1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 22:52:23.42 ID:1cc/QcVA0
以前同じタイトルでスレ立てた者ですが、その時読んでくれてた人ありがとう
週末に書けなくて申し訳なかった
嫁さんが娘連れて実家に帰ってるので、今日中に最後までもう終えたいと思います
すでに書いた部分も少しだけ変わってる所があるので最初から投下していきます
BGMのURL書いてますが、これは俺が書き易くする為にしたことなんでスルーしてくれておkです
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 22:53:55.55 ID:1cc/QcVA0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=D9NFP0xGMpA&feature=related (いつもの風景)
ハルヒ「古泉君遅いわね!無断で部活を休むなんて、副団長として有るまじき行為だわ!」
ハルヒがまた大声でぷりぷり怒っている。
あいつが俺に対して怒っていれば、いつもどーーーりのSOS団なんだが、
今日は珍しくSOS団の副団長、古泉一樹に対して威勢の良い怒号を上げていた。
キョン「どうせ掃除当番かHRが伸びているだけだろ?」
ハルヒ「それにしたって遅いわよ。しかもここ数日ずっと部活に来ないじゃない!」
キョン「放っとけよ。あいつも色々忙しいんじゃないか?」
ハルヒ「絶対おかしいわ…ちょっと9組見てくる!!」
キョン「せわしない奴だな、全く…」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 22:55:12.45 ID:1cc/QcVA0
―――ガチャ
キョン「どうだー?どうせまだHRやってたんだろう?」
ハルヒ「…ううん」
キョン「じゃあ掃除してたか?」
ハルヒ「…かった」
キョン「ん?」
ハルヒ「…なかった」
キョン「すまん、なんだって?」
ハルヒ「だから!古泉君がいなかったの!!」
キョン「トイレにでも行ってるんじゃないのか?」
ハルヒ「カバンも体操服も何もかも無いのよ!古泉君の持ち物が何も無いの!!」
キョン「じゃあもう帰ったのかもな」
ハルヒ「っ〜…!もう!古泉君転校したのよ!教えなさいよ、このバカキョン!!」
キョン「は?古泉が転校??」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 22:57:53.03 ID:1cc/QcVA0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=JM9s7O4sP7Y&feature=related (何かかがおかしい)
ハルヒ「どうしちゃったのかしら…こんな急に何も言わず。絶対おかしいわ!」
キョン「ちょっと待て。俺はそんなこと聞いとらん。第一、まだそうとは決まったわけじゃないだろ」
ハルヒ「本当よ、9組の子に聞いたわ」
みくる「ふぇ…古泉君、転校しちゃったんですかぁ?」
ハルヒ「そうみたい…一体どうして…」
キョン「…」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 22:59:25.84 ID:1cc/QcVA0
キョン「なあ長門。お前何か知ってるのか?」
長門「」フルフル
キョン「そうか…お前が知らないとなると、ハルヒの望みって訳ではないんだな」
長門「そう。古泉一樹の突然の転校に、涼宮ハルヒは関与していない」
長門「真相を知るには直接彼に尋ねるしかない」
キョン「古泉に訊けって言われてもなあ…あいつの携帯、なんか繋がらないし」
長門「彼は今、携帯電話を使える状況下にいない」
キョン「どういうことだ?」
長門「彼は今、入院している。でも私は何故彼が入院しているのかまでは把握していない」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:01:38.81 ID:1cc/QcVA0
キョン「入院?なんでまたそんな急に」
長門「分からない。入院している病院は彼の機関が関係している」
キョン「俺が入院していたあそこか」
長門「そう。なお、古泉一樹の入院については涼宮ハルヒに伝えるべきではない」
キョン「そうだな…入院していると知れば、向こうの都合も聞かずに押しかけるだろうな」
長門「」コク
キョン「じゃあ俺今から病院行ってくるわ。ハルヒには急に家の用事が出来たとでも言う」
長門「分かった。気をつけて」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:04:04.87 ID:1cc/QcVA0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=BnofK_Xf8JQ&feature=related (恐怖のはじまり)
キョン「(この病院に来るのも久しぶりだな…本当にあいつ、ここにいるのか?)」
キョン「すみません、この病院に古泉一樹って高校生が入院していませんか?」
看護師「古泉一樹さんですか?えーっと…恐れ入りますが、こちらの患者さんは現在集中治療室に入っており、面会不可となっております」
