ハルヒ「ファイアーエムブレムって面白いわね!」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:21:03.71 ID:tPTlxybP0

キョン「ファイアーエムブレム?」

ハルヒ「そう、古泉君が持ってたの」

さっきからDSに夢中だったがそういうことか。確か初代のリメイクが出てたな、って・・・

キョン「・・・なぜ今更封印の剣なんだ?GBAだろそれ」

ハルヒ「いいじゃない、面白いんだから。あ、レベル上がった」

まあ、とにかくこれで今日一日の平穏は確保された訳だ。

PCもあいているしのんびりネットサーフィンでも・・・

ハルヒ「ねえ、キョンがFEのキャラだったら、クラスは何だと思う?」

キョン「・・・は?」

ハルヒ「ソシアルナイト、アーマーナイト、戦士・・・どれもしっくり来ないわね。無難な所でアーチャーかしら?

    有希はもう決定してるし、みくるちゃんと古泉君は・・・」

話の流れがまずい方へ向かっている、俺はそう確信した。

世界が暗転し、次の瞬間俺は小高い丘の上に立っていた。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:23:07.36 ID:tPTlxybP0

ごめん、前の中途半端に落ちたから。16章まで書き溜めありだけど途中から張るべきだろうか

キョン「どういうことだよ・・・」

つい先ほどまで来ていた制服はどこへ消えたのか。

足には飾り気のない実用性重視のブーツ、シャツは薄手だが、左肩から心臓にかけて鎧が装着されている。

右の腰には矢筒、左手には俺の身長に近い大きさの弓矢。どう考えても戦場での出で立ちだ。

丘から下を見下ろせば、つい先ほどまで人が住んでいたのであろう村が炎を上げている。

キョン「これはまさか・・・」

???「ええ、そのまさかです」

後ろからガシャガシャとけたたましい音を立てて、分厚い鎧が歩いてくる。

???「どうやら僕たちは、ファイアーエムブレムの世界に入り込んでしまったようですね。

    ここは第一章、山賊がフェレの城を襲撃する話です」

キョン「古泉か?」

古泉「はい」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:25:05.12 ID:tPTlxybP0

キョン「さて、説明してもらおうか」

古泉「涼宮さんがファイアーエムブレムにはまってまして・・・」

キョン「それは知ってる」

古泉「それなら後はいつもの通り。ここは改編された世界です」

キョン「やっぱりな・・・」

よりによって悪いゲームにはまってくれたものだ。

キョン「古泉、貸すならもう少し安全なゲームを貸してやれ。

    何が悲しくてスマブラDX参加者で唯一童貞喪失(殺人)してる奴らの世界に来なきゃならんのだ」

古泉「すいません、僕も失敗だったと思っています」

キョン「まあいい、ところで、なんでお前がアーマーナイトなんだ?」

古泉「初期メンバーを揃えるためでしょう。あちらを見て下さい」

古泉が指をさした方向には・・・

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:27:05.16 ID:tPTlxybP0

国木田「谷口、てやり持ってきた?」

谷口「げっ、忘れてきた・・・」

国木田「しょうがないなあ。戦場での忘れ物は命取りだよ」

キョン「谷口と国木田・・・あいつらも巻き込まれたのか」

古泉「はい、彼等はシリーズ恒例の”赤と緑”です」

キョン「谷口がパワーファイターの方か」

古泉「それからあちらが・・・」

新川「どうも、通りすがりのパラディンです」

キョン「何やってんですか」

新川「いえ、これも機関の意向です」

キョン「まあ、突っ込みませんよ」

新川「お気づかいありがとうございます」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:29:36.22 ID:tPTlxybP0

キョン「長門や朝比奈さんはいないのか?」

古泉「おそらく、シナリオが進めば登場するでしょう。どのキャラの位置で出るかは分かりませんがね」

キョン「長門がいれば楽なんだがな。俺は体力にそこまで自信は無い」

古泉「いえ、どうやら、個々人の身体能力にも修正が加えられているようです。

   そうでなければ、僕がこんな鎧を着て歩きまわれるはず無いでしょう?」

そう言えばそうだな。谷口と国木田も実に見事に馬を乗りこなしている。

だが、俺はどうなんだ?そもそも弓なんて引いたことも無いんだが。

キョン「なるようになる・・・のか?ならなきゃ困るが」

赤に緑にアーマーにアーチャーにパラディン、初期の面子はそろったな。という事は・・・

キョン「ロードはあいつか」

古泉「はい」

ハルヒ「全軍突撃!山賊を蹴散らすわよ!!!」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:31:12.06 ID:tPTlxybP0

何処から湧いて出たのか分からない軍勢をひきつれて、青いマントを羽織ったハルヒが丘を駆け下りていく。

古泉「ほら、あなたも進軍してください。アーチャーは孤立するとあっさり死にますから」

キョン「お、おう」

駆け降りた勢いそのままに山賊に突撃する。烏合の衆と正規の軍では勝負にもならず、あちらこちらで山賊が倒れていく。

軍勢の先頭に立つハルヒは、斧の一撃を華麗に回避しながら、レイピアで確実に山賊を仕留めている。

谷口と国木田はその機動力を生かし、二人で十人の山賊を相手にしていた。

俺はと言えば・・・

キョン「ていっ」

山賊「ぐわっ」

キョン「うりゃっ」

山賊「ぎょへっ」

古泉の陰に隠れ、地道に山賊を一体一体弓で打ち抜いていた。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:33:27.72 ID:tPTlxybP0

キョン「しかし、なんか戦場の割に悲壮感が無いな」

古泉「よく見て下さい。切られた人から血飛沫が上がっていません。

   それに、戦場に死体も残っていません」

キョン「どういう事だ?」

古泉「涼宮さんが望んでいるのは、『壮大で爽快な戦争』なのでしょう。『陰惨で残酷な戦争』の描写は望んでいないのでしょうね。

   ゲームの世界を体験したいだけで、殺し合いを体験したいわけでは無いという事です」

キョン「要は、リアルだと残酷だからフィルター掛けてますってことか」

正直その措置は有りがたい。リアルな描写をされたら、朝比奈さんならショック死しかねないからな。

しかし、この感覚は何か覚えがあるような・・・ ひらひらと動き回るハルヒを見て思いついたことを尋ねる。

キョン「古泉、お前、FEの他にもハルヒに何か貸したか?」

古泉「実は『三國無双』のシリーズを」

キョン「成程」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:35:39.05 ID:tPTlxybP0

この世界には、「剣→斧→槍→剣」の三すくみというものがあるようだ。

ハルヒ率いる・・・フェレ軍?は、剣と槍が中心の軍隊、山賊は斧を使っている。

相性の問題もあってか、山賊はボスを残してあっさり全滅した。

キョン「敵将はどんなやつだ?」

古泉「ダマスという男です。典型的な力自慢ですね。涼宮さん一人でも十分倒せる相手ですが・・・」

キョン「何だ?何かあるのか?」

古泉「まあ、最前線まで行ってみてください」

キョン「・・・?まあ、別にいいけどな」

あまり戦闘力の高くない俺が何か役に立つのか?そう思いながら行くと、そこには信じられない光景が待っていた。

ハルヒ「はい次は国木田ね!レベル6くらいになったら交代して!」

敵の大将ダマスが、切られては放置され刺されては放置されを繰り返していたのだ。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:37:33.89 ID:tPTlxybP0

キョン「ハルヒ、何やってるんだ?」

ハルヒ「あらキョン遅かったじゃない!何ってレベル上げよ、見て分からないの?」

キョン「俺はそこまでFEをやりこんでいない」

ハルヒ「城門や砦にいる敵はね、一定の間隔で体力を回復するのよ。だから適当にダメージを与えて経験値を稼いだら回復を待つ。

    これを繰り返せば序盤から結構レベルの高い軍が作れるのよ!」

ゲームシステムまで再現しているとは思わなかった。城に籠っているからと言って切られた傷が回復するか?普通。

ダマスはもう傷だらけになって泣いているが、国木田は冷静に切りつけては回避を繰り返している。

キョン「なあ、いつまでやるんだ?」

ハルヒ「後はキョンでおしまいよ。城門から相手は動かないから、じっくり狙って打ちなさい!」

なんだか可哀想になってきたが、俺も一応レベルは上げておきたい。矢を番え、片目を瞑る。

キョン「どれくらいやればいい?」

ハルヒ「そうね、レベルあと3つくらい上げておいて」

ダマス「頼むからもうとどめを刺してくれー!」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:39:11.88 ID:tPTlxybP0

古泉「終わったようですね。それでは、城に入りましょうか」

キョン「流石に罪悪感もあるが」

城門を制圧したハルヒと兵士たちがときの声を上げている。

キョン「そういえば新川さんは?」

古泉「残っていた村の警護をしていたようですね。そろそろ戻ってくるでしょう」


新川「只今戻りましたよ」

ハルヒ「遅かったわね。収獲は何かあった?」

新川「5000Gほど頂きました。てつの剣に換算すれば10本分以上ですな」

ハルヒ「それは凄いわね!レイピア一本じゃ心もとないし」


キョン「レベルがやたらと上がってしまったな」

古泉「これで後々楽になりますからね。」

キョン「しかし谷口があそこまで頼りになるとはな・・・あいつはずっとこの世界にいた方がいいんじゃないか?」

谷口「涼宮ー、20人は倒したぜ。恩賞は無いのか?」

国木田「一応僕たちは仕えてる身なんだから、そういう事は言わないでおこうよ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:41:33.45 ID:tPTlxybP0

キョン「ところで、俺は封印の剣をプレイしたことが無いから設定が分からないんだが」

古泉「ご安心ください。涼宮さんにお貸しする前にあらゆる情報を集めてあります。

   まずこの軍ですが、諸侯同盟であるリキア同盟の一角、フェレ家の軍隊です。

   涼宮さんの位置は『ロイ』。フェレ家の嫡男で、この話の主人公です」

キョン「なるほど、いかにもハルヒの好みそうなポジションだ」

古泉「僕の位置は『ボールス』。リキア同盟の盟主オスティア家につかえる騎士です。

   オスティア侯の娘が遊びに来ている関係でここにいます。

   オスティア家とフェレ家は当主同士が長年の親友で・・・」

キョン「ああそれぐらいでいい。今全部聞いても理解できないからな。話が進むごとに少しずつ解説してくれ。

    ひとつだけ聞くが、俺はどういう位置のキャラだ?」

古泉「主人公ロイの乳兄弟『ウォルト』ですね。攻撃の命中率はそこそこなのですが非力。

   会話イベントも少なく、非常に目立たないキャラです」

キョン「おい」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:44:08.52 ID:tPTlxybP0

古泉「ですが、ロイ・・・涼宮さんとは幼いころから最も親しくしているキャラです。

   あなたにはピッタリの役柄ではないでしょうか」

キョン「もうどうでもいいな。で、ハルヒはどこだ?」

古泉「父親のエリウッド様と面会中です。あ、戻ってきましたよ」

ハルヒ「キョン!ベルン国境に進軍するわよ!」

キョン「はあ?唐突に何なんだ?うわっこら耳ひっぱるな痛たたたた!」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:45:17.62 ID:tPTlxybP0

古泉「というわけで、僕も行ってきますのでオスティア侯にお伝えすることは?」

佐々木「お父様なら僕が心配する事は無いだろうね。それより彼女をしっかり守ってあげてくれ」

古泉「はい、お任せ下さい」

佐々木「僕はもう戻るよ。統治者がいなければ民は混乱するばかりだからね」


ハルヒ「という訳でベルンと戦争することになったの」

キョン「ベルン?」

古泉「東の軍事大国です。つい最近リキア同盟に攻撃を開始しました」

ハルヒ「でも今の私たちだけでは手勢が足りないわ。だから傭兵団を雇ったの。

    国境線近くで合流することになってるわ」

キョン「国境近くって・・・危険じゃないのか?」

ハルヒ「同盟軍の本隊も国境線近くにいるんだもの。時間の節約よ」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:47:32.58 ID:tPTlxybP0

キョン「そんなこんなでー、軍事大国との国境線近くに来てしまいました」

古泉「どうしました?目が死んでしまってますよ」

キョン「危険地帯にもほどがあるだろう。山のすぐ向こうに城あるし」

古泉「あれは国境を守るための城ですね。城主は確かルードという男です」


ルード「ギネヴィア殿下にお変わりはないか?」

兵士「はっ。ご命令通り、地下の一室で監視しております」

ルード「よし、ついでに荒縄か鎖でがっちり縛り上げておけ。後で見に行くぞ」

兵士「だっ大丈夫でしょうか。このようなことをして・・・」

ルード「心配するな。今、我が国に敵対する勢力はいくらでもある。

    ベルン国王の妹姫・・・どこに引き渡しても遊んでくらせる金を払ってくれるだろうて」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:49:09.48 ID:tPTlxybP0

兵士「・・・・・・」

ルード「それに妹キャラってよくね?お付きのシスターも美人だったし胸大きいし。

    あ、シスターの方も一緒に縛っとけ。あとで楽しむから」

兵士「はっ はい。・・・ですが、そのご計画には一つだけ問題が・・・」

ルード「? どういう意味だ?」

兵士「先ほど・・・ギネヴィア殿下付きのシスターが逃げ出したとの報告が・・・」

ルード「なんだとっ!?わしのささやかな夢を無にする気か!?

    急いでさがすのだ、決して逃がしてはいかんぞっ!」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:51:20.18 ID:tPTlxybP0

???「助けてくださ〜い」

キョン「あの間延びした声と遠距離かつゆったりした服装でも分かる胸は」

古泉「ご名答」

みくる「あ、あのっ、リキア同盟の方の軍ですよね?」

ハルヒ「そうよ。どうしたの?そんなに慌てて」

みくる「私が仕えてる人がリキア同盟の人に会うために来たんですけど、

    あのお城の城主に捕まっちゃったんです」

ハルヒ「分かったわ。私たちがあの城を落して、その人を助ければいいのね」

キョン「お、おい!ここで戦いを始めてどうする!まだ傭兵団とも合流・・・」

ハルヒ「私に会いに来た人が捕まったんでしょ?なら私が助けるわよ。全軍突撃!」

古泉「悲しいですが、ゲームもこれとほぼ同じ理由で開戦します。一応向こうが先に攻撃してきますが」

キョン「本当かよ・・・」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:53:18.30 ID:tPTlxybP0

キョン「朝比奈さんの役柄は?」

古泉「僧侶の『エレン』ですね。穏やかで心優しい女性です。序盤では貴重な回復役ですよ。

   非常に打たれ弱いので、しっかりと守って差し上げて下さい」

キョン「それは壁役のお前の仕事だ」

古泉「僕の移動力では、前線に出る事も多い回復役に追いつくのは大変なんですよ」


ハルヒの号令で突撃したのはいいのだが、山と山との間に小さな砦があった。

騎馬隊と重装備の騎士が多い俺たちの軍はどうみても攻城戦に向いていない。

まさか俺の弓が一番戦果を上げることになろうとは思わなかった。

ハルヒ「ああもう!これじゃどうしようもないわね。あの山の上に援軍でも来ないかしら」

キョン「おいおい、それは流石に・・・」

こういう時は来るんだよな。しかも砦を攻めるのに適した軽装の部隊が。

斧を持った大男が二人とペガサスに乗った女の子が一人、それから傷だらけの男が一人。

どうやら傷だらけの男がその集団のリーダーらしい。砦に梯子をかけさせるとするすると登っていく。

ハルヒと同じ、最前線で闘うタイプのリーダーのようだ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:55:10.46 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「凄いわね、あれが私たちの雇った傭兵団かしら?」

キョン「そうなんだろうな。うおっ、こんどは二人同時に切り倒した」

ハルヒ「私達も続くわよ!一気に砦を抜いちゃいなさい!」

山の上からの奇襲に混乱していた砦は、これまでの苦労は何だったのかというほどあっさりと陥落した。


古泉「やれやれ、鎧が傷だらけですよ」

キョン「お前の防御力はさすがだな。矢の集中砲火を受けてたのに無傷とは」

古泉「そのためのアーマーナイトですから」

キョン「朝比奈さんもよく頑張りました」

みくる「ふうー・・・走り回ってばっかりで疲れましたぁ」

ハルヒ「ちょっとみんな、まだ城が落ちてないわよ。まあ、もう落ちたようなものだけど」

城の兵は殆どを砦に回していたらしく、城の周りには歩兵が数十人しかいなかった。

城門前には中間管理職の悲哀を感じさせる鎧の男が立っている。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:57:27.61 ID:tPTlxybP0

