1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:14:47.99 ID:xhafoLUc0
本当に、どうして俺ってこんなについてないのだろうか。
折角の日曜日、さらに不思議探索も中止で、さらに佐々木と約束がある。
そんな日に限って寝過ごすなんてな・・・・・・。
「ハァ・・・・ハァ・・・・ 遅れて悪かった・・・・」
「いや、僕も今来たところだよ」
佐々木の目の前に置かれているコーヒーの量を見て、すぐに嘘だとわかった。
「まぁ、君も何か注文してはどうだい?」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:19:49.87 ID:xhafoLUc0
目の前に届いたアイスコーヒーのブラックを直ぐに飲み干した。
喉が渇いていたというのもあるが、男が時間に遅れるのを他人に悟られたくなかった。
「もう少し落ち着いて飲むべきだと思うよ、僕は」
「ああ、喉が渇いてたんでね」
佐々木がクイっと残ったコーヒーを口に入れる。
「さて、もう喫茶店にいる必要は無くなったね」
佐々木が立ち上がり、椅子を机の内側に入れるのを見て俺も立ちあがる。
「それじゃ、しっかりエスコートして貰おうか」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:24:22.93 ID:xhafoLUc0
会計を俺が済ませようとすると、案の定佐々木が自分の財布を取り出した。
「佐々木、ここは俺が払うよ」
「くっく・・・・・・、自分の分くらい自分で払うさ」
相変わらず律儀な奴だ、中学生の頃と何ら変わっていない。
それじゃ、お言葉に甘えるとしよう。
「ありがとうございましたー」
店員の声を背後に喫茶店を出る。
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:31:17.51 ID:xhafoLUc0
さて、エスコートと言われても正直何も考えていない。
折角の日曜日だし、どこか佐々木の行きたい所に行くべきか。
しかし「どこに行こうか?」なんて聞いたら「何も考えてこなかったのかい?」
なんて言われるに決まってる。
「さっきから1人で何を考えているんだい?」
佐々木が隣にいる事をすっかり忘れて考えにふけっていた。
「もしかすると・・・・・、僕と一緒にいても楽しくないかい?」
「いや、そういう訳じゃない。 断じて違うぞ」
「そう、なら良かった」と言いながら微笑んだ佐々木を俺は自分の脳のフォルダに保存した。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:36:24.29 ID:xhafoLUc0
「それで、一体どこへ向かっているんだい?」
なんて残酷な質問をするんだ・・・・・。何も答えようがないじゃないか。
んー・・・・・、何て答えるべきか。
「もしかして、当てもなく歩いている訳じゃないだろうね」
グサリと俺の胸に突き刺さる。
「い、いや あれだ そう! 図書館へ行こうと思っていたんだ!」
長門ならこれで満足してくれるが佐々木はどうだろうか。
やはり、苦し紛れだっただろうか。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:42:09.53 ID:xhafoLUc0
「君が決めたのなら僕は喜んで図書館へ行こうじゃないか」
喜んでいるのかどうかは分からないが、まぁ不服はなさそうだ。
丁度もう少し寝たいと思っていたし、ゆっくり寝るとしよう。
「僕にしてみれば、キョンと一緒ならばどこでもいいんだけどね」
「ん、何かいったか?」
「いや、聞こえていなかったのならば何でもないよ」
少々気になるが、取り合えず気にしない方向で決めた。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:47:01.93 ID:xhafoLUc0
[本日、休館]
言葉を失った。 正直、何の前調べもしなかったから何か悪い予感こそしたものの
天下の図書館が休館だなんて誰が予想できただろうか、少なくとも俺は予想できなかった。
「キョン、次の予定は立ててあるかい?」
ショックの素振りも見せずに佐々木が問いかけてくる。
図書館ですら思いつきなのに、俺の中に次の予定などある訳がなかった。
「その表情を見る限り、予定なしというところだね?」
「ああ、本当にすまん」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 00:53:49.12 ID:xhafoLUc0
「それじゃ、僕の家に来るかい?」
その発言で、一瞬にして俺の思考が停止する。
そして、少しの間が出来る。
「か、勘違いしないでくれ 僕は別にそういうつもりで誘ったわけじゃないよ」
少々赤くなりながら否定する佐々木を再び脳内フォルダに光速で保存した。
「いや、俺はそれで構わない 寧ろ楽しそうだとすら思う」