キョン「集中治療室って、そんな酷い状態なんですか?」
看護師「プライバシー保護の為お答え致しかねますが…」
看護師「すみませんがこちらの患者さんとはどういったご関係で?」
キョン「あ、えっと、同じ高校の友達です」
看護師「そうですか、申し訳ありませんが面会謝絶の状態でして…」
キョン「…そうですか。分かりました、ありがとうございます」
キョン「(古泉の奴…集中治療室って、一体どんな状態なんだ?)」
キョン「(まさか閉鎖空間で大きな事故にあったとか?…有りうるな)」
キョン「(ん?あれは…森さんだっけか。彼女に訊けば何か分かるはず…)」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:07:34.50 ID:1cc/QcVA0
キョン「あ、あの!森さんですよね。お久しぶりです」
森「あ、あなたは…キョン、さん、ですよね」
キョン「はい。ご無沙汰しています」
森「ここに来たってことは…古泉のことを訊きに来たということですね」
キョン「はい…。転校したって聞いたら実は入院していると…」
キョン「しかも集中治療室に入ってるってどういうことですか?」
森「…あなたには本当のことを伝えないといけませんね」
森「分かりました、私に着いて来てください」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:09:10.31 ID:1cc/QcVA0
森「新川、車を出してちょうだい。彼を古泉の部屋へ連れて行くわ」
新川「一樹君の部屋へ、ですか?ですがあそこは…」
森「彼には知ってもらった方が良いと思うの。私の独断だけど…お願い」
キョン「古泉の部屋へ行くんですか?」
森「そう。今まで行ったことはある?」
キョン「いや、ないですけど…」
森「では、一人で住んでいるということは?」
キョン「あ、それは古泉から聞いています」
森「それなら話は早いわ。古泉についてあなたに知ってもらいたいことがあるの」
森「彼の部屋で話すわ。あそこがあの子を一番知れる場所だと思うの。お願い、新川」
新川「…了解いたしました。乗ってください」
森「ありがとう。さあ、あなたも乗って」
キョン「(…?一体あいつの部屋が何だっていうんだ?)」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:13:30.78 ID:1cc/QcVA0
―――キキッ!
新川「着きました」
キョン「(ここが古泉のマンション!?なんだこのでかい建物は…!)」
キョン「(こんな豪華そうな所に一人で住んでいるっていうのかあいつは!!?)」
後部座席の窓からその巨大なマンションをしげしげと見上げて思う。
森「ありがとう。新川、あなたも一緒に部屋へ来てくれる…?」
新川「ですが私は…あのような部屋をもう見たくはありません」
森「新川…私だけじゃだめなのよ。あなたにとっても、古泉は大切な仲間の一人でしょう?」
新川「……そうですね、覚悟しましょう。あなたも覚悟してください」
キョン「は、はぁ…(覚悟?一体何の覚悟だ??)」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:15:50.47 ID:1cc/QcVA0
―――ガチャ
森「どうぞ、奥へ入ってください。あ、靴は脱がなくていいですよ」
キョン「外国人かぶれですか」
新川「明かりを点ければ分かります」
キョン「?」
―――パチッ
キョン「なん…だ、これは…!」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:16:49.94 ID:1cc/QcVA0
古泉の部屋に入るまでは、「一体どんな部屋なんだろうか?」とずっと考えていた。
こんなでかいマンションなんだ、部屋もさぞかし広いんだろう。
高校生なんてガキに機関とやらはこんな立派な部屋を与えて正気か?
制服の着方と同じように、モデルルームのような綺麗に片付いた部屋なんだろうか。
それともあいつの書く文字のように、部屋は意外と散らかっているんだろうか。
などと、色々な古泉の部屋に対する勝手なイメージを思い浮かべていた。
森さんと新川さんに促されてリビングまでたどり着く。
やはり広い。高校生の一人暮らしに新築1LDKの部屋は経費の無駄じゃあないか?
すると、暗かった視界が新川さんが電気を付けたことにより一瞬にして鮮明になる。
そこには、血の海が、広がっていた。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:18:54.63 ID:1cc/QcVA0
古泉の部屋に入るまでは、「一体どんな部屋なんだろうか?」とずっと考えていた。
こんなでかいマンションなんだ、部屋もさぞかし広いんだろう。
高校生なんてガキに機関とやらはこんな立派な部屋を与えて正気か?
制服の着方と同じように、モデルルームのような綺麗に片付いた部屋なんだろうか。
それともあいつの書く文字のように、部屋は意外と散らかっているんだろうか。
などと、色々な古泉の部屋に対する勝手なイメージを思い浮かべていた。
森さんと新川さんに促されてリビングまでたどり着く。
やはり広い。高校生の一人暮らしに新築1LDKの部屋は経費の無駄じゃあないか?