ルード「やっとツキが転がりこんできたというのに・・・

    ロリ巨乳のシスターと妹キャラが同時に手に入ったというのに・・・くそうっ」

キョン「なんかどうしようもないなこいつ」

古泉「ですが、アーマーナイトですから防御力は高いです。下手な武器では傷も付きませんね」

ハルヒ「どうしたらいいと思う?」

新川「ご安心ください、これを。そこの村で頂いたアーマーキラーです。これを使えばあの鎧も貫けるでしょう」

キョン「なんでただの村人がこんなものを?」

ハルヒ「細かい事はいいわ。じゃ、谷口よろしく」

谷口「えぇ!?なんで俺!?」

ハルヒ「だって一番力のステータス高いの谷口でしょ」

国木田「谷口がんばれー」

キョン「頑張れよー」

谷口「ほかにも力の強い奴はいるだろ!?あの傭兵の人とか!?」

みくる「谷口君頑張ってくださーい」

谷口「行ってきまーす!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 08:59:57.15 ID:tPTlxybP0

ルード「ぐっ・・・ 欲をかくと・・・ロクなことに・・・ならんな・・・」

キョン「何かを悟ったな」

城を落とした俺たちは、負傷者の治療のため休憩をとった。

この世界で朝比奈さんが仕えている女主人は「ギネヴィア」と言うらしい。

驚いたことにベルンの国王の妹だそうだ。リキアとベルンを和解させる方法を探りにきたらしい。

ギネヴィア「・・・と言う訳ですので、どうか・・・」

キョン「ハルヒ、どう思う?」

ハルヒ「私は構わないわ。リキア同盟の本隊まで連れてってあげるわよ」

キョン「いや、この人を連れてって、俺たちは誘拐犯扱いされないか?」

ハルヒ「この人が自分で来たんだから問題ないでしょ?」


ハルヒ「あなたはディークって言うのね。よろしく」

ディーク「ああ、よろしく。しっかし、10代の女が軍を率いてるとはな・・・」

ハルヒ「年齢も性別も関係ないわ。重要なのは能力の有無よ!」

ディーク「確かにそうだな。俺の部下にもあんたぐらいの歳の女がいるんだ。よろしくやってくれ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:02:19.14 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「アラフェン城まで、後半日ってとこかしら?」

キョン「アラフェン城?」

古泉「リキア同盟軍の主力が集まっている城ですよ」

伝令「報告!報告!」



ハルヒ「ほぼ全滅・・・?」

伝令「はっ。ベルン三竜将の内の二人、ブルーニャ将軍、ナーシェン将軍率いる軍に強襲され、

   ほぼ全ての部隊が壊滅。盟主ヘクトル様は捕えられたとのことです」

キョン「まずいな・・・ハルヒ、ここは一旦軍を返した方がいいんじゃないか?」

ハルヒ「だめよ。オスティア侯の生死の確認だけでもしなきゃ」

???「ヘクトル様なら生きていますよ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:04:30.31 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「本当に!?」

喜緑「間違いありません。ベルンの兵士が城の中に連れていくのを見ました」

キョン「喜緑さん、城の内部の状況は分かりますか」

喜緑「はい。・・・助けに行くつもりならやめておいた方がいいですよ。

   主力部隊は撤退したようですが、それでも城内にはまだ結構な数の軍が残っています。

   この少数の兵では死にに行くようなものですよ」

ハルヒ「それは分かってるわ。だけど、今オスティア侯を失う訳にはいかないの。

    大国との戦争では、軍の支柱となる人が必要なのよ。ベルンに比べたら烏合の衆同然の、リキア同盟なら尚更ね。

    それに主力部隊は撤退したんでしょ?それなら勝ち目は有るわよ」

喜緑「そうですか・・・なら、私も付いていきます」

キョン「いいんですか、喜緑さん?」

喜緑「はい、ちょうど会いに行きたい人もいましたし。扉や宝箱の鍵開けは任せてください」

ハルヒ「それじゃあ、みんな行くわよ!出来うる限りの最大速度で進撃!」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:05:24.83 ID:tPTlxybP0

キョン「さて、恒例となった、古泉の解説タイムだ。ほら、古泉」

古泉「喜緑さんの位置は盗賊の『チャド』です。戦闘能力は低いですが、鍵開けやアイテムを盗むなどの補助行動に長けています。

   けっして後半咬ませ犬になることはありませんよ」

キョン「チャド違いだな」

古泉「ちなみに『チャド』は少年ですが、そこは気になさらないでください」

キョン「三竜将ってのは?」

古泉「四天王や五虎将と同じようなものです。正式な官職の名ですけどね」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:06:46.11 ID:tPTlxybP0

喜緑「今この城の中にいるのは、ナーシェン将軍。三竜将の一角にして天下一のナルシストです」

ハルヒ「それはどうでもいいわよ」

喜緑「城内に残っているのは騎兵部隊が多いようです。傭兵団の斧使いを中心に進むべきですね」

キョン「でも、三竜将の一角ってことは相当手強いんでしょう?勝てますか?」

喜緑「多分大丈夫です」


ナーシェン「スレーター!スレーターはいるか!」

スレーター「はい、ここに。お出かけですか?」

ナーシェン「ああ、リキア諸侯の裏切りものどもが私におもしろい土産を用意したらしい。

      なんでも エトルリア貴族の娘だとか・・・まだ幼さを残しているがかなりの美形らしい」

スレーター「それは楽しみでございますね。道中、くれぐれもご用心を」

ナーシェン「スレーターもリキアの残党どもに足元をすくわれないように。

      そんなことになったらこの私が八つ裂きにしてしまうよ」

スレーター「せめて石抱きか海老反り責めで止めてください」


喜緑「ナーシェンはサボり癖が有るようですから」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:08:15.17 ID:tPTlxybP0

喜緑「城の外に孤児院があるんです。ちょっと様子を見てきたいのですが、護衛を頼めますか?」

谷口「はい、俺が!」

ハルヒ「国木田よろしく」

国木田「OK」

谷口「おーい・・・」

ハルヒ「あんたは城攻めの主戦力なのよ。力あるし結構体力あるし。

    私とキョンと一緒に城の南の方で頑張って」

古泉「僕はどうしましょうか?」

ハルヒ「中央に陣取って少しづつ進んで。傭兵団の人たちも一緒に向かわせるわ」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:10:20.64 ID:tPTlxybP0

喜緑「大丈夫でした?ほかの子たちは怪我してませんよね?」

長門「無事。エリミーヌ教団に預かってもらう事になった」

喜緑「よかった。それで、あなたは何でここに残ってたんです?」

長門「あなたと同じ理由。私も闘う」

喜緑「・・・無理はしないで下さいよ。ところで、もう一人は?」

長門「わからない。でも、どこかで必ず生きている」

喜緑「そうですね。あのあまのじゃくさんにも早く会いたいです」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:12:12.14 ID:tPTlxybP0

城内戦なのに騎兵が左右に駆け回っている。なんともカオスな戦場だ。

あんまり槍が長いのでたまに味方同士で絡まっている奴までいる。

こいつらが本当に正規兵なのか?

とりあえず俺は極めて冷静に、壁に引っ掛かっている敵兵を矢で打ち抜いている。

キョン「なんか・・・意外に楽だな」

ハルヒ「そうね。なんだか拍子抜けしちゃうわ」

古泉「伝令からの報告によると、主将ナーシェンはどこかへ移動。

   現在の主将はその部下のスレーターという男、兵士はその手勢のようです」

キョン「つまり、残ってるのは大したことのない部隊だけってことだな」

ハルヒ「なら急いで片付けるわよ!ディークさんよろしく!」

ディーク「おう!アーマーキラーは借りてくぜ!」

スレーター「ま 負けはせんぞ!も、もし負けたら・・・

      蝋燭責めか逆さ吊りかそれとも鉄の処女か・・・」

キョン「ベルンの将軍ってのはこんなのばっかりなのか?」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:14:23.53 ID:tPTlxybP0

スレーター「お、おゆるしをナーシェンさまぁ・・・!」


キョン「オスティア侯はどうだった?」

ハルヒ「・・・」フルフル

キョン「そうか・・・」

古泉「架空の世界とは言え、自分の主君。いささか辛いですね・・・」

ハルヒ「・・・オスティアに行くわよ」

キョン「えっ?」

ハルヒ「理由は道中で話すわ。全軍、オスティアに転進!この城は放棄して構わないわ!」

キョン「お、おいちょっとハルヒ!」

古泉「・・・ここは何も言わないでおきましょう。

   この世界では、涼宮さんの父とオスティア侯は無二の親友。両家は家族のような間柄でした。

   いまの涼宮さんにとってのオスティア侯の死は、家族の死とほぼ同様なのでしょう」

キョン「そうか・・・」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:16:20.31 ID:tPTlxybP0

キョン「長門!お前も仲間に入ったのか」

長門「この世界の情勢は把握した。私の能力は制限されているが、魔道書を媒介に発動が可能」

古泉「これでSOS団は揃いましたね。暫くすれば涼宮さんも落ち着くでしょう。

   それまでは傍にいてあげて下さい」

キョン「分かった」

古泉「あなたが『ウォルト』である意味、よく考えて下さいね」

キョン「ああ、よく分かってるよ」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:18:08.20 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「もう大丈夫よ。心配かけたわね」

キョン「ああ、無理はするな。それで、俺たちは何でオスティアに向かってるんだ?」

ハルヒ「オスティア侯が言い残したの。ベルンは『竜』を復活させているって」

キョン「竜・・・!?」

ハルヒ「そうよ。ドラゴンナイトが乗ってるような飛竜じゃなく、本物の『竜』」

キョン「どうやったらそんなことが出来るんだよ?」

ハルヒ「分からないわよ。ただ、ベルンは昔、竜達が栄えた土地。

    ベルンの王家は八神将の一人ハルトムートの末裔、関係があるかもしれないと言っていたわ」

キョン「どうするんだ?そんな化け物」

ハルヒ「『オスティアには竜に通用する武器もある』そう言っていたわ。今はそれを信じましょう」

キョン「ああ」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:20:36.05 ID:tPTlxybP0

ナーシェン「エリック卿か。ベルンへの帰順、なにより。して、手土産はどこだ?」

エリック「そう焦らずに。別室に用意してありますとも。ただ、多少幼いのが難点ですが」

ナーシェン「馬鹿者っ!お前は何も分かっていないな!成熟し切っていないからこそいいんだ!

      いいか、もう未来のない初老共に何の価値がある?まだ細い手足や膨らみ切っていない胸・・・」

エリック「も、申し訳ございません・・・」


本格的な軍隊との、初めての大規模な戦闘だった。

ラウスの主戦力は俺達と同じ騎馬隊、質ではこちらが上だが数では負けている。

一度に複数を相手にしないよう、ひたすら動き回っての戦闘が続いた。

谷口「おい国木田、そっちを頼む!」

国木田「僕だって手が一杯だよ」

新川「私にお任せ下さい」


ハルヒ「計算外ね。まさか新川さんまで動員しなきゃならなくなるなんて」

ハルヒ「・・・あら?何かしら。城から誰か出てきたわ・・・」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:22:12.19 ID:tPTlxybP0

キョン「ふう、矢を補給しなきゃな。いったん輸送隊の所まで戻って・・・」

クラリーネ「ちょっと、そこのあなた!」

キョン「ん、俺か?」

クラリーネ「ほかに誰がいますの?リキア同盟の方ですわね?」

キョン「ああ、そうだが・・・」

クラリーネ「ちょうどいいですわ。あなた、私を護衛しなさい」

キョン「はぁ?」

クラリーネ「聞こえませんでしたの?私を護衛しなさいと言ったのです」

どこかで見たような奴だな。

キョン「要は、城の連中に追われてるから助けてくれと、そういう事だろ?」

クラリーネ「ま、まあ、そういうことですわね」

キョン「んじゃ、この軍のリーダーの所まで連れていくから、後はそっちで交渉してくれ」

正直こいつとハルヒを対面させるのはどうかとも思うが仕方ないだろう。

見たところ回復の杖も持ってるし、役に立たないという事は無いだろうからな。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:24:05.38 ID:tPTlxybP0

みくる「キョンく〜ん」

キョン「朝比奈さん、どうしたんですか?」

みくる「さっき涼宮さんの所にきた人が、涼宮さんと喧嘩を始めちゃったんです」

キョン「あー・・・」

みくる「古泉君がどうにかなだめてるんですけど・・・」

キョン「・・・まあ、古泉なら大丈夫でしょう」


新川さんと赤緑のおかげで、だいぶ戦況は好転してきた。

だが、そんな戦場にふらりと一人の男が現れた。

遠くから見ると不健康なほどに細く見えるのは服のせいだろうか。

数人の兵が男を取り囲んだ、その瞬間、兵士たちは地面に倒れこんだ。

キョン「なんだあいつ・・・」

ディーク「あー、ルトガーだな。俺と同じ傭兵なんだが・・・あいつと殺り合いたくはなかったぜ。まあ、仕方ねえな」

キョン「あんたがいくのか?」

ディーク「俺じゃなきゃ無理だ。あのお嬢ちゃんでも無理だな」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:26:26.96 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「キョン!クラリーネとかいう女が来なかった!?」

キョン「いや、さっきお前の方に行ったろ?」

ハルヒ「来たわよ!仲間になってやるだの護衛しろだの偉そうに・・・

    しかも、城のほうを見たと思ったら何も言わずに走って行ったわ!」

キョン「あん?よく分からないな」

ハルヒ「私だって分からないわよ!」


俺とハルヒは最前線へと出た。ラウスの騎馬隊はもう半壊状態だった。

遠くを見れば傭兵が二人、にらみ合いを続けている。

そこに近づいていく一つの影。

ハルヒ「あの女、見つけたわ!キョン、文句を言ってやるわよ!」

キョン「え?っておい、俺を最前線に引きずり出すな、聞いてるのか!?」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:28:06.98 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「あれ?」

ルトガー「この軍は、ベルンと敵対しているのか?」

クラリーネ「ええ、ハルヒというリーダーからそう聞きましたわ」

ルトガー「・・・よし、分かった。お前たちと共に闘ってやる。それで文句はないだろう」

クラリーネ「大事なのは『ベルンと戦う』ことではなく『私を守る』ということですわ!」

ハルヒ「何があったの?」

ディーク「そこのお嬢さんが、そっちの無愛想野郎を仲間にしちまったんだよ」

ルトガー「いくぞ、ディーク。もう場内は手薄のはずだ」

ディーク「おう、さっさとケリを付けるぞ」


ハルヒ「ふん、なかなかやるじゃない」

クラリーネ「私の力が分かりましたわね?ならばこれからは私の護衛に回りなさい」

ハルヒ「あなたの力は関係ないじゃない。でも、そうね。キョンより上の立場になら、してあげてもいいわ」

キョン「おい、俺の立場は?」

ハルヒ「知らないわよ、そんなの」

クラリーネ「知りませんわ、そんなこと」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:30:26.58 ID:tPTlxybP0

古泉「では、城にはナーシェンがいたのですね?」

クラリーネ「そうですわ。あの男、私を地下牢に閉じ込めましたの」

古泉「ですが、城内に残っていたのはエリック卿のみだったと」

ディーク「ああ、そいつを打ちとったら、他の兵士は抵抗を止めちまった」

古泉「ふむ、どこかで城を抜け出していたんですね。アラフェンが落ちたという情報が届いたんでしょうか」

キョン「意外に早いな。俺達も全速力でここまで来たのに」

古泉「アラフェンを落とした後、その場で悲嘆に暮れていれば、

   おそらく僕たちはナーシェンの部隊に蹂躙されていたでしょう。

   涼宮さんの迅速な決断のおかげです」

キョン「あいつは本当に乱世向けの人材だな・・・」


俺たちはベルンに悟られないよう、山間の旧街道をオスティアに向かっていた。

途中、山賊に襲われた村を助けたり、谷口と気の合う神父が仲間に加入したりしたが、

特に語るほどの事も無かったので省略する。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:32:26.65 ID:tPTlxybP0

