朝倉「ほら、キョン君。あーん。」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:05:14.40 ID:fZ1gW90u0

一昨日「キョン朝倉SS明日書くぜ」
みたいなこと言っときながらかけませんでしたごめん
誰も覚えていませんように

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:11:42.14 ID:fZ1gW90u0

空は暗く沈んでいる。
今にも落ちてきそうな灰色の空。
心まで沈みそうな雨の中、一人歩く帰り道。
梅雨真っ只中。

降り頻る雨が傘をリズム良く叩く。
ここ数日こんな調子で気も滅入ってしまいそうだ。

しかし、今の俺は舞い上がっている。
なんと今日の放課後、告白されてしまったのだ。

相手はあの朝倉涼子。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:16:44.48 ID:fZ1gW90u0

即興でやってるから粗だらけになりそうだけど

はじまりは朝倉との再開。
両親の都合で日本に戻って来たという設定で
また俺達のクラスに転入してきた。

真っ先に話し掛けられたときはまた襲われるのではと腰を抜かしたが、そんなことは無く。
目の前にあったのは彼女の眩しい笑顔だけ。

長門の話によればもう襲う心配はないとのこと。
万一襲うことになっても自動的に消去されるそうだ。

程なくハルヒに目を付けられた彼女はSOS団に強制参加をさせられることに。

それから朝倉は律儀に毎日団活に参加している。
持ち前の愛想の良さで古泉や朝比奈さんとも上手くやっているようだ。
そんなこんなで俺の日常は脅かされることなく続き、漸く朝倉に慣れた日のこと。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:20:23.53 ID:fZ1gW90u0

下駄箱に一通の手紙が。
既視感に襲われた。
内容も以前と同じもの。

しかし朝倉はいつもと変わらぬ様子。
俺とは距離を取ったりせずに話し掛けてくる。

そんな彼女に話を切り出すことも出来ず。

放課後、凄まじい不安に襲われながらも指定の教室へと足を踏み入れる。
昼休み長門に何かあったら頼むとお願いしてきた。
長門だけが頼みの綱だ。

中には案の定、朝倉涼子が。
自然と身構えてしまう。
いや、身構えたところでどうにかなる訳などないが。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:24:16.19 ID:fZ1gW90u0

「何もしないわ、安心して。」

沈黙を破ったのは少し困ったように笑う朝倉の一言。
その笑顔に毒気を抜かれ
身体から一気に力が抜ける。

そんな俺に笑みを湛えたまま一歩一歩近づいてくる朝倉。

油断したと気付く時にはいつの間にか零距離に。
完全に射程に入っている。
強張る俺の前に立ち、深呼吸する彼女。

そして決意したような表情で朝倉は言った。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:29:41.10 ID:fZ1gW90u0


「…好きです。私と付き合って下さい。」

何の冗談かと思った。
ナイフで突き合うのかとさえ考えた。
しかしながら眼前の返事を不安げに待つ彼女の顔を見ると、そんな考えは霧散した。

「…。」

俺の答えは…保留。
本当に情けない奴である。
朝倉の仕草にドキッとしてしまったのは事実だが、そんな中途半端な気持ちでは
付き合えないというのも事実。

そんな曖昧な返事で終わった朝倉の告白。

「…ちょっとは望みある…かな?…キョン君、私待ってるからね。」

不安を押し殺し笑う朝倉の笑顔が頭から離れなかった。

…とまあこんなことがあった訳だ。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:34:08.39 ID:fZ1gW90u0

明くる日。

一晩足りない頭をフル稼働させて出した結論は…OK。

谷口に相談してみた結果こういうことになった。
奴が言うには俺もそいつのことが好きらしい。
確かに帰宅してからは上の空で、朝倉のことで頭が一杯だった。


いつものように教室に入る。

「おはよう、キョン君。」

これも好意の表れだったのだろうか。
いつも教室に入って誰よりも早く話し掛けてきていた朝倉。
今更ながら気付いた。

首を傾げる彼女に挨拶を返して席に着く。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:38:38.87 ID:fZ1gW90u0

授業は全く頭に入らなかった。
時折ハルヒがなんか言っていたが…覚えていない。
放課後。昨日と同じ場所へ向かう。

そこには既に朝倉の姿。
こちらに背を向けて立っている。
僅かに震えるその背中はいつもより小さく見えた。

「…キョン君。結論出た?」

振り向かない朝倉にああ、と返事をする。
こちらを見ないのは顔を見られたくないからだろうか。

「じゃ…じゃあ…言って…?」

その言葉から一拍置いて、彼女に向かい床を踏み締めながら歩き出す。
近付く程に、朝倉の身体が強張るのが見てとれる。

そして。
距離僅か十センチ。
お互いの呼吸が聞き取れるぐらいの距離。

「俺の気持ちは…こうだ。」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:44:27.53 ID:fZ1gW90u0

全身全霊を込め、傍らにあった椅子で彼女の頭を殴り付ける。
ぐしゃっと何かが潰れる音。
確かな手ごたえ。
軽い彼女の身体は周りの机を巻き込みながら吹き飛んで、倒れ込む。
たった一撃だったが、致命傷だったらしくピクリとも動かない。
椅子を引き摺りながら彼女の側へ。

「…ど…う、して…?」

そんなことを呟く朝倉。
小さく溜息を吐いて腹を踏みつけてやる。何度も何度も。
乾いた呻き声と共に口から血が溢れ出す。

「まあ…確かに好きなのかもしれない。
だが、一度殺されかけた相手を許せる訳ないだろう。」

「……そう…よね、都合良すぎるわよね……でも…。」

顔面血塗れで息も絶え絶えの様子の彼女。
分かってくれて何より。それじゃ、さよならだ。
ゆっくりと目を伏せた朝倉の頭目掛けて椅子を振り下ろした。

「…本当に…貴方が好きだったのよ…。」

彼女の最期の言葉は、聞こえなかった。
雨の音がやけに大きく感じられた。

BAD END
悪ノリごめん。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:45:09.13 ID:fZ1gW90u0

そっと彼女の身体を抱き寄せる。
強張っていた朝倉の身体から力が抜ける。

「…期待しても、いいの…?」

「ああ、好きだ。俺で良ければ…付き合ってくれ。」

優しく申し出る。
腕の中の朝倉が俺の手にそっと手を重ねる。

「…うん、宜しくお願いします。」

こうして、俺達は付き合うこととなった。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:47:16.79 ID:fZ1gW90u0

