3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 19:54:52.73 ID:9ZRNmNhz0
「ツチノコ探しに行くわよ!」
8月も中旬に差し掛かった頃のいつもの喫茶店でのことである
夏休み中にやりたいことの選定中にこんなことを言い出した
「もう一度聞かせてくれ」
「ボーっとしてるんじゃないわよ!いい?よく聞いてなさいよ?ツチ……」
ホントはちゃんと聞こえてたさ
ったく孤島に行ったからその手のイベントは今後発生しないんじゃなかったのか古泉よ
ハルヒの宣言を途中から無視して当の古泉に視線を送ったがやはり曖昧に頷いてやがる
「で?なんでまたツチノコなんだ?そんな遠出するくらいだから何か情報があるんだろ?」
他県の地図を広げて何やら書き込みながら示しているハルヒに言ってやった
「もちろんよ!今年の春の事なんだけどね。この県の山間部でツチノコの目撃情報が多発してたの」
それだけかよ胡散くせぇ
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 19:56:32.93 ID:9ZRNmNhz0
「新聞やニュースにはならなかったんだけどね。ネット上では結構な噂になってたのよ」
「そんな噂ならどこにでもあるだろうよ」
「報告の数が多くてしかも特定地域に密集してるのよ?しかも同時期にミステリーサークルが発見
されてるのよ!」
地図に目撃報告の場所がマーキングされ日時も書いてある
「なるほど。たしかにこれだけ集中しているのは珍しいでしょう」
「でしょ?さすが副団長はよく解ってるわ!」
何度も言うが別に悔しくはないね
しかしまぁ……確かにこれだけ短時間に集中してるのは珍しいかもしれんな
「目撃者はなんて言ってる?」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 19:57:59.59 ID:9ZRNmNhz0
「ほとんどの人がが農作業中だったそうよ。見たこともない太いヘビが出たって話したら他の人も
見ていたって流れだったんだって」
「ミステリーサークルは?」
「畑の表面が焼けたみたいになっていたのよ。見えにくいけどこれが写真よ」
ハルヒはインターネット上のページがカラー印刷されている紙をどこからか取り出した
「なるほどね……」
「これは小規模ながら見事ですね」
「……」
「これがミステリーサークルですかぁ」
四人がそれぞれ適当なことを言ってテーブル上の紙を注視している
「村興しのための話題作りじゃないのか?」
「あんたバカ?この近辺に観光産業なんかないでしょ?」
確かに無いが……
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 19:58:59.90 ID:9ZRNmNhz0
「決まりね!ツチノコ探し追加っと……旅費は部費からでるので心配は無用よ!」
部費ね。同好会未満の零細謎団体に部費が支給されているとは驚きだね
「まぁちょっとした小旅行だと思えばよいではありませんか」
「今回もお前らの組織が一枚噛んでないだろうな?」
「ええもちろん。ツチノコの発見情報など初耳でした」
「朝比奈さん。山を登ることになりそうですが大丈夫ですか?」
「はい。楽しみですねーあっお弁当作らなきゃ」
「……私はかまわない」
二人がそう言うなら俺は構わないけどな
こうして俺たちの夏休み行事消化リストにまた一つ胡乱な項目が加わった
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:00:22.22 ID:9ZRNmNhz0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「学園間の人材交流ですか?」
茉衣子は目の前でソファに寝転がりながら話す人物に尋ねた
「そそ。私がここのメンバーの代表になっててね。テキトーに数人捕まえて第二に行かなくちゃ
なんないのよ」
「はぁ……それで真琴さん。私にどのような御用件で?」
真琴は体を起して優雅に欠伸をしながら
「それでねっ?茉衣子ちゃんと宮野に私が留守の間に第三の管理まかせちゃおうと思ったの」
(……なぜこの方は私にばかり面倒事を押し付けるのでしょう。もちろん会長代理を任されるのは
名誉なことではありますが……例によってあのトリ頭と任を同じくされるのは……)
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:01:18.00 ID:9ZRNmNhz0
「それとね?私が居ない間にユキちゃんが浮気しないように見張っ」
「それならば!ご自分で高崎様に精神操作でもなさってからあちらに向かわれては?」
真琴は答えず妖艶な笑みを浮かべている
「……わかりました。その任お受けいたしますわ。高崎様の件は別として」
「助かるわ茉衣子ちゃん。ここには第一の人間が来るからそいつらの案内もよっしくっ!
じゃっあたしは準備があるから出てった出てった」
(先ずは班長を捕まえて説明しなければ……まったく。なぜいつも我々をセットで動かそうとするのか……
人材交流ならば班長を連れていけば良いのです。あれでもこの学園では高位の人物なのですからうってつけ
でしょう!第二の方々には悪いですが)
茉衣子は怨嗟の対象の姿を求めて校内を歩いた
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:02:35.09 ID:9ZRNmNhz0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ツチノコいないわねぇ」
そうだな
「気配を悟られちゃったのかしら」
そうかもしれん
「それとも私たちの歓迎の準備をしているとか!」
ありえる
「ちょっとあんた!真面目にやんなさいよっ?見つけるまで帰さないわよ!」
俺たちはミステリーサークルの現場にいる
と言っても既に田んぼには水が張られているのでその面影すらなかったが
「俺が一番動いている気がするのは気のせいか?」
「いい加減に慣れなさいよ。下っ端は肉体労働が基本でしょ」
言い返す気力もねぇよ
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:04:07.78 ID:9ZRNmNhz0
「みなさーん。お弁当の準備ができましたよー」
「そろそろお腹も空いてきたわね。お昼にしましょう」
朝比奈さんと長門は木陰に既に腰を降ろしていた
朝比奈さんの隣には背が丸まった婆さんが居る
この田んぼの持ち主で朝比奈さんを気に入ったらしく、来たときから朝比奈さんは話し相手をしている
「いやぁ見つからないものですね」
「場所が悪いのかしらね。有希はどう思う?」
「野生動物は人目の無い場所を好む。山奥が妥当」
正論だが余計な事は言わないでくれないか
「よし!食べ終わったらあの山を登ってみましょ。さっき地図には無いけど綺麗に舗装された道を
見つけたのよ」
仮にも野生動物を探しに行くのに舗装された道を通るのはどうかと思うが
……確かに地図には無いな
最新版のはずだが
「いくわよ!キョン!」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:07:14.55 ID:9ZRNmNhz0
・
・
・
「立派な道じゃないか。二車線近くある」
「これなら楽に登れるでしょ?大きいけど低い山だしね」
こんな人の手の入った場所にUMAがいるとは尚更思えなくなったよ
しかしそんなに新しい道というわけでもなさそうだな
道があるということは上に発電施設でもあるのかと思ったが地図には乗ってないし
まぁ役人のミスだろう
「では参りましょうか」
古泉もさっき動き回っていたように思ったが元気なようである
頑丈には見えないが少なくとも俺よりは健脚のようだ
俺たちは道を登り続けた
珍しい鳥を見つけては立ち止って観察したり談笑しながらである
完全に目的を忘れてやがる
まぁ涼しいし空気は美味いから俺は構わないがな
「あれ……何でしょうか?」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:10:03.87 ID:9ZRNmNhz0
(´・ω・`)過疎って落ちてたとしか言ってないお
「んーなんだろ?入れるみたいだけど」
緩いカーブを抜けると道が終わって何かの施設が建っていた
先頭を歩いていたハルヒと朝比奈さんが気付いたわけだが
「これは……学校のように見えますね」
「地図には無かったぞ。そもそも道もだが」
「ねぇ?入ってみましょうよ?立ち入り禁止とは書いてないし」
まてまて
俺は嫌な予感がするぞ
地図に載ってない学校のような施設って……隔離施設かもしれんぞ?
「なら立ち入り禁止くらい書いてあるでしょ?ホラ。中に人居るみたいだし入ってみましょうよ」
長門の方に目をやると
「私の探知能力の限りにおいて、異常は見当たらない」
「お前がそう言うなら安全か……それでも気乗りはしないがな」
ハルヒはもう既に中に入って手まねきしていたので俺たちは後を追う
そして、結果から言うとやはり中は安全からは程遠い場所だったのである
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:12:00.56 ID:9ZRNmNhz0
古泉の言ったとおり、中は学校の様だった
グラウンドこそ無いものの、中庭のようなスペースがあり、俺達と同年代に見える人影がある
部外者が数人入って来ていることに気付かないようだ
「やけに建物が多いな。学校だとしたら全寮制か?」
「今は公立でも私立でも夏休みでしょうから生徒らしき人がいるのはそういうことでしょう」
「それにしたって多いな」
校舎や寮らしき建物からもかなりの人の気配がする
「それにしても怪しいわねぇ。人里離れた山奥に地図にも持っていない謎の学校!夏休み中にも
関わらず溢れる生徒たち!UMAを探しに来て思わぬ謎を見つけてしまったわね」
ツチノコのこと覚えていたのか
「この謎の学校をみんなで調べましょう!きっと陰謀が隠されているわよ!」
お前は冗談のつもりかも知れんがそれは十分現実にあり得ることを俺は知って久しい
ハルヒは俺達の数歩前でこちらに向かって仁王立ちしながら目を輝かせている
その時だった―――
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:14:26.77 ID:9ZRNmNhz0
俺の視界にウニが飛び込んできた
俺は反応できない
恐らく長門を除く他二名もそうだろう
それは校舎の影から跳ねて出てきてハルヒの30メートルくらい後方で浮いている
「……」
俺の目にはそれはウニにしか見えない
しかしそれは……直径1メートル近くある
しかも黒い電気のようなものを纏っている
俺がそれを敵性と判定し、さてどうしようと考えた瞬間
パァン!
青白い光の粒が高速でウニにぶつかり、ウニが爆竹のような音を立てて爆ぜた
「!!!え!何!?」
ハルヒが振り返るがそこにはもう何もない
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:16:38.80 ID:9ZRNmNhz0
「どなたかがが花火でもしていたのではないでしょうか?」
俺が言おうとしたことを古泉がいち早く言った
「そう。昼間っから暇なやつらなのねー」
俺は情けないが若干の非難の念を込めて長門を見た
しかし俺が想像していた光景はそこにはなかった
「…………」
長門が驚いているように見えた
「おい長」
「私はあの物体の存在を察知できなかった。視認してからも物体の構成情報を探査できなかった。
我々にとってあの物体は未知の存在」
「マジか……」
「……」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:23:59.84 ID:9ZRNmNhz0
その我々ってのは情報統合思念体のことだろう。だとすると……
ええい考えるのも恐ろしい
「じゃあみんなで手分けして探りましょう。大勢だと目立つからね。携帯は……繋がるみたいだから
情報を入手したら全員に連絡すること!スパイになりきって潜入捜査するのよ!」
おいちょっとまてと俺が止めようとしたとき
新たに人影が現れた
「あら、真琴さんは先ほど出られたばかりですのに第一の方はもうお着きでしたか」
まさに影のように全身黒ずくめの少女が校舎の影から現れた
近づいてくる
「私は生徒自治会所属、一年の光明寺茉衣子と申します。会長代理の不在中、その任とあなた方の
案内を任された者です。どうぞ、お見知り置きを」
ゴシック調と言うのだろうか
レースが特徴的なワンピースに日傘を持っている
身に纏うもの全てが黒だ
愛想よく笑う美少女がそこにいた
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:29:40.71 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ではこちらでしばらくお待ちください」
そう言って光明寺というらしい少女は去って行った
どうやら他のメンバーを呼びに行くらしい
「……で、どうするんだ?バレるのも時間の問題だぞ」
「その時はその時よ!私に任せときなさいって」
「先ほどは見事なお手並みでしたね」
「……」
「だ、だいじょうぶなんでしょうかぁ?」
俺達は今学生寮らしき建物のロビーに通されている
何故こんなことになっているのか?
