145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:18:18.89 ID:a7USelQPO
もしもしだけど触発されて書いてみた。
誰も居ないし、ここからずっと俺のターン
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:20:03.85 ID:a7USelQPO
町の木々から緑が消えて、近所の公園は落ち葉で埋め尽くされる季節。
あと1ヶ月もすれば、新しい年を迎える準備で忙しくなるだろう。師走とはよく言ったものだ。
この時期は大概、年末に控える数々のイベントに向けての体力を温存する時期で。
ハルヒもそれがわかっているのか、近頃は大人しい。このまま大人しくしていてくれ、せめて年末までは…。
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:22:27.48 ID:a7USelQPO
嵐の前の静けさという言葉を俺の辞書から消しつつ、恐らくは叶わないであろう祈りを朝日奈さんの淹れてくれたお茶に捧げていると、部室の扉が乱暴に開かれた。
いい加減、扉を壊す前にやめて欲しいものだ…。
「皆、居る!?大事件よ大事件!」
なんだ、言ってみろ。とりあえず話だけなら聞いてやる。
「最近、自転車泥棒が多発してるのは知ってるわよね?どうやらその犯人が、ガイコツらしいのよ!」
ハルヒよ、ハロウィンはこの間やっただろう。
来年まで待ちなさい。
「違うわよ!さっきクラスの女子が話してたの聞いたんだから!」
ついさっき消したばかりの辞書をまた書き直さなきゃならんのか、やれやれ……。
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:23:45.67 ID:a7USelQPO
「ふぇぇ…なんだか怖いです…」
朝日奈さんは本気で怖がってる節がある。
本当に今より発展した未来から来たのだろうか、それとも未来では発展し過ぎて骨だけでも動くのだろうか。
「それはまた興味深いですね」
いつものにやけ顔で肯定する古泉。
命懸けであのバカでかいのと戦ってるお前にすればガイコツ探しは楽かも知れんが、何でも肯定するのはやめろ。ハルヒが調子に乗る。
「でしょ?さすが古泉くんね」
ほらみろ。このままでは週末の不思議探索がガイコツ探しになっちまう。
「じゃあさっそく、今日の帰りに探してみましょ。暗い方が見つかりやすいわよ」
………ほらみろ。
「……んふ」
おい古泉、笑って誤魔化すな。
そしてパタンと長門が本を閉じた。
今日は団活終了の合図ではなく、ガイコツ探しの開始の合図だ。
…やれやれ。
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:24:40.93 ID:a7USelQPO
詳しい事は省くが、結局ガイコツは見つからなかった。
ハルヒは明日もやると息巻いて帰り、俺達もそれぞれ帰路につこうとした時、長門に呼び止められた。
「やはり、ですか」
古泉、やはりって何だ?
いや、良い。どうせハルヒ絡みだろう。
「いえ、今回はまだ何も。ただ、長門さんが呼び止めなければ僕が呼び止めてました」
どういう事だ、長門?
「今回の件は古泉一樹の機関でも確認されている事、私もそれ以上は知らない」
「長門さんにもわからないとなると……これは少々、厄介な事になりそうです」
俺と朝日奈さんは完全に蚊帳の外だが、一つだけわかるのは、今回もまた何かに巻き込まれたのだろう。
長門、話してくれ。
「最近、光る杭が目撃される事例が増えている。この3日で17件も」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:25:58.68 ID:a7USelQPO
ずいぶん多いな。
しかし、3日……?
「えぇ、そこなんです。我々の機関でも、ここ最近…この数日のうちに目撃情報が集中しているのですが。涼宮さんがこの件を知ったのはつい先程……」
つまりこの件にハルヒは関わってないのか?
