1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:01:48.87 ID:srAuzmur0
京兄社員の朝は早い
Yさん「おはようございます」
ディレクター(以下、D)「いつもこんなに早いんですか?」
Y「今日は閉鎖空間の絵を撮りたいんで、丁度曇りですし」
この男性は、Y本寛さん(仮名)35歳。
ドラマ製作会社、京兄ドラマ製作所の社員である。
大人気ドラマ、『涼宮ハルヒの憂鬱』の監督を任されている。
ドキュメント2009
〜『涼宮ハルヒの憂鬱』 その舞台裏に迫る〜
古泉「Y本、いつまで待たせんだよ。寒いんだよ」
Y「すいません! キョンさんがおいで次第、すぐ始めますんで!」
役者のスケジュールは分刻みだ。その調整は難しい。
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:04:04.96 ID:srAuzmur0
キョン「ええ、この間社長に連れてってもらった店、最高でした。
ええ、そりゃもう、はい。また顔出しますんで、
ええ、そりゃもう。では、失礼します」
人気俳優、キョンが現場に到着する。
Y「あ、キョンさん! 段取りできてますんで! さっそく!」
キョン「あ? 俺朝一は調子でねえんだわ。そっちで先やっとけよ」
Y「あの、キョンさん待ちですんで、お願いします」
キョン「お前俺の言った事聞こえてなかったのか? おい」
Y「あ、あちちちちちち!! すいません! じゃ時間とります!」
出演者のタバコの吸殻の始末。
そういった細かい気配りも彼の仕事のひとつである。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:06:44.93 ID:srAuzmur0
古泉「コラY本、いつまで待たせるんだ? お前明日から無職になりたいの?」
Y「あ、あちちちちちち!! ええと、キョンさんがまだ……」
出演者のタバコの吸殻の始末。
そういった細かい気配りも彼の仕事のひとつである。
キョン「おいてめえ、なんで俺のせいにしてるわけ? なあ?」
Y「あ、あちちちちちち!! すいません! すいません!」
出演者のタバコの吸殻の始末。
そういった細かい気配りも彼の仕事のひとつである。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:08:22.05 ID:srAuzmur0
ようやく今朝の撮影が終わる。
たった2分間のシーンでも、その苦労は並大抵ではない。
Y「おつかれさまでした! いい絵がとれました!」
キョン「おう古泉、女抱きにいかねえか」
古泉「いいっすね。朝からやってるいいとこ知ってますよ」
キョン「Y本、聞いてたろ。送れ」
Y「あの、2時間後に学校のシーンの撮影が……」
キョン「あ? 何か言った?」
役者の要望にはできるだけ応える。
それが良い関係を築く秘訣だと、Y本さんは言う。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:09:54.65 ID:srAuzmur0
D「Y本さんはどんな方ですか?」
キョン「いつもよくしてもらってますよ。
やっぱり、気配りができる人って印象ですね。
Y本さんには沢山勉強させてもらってます」
古泉「育てていただいた恩人って感じですね。
よく差し入れとかいただきますし、本当に感謝してますよ」
Y本さんと関った役者の多くは、彼の人柄を慕っている。
またY本さんと一緒に仕事がしたいと言う者も後をたたないそうだ。
Y「あの、そろそろ撮影の時間ですんで……延長は……」
キョン「今日はもうやる気ねえし。他のシーン撮ってろや」
古泉「コラY本! 俺はスケジュール押してんだよ!
てめえ時間調整もできねえのか?
お前さ、侘びにここ払っとけ」
時には役者に気前よく奢るY本さん。
そういった信頼関係こそが、良い作品へと繋がる。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:12:28.95 ID:srAuzmur0
午後からは部室での撮影。
ヒロイン役の涼宮ハルヒが、朝比奈みくるに抱きつくシーンだ。
ハルヒ「もう、みくるちゃん、大人しくしなさい!」
みくる「ひえやああぁぁぁ!」
ハルヒ「あーちょっとカット。全然ダメ。取り直して」
時には役者自ら進行に口を出す。
みんなでいい物を作りたいという熱意がこちらにも伝わってくる。
Y「ええと涼宮さん……いい内容だったと思ったんですが……」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:14:03.81 ID:srAuzmur0
ハルヒ「あんたアホ? 何年この業界やってんの? あのちんちくりんが
ヘタクソだから全然ノらないのよ。もうあいつ首にして頂戴」
Y「いえあの、今更役者さんを変えるのはちょっと……」
ハルヒ「変えろっていってんのよ。あの朝比奈ってガキ、コネでしょ?
ああいうのがうちらの縄張りに入ってくる自体、ありえないでしょ!」
Y「いえあの、決してそういうわけでは……し、指導いたしますので!」
役者が演技についてアイデアを出すと、
熱心に耳を傾けるY本さん。
妥協はできない。それが彼の口癖である。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:16:32.45 ID:srAuzmur0
Y「みくるちゃん、まずいよ〜。涼宮さん怒ってるって……」
みくる「あのオバハンがヘタクソだからこっちも困ってるんです。
だいたい口臭いんですよ、あの人……しかも何度も撮り直させて
体触ってきて……ソッチの気があるんじゃないですか? 気持ち悪い……」
Y「それ絶対言っちゃダメだよ、ねえ、頼むから……」
みくる「あー! 口が臭いレズのオバハンが鬱陶しいなー!」
ハルヒ「は? あんた今何いったの? おい! Y本! そいつ黙らせろ!」
ベテラン女優と新人女優を絡ませる場合は、特に気を使う事が多いという。
妥協を許さない彼は、新人女優の所属事務所に相談に向かった。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:19:31.63 ID:srAuzmur0
(ヤ)「お前コラ。組長の娘に何恥かかせとんじゃ!