すると、暗かった視界が新川さんが電気を付けたことにより一瞬にして鮮明になる。
そこには、血の海が、広がっていた。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:20:02.56 ID:1cc/QcVA0
ミスった…orz
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=KLJzfwffWXY&feature=related (ミステリータイム)
バケツをひっくり返したように広がる赤黒い液体の他に、
それと同じ色に染まった白いラグ、ローテーブル、報告書作成の為のラップトップPC、
学校で使う教科書、ゴミ箱、隣の洋室にはベッド。
キッチンにはコップと小さな鍋がそれぞれ一つずつと、
口の開いたミネラルウォーターのペットボトルが一本。
しか、この部屋にはなかった。およそ娯楽と呼ばれるような代物は何も無く、
壁にはカレンダー一つ掛かっていない。カーテンさえも備えられていなかった。
キョン「(散らかるも何も、なんにも無いじゃないか。こんな部屋であいつはどうやって暮らしていたんだ?)」
唯一整頓されていないベッドの上の毛布が、
古泉はベッドの上の分の面積しか自分の居場所がないんじゃないかと俺に思わせた。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:21:21.77 ID:1cc/QcVA0
キョン「何ですか、これ」
森「古泉の、血液です」
キョン「それぐらい見れば分かりますよ!俺が知りたいのは…、どうしてこんなことになってんですか!!」
森「……古泉は…不治の病に犯されていました」
森「超能力の度重なる使用が原因だと思われます。まあ、それだけでは無いのですが…」
キョン「他にも何か原因があるんですか?」
新川「原因というよりも、病状を悪化させたと言うべきでしょうか」
キョン「どういう意味ですか?」
森「古泉には、あなたや私たち以外に頼れる人がいないの」
森「友達も、家族も」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:22:49.88 ID:1cc/QcVA0
森「古泉はあなた達や私達に、必要無い位気を配るのに、自分には酷く無頓着でした」
新川「力の酷使が原因で病に至り、それが発覚した時も静かに笑っておりました」
キョン「古泉…」
森「勿論、我々は止めました。機関の人数は余り多くないとは言え、一人位の穴はまかなえます」
新川「しかし、古泉は首を横に振るばかりで…」
古泉『皆さんに迷惑をかけるわけにはいきません。体の保つ限りは僕も実戦に出ますよ』
新川「そう言って、第一線で神人退治に向かっておりました」
森「きっと常に戦いに出て、自分が超能力者であることを認識したかったのかと…」
新川「超能力者であることが、我々と古泉を結ぶ糸であり、またあなた方と古泉を結ぶ糸でもあったのでしょう」
森「その糸が無ければ、古泉はどこにも繋がることが出来ない。また孤独になってしまうと恐れていたのでしょうね…」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:24:13.73 ID:1cc/QcVA0
キョン「ちょっ、ちょっと待ってください。まず家族がいないってどういうことですか?あいつにだって、実家ぐらいはあるでしょう?」
キョン「まあ、友達がいないっていうのは何となく分かりますけど…」
新川「彼に実家なんてものは、もうございません」
キョン「?」
森「古泉のお父様もお母様もお友達も、みんな彼に関わった人たちは“古泉一樹”を知らないわ」
キョン「?あ、えっとー…よく分からないんですが…」
森「我々機関の人間…、主に神人と直接対峙する能力者たちは、家族と離れて暮らさなければなりません」
森「そして家族の元を離れる際に、これから機関に加わろうとする人間の存在を抹消する必要があるのです」
キョン「どういうことですか?」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:25:28.49 ID:1cc/QcVA0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=Q5rlI8Y9m8w (長門の告白)
新川「最近は涼宮ハルヒの精神状態は安定していると言えますが、
御存知の通り高校へ入学する以前の過去3年間は常に不安定な状態でした」
新川「いつ何時閉鎖空間へ向かわねばならないか分かりません。
朝、昼、夜、食事中であろうが、深夜寝ていようが関係ないのです」
新川「そして機関の人間…、一樹君のような超能力を持ってして実際に閉鎖空間へ赴き神人を倒す者は、
それが義務である為に逆らえないのです」
新川「家族の中にそのような人間がいては、家庭が崩壊するかもしれません。
そして一般人に涼宮ハルヒの力を知られてはならない」
新川「それ故に、機関の人間を知る人々の記憶は抹消せねばならないのです」
新川「一樹君の場合、“古泉一樹”という人間を知る者全員の記憶から、
“古泉一樹”に関する全ての記憶を消したという訳です。つまり、“存在”が無くなった」
新川「無論、機関に入り周りの人々の記憶を消した後は、絶対にそういった人たちと接触をしてはなりません」
新川「接触したところで、初対面の見知らぬ人に対する態度で接せられるだけなのですが…」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:26:38.47 ID:1cc/QcVA0
なんだなんだ?一体何を言っているんだこの人たちは。
二人の話が本当のことだとすると、古泉は正月も、盆も、母の日も、父の日も、自分の誕生日も、
ずっとこの何も無いだだっ広い部屋に一人でいるっていうのか?
