長門「大花火を打ってきた」


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トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:キョン「パンツ一枚くれないか」ハルヒ「・・・はぁ?」

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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 18:18:42.05 ID:dibMwKDa0

キョン「?!か・・・勝った・・・のか?」

みくる「長門さんが負けるハズ無いでしゅよねぇ〜」

長門「・・・・・・フルフル」

キョン「おい?!長門っ?!・・まさか・・・負け・・たのか?」

長門「・・・・・ごめんなさい」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 18:24:26.08 ID:dibMwKDa0

みくる「ばっ?!バッカじゃないでしゅかぁ?!なんですぐ負けるんでしゅかぁ?!あのお金は・・・みんなで・・・グスッ・・一緒に・・ヒック」

キョン「落ち着いてください!朝比奈さん!・・・で、長門・・・お金は・・全部無くなったのか・・?」

長門「・・・・・・あと、4千円」

       パンッ!

小気味良い音が文芸部室に響き渡る。
朝比奈さんが長門の左頬に赤い手形を残していた。

みくる「どうして・・・っ?!なんでなのよ!!」

キョン「・・・・・・とにかく・・・それはもう仕方の無いことです。お金は・・・諦めましょう」

みくる「『仕方無い』なんてものは無い!『仕方やり方』は幾らでもあるっ!!」

キョン「朝比奈さん・・・・」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 18:32:13.51 ID:dibMwKDa0

キョン「いや・・・でも・・・もう4千円しか残ってないんじゃ・・・」

みくる「私に任せてくだしゃい!」

ふと、思い出したようにいつもの口調に戻り、飛び切りの悲しい笑顔を見せる。
まさか・・この人持ち逃げするんじゃないだろうな・・・

そう。もういつもの俺の好きだった日常的非日常―いや、非日常的日常だろうか―はもう戻っては来やしないのだ。
もう誰かを信じるのはやめよう。頼みの綱だった長門はあっさりと散財してきた。

後で聞いた話だが、長門は碌に目押しも出来ずに、山もチェリーもこぼしまくっていたらしい。
そんな人間がバービタはおろか、三連ドン外しすらできるかどうか。

長門を信じた俺がバカだった。
しかし、朝比奈さんは私を信じろと言う。4千円で何ができるというのか。
俺はこの期に及んで悪あがきをしようとする朝比奈さんに悪意を持って聞いてみた。

みくる「まずは朝一・・・キンパルでしゅ・・!」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 18:41:30.88 ID:dibMwKDa0

確かに、4千円で出来ることといったらリセット狙いぐらいなもんだ。
だが、4千円で回せる回数は大体120回転だ。キンパルのテーブルは128Gまでがチャンス。

1台だけに絞っていくのか。或いは2台を64Gまで打つのか。
朝比奈さんはどうするつもりなんだ・・?

みくる「まぁまぁいいからついて来てくだしゃい。」

俺と長門は席を立ち、トコトコと朝比奈さんの後をついて行く。
時計を見るとまだ20時を回ったところだ。閉店チェックには早すぎるし、一体何が狙いなんだ・・・

みくる「さぁ着きましゅたよ!ここはどこにでもある普通のパチ屋でしゅ。」

キョン「いや・・・言われなくても・・・わかりますが・・・」

みくる「ここにデータロボがありましゅよね?じゃあこれ全部プリントしといてくだしゃい」

キョン「へ?!」

みくる「いいから!!」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 18:52:06.87 ID:dibMwKDa0

渋々とキンパル全台のデータをプリントする。
最近のお店はこんなサービスもあるんですなぁ。

みくる「知ってる?キョン君。このお店はね・・・閉店後に設定いじくる台だけしか開閉しないの。」

キョン「ハァ・・・そうなんですか・・・」

みくる「だから・・・これでしゅ!」

朝比奈さんはおもむろにシャーペンの芯を取り出した。
そして適当に台の隙間に置いていく。

みくる「これで明日の朝もシャーペンの芯があったら据え置き、無かったら変更でしゅ!」

キョン「はぁ・・・・・じゃこのプリントしたデータは・・・・」

みくる「しらない」

それは・・・返答というよりも・・・
    はっきりとした「拒絶」だった。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 19:02:39.92 ID:dibMwKDa0

こんな朝比奈さんを見たのは初めてだった・・・・
明らかに無駄な作業をさせたことに気付き逆ギレ、といったとこだろうか。

みくる「実はね、私データの見方とかよくわからないんでしゅ。だからね、そんなこと言われてもよく知らないんでしゅ。ごめんなしゃい☆」

このとき、はっきりと感じた。
この人じゃダメだ。4千円捨てるようなものだと。

シャーペンの芯をセットしただけでもう勝った気でいるのか、朝比奈さんはスキップをしながら店を出る。
もし明日負けたら・・・・その時の逃げ道を用意しておかねば・・・

そして、遂に決戦当日の朝を迎える。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 19:14:05.15 ID:dibMwKDa0

みくる「いい?キョン君!656番台と658番台よ!まずこの2台をキープしたらすぐに向かいのシマの667番台と670番台を押さえて!失敗は許されないわよ。じゃ、頑張って!」

キョン「ちょちょっとちょっと待ってください!一人で4台キープですか・・・?それはさすがに・・・」

後藤「何よ!負けてもいいの?!どうなの?!いいのね?!」

キョン「・・・・・わかりました」

後藤「ね?私の言うことちゃんと守っていれば勝てるんだからさ・・・」

キョン「・・・・あ、そろそろ時間ですよ」

店員がドアを開ける。前に並んでいた客は真っ直ぐ獣王のシマへと走っていった。
続いて他の客も獣王へと走りぬける!
そして俺はと言うと!
携帯!飲み物!鼻紙!バッタ!とテンポ良く狙い台へとそれぞれ放っていった。