翌日、傘を片手に登校すべく家を出ると。

「おはよう、キョン君。」

なんと朝倉の姿。
それまであった眠気や倦怠感といったものは全て吹き飛んでしまった。

「待ってたのか…?」

「ううん、今来たところ。」

そりゃ良かった。
そうか、と呟いて歩き出す。
数歩歩いたところで後ろを歩く彼女にギュッと手を掴まれる。
冷たい手だった。
…その冷えきった手に朝倉がここで待っていたことを確信した。
と意識を目の前の彼女に戻す。
少し恥ずかしそうに俯いている。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:51:40.97 ID:fZ1gW90u0

「…あ、ああ。そうか。」

恋人同士なんだ。
手を繋ぎたいと朝倉は主張しているのだろう。
俺の手を掴む彼女の手を握り返す。
…明日からはもう少し早く出よう。
そんなことを誓い、満足げに微笑む朝倉と手を繋いで俺は学校へ向かうのだった。


「…キョン、てめぇ!」

学校。
教室のドアを開け、先に朝倉を通すと真っ先に絡んでくる輩が。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:53:04.25 ID:fZ1gW90u0

            ,. - ── - 、
        r'つ)∠───    ヽ
       〆⌒  ̄ ̄ ̄ \__r 、  \
      ,.イ      ,イ    \ヽ,\rv-,
     ヾイ    /{ { ヽ、ト、  \Y <ノノ\
     {  .ト{\ヽ',  メ __\  } ⌒ヽ }へ
      ゝ  |"ひ)  \  イびゞ \ ヽ- 、ノ   // >=
      ノ  ト、"´,.     ー ノ ///\/ /    \
     /.  {   ゝ     /  レ//  } Y´      \
     {   ヽ  ヽ⌒>  /    レ´TTア⌒>、_    \
     V{   \ └ ´  / ,.イ/  /ll |   /≦__    }
       V{   >ー┬|/  ! ,.イノ || |  /   ̄ ̄ ̄  /
        リヽイ|   /:| l _|' '´  || |  |     _/
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23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:53:49.69 ID:fZ1gW90u0

谷口…何の用だろうか。
かなり怒っているようだ。
しかし、突っ掛かられるようなことは何も思い当たらない。

「おはようさん、どうした?」

「ああ、おはようさん。…じゃねえっ!何朝倉涼子と一緒に登校してきてんだよ!」

そのことか。ちらりと先に入った朝倉に視線を移す。
…あちらは女子に捕まっている。
状況はさしてこちらと変わらないようだ。
説明に追われる彼女と目が合う。

にこりと微笑む朝倉に不意を突かれつつも笑い返しておく。

「…まさか一昨日お前に告白してきた奴って。」

「そのまさか。朝倉だ。」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 00:57:21.61 ID:fZ1gW90u0

その一言で硬直した谷口の横をすり抜けて席に着く。

「…長い一日になりそうだ。」

自然と溜息が出る。
谷口が知っているということは古泉や長門も知っているということ。
いや…それよりも厄介な奴がいる。
後ろの奴だ。
これから三度の休み時間の間、ハルヒへの説明を考えるのであった。
だが幸いにも後ろの席のそいつとは話すことはなかった。

「キョン君。お昼一緒に食べよう?」

昼休みに入り弁当の準備をしていると、満面の笑みの朝倉。

望むところだと言おうとしたその時。
クラスが静まりかえり、皆の視線がこちらに釘付けになった。
くそ、恥ずかしいなこれは。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:01:42.01 ID:fZ1gW90u0

「ふーん、何を浮わついているのかと思ったら…そういうことだったのね。」

静寂を裂いたのはガタンという椅子の音とハルヒの声。
そしてそのまま鞄を乱暴に掴み進行方向にいた谷口を突き飛ばして教室を出ていってしまう。

「…ハルヒ。」

「話せば分かってくれるわよ。凉宮さんも。」

そうだな…。
小さく頷いて今は朝倉と昼食を摂ることにした。
明日から弁当を作ってきてくれるそうな。
本当彼氏冥利に尽きるというものだ。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:03:47.53 ID:fZ1gW90u0

そして放課後。
二人で文芸部室へ向かう。
案の定中にハルヒの姿はなく、無機質な瞳だけがこちらを射抜く。

「長門さんだけ?他のみんなは?」

「朝比奈みくるは用事、古泉一樹はバイトとのこと。
凉宮ハルヒはここには来ていない。」

抑揚のない声で淡々と説明する窓辺の彼女。
…他の団員がいないのは偶々であると思いたい。

「そう、じゃあ帰りましょ。キョン君、長門さんも。」

長門が話し終えるなり朝倉がパッと表情を変えて、微笑みながら長門の手を引いて強引に連行してくる。



指痛いよう


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:09:26.96 ID:fZ1gW90u0

「いいじゃない、ね?」

その笑顔に何も言えなくなる。
いや、これといって言いたいことはないんだが。

…結局長門と三人歩いて帰ることに。
右から長門、朝倉、俺の順。

あろうことか皆で手を繋いで。
朝倉は終始ご機嫌で、鼻歌混じりに大きく手を振って歩いていた。
いつの間にかそんな彼女に釣られて笑顔になっていたが、長門に観察されていた為少し恥ずかしくなり顔を背けた。

まだこの時間は下校する生徒は多い。
また谷口に粘着されそうだ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:12:22.03 ID:fZ1gW90u0

明日から弁当は要らないと母親に告げると、これでもかというぐらいに家族から茶化された。

夜、遅くまでニヤニヤしながら朝倉とメールをやりとりした明くる日。
普段よりも早く家を出る。

本日は晴天なり。
暖かい日差しが俺を包み込む。
梅雨も真っ青の晴れた陽気。
何処までも澄み渡る空。
俺の心もまた同様だった。

「朝倉は…まだみたいだな。」

家の前には誰も居ない。
三十分も早く出たんだ。当然だろうな。
今度はこちらから出向いて驚かせてやるとするか。

しかし。俺の小さな目論見は呆気なく打ち砕かれることになる。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:16:12.26 ID:fZ1gW90u0

「あら、キョン君。おはよう。今日は早いのね。」

途中でこちらに向かっていた朝倉と出会してしまった。

「あ、ああ…おはよう。朝倉。」

何処かぎこちなく挨拶を返す。
こちらが不意を突かれる結果になってしまった。

「…少し変よ?どうしたの?」

驚かせようと思って逆に虚を突かれたなんて情けなくて言えるはずも無く。
何でもない、と強がって昨日同様彼女と手を繋いで学校へ。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:20:12.72 ID:fZ1gW90u0