言うまでもなくハルヒの仕業である
光明寺という少女が現れた時に発した言葉を卑しくも記憶して利用したのだ
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:35:13.62 ID:9ZRNmNhz0
「第一の代表、涼宮です。こちらこそよろしくおねがいします」
だとよ
この学校に探りを入れるのに最も効率がいいと踏んだそうだ
「案内してくれるって言うなら利用しない手はないわ!」
お前と違って俺たちはとてつもない懸案事項をかかえているんだよ
長門にも解析できず探知すらできない化け物だと?
恐らくあれを壊したのは光明寺という少女だろう
そんないつにも増して破壊的な不思議に付き合って生きていられるのか?
「トイレに行ってくる」
古泉お前もだ
「では僕もご一緒しましょう」
「早く戻ってきなさいよ」
ヒラヒラとおざなりに手を振って俺たちはその場を離れた
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:39:24.09 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(あの方々、少し雰囲気がちがっていましたわ。なんというか……私の感応力では言い表せないですが)
茉衣子は男子寮を歩いていた
本来ならば異性の寮への出入りは禁止だが彼女が来るのは珍しくないので周囲は気にしない
目的も明確であるからだ
コンコンコン
「失礼します」
「おお茉衣子くん!わざわざ私の部屋までどうしたんだね??」
「やはりこちらでしたか。あと光明寺とお呼びくださいと何度言えば……まぁそれはもう良いでしょう。
しかしこちらは班長の部屋ではなく高崎様のお部屋のはずです。高崎様はどちらに?」
「寮長どのならば帰省中である。じきに戻ってくるころであろうが」
「ああ、そういえば若菜さんも不在でしたね。私も戻ったばかりですので」
この部屋の主の妹でもある自身のルームメイトを茉衣子は想った
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:42:12.92 ID:9ZRNmNhz0
「まぁ立ち話もなんだ。入りたまえ。この中なら人目をはばかることもない」
「怖気のする冗談はやめてください。班長、我々は真琴さんの不在中の任を任されました」
「ふむ。人材交流か。私を代表に第二に送ればよいものを」
「御冗談を。ご存じなら話は早いですわ。我々は同時に第一の方々の案内も仰せつかっています。
これからご案内して差し上げますので同行をお願いします。が、断って下さって一向に構いません」
「第一の面々は下に?」
「……ええ。班長、私の思い違いかもしれませんがその方々の雰囲気に違和感を感じるのです。しかし…
…その……私は精神感応力の方はあまり……ですので確信は持てないのですが」
プライドの高い彼女が自らの短所を告白できる相手は少なく
宮野はその貴重な一人であるがそのことに彼女は気づいていない
「なるほど。私の精神感応力はあの女と比べれば児戯に等しいが一定のレベルにはある。先に少し様子を
見てくるとしようか。茉衣子くんはここにいたまえ」
「そうさせていただきます」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:43:35.98 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(なるほど。彼女らが……いや、彼女か……ふはは。これは面白いぞ茉衣子くん!!しかし聞いていた
男の面子が足りんな。用でもたしているのか)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:45:41.02 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「で?お前はどう思うんだ?」
「長門さんに分からないことで僕が分かることは少ないですね。この件に関してもそうです」
長門が知らなくてお前が知っていることなんてあるのか?
「しかしそうも言ってられんだろう。あの化け物は一体何なんだ?」
「そのことで少し分かったことがあります」
「期待しよう」
「あの物体を視認した瞬間、僕は条件反射的に攻撃態勢をとろうとしました。通常空間なら意味を成さない
のですが、その瞬間力の発現を感じましたよ」
古泉が手を開くとそこにピン球ほどの大きさの光球が浮いている
「ということはここはハルヒの作った世界か?」
「それは違います。彼女が構築した世界ならば僕にはそれがわかります」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:47:22.72 ID:9ZRNmNhz0
「何故その力が使えるのか……くそっ!手詰まりか」
ん?
古泉が振り返ったかと思うとトイレのドアの前に影がある
しまった!生徒か?
バァン!と何故か派手にドアが開けられ、そこに男が居た
なんだこの男は?古泉より高い背にボサボサの髪が乗っている
それにシミ一つない真っ白な白衣を纏っている
極めつけにその整った顔に狂ったようなニヤケた笑みを張りつかせていた
「君たち!見ない顔だがどちら様かね?」
「我々は第一の者です」
古泉が自然に答えた
「ほう?不思議なことがあるものだ。第一の面々はまだ学園を出てすらいないはずだが?」
なんとかならなかったじゃねぇか畜生
「して、君たちは何者かね?」
古泉があのニヤケ面に梅干しくらいの球を投げないかと期待していたらその男は思わぬセリフを吐いた
「質問を変えよう。あの黒髪の娘は何者だね?」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:49:09.69 ID:9ZRNmNhz0
俺は絶句した
古泉も難しい顔をしている
ハルヒ単独を指したということは俺たちの表面上のプロフィールを聞きたいわけじゃない
なんだ?今度は異世界人か?
「ふむ。答えられないか……端的に説明できる存在ではないのかそれとも機密性から答えられないのか、
はたまたその両方なのか……」
両方なんだがな
「見たところあちらに居るほかの二人、そして君は完全に一般人だ。しかし、あの黒髪の娘はかなりの、
君は微弱ながらEMP能力を持っているな」
またしても俺たちは絶句した
まてまておかしいことがありすぎる
少なくとも俺以外のメンバーは通常人類ではない
ハルヒの異常性には気付いたが長門と朝比奈さんには気付けない?
EMP能力ってなんだ?ハルヒと古泉が?
「これは……今の状況を考えると隠しだてできませんね」
「お前がいいなら止めないさ」
俺たちはここに来た経緯、ハルヒと古泉のことについてのみ話した
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:56:26.20 ID:9ZRNmNhz0
>>34このペースで投下してたら最後の投下がリアルタイムで書いたものになりそう
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
信じがたいことにこの男は一度の説明でほとんど理解したようである
「なるほど……世界を構築する能力か……それほどまでのEMP能力は聞いたことがないな。私は高位の能力者
だと自負していたが……これではあの年表干渉者でさえ霞んでしまうな。しかし!これは実に面白いぞ!
この発見は必ずや私を更なる高みに導く糧となろう!感謝するぞ!奇怪な渾名を持つ友人よ!」
また知らない単語が出たが無視しよう
「ああちなみにそのツチノコやらミルテリーサークルは我々の起した現象だ。もう解決してあるので起こる
ことはないだろう。寮長殿は熱望しているかもしれんがね」
「じゃあこちらも聞かせてもらうぞ」
「なんだねキョンくん?」
「……EMP能力ってのはなんだ?ここは何だ?」
「その前に君たちは知るべきことがあるだろう。私の名は宮野秀策!生徒自治会保安部対魔班班長!
この世で最も偉大な魔術師となる予定の男だ!」
「また聞くことが増えたがそれを含めてさっきの質問に答えてくれ」
「いいだろう。では……」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 20:59:26.70 ID:9ZRNmNhz0
宮野から得た情報によるとこうだ
・EMP能力とは超自然的能力の名称
・実は日本にのみ数多く能力者が存在する
・能力の発現は10代前半で消失は後半
・ここは能力を発現した子供を強制的に収用する学校
・能力を失うまでは特別なことがない限り常にここで暮らす
・能力者は遅かれ早かれ自覚する
・学校は第一から第三までの三つがあり、それぞれ生徒が自治している
・能力者から漏れ出した余剰EMP能力が実態を成したものを想念体という
・保安部とは想念体の討伐や不良能力者への制裁を行う
・能力者でありながら学園に属さないレジスタンス組織もある
・これらは国家機密である
宮野の説明にいちいち付いてきた自賛や固有名詞を省くとこんな感じだ
「学園間の人材交流か……紛らわしいタイミングで来ちまったんだな」
「さきほど仰っていた年表干渉者とは一体どのような能力なのです?」
古泉は終始活き活きしている
「あれは私にも詳しくはわからんが時間移動能力者だ。本人や任意の物体を運ぶことができる」
思わず吹きそうになるがこらえた
俺の推測では朝比奈さんは未来人に備わっている脳機能を使っているからEMPとは違うのか
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:06:40.63 ID:9ZRNmNhz0
「大体わかったよ。けれどハルヒは自覚していないぞ?」
「うむ。たしかに彼女からはEMPの力場を感じるのだが極めて異質だ。その能力からしてEMPでも我々のEMP
とは違うのかもしれん。私の精神感応力ではこの程度の分析が限界だ。学園最高位の能力者ならば更なる
分析も可能かもしれんが、あいにくあの女は今第二にいるのだ」
「我々は涼宮さんに能力を分け与えられたから同じくEMP能力者なのですね」
「恐らくな。そういった意味で君の能力は微弱なのだ。出力の大小という意味ではない」
「さっきのウニや春のツチノコも想念体ってわけか」
「そうだ。本来想念体は能力者の集まる場所でしか生まれないが春の一件は別でな……おっとそろそろ
茉衣子くんのもとへ戻らねば。最後に確認しておくが彼女以外の四人は彼女の能力を知っているのだな?」
「ああ」
「よし。ではキミ達も戻りたまえ。私も茉衣子くんにうまく説明したら案内にゆくのでな」
「案内だって?部外者を追い出さなくてもいいのか?」
速攻でつまみ出してもらいたいね
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:13:15.78 ID:9ZRNmNhz0
「無論、私本来の役割からすればそうすべきだろう」
そういや保安部とか言ってたな
「しかし既に私の知的好奇心は走りだしているのだよ!何人にも止められん。それはあの娘っこも同じで
あろう?」
「そうだろうな……」
「なに、第一の面々が来るまでの余興だ。もっともこちらの方がはるかに愉快そうである」
「第一の面々とやらが来るまでにハルヒの興味を削いでみるか……」
「では私は行く。合流までに想念体が出た場合はキミのカウンター想念体能力で消してくれたまえ」
それではなっ、とゾッとするようなことを言い残して宮野は去った
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:17:36.21 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「つまり……あの神人ってのも想念体ってことだよな」
「そのようで。先ほどの物体が複数の能力者の余剰エネルギーから生まれたと彼は言いましたね。ならば
単体であれだけの想念体を生み出せる涼宮さんの力の程は彼らからすれば想像を絶するものでしょう」
「ハルヒとお前はなぜ捕まらないんだろうか」
宮野によるとここは強制収容所だ
「能力からして自覚させるわけにはいかないでしょう。それに彼は涼宮さんを異質だと言いました。彼らの
能力者探知法が通常のEMP能力の上に立脚しているならば探知できなくても不思議ではありません」
まぁ僕は―――と、悲しむ様子もなく言った
「涼宮さんのおまけだからでしょう」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:20:28.24 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
宮野が部屋に戻ると茉衣子は紅茶を飲んでいた
「彼らは?」
「怪しむべき点は無かったのである。内一人がかなりの能力者の様だ。キミが感じた違和感はそのせいだろう」