正直、女子の部屋に入るなんて経験は俺には無いに等しい。
それ故に、興味がある。
「それじゃ、決まりだね」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:00:27.26 ID:xhafoLUc0
そうこうしているうちにあっという間に佐々木の家に到着する。
SSって便利だなぁと、つくづく感じる。
「少々時間をもらえるかい?」
「ん、どうしてだ?」
「少しは乙女心という物を理解してもらいたいね」
ようやく理解する、部屋を片付けたいのだろう。
5分ほど待つと、佐々木が玄関を開ける。
「さぁ、入ってくれ」
「ん・・・・・? あれはキョンじゃない?」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:06:28.96 ID:xhafoLUc0
はぁ、日曜日のあった後の月曜日は実にかったるい。
まぁ日曜日なくしては月曜日も来ないのだが。
「うぃーす」
教室のドアを開けると、いつにもまして不機嫌そうな団長さんが俺を見ていた。
ずかずかと俺に向かって歩いてくる。歩き方からも不機嫌さを伺える。
「キョン、昨日何をしていたか正直に言いなさい」
ハルヒの眉毛が逆八の字になる。
「どうしてお前に言わないといけないんだ」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:15:11.67 ID:xhafoLUc0
「団長であるアタシには団員の生活を管理する義務が伴うの!」
フフン、と得意げな顔をする。
「あのなぁ・・・・・・」
「さぁ、観念して正直に言いなさい」
ハァ、と肩を落としながら正直に言う事にする。
こうなったハルヒには何を言ってもムダだから。
「中学生の時の友達と会っていたんだよ」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:18:27.88 ID:xhafoLUc0
「友達・・・・・・へぇ、あんた友達いたんだ?」
朝っぱらから人をイライラさせるのが好きな奴だ。
まぁ慣れているし一々そんなことでイライラしたら身が持たない。
「俺だって楽しい中学校生活を送ったんだぞ 悪いか」
明らかにさっきよりも不機嫌になる。
どこまで不機嫌になれば気が済むんだ。
「そ、まぁアタシには何の関係もないわ」
ズカズカと自分の席に戻る。
・・・・・なんだったんだ?
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:22:11.20 ID:xhafoLUc0
退屈な授業、後ろからは刺さるような邪悪な不機嫌オーラが漂う。
「なぁ」
返事が無い。
「なぁ、聞いてるのか?」
「何よ」
返事が返ってくるものの、素っ気無い。
「何をそんなにイライラしてんだ?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:25:06.61 ID:xhafoLUc0
「別に、イライラなんてしてないわよ」
嘘をつくなら演技くらいしろ。
どこの誰がどう見たらお前がイライラしてないと言うんだ。
「そうかい」
返事を聞くのは諦めて前を向き、ノートを開く。
「ふんッ」
ワザとらしく鼻息を荒くするハルヒを無視して、俺はペンを握った。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:29:31.66 ID:xhafoLUc0
ヴーン・・・・・ヴーン・・・・・
ズボンのポケットが震える。
授業中にメールしてくるなんてどこのどいつだ。
『キョン、今日も会えるかい?』
意外だった、佐々木がこんな時間にメールをしてくることが。
まぁ、返事なんて決まっている。
「はい・・・・・、と」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:32:50.02 ID:xhafoLUc0
放課後になってもハルヒの機嫌は一向に良くならなかった。
というか、良くなる気配すら無かった。
「ハルヒ、悪いが今日の団活は休ませてくれ」
「ふんッ! 勝手にしなさい!」
俺にでも分かった。
多分、今日古泉にはバイトが入るだろうな。
「悪い、それじゃまた明日な」
ハルヒが俺の後ろ姿をジーッと見つめているのだろうか、背中がチクチクした。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:36:24.31 ID:xhafoLUc0
「よぉ、昨日に引き続き遅刻して申し訳ない」
約束の場所に着いたとき、既に佐々木はいた。
「あぁ、僕も突然呼び出して悪かった」
佐々木が立ち上がり、俺の横に来る。
「さぁ、それじゃあ行こうか」
「どこに行くんだ?」
佐々木がニィッと笑う。
「昨日、君が予定していたところだよ」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:39:16.14 ID:xhafoLUc0
