1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 22:46:52.48 ID:CVXfytnA0
昼休みのことだ。不意にずかずかと大またで近寄ってきて、そう言い放ったヤツの名はご想像の通り。
われらがSOS団長殿だ。殿は目下のヤツにつけるらしいが、別にいいだろう。
しかしなんだな。
クラスを軽く見回してみると、ぽかんとしてるやつと朝倉の顔を見て笑いを堪えるのに必死になってるヤツが半々、ってところか。
前者と後者の差は何だ?
「そんなの知らないわよ。いいからあんたはちょっと黙ってなさい!」
へいへい。団長殿がそうおっしゃるなら、俺は貝のように口を閉ざすとしますよ。
焼きハマグリのように、な。
「日本人なら日本語くらいちゃんと使いなさいよ」
それだけ言って、ハルヒの視線は横にずれた。その先にいるのはおかずのり眉毛・・・否、朝倉だ。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 22:49:51.10 ID:CVXfytnA0
「えっと、涼宮さん。その呼称は長門さんから聞いた?」
朝倉が困った顔をしている。
そりゃそうだろうな。長門に言われるだけでもけっこう困ってる呼ばれ方だ。
この自己中心的暴走超特急女に知られたら、学校中におかずのり眉毛の名が知れ渡ってもおかしくない。
何とか引き上げた唇の両端がひくひく震えるのもしょうがないだろうと思わないでもない。
だが、ハルヒの次の言葉は、それなりに付き合いが濃い俺にしても予想外だった。
にんまりと口の端を邪悪に吊り上げたハルヒが言ったのは「へえ・・・」という短い相槌。
そしてバッターのへそ辺りをえぐるような変化球。
「何でそこで有希の名前が出てくるのかしら?」
「え?それは、長門さんにそう呼ばれてるし・・・」
「有希にそう呼ばれるくらい、一緒に過ごしてるってことね」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 22:53:42.13 ID:CVXfytnA0
何だ?
ハルヒの着地点が見えん。
地上1メートルあたりまで濃霧で見えないまま、ひたすら飛ばされてる感じだ。
朝倉に助け舟を出したほうがいいだろうか。ちらちら視線だけこちらに飛ばしてきているんだが。
「あんた、見てる限りじゃあんまり教室から移動してないわよね。有希といるところも、学校じゃ見ないし」
そりゃそうだ。お前のいるところじゃ遊んでないからな。
だが何だ?今の俺に向けた、含み笑いと怒りとジェラシーのようなものが混ざった微妙な笑みは。
「あたしと長門さんは同じマンションで・・・ときどき晩御飯を一緒に食べたりするから」
「そうよねえ。あんたと有希は、同じマンションなのよねえ」
何だ?
とてつもなく嫌な予感がする。
脚部は地形とマッチしておらず右腕は防御パーツで、かつ左腕に使用不可、頭部に回数ドレインを喰らったような・・・。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 22:55:54.11 ID:CVXfytnA0
「おいハルヒ。朝倉に何か話があるんじゃないのか?」
ここらで主導権を奪っておかないととんでもないことになる。
俺の潜在意識がそう告げている。
だが、嗚呼、神様。失念していたわけではないが、発言一つで主導権を握れるほどこいつは甘くない。
そういや古泉が、こいつが神様だとか言ってたな。
あれ?
俺、超速思考してる?
死ぬのか、俺?
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:00:19.91 ID:CVXfytnA0
「本題に入るわよ」
ハルヒの顔は・・・口元、眉毛、眼、それぞれのパーツを見れば笑っているのだが、全体として・・・怖い。
「朝倉、あんた昨夜、どこで何してた?」
「え?家で、九時には寝たけど・・・」
そうだよなあ。いまどき、小学生でももう少し夜更かしするのに、随分早く寝るんだよなあ。
省エネのためとはいえ、もう少しなんとかしてやれんのか、情報・・・・ナントカ。
ハルヒはうんうんと頷いている。納得しているようだが、表情がまったく崩れてないのが気になるな。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:03:13.21 ID:CVXfytnA0
「じゃあキョン。あんたは昨夜どこで何してたの」
は?俺?
正直に言える・・・わけはないよな。
朝倉んちの台所で一晩寝てたなんて。
「家で課題を終わらせてからゲームして、1時ごろに寝たけど」
「間違いない?」
くどいな。頼むから信じろよ。
「ふうん」
ポチッ『〜1時ごろに寝たけど』
「録音したからね」
・・・なぜそこまでする。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:07:44.99 ID:CVXfytnA0
「いいわよ有希。入ってきて」
長門?
なんでここに?
あれ?
無表情の奥に燃えるジェラシーが垣間見えるような・・・
何で俺を指さした?
「彼と」
俺と?
「彼女が」
朝倉が?
「朝チュン」
あさちゅん?
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:09:32.41 ID:CVXfytnA0
「というわけよ。何か言うことはある?」
えーと、長門さん?
一体何を根拠にあのようなことをおっしゃる?
