5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 00:34:48.62 ID:l4oFZybjO
【閉鎖空間消滅後】
古泉「やっと片付きましたね。今何時でしょうか」
森「…午前5時過ぎね」
古泉「ふむ。ではあまり睡眠時間も取れませんね。制服を取りに帰らなければ」
森「古泉、車に乗りなさい。家まで送って行ってあげるわ」
古泉「いえいえ、そんな…。自分で帰れますよ。そう遠くもありませんから」
森「遠慮しなくても良いのよ。少しでも身体を休めなさい」
古泉「しかし…」
森「古泉。明日学校で少しでも疲れを悟られないようにする為よ。乗りなさい」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 00:41:59.60 ID:l4oFZybjO
古泉「すみません。ご迷惑をおかけします」
森「…良いから、家に着くまででも寝ていなさい」
古泉「森さんが運転して頂いているのに、そんな事はできませんよ」
森「命令よ。寝なさい」
古泉「…わかりました。では森さん、申し訳ありませんが失礼します」
森「ええ。おやすみなさい…」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 00:45:37.49 ID:l4oFZybjO
古泉「……」
森「ところで古泉。あなた、明日の……」
古泉「……」
森「古泉?」
古泉「……」
森「ふふ、もう寝てしまったのね。疲れていたんでしょう…」
森「こうして見ると、本当にただの高校生ね」
古泉「……」
森「…」
なでなで
森「あなたも、望んでこんな立場になった訳ではないでしょうにね…」
なでなで
森「…」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 00:50:50.47 ID:l4oFZybjO
キキッ
森「着いたわよ、古泉。起きなさい」
古泉「…」
森「古泉」
ゆさゆさ
古泉「ん…?ああ、すみません…。もう到着しましたか」
森「ええ。大丈夫?」
古泉「はい、問題ありません。森さんこそ、疲れているところどうもありがとうございます」
森「私は平気よ。あなたは早く帰って少しでも寝なさい。今なら1時間くらい寝られるわ」
古泉「今寝たら寝坊してしまいそうですので、もうこのまま起きていますよ。学校の準備もありますし」
森「……」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 00:54:14.04 ID:l4oFZybjO
古泉「それでは、お疲れ様でした。送って頂いてありがとうございます」
森「…本当に寝なくて大丈夫なの?」
古泉「ふふ、寝たいのは山々ですがね。起きる自信がありません」
森「…仕方ないわね」
古泉「では失礼します。森さんもご無理をなさらないで下さいね」
森「古泉、着替えを取って来なさい」
古泉「はい?」
森「私の部屋で休みなさい。起こしてあげるから」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 16:15:27.55 ID:l4oFZybjO
古泉「それはいけません。森さんも休まなくてはいけないのに」
森「私の部屋の方が学校に近いわ。ぎりぎりまで寝られる方が良いでしょう」
古泉「いや、でも部屋にあげていただくのは…」
森「上司の気遣いを無下にするのは、かえって失礼になるものよ」
古泉「…わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
森「それで良いのよ。さぁ、着替えを持って来なさい」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 16:18:57.06 ID:l4oFZybjO
・
・
・
古泉「お待たせしました」
森「ええ。ご家族の方は?」
古泉「ふふ、いつも通り寝ていますよ。僕が帰ろうと出て行こうと無関心です」
森「…そう」
古泉「すみません、少し皮肉が過ぎてしまいましたね」
森「そんな事ないのよ。あなたもまだ16…仕方ないわ。さぁ乗りなさい。行くわよ」
古泉「失礼します」
ガチャ
バタン
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 16:25:36.28 ID:l4oFZybjO
森「体調は大丈夫?栄養剤が必要なら買って来るけれど」
古泉「いえ、お構いなく。もう慣れっこですよ」
森「無理は禁物よ。彼女に不信を与えないようにね」
古泉「ふふ、承知していますよ。森さんこそ、もうずいぶん寝ていないのでは?」
森「昨日は寝たから平気よ。…あなたも、人の心配が出来るくらいに成長したのね」
古泉「どうでしょう。昔に比べれば余裕は出来たかも知れませんが…」
森「が?」
古泉「…もう、自分の疲労にそこまで頓着しなくなっただけかも知れません」
森「…程々にね。自暴自棄になっては、この仕事は務まらないわよ」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 16:29:41.63 ID:l4oFZybjO
森「はい、到着…。着いたわよ」
古泉「……」
森「古泉?」
古泉「……」
森「ふふ、どこが『自分の疲れに無頓着』なのかしら」
古泉「……」
森「強がる所は昔から変わらないわね…。さて、と」
ぐっ
森「よいしょっ」
森「…ずいぶん重くなってる。…この間までちっちゃな中学生だったのに」
ガチャ
バタン!
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 16:35:46.71 ID:l4oFZybjO
・
・
・
『……み』
『……いずみ』
『…古泉』
古泉「…ん?」ぱちっ
森「おはよう。よく眠れた?」
古泉「…すみません。いつの間にか寝てしまったようです…」
森「ふふ、良いのよ」
古泉「ん?僕、車で寝てましたよね?もしかして…運んでくれたんですか?」
森「そうよ。ずいぶん大人になっちゃったわね」
古泉「す、すみません!重かったでしょう?」
森「いつもの仕事に比べれば全然楽よ。…それにしても、大きくなったわね」
古泉「そりゃあ、僕も高校生ですから。それなりに身長もありますし」
森「ふふ…ついこの前まで、私と同じくらいだったのに」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 16:40:24.65 ID:l4oFZybjO
森「はい、どうぞ。栄養ドリンク」
古泉「買って来てくれたんですか?すみません、何から何まで」
森「ストックだからお構いなく。あなた、今日は謝り過ぎよ。そんなに気を使わなくていいから」
古泉「…すみません」
森「ほら、また」クス
古泉「…敵いませんね。遠慮なくいただきます」
森「はい、召し上がれ。そんなものしか用意出来ないけど」
古泉「いえいえ、ありがたいです。…ごちそうさまでした」
森「お粗末さま。シャワーを浴びて来なさい。学校まで送って行くわ」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 16:47:45.13 ID:l4oFZybjO
キュッ
ザァー…
古泉「……少し寝るだけでずいぶん違いますね」
古泉「1時間弱しか寝ていないのに、ずいぶん身体が軽い」
コンコン
古泉「!」
森『古泉、着替えはここに置いておくわね。シャンプーどれかわかる?』
古泉「ええ、赤い容器のやつですよね?使わせて頂いてます」
森『そう。あと10分で出発よ。急いでね?』
古泉「了解しました」
ザァー…
古泉「…彼女も疲れているのに。甘えてばかりじゃいけないな…」
キュッ
キュッ
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:09:20.48 ID:l4oFZybjO
ガチャ
森「出た?」
古泉「はい。いただきました」
森「じゃあ行きましょう。急がないと遅刻してしまうわよ」
古泉「そうですね」
森「…ちょっと待って。古泉、隈がひどいわね」
古泉「え…そうですか?」
森「メークしましょうか。すぐ済むし、それだけでも隠さないと」
古泉「…そんなにひどいですか?」
森「ちょっと寝不足では言い訳出来ないわね。ほら、早く座って」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:17:18.69 ID:l4oFZybjO
森「相変わらず綺麗な肌…さぁ、目を瞑って」
古泉「男に対する褒め言葉じゃありませんね。森さんには適いませんよ」
森「ほら、余計な事を言ってないで。遅刻するわよ」
古泉「…」
サッサッ
森「…メークも嫌がらずにするようになったわね。昔は駄々こねてたのに」
古泉「ふふ、それを言うなら森さんだって優しくなったじゃありませんか」
森「そう?私は昔からこんなものよ」
古泉「…良く言いますね。どれだけ泣かされたか」
森「記憶にないわね。…よし、出来上がり。どこから見ても健康な高校生」
古泉「ありがとうございます。では行きましょうか。時間もそろそろぎりぎりですし」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:21:34.45 ID:l4oFZybjO
・
・
・
森「さぁ、着いた。いってらっしゃい」
古泉「行って参ります。森さんもゆっくり休んでくださいね」
森「ふふ、ありがとう。頑張ってね」ニコ
古泉「はい。では、また」
森「ええ、また」
ガチャ
バタン
ブォオオオン…
古泉「……」
キョン「お、古泉。おはようさん。今日は送迎つきか」
古泉「これはこれは。おはようございます。奇遇ですね」
キョン「珍しいじゃないか。お前がこんな遅刻ぎりぎりに登校なんて」
古泉「ええ、実は昨日またバイトが入ってしまい増してね」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:28:57.20 ID:l4oFZybjO
キョン「またか。…相変わらず大変だな、お前も」
古泉「これでもずいぶん楽になったものですよ。今日も少し眠れましたし」
キョン「みたいだな。顔色もよさそうだ」
古泉「でしょう?長年のキャリアのおかげかも知れません」
キョン「ヤなキャリアだな…。しかし、なんでまたバイトなんだ?最近アイツの機嫌悪かったかね」
古泉「原因はなんとなくですが掴めていますよ」
キョン「ほう?アイツのデリケートなメンタルをちくちく突くのは一体なんだ?」
古泉「涼宮さんのメンタルはごく一般的な女子高生のそれですよ」
古泉「そして、今回の原因も誰もが持ちうる悩み…というよりも葛藤です。彼女に限ったことではありません」
キョン「そんな事でいちいち閉鎖空間かよ…。アイツはもうくだらない事で閉鎖空間作らないんじゃなかったのか?」
古泉「お説ごもっとも。しかし、今回は少しばかり特別なのですよ。今までとは違ってね」
キョン「ふむ?」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:36:16.35 ID:l4oFZybjO
古泉「察しはついているのでしょう?」
キョン「まぁ、だいたいはな。その葛藤は俺たちも持ってるだろう?」
古泉「ええ、その通り。この答えを導き出すのは簡単です。まず、一つ目が今の季節」
キョン「…もう暖かくなってきたしな」
古泉「そして二つ目に、高校生であるかぎり誰もが避けられない道であること」
キョン「回りくどい言い方はよそうぜ。くだらん答えあわせに付き合ってる暇もないんだ」
古泉「ふふ、それもそうでしたね。遅刻するのはよくありません。もうすぐ予鈴も鳴りますし」
キョン「要するにだ、あれだろう?SOS団の団員が欠けちまうのが嫌だってこったろ」
古泉「ご名答。言わずもがなですがね。彼女の葛藤の正体は、朝比奈さんの卒業ですよ」
キョン「…まぁ、俺もさびしいしな。朝比奈さんが居なくなっちまうかと思うと」
古泉「それは僕も同じ思いですよ。そして、涼宮さんは誰よりもSOS団、そして構成員を愛していますから」
キョン「…だろうな。一番寂しがってるのは、やっぱりアイツだろうよ」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:42:18.62 ID:l4oFZybjO
古泉「ですから、今回ばかりはどうしようもありません。さすがに朝比奈さんに留年していただくわけにも行きませんしね」
