39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:02:44.98 ID:ZqgP9dzq0
人気が絶えた廊下で、俺は深呼吸一つ。窓は磨りガラスなので中の様子はうかがえないが、西日でオレンジ色に染まっていることだけは解る。俺はことさら何でもなさそうに一年五組の引き戸を開けた。
誰がそこにいようと驚くことはなかったろうが、実際そこにいた人物を目にして俺はかなり意表をつかれた。まるで予想だにしなかった奴が黒板の前に立っていたからだ。
「遅いよ」
朝倉涼子が俺に笑いかけていた。
清潔そうなまっすぐの髪を揺らして、朝倉は教壇から降りた。プリーツスカートから伸びた細い足とソックスがやけに目に付く。
教室の中程に進んで歩みを止め、朝倉は笑顔をそのままに誘うように手を振った。
「入ったら?」
引き戸に手を掛けた状態で止まっていた俺は、その動きに誘われるように朝倉に近寄る。
「お前か……」
「そ。意外でしょ」
くったくなく笑う朝倉。その右半身が夕日に赤く染まっていた。
「何の用だ?」
わざとぶっきらぼうに訊く。くつくつと笑い声を立てながら朝倉は、
「用があることは確かなんだけどね。ちょっと訊きたいことがあるの」
俺の真正面に朝倉の白い顔があった。
「人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うよね。これ、どう思う?」
「よく言うかどうかは知らないが、言葉通りの意味だろうよ」
「じゃあさあ、たとえ話なんだけど、現状を維持するままではジリ貧になることは解ってるんだけど、どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき。あなたならどうする?」
「なんだそりゃ、日本経済の話か?」
俺の質問返しを朝倉は変わらない笑顔で無視した。
「とりあえず何でもいいから変えてみようと思うんじゃない?どうせ今のままでは何も変わらないんだし」
「まぁ、そういうこともあるかもしれん」
「でしょう?」
手を後ろで組んで、朝倉は身体をわずかに傾けた。
「でもね、上の方にいる人間は頭が固くて、急な変化にはついていけないの。でも現場はそうもしてられない。手をつかねていたらどんどん良くないことになりそうだから。だったらもう現場の独断で強硬に変革を進めちゃってもいいわよね?」
何を言おうとしているんだ? ドッキリか? 俺は掃除用具入れにでも谷口が隠れてるんじゃないかと思って、教室を見渡した。隠れやすそうな所は、あと教卓の中とかか。
「何も変化しない観察対象に、あたしはもう飽き飽きしてるのね。だから……」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:04:30.23 ID:ZqgP9dzq0
キョロキョロするのに気を取られて、俺はあやうく朝倉の言うことを聞き漏らすところだった。
「あなたを犯して涼宮ハルヒの出方を見る」
惚けているヒマはなかった。後ろ手に隠されていた朝倉の右手が一閃、俺のズボンのベルトを鈍いナイフが薙いだ。
猫を膝に抱いて背中を撫でているような笑顔で、朝倉は左手でスカートを振り払った。小学生に人気がありそうな可愛らしい柄のパンツだ。
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:07:38.24 ID:ZqgP9dzq0
俺のズボンがまだ落ちていないのはほとんど僥倖だ。その証拠にベルトは切られ、ズボンはホックも外れて前はがら空きで、
しかもパンツの盛り上がりがアホ面で朝倉の姿を見上げている。へたり込んだままマウントポジションを取られたら逃げようがない。慌てて両手で前を隠す。
……いや、待て。この状況は何だ?なんで俺が朝倉にズボンをズリ下げられなければならんか。待て待て、朝倉は何と言った? 俺を犯す? ホワイ、なぜ?
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:09:32.84 ID:ZqgP9dzq0
「冗談はやめろ」
こういうときには常套句しか言えない。
「マジ興奮するって! それがバックプリント系のお子様パンツだとしても勃起するって!」
もうまったくワケが解らない。解る奴がいたらここに来い。そして俺に説明しろ。
「冗談だと思う?」
朝倉はあくまで晴れやかに問いかける。それを見ているとまるで本気には見えない。
笑顔でパンツを脱いでいる女子高生がいたら、それはとてもエロいと思う。と言うか、確かに今俺の子はめっちゃ硬い。
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:10:57.90 ID:ZqgP9dzq0
「ふーん」
朝倉はパンツを手に俺の肩を叩いた。
「イクのっていや? 犯されたくない? あたしには有機生命体の避妊の概念がよく理解出来ないけど」
俺はそろそろと立ち上がる。冗談、シャレだよな、これ。本気だったらシャレで済まされんが。だいたい信じられるわけないだろ。
別に泥沼化したあげくこっぴどく振った女でもなくクラスでもロクに喋りゃしない真面目な委員長にそのパンツ嗅がされるなんて、本気の出来事だと思えるわけがない。
「意味が解らないし、笑えない。いいからその危ないのをどこかに置いてくれ」
「うん、それ無理」
無邪気そのもので朝倉は教室で女子同士かたまっているときと同じ顔で微笑んだ。
「だってあたしは本当にあなたの子が欲しいんだもの」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:17:05.46 ID:ZqgP9dzq0
俺のに手を添えた姿勢で覆い被さってきた。速い!が、今度は俺にも余裕があった。朝倉が動く前にとっさに身をひねり、後ろの方に突っ込もう──として、おれは壁に激突した。
?????