場所は学校に移り、時刻は昼休み。
待ちに待った朝倉の弁当。
朝から不機嫌MAXのハルヒは谷口を蹴散らしすぐに出ていってしまった。

「…キョーンくん。屋上行こう?」

そんな谷口を哀れむ目で見ていると、いつの間にか側にいた朝倉が声を掛けてくる。

「わかった、行こうか。」

流石にここで弁当を広げるのは恥ずかしいのだろう。
そう勝手に解釈して席を立つ。
谷口の絡み付くような視線が教室を出るまで離れなかった。

「えっと…はい、これお弁当。」

屋上に出て、息を吸う。
校内の締め切った空気とは違う。
俺達の他にも生徒の姿がちらほら。
皆それぞれ昼食を楽しんでいるようだ。
そんなことをしていると既に腰を降ろしていた朝倉から弁当が差し出される。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:22:06.97 ID:fZ1gW90u0

「おう、ありがとな。」

礼を言って可愛らしいチーフで包まれた弁当を受けとる。

「キョン君の口に合うかどうかわからないけど…。」

「お前が作ったんだ。旨くない訳がない。」

そう言ったときの朝倉の笑顔は最高に綺麗だった。
もしこの場にカメラがあったなら撮影しまくっていたことだろう。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:24:22.73 ID:fZ1gW90u0

俺の予想は的中。
朝倉の料理は不味いと言えるようなものでは無かった。
滅茶苦茶旨かった。
途中朝倉との食べさせ合いがとてつもなく恥ずかしかったが。

「…はい、キョン君。お茶。」

食後。
小さなカップにお茶を注いで渡してくれる朝倉。
本当至れり尽くせりだ。

「何から何までありがとな。」

「ふふ、気にしないで。私が好きでやってることだから。」

不意に抱き締めたい衝動に駈られた。
…しかし、ここは学校。
人目が憚られる。
そんな葛藤をしていると

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:27:11.12 ID:fZ1gW90u0

「あら。キョン君頬っぺたにご飯粒ついてるわよ。」

不意に。
朝倉が顔を近付けて来て…俺の頬に付いていたご飯粒を口で取った。

「あ、ああああ朝倉っ!?」

「…な、なぁに?そんなに動揺しちゃって。」

頬を押さえて僅かに後ろに下がる俺を見てくすくすと笑う。
しかししてやったりという様子の彼女も顔を赤くしていて。
ああもう…こうなりゃ自棄だ。どうにでもなれ。

「キョン君…んっ…!?」

気が付けば俺は周りの様子など顧みず朝倉の唇を奪っていた。
今はまだ、重ね合わせるだけ。
時間にして何秒だっただろう。
朝倉にどんどんと胸を叩かれ唇を離す。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:31:06.78 ID:fZ1gW90u0

「ぷ…はぁっ…。はあっ…キョン君、長過ぎよ…。」

ぺたりと地面に両手をついて肩で息をする彼女。
そして今更ながら自分の行動が如何に恥ずかしい行為かを思い知る。
しかしもう遅い。
悔やむのは止めた。

「…鼻で息すればいいんじゃないか?」

「そ、そんなことしたらキョン君に鼻息聞かれちゃうじゃない…。」

思い付いたことを一つ、体勢を元に戻した朝倉に投げ掛ける。
そういえばそうかという返答を読んでいたのだが、返ってきた言葉は実に可愛ら
しいものだった。

「お前は本当に可愛いな…。」

抱き締める。
それ以上に恥ずかしいことをしたんだ。もう周りの奴等なんて知るか。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:36:05.67 ID:fZ1gW90u0

「き、キョン君…恥ずかしいわ…。」

「さっきもっと恥ずかしいことをしたんだ。もう恥ずかしいことなんかないぞ。」

最初こそ戸惑っていたがそう囁くと優しく抱き締め返してくる朝倉。
なんて幸せなんだろう。

「…そうね。…さっきのキス、嬉しかったわ…。」

彼女の言葉を受けて抱き締める腕に力を込める。
しかしそんな甘い時間は授業開始のチャイムにすぐさまぶち壊されてしまうのであった。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:40:21.25 ID:fZ1gW90u0

本日の授業も終わり、非常に清々しい気分で放課後を迎えた。
ハルヒは帰りの挨拶とほぼ同時に逃げるように出ていってしまった。

「…明日凉宮さんと話してみるわ。」

俺の意識を引き戻したのは朝倉のそんな一言。
俺の視線が向けられると小さく苦笑する彼女。

「そんな顔をしなくても別に何もしないわよ?ただお話するだけ。
きっと凉宮さんも分かってくれるわ。」

…お見通しか。今度はこちらが苦笑する番になった。
あいつが一体全体何が気に入らないのかわからないがこのままではいけないことぐらいはわかる。

「とにかく明日…ね?帰りましょう、キョン君。」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:43:48.99 ID:fZ1gW90u0

パチッとウインクする朝倉に小さく相槌を打つと、差し出された柔らかな手を取って教室を出た。
外に出て、暖かな光に目を細める。
さて。明日も晴れてくれるといいが。

思い出すは昼食の甘い一時。
朝倉に手を引かれながらそんなことばかりを考えていた。



翌日、窓を叩く雨の音で目が覚める。
時刻は七時を回ったところ。早すぎず遅すぎず、中々いい時刻だ。
気だるい身体を起こして腕を伸ばしながら欠伸を一つ。
先に制服を着るかとクローゼットに手を差し出したところで背後から大きな音が。

…目覚ましのアラームだった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:48:57.16 ID:fZ1gW90u0

顔を洗い、朝食を手早く済ませて軽い足取りで外に出る。

「凄い降りだな。朝倉は大丈夫だろうか。」

まだ来てないみたいだし…

「呼んだ?」
「ぬおっ!?」

ビニール傘越しに鉛色の空を見上げていると突然すぐ隣から聞こえた声に思わず肩がビクッと震える。
い、息が耳にかかったぞ。

「い…いたのか…。」

「ええ、でも気にしないでね。さっき来たばかりだから。」

「そうか。…今の不意討ちは心臓に良くないぞ。」

一歩退いた俺を見ながら笑いを堪える朝倉をジト目で見つめる。
僅かに表情が暗いのは気のせいだろうか。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:52:11.30 ID:fZ1gW90u0

