1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/04(月) 21:45:36.33 ID:w5V1SP5W0
そう呟いたハルヒの格好はズタボロだった。
髪はボサボサ、左頬は腫れ上がっており明らかに殴られた形跡が見て取れる。
ブラウスはビリビリに破れ乳首が露出している。
スカートはほぼ原型をとどめておらず、ブラウスによってギリギリ陰部が隠れている程度
太腿には鮮血がこびり付いている。靴は脱げており、片方は裸足だった。
全員が凍りつく中、キョンを見つめるハルヒ。
その目に光はなく、虚無を見つめ続ける。
みくる「しゅ・・・・涼宮さんッ!!!」
慌てて駆け寄ったみくる。
ハルヒを抱きしめ涙ながらに介抱する。
しかし介抱の仕方がわからない・・・そもそもみくるにはハルヒにかけてやる言葉すらなかった。
ただ強く抱きしめ泣き続けるみくる。
その思いにハルヒの頬を涙が伝った。
キョン「・・・朝比奈さん、そんな汚い女触っちゃ駄目ですよ」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:14:29.37 ID:bpCNWNuWO
ちょっと続き書いていいー?
「どういう…つもりですか?」
「どういうつもりも何も、ありのままを言っただけだ」
「貴方という人はっ…!!」
古泉が拳を振り上げる。
こんなにも憎しみを込めた目をする古泉を見たのは初めてだ。
ガッ
「つぅ…」
渾身の右ストレート。
壁に頭がぶち当たり、脳みそが揺れた。
超能力者は目の前で泣きそうに瞳を光らせ、荒い息を上げている。
「貴方は…最低だ…!!」
「そうかもな」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:26:01.10 ID:bpCNWNuWO
「どうして、どうして貴方はあんなことを言ったんですか!」
「彼女が、女性として最も苦しんでいる時に!」
胸倉を掴む古泉は、そりゃもう必死な顔だった。
「何だよお前、必死になりすぎゃじゃね?」
「…は?」
信じられないというように、目の前の瞳が見開かれる。
「たかだかハルヒが犯されたくらいで、騒ぎすぎなんだよ」
「あ、あなた、一体何を言って…」
ったく、何で俺がそんな目で見られなくちゃいけねえんだよ。
「あいつ、あの様子だとしばらくは考えることも出来ないんじゃないか?」
不思議探索やら罰金やらは、きっとあいつの頭から吹っ飛んでいるだろう。
「呼び出しもないし、別にイライラしてる訳じゃない。お前も閉鎖空間から解放される。万々歳じゃないか」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:39:59.08 ID:bpCNWNuWO
震える唇で、古泉は言った。
「貴方は…誰ですか?」
◆
無感動な俺を置いて、古泉は部室へ戻っていった。
フラフラしてたが大丈夫かね、あいつ。
「…帰るか」
鞄は部室に置いたままだ。
まあ、なくたって困らないから別に良いか。
「よおキョン!」
「ん?ああ、谷口か」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:40:41.63 ID:bpCNWNuWO
古泉によってに引き摺り出された裏庭で、偶然にも谷口に遭った。
「お前今SOS団の活動中じゃ…って何だよその顔!!」
「ああ…ちょっとな」
「うわあ、すげえ腫れてるぞ…大丈夫なのか?」
指先で患部をつついてくる谷口の頭をはたく。
自覚したら痛くなってきたからやめろ。
「もしかしてまた涼宮関係か?」
「ああ…まあ」
「…お前には悪いが信じらんねえな。何が嬉しくてそんな怪我までしてアイツに付き従う必要があるんだよ」
珍しく乱暴に谷口が呟いた。
俺は笑いながら、
「なに、もう今日でおしまいだよ」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:47:34.18 ID:bpCNWNuWO
「ただいま」
「おかえりキョンくん!」
小さな影がパタパタと駆けて来る。
「おう。夕飯は?」
「もうちょっとだってー!アレ?キョンくんほっぺたどうしたのー?」
俺とは違う大きな瞳を更に大きくして、妹が問う。
「ん…ああ、ちょっと転んじまってな」
「ふうーん、気をつけなきゃ駄目だよ、キョンくん」
「ああ、もう大丈夫だ」
妹に気をつけろと言われるなんて兄貴失格だろうかね。
歳のわりに無垢な肉親の頭を撫で、俺は自室に向かった。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 10:52:39.67 ID:bpCNWNuWO
「ふう…」
ベッドに寝転び、携帯を開く。
案の定、着信・メールのオンパレードだった。
「朝比奈さん、朝比奈さん、古泉、古泉、古泉、朝比奈さん、古泉、長門、朝比奈さん、古泉、古泉古泉古泉古泉古泉古泉…」
ほとんど古泉じゃねえか、気持ち悪い。
