1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 12:53:05.53 ID:NKpiinFD0
ハルヒ「キョン、あんた明日からこなくていいから」
のスレがもう書き込めなくなったんで次スレ立ててみました。
スレタイに特に意味はないです。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 13:01:49.38 ID:NKpiinFD0
長門「記憶…………」
キョン「ああ、戻っちまったみたいだ。もう少し慎重に聞こうと思ったが、
相手がお前じゃ意味はなさそうだからな。隠さず言わせてもらった」
長門「…………」
キョン「……何か理由があるんじゃないのか?俺を消したかっただけなら、
再構築する意味はない。ハルヒを静めるためなら、わざわざ俺を消すまでも
なかったんだろう?」
長門「……………あなたが普通の生活を欲しがっていたから」
キョン「……どういう意味だ?」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 13:16:18.36 ID:NKpiinFD0
長門「あなたは普通の生活を求めていた。そのために涼宮ハルヒから完全に
あなたの記憶を削除するために、一度あなたの存在を消し、涼宮ハルヒとは
無縁な場所に再構築した」
キョン「なるほどな、あれは俺のためだったのか」
長門「でも、涼宮ハルヒは再びあなたを望み、ここへ呼び寄せた。
記憶は完全に削除したはず。何故?」
キョン「……………それについては、俺は思い当たる節がある」
長門「なに」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 13:35:54.10 ID:NKpiinFD0
キョン「あいつはここに存在するはずのないもう一人の俺を呼び寄せたんだ。
だが、そいつはこの世には存在しない。いや、正確にいえば、そいつは俺自身でもある。
だから俺がここに呼ばれたんだろう」
長門「………どういうこと」
キョン「俺は以前、朝比奈さんと一緒に今から3年前の過去に行ったことがある。
最終的にお前に助けてもらったから、お前も覚えているだろ?
その時にあいつに会ったんだよ」
長門「……………」
キョン「あいつは、あの時に会った俺、ジョン・スミスを呼んだんだ。
俺ではなくてな。情報操作で消された俺は、あいつの頭から消された。
だが、あいつの頭にあるジョン・スミスは何故か消されなかった。
おそらく、記憶を消す時に、あいつの頭の中でジョン・スミスと俺は別の人間と考えていたからじゃないか?
だからジョン・スミスの記憶は残った。そしてあいつはそいつを呼んだ。
だが、そのジョン・スミスは本当はこの俺だ。だから俺が呼ばれたんだろう」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 13:44:38.63 ID:NKpiinFD0
長門「…………迂闊」
キョン「まあ、あくまで予想だ。真相は知らん。…………なあ、長門。
みんなに、俺の記憶を戻してくれないか?できれば、ハルヒや朝比奈さんが
ああなる原因になる前までの俺の記憶を。」
長門「…………戻したら、あなたは普通の生活を送れない」
キョン「今だってもう送れてない。…………なにより、本当はもうとっくの昔に
そんなもん諦めてる。………ハルヒと出会ったその日からな。」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 14:10:50.90 ID:NKpiinFD0
長門「そう。…………後悔はない…?」
キョン「ああ、やってくれ」
長門「…わかった」
長門「…………?!」
キョン「…どうした?」
長門「…………今日は難しい、また日を改めて」
キョン「そうか。わかった。すまんな、長門」
長門「(情報統合思念体の命令…………彼の完全な抹消…………)」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 14:27:01.57 ID:NKpiinFD0
次の日の教室
キョン「(今日、みんなの記憶が戻るわけか。
こうやって自分の記憶だけが戻ると、なんかみんなが俺に対してよそよそしい
からやりづらいな。まぁ、それも今日までの辛抱か)」
キョン「(思えば、俺がこうなったのもハルヒの原因だが、元に戻るきっかけも
ハルヒだったんだよな。………つくづく俺はあいつに振り回される運命にあるんだな)」
ハルヒ「…………ちょっと、さっきからなにチラチラ見てんのよ」
キョン「…いや、お前に白髪がないか探してただけだ」
ハルヒ「…………馬鹿じゃないの」
キョン「(まぁ、こういうのも悪くはないかもな)」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 14:37:35.82 ID:NKpiinFD0
すいません。ちょっと出かけてきます。
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 18:49:57.14 ID:NKpiinFD0
今帰った。今日中には完結する予定です。
SOS団部室
ハルヒ「あれ?今日は有希来てないの?」
古泉「珍しいですね。彼女が欠席するなんて」
みくる「なにかあったんでしょうか?」
キョン「(長門が来てない……?