穴がない。シワもない。後ろにあるべきくぼみは、まったくの脇の下さながらにつるんとしていた。
ありえない。
「無駄なの」
上方から降ってくる声。
「この空間は、あたしの情報制御下にある。おしりの方は封鎖した。簡単なこと。
この惑星の有機生命体なんて、ちょっと分子の結合情報をいじくってやればすぐに改変出来る。今のこの教室は密室。出ることも入ることも出来ない」
振り返る。夕日すら消えている。校庭側の窓もすべてコンクリートの壁に置き換わっていた。知らないうちに点灯していた蛍光灯が赤みがさした朝倉の皮膚を照らしている。
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:20:40.74 ID:ZqgP9dzq0
嘘だろ?
薄い影を俺に落としながら朝倉はゆっくりと迫ってくる。
「ねえ、あきらめてよ。結果はどうせ同じ事になるんだしさあ」
「……何者なんだ、お前は」
何回見ても壁は壁でしかない。立て付けの悪かった引き戸も磨りガラスの窓も何もない。それとも、どうかしちまったのは俺の頭のほうなのか。
俺はじりじりと腰をねじらせて朝倉から少しでも離れようとする。しかし朝倉は一直線に俺のに向かってきた。
おっかけっこは長くは続かず、おれはたちまちのうちに教室の端に追いやられた。
こうなったら。
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:22:00.58 ID:ZqgP9dzq0
足に引っかかったままのズボンの縁を思い切り引っ張りあげてやった。ズボンは俺の膝の手前でズタズタになるとそこらに散らばって、脱げた。そんなアホな。
「無駄。言ったでしょう。今のこの教室はすべてあたしの意のままに動くって」
待て待て待て待て。
何だこれは。何なんだこれは。冗談でもシャレでも俺か朝倉の頭が変になったわけでもないとしたら、いったいこれは何だ。
あなたを犯して涼宮ハルヒの出方を見る。
またハルヒか。人気者だな、ハルヒ。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:25:36.99 ID:ZqgP9dzq0
「最初からこうしておけばよかった」
その言葉で俺は身体を動かせなくなっているのを知る。アリかよ!反則だ。
チンコが樫の木にでもなったみたいに微動だにしない。手もパラフィンで固められたみたいに上がらない。それどころか指一本動かせない。下を剥いた状態で固定された俺の身体が、朝倉の中に入っていく。
「あなたがイ、けば、あっ。必ず、涼宮ぁっ……ハぁっ……ルヒは んっ 何らかのぉ……っ アクショッンッを起こすぅ……。
た……多分、はぁ、大きいわ…… んっ いえ、大きな情報爆発が……観測……出来るはず……。またとない、ぃいっ機会だわっ」
もう知らねえよ。
「じゃあイって」
朝倉が動きを早める気配。どこがうねっているんだろう。PC筋か、骨盤底筋か。解っていてもそろそろ我慢の限界だ。せめて目を閉じ……れない。なんつうこっちゃ。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:30:56.84 ID:ZqgP9dzq0
その時。
天上をぶち破るような音とともに瓦礫の山が降ってきた。コンクリートの破片が俺の頭にぶつかって痛えなこの野郎!
降り注ぐ白い石の雨が俺の身体を粉まみれにして、この分じゃ朝倉も粉だらけだろう、しかし確認しようにも身体がピクリとも……あれ、動く。
顔を上げた俺は見た。何を?