「ふふふ。驚いたキョン君可愛かったわよ?」

悪びれる様子もなく口元に手を当てて言う朝倉。
先程まで差していた影は見えなくなっていて、変わらぬ笑みを浮かべて片手でゆっくり傘を回している。
俺の勘違いだったようだ。

「もうしないでくれると有り難いんだがな。
……ほら、濡れちまうぞ。早く行こうぜ。」

肩を落としてわざとらしく溜め息を吐いて、ぐいっと朝倉の鞄を持つ腕を引く。

「あ、うん…。」

数秒遅れて朝倉。
少し腕に力が入った為、何かあったのかと思い手を放して振り返る。

「朝倉…どうした?」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 01:56:51.58 ID:fZ1gW90u0

「えっとね…その…。傘…なんだけど…。」

何事かと問うと、もじもじと恥じらいながら言い淀む彼女。
…傘?…傘なら俺もお前も持っているだろう?
いまいち理解出来ずに首を傾げる。

「…すまん。よくわからん。」

「…うう…だ、だからっ、私もキョン君の傘に入っていいかなって…聞きたかったの…!」

そう言ったかと思うと自分の傘を閉じ、いきなり俺の腕に飛び付いてくる。
あまりに突然の行動に身体がぐらついたが、なんとか持ち直す。

「…そういうことな。そういうことなら早く言ってくれりゃ良かったのに。」

「だ、だって…恥ずかしいじゃない…。」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:00:37.87 ID:fZ1gW90u0

ギュッと腕に絡める手に力が込められる。
最初は何か茶化してやろうかと思ったが、朝倉の嬉しそうな顔を見てたらそんな気はいつの間にか消え失せていた。

二人寄り添いながら再び歩き出す。

「朝倉、もっとこっち寄れ。肩が濡れてるぞ。」

「ん?こうかしら…?」

「ちょっ、おまっ!胸っ、胸がっ!」

途中、朝倉の制服の肩に傘から滴った雨水が当たっているのを見つけて少しこちらに寄るように言ったが、すぐに後悔。
…いや、別に嫌な訳ではなく…
むしろご馳走様というかありがとうございますというか。
腕に柔らかな感触、言うまでもなく…アレだ。
分かりやすく取り乱した俺を見て笑い出す彼女。
ああ、言うんじゃなかった。

「ん?胸がどうかしたのかしら?」

その後学校に着くまで味をしめた朝倉に終始遊ばれることとなった。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:05:27.99 ID:fZ1gW90u0

「凉宮さん、放課後ちょっとお話したいんだけど…いいかしら?」

教室に入るなり真っ先にハルヒの元へ向かい、放課後の約束を取り付ける朝倉。
あの不機嫌ハルヒの近付くなオーラをものともしないとは…流石と言うべきか。
ハルヒのほうも断る理由が思い付かなかったらしく、頷いて「いいわよ」とだけ言った。

なんだか近寄りづらく感じ、谷口達と話しながらその様子を遠くから窺っていた俺に対して笑顔とウインクを送ってくる。
もう終わったと言いたいのか安心してと言いたいのか。
…どちらにせよもう座っても良さそうだ。

何故か国木田に首を絞められている谷口に首を絞められながら俺は、朝倉との会話を終えると同時に机に伏せてしまったハルヒを見つめていた。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:09:41.48 ID:fZ1gW90u0

昼休み。
今日もまたチャイムがなってすぐに朝倉が席を訪れた。

「さ、キョン君。お昼ご飯食べましょう?」

前の席の椅子を借りて俺の机に二人分の弁当を広げる。
と、同時にクラス全体から視線が突き刺さるのが分かる。
昨日は屋上だったが今日は教室。
これはきついが…こういうのは基本最初だけだ。
皆すぐに慣れるだろう。てか慣れてくれ。

「ほら、キョン君。あーん。」

「おう、あーん。」

ハッ…!!
反射的に口を開けてしまったが…すごいことをしているのではないか?
恐る恐る横を見ると、これでもかと目を見開いてこちらをガン見する谷口と目があった。
眼力がすげえ、すげえよお前。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:15:33.16 ID:fZ1gW90u0

「余所見はダーメ。」

そんな声が聞こえたかと思うと突然、開いたままの口に玉子焼きを押し込まれる。

「んぐっ…う……お、旨い。流石だな、朝倉。」

何も言わずにただ微笑む朝倉。咀嚼を終えた俺も自然に頬が綻ぶ。

「良かったぁ…。」

そんな朝倉の可愛らしい表情に見事にK.Oされた。

「よし、どんどん食わせてくれ。」

「うんっ。」

もう周囲の視線を気にするのは止め、俺達は昼休みが終わるまでいちゃついていた。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:18:32.30 ID:fZ1gW90u0

そして放課後。
帰りのHRが終わるとすぐに出ていく朝倉とハルヒ。
終わるまで俺は部室で待つことにした。

十分か、二十分か。
とにかく朝倉には部室にいると伝えてある。
待っていればそのうち来るだろう。



文芸部室のドアをノックして何秒か待った後に開ける。
朝比奈さんは来ていないのだろうか。
しかし…ほんの数日振りだというのに随分と長い間来ていないような気がする。
それだけ朝倉と過ごす日々が充実していたということだろうか。
中には椅子に腰掛けハードカバーを捲る小さな少女の姿だけ。

「おっす、久し振りだな。長門。」

俺の声に広げていた本を閉じてゆっくりとこちらへと目を向けてくる。
長門のいつもと違う非常に緩慢なその動作が何故か不気味に感じた。

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:24:14.73 ID:fZ1gW90u0

「な…長門…?」

そう問い掛けるのが精一杯だった。
それ以上はまるで全身が凍ってしまったように動かない。
こちらを見つめる無機質な目が今はとても怖い。

「状況は好ましくない。この展開は予想外だった。」

「…?」

首を僅かに傾ける。
長門の言葉の意味が分からない。
何が好ましくない?
何が予想外だったんだ?