表示を消すため更に遡っていくと、
「……ハルヒ、」
あの状態でよくもまあ電話する気になれたもんだ。
半ば賞讃しながら、通話ボタンを押す。
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 11:00:18.98 ID:bpCNWNuWO
ワンコール
ツーコール
スリー…
「……………キョン?」
掠れた、小さな声。
いつものハルヒとは540゜くらいも違う、弱々しい声だった。
「何だ。何か用か?」
「キョン……あたし、」
「あた、し……」
声が濡れていく。
嗚咽混じりに、涼宮ハルヒは俺を呼んだ。
「キョン……キョん…きょん…」
「あたし、レイプされちゃったよお……!!」
あああああ、と受話器の向こうから悲しさと悔しさに満ちた叫びが聞こえてくる。
俺は、黙ったままそれを聞いていた。
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 11:12:45.21 ID:bpCNWNuWO
「キョンくーん、ご飯だよー!」
脳天気な声と共に妹が入ってきた。
ジェスチャーで電話中だと伝え、追い出す。
「キョン…キョンん……」
「………………」
「あたし…どうしよう…どうすればいいの…!?」
今日の夕飯、何だろうな。
匂いから推測するに…煮付けか?
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 11:13:25.91 ID:bpCNWNuWO
「キョン、キョン…聞いてる?ねえ、あたし、あたしの声聞こえてる?ねえ、キョン、キョン、キョン、きょん」
「うるっせえな!!聞こえてるよ!!そんなのレイプされたてめえが悪いんだろ!短いスカート履いたままお前が男を挑発したんだろーが!」
「ぅ……ぁ、ちが…」
「違うだあ!?馬鹿じゃねえのかてめえ!レイプされたって文句言えねえような格好して、いざレイプされたら被害者面かよ!甘えてんじゃねえぞ!!」
「きょん、きょん……ど、して…」
「俺、夕飯だから。鬱陶しいからもう電話すんなよ。そういうのは古泉にしてやれ。あいつ暇らしいから」
「待って、キョ…」
ブツ
ツー
ツー
ツー…
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 11:21:26.59 ID:bpCNWNuWO
あー、ああいうのがメンヘラっていうのか?
怖えし気持ち悪いし、一瞬頭おかしいのかと思っちまった。
まあ実際ちょっとオカシイんだけどな、はは。
ガチャ
「キョンくん遅ーい!」
「すまんすまん、電話相手がうるさくてな」
「だれー?はるにゃん?」
「違うよ、別の人別の人。お、やっぱり今日は煮付けか。いただきます」
今のアイツに「はるにゃん」なんてあだ名は似つかわしくない。
「ねーキョンくん、はるにゃん元気ー?」
「さあなー、遠いお星様のとこ行っちゃったかもなー」
「何それえ!キャハハ!」
妹が無邪気に笑う。
ああ、家って落ち着くなあ。
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 11:37:28.49 ID:bpCNWNuWO
その晩はよく眠れた。
起きた時の清々しさも中々のもので。
「いってきます」
「いってらっしゃーい!」
足取り軽く通学路を進む。
朝の風は冷たくて心地良かった。
憂鬱なことなど、何もない。
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 11:38:26.67 ID:bpCNWNuWO
「おはよう、キョン」
「よう、国木田」
「何だか今日は機嫌が良さそうだね。でも、その口許はどうしたんだい?」
「まーた涼宮関係だってよ」
谷口が横から入ってきた。
相変わらず眠そうな奴だ。
「ええ!?大丈夫なの!?」
「まあな、一応は」
「ったく、キョンはいい加減人が良すぎるんじゃねえか?」
呆れた顔の谷口に、心配そうな国木田。
どっかの副団長とは大違いだぜ。
「…うーん、僕もそう思うな。さすがにそれは酷いよ」
「なに、もうおしまいだよ」
俺は笑って席に着いた。
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:00:05.35 ID:bpCNWNuWO
ハルヒは結局来なかった。
まあ恥ずかしくて来れないだろうな、普通。
朝のHRも終わり、教科書やら筆記用具を揃えようとした時に、気がついた。
「鞄置きっぱなしじゃねえか…」
授業開始までまだ十分ある。
駆け足で行けば間に合う、か。
便所に行こうとする谷口の背中にドロップキックを食らわせ、俺は部室棟へと駆け出した。
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:09:18.44 ID:bpCNWNuWO
ガチャ
鍵は、開いていた。
まあ誰かしらがいそうな気がして、鍵を持ってこなかったんだけどな。
古泉か、朝比奈さんか、長門かーー…