どうしたんだ一体?…………まあいい。どっちにしろ今日も
あいつのところへ行かないといけないんだ。
会って確かめるとしよう)」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 18:58:12.12 ID:NKpiinFD0
(情報統合思念体の命令は絶対…………)
(でも、私は彼を助けたい。…………何故?)
(思考プログラムにエラーが発生している…………?
違う。思考プログラムは正常。)
(なら、何故…………?私の感情…………?)
(どうすればいい…………)
プルルルル
(…………) ピッ
キョン「よお、俺だ。開けてくれないか?」
長門「(…………)」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 19:08:16.51 ID:NKpiinFD0
長門「どうぞ」コト
キョン「ああ、わざわざすまんな」
長門「…………」
キョン「(…………今考えると、俺は困った時はこの部屋によく来てた気がするな。
この、長門が住む708号室に。………この部屋に来ると、なにか安心するんだよな。
ここにいれば、なんでも解決する、そんな感じだ)」
長門「…………」
キョン「…………なあ、長門。今日はどうしたんだ?
学校にきてなかったらしいが?」
長門「…………考えてた」
キョン「考えてた?何をだ?」
長門「……………」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 19:35:43.72 ID:NKpiinFD0
長門「…………私がどうしたいのか」
キョン「どうしたい?なにをどうしたいんだ?」
長門「情報統合思念体の命令を遂行するかどうか。
本来なら命令は絶対、私は常に遂行してきた。でも今回は違う」
キョン「悩んでんのか?」
長門「…………こんな状態は初めて。何が起きてるのか分からない」
キョン「…………それは、自分の考えを持てるようになったってことじゃないのか、長門」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 19:47:21.20 ID:NKpiinFD0
長門「…………そんなものは必要ない。任務遂行の障害」
キョン「そんなことはない、俺は嬉しいぞ、長門」
長門「…………嬉しい?なぜ」
キョン「お前が人間にまた一歩近づいたからさ。
悩んで、どう行動するか迷う。人間特有の醍醐味だ」
長門「私は人間ではない」
キョン「そんなことはないさ。お前は人間だよ。長門。
俺はもっとお前にそういう人間らしい感情を持ってほしいと思ってる」
長門「……………そう」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 19:55:25.06 ID:NKpiinFD0
キョン「どんな命令かは知らんが、それを受けるのも、拒否するのもお前の自由だ。
好きに行動すればいい」
長門「…………………………決めた」
キョン「そうか。どうするんだ?」
長門「……………こうする」
キョン「?!……………か、身体が…透けて………!(こ、これは。あの時と同じだ!
俺の存在が消された……あの時と……!)…………長門、お前が受けた命令は……」
長門「情報統合思念体の命令………あなたの存在を完全に抹消…………」
キョン「……………そしてこれがお前の出した答えか。長門」
長門「…………………………」
キョン「……………文句はないさ。これがお前の考えた結果ならな。
……………じゃあな、長門…………」 シュン
長門「…………………………さよなら……………」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 20:03:55.08 ID:NKpiinFD0
(……………ここは………どこだ………俺は…長門に……)
「キョンくん朝だよー」
ボスン
キョン「うっ!起こすならもっと静かに起こせ!」
キョン「(……………ん…?ここは、俺の部屋………?)」
妹「キョンくん遅刻するよー」
キョン「…………ああ、わかっとる」
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 20:09:24.70 ID:NKpiinFD0
キョン「(結局、どうなったんだ?長門は俺に何をしたんだ?