正直今は別段眠いわけでもない。
図書館に行ってもすることがないわけだ。
「ん、その顔は何か不服でもあるのかい?」
しまった――。
顔に出てしまっていたらしい。
「いや、どうせなら映画とかの方が楽しめるんじゃないか?」
佐々木が一瞬口を膨らませる。
が、直ぐに口元を緩ませる。
「それじゃ、僕は君に付いていくとしよう」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:42:45.32 ID:xhafoLUc0
まさか、佐々木がここまで涙もろいなんて知らなかった。
「グスッ・・・・・いい話だったね、キョン」
多分、他人から見れば今の俺達は充分カップルに映るだろう。
もちろん、佐々木から見ればいい迷惑だと思うが。
「ああ、けどそんなに泣ける内容だったか?」
佐々木が少し腫れた目を擦る。
「中々興味深かったよ・・・・・グスッ」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:46:09.37 ID:xhafoLUc0
泣いたままの佐々木と別れるなんて出来る訳もなく、
佐々木の家まで送っていくことになった。
「悪いね、キョン」
もう正常に喋れるくらいにまで回復したものの、目元は赤い。
「ああ、これくらいお安い御用だ」
「―――。」
ん、ボソっと言われても困る。
「何て言ったんだ?」
「聞こえなかったなら内緒さ」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:50:09.98 ID:xhafoLUc0
「ここまででいいよ」
佐々木が足を止める。
「キョン、今日はありがとう」
何故か今日に限って佐々木があらたまる。
お互いもっと気さくに話し合える仲だと、少なくとも俺は思っている。
「ああ、礼はいらん」
「キョン、1ついいかな?」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 01:53:49.51 ID:xhafoLUc0
佐々木が再び目に涙を溜める。
しかしその目は、まっすぐに俺を見ていた。
「どうしたんだ?」
スゥッと佐々木が息を吸い込む音が聞こえた。
「明日からキョンとは会えない」
血の気が引く っていうのは今のこの状況を言うのだろう。
それに、一瞬だけ身震いする。
「な・・・・・何を言い出すかと思えば」
「つまらん冗談・・・・・・じゃないんだ、残念ながら」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 02:00:00.93 ID:xhafoLUc0
佐々木が話を続ける。
「君と僕が一緒にいるのは色々とまずいみたいなんだ」
まずい・・・・・?
どうして?
「涼宮さんがよく思わないみたいだね」
「は、ハルヒはハルヒだしお前はお前だろ! 何も気にすることなんてないじゃないか!」
佐々木が「君は優しいんだね」と言う。
「僕と彼女を天秤にかけるつもりかい?」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 02:02:28.08 ID:xhafoLUc0
天秤にかけたつもりなんて毛頭なかった。
だが、そう取られてしまった。
「それは僕と世界を天秤にかける と同意になるね」
佐々木がゆっくりと、諭すように話を続ける。
「僕1人のために世界が再構築されるのは実におかしいと思う」
「それに、再構築された世界に僕がいる可能性は100%と言い切れない」
ハルヒの能力の恐ろしさ、凄さを改めて思い知る。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 02:06:01.81 ID:xhafoLUc0
「あの日、君が僕の家に入ったことを涼宮さんは知っている」
何だと・・・・・・?
「これ以上彼女にストレスを与えると本当に僕が消えかねない」
「僕だって命は惜しい」
「それじゃキョン、今日は実に楽しかったよ」
そう言い残し、佐々木が駆けて行くのを目で追うことしかできなかった。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 02:09:37.97 ID:xhafoLUc0
「僕だって命は惜しい・・・・・・か」
悲しげに微笑む佐々木。
「キョン、僕の分も幸せになってくれよ?」
fin
なんていうか咄嗟に思いついた妄想を文にしてみたけどgdgd杉
ゆえに予定よりだいぶ短くなりました
次は気をつけます
やっぱりローゼンの方が書きやすいなぁ!
まぁ、最近何も思い浮かばないわけですが
文才が欲しい。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 02:14:06.04 ID:xhafoLUc0
既にコンタクトをはずしてしまった俺には寝る意外の選択肢はないのだッ!
おやすみ、いい夢見ろよ!
