佐々木「キョン、大変だ」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:06:42.61 ID:QudlWYOrO

キョン「佐々木が呼び出しとは珍しいな」

佐々木「ん? あ、あぁ、そうだね」

キョン「それで? なんの用事だ?」

佐々木「まあ……とにかく何か飲み物でも頼もう」

キョン「そうだな、じゃあアイスコーヒーを一つ」

佐々木「僕はオレンジジュースを頼むよ」



……そこはかとない違和感だった。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:08:40.95 ID:QudlWYOrO

佐々木「……」ジュゴゴゴゴ〜

キョン「……」

ウェイターに飲み物が運ばれてから10分程、佐々木は氷の残った空のコップをストローで吸う事にご執心のようだった。

キョン「あー佐々木、それで用は?」

佐々木「!?」ビクン

佐々木「ゲホッ!ケホッ!」

キョン「だ、大丈夫か?」

佐々木「あ、あぁ大丈夫だよ、それで話の事なんだけどね……」

キョン「なんだ?」

佐々木「あー……その」ピリ
佐々木「え〜、と」サラサラ…

キョン「……砂糖をテーブルに盛ってどうするんだ?」

佐々木「え……う、うわぁっ!?」バッ

キョン「ちょ!? 飛び散らかすなっ!」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:11:06.99 ID:QudlWYOrO

キョン「おかしいぞ、一体どうしたんだ」

佐々木「うん……ねえキョン、僕の事をどう思う?」

キョン「な……なんだって?」

佐々木「ああ、印象だよ、僕がどう君の眼に映っていたかって事さ」

キョン「ああ、そういう事か……ふむ」
キョン「うん、まず賢いな、それに同年代と比べると、とても大人ぽく見える……落ち着きがあるせいかもしれんが」

佐々木「なるほど」

キョン「熱血ではないし、どちらかというとかなりクールだな、冷酷っていう意味じゃない」

キョン「こんな事を聞いて一体どうしたっていうんだ?」

佐々木「……キョン、どうやら僕はだいぶ変わってしまったようだよ」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:17:08.87 ID:QudlWYOrO

キョン「すまん、どう変わったって?」

佐々木「僕はだいぶ…えーと、なんと表現したらいいのかわからないけど」

キョン「わかりやすく言ってくれ、俺の為にも」

佐々木「わかったよ、僕はつまり、その……だいぶ馬鹿になってしまったみたいなんだ」

キョン「佐々木がバカなら俺は宇宙の塵になってしまう訳だが」

佐々木「違うんだ、違うんだよキョン」

キョン「……もう少し詳しく話してくれないか?」

佐々木「詳しく、と言われても困ってしまうんだけど……そうだね」

佐々木「端的に言うと僕は今すぐ喚声をあげて飛び跳ね回りたい、そんな感じだ」

キョン「なんと……」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:24:54.84 ID:QudlWYOrO

佐々木「あと、何も考えていない時間を過ごす事が以前と比べて長くなったし、気が付くと砂糖で前方後円墳を作っていたりするんだよ……」

キョン「方墳じゃないんだな」

佐々木「意味のない難題に立ち向かうのも好きになってしまったのさ」

キョン「そうは言ってもお前は普通にしか見えないぞ?」

佐々木「そんな事は無いさ、僕はさっきもその片鱗を見せていたよ」

キョン「片鱗?……まさか」

佐々木「そうさ」

キョン「さっきの砂糖か?」

佐々木「ああ、抑えようと思っていても無意識の内にやってしまうんだ、なんだかそれがとても恥ずかしくてね……」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:27:06.71 ID:QudlWYOrO

佐々木「それに……砂糖以前に僕は君に話す内容すら忘れてしまっていたんだ、僕がその時何を考えていたか君にわかるかい?」

キョン「話してくれるのか?」

佐々木「もう恥ずかしがる事なんてないさ……ハンバーグだよ」

キョン「……は?」

佐々木「今日の夕飯はハンバーグが良いと、君に声を掛けられるまで僕はずっとそんな事を考えていたんだ」

そう言い終わると同時に佐々木は赤くなって俯いてしまった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:28:34.29 ID:QudlWYOrO