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:27:55.96 ID:fZ1gW90u0

「…その前に伝えておく。凉宮ハルヒは貴方に恋愛感情を抱いている。」

「…ハルヒが…?」

…成る程。
それで朝倉と付き合ってから今までのあいつの不可解な態度の辻褄が合う。

「本題に移る。貴方と朝倉涼子のこと。」

俺とあいつの…?
暑くもないのに汗が一筋こめかみから輪郭に沿って流れる。
これ以上聞いてはいけないと本能が警鐘を鳴らす。


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:31:01.15 ID:fZ1gW90u0

「朝倉涼子は鍵である貴方に好意を持つようにプログラムされていた。
暴走しないように。尚、これは朝倉涼子にも伝えてある。
くれぐれも観察対象を刺激しないようにとも。」

「なんだって…!?」

「貴方が朝倉涼子とこのまま交際を続けていては危険。」

その言葉に全身から力が抜けるのが分かる。
…今までのあいつの行動は全て決まっていて…それがハルヒを刺激していたって訳か。
要は世界が危ないから別れろと言うわけだ。
…今朝の朝倉の表情の陰りの訳が今になって分かった。
側まで駆け寄り、長門の肩を強く掴む。
いつの間にか身体は動かせるようになっていた。

「世界がヤバイから別れろってかっ…!?ふざけるな…!」

長門の肩を揺らしながら乱暴に問い掛ける。
もしも朝倉の行動がプログラムされていた行動で。
俺達がとても危険な行動だとしても。
彼女が好きだ。
ハルヒに気を遣えだと?
んなもん知るか。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:34:58.03 ID:fZ1gW90u0

「残念だが今はそれが最善。閉鎖空間は既に機関が対処出来ないほどに増大している。
凉宮ハルヒの精神の安定を急がなくてはいけない。」

「…くそっ!!」

なんで。
なんで俺なんだ。
長門の肩から手を放して踵を返し、文芸部室を飛び出して朝倉の姿を捜しに。

「…選択肢など有りはしないのに。」

最後の長門の言葉は俺の耳に届かなかった。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:40:13.00 ID:fZ1gW90u0

文芸部室を飛び出したものの、朝倉の居場所などしる由もない。
くそっ…場所を聞いておくべきだったか。
手早く朝倉にメールを打って送信すると、取り敢えず彼女が学校の中か外にいるかを確認するべく下駄箱へ。

「靴は…!?」

朝倉の靴の有無を確認する。
…ない。
素早く靴を履き替えて傘もささずに外へ飛び出す。

「…先ずはマンションだ…!」

傘をさして歩く人々の間を抜けていく。
前へ足を出す度に跳ねる水滴がスラックスの裾に染み込み、靴下を通して肌に。
とても不快だ。
舌打ちを一つ、顔に張り付く髪を手で払って前へ、前へ。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:41:55.28 ID:fZ1gW90u0

「…不在だと…?朝倉、何処にいるんだ…!」

マンションに到着。大家に聞いてみたがまだ朝倉は帰っていないらしい。
全身びしょ濡れで大家に少し暖まっていくよう言われたが、今はそんな暇はない。
メールも応答なし。
このまま放って置いたら朝倉が消えてしまうような。
そんな気がしてならなかった。

再び雨の中へ。
先程よりも強くなっているそれ。
注意していないと見落としてしまうくらいに霞む視界。

「…何処だ…?」


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:46:02.38 ID:fZ1gW90u0

取り敢えず俺の家へ向かいながら朝倉が行きそうなところを挙げてみようとする
…が、分からない。
俺はまだあいつのこと全然知らなかったんだなと、自虐的に笑う。

「…くそっ……ん?」

顔を打ち付ける雨風を腕で防ぎながらふと視線を移した公園。
誰もいるはずのないそこに、人影を見つけた。

近付いてみる。
進むにつれて次第にはっきりしていくその人物は。

「朝倉ーっ!!」

朝倉涼子その人だった。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:47:13.78 ID:fZ1gW90u0

「…どうしたのキョン君。びしょ濡れじゃない…。」

「…はあっ、はあっ…そりゃお互い様だ。」

ブランコに揺られている朝倉に駆け寄る。
いつもは明るく力に満ち溢れていた彼女がとても儚く見えた。

「なんで来たの…?私のこと…聞いたでしょ?」

「…ああ、俺に好意を抱くようにプログラムされてたとかってやつか?」

彼女の表情は…重く、暗く、悲しく。終始俯いたまま。
雨が朝倉の心を表すかのように激しさを増す。

「…それなら、どうして…?」


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:47:54.15 ID:fZ1gW90u0

ごめんねいっぱいいっぱいなんだ

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:49:05.47 ID:fZ1gW90u0

「んなもん…きっかけに過ぎないだろ?」

地面に膝をついて彼女の肩を掴み、ゆっくりと言い聞かせるように。
もうどうせずぶ濡れだ。
構うことはない。
次第に上がってきた朝倉の瞳がこちらを捉える。

「始まりなんてどうでもいい。大事なのは今だ。
俺はお前が好き。お前は俺が好き。
それで充分じゃないか。
最初こそそうだったかもしれないが…俺に告白したのは間違いなく、お前の意志だった。そうだろ?」

「っ…!…そう、そうね…。」

見つめ合い、僅かに触れるだけの口付けを。
そしてにこりと微笑んだ。
唇を触れ終える頃にはもう先程までの悲しげな表情は既になく。
そこにあるのは俺の知っている彼女だった。
今更少し気恥ずかしくなって外方を向きながら手を差し伸べる。

「…ほら、帰るぞ。」

「うん…。」

嬉しそうに俺の手を取る朝倉。
柔らかな彼女の手の感触を感じるには些か冷えすぎたようだ。
感覚のない手で同じくおよそ感覚などないであろう冷えた手を引いて、俺の家へ。


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:50:51.86 ID:fZ1gW90u0

そこから無事に帰宅。

母の出してくれたホットミルクを飲む朝倉の傍らで何故か俺は怒られた。
女の子に無理をさせるなんてとかなんとか。
正直何も耳に入っていなかった。
頭の中は朝倉のことだけ。表情なんて見れたものじゃなかったと思う。
しかし。
不意に聞こえた笑い声に、そちらを見ると。
朝倉が笑っていた。
俺同様俺達の行く末を知っているはずのこいつが。
そんな彼女が笑っているのにどうして俺が笑えない。
悪戯坊主のように笑う。
随分ぎこちなかったとは思うが。
コツンと頭を小突かれて再び笑いが起こる。

彼女が笑うなら…俺も最後まで笑っていよう。
何がまっていようとも。どんな結末になろうとも。
笑っていよう。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:52:13.53 ID:fZ1gW90u0