ただ実家から学校が遠いということなんじゃないのか?
てっきり団活の無い週末は実家へ帰ってると思っていたぞ。
高校1年生の、まだたった16歳のガキじゃないか。
まてまて、そもそも機関に入った頃からっていうことは中学1年の時からこの部屋で独りなのか?
古泉の突然の失踪、古泉の部屋に広がる血液、そして古泉の過去を、
センター試験1ヶ月前の受験生のごとく情報を詰め込まれた俺は混乱し、
すぐにその話を「そうなのか」、と信じることは出来なかった。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:28:05.94 ID:1cc/QcVA0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=WfpBP0c2QRs&feature=related (沈んだ心)
キョン「すみません、あまりにも話がぶっ飛んでいて信じられないんですが…」
森「今は信じても信じなくてもどちらでも構いません。でも私たちは事実を述べているだけなの」
キョン「はぁ。もしその話が本当だとしたら、古泉は13歳の頃から一人暮らしで家族がいないってことですか?」
森「はい。彼が機関へ入った頃からずっと、私が彼の教育係でした」
森「ですが上司としての立場が前提の為、食生活などのプライベートな部分への関与はしておりませんでした」
森「北高への転校も5月に入り、高校に進学してやっと慣れ始めて友達が出来るという頃だったのですが…」
森「中学校の3年間は、毎日毎日時間も場所も関係なく閉鎖空間へ赴き神人の相手をする日々でしたから、
古泉に友達を作れる時間なんてものはありませんでした」
森「何一つ自由の無い世界を一人で生きていくには、まだ幼すぎる年齢だったのです」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:29:28.99 ID:1cc/QcVA0
キョン「…。信じがたい話ですが、森さんや新川さんがそんな嘘をつくような人には思えません」
キョン「ですが今は、取り敢えず保留ってことでもいいですか?…古泉の、本人の口から聞くまでは信じません」
森「分かりました。今は意識が無くICUに入っておりますが、いずれ意識は回復するでしょう。
その時はお知らせしますので、今日はもう遅いのでご自宅へお送り致します」
キョン「…分かりました、よろしくお願いします」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:32:05.39 ID:1cc/QcVA0
帰りの車の中、酷く眩暈のする赤黒い液体の景色から解放された俺は、せきを切ったように二人に質問しまくった。
古泉はあんな何も無い部屋で、一体どうやって生活していたのか。
食事は即席の物や栄養補助食品にサプリメントだけで、衣服は機関が支給しているのだそうだ。
キョン「(そんなもんしか食ってなくて何だってあいつは俺より身長があるんだ、クソッ)」
せめてテレビぐらいは置いてやれないのか。
涼宮さんの理想の“古泉一樹”像の為に、少しでも勉強をして良い成績を維持しなければならない。
SOS団の放課後と週末の団活、そして閉鎖空間での神人の相手、
その後の機関への報告のレポート作成を考えると、食事も娯楽もしている時間は無い、らしい。
なぜあの血を片付けずにずっと放置しているのか。
答えは超能力の酷使が原因で倒れたのは古泉が最初で、今後の研究材料の為なんだそうだ。
古泉は機関の中でも若く最年少で超能力者になった者でもあり、癌のように若ければ細胞も若い分症状の進行も早いんだと。
もっと早く気付けなかったのかと問うと、二人は顔を歪めて黙ってしまい、
結局答えは訊けないまま自宅の前に着いてしまった。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:35:34.30 ID:1cc/QcVA0
車を降りて最後に「本当に古泉は助からないのか」と問うと、森さんは黙ったまま頷くことしかしなかった。
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=Ik0tDZK_ZAo&feature=related (ハルヒの告白)
それから数日、放課後になり文芸部室へ向かうも、そこにはやはりと言うべきか、古泉一樹の姿は無かった。
夢なら夢であって欲しい。散々遊んでもう飽きたオセロや将棋がまたやりたいと思うのはなぜだろう。
いつも俺が勝って古泉が惨敗するボードゲームの数々に、「字が上手くなりますように」と書かれた七夕の短冊。
急に持ち主の無くなったそれらは、もう何年も人の目に触れられていないように見えて仕方がなかった。
長門は相変わらず無表情だが、古泉が居なくなる以前に比べ本を閉じる時間が早くなった気がする。
朝比奈さんは使わなくなって一つ余っている古泉の分の湯のみを、じっと淋しそうに見つめていた。
ハルヒはあれからずっと古泉の突然の転校について色々探りを入れているようで、
SOS団のサイトの更新も放ったらかしに方々走り回っている。機嫌もあまり、よろしくない。
俺は俺で胡散臭い笑顔を振りまいて学校中の女子から憧れの対象として見られる、非常に鬱陶しいイケメンニヒル野郎なのだが、
あいつが居ないと俺はこの部室で何をして過ごせばいいのかさっぱり分からん。
部員の一人欠けたSOS団の団活は、なぜだか分からんがつまらなくて、時間が経つのが凄く遅く感じられた。
