ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ、ただの人間に興味ありません」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:07:27.72 ID:Br+ElVGGO

キョン「は?」

ハルヒ「この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい」

キョン「!?」

ハルヒ「以上」

キョン(な、なんだこいつは・・・)

ハルヒ「・・・」

キョン(まさか・・・)

キョン(俺が未来の宇宙から来た超能力者だと知っているのか・・・!?)

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:09:02.22 ID:Br+ElVGGO

キョン「涼宮、しょっぱなのアレはどういうつもりなんだ?」

ハルヒ「アレってなによ?」

キョン「・・・宇宙人がどうとか」

ハルヒ「あんた宇宙人なの?」

キョン「ち、ち、違うに決まってんだろ!?」

ハルヒ「なに焦ってんのよ・・・」

キョン「あ、焦ってなんかいねーよ・・・」

ハルヒ「じゃあなによ、話かけないで時間の無駄だから」

キョン(俺の正体を知ってる訳じゃないみたいだな・・・だが油断は出来んぞ・・・)

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:11:35.97 ID:Br+ElVGGO

谷口「お前、この前涼宮に話かけてたな」

キョン「あ、ああ・・・」

谷口「もし、あいつに気があるんなら、悪いことは言わん、やめとけ」

キョン「いや、そんなつもりはないんだが」

谷口「あいつの変人ぶりは常軌を逸している」

国木田「あの宇宙人がどうとかいうやつ?」

キョン「・・・!」ビクッ

谷口「どうした?」

キョン「い、いや、何でもない」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:14:22.11 ID:Br+ElVGGO

谷口「えっと、それでな、中でも有名なのが中学の時の校庭落書き事件」

キョン「落書き事件?」

国木田「あ、それ知ってる、確か新聞の地方欄に載ってなかった?航空写真でさ」

谷口「載ってた載ってた、中学校の校庭に描かれた謎のイタズラ書き、ってな」

キョン「なぁ、それいつの新聞かわかるか?」

谷口「えっ?あ、ああ、いつだったかな・・・」

国木田「だいたいでいいならわかるけど」

キョン「それでいい、教えてくれ」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:17:42.44 ID:Br+ElVGGO

キョン「えっと・・・この辺りのはずだが」

俺は放課後になってすぐ、市立図書館に向かった
谷口とかいう奴の言っていた涼宮ハルヒによる落書き、何故か気にかかる

キョン(地球に来て3年・・・こんな事態は初めてだ)

キョン「おっ、あった」

キョン「地方欄、地方欄・・・」

キョン「これじゃないな・・・」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:25:03.16 ID:Br+ElVGGO

キョン「おっ、これっぽいな・・・」

キョン「どれどれ、中学校の校庭に・・・」

キョン「!?」

キョン「これは・・・宇宙言語・・・だと?」

キョン「意味は・・・『私はここにいる』」

おいおい、冗談じゃない、涼宮ハルヒは地球人じゃないとでもいうのか
いや、待て待て、この時間平面の地球にあんな奴が送り込まれたなんて聞いてない

それともなにか、俺達以外にもいるってことなのか、非常識な存在が


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:28:45.10 ID:Br+ElVGGO

涼宮ハルヒ・・・何者だ
あいつが何者であるにしても警戒が必要なことは確かだろう

ん・・・?

見覚えのある制服が目に映る
見覚えがあるのも当然だ、それは俺の通う北高の制服であるのだから、それも女子の

そいつは貸し出しカウンター付近をあっちにうろうろ、こっちにうろうろ
明らかに挙動が不審である

まさか涼宮ハルヒの仲間か?尾けられたってのか?
・・・仕掛けてみるか

キョン「おい、アンタ」

長門「えっ・・・?」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:31:42.33 ID:Br+ElVGGO

キョン「さっきからこの辺をうろうろしてたみたいだが・・・」

長門「あ・・・」

キョン「うん・・・?」

判断は一瞬でついた、少なくともこの少女は敵ではない、と
そんな天敵が目の前に現れた小動物のようなリアクションを取るのは卑怯だろう

キョン「・・・もしかして本が借りたいのか?」

長門「・・・」

キョン「・・・?」

長門「・・・コク」

キョン「なら貸し出しカードがいるな」

長門「・・・」

ああクソ、そんな顔をしないでくれ
思わず世話を焼いてしまいたくなるだろうが

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:34:56.15 ID:Br+ElVGGO

長門「・・・ありがとう・・・」

宣言通り、思わず世話を焼いてしまった
あー、何をやってるんだ俺は

まぁ、この眼鏡の文学少女の嬉しそうな顔を見れば
すべての手続きを買って出たのも間違いではなかっただろうよ

キョン「じゃあな、俺はもう行くよ」

たまにはこういうのも悪くないさ
俺の自己満足以外の何ものでもないだろうがな


長門「・・・ありがとう」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:36:45.54 ID:Br+ElVGGO

キョン「ただいま」

妹「おかえり」

キョン「・・・」

妹「どうした?」

キョン「ちょっとな」

妹「何か、あったのか?」

キョン「ああ・・・こちら側の人間かも知れん奴に会った」

妹「・・・その話詳しく聞かせて貰えるか」

キョン「ああ、とりあえず腹が減った、先に飯を食わしてくれ」

妹「それなら夕食は出来ている、今日はハンバーグだ」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:40:59.44 ID:Br+ElVGGO

妹「涼宮ハルヒ、か・・・」

キョン「ああ、これがその航空写真のコピーだ」

妹「確かに・・・少々荒い部分はあるが、これは宇宙言語だな」

キョン「どういうことだと思う?」

妹「どうもこうもない、もし涼宮ハルヒが予測通りの存在なら厄介だろう」

キョン「じゃあ」

妹「当面は涼宮ハルヒから目を離さず、可能ならば探りを入れる」

キョン「妥当な所だな」

妹「では」

妹「兄妹らしく一緒に風呂にでも入るか?」

キョン「それは遠慮する」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:44:06.28 ID:Br+ElVGGO

というわけで最近の俺は涼宮ハルヒを観察することに終始している

そのおかげか、涼宮ハルヒがいかに異彩を放つ存在であるかを思い知ることになった

それは髪型が毎日変わるだの、まだ教室に男子がいるのに着替え始めるだの
この女が地球人であることを疑いたくなるほどの異様っぷりである

一応、異端たる俺の目から見てもこいつは普通ではない

出来れば関わりたくないが、そうもいかんのが悲しいところである

キョン「曜日で髪型を変えるのは宇宙人対策か?」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:47:23.95 ID:Br+ElVGGO

可能ならば探りを入れる
これでこの女がシロだとわかればもう関わらずに済む
なんの因果か涼宮ハルヒの席は俺の真後ろ、話しかけるには好都合だ
とっととこいつが頭の飛んでるだけのただの一般人であると証明せねば

ハルヒ「いつ気づいたの?」

キョン「ちょっと前」

ハルヒ「・・・あたし、思うんだけど、曜日によって感じるイメージってそれぞれ異なる気がするのよね」

初めて会話らしい会話が成立した、喜ぶべきか、悲しむべきか

キョン「わからんでもないがな」

ハルヒ「あっそう」


涼宮ハルヒが長かった髪をバッサリ切ってきたのはその翌日のことだった

本当にワケがわからん奴だ

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:50:10.20 ID:Br+ElVGGO

キョン「全部のクラブに入ってみたってのは本当なのか」

あれ以来、涼宮ハルヒと話すのが日課になりつつあった

キョン「なんか面白そうな部活とかあったか?」

ハルヒ「ない、全然ない」

即答だった

ハルヒ「運動系も文化系も全然普通、変な部活があるんじゃないかと期待して損したわ」

キョン「そうかい」

何を以て普通で、何を以て変になるのかは知らんが
この涼宮ハルヒという女はとにかく「普通じゃないこと」を求めているらしい

そんなこんなで本日の会話は終了した

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:55:04.62 ID:Br+ElVGGO

キョン「付き合う男全部振ったって本当か?」

俺はしつこくも涼宮ハルヒに話かける

ハルヒ「それがなによ」

キョン「一人くらいまともに付き合おうとは思わなかったのか」

ハルヒ「全然ダメ、どいつもこいつも普通過ぎる」

キョン「どんな奴なら満足なんだよ、宇宙人とかか?」

ハルヒ「宇宙人、もしくはそれに準じる何か、普通じゃなければ男女は問わないわ」

あれそれ俺じゃないか?
やったね俺ちゃん、彼女が出来るよ
嬉しくねぇよバカ野郎

キョン「なんでそんなに普通じゃないもんにこだわるんだ」

俺がそう言うとハルヒはあからさまにバカを見る目をして言い放った

ハルヒ「そっちの方が面白いじゃないの!」

知らんがな

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 08:58:23.02 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「あー、もうつまんない!どうしてこの学校にはもっとマシな部活動がないの?」

月に一度席替えの後、幸か不幸かハルヒが俺の後ろの席に変わらぬ様子で鎮座していた
ここまでハルヒを観察した結果、特に不審な点は見られない
いや不審な点は佃煮にするほど見受けられるのだが
とりあえず現時点では俺達の敵であるとは思えない
あくまでも現時点では、だが

キョン「ないもんはしょうがないだろ」

せっかくなので俺は意見してやった

キョン「結局の所、人間はそこにあるもので満足しなければならないのさ」

キョン「それが出来ないなら発明やら発見やらをすればいい」

キョン「まぁ、それは凡人たる我々には無理な話であり」

ハルヒ「うるさい」

一蹴されましたとさ

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:00:50.10 ID:Br+ElVGGO

さて、一体何がきっかけだったのか
俺の適当な演説だったとは思いたくない

ハルヒ「気がついた!」

キョン「は?」

ハルヒ「どうしてこんな簡単なことにきづかなかったのかしら!」

おい待て、今は授業中だ
立ち上がるな、デカい声を出すな

キョン「何に気付いたってんだよ?」

ハルヒ「ないなら作ればいいのよ!」

キョン「何を」

ハルヒ「部活よ!」

そうか、そりゃよかったな
それについてはあとで聞いてやるから今は大人しく着席しろ

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:04:17.56 ID:Br+ElVGGO

何がどうなってこうなったかは知らん
新しい部活の立ち上げとやらに俺が一枚噛むことになっている
何故だ?知らん、知らんぞ、俺は知らん

何がどうなっているのかわからない内に俺は部室棟へと強制連行されている

抵抗すれば撲殺されそうな気配だった
俺は死ぬ時は生まれ故郷で死ぬと決めているんだ
されるがままになっている俺を誰が責められようか

涼宮ハルヒと必要以上関わるのは不味いのではないか
そんな俺の懸念などハルヒには関係ないようで俺を引き摺るように連行する
いや、これ拉致だ拉致

ハルヒ「これからこの部屋が我々の部室よ!」

とある部室の前でハルヒが声高らかに宣言する

キョン「ちょい待て、文芸部と書いてあるんだが」

ハルヒ「借りたのよ」

キョン「はぁ?」

部室ってのはそんなに簡単貸し借り出来るもんなのか?