「そうですか。では案内して差し上げましょう」
宮野がそう言うならそうなのだろう
茉衣子は宮野をEMP能力者としては一目置いている
「して、茉衣子くん。私の分の紅茶はどこかね?私はいささか喉が渇いたのだ」
「あら、失念していましたわ。白湯でよければこちらを」
「うむ。頂こう」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:29:23.51 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ちょっと二人とも遅いわよ!案内の人待たせたらどうするのよ?いい?潜入捜査は時間との勝負でもあ」
「はいはい悪かったよ。男同士積る話もあるんでな」
「へぇなによそれ?言ってみなさい!」
男同士の話だと言っている
朝比奈さんと長門にも知らせなければな
と思っていると横に座った長門がぽつりと言った
ハルヒは朝比奈さんで遊んでいる
「話は聞いた」
「へぇ。耳が良かったんだな」
「彼が私と朝比奈みくるを通常人類であると判定したのは我々がEMPと呼称される能力を持っていないためで
ある。彼らの思考はEMP能力を除けば常識の範囲に収まる。宇宙意識体やEMP能力を用いない時空跳躍を
想定することはできない」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:32:39.58 ID:9ZRNmNhz0
「なるほどな。あの想念体という化け物はどうだ?対抗できそうか?」
「私には消去できない。同質の力を加えて存在確率を0にすることで消去していると思われる」
古泉任せか……超能力者として役に立つのは初めてか
「彼らの能力とは我々にとっても未知のエネルギーを操ること。それは自然界に存在しないエネルギー。
しかし統合思念体は涼宮ハルヒの観察を最優先する」
「宮野が言うようにハルヒは異質で力も大きいからか」
「そう。涼宮ハルヒを超える力を持つ能力者が居れば我々は観測できる。少なくとも現時点では居ない」
「何か分かったら教えてくれ」
カクンと頷いた長門から遊ばれている朝比奈さんに目線を向けた
……この人には言っても不安にさせるだけだろうな
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:37:06.20 ID:9ZRNmNhz0
俺が朝比奈さんには話さない旨を古泉に伝えた時階段から宮野達が降りてきた
「皆様お待たせいたしました。彼は対魔班班長の宮野です。今回は私たちでご案内させていただきますわ」
「私が対魔班班長の宮野秀策である。よくぞ参った第一の面々よ!」
光明寺はため息を吐いて宮野は両腕を広げている
「ちょとキョン……なによあいつ偉そうに」
知るか
お前に偉そうと言われる筋合いもないだろうがな
「それよりもさっきタイマ班って言ったわよね……どういう意味かしら」
これ以上光明寺の口からテクニカルタームが出なければいいのだが……
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:45:12.73 ID:9ZRNmNhz0
「改めまして。第一自治会代表の涼宮です。よろしく」
お互い笑顔で光明寺と握手している
光明寺の清楚な笑顔に比べてハルヒのそれには含みがあるように見えるが
俺の精神にバイアスがかかっているのかね
「わぁ……やっぱり光明寺さんのお洋服素敵ですね」
朝比奈さんがこんなことを言っている
帰ったらあなたも着ることになりますよ
いかにもあいつが着せたがりそうな服だ
俺たちからの名前のみの自己紹介が済んで光明寺が言った
「では早速参りましょうか。あなた方のお力についても道中でお聞かせください。私は非常に興味がありま
すわ」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 21:49:44.77 ID:9ZRNmNhz0
どうやら時間の問題らしい
それだけならまだしもハルヒに余計なものを吹き込むことになりかねん
宮野は……そうかやつからすれば隠す必要はないのか
「力?資格でも言えばいいのかな?あんた免許とか持ってる?」
「エンジン付きはうちの県の高校生は取っちゃいかんらしい」
「つまんないわねあんた」
案内されながら小声でこんなことを言っている
しかしどうする?
なんとか本物の第一の生徒が来るまでもちこたえなければ
しかしその直後
俺たちの今までの心労などおかまいなしに
ハルヒに隠し通すことなど到底できない事態が起こってしまった
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 22:00:46.31 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴォオン―――
生徒自治会長室なる部屋に辿り着く直前
俺たちの背後で爆発音が響いた
「なっ―――」
俺たちが振り返った先に土のような人型の塊が壁を破って出てきた
その塊が俺たちに向かって振りかぶる
俺は反射的に伏せそうになるがハルヒは目を見開いて直立している
まずい!
そう思った瞬間
土の塊の足もとから黒い触手が数本飛び出し
土の塊をからめ取った
光明寺の声が鼓膜に響く
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 22:09:53.62 ID:9ZRNmNhz0
「まったく。今日は厄日ですわね……先ほど出たばかりだと言うのに」
「よいではないか茉衣子くん!我ら第三対魔班の力を第一にみせてやろうではないか」
「私はそのように下品なデモンストレーションを行いたくはありません。しかし我々の目の前に出た
からには消さないわけにはいきませんわね」
光明寺は面倒臭そうに手のひらを前方へ突き出し
指に光が灯ったかとも思うとそれに息を吹きかけた
ああ
やはりさっきのウニを消したのは光明寺か
古泉の光球に似ているが青白いものが化け物に吸い込まれ
化け物は霧散した
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 22:18:45.73 ID:9ZRNmNhz0
「やはり我々はよいコンビだな茉衣子くん!私が捕まえ君が消す。なんと合理的であることか」
「嫌味にしかきこえませんわ。班長ならあのまま何処かへ消し去ることも容易でしょう」
「単純な破壊力なら君の方が高出力だと思うがね」
「ありがとうございます。私、その力を人に向けることに抵抗を感じる自分の良心が時々憎らしく
なりますわ」
「きみがそれほどまでの怨嗟を向ける対象がいるとは驚きだ!まさか寮長殿ではあるまいな?彼は一般人
であることをゆめゆめ忘れないように」
茉衣子がウンザリした面持ちでこちらを見た
「あなた方もなぜ反撃なさらないのです?お一人くらいはカウンター想念体能力をお持ちでしょう?」
俺は追いつかない頭をレッドゾーンまで回転させて返答を考えたが
「ひ、久し振りだったのよ!」
とハルヒが答えた
その瞳は俺が今までに見た最大の輝きと同等に輝いている
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 22:24:01.49 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
光明寺と宮野は自治会長室に引っ込んでしまった
なにやら片付けと準備があるそうで俺たちは廊下の備え付けベンチに腰を降ろしている
先ほどのハルヒのヤケクソ気味の返答にも光明寺は
「そうでしたか。第一は平和なのですね」
と嫌味ではなく羨ましそうに眼を伏た
気にしている様子は全くなかった
すりガラス越しに見える室内が何故か緑一色なのだが今はそれどころではない
「さっきのは……なんなんだ?」
俺は知っているがあえてハルヒに水を向けてみる
「私が知るわけないでしょ!」
そりゃそうだ
しかしもう目の輝きが可視光線になりかかっているぞお前
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 22:57:01.76 ID:9ZRNmNhz0
「急に現れる化け物!それに当然のように対処する超能力をもつ生徒たち!やっぱりあったのよ不思議は…
…SOS団を作ったのも無駄にはならなかったわね!」
ここは普通の高校生がとるであろう行動をとるか?
「俺はわけがわからん。というかコレは夢」
殴られた
「これでわかったでしょ?ここは現実よ!あんただってこんな不思議があってほしいと思ってたんでしょ?」
さて、それはいつ言ったことだったっけ?
「まぁ……な。しかし急にそんな状況に放り込まれてすんなり受け入れられるやつはいないぞ」
「まぁそうよね!あんたって凡人だものね!すんなり受け入れてたら逆にあやしいわ!」
どうやら正解だったようだ
「古泉……お前はどうだ?」
「あなたと同じですね。しかし僕は今この瞬間も先ほどの出来事がトリックである理屈を考え続けている…
…どうやら僕も凡人のようですね」
自嘲気味にほほ笑んだ
名演技だな
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 22:59:06.43 ID:9ZRNmNhz0
「しかたないわよ。常識が覆されてるんだからね」
もういちいち反論しねぇよ
「長門はどうだ?」
「非常に興味深い……ここへ来れてよかったと思う」
「でしょ?有希はこういうの好きそうだものねっ。みくるちゃんは?」
「えっ!あっはい。えっとそのぅ……」
ハルヒの後ろに立つ俺に視線を向けてきた
無言でうなづく
「そうですね……ちょっとこわいですけど。おもしろそうかもしれませんね」
細かいことは後で説明しておかないとな
「よし決まりっ!このまま潜入捜査を続行します。もしバレてしまった場合は私にまかせてね!」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:00:39.11 ID:9ZRNmNhz0
ハルヒは朝比奈さんを連れて花摘みに行った
今時花摘みなんて言わねぇよ
しかし好都合だな
「ハルヒが非日常を認識してしまったわけだが……これからどうなる?」
「わかりませんね。しかし今のところは世界に影響を及ぼしてはいません」
そうなのか長門
「そう。環境情報の操作は行われていない」
「幸い携帯が通じるので機関と連絡を取っていたのですが面白いことがわかりました」
「なんだ」
「外にいるメンバーによるとここに学校など存在しないそうです。道路はあるんですがその終りには何も
無いと言うのですよ」
どういうことだ?
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:01:46.47 ID:9ZRNmNhz0
「これも彼らの能力なのではないでしょうか?特定の範囲を認識不可能にするフィールドを張っていると
考えられますね」
「まるで閉鎖空間だな」
「国家機密だそうですからね。それなりの防御策はとっているかと」
「俺たちが入れたのはなぜだ?……いや、考えるまでもないか。規格外の能力者がいるんだからな」
「便利なものです。ほとんどの疑問は涼宮さんの存在によって疑問ではなくなるのですから」
「笑えないがな……っておいあれは」
トイレの出入り口付近にまたウニが浮いている
このままじゃはち合わせだ
「せっかくだからお前の力で消してくれよ。今後の練習も兼ねて」
「そうですね」
古泉の手のひらからピン球くらいの赤玉が出てきた
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:02:41.80 ID:9ZRNmNhz0
「これくらいで相殺できるかと」
「わかるのか?」
「そうですね。これ以上の大きさでは周りを無駄に破壊してしまいます」
「わかった。頼む」
古泉はキャッチボールでもするかのように軽く手を振っただけだった
しかし赤玉は高速でウニを襲撃し、軽い破裂音を残して霧散した
「あら、あなたもカウンター想念体能力をお持ちでしたのね」
光明寺が部屋から出ていた
「しかも私とよく似た能力なのですね。どうでしょう?第三の対魔班に入られては?私とペアを組んで
下さればよいコンビになると思うのですが」
私情を含んでいる気がする
気に入らないぞ
「せっかくのお誘いですが遠慮しておきましょう。それに、私とあなたが組んでも能力が尖鋭化するだけで
バランスに欠きます。見たところあなたと宮野さんはとてもバランスの取れたコンビですよ?」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:04:33.47 ID:9ZRNmNhz0
(私と班長でバランスが取れている?会ったばかりとはいえ何所に目を着けていればそう見えるのでしょう?