キョン「(なあ古泉、お前何ずっと寝てるんだ…。早く、帰ってこいよ)」
森さんから俺の携帯に古泉の意識が回復したとの連絡が入り、
新川さんの運転で古泉の居る病院へと向かうこととなったのは、その日の帰り道の出来事だった。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:39:41.29 ID:1cc/QcVA0
言うの忘れてたけど、なんだか腐っぽく見える箇所があるかもしれんが、
全くもってそれは無いから、普通の友情として見てやってください
俺、古泉をガチホモにする風潮はきらい(´・ω・`)
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:50:16.75 ID:1cc/QcVA0
俺が病院に着くと、意識が回復した古泉は集中治療室から一般病棟の個室へ移ったようで、
森さんが部屋へと案内しながら色々と説明してくれた。
森「昨夜意識が回復し目が覚めて落ち着いたようなので、一般病棟へ移ることが出来ました」
キョン「今古泉は起きているんですか?」
森「えぇ。ゆっくりですが、話すことも出来るでしょう」
キョン「俺、色々あいつに訊きたいことがあって二人きりで話したいんですが…いいですか?」
森「古泉が良いと言うなら構いませんよ」
キョン「ありがとうございます」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:57:05.36 ID:1cc/QcVA0
数週間振りに見た古泉は、肌は青白く骨が浮き上がっていて、綺麗だった髪にはつやも無く、
何本もの細い管が身体に突き刺さり、色んな色の液体が古泉の身体を出たり入ったりを繰り返して、
呼吸の度に少しだけ上下する薄い胸には機械が取り付けられ、その元を辿ると、
数値化された古泉の心電図や心拍数や呼吸数や血圧などが、弱弱しくモニターに映し出されていた。
その様子はいかにも病人で、一目で俺の脳に「もう助からないんだ」と理解させるには十分だった。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/10(木) 23:58:44.96 ID:1cc/QcVA0
キョン「こい、ずみ…」
恐る恐る声を掛けると、古泉はゆっくりと目蓋を開けて俺を見た。
古泉「どう…して、あなたが、ここ、に…?」
酸素マスクのせいなのか、はたまたもう体力が無いのか、上手く話せないその様子に、酷く心が締めつけられて痛んだ。
キョン「古泉、少し話せないか?無理ならいいんだ、俺が話すのを聞いてくれているだけでもいい」
古泉「…」コクン
その小さな頷きを合図に、俺はベッドの隣に備えられた椅子に腰掛け話し始めた。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:11:23.16 ID:wYQ37zIY0
話を聞いているだけでいいとは言ったものの、俺の口から出てくる言葉はほぼ全て質問だった。
キョン「森さんと新川さんから、機関のこと、お前の過去のこと、お前の病気のことを聞いた。
それからお前の部屋にも行った」
古泉「…すみ、ません、あ…んなものを、お見せして…」
お前はこんな時まで謝るのか。お前は何も悪く無いだろう、真性のアホか。
今は他人じゃなくて自分の心配をしろよ。
キョン「気を悪くしたらすまんな…。あのさ、お前、家族居ないのか?」
しばらく何も答えずに天井を見つめるだけの古泉を見て質問したことを後悔したが、ゆっくりと少しずつ話してくれた。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:04:18.61 ID:wYQ37zIY0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=6hlqmmAh1x0&feature=related (崩壊)
古泉「おそらく、あなたが二人から聞いたことは全て本当です。彼らは嘘はつきません」
古泉「僕には家族も友達も居ません…。機関に入る以前に僕と関わった人はみんな、僕に関する記憶は全て消去されましたから…」
古泉「でも、もういいんです。それが僕の運命ですし、元々家族との交流は少ない方でした」
古泉「父は医者で母は看護師。二人とも救急の病棟で勤務していましたので、滅多に家に帰ってくることはありませんでした」
古泉「あの部屋を見ると想像付かないかも知れませんが、小学生の頃はよく料理をしていたんですよ」
古泉「僕は一人っ子で親戚とも疎遠だった為、自分でなんとかするしかありませんでしたから…。
運動会も、授業参観も、卒業式にも両親の姿はありませんでした」
古泉「ああ、今気付きました…。僕、家族との思い出が全くありません…一つも、思い出せない」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:13:48.08 ID:wYQ37zIY0
>>49の続き
古泉「機関へ入ってすぐの頃は、『これは夢だ、すぐにお父さんお母さんの所へ帰れる』と思って泣いていました」
古泉「今だから話せますが、当時神人と闘っている間に事故に遭いまして、生死を彷徨ったことも何度かあります」
古泉「時間も場所も関係なく暴れだす神人ですから、毎日のように突然居なくなる僕は、
新しい学校で変人扱いされてイジメられ、一人も友達を作ることが出来ませんでした」
