1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 03:56:49.56 ID:QKj0zlmUO
猫「にゃー」
長門「………」クルッ
猫「………」
長門「猫………」
長門「………」スッ
長門「ちっちっちっ」
猫「………」
長門「ちっちっちっちっ」
猫「………」
長門「こっちだよー」
猫「………」
長門「……何故来ない」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 03:59:45.38 ID:QKj0zlmUO
猫「……にゃー」
長門「……もう行く」スッ
長門「………」テクテク
猫「………」ペタペタ
長門「………」テクテク
猫「………」ペタペタ
長門「………」ピタッ
猫「!」ピタッ
長門「………」クルッ
猫「……にゃー」
長門「……何故ついてくるの?」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 04:03:07.43 ID:QKj0zlmUO
猫「にゃー」
長門「……私には貴方の言語を理解することは不可能」
猫「にゃ」
長門「……困った」
長門「………」スッ
猫「………」
長門「………」
長門「……にゃーご」
猫「………」
長門「にゃーご」
猫「………」
長門「にゃ
キョン「長門?」
長門「!」ビク
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 04:11:05.88 ID:QKj0zlmUO
長門「……何」
キョン「いや…猫とにらめっこしてる友人を
見かけたら、そりゃ声のひとつもかけるさ(今絶対
猫と会話を試みてたよなこいつ)
長門「…帰宅の途中。特に何も。」
キョン「そうか。しかし可愛い猫だな」ス…
猫「ふーっ!」
キョン「…前言撤回だ」
長門「……貴方こそ何を?」
キョン「ああ俺か?世間ではおでんが美味しい季節に
なりつつあるからな。コンビニで調達してきた。ほら」ホカホカ
長門「おでん……」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 04:17:09.27 ID:QKj0zlmUO
キョン「おでん知らないのか?」
長門「私が生み出された際にその存在は情報として
登録はされている」
キョン「……するってーと」
キョン「実際に食べたことはないと」
長門「そう」
キョン「それはいささか勿体ないな。よし、
あそこの公園で一緒に食べよう」
長門「……分かった」
キョン「……それでさ」
長門「…?」
キョン「さっき『にゃーご』って
長門「言っていない」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 04:22:53.19 ID:QKj0zlmUO
長門「…私の家はもうすぐ」
長門「なのに何故わざわざ外で?」
キョン「いいか?コンビニのおでんというのはだな」
キョン「この寒さのせいでかじかんだ手を暖め」
キョン「そして芯まで冷え切った体を内から
暖めるために先人が考え出した、至高の
食べ物なんだよ」
長門「……そう」
キョン「そうだ。……それに」
猫「にゃー」
キョン「どうやらそいつもおでん様の慈愛を
賜りたいようだしな」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 04:34:10.53 ID:QKj0zlmUO
キョン「よっこらせっと」ドサッ
キョン「ツイてるな長門。今日は絶好のおでん日和だ」
長門「そうなの?」
キョン「そうだ」
猫「にゃー」
キョン「お、お前も分かるか」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 04:52:12.27 ID:QKj0zlmUO
キョン「さて、何がいい?」
長門「………?」
キョン「具だよ具。俺としたことがテンションに任せて
かなり買っちまったからな…」
長門「………これ」
キョン「しらたきか」
長門「………」フーフー
長門「いただきます」チュルリ
キョン「どうだ?」
長門「…美味しい」
キョン「そいつはよかった」
猫「にゃー」
キョン「お、すまんすまん。ほら、食え」
猫「」クチャラクチャラ
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 04:56:55.09 ID:QKj0zlmUO
長門「これは…?」
キョン「それはちくわぶだ」
長門「………」モッチャモッチャ
長門「………味がしない」
キョン「そういうもんなんだ」
キョン「ちくわぶはおでんの中では主食的な役割を
果たしているんだぞ」
長門「……理解した」
猫「」ハムッ
猫「………」プイ