せっかくルックスは良いのに思考回路は残念な方のなのでしょうか……)
「だからと言って私がお守りを押し付けられるのは不条理極まりないのですわ……」
聞き取れない声で何か言っている
彼女はどうも宮野が苦手らしいな
それにしては息が合っている気もするが……
しかしそいつはやめておいた方がいいぞ
最終的には巨大赤玉になるような変態だからな
「それにしても今日は想念体が多いですわね。準備ができたのですが、涼宮さんと朝比奈さんはどちらへ?」
「花摘みだそうだ。ああ戻ってきた」
「あ!茉衣子ちゃんもう入っていいの?」
「まっ……え、ええ準備は終わりましたのでどうぞこちらへ」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:11:42.68 ID:9ZRNmNhz0
通された室内は室内じゃなかった
何を言っているかのか分からないだろうが俺にもわからない
密林の中に応接間らしきスペースがある
「うちの会長代理の住処でな!最も心地よい空間にするために観葉植物を置いて育てたそうだ」
断言してもいいが普通に育ててもこうはならん
「密林がもっとも心地いい住処って……その会長代理は類人猿か何かなのか?」
「言いえて妙だな!己の欲望と本能に忠実な辺りはまさしくそうだ」
光明寺がコーヒーを運んできた
「班長!誤解を招くような発言は慎んでください!真琴さんはとても美しい方ではないですか。高崎様
といい、なぜ男性はあの方を敵視するのでしょうか」
「会長代理サンはどういった能力……を持っているの?」
ハルヒが口をはさんだ
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:17:35.66 ID:9ZRNmNhz0
「ああ失礼しました。会長代理は対生命体のテレパスです。恐らくテレパスとしては第一から第三全ての
頂点に立つ能力者ですわ」
「ふうん……なるほどね」
なにがなるほどだ
意味わかったのか?
俺は宮野との会話から少し推測できたが
「私、あいにく第一の方は一人しか知りません。枕木さんとおっしゃったかしら?彼はお元気ですか?」
「名前は聞いたことあるけど面識はないわねぇ。誰か知ってる?」
全員否定の動き
「そうですか。かなり高位の能力者のようでしたけど有名ではないのですね。ご無事ならばよいのですが」
「高位の能力者だからといって学内地位があるとは限らんからな!偏屈な男であったし、自治活動には
消極的なのだろう」
「確かに。班長とは指向性の違う偏屈さではありました」
「うんうん!偏屈な男っていう風に聞いてるわ」
いいのかそんな適当なこと言って
それよりご無事ってなんだ
この学校では無事を問わねばならんようなことが日常的に……起こってそうだな
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:18:36.20 ID:9ZRNmNhz0
「ところであなた方の能力―――」
きちまった
「―――はどのような能力なのですか?」
「……私たちの能力は限定的でね。今ここでは説明することもできないわ」
かなり苦しいがそう言うしかないだろう
追及されればもう誤魔化しきれないな
しかしそう珍しいことでもないようだ
「残念ですわ。事象喚起能力でしょうか……いえ、答えて下さらなくても結構です。扱いの難しい能力です
ものね。お察ししますわ」
「そ、そうなのよ茉衣子ちゃん。ごめんね」
どうやらEMPってのはかなりバリエーション豊富の様だな
適当なこと言っても誤魔化しきれるかもしれんぞ
少し気が楽になった俺はコーヒーに手を伸ばした
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:26:04.49 ID:9ZRNmNhz0
「ぶわっ……!」
なんだこのコーヒーは!?泥水か?
「ああやはりダメでしたか……来客があった時くらいまともに動いてほしいものですわ。直ぐに別の
飲み物をご用意します」
「あ、それなら私がお茶を入れます!道具使わせてもらいますね」
朝比奈さんがここぞとばかりに名乗りを挙げた
「いえ、客人にそこまでしていただくのは―――」
「みくるちゃんにまかせていいわよ茉衣子ちゃん。みくるちゃんならとびきり上等な味にできるからね」
(なにか能力と関係あるのでしょうか?)
「すまんなキョンくん?備え付けのメーカーが不調でな。数回に一回しかまともなものを作らんのだ。
しかし茉衣子くんも客人にそれを出すとはなかなか茶目っ気がある」
とか言いながら宮野はコーヒーを啜っている
光明寺は宮野の分のみ下げなかったようだ
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:29:45.59 ID:9ZRNmNhz0
「さてこれからはどこへ案内しようか茉衣子くん?私は寮内を案内してはと思うがどうかね?」
「良いのではないでしょうか。男女別に分かれてそれぞれ寮内を案内しましょうか」
「学友にも話が聞けることだ。そうしよう」
「あら、それでは男性側はつまらないでしょうね。高崎様が不在の今、いったいどなたのお話を聞く
のでしょうか」
「親友が不在の今、数多くのその他学友から誰を選ぶか……たしかに悩むな」
話が長くなる気配を読んだのか古泉が口を開いた
「それはいい提案ですね。我々も他校の生活環境には興味があります」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:31:03.73 ID:9ZRNmNhz0
確かに
もう一度宮野と話した方がいいだろうな
「ねぇ茉衣子ちゃん?他の友達にも会えるかしら?」
「え、えぇもちろん。みなさん戻っておられると思いますわ」
「じゃあそうしましょう!有希も興味深げにしてるしね!」
「……」
それより一瞬光明寺の顔が引きつった気がしたんだが友達がいないのだろうか
宮野とコンビを組んで毎日学内を練り歩いている様を幻視してみた
たしかに人は離れていきそうだ
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:34:36.32 ID:9ZRNmNhz0
朝比奈茶を飲んだ俺たちは早速別行動を開始することにした
「よいですか班長?我々が向うのは女子寮です。くれぐれもお忘れなきよう」
「うむ。では先に行きたまえ。我々は追って出発しよう」
「それは男子寮へですね?」
「あー光明寺?宮野に女子寮侵入癖があるのか知らんが俺たちにそのつもりはないから安心してくれ」
「キョンにそんな度胸ないもんね」
ややこしくなるから黙ってろ
「そうでしたわね失礼しました。ですがもし班長が凶行に及ぼうとしたならば古泉さん、どうか遠慮
なさらず止めてくださいね」
「古泉くんに任せておけば安心よ。さっ行きましょう茉衣子ちゃん!」
話が噛み合っているようで何よりだ
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:36:58.15 ID:9ZRNmNhz0
>>66
こまけぇこ(ryと言いたいけど、その時だけ解いてるって俺は思っとる
ハルヒは光明寺の背を押して女集が会長室を後にした
「古泉の力を人に向けろとは……あんた光明寺にそうとう嫌われてるんだな」
「なんのことかね?私は彼女の師であるからな。それよりよかったのかね?彼女らのみでは会話の辻褄が
合わなくなりそうだが」
「長門には説明してあるから大丈夫だ。俺たちよりよほど上手くフォローできるだろ。それより第一の
メンバーはいつ来るんだ?そっちの方が心配なんだが」
「さすがにもう学園は出ているだろう。しかし幸い空間移動能力者は未だ観測できていないのでな。
通常交通機関で来るだろう。到着はまだまだ先だ」
「そうか……もう少し詳しくEMPについて説明してくれないか?さっきはあんな言い逃れでなんとかなった
が今後はわからないからな」
「いいだろう」
「先ほど仰った言葉にテレパスというものがありましたがそれはどのような能力なのですか?」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:39:56.46 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(類さんが戻って来ていればいいのですが……)
「ねぇ茉衣子ちゃん!」
「は!はいなんでしょうか」
「これから会う人はどんな人なの?」
「蒼ノ木類さんという同学年の方です。珍しい……というかある意味哀れな能力者です。この学園に居る
限りは絶対に活かせない能力ですから」
「かわいそうな娘ね。どんな能力なの?」
「彼女は……猫専用テレパスです」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:41:53.97 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「テレパスとは精神感応力に特化した者のことだ。特定の対象と精神を通わせることによって意思の疎通を
図ったり、考えを読み取ったりできる」
よくわからん
「会長代理さんはどのようなことができるのですか?」
「あの女は万能タイプだ。先ほど挙げたことの他に精神操作もできる。一度に精神干渉できる対象数も
空間範囲もケタ外れに大きい。この学内ならば全ての対象にある程度の干渉を行えるな」
「……タチがわるいな」
「まさしくだ!しかもその対象は人間のみに限らん。サイバーや動植物専用などその対象は個人による。
猫専用などという者もおるのだ。しかしあの女はその対象までケタが違う。有機生物ならミジンコですら
波長を感られるらしい」
ミジンコの精神なんぞ読める利点が思いつかないが
「プライバシーもクソもないじゃないか」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:43:46.45 ID:9ZRNmNhz0
「あの女とて好き好んで精神を読んでいるわけではない。まぁ玩具にされている数名に関してはそうだが。
意識しようがしまいが勝手に流れ込んでくるからな」
「この植物たちはそのための防壁といったところでしょうか」
「うむ。意識して閉ざさねば学内中の精神波が流れてくるらしい。それを和らげるためといったところだ」
そんなやつがいる時に来ていたらハルヒのことどころか長門や朝比奈さんの事まで知られていたのか
人材交流のお陰で怪しまれない上にその会長代理まで居ないとは絶好のタイミングだったわけだ
偶然じゃないんだろうな
「それは恐ろしい能力ですね。できればお会いしたくはないものです」
「あの女に思考を読まれて平然としている者もいるがな!寮長どのもそういった意味では一般人とは
言い難いか」
「猫専用ってのは個人的に興味あるな」
「類くんかね?彼女は気が小さくてな。いつもビクついておる。なかなか庇護欲をそそる容姿をしておる
ぞ!」
本人じゃなくて能力のことを言ったんだがな
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:49:12.27 ID:9ZRNmNhz0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「この学園には猫がいませんから……皮肉なものです」
「あのぅ……光明寺さん?」
「なんしょう?」
「そのお洋服とっても素敵ですね。どこで買ったんですかぁ?」
茉衣子は常に黒衣をまとっている
彼女の服は就寝用に至るまで真っ黒である
彼女のポリシーが込められた様式であったが今までそれは他人には理解できなかったらしい
「―――まぁ!あなたもそう思いますか朝比奈さん!?」
「ふぇっ!え、ええとってもかわいいと思います」
「私もそう思うわよ?帰ったらみくるちゃんにも着せようと思ってたもの」
「ユニーク」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/01(水) 23:51:02.82 ID:9ZRNmNhz0
「なんしょう?」→「なんでしょう?」
「なんて素晴らしい日なのでしょう……一度にこんなにも理解者が現れるなんてっ。後で私の部屋にいらっ
しゃいませんか?皆で試着してみましょう!」
「いいわねっ!そうしましょ茉衣子ちゃん」
茉衣子はすっかり気を良くしたらしく、自らの服について話し込んでいる
「……有希はさっきのテレパスって言葉どう思う?会長室でもでてたけど」
「語感と前後の文脈から言語を用いずに意思疎通を行う能力だと考えられる」
「そうよね……ということは猫と対話できる能力ってことね」
「うらやましい」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:02:08.54 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「私も気になることがあるのだかいいかね?」
「ああ、どうぞ」
「あの涼宮という娘は単独で強力な想念体を生み出すのだったな」
「あれが想念体ならばまさしくそうです。先ほどのウニやゴーレムとは比べ物になりません」
「実はな、想念体は一日に何度も現れるものではないのだ」
俺はその意味を一瞬で把握した
そろそろ厄介事が起こる気がしていたんでね
「ハルヒのせいか……」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:09:38.95 ID:U5hNUvso0
(´・ω・`) ピッチ上げたいけどさるさんくらったからこわい
「茉衣子くんは気づいておらぬが今日発生した想念体は通常よりも若干強力だ。しかも徐々に力が増して
いる」
「確かに。同じ形態のものは若干大きくなっていましたね」
「どうやら彼女の能力は感情の起伏に左右されるようだな。それによって生じた余剰EMP能力が巨大すぎる
ために異空間を生み出してそこで想念体化させるというわけだ。しかし今はここに垂れ流している」
「今あいつはかなりハイになってるぞ……」
「おっと……どうやらもう手遅れのようだな。ふはは!面白い!」
窓から中庭を見下ろしながら宮野は笑った