古泉「親も友達も居ない一人の生活でしたから、段々と性格は暗くなり、『家族の元へ帰れる』などという幻想は抱かなくなりました」
古泉「本来の僕ならこんな風に笑えません。涼宮さんが抱いている“古泉一樹”の人物像に感謝です」
古泉「そんな中学生活を終え、高校へ進学することになりました。両親を喜ばせたくて医者になろうと、
偏差値の高い進学校へ進み、新しい環境で友達作りも頑張ろうとしました」
古泉「でも…5月の連休中に、森さんから北高への転入令が告げられました。
『神様が急な転校生を望んでいる』と」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:17:00.75 ID:wYQ37zIY0
古泉「結構、僕、あの学校楽しくなりそうだったんですよ。
友達になれそうな、気の合う人とか居たりして…まだ一ヶ月なのに」
古泉「正直、すごく転校するのが嫌でした。ですが僕には決定権が無い。
それ以前に選択権がありません。神様の意向に沿うしか無いのです」
古泉「『もう消えて無くなってしまいたい』、そう思ったことは何度もありました。
本当に自由の無い、常に危険と隣り合わせの生活で、誰にも頼れず、誰からも関心されない。
たった一人の少女の気分次第でそれまでの生活の全てが壊され、しかもそれは『誰でも良かった』。
ならなぜ僕がその役なのか。考えても考えても答えの出ない問いかけを繰り返し、僕は神様を恨みました」
古泉「ですが北高へ来て初めて涼宮さんをこの眼で見た時、凄く驚いたんです。
神様は想像していた以上に綺麗で、純粋で、意外に脆くて、そして優しかった」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:20:02.01 ID:wYQ37zIY0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=IaVas4rQsXw&feature=related (なつかしい日々)
キョン「古泉…」
古泉「彼女と接している内に、こんな純粋な神様が、『世界なんて壊れてしまえば良い』
などと思っているようには見えなくなり、神様を操る何か別の“存在”を意識するようになりました」
古泉「今でもそれが何なのかは分かりません。ただ、涼宮さんを恨むような気持ちは無くなりました」
古泉「思えば涼宮さんの力も無意識の内。『自分の精神状態によって世界が崩壊する』なんて、
もしもあなたが彼女の立場でその事実を知ればどう思います?“サトラレ”の気分ですよ。
僕の考えで言うと、彼女もまた“何か”に操られた被害者なのかも知れないのです」
古泉「そう思うと、涼宮さんに対し恨みなどといった感情は無くなり、SOS団での活動時間が楽しくなりました。
閉鎖空間の次に僕を必要とし、僕が存在する意義のある場所でしたから…淋しさが紛れたのかもしれませんね」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:24:58.25 ID:wYQ37zIY0
―――ガラッ…
森「そろそろ面会時間が終わります」
キョン「えっ、もうそんなに時間経ってましたか」
ゆっくりと口を開く古泉の話の内容に集中していたからか、時間の経過をすっかり忘れていたようだ。
キョン「すみません、あと10分…、いや、5分いただけませんか?」
森「5分ですか…。古泉、あなたは大丈夫?」
古泉「」コクン
森「では、あと5分だけ…。その後は新川がご自宅までお送りしますから」
キョン「すみません、ありがとうございます」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:29:57.38 ID:wYQ37zIY0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=5s-TmBiMxhM&feature=related (てのひらの中の世界)
キョン「…なぁ古泉。デリカシーの無いこと聞いてすまないが……お前、もう治らないのか…?」
古泉「…そうですね、誠に不本意ですが、もう身体が言うことを聞いてはくれないようです」
古泉「病気は前々から薄々感付いていました。ずっと身体の調子が悪く、体重は減る一方でしたから…。
でもそのことを確信したく無かったんです。涼宮さんの願う“超能力者の古泉一樹”を演じることが、
僕の存在意義であり、他人と関われる唯一の方法でしたから、病気を理由に失いたくはありませんでした」
古泉「ずっと、先延ばし先延ばしにしていたら、ある日閉鎖空間で倒れてしまって…。
病院で検査する羽目になってしまいました。森さんや新川さんの二人は休めと仰って下さいましたが、
僕のつまらない意地の為にそれを断り続けました。その結果が、こうです。自業自得なんですよ」
古泉「先日、自宅で血を吐いて意識を失ってしまいまして。機関からの出動要請が出ているにも関わらず、
一向に電話に出ない僕を呼びに森さんが部屋に来て倒れている僕を見つけた、という次第です」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:33:30.21 ID:wYQ37zIY0
キョン「…例えば!例えば…、ハルヒがお前の回復を願ってそれが現実になるってことは無いのか…?」
古泉「どうでしょう…?僕の今の状態は、簡単に言えば“危篤”と呼ばれる状態です。
あなたもご存知の通り、涼宮さんは至極常識のある人です。
死んだ人間を生き返らせられないのと同じように、『もう助からない』と分かっていれば、
