕食の時間になっても帰ってこなかった。

心配した母が、駅前まで捜しに行くことになった。

俺も捜しに行くと言ったのだが、それは逆効果だから、
という意味のことを母に言われた。

やっぱり、妹が帰ってこないのは、俺のせいなのか。

外が暗くなってから、妹は母に手を繋がれて帰ってきた。

キョン「お帰り」

そう言っても、返事をしてもらえなかった。

母「あの子ったら、一人でゲームセンターをうろついてたから、
  交番に保護されていたのよ……」

後で、母がそう耳打ちしてくれた。

夜の十時くらいになって、父が帰宅した。

父は、馬鹿野郎! と怒鳴って、俺を殴った。
それから一時間くらい説教された。お前は昭和か。

そんなこんなで、俺の人生で最悪の一日は終わった。

と思っていたが、ハルヒからメールが来ていた。

『明日の朝、7:30までに校門の近くで待っていること』

343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:02:43.64 ID:WdSXS1DM0

>>312の続き。

翌朝、俺は言われるがままに、北高へ急いだ。
母親には、散歩に行って来ると言って出てきたので、
早く戻らなければならない。

まだ始業時間に早いので、生徒の姿は全然なかった。

七時三十分の待ち合わせ時間に、
正確にやってきたのは長門だけだった。

キョン「お、おはよう……」

長門「おはよう」

よかった。返事をしてくれないかと思った。
目は合わせてくれないけど。

キョン「昨日の話なんだが、考え直してくれないか?」

長門「涼宮ハルヒを観測するために、
    あなたの要望を退けたことに関して言っているのなら、
    方針を変えるつもりはない」

キョン「もうちょっと被害を軽くしてくれるだけでもいいんだ」

長門「例えば?」

キョン「ウンコとオシッコ両方じゃなくて、
     どちらか片方だけだったことにしてくれるとか……」

345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:10:09.03 ID:WdSXS1DM0

長門「それでは意味がない。あなたがウンコとオシッコを両方
    漏らしたからこそ、涼宮ハルヒは情報を爆発させた」

キョン「もしかして――」

長門「何」

キョン「もしかして、俺がウンコとオシッコを漏らしちまったのは、
     長門の仕業なのか?」

長門「――!」

長門は無表情だったが、息を呑む気配を感じた。

キョン「朝倉はこう言っていた。あなたを殺して、涼宮ハルヒの
    出方を見る、と。お前も同じことをやったんじゃないのか?
    つまり、俺に大便と小便を漏らさせて、ハルヒの出方を
    見ようとしていたんじゃないのか?」

長門「そそそそそそんなことはしていない」

キョン「本当か?」

俺は長門に近づいた。

その瞬間、背後から何者かに殴られた。

353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:16:58.29 ID:WdSXS1DM0

ハルヒ「こら馬鹿キョン! 有希に何してんのよ!」

キョン「いや、ちょっと話をしていただけで……」

ハルヒ「団員見習いのあんたには、団長の許可なく団員と話を
     する権限もないの! 少しは身分を弁えなさい!」

キョン「分かった……」

そこへ、古泉もやって来た。

ひどい寝不足らしく、目が真っ赤に充血し、隈ができていた。

キョン「おはよう……」

古泉「昨日は寝れましたか?」

俺の挨拶を無視し、古泉は殺気立った笑みを浮かべた。
どうやら、ハルヒの前では敬語キャラで押し通すつもりらしい。

キョン「少しは」

古泉「教室で失禁したくせに、眠れたんですか。
    神経が図太くて羨ましいです。
    僕は誰かさんのせいで、全然眠れませんでしたよ」

ああ、そういうことか。
俺が漏らしたせいで、ハルヒが神人を大量発生させてしまったのだろう。

357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:25:09.87 ID:WdSXS1DM0

ハルヒ「じゃあ、メンバーも揃ったし、始めましょうか」

キョン「でも、朝比奈さんが来てないみたいだけど……」

ハルヒ「みくるちゃんには、集まらなくていいと言っておいたの。
     二日続けてキョンの粗チンを見たくないでしょうからね」

キョン「ああ、そうか……って、おい! お前、俺に何をする気だ!?」

ハルヒ「昨日言ったでしょ? 私の目の前でウンコとオシッコを漏らして、
     私の心に深い傷を負わせた罰と、団員昇格試験を兼ねて、
     あんたには一週間、オムツを穿いて生活してもらう、って」

キョン「分かってるよ。学校はまだ閉まってるから、
     近くの公園のトイレで、オムツを穿いてくる……」

ハルヒ「はあ!? 何言ってるの? そんなの認められるわけないでしょ!」

キョン「え?」

ハルヒ「一人でトイレに行かせて着替えさせたら、
     不正行為をするかもしれないじゃないの!」

キョン「不正行為って?」

ハルヒ「例えば、オムツの中に尿取りパッドを敷いたりとか」

キョン「すまない。話が全然見えないんだが」

360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:30:21.82 ID:WdSXS1DM0

ハルヒ「あんた、この試験の趣旨をちゃんと理解してるの?」

キョン「だから、一週間、オムツを穿いて生活するんだろ?」

ハルヒ「全然違うわ! この試験の趣旨は、あんたがウンコとオシッコを
     我慢できるようにすることなのよ! これから二週間、あんたに
     トイレトレーニングをしてあげるわ!」

キョン「……我慢、だと?」

ハルヒ「そのためのオムツなのよ」

キョン「つまり……何か? オムツを穿いている間、俺はトイレに
    行けないのか?」

ハルヒ「当たり前でしょ」

キョン「一週間もトイレに行かなかったら死ぬぞ!」

ハルヒ「馬鹿ねえ。誰も一週間ずっとトイレに行かせないなんて
     言ってないわよ。今日だって、そのために朝早くに集まって
     もらったんだから」

キョン「つまり、毎朝学校の前でオムツを穿いて、昼間はずっと我慢して、
     放課後になったらオムツを脱いでもいい、という訓練か?」

ハルヒ「そういうことよ。理解が遅いわね、まったく」

363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:36:43.47 ID:WdSXS1DM0

キョン「まさか、こんな試験内容だったとは……」

ハルヒ「ちなみに、放課後にオムツの中をチェックして、
     もし漏らしていたら、ひどい罰があるから覚悟しなさいよ」

キョン「や、やっぱり辞めようかな」

ハルヒ「辞退は認めないわよ。有希、古泉君。キョンを取り押さえて」

古泉が後ろから俺を羽交い絞めにした。
しかし、古泉一人くらいの力なら、振り切ることもできる。
特に、古泉は俺に触るのが嫌らしく、苦々しい顔をしていたから。

問題は、長門だった。

長門は俺の胸に軽く手を置いただけだったが、
俺はもう、それだけで、自分の意思では身体を指一本
動かすことができなくなった。

動くのはクビから上だけだ。

ハルヒが俺のズボンのベルトを外していく。

キョン「こんなところで、やめろ!」

ハルヒ「大丈夫よ。この時間帯だし、人通りも少ないし、
     誰も来ないわよ」

ハルヒがそう望むのなら、その通りになってしまうのだ。
長門もハルヒの味方だし、俺には抵抗するすべがなかった。

367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:43:58.51 ID:WdSXS1DM0

ハルヒが乱暴に、俺のズボンを下ろす。
パンツに手をかける。

キョン「マジでやめてくれ! 見ないでくれ!」

ハルヒ「いいじゃない。みくるちゃんには見せたんでしょ?
     私にも見せなさいよ」

俺の包茎チンコがあらわになる。

ハルヒ「皮は被ってるけど、意外と大きいのね」

長門「ユニーク」

古泉「……ぷっ」

古泉死ね。

ハルヒは、俺の足を持ち上げ、ズボンとパンツを完全に取り去った。

次に、大人用のオムツを俺に穿かせていく。
そんなもの、どこで手に入れたんだか……。

キョン「お願いがある」

ハルヒ「何?」

キョン「チンコの向きは、下向きじゃなくて上向きに収納してくれ」

370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/21(水) 22:52:12.34 ID:WdSXS1DM0

ハルヒ「どうして?」

キョン「オムツってぴっちりしてるから、上から触っただけじゃ
    向きを変えられないだろ? 下向きに収納していると、
    勃起したときに苦しい」

ハルヒ「ああ、そうなんだ。知らなかったわ」

ハルヒはそう言うと、チンコを 下 向 き に収納した。

キョン「おい!」

ハルヒ「次はこれよ」

ハルヒは、ベルトのような素材でできた、海パンのような形を
したものを、オムツの上から穿かせた。

ベルトをきつく閉め、金属の部分に頑丈な南京錠をかけた。

ハルヒ「いい? この鍵で南京錠を外さないと、
     オムツも外すことはできないからね?」

ハルヒはそう言うと、小動物をいじめる猫のような笑みを浮かべた。

406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:04:05.79 ID:HngXLM3t0

>>370の続き。

キョン「じゃあ、俺はもう帰っていいんだよな?
     今日から一週間は停学ってことになってるし、
     教師達に見つかるとまずいことになるんだよ」

古泉と長門から解放された俺は、オムツの上にパンツとズボンを穿いた。

ハルヒ「そうね……。まあ、今日はもういいわ。今日は、ね」

ハルヒは妙に「今日は」という部分を強調した。
きっと、明日からはもっとひどいことをされるのだろう。

ハルヒの前で、長門が黒幕なのではないかという話や、
神人の話をするわけにもいかないので、俺は話を切り上げて、
急いで家に戻ることにした。

その途中――妹を、見つけてしまった。

なぜ、妹がこんな時間に外をうろついているのだ。
小学校はもう始業時間になっているはずなのに。

妹の方も、俺の存在に気付いたようだった。
「あっ」という声を上げると、慌てて走り出した。

俺は、追いかける気もしなかった。

妹は学校に行きたくないのだ。
不登校になってしまった。
その原因を作ったのが俺だと思うと、情けなかった。

409 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:11:51.67 ID:HngXLM3t0

家に帰った俺は、まだパートに出かけていなかった母に、
外で妹を見つけたということを伝えた。

母は、自分の勤め先と、妹の学校に電話をすると、
妹を捜しに行った。
やはり、俺は捜さなくていいと言われた。

昨夜もそうだったが、母と妹がどんな会話をするのかと
思うと、軽く涙が出てくる。
きっと、妹は例の尾ひれはひれがついた噂を、
母に伝えるのだ。
そして、母もそれを鵜呑みにする。
二人がそれを忘れる日は、一生来ない。

一応、停学なので、罰のような形の宿題が出されていた。

しかし、それらに手を付ける気にもなれず、
俺一人しか残っていない家の中で、自室のベッドに転がり、
ぼうっと天井を見つめていた。

無意識のうちに、勃起しそうになった。
昨夜もオナニーはしたが、健康な男子高校生だから仕方がない。

慌てて身体を起こし、平常心を保つ。
いま勃起したら、どんなことになるのか、想像しただけでも
恐ろしい。

ハルヒはトイレトレーニングとか言っていたが、
実際には、おむつプレイと貞操帯プレイを同時にやらされて
いるようなものだ。

411 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:17:38.48 ID:HngXLM3t0

キョン「お腹、空いたな」

しかし、今、何かを食べるのは自殺行為なのでは
ないだろうか。
何かを食べると、それが消化されればウンコや
オシッコになるし、例えばガムを噛んでいるだけでも、
蠕動が始まるきっかけになると聞いたことがある。