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:07:57.66 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「いいからいいから、とっとと入りなさい」

ノックもなしにズカズカと入って行った、お前には遠慮という概念はないのか
まぁ、俺もそれに続いた訳だが

ハルヒ「あの娘が唯一の文芸部員よ」

ハルヒの示す方を見ると、なるほど確かに文芸部らしき少女がパイプ椅子に腰掛けている

・・・ん?
どこかで見覚えがあるような

顔を上げた少女と目が合う
どういう訳か、その文芸部員は驚いた表情で口を開け、眼鏡のレンズ越しに俺を凝視している

その様子に俺は既視感を覚える、この感じ結構最近に

ああ、そうか

長門「・・・嘘」

キョン「あの時の・・・」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:12:12.48 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「なに、あんた達知り合い?」

キョン「いや、知り合いというかなんというか・・・」

長門「・・・あの時はありがとう」

少女は上目遣いで俺を見ながら礼を述べる

キョン「いや、たいしたことはしてないさ、そんなことよりだな、えーっと・・・」

長門「長門有希」

と、彼女は言った、どうやらそれが名前らしい

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:16:09.07 ID:Br+ElVGGO

キョン「長門さんとやら、こいつはこの部屋を意味のわからん部の部室にしようとしているんだぞ?」

長門「構わない」

長門有希は俺から視線を離さずに答える

キョン「いや、しかし、多分ものすごく迷惑をかけると思うぞ?」

長門「別にいい」

キョン「そのうち追い出されるかもしれんぞ?」

長門「・・・頑張る」

いや、何をだ

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:20:14.50 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「ま、そういうことだから」

ハルヒの声はやたらに弾んでいる、いい予感がしない

ハルヒ「これから放課後、この部屋に集合ね、来ないと死刑だから」

こんなことで生涯を終える気にはなれなかった俺は、渋々了承した

俺の目的は涼宮ハルヒの観察であったはずだ
それがあれよあれよという間にハルヒサイドに引き込まれようとしている
恐るべきは涼宮ハルヒか

ハルヒ「じゃあ今日は解散!」

もうなんか疲れた、今日はもう帰ろう、帰って寝よう

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:25:09.40 ID:Br+ElVGGO

妹「首尾は?」

キョン「涼宮ハルヒと同じ部活に入ることになったらしい」

妹「らしい?」

キョン「・・・これは俺の意見なのだが」

妹「なんだ」

キョン「涼宮ハルヒが敵性とは思えない、そりゃあ少々、というかかなりムチャクチャな所もあるが・・・」

妹「我々には失敗は許されない」

キョン「・・・」

妹「油断は出来ないと言うことだ」

キョン「わかってる」

妹「なら」

キョン「涼宮ハルヒの観察を続けることに異存はない」

妹「では夕食にするとしよう」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:28:57.32 ID:Br+ElVGGO

翌日の放課後、俺は部室に向かうことにした
死刑になるのはゴメンだからな

ハルヒは「先に行ってて!」と叫ぶやダッシュで教室を飛び出していった
昨日の言葉からして新しい部員を確保しにいったのだろうが・・・
いい予感がしないのは改めて言うまでもない

キョン「はぁ・・・」

微妙な気分になりつつも通学鞄を肩に引っかけて俺は部室に向かった


長門「・・・」

部室にはすでに長門有希がいて本を読んでいた
まぁ文芸部員が文芸部室にいるのは当然であり、俺が訪れることの方が不自然であるのだが

俺が部室に入ると長門有希は顔を上げ俺を見る
が、目が合ったかと思うとすぐに顔を伏せてしまった

これはもしかしなくても怖がられているのか?
確かに俺は未来的宇宙的超能力的という異質を煮詰めたような存在だが
別にとって食ったりはしないから安心して欲しい
まぁ、こんな説明で安心する奴がいたら俺はこういうだろう「正気かよ」と

長門「・・・」

この少女をこれ以上怯えさせるのはアレなので
出来るだけ長門から遠い位置のパイプ椅子の腰掛ける

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:30:59.75 ID:Br+ElVGGO

キョン「・・・」

長門「・・・」

キョン「・・・」

長門「・・・」

あえて言おう、暇であると

長門は読書という娯楽があるからいいだろうが

俺がすべきこと言えば涼宮ハルヒの観察である
しかしここにはその観察対象がいない、はっきり言って手持ち無沙汰全開である

では涼宮ハルヒを眺めていれば楽しいのかと聞かれたら、それは正直微妙だが
飽きないと言えば飽きない奴である

早い話、今の俺はぼんやりとしていた

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:34:13.21 ID:Br+ElVGGO

ぼんやりとしてる内に長門有希の姿が目に入る

長門の視線は本に集中し、動きといえば本のページをめくる動作くらいのものである
観察しがいのないことこの上ない
というか文芸部とは本を読むだけの部活なのだろうか、俺はよく知らんのだが

そのまま視線を長門に向けていると長門がふと顔を上げた、そして俺と目が合う
その途端に慌てて視線を本の文字へと戻す
それでも目線を長門に固定し続けると長門の顔に仄かな朱を差し込み始める

観察対象の変化に少し嬉しくなった俺は調子に乗ってさらに観察を続ける
すると長門の弱々しげな頬周辺がますます赤くなっていく、明らかに落ち着かない様子である
極度の照れ屋なのか、ジロジロ見られるのに慣れていないのか
いずれにしてもさすがにこれ以上不躾な視線を浴びせる気にはならない

またしても暇である

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:38:21.09 ID:Br+ElVGGO

キョン「何を読んでんだ?」

文芸部室を包む沈黙にも飽きてきた俺はそう聞いてみた

長門「・・・」

長門は一瞬躊躇うような表情をしたかと思うと、本の背表紙を見せてくれた

そこには宇宙がどうとか書いてあって一瞬たじろいだが
これは長門の趣味であって俺のジョブにはなんの関係もないのである、ビビる必要はない

キョン「面白い?」

長門「・・・コク」

キョン「どういうとこが?」

長門「全部」

キョン「本が好きなんだな」

長門「好き」

キョン「そうか」

・・・
話が広がらないにも程がある
もしかしたら長門は俺のこと嫌いなのかも知れない
などと若干ネガティブなことを考え始めた時
蹴飛ばされたようにドアが開いた

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:45:17.60 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「ごめん!遅れちゃった!」

言うまでもなくハルヒのご登場である

だがそこにいたのはハルヒだけではなかった
ハルヒの手が何者かの腕をがっちりとホールドしているのが見える
どう見ても無理矢理連れてこられたであろう人物はまたしても少女だった

みくる「なんなんですかぁ?」

その少女はすでに半泣きである

みくる「こ、ここどこですか?何であたし連れてこられたんですか、何で」

ハルヒ「黙りなさい」

みくる「ひっ!」

もはや完全なる悪党である

ハルヒ「紹介するわ、朝比奈みくるちゃんよ」

いやいやいや、それで紹介終わりかよ
いくらなんでも情報足りなすぎるだろ

キョン「どこから拉致してきたんだ」

ハルヒ「二年の教室でぼんやりしているところを捕まえたの」

セミか

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:48:27.16 ID:Br+ElVGGO

キョン「まぁいい、それはそれとして、えーと、朝比奈さんか、なんでまたこの人を?」

ハルヒ「まぁ見なさい、めちゃめちゃ可愛いでしょう?」

そんなアブナイ誘拐犯みたいなことを言い出したと思ったら
いきなり「萌え」がどうしたとか語り出した
今、俺は猛烈に家に帰りたい、むしろ未来に帰りたい

キョン「すると何か、お前はこの朝比奈さんが可愛かったからという理由で連れて来たのか?」

ハルヒ「そうよ」

えー、長期に渡りました涼宮ハルヒ観察にもようやく結論が出ました

真性のアホだ、こいつ

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:51:16.95 ID:Br+ElVGGO

そんなこんなで名称不明、活動内容不明という謎の同好会に仲間が増えた
全く持って喜ばしくないのはどうしたことだろう

ハルヒ「部活の名前なら、たった今、考えたわ」

キョン「・・・言ってみろ」

出来ればあまり聞きたくはないが


お知らせしよう
ハルヒの独断と思いつきにより
我らがクラブの名称は今ここに決定した

S世界を
O大いに盛り上げるための
S涼宮ハルヒの団
略してSOS団

なんだろうツッコミを入れたら負けなゲームか何かなのか、これは
なんだかよくわからないうち負けるのも癪なので、俺は何も言わなかった

好きにしろよ、もう


この日は朝比奈みくるさんという新メンバーを迎え、部活名称が発表されたところで解散となった

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 09:55:12.91 ID:Br+ElVGGO

翌日の放課後、俺は部室に向かう
何故だと言われても向かってしまうのだから仕方がない

が、今日はスムーズに部室へは行けなかった
別に部室へ行けなくなっても一向に構わないのだが

朝倉「ちょっといいかしら」

俺に声をかけて来たのは我がクラスの委員長、朝倉涼子である

朝倉「あなた達最近なにをしてるの?」

俺が聞きたい
結局あのSOS団なる同好会もどきが何をする集団なのかを俺はまだ知らん

朝倉「公序良俗に反するようなことはやめておきなさいよ?」

それ、ハルヒに言ってやってくれよ

その後、ハルヒの起こした問題について俺が軽く説教される羽目になった
何故だ


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:00:39.32 ID:Br+ElVGGO

キョン「うぃーす」

部室に入ると長門と朝比奈さんの視線が向けられる
目が合うと長門は下を向いてしまい、朝比奈さんは微笑んでくれた

長門はともかくとして、朝比奈さん、あなたは何も律儀に来なくても

ん?一番ここにいるべき奴の姿が見えない

キョン「・・・ハルヒは?」

朝倉に説教を食らってた俺よりは先に教室を出ていたはずだが

みくる「さぁ・・・」

長門「知らない」

キョン「何してんだ、あい」

ハルヒ「へい、お待ち!」

あいつは、と言い切る前に
この部屋を乗っ取った張本人が新たな獲物を連れて現れた


ハルヒ「一年九組にやってきた即戦力の転校生、その名も」

古泉「古泉一樹です、よろしく」

さわやかな雰囲気を持つ細身の男が、如才のない笑みを浮かべていた

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:03:27.70 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「ここ、SOS団、あたしが団長の涼宮ハルヒ、そこの三人は団員その一と二と三」

どんな紹介だ

古泉「入るのは別にいいんですが何をするクラブなんですか?」

よく聞いた転校生、俺が幾度となく自問を繰り返し、ついぞ答えることの出来なかった問題だ

ハルヒ「教えるわ、SOS団の活動内容、それは」

ハルヒはセリフを溜めに溜めて、そして驚くべき真相を明らかにした

ハルヒ「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」

俺は戦慄を覚えた

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:07:09.02 ID:Br+ElVGGO

というのは嘘で、別にこいつが俺を意識して吐いたセリフではないだろうことは知ってるし
いかにもこいつが言い出しそうなことである

別にこいつが躍起になって宇宙人未来人超能力者を探し始めたところで見つからない自信はある
俺が「あ、どうも実はワタクシ未来の宇宙から来た超能力者でして」
などと言い出さない限りは大丈夫だ
というか言ったところで今更こいつは信じもしないだろう

だから俺は別段気にもしなかった

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:10:40.90 ID:Br+ElVGGO

しかし他の三人はそうも行かなかったようだ
朝比奈さんは完全に硬化していた、口をぽかんと開けてハルヒを見つめたまま動かない
動かないのは長門も同じで首をハルヒへと向けた状態で止まっている、少し目が見開かれているのがわかる
最後に古泉一樹だが、微笑なのか苦笑なのか驚きなのか判別しにくい表情で突っ立っている
この沈黙の中で、真っ先に口を開いたのは古泉一樹であった

古泉「いいでしょう、是非入部させていただきます、今後ともよろしく」

おいお前、何を聞いていた
今のどこに入部を決意する要素があった


古泉「古泉です、転校してきたばかりで教えていただくことばかりとは思いますが、なにとぞご教示願います」

首を捻る俺の目の前に、ぬっと手が差し出された

キョン「ああ、俺は」

古泉とやらの手を握り返し、簡単な自己紹介を

ハルヒ「そいつはキョン」

俺のプロフィールは謎のままとなった

ハルヒ「そっちの可愛いのがみくるちゃんで、そっちの眼鏡っ娘が有希」

この時代ではまともな自己紹介は御法度なのだろうか
難儀なことである

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:15:05.40 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「そういうわけで5人揃ったわ!」

どういうわけか揃ってしまったな

ハルヒ「みんな、一丸となって宇宙人、未来人、超能力者を捜すわよ!」

捜索するまでもなく俺はここにいるのだが
とは口が裂けても言えない

というか長門はあくまで文芸部員であるのだから、珍妙な一団に加えてやるな
と、言ったところで無駄なことを俺は知ってる

というわけで俺は何も言わなかった、というより言えなかった
何かを言う必要も感じなかった

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:20:27.44 ID:Br+ElVGGO

学校を案内してあげると言って、ハルヒが古泉を連れ出し、朝比奈さんが用事があるからと帰ってしまった

つまり部室には俺と長門だけが残されている
このまま長門に本でも借りて読書に勤しむのも悪くないかもな
俺から見ればこの時代の本は全て古書も同然だ、貴重な体験だろう

うーむ、なんだか小難しい本ばかりだなよくわからん
じゃあ何か?俺は過去の地球人に知能レベルで負けているのか?
まぁ、天才と呼ばれた人間も軒並み過去の人であるし
時の流れだけでは人の頭脳を発達させることは出来なかったか
やはり、コツコツと勉学に勤しむのがどの時代、どの場所においても不変の


ハルヒ「たっだいまー!というわけで今日は解散!」

どういうわけか、全くわからんのだが

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:26:27.85 ID:Br+ElVGGO

翌日の放課後、掃除当番だったため、俺が遅れて部室へ行くと何故かメイドさんがいた

なにこれ

エプロンドレスに身を包んだ朝比奈さんが泣きそうな顔で俺を見ている

ハルヒ「どう、可愛いでしょう?」

まぁそれには同意できないこともないが、なんだこれは

ハルヒ「やっぱり萌えといったらメイドでしょう」

キョン「またわけのわからんことを・・・」

誰も止めなかったのか

ハルヒ「ま、それはそれとしてミーティングを開始します!」

このタイミングでか

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:29:36.61 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「果報は寝て待て、昔の人は言いました、でももうそんな時代じゃないのです」

なにやらハルヒの奴が演説を始めた
ちょっと待て、ミーティングじゃなかったのか?