そして俺たちはトリア侯オルンの居城に到着した。

オルンはオスティア侯の従兄弟であり、温厚な性格で知られる人物だ。

ここなら枕を高くして眠れるに違いない・・・

俺たちは久しぶりに温かい夕食を食べていた。

ハルヒ「ちょっと、ワグナーさん。聞きたいことがあるんだけど」

ワグナー「はい、何ですかな?」

ハルヒ「オルン様に会いたいんだけど、どうして駄目なの?」

ワグナー「ですから先ほども申しあげましたとおり、主は病でお会いできず・・・」

ハルヒ「なら、私達は帰るわ!こんなとこにいつまでもいても仕方ないもの」

みくる「ふえ?涼宮さん、何でですか?」

ワグナー「・・・どうあっても?」

ハルヒ「どうあってもよ」

ワグナー「ならば ここで死んでいただこう!みなの者!であえっ、であえい!」

ハルヒ「やっぱりね!キョン、みくるちゃん!扉まで走って!」

キョン「お、おう!」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:34:24.26 ID:tPTlxybP0

飛んでくる矢をよけながら扉まで走る。ドアノブに手をかけるが、開かない。

キョン「だめだ、鍵がかかってる!」

ハルヒ「何秒か耐えて!」

朝比奈さんを庇いながら矢を払い落す。数秒間がとても長く感じた。

次の瞬間、扉に何かがぶつかる音が。そして、扉が吹き飛んだ。

古泉「無事でしたか?早く部屋の外へ!」

長門「・・・サンダー」

長門の魔法で弓兵が吹き飛び、流れ弾も古泉の鎧に弾かれる。

心を落ち着けた俺は、左手の弓を引き絞った。

ワグナー「ぐあっ・・・」

キョン「やったか!?」

俺の矢は僅かに狙いを外し、ワグナーの左肩を貫いた。ふらつきながら逃げるワグナー。

それと同時に、館のあちこちで怒号や悲鳴が上がる。どうやら俺たちの軍が攻撃を開始したようだ。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:36:18.92 ID:tPTlxybP0

ワグナー「わ、私の・・・完ぺきな計画が・・・」

キョン「甘い、もう少し演技を磨いてくるんだったな」

十歩の距離まで近づく。今度は外さなかった。


ハルヒ「ありがとう、よく知らせてくれたわね」

キャス「いいのいいの。戦場ではお互いさまよ。それに、色々な物もあるし・・・」

ハルヒ「あなたは盗賊だったわね。まあいいわ、今回は目を瞑ってあげる」

キャス「あなたは太っ腹ね!バイバーイ」

キョン「いいのか?この館、けっこう宝は多いはずだぞ」

ハルヒ「問題ないわよ。ねえ、喜緑さん?」

喜緑「はい。これを見て下さい」

キョン「これは・・・とうぞくのかぎですか?」

喜緑「さっきあの子のポケットから頂いておきました」

キョン「酷っ」


キャス「やられたー!!」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:39:26.76 ID:tPTlxybP0

喜緑「途中でこんな子を拾いましたよ。サカの人らしいです」

スー「わたしも共に戦わせて。ベルンと戦うことは、じじたちを助けることになるわ」

長門「私たちが向かっているのはオスティア。サカとは逆方向・・・」

スー「構わないわ。たとえ何処にいたとしても、母なる大地が無くなるわけでもなく、父なる天が消えるわけでもないから」

キョン「何か独特の空間が出来てるな、あそこは」


古泉「大変です!オスティアで内乱が発生したとの報告が入りました!」

ハルヒ「何ですって!」

古泉「親ベルン派がオスティア城を占拠、城を取り戻そうとする勢力と、激しい戦いを繰り返しているようです」

キョン「佐々木は無事か!?」

古泉「反乱軍の捕虜になっているようですね・・・」

ハルヒ「こうしてはいられないわ。オスティアへ急ぐわよ!みくるちゃん、クラリーネ、アホ神父は負傷者の治療、行軍しながらね!」

みくる「はっ、はい!」

クラリーネ「わかりましたわ」

サウル「できれば女性兵士を多く回していただけますか?」

キョン「阿呆」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:41:09.03 ID:tPTlxybP0

キョン「しっかし強行軍ばかりだな」

古泉「原作をプレイした時も、そのことが気になりました」

キョン「ハルヒは戦術家としては優秀だが、戦略家には向いてないな」


ハルヒ「古泉君、敵将と兵の規模!」

古泉「大将はレイガンス、オスティア重騎士でおそらく一番のつわものでしょう。

   副将はデビアス、こっちは僕と同等かそれ以下です。

   敵の規模は重騎士が50前後に騎兵、魔道士、弓兵、軽装歩兵あわせて200!

   また、ベルン竜騎士が数機目撃されています!」

ハルヒ「私達の現在の兵力は!?」

古泉「騎馬兵30、傭兵部隊が30、重騎士15、魔道師5、弓兵10、軽装歩兵20で合計110!」

ハルヒ「OK,把握したわ!」

進軍中の騒音は尋常では無いから叫び合いになるのは分かるが、古泉が叫んでいるのは違和感があるな。

しかし、とんでもないことを聞いたな。敵の規模はこっちの二倍だと?

しかも相手は城に籠っている。どうやって勝てと言うんだ?

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:43:28.37 ID:tPTlxybP0

ん、伝令兵か。ああ、向うは忙しそうだから俺に渡せ。

ふんふん・・・おっ?

キョン「ハルヒ、イリアの傭兵騎士団からの手紙だ!俺たちの攻撃に合わせて、反乱部隊を攻撃するってよ!」

ハルヒ「数は!?」

キョン「騎馬兵20、歩兵40、破城槌五機!」

ハルヒ「分かった、今作戦を立て直すわ!」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:44:56.33 ID:tPTlxybP0

古泉「戦場まであと約五分、隊列を整えましょう!」

ハルヒ「行軍速度落とせーっ!」

ハルヒの号令で、100を超える兵の足並みが揃う。俺は弓の弦を締めなおす。

古泉は馬に積んであった鎧を装着している(流石にあれを着たままの行軍は無理だ)。

ハルヒ「キョン!今回はあんたの部隊が鍵を握るわよ!しっかり仕事をしなさい!」

ああ、言われなくても分かってる。そう答えようとしたが声が出ない。

みくる「キョンくん、大丈夫ですか?頑張って下さいね」

古泉「あなたならきっと成功します、自信をもって下さい」

長門「あなたなら大丈夫。頑張って」

キョン「・・・おう!」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:47:42.67 ID:tPTlxybP0

リキア一の大都市オスティアは、もはや見る影もないほどに荒廃していた。

ほんの数日の戦闘でここまで荒れるものなのか。

長門と魔道士五人は、街のがれきの中へと潜んでいる。薄い書物一冊で戦えるのは強みだな。

古泉と重騎士部隊は、敵の主力部隊と正面から衝突している。

ハルヒ「50メートル後退!」

兵の練度はほぼ互角、それなら、当然のことだが数で劣る俺たちが押し負ける。

だが、俺たちには勝算があった。

ハルヒ「キョン、そろそろ準備。古泉君、合図を」

キョン「分かった」

古泉「分かりました」

俺は十人の弓兵を連れて戦場から離れる。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:49:14.79 ID:tPTlxybP0

古泉「重騎士部隊、中央に集合せよ!」

古泉の号令で一か所に集まり槍を構える重騎士たち。反乱軍がそれを取り囲む。

デビアス「少数の兵を無理に固めたのは失敗だったな。横一列に構えていれば取り囲まれることもなかったろうに」

古泉「いえいえ、これも策のうちですよ」

デビアス「何・・・?」

反乱軍兵士「デビアス様、敵集です!」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:51:48.66 ID:tPTlxybP0

古泉達を取り囲む形になったデビアスの部隊は、先ほどまでの密集隊形よりは各部署が薄くなる。

そこを街に潜んでいたイリア傭兵騎士団と長門の部隊が奇襲をかけた。

奇襲を受け混乱し、真っ二つになるデビアスの部隊。

長門の魔法は重騎士の鎧も意に介さず、次々と灰に還していく。

デビアス「おのれ・・・竜騎士だ!ベルンの竜騎士を投入しろ!」

程なくして場内から上がる歓声と、この世のものとは思えない鳴き声。

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:53:44.74 ID:tPTlxybP0

翼が空気を叩く音が城壁の外まで聞こえてくる。

俺達弓兵部隊は、オスティア城の城壁の影に潜んでいた。

竜騎士と正面から戦っては勝てない。なら、出撃前に潰す。それがハルヒの策だ。

俺達弓兵ははっきり言って攻撃力が低い。だが、他の職の誰も出来ないことが一つある。


城の上を輪を描くように、五機の竜騎士が飛び回る。もうそろそろ上昇を終え、ハルヒ達に攻撃を仕掛けるだろう。

キョン「弓、番え」

手に汗がにじむ。飛竜の雄叫びと台風のような翼の音が鼓膜を震わせる。

暴力的な音に負けないよう、俺は腹の底から力を限りに叫んだ。

「撃てえーっ!!」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:56:09.40 ID:tPTlxybP0

俺の矢が先頭の飛竜の翼を貫く。苦痛の咆哮。飛竜が傾く。

腰の矢筒から矢を抜き取りもう一発、今度は翼の付け根だ。

飛竜撃退のための作戦、それは、翼を打ち抜いて地面にたたき落とすという、至って単純な物だった。

キョン「まだだ、まだ終わらんよ!」

三発、四発、五発、翼をずたずたに引き裂かれた飛竜は、真っ逆さまに城内に墜落していった。

ズズゥン!!

五つの墜落音と城内からの悲鳴。高空から落とされた飛竜の巨体は、巨大な岩石の如く反乱軍を押しつぶしていた。


デビアス「馬鹿な・・・!ベルン竜騎士が、我々の軍が敗れるだと!?」

古泉「あなた方不義不忠の輩では分からないでしょうが、忠誠心は時として鋭い剣にもなるのです。彼の忠誠心は、並の人間とは比になりませんよ」

デビアス「くそっ、何を綺麗事を!」

逆上したデビアスの鎧の隙間を、正確に古泉の槍が貫いた。

古泉「僕も、この世界ではオスティアの忠臣ですからね。これくらいはやらなくては。

   いや、こちらでも現実でも、僕の主君はもしかしたら・・・」

ハルヒ「古泉君凄いじゃない!城内も混乱してるし、あとは一気に蹴散らすわよ!」

古泉「はい、お褒めに与り光栄です、涼宮さん」

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 09:58:22.93 ID:tPTlxybP0

俺たちが飛竜を、古泉が敵の副将を討ち取ったことによって、反乱軍の戦意は激減した。

戦場から逃亡する者、武器を捨てて投稿する者、数分でオスティア市街は制圧された。

ハルヒ「城門を破るわよ。破城槌、用意!」

キョン「複雑な顔だな、ハルヒ」

ハルヒ「・・・この城はね、リキア一の名城と呼ばれているの。理由を知ってる?」

キョン「いや、知らんが・・・」

ハルヒ「オスティア城はね、リキアが一つの国だった時代から数百年、敵の侵入を許したことが無いのよ」

キョン「へえ、それは凄いな」

ハルヒ「オスティアを守るためとはいえ、不落の伝説を私が破ることになるとはね・・・」

キョン「仕方ないだろう。それより長門、敵の数は?」

長門「喜緑の報告から推算するに、80前後。ほとんどが重騎士で弓兵も数名」

ハルヒ「随分少ないわね?」

長門「飛竜が何もできず撃退されたことによって戦意を喪失、逃亡した者が多いと考えられる」


古泉「城門突破しました。負傷兵は下げますが、それでも100以上兵は残っています」

ハルヒ「分かったわ。目標は玉座よ!突撃!」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:00:18.03 ID:tPTlxybP0

レイガンス「城内に敵の侵入を許しただと!?ええいっ、デビアスは何をしておったのだ!

      これからわしの物になるこの城の歴史に傷を付けおって!

      と、とにかくさわぎの鎮圧を・・・おい!よく聞くのだ」


兵士「はい」

レイガンス「敵に城内で好き勝手なことはさせん。なんとしてでもくい止めるのだ!

      城の各所に兵士を配置しろ、とくにこの玉座のまわりは徹底してな」

兵士「ははっ(おいおい、あんたオスティア最強とか言ってたんじゃねーのかよ)」

レイガンス「それからあの小娘は戦いに紛れて密かに始末してしまえ!」

兵士「はあ!?ちょ、待って?」

レイガンス「落ち着け。奴等への牽制に使うつもりだったが、こちらの部下どもにもまだあの小娘を慕っている者が多い。

      おおやけに盾などにすると反感を買い敵にまわる危険があるのだ・・・」

兵士「で、ですが、手にかけてしまってはそれこそ非難の的に・・・」

レイガンス「だから 密かにと申しておるではないか!アーチャーの流れ矢にあたった事にしその罪は敵になすりつければよい!!

      ちょうど敵にあの冴えないアーチャーがいるだろう」

兵士「・・・」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:02:17.36 ID:tPTlxybP0

佐々木「やあ、獄卒君。今日は何の要件だい?もしや処刑の日取りが決まったのかな?」

兵士「・・・これを」

佐々木「これは・・・魔道書だね。ファイアー、サンダー、エルファイアー・・・こんなにどこから?」

兵士「レイガンスの本棚から盗んできました。お望みならエイルカリバーも持ってきますよ?」

佐々木「いや、それはいいよ。まだ使いこなせないからね」

兵士「レイガンスはあなたを殺し、その罪を同盟軍のアーチャーに被せるつもりです。

   鍵は持ってこれませんでしたが、その魔道書があれば脱出は出来るでしょう。お気をつけて」

佐々木「感謝するよ。では、久しぶりの散歩といこう」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:03:50.79 ID:tPTlxybP0

キョン「朝比奈さん、回復お願いします!」

みくる「はっ、はいい!」

狭い城内では敵を倒してもすぐに敵が来る。のんびり座り込んで応急手当てをしている暇など無い。

だから、朝比奈さんのような回復役は非常に重宝する。

キョン「朝比奈さんは怪我はありませんね?もうすぐ大広間です。気を付けて下さいよ」

みくる「はい、キョンくんも頑張ってください」


谷口「なんで俺はあんたと組んでるんだろうな・・・」

サウル「ああ、神よ。どうかこの哀れな子羊に美しい女性の救いの手を!」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:06:19.52 ID:tPTlxybP0

城攻めではいろいろな事があった。オスティア侯に仕えていた盗賊とやらが仲間になったり、古泉の同僚であるものすごい巨漢のアーマーナイトが仲間になったり。

しかし、俺が一番驚いたのは、

森「どうも、通りすがりのアーマーナイトです」

キョン「嘘だー!?」

古泉「おやおや、森さんがまさかこのタイミングで出てくるとは」

森「機関の意向で」

キョン「それはもう分かりましたから。で、古泉。森さんはどういうキャラの位置だ?」

古泉「アーマーナイトの『ウェンディ』。ボールスの妹です」

キョン「ボールス?それは確か・・・」

古泉「僕の位置ですね。これは困りました」

森「では、何と呼んだらいいかしら。お兄様?兄上?お兄ちゃん?」

古泉「お兄様でお願いします」

森「お兄様、はがねのやりを貸して頂戴」

古泉「はい、少々お待ちを」

キョン「いつの世も、兄は妹に振り回されるのが常か」

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:08:57.84 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「レイガンスの情報は?」

古泉「アーマーナイトの上位クラス、ジェネラルです。圧倒的な装甲は、生半可な攻撃はすべて跳ね返します」

ハルヒ「どれくらいの力ならいける?」

古泉「谷口君でかろうじて傷が付くかどうか。アーマーキラーを使えば戦えない事も無いでしょうが・・・

   相手は槍の達人。剣では分が悪いですね」

ハルヒ「分かった。私が行くわ。キョン、レイピアを持ってきて!」

キョン「おい、本気か?」

ハルヒ「本気よ。私のレイピアなら、いくら装甲が厚くても問題じゃないわ」

キョン「だからって、お前一人じゃ無理だ。俺も付いていく」

ハルヒ「それこそ無理よ。あんたの弓が通用すると思う?石をぶつけるのと変わらないわよ」

キョン「でも・・・」

ハルヒ「いいから。私一人で行かせて。あいつもオスティア候の仇みたいなものよ」

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:10:58.37 ID:tPTlxybP0


古泉「涼宮さんを一人で行かせたんですか?」

キョン「あそこで俺がなんて言ったらよかったんだ?」

古泉「・・・無理ですよね。ですが、涼宮さん一人ではやはり」

佐々木「それなら、僕が行こう。君達は僕の護衛をしてくれたまえ」

キョン「佐々木!無事だったのか!」

佐々木「ああ、親切な兵士に助けてもらってね。それよりも、早く行くよ。

    僕ならレイガンスに一矢報いる権利は有る。涼宮さんも納得するだろう」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:13:09.56 ID:tPTlxybP0

レイガンス「筋はいいな、小娘。だが非力だ!あまりにも非力だ!