水分も控えた方がよさそうだ。

まあ、朝食くらい食べなくても、死にはしないだろう。

俺はゲームをして時間を潰すことにした。

妹が学校に行かずに街を徘徊しているときに、
自宅でゲームをする兄貴。

我ながら、ひどい奴だな、と思った。

午前十時くらいになって、母と妹が戻ってきた。

妹は、俺には何も言わず、自分の部屋へ逃げていった。

キョン「あいつ、どうだった?」

母「……そっとしておいてあげて。一度は学校に
  行ったんだけど、お友達にからかわれちゃって、
  逃げ出しちゃったみたいなの」

もう死にたい。

412 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:28:07.74 ID:HngXLM3t0

お昼になった。
台所のテレビから、笑っていいとものテーマソングが
俺の部屋まで流れてきた。

母「ごはんができたわよ!」

俺と妹を呼ぶ、母の声が聞こえた。
結局、母はパートを休んだのだ。

しかし、昼食をとるわけにはいかない。
少しでも食べないようにしなければならない。

母を無視していると、しばらくして、ノックの音が聞こえた。

キョン「いいよ」

母「ねえ、お昼ご飯食べちゃってよ。あの子、あんたと一緒に
  食べたくないって言ってるから、先に食べてくれないと……」

キョン「ああ、分かったよ」

そんなに悲しそうな顔をされては、断るわけにはいかなかった。

しかし、台所に行った俺は、固まった。

冷たい牛乳。天麩羅。ゆで卵。
シーチキンマヨネーズと千切りキャベツのサラダ。

よりによって、お腹を壊しそうなものばかりが並んでいた。

413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:34:50.74 ID:HngXLM3t0

しかし、食べないわけにはいかなかった。

母と二人きりになるのも気まずかったので、
俺は急いで食べた。

ご馳走様、と言って階段を駆け上がる――途中で、
足を止めた。

しまった。
階段を駆け上がるのではなかった。

食事の後で激しく動くと、お腹が痛くなるのは
常識だったはずなのに、油断していた。

俺は老人のようにゆったりとした動きで自室のドアを開け、
ベッドに横になった。

大丈夫、大丈夫。
この腹痛は一時的なものだから、排泄に結びつくことは
ないはずだ。たぶん。

実際、しばらくすると、腹痛は治まってきた。

しかし、代わりに、別の感覚が残った。

オ シ ッ コ を し た い 。

415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:39:41.09 ID:HngXLM3t0

牛乳を飲んだのがいけなかったのか。

それとも、ゆで卵でパサパサになった口の中を
潤すためにミネラルウォーターを飲んだのが
いけなかったのか。

オシッコしたいオシッコしたいオシッコしたい。

一時くらいまではその感覚を無視し続けることが
できたが、何事にも限界はある。

一時半になるころには、もう頭の中がオシッコの
ことでいっぱいになってしまった。

困ったことに、チンコが半勃ちになり始めてきた。
オシッコを我慢すると勃起してしまうのは、
男子なら誰でも経験したことがあるだろう。

キョン「痛い!」

不用意に体勢を変えようとしたら、チンコに痛みが走った。

何で俺、こんな馬鹿馬鹿しいことやってんの?
そんなふうに囁く俺がいた。

ここまでしてSOS団に復帰する価値があるの?
どうせ、今までのような友情を感じることは、
二度とないんだぜ?

416 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:48:29.78 ID:HngXLM3t0

キョン「くそっ!」

俺はズボンとパンツを脱ぎ捨てた。

姿見の前に立ち、オムツの状態を確認する。

うわ……。
改めて見ると、これって凄く間抜けな格好だな。
図体のでかい幼稚園児みたいだ。

このオムツの隙間からチンコの先を出して、
オシッコすることができないだろうかと、
試行錯誤を重ねる。

しかし、ベルトはチンコ全体を包み込むような
形をしているので、びくともしない。

二時半になった。
俺は脂汗を垂らしながら、チンコを押さえて、
ベッドに横たわっていた。

キョン「もう我慢の限界だ! ……漏れそう」

その台詞が終わるときには、もう、排尿が始まっていた。
一度始まると、途中で止めることはできない。

股の部分が熱くなった。
ここだけお風呂に入ってるみたいだな、と思った。

421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 02:56:17.17 ID:HngXLM3t0

膀胱が楽になると、解放感と絶望感が綯い交ぜになった、
奇妙な感覚に襲われた。

キョン「あはははは」

漏らしちゃった。
自分の部屋のベッドの上で、オムツを穿いたまま、
オシッコを漏らしちゃった。
俺、高校一年生なのに。

キョン「どうやって言い訳しようかな……」

言い訳しても無駄だということは、分かっていた。
初日だというのに、オシッコを我慢することができなかったのだ。
ドSなハルヒのことだ、ひどい罰が待っているだろう。

しかし、まだ望みはある。
漏らしたのはオシッコだけなのだ。
ウンコさえ出なければ、まだ言い訳が――。

キョン「あ……」

お腹が痛くなってきた。蠕動が始まる。
時計を確認する。
まだ午後三時にもなっていない。
放課後になるのは、午後五時くらいだ。

あと二時間も我慢できるだろうか?
いやできない。
人生終わった。

424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 03:04:48.99 ID:HngXLM3t0

それでも俺は、我慢しようとした。
お腹を押さえて、必死に耐えていた。

午後四時十分。

キョン「もう無理もう無理もう無理もう無理」

俺はハサミを手にして、慎重に自分の部屋を出た。

トイレに行こう。
もういい。楽になりたい。
トイレに行って、オムツをハサミで切って、
便座に座って短い夢を見よう。

手すりに掴まり、腹に振動を与えないように気をつけながら、
苦労して階段を下りる。
オシッコで濡れた部分が擦れるのが不快だった。

トイレまであと二メートル。一メートル……。
やっと、ゴールに辿り着いた。

ドアノブを回す。
回らない。
ドアノブの上の部分が赤くなっていた。誰か入っているのだ。

キョン「開けてくれ!」

俺は慌ててノックをした。返事がない。
まさか、中に入っているのは……。
妹?

425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 03:09:33.96 ID:HngXLM3t0

俺は何度も妹の名前を呼ぶ。

キョン「意地悪しないで、開けてくれよ!」

返事がない。
くそっ。
妹まで俺をいじめるのか。

だが、まだ奥の手がある。
この家のトイレは、硬貨を使えば、開けることができるのだ。
中で誰かが倒れてしまったときのことを考え、そういう設計に
なっている。

俺は震える手でポケットから財布を抜き取った。
バリバリ。
十円玉を取り出す。
ドアノブの上のつまみの部分に、十円玉を当て、捻る。

鍵が外れた。

キョン「入るぞ」

俺はドアを開けた。

妹「変態いいいいいいい!」

トイレの洗剤が、目に噴射された。

キョン「目が! 目がああああああ!」

427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 03:17:12.64 ID:HngXLM3t0

俺は目を押さえて転がりまわった。
その衝撃で、肛門が限界に達した。

俺は、妹の目の前で、脱糞をした。

後から分かったことだが、この日、妹は初潮だったらしい。



午後五時半になった。
ハルヒ達との待ち合わせの時刻は、とっくに過ぎていた。

しかし、もう、待ち合わせ場所に行っても無駄だろう。
俺は携帯の電源を切り、無断欠席することにした。
枕に顔を沈め、泣いた。

すぐに水で洗ったので、トイレの洗剤のせいで失明する
ことはなさそうだ。それだけが唯一の、不幸中の幸いだった。

俺はまだ、オムツを穿いたままだった。

何度も動いたので、オムツの中では、オシッコとウンコが
混ぜ合わされていた。
見るのが怖いが、いつかは対峙しなければならない試練だ。

しかし、これだけ動いても漏れないとは、最近のオムツは
随分と進化しているらしい。
一つ勉強になった。

522 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 12:48:33.66 ID:/3yneHBo0

>>427の続き。
夕食はカレーライスだった。
さすがに、オムツをつけたまま家族と食事をする気には
なれなかったので、自分の部屋で食べることにした。

父の怒鳴り声が聞こえたが、妹が嫌がっているから
仕方がないのだと説得する母の声も聞こえた。

カレーライスは美味しかった。
バーモンドカレーの甘口と中辛をブレンドした、
俺の好きなカレーだった。
だから何も連想しませんでしたが何か?

深夜になり、家族が寝静まると、俺は浴室に行った。

ハサミを使い、ベルトとオムツを切断する。
浴室の中に、嫌な臭いが立ち込めた。

否応なく、あの地獄の五時間目を思い出し、憂鬱になる。

水分はオムツの成分が吸収してくれたので、
意外とサラサラしていて不思議な清潔感があったが、
やっぱり泣きたくなることに変わりはなかった。

ボディソープを必要以上に使って身体を洗っていると、
涙が溢れてきた。

家族にオムツを見られると困るので、オムツはコンビニの
レジ袋に入れて、近くのコンビニのゴミ箱に捨てようと思っていた。
しかし――。

525 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 12:54:32.44 ID:/3yneHBo0

身体を洗い、湯船に使って風呂から出ると、
オムツを入れたレジ袋がなくなっていた。

キョン「……え?」

身体を洗うのに邪魔だから、脱衣所の床に置いて
おいたはずなのだが。

よく見ると、あのベルトのようなものの残骸と、
俺が脱ぎ捨てた服もなくなっていた。


母親だ。


俺が気付かないうちに、母親が脱衣所にやってきて、
着替えとゴミを回収していったのだ。
夜中のうちに洗濯でもしようと思っていたのだろう。

俺は慌てて、腰にバスタオルを巻いた状態で飛び出した。

洗面所にある洗濯機が稼動する音が聞こえた。

洗濯は終わっているらしい。

ということは、コンビニの袋の中身も――。

最近、ゴミの分別が厳しくなってきたから、百パーセントの
確率で、母は袋の中身を確認したはずだった。

526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 13:03:04.77 ID:/3yneHBo0

携帯の電源は、相変わらず切ったままだった。

あの夜以来、誰とも会話せずに一日が終わるのが
当たり前になった。

食事は、台所に誰もいない時間帯を狙って、
冷蔵庫の中を漁ったり、手早く料理したりして済ませた。

こんな俺の味方になってくれるのは、インターネット
だけだった。

最近はトラビアンというブラウザゲーにハマっていた。
ちょうどタイミングよく、三倍サーバーが始まると同時に
プレイを開始することができたのだ。

一時は100位以内にまで食い込んだ。
しかし、課金なしで、弱小同盟に属していたため、
やがてゲームオーバーになった。

一週間目の夜、突然、岡部が家にやってきた。

数日ぶりに俺を呼ぶ母の声がした。

岡部「どうだ? 元気にやってたか?」

キョン「まあまあです」

岡部「宿題はちゃんとやったか?」

俺は青ざめた。忘れてたよ、そんなもの。

529 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 13:08:11.65 ID:/3yneHBo0

しかし、岡部を落胆させるわけにはいかない。

キョン「え、ええ。もちろんれす」

岡部「そうか……。辛いだろうが、明日は学校に来いよ」

キョン「はい……」

行きたくない。
学校になんか、行きたくない。
だが、早く岡部との会話を終わらせるには、行きますと
言うしかなかった。

それから、俺は自室に戻り、慌てて宿題を始めた。
どうなるか分からないが、せめて宿題や反省文くらいは
書いておこうと思ったのだ。


翌朝。
俺は、当然のように仮病を使うことになった。

母「熱はないみたいだけど……。あんた、まさか、学校に
  行きたくないから仮病使ってるんじゃないでしょうね?」

キョン「ま、まさか」

母「あんたの妹は、あんたのせいで不登校になっちゃったのよ?
  兄が学校に行ってないのに、妹にだけ学校に行けって言う
  わけにはいかないでしょ。少しでも責任を感じてるなら、
  ちゃんと学校に行きなさい」

530 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 13:12:04.63 ID:/3yneHBo0

お前ら本当にしつこいな……。
これはフィクションだから、全部想像で書いてるに決まってるだろ。
俺の妄想力を舐めるなよ。

534 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 13:19:11.11 ID:/3yneHBo0

妹のことを出されると、嫌と言うわけにはいかなかった。

俺は重い身体を引き摺って、学校に行った。

知り合いに会うと馬鹿にされるのは確実なので、
俺は始業チャイムが鳴るギリギリの時間に、
教室に入ることにした。

廊下の角に身を潜め、岡部がやってくるのを待つ。
岡部がいるときは、ハルヒたちも、俺に暴言を吐くわけには
いかないはずだ。

岡部が来た。
同時に、チャイムも鳴り始める。

俺は、誰とも目を合わせなくていいように、床だけを見つめて、
教室に入った。

その途端、騒がしかった教室の中が、異様なまでの静寂に
満たされた。

岡部のせいではない。
俺のせいだ。

クラスメート達の視線が突き刺さる中、俺は自分の席を目指した。

乱暴に椅子を引き、座る。

何か固いものが、俺の尻に当たった。

539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 13:44:22.97 ID:/3yneHBo0

キョン「何だこれ……?」

俺は、尻に当たったものを拾い上げた。

それは、見慣れない形をしたゴムだった。
手のひらに乗るくらいのサイズで、長さは、
七、八センチくらいだろうか。

誰がこんなものを俺の椅子の上に置いたのだろう。
周囲を見回すが、誰も俺と目を合わせようとはしない。

岡部は、あえて俺のことには触れないまま、
ホームルームが終わった。

岡部が教室から出て行く。

その途端、クラスメート達が俺を囲んだ。

谷口「お前、よく学校に来れたな」

国木田「退学になっちゃえばよかったのに」

返す言葉もなく、俺は俯いていた。

ハルヒ「さっき、あんたの椅子の上に置いてあったもの、
     ちゃんと持ってるでしょうね?」

キョン「これのことか……?」

ハルヒ「そうよ。それはアナルプラグっていうのよ」

541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 13:50:21.37 ID:/3yneHBo0

キョン「アナルプラグ……?」

初めて聞いた言葉だ。
というか、何に使う道具なのかさっぱり分からないのだが。
……いや、分からないふりをしたいのだが。

ハルヒ「肛門に挿すための道具よ。それを嵌めておけば、
     もうウンコを漏らすこともないでしょ?」

俺は呆然とした。

これを、尻に入れる?