相手によっては俺の傷が増えそうだ。
◆
「…お前か」
「…………そう」
部室にいたのは、長門だった。
窓際の椅子に腰掛けてはいるが、本を読む訳でもなく、ただ俺を真直ぐに見つめている。
「………あなたを、待っていた」
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:17:16.88 ID:bpCNWNuWO
長門の静かな声が部室に落ちる。
朝の部室棟は雪の降る山奥のように無音だった。
「…来るかどうかも分からないのに?」
「………あなたの鞄はこの部室内にある。だからあなたは必ずここに来るであろうと予測していた」
「そうかい」
あんまり時間がないから手短にしてもらいたいね。
「…………あなたは」
「…………?」
「…あなたはこれで、本当に良いの?」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:21:30.43 ID:bpCNWNuWO
「おーい、遅いぞ。早くしなさい」
「すんませーん」
クスクス笑いが教室に木霊する中、俺は席に着いた。
俺の後ろは、やはり空いたままだった。
「じゃあ授業始めるぞー」
その言葉にシャーペンを握る。
開いた教科書に目を落とすが、意識の渦に単語ごと飲み込まれていった。
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:27:31.87 ID:bpCNWNuWO
『……い…おい、…ルヒ…』
『な……よ………に、へい……んだから!』
『そう……を………な…い……いずみ…も……とか……やれ』
『……すが……じゃ……すか…』
……
……
「…………ン…」
「……い、キョン」
「おいキョン!起きろよ!」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:28:50.75 ID:bpCNWNuWO
「っうおわ!!」
「朝はスッキリしてた癖に、結構寝てたね、キョン」
涎を拭きながら身体を起こせば、谷口と国木田が弁当を持って俺を見下ろしていた。
「あー、あれ?もう昼?」
「そうだよ。キョンってば英語の堀口に教科書ではたかれても起きないんだから」
ふむ。そういえばそこはかとなく頭が痛いような。
「…ま、何にせよ飯食おうぜ!」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:35:49.60 ID:bpCNWNuWO
昼飯を食ってしまえば、後は2限ほど我慢するだけだ。
いつもなら眠くて仕方ないはずだが、前半で寝たのが効いているのか不思議と眠気はなかった。
◆
「…じゃあ、今日はここまでだ。宿題はないが予習はしてこいよ」
きりーつ、れーい、ちゃくせーき
と何とも間延びしたクラス委員の声がする。
ああ、もう放課後か。
今日はさっさと家に帰れるな。
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:38:10.97 ID:bpCNWNuWO
岡部による短いHRを済ませ、谷口達と教室を出る。
…正確には出ようとした、か。
「こんにちは」
「…お前か」
まあ、いつか来るとは思ってたさ。
「少しばかりお時間の方、よろしいですか?」
……変な日本語。
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:40:23.91 ID:bpCNWNuWO
部室に向かう途中、こいつは何一つ話さなかった。
それがまた怒りを抑えているようで鬱陶しかったが、笑顔が変わらないあたりさすがと言えるだろう。
「……貴方には失望しましたよ」
部室の扉を開ける時、古泉は確かそんなことを言った。
「勝手にしてくれ」
ガチャ
中にいたのは、朝比奈さんと長門だった。
バタン
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:48:48.66 ID:bpCNWNuWO
「……キョンくん」
朝比奈さんが眉を寄せて俺を見る。
非難しているのか。俺を。
「…私、わたし、まだ信じられません。キョンくんが、あんなことを涼宮さんに言うなんて…」
小さな身体が震えている。一部の大盛りも。
朝比奈さんの声は好きだった。
細くて、儚くて、甘い声だから。
「…どうして、嘘、ウソですよね?あんなこと、キョンくんが言ったなんて…!」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:49:54.88 ID:bpCNWNuWO
小さな身体が震えている。一部の大盛りも。
朝比奈さんの声は好きだった。
細くて、儚くて、甘い声だから。
「ほんとは、冗談だったんでしょう?何とかして気を逸らそうって、そう思ったんでしょう?」
大きな瞳に涙が溜まる。
綺麗だ。
「あれが冗談でも、彼の人間性を疑いますけどね」
辛辣な口調で古泉が放つ。
…なんかこいつ、隈出来てないか?