その後、夕食を共にした朝倉は俺の部屋に泊まることに。
今回だけと特別に許可してくれた両親に感謝。

その朝倉は今入浴中。
俺は既にシャワーだけ済ませた。
俺が上がるやいなや湯を張り始めたのだ。母が。
息子をなんだと思ってるんだなどと一人でぶつくさ言いながらベッドに寝転ぶ。

そんなことを考えていると不意にドアが開く。

「お邪魔します…。」

そこには母のパジャマを着て枕を抱えた朝倉の姿。
長いと思ったら髪を乾かしていたらしい。

「どうぞ。狭苦しい部屋だがな。……そうだ、朝倉。一緒に写真撮らないか?」

ベッドから身体を起こして彼女を招き入れ、さも今思い付いたように提案する。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:53:49.40 ID:fZ1gW90u0

「写真?…いいわよ。」

その返事に満足げに笑い、朝倉の隣に並んで携帯のカメラで撮影する。

「あっ…瞬きしちゃった…。ね、ねぇ、撮り直さない?」

「ありのままの朝倉がいい。だからこのままでいい。」

携帯を取られる前にさっさとポケットに仕舞い込む。
すると不満げに頬を膨らませる朝倉。

「…ふぅん…なら、物色して恥ずかしいものを掘り出してあげるわ。」

悪意が含まれている少し意地の悪い笑みを浮かべてキョロキョロと部屋を物色しだす朝倉。
悪いが何もないぞ、こら。ベッドの下はやめなさい。何もないからな。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:55:05.63 ID:fZ1gW90u0

「こら、物色するな。」

「あら、何か発見。……まあ。」

俺の制止虚しくベッドの下から引きずり出されたのはポニーテールの美女が表紙を飾る成人指定の雑誌。
うわああああ。よりにもよってそれかああああ。
滅茶苦茶頭が痛い。

「ベタなところに……って…うわ、結構過激ね。」

「よ、読まなくてよろしい。」

そのままパラパラとページを捲る朝倉。
これ以上辱しめを受ける前に彼女の手からそれを引ったくる。


「…ね。私と…したい?」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:56:36.29 ID:fZ1gW90u0

暫く沈黙していたと思っていた朝倉の突拍子もない発言にブッと息を吹き出す。
何を言ってるのか…まだ俺達には早いだろう。

「まだ早いんじゃな…っ!?」

「ん…っ…うぅっ…。」

否定しようとした俺の口を唇で塞がれる。
なんとなく、わかった気がした。
俺達の関係は何時終わってもおかしくない。
もしかしたら明日、終わるかもしれない。
だから朝倉は一度だけでも形に残したいのだと…そう思った。

「…はぁっ……もう、時間がないの…だから…。いいよね…?」


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 02:58:37.53 ID:fZ1gW90u0

そんな切実な願いが込められた言葉。
小さく頷いてベッドにされるがまま倒される。

「…ふふっ、キョン君のここ。固くなってるわよ?」

妖しく笑う朝倉に股間を撫で回される。
いつの間にか俺の一物は準備万端、固くなっていた。

「…舐めてあげる…。」

妖艶に笑み、ファスナーをゆっくりと下ろしていく彼女。
あれ?なんか手慣れてないかと思った俺の考えはすぐに消えることになる。


「…わ、わわわわっ…!?…何これ…っ?」

いきなり飛び出た俺の息子を見て目を回し始める。
間違いなく初めてなんだな。
いや、俺もそうだが。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:01:06.08 ID:fZ1gW90u0

「…こんな形してるのね。…すー…はー…よし、い…いくわよ…。」

「そんなに気合い入れんでも良かろうに…。」

「んむっ、む……ふ、ぅ…。」

と呑気にツッコミを入れているといきなりぺニスをくわえ込む。
性器全体が包み込まれる感覚に自然と身体が震える。

「…ちゅっ…確か、舌を使いながら…んんっ…だったわよね…。」

一旦口を放し、先端にキスを落としてぶつぶつ喋りながらぎこちない愛撫は続く。

「…中々良い感じだぞ…。」

上手い下手じゃない。
彼女にされているという嬉しさに質量と固さを増していくぺニスの昂りを感じつつ手を伸ばして朝倉の髪を撫でる。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:04:12.01 ID:fZ1gW90u0

「じゅるっ…ふぅ……うんっ…なにか汁が出てきたわよ…?」

「その調子だ…。いいぞ、朝倉…。」

片手で入りきらない部分を扱きながら先走りを啜る彼女。
段々と沸き上がってくる射精感にぞくりと身体が揺れる。

「ん、ん…じゅる…っ……ちゅ、ふあ…じゅるるるっ…!」

「くっ、あ…!朝倉…出すぞっ…!」

「ふえっ…!?何が出るって…ひゃあああっ!」

裏筋を舐められながらの吸引に敢えなく達して、何が起こるのか分かっていない様子の朝倉の顔を白く濁った液体が汚す。

「…すまん…。」

「少しびっくりしただけ。別にいいわよ、キョン君のだから…はむっ…ん、ちゅぱっ…。」

情けなく謝る俺を尻目に顔や髪に付いた精液を指で掬って舌で絡めとる彼女。
その言葉に嬉しくなって強く抱き締める。

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:05:14.20 ID:fZ1gW90u0

「朝倉…今度は俺の番だな。」

「ええっ…!?ちょ…っと…まだ、心の準備が…。」

耳元で低く囁いて、慌てる彼女の身体を寝かせる。
ギシッとベッドが軋む。

「問答無用だ。」

「…待っ…て…って、言ってるのにぃっ…。」

今にも泣き出しそうな彼女のパジャマのボタンを外し、それを脱がす。
すぐに露になった彼女の乳房にゴクリと生唾を飲む。
下着を着けていない…のは当然か。
そっと、滑らかな肌に指を這わせる。

「…ひゃんっ…!」

くすぐったかったらしく、身をよじって俺の手から逃れようとする。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:06:18.70 ID:fZ1gW90u0

「逃がさん。」

朝倉の腕を押さえつけてニヤリと意地悪く笑う。
胸の先端、薄いピンク色の突起の周りをつつっとなぞる。

「んっ…く、くくすぐったい…ってばぁ…。」

と身震いしながら朝倉。
しかし気分はノってきたらしく、段々と中心部が尖り始める。

「くすぐったいだけなのにここが固くなってるのはどういうことだ?」

ニヤニヤ薄ら笑いを浮かべながら主張し始めた彼女の乳首を摘まむ。

「…し、知らないっ……やんっ…!」

恥ずかしいのか頑なに首を横に振り続ける。
だが乳首を摘まんだ時に出た甘い声を見逃す訳がない。
引き続きその乳房を愛撫する。
膨らみ全体を掬い上げるように優しく揉む。