「それはまだ何とも…。自転車泥棒が多発し始めた時点で何か面白い事件を望み、その結果……とも考えられますが、まだ何とも…」
どういう事かと頭を捻ったが、こいつや長門がわからないのなら、俺や朝日奈さんにわかるはずもなく、俺は考えを放棄する事にした。
「ただ…」
と、何かを付けたそうとした古泉の後を長門が引き継いだ。珍しいな。
「今回と似た事例が、20年前に日本の北海道で報告されている」
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:27:01.48 ID:a7USelQPO
20年前…?俺やハルヒが産まれる前だな。
今から20年前と言えば……ちょうど昭和から平成に変わった時期か。
「平成元年……」
ここに来て朝日奈さんが口を開いた。
どうかしたんですか?
「平成元年…1989……確かここに来る前の禁則事項で見た覚えが…えっと、確か…クライシス………」
珍しく朝日奈さんが悩んでいるが、どうやら限界のようだ。
わかったのはクライシスという単語のみ。
そんなに落ち込まないでください、朝日奈さん。
あとは長門達が調べてくれますよ。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:28:12.89 ID:a7USelQPO
長門が急に黙り込んでから5分程経っただろうか?
まぁ、これぐらいはいつもの事だ。
「……わからない」
何がだ?
「クライシスという単語で検索をした、ただわからなかった」
長門でも見つけられないとなると、無いんじゃ……。
「20年前、確かにクライシスと呼ばれる何かがあった、ただそれがわからない。情報が見つからない」
消されてるって事か?
「違う。消されてるのではなく、消えている。私が見つけられたのは、情報があったという痕跡だけ。クライシスという単語を調べたら、情報の痕跡が見つかった。恐らく朝日奈みくるの情報は間違いではない」
一体、20年前に何があったんだろうか。
古泉も朝日奈さんも、ずっと何かを考え込んでいるようだ。
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:28:58.41 ID:a7USelQPO
「………気を付けて」
長門?
「クライシスが何かはわからない、涼宮ハルヒが関係しているのかもわからない。ただ……」
デジャビュ……とでも言うのだろうか。
「涼宮ハルヒが関係していて、クライシスがその名前の通りだとすれば………。危機が迫るのは、まずあなた」
それは、初めて長門のマンションに行った時と同じだった。
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:29:52.54 ID:a7USelQPO
それからしばらくして俺達は別れた。
長門や古泉、朝日奈さんにまで気を付けるように念を押された。
しかし、そこまで言われるとかえって逆効果というか、精神的によくない。
普段の帰り道も何だか薄気味悪く感じる。
「なんだ、これ」
それは、道の真ん中に不自然に乗り捨てられた自転車。
誰だ、こんな所に自転車を置いたバカは…。
それとも、どこからか盗まれたものだろうか?
とりあえず邪魔なので脇にでも寄せておこう。
「熱!?」
自転車は、金属部分だけでなくグリップやサドルといった熱の籠もりにくい部分まで高温になっていた。しかも目玉焼きが焼けそうなぐらい。
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:30:44.16 ID:a7USelQPO
自転車…自転車泥棒…。
自転車泥棒がガイコツで、今目の前には道に乗り捨てられた高温の自転車。
これはいよいよ持って気味が悪い。
早く家に帰ろう。
そこで俺は、嫌なものを見ちまった。
ここから1km程離れた所から、空に向かって伸びる3つの光。
気が付くと、光の元へと走っていた。
ああクソ、長門や古泉に散々気を付けろと言われたのに、何で俺は気になって見に行ってるんだ。
これじゃまるで街灯に集まる蛾じゃないか。
心の中で悪態を付くも、足は止まらない。
よし、一目見たら帰ろう。遠くから見たら帰ろう。
こうなったら、どれだけ安全にその現場を見られるかだ。
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:31:40.09 ID:a7USelQPO
「何だよ、あれ…」
遠目からでも異様な光景だった。
そこは、最近出来たばかりの遊園地だった。
遊園地と言っても、デパートの屋上にあるような小さいものだ。
それは良い、問題なのは…。
何故、骨が地面に巨大な杭を打ち付けてるのだろうか。
何故、あの骨は人の骨ではなく角が生えているのだろうか。
何故、あの巨大な杭は光っているのだろうか。
「何なんだよ…」
思わず声に出してしまった。
ガイコツは一斉にこちらを見る。
いつの間にか、その手には巨大な鎌が握られ、その姿は死神を思い出させる。
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:32:21.89 ID:a7USelQPO
「ミツケタゾ…ミナミコウタロウ…」
何を言っているかはわからんが、どうやら見つかった事だけは確かなようだ。
何故こうも冷静でいられるのだろうか。
答えは簡単だ。
人は死を覚悟すると感情をどこかに置き忘れるらしい。
死神のようなガイコツは俺を見付けるのと同時に、その鎌を投げつけてきた。
とてもじゃないが反応しきれない。間違いなく死ぬ。
だからこうも冷静で居られるのだろう。
走馬灯を見ない代わりに随分と長く考え込んだようだが、もう長くないか…。
「**********」
俺の数cm前まで迫った鎌は、聞き覚えのある早口言葉と共に消え去った。
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/10/03(土) 04:33:26.88 ID:a7USelQPO
「長門!」
「気を付けてと言ったはず」
「す…すまん」
怒ってるのだろうか?