おそらくは、無理でしょう…」
キョン「くっ…!」
古泉「そうだ…。最後に一つ言い忘れていましたが…先ほど、機関の人間に関わった人々の記憶は消される、
と言いましたよね。あなたもその対象です」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:37:22.72 ID:wYQ37zIY0
キョン「…は?お前、何言って…!」
古泉「僕が消えた後、いつまでも僕の記憶を持ったままでは今後のSOS団の活動に支障を来たすでしょう。
対象は、北高の生徒や教職員全員です。宇宙人の長門さんは分かりませんが、朝比奈さんもその対象となります。
まあ、要は、僕を知る人全員です」
キョン「…」
古泉「そんな顔しないで下さい…“消す”のではありません。“消える”のです。
“古泉一樹”は最初から存在していないのです。ですから、あなたが気を病む必要はありません」
キョン「お前…怖くないのかよ」
古泉「そりゃあ怖いですよ…!でももうどうすることも出来ない…仕方ないんです。
そういう運命なのだと、覚悟しているつもりです」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:40:32.61 ID:wYQ37zIY0
―――ガラッ
森「そろそろ、良いかしら…?」
キョン「…」
古泉「えぇ。今日のところはもう帰ってお休みください。どうか気をつけて」
キョン「…また、明日来るから」
古泉「ふふっ、こんなところに来てないで、涼宮さんのお相手をして下さいよ。それが僕の願いです」
キョン「…」
森「じゃあ古泉、私達は彼を送ってきますから」
古泉「はい、ありがとうございます。お休みなさい」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:48:12.56 ID:wYQ37zIY0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=OmgvBcuO_lQ (伝えたいキモチ)
あれからずっと古泉が言った言葉の数々が頭の中に焼き付いて離れなかった。
古泉に関する記憶が消える?あれだけずっと一緒に居たんだぞ?夏休みだって、何回繰り返したんだよ。
そんな簡単に忘れられる訳がないじゃないか。
ハルヒだって朝比奈さんだって長門だって鶴屋さんだってついでに谷口も国木田も俺の妹も…!
SOS団の副団長、いや、大切な友達の存在をみんな忘れる訳がない…!
俺は、そんなの、絶対に信じない。
古泉の訃報を知らせる電話が鳴ったのは、見舞いに行った三日後の朝だった。
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:52:51.87 ID:wYQ37zIY0
森「もしもし、森です。朝早くにすみません……古泉が、死にました」
キョン「…」
森「最期はほんと、それまでの苦しみが嘘のようで、まるで眠るかのように息を引き取りました」
キョン「…」
森「古泉は最期、あなたにこう言っておりました」
古泉『今まで本当にありがとうございました。
あなたのように、普通の友達として僕に接してくれる同年代の人は今まで居なかったので、本当に嬉しかったです。
もしかしたら僕の死を悲しんで下さっているのかも知れませんが、やっと休める、と安堵している部分もあるのですよ。
どうか気に病まないで下さい。そして、僕のことは早く忘れてください。色々と申し訳ありませんでした。
涼宮さんの…、神様の心からの笑顔が訪れる瞬間に、僕も立ち会いたかったです』
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 00:57:11.99 ID:wYQ37zIY0
キョン「…」
森「葬儀などは執り行いません。数時間もすれば、みんな古泉に関する記憶は無くなるはずです。
ですからあなたは、普段通りの生活を送って下さい。
古泉が居なくなった以上、私達と直接関わることももう無いでしょう。古泉のこと、ありがとうございました」
キョン「…」
森「どうかお元気で。涼宮さんを、幸せにしてあげて下さい。では」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 01:00:17.00 ID:wYQ37zIY0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=QgV2ok4gGcc&feature=related (ハルヒの想い)
涙は、不思議と出なかった。
ただ、なんだか胸にぽっかりと大きな穴が開いたようで何も考えることが出来ず、
俺はその日一日中、部屋から出ずにぼーっとして過ごした。
後から聞くとその日、SOS団の団員は偶然にも全員学校を休んでいたそうだ。
夜になっても何もする気になれず、ついに誰とも話さないまま俺は眠りについてしまった。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 01:05:40.55 ID:wYQ37zIY0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=FSuFj5zzuaM&feature=related (そして、いつもの風景)
―――翌日
ハルヒ「あーーーもう!一体どうしたって言うのよ!担任に聞いても学年主任に聞いても何にも分からない!!!