っていうか、こんなものどこで買ってきたんだ。

ハルヒ「通販よ。一週間もあったからね」

谷口「ちゃーんとローションもあるから安心しろよ」

国木田「また漏らされたら、こっちが困るから。
     悪いけど、今日から毎日、学校にいる間は、
     これを挿して生活してもらうからね」

ハルヒ「自分で入れる? それとも、他の人に入れて
     欲しいの?」

もちろん、俺は逃げ出した。

あっと言う間に、クラスの男子達に取り押さえられた。
俺は暴れようとしたが、多勢に無勢だった。

547 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:00:49.38 ID:/3yneHBo0

ズボンとパンツを同時に下ろされた。
谷口と国木田が、俺の足を一本ずつ持ち、股を広げる。

もちろん女子もいる。
やだー、きたなーい、とか言いながら、しっかり見ていた。

ハルヒ「あんたって、意外と毛深いのね」

ハルヒがアナルプラグにコンドームを嵌め、ローションを塗る。

それを肛門に押し当てられた。
アナルプラグの先は細いから、簡単に入った。

正直、これくらいなら大したことないかも、と思えるくらいだった。

しかし、徐々に太くなっていく。

キョン「痛い痛い痛い!」

谷口「うるせえなあ、このウンコ野郎!」

谷口に腹を殴られた。
力が抜ける。
その隙を突かれ、一気に奥まで入れられた。

キョン「あふぅ……」

苦しい。何だこれ。痛いというか苦しんだけど。

ハルヒ「もうパンツとかズボンを穿いてもいいわよ」

552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:07:26.49 ID:/3yneHBo0

そう言われても、男子達に取り押さえられているので、
手足を動かす自由はなかった。

谷口や国木田が、黙々と俺のパンツとズボンを上げた。

ベルトも閉めると、ようやく開放された。

俺は無意識のうちに前かがみになっていた。

ヤバイ。
この感覚はヤバイ。
ウンコしたい。
今すぐトイレに行きたい。

しかし、そこへ、一時間目の授業の教師が入ってきた。

廊下へ出ようとすると注意された。

俺はふらふらと自分の席に戻った。

腰を下ろす。
アナルプラグ自体はもう根元まで入っているので、
腰を下ろしたからと言って、痛みが走ることはなかった。

だが、苦しいことに変わりはない。
授業の内容なんか、一つも頭に入ってこない。
俺の全ての意識が肛門に集中していた。

555 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:15:37.26 ID:/3yneHBo0

ハルヒ「ねえキョン。さっきから震えてるけど、どうかしたの?」

ハルヒが白々しいことを言った。

キョン「え? 別に?」

俺は虚勢を張った。

ハルヒ「別にってことないでしょ。具合悪いの?」

そう訊かれた瞬間、俺の中で何かが壊れた。
こいつは、あの五時間目の会話を再現しているのだ。
俺はハルヒの髪の毛を鷲掴みにした。

キョン「調子乗ってんじゃねえぞ、この糞女!」

俺は左手でハルヒの髪を掴み、右手で何度もハルヒを殴った。

ハルヒの顔が醜く歪む。
鼻血が噴き出す。
それでも、俺は殴るのをやめなかった。
谷口や国木田ですら、俺を傍観していた。

ようやく教師が止めに入り、俺を後ろから羽交い絞めにしたが、
俺はハルヒのお腹を蹴った。
ハルヒがゲロを吐き、自分の制服を汚す。
いい気味だ。
おやおや。
失禁して、漏らしちゃったみたいだ。
ざまぁねえな、と思った。

561 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:22:39.68 ID:/3yneHBo0

長門「リセット」

誰かの、声が、聞こえた、ような、気が、した。





ハルヒ「ねえキョン。さっきから震えてるけど、どうかしたの?」

キョン「え? 別に?」

ハルヒ「別にってことないでしょ。具合悪いの?」

キョン「そんなことないし! 誰もウンコを我慢してなんかいないし!
     放っておいてくれ!」

ハルヒ「……あ、そう」

ハルヒはにやにやと嫌な笑い方をしながら言った。

よく見ると、谷口や国木田も、俺が腹を押さえているのを見て笑っていた。

何とか二十分は耐えた。
しかし、あと三十分も残りの授業に耐えられるだろうか?
いや、無理だ。
今すぐ、このアナルプラグを抜きたい。
俺は、震える右手を上げた。

キョン「先生、ちょっとトイレ行ってきてもいいですか?」

566 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:31:35.81 ID:/3yneHBo0

谷口「おいおい。高校生にもなって、授業中にトイレかよ」

国木田「まだ一時間目なのに」

教師「そんなこと言うもんじゃない。早く行っといれ」

キョン「はい……」

もはや教師の台詞に突っ込む気力すら残っていなかった。

俺は腹を押さえて、泣きながらトイレに走った。

個室に飛び込み、鍵をかけ、急いでズボンとパンツを下ろす。

和式の便座の上でしゃがみ、アナルプラグを抜こうとする。
その途端、痛みが走る。

そうか。
アナルプラグというのは、挿れるときよりも抜くときの方が、
ずっと痛いのか。
一つ賢くなったな、と思った。

一番太いところを通り過ぎるときは地獄だったが、
そこを過ぎてしまえば、あっさりと抜くことができた。

少しはウンコも出たが、大した量ではなかった。
やはり、あの猛烈な便意は、アナルプラグとローションが
引き起こしたものだったのだろう。

俺はしばらく、そのままの体勢で泣きじゃくった。

570 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:40:07.72 ID:/3yneHBo0

それにしても……さっき聞こえた声は、何だったんだろう?

今まで何度も、あの「リセット」という言葉を聞いたことがある
ような気がした。

例えば、ハルヒに「具合悪いの?」と聞かれて、
「そんなことないし! 誰もウンコを我慢してなんかいないし!
放っておいてくれ!」と答えたときにも、聞こえたような気がした。

なぜだろう。
俺には、あのとき、別の会話があったような気がしてならない。

キョン『実は、さっきからトイレを我慢していて……』

ハルヒ『あんた馬鹿じゃないの? さっさと行ってきなさいよ』

キョン『でも、恥ずかしくて……』

ハルヒ『我慢して漏らす方がずっと恥ずかしいわよ。さあ、
     早く先生に断ってから、トイレに行ってきなさい』

こんな会話をしたような気がするのだ。
また、別の可能性もあったような気がする。

ハルヒに「今、あんた、オナラしたよね?」と聞かれたとき、
ハルヒや谷口に罪をなすりつけようとせずに、正直に告白した
という可能性だ。
教師が、もしお腹の調子が悪いなら、トイレに行ってきなさいと言い、
俺は顔を赤らめながらもトイレに走った。
……そんな可能性も、あったような気がしてならないのだ。

573 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:48:29.20 ID:/3yneHBo0

消しゴムを落としたとき、隣の席の奴が拾わなかった可能性。
オナラだと思ったら実が出てしまったときに、トイレに直行した可能性。

……いや、いくらなんでも、考えすぎだろう。

この苦しい現実から逃げ出したくて、別の可能性を妄想している
だけなのだろう。

岡部「キョンか?」

俺が泣いていると、個室の外から岡部の声が聞こえた。

キョン「先生……?」

岡部「お前が心配だったから、もしも授業中にトイレに行くようなことが
    あったら知らせて欲しいと、授業の先生に頼んでおいたんだ」

岡部は、そこまで俺のことを心配してくれていたのか。
別の種類の涙が溢れてきた。

俺は急いでトイレットペーパーで尻を拭き、パンツとズボンを上げると、
個室を飛び出した。

キョン「先生!」

俺は、岡部に抱きついた。

577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:52:28.38 ID:/3yneHBo0

岡部「おい、キョン。どうしたんだ」

キョン「先生。俺、俺……」

何を言えばいいのだろう。
いじめに遭っていると相談すればいいのだろうか?

いや、俺が言いたいのは、そんなことではなかったはずだ。

言いたいことがあるはずなのに、言葉が出てこない。

岡部「ここじゃなんだから、屋上にでも行くか?」

キョン「はい……」

俺は素直に頷いた。
屋上に向かう岡部の後を、俺は無言で追った。

岡部「何があったんだ?」

キョン「俺……実は」

岡部「実は?」

キョン「先生のことが、好きなんです」

586 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 14:58:20.53 ID:/3yneHBo0

岡部「えっ」

あれ?
俺、今、何を言った?

岡部「えーと……その『先生』というのは、どの先生の
    ことなんだ? 音楽の水嶋先生か? 数学の
    田中先生か?」

岡部は、女性教諭の名前を挙げた。

キョン「違います。俺は、岡部先生のことが、好きなんです」

もう一度言ってしまった。

しかし、口に出してみると、それが俺の本心であったような
気がしてくるから、不思議だった。

そうだ。
よく考えてみると、俺は岡部が好きだったのだ。
この激動の一週間で、岡部だけは俺に優しかった。
惚れてしまったのかもしれない。

岡部「ああ……。そうなのか」

キョン「先生は、俺のこと、どう思ってますか?」

岡部「どうって……」

キョン「先生の正直な気持ちが知りたいんです」

592 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 15:04:33.16 ID:/3yneHBo0

岡部「そうだな……。成績は悪いし、運動神経も人並みだし、
    無気力で協調性が乏しいところはあるが……」

キョン「あるが?」

岡部「どちらかと言うと、好きかもしれない」

キョン「本当、ですか?」

胸が高鳴るのを感じた。

岡部「ああ。ずっと前から、何となく気になっていたんだ」

キョン「嬉しいです……」

俺はもう一度、岡部に抱きついた。
岡部も、恐る恐るではあるが、俺の背中に手を回した。

絶望的だと諦めたこともあったけど、これからは、
楽しい学校生活が待っている。
そんな気がした。






長門「ゲーム終了」

キョン「これで満足か?」

597 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 15:10:50.89 ID:/3yneHBo0

長門「満足」

キョン「それにしても、どうして俺に教室でウンコを漏らさせる
     必要があったんだ?」

長門「まず、今までのあなたは恵まれすぎていた。その環境を
    徹底的に破壊する必要があった」

キョン「まあ、確かにそうかもしれないけど……」

長門「自分は大して努力をしていないのに、友人に恵まれていた」

キョン「いやいや、一見努力していないように見えるけど、
    俺だって俺なりに頑張ってたんだぞ」

長門「私には、そうは見えなかった。クラスの中には、
    谷口や国木田という、いい友人がいた。それだけではない。
    あなたが所属するSOS団。ここには魅力的な女性が三人もいた」

キョン「自分で自分を魅力的というか……。まあ、実際そうだけど」

長門「古泉一樹の存在も重要」

キョン「古泉が?」

長門「あなたは古泉一樹を見下していた。古泉一樹を自分よりも下等な
    存在だと、何の根拠もなく決め付け、優越感を抱いていた」

604 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 15:20:14.29 ID:/3yneHBo0