「怒ってない。ここはすぐに離脱するべき」
長門がそう言うのなら俺は長門に従うまでさ。
「******」
再び長門が早口で呪文を唱える。
前々から思っていたが、宇宙人というより魔法使いだな。
数分前まで命の危険に晒されていたというのに、我ながら脳天気な事を考えているもんだ。
やれやれ、と心の中で呟いた時には見覚えのある玄関の前だった。
「長門、ありがとな」
「いい。ただ、迂闊な行動は控えるべき」
「すまん…」
やはり長門には頭が上がらない。
そういえば…。
「そういえば、あいつらおかしな事を言っていたぞ」
「………」
長門は無言で続きを促す。このやり取りにはもう慣れた。
「見つけたぞ、ミナミ…コウタロウ……って」
「ミナミ、コウタロウ……」
長門は一度だけ復唱すると、すぐに背を向けて帰って行った。
瞬間移動はしないのだろうか…?
この後、家に入ってからお袋にどやされた。
どうやら思ったより帰りが遅かったらしい。
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:01:41.01 ID:a7USelQPO
翌日、何事もなかったかのように登校し授業を受けられたのは、単に慣れなのだと思う。
それはそうと、後ろの席の団長様は、困った事に朝から張り切っている。
あと10分もしないうちに今日の授業も終わるのだから、少しは静かにしてくれ。
久しぶりの大事件で舞い上がっているのだろう。
問題なのは、本当に大事件なのだという事だ。
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:03:17.80 ID:a7USelQPO
「は〜い、どうぞ〜」
と、ノックに愛くるしい声を返してくれるマイエンジェル、朝日奈さん。
いい加減鍵を掛ける事を覚えてほしいのだが、このノックも日常となっているので、まぁ良いだろう。
部室に入ると、ハルヒ以外は全員揃っていた。
というか、ハルヒは掃除当番だ。
自分の順番を忘れる程舞い上がっていたのだろう。
いつもならハルヒが来るまで思い思いの事をするのだが、今日はそうもいかない。
まずは古泉と朝日奈さんに昨日の事を報告だ。
さるさん食らった
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:04:03.89 ID:a7USelQPO
報告が終わると、まず朝日奈さんに怒られ、古泉に呆れられた。
俺が悪いのだが無性に腹が立つぞ。
「それで、ミナミコウタロウというのは?」
話題を逸らすな、古泉。
「わからない。情報の痕跡すら見つからなかった」
「そうですか…」
俺を誰かと間違えた、というのが一番妥当だろう。
が、それが誰かわからないから困っているのであって……。
「まったく、ツいてないわ掃除当番だなんて。予定より遅れちゃったけど、さっそく行くわよ!」
と、勢い良く入って来た団長様に連れられて、今日もガイコツ探し。
昨日遭ったばかりなんだがな、やれやれ…。
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:04:51.74 ID:a7USelQPO
昨日も例のガイコツは見つからなかった。
やはりと言うか、運が良かったというのかは別として。
明日こそはと息巻いて帰るハルヒに合わせ、一旦解散した後、俺達は長門のマンションで落ち合う事にした。
長門のマンションに行ったものの、新しい情報は無し。
精々、昨日の光る杭の目撃情報ぐらいだ。
再び気を付けるように念を押された後は解散となり、長門が俺を送ってくれるそうなので4人でマンションを出た。
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:06:51.37 ID:a7USelQPO
「ミツケタゾ…ミナミコウタロウ…」
どうやらガイコツはこちらから見付けなくても、勝手に見付けてくれるそうだぞハルヒ。
「*********」
すぐさま長門は呪文を紡ぐが、砂になるのは手に持った鎌だけで、ガイコツ自体は一向に砂にならない。
それどころか、また新しい鎌を取り出した。
どこからだ…?