      わしの鎧をその細腕で貫けると思うなぁ!」

ハルヒ「くっ!せめて三秒狙いをつけられれば・・・!」

レイガンス「小物をいたぶるのもそろそろ飽きた。とどめを刺させてもらうぞ!」

二メートル近い巨体のレイガンスが、三メートルはあろうかという槍を振り上げる。

五メートルの高さから振り下ろされる槍の穂先、直撃すれば死は免れない。

ハルヒ(かわせないっ・・・!ならば防御、いや、レイピアじゃ無理!)

ハルヒ(殺られる!?)


ガキィン!

新川「御自重ください涼宮さん。あなたはこの軍の総大将、命を粗末になされては困ります」

ハルヒ「新川さん!?」

レイガンス「誰だ、貴様は!?」

新川「どうも、通りすがりのパラディンです」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:15:07.21 ID:tPTlxybP0

新川「力は有りますが、今一つ正確さに欠ける攻撃ですね。鎧に頼っていてはいけませんよ」

レイガンス「くそ、何故あたらん!ぬあああああ!」

新川「ほら、また隙が出来た」

レイガンス「貴様、何故攻撃してこない!わしを愚弄しているのか!」

新川「あなたを倒すのは私の役目ではありません。ほら、そこにいる人物の仕事ですよ」

レイガンス「・・・?」

振り向いた瞬間、レイガンスの顔面が炎上した。エルファイアーの直撃だ。

佐々木「レイガンス、よくもやってくれたね。まだ気は収まらないが、僕の分はここまでにしておこう」

キョン「うわー・・・佐々木、お前結構酷いな」

佐々木「涼宮さん、とどめを刺して!」

レイガンス「眼が!眼があっ!」

ハルヒ「・・・!」

ハルヒ(鎧の薄い部分から心臓にかけての直線・・・見えた!)

ハルヒ「はぁっ!!」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:17:12.67 ID:tPTlxybP0

レイガンス「何故だ?ベルンに踏みつぶされるだけのお前たちが・・・何故、ここまで戦える・・・?」

ハルヒ「潰されたくないから闘うのよ。分からないの?」


佐々木「ありがとう、おかげで無事に城を取り戻せた」

ハルヒ「いいのよ、フェレとオスティアの仲じゃない!」

佐々木「ふふっ。そういえば、お父様はどうしたかな?まだあちらの戦いは長引きそう?」

ハルヒ「何も・・・知らされていないの?」

佐々木「?」

ハルヒ「ヘクトル様は・・・亡くなられたわ」

佐々木「!」

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:19:12.82 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「ごめんなさい。私達がアラフェン城に着いた時は、もう城はベルンの支配下で・・・」

佐々木「涼宮さん、あやまらないで。あなたのせいじゃないわ」

ハルヒ「佐々木さん・・・」

佐々木「ごめん、ちょっと一人にさせて」


ハルヒ「キョン、ちょっと佐々木さんのところへ行ってあげて」

キョン「え、いいのか?」

ハルヒ「私だってそこまで我儘じゃないわよ。早くいってあげなさい」

キョン「すまんな、ハルヒ」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:22:06.08 ID:tPTlxybP0

キョン「佐々木」

佐々木「キョンか。大丈夫、この世界の事は知ってるよ。彼女の力の産物だろ?」

キョン「ああ」

佐々木「この世界での人間関係や記憶は仮のもの、そうは分かってるんだけどね。この感覚は何だろう。

    自分に境遇のよく似た映画の主人公が、耐えがたい悲劇に遭っている。そういったものかな?」

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:24:22.28 ID:tPTlxybP0

佐々木「大丈夫、僕はそんなに弱くない。こういう時こそ取り乱さないようにとお父様に教えられているからね」

キョン「・・・佐々木」

佐々木「だから皆も隠したりせずにすぐに伝えてくれればいいのに。皆気を使い過ぎだよ。

    僕は結構、強いん・・・だから・・・さ・・・」

キョン「無理をするな、佐々木。泣きたいなら泣け。しばらく傍にいてやるから」

佐々木「涼宮さんはいいのかい?」

キョン「あいつにも許可は貰ってある」

佐々木「・・・なら、甘えさせてもらうよ」



古泉「涼宮さん、ご立派です」

ハルヒ「・・・仕方がないわよ」

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:26:39.09 ID:tPTlxybP0

オスティアを奪還、連合諸侯の兵で守りを固めた俺たちは、佐々木の案内でオスティア郊外の洞窟へと向かった。

なんでもそこには『神将器』とかいう武器があるらしい。

佐々木「ここにあるのは『烈火の剣』デュランダル。オスティア初代領主のローランが使った剣だ」

キョン「へー、お前のご先祖様か」

佐々木「そういう事になっている人だね」

キョン「佐々木、設定を割るような事は言うなよ。よくできたごっこ遊びだと思え」

佐々木「すまないね。皆があまりに涼宮さんに協力的なので、多少嫉妬してしまったかもしれない」

キョン「で?もう盗まれているなんてのはないよな?」

佐々木「オスティア家の者以外は取り出す方法は知らないはずだ。心配ないさ」

キョン「ハクナ・マタタ」

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:28:30.23 ID:tPTlxybP0

古泉「暑いです、いや、もはや熱いです」

森「あちこちでマグマが噴き出してるからかしらね」

古泉「森さんは暑くないんですか?」

森「ダイエットの一環だと思って我慢してるわ」

古泉「僕はそろそろ意識が飛びそうです」

森「お兄様、気をしっかり持ちなさい」

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:30:15.95 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「あーっ!もう、暑いったらないわね!キョン、水持ってきて水!」

キョン「ぬるま湯になってるが、それでもいいならあるぞ?」

ハルヒ「もうそれでもいいわ!」

俺達弓兵や魔道士などの軽装の連中はいいとして、鎧を着けているのはみんなへばっている。

とくにゼロットさんは北国の生まれで暑さに慣れていないからか、もう瀕死状態だ。

あ、ゼロットさんっていうのは、イリア傭兵騎士団の団長だ。

実力はあるんだがどうも影が薄いんだよな・・・

長門・佐々木「ファイアー!」

山賊「熱、熱!熱いいいいいい!!」

溶岩の熱気のおかげで、ファイアーの威力は五割増しのようだ。

絶好調なのはあいつ等くらいか。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:32:27.29 ID:tPTlxybP0

キョン「我慢大会を耐え抜いて、どうにかデュランダルをゲットしたぜ」

ハルヒ「ばんざーい・・・」

キョン「誰に持たせる?というか、使える奴がいたか?」

ハルヒ「いないわねー・・・谷口ーちょっと来なさーい」

谷口「WA?」

ハルヒ「口あけてー」

谷口「あ」

ハルヒ「えいっ!」

ハルヒは きしのくんしょうを たにぐちの くちの なかに たたきこんだ!

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:34:04.68 ID:tPTlxybP0

谷口「涼宮何をする!?・・・うお・・・?あっがっむあっ!?」

キョン「何だ?何が起こってる・・・?」

たにぐちは おおかみおとこに すがたをかえた!

国木田「毛深ーっ!てかキモいよ谷口!」

ハルヒ「クラスチェンジしたわねー?それじゃ、デュランダルもついでに持ってて」

キョン「CC?これCCなの!?ただの狼男だろこれ!?」

ハルヒ「私水のんでくるからー・・・」

谷口「・・・」

キョン「とりあえず、毛は剃り落そうな」

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:36:04.99 ID:tPTlxybP0

今、俺たちは、とてもまずい状態です。

オスティアを取り戻し、神将器を手に入れ、野営のため市街に陣を敷いていました。

それが・・・

キョン「なんでこうなる?」

古泉「なんででしょうね?」

ナーシェン「ご苦労だったね。あのレイガンスとかいうバカどもを倒してくれて。手間が省けたよ。

      さあ、おとなしくオスティアとオスティア公女を渡してもらおうか」

ハルヒ「前者はともかく後者は何?」

ナーシェン「私の趣味だ」

ハルヒ「冗談じゃないわ!」

ベルンの精鋭部隊にぐるりと取り囲まれ、一触即発の状態です。たすけてお母さん。

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:38:25.75 ID:tPTlxybP0

キョン「さて、現実逃避はほどほどにして、この状態をどうするかだ」

長門「・・・帰ってきた?」

古泉「おかえりなさい。あなたが正常でなくては、話がうまく進まないのですよ」

キョン「すまんすまん。どうするんだ、ハルヒ?」

ハルヒ「何もしないわよ」

ナーシェン「くっくっく・・・諦めたようだな」

ハルヒ「勘違いしないでくれる?」


ハルヒ「私達は何もしない、そういってるのよ」

ナーシェン「!?」


ベルンの竜騎士を100以上の弓兵が取り囲んだ。その後ろには魔道士が、これも100人近く待機している。

兵士「ナ、ナーシェン様!エトルリア王国の大部隊がっ!」

ナーシェン「ええいっ、そんなこと見ればわかる!一体なぜ・・・」

???「その質問は、私が答えよう」

現れたのは、金髪の長身、黒い鎧に紫のマントと、美形という概念を絵にかいたような男だった。

151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:40:16.44 ID:tPTlxybP0

パーシバル「私はエトルリア王国騎士軍将パーシバル。先日、魔道軍将セシリアを通してオスティアから我が国に保護要請がなされた。

      遵って、オスティアは今よりエトルリア王国の保護下に入る」

ナーシェン「な、なにぃ・・・」

セシリア「私は、エトルリア王国魔道軍将セシリア。ご不満なら一戦交えてもよろしくてよ

     もっとも、そのいかめしい竜騎士だけでこの数を相手にできるのかしら?」

ナーシェン「ぐっ・・・おのれ・・・おのれっ!」

兵士A「ナーシェン様、短気はなりません!パーシバル将軍はエトルリア王国きっての名将。

   それに魔道軍が加わっているとなれば、われら竜騎士だけで戦うのは分が悪・・・」

ナーシェン「うるさいっ!私は三竜将の一角だぞ!あの程度の敵に負けるはずが」

兵士B「・・・引き上げるぞっ!!」

ズリズリズリ・・・

ナーシェン「こら待てっ!私を誰だと思っている!放せ、放せってば・・・」

兵士A「どうもっ、お騒がせしましたー!」

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:42:26.80 ID:tPTlxybP0

パーシバル「フェレの公女、ハルヒ殿か?」

ハルヒ「はい、亡き盟主、オスティア侯より軍を任されています」

おお、ハルヒが敬語を使っている。なかなか見られない光景だな。

俺のところにはセシリアさんがやってきた。

あれだな、えーと・・・なんでこの人は南斗最後の将みたいな兜を被ってるんだ?

セシリア「ちょっと来てくれますか?他の人がいないところがいいな」

何?俺殺される?うっかりそんなことを考えてしまった。

だって怖すぎるだろうこの兜。フルフェイスタイプだからコーホー呼吸音もしてるし。

セシリア「あんまり怖がらないでくださいキョンくん。あ、この辺ならいいかな」

キョンくん?俺名乗ったっけ?

セシリア「私ですよ、私。お久しぶりですね、キョンくん」

兜を外して出てきた顔は・・・

キョン「朝比奈(大)さん!?」

みくる大「なぜか私も巻き込まれちゃいまして。でも、おもしろそうだからいいかなあって」

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:44:08.78 ID:tPTlxybP0

キョン「顔を隠すにしても、もっといい方法は無かったんですか?」

みくる大「多分あったと思うけど・・・近くにあったのがこれだったから」

キョン「仕方が無いですね。やっぱり正体はばれちゃまずいんですか?」

みくる大「まあ、ゲームの中の事ですんで、ごまかせない事も無いと思うんですけどね」

キョン「で、何か用ですか?」

みくる大「そうそう、これから西方三島っていう所に進軍することになるんだけど、もう聞いた?」

キョン「いいえ、まだ聞いてませんけど」

みくる大「その話はそのうち涼宮さんから聞いてね。えっと、それで、この軍がちょっと困ったことになるかもしれないの。

     キョンくん達は途中でエキドナって人に会うはずなのね。その人にこの紙を渡してほしいの」

キョン「これですか?何も書いていないような気がしますけど・・・」

みくる大「紙自体が意味をなす暗号になってるの。よろしくおねがいね

そういうと朝比奈(大)さんは、またあの兜を装備してコーホーいいながら歩いて行った。

キョン(怖えー・・・)

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:46:14.14 ID:tPTlxybP0

あれから数週間、ベルンの攻撃は急に止んだ。

なんかもうこの世界にすっかり馴染んでしまった俺たちは、つかの間の平和を楽しんでいた。

崩壊したリキア同盟はフェレ侯エリウッド・・・こっちでのハルヒの親父さんだな、が盟主になって立て直すことになった。

諸侯から少しづつ兵力を集め『リキア同盟軍』を結成、将にはベルン軍撃退の実績からハルヒが選ばれた。

戦で荒れた街も復興し、リキア全体に活気が漲っていた。

俺は特にする事も無いので、毎日弓術の練習をしていた。

キョン「俺、ひょっとしたら向こうに戻っても結構いいところまでいけるんじゃないか?」

今の俺は、50メートル先の的の中心を確実に打ちぬけるレベルにまで成長していた。

この世界の能力補正を差し引いて考えてもこれは凄いことなんじゃないかと思う。

ハルヒ「何を独り言言ってんのよ、キョン」

お、公女さまのお出ましだ。最近は平和で退屈そうにしてたからな。

朝比奈さんを追いかけまわして、近くの村を探検して、殆どあっちの世界と同じことしかしていないようだ。

ハルヒ「軍を動かすわよ。部下の弓兵全部に連絡しなさい」

キョン「お、おう。なんだ?山賊退治にでも行くのか?」

163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:47:03.60 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「違うわよ。エトルリアからの要請で、西方三島まで行くの」

ああ、朝比奈さんの言ってたやつだな。

ハルヒ「そうそう、弓使いは全部あんたの指揮下に置くからね」

キョン「はい?」

ハルヒ「あんたにも、少しは権限と責任を負ってもらうわ」

そんなわけで俺は、諸侯の弓兵合わせて40の部隊長になってしまった。

しかも補佐としてつけられた二人がまた困る。

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:49:23.17 ID:tPTlxybP0

片方はスーとかいう遊牧民の少女だ。長門に雰囲気は似ているが、口数はやや多い。

しかし、俺の話を聞いているのかいないのか、判断に困る。

キョン「あのー、スーさん?」

スー「・・・はっ ごめん、聞いてなかった」

キョン「いや、まだ何も言ってないんだけど・・・」

もう片方はドロシーという女の子。どうも容姿にコンプレックスを抱いているらしい。

キョン(化粧をすれば平均以上になる顔立ちなんだが・・・普及してないのか?)