キョン「いや佐々木……」

佐々木「ねえ、キョン」

キョン「……なんだ?」

佐々木「僕は、若年性健忘症なのかもしれないね」

そう言いながら佐々木は、俯いたまま肩を震わせて涙を流していた。

長い睫に涙が溜まり、テーブルの上に一滴音を立てて落ちた。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:31:30.77 ID:QudlWYOrO

キョン「佐々木」

佐々木「グスッ……なんだい?」

キョン「考え過ぎだ」

佐々木「いや……ぼ、僕はきっと健忘症なんだ!」

キョン「そんな事はない、ただちょっと疲れているだけさ」

佐々木「そ、そうかな……グスッ、ほんとに?」

キョン「ああ、もちろんだとも」

佐々木「そうか…ヒック…そうだね、取り乱した姿を見せてしまってすまなかったよ、見苦しかった」

キョン「いやいいさ、それに佐々木がボロボロ泣くなんて珍しい事もそうあるわけじゃないしな」


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:40:48.08 ID:QudlWYOrO

佐々木「わ、忘れてくれっ」

キョン「はは、もう時間も遅いしそろそろ帰るか」

佐々木「そうだね、今日は僕に奢らせてくるかい?」

キョン「いいのか?」

佐々木「構わないさ、そうしたい気分なんだ」

キョン「じゃあここは甘えさせてもらうかな」



キョン「ふむ、お礼に佐々木をテストしてやろう」

佐々木「おや、これは緊張するね、お手柔らかに頼むよ?」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 18:51:22.71 ID:QudlWYOrO

キョン「1+1=?」

佐々木「……くつくつくつ。 キョン、いくらなんでもそれはどうかと思うよ?」

そう言って、いつもの調子で佐々木は微笑んだ。
そうだ、佐々木に落ち込んだ姿はそう似合うものでもない。

キョン「そうか、それで答えは?」

佐々木「たんぼのた!」

そう言って朗らかな笑顔を見せる佐々木の間違いを指摘する事は、俺には不可能だった。
あながち間違いという訳でも無いしな、きっと佐々木なりのジョークに違いないさ。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 19:02:47.71 ID:QudlWYOrO

その晩佐々木からメールが一通届いた。

タイトルは「見てくれキョン!」、そして添付されていた写真には立派な白い前方後円墳が写っていた。
だがその雄姿は手前にどアップで写っている佐々木の顔とピースサインによって半分以上隠れている。

佐々木らしからぬこのメールに返事を返すべきなのか迷っていると、間もなく佐々木からまたメールが来た。

「さっきのメールは忘れてくれ」

これは、もしかしたら一大事なのかもしれない。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 19:10:40.10 ID:QudlWYOrO

翌朝、携帯を見るとまた佐々木からメールがきていた。

「今日は学校を休もうと思う、もし良かったら、今日も時間をくれないかい?」

「その方がいい、授業が終わったらまたメールする」


しかし誰に一体誰に相談するべきなんだろうか?

また知らずの内にSF的かつ超常現象的な問題に巻き込まれていたとしても、佐々木をちょっとアレな子にするメリットが分からない。

第一ハルヒは佐々木をそんなに知らないはずだ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 19:22:20.51 ID:QudlWYOrO

結局、佐々木の事は佐々木側の人間に相談する事にした。
佐々木に橘、藤原、周防を昨日の喫茶店に集めてもらう。
気は乗らないが佐々木の為だ、仕方ない。



橘「佐々木さんが……なんですって!?」

キョン「頭がちょっとアレになってしまったんだ」

周防「――――――」ブクブクブクブクブクブク

佐々木「…………」ブクブクブクブクブクブク

キョン「佐々木、マネしちゃだめだ」

佐々木「はっ……!」

橘「……本当に佐々木さん、なんですよね?」

佐々木「あぁ……は、恥ずかしい所を見せてしまったね」

周防「――――――」ボゴボゴボゴボゴボゴボゴ

藤原「周防、静かにしてくれ」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 19:29:33.52 ID:QudlWYOrO

橘「アレになったというか、行動が幼くなってしまったみたいな感じですけど」

佐々木「くつくつくつ、馬鹿と言ってくれて構わないよ」

橘「さ、佐々木さん……」

キョン「しかし原因が分からなくちゃ動きようが無いな」

藤原「馬鹿になる前、何をしたか覚えていないのか」

佐々木「ん……うむ……」

藤原「……チッ、馬鹿め」ボソッ

藤原「へぐっ」

橘の小さな拳が藤原の脇腹に突き刺ったと同時に藤原はテーブルに突っ伏した。
良い様だな。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 19:41:55.37 ID:QudlWYOrO