ハルヒ「地面を掘り起こしてでも、果報は探し出すものなのです、だから探しに行きましょう!」

キョン「・・・何をだ」

ハルヒ「この世の不思議よ!市内をくまなく探索したら一つくらいは見つかるに違いないわ!」

そんなもん見つからねーよ
というかお前、今目の前に俺がいるのに気づいてないじゃねーかよ

そんなんじゃ例え街中に不思議が転がってても気づかないんじゃないのか?
まぁ気づいて貰ったら困るのだが

ハルヒ「次の土曜日!つまりは明日!来なかった者は死刑だから!」

だから死刑て

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:33:20.78 ID:Br+ElVGGO

翌日

妹「くれぐれも気を抜くなよ」

わかってるよ
ああ、休みの日に何故こんなアホな真似をせねばならんのか

妹「なぁ、もしよければ明日は私と・・・」

ん?

妹「いや、なんでもない・・・いってらっしゃい」

キョン「おう、いってくる」

まぁできれば行きたくはないのだが
涼宮ハルヒの観察という任はまだ解かれていないのだから仕方ない

何より死刑は嫌だからな、情けなくも待ち合わせ場所に向かった


ハルヒ「遅い!罰金!」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:35:25.34 ID:Br+ElVGGO

・・・ありのまま今起こったことを話すぜ
『待ち合わせ時間の10分前についたはずなのにいつの間にか遅刻になっていた』

俺が何を言っているかわかないと思うが俺もわからん

わがままだとか俺ルールだとかそんなチャチなものじゃあ、断じてない

もっと恐ろしいハルヒの片鱗を味わったぜ


などと馬鹿馬鹿しいことを言っているうちに俺が喫茶店でおごる羽目になっていた

理不尽だ
ああ理不尽だ
理不尽だ

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:40:37.83 ID:Br+ElVGGO

みくる「どうします?」

キョン「うーん、どっかブラブラしてましょうか」

みくる「はい」

ハルヒの提案はこうだった、クジ引きで二手に分かれて市内をうろつく
そして不思議を発見次第携帯電話でもう一方に連絡する、と

そんなこんなで俺と朝比奈さんのタッグが組まれたわけだ

ハルヒが「謎っぽい人間や、地球人のフリしたエイリアンとかを発見するのよ!」
とか言い出した時は口の中のミントティーを吹きそうになったが
朝比奈さんと一緒ならば、危惧すべきようなことは起こるまい

少なくとも朝比奈さんは人としての常識をちゃんと持っていらっしゃる

だから俺はのんびりと市内散策に興じればいい、そう思っていた

だからベンチで休憩していた時、朝比奈さんが言った言葉には驚かされた

みくる「キョンくん、未来人っていると思いますか?」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:42:45.79 ID:Br+ElVGGO

キョン「はい?」

何を言い出すんですか、あなたは

みくる「ね、どう思う?」

どう思うも何も俺こそが未来人な訳で
未来人に「未来人はいるか」などと聞かれても困る

俺はこの質問に対する確かな答えを持っているが、それを馬鹿正直に答えるわけにはいかない

俺の沈黙をどう受け取ったか、朝比奈さんは申し訳なさそうな顔をして続ける

みくる「ごめんなさい、変なこと聞いちゃって」

みくる「・・・私ね、最近まで未来人がこの時代に潜んでたりするんじゃないかな、って思ってたんです」

みくる「タイムマシンとかで、この時代と未来を行き来したりしてるんじゃないか、って」

みくる「ううん、今でもそうじゃないかって思ってる、そうであって欲しいって思ってるの」

みくる「未来はきっと凄いロボットさんとか、空を飛ぶ車とか素敵なものがいっぱいで」

みくる「そんな未来を見てみたいな、って」

みくる「馬鹿みたいよね?」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:45:26.94 ID:Br+ElVGGO

そんな風に自嘲気味に微笑む朝比奈さんはどこか寂しそうに見え
それは俺の口を滑らせるには十分過ぎる威力を持っていた

キョン「そんなことはありませんよ」

キョン「未来人はきっと、いえ、絶対います」

俺がやって来た未来をあなたが素敵と思うかはわかりませんが
確かに未来人は存在しますよ、今あなたの目の前でアホ面晒してるのがそうです
そう言えたなら、朝比奈さんはどう思うのだろうか


みくる「ふふ、キョンくんは優しいんですね」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:50:27.07 ID:Br+ElVGGO

みくる「本当のこと言うとね、涼宮さんに出会った時すごくワクワクしたの」

ワクワク、ですか?

みくる「うん、私は未来人はいる、未来人に会いたい、なんて人前じゃ言えなかったけど」

みくる「涼宮さんは違う、誰の前でもおっきな声で言える」

みくる「初めて涼宮さんの噂を聞いた時、羨ましいって思った」

羨ましい、ですか
俺はそんな風に受け取れる朝比奈さんが羨ましいですよ

みくる「だからそんな涼宮さんに捕まった時、何かが始まる気がしたんです」

捕まったってのがアレだが
朝比奈さんは朝比奈さんでこのけったいな集団を前向きに捉えているらしい

みくる「あ・・・でも変な格好させられたりするのは恥ずかしいですけど・・・」


92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:52:30.35 ID:Br+ElVGGO

その後、俺は朝比奈さんの時間に対する持論を聞かされてた
正直、それは稚拙なもので、矛盾も多かった
だが俺は、それを否定する気にもなれなかったし
一生懸命に語る朝比奈さんは輝いて見えたね

俺も問題ない範囲で意見したり
朝比奈理論の稚拙ながらも的を射た部分に驚かされたりしていた

ハルヒからの着信でその討論会は中断された訳だが
最後に朝比奈さんは俺にこう聞いた

みくる「キョンくんは未来の世界はどんな所だと思いますか?」

そうですね、きっと

キョン「禁則事項が禁則事項だったりするんですよ」

しまった、NGだったな、これ

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:55:36.62 ID:Br+ElVGGO

・・・ありのまま今起こったことを話すぜ
『十二時に集合って電話が明らかに間に合わない時間に来た』
俺が何を言っているかわかないと思うが俺も
やっぱもういいわこれ

急いで待ち合わせ場所に戻るとハルヒが不機嫌そうな顔で立っていた

どうやら何も収穫がなかったらしい
当たり前だろうが、そうやすやすと見つかってたまるか

結局、午後の部でもまたグループ分けをすることになった

クジの結果、今度は俺と長門の二人とその他三人という組み合わせになった

ハルヒ「四時に落ち合いましょう、今度こそ何か見つけて来てよね!」

無茶を言うな


去り際に朝比奈さんが小さく手を振ってくれた、心が温まるね


96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 10:58:17.69 ID:Br+ElVGGO

長門「・・・」

さて、と
長門と暇つぶしとなると・・・

キョン「図書館でいいか?」

長門「いい」

そういえば一つ気になっていたことがある

キョン「お前、なんで制服なんだ」

長門「・・・何を着て来ればいいかわからなかった」

うーん、よくわからんが女子高生ってのはもっとお洒落に気を遣ったりするものではないのか?

まぁ、長門がそれでいいならいいんだろう、多分

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:00:05.72 ID:Br+ElVGGO

キョン「このヒマ人どもめ」

図書館には予想より人が多かった
具体的にいうと、俺が座って休もうと思っていたソファーが全てふさがれている
こいつらは他に行くところがないのか

そうこう言ってる内に長門はふらふらと本棚へと向かっている

なんとなく長門は楽しそうに見えるし、まぁいいだろう

本棚の辺りをうろうろしている長門をしばらく目で追った後
ソファーが空いたのを目ざとく見つけた俺は適当な小説を手に座り込んだ
そして速やかに眠りに落ちた

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:03:38.61 ID:Br+ElVGGO

俺が夢の世界を満喫している時、尻ポケットが振動した

キョン「うおっ!?」

長門「・・・!」ビクッ

いつの間にか長門が隣に座っていたらしい
ああ、悪い、驚かせたな

しかし尻ポケットの振動は止まらない
ってこれ着信じゃねーか
俺はヨダレをぬぐいつつ小走りに図書館外へ出た

キョン「・・・もしもし」

ハルヒ『何やってんのこのバカ!今何時だと思ってんのよ!』

キョン「悪い、寝てた」

ハルヒ『はあ!?このアホンダラ!!』

お前にアホ呼ばわりされるとは

キョン「えぇと、四時半を回ってるみたいだな」

ハルヒ『わかってるならとっとと戻りなさいよ!』

まぁ、確かに寝てた俺が悪いんだが
長門も起こしてくれてもいいだろうに

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:07:22.56 ID:Br+ElVGGO

キョン「あー、長門、帰るぞ」

長門「・・・もう?」

キョン「待ち合わせ時間はとうに過ぎているらしい」

長門「あ・・・」

なにその今気づきましたみたいな顔

長門「・・・ごめんなさい」

キョン「いや、別に責めてる訳じゃない」

だからそんなこの世の不幸は全部自分のせい、みたいな顔するな

長門「本を借りてくる」

この状況でも読書を優先するのか、いいよいいよ、今更数分の遅れがなんだ

貸し出しカウンターから戻ってきた長門が大事そうに抱えていたのは
天文学書らしき小難しそうな本だった

その間も電話がかかりまくってくる、どうせハルヒだろ、無視だ無視


ハルヒ「遅刻、罰金!」

全くもって予想通りである


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:14:07.20 ID:Br+ElVGGO

馬鹿げた市内探索も終わり、週明け

はっきり言って暑い
もう一度言う、暑い
何度だって言う、暑い暑い暑い

ハルヒ「うるさい」

この暑さのせいか涼宮ハルヒも不機嫌モードである
まぁ、一日潰して何も見つからなかったのもあるのだろうが

キョン「なぁハルヒ、幸せの青い鳥って話知ってるか?」

ハルヒ「それがなに?」

キョン「いや、まぁ何でもないんだけどな」

ハルヒ「だったら聞くな」

まぁ、俺が幸せを呼ぶ存在とは思えないが
もうちょっと近い場所に目を向けるのありじゃないか?
灯台下暗しというやつだ、その暗がりにいる者としてはありがたい話だがな

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:18:07.70 ID:Br+ElVGGO

結局、この日ハルヒは一日中不機嫌のまま放課後を迎えた

八つ当たりされない内に部室へ退避しよう

古泉「おや、これから部室ですか?」

なんだ古泉、なんか用か
俺は、朝比奈さんが入れてくれるであろうお茶にありつきたいんだ
早くしてくれ

古泉「少し僕とお話しませんか?」

ハルヒに絡まれずに済むならそれでもかまわんが

古泉が俺を伴って訪れた先は食堂の屋外テーブルだった

キョン「で、話ってのは?」

古泉「あなたは涼宮さんについてどう思いますか?」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:22:16.72 ID:Br+ElVGGO

なんなんだ、藪から棒に

古泉「ああ、少々唐突過ぎましたね」

順序立てて話せよ
俺がそう求めると、古泉は柔和な笑みを崩すことなく話し始める

古泉「ではまず僕がこんな時期に転校して来た理由から話しましょうか」

確かに変な時期だとは思っていたが

古泉「僕が北高に転入した理由はズバリ、涼宮さんです」

キョン「は?」

なんだお前、ハルヒのストーカーか何かか?