キョン「そりゃそうだ。朝比奈さんのような方に留年なんて言葉は似合わん」
古泉「同感です。ふふ、いっそ機関の総力をあげて高校を4年制にしてしまいましょうか」
キョン「阿呆。それじゃ来年同じ事になるだろう」
古泉「はは、それもそうですね。おっと、ここでお別れですね」
キョン「だな。遅刻ぎりぎりじゃないか…またハルヒにどやされるな」
古泉「ふふ、頑張ってください。ああ、それから」
キョン「うん?」
古泉「できることならば、彼女のメンタルケアをお願いしたいのです。…どうでしょうか」
キョン「なんで俺が…と言いたいところが、今回ばっかりは誰が悪いわけじゃないしな」
古泉「ありがとうございます。助かりますよ」
キョン「ま、やれるだけやってみるさ。んじゃあな」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:46:39.87 ID:l4oFZybjO
ガラガラ
キョン「うっす。おはようさん」
ハルヒ「ん…おはよ」
キョン(…こりゃ相当参ってるな)
キョン「どうした?元気ないじゃないか、らしくない」
ハルヒ「別に。ちょっと眠いだけよ」
キョン「…そうかい。ま、それくらいの方がおしとやかで良いんじゃないか?似合ってないけどな」
ハルヒ「アホな事言ってないの。…ったく、あんたみたいな能天気がうらやましいわ、ホント」
キョン「言ってくれるじゃないか。ちょっと分けてやろうか?」
ハルヒ「いらないわよ。バカが移っちゃうじゃない」
キョン「やれやれ…。ちょっとバカなくらいのほうが人生楽しいもんだぜ」
ハルヒ「…バカ」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 17:52:07.43 ID:l4oFZybjO
キョン「…ハルヒ、お前がそんなじゃSOS団も活気がなくなるぞ?」
ハルヒ「元気だって言ってるじゃない。…もう」
キョン「ウソを吐くならもう少しマシな嘘を吐け。誰が見ても一目瞭然だ」
ハルヒ「……」
キョン「やれやれ…。ここまでわかり易いと、嫌でもどうにかしてやらなくちゃって気になるな」
ハルヒ「…雑用係なんだから、団長に意見しないの」
キョン「残念ながら雑用の中にはお前の世話も入ってるんでね」
ハルヒ「…」
キョン「朝比奈さんだろう?」
ハルヒ「!」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:00:26.16 ID:l4oFZybjO
キョン「何不思議そうな顔してるんだよ。俺だってSOS団員だ、侮ってもらっちゃ困る」
ハルヒ「…そうね。悪かったわ」
キョン「…俺も、朝比奈さんが卒業しちまうのは淋しいさ。でもお前がそんなんでどうするんだよ」
ハルヒ「…」
キョン「お前がずっとそんな顔してたら、朝比奈さんだって気を使っちまうかも知れん」
ハルヒ「そう…よね…」
キョン「そうだ。もうすぐ卒業しちまうからこそ、いつもどおりちょっと過ぎたくらいの元気を見せてやったらどうだ?」
キョン「そんな顔、似合ってないぞ」
ハルヒ「そう…かもね。…ふ、ふん!アンタにお説教されちゃうなんて、アタシもヤキが回ったもんだわ!」
キョン「はは、それくらいがちょうど良い。いつも通り喧しくしててくれ」
ハルヒ「よっし!そうと決まったら早速行動よ!キョン!アンタも手伝いなさいよね!」
キョン「なにをするつもりだ?」
ハルヒ「決まってるじゃない!!卒業パーティーよ!!決行はいつがいいかしら!」
キョン「落ち着けハルヒ…。授業中だ」
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:04:46.15 ID:l4oFZybjO
【放課後】
コンコン
みくる「はぁい。開いてますよぅ」
ガチャッ
キョン「よう」
長門「…」
古泉「こんにちは。お一人のようですね。涼宮さんは掃除ですか?」
キョン「いや、岡部に用だとかなんとかで職員室にな。ま、そのうち来るだろうよ」
古泉「ふむ、ちょうどそうですか。…彼女の様子はいかがでしょう?」
キョン「どうかね?少しは元気になったみたいだがなぁ…空元気かも知れん」
古泉「なるほど。…それでも、大きな一歩ですよ。ありがとうございます」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:10:26.17 ID:l4oFZybjO
みくる「ごめんね、皆…私のせいで」しゅん
キョン「いえいえ。朝比奈さんが悪いわけじゃありませんよ」
古泉「その通り。それに今回は、裏返してみればそれだけ朝比奈さんが愛されているという証拠です」
長門「そう。私も、古泉一樹と同じ考え」
みくる「みんな……ありがとうございます」
ガチャッ!
バタン!!
ハルヒ「遅れてごっめーん!」
キョン「こら、そんなに乱暴にドアを開けるなと何度言ったら…」
古泉(ふむ、なるほど…。ずいぶん元気になられたようだ)
古泉(やはり彼の言葉が一番心に届くようですね)
ハルヒ「そんな事はどうでもいいの!それより皆聞いて!今度、みくるちゃんの卒業送迎パーティーを開くわよ!」
みくる「わぁ…良いんですか?」ぱぁ
古泉「それは良いですね。大変素晴らしい考えかと」
ハルヒ「でしょ!?」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:18:25.32 ID:l4oFZybjO
ハルヒ「日時はまだ決めてないけど、内容はもう大体決めてあるの!じゃん!」ばっ
キョン「おお、進行表か。いつの間に作ったんだそれ」
ハルヒ「授業の合間と昼休みよ!有能な人間はね、一秒たりとも時間を無駄にしないのよ。あんたと違ってね」
キョン「お前はいちいち一言余計だっての」
古泉「これはまたぎっしりですね。開会、挨拶、乾杯、食事、彼の一発芸、ビンゴ大会…」
キョン「待てい。なんでピンポイントで俺の余興が入ってるんだ」
ハルヒ「あら?アンタ、みくるちゃんを送り出すパーティーで出し惜しみするつもり?」
キョン「う…そ、そういうわけじゃないが…」
ハルヒ「はい決まり!余興はまた思いつき次第追加するわ!料理なんかも用意しないとね!」
古泉「場所はいかがいたしましょう?これだけ盛大なパーティーでしたら、それ相応の場所が必要かと」
ハルヒ「それなのよね。毎回有希の家ってわけにもいかないし…どうしたもんかしら」
古泉「でしたら、僕の知り合いにちょうどホテルを経営している人が居るんです。フロアを格安で貸していただけるのですが、どうでしょう?」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:22:30.43 ID:l4oFZybjO
ハルヒ「ホントに!?じゃあそこでやりましょ!段取りお願いね、古泉君!」
古泉「かしこまりました。詳しい日時が決まったらまた教えてください」
ハルヒ「うん!で、お金はどれくらいかかるのかしら」
古泉「そうですね…。料理や飲み物、施設込みで、お一人3000円といったところでしょうか」
キョン「?」
ハルヒ「へぇ!それで借りられるなら安いわね!ありがと、古泉君!」
古泉「ええ。どういたしまして」ニコ
みくる「えへへ、嬉しいなぁ…私なんかのために、ありがとうございます」
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:27:03.11 ID:l4oFZybjO
・
・
・
長門「…」パタン
ハルヒ「あ、もうこんな時間か」
古泉「楽しいことを企画する時間は早く過ぎるものですね」
キョン「まったくだな。朝比奈さん、楽しみにしていてくださいね」
みくる「うんっ。ありがとう…えへへ、でも気になるなぁ」
ハルヒ「ふっふーん。当日になってからのお楽しみよ!キョンには期待しててね!」
キョン「おい…ハードルを上げてくれるな…」
みくる「うふふ。じゃあ、私着替えちゃいますね。先に帰っててください」
ハルヒ「あ、ちょっと待って!キョン!みんなで帰るから、外で待ってなさい」
キョン「ん、わかったよ。行こうぜ古泉」
古泉「ええ。では、外でお待ちしております」
ガチャ
バタン
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:32:25.34 ID:l4oFZybjO
キョン「…」
古泉「あなたが疑問に思っていることを当ててみましょうか」
キョン「うん?」
古泉「なぜ今回は有料なのか…と思いませんでしたか?」
キョン「ああ、ちょっとだけ思ったな。俺は全然かまわんが」
古泉「ふふ、おそらく涼宮さんもそうおっしゃると思いますよ」
キョン「だろうな」
古泉「むしろ、今回は無料ではないほうが良いでしょう?」
キョン「…今回、まるっきり人任せってのはアイツも嫌がるだろうしな」
古泉「その通り。あくまでも我々はサポートですからね」
古泉「涼宮さんが企画したパーティーの施設を、格安で借りられる場所を僕が知っていただけの話」
キョン「なるほどね。スポンサーじゃなくて、サポート役に徹するってことだな」
古泉「その通り。ふふ、さすがですね。彼女の心理についてはあなたがプロフェッショナルですよ」
キョン「なんだそりゃ…」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:37:59.49 ID:l4oFZybjO
ガチャ
ハルヒ「お待たせ!さ、帰りましょ!」
みくる「お待たせしましたぁ」
長門「…」
キョン「おう、帰ろうぜ。下校時間過ぎたら教師共にどやされるしな」
古泉「同感ですね」
スタスタ
トテトテ
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:46:13.61 ID:l4oFZybjO
トテトテ
トテトテ
古泉「ふふ、実に微笑ましい光景ですね」
キョン「だな…もうすぐ終わっちまうと思うと淋しいものがあるが」
古泉「女子三人、並んであるく姿…そしてその後を僕たちがついて歩きながら談笑する。まぎれもなく青春の1ページとして刻まれるでしょう」
キョン「おおげさだなお前は…。でもまぁ、な。俺も忘れないだろうよ」
古泉「ふふ、それはきっと皆同じでしょうけどね」
キョン「だな…」
スタスタ
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 18:56:11.10 ID:l4oFZybjO
みくる「じゃあ、私はここで…」
ハルヒ「うん。じゃあ、気をつけてね!」
古泉「さようなら。また明日お会いしましょう」
キョン「さようなら、朝比奈さん」
長門「…また」
みくる「うんっ。ばいばい」フリフリ
トテトテ
ハルヒ「さて、と。アタシも帰るわね。帰ってパーティの企画しなくちゃ」
キョン「おう。また明日な」
ハルヒ「ん。キョン!明日は遅刻するんじゃないわよ!」
キョン「へいへい。気をつけますよ、団長」
ハルヒ「じゃあ、古泉君、有希!また明日ね!」
古泉「ええ、お気をつけて」ニコ
長門「……」ふりふり
prrrrrr
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 19:03:47.30 ID:l4oFZybjO
キョン「!」
古泉「おっと。やはりですか…」
ピッ
古泉「はい、古泉です。はい…はい。わかりました、すぐに向かいます」
キョン「やっぱりって…ハルヒのやつ、元気になったんじゃなかったのか」
古泉「ええ、あなたのおかげでね。しかし、寂しさが消えたわけではないのでしょう」
キョン「…朝比奈さんと別れて、一人になったら…ってことか」
古泉「そうでしょうね。予想はしていました」
キョン「…大丈夫かよ?昨日もだったんだろう?」
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 19:04:56.92 ID:l4oFZybjO
古泉「ふふ、ご心配なく。キャリアが違いますよ」
キョン「…今朝にも聞いたな、それ」
古泉「それに、今回ばかりは解決策がない上に、閉鎖空間の発生は涼宮さんの正直な気持ちでしょうから。頑張り甲斐があるというものですよ」
キョン「……だったら、卒業式まで続くかもな」
古泉「かも知れませんね。では、行って参ります。また明日」
長門「古泉一樹」
古泉「はい?なんでしょう?」
長門「無理をしないように」
古泉「んっふ、ありがとうございます。それでは、また」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 19:08:24.55 ID:l4oFZybjO
キキィッ!