キョン「優越感、か。それはそうかもしれないが……」

長門「あなたと古泉一樹の立場を逆転させるには、
    あなたに教室で排泄をさせるのが手っ取り早かった。
    効率がいいから、その手段を選んだだけ」

キョン「分かった、分かった。今までとは逆に、俺が古泉に
     見下される立場になったのは認めよう。だが、それに、
     何の意味があるんだ?」

長門「あなたのアイデンティティを破壊するのが目的だった。
    あなたという人間は、他者を見下し、自分は他者よりも
    賢いのだと思い込むことで自我を保っていた。
    その標的に選ばれていたのは、主に、古泉一樹、谷口、
    涼宮ハルヒの三人だった」

キョン「その三人に、いじめの主犯をやらせたかったということか?」

長門「そう」

キョン「妹や母親に嫌われるように仕向けたのは?」

長門「あなたの庇護者である妹と母親に諦めの目を向けられれば、
    あなたは誰にも助けを求めることができなくなる」

キョン「見下す者と見下される者の立場が逆転して、庇護者がいなくなって、
     それでどうなるんだよ」

長門「あなたは、唯一自分に優しくしてくれる岡部に好意を抱くようになる」

611 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 15:26:15.46 ID:/3yneHBo0

キョン「まあ、確かにな……。岡部がこんなに大活躍するSS、
     初めて読んだぞ」

長門「これで、私の目的は達せられた」

キョン「あー……。要するに、俺と岡部をくっつけるのが、
     お前の目的だったのか?」

長門「そう」

キョン「それに何の意味がある」

長門「楽しかった」

キョン「ようやく長門にも楽しいという感情が生まれたのか。
     それは嬉しいが、どうして岡部なんだ」

長門「古泉×キョンとか、キョン×古泉の時代は、もう終わった。
    これからは岡部×キョンの時代」

キョン「お前……腐女子だったのか!?」

長門「人類の言語に私の感情を当てはめると、そういうことになる」

キョン「腐女子きめえ……。そんなんだから腐女子は嫌われるんだよ」

617 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 15:33:51.45 ID:/3yneHBo0

長門「しかし、私も苦労した」

キョン「そりゃあ苦労するだろうよ。俺がお前にとって
     間違ったルートを選ぶたびに、世界をリセット
     していたんじゃな……」

長門「ゲームでは簡単だった」

キョン「ゲームはあらかじめ選択肢が決められているからだよ。
     現実はそんなに生易しくないぞ。しかしこれ、夢オチでも
     ゲームオチでもなく、現実オチなんだよな?」

長門「そう」

キョン「俺は、これからも岡部と付き合っていかなきゃいけないのか?」

長門「大事にしてあげて」

キョン「俺が教室でウンコを漏らしたというのも、そのままなのか?」

長門「あなたなら、きっと乗り越えられる日が来ると信じている」

キョン「信じなくていい! もう一度リセットして最初からやり直させろ!」

長門「それはできない」

キョン「ハルヒ! ハルヒはいるか!? 俺は、実はジョン・スミスなんだぞ!」


          −完−

623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 15:39:50.37 ID:/3yneHBo0

みんな分かってると思うけど、最初はこんな終わり方にするつもりじゃなかったんだぜ……。

>>555を書いた時点では、キョンがハルヒ達に復讐していく方向に持っていくつもりだったんだけど、
そこから長門が黒幕という結末にどうやって持っていけばいいのか分からなかったから、こうなってしまった。

もう大学に行かないといけない時間だから落ちるけど、もし帰ってくるまでスレが残っていたら、>>555からやり直すよ。
残ってなかったら、>>617がトゥルーエンドということで。

646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:14:18.29 ID:/3yneHBo0

もうどうやって収拾をつければいいのか分からないんだよ……。

読み返してみたら、キョンと岡部にフラグが立っていたから、
あんな終わり方にしたんだけど、あれじゃ納得してくれないのか……。

約束どおり続きを書くけど、先に言い訳をしておく。
>>617で、このSSは一度完結した。
これから書くのは、エピローグみたいなものだから、期待しないで欲しい。

649 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:19:54.53 ID:/3yneHBo0

長門「待って」

キョン「何だよ」

長門「涼宮ハルヒにあなたの正体がジョン・スミスだと
    言ってはいけない」

キョン「だって、お前はもう、俺にやり直しさせてくれないんだろ?
     それなら、ハルヒに頼むしかないじゃないか。
     俺の正体がジョン・スミスだと分かれば、あいつも助けて
     くれるに違いない」

長門「それでは私が困る」

キョン「じゃあ、お前が何とかしろ」

長門「そう言われても、あまりセーブデータが残っていない」

キョン「セーブデータ? マジでゲームみたいだな」

長門「現在保存してあるセーブポイントは、宇宙の誕生、
    地球の誕生、三年前の情報爆発、そして最後にリセットした
    場所しかない」

キョン「セーブデータ少なすぎだろ……。スーファミ並みの
     スペックだな」

長門「SFCは、あの時点では最も完成されたハードだった。
    訂正を要求する」

651 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:26:59.87 ID:/3yneHBo0

キョン「拒否する」

長門「そう」

キョン「そう、で終わるなよ。最後にリセットした場所、
     っていうのは、どこなんだよ」

長門「あなたが涼宮ハルヒを殴る直前の会話のシーン」

キョン「ああ、あの『リセット』っていう声が聞こえたところか。
     何か微妙なところだな……」

長門「それが嫌なら、他のセーブデータでも、私は構わない」

キョン「他のデータって、宇宙や人類の誕生からやり直せと?」

長門「三年前のデータもある」

キョン「いっそ、そこからやり直した方がいいかもしれないな。
    俺がウンコを漏らしたという事実も消えるわけだし」

長門「一つ問題がある」

キョン「何だよ」

長門「三年前のセーブデータには、あなたが二人存在する。
    中学生としてのあなたと、私の部屋で寝ているあなた」

652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:33:04.48 ID:/3yneHBo0

キョン「笹の葉ラブソティの奴か」

長門「ラブソティではなく、ラプソディ」

キョン「知ってたし! ちょっといい間違えただけじゃん!」

長門「そう」

キョン「とにかく、俺が二人いたら、何か問題なのか?」

長門「あなたの意識は、中学生としてのあなたではなく、
    私の部屋で寝ている方のあなたに飛ぶ」

キョン「……それが、何か問題なのか?」

長門「SOS団が結成され、朝比奈みくるとあなたが
    出会わなければ、あなたが私の部屋で寝ることは
    なかった」

キョン「だから?」

長門「三年前からやり直した場合、必ずしも同じ歴史を
    辿るとは限らない。SOS団が結成されなかったり、
    あなたや涼宮ハルヒが北高に入学しなかったりする
    可能性がある。その場合、あなたは時空の狭間に
    取り残され、永遠に目覚めることはない」

キョン「つまり、死ぬのと同じことか?」

長門「そう」

653 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:40:19.33 ID:/3yneHBo0

キョン「つまり、俺に残された選択肢は、最後にセーブした、
    ハルヒを殴る直前しかない、ってことか?」

長門「私はどこからやり直しても構わない」

キョン「お前がよくても、俺が困るんだよ!」

長門「では、最後にセーブしたところからリロードしてもいい?」

キョン「よし、やっちまえ」





ハルヒ「ねえキョン。さっきから震えてるけど、どうかしたの?」

ハルヒが白々しいことを言った。

キョン「え? 別に?」

俺は虚勢を張った。

ハルヒ「別にってことないでしょ。具合悪いの?」

そう訊かれた瞬間、俺の中で何かが壊れた。
こいつは、あの五時間目の会話を再現しているのだ。

656 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:45:01.50 ID:/3yneHBo0

キョン「具合がいいわけないだろ! お前らに無理矢理、
    アナルプラグを装着されたんだからな!」

俺は大声で言った。
教師に聞こえるように。
教室の中が、静まり返る。

教師「アナル……プラグ? 何だ、それは」

事情を理解していない教師が、呆けたような顔をした。

キョン「俺、いじめられてるんですよ。こいつらに――
    クラスメート全員に、無理矢理、こんなものを
    装着させられたんです」

俺はズボンとパンツを下ろし、教師に向かって尻を向けた。

どうせ、クラスの全員に一度は下半身を見られたのだ。
恥ずかしいものなど、もう何も残っていなかった。

教師「何だこれは……。大問題だぞ。おい、お前ら!」

教師は、俺を見ないように顔を伏せているクラスメート
全員に恫喝した。

教師「何てことをしでかしたんだ! ……待ってなさい。
    とりあえず、岡部先生と学年主任と校長先生を
    呼ぶから」

教師は携帯電話を取り出し、忙しく電話をし始めた。

659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:51:59.52 ID:/3yneHBo0

ハルヒ「あんた……なんてことをやってくれたの」

キョン「言っておくが、悪いのはお前らの方だ。
     恨むんなら自分を恨むんだな」

谷口「よくもチクりやがったな!」

国木田「谷口、駄目だよ。僕らは何も知らないって言い張らなきゃ」

教師「全部聞こえてるぞ! 全員、教科書やノートや筆記用具を、
    机の中に仕舞いなさい。携帯電話の電源を切って、
    俺に見えるように机の上に置け」

キョン「先生。アナルプラグを抜いてもいいですか?」

教師「えーと……。ああ、いいぞ」

俺はハルヒの目の前でアナルプラグを抜いてやった。
ウンコまみれのアナルプラグをハルヒの机の上に置く。

ハルヒ「何で私の机に置くのよ! 自分の机に置けばいいでしょ!?」

キョン「持ち主に返さなきゃいけないだろ?」

教師「それは大事な証拠だからな。もしも窓から捨てたり、
    投げたりした場合、いじめを認めたと判断する」

ハルヒは憎々しげに俺を睨んでいたが、反論はしなかった。

十分もしないうちに、岡部と学年主任と校長がやってきた。

663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 19:59:36.01 ID:/3yneHBo0

教師「……そういうわけで、これをクラスメート達に
    挿入するように強要されていたというわけです」

岡部「キョン、大変だったな。他にされたことはないのか?」

岡部が優しく俺の肩に手を置く。
俺は思わず泣きそうになったが、ぐっとこらえた。

キョン「一週間前に、俺がウンコを漏らした次の日の早朝、
     学校の前に呼び出されました。これが、その証拠です」

俺は、自分の携帯電話のメールを開いて見せた。

『明日の朝、7:30までに校門の近くで待っていること』

岡部「メールの送信者は……、涼宮か。それで、呼び出されて、
    何をされたんだ? お金を要求されたのか?」

キョン「オムツを穿かされました」

岡部「オムツ……だと?」

キョン「さらに、その上にベルトのようなもので固定され、
     脱ぐことができないようにし、南京錠で鍵をかけられました」

岡部「何てひどいことを……。これはもはや、犯罪だぞ。
    警察を呼ばないといけないレベルだ」

670 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 20:17:19.07 ID:/3yneHBo0

校長「それも、クラスメート達がやったのかね?」

キョン「いえ、オムツを穿かせたのは、同じ部活のメンバーだった、
     古泉一樹と、長門有希、そしてここにいる涼宮ハルヒです」

学年主任「古泉一樹と、長門有希だな。校長、二人を呼んできます」

そのとき、チャイムが鳴った。
一時間目が終わったのだ。

岡部「他にされたことは?」

キョン「中傷のメールがたくさん届いています」

電源は切っていたが、メールボックスには溢れんばかりの
メールが届いていた。

岡部「ふむ……。このクラスの携帯のメールアドレスから
    送信したものが、いくつかあるな。小賢しい奴は
    フリーメールを使っているみたいだが、警察が
    フリーメールの会社に行ってログを見れば、
    どこの誰が使用したメールアドレスなのか分かるだろう」

キョン「たぶん、学校裏サイトも、ひどいことになってると思いますよ。
     俺は、見るのが怖いから、見てませんけど」

これは、妹が言っていた噂から判断したものだった。
あの噂はおそらく、学校裏サイトで広まったものだろう。

教師「今すぐ、確認してきます」

674 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 20:26:53.39 ID:/3yneHBo0

岡部「他には、何かされてないのか? 細かいことでもいい。
    全部話すんだ」

キョン「そう言えば、今朝、アナルプラグを無理矢理
     挿入されるときに、谷口に腹を殴られました」

岡部「谷口。本当か?」

谷口「……はい」

谷口は馬鹿だから、自分の携帯電話を使って、俺にメールを
送っていた。俺が漏らしたところの画像を添付したメールを、だ。
言い逃れはできないと、谷口も諦めたのだろう。