………記憶は消されてはいないようだが)」
谷口「よぉ!キョン!」
キョン「………ああ」
谷口「なんだぁ?元気ねえなあ!」
キョン「……………なあ、谷口。俺は、転校生なんだよな?」
谷口「はぁ?何寝ぼけたこと言ってんだよ。お前ここの入学式受けてた
じゃねえか」
キョン「(なんだと?……………こいつに俺の記憶が戻ってる。
……………まさか、長門が選んだ選択は…)」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 20:14:12.56 ID:NKpiinFD0
授業中
(まさか、今までの出来事は全部夢だったのか?)
(いや、それはない。あんなリアルな夢、あるはずがない)
(だが、夢じゃないという確信もまだ持てん……)
(一体どうなったんだ………あれから)
ハルヒ「……………ちょっと、キョン」
キョン「…………なんだ」
ハルヒ「……………今日、話があるから活動が終わっても部室にのこってなさい」
キョン「……………ああ」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 20:19:25.30 ID:NKpiinFD0
SOS団部室
ハルヒ「……………よし、みんな帰ったわね」
キョン「(長門は来なかったな………あいつに聞こうと思ったんだが)」
ハルヒ「ちょっと、キョン。聞いてるの?」
キョン「ん?……………ああ。で?なんだよハルヒ、話ってのは」
ハルヒ「……………キョン、あんた明日からこなくていいから」
キョン「(………?!)」
……………そうか、やっと確信が持てた。
今までのは夢じゃない。長門はこの時までの俺の記憶をみんなに戻してくれたんだな
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 20:36:04.86 ID:NKpiinFD0
ハルヒ「あんたいっつも私の意見に口出しして、やりづらかったのよ。
だから、もう明日からこのSOS団の活動には参加しなくていいから」
キョン「……………それに飽きたってか」
ハルヒ「え?そ、そうよ。わかってんじゃない。元々、あんたみたいな何の取り柄も
ない人間、面白くもなんともなかったのよ。今まではパシリとして置いてあげてたけどね」
キョン「……………すまんハルヒ」ギュ
ハルヒ「?!!?な、なに抱きついてんのよ?!は、離しなさいよ!」
キョン「…………俺はこのSOS団が好きなんだ。もっとお前と一緒に行動していたい。
俺がやる気ないように見えてたなら、改める。今度はもっと真面目にやる。
だから、クビになんてしないでくれないか?」
ハルヒ「わ、わかったわよ!わかったから離しなさい!」バッ
キョン「……………ありがとよ、ハルヒ」
ハルヒ「!?……………そ、そのかわり次からはちゃんと頑張りなさいよ!それじゃ!」パタン
キョン「(……………これであの最悪の事態は免れたか)」
ハルヒ「はぁ……はぁ………(な、なんであいつあんなに素直なのよ?
そんなにここが気に入ってたの?………それに、私と一緒にいたいって………)」
ハルヒ「?!な、なんで私顔がにやけてるのよ?……バカバカしいわ!」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 20:46:57.88 ID:NKpiinFD0
次の日のSOS団部室
ハルヒ「それじゃあ今日の活動を始めるわよ!今日は文化祭の出し物を
決めるわ!」
古泉「…彼女、いつにもまして元気に見えますね。
なにかあったんですか?」
キョン「さあな」
古泉「……………ふふっ」
キョン「…なにがおかしい?」
古泉「いえ、すいません。
ただ、あなたには感謝してもしきれないと思いまして」
キョン「ほーう。なぜだ?」
古泉「あなたのおかげで閉鎖空間の発生が防げてるわけなのですから。
あなたがいなかったらと思うと僕もゾッとしますよ」
キョン「そうか。…仮に、俺がいなかったらどうなってると思ってんだ?」