俺の青筋立った今にも吹き出そうとしているチンコを入り口で挟んで驚きの表情で静止する朝倉と、
間に割って竿の部分を素手で握りしめている──素手でだぜ──長門有希の小柄な姿だった。
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:34:56.95 ID:ZqgP9dzq0
「一つ一つのプログラムが甘い」
長門は平素と変わらない無感動な声で、
「天井部分の空間閉鎖も、音声封鎖も甘い。だから私に気付かれる。侵入を許す」
「邪魔する気?」
対する朝倉も平然たるものだった。
「この人間に妊娠騒動が起きれば、間違いなく涼宮ハルヒは動く。これ以上の情報を得るにはそれしかないのよ」
「あなたはわたしのバックアップのはず」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:39:29.54 ID:ZqgP9dzq0
長門は度胸のような平坦な声で、
「独断先行は許可されていない。わたしに従うべき」
「いやだと言ったら?」
「結合を解除する」
「やってみる?ここでは、わたしのほうが有利よ。この教室はわたしの情報制御空間」
「肉体結合の解除を強行する」
言うが早いか、長門は竿を握ったまま手を上にスライドさせた。チンコは引き抜かれ、体液が紅茶に入れるガムシロップのように、粘着質な音を立ててこぼれ落ちていく。
「!」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:42:52.45 ID:ZqgP9dzq0
チンコを抜かれて朝倉はいきなり五メートルくらい後ろにジャンプした。それを見て俺は、ああ、この二人本当に人間じゃないみたいだな、とか悠長なことを思った。
一気に距離を稼いだ朝倉は教室の後ろにふわりと着地。微笑みは変わりない。パンツ、忘れていってるぞ。
空間がぐにゃりと歪んだ。としか言いようがない。朝倉も机も天上もまとめて揺らぎ、液体金属のように変化する様が見て取れたが、よくは見えない。
ただその空間そのものがカルピスのように凝縮する、と思った瞬間、長門のかざした掌の前で液体が爆発したことだけが解った。
間髪置かず、長門の周囲で次々と液体が炸裂しては飛び散る。空間を凝めたアレ状の液体が視認不可能な速度で俺たちを襲い、
長門の手が同様の速度でそのすべてを迎撃していることに気付いたのは、しばらくたってからのことだった。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:47:40.53 ID:ZqgP9dzq0
「離れないで」
長門は朝倉の攻撃を弾きながら片手で俺のチンコを掴んでしごき倒し、屈み込んだ俺に長門が乗っかる様な体勢で膝をついた。
「絞り尽くせば朝倉涼子の計画は頓挫」
俺の頭を見えない何かがかすめて、黒板をデロデロに汚した。
「うわっ!」
長門がチラリと俺を見上げる。その刹那、長門の口の中に俺のチンコが吸い込まれる。残像だけを残す高速前後運動。
「この空間ではわたしには勝てないわ」
まったくの余裕という表情で朝倉はすぐ横に佇んでいる。数センチメートルの間を挟んで長門と対峙。俺はと言うと、情けないことに長門の口の中に一発吐き出してしまった。
「不十分、残量がある」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:51:08.42 ID:ZqgP9dzq0
長門は口をそのままに俺の頭をまたいでいた。生真面目にも白いパンツの隅に小さく名前を書いているのがこいつらしい。
小説を朗読するような口調で長門は何かをつぶやいた。やばい、振動がやばい。
「フェフェフフォ フィフィファム フォーフォ フフォム フェーファフェーム フェマー フォームフェーファ フォーマーフォファミ
フォウフェフィフェムフォーフォムフォー ファミムフ ファームィフェームァームォームォ。
ファーフォマムフェーム ファファムファミョームォ ォ フェミフェーフォファンフェー フォウマイフォウフォウフォフーフィファファフェフェ」
俺の頭の中はもうまともな状況ではなくなっていた。何もかもが幾何学模様と化して湾曲し、渦を巻いて踊っている。
見ていると酔いそうだ。まるで遊園地のビックリハウスに乗っている様な視覚効果。目が回る。
「あなたの機能停止の方が早いわ」
さっきのを聞き取れたのに驚きだ。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:53:59.98 ID:ZqgP9dzq0
俺の頭の中は極彩色の蜃気楼で、それに紛れた朝倉の声がどこから聞こえてくるのか全然解らない。
ジュク、と泡立つ音。
長門の舌が俺のを思い切り絞り上げた。
「なにす」
る、と言いかけた俺の尿道を精液が通過。脳みそがめくれ上がりそうだ。
「そいつを絞りながら、いつまで持つかしら。じゃあ、こんなのはどう?」
次の瞬間、俺の目の前に立ちはだかっていた白い布が長門の顔に取って代わっていた。
「…………」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:56:27.16 ID:ZqgP9dzq0
つまり、朝倉は俺と長門に向かって同時に多方向から攻撃を加え、その内のいくつかを破裂させて無効にしたものの、