森「乗りなさい。すぐに向かうわよ」
古泉「そうですね。失礼します」
ガチャッ
バタン
古泉「規模はどのくらいですか?」
森「昨日の半分程度よ。すぐに片がつくわ」
古泉「そうですか。やはり彼の言葉は効果があるようですね」
森「キョン君?」
古泉「はい。なんとか彼女の気持ちを和らげて欲しいとお願いしたんです……ん?」
森「どうかしたの?」
古泉「森さん、隈が…。今日、寝てないんですか?」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 19:14:14.28 ID:l4oFZybjO
森「ううん、少しだけ寝たわよ。あなたを送っていってから」
古泉「そうですか…。お疲れのようですね」
森「ふふ、古泉こそ。メークを落とせば私よりひどいのがあるでしょ?」
古泉「…それはそうですが…。あまり無理をしないでくださいね」
森「ありがと。今日連絡があったホテルのフロアだけど、日時は?」
古泉「まだはっきり決まっていないんです」
森「…そう。場所の段取りはついたけど、日時が…」
古泉「すみません。明日、必ず涼宮さんに確認してきます」
森「よろしくね。でも、彼女を急かさないように。くれぐれもストレスとなるような言動は避けてね」
古泉「ご心配なく。彼女はもうそんな事でストレスを感じたりしませんよ」
キキィッ…
森「…さぁ、到着。行くわよ古泉!」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 19:20:41.24 ID:l4oFZybjO
・
・
・
ひゅん…
古泉「…ふぅ。終わりましたね」
森「古泉!大丈夫!?」
古泉「森さん。お疲れ様でした」
森「なにを暢気な事を…!腕を見せなさい!!」
古泉「いえいえ、大丈夫ですよこのくらい。たいした事はありません」
森「古泉。いいから見せなさい」
ぐいっ
森「……折れてはいない、か。擦過傷だけね…良かった。来なさい、治療するから」
古泉「…いえ、これくらい…」
森「古泉。命令が聞けないの?」
古泉「!」
森「早く来なさい。治療を行う」
古泉「はい…」
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 22:33:08.47 ID:l4oFZybjO
【森さん宅】
森「染みるわよ。我慢できる?」
古泉「はい…もう、そんなに子供扱いしないでくださいよ」
森「ふふ、それもそうね。ごめんなさい」
ぽんぽん
古泉「っ…」
森「よし、と。おしまい。大丈夫?」
古泉「はい。ほんとうに大した事ありませんよ。少し腕に掠ったくらいですから」
森「…古泉。あなたはもう少し自分の体を大切にしなさい」
古泉「…」
森「無茶をするのは、心配している人にとっては怪我をする事と同じくらいに辛いことなのよ」
古泉「…すみません」
森「わかったなら、もう少し自愛しなさい。良い?」
古泉「わかりました。でもそれは、森さんだって同じことですよ」
森「!」
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 22:39:58.64 ID:l4oFZybjO
古泉「森さんも、無茶ばかりするじゃないですか」
森「私は良いのよ。あなたは私の部下なんだから、おとなしく言うことを聞きなさい」
古泉「はは、なんですかそれ…。森さん、昔に比べてやさしくなりましたよね」
森「そう?」
古泉「また惚けて…。能力に目覚めて間もない頃は、よく叱られたじゃないですか」
森「ふふっ…そんなこともあったわね」
古泉「…こんなに怖い人がこの世の中に居るんだ、ってね。本気で思ったものです」
森「古泉…少し言葉が過ぎないかしら」
古泉「おっと、失礼しました。…ともかく、昔は森さんが大きく見えたものですよ」
森「あら。今は小さく見えるとでも?」
古泉「まさか。人間の大きさという意味でなら、少なくとも僕の知り合いには森さんに適う人は居ません」
森「お世辞が下手…」
古泉「手厳しい…。でも、今はこうして同じソファーに腰掛けて話すくらいにはなれました」
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 22:45:09.88 ID:l4oFZybjO
森「それはね…あなたが成長したからよ」
古泉「そうでしょうか?…僕は昔と何も変わりませんよ」
森「評価というのは周りから下されるものよ。素直に聞きなさい」
古泉「それもそうですね。ありがとうございます」
森「ふふ…にしても、早いものね。もうあれから何年経つのかしら…」
古泉「僕が能力に目覚めてから、ですか?」
森「そうよ。あなたは当時最年少で…なにかあるとすぐに泣き出して、本当に手のかかる子だった」
古泉「…申し訳ありません」
森「覚えてるかしら?あなたが『どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの?』って泣いてた時…」
古泉「ふふ、そういえばそんな事もありましたね。お恥ずかしい」
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 22:51:54.18 ID:l4oFZybjO
古泉「忘れもしませんよ。竦みあがったのを覚えてます。『黙りなさい』…の一言でね」
森「懐かしいわね。でも古泉は泣き止んだのだから、結果オーライじゃない」
古泉「…ふふ。それも…そうかもしれませんね」
森「?何か含みのある言い方ね」
古泉「んっふ。そうでしょうか?…さて、では僕はそろそろお暇しますよ」
森「そう?もう少し休んでいても良いのよ」
古泉「いえ、森さん今日は休んでないのでしょう?僕が居たらゆっくりできないでしょうから…」
古泉「せっかく時間があるんですから。また閉鎖空間が発生しないとも限りません。今のうちにお休みください」
森「…古泉。私は仕事が残ってるの。手伝ってくれると助かるのだけれど」
古泉「……命令ですか?」
森「いいえ、お願いよ」
古泉「…はい。わかりました。お世話になっている上司のお願いは断れませんね」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 22:59:07.99 ID:l4oFZybjO
古泉「仕事はなんですか?僕に手伝えることがあれば良いのですが…」
森「一つ目は、フロアの準備の段取り。それにデータが入ってるから、残りを少し進めてくれる?」
古泉「了解しました。…それから?」
森「せっかくよ。晩御飯を食べていきなさい」
古泉「…」
森「なにか文句があるかしら?」
古泉「いえ…あまりにも予想外だったので、呆気にとられてしまいました。もちろん、ご一緒させてください」
森「よろしい。何か、食べたいものは?」
古泉「なんでも結構ですよ。実はお腹すいてるんです」
森「なんでも、って言うのが一番困るのよ。絞りなさい」
古泉「……じゃあ、森さんが一番得意な料理で」
森「……古泉。あなた、ちっともわかってないでしょう」
140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:03:19.08 ID:l4oFZybjO
古泉「…」カチャカチャ
古泉「…おや?」
森「なに?どうかしたの?」
古泉「いえ、なんでもありません。ご心配なく」
古泉(…?)
古泉(作業といっても、ほとんど終わってるじゃないですか…)
古泉(…じゃあなぜ、僕を残したんでしょう?)