古泉「いえ、そういう訳ではありませんが、前々から涼宮さんの噂は伺っておりまして」

まぁ、何かと有名だったらしいからな

古泉「前の高校で東中出身の方に北高に涼宮さんがいると聞きまして、この高校に興味を抱いた次第です」

意味がわからんのだが

古泉「これは東中出身の方から聞いたことですが、涼宮さんの成績ならもっと上の高校を狙えたらしいです」

そうなのか?あいつそんなに頭良かったのか

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:26:14.18 ID:Br+ElVGGO

古泉「だからこの北高には何かあるのでは、と」

キョン「何かってなんだ」

古泉「涼宮さんに入学を決意させるだけの何か、ですよ」

古泉「例えば彼女の言う、この世の不思議とか」

馬鹿を言え、ハルヒがたまたま選んだ高校にいちいち何かあってたまるか

いや待て、あるぞ

俺だ


なんてな
ないない、偶然だ、偶然
家が近かったとかそんなんじゃないのか、実際

古泉「確かに、ただの涼宮さんの気まぐれだった可能性もあります」

可能性というか、それ以外に何があるんだ

古泉「ですが僕は考えてしまいました」

キョン「何をだ」

古泉「もし、ここに何か不思議なことがあるのだとしたら、と」

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:30:17.84 ID:Br+ElVGGO

古泉「それを考え始めた時、僕はワクワクしました」

朝比奈さんが言うと可愛らしい台詞も古泉が言った途端に価値が薄れた気がした

古泉「今まで焦がれ続けていた不思議に出会えるかも知れない、とね」

古泉「そう思ったら、いてもたってもいられず両親に編入を願い出ていました」

そんなしょうもないことのために、随分と思い切ったことをしたもんだ

古泉「あなたにはありませんか?そういった超常的な存在や現象に対する憧れが」

そう言われても、お前の言う超常的な存在たる俺には何も言えんよ

古泉「人間の一生は案外短いものです、その中の高校生活などほんのわずかばかりの時間でしかない」

そんなもんかね、俺にはよくわからんよ

古泉「後悔はしたくなかったんですよ」

後悔ね、そんな選択をしたことを後に後悔する羽目になるかも知れんぞ

古泉「それならそれで構いませんよ」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:35:23.06 ID:Br+ElVGGO

古泉「この高校に転入して早々に、涼宮さんに声をかけられた時は興奮しましたよ」

古泉「ああ、やっと物語が始まるんだって」

古泉はまるでサンタの存在を信じきった子供のような顔で語る

例え何が始まろうとも追われる立場になるのは俺なのだ
勘弁して貰いたいもんだがね
ハルヒなら「捕まえて解剖するわよ」とか言いかねないからな


古泉「そして僕は宇宙人や未来人や超能力者は以外と涼宮さんの近くにいるのではないか、と思っています」

キョン「・・・」

おいおい、冗談じゃねーぞ、なんだよただの与太話じゃなかったのか
気付いたってのか、いやまさか、しかし、万が一気づいたと言うなら

古泉「まず宇宙人ですが」

おいおい、やめとけ古泉、良いことなんか一つもねーぞ
悪いことは言わんその辺で・・・

古泉「長門さんが怪しいと思います」

キョン「は?」

古泉「次に、未来人ですが朝比奈さんなんかどうでしょうか」

違う、全然違うよ、え、なに?ふざけてるの?

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:40:07.48 ID:Br+ElVGGO

キョン「参考までに聞くが超能力者は誰になるんだ?」

古泉「そうですね、僕、など如何でしょう」

キョン「は?」

じゃあ何か?お前は超能力とやらを持っているのとでも言うのか?

古泉「いえ、僕自身はそんな能力のかけらも持っていませんが」

その時点で破綻してるじゃないか

古泉「しかし、これから能力に目覚めるのかも知れません」

なんなんだその適当な理論は、これからっていつだ、明日か明後日か

古泉「こう見えてもエスパーというものに憧れがありましてね」

キョン「じゃあ、俺はなんなんだ?」

長門が宇宙人、朝比奈さんが未来人、お前が超能力者だとしたら

古泉「・・・あー、考えてませんでした」

おい、ここに来て仲間外れかよ、イジメカッコ悪い

古泉「すみません、今度までに何かいい役どころを考えておきますよ」

いらんわ

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:44:10.05 ID:Br+ElVGGO

古泉「少し長話になってしまいましたね・・・コーヒーがすっかり冷めてしまいました」

こんな暑い日にホットコーヒーなんかよく飲む気になるな、お前

古泉「こういう時超能力があれば冷めたコーヒーもすぐに熱くできるんですがねぇ」

心底楽しそうな、それも悪戯っぽい笑みを浮かべてやがる
なんとなくそれが癪に触ったのでちょっと意見してやろう
別に仲間外れにされたことへの意趣返しではない、断じてない

キョン「しかしな、超能力と言ってもそんなわかりやすいものばかりとも限らん」

古泉「と、言いますと?」

キョン「超能力者本人にも何に使えばいいのか、何に使えるのかよくわからない能力かも知れんってことだ」

下手すれば何にも使えないへっぽこ超能力の可能性もある訳だしな

古泉は興味津々と言った面持ちで俺の話を聞いている

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:48:37.13 ID:Br+ElVGGO

キョン「そんな能力に目覚めた所で本人にはどうしようもできないし」

キョン「ただ『超能力者』という称号だけつけられても戸惑うだけだろう」

キョン「特別な能力があるのがわかっていながら、どうしていいかもわからないってのも結構ジレンマだ」

キョン「と、俺は思う」

古泉「・・・大変興味深い話ですね、まるであなた自身がそういった超能力者のようですよ」

キョン「ただの例え話だよ」

そう、これはただの何でもない例え話なのさ

古泉「ですが超能力者の座は譲れませんよ」

それを超能力者相手に言うのか

もう勝手にしろ、もしかしたら運良くお前も超能力に目覚めるかも知れんぞ
そうなったら存分に冷めたコーヒーを温めるといい

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:53:35.47 ID:Br+ElVGGO

古泉「僕が超能力に目覚めるか目覚めないかは別として、ああ、もちろん僕としては目覚めて欲しいですが」

わかったわかった

古泉「物語の中心には涼宮さんがいるんです」

お前の話は何一つとしてわからん

古泉「涼宮さんもきっと何か特別な存在なのですよ」


まぁ、あんな奴二人も三人もいられたら困るからな

古泉「ワクワクしてきませんか?」

キョン「いや、まったく」

古泉「素直じゃありませんね、あなたも」

ほっとけ、俺はもう行くぞ

古泉「はい、お付き合いいただいてありがとうございました」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 11:56:14.14 ID:Br+ElVGGO

古泉のくだらない妄想を聞かされてる内に結構な時間が経ってしまった

いかん、またハルヒにどやされる、とっとと部室に行かなくては
今日のあいつは不機嫌極まりないからな、ドロップキックぐらい喰らう羽目になるかも知れん

俺が自分の行く末に辟易しつつも部室へ向かうという器用な事を成し遂げると
以外なことにハルヒはいなかった、これは助かったのか?

まぁハルヒがいてもいなくても特にすることもないので
俺は朝比奈さんの入れてくれた煎茶を飲みながら
なんとなく、読書をする長門の姿を眺めていた


結局、その日ハルヒは部室に顔を出さなかった

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:00:15.63 ID:Br+ElVGGO

翌日

キョン「昨日はどうして来なかったんだよ?」

ハルヒ「うるさいわね」

昨日と同じく、不機嫌モードである

ハルヒ「一人で反省会してたのよ」

聞けばハルヒは昨日の放課後、市内探索を一人でやり直していたらしい

ハルヒ「何か見落としがあったんじゃないかと思って」

キョン「なぁ、見つけることの出来ない謎なんかすっぱり諦めてはどうだ?」

その方が俺としても助かる

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:04:23.61 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「・・・それでどうすんのよ」

キョン「SOS団は、適当なお遊びサークルにでもすればいい」

そうすりゃ、人も集まるだろうし、放課後のいい暇つぶしなるんじゃないか?

ハルヒ「いやよ」

一言で拒絶された

ハルヒ「そんなのつまんないからSOS団を作ったんんじゃない」

ハルヒ「なのになにも起こらないのは何故なのよ・・・?」

ハルヒは若干参っているように見える
弱気なハルヒはこういってはなんだが割合可愛かった
口が裂けても言わんがな

そしてこの時俺は一つの懸案事項を抱えていた

その懸案は朝、俺の下駄箱に入っていたノートの切れ端

そこには
『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室に来て』
と、明らかな女の字で書いてあった

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:11:16.75 ID:Br+ElVGGO

放課後
部室に行くと長門がいつものように本を読んでいた、朝比奈さんはまだ来ていないらしい

せっかくなので、この手紙について考えてみることにした

さて、どう解釈するか
まず浮かんだのは涼宮ハルヒである
ハルヒがなんらかの方法で俺の正体を突き止め、問い詰めるために呼び出した
いや、それはないだろう
ハルヒならまどろっこしいことをせずに直接殴りかからん勢いで尋問してくるはずだ

朝比奈さんってセンはないだろうか、また俺と未来談義に花を咲かせたいとか
それもどうかと思う
朝比奈さんならちゃんとした封筒と便箋で書いてくれそうな気がする
それにわざわざ一年五組の教室を指定しているのもおかしい

なら長門か?
ありそうといえばありそうではあるが、長門なら今目の前にいるではないか

さて、これはどうしたことか

結論
行けばわかる

俺は長門に「もう帰る」と告げ、部室を後にした

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:14:19.75 ID:Br+ElVGGO

人気のない廊下で深呼吸を一つ

ハルヒ、朝比奈さん、長門、ついでに古泉、その他諸々
様々な可能性を巡らせる中、頭の隅の方に常に一つの可能性が見え隠れしていた

もし、万が一中にいるのが敵ならばどうする?

・・・なんにせよ誰がそこにいようと驚くまい
と思っていたが引き戸を開けた時俺はそこにいた人物を目にしてかなり意表をつかれた
まるで予想だにしていなかった奴がいたからだ

朝倉「遅いよ」

朝倉涼子がそこにいた

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:17:19.36 ID:Br+ElVGGO

キョン「お前か・・・何の用だ?」

朝倉「ちょっと聞きたいことがあるの」

聞きたいこと、だと
宇宙、未来、超能力に関する質問以外なら答えてやらんでもないが

朝倉「人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うよね、これ、どう思う?」

キョン「いや、知らんが」

朝倉「じゃあさ、例え話なんだけど、現状を維持するままではジリ貧になることは解ってるんだけど」

朝倉「どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき、あなたならどうする?」

キョン「なんだそりゃ?」

何が言いたいんだ、お前

朝倉「とりあえず何でもいいから変えてみようと思うんじゃない?どうせ今のままでは何も変わらないんだし」

キョン「まぁ、そういうこともあるかもしれん」

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:20:45.77 ID:Br+ElVGGO

朝倉「でしょう?」

朝倉「でもね、その勇気がない人もいるの、でもそうしてたらどんどん良くないことになるかも知れないから」

朝倉「私が変革を進めちゃてもいいわよね?」

何を言おうとしてるんだ?この時代の地球ではこういうジョークが流行ってんのか?

朝倉「あなた、長門さんのことどう思ってるの?」


キョン「は?」

朝倉「だから、長門さんのことどう思ってるの?って」

なんでお前から長門の名が出るんだ

朝倉「いいから質問に答えてよ」

キョン「と言われてもだな」

俺が長門をどう思っているか?

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:24:44.45 ID:Br+ElVGGO

キョン「読書好きで、大人しい、引っ込み思案の眼鏡少女、とかか?」

朝倉「だいたい合ってるけど・・・それだけじゃないでしょう?」

キョン「なにがだ」

朝倉「可愛い娘だとは思わない?」


確かに、可愛い可愛くないで語るならば、長門は間違いなく可愛い部類に入るだろうが

キョン「それがなんだ?」

朝倉「・・・ここまで言ってもわからないの?」

生憎、他人の心を読む能力は持ち合わせてなくてな

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:29:22.89 ID:Br+ElVGGO

朝倉「最近、長門さんと話すと必ずあなたの名前が出るんだから」

キョン「何故お前が長門と話すんだ、知り合いなのか?」

朝倉「・・・突っ込むところそこなの?」

わかるように言ってくれないか?

朝倉「最近、ライバルも増えたみたいだし」

古泉のくだらない話よりもわかりにくい
いつかの朝比奈さんとの未来談義が懐かしい

朝倉「じゃあもうはっきり聞くけど」

そうしてくれ

朝倉「あなた長門さんのこと好き?」

はぁ?