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:12:59.27 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(わかってはいたことですが……)
「んーーふぅ……ちょっと苦しい……です」
「やっぱりみくるちゃんにはサイズが合わないわね。貸して!私が着てみる」
「とってもかわいいからざんねんです……」
「帰ったら私がぴったりの探してあげるわよっ」
(朝比奈さんのお顔からして似合うと言ってしまいましたが……まさかあれほどとは)
「あ!私はいけそう!有希も着てみたら?」
「そう」
「類さんも着てみてはいかが?」
「えっいやっ私はーそのぅー似合わないんじゃないかと……」
茉衣子は類の部屋を訪問した後、面々を自分の部屋へ案内していた
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:21:20.03 ID:U5hNUvso0
「それにしても類ちゃん可哀そうよねー猫いないんだから。持ち込んじゃえば?」
気の弱い類が見知らぬ面々の突然の訪問にどんな反応をするか茉衣子は気にかけていた
案の定、類は目を回していたが強引に連れ出して来ていた
「ペットは持ち込み禁止なんです……それに猫さんはその場を動くのがとても嫌いで……今までお願い
してもついて来てくれたことはないんです」
「猫さんって普段はどんなこと考えているんですかぁ?」
「えっと、ほとんど何も……けど実家の周りの猫さんは親切でたまにお昼寝する場所教えてくれます」
しかし強引に連れ出した割には順応しているようで茉衣子は安心した
若菜が不在の今、紹介できるほど仲の良い友人は類だけだったのだ
「まぁ!涼宮さんとても良くお似合いです。よろしかったら滞在中はお貸ししますわ」
「涼宮さんも光明寺さんも黒髪だから良く似合いますね」
「そう?ありがと。じゃカチューシャは取っておこうかしら。有希は?」
「私はいい……すこし恥ずかしい」
「そうですか?よくお似合いですのに」
(恥ずかしがっているようには見えませんが……)
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:23:18.51 ID:U5hNUvso0
>>78はよくわかってる
茉衣子のかわいさをこれっぽちも表現できてないのがはがゆいんだぜ
「……ねぇ類ちゃん?」
「えっは、はいなんでしょう」
「茉衣子ちゃんの力ってどういう力なの?」
「?茉衣子さんに聞いた方が詳しく聞けますよ?」
「第一の代表として来てるのにそれくらい観察してわからないと思われたくないじゃない?」
「!そうですよね!私もそういうの苦手だからよくわかります。私の知ってる範囲でよければ」
「いいわ。ありがと」
「茉衣子さんは力を光の形で相手にぶつける能力だと聞きました。それをかうんたぁ想念体?用と物理的な
破壊用に使い分けてるらしいです。破壊用を使っているのは見たことありませんけど……」
「なるほどね(ソウネンタイってのはさっきのヤツのことね)。わかったわ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:28:56.94 ID:U5hNUvso0
「君はあれを消せるかね?」
俺たちが窓に駆け寄って見た物は巨大なゼリー状の物体だった
某大作RPGの最もポピュラーなモンスターの目がないバージョンだ
直径10メートルはあるが
ここが4階であるにもかかわらずよく見える
そいつが中庭の真ん中に鎮座している
「生徒に被害はないようだ。放っておいても無害かも知れんな」
宮野の認識はここの生徒の認識に近いようだ
そいつの周りに生徒が集まって物珍しそうにしている
しかし次の瞬間悲鳴が上がった
「む。まずいな。私本来の職を全うせねば」
周りにいた生徒が数名そいつに吸い込まれていた
透明な体内では何故か息ができるようで本人たちはそれほど困った様子はなかったが恥じてはいるようだ
「やってみるかね?」
宮野は古泉に問う
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:30:47.72 ID:U5hNUvso0
「ええ、あの規模ならまだ問題ありません。しかし僕はあなたの力を見てみたい」
「そうだな。俺も対魔班長さんの力とやらは見てみたい」
「いいだろう。本来の職務である上に客人の要望だ。応えよう」
宮野は手を窓から出して下へ向けると地面からあの時と同じ黒い触手が数本生えてきた
スライムの周りを等間隔に五本ほどだ
その触手を見た瞬間周りの生徒たちが一斉に逃げだすのが見えた
「あんたよっぽど危ないやつだと認知されてるんだな」
「楽しいことは派手にやった方がいいとおもわんかね?」
宮野が口元をニヤリと歪めた
「ゆくぞ!」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 00:33:47.27 ID:U5hNUvso0
宮野が手を大きく振るとそれに合わせて触手がスライムに向けて一斉に振り払われた
切れ目が数本入ってるようだ
そこから生徒がでてきた
出てきた瞬間走りだす辺り宮野への危機感がうかがえるな
「僕の力では彼らに被害が出ていたかもしれません。お見事です」
古泉が適当な賛辞を述べている間に触手がスライムを幾重にも絡めて収縮し始めた
「このまま消してもいいがそれではあまりに寂しいではではないか。あの想念体に最後の見せ場を作って
やってくれたまえ」
古泉は肩をすくめると手のひらからバスケットボール大の赤玉を出し
「やけに大きいな」
「派手にとの要望なので」
そう言うとそれを窓から外へ放った
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:12:52.06 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴォン――――
「わっ!何よ!?」
「班長でしょう。しかしまた想念体が出たのでしょうか……いくらなんでも今日は多すぎます」
「凄い音ね……あの班長って人はどんな力なの?」
「班長は主に喚起術や魔法陣を使う能力者です。とは言っても本当に魔法や悪魔を呼ぶわけではなく己の
イメージをそれらしい形に当てはめて具現化しているのですが」
「班長というだけはあるのね(ますますわからなくなってきたわね……)」
「ええ、学内でも最高位の能力者ですわ。見てのとおり頭がオカシイので人望など皆無ですが」
「で、でも私はいい人だと思いますよ?侑里の時も助けてくれましたし……」
「あれを助けたと類さんが言えるならよかったですわ。私も少し負い目を感じていましたからね」
「まぁいいわ!そろそろさっきの部屋に戻りましょう」
「そうですわね。想念体の異常発生について班長と話さないと……」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:15:32.72 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「さてと……今の音を聞いて茉衣子くん達は戻ってくるだろうな」
「俺たちはもうここを出るべきじゃないか?」
「そうですね。先ほどは運良く人的被害は出ませんでしたが次はどうなるかわかりません。しかし……」
「涼宮とやらが納得するとは思えんな」
「そうなんだよなぁ……」
「可能な限りはここにいればよい。まだまだ我々の力の及ぶ範囲内だ。私も通常想念体の駆逐には飽きて
いるのだ。きみらがここに留まるなら先ほどよりも強力な想念体が現れる。楽しいではないか!」
しかしだな……
「かといって涼宮さんを説得する方法も思いつきませんし下手に刺激して機嫌を損ねれば状況がより
悪化します。もう第一の方々の到着をきっかけにしてしか出ることはできないでしょう」
「そうするしかないか。しかし複数出てきたら対処できないだろう?なんとかなるか?」
「常に我々の目の届く範囲に出るとは限らんからな。今居る対魔班員を総員配備しよう」
そう言って宮野は白衣を翻して会長室を後にした
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:19:46.33 ID:U5hNUvso0
「さっきはああ言いましたが第一の方々が見えても涼宮さんが大人しく帰るとは思えませんね」
「なんらかの形で落ちがつかなきゃ駄目だってか。今更そう言うわけにもいかんだろ。見間違えじゃ
済まない上に当事者と交流してるんだからな」
「あなたに委ねますよ。もう我々はそういうスタンスになってしまっているのです」
俺が今後の責任を一切放棄しようと決意を固めた直後
ハルヒが帰ってきた
「やっほ!どう?あんた達も案内してもらった?」
「いや、俺たちはここで話を―――ってなんだその格好は?」
「茉衣子ちゃんに貸してもらったのよ。いいでしょ!」
「涼宮さんとても良くお似合いでしょう?」
いいでしょってお前―――いや、そりゃかなり似合ってはいるんだが
「あ、朝比奈さんは着ていたんですか?」
「それがー……そのぅ」
ああそういうことかすみません朝比奈さんお察しします
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:24:32.64 ID:U5hNUvso0
ハルヒのやつすっかり仲良くなってるじゃないか
大人しく帰るためのハードルが俺の股下を超えている
「どうなのよ?」
「ああ、確かに黒髪だし良く似合ってるさ。しかしなんだ。やはり光明寺の方が似合ってるな。雰囲気的に」
「なっ!……」
(あなたという人は……)
(救いようがない)
(キョンくん……)
「そんなことわかってるわよ!私だって茉衣子ちゃん以上に似合う人思いつかないもの」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:28:55.68 ID:U5hNUvso0
「そうだろ?お前も相当なもんだけどな」
(なんと)
(……)
(ふぇぇ)
「あ……あの、ありがとうございます。光栄ですわ。ところで班長はどちらに?」
「宮野さんなら班員招集に行ってくると仰っていましたよ?」
(想念体の件ですわね)
「では私も参らねばなりませんね。度々申し訳ありませんが少々お待ち下さいませ」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:30:31.05 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(そう言えば……殿方にこの衣装を褒められたのは初めてですわね……別にだからどうと言うわけではない
ですけれど)
(あの方の雰囲気……知っているような気がしていましたけれど高崎様に似ているのですわ。けれど高崎様ほど
厭世的ではありませんね。良いことです。高崎様はもう少し―――)
「おや、茉衣子くんではないかね!」
「あら班長。班員の皆様はどちらにお集まりで?」
宮野は顎に手をあてて窓の外を見ながら言った
「これは少々我々の平和ボケが過ぎることを明らかにしているようである」
「?なんのことですの?急増した想念体への対策を立てるために班員を招集したのでは?……まさか?」
「私と茉衣子くん以外の者は全て未だ戻ってきておらん」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:34:36.63 ID:U5hNUvso0
「そんな!」
「どうやら生徒の帰省スケジュールを担当寮長単独で管理していたようだな。自治会のマニュアルでは
寮長会議で常に一定の人材が学園に居るように管理する事になっているはずだ。怠慢だな!」
「我々の力のみで出現し続ける……だけならともかく強力にもなってゆく想念体を相手にしなければならない
のですか」
「気づいておったのかね」
「当然でしょう。特に4体目の破裂音は大きすぎました。班長のお遊びがあったにせよです」
自らの適切な分析に対して宮野の反応を期待したわけでは決してなかった
しかし宮野からの反応は茉衣子の予想とは反対に一切無く
ただ窓の外を眺め続けていた宮野の口元が不吉に歪んだ
「どうやら我々に休む時間など無いようだな茉衣子くん」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:37:34.82 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「で?あんたはあの宮野って男から何か聞き出したの?」
「宮野は光明寺と違って懐疑論者みたいだったからな。探りを入れるような事できるかよ」
「使えないわねー古泉くんは?」
「同じくですね。しかし彼の術のようなものは見ましたよ」
「それよそれ!さっきも出たんだってね。すっごい音だったわよ」
その音を出したのはコイツだ
古泉が俺に説明しろとばかりに視線をくれた
「宮野は地面から生えた触手を操っていた。かなり自在に使えるみたいだったぞ。単独で消し去ったからな」
「茉衣子ちゃんによるとそれは喚起術を模したイメージの具現化らしいわ」
「あとその想念体と呼ばれる物体についても一つわかりましたよ」
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:40:34.10 ID:U5hNUvso0
「正体がわかったの?UMA?幽霊?妖怪かしら!?」
お前の頭から湧いて出てるらしいぞ
厄介な思いつきだけでも迷惑だってのに形をもって攻撃までしてくるとは
「いえ、それはどうやらこの学園の生徒の中では常識のようですね。一言も出てきませんでした」
「じゃあ何がわかったのよ」
「どうやら最近になって出現回数が異常に増えたそうです。今日の頻度も通常ならあり得ないと」
「……わからないことだらけね。そもそもあの力ってなんなのかしら?超能力?有希はそういうの詳しく
ない?」
「現時点で確認できる能力に共通するのは物理的に不可能な事象を起こすという点。ESPという認識で
間違いは無い」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 01:42:18.97 ID:U5hNUvso0
「みくるちゃんは?」
「えっ?わ、私は〜そうですね。ねこさんとお話できたらいいなと思いました」
ねこさん?