公園に来ている。
佐々木が何も思い出せない為、佐々木と一緒に橘がよく行く場所をトレースする事にした。
これがきっかけで何か思い出せばいいと思ったのだが、肝心の佐々木は周防と一緒に砂場で遊んでいる。

ちなみに、藤原は「お腹が痛くなった」とだけ残して帰ってしまったと、橘が言っていた。


こんな時に不謹慎だとは思うが、無邪気に笑う佐々木は

橘「……可愛いぃ」


キョン「……なんだって?」

橘「何も言ってません」

キョン「お、お前まさか」

橘「何も言ってません」

キョン「……まあいい」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 20:59:44.86 ID:QudlWYOrO

橘「あれ?」

キョン「どうした?」

橘「佐々木さんと周防さんはどこに行ったんですか?」

キョン「砂場に……いない」

橘「これヤバいですよっ!」

キョン「いや、いくら佐々木が今アレだからって周防も付いてるんだろ?」

橘「だから! 周防さんもちょっとアレなんですよっ!!」

キョン「……そいつはまずい」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 21:08:16.22 ID:QudlWYOrO

「ブヒヒヒ、おおおおおお嬢ちゃん達ィヒヒィ! かっかかか可愛いねっ!フヒィッ」

佐々木「や、やめてください、やめてください」

周防「―――――――」

「フヒィッ! ヒヒヒィ貧乳だねっブヒッ!!www」
佐々木「なっ!?」

周防「―――――――」

「ロリロリおっぱいおちんちんびろーんwwwwwwwww」

佐々木「きゃぁぁあああ!!」


橘「そこまでですっ」

「フヒィッ!?」

「ブッヒヒヒィィ! ツインテ! 貧乳ゥゥゥ!!wwwwww」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 21:13:59.51 ID:QudlWYOrO

―――――。

橘「佐々木さんっ! 知らない人に付いていっちゃダメじゃないですか!」

佐々木「そうだったね……ごめんなさい」

キョン「橘」

佐々木「でも、あのおじさんがお菓子くれるっていうから、つい……」

橘「つ、ついって!」

キョン「橘」

橘「なんですか!?」

キョン「この人息してない」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 21:22:06.06 ID:QudlWYOrO

―――――――。

橘「やっぱりこの状態の佐々木さんを連れて歩くのは危険過ぎますね」

キョン「橘」

橘「それに事情を知らないご家族がこの佐々木さんを見たら何事かと思いますしね、ああ、八方塞がりです」

キョン「橘」

佐々木「砂が足らないよ、周防さん」

周防「――――大――丈―――夫――」

橘「ここは問題が解決するまで私の家で匿うのが上策ですね」

キョン「オイ待て」

佐々木「みんなでお泊まり会かい?」

橘「そうですよっ! 二人っきりですけどね!」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 21:32:56.17 ID:QudlWYOrO

佐々木「二人きりか……」

橘「ええ! 楽しみですね佐々木さんフヒッ!」

佐々木「僕は……キョンの家に泊まりたかったなー」チラッ

橘「」

キョン「なんと」

周防「――――き―――ま―り」



そういう事になった。



橘「ちょ、勘違いしないで下さいよ! 今佐々木さんはちょっと頭がアレなだけですからー!!」

キョン「ははははは」

佐々木「さようならー橘さーん」


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 21:39:10.85 ID:QudlWYOrO

キョン「しかし本当に手がかりは無いままか……」

佐々木「良いこと思いついたよキョン、僕の知能は下り坂じゃなかったみたいだ!」
キョン「何か思い出したのか!?」

佐々木「手をつないで帰ろうよ」

キョン「」

佐々木「ん?どうしたんだい?」

キョン「いや、素晴らしく良い考えだと思ってさ」

周防「――――私―――も」

キョン「なんだお前も泊まるのか、まあ一人も二人も変わらないか」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 21:44:02.84 ID:QudlWYOrO

この日は、三人で手をつなぎながら家まで帰った。

手を激しくぶらぶらさせたり、歩きながら横に並んで夕日に写し出される影ウェーブをしたり
時々立ち止まって目をしたり、カニをしたり、扇をしたり、サボテンをしたり、肩車でトンボもした。