「・・・・・・」
長門の口が、音は出さずに形だけで何かを伝えてくる。
ば、つ?ばつ?
・・・罰?
何の?
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:12:38.96 ID:CVXfytnA0
「長門さん、何かの間違いじゃ・・・」
「有希がこの眼でしかと見た、と言ってるのよ。間違いないわ」
「けど、他人の空似ということも・・・」
「マンションのすぐ前で目撃してるのよ、制服姿のあんたたちを。この学校にあんたたちにそっくりな人間はいないわ」
ひょっとして、また仲間はずれにされたとでも思ってるのか。
ああ、この誤解、どうやって解こう。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:15:36.04 ID:CVXfytnA0
「あんたと有希は同じマンション。そこであんたとそっくりな人間が目撃された。そしてその横には・・・」
ん?
何だその眼は?
「キョン。あんたがいた。何か言い残すことはある?」
いやいやいや、ちょっと待て。
俺は昨夜は家にいたって言ったはずだろう。
「あんたと有希の言葉なら、どっちの方が信じるに足るかは決まってるでしょう?」
むう。こんなことなら、不思議の一つや二つでっちあげて、ポイントを貯めておいたほうがよかったか。
>>19
これの続きです
http://www.vipss.net/haruhi/1246796272.html
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:18:02.18 ID:CVXfytnA0
「二人が昨夜一緒にいた証拠も、ちゃんとあるんだからね」
そんなものがあるなら出してみろ。盗撮でもしてたのか?
「私がそんな犯罪行為に手を染めるわけ無いでしょ」
お前ならやりかねん。
「キョン。あんたさっき、朝倉が9時に寝たって言った時、頷いてたわよね」
え?
「初めて聞くことを耳にして、頷くなんて普通しないわよね。けれどあんたは頷いた。つまり、朝倉が9時に寝たことを知ってたのよ」
な、なんだってー!!?
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:20:52.12 ID:CVXfytnA0
「さあキョン、白状しなさい。あんたこのおかずのり眉毛とどこまでいったの!」
問答無用か。せめて他のクラスメイトの眼を気にする程度の配慮は欲しいんだが。
ああ、朝倉がおろおろしてる。
「ちょっと待て、ハルヒ。仮に俺が朝倉と朝チュンだとして、ここで言ったら朝倉に迷惑だと思うんだが」
「そんなの知ったこっちゃ無いわ。不純異性交遊で学校から注意を受けるような不名誉な団員を出すわけにはいかないの。これは正当な取調べよ」
正当な取調べ、はいい。
だが、その手に持ったサバイバルナイフは何だ。
「気になる?あんたの返答しだいでは・・・ふふふ」
やめろ。刃をなめるな。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:23:40.13 ID:CVXfytnA0
「どこまでも何も、俺と朝倉は何も無い」
「ふん。白を切りとおそうってわけ?」
「昨夜、朝倉の家に止まったのは認める。だが、断じて何もなかった」
「そうよ、涼宮さん。信じてちょうだい!」
「もういい、わかったわ・・・」
そうか。わかってくれたか。
ん?
ハルヒの顔が紅い?
そして俺の首が痛い?
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:26:06.99 ID:CVXfytnA0
「ちょっと涼宮さん!?」
「うるさい!死ね!みんな死ね!」
遠くで声が聞こえる。
目の前が暗くなる。
「長門さん!手伝って!」
ああ・・・死ぬってこんな感じか。
死ぬまでわからないよな、この感じは・・・・・・
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:28:57.66 ID:CVXfytnA0
あしゃくら「はう!キョンくんしんじゃらめえ!」ガバッ
あしゃくら「はあ、はあ、はあ」
あしゃくら「ゆめ・・・よかったぁ・・・・・・」
あしゃくら「ん?ながとさん?」
長門「・・・・・・・・・・・・」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:32:35.00 ID:CVXfytnA0
あしゃくら「Type−C ⇒ Type-B Now roading・・・」
りょうこ「あちゃくらりょうこ、推参!ちょっと長門さん、何してるんですか?」
長門「・・・違う。私は座布団の精。長門有希では無い」
りょうこ「座布団かぶっておかしなこと言わないでください」
りょうこ「はっ!ひょっとして、この前あたしがキョンくんと登校するところ、見ました?」
長門「・・・」コクリ
りょうこ「やっぱり!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:34:45.37 ID:CVXfytnA0
りょうこ「長門さん、そこに正座してください」
長門「足が痛い」
りょうこ「座布団を敷いてください。いいですか?何度も言ってますけど、あたしが長門さんをほったらかしにして、キョンくんと遊ぶわけないでしょう!」
長門「・・・」
りょうこ「この前はキョンくんに晩御飯をご馳走しただけで、打ち合わせも出来なかったんです!」
長門「晩御飯を?」
りょうこ「そうです!」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:36:10.70 ID:CVXfytnA0
長門「私をおいて、二人で・・・」ギリッ
りょうこ「もう!長門さんと私と、二人で何回も食べてるじゃないですか!」