長門「・・・・バッタで台確保・・・・ユニーク」

遅れて長門と朝比奈さんがゆったりと入場してくる。腹立つ。

キョン「仕方ないだろ。バッタしかいなかったんだから」

と、そのとき!目の前を輝く緑色の物体が飛翔する。

キョン「しまった!バッタが台確保をストライキした!」

朝比奈「だからあれほど殺しておけと・・!」

結局、バッタの確保していた台は他の客に取られてしまった訳である。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 19:19:09.39 ID:dibMwKDa0

みくる「さて!では確保していた台のシャー芯をチェックしますですぅ」

ノリノリだな。勝った気でいやがる。
俺は目の前の台をチェックする。・・・シャー芯は残っていた。

みくる「こっちもダメでしゅた」

残念そうな顔をしてこっちに戻ってくる。後は長門の台だけだ・・・

長門「芯・・・・無い」

みくる「キャッフゥ!キャフキャフキャッフゥ!勝ちましゅた!これで決まりでしゅ!」

キョン「・・・・・・・・・・・」

みくる「あ、私が打ちましゅからね」

キョン「・・・・・・・・・・・・・・長門、座ってみてようぜ」

長門「・・・・・・・コクリ」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 19:28:53.58 ID:dibMwKDa0

ちょうど角台だったこともあり、俺と長門はソファーに腰掛けてその台の顛末を見守ることにした。

そして・・・・朝比奈さんはメダルをジャラジャラと投入し始める。
勝負は4千円。これで負けたら・・・・いや、今は素直に応援しようじゃないか。
そして願おう。リセットが掛かっていると。

みくる「いいでしゅかぁ〜いきましゅよぉ〜」ガッ!

凄い強打だ。周りの客も滅茶苦茶見てる。朝一であんなにレバーを強打する必要があるのだろうか。
俺と長門は極力他人のフリをしつつ、朝比奈さんの台を注視する。

5回、6回・・台に動きはない・・・
8回転目、カエル7匹演出。第一停止池ポチャ。
9回転目、カエル7匹演出。第一停止池ポチャ。

みくる「いましゅよ、いましゅよぉ〜!」ガゴンッ!!

瞬間、俯いて目を逸らす。まだ強打に上幅があるとは。
周りの客は完全に「要注意人物」としてマークしてしまっているようだ。

10回転目はというと・・・何も起こらずだった。

朝比奈さんの「チッショォ!!」という声と、何かをガツガツと殴る音だけが聞こえてくる。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 19:41:21.32 ID:dibMwKDa0

5分経ち、10分が経ち。相変わらず台に目立った動きは無いようだった。
朝比奈さんはというと、しきりに頭を掻き毟り、迸る程の貧乏揺すりをし、更には向こう3台までの演出に過剰に反応するという狼藉振りを見せてくれた。

みくる「後千円ね・・・」

メダル50枚を出しながら、何を思ったか監視カメラに向かってペコペコしだした。

キョン「何だ・・・・アレは・・・・」

長門「恐らく『店長お願いだから出して』という、アッピール」

キョン「・・・・・・・・・・・・・」

しかし、朝比奈さんの願い虚しく、メダルはみるみると減っていく。
回転数は112を表示している。

そして―物語は加速していく―
7匹カエル第一池ポチャ演出が2連続で起きた。

みくる「頼むわよ・・・ウォラッ!!」ガゴッ!

ケェロケェロォッ!

ドゥイン、ドゥイン、ドゥイン

パチャァ

第2停止池ポチャが来たのである!

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 19:51:32.03 ID:dibMwKDa0

見てるコッチまで緊張してきた。
次が4回転目・・・ここで演出が起きれば相当熱い・・・

朝比奈さんがゆっくりと・・・そして力強くレバーを叩く。
気付けば、回りの客も朝比奈さんの台を気にしているようだった。
無理も無い。こんな必死な客なんだ。余程の事情があると察しもするだろうさ。

ゆっくりと、右から回転するリール。
ホール全体を包み込んでしまう程に残酷な静寂に包まれた筐体。何も起こらない。

朝比奈「まだだっ!!」

そうだった。まだなんだよ。どんな状況でも屈しないこの女は、「まだ」なんだ。
いつだってそうだった。最後の一人になっても諦めないコイツは、いつだって俺たちの心の支えになっていた。

いつのまに大勢のギャラリーに声援を送られていることに気付く。
長門を見ると、右の頬を水じゃなくてもっと寂しい粒が伝い落ちている。

祈るように左リール白7、オレンジ、バーをビタ押しする朝比奈。

                「ドゥブブン!」

キョン「バウンドしたッ!!」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 20:00:19.39 ID:dibMwKDa0

リールはというと、3コマ滑ってリプ・オレンジ・ベルだった。

第一停止ブルルンなので、この3つの子役とボーナスの可能性だ。

みくる「ダォラッシュ!!」ビッ!

一本突きのような形でハサミ打つ。
すると、第3リールはベル・オレンジ・リプのトリプルテンパイの形を取った。

みくる「フフフ・・・楽しませてくれるじゃない・・・」

キョン「俺だったらな・・・」

長門「・・・?」

キョン「こういう時は・・・オレンジを引き込めない所を押すんだ・・・」

長門「なぜ?」

キョン「そっちのほうが・・・もっとドキドキするだろう?」

長門「キュン」

みくる「いっけぇぇぇぇぇぇえええええ!!」ビッ!!



ドゥイーん

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 20:02:47.58 ID:dibMwKDa0

みくる「キョン、見てみぃ・・・・・・・リプや・・・」

キョン「・・・・そうですね」

みくる「さっきのバッタ食って帰ろうぜ」

                          終



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