キョン「それと……」

岡部「何だ?」

キョン「一週間前に、俺がウンコを漏らしたのも、たぶん、
     谷口のせいです。国木田も共犯なのかもしれませんが」

谷口「……はあ?」

キョン「俺は、五時間目の直前の昼休みに、谷口や国木田と一緒に、弁当を
     食べました。そのとき、弁当に下剤を混入されたのではないかと思います」

岡部「谷口いい!」

キョン「それから、漏らす直接のきっかけとなったのは、ハルヒに強く手を
     引っ張られて、転倒したからです」

679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 20:32:58.92 ID:/3yneHBo0

谷口「ちょっと待て! 俺はそんなことしてないぞ!」

国木田「僕だって!」

ハルヒ「私だって、確かに手は引っ張ったけど、
     転倒させるつもりはなかったわよ!」

岡部「お前ら、見苦しいぞ。これだけの証拠があるのに、
    まだ言い訳をしようというのか」

谷口「本当なのに……」

学年主任「古泉一樹と、長門有希を連れてきました」

古泉はふてくされた顔をしている。
一方の長門は、完全な無表情だった。

学年主任「連れてくる途中で、携帯電話を確認しましたが、
       先ほど涼宮が送信したのと同じ内容のメールが
       届いていました。さらに、古泉の携帯には、
       オムツを用意しろという内容のものがあり、
       承諾する返信をしていました」

岡部「裏づけが取れたな」

谷口「でも、俺達はキョンの弁当に下剤を仕込んで
    なんかいないんです!」

岡部「言い訳は後で聞く。もっと被害を確認しておく必要がある」

683 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 20:46:13.99 ID:/3yneHBo0

キョン「あいつには、ウンコ野郎と呼ばれました」

俺は男子Aを指さした。

キョン「古泉には、鞄を投げつけられました」

古泉は俺を睨んでいる。

キョン「国木田には、退学になっちゃえばよかったのに、
     と言われました」

国木田は自分の机の上の携帯だけを見つめている。

キョン「でも、一番の主犯は、何よりも涼宮です。
     こいつがいじめのリーダーでした。谷口が俺の弁当に
     下剤を仕込んだのも、涼宮の指示だったのかもしれません」

ここで俺は、さり気なく谷口に逃げ道を用意してやった。
ハルヒの指示だったという逃げ道があれば、谷口も認めるかもしれない。

妹が教えてくれた噂話で分かった。
大切なのは事実ではない。
他人が何を事実だと考えるか、なのだ。

本当に、弁当に下剤が仕込まれていたのか、いなかったのか、
それは重要ではない。
ただ、谷口に認めさせることが大事なのだ。
谷口が認めれば、俺がウンコを漏らしたという事実はそのまま、
谷口の汚名に変換される。
そうすれば、俺は可哀想な被害者ということになる。

686 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/22(木) 20:52:05.22 ID:/3yneHBo0

岡部「谷口、そうなのか?」

谷口「あ……、えーと……」

谷口は、四人の大人の男に見下ろされ、萎縮していた。
視線を泳がせていたが、やがて溜め息をついた。

谷口「キョンの言うとおりです。涼宮に命令されて、
    キョンの弁当に下剤を入れました」

勝った。

これで、俺は被害者だ。

悪いのは、ハルヒと谷口、そして共犯者の国木田の
三人ということになった。

ハルヒ「ちょっと待ちなさい! 私はそんなこと命令して
     ないわよ! 濡れ衣だわ!」

岡部「言い訳は警察に言え」

ハルヒ「警察……?」

岡部「他のクラスメートに比べると、お前は罪が重すぎる。
    おそらく、傷害罪や強要罪で逮捕されるだろう」

ハルヒ「そんな……」

754 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 03:58:42.72 ID:/xHOeHrW0

>>686の続き。

ハルヒは青ざめた。
いじめの加害者には、罪の意識がないので、岡部にここまで
言われるとは思っていなかったのだろう。

ハルヒ「一対一?」

キョン「それはタイマン」

ハルヒ「岡部」

キョン「それは体育」

ハルヒ「全身」

キョン「それはタイツ」

ハルヒ「東にカンボジア、北にラオス、西にミャンマーと
     アンダマン海があり、南はタイランド湾とマレーシアがある」

キョン「それはタイ王国」

ハルヒ「2009年4月5日放送のNHKスペシャルで歪曲・捏造・やらせ報道され、
     一万人以上がNHKに対して提訴している」

キョン「それは台湾」

755 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 04:02:09.60 ID:/xHOeHrW0

ハルヒ「後ろに下がる」

キョン「それは退歩」

ハルヒ「待つ」

キョン「それは待機」

ハルヒ「晩成」

キョン「それは大器」

ハルヒ「レンタル」

キョン「それは貸与」

ハルヒ「日本の伝統」

キョン「それは太鼓」

ハルヒ「サザエさん」

キョン「それはタイ子」

ハルヒ「じゃあ結局、逮捕って何なのよ」

キョン「罪を犯した人間が警察に捕まること」

ハルヒ「そんなの知ってるわよ! ……私はただ、
     現実を受け入れたくないだけ」

757 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 04:08:27.48 ID:/xHOeHrW0

キョン「だと思った」

ハルヒ「私が悪かったわ。謝るから、許して」

キョン「反省の色が見られない」

ハルヒ「どうすれば反省したと認めてくれるの?」

キョン「そうだな……」

今までハルヒにやられたことを思い出す。
オムツにするか。
それとも、アナルプラグがいいか。

……いや、これしかないな。

俺は、岡部や校長たちが自分達同士の相談に夢中になっていて、
こちらに注意を向けていないことを確認してから、ノートの切れ端に
急いでシャーペンを走らせた。

岡部は耳がいいので、これくらい用心する必要がある。

『今ここでウンコを漏らしたら許してやる』

その紙をハルヒに見せ、ハルヒがあんぐりと口を開けたのを確認してから、
俺は紙を引き裂いて窓から捨てた。
これで証拠隠滅だ。

761 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 04:23:12.22 ID:/xHOeHrW0

ハルヒ「そんなこと、できるわけないでしょ!」

キョン「嫌ならいいんだぜ。俺は少しも困らないからな」

ハルヒ「本当に、それしかないの?」

キョン「ない」

さあ、早く漏らせ。
男子高校生がウンコを漏らしたという事件よりも、
女子高校生がウンコを漏らす事件の方が、
何倍もセンセーショナルなはずだ。

ハルヒが漏らしてくれれば、俺の事件の記憶は薄れるだろう。

ハルヒ「あんた、私の身体に興味ない?」

キョン「別に」

ハルヒ「そんなことないでしょ? ウンコを漏らす代わりに、
     一晩自由にしてもいいのよ?」

俺は昔、ハルヒに淡い恋心を抱いていたこともあった。
しかし、今は何の魅力も感じていなかった。
こいつはただのドSで、犯罪者だ。

もう騙されない。

それに何より、今の俺には岡部がいる。
俺がハルヒの申し出を受け入れる理由など、どこにもなかった。

763 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 04:32:50.53 ID:/xHOeHrW0

キョン「もうお前になんか興味ないんだよ。
     あれをしないんだったら、俺は警察に
     被害届を出すだけの話だ」

絶対に、ウンコを漏らせ、という言葉を口に
してはいけない。

今の時代は、簡単に録音することができるのだ。
この状況で証拠を残す奴は、ただの馬鹿だ。

ハルヒ「許して……」

ハルヒは涙目になった。

俺は無言で、首を左右に振る。

ハルヒ「わ、分かったわよ……。漏らせばいいんでしょ?」

俺は無言で、じっとハルヒを見つめていた。

ハルヒは、歯を食いしばり、ウンコを出そうとしている。
教室で。
みんながハルヒに注目している中で。

ハルヒ「やっぱり、駄目……。出ないわ」

キョン「努力が足りないんじゃないのか?」

767 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 04:40:33.12 ID:/xHOeHrW0

ハルヒ「本当に出ないのよ。私は毎朝、快便だから」

キョン「お前、ローション持ってなかったっけ?」

ハルヒ「持ってるけど……。あんたにアナルプラグを
     挿入するために持ってきた奴が。……え?
     指にローションを塗って、肛門に挿入し、
     刺激を与えろ、って言ってるの?」

キョン「さあな。自分で考えろよ。ちなみに俺は、
     アナルプラグを装着されているときは、
     ウンコをしたくてしたくて仕方がなかった。
     実際、抜くときには少し出てしまった」

ハルヒ「もう、それしかないの? みんな、いじめの
     リーダーだった私に注目してるのに、
     こんな衆人環視でそんなことができると思う?」

キョン「さあなあ。お前の努力次第なんじゃないのか?」

ハルヒ「……ううっ」

ハルヒは涙を流しながら、鞄からローションを取り出した。
それを左手の指に塗る。

ハルヒの席は窓際だから、左手でアナルをいじった方が
目立たないと判断したのだろう。

769 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 04:48:45.71 ID:/xHOeHrW0

ハルヒ「……じゃあ、挿れるわよ」

キョン「いちいち実況しなくてもいいぞ。
     俺は、途中経過なんて評価しない。
     大切なのは、結果だけだ」

ハルヒは、腰の部分からスカートに左手を入れた。
何かを探っているような気配があったが、止まった。

ハルヒは思いつめた表情で、前かがみになっている。

ハルヒは急に目を瞑った。
アナルに指を入れたのだろう。

ゆっくりと、左腕全体が揺れる。

教師達以外は誰も喋っていない教室の中で、
ハルヒがアナニーをしている。

それは、奇妙な光景だった。

このぶんなら、漏らすのも時間の問題だろう。

796 名前: ◆.wujh7XySo [] 投稿日:2009/10/23(金) 12:54:06.94 ID:E+gLbBbQ0

ただいま。
一気に完結まで書くぞ!

800 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:01:35.27 ID:E+gLbBbQ0

ハルヒ「おしっこだけじゃ駄目なんだよね?」

諦めの悪いハルヒは、まだそんなことを訊いてくる。

キョン「好きにすればいいだろ?」

ハルヒ「ねえ、これ、凄く苦しいの。男の人のアナニーは、
     前立腺があるから気持ちいいのかもしれないけど、
     女の場合のアナニーは――」

キョン「黙れ」

あまり会話を続けていると、岡部たちに聞こえてしまう。
ハルヒは黙々と左手を動かした。

しばらくして、オナラの音が聞こえた。

谷口「今オナラしたの、誰だよ」

谷口があからさまな視線を、俺の方に向けてくる。
一週間前の俺だったら、この視線にビクビクしていたものだが、
今の俺は余裕だった。
オナラをしたのは、ハルヒなんだからな。

岡部「谷口、いい加減にしろ。そうやって、オナラ一つで
    大騒ぎするから、トイレに行きにくい空気が作られて
    しまったんだ。トイレに行かない人間なんて、この世には
    一人として存在しない。トイレに行ったり、オナラをしたり
    することは、恥ずかしいことじゃないんだぞ。それがたとえ、
    学校の中であったとしても、だ」

805 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:09:10.82 ID:E+gLbBbQ0

岡部がいいことを言った。
もっと早く、こういうことを言って、実践してくれる教師に
出会っていれば、俺の暗黒の小学校時代が形成される
こともなく、一週間前に漏らすこともなかったのかもしれない。