軍中にはやたら美人が多いためか、必要以上に引っ込み思案だ。これまた会話が成り立ちにくい。

俺がいない時は女の子同士会話もしているようだが。

あれ、俺ハブられてる?

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:51:12.83 ID:tPTlxybP0

キョン「じゃあ、これは正式な要請なんだな?」

ハルヒ「そうよ。リキアがエトルリアの保護下になきゃ、わざわざあんな辺境まで来ないわ」

古泉「西方三島は、エトルリアの保護下にある島々の総称です。鉱石などの地下資源が眠る土地ですが、

   それを狙う海賊たちも横行しています。僕たちはその討伐を命じられたんですよ」

キョン「おう、古泉久しぶり。お前の解説も久しぶりだな」

古泉「セシリア将軍からの使者によれば、この話を進めたのは西方三島総督のアルカルド。

   決定したのは宰相ロアーツ。どちらも親リキア派ではないそうです。あまりいい予感はしませんね」

長門「リキアはエトルリアの保護下にある。今、エトルリアの意向に背くことはできない」

ハルヒ「この島は危ないから、ギネヴィア様はセシリアさんに預けたわ。みくるちゃんは行かなくてよかったの?」

みくる「私は、この軍の皆さんのお手伝いをしてねって言われましたから」

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:53:12.35 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「それにしても霧が濃いわね」

キョン「ああ、30メートルくらい先はもうぼやけて見えるな」

ハルヒ「あんた距離感鋭くなったわね。人間メジャーよ人間メジャー」

キョン「なんだそりゃ・・・ん?」

ハルヒ「どうしたの?何かいた?」

キョン「今、霧の中をポニーテールが走って行った・・・」

ハルヒ「キョン、あんた頭は大丈夫?」

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:56:00.53 ID:tPTlxybP0

霧の中の進軍は、多少は戦場に慣れてきた俺たちにも初体験だった。

怒声を聞いて武器を構えてみればそこにいるのは味方ばかりだったり、

隣を歩いてるやつをよく見たら敵の海賊だったり。

俺達弓兵部隊は、喜緑さんの驚異的な視力で敵を発見してもらい、そこに一斉掃射を仕掛けていた。

キョン「効率悪いな・・・これじゃ矢が何本有っても足りないぞ」

スー「矢が足りないのなら、敵から引き抜けばいいと思うけど」

キョン「怖いこと言わないでください」

この人は朝比奈さんや長門とはまた違う天然なんだよな。

スー「あ」

キョン「何ですか?」

スー「ちょっと行ってくる。暫く待ってて」

キョン「え?ちょ、ちょっとスーさん何処に!?」

何かを見つけたらしいスーさんは、馬を走らせ霧の中へ消えていった。

キョン「・・・どうしようか」

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 10:58:09.08 ID:tPTlxybP0

キョン「おや?さっきのポニテが・・・」

???「島の人々を襲う賊め、覚悟!」

キョン「はい!?」

霧が一瞬渦巻いたと思ったら、それを割り裂いて、刀をもった小柄な少女が飛び出してきた。

キョン「ちょっと待て!俺たちはエトルリアの要請で!」

???「隠しても無駄です!海賊と一緒になって島の人々襲うなんて!」

キョン「誤解だー!」

???「待ちなさーい!」

周りの弓兵も、俺に当たるかもしれないと思っているのか少女に攻撃できない。

鋭い斬撃をかわしつつ、俺はやみくもに走った。

キョン(こっちには確かイリア傭兵騎士団が・・・)

キョン「おわあっ!?」

斬撃はどんどん精度を増していく。そろそろ危ない、俺は向こうに見えた人影に叫んだ。

キョン「そこの人、助けてくれー!」

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:00:23.89 ID:tPTlxybP0

キョン(えっと、この人は誰だったか・・・)

???「ノア殿!?」

ノア「フィルさん、フィルさんじゃないか!」

うわあ、凄いご都合主義。まあいいか、助かったし。


フィル「誤解ですって!この後に及んで何を・・・」

それにしても・・・

フィル「え?スコット殿が海賊の親玉?」

やっぱり・・・

フィル「・・・知らないこととはいえ、海賊たちに手をかしていたなんて・・・

    私はこれからどうすれば・・・」

ポニテはいいなあ。

ノア「そう言う訳だ、キョン君。ハルヒ殿に伝えておいてくれないか?」

キョン「あ、はい(半分くらい聞いてなかったな。えーと、この子が仲間になってくれるって?)」

182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:03:07.27 ID:tPTlxybP0

スー「ただいま」

キョン「あ、スーさん!無事でしたか、どこ行ってたんです?」

スー「見つけたから連れてきた」

シン「シンと言う。よろしく頼む」

キョン「えーと、この人は?」

スー「私と同じクトラ族の者。役に立ってくれるはず」

キョン「まあ、いいですけど。弓使いですよね?なら、一応俺の指揮下に入って下さい」

シン「分かった」


キョン「そんなわけでいつの間にか仲間が二人増えてたんだが」

ハルヒ「それは構わないけど・・・その・・・キョンは・・・」

キョン「どうした?」

ハルヒ「キョンはその・・・そんなにポニーテールが好きなの?」

キョン「YESかNOかで言ったらYESだが」

ハルヒ「そう・・・」

次の日から西方三島を抜けるまで、ハルヒは髪型をポニーテールにしていた。眼福眼福。

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:06:09.17 ID:tPTlxybP0

ノア殿はなぜ何処に行っても扱いが悪いんだろう 体格1の差は大きいのに


キョン「賊の頭スコットを倒した俺達。だが、死の間際にスコットはこう言い残す。

    『俺は海賊四天王のなかでも最弱の存在。いずれ他の三人が・・・』」

古泉「いきなり何のナレーションですか?」

キョン「倒しても倒しても海賊が減らなくてな。スコットは討ち取ったんだろ?

    もう本当に海賊四天王とかいるんじゃないかと思ってな」

古泉「四天王は関係ありませんが、彼だけが海賊の頭と言う訳ではありません。

   西方三島には何十もの海賊の集団がいますからね」

キョン「で、ここはどこなんだ?」

古泉「エブラクム鉱山です。三島のなかでも最大級の鉱山ですね。」

キョン「飛んだな」

古泉「ギースやゴンザレスの登場に誰が興味を持つと?」

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:11:00.82 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「それは本当の話なのね?」

ララム「信じてもらえないかもしれないけど、でも、本当の話よ!」

キョン「その娘は?」

ハルヒ「進軍中に拾ったの。私に話があるんですって。あんたも聞いていきなさい。」

このララムという騒がしい娘の話によると、この娘はレジスタンスの一人らしい。

「賊」と戦い島の人々を守る組織というのが、俺たちがエトルリアのお偉いさんから聞いていた情報だった。

だが、真実はまるで違うのだという。

ララム「あたしたちの本当の敵は『賊』を保護し、それを隠れ蓑にしてるエトルリアから来た領主達よ!」

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:15:04.55 ID:tPTlxybP0

古泉「古泉と」

長門「長門の」

古泉・長門「設定解説コーナー」

古泉「こうでもしないと僕たちの出番が少ないですからね。さて、今回は西方三島の統治システムです。

   西方三島は本国からあまりに遠いため、役人を派遣して本国から指令を送ることができません。

   そのため、各地に領主を派遣し、統治の権限をほぼ丸投げにしているのです」

長門「西方三島は本国の目が届かない。領主たちは私腹を肥やすことに専念できる」

古泉「領主ごとに私兵も持っている、形式としてはむしろリキア同盟に近いですね」


ララム「ここの領主達は島のみんなを無理やり鉱山へ連れて行ってそこで死ぬまで働かせるの!!

    ケガしても病気になっても、働くの絶対に休ませてくれないって・・・」

ハルヒ「酷いわね・・・」

ララム「だから!あたしたちは島のいろんなところで戦ってるの!!

    今回もこの北のエブラクム鉱山に行ってそこの人たちを助ける予定だったのにっ!!」

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:17:13.15 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「村の人の口から情報が洩れちゃったのね。いいわ、助けてあげる。

    キョン、準備しなさい!」

ララム「ホント!?嬉しいっ!ありがとうハルヒさまっ!」

ハルヒ「ちょ、ちょっと、抱きつかないでよ!」

騒がしい上に変わった子だな。てかハルヒ、お前も朝比奈さんに似たような事をしてるじゃないか。

ハルヒ「キョン!見てないでこの子引き剥がしてよ!」

おー、慌ててる慌ててる。面白いからもう少し見てようか。

ハルヒ「こらキョーン!!」

201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:19:32.64 ID:tPTlxybP0

キョン「すびばせんでした」

ハルヒ「まったく・・・」

古泉「レジスタンスの隠れ家はこの町の中にあるんですね?」

ララム「うん。でも、もう領主オロの手が回っているかもしれない」

長門「ここの領主オロはエリミーヌ教の司祭。神の意向と権力、両方を縦に搾取している」

ハルヒ「本当にそういう奴って性質が悪いわね」

喜緑「涼宮さん、城から兵士が出てきて街を攻撃しています」

キョン「なんだとっ!ハルヒ、どうする?相手は一応エトルリアの領主だが・・・」

ハルヒ「決まってるじゃない!おかしいのはここの領主たちなんだから」

そういうとハルヒはくるりと振り返り、手にした剣を振り上げる。

ハルヒ「全軍突撃!欲ボケの領主を倒すわよ!」

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:21:49.67 ID:tPTlxybP0

オスティアに続いて二回目の市街戦。俺たちは予想外に苦戦していた。

オスティア重騎士団とベルンの連合軍に比べたら、辺境の領主の私兵なんぞただの雑魚だ。

だが、今回の戦闘では、一般市民が避難を完了していないのだ。

ハルヒ「新川さん、谷口、国木田、戦闘はいいから町の人を避難させて!

    イリア傭兵騎士団はその警護にまわって頂戴!」

古泉「オスティア重騎士団、決して防衛線を崩してはいけませんよ!

   民間人の避難が完了するまで何としても守り抜くのです」

森「お兄様、半分は避難させたわ。防衛線はあと100メートルまでなら交代できる」

古泉「了解しました。ところで、いまさらですがお兄様というのはもう止めません?」

森「分かったわ、古泉。少し下がれば道が狭まっているわ。そこで敵をくい止めましょう」

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:25:09.94 ID:tPTlxybP0

クラリーネ「ですからお兄様、私を信じて協力してください!」

クレイン「分かったよ、クラリーネ」

キョン「おや、クラリーネさん。その人は?」

クラリーネ「そ、そ、その人ですって!?平民風情がお兄様と同等のような口を!」

クレイン「落ち着いて、クラリーネ。レディが感情をあらわにしてはいけないよ」

クラリーネ「はい、お兄様」

クレイン「エトルリアの一軍を預かるクレインだ。君達の軍に投降したい。構わないかな?」

キョン「ええまあ、構いませんが」

クレイン「見た所、君が弓兵部隊の隊長だね。早速君の指揮下に入ろう」

キョン「それじゃあ、クレインさんの部隊は、後方から来る敵を狙撃してください」

クラリーネ「ちょっと、お兄様に命令するなんてどういうことですの!?」

クレイン「クラリーネ」

クラリーネ「はい、お兄様」

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:27:49.88 ID:tPTlxybP0

クレイン「ティト、これから僕はリキア同盟軍の指揮下に入る」

ティト「・・・!分かりました。私達もそのようにします」

クレイン「いいのかい?もうエトルリアからの報償は望めないが」

ティト「契約上はエトルリアに雇われていますが、私達は全員、クレイン将軍個人にお仕えしています」

クレイン「ありがとう、ティト。だけど一つだけ・・・」

ティト「はい、何でしょう?」

クレイン「君の部下たちに、僕の部下にてやりで攻撃を仕掛けるのを止めるよう伝えてくれないだろうか」

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:30:20.80 ID:tPTlxybP0

佐々木「キョン、あの家を兵士が取り囲んでいる。どうやらあれがレジスタンスの本拠のようだよ」

キョン「よし、俺と弓兵何人かでいくぞ。佐々木と長門は支援を頼む」


キョン「撃て」

家を取り囲んでいる兵士に悟られないように近づき号令を下す。

外周の兵士たちが一斉に倒れる。

長門と佐々木の理魔法が鎧を無視して内部を燃やす

兵士「く、くそっ!エキドナだ!エキドナだけでも討ち取れ!」

包囲網の内側の兵士が家になだれ込む。

キョン「しまった!」

家の中から聞こえてくる喧噪。

エキドナ?「おりゃ!はあっ!そうりゃっ!」

兵士「つ、強いぞこいつ!」

エキドナ?「当たり前っさー!」

キョン「・・・あれ?」

214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:33:36.87 ID:tPTlxybP0

エキドナさんにフルドーピングでアルマーズ持たせたことある俺


鶴屋「やーやーキョンくん久しぶりだね!元気にしてるにょろ?」

キョン「なんで偽名を使ってるんです?」

鶴屋「うーん、偽名というのかな?この世界に来たらそう呼ばれたから、そのまま通してただけっさ」

キョン「はあ・・・(ハルヒの力も、変なミスをする事があるんだな)」

キョン「あ、忘れるところでした。これ、鶴屋さんに渡してくれとセシリア将軍から」

鶴屋「この紙は・・・なるほど・・・そういうことにょろね」

キョン「鶴屋さん?」

鶴屋「ごめんごめん、これはこっちの要件っさ。それじゃ、鶴屋流戦斧術を披露するにょろ!」


古泉「鶴屋さんの位置は勇者『エキドナ』。西方三島レジスタンスのリーダーで豪放磊落な人物です。

   女性の斧使いで、斧使いの中では技量と素早さに優れている変わったキャラです。

   ストーリーにはそこまで関わりませんが、後に西方三島を束ねることになる超重要人物ですよ」

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:36:59.92 ID:tPTlxybP0

鶴屋さん率いるレジスタンスの力もあり、どうにか民間人を避難させることは成功した。

残るは悪徳司祭オロただ一人、豪勢な館を俺たちは取り囲んだ。


オロ「私は神の言葉を伝える者。この私に逆らう事は神に逆らうも同じことです」

みくる「神様に使える人なのに、あなたは何でこんなことをするんですか!?」

オロ「神ですか・・・『神』の言葉の前には全てが許される・・・便利なものですよ」

みくる「あなたは絶対許せません!」

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:39:46.02 ID:tPTlxybP0

オロ「ほう・・・ですが、どうするというのです?攻撃手段も持たない僧侶が」

みくる「はうっ!」

ハルヒ「みくるちゃん、これを受け取りなさい!」

ハルヒが朝比奈さんに投げたのは、装飾の少ない指輪だった。

ハルヒ「それを指にはめて手を掲げなさい!」

みくる「こ、こうですか?」

ハルヒ「そうしたら、私に合わせて叫ぶのよ!いい!?せーの!」

みくる「え、えと、えと」

ハルヒ・みくる「ムーンプリズムパワーメイクアップ!!」

キョン「こらー!」

219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:42:24.65 ID:tPTlxybP0

古泉「どうしました?鼻血が出てますよ」

キョン「真正面でモロに見てしまった・・・変身シーン」

古泉「ああ、仕方ないかもしれませんね。個人的には火星の人が一番好きでした」

キョン「見てたのか・・・」


みくる「愛と正義のシスター朝比奈みくる!月にかわっておしおきしますっ!!」

オロ「おのれ・・・まさか『導きの指輪』を隠し持っていたとはな・・・だが、それがどうした!

   この私の前ではそのような物は無力だ!」

みくる「神様の名前を語って人々を苦しめるなんて許しません!私が・・・って、あれ?」

キョン「どうしました?」

みくる「魔道書がありませ〜ん!」

キョン「・・・ハァ。ハルヒ、何で事前に渡しておかないんだ」

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:45:24.65 ID:tPTlxybP0

長門「・・・これ」

みくる「長門さんっ、ありがとうございます!ライトニング!」

みくる「・・・発動しない?」

オロ「何だ?今、何かしたか?」

みくる「どういう事ですか長門さん!?」

長門「この魔道書は特定の体制を取った後にキーワードを正確に発声することによって発動する」

みくる「じゃ、じゃあそのポーズとキーワードを教えてください!」

長門「ゴニョゴニョゴニョ」

みくる「えっ、それを本当にやらなきゃ無いんですか?」

朝比奈さんが躊躇っている。長門、お前は何を言ったんだ?