古泉「おそらく、毎日のように閉鎖空間が発生しているでしょう。
何といってもあなたは彼女の「鍵」なのですから」
キョン「……そうかい」
ハルヒ「そこ!私語はつつしみなさい!」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 20:57:57.82 ID:NKpiinFD0
ハルヒ「それじゃ、今日は帰るわ!また明日ね!」バタン
キョン「(長門………今日も来てなかったな)……なあ、古泉?」
古泉「なんでしょうか?」
キョン「お前、長門を覚えているか?」
古泉「?ええ、覚えてますが。どうしてですか?」
キョン「(あいつへの記憶がなくなっているわけではない、か。)…いや、最近見ないからな」
古泉「そうですね。まあ、何か彼女なりの考えがあるのでしょう。」
キョン「そうか。…あ、そうだ。朝比奈さん」
みくる「は〜い」
キョン「今日、少し話したいことがあるんで、時間もらえますか?」
みくる「大丈夫ですよ〜」
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 21:16:13.65 ID:NKpiinFD0
祝川の散歩道
みくる「お話ってなんなんですか〜?」
キョン「………単刀直入に言います。朝比奈さん。
俺は朝比奈さんが好きです」
みくる「そうなんですか〜。……え?え、ええええぇぇえ?!」
キョン「驚かせてすいません。でも、これが俺の正直な気持ちなんです」
みくる「そ、そんな………困ります……」
キョン「…ハルヒがいるから、ですか?」
みくる「……は、はい…」
キョン「そうですね。確かにこんなとこハルヒに見られたり、バレたりしたら大変
かもしれないです。でも、俺は自分の気持ちに正直に生きることにしたんです。
ハルヒがいるから出来ない、諦めろ。これはあいつにも失礼だと俺は思ったんです。
なにより、そんな考えでいたら、また俺はあいつと衝突してしまう可能性があるんです。」
みくる「で、でも……」
キョン「ハルヒがまだダメと決めたわけじゃない。確かに、今は
感情だけで拒否するかもしれないですが、でも、いつかはあいつもわかってくれる。
俺はそう賭けることにしました」
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 21:34:44.14 ID:NKpiinFD0
みくる「で、でも……でも…」
キョン「…朝比奈さんは、俺のことどう思ってるんですか?
正直に言ってください」
みくる「私は……私も……キョンくんのこと……好き…です」
キョン「嬉しいです。その言葉が聞けて」
みくる「で、でも……やっぱり、涼宮さんが…」
キョン「…じゃあ、こうしませんか?。あいつのいる所では普通にいる。
2人で会うときは、なるべくあいつに見つからないようにする。
見つかったら普通の対応をする。…こうまでしてって感じもありますが、
俺はあなたと付き合いたい。こうしてでも」
みくる「キョンくん……」
キョン「そして、いつかあいつが理解してくれる時がきたら、その時は
堂々と出てきてやりましょう」
みくる「……キョンくん……」
キョン「…朝比奈さん…」
みくる「ん……」
俺は朝比奈さんと交際の印となる口づけをした。
実際は俺はファーストキスではないが、俺の中では
これが本当のファーストキスになるだろう。これからも。ずっと。
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 21:48:40.96 ID:NKpiinFD0
>>141 おk
次の日のSOS団部室
古泉「…昨日はおめでとうございます」
キョン「……見てたのか?」
古泉「ええ、僕としては見るつもりはありませんでしたが、昨日たまたま
通りかかりまして」
キョン「…やれやれ。で、何か言いたいことがあるのか?」
古泉「ええ。まずは、おめでとうございます。
次に、……このことは今の涼宮さんには納得できないでしょうから、くれぐれも
ご内密に」
キョン「ああ、そんなことわかっとる」