「ぁ、やあっ…、だめっ、だめぇ……胸…ばっかり触らないでぇ…っ。」


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:07:14.34 ID:fZ1gW90u0

「そうか?ならこっちを…。」

胸以外を触れと言ったと認識した俺。
彼女の腕を押さえていた手ですかさず履いていたパジャマを脱がせる。
服を着ているほうが燃えるが、流石に母親のを汚す訳にはいかない。

「…ああっ!?……う、うぅ…はずかしい…。」

露になった朝倉の性器。
先刻のフェラか、胸を刺激されてか、そこは既に蜜を垂らしていた。
それがてらてらと光を反射させる様、生え揃った陰毛。
とてもいやらしく思えた。だが綺麗だった。

「恥ずかしがらなくてもいいぞ。綺麗だ。」

「ほ…本当…?っ…ひううっ…!!」

優しく褒めてやれば、少し安心したのか嬉しそうに微笑む。
彼女と見つめ合いながら秘裂に指を走らせる。
胸の時とは比べものにならないほどの声と反応。
零れていた愛液を指に纏わせて、そのままそこに滑らせ続ける。


96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:08:38.87 ID:fZ1gW90u0

「ん、やぁ…っ…!ああ…は、ああんっ…!」

指が上下する度に朝倉からは甘ったるい声、秘所からはこぽりと汁が溢れだし、シーツを汚す。
その反応に味を占めて少しスピードを上げてわざと音を出しながら性器を擦る。

「く…っや、やあっ…!音を、ん…立てないでっ…!」

自分の性器から出るくちゅくちゅという水音にいやいやと首を振る。
だがしっかり感じているようで。
最初はぴっちりと閉じていた秘裂は、熱を持って解れ始めていた。
中はもう少し後で。
今は朝倉を気持ちよくしてあげよう。
口と反対側の手で胸を愛撫しながら性器を擦り付ける手を更に早くする。
激しい水音と蕩けきった彼女の嬌声が室内に響き渡る。

「…だめっ、だめっ、だめっ…!何か来ちゃうっ…、ひああああああっ!!」

身体を弓なりにして仰け反らせ、ぷしゅっと愛液を吹き出す。


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:09:21.29 ID:fZ1gW90u0

「…気持ち良かったか?」

汗で顔に張り付いた髪の毛を手で掻き分け、ぐったりとする彼女に訊ねてみる。
聞くまでもないと思うが。

「…っ…はぁ、はぁ……気持ち、良かった…。」

肩を上下させながら途切れ途切れに頷いて肯定する。
さてこれからが本番なんだが…いけるのか?この状態で。

「私は大丈夫だから…続けて…?ま、まだまだこれから何でしょ…?」

大丈夫とは思えないな。
…やはり俺達にはまだまだ時間が必要だったようだ。
動きを止めた俺に、小さくもう…と呟いてぐいと脚を開く朝倉。
いやらしく光るピンク色のそこが目に飛び込んでくる。

「んなっ…!?何をやってんだ朝倉っ…!」

「涼子って呼んでほしいな…。…時間がないの…わかってるでしょ…?」

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:10:02.40 ID:fZ1gW90u0

分かりやすく狼狽する俺にそっと告げる。

やるせない思いが再び込み上げてくる。
しかし、だからと言ってこのまま止まっている訳にはいかないのだ。
頭をブンブンと振って気を取り直して俺を待つ彼女に向き直る。

「…いくぞ、り…涼子…。」

出しっぱなしだった息子を彼女の秘裂に近づける。
改めて名前を呼ぶということは恥ずかしいことなんだな。
少しどもってしまった自分に嫌気が差す。しかし…

「ん、いいわよ…。来て…キョン君…。」

朝く…涼子は穏やかな表情を浮かべたまま両手をこちらに伸ばしてくる。
フッと笑って彼女の手を取り、少しずつ。
少しずつ膣に沈めていく。

「…っく、うぅっ…!」

「…っ少しきつい…か…。」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:11:29.57 ID:fZ1gW90u0

中は想像以上に狭く。溶けてしまいそうなくらい熱かった。
凄まじい圧迫感。
思わず苦悶の表情が浮かぶ。
だがそれは我慢、もっと辛いであろう涼子の気を紛らせてやるべくキスをする。

「ん…ふぅん…っ…う…。」

ちゅっと音を立てて一度唇を離すと自分から口付けを求めてくる彼女。
それに応えるように唇を重ね、激しく舌を絡ませ合う。

「んむっ…む、ふ…んんっ……!…んーっ…!」

キスをしながら一気に奥まで突き進めると、涼子が苦しげな表情で呻く。
破瓜、したのだろうか。
接合部に視線を落とすと隙間から血が滲んできていた。
一旦口を離す。

「大丈夫…か?」

「…かなり、痛いけど……大丈夫よ…。それ以上に嬉しいから…。」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:12:10.34 ID:fZ1gW90u0

額に汗を滲ませながら俺を安心させるように笑う。
彼女の言葉がとても嬉しかった。
そうか、と言うとゆっくりと動き始める。

ぐちゅ、ぐちゅと接合部からの音と涼子の体温と荒い吐息が俺を再び昂らせる。

「ふ…ううっ、んく…っ…ぁあっ…。」

何度律動を繰り返しただろうか。
少しずつ。僅かではあるが声色が変わり始めている。

「ふあ、あんっ…き、キョン君っ……キョンくんっ…!」

予想通り、涼子の反応が大きく変わった。
切なげに俺を呼んでいる。

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:12:52.03 ID:fZ1gW90u0

「…ここにいるぞ…。」

上体を前に倒し、彼女の耳に顔を近付けて囁く。
ゆっくりと目を開けた涼子と目が合う。
何も言わずに笑い合って。

「…ぁあっ、あっ、ん、んっ…!」

腰を打ち付ける度、ベッドが軋む度、甘く切ない声が漏れる。

「…気持ちっ、いい、んんぅっ…!ふあぁっ…!き、キョン君…っ…!」

「涼子…涼子っ…!」

俺の全てを求めるような彼女の声に応えるように名前を呼び、律動を早めていく。


104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:13:58.34 ID:fZ1gW90u0

「…も…うっ、だめっ…!きちゃうっ…、きちゃうぅっ…!!」

「…俺もだ…!出すぞ…、涼子…っ!」

身体をいろんな方向へよじらせながら先程までより幾ばくか大きく鳴く。
絶頂が近いのだろう。
とっくに限界を越えている射精感を押し殺して最奥を突き上げる。

「…出してっ…!中にだしてぇっ…!…ふ、うぅっ、あっ、ああ…あああああああああああっ!!」

一際甲高い声を上げ、身体を跳ねさせ果てた彼女の中に目一杯射精する。

「…はあっ…はあっ…。」

「……涼子…。」

繋がったまま、火照った彼女の身体を抱き締める。
嬉しそうに抱き締め返してくる涼子。

俺達は暫くそのまま抱き合っていた。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:16:07.71 ID:fZ1gW90u0