朝倉「どうなの?」

どうもこうも、嫌いなわけがないだろう
好きか嫌いかで言えば前者だ、もともと嫌いになる理由なんかまったくない

148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:32:23.22 ID:Br+ElVGGO

朝倉「はぁ・・・そういうことじゃなくてね?」

朝倉は心底呆れたと言わんばかりの顔をしている

朝倉「じゃあもう言っちゃうけどね」

なんなんだ、さっきから
早く言えよ、回りくどい

朝倉「長門さんははっきりとは言わないけど、多分あなたのこと・・・」

が、俺は朝倉の言葉を最後まで聞くことはできなかった
突然、教室に乱入者が現れたからだ

長門「・・・なにしてるの」

朝倉「な、長門さん・・・!?」

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:37:29.95 ID:Br+ElVGGO

朝倉「そ、その・・・わ、私は長門さんの為を思って・・・」

朝倉の動揺がはっきりと見て取れる

長門「・・・朝倉さん」

なんだか不穏な空気が流れ始めているのを察知した俺は
沈み逝く船から逃げ出すネズミのごとくこの場から去ることにした

その間にも長門の「ひどい・・・」とか「どうして・・・」とか責める声が聞こえ
そのたびに朝倉の「だって」だの「あなたの為」だの言い訳めいた言葉が聞こえる

とりあえず込み入った話になりそうな気配だったので
廊下の二人の声が聞こえない位置で全てが終わるのを待つことにした

俺は多分、最善の選択をしたのだと思う

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:41:00.08 ID:Br+ElVGGO

長門と朝倉の様子からして、二人は知り合いらしいが
一体なんだというのか、何故俺はこんな所でこんことを

朝倉「あっ、長門さん!待って!」

長門「・・・!」

今、走り去って行ったのは長門だったよな

朝倉「ねぇ、長門さんがどっちにいったかわかる?」

キョン「あっちだが」

朝倉「ありがとう!それじゃあ!」

キョン「いや待て、何があったか説明ぐらいしてくれよ」

朝倉「それが・・・」


朝倉の話をまとめると、朝倉は長門の為に何かをしようとしたらしいが
それは長門の望むところではなかったらしい
それについてちょっとした口論になってしまい、その際に長門を傷つけるようなことを言ってしまった、と

それを語る朝倉の顔はまるでこの世の終わりみたいな顔をしている
長門を傷つけてしまったことがよっぽどショックだったらしい

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:43:42.95 ID:Br+ElVGGO

で、なんで俺はお前に呼ばれたんだ?

朝倉「・・・それ本気で言ってる?」

キョン「・・・?」

朝倉「・・・だから言ってるのよ、長門さん」

まぁ、よくわからないが
このまま長門をほっとくわけにはいかないってことだけはよくわかった

キョン「長門を探すぞ」

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:46:21.87 ID:Br+ElVGGO

俺と朝倉は校内を散々探し回った

が、長門が見つからない

部室、教室、グラウンド
めぼしいところは全て探したはずなのだが

下駄箱にはまだ長門の靴があったから、校外には出ていないとは思う

朝倉「どうしよう・・・」

そんな泣きそう顔をするな、長門は必ず見つかるさ
それから謝ればいい

朝倉「でも・・・」

喜緑「どうかされたましたか?」

そんな時俺達に一人の女性が声をかけてきた

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:50:17.72 ID:Br+ElVGGO

喜緑「ふふ、長門さんと喧嘩、ですか」

その女性は喜緑江美里さんと言う、おとなしく清楚な感じの二年生だった
話を聞けば朝倉と長門と喜緑さんは同じマンションに住んでおり、前々から交流があったらしい

朝倉「笑い事じゃないわよ・・・」

喜緑「ごめんなさい、珍しいこともあるんだなぁと思いまして」

ごめんなさい、などと言う割に喜緑さんは相変わらず笑顔のままだった

朝倉「もう・・・」

喜緑「長門さんなら屋上へ向かうのを見かけましたよ」

それをもっと早く言って欲しかった

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:54:31.19 ID:Br+ElVGGO

キョン「長門」

長門「・・・!」

いた
確かに喜緑さんの言う通りに長門は屋上にいてくれた

朝倉「な、長門さん・・・」

長門「・・・」

やはりここは俺がどうにかするべきなのだろうか、などと考え始めた時

朝倉「ごめんなさい!」
長門「ごめんなさい」

二人が謝ったのはほぼ同時であった

朝倉「私、長門さんの気持ちも考えず勝手なこと・・・」

長門「私こそ、朝倉さんは私の為を思ってやってくれたのに・・・」

どうやら俺が仲立ちする必要はなさそうなので、この場から離れることにしよう



にしてもあの二人が友達だったとは意外だったぜ

なんてことを考えながら俺は屋上へと続く階段の一番下の段に腰を下ろした

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 12:58:08.43 ID:Br+ElVGGO

あの様子ならすぐに仲直りできるだろうさ

・・・って、待て、俺は何をやっている
俺のやるべきことはもっと他にあるはずだろうが
こんなことやってる暇は本来ないはずなのだ

だが、俺はどうしても「関わらなきゃ良かった」
などと考えることができなかった

やはりハルヒの言う通り、俺はアホなのかも知れんな


165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:00:39.91 ID:Br+ElVGGO

喜緑「あなたが噂の彼ですか」

キョン「はい?」

いつの間にか、喜緑さんが俺の目の前にいて、優しげな微笑みを浮かべていた

喜緑「聞いた通りの方みたいですね」

喜緑さんは俺の何を聞いたというのだろう
悪い噂でないことを祈るばかりである

喜緑「どうですか?二人の様子は」

キョン「ああ、どうやら上手くいってるみたいですよ」

喜緑「ふふ、仲良くしてあげて下さいね」

キョン「・・・ええ、俺はそうしたいと思ってます」

「では二人をお願いします」と言い残し喜緑さんは行ってしまった
最後までその柔和な微笑みが崩れることはなかった

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:05:19.43 ID:Br+ElVGGO

朝倉「待っててくれたんだ」

話し合いが終わったらしく二人が屋上から戻ってきた
で、どうなったんだ

長門「・・・仲直りできた」

そうか、そりゃあよかったな
無事に問題が解決したらしいことに安心したところで、俺はある違和感を覚えた

長門と目が合った時、その違和感の正体に気づく

キョン「長門、お前眼鏡はどうした?」

長門「あ」

長門「・・・走ってる時に落とした」

いや気付くだろう、普通は

長門「・・・」

自分の失態に恥ずかしそうにしている長門に何か言ってやらねばと思った俺は

キョン「ないほうが可愛いと思うぞ?俺には眼鏡属性ないし」

などと言う妄言を口走っていた

すると長門の顔がみるみる内に赤くなり、俯いてしまった
ああ、いや、すまん、忘れてくれ、こら朝倉、笑うんじゃない

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:07:45.34 ID:Br+ElVGGO

朝倉「そう言えば長門さん、なんで私と彼があの教室にいるってわかったの?」

確かに俺も疑問だった
長門にも何らかの特殊能力があるのかと思ったぐらいだ

だが長門の答えは、ある意味予想の斜め上をいっていた

長門「喜緑さんが教えてくれた」

喜緑さんのあの優しげな笑顔が脳裏に浮かぶ
だが脳内の喜緑さんの笑みは若干意地悪なものに変わっていた

朝倉「喜緑さんは・・・もう・・・」

朝倉の脱力が見て取れる

キョン「いや、しかし無事に仲直り出来たみたいで良かったよ」

長門「あなたのおかげ」

いや、結局俺は何もしてはいないさ
俺がしたことと言えば無駄に校内を動き回ったぐらいだ

朝倉「そんなことないわ、感謝してる」

そうかい、まぁ悪い気はしないね

朝倉「それでお礼がしたいんだけど・・・・」

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:11:22.05 ID:Br+ElVGGO

長門「・・・」

現在、俺は長門の家で長門と二人っきりである

おいおいおい、何がどうなったらこうなるというのか

一旦、状況を整理しよう
俺は朝倉に「お礼に晩御飯をご馳走したい」と半ば強引にここまで連れて来られ
朝倉が「私の家で何か作って持って来る」などと言い出し
俺の「ならば初めからお前の家に招待してくれればいいだろう」という案が何故か朝倉に一蹴され

今に至る訳だ

長門「・・・」

何故だろう、はっきり言って気まずい

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:14:23.91 ID:Br+ElVGGO

長門の家は、駅前のマンションの一室であり、3LDKくらいだろうか
思ったより広い、けっこうな値段なんじゃないだろうか、ここ

長門の部屋を一言で表すなら「殺風景」だ

十畳ぐらいのフローリングにはカーペットも敷かれず、その木目を晒している
そんなリビングにはコタツ机が一つ置いてあるぐらいのもので、なんとカーテンすらかかっていない

俺は長門の入れてくれたお茶を飲みながら、生活臭のない長門の部屋を眺めていた


長門「ごめんなさい」

長らく続いた沈黙を破っのは意外にも長門の方だった

175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:18:11.76 ID:Br+ElVGGO

長門「無理矢理連れて来てしまって」

キョン「いや、そんなことはない」

確かに朝倉は少々強引であったと思うが、ハルヒのそれと比べれば可愛いものだ

長門の家にも少し興味があったしな

長門「・・・なにもなくて恥ずかしい」

いや、シンプルでいいんじゃないか?綺麗にしてるし

キョン「そういえば親とかは?」

長門「いない」

キョン「出かけてるのか?」

長門「初めからいない、私一人」

・・・どうやらいらん事を聞いちまったみたいだな、すまん

長門「今は海外にいる」

そっちかよ

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:21:29.06 ID:Br+ElVGGO

キョン「じゃあ一人暮らしなのか」

長門「そう」

キョン「偉いんだな」

長門「そんなことない、いつも朝倉さんや喜緑さんに助けて貰っている」

キョン「それでもだよ」

長門「・・・そう」

もしかして、照れているのか?
不覚にもそんな長門を可愛いと思ってしまった

そんな事を考えてしまった自分が少し気恥ずかしくなり、俺はつい長門から目をそらしてしまう

そらしついでにあるものが目に入る

キョン「やっぱり家でも本を読むんだな」

長門「読む」

殺風景な部屋の隅に本が何冊か積まれていた

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:24:35.43 ID:Br+ElVGGO

ラインナップは天体図鑑や宇宙論が云々とかいう小難しそうな本
果てはエイリアンがどうしたなど胡散臭い雑誌まである

ここで俺はあることに気付く
まさか長門、お前はひょっとして

キョン「宇宙が好きなのか?宇宙人とかそういうの」

俺の言葉を聞くと長門は顔を驚かせ
しばらくしてわかりやすいぐらい困惑した表情になり
最後に躊躇うような表情を見せた後に小さく頷いた

キョン「そうなのか」

ハルヒといい、朝比奈さんといい、古泉といい
本当にそういうのが好きな連中だな
ここで俺が正体を明かせば大人気なんじゃないかね

俺がくだらないことを考えている間も長門は俯いたままだ
先程の自分の返答を後悔しているようにも見える

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:28:00.36 ID:Br+ElVGGO

キョン「いいんじゃないか?」

別に俺は変には思わん
「変」ならば俺も負けてないぞ
なんたって朝比奈さんが憧れる未来の
お前の好きだという宇宙からやって来た
古泉がなりたいという超能力者なんだからな

長門「・・・笑わない?」

キョン「笑うわけないだろ」

そんなんで笑われるなら俺など常に爆笑の渦を巻き起こしてるぜ

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 13:31:57.91 ID:Br+ElVGGO

長門は迷子が両親に再会した時のように表情を変化させ
若干俺の希望的観測も混ざってはいるが、長門は少し嬉しそうにすら見えた

長門「あなたは」

キョン「ん?」

長門「宇宙人はいると思う?」

なんなんだ、これは
最近俺にこの手の話を振るのが流行ってるのか?
わかっててやってるんじゃないだろうな


宇宙に人はいるか?
またしても俺が明確な答えを持っている質問だ
はっきりと答えるわけにはいかないのも同じ

だが、この長門の顔を見れば「いるわけねーよ」などいう冷めた答えなんか求めていないことは明白だ

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:01:32.95 ID:Br+ElVGGO


キョン「いるだろうな」

別にこれぐらいはいいだろう?
実は俺がそうだなどとカミングアウトする訳じゃないんだから
この長門の期待の見え隠れした不安そうな顔を見れば誰でもこう答えちまうさ

長門「そう」

長門は俺をじっと見つめ、それから
薄く、だが、はっきりと微笑んだ

俺の発言は間違ってはいなかった、そう確信した瞬間だった


187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:08:03.22 ID:Br+ElVGGO

長門「私の両親はとても忙しい」

ぽつりぽつりと、長門は話し始めた

長門「家を空けることが多かった」

長門「私はいつも一人だった」

俺は適当な相槌を打つような気分にはなんとなくなれなかったので
長門の話を黙って聞くことにした

長門「そんな時、私はいつも空を見ていた」

長門「昼は青空を、日が沈んでからは夜空を」

長門「私はそれを綺麗だと思った」

長門「その内この空のさらに向こうには宇宙があることを知った」

長門「宇宙がとても大きいことを、とても広いことを知った」

長門「私はそれが美しいと思った」

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:14:09.90 ID:Br+ElVGGO

長門「宇宙はとても広い、そのことを知った時私は思った」

長門「そんなに広いなら、地球以外にも人がいる星があるんじゃないか、と」

実際いるよ
などとは言わなかった

長門「そんな人達なら」
長門「私と友達になってくれるんじゃないか、と」

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:19:33.09 ID:Br+ElVGGO

長門「それから私はいつも空を見ていた」

長門「宇宙についてもっと知りたかったから本をたくさん読んだ」

長門「その内、本も好きになっていった」

長門の本好きにそんな背景があったとは

長門「宇宙人に会いたいと思うようになっていた」

長門「朝倉さんや喜緑さんと出会って、私は一人じゃなくなったけど」

長門「宇宙への憧れは消えなかった」

長門「私は今も、宇宙人にいて欲しいと思っている」

長門「・・・変?」


191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:24:17.33 ID:Br+ElVGGO

いや、変じゃないさ
それどころか長門、お前の望みは叶っているのかも知れないぞ
お前が俺を友達だと思ってくれてるなら、な

もし長門の望みが叶っているとしたら、俺はそれを嬉しいと思う

いつになく饒舌な長門には少々驚かされたが
長門が俺に自分のことを話してくれたのが単純に嬉しかった
でも、長門何故俺にそんな話をしてくれるんだ?