「嘘でも、冗談でもありませんよ」
「俺はただ、本心からそう言ったんだ」
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 12:59:24.29 ID:bpCNWNuWO
息を飲む音がした。
目を向けると、昨日の古泉と全く同じ顔をした朝比奈さんがそこにいた。
「……キョンくん、そんな…あなた、最低です…」
「だから言ったでしょう。彼は最早彼ではないんだ」
敵意剥き出しの古泉が唸る。
酷いなあ、色々乗り越えてきた仲間じゃないか。
「あいつがレイプされたのなんて自業自得ですよ。あんな格好して歩くから罰が当たったんだ。それをまるで可哀相みたいに…っ、痛!!」
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:00:19.82 ID:bpCNWNuWO
「ふざけないで!!!」
頬が熱い。
あ、殴られたのか。
「涼宮さんがどんな思いで部室まで来て!どんな思いで私達に助けを求めたか!そんなことも分からないんですかっ!?」
「好きでもない人に無理矢理汚されて…!それがどのくらい悲しいか…分からないんですか!…どうして、どうして分からなくなっちゃったんですかああっ…!!」
顔を覆って朝比奈さんが崩れ落ちる。
長門が慰めるように、その肩を抱いた。
じっとこちらを見つめながら。
何も言わずに、ただ、じっと。
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:07:31.82 ID:bpCNWNuWO
「……帰るわ」
泣いている朝比奈さんには申し訳なく思うが、俺がどうこう出来る訳でもない。
「……逃げるんですか」
「逃げる?帰るんだよ」
「まだ話は終わってない!」
喚く古泉を背に、俺は黙ったまま歩き出した。
扉を開け、廊下に出る。
「どうせお前は『貴方は最低だ』とか『酷いです』とか、そんなことばかり言うんだろ。聞く価値がない」
「何故そう言うのかも分からないんですか!?」
「あー、うるせえな!ついてくんなよ!!
………ん?」
すぐ向こうに、誰かが立っていた。
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:13:14.00 ID:bpCNWNuWO
見覚えのありすぎるその姿。
ただこの場所に似つかわしくないのは、私服を着ていたから。
「涼宮さん!」
「…………ハルヒか。何してんだよ、こんな所で」
「……きょん、きょん、きょん、きょん」
…何を呟いてるんだ?
「おい、古泉、あいつ何か変じゃないか」
「変にもなるでしょう」
冷たくそう言うと、古泉はハルヒに向かって歩き出した。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:18:29.43 ID:bpCNWNuWO
「……涼宮さん、どうしました?後でお見舞いに行こうと長門さん達と話していたんですよ」
子どもに言い聞かせるように優しく、ゆっくりと古泉が語りかける。
屈んで話すあたり、心得ているようだ。
「……きょん、きょん、きょんはどこ、きょんは、どこ、何処、ドコ」
「涼宮…さん?」
「きょん、キョン、キョン、」
まるで古泉が見えていないように、ハルヒが歩き出す。
うわ言のように俺を呼ぶ姿が恐ろしくもあり、痛々しくもあった。
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:24:22.40 ID:bpCNWNuWO
目に光がなかった。
レイプされた女は、みんなこんな風に虚ろな瞳をするのだろうか。
「………おい、ハルヒ」
ハルヒが足を止めた。
瞳に光が戻っていく。
「……キョン、?」
「……何の用だ」
「あ…あ、キョン、キョン、どうして電話に出てくれないの、?あたし、何度も電話したのに、ど…して」
「…電話するなって言っただろ。鬱陶しい」
古泉が俺を睨む。
「そ…そ、よね…ごめん、ごめん、ごめ、なさい、ごめんなさい」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:31:14.23 ID:bpCNWNuWO
「ごめ、なさい…あたし、あたし汚い、きたないの…ごめんなさ、い、でも」
「捨てないで」
「ひ、一人にしないで、ごめんなさ、すて、ないで」
涙を溢れさせながら、ハルヒが呟く。
部屋着のまま柔順に泣くハルヒを、俺は初めて可愛いと思った。
「すてないで、きょん、ひとりにしないで」
伸ばされた腕を降り払うことはしなかった。
ただ、そのまま、髪を撫でた。
離れた所で、古泉が苦虫を噛み潰したような表情で見ている。
突き放しても自分から戻ってくる。
それが信じられなかったのだろう。
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:38:13.20 ID:bpCNWNuWO