りょうこ「それに、よく思い出してみたら、あの日あたしは食べてないです」
長門「彼と・・・」
りょうこ「長門さんはキョンくんと喫茶店に行ってるでしょ!」
長門「・・・」
りょうこ「まったく・・・嫉妬して人の夢を操作するなんて、ひどいです」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:37:39.88 ID:CVXfytnA0
りょうこ「ん?長門さん、なにか言いたいことでも?」
長門「ピカチュウサイズの朝倉涼子に説教されるのは、かなり屈辱」
りょうこ「しょうがないじゃないですか。省エネしないといけないんですから。あたしが節約した分は、全部長門さんに回されてるんですよ?」
長門「・・・ごめんなさい」
りょうこ「あ、いや、そこは謝らなくてもいいです。悪夢を見せたことのほうをですね・・・」
長門「 」スクッ
りょうこ「ひゃっ!?な、なに?怒っちゃいましたか?」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:41:07.16 ID:CVXfytnA0
長門「 」ガシッ
りょうこ「きゃっ」
長門「えい」ブンブン
りょうこ「きゃー!?」
長門「8の字大飛行」ブンブングルグル
りょうこ「きゃー♪」
長門「それ」ポーン
りょうこ「きゃーきゃー」クルクルクルクルクル
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:43:21.65 ID:CVXfytnA0
りょうこ「もう一回!もう一回!」パタパタ
長門「必殺、ブリザードアクセル。気に入ってくれてよかった」ポーン
りょうこ「きゃー♪きゃー♪」クルクルクルクルクル
長門「それ」
りょうこ「きゃー♪」
長門「えい」
りょうこ「きゃー♪」
ドンドン
隣の住人「うるせーぞ!夜中に何やってやがる!!!」
りょうこ「あ・・・すいません、ごめんなさい!」
隣の住人「まったく・・・」ブツブツ
りょうこ「怒られちゃいましたね・・・」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:46:04.07 ID:CVXfytnA0
りょうこ「もう寝ましょう。Type-B ⇒ Type-C Now roading・・・」
あしゃくら「ふああ・・・あさ、おきられるかな・・・」
長門「それじゃあ私も、自分の部屋に戻る」
あしゃくら「あ、ながとさん、まって!」
長門「?」
あしゃくら「へんなゆめみたあとで、こころぼそいの。いっしょにねてくれる?」
長門「・・・わかった」
あしゃくら「えへへ、ありがとう」
長門(悪夢を見せたのも私、ということを忘れているみたい)
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:47:37.45 ID:CVXfytnA0
あしゃくら「おやすみなさい、ながとさん・・・」
長門「おやすみ」
あしゃくら「クークー」
長門「・・・・・・これはこれで」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:50:03.83 ID:CVXfytnA0
〜夢の中〜
朝倉「隣にキョンくん。目の前に長門さん。どういう状況かしら・・・」
キョン「お義父さん、娘さんを俺にください!きっと幸せにしてみせます!」
朝倉「え?」
長門「ならん。娘をどこの馬の骨ともわからんやつにやるわけにはいかん」
朝倉「ええ?」
キョン「どうしてもですか!」
長門「どうしてもだ」
朝倉「何この展開」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:51:56.83 ID:CVXfytnA0
キョン「涼子、こうなったら俺とお前の熱い愛の証を、お義父さんに見せ付けるしかないようだ」
朝倉「えっ、えっ?」
長門「何をする気だね」
キョン「涼子・・・愛してるZE・・・」グイッ
朝倉(近い近い近い近い近い!!!)
チュッ
朝倉(これは夢!これは夢!!でも覚めないで!!!)
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:57:06.76 ID:CVXfytnA0
長門「貴様、父親の目の前で娘に・・・!!」
キョン「これが俺と涼子の愛の印だZE」
長門「許さんゾ!」
キョン「な・・・お義父さんが変身していく!?」
長門「私はあと二回、変身を残している」
朝倉(これは夢!これは夢!!やっぱり覚めて!!!)
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/19(日) 23:59:27.24 ID:CVXfytnA0
キョン「まそっぷ!」
長門「実は一回刺されただけで死ぬぞ!」
朝倉「もういやぁ!!!」
チュンチュンチュン
あしゃくら「・・・ゆめ」
あしゃくら「ゆめでよかった・・・」
長門「むにゃむにゃ・・・卍解・・・」
あしゃくら「・・・おきてよかった」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/20(月) 00:00:22.92 ID:q+3uRXdd0
あしゃくら「Type-C ⇒ Type-A Now roading・・・」
朝倉「長門さんを起こして、朝食の準備しなきゃ・・・」
朝倉「それにしても長門さん、変な夢見せるわね///」
朝倉「・・・そうだ、その手があったわ」
長門「むにゃむにゃ・・・獅子歌歌・・・」
朝倉の言う『その手』とは?
次回、『おかずのり眉毛の消失』につづく
わけが無い
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/20(月) 00:13:16.86 ID:q+3uRXdd0
合言葉はおかずのり眉毛
それではいつかまた
うっかりシリーズ化したら、終わり時がわからない