おう、向こうの事務所の後ろと戦争なるど。
お前責任とれるんか?」
Y「大変申し訳ございません! 申し訳ございません!」
良い作品を作るためなら、土下座なんて安いものだと彼は言う。
付いたあだ名が『土下座の寛ちゃん』。彼のスーツの膝は、
土下座のしすぎでボロボロだ。男の勲章だと、彼は笑う。
(ヤ)3本包んでこい。今回はそれでええわ。
Y「そ、そんな……」
(ヤ)わかったか? 文句無いな? ほなもう帰れ。ガハハ!
Y本さんの熱意が伝わり、相手の事務所の人は、
最後は笑って見送ってくれた。
その笑顔が何よりも嬉しい。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:23:42.70 ID:srAuzmur0
ハルヒ「もう、みくるちゃん、大人しくしなさい!」
みくる「ひえやああぁぁぁ!」
Y「カット! 素晴らしい熱演、ありがとうございましたー!!」
ハルヒ「ああ……ウザい……次までにあのガキ首にしないと
あんたサメのエサになるわよ」
みくる「あー……口が臭い……あー臭い! ババア臭い!」
ハルヒ「は? おい!! Y本!!」
Y「すいませんすいません勘弁してください! ううう……うっ……」
苦労の末、最高のシーンが撮れた。
Y本さんは思わず涙ぐむ。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:25:49.90 ID:srAuzmur0
夜。撮影はまだまだ続く。
Y本さんは休む間もなく作品に情熱を注ぐ。
Y「おえぇー! おえぇー! げぇっ……」
キョン「コラY本、蹴り入れたぐらいでゲロ吐く真似事してんじゃねーぞ。
なに? 俺が悪者みたいにしたいの?」
Y「い、いえ……決してそん……あちちちちちちち!!」
出演者のタバコの吸殻の始末。
そういった細かい気配りも彼の仕事のひとつである。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:28:05.47 ID:srAuzmur0
Y「う……うう……では、長門さんの長セリフのシーンいきます!」
長門「この銀河を統括する情報統合思念体によって作られた対勇気生命体
コンタクト用ヒューマ……」
キョン「あ、だめ。カットー。おい、カットだつってんだろコラ!」
Y本「あ、あのキョンさん……何かお気きに召さない事でも……」
キョン「全然感情篭ってねえじゃん? なんだよこの大根は。
コラ、Y本、いい加減な仕事してんじゃねーぞ!」
Y本「え、ええと、そういう役柄の設定ですので……」
ベテラン俳優キョンの鋭い意見には、いつも助けられてきた。
Y本さんと彼の信頼関係は、強い絆で結ばれている。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:30:46.20 ID:srAuzmur0
Y本「あの、長門さん、もう一度、感情こめて……お願いします」
長門「わかった」
長門「この銀河を統括する情報統合思念体によって作られた対有機生命体
コン……」
キョン「あ、だめ。カットー。カットだよコラ! おい、大根やめろつってんだろ!
てめえY本ゲロ吐かすぞ!!」
Y本「すいません! すいません! 長門さん、もう一回、もうちょっと
感情こめて……お願いします!」
長門「わかった」
重要なシーンの撮影に、役者、スタッフ双方に熱が入る。
我々は、気迫のこもった撮影現場を目にして、
ドラマ作りがいかに大変かを感じさせられた。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:34:04.21 ID:srAuzmur0
長門「この銀河を統括する情報統合思念体によって作られた対有機……」
キョン「あああああ! Y本! てめえ殺すぞ!!」
Y「ぐぼっ……おぇええ! おえぇぇ!!」
キョン「あーもう帰るわ。この大根女変えろ。変えるまで俺こねえから」
長門「…………」
そして、事件は、突然起こった。
Y「な、長門さん、何をして……ちょっと!!」
撮影の辛さに耐えかねた女優が、自らの手首をナイフで切ったのだ。
Y「うわああああっ!! うわあああああっ!!」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:36:16.08 ID:srAuzmur0
女優は病院に搬送されたが、幸い一命は取り留めた。
Y本さんは、自らの責任により大変な事故を起こして
しまったことを悔やんだ。
ドラマ作りにかける情熱、それが行き過ぎてしまった結果だった。
ここは、京兄ドラマ製作所の社長室。
頭を坊主に丸めたY本さんが、社長に謝罪をする。
Y「申し訳ございませんでした!!」
『土下座の寛ちゃん』の美しい土下座。
彼の気迫と、申し訳ないという謝罪の気持ちがこちらにも伝わってくる。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:38:03.13 ID:srAuzmur0
だが、社長の言葉は思わぬものだった。
彼の実力を評価する社長は、彼に独立を進めたのだ。
社長「もうお前クビや。出ていけ」
社長の優しい言葉に、涙が止まらないY本さん。
Y「そ、そんな……ううう……ああああ……」
こうして、Y本さんの新たな一歩が始まる。
彼がいる限り、数々の名ドラマが世に放たれる事であろう。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/05(月) 10:41:39.89 ID:srAuzmur0
彼の独立後、彼が関った話の最後に、彼の功績を称える賛辞のメッセージが記された。
ドラマ監督、Y本寛。 彼は決して妥協しない男。 今も多くのファンが、彼の作品を待ちわびている。
「涼宮ハルヒの憂鬱」監督のY本寛は、監督において、
まだ、その域に達していないと弊社は判断し、交代いたしました。
放送第5話から新監督のもとスタッフ一丸となって作品制作をしていきます。
引き続きよろしくお願いいたします。
糸冬