古泉(………淋しい?いやいや、森さんに限ってそんなことはない、か)
森「…どうしたの古泉?手が進んでいないようだけど」
古泉「い、いえ。順調ですよ」
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:09:13.15 ID:l4oFZybjO
森「古泉。できたわよ、こっちにいらっしゃい」
古泉「あ、はい。すぐに行きます。おや、ハンバーグですか」
森「そうよ。嫌いだったかしら」
古泉「いえいえ、大好物ですよ。うれしいです」ニコ
森「そう、良かった。お待ちどうさま。仕事に備えて、アルコールはなしね」
コトッ
古泉「ふふ、僕は未成年ですので」
森「それもそうね。…さぁ、食べましょうか」
古泉「そうですね。ではいただきます」ぺこっ
森「ええ、召し上がれ」
古泉「……」もぐっ
森「どうかしら?」
古泉「………うん、おいしい。…すごいですね」
森「ふふ、これでもメイドさんだから。お代わりはあるから、たくさん食べなさい」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:15:53.00 ID:l4oFZybjO
古泉「ふふ、なんだかお母さんみたいですね」
森「なに?よく聞こえなかった。もう一回言ってごらんなさい」
古泉「おか…あ、いや。なんでもありません。おいしいです」
森「よろしい」
古泉「……」
古泉「…すみません。少しだけ、愚痴をこぼしてもよろしいでしょうか」
森「良いわよ。好きなだけ話しなさい」
古泉「…久しぶりです、愛情のこもった料理を食べるのなんて」
森「……」
古泉「……最近はずっとカップ麺でしたから。なんと言うか、心に染みますね」
森「そう。…喜んでもらえて良かった。たくさん食べなさい」
古泉「はい。では遠慮なく、おかわりお願いします」すっ
森「……上司を立たせるとは、良い度胸ね」クス
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:21:01.71 ID:l4oFZybjO
・
・
・
古泉「いやぁ、少し食べすぎました。おいしかったです。ご馳走様でした」
森「はい、お粗末様」ニコ
古泉「…森さんの料理、久しぶりにいただきましたけど…やっぱりおいしいですね」
森「そう?いつでも食べにいらっしゃい」
古泉「良いんですか?」
森「ええ。疲れたら…そして、家に居場所がないならいつでも来なさい」
古泉「……ありがとうございます。家の事は仕方ありませんよ。こんな仕事ですからね」
森「それもそうね。機関の人間で、きっと家族を納得させられた人なんて居ないでしょうね。私も含めて」
古泉「…」
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:28:55.25 ID:l4oFZybjO
森「さて…古泉。少し話に付き合いなさい」
古泉「え?森さん、休まなくて良いんですか?」
森「休むまでの時間だけよ。泊まって行けとまでは言わないから」
古泉「わかりました。僕でよろしければ、話し相手になりましょう」
森「……迷惑かしら?」
古泉「いえ、とんでもない。ただ…今日の森さんは、いつもとは少し違うような気がしますね」
森「そう見える?」
古泉「はい。なんと言いますか…淋しがってるように見えるというか」
森「ふふ、そう見えるのなら、そうなんでしょう」
古泉「え…そうなんですか?」
森「私も人間だもの。一人が辛いときもあれば、誰かと居たいこともあるのよ。なにか問題がある?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:35:07.27 ID:l4oFZybjO
古泉「森さんにも、そんな事があるんですね」
森「心外ね。私が感情のない冷徹な人間だとでも?」
古泉「まさか、そんな事はありません。……もっとも、昔はそう思ってましたけどね」
森「ふふ、ずいぶん根に持っているのね」
古泉「そりゃあ、あれだけ厳しくされれば誰でもそう思いますよ。もちろん、今は違いますよ?」
森「そう、それならいいんだけど…」
古泉「さっきも言いましたが、本当に優しくしてくれるようになりましたよね」
森「そうね。さっき言ったように、あなたは成長したから」
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:40:29.93 ID:l4oFZybjO
古泉「…じゃあ、どうして成長したら優しくしてくれるようになったんです?」
森「ふふ、どうしてでしょう?」
古泉「……わかりません」
森「そう。今のあなたと昔のあなた、どこが違うか比べてごらんなさい」
古泉「…身長や見た目、ではないですよね」
森「もちろん。じゃあ、昔どんな気持ちでこの仕事をしていたか」
古泉「どんな気持ちで…?」
森「……」
古泉「……?」
森「覚えてない?昔あなたが能力に目覚めて間もない頃、あなたはとにかく泣いて、そして怒っていた」
森「僕の青春を返せ、もう痛いのは嫌だ、一体誰を恨めばいいんだ、ってね」
古泉「…」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:45:38.23 ID:l4oFZybjO
森「昔は、私が憎かったでしょう?」
古泉「そう……かも知れません」
森「憎かったと思うわ。それも当然の事…」
森「あなたも被害者なのに…。理不尽な苦労や苦痛を強いられ、そして上司にも怒鳴られ、引っぱたかれて…」
古泉「……確かに、あの頃の森さんは鬼のようでしたよ」
森「ふふ、そう。それで良いのよ。だって…」
古泉「…だって?」
森「古泉があの頃私を憎んでなかったら、きっとその怒りの矛先は涼宮さんに向いていた」
古泉「!」
森「それなら、私を憎んでくれたほうがずっと良い。でしょう?」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:51:40.27 ID:l4oFZybjO
古泉「森さん……」
森「でも今はそんな事はないでしょう。あなたはもう、誰も恨まないで仕事ができるようになったから」
森「誰かのせいではなく、誰かのために…そう思えるようになったら、私が必要以上に厳しくする必要なんてない」
古泉「……」
森「私がこうして話すのも、あなたの成長を認めているからよ。あなたが大人になった、ってね」
古泉「……っ…」
森「あなたは頑張ってるわ、古泉。今までよく頑張ったわね」ニコ
古泉「……う……」
森「もう、何泣いてるのよ。前言撤回。古泉、まだまだ子供ね」
古泉「…ふふ……卑怯ですよ…っ」
森「よしよし…」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/27(月) 23:57:07.75 ID:l4oFZybjO
森「そろそろ落ち着いたかしら?」
古泉「…はい。すみません、柄にもなく大泣きしてしまいました」
森「柄じゃない?昔はあんなに泣き虫だったくせに」
古泉「…耳が痛いです」
森「……ふふ」
古泉「森さんは」
森「?」
古泉「森さんは、どうしてそんなに強いんですか…。僕とそんなに大きく年が離れているわけでもないのに」
森「あら、私は強くなんてないと思うわよ。あなたにはそう見えているの?」
古泉「当然ですよ…。僕にとって、森さん以上に大きな人は居ないって言ったでしょう?」
森「ふふ、大げさね。…でも、そう見えているのならうれしいわ。あなたのおかげよ、古泉」
古泉「?」
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 00:28:42.93 ID:8sfFMM2lO
森「あなたより少し前から機関に所属していたけれど、私もあなたが入るまでは泣き虫だった」
古泉「森さんが?…あまり想像できませんね」
森「ふふ、そうでしょうね。あなたの前で泣いたことなんて一度もないんじゃないかしら」
古泉「ですね。というよりも、仕事中はあまり笑ってるのも見たことありませんよ」
森「そうあるように努めていたからね。…ともかく、古泉が入ってからは私は今のままじゃいけないと思うようになった」
森「泣いてるあなたを見て…ああ、この子は私が泣いたら真似をするなってね」
古泉「…」
森「あなたは私にとって弟のようなものだったから…。だから、弱虫のあなたが居たから私は強い女を演じられたのかもね」
古泉「そうだったんですか…」
森「ふふ、こんな話まで古泉にしちゃうとは思わなかったな…。疲れてるのかしら」
古泉「……森さんも、不満を持ってたんですね」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 00:40:09.72 ID:8sfFMM2lO
森「少しはね。だから、あなたが口にしていた不平不満も、痛いほどわかったわ」
古泉「…僕の青春を返せ、何を憎んだら良いんだ…ですか」
森「そう。私にも青春があったし、誰かが憎いと思うようなこともあった」
森「残念ながら私は厳しくしてくれる上司はいなかったけど」
古泉「…じゃあ、森さんは誰を憎んでいたんですか」
森「ふふ、どうかしら。少なくとも、誰かのせいじゃなく、誰かのために、だったわね」
古泉「……そうですか」
森「さぁ、私の過去の話はもうおしまい。聞いて面白いものでもないしね」
古泉「いえ、そんな事はありませんが…」
森「少ししゃべりすぎたわね」
古泉「……洗い物くらいはして帰りましょう」
森「そう?そこまで気を使わなくてもいいわよ。付き合ってもらったのはこっちなのに」
古泉「いえいえ。僕もお話を聞けてよかったですよ」ニコ
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 00:44:34.21 ID:8sfFMM2lO
・
・
・
古泉「…これでおしまいですね。森さん、終わりましたよ」
古泉「このお皿はどこにしまえばよろしいですか?」
古泉「……森さん?」
森「……くぅ……くぅ……」
古泉「…困った。ソファで寝てしまわれていますね」
森「……くぅ……」
古泉「ここでは風邪を引いてしまいますね。…ベッドまでお運びしましょうか」
すっ
森「……くぅ……」
古泉「!」
古泉「……軽い……」
174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 00:49:46.74 ID:8sfFMM2lO
古泉「起こさないように……慎重に……」
すっ
森「くぅ……くぅ……」
古泉「ふぅ…。どうにか運ぶには運べましたが…」
古泉(……なんて寝顔…。まるで子供のような…)
古泉(…先ほどの話を聞いたせいか、森さんがひどく幼く見える…)
古泉(どう見ても普通の女の子なのに…)
古泉(………この女の子が、幼い頃から僕の為にあんな厳しい顔をしてくれていたのか)
古泉「…ありがとうございます、森さん。感謝していますよ」ぼそっ
森「……くぅ……」
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/28(火) 00:53:05.66 ID:8sfFMM2lO
古泉「…本当に、ひどい隈だな。…綺麗な顔が台無しだ」
古泉「彼に感謝しなくてはね。今日くらいは、ゆっくり休んでいてください」
古泉「……おやすみなさい、森さん」
森「くぅ……」
古泉「…」
スタスタ
スタスタ
ガチャ
古泉「!」
古泉「…迂闊でしたね。鍵はどこにあるのでしょうか?」
古泉「開けて帰るわけにもいかないし、増してや家捜しなどできるはずもない…」
古泉「………困ったな」
289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:49:09.98 ID:oi9vln7zO
古泉「困ったことになりました…」
森「…すぅ……すぅ」
古泉「…ふむ。完全に熟睡してしまっていますね」
古泉「…仕方ありませんね。今日は泊まって行くしかないようだ」
古泉「まさか同じベッドで寝るわけにもいきませんし」
古泉「……ソファをお借りしましょうか」
スタスタ
スタスタ
古泉「………」
森「すぅ…すぅ…」
古泉「らしくありませんね…人前でこんな無防備な姿を晒すなんて」
古泉「よっぽど疲れているのか。それとも、僕がそれだけ信頼に足る人間だということでしょうか」
290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:52:46.61 ID:oi9vln7zO
古泉「ふふ、あるいは両方なのか」
古泉「…森さん。そんな格好では、風邪を引いてしまいますよ」
森「くぅ……くぅ……」
古泉「聞こえませんか。…毛布だけでもかけて差し上げましょう」
古泉「…」すっ
森「……すぅ……すぅ……」
古泉「…改めて見ると、本当に綺麗な顔をしていらっしゃいますね」
古泉「そして、この隈の深さがあなたの苦労を物語っています…」
古泉「……」
古泉「森さん。あなたには、どんな青春があったんですか」
292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 00:58:50.92 ID:oi9vln7zO
古泉「貴女ほどの美人なら、恋人の一人や二人居たのでしょうね」
古泉「ふふ…。それとも、そんな余裕はなかったでしょうか」
古泉「……僕たちも、いつか…青春を取り戻せる日が来るんでしょうか」
古泉「!」
古泉「おっと。スカートが……。すみません森さん、直させていただきますよ」
すっ
古泉「…酷い痣だ。森さん、あなただってもう少し身体を労わってください」
古泉「あなたのような女性に、痣や隈は似合いませんよ」
森「……くぅ……」
古泉「……」
古泉「おやすみなさい、森さん」
スタスタ
スタスタ
prrrrr
森「!」がばっ
294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:02:12.66 ID:oi9vln7zO
森「古泉、今何時?」
古泉「…まだ寝てから10分も経っていませんよ」
森「そう。行くわよ古泉。準備なさい」
古泉「……」
森「古泉?何をぼさっとしているの。早くしなさい!」
古泉「……すみません。いつでも行けますよ」
森「よろしい。私は車を出しているわ。あなたは冷蔵庫から栄養剤を2本出して持ってきなさい。施錠は構わないわ」
古泉「…了解」
森「ポイントは近いわね。急ぐわよ!」
295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:06:15.54 ID:oi9vln7zO
ガチャ
バタン!