みくる「・・・分かりました、やります」

魔道書を開き、手を広げ体を一回転。伸ばした左手を高く掲げ、目の横に下ろす。

みくる「ゴットゥーザ・レディース・ハレーション!!」

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:47:16.71 ID:tPTlxybP0

朝比奈さんの左目から放たれた白い光は、嘲るような笑いを浮かべるオロの体を貫いた。

光はそれだけに止まらず広範囲に拡散、オロの館をその高熱で焼き尽くす。

急激に出現した圧倒的な熱量は爆発を引き起こし、リキア同盟軍を含むその場にいた者全てが爆風によって吹き飛ばされた。

オロの私兵はあるいは砕けあるいは溶け、正常な形態を保つ者は残らなかった。

以上全てが、わずか四秒間の間に起こった事である。

226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:50:23.89 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「さーてと!総督府を攻めるわよー!」

キョン「おい、あの鉱山はどうするんだ。一応エトルリア所有の大鉱山だぞ」

ハルヒ「あのオロとかいう領主が自棄になってやったことにすればバレないわよ」

キョン「そうはいってもなあ・・・」

あの爆発のせいで坑道は完全に崩落し、もうエブラクム鉱山は使い物にならない。

復旧させようにも多くの人手と長い月日が掛かることだろう。

キョン「長門、今回はお前が原因だぞ」

長門「・・・反省している」


古泉「ここはジュトー、西方三島総督府が存在する大都市です」

キョン「その割には人気が無いな」

ハルヒ「私達を迎撃する準備でもしてるんでしょ。空を見てみなさい」

キョン「ん?」

ハルヒ「鳥の群れがいるでしょ。ほら、あの辺りに差し掛かると群れが乱れるのよ」

キョン「本当だな。お前は源氏の頭領か」

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 11:53:02.60 ID:tPTlxybP0

鶴屋「エブラクムでおもしろい人をみつけたにょろ!」

エルフィン「初めまして、エルフィンと申します。軍師が御入用ではありませんか?」

ハルヒ「軍師?」

エルフィン「はい。私は西方三島の地理に通じています。総督府の地図も持っていますし、

      何より一つ重要な情報を持っています。きっとお役にたてるかと・・・」

ハルヒ「そうねえ・・・雇ってもいいけど、雇用の条件は?」

エルフィン「三食と寝床の保障、あとはリキア同盟軍の武力を盾にさせて頂ければそれで充分です」

古泉「それだけですか?欲の無いことですね」

エルフィン「! 君は・・・!」

古泉「?」

エルフィン「信じられない・・・彼以外にこんな美しい者が・・・」

古泉「あの・・・」

エルフィン「条件に一つ追加します。彼に私の身の回りの世話を申しつけてください」

ハルヒ・キョン・古泉「はあ!?」

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:00:54.48 ID:tPTlxybP0

鶴屋「ほらっ、言ったとおりにおもしろい人だろっ?」

キョン「嫌な方向にですけどね・・・どうする?」

長門「・・・彼の情報は私たちに必要と考える」

みくる「でも、『重要な情報』って何なんでしょう」

古泉「涼宮さん、僕はどうすれば・・・」

ハルヒ「古泉くん・・・」

ガシ

ハルヒ「ごめんっ!」

古泉「そんなあああああああああああ」


ハルヒ「それじゃあ、その情報を教えてちょうだい」

エルフィン「総督府に『人ならぬ人』がいる・・・そういう噂が流れていました。

      真偽を確かめるために私の手の者を潜入させてみたのです。その者の報告では、

      『人が竜に変身した』と」

ハルヒ「!! 人が?竜になるというの!?」

エルフィン「はい。この地図を見てください。手の者がそれを目撃したのがこの地点・・・」

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:04:40.43 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「うん、総督府の構造は把握したわ」

エルフィン「総督アルカルドは既にエトルリアに脱出。総督府はベルンの将フレアーが守備しています」

ハルヒ「ベルンと手を組んでる事を隠す気も無いのね」

エルフィン「援軍を呼ぶ伝令を何騎か見つけました。見つけた分は始末しましたが、いくらかの援軍は計算に入れてください」

ハルヒ「ベルンの軍ってことは竜騎士はいるの?」

エルフィン「5、6機しかいないようですが、援軍に竜騎士が来る可能性が高いです」

ハルヒ「分かったわ。全軍、援軍が来る前に総督府を落とすわよ!」

エルフィン「くれぐれも『竜』にはお気をつけて」

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:08:14.17 ID:tPTlxybP0

フレアー「おお、来たかアインよ」

アイン「ヨバレタト聞イタ・・・」

フレアー「私はナーシェン閣下にリキア同盟軍のことを報告しに行く。お前はその間、攻めてくる連中から城を守れ」

アイン「・・・ワカッタ」

???「ふーん・・・あれが『人ならぬ人』の正体ね・・・」

フレアー「むっ!? 誰かいるのかっ!・・・・・・気のせいか・・・ではアイン、まかせたぞ」

???「しばらくはここの兵のふりをして『竜』の力を見物しましょうか」

234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:12:15.64 ID:tPTlxybP0

総督府の内部はかなり曲がりくねった構造になっていた。もともと城塞として使う前提の建物なのだろうか。

あのエルフィンとかいう男の地図のおかげで敵の配置は分かっているのだが、それでも幾らかは苦戦する。

ハルヒ「ねえ、こっちの通路って確か倉庫があったわよね?」

キョン「確かそうだったと思うぞ」

ハルヒ「財宝の一つもないかしら・・・喜緑さん、有希、ちょっと行ってきて。その後はあの大きな建物に向かってちょうだい」

長門「・・・了解した」


喜緑「魔道書、宝玉、剣に弓に・・・鞭?使い道はなんでしたっけ・・・」

長門「飛行系のユニットに使用しCCさせるもの」

喜緑「そうでしたね。それにしても、長門さんも私もすっかりこの世界に馴染んじゃいましたね」

長門「住めば都」

喜緑「あ、私だけじゃ持ちきれないんで、何個か持って下さいね」


長門「涼宮ハルヒ達より早く目標地点に到達してしまった」

喜緑「困りましたね・・・あら、あそこで扉の鍵穴を覗いてるのは」

???「どきなさいよそこの兵士!ああ、また別の兵士が来た・・・」

236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:15:29.14 ID:tPTlxybP0

長門「朝倉涼子、そこで何を・・・?」

朝倉「長門さん!?どうしてここに」

喜緑「それは私達が聞きたいんですが・・・」

朝倉「喜緑さんまで・・・それじゃ、みんなこの世界に?」

長門「涼宮ハルヒとその周囲の人物は大半がこの世界に飛ばされている」

喜緑「ちょっと手を貸してください。この世界の設定と現在の状況を送信します」

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朝倉「なるほど・・・私達は同じ孤児院で育ったことになってるのね」

喜緑「そして孤児院はベルンの進行により壊滅、院長は殺害されました」

長門「以上を踏まえてあなたの行動は?」

朝倉「私もあなた達についていくわ。ベルンの『竜』には興味あるしね」

長門「・・・」

朝倉「何よ!べ、別に院長先生の仇討ちとかそんなんじゃないんだから!」

長門「安いツンデレに意味は無い」

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:18:53.35 ID:tPTlxybP0

喜緑「本来ラスボスとして登場予定だった長門さんが三章で登場したから、おかしいと思ってましたけど・・・」

朝倉「ぎくり」

喜緑「やっぱりあなたの仕業でしたか」

朝倉「・・・」

喜緑「ご丁寧に双子キャラで登場するとは」

朝倉「いいじゃないの別に。情報統合思念体も乗り気だったし」

喜緑「乗り気だった?」

朝倉「そうよ。耳を済ませてごらんなさい」

喜緑「・・・?」

ハルヒたちは島の人々を救うために島の北西にある都市ジュトーへと軍をむけた・・・

喜緑「これは・・・章開始時のナレーション?」

朝倉「そうよ。誰も聞いてなかったけど、一章からずっとナレーションは有ったのよ」

朝倉「情報統合思念体のナレーションよ」


喜緑「なんでマルカム博士なんですか・・・」

朝倉「それは私にもわからないわ」

239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:23:19.31 ID:tPTlxybP0

キョン「ふう・・・やっとのことで着いた。この建物だったか?何の建物だよ」

朝倉「総督室よ。ほかの建物から離れてるのは何でかしらね」

キョン「うおっ、朝倉!?」

朝倉「大丈夫よ、今回は刺さないから。それより、この中に何がいるか知ってるわよね?」

キョン「『竜』がいるんだろ?」

朝倉「そうよ。長門さん」

長門「エルファイアー」

長門のエルファイアーは、総督室の扉を吹き飛ばした。

中にいたのは数人の兵士と赤いローブを羽織った貧相な男。男は総督の椅子に深く腰掛けている。

キョン「あの男か?」

朝倉「そうよ、とてもそうは見えないでしょうけど」

ローブの男はゆらりと立ち上がると、懐から血のように真っ赤な石を取り出した。

アイン「・・・燃エヨ」

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:26:15.91 ID:tPTlxybP0

男の体が変形を始める。細い手足は鱗で覆われ、爪は長く鋭くなっていく。

背中からはローブを突き破り、翼と尾が姿を見せる。

顔はもう人の形では無く、例えるなら巨大なトカゲのそれであった。

ゴキゴキと骨の鳴る音とともに男の体が膨らんでいく。

朝倉「普段は人の姿を取っていて、力はあの石に隠している。

   そして、必要となれば力を開放し、全てを燃やしつくす。

   あれが伝説の『竜』よ」

正直なところ、俺が『竜』に対して抱いた感想は、かっこいいなという的外れな物だった。

これだけ人知を超えた存在の前には、恐ろしいだの危ないだのネガティブな感情が湧かないもんだな。

凄いじゃないか『竜』って奴は。これじゃ人間はどうやっても・・・

キョン「どあっふう!?」

長門の蹴りがヒットし、真横に吹っ飛ぶ俺。次の瞬間、さっきまで俺がいた所に炎が降り注ぐ。

キョン「すまん、長門」

長門「いい、油断しないで」

244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:31:05.44 ID:tPTlxybP0

キョン「射かけろ!」

俺の号令で弓部隊が一斉射撃を開始する。

だが、矢は竜の鱗にはじき返されるばかりで、一筋の傷も与えられない。

キョン「だめか・・・クレインさん、お願いします」

クレイン「任せてくれ」

クレインさんはぎんのゆみを所持しており、その威力は俺のはがねのゆみとは比べ物にもならない。

てかハルヒ、軍資金有るんだからもう少しいい弓よこせ。

クレイン「心臓はどこだ・・・そこか?」

ヒュッ、と小気味のいい音がして、ぎんのゆみの為に作られた強靭な矢が飛んでいく。

だが、竜にはやはり通用しない。つまようじが手の甲に刺さった程度にしか効いていないようだ。

クレイン「どうやら、僕たち弓兵では相手にならないようだ、一度後退しよう」

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 12:35:31.10 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「何よあれ・・・人間が闘える相手なの?」

古泉「まるで神人ですね・・・いや、そこまでの大きさはありませんか」

新川「しかし神人より厄介ですね。あれだけ火を吹いていたのでは近づくのも難しい」

ハルヒ「谷口、あんたの出番よ!デュランダルで特攻かけなさい!」

谷口「無理だろ!間合いに入る前に燃やされちまう!」

ハルヒ「ああもう肝心な時に使えない!ドラゴンキラーがあったわよね!?」

輸送隊「どなたかが持ち出されておりますが」

256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:31:17.01 ID:tPTlxybP0

さるさんくらったw本日二度目w


数百の兵士も一体の化け物相手には何の役にも立たないのか。

戦死者は少ないが、リキア同盟軍にはもはや戦意は残されていなかった。

キョン「長門、もういい、退却するんだ!」

朝倉「しっ、もう少し待って」

長門「・・・情報統合思念体とのアクセス完了。許可が下りた」

朝倉「待ちくたびれたわ。喜緑さん、許可下りたわよ」

喜緑「やっと来ましたか」

長門・朝倉・喜緑「限 定 解 除!!」

キョン「なん・・・だと・・・?」

258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:35:57.35 ID:tPTlxybP0

朝倉「私達インターフェースは、ゲームの進行に影響を及ぼさないように、普段は能力に制限が掛けられているの」

長門「その割合は80%」

喜緑「つまり、今の私達の身体能力は先ほどまでの五倍です」

朝倉「本当は使わなくてもいいはずだったんだけど、このドラゴンなにか間違ってるんじゃないかってくらい強いのよね」


そこからの三人の戦いぶりは、戦場の誰もが目を奪われるほどの物だった。

振り下ろされた竜の腕を駆け上がり、背中に攻撃を加える喜緑さん。

少し離れた位置から『ファイアー』を打ち込む長門。

竜の足元に『ミィル』を放ち、その歩みを妨げる朝倉。

竜が炎を吹けば、そこに既に三人の姿は無い。


259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:39:11.54 ID:tPTlxybP0

喜緑「長門さん、朝倉さん、竜の首を持ち上げさせて下さい」

長門「分かった」

攻撃をかわしながら、制限を解除された跳躍力で竜の背に飛び乗る二人。そのまま高速詠唱を開始する。

一瞬三人が視線を交錯させ、次の瞬間喜緑さんが走り出す。

長門「『エイルカリバー』」

朝倉「『リザイア』!!」

風の刃が竜の鱗を切り裂き、闇から延びる手がその血を吸いこんでいく。

今までとは段違いの苦痛に竜がその身を反らす。

喜緑「お二人とも、ご苦労様です」

手にしていたナイフを腰に戻すと、背中のマントから一本の長剣を取りだした。

喜緑「・・・ふっ!」

腹の底から絞り出すような気合とともに、竜の首元にその剣を突き刺す。そして、脚力で強引に体ごと走らせる。

二秒後、大量の鮮血と共に、竜の巨体が崩れ落ちた。

喜緑「流石ドラゴンキラー、朝倉さんのナイフとは比べ物になりませんね」

260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:41:48.06 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「これが・・・『竜』の力なの・・・? なんとか倒すことができたけれど・・・」

キョン「んー、まあ、確かに反則的な力ではあったが・・・」

ハルヒ「ベルンはこんなものを蘇らせたの?一体あと何体こんなものがいるのよ!?」

キョン「おい、ハルヒ・・・」

ハルヒ「あんな化け物相手に人間がどうやって戦っていけばいいっていうのよ!?」

キョン「ハルヒ!!」

声を普段より二段階ほど大きくして叫ぶと、ハルヒの肩がビクリと震える。

キョン「気持ちは分かるがしっかりしろ。軍のリーダーがうろたえてたら皆が不安になるだろう?