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 02:54:14.73 ID:R1d7Pd0GO
続き書いてもいい?
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 03:19:15.56 ID:R1d7Pd0GO
「僕だって命は惜しい・・・・・・か」
力なく立ち尽くしていた俺はそう呟いて帰路をたどりはじめた
ただ無心に足を動かしていた俺はあいつのことだけを思いだしていた
塾帰りの道、そこから見える夜景、星空
雨上がりだったその日の澄んだ空気のにおい
―おれってこんなにみれんがましかったんだな
俺はその日のから学校を休んだ
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 03:39:10.50 ID:R1d7Pd0GO
朝、学校を休んでいることを知っている妹が心配しながら部屋にくる
「キョン君大丈夫?学校行けそう?」
俺は無言の返答をする
妹が静かに部屋を出ようとするとき俺はカラの咳をした
―なんともないさ、からだだけなら
そのまま二度寝を決め込み母親がパートに出かけた頃を見計らってリビングに降りていく
朝飯がわりにバナナを口に運びつつ、テレビを付け新聞を開く
あじなどかんじない
ただくちにはこぶだけ
めをむけるだけ
おとをききながすだけ
そろそろ親が帰ってくる時間だ
部屋にもどったおれは昼飯は食わず、普段は面白いと感じているはずのマンガを手にとる
けいたいはひらかない。アイツのめーるばかりよみかえしてしまうから
夕飯はさすがに顔をだす
形だけでもマスクを着けてテーブルにつき母が作ってくれたうどんを喉に通す
こうして一言もしゃべらず床に着く
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 03:40:40.97 ID:R1d7Pd0GO
誤字、脱字、日本語おかしいところは脳内補完よろしくお願いします
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 03:47:24.94 ID:R1d7Pd0GO
―こんな日々を過ごして数日たったある日
母親からお見舞いが来ていると告げられた
誰だかわかっている
俺のベッド横にその「誰だか」が腰をかける
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 04:21:36.88 ID:R1d7Pd0GO
しばらくの沈黙
「いつまでそうやってるおつもりですか」
一言目がそれか
こいつもずいぶんと失礼になったもんだ
この時の俺を「憤りを感じている」と表現するのは正確じゃない
あの時、あの瞬間から家族以外の慣れ親しんだ声を聞いていなかったからだ
俺はそんな思いと共にむくりと身を起こした
「そう言ウってことは何があッタか、把あクしてるんダな」
久々に声帯を動かした
うまくしゃべれなかった
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 04:24:20.97 ID:R1d7Pd0GO
一瞬心配した素振りを見せたが、すぐにいつもの微笑で返答したそいつは言葉を続けた
「あなたが来なくなってからというもの、我らが団長は『つまんない』が口癖になっていますよ」
「それはいつものことだろう」
やっと喉が機能しはじめた
だがこいつのことだ
見舞いの品の代わりに何か懸案事項でも持ってきているのだろ
―そうだろう?古泉
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 04:41:31.89 ID:R1d7Pd0GO
「もちろんそのつもりでした、仮病だとばかり思っていましたので」
仮病で悪かったな
「しかし今となっては本当に具合が悪そうだ、出直してきますよ」
「いいから言ってみろ」
出直す気などさらさらないんだろ
「閉鎖空間です」
まあ解りきった、もはやお決まりとなった展開だがな
「日に3回、多いときは5回以上発生しています」
よく見ればこいつの爽やかフェイスにうっすらとくまが見える
「あなたと会えないことによるジレンマでしょうね、このところ沈黙を保っていた彼女の心が荒れ始めたのでしょう」
「で俺にどうしろって言うんだ」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 04:58:29.87 ID:R1d7Pd0GO
「あなたなら言わなくてもわかると思いますが?」
「あぁ…断る」
一瞬の間
「今まで発生原因の解消よりは肉体的にはずっと楽なはずですよ」
…ニクタイテキニ、ネェ
「ですがあなたは心に傷を負った」
…
「あなたの気持ちは痛いほどわかり―
―俺は古泉の左頬に拳を入れていた
「…悟ったようなこと言うじゃねぇか…」
…
「俺にハルヒと同じ学校に行けっていうのか!」
「ハルヒがいる団に行けってのか!」
「俺からアイツを奪った!!ハルヒの近くに!!!!!」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 05:11:38.36 ID:R1d7Pd0GO
「いつまでそうしてるおつもりですか…!」
「あなたがここで床にふしていてもなにも解決はしない!!!」
!?