長門「あなたには」

俺には?

長門「聞いていて欲しかった」

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:29:20.01 ID:Br+ElVGGO

長門「・・・聞いて欲しいことがもう一つある」

是非、お聞かせ願いたいね

長門「図書館で助けてくれたこと」

あの時のことか、あの時は正直お前のこと不審者かと思ったぜ

長門「嬉しかった」

そう言って貰えれば何よりだ

長門「あなたが部室に来た時、驚いたけど」

俺もハルヒに強制連行された時は驚いたぜ

長門「・・・嬉しいと思った」

何故に

長門「私はあなたが・・・」


ぴん、ぽーん


196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:34:35.40 ID:Br+ElVGGO

訪問者は両手で鍋を掲げ持った朝倉だった

朝倉「たくさん作ったから、ちょっと重かったわ」

鍋の中身はおでんのようだな
やたら遅いと思ったらそんなもん煮込んでやがったのか

朝倉「そんなもんとは何よ」

いや、ご馳走してくれるのは有り難いし、おでんも嫌いじゃない
だがわざわざ手間をかかるものをチョイスしなくともいいじゃないか

朝倉「時間はたっぷりかけた方がいいと思って、ね?長門さん?」

長門「・・・!」

なんのこっちゃ

朝倉「え?あれ?長門さん・・・まさか・・・」

長門「・・・」

朝倉「ごめん・・・でもなにやってたのよ・・・」

相変わらず朝倉の言うことはよくわからない

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:40:18.56 ID:Br+ElVGGO

朝倉お手製のおでんははっきり言ってメチャクチャうまかった

俺がおでんの予想以上のうまさに感動すら覚えている間にも
朝倉は「なにしてたのよ」とか「チャンスだったのに」とか責めるようなことを言い
そのたびに長門が「だって」だの「頑張ったけど」だの言い訳めいた言葉を返す

すごく最近に、似たような場面に出くわした気がする
若干、配役が違う気もするが

そんな既視感から始まった食事風景が一時間ほど続いた頃には、俺の舌も腹も満足していた


キョン「さて、そろそろ帰るよ」

朝倉「え?もう?」

キョン「ああ、あんまり長居するのも悪いし、家の者が心配するしな」

長門「そう」

キョン「おでん、うまかったよ、ごちそうさん」

朝倉「なんならまた食べに来てもいいのよ?長門さんの家に」

朝倉はどういう訳か悪戯っぽい笑みを浮かべている

まぁ、長門さえよければそうさせて貰いたいところだが

キョン「ああ、考えておくよ」

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:44:32.99 ID:Br+ElVGGO

俺が帰ろうと玄関に向かうと

長門が見送りに来てくれた

キョン「それじゃあな」

朝倉がリビングの方から手を振っている

キョン「長門、また明日な」

長門は微笑んで

長門「また明日」

おかげでいい気分で帰路につけそうだ


201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 14:48:15.80 ID:Br+ElVGGO

キョン「ただいま」

俺が家に帰ると食卓に突っ伏して居眠りしてる奴がいた

妹「・・・」

キョン「おい、起きろ、風邪引くぞ・・・ん?」

食卓には、明らかに俺の分と思われる食事が用意されていた

飯ならいらんと連絡したはずだぞ
俺は確かに電話でその旨を伝え「そうか」という愛想のかけらもない返事を聞いているのだが

キョン「・・・」

腹はいっぱいのはずなのだがな
どういう訳かまだ若干の余裕がある

キョン「いただきます」

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:00:05.40 ID:Br+ElVGGO

翌日の昼休み
俺はある人物に呼び出されていた
おかげ昼飯を食いそびれてしまったではないか
俺はうんざりしながらも指定された場所に向かう


キョン「なんなんだ、いきなり」

妹「すまんな、こんな所に呼び出して」

キョン「・・・なんだと?」

3年間、なんの進展もなかったと言うのに、何故ここへ来て

キョン「で、その人物は」

俺は、その人物の名を聞かされた時、愕然とした

告げられたその人物の名は

妹「涼宮ハルヒ」

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>>204ミスった] 投稿日:2009/06/25(木) 15:01:35.64 ID:Br+ElVGGO

翌日の昼休み
俺はある人物に呼び出されていた
おかげ昼飯を食いそびれてしまったではないか
俺はうんざりしながらも指定された場所に向かう


キョン「なんなんだ、いきなり」

妹「すまんな、こんな所に呼び出して」

俺が呼び出されのはグラウンドの端にある体育倉庫である

キョン「それで、なんの用だ」

妹「我々がこの時代へ来た目的は覚えているな?」

キョン「当たり前だろうが」

妹「その目的に関して、最重要人物たる可能性のある者が特定された」

キョン「・・・なんだと?」

3年間、なんの進展もなかったと言うのに、何故ここへ来て

キョン「で、その人物は」

俺は、その人物の名を聞かされた時、愕然とした
告げられたその人物の名は

妹「涼宮ハルヒ」

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:12:09.53 ID:Br+ElVGGO

キョン「冗談はよせ」

妹「冗談ではない」

じゃあ何か?
俺たちが3年かけてようやく探し当てたモノがハルヒだってのか?
俺があれだけやってようやく見つけたのがあんな奴一人だってのか

妹「まだその可能性がある、というだけだ」

そうだ、あいつなんかであってたまるかよ

妹「だが、今一番高い可能性だと言える」

キョン「・・・」

妹「涼宮ハルヒから目を離すな」

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:20:54.70 ID:Br+ElVGGO

キョン「・・・わかった」

妹「よし」

やること自体はこれまでと、そう変わらない
俺はあいつのそばにいて、あいつのやらかすことにいちいちツッコミを入れてやればいいんだ

妹「・・・お前の気持ちはわからなくもないが」

妹「くれぐれも目的を見失うなよ」

言われなくてもわかってる
俺達のやってきたことをむざむざ無駄にするような真似はしないさ
そうだろう?

妹「その通りだ、では」

俺はとっとと戻って昼飯にするとしよう
腹が減ってかなわんからな

210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:28:25.81 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「どこ行ってたのよ!」

キョン「いや、ちょっとな・・・」

―涼宮さんもきっと何か特別な存在なのですよ

古泉のくだらない妄言が思い出される
いやない、ありえない、あるはずがない、涼宮ハルヒは確かに破天荒な女ではあるが、あくまで普通の一般人であるはずだ

だが、俺は前々から疑問に思っていたことがある
SOS団のメンバー構成についてだ

まず長門有希
長門は宇宙を好きだと、宇宙人に会いたいと言った
次に朝比奈みくる
朝比奈さんは未来に対して憧れを抱いてると言った
そして古泉一樹
古泉は超能力者になりたいと言った

入学初日のハルヒの発言を反芻する

―宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい!

実際はどうだ?ハルヒの下に、奇しくも同じような願望を持つ者が集まった
ハルヒがそれを知っていたとは思えない、つまりは全て偶然なのである
だが、偶然にしては出来過ぎてはいないか?そして何より

俺は何故、ここにいるんだ

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:34:23.21 ID:Br+ElVGGO

長門は宇宙的、朝比奈さんは未来的、古泉は超能力的
そしてハルヒはそれら全てを求めた

そして俺はその宇宙的未来的超能力的存在である

これは本当に偶然か
本当に偶然なのか
偶然であってくれるのか


ハルヒ「なにぼーっとしてんのよ?」

キョン「いや、なんでもない」

そうだ、なんでもない、なんでもないんだ
こんなこと考えても仕方ない

俺がどうにかこうにかそんな結論に辿り着いた頃には、もう放課後になっていた

213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:40:41.29 ID:Br+ElVGGO

放課後といえば、文芸部室に集結するのが我らSOS団の慣習である

ハルヒ「あー、なんで不思議が見つからないのかしら・・・つまんないつまんないつまんない!」

何故、そこで不思議など存在しないという結論に至ってくれないのかね

ハルヒ「・・・ところで有希、眼鏡はどうしたの?」

その問いかけに長門はチラと俺を見た

長門「なくした」

実際、あの後校内中を探し回ったのだが、何故か長門の眼鏡は見つからなかった
不思議だ
おい、ハルヒ不思議があったぞ

ハルヒ「ふぅん」

ハルヒは長門と俺の顔を二、三度見比べてから、満足したのかしていないのかよくわからない声をあげた

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:46:10.23 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ「ねぇ、キョン・・・」

キョン「・・・なんだ」

ハルヒ「・・・やっぱり、なんでもない」

その時の俺は何度も頭に浮かんでくる一つの疑惑を抑え込むのに必死で、ハルヒの言葉などまるで耳に届かなかった
一つの疑惑、もしも、ハルヒが
やめろよ馬鹿、考えるだけ無駄だと判断しただろうが

長門を見る、いつものように読書をしている
読んでいるのは宇宙関連の本だろうか

朝比奈さんは、ハルヒに着せられたメイド服姿で俺と古泉の対局を興味深そうに見ている

古泉は自分のキングが窮地に追い込まれているというのに楽しげに笑っている

そして我らが団長はというと
どこから手に入れて来たかもわからないパソコンと不機嫌顔でにらめっこしている

いつもと変わらない部活風景だ
部活と呼んでいいのかどうかは甚だ疑問だがな
大丈夫、いつも通りだ

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:52:01.04 ID:Br+ElVGGO

いつも通りだったはずなのに、だ

なんなんだここは

暗い

思わず空を見上げる
空は暗灰色の雲に閉ざされている、いや、あれは雲なのか?
どこにも切れ目のない平面空間が広がっていやがる
太陽が見えない
その代わりというべきなのか、灰色の空が薄気味の悪い光を放って
かろうじて世界を悪黒に落とさぬように保っている

一言で表すならば

世界が灰色に染まっていた

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:56:53.65 ID:Br+ElVGGO

おかしい、俺は確かに家に帰り、飯を食い、風呂に入り
同居人と他愛のない会話を交わし、床についたはずだ

それが何故こんな見覚えのない空間に
いや待て落ち着け、見覚えならある
ここはどう見ても、俺の通う県立北高校ではないか

何が起きているんだ

古泉「おや、あなたもおられましたか」

キョン「・・・古泉?」

俺「も」?

みくる「ここどこなんですかぁ・・・」

長門「・・・」

なるほどな



218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 15:58:57.90 ID:Br+ElVGGO

キョン「ここがどこだかわかるか?」

古泉「北高でしょう」

そんなことわかってるんだよ、俺にもここが北高にしか見えん
俺が言いたいのはだな

古泉「どう考えても普通じゃありませんよね」

ああ、同感だな

みくる「私、家で寝てたはずなんですけど・・・」

長門「不気味・・・」

古泉達の姿を見て、ようやく自分が着ていたはずの寝間着ではなく、北高の制服に身を包んでいることに気付いた

どうやら夢という訳ではなさそうだが
だとしたら何故、寝てる間に制服に着替えさせられた挙げ句にこんな場所に運ばれているんだ
それもSOS団勢揃いで・・・いや、勢揃いではない

キョン「ハルヒは?」

この面子が揃ってて、何故あいつがいない?