もっと早く岡部と出会いたかったな、と思った。
しかし、出会えただけでも、俺は幸福なのだろう。

今この瞬間にも、授業中にトイレに行きたいのに行けず、
苦しんでいる生徒や学生が日本中にいるだろう。
岡部と出会えただけでも、俺はラッキーだったのだ。

ハルヒ「うっ……」

ハルヒの体が、小刻みに揺れ始めた。

ハルヒ「うううっ……」

水のしたたる音が聞こえた。

ハルヒは、ウンコだけではなく、オシッコも漏らしたのだ。
まあ、排便時には、同時に尿も出るのが普通だから、
想定の範囲内だったが。

国木田「涼宮さんが、失禁した。オシッコを漏らした」

国木田の冷静な声が聞こえた。

809 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:20:04.05 ID:E+gLbBbQ0

誰もがまだ、ハルヒがウンコまで漏らしたとは思って
いないらしい。

自分がいじめのリーダーとして糾弾されているという、
異常な緊張感に耐え切れなくなり、失禁してしまった
としか思っていない。

誰もがハルヒに注目していた。

たった一人を除いて。
俺だけが、そのことに気付いていた。

古泉だった。
古泉だけが、目の前のハルヒよりも、自分の携帯電話に
注目していた。
信じられない、という表情で画面を見ていた。

谷口「なあ、この臭いって……」

ウンコの臭いが、教室の中を満たし始めた。

教室の中が、ざわざわと騒がしくなった。
早くも立ち上がり、出口の方へ移動し始める生徒もいた。
教師達ですら、逃げたそうなそぶりを見せていた。

国木田「涼宮さん。もしかして、オシッコだけじゃなくて……」

ハルヒ「ウンコも漏らしたわよ。何か文句ある?」

教室の中が、パニックになった。

812 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:34:08.41 ID:E+gLbBbQ0

谷口「漏らしたぞ! 涼宮がウンコと小便を漏らしたぞ!」

あの日と同じように、谷口が大声で実況をした。
学年中に聞こえただろう。

クラスメートの女子達は悲鳴を上げながら、出口に殺到した。
誰一人として、ハルヒを気遣い、庇う女子はいなかった。
人望がない奴というのは、哀れなものだ。
……俺も、人のことは言えないけど。

岡部「あー、えーと、どうしますか?」

学年主任「我々は全員男ですから、女子生徒に触ると、
       スクールセクハラで訴えられる可能性が
       ありますから……」

教師「保健室の先生を呼んできて、任せるというのは
    どうでしょうか?」

校長「おお、それがいい。そうしましょう」

教師達はそんなことを言いながら、教室から出て行った。

またしても放置プレイだ。

クラスメートの女子達は全員が出て行ったが、
男子は何人か残っていた。
携帯電話の電源を入れ、カメラでハルヒを撮影するために。
まあ、ハルヒは、外見だけは文句のない美人だからな。
男子達にとっては、願ってもないシチュエーションなのだろう。

819 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:47:51.40 ID:E+gLbBbQ0

ハルヒ「撮るんじゃない!」

ハルヒが奇声を上げながら、撮影している男子に
殴りかかっていく。

男子A「ウンコ女がキレたぞ!」

男子B「オクサレ様がお怒りじゃ!」

男子C「今からそっちにウンコ女が行くぞ!
     ウンコ警報発令中!」

男子達が囃し立てる。

ハルヒ「うぎゃああああああ!」

ハルヒは顔を真っ赤にしながら、逃げていく男子達を追い、
自分も廊下に飛び出した。

ハルヒが移動した後に、ナメクジが這ったような跡が残る。

涼宮ハルヒ終わったな、と思った。

こうして、教室に残っているのは、俺と長門、古泉の三人
だけになってしまった。
と思ったが、違った。

みくる「あのう……」

キョン「朝比奈さん。どうして、ここに?」

823 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 13:56:35.48 ID:E+gLbBbQ0

みくる「未来から指令が来て、今この時間のこの場所に
    行くように言われて……」

キョン「あれ? いつもの、禁則事項です、って奴は
     ないんですか?」

みくる「ええ。私にもよく分からないんですけど、
     もういいみたいです」

長門「へぇ、そうなんですか。朝比奈さんも、
    自由になれたんですね」

長門が、長門らしくない喋り方をした。

キョン「お前……長門か?」

長門「ええ、そうよ。私は長門有希。何か変かな?」

キョン「明らかにおかしいだろ!」

古泉「おいおいお前ら、こんなウンコくさい場所で
    よくこんな会話ができるな。場所を移そうぜ」

キョン「お前も本格的に敬語キャラやめたのか……。
     それはさておき、どこに行く? 部室か?」

古泉「お前は本当に馬鹿だな。部室に行ったら、
    涼宮が逃げ込んでくる可能性が高いだろうが。
    部室以外の場所へ行くぞ。屋上でいいか?」

827 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:05:12.62 ID:E+gLbBbQ0

キョン「俺はどこでもいいけど……」

古泉「じゃあ、屋上で決まりだな」

キョン「でも、漫画とか小説だと屋上のシーンは頻出だけど、
     実際の学校では安全面を考慮して鍵がかかってる
     ものだと思うんだけど……」

古泉「ちゃんと鍵は手に入れてある」

今まではイエスマンだった古泉が、かつてないリーダシップを
発揮していた。
その鍵は、どう見ても犯罪の臭いがするのだが、今のこいつに
逆らわない方が無難だと判断した。

俺達四人は、大騒ぎになっている廊下を歩いた。

その途中、ハルヒが大勢に囲まれ、罵声を浴びせられたり、
雑巾を投げつけられたり、携帯のカメラで撮られたりしている
ところを目撃したが、俺達はスルーして屋上に向かった。

長門「うわあ。私、屋上に入るのって、初めて」

長門が歓声を上げる。
こうやって見ると、新しい長門も、これはこれで可愛い。

今回の一連の事件――俺が教室でウンコを漏らした事件の、
真犯人が長門であることを忘れてしまうくらいに。

829 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:26:49.61 ID:E+gLbBbQ0

キョン「なあ、そろそろ説明してくれてもいいだろ?
     どうして古泉や長門は、そんな喋り方に
     なってるんだ。ハルヒが教室で漏らしたときに、
     古泉は携帯に注目してたみたいだけど、
     それと何か関係があるのか?」

古泉「ふん。キョンのくせに、やけに鋭いな」

キョン「何で俺、こんなに古泉に見下されてるの……?」

古泉「涼宮が教室で漏らした瞬間、涼宮は神としての
    力を失ったんだよ。あの瞬間、俺は涼宮の呪縛から
    解放された。そう感じたのは俺だけじゃなかった。
    機関の連中も、同じ瞬間に全く同じことを感じたらしい。
    それまで神人と戦っていた連中も、突然神人が消えた
    ことに驚いて、俺にメールを送ってきたんだ」

キョン「説明くさい台詞をありがとう。長門も、古泉と同じ
     理由なのか?」

長門「うーん……。厳密には違うけど、まあ、だいたいそんな
    感じだと思ってもらえればいいかな」

キョン「こんなにアバウトな長門、初めて見た」

長門「もはや涼宮さんには、観測する価値がなくなっちゃったからね。
    涼宮さんは、ただの人間に戻っちゃったの。だから、私も使命から
    解放されて、普通の女の子になることができたってわけ」

833 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:36:30.17 ID:E+gLbBbQ0

古泉「だから、長門の場合は、俺とはちょっと違うな。
    俺は、キャラ付けをする意味がなくなったから、
    素の自分に戻っただけだけど、今の長門は、
    普通の女の子としての、新しい人格だから」

キョン「今までの長門は、消えてしまったのか?」

長門「別に消えたわけじゃないよ。だって、記憶は連続
    しているもの。今でも、あの長門有希は、私の中に
    存在している」

キョン「つまり、長門は二重人格になったのか?」

長門「だから、そうじゃないってば。二つの人格が混ざり合い、
    混沌としている状態が、今の私なの。人格が溶け合うには、
    もう少し時間がかかっちゃうの。ただそれだけ」

キョン「よく分からんが……ひとまず、置いておくか。
     朝比奈さんは?」

みくる「え? 私ですか?」

キョン「朝比奈さんだけは変わってないから、何か安心します」

古泉「まあ、朝比奈の場合は、別に違う人格を演じていたわけ
    じゃなくて、素でこの性格だからな」

みくる「実はまだ、みなさんのお話がよく分かってないんですけど……、
    涼宮さんが普通の人間になったのなら、もう、私がこの時代に
    いる意味はなくなってしまいますね」

837 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:47:20.68 ID:E+gLbBbQ0

キョン「じゃあ、未来に帰ってしまうんですか?」

朝比奈さんがいなくなるのは、正直、寂しかった。

みくる「まだそうと決まったわけじゃないわ。未来の世界には、
     この時代で言う留学制度みたいなものがあって、
     制約は多いけど、一定期間、過去で生活することが
     できるの。だから、この高校を卒業するくらいまでは、
     この時代に滞在できるかもしれないわ」

キョン「そ、そうですか! それはよかった!」

古泉「俺はどうしようかなあ。正直、こんなショボい公立高校、
    俺の肌には合わないんだよなあ。転校する前の、
    元の高校に戻ろうかな」

長門「うふふ。古泉君ったら、強がっちゃって、可愛い」

古泉「な、何だよ長門!」

長門「本当は、朝比奈さんのときみたいに引き止めて欲しいくせに。
    偉そうなこと言ってるけど、みんなのことが好きなんでしょ?」

古泉「べ、別に嫌いじゃないけど……」

長門「私は、この高校が大好き。この高校で、普通の女の子として、
    学校生活を送りたかったの。それが、私の夢だった」

キョン「長門。だから、こんな事件を引き起こしたのか……?」

842 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 14:56:13.09 ID:E+gLbBbQ0

長門「え? どういう意味?」

キョン「お前が、お前の夢を叶えるためには、ハルヒから
     能力を奪う必要があった。それが、今回の事件の、
     お前の目的だったんじゃないのか?」

長門「まあ、結果として、そういうことになっちゃうのかな。
    キョン君と岡部先生をくっ付けてみたかったのも、
    私の願いだったけどね」

キョン「まだそんなこと言ってるのか……。勘違いしてるの
     かもしれないけど、腐女子っていうのは、普通の
     女の子じゃないんだぞ?」

長門「あはははは。細かいことは、気にしない、気にしない」

キョン「俺は気にするぞ」

長門「話を戻すけど」

キョン「いきなり話を戻すな!」

長門「もうみんな気付いてるでしょうけど、涼宮さんの能力は、
    私とは異なる派閥に属する宇宙人によって与えられた
    ものだった。私を作った存在よりも、さらに高位な次元の
    宇宙人が、気まぐれでそんなことをやっちゃったの。
    三年前の七夕に、中学校の校庭に宇宙語を書いた
    ことがきっかけでね。でも、授業中にウンコを漏らすような
    女の子に、どんな非常識なことでも思ったことを実現させる
    能力を与えるのは、分不相応だと思ったんじゃないかな?」

844 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 15:03:32.84 ID:E+gLbBbQ0

キョン「長文読むの面倒だから、三行で頼む」

長門「涼宮さんが授業中に
    ウンコ漏らした。
    だから能力奪われた」

キョン「なるほど、よく分かった」

古泉「まったく、これだからこいつは……」

キョン「それで? 長門、お前は、ハルヒにウンコを
     漏らさせるために、何回やり直したんだ?」

長門「気付いてた?」

キョン「あまりにも上手く行き過ぎていたからな。
     俺が岡部に愛の告白をして、その後、
     長門を脅迫して途中から世界をやり直させたわけだけど、
     俺の記憶に残っていないだけで、実際はその後も、
     お前にとって都合のいいようになるまで世界を
     やり直していたんだろ?」

長門「それは禁則事項です♪」

キョン「おい……」

長門「説明するのが大変なんだけど、『消失』って、分かる?」

キョン「何のことだ?」

847 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 15:18:02.35 ID:E+gLbBbQ0

長門「だよね……。知ってるわけないか。今は、
    一年生の七月だもんね。ああ、説明するの面倒だなあ」

キョン「説明するのを面倒くさがるところは、今までの
    長門と変わらないんだな……」

長門「説明端折るけど、やり直す前の世界で、私は、一度、
    世界の設定を作り変えてしまったことがあったの」

キョン「今回みたいに?」

長門「今回とは、根本的に違っていた。過去も現在も未来も、
    全てを作り変えちゃったから。だから、私は上司みたいな
    存在に目を付けられてしまった。そこで私は考えた。
    上司に怒られないような範囲で、私にとって都合のいい
    世界にすることはできないものか、と」

キョン「どうすれば怒られずに済むんだ?」

長門「あのときの私は、他者に干渉をしてしまったから、怒られた。でも、
    他者に干渉することなく、ただ世界をセーブして、やり直すだけだったら
    怒られないんじゃないか、と思った。そして、それは成功した」

キョン「ゲームのタイムアタックみたいなものか」

みくる「タイムアタック?」

キョン「ゲームのタイムアタックでは、少しでもタイムを縮めるために、
    プレイヤーの意思は関係ないけど低確率でランダムに起こる事象が欲しい場合、
    その事象を引き当てるまで、何度もリセットしてやり直すんですよ」