古泉の右が飛んできていた
「わかったような口を聞くんじゃねぇって言ってるだろうが!」
そういいながら俺が拳を構えていたところに、親が止めに入ってきて今日はお開きとなった
「古泉も…ああいう表情するんだな…」
―翌日俺は、北高の制服に袖を通していた
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 05:33:40.15 ID:R1d7Pd0GO
その日は金曜日だった
曜日なんてここ数日気にしていなかったから感覚を忘れていた
伸びっぱだった
髭を剃るのに苦戦した
坂道にも、教室までの階段にも
だがそんな二つの感慨も、感じることはなかった
ただ手を動かすだけ
足を動かすだけなのだから
―このとき、世界はまだ、味気ないままだと思っていた
だが教室に入ると、席についているハルヒが俺を見つけ満面の笑みを向けてくる
―俺は殺意にも近い怒りを隠しながらそいつの前の席にすわった
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 05:43:59.78 ID:R1d7Pd0GO
そうしてハルヒのご機嫌な提案をいつも通りこなしているように装ってその日は終わった
明日は不思議探索か
明日もハルヒと顔を合わせるのか
いや明日も、次の月曜もか…
ささき、おれはどうすれば…
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 05:57:14.97 ID:R1d7Pd0GO
────────────
気付くと俺は校庭の真ん中にいた
視界の全てに青みがかっていた
ロマンスドーンのような蒼穹
「あぁ、朝焼けか」
このときの俺はこの空気の肌触りをどこかで感じたことがあることを忘れていたのだった
気付がつくと佐々木の家の方へ歩を進めている俺がいた
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 06:11:32.35 ID:R1d7Pd0GO
しばらく歩き見覚えのある風景に差し掛かる
脳裏に浮かび上がるあの日の夜景、星空
間違いない、俺が間違う筈がない
ここは塾帰りのあの道だ
ここであいつと会えたらな
ふとそんなことを思う
またあいつの事ばかりかんがえてるな
自嘲の笑みを浮かべる
家に帰るか
そう思って踵を返した俺は信じられない光景を目撃した
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 06:26:25.64 ID:R1d7Pd0GO
肩にかかるかからないかのセミロング
微笑みをたたえた眼差し
俺よりも低いその背格好
ここであったことにこいつも驚いてるんだろうな
「やぁ、キョ―
そいつをそいつと認識した瞬間俺はそいつを抱き締めていた
「キョ、キョン苦しいよ」
そういいながらも微笑んでいる
「うるさい、黙ってろ」
俺もつられて微笑む
―お前だから笑えたんだ、佐々木
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 06:40:10.74 ID:R1d7Pd0GO
俺達は近くにあった公園のベンチにすわることにした
その間俺は恥ずかしいとのたまう佐々木の提案を却下し、佐々木の右手を離さなかった
客観的にみると確かに恥ずかしい
俗に言う恋人つなぎをしていたからだ
だができることならずっとこのまま一ミリも離れたくない
お互いそう思っていた
ベンチに腰を下ろし缶コーヒーで一服した
「あえて嬉しいぞ、佐々木」
「僕もだよ、キョン」
俺と佐々木の間に流れる沈黙
でも痛くない沈黙
決して視線は外さなかった
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 07:09:59.99 ID:R1d7Pd0GO
それからいろんな話をした
その間も右手はつながったままだった
でも決して互いに思いは口にしなかった
声にしてしまったら、その空気の振動と共に、すぐに消えてしまいそうだったから
そんな暗黙の了解を破りたくて、俺は佐々木の腕を引いてベンチから立たせ、再び抱き締める
ただこうしていることが嬉しかった、俺も、佐々木も
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 07:10:57.71 ID:R1d7Pd0GO
この時俺は佐々木を離したらこの思いを告げようと思っていた
どちらからともなく離れた俺達
俺はこの心を口にしようとした
「佐々木、俺さ―
口を人差し指で抑えられた
「ダメだよ、キョン」
…
「こんなところ涼宮さんに見られたら」
「俺は―
不意に画面がフェードアウトした
────────────
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 07:25:18.40 ID:R1d7Pd0GO
次に視界がはっきりしたときには自室のベッドにいた
携帯に目をやる
土曜日の朝
あぁ、そういうことか
意識がはっきりして事態を把握して愕然とした
重症だな…
思わず嘲笑してしまった
そう思いながら行きたくもない不思議探索への準備をする
これも…世界のためだ…
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 07:31:47.32 ID:R1d7Pd0GO
オチにどう繋げるか考えるついでに飯食ってくる
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 08:31:43.83 ID:R1d7Pd0GO