とは言ってもやっぱり好きな人と付き合えるというのは嬉しいもんで、
正直今日だけでも3回は思い出してニヤニヤしてただろう。
だが、今はまだ浮かれている場合じゃない。最後にやることが残っているからな。
キョン「(長門…………)」
みんなに俺の記憶が戻って以来、俺は長門を見ていない。
……俺がここで普通に存在していることから、大体やな予感はしていたのだが…
キョン「(行ってみるか……。あいつの部屋に…)」
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 22:04:55.76 ID:NKpiinFD0
駅前のマンションの708号室。
ここに長門は住んでいる。
キョン「(長門……ここにいるのか?)」
俺は無言で708号室に呼び出しボタンを押した。
しかし、返事はない。
キョン「(………長門……)」
ウイーン
キョン「?!」
いきなり自動ドアが開いた。
これが意味すること。それは…
キョン「(そこにいるんだな、長門)」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 22:09:56.62 ID:NKpiinFD0
ピンポーン
俺は708号室のインターホンを鳴らした。
だが、ドアは動かず、返事はかえってこない。
コンコン
キョン「長門?いるんだろ?」
ドアをノックするが、それでも返事はない。
ガチャガチャ
キョン「(!…鍵が開いている)」
何気なく回したドアノブは、無抵抗だった。
キョン「……長門、入るぞ」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 22:19:30.24 ID:NKpiinFD0
部屋の中は、電気一つ付けられていなく、真っ暗な状態だった。
キョン「長門!いるのか?!」
叫んでも、俺の声が虚しく響き渡るだけで、返事はかえってはこない。
俺は部屋の電灯をつけながら、奥へと足を運んで行く。
そして俺は長門に相談を持ちかけた時によく使ってた、リビングの電灯を点けた。
その時、俺の視界に入ったものは、テーブルの前に正座で座っている、
見覚えのある小さな身体をした女の姿だった。
キョン「………いるなら、返事をしてくれ、長門」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 22:43:48.15 ID:NKpiinFD0
長門「……なぜ、ここに」
キョン「………お前が学校に姿を見せないからだ。心配したんだぞ。
どうして学校にこない?」
長門「……行く必要がなくなったから」
キョン「なぜだ?」
長門「情報統合思念体の命令を無視した結果、私は不良品と認定され、
役目を失うことになった」
キョン「…」
長門「私の役目は涼宮ハルヒの観測。でも、もうそれをする必要はない。
なら、学校へ行っても無意味」
キョン「…そんなことないぞ、長門。お前だって、れっきとしたSOS団の一員だ。
ハルヒだってそう思ってる。それを証拠に、あいつは口ではあまり言わないが、
お前が来ないことを結構気にしてるんだぞ?」
長門「………」
キョン「役目を失ったなら、普通の人間として生きていけばいい。
ここに住めなくなるのなら、俺の家に住めばいい。お前が学校へ行く
必要がないとしても、俺達はお前が必要なんだ。長門」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 22:52:54.07 ID:NKpiinFD0
長門「……それはできない」
キョン「……どうしてなんだ、長門。教えてくれ」
長門「……私はもう少しで廃棄処分される。
それに伴い、私に関しての記憶は抹消される。行っても無意味」
キョン「……そんなのアリかよ…。ダメだ!そんなの俺が許さん!
いや、俺だけじゃない!ハルヒだってきっと許さない!
お前は頑張ってたじゃないか!それであいつから信頼も得た!
なのに、なんで1回命令を無視しただけで、そんなことされなきゃいけないんだ!