迎撃しきれなかった何かが俺のモノを襲い、俺を守るために長門は自分の性器と俺の性器を結合させた、ということだったのだが、
この時の俺にはそんなことを知るよしもなかった。
長門の顔からメガネが落ちて、床で小さく跳ねた。
「長門!」
「あなたは動かないでいい」
股間から子宮口にかけてがっつりと突き刺さった俺のチンコを一瞥して長門は平然と言った。
鮮血が長門の股間に小さな池を作り始めている。
「へいき」
いや、ちっとも平気には見えねえって。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 02:58:33.03 ID:ZqgP9dzq0
長門は眉一つ動かさずに身体に刺さったチンコを引き抜いて、また戻した。
しめった音を立てて包み込まれたチンコは、数瞬のうちにグラインドする動きへと変わる。一体全体なんだ。
「あなたが代わりに妊娠しても、騒動には変わりないでしょ?じゃ、とどめね」
揺らぐ視界の向こうに、朝倉の姿が見え隠れする。笑っている。両手が静かに上がり──俺の見間違いで
なければ、指先から二の腕までがまばゆい光に包まれて二倍ほどに伸びた。いや、二倍どころか──。
「イきなさい」
朝倉の腕が、さらに伸び、触手のようにのたくって突出、前後からの同時攻撃、動けない長門の小柄な身体
が揺れ……。長門の中に白くて温かい液体が飛び散った。
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 03:01:55.96 ID:ZqgP9dzq0
俺と長門を縛り付けるようにまとわりついた朝倉の左腕と、俺のケツを貫いた右腕が、俺の前立腺をなで回してようやく止まっていた。
長門の身体から吹き出した精液が白い太ももを伝って床の血だまりにマーブル模様を描いていく。
「終わった」
ポツリと言って、長門は俺の手に指を絡ませた。やっちまった。
「終わったって、なんのこと?」
朝倉は勝ちを確信したかのような口調。
「その人間の、一年足らずの学生生活が?」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 03:08:39.36 ID:ZqgP9dzq0
「ちがう」
これだけの運動を済ませながら長門は何も無かったように言った。
「情報連結解除、開始」
いきなりだ。
教室のすべてのものが輝いたかと思うと、その一秒後にはキラキラとした砂となって崩れ落ちていく。俺の横にあった机も細かい粒子に変じて、崩壊する。
「そんな……」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 03:12:28.62 ID:ZqgP9dzq0
天井から降る結晶の粒をあびながら、今度こそ朝倉は驚愕の様子だった。
「あなたはとても優秀」
長門の体中にかかった精液も砂になる。
「だからこの空間にプログラムを割り込ませるのに今までかかった。でももう終わり」
「……侵入する前に崩壊因子を仕込んでおいたのね。どうりで、あなたがエロすぎると思った。あらかじめ攻性情報を使い果たしていたわけね……」
同じく結晶化していく両腕を眺めながら朝倉は観念したように言葉を吐いた。
「あーあ、残念。しょせんわたしはバックアップだったかぁ。この騒動を最後まで見届けられると思ったのにな」
朝倉は俺を見てクラスメイトの顔に戻った。
「わたしの負け。よかったね、長門さんを孕ませて。でも、気をつけてね。統合思念体は、この通り、一枚岩じゃない。相反する意識をいくつも持っているの。
ま、これは人間も同じだけど。いつかまた、わたしみたいな急進派が来るかも知れない。それか、長門さん自身が意見を変えるかも知れない」
朝倉の胸から足はすでに光る結晶に覆われていた。
「発覚するまで、涼宮さんとお幸せに。じゃあね」
音もなく朝倉は小さな砂場となった。一粒一粒の結晶はさらに細かく分解、やがて目に見えなくなるまでになる。
さらさらと流れ落ちる細かいガラスのような結晶が降る中、朝倉涼子という女子生徒はこの学校から存在毎消滅した。
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 03:13:54.84 ID:ZqgP9dzq0
とすん、と軽い音がして、俺はそっちへ首をねじ曲げ、長門が倒れているのを発見して慌てて立ち上がった。
「おい!長門、しっかりしろ、今保健室へ、」
「いい」
目を見開いて空を見上げながら長門は、
「卵子の制御は難しい事じゃない。正常化しないといけないのは、まずこの空間」
砂の崩落が止まっていた。
「不純物を取り除いて、教室を再構成する」
見る間に教室が生まれてくる。こうして生で見ていなければ良く出来たCGだと思ったろうな。たいしたもんだ。魔法としか思えない。
俺はまだ寝ている長門の脇に屈み込んだ。
「本当に妊娠しないのか?」
俺の伸ばした手に、案外素直にすがりついた。上体を起こしたところでわずかに唇を開いた。
「大丈夫」
「……そうか、なんつーか、残念だな」
2ミリほど頷いて見えたのは気のせいではないだろう。
「すこしだけ」
……ほらな。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 03:16:23.63 ID:ZqgP9dzq0
終