849 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 15:24:10.82 ID:E+gLbBbQ0

みくる「でも、それって、大変なんじゃないんですか?
     普通の神経じゃ、耐えられなさそう……」

長門「もちろん、耐えられないですよ。でも、私は、
    エンドレスエイトにも耐えられましたから、
    それくらい平気でした」

みくる「エンドレスエイトって、何ですか?」

長門「この世界は夏休み前だから、説明するのが大変です。
    勘弁してください」

どうやら長門は、このメンバーの中では朝比奈さんに
対してだけ、敬語を使うらしい。
朝比奈さんが先輩だからだろう(精神年齢や実年齢はともかく)。

そんなところも、普通の女の子と変わりなかった。

キョン「いやいやいや。でも、やっぱり分からないことがあるぞ。
     ハルヒにウンコを漏らさせるのが目的なら、俺に漏らさせる
     必要はなかっただろ?」

長門「それは岡部先生と――」

キョン「それはもういい!」

古泉「お前は本当に馬鹿だな。俺が説明してやろうか?」

キョン「……いいだろう。やってみろよ」

852 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 15:40:43.13 ID:E+gLbBbQ0

古泉「まず、お前がウンコを漏らす確率と、
    涼宮がウンコを漏らす確率。
    どっちの方が高いと思う?」

キョン「……ハルヒ、かな」

古泉「てめえ、見栄張るんじゃねえよ。
    誰がどう考えても、お前がウンコを漏らす
    確率の方が高いだろ?」

キョン「お前がそう思うなら、そういうことにしてやるよ」

古泉「いちいち喉仏に引っかかる言い方をする奴だな。
    じゃあ、そういう前提で話を進めるぞ。
    完璧超人の涼宮がウンコを漏らす確率は極めて低い。
    だから、他人が涼宮にウンコを漏らせと命令するしかない。
    しかし、長門は例の制約により、自分では命令する
    ことができない。どうすればいいと思う?」

キョン「俺に命令させるのか……?」

古泉「そういうことだ。お前が教室でウンコを漏らし、
    そのことがきっかけで涼宮にいじめられたら、
    お前は涼宮を恨むようになる。やがて涼宮への糾弾が
    始まったら、お前が涼宮にウンコを漏らせば許してやる、
    と命令する確率が高くなるんだ」

キョン「結局、俺は、最初から最後まで長門の手の平の上で
     弄ばれていたんだな……」

859 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 16:19:49.75 ID:E+gLbBbQ0

長門「まあ、もう終わったことだから、いいじゃない」

キョン「よくない……。妹や母親に対するフォローは
     どうすればいいんだ」

長門「それなら、キョン君がいじめられてたことが
    分かれば、自然と受け入れてくれるわよ」

キョン「結局そうなるのか……」

ふと、水の音が聞こえた。

何気なくプールを見ると、ハルヒがシャワーを浴びていた。

あいつも、ある意味では被害者なんだよな……。
これからハルヒには、少年院に入るよりも辛い生活が
待っていることだし、被害届は出さないでおいてやるか。

長門「そろそろ戻りましょうか」

キョン「そうだな」

長門「でも、その前に聞いておきたいんだけど……。
    岡部先生とのことは、どうするつもりなの?」

キョン「まずは告白する前に、友達から始めるよ」

長門「そうね。焦ることないわ。きっと、うまくいくから」

        −完−

864 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 16:24:55.42 ID:E+gLbBbQ0

こんな迷走しまくりで、収拾がつかなくなってしまった
SSを最後まで読んでくれて、ありがとうございました。

質問あれば受け付けるよ。特定されない範囲で。

866 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 16:26:58.57 ID:E+gLbBbQ0

長門が漏らす話、読みたいの?
これまでのSSとは完全に別物のパラレルワールドになるけど、いい?

869 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 16:29:28.07 ID:E+gLbBbQ0

>>867
起きてから何も食べてなかったから、
気軽にシーチキンマヨネーズの手巻き寿司でも作ろうと思った。
しかし冷蔵庫のマヨネーズが切れていたので、
安いときに買い置きしておいたはずのマヨネーズを捜していた。


以上、ウミガメのスープの解説風に。
結局見つからなかったので、塩とシーチキンだけの手巻き寿司になったよ。

875 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 16:37:47.86 ID:E+gLbBbQ0

じゃあ、マヨネーズ買いに行くついでに、みんなが漏らすストーリー考えるから、
しばらく待っててね。

ただし、このSSは二度も完結したから、これ以上書き直すつもりはない。

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 19:57:14.16 ID:E+gLbBbQ0

すべては、俺と長門が二人きりで部室にいるときに
起こった事件がきっかけだった。

長門「問題が発生した」

いつものように部屋の片隅で読書をしていた長門が、
ページから目を離さずに言った。

キョン「何だ?」

長門「催してきた」

キョン「……それは、トイレに関係する話か?」

長門「そう」

キョン「小さい方と大きい方、どっちだ?」

長門「両方」

キョン「悪いことは言わないから、トイレに行け」

長門「そこで問題が発生する。私はこの本に夢中に
    なっている。トイレに行くと、排泄をしている間、
    この本を読むことができない」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:03:03.79 ID:E+gLbBbQ0

キョン「読書なんかいつでもできるだろ」

長門「トイレもいつでもできる」

キョン「だが、いつまでも我慢することは
     できないんじゃないか? それとも、
     長門なら能力を使って回避できるのか?」

長門「例えば、私の膀胱や腸内の排泄物を
    あなたの体内に移動させることならできる」

キョン「何でわざわざ俺の身体の中に移動させるんだよ!
     普通にトイレとか下水道に移動させればいいだろ!」

長門「それは思いつかなかった」

キョン「思いつけよ……」

長門「しかし、どのみち、能力を使って排泄を回避すると、
    本に集中することができなくなるため、意味がない」

キョン「だから、本を読むのをやめればいいと言ってるんだ」

長門「今、クライマックスにさしかかっている。
    私は排泄行為よりも読書を優先したい」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:09:23.58 ID:E+gLbBbQ0

キョン「しかし、本に集中できないというなら、
     俺との会話は問題ないのか?」

長門「あなたとの会話は意識の表層部分で
    行なっているため、問題ない。私の意識の深い
    部分は、読書のみに集中している」

キョン「長門なら、トイレに行きながらでも
     本を読めそうな気がするんだが」

長門「本当にそれが可能なのか想像して欲しい」

キョン「まず、この部室を出るのは問題ないよな?
     片手で本を持ち、もう片手でドアを開ければいい」

長門「次は?」

キョン「廊下を歩くのも問題ない。トイレのドアも片手で
     開けられる。個室のドアも」

長門「そこからが肝心」

キョン「……ああ、そうか。パンツを下ろさなきゃいけないのか。
     でも、それも片手でできそうな気がするけど」

長門「パンツを下ろすことはできる。問題はスカート。
    スカートが床につかないようにするには、
    両手を使う必要がある。
    その間、私は本を読むことができない」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:13:14.87 ID:E+gLbBbQ0

キョン「要するに、その本を読み終えるまで、
     トイレを我慢できればいいんだろ?
     あとどれくらい我慢できる?」

長門「五分二十一秒」

キョン「その本を読み終えるには、何分かかる?」

長門「二十二分四十七秒」

キョン「……俺は、トイレに行くか、能力を使うしか
     ないと思うんだが」

長門「第三の選択肢がある」

キョン「何だよ、その選択肢って」

長門「漏らせばいい」

キョン「何……だと?」

長門「漏らしてしまえば、トイレに行くか行かないかで
    悩む必要はなくなる」

キョン「もっと別の次元で悩みが発生しそうな気が
     するんだけど」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:17:32.69 ID:E+gLbBbQ0

長門「あなたが何を言っているのか、分からない」

キョン「漏らすのは恥ずかしいことだ」

長門「恥ずかしいとは、どういう感情?」

キョン「えーと……駄目だ。上手く説明できない」

長門「そう」

キョン「そう、で済ませるな。この部屋には俺も
     いるんだぞ」

長門「それがどうかした?」

キョン「お前が漏らしたら、俺も困る」

長門「なぜ」

キョン「お前の排泄シーンを見たら、俺は動揺する。
     同じ部屋にいるんだから、臭いも俺の鼻に
     届いてしまう」

長門「それは瑣末な問題」

キョン「いやいや、漏らすくらいなら、大人しくトイレに
     行けばいいんだ。スカートが床に着くことなんか、
     漏らすことに比べれば瑣末な問題だ」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:22:34.21 ID:E+gLbBbQ0

長門「それは思いつかなかった」

キョン「だから思いつけってば。本にばかり集中してないで、
     こっちの問題にも集中しろ」

長門「しかし、その方法を取るには、もう手遅れ」

キョン「どうしてだ?」

長門「私が排泄を我慢できる時間は、残り一分五十一秒。
    トイレに辿り着いて排泄の準備をするのに要する
    時間は、二分十秒」

キョン「もういい! 分かった。この部屋の中でしろ!」

長門「だから私は、漏らすと言っている」

キョン「そうじゃない。漏らすんじゃなくて、せめてパンツを脱げ。
     そしてしゃがんで、何か容器の中に排泄するんだ」

長門「承諾した。では、早く用意して」

キョン「え。俺が用意するのか?」

長門「私は本を読む以外の行為はしたくない」

キョン「もしかして、パンツを下ろすのも、俺がしないといけないのか?」

長門「そういうことになる」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:28:17.86 ID:E+gLbBbQ0

俺は慌てて立ち上がり、部屋の中に、使えそうな
容器がないか探した。
緊急事態だ。
この際、何でもいい。

俺の目に止まったのは、いつも朝比奈さんが
お茶を淹れるのに使っているポットだった。

俺はポットの蓋を開け、中身を確認した。
お湯は入っていない。
もうこれを使うしかないと判断した。

俺は急いで、長門の座っている椅子の傍に、
蓋を開けたポットを置いた。

キョン「さあ、長門。ここに座れ」

長門「ここ、とはどこ?」

キョン「ここだよ、ここ!」

長門「位置を視認するには、ページから目を離す
    必要がある」

キョン「こっちだ!」

俺は長門の手を引っ張った。

そのときだった。
突然、長門のスカートに染みができ始めた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:35:09.23 ID:E+gLbBbQ0

その染みは、みるみるうちに大きくなる。
長門の足元に、水溜りができた。

長門「漏らした」

長門は本から目を離さずに言った。
どうやら、俺があたふたしているうちに、
二分十秒経過してしまったらしい。

キョン「だから言ったのに……」

長門「これで問題は解決した」

キョン「全然解決してない! どうするんだよ、これ」

長門「私はこのままでも構わない」

キョン「だから、お前がよくても俺が構うんだよ!
     ハルヒ達がやってきてこの光景を見たら、
     どうなると思う?」

長門「私が漏らしたという事実をありのままに
    受け入れるはず」

キョン「そんなわけないだろ! ハルヒの性格をよく考えろ。
     あれこれ難癖をつけて、俺のせいにするに決まっている」

ハルヒ「誰のせいにするって?」

いつの間にかドアが開いて、ハルヒが顔を出していた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:39:43.90 ID:E+gLbBbQ0

ハルヒ「何よこれ……!」

キョン「ハルヒ、違うんだ。誤解だ」

ハルヒ「何が違うのよ、この変態! トイレに行きたがっている
     有希を無理矢理押さえつけて、漏らさせたんでしょ!」

キョン「やっぱり誤解してるし!」

ハルヒ「キョンの変態! 変態! 亦及能心!」

キョン「いや、最後の台詞は、横書きだと意味不明だから……」

ハルヒ「誰か! 誰か来て! キョンが有希にひどいことを!」

キョン「やめんか! おい、長門からも何か説明してくれ!」

長門「私が自分の意思で漏らした」

キョン「ほら、長門もこう言ってるじゃないか」

ハルヒ「あんたが言わせてるんでしょ! 言葉攻めって奴?
     ますます変態ね!」

キョン「もう駄目だ……。何を言っても信じてもらえない」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:46:59.21 ID:E+gLbBbQ0

ハルヒは何度も俺を殴った後、長門の着替えを探すために
部室を飛び出していった。

またしても、俺と長門が二人きりになる。

キョン「ほら見ろ……」

長門「あなたを視認するには本から目を離す必要があるので、
    見ることができない」

キョン「もういいよ。とにかく、これで分かっただろ?
     俺やハルヒみたいな反応が普通なんだよ。
     普通の人は、他人にウンコやオシッコをしている
     ところを見られたくないと思うもんなんだよ」