こんな状態で全員分のお茶代を奢らされたらブチキレてしまいそうだ
そう考えた俺は集合場所に一時間半前についた
以外にも長門すら来ていなかった
一番乗りだ
別に、嬉しくはない
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 08:36:30.42 ID:R1d7Pd0GO
30分もしないうちに長門、古泉、朝比奈さんが5分おきぐらいに到着する
全員が全員、長門はわずかに驚いた顔をしている
そして揃いも揃って、長門ですら心配して声をかけてくる
お前らなんかに俺の気持ちがわかってたまるかよ
人の気持ちなんてなぁ、推察することはできても、真に理解することなんて出来ないんだよ
俺の心がわかるのは、佐々木だけだ
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 08:46:08.58 ID:R1d7Pd0GO
そして時間の10分前にハルヒが現れた
ご多分にもれず驚いた顔をしている
だがすぐにご機嫌スマイルを浮かべる
怒りが口から漏れてしまいそうだ
よほどご機嫌らしい
「いいわ、おごってあげる。団員の労をねぎらうのも団長の仕事だもんね」
しかし俺が断固拒否し本日の支払いは割り勘となった
このとき長門に聞こえるか聞こえないかぐらいの声が出てしまった
「お前のねぎらいなんてうけるかよ」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 09:15:39.38 ID:R1d7Pd0GO
午前中のパートナーは朝比奈さんだ
いつもは嬉しいはずなのに今日は沈黙が続く
河川敷を歩き近くのベンチに座ると朝比奈さんが恐る恐る聞いてきた
「あの、キョン君、大丈夫ですか?」
「心配していただかなくても結構です」
再び沈黙が走る
存外にきつい言い方になってしまったらしい
「ちょっとなんか飲み物でも買ってきますね」
沈黙に耐えられなくなったのだろう
朝比奈さんは席を外してしまった
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/30(木) 09:23:06.69 ID:R1d7Pd0GO
しかし朝比奈さんは一分もしないうちに戻って来た
いやこう表現するのは性格ではないな
朝比奈さんがいなくなってしまって一分もしないうちに
朝比奈さん(大)が未来から戻って来てしまったのだ
139 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 09:35:32.76 ID:R1d7Pd0GO
PCに移るからトリ着けます
145 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 10:13:27.45 ID:LfwinapZ0
朝比奈さん(大)が出てくるってことは事態はよほど深刻なのだろう
「久しぶり」
「お久しぶりです」
「どうしたんです、今日は?」
「今回の騒動は俺が学校に出てくることによって解決されると聞いていますが」
「うんうん、そっちじゃないの」
「というと?」
どうやら、今回も禁則とやらが多いようだ
「なんていえばいいんだろう?そのことに関係なくはないんだけど・・・」
「今回はヒントがあまり出せないけど、ただ注意してほしいことが起こるんです」
「そうですね・・・これから、決断を迫られる時が来ると思うんです」
「あなたがそんな状態に置かれたとき私がここに来たことを思い出してほしいんです」
147 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 10:30:14.84 ID:LfwinapZ0
「注意してくれってことですか?」
禁則事項が多すぎていまいち要領がつかめない
「そう、私たちにとって」
「うんうん、キョン君はそれを困った状況だと考えないかもしれない」
「とにかく選択によっては私たちにとって困った状況に陥るかもしれないの」
だいぶ鬼気せまっているように見受けられる
「まあ、とにかく、その時が来たら慎重に考えますよ」
「大丈夫です」
「今だってこうして、世界のために団活に参加しているんです」
「そんな俺が選択を間違えるはずありませんよ」
朝比奈さん(大)はもっとヒントを出そうとしてくれていたが
朝比奈さん(小)が戻ってくる時間が迫っているとのことで
名残惜しそうだったが別れを告げた
世界の・・・ために・・・か・・・
そんなつもりもないくせに
149 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 10:39:26.11 ID:LfwinapZ0
午後の長門とはいつも通り図書館へ
長門が本の森の中へ消えていったことを確認すると
俺はいつものソファーを見つけ寝に入る
意識が飛ぶのに五分とかからない
「起きて」
― それから何分経っただろう
長門の声で目が覚めた
携帯を確認する
「まだ集合まで30分あるじゃないか、もう少し寝かせてくれ」
「だめ」
「あなたに話さなくてはならないことがある」
今度は長門か
151 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 10:51:38.17 ID:LfwinapZ0
場所を移動し人に聞かれない窓際の席に来ると長門はすぐに話し始めた
「昨晩、これまでにない規模の次元断層が確認された」
「そんな馬鹿な」
「発生原因は取り除かれたはずだ」
我らの神はどこまでわがままなんだ
図書館にも関わらず声を荒げそうになった
「機関からも、こちら側からも干渉を受けなかったそれは明朝4:37分自然消滅」
自然消滅?