まるで、童心に還ったようでなかなか楽しくもある帰り道だった。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 22:05:40.72 ID:QudlWYOrO

長門「悪魔召還プログラム起動、鬼女召還」

長門有希の部屋に青白い魔法の様な物が浮かび上がり、徐々に上下に開かれていく。

長門「SUMMON:朝倉涼子」


朝倉「ウォォォォレハ鬼女アサクラ、コンゴトモヨロシクゥゥ!!」


長門「そういうのは要らない」

朝倉「あら、ごめんなさい」

長門「アレが出現した」

朝倉「アレ?」

長門「小さくて」

長門「丸くて」

長門「存在の認識が困難」

長門「それがアレ」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 22:14:39.85 ID:QudlWYOrO

佐々木の家での振る舞いは、緩慢と表現するのが適切だった。
風呂に入れば周防がいなけりゃ湯船でボーっとしてるし、部屋に居ればそれはそれでボーっとしている。

佐々木の異常性を目の当たりにしてしまうという点では、この滞在はとてもキツいものだ。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[飯食ってた] 投稿日:2009/07/28(火) 22:38:13.20 ID:QudlWYOrO

佐々木「…………」

キョン「佐々木」

佐々木「なんだい?」

キョン「あー、」

キョン妹「佐々にゃん!!」ガチャッ

佐々木「なんだい、妹ちゃん?」

キョン妹「クッキー作ろうクッキー!!」

佐々木「それはいいね、私も手伝わさせてもらうよ」

キョン妹「行こー!」

パタン

周防「――――――」

キョン「周防」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 22:43:56.22 ID:QudlWYOrO

周防「―――な――に―?」

キョン「佐々木がああなってしまった原因はなんなんだ? お前なら分かるんじゃないのか?」

周防「――――――――」

キョン「周防……」

周防「……アレのせいかと思われる」

キョン「す、周防?」

周防「私は長門有希、この端末を介してあなたと会話している」

キョン「アレってなんだ!?」

周防「アレはアレ、名前はまだ無い、情報統合思念体にも理解不可能な物、存在しているのかしていないのかさえも理解出来ない」

キョン「な、なんだって佐々木がそんな得体の知れない奴に……」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 22:48:53.84 ID:QudlWYOrO

周防「攻撃を受けた訳ではない」

キョン「なんだと?」

周防「彼女は……

バタバタバタバタバンッ!

佐々木「キョンっ!!」

キョン「佐々……ふふふ服を着ろぉ!! なんで今風呂に入ってんだ!?」

佐々木「そんな事は些事さ! 聞いてくれ、思い出したんだ!!」

キョン「何をだ、落ち着け、前隠せ!!」



佐々木「きっと妖精さんだ!!」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 22:53:52.48 ID:QudlWYOrO

橘『急に電話してきたと思ったらなんですか?』

キョン「さ、ささささきが……ついにこわれた……」

佐々木「こわれてない!!」

キョン「も、もうだめだ……」

佐々木「ダメじゃない!!」

橘『もしもし? 佐々木さんですか?』

佐々木「橘さん! 妖精さんに会えば全て解決さ!」



橘『』

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 22:59:31.53 ID:QudlWYOrO

キョン「……」

周防「――――――妖――精―――い――る」

キョン「……な、なんだと?」

周防(長門)『妖精……ぽいのなら』

キョン「マジでか」

周防『そう』

佐々木「くつくつくつ、ぼくの言った通りだろう?」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 23:11:15.83 ID:QudlWYOrO

佐々木「計量スプーンを拾ったんだ」

キョン「は?」

佐々木「それで勝手に出てくる小麦粉を使ってクッキーを作って甘いものが好きな妖精さんにあげたんだよ」

キョン「な、なんだって?」

周防(朝倉)『あー、アレかも』

キョン「アレってなんだ!?」

周防「――――――ア――レ」

周防『情報統合思念体に着くノミみたいなものよ』

キョン「お前らはイヌネコの類なのか?」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 23:17:15.65 ID:QudlWYOrO