……おかしいだろ……!」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 23:06:23.63 ID:NKpiinFD0
長門「………」
キョン「……あと、どれくらいここに残れるんだ?」
長門「……1時間。その時間になったら、私は回収され、廃棄される」
キョン「……それだけしかないのか…みんなに相談する時間もない…」
長門「……」
キョン「……はは、お前はこんな時でも無表情なんだな。
………なあ、長門。お前は、この生活をどう感じてたんだ?」
長門「………わからない。ただ、一緒にいて苦痛ではなかった」
キョン「……それはな、楽しいってことなんだよ」
長門「……楽しい?」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 23:16:09.79 ID:NKpiinFD0
キョン「ああ。一緒にいて、辛くない、落ち着く。それはつまり楽しいって
いう感情なんだ。」
長門「……感情」
キョン「そうだ。他にも、例えばハルヒが身勝手な行動を取ったらたまに俺は
怒るだろ?それも「怒り」っていう感情の一つだ。
長門「……怒り」
キョン「ああ、まあ、頭の中が冷静じゃなくなって、とにかく相手の言ってることを否定
したくなる状態かな?相手がどんなに正論を言ってたとしてもな」
長門「……わからない」
キョン「そうだな。たぶんこの感情がお前にとって一番わかりづらいだろうな。
他にも、色々ある。笑う、呆れる、怠ける」
長門「………」
キョン「そして……悲しむ。………俺が今、抱いてる感情だ。」
長門「………」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 23:24:24.36 ID:NKpiinFD0
キョン「……残念だな。お前が人間らしくなっていくところを見るのも、
俺の楽しみだったんだが」
長門「…そう」
キョン「……あと、5分か。……なんでこういう時の時間ってのは、こんなにも
早く感じちまうんだ」
長門「……」
キョン「長門、俺は絶対にお前のこと忘れないからな。…俺はひねくれてるからな、
忘れろと言われたら逆に覚えときたくなっちまうんだ」
長門「…………」
ポタ ポタ
キョン「………長門……お前…泣いてる…のか?」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 23:31:33.26 ID:NKpiinFD0
長門「わからない……こんなこと、初めて。」
キョン「……泣くってのは感情がある証拠だ。涙ってのは、感情が爆発した時に
出るもんなんだ。わかったろ。長門、お前はれっきとした人間なんだ」
長門「どうして……?苦しい………この世界にもっといたい」
キョン「長門……俺はさよならなんて絶対言わないからな。
お前のボスをぶん殴ってでも、こっちへ戻ってこい。」
長門「………時間……」 シュン
その言葉を最後に、長門は俺の前から姿を消した。
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 23:49:08.77 ID:NKpiinFD0
数日後
授業中の教室
キョン「(授業ってのは、なんでこう退屈なんだ?眠くてかなわん。
…ん?メールだ。朝比奈さん?)」
「今日お弁当作ってきました。昼休憩、屋上で待ってます」
キョン「(なんだかんだ、朝比奈さんってふっきれたら積極的だよな。
まぁ、俺は朝比奈さんの将来の姿を知ってるから、違和感はないが)」
みくる「こんにちは、キョンくん」
キョン「こんにちは、朝比奈さん。今日もいい天気ですね」
みくる「そうですね。あ、お弁当、良かったらどうぞ」
キョン「ええ、もちろん頂きます」モグモグ
みくる「ど、どうですか?」
キョン「とってもおいしいです。朝比奈さん」
みくる「本当?…よかったぁ…」
俺は最近学校へ来るのが楽しみだ。
こうやって朝比奈さんと会えるというのもあるが、他にも理由がある。
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/14(月) 23:58:36.43 ID:NKpiinFD0
SOS団部室
キョン「チェックメイトだ」
古泉「…参りました。相変わらず強いですね」
キョン「まあな。お前にはまだまだ負けん」
古泉「……最近、やけに嬉しそうですね。」
キョン「ん?そうか?」
古泉「ええ。何かあったんですか?」
キョン「…まあな。まだ何もないんだが、何かありそうなんだ。」
古泉「ふふっ、なるほど。そういうことですか」
そう。いつかはわからんが、必ずいつか「何か」がある。
俺はそう確信を持っている。なぜそんなものが持てるかというと、
ハルヒ「はぁ。…いいわね、あんたたちは悩みもなく遊べて」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 00:06:28.13 ID:pjE1cqd+0
キョン「なんだ、暗い顔して。シワ増えるぞ」
ハルヒ「うるさいわね。怒らせないでよ。