二人で後始末をして。
それから半刻ほど経ったいま、ベッドに身体を預け二人寄り添っている。

「…。」

「…。」

沈黙。
しかし気まずい雰囲気ではなく、温かく。そして穏やかな空気。
落ち着いていられたのはこれが最後だと確信していたからだ。

「……最後、なのよね。」

「……だろうな。」

不意に朝倉が口を開く。
少し間を置いて同意する。
長門の言葉や古泉の不在を思い出す。
もう猶予はない。
分かっていた。…いや、分かっていたような気になっていた。
今になり初めて、事の深刻さが分かった。
まだ理解しているかどうかも怪しいところだがな。


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:17:19.46 ID:fZ1gW90u0

「私、キョン君とずっと一緒にいたい…!」

突然。本当に突然だった。彼女の想いが堰を切ったように溢れ出す。
消え入りそうな声でそう呟きながら俺の服が皺になりそうな位に握り締める。
俺も同じだ。
こんなにも好きなのに。
どうして離れなければならない。

「…俺も涼子、お前とずっと一緒にいたい。」

そんな叶わぬ願いを呟いて震える彼女の身体を抱き締める。
事実こんなにも失うのが怖い。味わったことのない恐怖。
いつの間にか涼子は泣いていた。

「…でもね、私達の我が儘で世界を終わらせてしまう訳にはいかないじゃない…?」

「……。」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:34:45.29 ID:fZ1gW90u0

震える身体に渇を入れてナイフを鞘から抜き放ち、振り上げて。
それを、彼の心臓に突き立て…られなかった。

だって私はキョン君に攻撃することなんて出来ないようになってるから。

もう手は、動くことはなく。
カシャンとナイフが力の入らぬ手をすり抜けて後ろで乾いた音を鳴らす。

先程の行動で私の中の何かが壊れたようだ。
堰を切ったように零れ出す涙。
そしてすぐに身体が崩壊していく。

…あの日と同じように。

もう触れることも叶わない彼の唇に、自らのそれを重ね合わせる。

形だけの最期のキス。
とめどなく溢れる涙は彼を濡らすことなくすり抜け、何処かへ消えていく。

そして私はこう言うのだ。
あの日と同じように。


「凉宮さんとお幸せにね…。」


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:35:27.24 ID:fZ1gW90u0

窓から差し込む朝陽に眉を寄せて、ゆっくりと目を開ける。
身体に感覚が戻って来る。
見慣れた天井。
馴染んだベッドの感触。

「…りょう、こ…?」

ベッドには俺一人。
傍らにあるはずの少女の姿は無く。
一瞬にしてそれまで聞こえていた鳥の囀りが消える。
ガバッと身体を起こして室内を見渡す。
何処にも…いない。
ベッドの側にはパジャマと見覚えのあるナイフ。
そして枕元の手紙。

恐る恐る傍らに置いてあったそれを手に取り、開く。


121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:39:25.10 ID:fZ1gW90u0

キョン君へ。

この手紙を読む頃には私はもういないでしょう。
って…少しベタだったかしら。
キョン君も知っていたと思うけど、凉宮さんの閉鎖空間の発生が危険域に達していたの。

このままじゃ世界が消えちゃうから…だから私は身を引くことにしました。
学校にはまだ通いたかったけど…キョン君の顔見ちゃうと決心が揺らいじゃいそうだったから。

ほら、私は元々イレギュラーな存在だから…ね?


私はみんなの記憶から消えちゃうけど、貴方の中にはずっといるから。

時々でいいから思い出してほしいな。


短い間だったけど、キョン君と過ごせてとても幸せでした。


朝倉涼子

P.S.長門さんから聞きました。世界よりも私を取ると言ってくれてありがとう。
とても嬉しかったです。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:42:26.38 ID:fZ1gW90u0

「…。」

滲んであっという間に読めなくなった手紙をそっとベッドに置く。
床に落ちたままのナイフを鞘に納め、抱き寄せ

「うおおおおおおっ!!」
吼える。
お前は…

「涼子っ…!」

…俺を殺そうとして、自ら消えたのか。
悔やむ思いでいっぱいだった。
…だが、どんな結果だろうと笑っていようと。
誓ったんだ…。

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:43:08.80 ID:fZ1gW90u0

顔を洗ってリビングへ。
手紙に書いてあった通り、うちの家族には彼女の記憶は無かった。
皆が訝しげに首を傾げる中いつものように朝食を摂り、鞄を掴んで外に出る。

昨日の雨の名残を感じさせる少し冷たい空気で肺を満たす。

誰もいるはずのない軒先を一瞥して歩き始め、携帯を開く。

そこには俺のへたくそな笑顔と彼女の眩しい笑顔。
昨夜、一枚だけ二人で撮った写真。

なんだ、瞬きなんかしてないじゃないか。
綺麗に撮れてる。
何故かは分からないが、これだけは消えなかった。

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:44:05.60 ID:fZ1gW90u0

携帯をギュッと握り締める。
俺の、俺だけの記憶。
忘れる筈がない。
忘れられる筈がない。
きっとこれからも色褪せることなく、俺の中に生き続けるだろう。

俺の為に、お前が身を挺して守ったこの世界で…お前の分まで生きるから。

「いつでもお前は側にいる。そうだろ?」

携帯を締まって誰にでもなく言った言葉。
彼女が傍らで優しく微笑んだ気がした。

徐に空を仰ぎ見る。
本日は快晴。そこは何処までも青く、美しく。

束の間の梅雨のあいだの出来事だった。


終わり

130 名前: ◆glOo0kyong [sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:46:10.62 ID:fZ1gW90u0

反省点を多く残す結果となりました。
未確認飛行物体さんをはじめとした最後まで読んでくれた皆さん、ありがと



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