朝倉「違うわよ」ガサッ

キョン「ひぃっ!?」

長門「失礼」ガサッ

キョン「ひょあっ!?」

周防「――――――ど――こ―でも――ヘ――アー」



キョン「そ、それでそのノミみたいなのはどこにいるんだ?」

朝倉「ここよ」

キョン「……は?」

朝倉「この2人」

長門「……」
周防「――――」

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 23:23:20.73 ID:QudlWYOrO

キョン「いや、長門と周防だろうが」


朝倉は大きく息を吸い。
手を叩いた。

爆音と同時に朝比奈さんの悲鳴めいたものが多数聞こえ、長門や周防の制服の下から5つほどの球がころがりでてきた。


キョン「なんだこれ、ガチャガチャの球か?」

朝倉「それがノミよ」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 23:29:36.47 ID:QudlWYOrO

しばらく観察していると1つ1つが小さな人、まるでぬいぐるみの様な小さな人になりだした。

「に、にんげんさ

朝倉はその1人を踏み潰した。

「ひぃぃぃ」
「ころされるー!」

仲間が惨殺されるのを見て一斉に失禁する妖精さん達。

朝倉「ね、ノミよ」

そんな笑顔を見せられても困るんだが……

ついでに言うと俺はただ佐々木が可愛いだけのSSを書きたかっただけなのに話は迷走しすぎている。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 23:37:05.09 ID:QudlWYOrO

―――――。

朝倉が逃げ回る妖精さん達をナイフで潰し回ろうとするのを身を挺してとめてから数時間、朝倉のイラつきを理解しだしてきた俺がいた。

「どういうこと?」
「りかいできませんな」
「われわれがはんにん?」
「ぬれぎぬだー!」
「かんちがい、かと」
「へいわてきなはなしあいをのぞむ」

この妖精さん達は物分かりがものすごく悪い。

佐々木「キョン、何をしてるんだい?」

キョン「やれやれ、やっと興味を持ったか、こいつらがその妖精さんだな?」

佐々木「やあ! これは久しぶりだね」

「……どちらさま?」


当の本人も忘れられているとは困ったものだ。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 23:44:14.54 ID:QudlWYOrO

佐々木は四苦八苦して彼らと意思疎通を図ろうとする。
……図ろうとはしているんだが、佐々木は今アレだからな。

常人では聞くに耐えない無限ループのような会話が成立してしまっているのだ。


佐々木「ちがうよ、この前クッキーをあげたじゃないか」

「クッキー?」
「あのあま〜い……」
「かんろ……」
「たべたことない」
「クッキーなんてまぼろしでは?」
「ありえる」

佐々木「クッキーではなくて、計量スプーンが問題なんだ!」

「軽量スプーン!」
「あれか」
「もんだいはなかた」
「せいじょうにうごくただひとつのもの」
「そうこどこー?」
「まぼろしかと」
「きおくにない」

佐々木はもう治らないんじゃないだろうか。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:23:39.53 ID:DAuSeaf8O

「むりむり」
「かーえろ」
「あきたわ、ぶっちゃけ」
「かえってそうじせな」

しばらく佐々木と会話していた妖精さん達も進展しない会話に痺れを切らしたのか思い思いの感想を漏らして散っていく。


しかし一瞬にして妖精さんたちの動きは止まった、止まったというか止められた。

朝倉「待ちなさいよ、ノミ」

デジャブだ。
朝倉がその内の1人に歩み寄り、目の前に抜き身のナイフを突き立てる。

朝倉「いい加減にしないと殺すわよ?」


「やるきでてきた」
「うん」
「いまならそらもとべるはず?」

初めて妖精さん達が一致団結した瞬間である。

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:30:04.06 ID:DAuSeaf8O

「みてられるとしゅうちゅうできないし」
「あいでんてぃてぃがほうかいしてしまう」
「ひみーつ」
「にんげんさんはのこって」
「さいすんしなきゃ、さいすん」
「わくわくしてきたかも?」


そんなこんなで家主である俺含むその他は部屋から追い出され、佐々木といつの間にか増えた多数の妖精さんが残された。

キョン「……任せて大丈夫なのか?」

周防「―――未――知――数」

朝倉「やるでしょ、脅したし」

キョン「脅してやってくれるならいいけどな」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:39:09.81 ID:DAuSeaf8O