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:08:05.42 ID:a7USelQPO
「おい、長門」
「状況は不利、せめてあなただけでも…」
長門が弱音を吐くなんて珍しいが、この状況なら仕方ない。
足手まといの俺と朝日奈さんだけでなく、今は古泉も一般人だ。
唯一の頼みの綱である長門の攻撃が効かないとなると、俺達にはどうする事も出来ない。
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:10:07.51 ID:a7USelQPO
「昨日、クライシスで検索した結果から仮定した」
この場を切り抜けるのに全く関係ない事を話し始める長門だが、黙って聞く事にする。
「これは私の仮定、憶測であって、私としては仮定で説明する事をあまり好ましく思わない。でも、聞いて」
あぁ、聞いてるさ。
「恐らく、この世界は20年前に分岐した。パラレルワールドの一つ、可能性の一つ」
パラレルワールドだって?
「そう。クライシスが何を指すのかはわからない、けど、この世界はクライシスがない世界。それは20年前分岐した世界の一つ。もう一つの可能性として、20年前からクライシスがある世界が存在すると思われる。朝日奈みくるが見たのは、もう一つの世界の事」
じゃあ、あいつらは。
「異世界からの訪問者…となるのでは?」
「そう」
こんな時にまで気取るな。
「今、私にわかる事はここまで。それも憶測。でも、鍵はあなたと異世界。覚えていて」
おい、長門。何をする気だ!
「せめて、あなただけでも」
そう言って、長門は駆け出そうとする。
情報何とかの解除が効かない相手に勝てるとは思えない。
長門、やめろ!
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/03(土) 05:11:01.01 ID:a7USelQPO
その時、どこからか俺達の前に現れたのは、白いジャケットに白いズボン、白のフィンガーグローブを付けた男だった。
颯爽と現る、とはこういう事を言うのだろう。
男は俺達に背中を向け、ガイコツと向き合う。おかげで長門が駆け出すのを止められた。
「ミナミコウタロウ…!」
どうやらこいつがミナミコウタロウらしい。
俺と、どうを間違えたんだ?