「ああ言ってなかったけどさっき猫と話せるって娘と話してきたのよ。猫が居ないから意味ないんだけどね」
宮野が言っていたやつか
しかし長門は事実確認しただけだし朝比奈さんは自分の希望を言っただけだそ
「手詰まりねぇ……やっぱり足を使って調査するのが確実よ!作戦続行―――――」
ハルヒが何か言っているが聞こえない
ハルヒ以外の全員の視線はハルヒの後ろの窓の外に向いている
神人だ
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:09:05.60 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ダメです班長!」
茉衣子が階下の宮野に叫ぶ
「私の攻撃は有効ではありません!一部を消滅させても一瞬で再生します!」
茉衣子は巨体から距離のある方の校舎を駆けながら指先の蛍火を飛ばし続ける
「このまま私は放送室に向かって退避命令を発令します!時間を稼いでください!」
茉衣子は攻撃を止めて三階渡り廊下を渡った先の第二放送室に飛び込んだ
ヘッドホンをしてくつろいでいた放送部男子生徒が跳ね起きる
「校内全域に放送します!マイクを貸して!」
茉衣子のただならぬ様子に押されてその生徒は無言且つ迅速に機器を設定した
一瞬のハウリングの後
校内に茉衣子の声が響いた
「こちらは臨時会長代理の光明寺です。校内に巨大想念体が出現しました。全生徒はただちに屋外へ避難
してください。建物が倒壊する危険があります。繰り返します。こちらは―――――」
横で聞いていた生徒は既に居ない
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:12:42.83 ID:U5hNUvso0
「ふはははははははははは!素晴らしい!未だかつてこれほどの力を内蔵した想念体は見たことがない!」
宮野が宙に掲げている掌の先では巨大想念体の両腕が触手に絡めとられて振り上げたまま固定されている
「しかしまだだ!この程度では時間さえかけれはなんとでもなるぞ!もっと私を楽しませるのだ!」
「班長!」
茉衣子はそう叫ぶと同時に放送室前の窓から飛び降りた
その一瞬後に宮野が片手を茉衣子の落下予測地点に向けると地面に魔法陣が描かれた
そこから伸びた禍々しい腕が茉衣子を受け止め地に放つ
「なんて汚らわしいものを喚起するのですか!」
「かのソロモン72柱が一柱バァルの腕だ。神格に身を委ねた気分はどうかね?」
「知るものですか!」
手で裾を払うと宮野の横へ駆け寄った
巨人を観見上げて目を細める
「あの方たちと何か関係があるのですね」
「さて。どうかな!」
「後で詳しく聞きます。此処からでは寮の非難状況はわかりませんが確認する暇はありません。
始めましょう」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:14:33.44 ID:U5hNUvso0
(´・ω・`)さっきからさるさんくらいまくりでとっても怖いお
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺たちの視線に気づいたハルヒが振り返った
「……これっ……て」
ハルヒは静止しているが無理もない
俺もまさかもう一度これをハルヒと見ることになるとは思わなかった
だがおかしい
この神人は俺が二度見たそれらよりかなり小さい
半分ほどだ
四階のこの部屋から首に該当する部分が見える
「こいず―――」
「こちらは臨時会長代理の光明寺です。校内に巨大想念体が出現しました。全生徒はただちに屋外へ避難
してください。建物が倒壊する危険があります。繰り返します。こちらは―――――」
「涼宮さん逃げましょう。あれが想念体ならば今までのように攻撃してきます」
攻撃のあたりでハルヒの体が反応した
「行くわよみんな!外に出て茉衣子ちゃん達と合流するの!」
俺たちは一斉に部屋を飛び出した
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:18:58.17 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「試したいことがあるのでそのまま拘束していてください」
「よかろう」
茉衣子が蛍火で巨人の片足を爆破した
切断された足が霧散して瞬時に付け根から高速再生する
「二つ分りましたわ」
「言ってみたまえ」
「まずこの想念体はエネルギー内臓タイプですね。減らした分だけ感じる力も減りました」
「うむ」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:24:32.60 ID:U5hNUvso0
「もう一つ。どうやら破壊せずとも切断された部位のエネルギーは元には戻らないようです。どこかに核が
あるのでしょう」」
「正解だ茉衣子くん!しかしそれでは私がつまらん。どうかな?この拘束を解いて暴れだす巨人が校舎を
破壊しつくすのが先か、我々が消し去るのが先かというのは」
「我々が学園を任されている間に学園を消すわけにはゆきません」
「しかしだな。少しは被害が出なければカタルシスも弾けぬ」
「私は十分に感じています。再生よりも早く破壊はできませんね。引き続き拘束をお任せします」
「任されよう!やりたまえ」
今度は両足を同時に爆破する
巨人が膝から崩れ落ちた
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:28:09.04 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やっと……外か……」
「きっとあそこに二人とも居るのよ!」
建物の影になって見えないが神人の正面に居るようだ
宮野の触手が見える
「キョンくんごめんなさい……」
いえいえとんでもない
あなたを抱えて逃げ回る名誉に与ったのですからね
「いいから早く降ろしなさいよ」
「足挫いてるんだからもっと離れないと無理だろ」
「はい……」
「あそこの建物の陰まで行こう」
「古泉君は?いないじゃない」
すると校門の方から古泉が走ってきた
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:33:03.03 ID:U5hNUvso0
「先に確認してきたのですが校門からは出られません。見えない壁のようなものに阻まれてしまうんです」
「やっぱり……あの時と同じ」
ハルヒがなにか呟いた
「寮の方も見てきます。生徒の安否確認も兼ねて」
では。
とサッと手を挙げて走り去ろうとする
俺の横を通る時に囁いた
「サイズこそ小さいですが感じる力は同等です。いざという時は戦いますので」
「行くわよ!もう少し!」
その時だった
「えっ」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:36:19.97 ID:U5hNUvso0
視界の先で巨人が横に倒れた
低い音を立てて崩れ落ちる
足を潰したのかもしれんな
「すごいじゃない!」
しかし俺が本当に驚いたのは次の瞬間だ
「うおっ!」
神人を中心に突風が吹いたかと思ったら神人の色が金色に変化していた
それは起き上がると同時に自分の腕を縛っていた触手をひきちぎった
マズイぞこれは……
「お前たちはここにいろ!役には立たんが少しあいつらのところへ行ってくる!」
「え、ちょっ―――」
俺は最後まで聞かずに走り出した
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:44:40.18 ID:U5hNUvso0
間違えた。これと>>111は順番逆ね
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
変化した巨人によって宮野の喚起した触手は破られた
「どういうことですか!?今確かにこの想念体は外部からエネルギーを取り込みましたわ」
「間違いない。しかしこれほどの力の供給源だと……」
もちろん宮野には見当が付いている
「まさかまたPSYネットが……」
「それは違うだろうな。いずれは起こるかもしれんが今ではない」
「班長!何を知っているのですか!?」
「―――伏せたまえ!」
「きゃ―――」 ヴオォォォンンン!!!
巨人の腕が二人の頭上を薙いだ
巨人は二人を認識してというよりはただ腕を振ってみただけという風に見える
「来たか。では茉衣子くん。説明しよう」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 02:43:11.66 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「来たか。では茉衣子くん。説明しよう」
俺が着くなり宮野が言った
もう隠していてもしょうがないか
「彼らは第一の生徒ではない」
「なんですって!?」
「と、その前にこっちだな」
宮野が両手を地面にかざすとさっきとは比べ物にならない数の触手が神人に絡みついた
「あなた!どういうことですか?」
「すまん光明寺。俺たちはEMPの生徒じゃない。迷い込んだんだ」
光明寺は怒りではなく悲壮な顔をしていた
「お前たちの関係で春先に麓の農村でいろいろあったろ?ハルヒがその調査をするって言うから来たんだ。
そしてここに迷い込んだ」
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:12:15.80 ID:U5hNUvso0
「嘘です!学園には能力者が感覚迷彩を展開しています!一般人は外部からは認識できませんわ!それに
古泉さんはカウンター想念体能力を持っていたではありませんか!」
「茉衣子くん。彼は一般人だが二人EMP能力者がいるのだ」
宮野は平然としているように見えたが余裕が感じられない
「ハルヒは能力者だ。それも宮野が言うにはかなり異質で強力らしい。古泉はハルヒが力を分け与え
たんだ。ハルヒの能力は……願望実現能力だ」
「願望実現能力ですって?」
「そのままだ。あいつは自分の願望をそのまま実現できる。規模すら関係ないそうだ。強すぎる力の残滓が
あの想念体を生んでるんだよ」
光明寺の顔つきは変わらない
「あいつは普段は現実世界に想念体を生まない。別の世界を作ってそこに生まれるようにするんだ。その
討伐を任せられたのが古泉なんだよ」
「ではなぜ彼女はどの学園にも所属していないのですか?能力者は例外なく発現を感知されその後は学園
へ入ります。それを拒んで能力を行使すればブラックリストに入りますわ!」
「茉衣子くん。考えてもみたまえ。自身にそんな大層な能力があると知ったらどうなるかね?私なら
言わずもがなだ!」
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:20:12.11 ID:U5hNUvso0
「じゃあ俺は戻る。健闘をいの―――」
「ちょっとキョン!あんたばっかり近くで見てずるいわよ!あ!茉衣子ちゃん。来たわよ!」
来たわよ!じゃねぇよ!