古泉「そう思いまして辺りを探していたのですが見つかったのはあなただけでした」

どういうことだ
今の俺に言えることはここでこうしていても仕方ない、ということだ

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:00:19.53 ID:Br+ElVGGO

キョン「・・・何だこれ」

俺達が北高の門扉から足を踏み出そうとした時だった
俺の体が見えない壁にぶち当たった

それは他の三人も同じだったようで、似たようなリアクションをしている

古泉「出られないという訳ですか?」

みくる「裏門へ回ってみましょうか?」

長門「誰かに連絡を」

長門の提案で俺達は職員室へと向かった
どういう訳か誰も携帯を所持していなかったんでな
職員室なら電話ぐらい置いてあるだろう

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:10:18.20 ID:Br+ElVGGO

古泉「・・・通じていないようです」

職員室の窓をぶち破り中へと潜入した結果がこれだ

古泉が差し出す受話器を耳に当てる
何の音もしない、試しにダイヤルボタンを押してみても反応なしだ

朝比奈さんは驚きと困惑が入り混じった表情をしていたが
俺はそれほど驚かなかった、なんとなくそんな気がしていたからだ

さて、どうするか

224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:16:22.12 ID:Br+ElVGGO

その後、俺達は校内の電灯を次々に点灯させながら移動した
暗いよりはマシだろう、電気が通じていてくれて良かった

言うまでもなく、俺達以外の人間に出会うこともなかった
不気味な静寂に包まれた校舎に朝比奈さんが怯えていて
長門は不安気な表情で俺を見ている
古泉はというと、いつも通り笑っていやがった
若干、その笑顔が強張っているように見えるのは気のせいではないと思うが

試しに宿直室のテレビの電源を入れてみたが砂嵐が映し出されるばかりで
ラジオに至ってはノイズすら入らない

結局、どうしていいかわからなくなった俺達はSOS団の拠点、文芸部室へと足を運ぶことにした

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:21:53.20 ID:Br+ElVGGO

みくる「どうなってるんでしょうか・・・」

正直言って、わかりません
俺からみてもこれは異常過ぎます

長門「・・・」

大丈夫だ、長門
きっとなんとかなるさ
脱出したら浅倉に何か美味いものでも作って貰うといい

古泉「・・・こう言ってはあなたは怒るかも知れませんが」

僕は今、少しばかりワクワクしています、ってか?

古泉「おや、当てられてしまいました、超能力者の座も危ういですね」

ほぉ、随分と余裕あるじゃないか、だがあんまり無理すんなよ

古泉「・・・ありがとうございます」

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:27:54.97 ID:Br+ElVGGO

さて・・・どうしろってんだよ、俺に

俺は溜息を一つ
そして何気なく、本当に何気なく窓の外に視線を移した

窓の外を青い光が覆い尽くしていた

なんだ、あれは

中庭に、青く光る巨人の姿が見えた

それはあまりに巨大で、発光物質で出来ているかのように内部から光を放っている
輪郭もはっきりせず、目鼻立ちといえるものもない

古泉「・・・なんですか、あれ」

知らん

みくる「ふぇぇええ・・・!?」

朝比奈さん、落ち着いて

長門「・・・」

おい長門、意識はあるか?

謎の巨人の登場に三者三様のリアクションを見せている
俺はというと、今、自分に起きている現象に意識を奪われ、巨人に対してろくな反応が出来なかった

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:32:50.15 ID:Br+ElVGGO

キョン「逃げるぞ」

古泉「えっ?」

キョン「いいから早く!」

みくる「は、はい!」

俺は理解したのである、あれがなんであるのかを
これから何が起こるかを

あの巨人の姿を見た瞬間に

あの巨人は世界を壊すものだ
そして世界を創り変えるもの
それはまるで

キョン「・・・神」

あの巨人は例えるなら「神なる人」

神人だ

俺達は転がるように廊下に出た、と同時に轟音が鳴り響く、部室棟が揺れているのがわかる
衝撃の度合いからして、攻撃されたのは部室ではない、だが、間違いなくここも危ない

キョン「とりあえずグラウンドを目指すぞ!」

誰も異を唱える者はいなかった、俺達は走り出す

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:38:52.36 ID:Br+ElVGGO

古泉「なんですか・・・あれ・・・!?」

古泉がここまで動揺するのなんて初めて見たかもな

キョン「どうだ古泉、ワクワクしてきただろ?」

古泉「はは・・・勘弁して下さいよ」

古泉は苦笑する、苦笑でもなんでも笑えてるなら大丈夫だ

みくる「はぁ・・・はぁ・・・なに、が起こって・・・!」

どうやら、この愛らしい先輩は運動が苦手らしい
もう少しだから頑張って下さい

長門「・・・」

文学少女長門は意外にも運動は得意なのか辛そうには見えない
だが身体的には平気でも、精神的にはそうもいかないらしく、不安気な表情を隠せないでいる
俺は、大丈夫だからと、気休め程度にしかならない言葉をかけてやるしか出来なかった

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:44:16.85 ID:Br+ElVGGO

キョン「はぁ・・・はぁ・・・」

グラウンドに着いた
ここなら建造物の破壊に巻き込まれることはないだろう

俺が一安心したその時だった、巨人が俺達を見たのは
そう、巨人が俺達を見ているのだ
目すらないくせに、確かな視線を俺は感じた

キョン「・・・来るぞ」

巨人がこちらに方向転換するのが見える

古泉「これは・・・不味いんじゃないでしょうか?」

みくる「ど、ど、どうすれば・・・!?」

どうすればいいのか
俺はそれを知っている、いや、今さっき知った

キョン「古泉、ようやくわかったよ」

古泉「はい?」

キョン「超能力の使い方」

235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:50:16.08 ID:Br+ElVGGO

古泉「えっ・・・?」

わかったんだよようやく、この能力の意味が、俺が超能力者と呼ばれ、ここへ送り込まれた意味が

俺の身体から赤い光が滲みだし始める
オーラとでも言うべきか、まさにそんな感じだ

俺は不覚にも「ちょっとかっこいい」などと思ってしまった

赤い光はみるみるうちに俺の体を包み、球体を形作る

これ、外から見たらどうなってるんだろう
是非とも写真に収めて欲しい所ではあるが、今はそんな場合ではない

キョン「・・・やれる」

体がふわりと浮き上がるのを感じる
まさか俺が空を飛ぶことになるとは思いもしなかった

古泉「あの・・・これは一体・・・?」

だからお前の憧れの超能力者だよ

古泉「いや、そんな・・・だって・・・」

じゃあ行って来る

そう言って飛び去った俺はなかなかにかっこよかったと思う
自分のあまりスピードにかなりビビったのは俺だけの秘密だ

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 16:57:48.33 ID:Br+ElVGGO

巨人、俺は直感的に神人と名付けたが、こんな奴巨人で十分だ
近くで見るとその大きさがよくわかる
デカすぎるだろこれ、勝てるのかよこんなんに

だが、俺は理解してしまったのだ
この巨人を放置すれば世界は破壊され、また一から生まれ変わることになる
下手をすれば破壊されたまま終わりだ

そして今、それを阻止出来るのは俺だけなのだ、と

何故理解出来るのか?
わかってしまうのだから仕方がないだろう

238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:00:11.74 ID:Br+ElVGGO

戦い方もなんとなくわかる、この赤い光
この赤い光に包まれた俺こそが武器となる

正直、こんな化け物に特攻をかけるのは気が引けるが、やるしかない

キョン「おらぁ!」

果敢に巨人へと体当たりをするも、まるで手応えがなかった

クソ、もう一度だ

体当たりアタックを何度かかましてみるものの、突き抜けるばかりでダメージを与えられているようには思えない

ならば
俺は巨人の腕に取り付いて赤い光を纏った片手で巨人の腕に触れる
そのまま腕に沿って一周してやった

今度は手応えありだぜ
巨人の片腕が俺の攻撃で切断され、落下していく
と思いきや、青い光がモザイク状にきらめきながら、まるで雪が溶けるように消えていった

青い煙のようなものが切断部から滴っている
あれは血だろうか

俺は確信した
やれる

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:07:12.61 ID:Br+ElVGGO

俺は攻撃法を体当たりアタックから、切り刻み攻撃に変え巨大な青い光を切り刻む

この巨人は動きが緩慢なため、やっと自分のスピードに慣れ始めた俺には
もっと洒落た攻撃名称を考えようかなどと、くだらないことを考える余裕すらあった

巨人は俺に切り刻まれ、その身体を半分以上失ったと同時に崩壊を始めた
巨人は塵のように小さく分解され消えていく
そこには破壊された校舎の残骸が残るのみだ

終わった

俺は巨人の完全な消滅を確認した後

グラウンドへと向かった

あいつらは無事だろうか

巨人をグラウンドに近づけないことには成功したが、万が一という場合もある

だから変わらぬ三人の姿を見た時は心底ほっとした

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:13:55.59 ID:Br+ElVGGO

古泉「今のはなんなんですか?」

もはや古泉に笑顔はない、驚愕に好奇心をふりかけたような顔をしている

みくる「えっ、ええっ?」

朝比奈さんは何が何だかわからないといった様子だ

長門はというと

長門「凄い・・・」

まるでヒーローショーを観た子供みたいな表情だ
そんな長門の様子に俺は救われるものを感じた

さて、やはり話さねばなるまい
ここまで見られては仕方ないだろう
黙ってるなんて許されそうもないしな

本当はただ俺が、全てを話して楽になりたかっただけなのかも知れない

246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:19:13.25 ID:Br+ElVGGO

キョン「まず、俺はこの時間平面上の人間ではありません」

みくる「そ、それって未来人ってことですか?」

そうなりますね

みくる「あ、あ・・・」

あ?

みくる「握手して下さい!」

いや、いいですけどね別に
朝比奈さんがそれでいいなら

俺がそれっぽく「内緒ですよ?」と囁くと朝比奈さんは真面目な顔で「はい」と元気な返事をくれた

少し子供っぽいが可愛らしくていいね


247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:25:12.02 ID:Br+ElVGGO

キョン「で、だ」

俺は長門の方を向く

キョン「この星の人間でもない」

長門「・・・宇宙人?」

まぁ、そうなるな
少なくとも地球外からやって来た訳だし

長門「本当に、いた・・・」

長門ははっきりと見て取れるほどに嬉しそうだ

長門「・・・握手」

なにこれ、この星には不思議に出くわしたら、そいつと握手する慣わしでもあるのか

などと考えながらも俺が長門の手を握り返すと
長門は何かを思い出したように真っ赤になってしまった、何なんだ本当に
まぁ、長門が喜んでくれたのならそれでいいさ

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:31:13.52 ID:Br+ElVGGO

キョン「で、ついで超能力者だ」

古泉「もっとちゃんとしてくれてもいいじゃないですか、僕の記念すべき一瞬なんですから」

と、言われても
超能力を使ったのなど今日が始めてだからな

古泉「いやぁ、残念ですよ、結構本気で狙っていたものですから」

超能力者の座を、か?
残念と言う割には楽しそうじゃないか

古泉「それはもう、本物のエスパーと対面してるんです、楽しくない訳ないでしょう」

そうかい、もしかしたらお前もなれるかも知れないぜ?エスパーって奴に
俺の時も突然だったからな

古泉「ええ、これで確かな希望が持てますよ、あなたのような前例があるのであれば」

古泉「という訳で、握手です」

どういう訳だ

古泉「僕だけ流れに逆らうのもアレなので」

まぁ、それもそうだなと古泉の手を握り返してやった

251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:39:02.85 ID:Br+ElVGGO

キョン「まぁ、何にせよこれで一件落着だな」

待て

キョン「一時はどうなるかと思ったが」

気付け

キョン「みんなが無事で何よりだ」

馬鹿野郎が

キョン「・・・」

そうだ、気付け

キョン「・・・なぁ」


そうだ

ハルヒは

どこだ?

252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:45:53.21 ID:Br+ElVGGO

地面が揺れるのを確かに感じた
それとほぼ同時に部室棟の向こう側に青い壁が立ち上がってくるのが見えた

一つ、二つ、三つ・・・十を超えた辺りで数える気が失せた

キョン「どういうことだ・・・」

巨人は、神人は一体だけじゃないのかよ

妹「まだ終わりじゃないということだ」

キョン「お前・・・!」

どこから現れた?