ブゥゥゥン…
森「……」
古泉「……」
森「……」
古泉「森さん、栄養剤です。どうぞ」
森「……」
古泉「森さん」
森「え?ああ、ありがとう。あなたも飲みなさい」
古泉「……」
森「どうしたの?」
古泉「……いえ、なんでもありません。いただきます」
森「ええ。気を抜かないように。死ぬわよ」
古泉「はい。承知していますよ」
299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:13:16.17 ID:oi9vln7zO
森「心配してくれてるの?」
古泉「…!」
森「ふふ、ありがとう古泉。でも大丈夫よ」
古泉「…ええ、心配していますよ。でも、だからと言ってどうする事もできませんがね」
森「その通り。…だから、心配してくれるだけでいいのよ。私もあなたを心配しているわ」
古泉「…そうですね。ありがとうございます」
森「どんなにつらくても、卒業式まで我慢しましょう。それまで耐え抜けば、なんとかなるわ」
古泉「はい。お互い、なんとか踏ん張りましょう」
森「さぁ、着いた。行くわよ!」
・
・
・
303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:25:10.52 ID:oi9vln7zO
【翌日・放課後】
・
・
・
古泉「…では、卒業パーティーは今週の土曜日、という事でよろしいですね」
ハルヒ「うん!悪いけど、施設の方の段取りの方はよろしくね古泉君!」
古泉「かしこまりました」にこっ
ハルヒ「私は出し物なんかの準備や買出しにも行かなくちゃね。キョン!あんたはわかってるわね?」
キョン「はぁ……。わかってるよ。やればいいんだろう、この野郎め」
ハルヒ「素直でよろしい!」
キョン「…やれやれだ、まったく」
古泉「では、すみませんが少し電話をしてきますね。ホテルの予約もありますので」
ハルヒ「うん!よろしくね!」
306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:31:52.74 ID:oi9vln7zO
ガチャ
prrrrr
古泉「…もしもし、古泉です」
森『……古泉。どうしたの?』
古泉「すみません、お休み中でしたか」
森『いいえ、大丈夫よ。パーティーの日時は決まった?』
古泉「ええ。土曜日ということになりました。間に合いますか?」
森『間に合わせるわ。他に何か追加の要望は?』
古泉「いえ、今のところは彼女は何も。ただいつものように…」
森『わかってる。どんな要望にも応えられるように万全の用意はしておくわよ』
古泉「よろしくお願いします。それでは、後ほど」
森『ええ、また後で』
309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:37:54.82 ID:oi9vln7zO
ガチャ
古泉「無事に予約は取れましたよ。問題なくパーティーを行えるでしょう」
ハルヒ「ありがとう!じゃあ後は衣装よね…キョンはトナカイとして、主役のみくるちゃんはどうしようかしら」
キョン「…おい」
みくる「え?せ、制服じゃだめなんですかぁ?」
ハルヒ「当然じゃない!みくるちゃんの為のパーティーなんだから、オシャレしなきゃね!」
みくる「…うぅ…恥ずかしいのは嫌ですよぅ…」
ハルヒ「せっかくだからドレスなんかもいいわよね!フリフリの白とか、赤なんかもセクシーでいいかも!黒のノースリーブも捨てがたいわ」
古泉「…」
キョン「おいおい、そんなもんどうやって買うつもりだ。いくらなんでも資金不足だ」
ハルヒ「むぅ…それもそうね。せっかくだからみくるちゃんに綺麗な服で出て欲しかったのに…」
古泉「…そういえば、そこのホテルでは衣装の貸し出しも行っているようですよ。ドレスでよろしいですか?手配しておきましょう」
311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 01:44:28.23 ID:oi9vln7zO
・
・
・
【閉鎖空間消滅後】
古泉「お疲れ様でした。…今日はこれで終わりのようですね」
森「……」
古泉「森さん…大丈夫ですか」
森「え?…ああ、大丈夫よ。ごめんなさい。何?」
古泉「…いえ、大丈夫ですか?」
森「問題ないわ」
古泉「……森さん、頬がこけてきてますよ。どうか無理をなさらないでください」
森「……ありがとう。さぁ、帰りましょう。今日は少し眠れそう…」
古泉「…その、森さん……」
森「なに?」
古泉「……ドレスの手配をお願いします。赤と白、それから黒のノースリーブを、朝比奈さんの体型に合わせて」
森「………了解。必ず土曜日に間に合わせるわ」
374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 18:03:29.57 ID:oi9vln7zO
【パーティー当日】
ハルヒ「うわぁ!ひっろーい!!ホントにこんな所使ってもいいのかしら?」
古泉「ええ、もちろんですよ。経営者の方にも気兼ねなく貸していただけましたし」
キョン「こりゃすごいな。ちょっとした披露宴くらいならできそうだ」
古泉「ふふ、ここはもともとそういう用途で使われる部屋ですからね」
キョン「しかし…5人で送迎会するには少し広すぎやしないか?」
古泉「たしかに。まぁ、今日は特別な日ですから、良しとしておきましょう」
みくる「わぁ………すっごい……」
ハルヒ「あ!みくるちゃん!さっそく開会よ!着替えに行きましょ」
みくる「へ?」
ハルヒ「言ってたでしょ?今日はみくるちゃんには特別衣装を用意してるの!ふふ、きっと似合うわ!」
みくる「い、衣装ですかぁ?わ、わ、引っ張らないでください〜…」
377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 18:08:36.71 ID:oi9vln7zO
ガチャ
森「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ」
ハルヒ「あ!あの時のメイド……えっと、森さん!こんにちは」
森「こんにちは」ニコ
ハルヒ「森さん、ここでも働いてたのね!じゃあ…みくるちゃんを、うんと綺麗にしてあげてね!」
森「ふふ、お任せください。では朝比奈さん、こちらへ」
みくる「え、えっと…よろしくお願いしますぅ」ペコ
森「こちらこそ、よろしくお願いいたします。せっかくのパーティーですものね」
みくる「えへへ……ちょっと照れくさいですけど」
森「今日は大事な日ですから。ドレスは赤、白、黒とございます。どれにいたしましょう?」
みくる「えっとぉ…」
ハルヒ「黒!」
森「かしこまりました。ではこちらの黒のノースリーブでよろしいですね?」
378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 18:12:41.31 ID:oi9vln7zO
・
・
・
ガチャ
古泉「おや、主役の登場のようですよ」
キョン「朝比奈さんのドレス姿か…しっかり目に焼き付けとかなきゃな」
長門「……」もぐもぐ
キョン「あ、こら長門。つまみ食いしちゃだめだろ」
長門「……」もぐもぐ
トテトテ
トテトテ
みくる「えへへ……恥ずかしいなぁ…」
キョン「……おお」
古泉「お美しいですね。とても高校生とは思えない」
長門「……綺麗」
379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 18:16:59.66 ID:oi9vln7zO
ハルヒ「じゃじゃーん!さすがはみくるちゃん!今日の主役はこうじゃなくっちゃね!」
みくる「…ありがとうございます、本当に……」
ハルヒ「おおっとぉ、まだ泣くのは早いわよみくるちゃん!パーティはこれからなんだから!」
みくる「ふふ、そうですね。今日は楽しみましょうね」
ハルヒ「うんっ。よし、じゃあ早速挨拶からやっちゃいましょうか!」
キョン「…やれやれ。お前が一番はしゃいでどうする」
ハルヒ「うるさいわよキョン!今日は楽しまなきゃ!じゃあ行きます!開会の挨拶、団長・涼宮ハルヒ!」
古泉「……」ニコニコ
382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 18:29:50.21 ID:oi9vln7zO
ハルヒ「今日は、みくるちゃんの卒業パーティーです!」
ハルヒ「我らがSOS団の愛すべきマスコットキャラ、みくるちゃんの門出を大いに祝福しましょう!」
ハルヒ「SOS団結成のその時から、みくるちゃんは私達に癒しと愛情を与えてくれました!」
ハルヒ「だから、今日は……」
キョン「……」
ハルヒ「ぐすっ…」
ハルヒ「今日はみくるちゃんの門出を祝う式だから、湿っぽいのはだめよ!特にキョン!」
キョン「……どんな挨拶だよ」
ハルヒ「だから!今日は思いっきり楽しむこと!」
ハルヒ「以上!開会の挨拶、涼宮ハルヒ!」
キョン「……やれやれ」パチパチ
長門「……」パチパチ
古泉「…」パチパチ
みくる「……ぐすっ…」
386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 19:19:08.45 ID:oi9vln7zO
・
・
・
森「…古泉」
古泉「はい、どうしましたか」
森「……私達はこれから閉鎖空間に向かう」
古泉「えっ?そんなバカな…今閉鎖空間が発生するとは考えにくいのですが」
森「微弱ながら、確かに発生は確認されたわ」
古泉「しかし彼女は現にああして楽しんでおられるようですが…」
森「表向きには、ね。朝比奈さんと共にすごせる時間は、こうしている間にもどんどん残り少なくなっていく」
森「…正念場は、このパーティが終わってからよ」
古泉「…」