全く、この学校の生徒の家庭環境の把握はどうなってんのかしら!
ホント使えない奴らばかりなんだから、全く!!!!」
キョン「(今日もギャンギャンとハルヒが吠え回っている。やかましい奴め。少しは大人しくしろ)」
ここSOS団の部室、もとい、放課後の文芸部室ではいつも通りの風景が広がっていた。
ハルヒがこの代わり映えのしない平凡な日常に対して文句を言い、
朝比奈さんがそんなハルヒをなだめるように、健気にも毎日ちゃんとメイド服を着てお茶を提供する。
長門はそんな様子には眼もくれず、分厚いミステリー小説を読み耽っていた。
俺はといえば、エンジェル朝比奈さんが注いでくれた貴重なお茶をすすり、散々遊んで飽きたオセロやら将棋のボードゲームを…
キョン「(あれ?俺、ボードゲームなんて誰とやってたんだっけ…?)」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 01:09:41.06 ID:wYQ37zIY0
長門は本を読んでいるし、ハルヒはボードゲームの相手なんてする筈が無い。朝比奈さんはメイド業に勤しんでいる。
ゲームをする相手の居ない俺は手持ち無沙汰となり、仕方が無いのでハルヒに何をそんなに怒っているのかと訊いてやった。
キョン「おいハルヒ。何をそんなに怒っているんだ?カルシウムが足りてないのか?
だったら俺が奮発してお前に牛乳を買ってきてやらんでもない。それで静かになるなら安いもんだ」
ハルヒ「うるさい!カルシウム不足で怒るなんて、そこらの一般人と一緒にしないでよ!!」
キョン「(一般人じゃなきゃお前は一体何なんだよ…)」
キョン「じゃあなんでそんな怒っているんだ?」
ハルヒ「古泉君よ!あれからずっと色々聞きまわってるんだけど、担任の教師に聞いても何にも分からない!
おまけに今日は、みんな口を揃えて『誰だ?そんな名前の生徒は知らない』ですって!
バッカじゃないの、ホント!!どうしてこんな役立たずばかりなのかしら!!!」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 01:15:48.87 ID:wYQ37zIY0
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=dJo_hp9cc80&feature=related (もう一度、アナタと…)
キョン「古泉君…?誰だそれ?」
ハルヒ「はぁ?何の冗談よ、全っ然おもしろくないんだけど」
キョン「いや、本当に誰だか知らないんだが…」
ハルヒ「何言ってるの?あんた何か悪いものでも食べたんじゃない?
有希、みくるちゃん、あの寝ぼけてるバカキョンに説明してやんなさい!」
朝比奈「ふえぇ〜、すみません、私も涼宮さんの言う古泉君が誰なのか知りませぇ〜んっ」
長門「私も知らない」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 01:19:25.64 ID:wYQ37zIY0
ハルヒ「みんな何言ってるの!?古泉君よ、古泉君!我らがSOS団副団長の、古泉一樹君じゃない!!」
朝比奈「ふえぇ〜…」
長門「…」
キョン「…」
キョン「(なあハルヒ、俺はお前の言うその古泉って奴が誰だか知らんが、お前が居ると言うなら居るんだろう。
お前がそいつここに呼べば良いじゃないか。お前にはその力がある。
そうなんだろ…?神様)」
なぜだか俺は、ハルヒにそう言わなければならないような気がした。
Fin.
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/09/11(金) 01:25:28.82 ID:wYQ37zIY0
終わりです!支援してくれた人、ホントにありがとう!
見難い文章ですまなかった
ってか初めてSS書いてスレ立てて、こんなにも疲れるものだとは思わなかったよ…orz
ハルヒやみくるや長門をもっと喋らせたかったな…
最後のオチは、まあいくら機関の力でも、神様のハルヒには利かなかったってことで
あと長門も実は忘れてない。宇宙人は「涼宮ハルヒの監視」が目的だから何も行動は起こさないという…
エンドレスエイトと同じですわ
とにかく読んでくれた人ありがとう。板汚しスマソ
最後に、古泉を小泉とげいずみって言ったお前ら表出ろ
可哀想な故泉萌えっ!