こっちは映画の撮影がしたくても、役者がいないせいでできないことに
ただでさえイライラしてるんだから」
キョン「そうかい。……確かに、いつくるんだろうな」
ハルヒ「知らないわよそんなの。……はぁ、これないなら何か理由でも
言ってくれればいいのに……有希」
そう、これが俺が確信をもった理由。
長門の記憶がまだ残っているということだ。
この記憶があるうちは、必ずいつかあいつは戻ってくる。
なにせあのハルヒが望んでいるんだから。
近いうち、部室の戸を開けたら、小さい身体の女がイスに腰かけ本を読んでいる
姿がまた見ることができる。
俺はそう信じている。
おわり
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 00:10:04.92 ID:pjE1cqd+0
ここまで読んでくれた人、乙です。
そしてありがとうございました。
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 00:17:23.91 ID:pjE1cqd+0
本当は違うオチを考えていたんだけど、こっちの方がいい感じだと
思ったんでここで終わらせましたw
最近究極に暇なんでまたSSスレたてるかもしれないけど、その時はまた
よかったらよろしくお願いします。
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 01:40:15.38 ID:pjE1cqd+0
これ書いたものですけど、全然眠れんので
何か書こうと思います。
人いるかわかんないけど案出して貰えたら嬉しいです。
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 01:49:09.02 ID:pjE1cqd+0
とりあえず後日談というか、番外編みたいなもん書きます。
ハルヒ「……ねえ、古泉君」
古泉「なんでしょう?」
ハルヒ「最近キョンとみくるちゃん、なんか怪しくない?」
古泉「怪しい…と、言いますと?」
ハルヒ「なんか最近やけに顔合わせてニコニコしてんのよ。
ここにいる時はそうでもないんだけどね。…なんか怪しいわ」
古泉「(…これはちょっとまずい展開になりそうですね)」
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 01:55:55.01 ID:pjE1cqd+0
とりあえず朝倉さんのやつ。
さて、俺は確かにこのSOS団に戻ってきて欲しい女がいるとは言った。
そして、今日ある女がこの部室に戻ってきたわけだが
朝倉「あ、キョンくん!久し振り!」
待ってたのはお前じゃねえよこの殺人未遂女。
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 02:06:29.23 ID:pjE1cqd+0
キョン「どうしてお前がここにいるんだ?」
朝倉「ん〜。なんていうか、長門さんの変わり?」
キョン「聞くな。そして俺の視界から消えてくれ。
こっちはお前にトラウマが残ってんだ。」
朝倉「まぁ、昔のことはいいじゃない。
私もちゃんと反省してるから」
キョン「どう見ても反省してるようには見えんがな。
お前長門に消されたんじゃなかったのか?」
朝倉「そうなんだけどね、長門さんの代わりに涼宮さんの観測を任されることに
なっちゃって。再構築してもらっちゃった」
キョン「…いや待て。色々とおかしい」
バタン
ハルヒ「みんなおはよう!あ、涼子もちゃんと来てるじゃない!」
キョン「涼子?!」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 02:11:00.90 ID:pjE1cqd+0
ハルヒ「なによキョン。何をそんな驚いてるのよ」
キョン「なんでいきなりそんなフレンドリーなんだ。
普通まずは驚くだろ?」
ハルヒ「いきなりって、元々涼子はここの団員じゃない。
なに言ってるの?」
キョン「…おい、お前どんな無茶やらかした?」
朝倉「えへへ」
キョン「えへへじゃねえ」
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 02:19:59.33 ID:pjE1cqd+0
朝倉「まあ、簡単に言えば、情報操作かな?」
キョン「さらっととんでもないこと言うな。
まさか、長門とお前の位置をすり替えたんじゃないだろうな」
朝倉「さすがキョンくん。物わかりが良くて助かるわ」
キョン「…なんて奴だ。で、なんで俺には情報操作してないんだ?」
朝倉「…まぁ、なんていうか。その方が面白いかな?って」
キョン「こいつ…」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 02:26:18.05 ID:pjE1cqd+0
ハルヒ「それじゃあ、今日は映画の撮影に行くわよ!ほら、キョン!
さっさと荷物持って!」
キョン「へいへい」
朝倉「あ、これが私の衣装かあ。かわいい〜」
おい、お前はポスト長門だろうが。
なら長門のポジションに徹しろ!
出しゃばるな!