ドアが開き妖精さんが顔をだす。

「できた?」

ここで疑問文が返ってくる事ほど不安だったことはかつて無い。

第一何を作ったというのだろうか。
何を作れとも言ってないのに。


促されるまま部屋に踏み込むと、佐々木がいた。


しかも2人。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:44:44.43 ID:DAuSeaf8O

キョン「……佐々木?」

佐々木「なんだい?」
佐々木「どうしたのさ、キョン」

頭が痛くなってきた。
早速部屋の隅では朝倉が妖精さんを1人締め上げている。
他の妖精さん達は既に散ってしまったようだ。

だが俺は視界の隅に長門と周防が二、三人の丸まった妖精さんを制服の中に隠したのを見逃さなかった。
まあ、だからどうした、という訳でもないのだが。

2人の佐々木に歩みよる。





これ1人紙じゃないか。

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:51:45.15 ID:DAuSeaf8O

人形のように良くできていて、その上何故か動くが確かに一方の佐々木は紙である。

「りきさくですから」

いつの間にか肩の上に妖精さんが1人乗っていた。
力作だからって、どうしようもないんだがな。



――――――。

妖精さんも去り、数日後。
紙佐々木は動かなくなってしまった。
途端にフニャフニャとしたただの紙になってしまった。
中に妖精さんの顔のような佐々木の似顔絵が描いてある、佐々木印のクッキー袋を残して。


ついでに、佐々木はあれ以来毎日家に来てはマンガを読んだり妹とゲームをしたり寝転がったり寝たりしている。

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:02:12.46 ID:DAuSeaf8O

キョン「佐々木」

佐々木「なんだい?」

佐々木は寝そべっていたベッドから上半身を起こしてこちらに振り返る。

キョン「クッキー、出てきたぞ」

佐々木「ほんとかいっ?」

キョン「ほら、これだ」

佐々木「あーん」

キョン「……食べさせろってか? ホラ」

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:06:39.96 ID:DAuSeaf8O

「あいだっ」

「ん〜♪」

佐々木の口が、クッキーを指ごと優しく咀嚼する。

「お、おい佐々木!」

「ん?」

無理やり指を引き抜くと唇から細く唾液が糸を引いて床に垂れた。
右手の人差し指には佐々木の唾液と、唾液とクッキーの混ざったものが付着しててらてらと光を怪しく反射している。

「ねえ、キョン」

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:16:56.86 ID:DAuSeaf8O

「な、なんだ?」

「これをみてごらん?」

佐々木はスカートのポケットから小さくラッピングされたクッキーの袋を取り出した。

「……ん!?」

「そっちはダミーさ、本物は紙の僕を作った時にもう貰っていたんだよ」

「それまたなんの目的で?」

「目的なんか無いさ」

ゆったりと歩いてくる佐々木に詰め寄られ軽く突き飛ばされる。

「ちょ、何すん」

抗議の声は唇で封じられた。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:25:49.44 ID:DAuSeaf8O

「な…!な……!」

「くつくつくつ……」

そのまましなだれかかる様に対面で馬乗りになり、妖しい笑みを浮かべる。
そして本物の袋からクッキーを一枚取り出して言った。

「このクッキーは僕の少しばかりの理性なんだよ」

「な、なるほどな、それで?」

「だけど君にとってこのクッキーは理性とは限らない、意味が分かるかい?」

「さっぱりだ」

佐々木は優しく微笑むと、耳のそばまで唇を近付けて出来の悪い生徒を諭すような口調で囁いた。


「……これを食べれば、私の色々な事が分かっちゃうってことだよ?」

背筋に電撃が走った。

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:35:11.10 ID:DAuSeaf8O

すると佐々木はその最後の一枚を口に放り込み、噛み砕き、そのまま再度口づけた。

ドロドロとけたクッキーから放たれる甘い香りが鼻腔を震わせる、佐々木の舌は別の生き物の様に絡みつき、口の中を蹂躙する。

蜂蜜のような鋭い甘味が口中を満たした頃、佐々木はやっと唇を離した。

佐々木は上気した頬で、桜色の唇を湿らすように舌で舐めた後、いつものように微笑んだ。


「……やれやれ」

「許してくれよ、妖精さんはイタズラが大好きなのさ」






佐々木さんの脳みそは衰退したようです。

糸冬

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:41:30.74 ID:DAuSeaf8O

よく出来ましたと思います

次は佐々木が可愛いだけのSS書けたらなと思います



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