    だいたいお前はそういうキャラじゃない。いつも無駄にやかましくて、一人で突っ走っていくキャラだろう」

ハルヒ「ちょっと、キョン、それどういう意味よ!?」

キョン「言葉通りの意味だ。」


エルフィン「さて、お二人が仲良く喧嘩なさっているところ失礼ですが、耳よりの情報を入手しました」

キョン「仲良くは余計だが話せ」

エルフィン「はい、ここから数キロほどの地点に洞窟があるようですが、そのなかに神将器のひとつが眠っているそうです。

      名前を『天雷の斧 アルマーズ』。これを手に入れれば、竜との戦いはさらに楽になるでしょう」

261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:45:25.80 ID:tPTlxybP0

キョン「いくらなんでもあの竜は強すぎたな。あんなもの、いくら神将器を集めたって無理な気がするが・・・」

朝倉「そう、そこが問題なのよ」

キョン「うおっ!後ろから近寄るな!」

朝倉「二回目なんだから慣れてくれる?刺さないって。それより、さっきのあれ、異常な強さだったでしょ?」

キョン「ああ、なにかの間違いのような強さだったな」

朝倉「本当に間違いだった、としたら?」

キョン「・・・どういう意味だ?」

朝倉「ポケモンの初代作をプレイしたことは有る?」

キョン「唐突だな・・・緑ならプレイしたことはあるが」

朝倉「急に博士が訳の分からない事を喋りだしたり、リザードを連れたまま進まない話を繰り返したり

   そんなのには飽き飽きしてたんだけどね」

キョン「話が見えないが」

朝倉「さっきの竜、アインって名前なんだけどね。これがパラメータなの」

キョン「これは・・・守備40!?力35!?HPは・・・もう欄に入ってないぞ!?これはどういう事なんだ!?」

朝倉「いわゆる"バグ"よ」

263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:49:17.04 ID:tPTlxybP0

朝倉「古泉君が涼宮さんに貸したソフト・・・もう7年も前のものなの。そろそろ内部の記録用電池も切れかけてる。

   しかもこのゲームは他のゲームに比べるとセーブの頻度が多いわ。オートセーブがあるからね。

   そのせいかしら?ときどき挙動がおかしくなるの」

キョン「それは怖いな・・・これからもこんな事があるのか?」

朝倉「可能性としてはね。いつ起こるかは分からないけど。だけど安心して。打つべき手は打っておいたから」

キョン「何をしたんだ?」

長門「天蓋領域のインターフェースとの双方向通信を確立した。これよりセーブデータをPCへと移行する」

キョン「長門・・・どういう事だ?」

長門「私達は現在、16進数で表示されるただのデータ。元の世界の物体に干渉する事は出来ない。

   しかし、天蓋領域のインターフェースからの働きかけにより、微小のデータを転送する事が出来るようになった」

朝倉「それで、こっちの現在の状況・・・バグの詳細とかね。そういうデータを送って、修正用のデータを作ってもらったの。

   いったんセーブデータをPCに移してデータを修正し、電池を換えたカートリッジに移し替える。多分これで全ては解決するわ」

キョン「なんだか・・・ゲーム一つに大袈裟な騒ぎだな。これで大丈夫なんだな?」

朝倉「涼宮さんが、『バグみたいに強い敵が出て欲しい』とでも望まない限りはね」

キョン「それは明らかな再発フラグだな」

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:52:26.99 ID:tPTlxybP0

エルフィン「・・・ですが、それでは・・・」

ハルヒ「だけど、神将器なしでベルンと戦うのは辛いわ。ここは戦力を裂いてでも確保するべきよ」

キョン「何の話だ?」

エルフィン「ええ、これからの進軍のことなのですが・・・

      アルカルドがベルンと手を組んでいることが明白になった以上、我々がこの地にいるのは危険。

      一刻も早く取って返し、エトルリアの上層部と接触しなければ」

ハルヒ「だけど、神将器なしでベルンと戦う訳にもいかないでしょ?だから、軍の何割かを裂いて回収に充てようと思うんだけど」

エルフィン「しかし、大軍とは言えないこの軍をさらに分ける事は・・・」

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:55:16.77 ID:tPTlxybP0

新川「その話、聞かせて頂きました」

森「私達にお任せ下さい」

キョン「新川さん、森さん、あなた達が?」

新川「私達に50程の手勢を与えてくだされば、アルマーズを入手して軍に合流して見せましょう」

森「どうぞ、ご命令を」

ハルヒ「二人とも、頼もしいわね!それじゃ早速行ってちょうだい。それから、道案内にエキドナさんもよろしくね!」

鶴屋「任せるっさー!」

古泉「それでは、行ってきます」

エルフィン「おっと、一樹君は駄目だ。君は私のお付きなんだから・・・」

古泉「・・・助けて下さい」

キョン「無理だ」

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 13:59:09.97 ID:tPTlxybP0

伝令兵「伝令!エトルリア本国より伝令!王都アクレイアでクーデター勃発!!」

ハルヒ「何ですって!?」

伝令兵「クーデターの首謀者は宰相ロアーツ、西方三島総督アルカルド。

    この両名を中心に組織されたクーデター派はまずモルドレッド国王を捕えた後、

    ベルン王国とともに世界を二分すると宣言しています!」

みくる「セ、セシリアさんとギネヴィアさまは無事なんですか?」

ハルヒ(みくるちゃんいたんだ)

キョン(そういえば朝比奈さんもいたんだな)

古泉(彼女もいたんでしたね)

長門(失念していた)

伝令兵「セシリア魔道軍将は事前に情報を得、からくも王都を脱出。大陸の西端、ミスル半島へ向かっておられるらしいとのことです」

ハルヒ「のこりの軍将は?」

伝令兵「国王陛下を人質に取られ、クーデター派についているとか」

キョン「ハルヒ、どうする?」

ハルヒ「ミスル半島に進軍!まずはセシリアさんと合流するわ!」

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:02:51.46 ID:tPTlxybP0

大陸の西端、ミスル半島のそのまた西の端、朽ちかけた古城に俺たちは到着した。

遠くからは剣戟の音が聞こえてくる。

伝令兵「伝令!ベルン軍は城に攻撃を加え続けているものの、セシリア将軍の抵抗にあい、膠着状態が続いているようです!」

ハルヒ「行くわよ!ベルン軍なんか蹴散らしちゃいなさい!」


ナーシェン「くそっ、あの生意気な鉄仮面女、またしても私の邪魔を・・・!」

ゼフィール「手こずっておるようだな、ナーシェン」

ナーシェン「こ、これは陛下!?いつこちらに・・・」

ゼフィール「先ほど着いたばかりだ。どうやらエトルリアの将軍が頑張っておるようだな」

ナーシェン「は・・・早急に攻略いたしますので・・・」

ゼフィール「構わん。わし自らがその者の相手をしてくれる。よい座興だ。ナーシェン、案内をいたせ」


セシリア(みくる大)「これなら、援軍が来るまで持ちこたえられる筈・・・」

ゼフィール「ほう、貴様が『魔道軍将』セシリアか」

セシリア「ベルン国王・・・!」

ゼフィール「貴様の戦いぶりに免じて、わし自らが相手をしてくれよう」

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:06:07.48 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「城が落ちたですって!?さっきまで大丈夫って話だったのに?」

キョン「ベルン国王自ら動いたって話だからな・・・セシリアさんは大丈夫なのか?」

エルフィン「普通に考えれば可能性は低いですが、一つ望みがあります」

キョン「望み?」


ナーシェン「陛下、もしよろしければ、この女を私にお預け願えないでしょうか?」

ゼフィール「ん?」

ナーシェン「この女には少々恨みがございまして。たっぷり思い知らせてやりたいと・・・」

ゼフィール「・・・まあ、いいだろう。好きにしろ」

ナーシェン「ありがたき幸せ。おい、城の牢を『使える』ように準備しろ」

兵士「はっ」

ゼフィール(・・・何をだ?)


エルフィン「敵将ナーシェンは、一言でいえば『変態』です」

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:09:52.98 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「城までの道は二通りあるわ。谷口と国木田の騎馬隊、古泉君の重騎士部隊は北から進軍。

    私の主力は南から進むわ。有希たち魔法部隊は遊撃軍、ディークさん達傭兵部隊も遊撃ね」

キョン「おい、騎馬隊と重騎士を同時に行動させるのは無理が無いか?」

275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:11:13.95 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「この戦場、東西に長いのよ。たぶん挟み打ちを狙ってくる。重騎士が後ろの敵を止めている間に騎馬隊で城を衝く、そういう戦法を狙ってるの。

    それに、私以外で奇襲を受けたときに軍を立て直せるのはエルフィンだけでしょ?エルフィンは古泉君にべったりだし」

キョン「あー、まあいいか。俺達弓兵隊は?」

ハルヒ「森に隠れて先行して。敵軍のアーチを奪い取って、飛竜部隊を打ち落としてちょうだい」

キョン「分かった」


城を落としたと油断しているベルン兵を追い払うのは簡単だった。アーチを奪い取り矢を番える。

問題なのはそれ以降だ。ハルヒの予想通り、後方から敵の援軍が出現する。

予想が出来ていたとはいえ、急な敵の増援は辛い。得に俺たちは近接戦闘には向いていないのだから。

まあそこは、なんだかんだで頭のいいあいつの事、遊撃部隊がすでにこちらにまわってきている。

俺たちは前方の飛竜部隊に集中した。

キョン「しかし、もう飛竜もなれちまったな。オスティアの時はあれだけ恐ろしかったのに」

クレイン「君が強くなったからだと思うよ。もうじき僕よりも強くなるんじゃないかな」

キョン「でも、装備は相変わらずはがねのゆみなんですが」

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:14:47.40 ID:tPTlxybP0

エルフィン「騎馬隊を何人か後ろに回してくれ。重騎士は左翼を後退、受け流すように相手を通過させて」

古泉「はい、通過させた相手は?」

エルフィン「騎馬隊に任せる。適当な所で左翼を戻し、残った敵を遊撃部隊と挟撃する。進軍はその後だ」

古泉「了解しました。しかし、ただの野良軍師とは思えないほどの的確な指示ですね。だれか師がいるのですか?」

エルフィン「ああ、とても素晴らしい師がいるよ」

伝令「報告!エトルリア騎士軍将の部隊を発見!攻撃はせず戦場を静観しているようです!」

エルフィン「何だって!?パーシバルが戦場にいる!?」

古泉「あ、エルフィンさん、どこへ行くんですか!?」

エルフィン「彼に会いに行くんだ!止めても無駄だ!」

古泉「仕方が無い、長門さんか朝倉さん、ここの指揮をお願いします!」

279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:19:55.31 ID:tPTlxybP0

パーシバル「ベルン国王が城を攻撃した?話が違う。国内のもめごとは我々の手で片付けるという約束だったはずだ」

兵士「将軍閣下、我々は・・・」

パーシバル「・・・撤退の用意だ。この戦場に我々のいる意味は無い」

エルフィン「パーシバル!」

パーシバル「あなたは、まさか・・・!いや、ありえん、王子は亡くなられたのだ・・・」

エルフィン「・・・信じられなくとも無理はない。死んだはずの私が、今、この場に立っているのだからね」

パーシバル「ミルディン王子!生きておられたのか・・・?本当に・・・」


古泉「ふう、重騎士の足では、なかなか追いつけませんね。おや、あれはエトルリアの・・・!?」

パーシバル「ああ、王子、よもや再びあなたをこの手に抱ける日がこようとは!」

エルフィン「長く心配をかけた。こうして会う日をどれだけ待ちわびたことか・・・」

古泉「あの、後ろを向いてらっしゃるエトルリア兵の皆さん、これはどういう事でしょう」

兵士A「私達は何も見ていません何も聞こえません見えていてはならないのです」

兵士B「エトルリア軍騎士軍将ともあろう方が今何をしているかなど私には見えていないのですええ見えていないのです」

古泉「はあ・・・」

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:23:15.54 ID:tPTlxybP0

古泉「そろそろ三十分ほどになるのですが、もういいですか?」

エルフィン「ああ、すまない、君の事を忘れていたね。パーシバル、この軍で素晴らしい少年を見つけたんだ」

パーシバル「ほお・・・クレイン以来の逸材ですね。君の名前は?」

古泉「こ、古泉一樹です」

パーシバル「一樹君か・・・覚えておこう」

エルフィン「さて、パーシバル、私達はこれからあの城を攻める。力を貸してくれるか?」

パーシバル「どうかご命令を。私が剣をささげた主はあなた一人です、ミルディン王子」

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:25:20.50 ID:tPTlxybP0

ナーシェン「なに?リキア同盟軍だと!?奴等はジュトーで始末したのではなかったかフレアー!?」

フレアー「い、いえ、竜を置いてまいりましたので、まさか生き延びているとは・・・」


ナーシェン「お前それマジ?」

フレアー「はい」

ナーシェン「お前は馬鹿か!?いくら強いと言ってもリキア同盟軍一匹で壊滅させられるわけないだろ!?

      何のために私の精鋭の半分を預けたと思ってるんだよ!?無傷で帰ってきたからおかしいとは思っていたけどさ!

      私の立場どうなるの!?お前の上官の私の!?ああどうしようどうしようどうしよう私の面目が・・・」

フレアー「ナ、ナーシェン様、私たちは一体・・・どうすれば・・・」

ナーシェン「仕方がない・・・フレアーよ。私は一度エトルリア王都に戻りそこで奴らへの対策を練る。おまえはここに残れ。

      倒せとまでは言わん。できるかぎり打撃を与え、兵力を削っておくのだ」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:28:19.33 ID:tPTlxybP0

パーシバル「敵将はナーシェン将軍だと聞いていたが・・・」

フレアー「私とてベルンの竜騎士、意地を見せてやるぞ!!」

パーシバル「意地など一対一の戦いでは意味が無い」

飛竜を舞い上がらせ、槍を構えて急降下してくるフレアー、馬上で不動の構えを取るパーシバル。

すれ違った刹那、パーシバルの槍がフレアーを貫いた。

フレアー「お・・・覚えておけ、私以上の将はいくらでもいる。大陸最強たるベルン軍は貴様らを生かしておかぬ・・・」


284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 14:31:37.98 ID:tPTlxybP0

キョン「古泉、あの人は確か・・・って、顔色悪いぞどうした?」

古泉「いえ、見てはいけない世界を垣間見てしまいまして」

エルフィン「流石だ、パーシバル。さらに腕を上げたな」

パーシバル「王子が亡くなられたと思ってからは、鍛錬と軍務以外にする事がありませんでしたので」

エルフィン「そうか・・・だが、今日からはそれも終わりだ。また以前のように可愛がってくれ」

パーシバル「もちろんです」

キョン「えーとあれはどういうことかな古泉君」

古泉「あなたまで壊れないで下さいね。僕の精神はもう限界に近いのですから」

エルフィン「そうだ、一樹君も今夜は一緒に」

キョン「おお、重騎士が走った」

345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:26:49.92 ID:tPTlxybP0

残ってるとは思わなかった


ミレディ「失礼、リキア同盟のハルヒ将軍ですか?」

ハルヒ「そうだけどあなたは?」

ミレディ「私はベルン竜騎士のミレディ。貴軍に投降したい」

キョン「投降?いきなり何を・・・」

ミレディ「信用してもらえないのはもっともです。ですが、これを見てくだされば・・・ギネヴィア殿下、どうぞこちらへ」

ギネヴィア「お久しぶりです、ハルヒ将軍」

ハルヒ「ギネヴィア様!もうベルンに連れて帰られたかと・・・」

ギネヴィア「このミレディが助けてくれたのです。みくる、あなたにも心配をかけましたね」

みくる「ふええええ〜」

ミレディ「セシリア将軍は、この城の地下牢に監禁されています。鍵はここに。

     ナーシェンの部下を締め上げて見つけ出しました」

347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:31:09.21 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「この地下牢ね・・・セシリアさん!」