長門「必ずしもそうとは限らない」

キョン「どうしてそんなことが言えるんだ」

長門「あなたはくしゃみを恥ずかしいと感じる?」

キョン「くしゃみ? 別に、恥ずかしくはないけど。
     まあ、鼻水とかを飛ばさないように、下を向いて、
     手かティッシュで鼻と口を押さえるのが礼儀だけど」

長門「あなたは誤解しているかもしれないが、くしゃみも
    『排泄』の一種。しかし、それを恥ずかしいと感じないのは、
    くしゃみは長時間我慢することができないから」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 20:54:47.50 ID:E+gLbBbQ0

キョン「言っていることがよく分からないんだが……」

長門「一般の人は、排泄=排便や排尿という認識を持っているらしいが、
    それは厳密には間違っている。排泄とは、生物が老廃物を
    体外遊離させる現象のこと。ただし、通常、呼吸や屁のような
    気体を排出することは排泄とは言わない。ある程度まとまった
    量の固体や液体を体外に排出することを、排泄という」

キョン「分かりにくい説明を、ありがとう」

長門「つまり、くしゃみも排泄の一種ということになるが、
    あなたはそれを恥ずかしいとは感じないらしい。
    これは矛盾している」

キョン「だって、ウンコやオシッコと違って、くしゃみはそんなに
     汚くないし」

長門「尿というのは、あなたが想像しているよりも、はるかに清潔。
    むしろ、尿よりも鼻水の方が雑菌が多いので不潔とも言える。
    それなのにくしゃみを恥ずかしく感じないのは、くしゃみは
    排便や排尿と違って、我慢することができないから」

キョン「つまり……こういうことか? もしも、ウンコやオシッコを
     我慢できないような世界になったら、ウンコやオシッコを
     人前で漏らしても恥ずかしいとは感じなくなるのか?」

長門「そう」

キョン「いくらなんでも、それはないだろ」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:02:00.64 ID:E+gLbBbQ0

長門「試してみる?」

キョン「試すって、どうやって」

長門「排泄を我慢できないように世界を再構築する」

キョン「やめろ!」

長門「なぜ」

キョン「そんなことになったら、みんなが困るだろ」

長門「あなたは自力で空を飛ぶことができないが、
    それを不便だと感じる?」

キョン「は?」

長門「自力で空を飛ぶことができないのを不便だと
    感じるかどうかを訊ねている」

キョン「別に不便じゃないけど……」

長門「それは、あなたが空を飛んだことがないから。
    そして、自力で空を飛ぶことのできる人間が
    周囲にいないから、不便だと感じることがない。
    排泄を我慢できなくなっても、世代交代し、
    排泄を我慢できたことのない人間が多数派になり、
    世界中の人間が排泄を我慢できなくなれば、
    不便だと感じることはなくなる」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:08:19.84 ID:E+gLbBbQ0

キョン「いやいやいや。排泄を我慢できた方が便利なのは
     事実だから、わざわざ不便な世界にする必要は
     ないだろ」

長門「しかし、あなたは私の説明を信じていない。
    私の説明が正しいと証明するには、そのように
    世界を再構築するしかない」

キョン「まあ、それも一理あるかもしれないけど――」

俺がさらに反論しようとしたとき、ハルヒが戻ってきた。

ハルヒ「あ! あんた、まだいたの!?」

俺を見るなり、ハルヒが殴りかかってきた。

ハルヒ「これ以上有希をいじめるのはやめなさい!
     早く帰らないと、警察に通報するわよ!」

ハルヒは本気のようだった。

俺は荷物を抱えて、慌てて部室を飛び出した。

長門との会話が気がかりだったが、まさか本当にそんな
理由で世界を再構築することはないだろうと高を括っていた。


その日の夜。
俺は、洪水の夢を見た。
目が覚めると、ベッドの中央に黄色い地図があった。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:14:40.39 ID:E+gLbBbQ0

これは何だ。
地図?

そうだ、地図だ。地図に違いない。

きっと俺は、地図の模様のシーツを使っていたんだ。
そんな記憶は全然ないけど、俺が学校に行っている間に、
母親がシーツを取り替えておいてくれたのだろう。

俺はシーツの黄色い部分に触った。

生温かかった。
というか、濡れていた。
というか、オシッコの臭いがした。

キョン「……まさかとは思うが、おねしょか?」

いやいやいやいやいやいや。
待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て。

俺は高校一年生だぞ。
おねしょをするなんて、あり得ない。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:23:55.65 ID:E+gLbBbQ0

キョン「あれ買って」

キョン「それはおねだり」

キョン「谷と谷に挟まれた山地の一番高い部分の連なり」

キョン「それは尾根」

キョン「フランス語でタンポポのこと」

キョン「それはタンポポのフランス語名pissenlitが、
     piss en lit(ベッドでおしっこ)から来ていること」

キョン「誠実な、を英語で言うと」

キョン「honest(オーネスト)」

キョン「一生の」

キョン「それはお願い」

キョン「じゃあ結局、おねしょって何なんだよ」

キョン「寝ているときにオシッコをしてしまうこと」

……もう、現実を受け入れて、楽になろう。

俺は高校一年生にしておねしょをしてしまった男なのだと。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:34:50.28 ID:E+gLbBbQ0

キョン「とりあえず……何をすればいいんだろ」

頭がぼうっとして、働かない。
目覚まし時計を見ると、午前三時だった。

どうやら、おねしょをした違和感が原因で目覚めたらしい。

昨日の長門との会話を思い出す。

排泄を我慢できないように世界を再構築する。

長門はそう言っていた。

その結果が、おねしょというわけだ。
尿意を感じはしたが、我慢できなかったため、
目覚めることなくオシッコをしてしまったのだろう。

ひどい世界になったものだ。
長門は恥ずかしくないと言っていたが、俺は充分に恥ずかしい。

キョン「まずは、着替えないとな……。いや、その前に、
     お風呂に入って身体を洗わないと」

俺はベッドから起き上がり、浴室に行った。
すると、深夜三時だと言うのに、誰かが入っていた。

洗濯物の置いてある場所に行くと、妹のパジャマが脱いであった。

妹のパジャマのズボンには、黄色い染みと茶色い染みができていた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:39:16.41 ID:E+gLbBbQ0

妹よ……。
お前もか。

確かに、漏らす仲間がいるというのは心強いが、
しかしやっぱり恥ずかしいことに変わりはない。

長門の説明は、間違っている。

俺はそう確信した。

こんな時間だが、長門のマンションに行こう。
そして長門を説得し、元の世界に戻してもらうのだ。

しかし、身体を洗わないと――。

いや、それは後回しでいい。
俺は妹のパジャマの隣に、自分の汚れたパジャマと
パンツを脱いで置くと、そのまま自分の部屋に行った。

ティッシュで水分を取り、パンツを穿く。

ああ、やっぱり清潔なパンツというのは、気持ちいいものだ。

その上にジーンズを穿き、上着を羽織って、俺は家の外に出た。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:44:25.01 ID:E+gLbBbQ0

自転車に乗り、長門のマンションを目指す。

十分ほど走っただろうか。

急に、便意を催してきた。
しかし、俺はいつもの感覚で、次にコンビニが見えたら
入ればいいや、と思った。

それが間違いだった。

我慢するつもりだったのに、オナラが出た。
自分の意思ではなかった。

俺は自転車を止めた。

ウンコが漏れてきた。

俺は肛門を必死に閉じようとしているのに、括約筋は一向に
働いてくれなかった。

呆然と立ち尽くす俺。
身体にフィットしたジーンズを穿いていたため、ウンコは
広範囲に広がっていた。

恐る恐る、手で尻に触れてみる。

内側に柔らかいものがある感触があった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:49:08.68 ID:E+gLbBbQ0

キョン「……ウンコを漏らした?」

深夜の三時過ぎに。
街中で。
自転車で家から十分の場所で。

どうしよう。
一度家に戻るか?
しかし、この状態で自転車に乗ることができるだろうか?
確実にウンコを尻で押しつぶすことになるぞ。

パンツごと脱いでしまえばいいのではないだろうか?
しかし、パンツを脱いだ後はどうする。
まさかフルチンで移動するわけにはいかない。
パンツを捨て、ジーンズを穿くのか?
しかし、直接ジーンズを穿いたら、デリケートな部分が
傷ついてしまう。

俺は途方に暮れた。

男の声「すみません」

突然、背後から話しかけられた。
振り返ると、そこには警察官が立っていた。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 21:56:00.29 ID:E+gLbBbQ0

よりによって、警官に声をかけられるとは。

深夜にウンコを漏らしながら自転車片手に立ち往生している
男子高校生。そんなことがバレたら、一生の不覚だ。

警察官「あー、最近、自転車の盗難が増えているんですけど、
     防犯登録の確認をお願いしてもいいですかね?」

警察官は二人組みだった。
逃げることはできない。

キョン「い、いいですよ」

俺は平静を装い、防犯登録の位置を手で示した。

警察官「お名前は?」

俺は本名を答えた。

別の警官「あなた若いですね。もしかして、高校生ですか?」

どうしよう。
せめて大学生だと言った方がいいだろうか。
しかし、後で嘘をついたことがバレたら、
何か問題になるかもしれない。

キョン「ははは。お世辞が上手ですね」

俺は、とりあえず、否定も肯定もせずに、適当なことを言って
お茶を濁した。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 22:23:30.81 ID:E+gLbBbQ0

警官「それで、高校生なんですか?」

警官はしつこく尋ねてくる。
どう誤魔化そうか考えた、そのときだった。

警官が、突然前かがみになった。

別の警官「どうしたんですか?」

警官「いや……」

強面でがっしりした体格の警官は、
股間を押さえていた。

しかし、そんな努力もむなしく、股間に染みが
できているのが、夜目にもはっきりと見えた。

別の警官「先輩、まさか――」

警官の足元には、水溜りができていた。
オシッコの臭いが、俺の鼻まで届く。

警官「きみは、もういい。行きなさい」

キョン「でも、防犯登録は?」

警官「きみは信頼できる人間みたいだ。だから、
    防犯登録の確認はしない。早く行きなさい」

別の警官「先輩!」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 22:29:26.40 ID:E+gLbBbQ0

俺も尻にウンコを抱えた身の上だ。
これ幸いと、自転車を押し、警官達から逃げ出した。

あの警官達のおかげで、一つ学んだことがある。
それは、漏らすのならオシッコよりもウンコの方が目立たない
ということだ。
精神的なダメージはウンコ>オシッコなのだが、
他人にバレる確率は、ウンコ<オシッコなのである。

オシッコが液体であり、ウンコが柔らかいとはいえ固体である
以上、当然の結果だった。

……って、俺は何を解説しているのだろう。

そんなこんなで、苦労して長門のマンションに辿り着いた。

自転車を駐輪場に止め、オートロックを長門に開けてもらう。

俺は他の住人に会わないように、急いで長門の部屋に行った。

キョン「長門、どうしてくれるんだ!」

俺は長門の顔を見るなり、開口一番に怒鳴った。

長門「何?」

キョン「お前のせいで、お気に入りのジーンズが二度と穿けなく
     なっちゃったじゃないか!」

長門「そっちか」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/23(金) 22:35:14.77 ID:E+gLbBbQ0

キョン「とにかく、今すぐに元の世界に戻せ!」

長門「それはできない」

キョン「何でだよ」

長門「あなたはまだ納得していない。私は、
    『排泄を我慢できない世界になれば排泄を
    恥ずかしがる人間はいなくなる』という命題を
    証明するために、この世界を構築した。
    しかし、あなたはまだ納得していない」

キョン「できるわけないだろ! 恥ずかしいものは、
     恥ずかしいんだ! 今だって、尻の間に
     ウンコが挟まってる状態でお前と話しているのが
     どれだけ恥ずかしいか想像できないのか!」

長門「そのことなら安心して欲しい」

キョン「何を安心するんだ?」

長門「私も臀部の間に排泄物が挟まった状態で
    あなたと会話している」

キョン「え」

長門「しかし、私は少しも恥ずかしくない。時間が経てば、
    あなたも私と同じ境地に達する」



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