古泉「…ふふ、なかなか珍しい光景で面白いですね」
キョン「…お前も情報操作されてないのか?」
古泉「ええ、どうやら、情報操作されているのは、涼宮さんだけのようです」
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 02:31:42.18 ID:pjE1cqd+0
キョン「なんだって?なんであいつだけ?」
古泉「正確に言えば、この中では涼宮さんだけです。
他の学校の生徒にはちゃんと情報操作がなされているでしょう」
キョン「そんなことをする意味がどこにある?確かに、ハルヒは
いじっとかないと面倒なことになるのは分かるが」
古泉「さあ、それは僕にも分かりません。ですが、
こんなことをする以上、なにか目的はあるのでしょう。」
朝倉「キョンくん大丈夫〜?荷物少しもとうか〜?」
キョン「…俺には楽しんでるようにしか見えんけどな」
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 02:44:32.37 ID:pjE1cqd+0
こうして、俺達は映画の撮影に行ってきた。
朝比奈さんにも情報操作はされていなかったため、朝比奈さんは
完全にぎこちない様子になってて、撮影はいつもの倍くらい苦労した。
ハルヒ「もう、ダメじゃないみくるちゃん!もっとシャキッとなさい!
シャキッ!と!」
みくる「ふぇぇ〜ごめんなさい〜(でも、だって、だって…)」
朝倉「…」ニコニコ
みくる「(あの人誰なんですか〜!ふぇぇぇぇぇ…)」
キョン「………」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 02:53:45.14 ID:pjE1cqd+0
そんなこんなで朝倉が来て、3日がたった。
相変わらず何を目的としてるのかもわからず、
SOS団のハルヒを除く3人には情報操作で記憶をいじる
こともなかった。
キョン「…いい加減教えてくれないか?
お前は何が目的だ。」
朝倉「……そうね、そろそろ教えてあげる。
時間もないしね」
キョン「(時間がない?)」
朝倉「私はね、長門さんがここに戻るまで涼宮さんの観測を
任されただけなの。だから、もうすぐ私はまた消えちゃうわけ」
キョン「……どういうことだ?」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 03:04:32.04 ID:pjE1cqd+0
朝倉「なんて言えばいいのかな。長門さんは今、命令無視をしたために
再教育というか、身体の点検みたいなものをされてるのよ。
でもそれには結構時間がかかって、その間の時間に涼宮さんに何か異変が
あったら困るから、私が代役としてきたわけ。」
キョン「…おい、ちょっと待て。…じゃあ、長門はここに戻ってくるのか?
廃棄処分はされてないんだな?」
朝倉「ええ。それに廃棄処分されてたら、
あなたたちの記憶に長門さんは存在してないわよ。
…もうそろそろ時間ね。」
キョン「長門が来たら、お前はどうなるんだ?」
朝倉「またしばらく待機でしょうね。あなたを殺害しようとしたのって、
意外と罪が重いのよ。」
キョン「どこの世界でも人殺しは重罪ってことか」
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 03:13:26.33 ID:pjE1cqd+0
朝倉「少しの間だったけど、楽しかったわ。
久し振りにクラスのみんなにも会えたし」
キョン「谷口は異常なまでの喜びっぷりだったな」
朝倉「…羨ましいな」
キョン「なにがだ?」
朝倉「長門さん。こんな素敵な仲間に囲まれて」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 03:21:22.20 ID:pjE1cqd+0
キョン「お前はその素敵な仲間の一人を殺そうとしたわけだけどな」
朝倉「ふふっ……それもそうね。……それじゃ、キョンくん。少しの間だったけど、
楽しかったわ。ありがとう。……さよなら」シュン
キョン「……さよなら…か」
朝倉は以前の長門と同じように、静かに俺の前から姿を消した。
さよなら、と言ったということは、もう会うことはないのだろうか。
キョン「(それは、考えすぎか。…今度会った時は、もう少し優しくしてやるか)」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/15(火) 03:26:37.51 ID:pjE1cqd+0
ふと、朝倉がいた立ち位置にもう一度目をやると、そこには違う女が
立っていた。
それは、無口で、何考えてるかわからなくて、小さな身体をしてるが頼りになる、
ショートカットの女………ずっと、俺が待っていた人間だった。
キョン「長門…………」
長門「………」
長門「…………ただいま」
キョン「………………おかえり、長門」
おわり