妹「忘れたか、私も能力者だということを」

そういやそうだったな

妹「もっとも、この空間に侵入するのに今までかかってしまったがな」

とりあえず、手伝ってくれ
あいつらを片付けるぞ

妹「それは出来ない」

254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:51:29.10 ID:Br+ElVGGO

キョン「なんだと?」

妹「お前の任務はなんだ?」

俺の任務、俺がここに送り込まれた理由
忘れるものか

キョン「この時代から発生した異常な情報のノイズと時空歪曲の調査、及びそれらの発生の阻止」

古泉「なるほど・・・未来から過去を修正しにきたという訳ですね」

みくる「なんだかかっこいいです・・・」

妹「そして私の任務はなんだったか、覚えているな?」

ああ、忘れてたまるかよ
俺はずっとお前にその任務を果たさせないようにして来たんだ

キョン「・・・俺がそれらの任務に失敗した時」

俺はずっとその結末を避けるために、ためだけに

キョン「・・・この惑星ごとそれらの原因となり得る物を全て消滅させることだ」

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 17:57:27.72 ID:Br+ElVGGO

妹「その通りだ」

古泉「な・・・なに言ってるんですか・・・?」

俺はこの三年、調査を続けて来た

みくる「キョンくん・・・?」

そして三年の調査により
北高のある位置の座標がそれらの中心になっていることは判明した

長門「・・・」

だから俺は北高へ入学した
そして涼宮ハルヒに出会い、お前達に出会い

今に至る

259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 18:13:11.46 ID:Br+ElVGGO

だがな

キョン「俺はまだ失敗した訳じゃあない」

巨人を全員倒せばいい話だろう?
少しだけ待て、すぐに片付ける
お前が手伝ってくれたらもっと早く終わるんだがな

妹「無駄だよ」

なんだと?

妹「この空間をなんだと思っている?」

知るもんか

妹「これはな」

妹「涼宮ハルヒそのものだ」


261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 18:23:13.15 ID:Br+ElVGGO

は・・・?

妹「涼宮ハルヒがこの場にいないことを疑問には思わなかったか?」

そりゃ真っ先に考えたさ
だが、この空間がハルヒそのものってのはどういう意味だよ

妹「先にお前が述べた、過去に突如として発生した異常な情報ノイズ、時空歪曲」

妹「これらはあらゆる法則を無視し、我々の時代へと浸食しようとしている」

妹「これは知っているな?」

もちろんだ、知らなかったら
ここにいられる訳がないだろう

妹「つい、先程その原因が判明した」

なんだよ、それは
つまりそれをなんとかすればいいんだろう?

妹「その原因こそが、涼宮ハルヒだ」

263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 18:39:38.53 ID:Br+ElVGGO

おい、ふざけるな
一人の人間にそんな真似が出来る訳ないだろう

妹「涼宮ハルヒはただの人間ではない」

それを信じろってのか?

妹「信じるかどうかは勝手だが、もう止められん」

古泉「ちょっと待って下さい!」

古泉「意味がわからないし、笑えません!」

古泉「僕たちにもわかるように説明して下さい!」

落ち着け古泉

古泉「落ち着いていられる訳ないでしょう!?」


妹「このままではこの時代も、私達の時代も崩壊する」

やめてくれ

妹「どちらか一方でも残す為には」

それ以上言うな

妹「この時代の地球に消えて貰う以外はない」


265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 18:46:01.32 ID:Br+ElVGGO

古泉「ふざけないで下さい!」

古泉「あなた達は僕達に死ねと言うんですか!?」

だから、古泉、冷静に

古泉「だから冷静でいられる訳がないでしょう!?」

妹「他に方法がないんだ」

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 19:02:41.91 ID:Br+ElVGGO

キョン「だがわかっているのか・・・プログラムの起動には」

妹「ああ、わかっているとも、三年かけて地球全土に仕込んだ崩壊因子」

俺が調査をしている間もこいつは、地球を消滅させる準備をしていた

妹「そのトリガーは」

妹「私の死だ」

そう、万が一任務失敗し、俺達が死んだ時の為の措置

妹「出来れば発動させたくはなかったが、私にはもう止めることはできない」

妹「私のトリガーは未来の連中に握られているからな」

そして、万が一俺達が任務を放棄した時の為

未来に残った連中にもトリガーが与えられた

それがこいつの命
生かすも殺すもお偉方のさじ加減

どんな気分なんだ
常に誰かに命を握られるというのは

妹「未来を救うにはこの空間ごと消滅させるしか方法がない」

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 19:16:01.26 ID:Br+ElVGGO

しかし俺は、そんなもの認めない

認めてなるものか

だってそうだろうが

そんなの


妹「時間のようだ」

そいつはそう告げると
その場に崩れ落ちた



276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 19:27:00.16 ID:Br+ElVGGO

キョン「おい・・・!」

妹「本当はな・・・トリガーが私の命で良かったと思っているんだよ・・・」

そんなもんいいわけあるか

妹「初めてそれを聞いた時のお前も、そうやって激怒していたな」

当たり前だ、こんな命を命とも思わぬやり方なんぞ
俺達の未来が救われても
お前や、ここの連中が死んだら意味がないだろうが

妹「私も耐えられそうになかった・・・この世界中の人々を私が殺すんだぞ・・・?」

妹「そして私だけ生き残るなど・・・耐えられない・・・はは、勝手な話だよな・・・」

279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 19:34:47.10 ID:Br+ElVGGO

もういい、喋るな、苦しいんだろうが
今、なんとかしてやるから

妹「お前の妹としてここへ来て、お前の妹として日々を過ごし・・・」

妹「悪くなかったよ・・・お前の妹という役は・・・」

キョン「もういい・・・!」

妹「輪廻転生など信じてはいないがな・・・」

妹「もしも生まれ変われるなら・・・今度はお前の本当の妹に・・・」

妹「・・・お兄・・・ちゃん・・・」

妹「・・・」

282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 19:40:52.99 ID:Br+ElVGGO

おい
なんだよ
なにしてんだよ
なに泣いてんだよ、お前らしくない

ああ、そうだ
お前今初めてお兄ちゃんって呼んだな
何度言っても呼んでくれなかったのによ
なぁ、もう一度呼んでくれないか
なぁ
頼むよ
もう一度だけでいいんだ

もう一度だけでいい



目を開けてくれよ

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 19:46:36.91 ID:Br+ElVGGO

周囲が揺れて見えるのは気のせいか
視界が歪むのは崩壊の予兆か

ああ違うな
俺は泣いているんだ

なぁ、ハルヒ
涼宮ハルヒ
お前は、どうしてこんな


いや
そうじゃない
違うよなハルヒ
お前はこんなこと心の底から望んだりはしないはずだ
誰もこんなこと望んだりするはずがないんだ

まだだ
まだ、終わらない、終わらせない
プログラムが起動し、崩壊が開始するまでにはまだ時間があるはずだ

それまでにこの空間をなんとか出来ればあるいは

俺の妹を殺人者にしてたまるかよ

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 19:52:14.10 ID:Br+ElVGGO

俺は赤い光を身に纏う

古泉が何か言っていた

朝比奈さんが泣いていた気がする

長門は
俺は長門の顔をまっすぐ見られなかった

俺は神人を狩る
この力は、その為に
この世界の為に与えられたのだ

誰に?

決まっている
それこそ神とかいう奴だろうよ
なぁ、ハルヒ
神ってのはもしかしてお前のことなのか?
自分を止めて欲しくて、俺にこんな力を
なんてのは考え過ぎだろうか

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:00:01.84 ID:Br+ElVGGO

一体
二体
三体四体五体

やはり十を超えた辺りで数えるのを止めた

倒しても倒しても次が現れやがる

やはり神殺しの大罪を背負うには俺はあまりにちっぽけ過ぎたってのか

キョン「はぁっ・・・はぁっ・・・」

クソ駄目だ、このままじゃ保たない、仕方あるまい一旦降りよう

俺の足が地面についた瞬間だった
新たな一体が俺の目の前に出現したのは

そしてその巨大な拳が振り上げられるのを俺は見た

キョン「しまっ・・・!」

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:06:25.46 ID:Br+ElVGGO

巨大な拳は振り下ろされ、そこにあった全てを押しつぶし破壊する

だが、俺を襲ったのは違う衝撃だった

体に何かがぶつかったかと思うと、俺はその勢いで転がって拳から逃れることが出来た

俺がその瞬間に見たのは



古泉のいつも通りの微笑みだった





293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:12:32.22 ID:Br+ElVGGO

おい、嘘だろ
古泉
なぁ、古泉、
返事しろよ、おい

こんなのってあるかよ
ふざけるなよ

おい、古泉
古泉
古泉、古泉

なぁ、古泉
お前は何と言っていた?

あの時、古泉は俺に何かを言っていたはずだ
古泉、お前は俺になんと言った



―僕達の世界を、よろしくお願いします



295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:18:30.61 ID:Br+ElVGGO

やってやる
やってやるよ、化け物共が

お前ら、残らずぶっ潰して
それでハルヒを引きずり出して説教をかましてやる


みくる「キョンくん!頑張って下さい!!私達の世界をお願いします!!」

みくる「涼宮さんを・・・お願い・・・します・・・!!」

朝比奈さん、泣かないで下さいよ

長門「信じている」

長門「あなたにはまだ伝えたいこともある」

長門「死なないで」


ああ、長門わかってるよ、まかせとけ
お前が何を伝えたいかは知らんが、終わればなんだって聞いてやるさ


だから俺は
神とやら
お前を、殺す
そして我らが団長を取り返すんだ
世界を取り戻すんだ

297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:24:02.81 ID:Br+ElVGGO

青い巨人

お前らに用はない
お前らの攻撃なんか今更怖くねーんだよ

これで何体目だったか

青い光の消滅
そしと同じタイミングで新たな光が出現する

関係ないね

お前ら雑魚なんかどうでもいいんだ

もう何体目になるかわからない巨人の一体を消滅させた時

俺は世界が揺らぐのを感じた


崩壊が、はじまった

299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:32:01.78 ID:Br+ElVGGO

世界の崩壊

校舎が音も立てず塵と化して消えていく
校庭に植えられた木がまるで陽炎のようになる
灰色の空が
地面が
アスファルトが
コンクリートが


朝比奈さんと
長門が
消えていく

待ってくれ、朝比奈さん
行かないでくれ、長門

まだ、終わりにするには早すぎるだろう
信じると言ってくれたじゃないか

みくる「・・・」」

長門「・・・」

何故笑っていられる、何故死のその瞬間に笑えるんだよ
なんでなんだよ、なんでこんなことになるんだ

キョン「・・・どうしてだよ・・・」

300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:39:18.12 ID:Br+ElVGGO

ハルヒ

聞いてるか

お前の大切な団員達が消えちまう

団長ならなんとかしてくれよ

だいたいお前が不思議空間そのものになってどうするよ

一緒に不思議空間で遊ぶんじゃなかったのかよ

なんだよ、この化け物共
数多すぎるだろ、考えろよ
こっちは一人なんだぞ

あれだ、ハルヒ
超能力者はたくさんいるべきだな
古泉なんかはどうだ?やりたがっていたし

なら宇宙人は長門で決まりだな、結構そういうの好きらしい

もちろん朝比奈さんは、未来人さ
素敵な未来からやって来るんだ

俺?俺か
俺は疲れたよ


303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:46:08.60 ID:Br+ElVGGO

だいたい宇宙的未来的超能力的要素を全て俺におしつけるな
一人であんなもんこなせるかよ

俺は普通がいいよ

俺は普通の一般人でさ

そうそうもちろんそんな俺には飛びっきり可愛い妹がいるんだよ

それで時々巻き込まれるような感じでいい

俺はそれぐらいが丁度いいんだ

普通の俺なら
もっとSOS団を素直に楽しめるかも知れないし
お前に協力的になるかも知れない
うん、まぁ、望みは薄そうだがな

これでも楽しかったんだぜ、お前らと一緒で

あぁハルヒ
俺ももう限界みたいだ

ハルヒ
またみんで
一緒に



その日、一つの世界が終わりを迎えた

305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:51:03.47 ID:Br+ElVGGO



妹「キョンくん、朝だよー!」

キョン「ぐはっ!」

俺の朝は大概、我が妹のボディープレスで始まる

キョン「普通に起こせと言っとるだろうが」

妹「えへへー」

もっと惰眠を貪りたいのはやまやまだが、入学初日から遅刻する訳にもいかんからな


今日、俺は北高に入学する

そこで珍妙な女と出会い
宇宙人、未来人、超能力者と知り合い
どんどんややこしいことに巻き込まれていくのは

また別のお話




311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/25(木) 20:56:21.83 ID:Br+ElVGGO

これだけは知っておいて欲しいんだけど



俺、途中でウンコ漏らしてるからね



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