264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:00:15.04 ID:f2bzaDzFO
「君達は下がって!」
ミナミコウタロウは、どうやら俺達を助けてくれるらしい。
長門がかなわなかった相手に勝てるとは思えないが、無策ではないはずだ。
恐らく、古泉の機関の人間と同類だろう。まさか長門の同類でヒューマノイドなんちゃらではないと思う。案外、未来人って可能性も……。
とにかく、体勢を立て直す為にも、ここはミナミコウタロウの指示に従おう。
「古泉、朝日奈さんを…」
すっかり怯え固まってしまった朝日奈さんを古泉に頼み、俺は長門を連れて下がろうと、一旦ガイコツやミナミコウタロウに背を向ける。
そして、背中越しに聞こえたのは、子供の頃に憧れた言葉だった。
「変身!」
掛け声と共に、凄まじい光が当たりを照らす。
まるで太陽が落ちてきたかのようで、背中を向けてなきゃ失明していたかもしれん。
265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:01:26.52 ID:f2bzaDzFO
条件反射、ってのは誰にでもあると思う。
いきなりボールが飛んできたら手を突き出すし、熱いものを触ったらさして意味もないのに耳たぶに触ったり。
それと同じで、背後がいきなり光ったら、振り向いてしまうだろう
条件反射で振り向いた先には、ミナミコウタロウの姿は無く、代わりに黒いバッタのような怪人が立っていた。
怪人と言っても、目の前のガイコツやテレビに出てくるのと違い、嫌悪感はないが……それでも怪人としか言い表せない。
ここでミナミコウタロウはどこに消えたか、なんて野暮な事を言い出す奴が居るとしたら……俺はアホの谷口しか思い浮かばん。
十中八九、目の前のバッタ怪人がミナミコウタロウなのだろう。……変身とも言ってたしな。
「俺は太陽の子、仮面ライダーBLACK!R!X!」
決めポーズと共に名乗り上げるバッタ怪人、もとい仮面ライダーBLACK、RX。それを少しカッコいいと思ってしまうのは、俺が男の子だからなのか、まだ子供だからなのか。
266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:02:52.53 ID:f2bzaDzFO
「怪魔妖族スカル魔!20年前の再現をする為だけに何の関係もない別世界を巻き込み、そこに暮らす罪のない高校生を襲うなど、この俺が許さん!」
20年前の再現……?
一体何の事かわからんが、とりあえずあのガイコツはスカル魔と言うらしい。
長門ですら適わなかったスカル魔を圧倒するRX。
「ほう…」
いつもはにやけ顔の古泉も、流石に笑ってない。冷や汗すらかいている。
長門はいつも通りの表情だが、若干強張っている。
朝日奈さんに至っては顔面蒼白だ。
267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:04:32.02 ID:f2bzaDzFO
「RXキィィィィック!」
その一撃で勝負は着いた。真っ赤に燃え上がった両足での、回転を加えたドロップキック。
意外な事に音は小さい。ただ腹に響くドンといった鈍い音だった。
まるでトラックにでも跳ねられたかのように吹っ飛んだスカル魔は、爆発と共に消え去った。
あれだけ爆発したにも関わらず、周りに被害はなく、地面が少し抉れているだけだ。……どういう原理だ?
「君達、大丈夫だったか?」
ミナミコウタロウが駆け寄ってくる。
本気で俺達を心配しているようだ。
「えぇ…まぁ…」
どうやらミナミコウタロウはかなり年上のようだ、30後半ぐらいだろうか?
「説明して。あれは何?」
こら、長門。気持ちは解るが、まずはお礼が先だろう。
268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:06:10.09 ID:f2bzaDzFO
助けてもらったお礼をしてから、説明をしてもらう為にまた長門のマンションへ入る。
こんな時間に女の子の部屋には入れないと渋ったが、長門の有無言わさぬ視線に負けたのか今は大人しくお茶を啜っている。俺も長門が淹れたお茶を啜って、ようやく一息ついた。
「俺は南光太郎。クライシス帝国を追って、こことは違う世界から来たんだ」
どうやら長門の仮定は当たっていたようだ。
「クライシス帝国は、今から約20年前に現れた…。いや、まずは…」
そこで光太郎さんから聞いた話は、にわかには信じられなかった。
秘密結社ゴルゴム、世紀王ブラックサン、世紀王シャドームーン………。
そして、ゴルゴムの野望を打ち砕いた次に現れたのが、怪魔界と呼ばれる世界からの侵略者、クライシス帝国。
「……そうして、多くの犠牲を払いながらも、仲間と協力してクライシス帝国の皇帝を倒したんだ」
わぁ〜、と朝日奈さんが拍手をする。この人は話の発展がある度に喜んだり怯えたり悲しんだりと、のめり込んでいたからな。
269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:07:57.46 ID:f2bzaDzFO
ん?待てよ?