ハルヒを放したところで、扉が開く音がした。
「涼宮さん!?」
「……あ、」
「大丈夫ですかっ?どうしてここに…」
想像する間でもなく朝比奈さんだった。
濡れたままの頬のハルヒを、俺から庇うように抱き寄せる。
「……また、涼宮さんに何か言ったんですか」
「いえ、何も」
「嘘つき!!こんな、こんなに涼宮さんが泣いてるのにっ…!」
朝比奈さんが俺を睨みつける。
嫌われたかな、俺。
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:42:51.96 ID:bpCNWNuWO
やれやれ、と溜め息をこぼす。
どうやら帰った方が良さそうだ。
じゃあな、と言うにしても誰に言えば良いのだろう。
朝比奈さんも古泉も睨んでくるし長門は何にも言わないしハルヒは壊れかかってるし。
はあ。
俺は黙ってその場を立ち去った。
◆
その夜。
13回目のハルヒの着信を見過ごした後、俺は一本の電話をした。
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:51:25.57 ID:bpCNWNuWO
「あー、もしもし、長門?」
「…………そう」
「遅くにすまんな、元気か」
「…………平気。変わりはない」
「お前は確か『本当にこれで良いのか』と言ってたな」
「……………」
「俺は、これで良いと思ってるよ」
「……………そう」
「…ありがとな」
◆
20回目の着信で、ようやく通話ボタンを押した。
電話口からぐずぐず泣くハルヒの声が聞こえる。
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:56:20.40 ID:bpCNWNuWO
「きょん…キョン…」
「うるせえな、何だよ」
「ど、して電話出てくれないのよお…」
「あ?今出てるだろ、むしろ電話出てくれてありがとうくらい言えよ、切るぞ」
「あ、嘘、ごめ…ごめんなさい、ありがとう、電話に、出て、くれて」
なあ、ハルヒ
どうしてお前はそんなに俺に執着するんだ
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 13:57:04.28 ID:bpCNWNuWO
「キョン、あたし怖いよ…」
「…俺に言われたってな」
「きょん、ごめん、ごめんね、ごめんなさい」
「ハルヒ、お前明日学校来るのか」
「え、…ど、しよ…どうしたらいい、?」
「…放課後から来れば」
「そ、そうね、そうする…ごめんね、」
「いいからもう寝ろよ、俺眠いし」
「うん、うん、寝る、おやすみ」
そのまま電源を切って、俺は眠りについた。
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 14:08:21.00 ID:bpCNWNuWO
『おい、ハルヒ!お前なんだよその格好は』
『似合うでしょ?ミニスカナースよ!みくるちゃんとお揃い!』
『そうじゃなくて、あんまりそういう格好でうろつくなって言ってんだ。痛い目見ても知らんぞ』
『あたしは大丈夫よ!』
『あのなあ…おい古泉、お前も何か言ってやれ』
『確かにそうですが、素晴らしくお似合いですよ涼宮さん』
『そうでしょ?さっすが古泉くん!みくるちゃん、行くわよ!』
◆
「ふあー…」
ガチャッ
「キョンくんっ!朝だよっ!って、あれー?」
「おお、おはよう」
「ぶー、何でもう起きてるのー?」
「目が覚めたんだよ」
膨れっ面の妹の背中を足で押して追い出し、制服に着替えた。
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 14:14:13.63 ID:bpCNWNuWO
「行ってきます」
「いってらっしゃーい!」
妹の元気な声に背中を押され、揚々と玄関を出る。
「おはようございます」
出鼻を挫かれたぜ。
「……朝から見たくない面だって自覚してるんだろ」
「それは失礼しました」
こいつがわざわざ朝っぱらから俺の家の前にいるなんて、絶対に何か話したいことがあるのだろう。
「それで、何の用だ」
「聞いて頂きたいことがあります」
俺は消えかかってきた口許の傷をぼんやりと撫でながら返した。
「聞きたくもないが、言ってみろ」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 14:24:29.84 ID:bpCNWNuWO
「昨夜、電話がありまして」
「涼宮さんの身体に付着していた精液の分析結果の報告だったんです」
よくもまあ淡々と言えるな、おい。
俺もだけど。
「確かにそれは精液だったはずですが、肝心のDNAが妙なのです」
朝から精液精液って、他人が聞いたらどん引きだぞ。
「人間には有り得ない、分析不可能な構成物質が発見されました」
「へえ…そりゃ大変だ」