森「ふふ、そんな顔をしなくても大丈夫。あなたはとりあえず、パーティーを楽しんでいなさい」
古泉「…わかりました。終わり次第、僕もすぐに駆けつけます」
森「了解。じゃあ、また後でね」
390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 19:25:47.61 ID:oi9vln7zO
・
・
・
古泉「もうそろそろ、パーティーもお開きですね」
キョン「ああ。ハルヒも楽しめてるようだし、なにより朝比奈さんがうれしそうだ。よかったんじゃないか?」
古泉「…そうでしょうか?」
キョン「……やっぱり気になるか?」
古泉「そうですね。いたし方ない事かも知れませんが…。やはり、涼宮さんが時折見せる寂しそうな顔が…」
キョン「…結局、こうやってバカ騒ぎして紛らわせたいんだろうよ。それは俺も同じだ」
古泉「……」
キョン「またアレが出てるのか…?」
古泉「はい。ごく小規模ではありますがね。気になるのは、このパーティーが終わった後です」
400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 19:56:47.95 ID:oi9vln7zO
ハルヒ「…はぁ、もうすぐ終わっちゃうわね」
みくる「はい。…でも、すごく楽しかったです。今日はありがとうございました、涼宮さん」
ハルヒ「うん。…大体面白くしたのはキョンだったけどね」
みくる「くすっ…それもそうかも知れませんね」
ハルヒ「…あーあ。もう終わりかぁ」
みくる「寂しくなっちゃいますね。…うん。寂しいなぁ」
ハルヒ「私もよ。…みくるちゃんが居なくなっちゃうなんて、まだ信じられないわ」
―――――――――――――――――――――――――――
【閉鎖空間】
森「いよいよ規模も拡大されてきたわね…」
構成員「神人の発生を確認。1、2、3…目視でける範囲では6匹です」
森「来るわよ。全員、臨戦態勢に入りなさい」
構成員「了解!」
構成員「……でかい」
新川「厄介ですな。ここ最近の神人よりもかなり手ごわそうです」
森「はい。気を抜かずに行きましょう」
428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 23:16:35.70 ID:oi9vln7zO
みくる「…でも、私…涼宮さんにSOS団に誘ってもらえて、本当によかったと思ってます」
ハルヒ「…ま、最初は無理やり拉致しちゃったんだけどね」
みくる「うふふ、そうでしたね。でも楽しかったですよ。皆と海に行ったり、夏休みに一緒に遊んだり…」
ハルヒ「うん。私も、みくるちゃんと遊べてすごく楽しかった」
みくる「しんどい事もたくさんありましたけど、SOS団で居られて本当によかったです」にこ
ハルヒ「…!」
ハルヒ「…で、でも…今日で終わりってわけじゃないもんね。卒業してからでも、また会えるわよね」
―――――――――――――――――――――――――――
【閉鎖空間】
森「…まずい。どんどん拡大していく…!」
構成員「神人、新たに5体発生!対処しきれません…!負傷者も出ています…!」
森「……古泉……!」
構成員「被害は拡大する一方です!指示をお願いします!」
森「総員でかかりなさい!救護体も必要最低限の人数を残して、攻撃にまわりなさい」
構成員「了解!」
431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 23:29:02.93 ID:oi9vln7zO
ハルヒ「そうよね。たとえみくるちゃんが卒業しちゃっても、居なくなるわけじゃないもん」
ハルヒ「探索だって一緒に行こうと思えば行けるし、また旅行だって…」
みくる「涼宮さん…」
ハルヒ「そりゃ、今までどおりとはいかないだろうけど…ね?」
みくる「ごめんなさい…」
ハルヒ「…え?」
―――――――――――――――――――――――――――
【閉鎖空間】
負傷者「う……うぅ……」
森「大丈夫、しっかりしなさい。もうじき救護隊がこっちに回ってくるわ。……痛む?」
負傷者「……い……いやだぁ……死にたくない……」
森「出血が…おさまらない…!救護隊!!攻撃に回っていない救護隊はっ!!何をしているの!?」
構成員「人手が足りません!あちらの班でも負傷者が出ています!こちらまで手が回りません!」
森「くっ…!せめて、もう一人攻撃に回せれば…!」
森「……いいわ。あなたがこの者の救護を」
構成員「森さん!?」
433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 23:39:06.51 ID:oi9vln7zO
ハルヒ「どうして…?卒業してからだって、一緒に遊べるじゃない?また探索行ったり…ほら、海だって…」
みくる「涼宮さん…。私…卒業したらずっと、うんと遠い所に行っちゃうんです」
ハルヒ「……」
みくる「…だから……私も、会えるかどうかはわからないんです…」
ハルヒ「…そんな。嘘でしょ?だって、進学するって言ってたじゃない。…留学しちゃうの?」
みくる「えっと…うん、そんな感じです」
―――――――――――――――――――――――――――
【閉鎖空間】
構成員「お待ちください!この状況で指揮官が動くのは…!」
森「黙りなさい。私の命令に逆らうの?」
構成員「い、いえ…しかし!」
森「これ以上の拡大は危険よ。崩壊の可能性すらある。もう僅かでも閉鎖空間を広げるわけにはいかないの」
構成員「私が行きます!指揮官にもしもの事があれば我々は…」
森「あなたは救護を。あなたよりも私の方が純粋に戦闘力が上だから、私が行く。異論は?」
構成員「…ありません」
森「よろしい。命令よ。絶対に死なせるな」
構成員「…了解!」
441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/29(水) 23:54:57.30 ID:oi9vln7zO
みくる「……でも、本当に今まで楽しかったから。ありがとう、涼宮さん」
ハルヒ「……うん」
みくる「泣かないで…私も寂しくなっちゃうよぅ…」
ハルヒ「だって…!だって、私みくるちゃんが…大好きだもんっ…寂しいわよっ…!」
みくる「私もですよ、涼宮さん。でも…団長。今日は湿っぽいのはナシって言ってたでしょう?」
ハルヒ「…!」ぐしぐし
古泉「…涼宮さん。少しよろしいでしょうか」
ハルヒ「古泉君……?」
―――――――――――――――――――――――――――
【閉鎖空間】
構成員「新たに3体発生…!負傷者も半数を超えました!もう堪え切れません!」
構成員2「…指揮官は?森さんはどうしたっ!?」
構成員「自ら戦闘に…私に負傷者の救護を任せて、行ってしまわれました!」
構成員2「馬鹿な…!」
構成員「…新たに2体発生!!」
構成員2「無理だ!!一人で5体以上も相手にできるはずがないっ!!!」
454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/30(木) 00:20:43.24 ID:uWCqLyKH0
追いついた
終わらない…だと…?
続き書いてみようか
>>1並のクオリティは無理だけど
466 名前:場つなぎ[] 投稿日:2009/07/30(木) 00:38:51.02 ID:uWCqLyKH0
古泉「宴もたけなわのところで、申し訳ありません。どうしても行かなければならない用事が入ってしまったんです」
ハルヒ「え…?これから二次会もあるし、ビンゴゲームの商品渡し予定もあるのに。そんなに急な用なの?」
ハルヒ「みくるちゃんと一緒の、最後のパーティーじゃない。あとちょっと、こっちを優先するわけにはいかない?」
みくる「す、涼宮さん!あたしは平気ですから…!今日は、本当に、楽しかったです」
みくる「古泉くん、あたしのことはいいから行ってください」
みくる「ねっ?いいですよね、涼宮さん」
ハルヒ「…いいわ。その代わり、あとできーっちり、みくるちゃんに謝ってね。まだみんなで、写真撮影してないんだから。約束よ」
古泉「涼宮さん…。ありがとうございます」
タタタタ……
ハルヒ「古泉くんがあんなに怖い顔するの、初めて見た…」
475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/30(木) 00:59:08.49 ID:uWCqLyKH0
キョン「あのイベント大好き古泉が、よりにもよって朝比奈さん卒業パーティーを中座してまで行かなきゃならない用事」
キョン「よっぽど大変な事があったんだろうさ」
ハルヒ「…キョン」
ハルヒ「そうね。随分急いでたみたいだったし」
ハルヒ「でも、一人いなくなっちゃったわ。みんなで拍手して、おしまいにしたかったのに…」
キョン (…世話の焼ける) 「ハルヒ」
476 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 01:01:33.87 ID:uWCqLyKH0
ハルヒ「……ちょ、ちょっと!何すんのよ!髪がぐちゃぐちゃに…」
キョン「辛気臭い顔はナシじゃなかったのか?」
キョン「お前が発案したパーティーなんだ、シメもしっかり頼むぜ、団長さんよ」
キョン「欠員で凹むのも分かるがな。この大事な席を外した古泉のことは、後で罰ゲームでもくれてやりゃいい」
キョン「で、その格好を写真に撮って朝比奈さんにプレゼント!これなら朝比奈さんのお土産にもなるし、一石二鳥だろ」
ハルヒ「ん。………そう、ね」
キョン「ホラ、立った立った!朝比奈さんを、そんな泣き顔で見送る気か?」
ハルヒ「――〜っ!バカっ!そんなわけないでしょ…!あたしを誰だと思ってるの!」
キョン「そうそう、その意気だ。その方がお前らしいぜ」
ハルヒ「……わかってるわ」ボソッ
キョン (さて、ハルヒはこれで大丈夫か?)