「あなたはクライシス皇帝を倒したと仰いましたが、あのスカル魔と呼ばれる怪人は…?」
俺の台詞を取るんじゃない。
「別世界の、クライシス帝国だ」
また別世界か…。
「パラレルワールド」
ここに来てようやく長門が口を開いた。
「私たちの世界が、20年前にクライシス帝国が現れなかった世界の可能性。数ある世界の中の一つ。その中には、クライシス帝国が滅ぼされなかった可能性もある」
待てよ、そんな事言ったらキリがないじゃないか。
「そう。だから通常、他の世界とは干渉出来ないようになってる。それが異世界と呼ばれる所以でもある。それが分岐世界ならば特に」
じゃあ何で、あいつらはこの世界に居るんだよ。
「誰かがそう願ったから……と考えるのが一番妥当でしょう」
誰が……とは聞かなくてもわかる。
入学式のあの日、俺は誰よりも近くで聞いていた。
“この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が居たら私の所へ来なさい”
270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:12:17.25 ID:f2bzaDzFO
「分岐世界同士で干渉し合うと、確率が乱れる…つまりキリがなくなる。だから思念体も干渉してこなかった。それに、パラレルワールドはそう簡単に生まれるものではない」
キリがないのに、簡単には生まれない…?こいつらは何を言ってるんだ。
「んふっ。仮に分岐世界が簡単に生まれてしまったら……例えば、あなたが右利きか左利きか、それだけで2つの世界が生まれてしまいます。それこそ本当にキリがなくなるでしょう」
どうでも良いが、お前はあまり長門の台詞を取るな。それから顔が近い。
それで、どのレベルなら世界は生まれるんだよ。
271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:14:31.66 ID:f2bzaDzFO
「世界が左右される場合…ですね」
朝日奈さん……。
「ようやくわかりました」
何がですか?
「私は、物事を規定事項通りにやらなければいけません。そうしないと未来が消えてしまうから。だから、パラレルワールドとか、分岐世界とか、おかしいなぁって思ってたんです」
そういえばそんな事もありましたね。
「でもそれは、未来が消えるんじゃなくて、未来が別の世界になってしまっただけなんですね。私には別の世界に行く事は出来ないから、消えてしまうのと同じですけど…」
どうやら俺だけ蚊帳の外だ。
「私が今まで禁則事項してきた規定事項は、すべて世界を左右するだけの規定事項だったんですね。だから、その規定事項を満たす為なら、例えキョン君の利き手が未来と違っても、未来は消えないんだと思います。その利き手が規定事項じゃないのならですけど……」
例えばこういう事だろうか?将来世界を左右するA君を助けるために、将来別に何もしないB君を犠牲にしても未来は変わらないって事か。世界を左右する事に関わらなければ、それがB君だろうがC君だろうがD君だろうが、いっそ全員でも未来は変わらない。
「言い方は悪いですが、今の朝日奈さんのお話の意味としてはその通りです」
272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/04(日) 03:16:42.82 ID:f2bzaDzFO
「うん。大体はそういう事だね」
大体って事はまだあるのか。
「別世界のクライシス帝国なんだが、俺の世界のクライシスと比べて規模が小さいんだ。それにこの世界でやっていた光る杭を打ち込んだり、自転車を盗んだり。……俺の世界のクライシスの真似……再現と言って良いレベルなんだ」
さっき言ってた再現とは、そういう事か。
「だとすれば、光太郎さんなら、次に起こる事を予想出来るのではないですか?」
鋭いな、古泉。
「実はね、今回の事も、最初の目撃情報から予想したんだ」
こっちも鋭い。
光太郎さんから次の予想を聞いて、この日は解散になった。
この予想は大きく裏切られる事になるのだが、まぁ…この時点ではまだわからない訳で…。やれやれ。
279 名前:もしもし ◆SugTrQ7KgI [] 投稿日:2009/10/04(日) 04:09:21.56 ID:f2bzaDzFO
ガイナニンポーくらったし、書き溜めもないんでもう寝ます
支援と保守、ありがとうございます。