「………これが何を意味するか、分かりますか?」
さてね。
「涼宮さんは、我々人類ではなく何か別のものに襲われた可能性が高い」
「そいつはびっくりだ」
「ねえ、もしかして貴方…何か心当たりがあるんじゃないですか?」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 14:33:34.88 ID:bpCNWNuWO
「俺が?」
「妙なんですよ、この事件。全てが妙だ。
我々は絶えず涼宮さんを監視している。しかし彼女が襲われた時、我々はそれを関知していなかった。我々機関の目を掻い潜ることの出来る存在なんて極限られている。
しかしあの日、敵対組織には何の動きもなかった」
古泉の演説に熱が入る。
隈があったのは寝ずにこんな戯言を考えていたからだろうか。
「空白の時間は約30分。彼女が掃除当番を終え部室棟に向かう途中、そこから彼女は30分の間姿を消している」
「その時間彼女の能力は働いていなかったと長門さん、その他TFEIから聞いています」
「つまり、彼女は30分間、我々の目の届く範囲から消失していた」
ほうほう、それでそれで?
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 14:42:22.60 ID:bpCNWNuWO
「ならばこう考えるのが妥当だ。」
「新たな勢力が涼宮の能力を測る為に彼女を襲い、情報爆発を期待した」
「しかし成功しなかった」
「それが何故かはまだ分かりません。
しかし、貴方の理解不能な発言を考慮すれば分かることがあります」
「……言ってみろ」
「…貴方は、貴方こそが、その新勢力だ」
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 14:45:04.98 ID:bpCNWNuWO
重い沈黙。
足はいつの間にか止まっていた。
古泉は真剣そのものといった様子で、俺を見ている。
しばらくの間、俺は言葉を忘れていた。
「…ぶっ」
「?」
「ぶあっはっはっは!!!!おま、お前!言うに事欠いて俺が新勢力かよ!!!」
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 14:50:39.75 ID:bpCNWNuWO
「ひぃっ、あはっははっ、冗談はやめてくれっ、ははっ!」
「な、」
「俺がその訳分からん宇宙人的な生き物だって言うのか?ふ、はは、おい古泉、お前はもう少しまともだと思ってたよ」
古泉が悔しそうに俺を見ながら顔を赤くする。
名探偵も真っ青な推理をどうもありがとう。
「ひ、ひぃ…俺かよ、信じらんねえ…なら聞くけどな、その空白の30分間、俺は何処にいた?」
「……部室です」
「そう、部室だ。そしてお前とオセロをしていた。それがどうしてハルヒをレイプ出来る?」
「……それは」
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:00:24.94 ID:bpCNWNuWO
「それじゃあお前はあの時誰とオセロをしてたんだ?長門か?朝比奈さんか?」
「…………」
「そんなに俺を疑うんなら精密検査でもDNA鑑定でもなんでもしてやるさ!」
やはりこの推理に古泉自身、確信がなかったのだろう。
お前らは大人しく、未知のDNAでも研究してりゃ良いんだよ。
「…ですが僕は、貴方が以前の貴方ではないと。それだけは確信を持って言えます」
歩き出した俺に、古泉が弱々しい声で言う。
「なあ、古泉。人の心ってのは折れやすいし曲がりやすい、決して真直ぐじゃないんだ」
振り返る。
結構な距離があった。
「本心なんてものは、誰にも分かりはしないんだよ」
俯いた古泉は、
「…それでも、それでも僕は、涼宮さんを守りたい」
そんなような事を、言っていた気がする。
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:05:48.82 ID:bpCNWNuWO
いつものように、時間は過ぎる。
いつもとは違う時間も、また過ぎていく。
「おい、キョン!帰ろうぜ!」
「おー、帰るか」
「あれ、キョン、SOS団はいいの?」
いつもの三人組で、ノロノロと廊下を歩く。
古泉も朝比奈さんも長門も、誰も来なかった。
もう終わり、ということだろうか。
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:11:31.91 ID:bpCNWNuWO
「あー、もう、良いんじゃないか?」
「何だそりゃ」
「ふうん…まあ、キョンが良いならそれで、ね」
久しぶりにのんびりと雑談を楽しむ。
大勢の生徒に混じって下駄箱へと流されていく。
「明日って何か宿題あったっけ」
「えー、確か数学じゃなかった?演習問題」
「げっ、めんどくせ」
校門に近付く。
それに連れて周りのざわめきが大きくなる。