キョン (心配なのは古泉だな。顔面蒼白だったな。閉鎖空間、大事無けりゃいいんだが…)
477 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 01:10:18.09 ID:uWCqLyKH0
ハルヒ(あたしらしくない?…そんなこと、ずっと分かってる)
ハルヒ(でも、初めてだったのよ。こんなに楽しかったのは)
ハルヒ(あたしのSOS団。なくしたくない、みくるちゃんもみんなも…!)
長門「………」もぐもぐ
長門 (閉鎖空間の拡大が停滞。……これは、大爆発が起きる)
481 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 01:19:32.83 ID:uWCqLyKH0
キキィイイイイッ
新川「つきましたが、これは…」
古泉 (これは、外側からでも侵食が酷い…。これ以上拡がったら、本当に…!)
古泉「ありがとう、新川さん!」バンッ
新川「古泉、無茶は――!」
古泉「大丈夫です…!」
タッタッタッ
古泉 (僕の何倍も、皆は無茶して戦っているはずだ)
古泉 (やはりもっと早くに駆けつけるべきだった…!)
古泉 (――侵入!)
486 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 02:10:16.70 ID:uWCqLyKH0
―――――――――――――――――――――――――――
【閉鎖空間】
古泉「……」
古泉「……あ……?」
古泉 (なんだ、これ)
構成員「古泉ぃいいいいいいいッ!!!!」
構成員2「何処へ、行ってたんだテメエ、ぁあああ、畜生……っ!!」
古泉 (なんだ、これは?)
487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/30(木) 02:19:01.93 ID:uWCqLyKH0
古泉 (いつもの神人の形を成していない、青白いスライムのような生き物)
古泉 (何体かが恐らく融合しているんだろう、混ざり合って更に巨大化している)
古泉 (触手を伸ばして、まるで扇風機の要領で、全く外敵を寄せ付けずに)
古泉 (赤い光が、絡め取られて、振り回されて、叩きつけられて――)
古泉「……っ!?」
構成員「森さん、森さん……っ!」
構成員2「どうすりゃいいってんだ、あんな…あんな化け物相手にッ…!!」
構成員「この脚さえ動けば……動けばぁああッ!!!」
490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/30(木) 02:27:05.74 ID:uWCqLyKH0
古泉 (玩具のように放り出された、あの、微弱な赤い光が)
古泉 (――森さん、だって?)
構成員「俺達を庇って…!一人で五体の神人にっ…!」
構成員2「そしたら変形しやがって、あんな見たこともねぇ気味の悪いデカブツになりやがったんだっ!」
構成員「皆負傷しちまって、まともに飛べねない!飛んでもあの触手に弾き飛ばされる…」
構成員2「お前だけだ、古泉。あとはお前しかいない、もう誰もアレを止められない!」
構成員「俺達も世界もどうでもいい、森さんを、森上官をっ……!!」
古泉「………」
491 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 02:34:36.26 ID:uWCqLyKH0
古泉 (何だろう。…死地には何時も飛び込んでいたのに、こんな感覚は初めてだ)
古泉 (眼が、不思議と冴えていく)
古泉 (……涼宮さん)
古泉 (あなたが優しいことを僕は知っている。だから、ここで、もう一度だけ、慈悲をください)
古泉 (僕にはいらない、何もいらないから)
古泉 (森さんに)
古泉 (僕の大切なあの人を助けるために、どうか……!!)
古泉「ハぁああああ、アアアアアアアアアアアアアアアっ!!!!!!」
495 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 02:53:17.89 ID:uWCqLyKH0
・
・
・
キョン「これで二次会も終了、ですね。……お疲れ様でした、朝比奈さん」
みくる「みんなにこんな風に祝ってもらえて、…もう悔いはないって言ったらうそになりますけど」
みくる「素敵な時間でした。未来に帰っても、きっと、最高の思い出です。わすれません。ぜったいに」
キョン「そう朝比奈さんが思ってくれるなら、ハルヒも喜びますよ。ここ数日は、どうやったら朝比奈さんを楽しませられるか、アイツそればっかり考えてたから」
みくる「うん。涼宮さんには、幾らお礼を言っても足りません。もちろん、キョンくんも、古泉くんも、長門さんも」
キョン「俺は大したことはしてませんよ。そうだ、古泉といえば…。結局あれから、こっちには戻ってきませんでしたね」
みくる「そうですね。閉鎖空間処理、まだ終わらないんでしょうか」
キョン「さすがにもう何時間か経過してますし、終わってないって事は…。電話してみますか。状況くらいは聞けるでしょう」
みくる「あ、じゃあお願いします。あたしも古泉くんと改めて話したいし……ひえっ!?」
499 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 03:06:04.59 ID:uWCqLyKH0
長門「……」
キョン「ど、どうした、長門。朝比奈さんも、何か……?」
みくる「も、も、ものすごい勢いの時空震です…っ!こ、こんな規模、観測されたことは一度も…!」
長門「――『大爆発』観測。フェーズ移行」
みくる「ふぇ…!?」
キョン「待て、長門。説明してくれ。もしかして、古泉に何かあったのか?それとも閉鎖空間か?」
長門「…閉鎖空間はたった今完全に消滅した。世界改変には至っていない」
キョン「そいつは、古泉が神人狩りを終えたってことだよな?」
長門「違う。減少傾向にあった涼宮ハルヒの能力の減退が加速し、閉鎖空間に異常膨張が起きた。結果、爆発、消滅した」
キョン「な…!?こ、古泉は無事なのか!?」
長門「……命に別状はない。ただし、安定しているとは言えない。今から古泉一樹の収容された病院へ向かう」
501 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 03:10:01.06 ID:uWCqLyKH0
長門「涼宮ハルヒが戻る前の移動が推奨されている。急いで」
キョン「しかし、何も言わずに出て行ったら、ハルヒが……」
みくる「あ…あたし、涼宮さんを引き止めて事情を話してます!」
みくる「古泉くんのところに、早くいってあげて。もしかしたら事は、全部…あたしのせいなのかもしれないから……」
キョン「朝比奈さん……」
キョン「ありがとうございます。でも、そうやって自分を責めるのは止めてください」
キョン「古泉だって、そんなこと望みやしない。断言できます。なにせあいつは、ここの団の副団長なんですから」
みくる「……はい」
キョン「長門、待たせたな。――頼む!」
長門「了解した。転移を開始する」
503 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 03:19:22.68 ID:uWCqLyKH0
【病院】
キョン「……俺も前入院してた機関の病院だな」
長門「こっち」
カツ、カツ、カツ……
キョン(病院内は走っちゃいけません、か。長門は冷静だ。焦らず、逸らずいこう)
キョン(照明が薄暗い。…当たり前か。今は夜だしな)
キョン(命に別状はないんだ。大丈夫。大丈夫だ……)
カツン
長門「……あそこ」
キョン「っ、古泉…!」
古泉「……」
507 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 03:28:33.18 ID:uWCqLyKH0
キョン(腕と脚、それから額を覆うように派手に包帯が巻かれてるが、これなら本当に命の方に心配はなさそうだな)
キョン(松葉杖をついて、俯いて、壁に寄りかかってる。怪我してんだから寝てればいいものを)
キョン(はぁ……ったく、寿命が縮んだぜ)
キョン「古泉。俺だ、起きてるか?立ったまま寝てないだろうな」
古泉「…起きてますよ。あなた、ですか」
キョン「ああ。長門に聞いて飛んできたんだ」
キョン「酷い怪我だな。……こんな廊下で突っ立ってないで、ベッドで寝てろ。何処をどう見てもお前は重傷患者だ」
古泉「…気分じゃないんです」
キョン「気分って、お前……あ」
キョン「ここ、集中治療室か。……まさか、誰か……」
古泉「……」
古泉「…森さんが、眼を覚まさないんです」
510 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 03:42:19.93 ID:uWCqLyKH0
古泉「僕が駆けつけた頃には遅くて。森さんは五体の神人を相手に、ずっと一人で戦っていたそうです」
古泉「どうにか救い出しましたが、腱も関節もズタズタで、腕は引き千切れて……死んでいてもおかしくないのに、それでも鼓動は止まずに」
古泉「生きてるのが不思議なくらいだと、医師は言っていました」
キョン「……っ!」
古泉「すぐに救急車で運んで手術して貰いましたが、結局強力な神人には手が出せず、世界が改変される場に立ち会うところでしたよ」
古泉「……先ほど、どういうわけか自然消滅したようですが」
キョン「そう、か」
古泉「……森さんがこのまま息を引き取るようなことがあったら、僕は」
キョン「古泉」
古泉「僕は……何を憎めばいいんでしょうか」
514 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 03:51:02.04 ID:uWCqLyKH0
古泉「閉鎖空間の発生の源である涼宮さんを?彼女は何も知らない、誰を傷つけたいわけでもない、特別な力を望む前に授かってしまった少女に過ぎないのに?」
古泉「では朝比奈さん?涼宮さんが閉鎖空間を発生させる原因を作った、未来人の彼女を?心優しくいつも自分より人を気遣う、僕らの仲間を?」
古泉「……わかってるんです。憎むものなんて」
古泉「一番大事なときに、一番大事な人の傍にいなかった……!森さんが傷ついてボロボロになって地面に何度も叩き伏せられているとき、彼女を護れなかった…!!」
古泉「僕しか、いないじゃないですか……」
キョン「……っ!」
キョン(何が言えるんだ、俺に。森さんは知人だが、俺は機関の人間じゃない。古泉の苦しみも痛みも分からない、所詮は部外者の俺が)
キョン(クソッ…!)