キョン「こいつはお気に召さなかったようだな」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 05:15:01.92 ID:QKj0zlmUO
長門「これが…大根…」
キョン「そうだ。これだけトロットロのものは
そうお目にかかれないぞ」
長門「……」パク
長門「美味しい……」
キョン「そうだろうそうだろう」
猫「にゃあー」
キョン「お。お前も気に入ったようだな」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 05:20:22.28 ID:QKj0zlmUO
キョン「さあ長門。これを食べてみろ」
長門「…分かった」パク
長門「………」ハムハム
長門「………」ハムハム
長門「………」ハムハム
長門「………」ゴクリ
長門「……噛めば噛むほど味が出る」
キョン「そう」
キョン「それが牛スジだ…」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 05:32:05.05 ID:QKj0zlmUO
キョン「ただこれはおでんの具として認められない
場合もある」
長門「……何故?」
キョン「カレーに醤油しかり」
キョン「お好み焼きにチーズしかり」
キョン「いくら『合う』組み合わせだったとしても
それらを『邪道』として認めない人々が少なからず
いるのさ」
長門「邪道……」
キョン「そうだ」
キョン「それは決して悪いことじゃあない」
キョン「先人が生み出した料理を、生まれたままの姿で
継承していく…それもまた食の道」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 05:41:44.66 ID:QKj0zlmUO
キョン「だが……だが俺は」
キョン「無限に広がる食の可能性を、切り開いて
いくべきだと思うんだ」
キョン「その結果のひとつが……この牛スジなんだ」
キョン「これは食の更なる可能性へのあくなき挑戦が
生み出した、いわば奇跡の一品…!」
キョン「分かるか長門?」
長門(早く次が食べたい)
猫「」クチャクチャ
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 05:53:37.65 ID:QKj0zlmUO
キョン「ふぅ…結構あったな」
長門「私はまだまだいける」
キョン「残念だが、もうほぼ完しょ……」
長門「…どうしたの?」
キョン「…忘れていたよ」
長門「?」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:02:33.65 ID:QKj0zlmUO
キョン「ほら…飲め」
長門「それは…捨てるものではないの?」
キョン「いいから飲んでみろ」
長門「………」ゴク
長門「美味しい…」
キョン「ゆで卵から溶け出した黄身」
キョン「最後に加えたからし」
キョン「そしてチャレンジャー海峡よりも深い
昆布だしの味わい」
長門「………」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:07:30.13 ID:QKj0zlmUO
キョン「このだし汁スープを編み出したお方は
こうおっしゃったそうだ」
キョン「『おでんはだし汁の最後の一滴までもが
おでんなのだ』と」
長門「……自分の浅はかさに言葉も出ない」
キョン「いいのさ。これから学んでいけば」
猫「にゃ……」ゴシゴシ
キョン「お……おねむか?」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:13:02.87 ID:QKj0zlmUO
キョン「……よりによって」
猫「………」スースー
長門「………」ナデナデ
キョン「長門の膝の上で寝るとはな……」
長門「………かわいい」ナデナデ
キョン「…最初はあんだけ距離をとってたコイツも」
キョン「おでんがありゃ膝の上で寝られるほど
打ち解けられるんだな」
長門「……おでんのお陰」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:17:11.45 ID:QKj0zlmUO
キョン「……今度SOS団でおでんパーティーしような」
キョン「谷口と国木田も呼ぶか」
キョン「森さんと新川さん」
キョン「佐々木に橘、周防に藤原…」
キョン「とにかく…皆呼んでさ」
長門「……とても楽しみ」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:21:17.14 ID:QKj0zlmUO
一一一1カ月後
長門「………」パタン
ハルヒ「はい!じゃ今日は解散!!」
ガラッ
みくる「!! ふえぇ…廊下は寒いです〜」
古泉「もう吐息が白くなる時期ですから…それに
我々男性はまだしも、女性はスカートですしね…」
ハルヒ「みくるちゃん!だらしないこと言わないの!