「お、何だ?」
谷口が数歩先へ行き、しばらく固まった後、振り返った。
190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:17:48.77 ID:bpCNWNuWO
連投すまんこ
「おい、キョン、あれ涼宮じゃないか?」
「……ああ」
まさかとは思ったが、近付くにつれて校門に立っているのがハルヒだと分かる。
「何か…涼宮さん、変じゃないかな」
「ああ、おかしいぜ、キョン」
そんな事は分ってる。
素通りしたいが、虚ろな目は人の波を鋭く見分けていた。
俺を、探しているのか。
「こんな事女の子に言ったら失礼だけど、気味悪いな」
「涼宮の奴、いよいよやばいんじゃないか」
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:25:22.50 ID:bpCNWNuWO
案の定、ハルヒは目敏く俺を見つけた。
瞳が怪しく光だす。
「キョン!」
谷口と国木田が一斉に俺を見た。
引き気味の二人に、
「すまんが先に帰ってくれ」
心配そうな顔をしながら、二人は頷いた。
俺だけを見つめながら、ハルヒが近付いて来る。
「…キョン、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「…気をつけろよ」
「おう、じゃあな」
195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:26:25.11 ID:bpCNWNuWO
「キョン!キョン、ああ、良かった、知らない人ばかりだから怖かった」
「…部室に、行くか?」
「連れてって、くれる?」
「……ああ」
「ほんと?ありがとう、キョン、ありがとう」
幼く綻んだ笑い顔。
初めて、見た。
可愛い、笑顔。
199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:31:28.79 ID:bpCNWNuWO
二人きりなのにこんなに静かなのは、初めてかもしれない。
踏み締める床の音。
運動部の声が遠く聞こえる。
………ハルヒ
「なあ、ハルヒ」
「なに?キョン」
「お前…お前ほんとは、気付いてるんじゃないか?」
「何に?どうしたの、キョン、変なこと言って」
「誰がお前をレイプしたか…本当は、気がついて、」
「知らないよ」
206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:36:52.89 ID:bpCNWNuWO
そりゃ、そうか。
気づく訳ない。
気がつける訳がない。
でも、あの時
あの時ハルヒが何かを感じていたとしたら?
長門の情報操作で目も見えず口もきけなかったハルヒが、その能力で、レイプした人間を無意識的に解っていたら?
ハルヒの、この異常なまでの依存が、そこに起因していたとしたら?
………考えすぎ、か。
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:44:30.84 ID:bpCNWNuWO
ガチャ
「す、涼宮さん!それに…キョンくん」
「…何だ、みんな揃ってるのか」
「今後のことについて話し合っていたんですよ、涼宮さん」
おお、この勘違い野郎め、あくまで俺を無視する気か。
「…今、後?」
「SOS団だろ」
「そう……ね、キョン、どうしたらいい?あたし、どうすればいい?」
「……そうだな、」
柔順に俺を見上げるハルヒ。
中々気分が良かった。
「ちょっと待って下さい!SOS団の今後を決めるのは涼宮さんであって貴方では…」
「そうですよ!どうしてキョンくんが、」
朝比奈さんと古泉が抗議の声を上げる。
古泉はどうでも良いが、朝比奈さんにまでそう邪険にされると悲しいな。
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:49:50.51 ID:bpCNWNuWO
「みんな、どうしてそんなこと言うの?あたし、あたしには、キョンしかいないわ、」
「涼宮さあん、私達だっていますよう…」
「違う、違う違う違う違う違う、キョンだけ、キョンだけよ!」
泣きながら伸ばされた朝比奈さんの手から後退り、ハルヒが俺の腕を掴む。
「キョン、キョン、キョンしかいないわ、キョン、キョン…!」
「…ハルヒ」
「いて!側にいて!一人にしないで!キョン、キョン、お願い、ずっと、何でも言うこと聞くわ、だから、」
「…本当に?」
213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 15:53:45.46 ID:bpCNWNuWO
「ほんと、ほんとよ!嘘じゃない、ひとりにしないで、きょん、きょん…」
「何でも俺の言うことを聞くって、約束出来るのか?」
古泉が息を飲んだようだ。
今更気がついても遅いってのに。