神人を倒さないと消滅しないはずの閉鎖空間が
機関の干渉も受けずに自然消滅?
どういうことだ?
153 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 11:04:32.06 ID:LfwinapZ0
ん?まてよ・・・
久々に動かした頭が一つの答えにぶち当たる
「佐々木のほうか」
向こうの閉鎖空間なら機関の干渉も受けずに
自然消滅しても何ら不思議ではない
「不明」
「ただ、その時に藤原、橘、九曜の三名」
「およびその背後にある団体の動きは観測されていない」
「このことから・・・」
佐々木の閉鎖空間である可能性はほぼゼロってことか
「そう」
ならハルヒの閉鎖空間であることはまず間違いないな
「いつもの次元断層とは少し違う、注意して」
今度は長門、か・・・
156 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 11:29:41.37 ID:LfwinapZ0
集合場所に戻ってきた俺たちは再びお茶をしに店に入る
いつも不思議探索が終わると不機嫌になって帰ってくるハルヒが
今日は珍しく上機嫌だ
なんでも不思議の目撃情報があったらしい
古泉が手を回したらしいが
毎度毎度いらぬ気を使いやがって
もうハルヒの笑顔をみるだけで腹が立つ
「よし!明日、追跡調査をするわよ!」
「何だと!」
「やっぱり不思議は新鮮なうちじゃないと―
「ふざけんな!!!!!!!!!!」
一瞬にして店内の空気が氷点下に代わり、ただ響いたのは、俺の声と、机をたたく音だけ
「いつもいつもそうやって!!」
「こっちにはお前に傾けるるほどの余裕は残ってねえんだよ!!!!」
気がつくと俺は店の外にいた
158 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 11:36:08.51 ID:LfwinapZ0
やってしまった
お前が守ってくれた世界なのに
そのまま俺は家に帰り夕飯も食べずに寝に入ってしまった
明日も不思議探索か
明日もハルヒと顔を合わせるのか
いや明日も、明後日の月曜もか…
ささき、おれはどうすれば
159 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 11:42:30.46 ID:LfwinapZ0
あと数レスなのに眠気が限界に近い
頭が回らんくなってきた
寝落ちしたらすいません
162 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 11:54:24.15 ID:LfwinapZ0
────────────
気付くとまた俺は校庭の真ん中にいた
視界の全てに青みがかっていた
ロマンスドーンのような蒼穹
「また、朝焼けか・・・?」
いや違う
朝焼けのようでいてそうじゃない
このときの俺はこの空気の肌触りを
どこかで感じたことがあるのをはっきりと思い出していた
だが不思議といやな感じはしなかった
しかし昼間の長門の話
色は違うが間違いない
― ここは、閉鎖空間だ
165 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 12:14:18.64 ID:LfwinapZ0
直感ではそう思うものの理性がそれに疑問を投げかける
佐々木のものである可能性はほぼゼロ
ハルヒのものとは文字通り色合いが違う
じゃぁここは一体
考えてるうちに塾帰りの道に差し掛かる
まてよ、前は
ここであいつと会えたらな
そう「望んで」振り返るとあいつがいた
そして俺達は公園に向かい一緒の時間を過ごした
俺達の「望んだ」通りの時間を過ごした
しかし佐々木信者の動きはなかった
ということはおそらく、この閉鎖空間
発生源は俺だ
168 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 12:34:42.94 ID:LfwinapZ0