「お前朝比奈さんと長門はどうしたんだよ!?」
「古泉君に連れて行ってもらったわ。校門の反対側からも出られなくて生徒が固まってたんだって。そっちの
方がここから離れてるから避難させるって」
「そうか……ってお前も逃げろよ!」
「あんたもそうでしょ!それにね!茉衣子ちゃん達は負けないから大丈夫よ。今だってアイツ動けてないし」
お前にはわからんだろうが今宮野が必死で止めてるんだよ
「そのとおりです涼宮さん。私たちが想念体ごときに負けるはずありませんわ。ですね班長?」
「言うまでもなく造作もないことだ。そうだ茉衣子くん。先ほど寮長殿に会ったぞ」
「では生徒の中に若菜さんも?」
「そのようだ」
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:23:37.19 ID:U5hNUvso0
「ならばあちらは問題ありませんね。遠慮なくやりましょう」
「きみたち。もう数メートル下がっていたまえよ」
なんか知らんが派手にやるらしい
あっちには長門もいるし物理的な衝撃は大丈夫だろう
ハルヒの腕を掴んで下がらせる
「茉衣子ちゃーん!やっちゃいなさーい!」
「ふふ。ではいきますよ班長」
「ああ。きみの友人に勇ましい姿を見せねばな」
あれ?なんか赤い玉が浮かんでるぞ?なにかなぁ?
「あれは……彼も加われば一気にカタをつけられますわ。班長。束縛を解いて下さい。一斉に構成を削って
残存エネルギーを空にしましょう。援護を」
「愛弟子の提案だ。尊重しよう。ではゆくぞ!」
神人を拘束していた触手が一斉に緩んだ
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:28:24.29 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ねぇにいさん。今想念体とたたかってるのって茉衣子ちゃんと宮野さんだよねぇ」
「そうだろうな。そんなに強い想念体なら宮野は嬉々としてやるだろうし茉衣子は義務感から同じくって
とこだろう」
「大丈夫かなー?想念体一体で避難命令ってぜんだいみもんじゃない?」
「大丈夫だろ。宮野が潰れてるとこなんて思い浮かばない。しかし真琴か不在とはタイミングが悪いな」
「にいさんやっぱり真琴さん頼りにしてるんだぁ」
「あいつの性能はレギュレーション違反のレベルなんだから当然だろ。けれど今回のやつはあのコンビの方
が向いてるか」
「はぁー着いた早々コレだもんねーお腹すいたよ……あっ」
校舎の屋上の角が何かに砕かれ礫が飛んでくる
――――――ガンッガガガンッ!!!
全てが生徒の上空で阻まれて周囲に落ちた
「……今のは長門さんですか?」
「違う。私が遮蔽フィールドを展開するよりも早かった」
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:33:44.05 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
拘束から放たれた神人はすぐさま校舎に向かって拳を振り上げた
その拳を触手が打ちすえて動きを殺した
「気持ち悪いわね……」
確かに気持ち悪い
宮野の触手は束になって神人の周囲三方に配置されている
これがまたグロテスクで気持ち悪い
一方茉衣子は両手のひらを前に突き出した
また振りかぶった神人を触手が打つ
指の先にはすべて光が灯っているがウニの時とは明度が全く違っていた
目が霞むほど輝いている
「班長!」
叫ぶと同時に茉衣子はそれらの灯を連続で神人に叩きつける
ドォンドォンドォンドォンドォンドォン
当たる度に花火の様な音が響く
それらは確実に神人の体を削っていった
しかしそれだけではなかった
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:36:04.13 ID:U5hNUvso0
高速再生を繰り返す度に体制がグラつく神人を宮野が触手で叩いていなして安定させていた
目まぐるしく触手が飛び交っている
たまに校舎に当たっていたがおかまいなしだ
古泉は何をしているかと言うと
何もしていなかった
ふらふら周囲を旋回している
よく触手が当たらないな
「あの赤いの仕事しなさいよもっと!」
などと鬼のようなことを言っている
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:37:59.02 ID:U5hNUvso0
神人の周囲の光が薄れてきたが再生速度は相変わらずだ
しかし結果はあっさりと出た
古泉が急に動きを止めたかと思うと気づいたら腹部を貫いていた
神人の姿が揺らぎ始める
「やはり核は移動していましたか……まんべんなく身を削っていったのに見つからないわけですわ」
「うむ。彼の働きでより早くカタをつけれたな!」
触手が巻き上げた土煙が未だ舞い続けている
「ハルヒ?」
「ん?あ、もう終わっちゃったんだ。茉衣子ちゃんやるじゃない!」
「これで第三のメンツも立ちましたわ」
ドグン――――――
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:44:06.42 ID:U5hNUvso0
っつ―――――すまん光明寺」
「どこまで変わるか見ものだな!」
「やれやれですわ」
「えっ何まだ生きてるの?しぶっといわねぇ」
霞んでいた神人の実体が突如鮮明になり
球状に収縮して鼓動を打った
直径は5メートルほどだろうか
嫌な予感しかしないな
「どうなるのかしら……」
不安そうな声とは反対に瞳はらんらんと輝いている
球状の金色の浮遊物が鼓動を打つたび濃緑色へと変わっていく
――――ドクン
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:46:43.00 ID:U5hNUvso0
舞っていた土煙が一気に玉の周囲に収斂した
バキィン―――
瞬間、玉が砕けて中から出てきた同色の液体が土煙と混ざる
それからは一瞬だ
それが急激に人の形を成した
全長は先と変わらないが手足が細長い
見る見る指まで形成された
顔に当たる部分には口型の亀裂のみがある
「なんと面妖な。誰の趣味なのだ?」
「そこの女だよ」
「禍々しいですわね……班長の喚起術なみに趣味が悪いですわ」
「え?そうかしら?敵ながら天晴なかっこよさだと思うけど」
直立不動で俯いていたそれが突如空を見上げた
―――――――グヴォ
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 03:50:35.52 ID:U5hNUvso0
<高等監察院>・0
<自動干渉機>に送信
特殊EMP励起ユニット 個体名<涼宮ハルヒ>の危険度増大
我々の介入交差時空域において時空構造破壊因子を生み出した可能性がある
当該対象の重要性を鑑み、レコードへの遡及効を提言する
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:00:51.76 ID:U5hNUvso0
<年表干渉者>・0
<自動干渉機>に送信
同意できない
該当時空域における各EMP励起ユニット能力値から該当構造内変数は構造破壊因子たり得ないと私は判断した
私は彼らの可能性を信じたい
<自動干渉機>続行を
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:03:24.71 ID:U5hNUvso0
<自動干渉機>・1
判定する
実行
後者の要求を了とする
続行
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:06:11.39 ID:U5hNUvso0
ォォォォォォォォォオオオオ!!!
「いぃっ―――――!」
なんつー音量だ!
正常な空間なら麓の村どころか市街の端まで聞こえてるんじゃないか!?
そいつがヒザを折った
「来るぞ茉衣子くん!」
ゴォォォン!―――
やばい死ぬかもしれん
そいつは俺たちがさっきまで居た地点を一足飛びで通過して食堂らしき施設に突っ込んだ
「立て直すぞ!」
宮野が叫ぶと同時に今までで最多の触手が躍り出てそいつを倒れたまま地面に縛り付けた
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:08:22.13 ID:U5hNUvso0
「あなた達も逃げて!」
光明寺も叫びながらさっきと同等の灯を打ちつけている
「寮の奥へ!生徒の中に防壁の能力者がいます!」
「いくぞハルヒ!」
「まだ大丈夫よ!」
「見たまえ茉衣子くん……」
「そんな……」
―――グヴォォォォォォォォォ!!!
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:11:51.43 ID:U5hNUvso0
「―――無傷?」
「砂塵を取り込んだのはこのためか!」
宮野があくまでも楽しげに言う
「ならこれで……!」
さっきと同じ灯だが?
しかし俺の思いをよそにそれは効果をあげた
「それでもこの程度しか削れぬか……EMPと物理的防御のハイブリッドというわけか!」
「私は同時には発現できませんし……」
「まずい!もう保たぬ」
ほとんど簀巻状態だったにもかかわらず触手がみるみる千切れていく
「もう並の喚起術では無理だな。今から大物の喚起に入る。足止めを頼むぞ」
「はい!」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:15:14.56 ID:U5hNUvso0
そいつが起き上がった
さっきと違いこいつは明らかに俺たちを敵性とみなしている
光明寺が片足に重点的に灯を飛ばした
「くっ―――!」
唇を噛んでいる
もう相手は先ほどとは比べ物にならない反応速度だった
足をすくわれても体を捻って直ぐに体制を立て直す
ヒュンッ――――ゴアァァ!!
古泉が赤玉のまま下腹部に突っ込んだ
さっきより大きな球になってるのは貫通力より打撃力へ特化したからだろう
前のめりになって頭をついた
間髪入れず光明寺が頭に灯を叩き込んだ
「やったか!?」
「いいえ……先ほど核が割れたのはこのためだったのですね」
「どういうことだ?」
「全体が核なのです。どこを攻撃しても一定のダメージは与えられますが先程の様な一撃必殺が不可能
になりました……少しずつ削って構造的な行動不能に追い込まなければ」
砂埃が薄れて頭部が見えた
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:19:10.44 ID:U5hNUvso0
「マジかよ」
丸い頭部が少し欠けただけだった
「班長!まだですか?」
「まちたまえ」
宮野にしては暗く沈んだ声だ
光明寺は不明を恥じるように押し黙った
起き上がったもう神人とも呼べないものと古泉が縺れ合っている
古泉は高速で周囲を旋回しつつスキができれば特攻していた
神人は腕を小さく畳んで拳で古泉を追っている
っまずい――――!!!
ガゴォォォン
神人が振り払った手が古泉にカウンター気味に入った
あんなフェイントに近い動作を神人ができるのか?
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:22:37.93 ID:U5hNUvso0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガギィィィィィィンンンンン―――――――――
「わっ!にいさん。今度は赤い隕石が来たよっ」
「おい。人になったぞ。なんて変態な能力者だ」
「取りあえず入れてやれ」
「古泉くんっ!!!!」
「わ。すごい可愛い人」
「あんた知り合いか?生きてはいるみたいだが」
「古泉くん!大丈夫ですかぁ!」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:25:11.44 ID:U5hNUvso0
「おいおい!そんなに揺するなって」
「あっそうだった……ごめんなさい」
「いいですよ……気にしないでください……」
「おっ起きたか。あんたら誰なんだ?第三の生徒じゃないだろう?」
「宮野さんという方に許可は頂いています。怪しい者ではありまん……」
(あいつの許可だって?怪しすぎるんだがな)
「そうか。わかった今は休んでた方がいい」
「時間稼ぎはできましたか……ふぅ」
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 04:27:07.68 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「できたぞ!」
宮野の言葉に振り向くと宙に複雑精緻な魔法陣が三つ
同じ形の二つがまず先に宮野の振った手に合わせて飛び中庭の地面に刻まれた
「これより召喚したるはーそうだな……ルシファ―の両腕ということでどうだろう?」
どうなんだろう
「なんで両腕なんだ?全身でいいじゃないか?」
「それほど膨大な力では失敗することの方が多いのです。こんな状況で塩の彫像など出されたら……」
話しながらも光明寺は足止めを続けている
「その腕ってやつでアイツ止められるの!?」
「見ているがよい!茉衣子くん!もうよいぞ!」
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 10:50:49.02 ID:U5hNUvso0
砂塵が突風で飛ばされるとそこに赤黒い日本の腕が生えていた
「細いがでかい……」
全長は敵の1.5倍ある
「悪趣味すぎますわ……」
「すっごいじゃないあんた!もっと早くやんなさいよ!」
「制御できるかが疑問でな。なんでも気位の高い者の腕なのだそうだ」
神人は日本の腕を敵性判定したらしい
不動のまま無い眼で睨んでいる
ガアァァァァァァァァァァアァア!!!