「涼宮さん、駄目です!彼を信じてはいけませ、っぐ…!!」
「……ごめんなさい」
「長門さ…では、やはりあれは…」
「…聞くわ。だって私には、キョンしかいらないもの」
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:06:30.78 ID:bpCNWNuWO
「そうか…いい子だな、ハルヒは」
「ふふ、キョン、キョン、ありがとう」
熱に浮かされたようなハルヒの瞳は、綺麗に不透明だった。
◆
「…涼宮さんを従わせる為、それが貴方の目的ですか」
「ああ」
「その為にあんな卑劣な事をして…あんたは恥ずかしくないのか!!」
またしても右ストレート。
古泉は恥ずかしげもなく、涙を流していた。
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:07:40.27 ID:bpCNWNuWO
「…ふん、何と言おうが勝手だが、これで世界は俺のものだ」
「…畜生、畜生っ!お前なんかに、涼宮さんが、涼宮さんがッ!!」
神様を汚された信者とは、こんな風に嘆くのだろう。
「SOS団をやめるもやめないも、お前の自由だぞ」
そう言ってやれば、古泉は長い前髪の間からキッと俺を睨みつけた。
「誰がやめるもんか!これ以上彼女を貴方の好きにはさせない。」
「彼女は、僕が守る!」
「…好きにしろ」
荒々しく去っていく古泉の背を見送りながら、ふと自分が一抹の寂しさを感じていることに気がついた。
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:13:28.13 ID:bpCNWNuWO
さく、
草を踏む足音に振り向く。
小さな足音に似つかわしい、小さな姿がそこにはあった。
「…………」
「お前が何を言いたいのかは分かるよ。だが、言わないでくれ」
「………貴方が、望むなら」
「すまん」
長門は何も言わず、しゃがみ込んだ俺の頭を撫でた。
不覚にも、涙が出そうだった。
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:14:55.30 ID:bpCNWNuWO
「貴方は…もう少し自分の考えを人に話すべき」
「……どうかな」
「貴方は、優しい」
もう、駄目だった。
唇を噛み締めても、それは溢れて来る。
長門の小さくて短い言葉が、俺の中に入ってきて。
俺は膝に顔を埋め、嗚咽を上げながら号泣した。
234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:25:43.17 ID:bpCNWNuWO
これで、これで。
こうなってしまえば世界はもう不安定じゃなくなる。
柔順なハルヒは俺だけを見て、そして俺だけの言うことを聞くだろう。
不安にはなるが、苛ついたりはしない。
閉鎖空間は生まれない。
欲望に負けただけかもしれない
独占したかっただけかもしれない
世界なんて口実だったのかもしれない
237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:28:01.00 ID:bpCNWNuWO
俺はハルヒをレイプした
ハルヒの正常な心と引き換えに
楽しかったSOS団と引き換えに
それでも、
「……長門、世界は、平和か?」
「……平和かもしれない。恐らくもう、意識的・無意識的な改変は行われない」
「……ごめんな」
「……いい、涼宮ハルヒにはまだ改変能力がある。その事実さえあれば、平気」
「そうか」
『きょん、ひとりにしないで』
一人になんかしない。
俺はずっと、ずっとそばにいるよ。ハルヒ
―完―
243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:30:12.38 ID:bpCNWNuWO
おうふwwwww
終わったwwwww
オナニーに付き合ってくれてありがとうwwwww
あと>>1もすまんこwwww
うんこwwwww
249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:32:28.25 ID:bpCNWNuWO
ちげーよ馬鹿wwwww
古泉はハルヒが好きなんだよwwwww
なのにレイポされたからあっちょんぶりけなんだよwwwww
261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/05/05(火) 16:48:52.41 ID:bpCNWNuWO
やべえwwwww
種明かし忘れたwwwww
あれは長門の能力できょんのコピー作って、レイプしてた時は実体のきょんでオセロはコピーでした。
多分古泉は分かってる
考え云々は、二人が知れば止めるし怒るだろうときょんが判断して、だから言わなかった。
優しい云々はオチへの伏線じゃね?一応
色々すまんこwwwww