みくる大「はいっ!?えーと、仮面仮面・・・あった!」

ハルヒ「大丈夫でした?助かってよかった・・・」

みくる大「ええ、この子が助けてくれたから」

周防「――――――」

ハルヒ「この子は?」

みくる大「『ナバタの里』の巫女なんですって。東のナバタ砂漠にある里らしいんだけど、ベルンの攻撃を受けているんだとか」

ハルヒ「ねえ、なんでベルンの攻撃を受けてるの?」

周防「――分から―――ない―――――竜がいる―――から――――?」

ハルヒ「竜?あなたの里には竜がいるの?」

みくる大「この子に説明させると時間がかかるから、私が聞いたことを話すわね。」

大きい方の朝比奈さんの説明によると、彼女、周防九曜は、東の砂漠にある『ナバタの里』の巫女である。

ナバタの里は遠い昔、竜と人とが手を携えて作った理想郷だと言うのだ。

そのことがどういう訳かベルンに伝わり、ベルンの軍が里を襲撃しているという訳だ。

別に長い話でもないのだが、彼女に喋らせれば十分は掛かっただろう。


348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:34:17.92 ID:tPTlxybP0

長門「あなたは?」

周防「周防――九曜――――」

長門「くぉ・・・?」

周防「――私の――台詞―――」

349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:37:22.67 ID:tPTlxybP0

長門「・・・・・・・・・」

周防「―――――――――」

朝倉「あら、その子は・・・データの移行の時はありがとうね」

周防「―――――――――」

朝倉「・・・反応に困る子ね・・・それはいいわ。あなたもシャーマン?魔道書は持ってる?」

周防「――――持って――ない――」

朝倉「そうなんだ。それじゃ、私の予備のあげるわね。こっちはミィル、二冊あるから。こっちはリザイア、大事に使ってね」

周防「――――」

朝倉「どうしたの?」

周防「―――重くて―――動け――ない―――」

長門「闇魔道書は魔道書の中でも群を抜いて重い。小柄な彼女がそれだけの数を運ぶのは不可能」

朝倉「・・・仕方が無いわね。私が持っててあげるから、使うときに言いなさい。分かった?」

周防「――分かった――――」

喜緑「あらあら、いいお母さんになれそうですね」

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:43:23.61 ID:tPTlxybP0

ナバタの里防衛線と、そこで拾った竜の女の子絡みのゴタゴタは省略する。

特に語るほどの事も無かったからな。強いて言えば、神将器の一つフォルブレイズが、ナバタの里に眠っていたことか。

あと、軍中の強さのランク付けが大きく動いた事もあるかも知れない。

朝倉「長門さん、それは何?」

長門「焼き菓子。輸送隊の手伝いをしたら貰った。あなた達の分もある」

喜緑「いいですね。それじゃ、私はお茶を用意します」

長門「周防九曜、あなたも食べる?」

周防「―――食べ――る――」

古泉「和やかですねえ」

354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:45:26.84 ID:tPTlxybP0

キョン「あれが俺たちの軍の最強精鋭部隊なんだよな」

周防九曜の加入によって、ただでさえ異常な強さだった三人組の戦力がさらに飛躍的に向上した。

軽快なフットワークと手数の長門、一撃の朝倉、神出鬼没の周防。それに喜緑さんのナイフ術が加わるのだ。

攻撃の選択肢が一つ増えることの恐ろしさは、某チート悪魔がアメフトで証明している。

砂漠に展開していたベルンの将ランディのあの涙目はちょっとしたトラウマになりそうだった。

いまやあの四人は、それだけで100の兵をも圧倒する最強部隊なのだ

喜緑「紅茶が入りましたよー」

朝倉「私もお菓子なら少し持ってるから、これも一緒に食べましょう」

長門「いただきます」

周防「――――いただきます――」

キョン「なんだかなあ」

355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:48:37.74 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「ここが王都アクレイアね。この城壁を越えていくのは流石にキツイわね」

サウル「その心配はありません、ハルヒ様」

ハルヒ「あら、谷口の親戚じゃない」

サウル「彼とは共感できるところがありますが違います。それより、エリミーヌ教団より使いが来ました。

    市民を決起させたことで、クーデター派の市街戦続行は不可能。クーデター派は城内に籠ったそうです」

ハルヒ「ふーん、エリミーヌ教団も凄いわね。損害の大きい市街戦は避けられるなら・・・」

キョン「ハルヒ、どういう作戦を取るんだ?」

ハルヒ「騎兵、天馬騎士、竜騎士は城外待機、脱走しようとする敵兵を撃破。歩兵は城内に突撃。王道としてはこんなとこね」

ミスル半島での戦闘で、ギネヴィアさんのお付きの竜騎士ミレディさんが俺たちの軍に参加した。

その部下数名も俺たちの軍に加わっているのだ。

358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:53:23.96 ID:tPTlxybP0

キョン「騎馬隊を全部城外に置くと、結構な数になるぞ?城内で苦戦すると思うが」

ハルヒ「段差一つ越えるのに苦労する騎兵が何人もいたって城の中では邪魔なだけよ。

    それに、クーデター派はまともには戦おうとしないはずよ」

キョン「なんでそう思う?」

ハルヒ「クーデター派のトップは、西方総督アルカルドと宰相ロアーツ。

    ロアーツは文官で軍は持たない、私兵は囲っているけどその練度は正規軍の足元にも及ばないわ。

    アルカルドの兵はほとんど西方三島に置き去り、手元にいるのはベルン兵だけのはず。

    たぶんもう脱走の準備を整えてるわよ、どっちも」

360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 18:56:21.35 ID:tPTlxybP0

キョン「・・・・・・」

ハルヒ「それに、ベルンはいつまでもエトルリアに手を貸しているはずが無いわ。ミスル半島とナバタ砂漠で結構な数の部隊を失ってるんだから。

    兵力を分散させるよりは、手勢をサカとイリアの軍に合流させて私達を引き込もうとするわよ。

    その方が地形も熟知してるし・・・ってどうしたのよ、ポカンとアホ面曝して」

キョン「いや、改めてお前は凄い奴だと思ったんだよ」

ハルヒ「な、何言ってるのよ今さら!もう何年の付き合いになると・・・」

キョン(ああ、そういえばこっちの世界では俺達は乳兄弟なんだっけな)

ハルヒ「ちょっとキョン!?」

キョン「ああ、すまんすまん」

361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:00:02.11 ID:tPTlxybP0

エトルリアの王城はやや装飾過多な気もするが、その守りも堅かった。

俺たちの手勢はいくつかの部隊かに分かれ、一斉に城内に突撃した。

ハルヒの本隊に俺の弓兵隊の混合部隊、ディークさんの傭兵部隊、佐々木率いるオスティア重騎士団、長門たちの魔法部隊。

場外は既に、谷口と国木田のリキア騎馬隊、地味な人のイリア傭兵騎士団が包囲を固めている。

キョン「ハルヒ、敵兵の鎧を確認したんだが、やっぱり残ってるのはベルンの兵だけだ」

ハルヒ「そうでしょ?この程度の数なら、私達だけでも十分張り合えるのよ」

キョン「ああ、そうだな。撃ち方やめ、下がれ!」

ハルヒ「展開!残った敵を押しつぶしなさい!」

城内の小ホールに集まっている敵兵達が目に見えて減っていく。

ハルヒ「このまま玉座まで一直線よ!全軍突げ・・・」

キョン「ハルヒ、伏せろ!!」

362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:03:51.47 ID:tPTlxybP0

古泉「大丈夫ですか?佐々木さん」

佐々木「ああ、重騎士の鉄壁の守りのおかげで傷一つないよ」

古泉「それはよかった。貴女の身に傷一つでもつけては、我々重騎士の恥ですからね」

佐々木「くつくつくつ、君は忠義の臣がよく似合うよ。いや、よく板に付いているというべきかな?」

古泉「お褒めに与り光栄です。最近は疲れる人の下についていましたので、今日は気分がいいんですよ」

佐々木「君が疲れるほどとは、よっぽどの人だね・・・おや、あれは?」

古泉「危ない、伏せてください!」


長門「この部屋の敵全ての排除を確認した」

朝倉「次は分かれ道ね。左に行けば涼宮さん達と合流、右に行けば玉座へ直行だけど」

喜緑「私たちの戦い方なら、むしろ味方がいない方が楽ですね」

長門「右へ」

周防「――――――――」

朝倉「どうしたの、周防さん?」

周防「―――何か―――来る――――」

喜緑「?・・・危ない!」

364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:07:05.95 ID:tPTlxybP0

ナーシェン「私は強い!私は賢い!私は美しい!私は正しい!誰よりも・・・誰よりもだっ!はーっはっはっはっは!」

ベルン飛竜兵「将軍閣下に続けーっ!後れを取るな!」

キョン「な、何だあいつは・・・城の中を飛竜ですっ飛んできやがった・・・」

ハルヒ「呆れてる場合じゃないわよキョン!早く皆を広い所まで下がらせて!」

キョン「いや、俺の弓で打ち落としちまえば・・・」

ハルヒ「自分の頭の上にトン単位の鉄槌を降らせたいの!?早く!」


古泉「くっ、佐々木さん、お怪我は・・・」

佐々木「てやりがちょっと掠っただけだ。心配はいらないよ」

古泉「まさか、城内で飛竜を飛び回らせるとは・・・」

佐々木「イリアの天馬騎士ですら難しい芸当だろうに、それをあの巨体でやってのけるんだからね。

    本当にベルンの兵の練度には頭が下がるよ」

古泉「感心している場合では無いですよ。第二波が来ました」

佐々木「重騎士隊、身を守ることだけに専念してくれ。攻撃が止んだら広間まで下がろう」

366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:11:39.12 ID:tPTlxybP0

長門「城内での飛竜の運用・・・前例が無い、危険すぎる」

喜緑「あの速度、風圧・・・対処は難しいですね」

朝倉「馬鹿は何をするか分からないから怖いわ・・・周防さん、どこに行くの?」

周防「――広間―――広ければ――安全―――」

喜緑「確かに、この狭い通路では、飛竜の攻撃をかわすのは辛いですね。広間まで下がりましょう」

367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:13:41.51 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「どうにか広間まで逃げられたわね・・・今のうちに体勢を立て直すわ。キョン、負傷兵は?」

キョン「二割くらいは使い物にならないな・・・朝比奈さんが治療してるが、すぐに戦うのは無理だ」

ハルヒ「被害は大きいわね・・・あら?佐々木さんに古泉君?」

佐々木「飛竜部隊に攻撃されて退却してきたの」

古泉「ここなら迎撃にも向いていますし、体勢を立て直すのにもよいかと」

長門「私達も退却してきた」

朝倉「いくらなんでも城内に飛竜を飛び回らせるなんて思わなかったわ」

ハルヒ「皆ここまでよく来れたわね」

古泉「攻撃が一度緩みましたからね」

長門「その機を逃す手はないと思った」

ハルヒ「・・・」

368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:16:25.03 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「しまった!全軍散開!陣形なんてどうでもいいから、広間から出て!」

キョン「おい、何でだハルヒ!そんな無茶苦茶な命令が有るか!?」

ハルヒ「いいから早く!早くしないと手遅れに」

ナーシェン「もう遅い!工作部隊、やれっ!」

通路から現れた魔道士達が、一斉に天井へ向かって魔法を放つ。

シャンデリアが飛び散り、欠けた天井が雨あられと降り注ぐ。

二十メートル近い高さから落下してくる瓦礫は、屈強な戦士の振るうハンマーの如く、鎧と頭蓋を打ち砕く。

混乱に陥るリキア同盟軍。そこにナーシェンの部隊が突撃してくる。

ハルヒ「静まれ!静まりなさい!」

ナーシェン「これで終わりだ!私の栄光の為に死ねえっ!」

370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:20:23.96 ID:tPTlxybP0

???「そうはさせないっさー!」

キョン「まさか!」

古泉「その声は!」

パリーン!天井のステンドグラスを突き破り飛び込んでくる一つの影。

影は手にした巨大な斧で一体の飛竜を叩き斬ると、そのままナーシェンに飛びかかった。

キョン「鶴屋さん、戻ってきたんですね!」

鶴屋「あたしだけ新川さんの馬に乗って全力で走ってきたんだよ!

   見るがいいっさ、鶴屋流戦斧術『鶴雷』!」

ナーシェン「ぐおっ・・・この女・・・おい、お前たち、はやくこいつを仕留めろ」

キョン「そうはさせるか!、撃て!」

鶴屋さんの勇姿に鼓舞されたリキア同盟軍は、混乱状態から脱出しかけていた。

俺は弓兵に喝を入れ、ナーシェンの周りの飛竜を打ち落とさせる。

375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:25:20.79 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「ようやく落ち着いたわね!こうなってしまえば私達が有利よ!」

ナーシェン「まだだ、まだ終わってはいないぞ!これだけの数の竜騎士を相手に貴様らが・・・」

ハルヒ「これだけの数、は私達のセリフよ。あんたのそのハリネズミ状態の飛竜だけで、

    これだけの数の兵と戦えるのかしら?」

ナーシェンの周りの飛竜は、一頭、また一頭と墜落していく。

残っている者も既にふらつき、とても戦える状態ではなさそうだ。

ナーシェン「おのれ・・・おのれえっ・・・!」

竜の手綱を引き、天井近くまで飛び上がるナーシェン。槍を構え俺たちを睨みつける。

ハルヒに槍の穂先を向け、飛竜に鞭を入れる。

ナーシェン「貴様ら如きにっ、貴様ら如きにぃっ!」

弓兵隊の矢、魔道部隊の魔法が、ほぼ同時にナーシェンの体に吸い込まれていった。

377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:30:02.08 ID:tPTlxybP0

ハルヒ「キョン、軍の被害は?」

キョン「今までに無いくらいの大損害だな。治療をしても復帰できないだろう兵士が一割、復帰に時間のかかる兵が二割。

    一週間以内に治るだろう負傷兵が全体の四割だ。戦死者もそれなりの数がいる」

ハルヒ「予想以上の損害ね・・・」

キョン「だが、エトルリアの正規軍が合流したし、鶴屋さんは西方三島からレジスタンスを連れてきてくれた。

    負傷兵の治療が終われば、今までの倍近い兵士を用意できる」

ハルヒ「そうね。エトルリアを奪還したことで、リキア同盟内の日和見派も兵を差し出し始めたし。

    これならきっとベルンとも互角に戦えるはずよ」

キョン「やっぱりベルンに攻め込むのか?」

ハルヒ「当然よ。守ってばかりじゃ埒が明かないわ。戦の火種は元から断つのが一番、分かってるでしょ?」

キョン「ああ、そうだな」

ハルヒ「そろそろ軍議が始まるわよ。ついてきなさい、キョン!」

キョン「おう!」

俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ!

一部完

380 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:35:26.03 ID:tPTlxybP0

二部完成は何ヶ月後か分からないけど頑張るぜ
皆さん、優しく見守って下さりありがとうございました
けっこう小ネタに食いついてくれておもしろかったです
以降は封印・烈火雑談スレとしてお使い下さい

388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:55:58.91 ID:tPTlxybP0

なんか書いたけど没にしたネタが二つあった


省略された場面、1 鶴屋さんとギース


鶴屋「やあやあギース君ギース君、船はあるかい?」

ギース「部下が皆逃げちまった」

鶴屋「にょろ〜ん」


ギース「・・・戦争のおかげでまともに商売なんてできなかった。だから俺は部下を集めて説得したんだ。

海賊になるって」

鶴屋「かっこいいにょろー」

ギース「だけど皆ただの船乗りだろ?出発の朝になって腹が痛いだの船酔いしただの、結局出発は次の日に

延期だ」

鶴屋「にょろ〜ん」

389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 19:58:08.21 ID:tPTlxybP0

ギース「最初の獲物は楽なのがいいなと思って小さな商船に目をつけた。大した戦いも無く制圧できたんだが・・・

    船の中を見てみれば金目の物が無い。聞いてみれば俺たちと同じで、商売が出来ないから海賊でもやろうかって連中だった」

鶴屋「にょろ〜ん」

ギース「そんな話をされちゃ手出しできねえ。結局見逃したさ」

鶴屋「ギース君は海賊に向いてないによろね」


ギース「金持からなら奪ってもいいだろうってことで、大型商船に目をつけた。今度は遠慮はいらねえ、勇んで近づいていったのさ」

鶴屋「ふんふん、それでどうなったんだい?」

ギース「覆いがはがれて、シューターだの弓兵だのがズラリだ。ベルンの警備船だよ」

鶴屋「にょろ〜ん」

ギース「さんざん弓射かけられて三日三晩追っかけ回された。なんとか逃げのびたが・・・

    船はぼろぼろ、金は1Gも入らねえ。部下どもは泣き出すし金はねえし、あん時は俺も泣きたくなったぜ・・・」

鶴屋「にょれろ〜ん・・・」

390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/17(日) 20:00:10.00 ID:tPTlxybP0

省略された場面、2 佐々木とガレット



ガレット「いいか、無駄な殺生はするなよ。目標はあの村だ。行くぜ!」


ガレット「・・・?何だあの女・・・おい、どけ邪魔だ!」

佐々木「エルファイアー!」

ガレット「うわっ!?ぎゃぁぁあぁぁぁぁ!!」

山賊「ガレットのアニキー!!」

キョン「おおー、クリティカル出たな」

佐々木「村の封鎖は済んだ。さあ、涼宮さん達の援護に戻ろうか」



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