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 10:54:30.41 ID:U5hNUvso0
(´・ω・`)さるさんくらってる間に寝てしまったんだ。保守ありがとう
神人が飛びかかった
右の腕がなぎ払う
が、神人は地に伏せてそれをかわした
そのまま右側の腕の後ろに滑り込んで背負うように腕をつかんだ
「あいつ関節を折る気だ!」
「無駄だ!」
左の手がすかさず神人をわしづかみにした
「捕獲したな。逃しはしまい。こちらも仕上げに入るか」
ギャアォォォォォアァオアアアアア―――――!!!!
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 10:56:36.97 ID:U5hNUvso0
神人の悲鳴をBGMに宮野が魔法陣を空中に広げた
その魔法陣が輝きながら収縮したとおもったらそこには木でできた槍のようなものが浮かんでいる
「涼宮くんは博識だと聞いたがこれがなにかわかるかね?」
「宿木かしら……ミストルティンね!」
ミスト……なんだって?
「ミストルティンよ!北欧の神話に出てくるものよ。私が聞いた話は矢だったけど」
「まさしくミストルティンだ。形状については諸説あるが私が槍にしたかったのでそうしたまでだ」
「全く先日のカドケウスといい。そのテの武器がお好きですのね。文化圏も時代も統一感が全くないのは
いかがなものかと思いますわ」
宮野は聞いていなかった
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 10:58:47.32 ID:U5hNUvso0
「重要なのはこれが神殺しの武器であることだ。暴れ狂う神のごとき存在を無に帰すにはうってつけだと
思わないかね?」
効果があるならなんでもいいさ
「よし。これを屋上から投擲しよう!高度な想念構成弛緩能力を備えてある。突き刺さりさえすれば砂塵を
含んでいようがそれと想念との結合を解くから無意味だ!霧散するであろう!さあ茉衣子く――――」
ヴンッ――――
宮野の話に飽きた俺は見ていた
左腕が神人を放り投げやがった
しかも生徒の塊の方に!
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:02:19.20 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドッコォォォオオオオオオオオオオオオン――――――――――
「うわわっ!今度はなになに?」
「何かが覆いかぶさってるな」
ズズッ……
「動いたよにいさん」
「これが想念体じゃないか?それ以外にないだろう」
「うわ!なんかこの上で四つん這いになったよ」
「こんなのがぶつかっても平気なんだなお前」
ドガッ!!
「うわー校舎飛び越えちゃったよ。なんてったって最強らしいからね!へへ〜」
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:05:07.18 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やはり扱いが難しいな!」
「生徒の方に飛んだぞ!?」
「ああなに。かまわんさ。若菜君の防御壁は物体もEMPもすべて通さない」
「それは私が保証しますわ。彼らも無事です」
光明寺が言うなら大丈夫なんだろうけど……
「びっくりしたー。心臓止まるかと思ったわよ!早く屋上へいきましょう?」
「再捕獲が先だ。屋上に出て直撃されたら助からんぞ!」
巨大な影が校舎を飛び越えるのを視界の端でとらえた
ズズゥゥン――――
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:07:33.55 ID:U5hNUvso0
戻ってきたけど……すでに人じゃなくなってるぞ
四足で這いまわるように歩行するやつはいない
再び神人が悪魔の両腕に飛びかかった
両腕は見事な連携で再び敵を捕らえようと宙を掻いている
しかし低く這いつくばった神人は素早く捕まらない
「屋上だ!ゆくぞ茉衣子くん!」
「班長!でもまだ……」
「適当なアルゴリズムを組み込んだ。じきに捕まる。急ぐのだ」
「私達も行くわよ!」
「勝手にするがよい!」
追い払えよ……
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:24:39.72 ID:U5hNUvso0
校舎の壁際に集まった俺たちの足もとに黒い魔法陣が描かれた
まさかとは思うが
「うえぇ……」
地面から生えた触手に四人が絡めとられた
触手はそのまま屋上まで伸びて俺たちを解放した
「さあ見ていたまえ!破壊神が悪魔の手中に納まる様を!」
宮野の宣言と同時にその背後に神人が飛び上がる姿が見えた
それはムーンサルト気味に宙で身を翻すとそれを追って伸ばされた腕の手首をつかんだ―――
ゴギン―――
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:27:35.34 ID:U5hNUvso0
「っ―――」
俺と光明寺は目をそむけた
神人は手首をつかんだまま関節の逆方向へ着地しやがった
当然の結果が眼前にある
「片方折れちまったぞ!」
俺は鉄柵を握りしめて宮野を振り返った
しかし槍を肩にかけて宮野は笑っている
「捕獲だ」
宮野がそう言った途端折れた右腕が一瞬で形状を蛇へと変えた
神人の右腕は異常に長い蛇によって拘束された
グヴォォォォォオオオオ――――――
神人はそれを叩き潰そうと左腕を振り上げる
しかしその瞬間残された腕がそれをつかんだ
左右の腕を固められて動けない神人は俺たちの方を見上げて咆哮している
オオオオオオオオオ――――――――
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:32:26.63 ID:U5hNUvso0
「仕上げだ。茉衣子くん」
宮野が槍の穂先を光明寺の前へ差し出した
「貫通させるために物理的破壊が必要なのでな。きみの力を宿してくれたまえ」
光明寺が穂先を握ると指先と同じように穂先が強く輝いた
「今度こそ倒しなさいよ!」
お前次第だ
宮野が柵を掴んで投擲体制に入った
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――――
「なかなか愉快であったぞ。ではさらばだ!」
ぶんっ――
槍が前方の神人に放たれた
宮野の手元から離れるほど槍は巨大化していく
ドオォォン―――
神人の全長ほどにもなった槍がその胸部へ命中した
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:34:35.95 ID:U5hNUvso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
たちこめる煙がようやく引けた時
俺たちは胸から槍を生やして沈黙している神人の姿を確認できた
穂先は地面に突き立っている
「成功だ。見るがいい」
槍の突き刺さった部分から徐々に霧散していく
「終わりましたか……」
「終わっていればよいな」
二人の言いたいことは分かる
ハルヒは満足したのか?
「やったわね……すごかったわよ二人とも!」
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:35:24.17 ID:U5hNUvso0
<高等監察院>・1
<自動干渉機>に再度送信
特殊EMP励起ユニット 個体名<涼宮ハルヒ>の危険度が更に増大
時空構造破壊因子を生み出す可能性が飛躍的に上昇
該当時空座標において介入を求める
これ以上は貴君の私情だ<年表干渉者>
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:37:26.96 ID:U5hNUvso0
<年表干渉者>・1
<自動干渉機>に送信
まだ介入すべきではない
該当構造内変数が我々にも未知である以上、介入は認められない
我々が彼らの可能性を信じなければ構造秩序を維持することに意味はない
貴殿の忠告には感謝する<高等監察院>
<自動干渉機>に求める
続行を
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 11:41:05.20 ID:U5hNUvso0
<自動干渉機>・2
判定する
実行
後者の要求を了とする
続行
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:23:56.59 ID:U5hNUvso0
キィン――――
槍が砕けた
霧散し始めていた体が赤黒く染まる
「……」
誰も言葉を発せない
神人のそれまでは無かった眼が見開かれる
ゴオオオオオオオォオォォオォオォォォォォ――――
「君たちは降りたまえ!」
「わっ」
さっきの触手が俺とハルヒをからめ捕り一瞬で地上へ降ろした
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:27:20.17 ID:U5hNUvso0
「……まだなの?」
「らしいな」
まだ足りないのか
ハルヒの瞳は輝きを増している
「あっ!見て!」
ブワッ
神人に巻きついていた蛇と掴んでいた手首が数秒で蒸発した
グヴォオォォォォォ!!!―――――
神人が体を屈めた
次の瞬間両足を揃えて校舎を飛び越した
ドォン!
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:29:21.96 ID:U5hNUvso0
「おいあそこは……」
学生寮を踏みつぶして立っている姿が見える
「みんなはあそこに避難していたんじゃないのか!?」
「だ、大丈夫よ……だって、だって茉衣子ちゃんが言ってたじゃない!」
ハルヒがついさっきとはうって変わって震えている
瞳は悲壮な色に満ちている
ドンドンドンッ―――
神人が駆けた
そして
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:39:44.16 ID:U5hNUvso0
ガアァァァァァン―――
俺たちがさっきまで居た校舎に突っ込んだ
音を立てて崩れる
あそこにはまだ宮野と光明寺が……
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ハルヒ!」
「なんで!?さっきまであんなに楽しかったのに!やっと不思議なことに遭遇したのに!」
「おちつけ!」
「なんでよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「ハル
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:50:37.05 ID:U5hNUvso0
<高等監察院>・2
<自動干渉機>に送信
レコードへの遡及効を要求する
可能性は潰えた
他の重要EMP励起ユニットが多数失われては構造秩序維持など不可能だ
これは貴君の驕りが生んだ構造破壊因子だ<年表干渉者>
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:54:48.21 ID:U5hNUvso0
<年表干渉者>・2
<自動干渉機>へ送信
同じくレコードへの遡及効を求める
貴殿の言うとおりだ<高等監察院>
私は判断を誤った
しかし何度でも別の時空で彼女は求めるだろう
我々はその意思を奪うことはできない
我々に無いものを彼らは持っているのだ<高等監察院>
レコードへの遡及効の後、当該対象の予測行動指標へ介入
以後、対象精神内介入痕の希釈を提案する
方法は限定時空間座標内の無期限循環による
解除コードは対象に委ねる
実行を
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:56:57.21 ID:U5hNUvso0
<自動干渉機>・3
両者の要求を受理
レコードへの遡及効を実行する
後の指標は後者のものを採用する
介入
実行
終了
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 12:57:43.19 ID:U5hNUvso0
「ツチノコ探しってのはどう?最近目撃情報が多発したらしいのよ」
8月も中旬に差し掛かった頃のいつもの喫茶店でのことである
夏休み中にやりたいことの選定中にこんなことを言い出した
「どこでだ?」
ハルヒが示すのは他県の農村だ
「ここまで行くとなると丸一日つぶれるぞ。これだけの予定を残りの日数でこなすなら割り込む余地はない
だろう」
「古泉君はどう思う?」
「そうですね。たしかに割り込む余地はなさそうです。涼宮さんはこれらの予定を最優先するのでしょう?」
「そうねぇ……ならしかたないわ」
最も不思議らしいものを組み込まないのか?
俺はその方が助かるが……まぁいいか
「では!我々は残りの日数でこれだけの予定をこなします!失速するんじゃないわよ!SOS団ふぁいっ!」
おー
174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/07/02(木) 13:06:38.02 ID:U5hNUvso0
(´・ω・`) やあ
これで終わりなんだ。元々学校を出よう!の販促目的で混ぜるっていう目的ありきだったから話は適当なんだ
もう少し短い予定だったんだけどエヴァ破を観て影響受けたせいで長くなってしまったんだ
あまりの過疎っぷりにさるさんくらいまくって辛かったよ
これで一人でも学校読者を増やせたらいいんだけどね
ていうか人居るのかこれ