この青みがっかった閉鎖空間、俺の閉鎖空間
そして今も、ここであいつと会えたら
そう思っている、と言うことは・・・
「・・・キョン?」
「佐々木?」
俺が駆け寄るよりも早く
佐々木は俺の胸に飛び込んできた
その勢いで俺は後ろに倒れそうになった
「おいおい、危ないだろ」
そう言いながらもすごくう嬉しいのは内緒だ
「いいじゃないか、僕らは普段会えないのだから」
こいつも嬉しそうだからまあいいか
織姫と彦星はこんな気分なんだろうな
佐々木を抱きしめながら、そんな恥ずかしいことを
柄にもなく思っていた
172 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 12:48:23.88 ID:LfwinapZ0
俺たちは前と同じ公園のベンチにすわった
やはり佐々木の右手を離さない
むしろ佐々木が俺の左手を離さない
恋人つなぎ
そしてお決まりの缶コーヒー
二人おそろいの缶コーヒー
ジョージア、挽きたて微糖
「・・・」
「・・・」
俺達はあえて何もしゃべらなかった
沈黙を楽しんでいた
ただ二人でいることだけを楽しんでいた
ここだけは前とは違った
181 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 13:16:33.77 ID:LfwinapZ0
十数分か、数十分か、数時間か
ただただ透明な時間だけを過ごしていった
蒼い空を見ながら
ただただ寄り添い合っていた
離れてしまったら
しゃべってしまったら
浜辺の砂城のように
崩れてしまいそうだったから
ふっと佐々木が立ち上がる
思いは消えなかった
崩れなかった
俺がつられて立ち上がると
何も言わず寄り添ってくる佐々木
そんな佐々木をいとおしく思いながら
佐々木の華奢な肩を抱いた
185 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 13:32:15.59 ID:LfwinapZ0
今度こそ俺は佐々木が離れたら気持ちをつたえると決めた
示し合わせたように同時に離れる俺達
俺は心を決めた
「佐々木、俺―
口を人差し指で抑えられる
「キョン・・・」
「こんなこと涼宮さんに知られたら・・・」
「俺は―
古泉は
立ち止まるなと俺を奮い立たせ
長門は
俺にこの蒼が閉鎖空間であることを伝え
朝比奈さんは
慎重に、よく考えろと忠告をくれた
全てはこの場所、この時間に向かっていたんだ
188 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 13:50:00.75 ID:LfwinapZ0
これが朝比奈さんの言う「選択」なのだろう
ふと脳裏にこだまする
『僕と彼女を天秤にかけるつもりかい?』
だが俺はこの時も天秤にかけているつもりはなかった
なんせ考えてすらいなかったんだから
「俺はお前が好きだ!大好きだ!!」
「お前のいない世界なんてくそくらえだ!!!!」
困惑とも幸福ともとれない表情をした佐々木
やがてその目から一粒の涙が流れた
「・・・僕もだよ、キョン」
野暮な俺はレモン味なんて嘘だなとこの時思った
ただただ甘いハチミツ味だった
視界がフェードアウトしていく
────────────
192 名前: ◆VXVvXVX1/g [] 投稿日:2009/04/30(木) 14:25:53.91 ID:LfwinapZ0
朝、目覚ましの音で覚醒しかけた俺に妹が飛びかかってくる
「キョン君!朝だよ!起きて!」
むくりと起き上った俺にびっくりしている妹とあいさつを交わし
朝飯を食べ、歯を磨き、髭をそり、顔を洗う
そのまま部屋に戻り『北高』の制服に袖を通し
準備が若干遅い妹を待って「いってきます」
すぐの三叉路で妹と別れ
しばらくして坂道地獄に会う
そうしてやっとの思いで学校にたどりつく
教室にたどりつく
そしていつもの席に着く
俺の最愛の
『北高』の制服に身を包んだ
佐々木の前の席に
Fin