SOS団の団員たるもの、永遠に風の子でなくちゃ
ならないのよ!!」
みくる「ふえぇ〜」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:31:01.66 ID:QKj0zlmUO
キョン「こらハルヒ。朝比奈さんをどこぞの
体力バカと一緒にするんじゃない」
ハルヒ「ちょ…キョン!?それ一体誰のことよ!!?」
キョン「さあな」
ハルヒ「生意気よ!キョンのくせに!」
キョン「お前は今世界中のキョンと呼ばれる人々を
侮辱したぞ」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:36:56.00 ID:QKj0zlmUO
ハルヒ「私が言ってるのは目の前にいる
うすらとんかちのキョンのことよ!!!」
キョン「うす…っ!?」
ハルヒ「団長に盾突いた罰よ、全員になにか
おごりなさい!!!」
みくる「はわわ……」
古泉「おやおや」
長門「………」
キョン「ちっ……わあったよ」
長門「………」グイ
キョン「…すそを引っ張るなすそを」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:40:36.56 ID:QKj0zlmUO
キョン「なんだ?食いたいもんでもあるのか?」
ハルヒ「由希がその手の自己主張するのは珍しいわね…
いいわよ、じゃ今日は由希が食べたいものにしましょ!」
キョン「まあ……俺が払うんだけどな」
長門「あなたが支払いをする必要はない」
長門「私の家に皆を招待する」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:43:33.46 ID:QKj0zlmUO
古泉「これは光栄ですね」
ハルヒ「なになに?ひょっとして由希の手料理!?」
長門「そう」
みくる「何をつくったんですかぁ?」
長門「おでん」
キョン「!」
古泉「おでんですか…いいですね」
みくる「この時期には一度は食べなきゃですよね〜」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:48:14.61 ID:QKj0zlmUO
ハルヒ「へ〜楽しみ!ねぇ餅巾着は入ってるかしら!
私あれ大好きなの!!」
由希「入れた。おでんの具としてある程度の知名度が
あるものは殆ど入れたつもり」
古泉「ではウインナーは?」
長門「入れた」
みくる「こ、高野豆腐は…」
長門「入れた。厚揚げじゃがいもがんもどき……
両手両足使っても数え切れない。」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:53:34.39 ID:QKj0zlmUO
由希→有希で。ズビバゼン…
ハルヒ「これは楽しみになってきたわね…!!」
キョン「ちょっと落ち着けハルヒ。(とはいえ
俺も長門のつくったおでんとあっちゃあ興奮せずには
いられないんだがな)」
ハルヒ「そうだ!有希の手料理なんて貴重な物、
さすがの私も独占するわけにはいかないわ!!
もっとたくさん人を呼びましょう!!!」
キョン「ハルヒ。まず長門に許可をだな……」
長門「構わない。食事は大勢で摂った方がいい」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 06:59:29.09 ID:QKj0zlmUO
古泉「では、お言葉に甘えて森さん達を……」
みくる「私今から鶴屋さんに電話してみます!」
キョン「しゃーねーな……谷口と国木田……あ、佐々木も
呼んでみるか」
ハルヒ「皆その調子で宇宙人未来人超能力者異世界人も
呼び寄せちゃいなさーい!!!」
キョン(まあ……その類の人達が大勢混じってるわけだが)
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 07:14:16.86 ID:QKj0zlmUO
ハルヒ「…でも、なんでおでんなの?他にも色々
あるじゃない。シチューとか、すき焼きとか。」
長門「特に理由はない」
長門「強いて言えば…」
一一一一一
朝倉「……長門さん、ちゃんと言えたかしら……心配だわ」
朝倉「あの長門さんが台所に立つなんて……よっぽど
美味しかったのね」
朝倉「いや……嬉しかった、のかしら」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 07:20:42.61 ID:QKj0zlmUO
朝倉「……なんかすっごいお腹空いて来ちゃった」
朝倉「長門さん達が帰って来るまで、2人していい子で
待ってようね〜」ナデナデ
猫「にゃー」
一一一一一一
みくる「強いて言えば……?」
長門「………」
長門「今日はおでん日和」
fin
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/29(火) 07:32:13.80 ID:QKj0zlmUO
読んでいただいてありがとうございます
兼ねてからまとめサイトでSS読んでて「自分も
書きたいなー」なんて思ってたわけで
そしてこの度バイト終わりでなかなか寝付けなかったので、
試しに『おでんを食べたい』という衝動に任せて
びびりながらも書いてみました
いかがだったでしょうか 感想をお聞かせ頂けると嬉しいです