キョン「古泉、いいか、よく聞けよ。それだけは違う。憎むべきものはお前じゃない、お前がお前を憎んだってどうにもならねえだろ……!」
キョン(畜生、なんでだよ、ハルヒ…!どうしてお前が、こんな――)
517 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 04:05:26.71 ID:uWCqLyKH0
長門「……」
長門「あなたは、聞かなかった?」
キョン「――はい?」
古泉「ああ、…長門さんも、いらしていたんですね。お見苦しいところを……」
古泉「…『聞く』とは、何のことですか」
長門「……誰も近寄れなかった神人の攻撃を潜り抜け、あなたは森園生を救援した。その際、あなたは何も感じなかったかを訊いている」
古泉「仰る意味が、よく、分からないのですが」
長門「……」
キョン(……長門?何を言い出す気だ)
518 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 04:17:27.87 ID:uWCqLyKH0
長門「あなただけが森園生の元に辿り着けたことは、偶然ではない」
古泉「……?」
長門「涼宮ハルヒの能力は減少傾向にあった。しかし、その能力そのものが膨大であった故に、急速な力の収束は彼女の手を離れて暴走した」
長門「強大なものが一気に零にまで縮小されるとき、時空は歪む。それが、『大爆発』を引き起こした」
長門「近頃の涼宮ハルヒの精神状態からいえば、朝比奈みくるのことで彼女が幾ら悩んでいたとしても、元来の発生理由とはベクトルが異なっているのだから、閉鎖空間が発生する程のものではなかったはず」
長門「能力の暴走に涼宮ハルヒ自身が引き摺られ、結果として閉鎖空間が頻発する結果となったが、それは彼女の意図するところではない」
キョン(長門、お前…。ハルヒを、擁護してくれてるのか)
古泉「……」
519 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 04:27:30.68 ID:uWCqLyKH0
長門「涼宮ハルヒは願った。『なくしたくない』。それはSOS団に所属するすべてを指す」
長門「……暴走した力の上では、涼宮ハルヒの願望実現能力は威力を発揮しない。だが、彼女の強い願いは閉鎖空間に介入した」
長門「あなたを、護ることで」
古泉「―――っ!」
古泉(無我夢中だった、あのときは。……気付かなかった)
古泉(神人の攻撃を必死で交わしながら、…確かに、一時的に、相手の動きが鈍くなった瞬間があった…)
古泉(意識の外にあっても、自分が神に等しき力を持っているなんて知らなくても、彼女は)
古泉「……っ、でも、それなら、何故平等に」
古泉「僕だけじゃなくて。森さんや、他の超能力者を、同じだけ護ってはくれないんですか」
古泉「それが、SOS団と、その他の差なんでしょうか」
520 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 04:36:12.87 ID:uWCqLyKH0
古泉(もしそうなら、僕はSOS団という括りなど要らない、除名されようと構わない)
古泉(その差異で僕が生き、より仲間のために世界のために戦い続けていた森さんが死ぬというのなら…!)
長門「……森園生は、生きているはず」
古泉「はい。確かにぎりぎりのところで、命を繋いではいます。今回の件に今のところ死者はいない。でも、いつ容態が急変するか分からない」
長門「森園生の負傷は本来なら死に至っていておかしくないレベルのもの」
古泉「ええ、ですから……!?」
524 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 04:41:02.56 ID:uWCqLyKH0
キョン「あ……」
キョン「まさか――そういうこと、なのか……!?」
長門「……呼吸器を外しても、恐らく森園生は生きている」
長門「だが、長時間不安定な涼宮ハルヒの能力が行使され続ければ、収まりきらない力の余波が時空震を再度引き起こすかもしれない」
長門「そうなれば情報統合思念体も無関係ではいられない。……そこで、わたしに許可が下りた」
長門「わたしは今夜に限り、有機生命体を何人でも修復治療することが可能」
長門「……大丈夫。あなたは、誰も憎まなくていい」
古泉「――…っ、……!」
530 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 04:56:29.76 ID:uWCqLyKH0
古泉「……っ、ありがとう……長門さん」
古泉「……は、泣く積もりは、なかったんです…けど」
古泉「……っ」
キョン(こいつがこんなに感情剥き出しにして、ぼろぼろ泣くのを見るのは初めてだな)
キョン(幾ら泣いたって罰は当たらんさ。今夜くらいは、な…)
キョン「長門。森さんと古泉を治療したら、二人きりにしてやろう」ボソッ
長門「……」コクリ
キョン「その後で、他の機関員の手当てもな」ボソッ
長門「了解した」
キョン「今日の夜は長過ぎたんだ。……でも、悪いことばかりじゃなかったよな。きっと……」
531 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 04:59:03.34 ID:uWCqLyKH0
そろそろ寝ないと明日(今日)が不味くなってきた
あと残りはほんの少しだけの予定なので、残ってたら起きて書こうと思います
書き手さんももう一人いることだし、そちらにもお願いしたい
>>1乙&おやすみなさい
560 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 12:25:25.31 ID:yhkyyAsI0
・
・
・
古泉「……」
森「……」
古泉「……」グスッ
森「……」クスッ
古泉「森さん」
森「ごめんなさい。まるで夢の続きのようだと思って、つい笑ってしまったわ」
古泉「……ご気分はどうですか?」
森「悪くないわね。それに、怪我の跡もない…もしかして、長門有希さんが?」
古泉「お察しの通りです。彼女が助力してくれて…長門さんが居なかったらと思うと、ぞっとします」
森「閉鎖空間はどうなったの。あなたがここで私に付き添っているということは、無事に消滅させられたのかしら」
古泉「…僕達の力では、止められませんでした。詳しいことは不明ですが、閉鎖空間は現在は消滅しています」
古泉(森さんはきっと怒るだろう。閉鎖空間を放り出して、森さんを助けるために病院へ駆け出したと言ったら)
562 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 12:33:37.80 ID:yhkyyAsI0
森「それにしてもこの体勢、落ち着かないわね……ん、」
古泉「森さん…!まだ起きてはいけませんよ。もう少しで死んでしまうところだったんですから、無理はしないでください」
古泉「『自愛』が約束だったのに。森さんが無茶したら、意味、ないでしょう……」
森「古泉…。そうね、ごめんなさい」
森(残される側の気持ち。心配している人の気持ち。あなたに説いたのは、私だったのにね…)
古泉「とにかく、もう少し眠ってください」
森「……わかった。大人しく今は眠るから」
森「あなたもこっちに来なさい」
古泉「……え」
565 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 12:41:45.87 ID:yhkyyAsI0
森「今のあなたの顔を鏡に映して御覧なさい。隈と充血で、酷いことになってるわよ」
森「ほら。あなたが寝ないなら、私も寝ない。いい?」
古泉「いえ、僕は…!森さんが眠ったら、他の空きベッドを借りますから!」
森「そんなこと言って、私が眠ってもずっと付いているつもりなんでしょう。お見通しよ、それくらい」
古泉「…で、でも…」
森「昔はよく添い寝してあげたじゃない。今更照れるようなことでもないでしょう」
古泉「昔と今は違いますよ!って、うわっ」ボスン
森「…お願いよ。暫く……一緒にいて」
古泉「森さん…」
567 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 12:51:22.82 ID:yhkyyAsI0
森(得体の知れない形状へと変化した神人を目の当たりにしたとき)
森(死ぬつもりはなかった、…でも、覚悟した。あなたにもう一度会えないまま終わるかもしれないって)
森「……暖かいわ」ぎゅっ
古泉「当然じゃないですか……生きているんですから。…森さんだって、暖かいです」
森「ふふ、そうね。馬鹿なことを言ったわ」
森「……」
森「昔の夢を見てたのよ。…つい、さっきまでね」
571 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 13:01:08.13 ID:yhkyyAsI0
森「私が閉鎖空間で一度、大怪我したときがあったでしょ」
古泉「…はい」
森「あなたは顔を真っ赤にして泣いてた。鼻水と涙で顔はべちゃべちゃで、それでも必死に私の名前を呼んでた」
森「…あの時も夢を見たわ。私がふらふら、白い靄の向こう側へ渡ろうとしたら、あなたが叫んでるのが聞こえて」
森「弱虫なあなたを置いていくのが気掛かりで、私はそこを渡らなかった。…だから、眼を覚ませたのね、きっと」
森「昔から、ずっと、助けてくれてたのよ。古泉。あなたは覚えてないでしょうけど」
森「何度も…死の淵から私を呼び戻して。私がついてやらなきゃ…って……」
森「……」
古泉「……」
573 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 13:07:48.29 ID:yhkyyAsI0
古泉「森さん…?」
森「……」スースー
古泉「……」
古泉「人を、泣かせておいて…そのまま寝るのは酷いんじゃないですか」
古泉「お礼も、言えないじゃないですか…」
古泉「こんな僕でも少しは、森さんの救いに、なれていた…?」
古泉「……」グスッ
古泉(今日は泣いてばかりですね。こうなったらヤケです、流すだけ流してしまいましょう)
575 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 13:14:23.74 ID:yhkyyAsI0
古泉(明日、眼が腫れて大変なことになってるだろうな…。森さんにからかわれそうだ)
古泉(……森さんの目が覚めたら、また沢山話をしよう。今までのことと、これからのこと)
古泉(ずっと、あなたに想っていたこと)
古泉(帰ったら朝比奈さんにお詫びをして、彼と長門さんに謝礼をして、涼宮さんの笑顔に元気を貰いに行こう)
古泉(それから……は、また後日、考えるのでいいですね。明日は、まだまだ続くのですから)
古泉(……ふふ)
森「……」スースー
古泉(おやすみなさい、森さん。ありがとう)
古泉(……いい夢を)
終わり
579 名前: ◆ZsivI8YTAUAC [] 投稿日:2009/07/30(木) 13:17:10.44 ID:yhkyyAsI0
場繋ぎ終了です。
>>1のテンポの良さとか会話の心地よさとかがまるで表現できなかったですが
ともかくこっち側の話はこれにて終わります。支援&保守ありがとうございました。
もう一人の書き手さんと、>>1を待つ作業に戻る…ッ!