1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:08:21.24 ID:zZXkXaQ10
「ゼェ・・・ゼェ・・・ふぅ・・・」
いつもの坂をやっとの思いで上りきる。
何故だろうか。いつもより体が重い。いや、気が重いだけなのかも知れない。
病は気からだなんてよく言うが、きっとこの体の倦怠感もきっとそれなのだろう。
3年目だというのに、進歩どころか退化してるんじゃないだろうか、俺。
「今日から新学期、か・・・」
自分の表情なんてものは、自分では知る由もないが
笑っていないことは確かだ。
そんなことを考えながら、
ワイワイと往来を埋める大勢を避けつつ
眼前に据えた白く無機質な建物へと向かった。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:13:24.53 ID:zZXkXaQ10
「よっこいしょ、っと・・・。」
なんてオヤジ臭い台詞とともに席に着く。
それにしても、まさか入学して1年も経っていないというのに
まさかこのクラスの人数が、新年度開始当時のそれから半数以下になろうなんてな・・・。
「ふう・・・。」
とため息を漏らし窓の外に目をやる。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:17:24.24 ID:zZXkXaQ10
街は、もはや街とは言えない有様だ。
まだ午前中だというのに、そこかしこで万引き、強姦、殺人、放火・・・
挙げたらキリが無いな。とにかく犯罪という犯罪が横行している。
「そもそも・・・」
人がまだこの世界に暮らせている時点で、正気の沙汰じゃねぇよなぁ・・・。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:20:26.18 ID:zZXkXaQ10
というのも、建造物という建造物は倒壊し、
アスファルトで舗装されていた道路は地割れの如く寸断され尽くし、
電柱は倒れ、自動車はすでに埃だらけ。
この学校がこうして原型を留めているのが不思議なくらいだ。
そういえばもう一箇所無事なところがあったな。
はて、どこだったか・・・?まあそんなことは、もはやどうだっていいのだ。
なんたって世界中で、全く被害の出なかった場所はこの学校くらいらしいからな。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:24:42.93 ID:zZXkXaQ10
インターネットはおろか、テレビさえ使い物にならないこの状況下で
人々が唯一情報源として頼れるものはラジオのみだった。
回覧板でも回そうという意見も出たらしいが、
間違った情報の横行や、また悪戯を懸念し
それは実際には行われていない。
「こんな時こそ、ご近所同士で上手くやり取りすべきだと思うけどなあ・・・」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:29:54.12 ID:zZXkXaQ10
そんなことをぼやきながら、
通常このクラスにいるべき20人足らずと、安置を求めてやってきた人々は
今日も日が暮れるまでここを憩いの場とする。
そして日暮れには、いつ倒壊するかもしれない仮設住宅へと帰っていく。
それが現在人々が暮らす上で、常套手段となっていた。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:35:34.25 ID:zZXkXaQ10
そもそもなぜこんなことになったのか。
この世界のほとんど、それこそ99.99999%以上の人々は知らない。
だが俺は知っている。それに少なくとも、あと3人も知っている。
・・・正確には知っていた、か。
3人の内、一人は戦いの末、瓦礫の下敷きとなったらしい。
また一人は・・・未来へと帰ってしまったからな。
―アイツはちゃんと成仏してくれただろうか。
―彼女の言う未来で、世界は再生されているのだろうか・・・。
そんなことを考えることも、とんと少なくなった。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:41:13.86 ID:zZXkXaQ10
事の発端は約9ヶ月前。
奇しくも七夕の日。
未来へと帰っていった彼女曰く。
過去に観測されたという、大規模な情報爆発。
それを凌ぐものがこの日に起きたという。
そして、それは現実世界にも影響を及ぼした。
以前、古泉に連れて行かれ、ハルヒに召還され、
ともあれ。”閉鎖空間”と呼ばれていたそれが、この世界を覆ったのだ。
感覚的にもそれは感じ取れたが、決定的だったのは
”あの空間”で見た、”あの巨人”がこの街で暴れまわっていたことだった。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:48:10.36 ID:zZXkXaQ10
しかし”それ”に気付いた時には既に遅かった。
いや、”それら”と言うべきか。
あまりにも世界は脆弱で、自分は無力だった。
―ああ、気付くのが早かろうが、はたまた気付かなかったとしても、それは変わらないか・・・
結局この世界には、同じ結末しか待ってはいなかっただろうからな。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 23:52:24.21 ID:zZXkXaQ10
あの日、長門が消し去った朝倉涼子
先に述べた、古泉・朝倉さん両名
それに、アホの谷口や国木田も
とにかく、親しかった大多数は、いなくなった。
理由は・・・諸々だ。
語るには時間も、俺の精神も足りなすぎる。
19 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:00:22.34 ID:oGA0xCLP0
キョン「見せてやろう、伝説の!狼牙ふうふう剣!!!!」
ハルヒ「違うわよ・・・?」
トリ付けときますー
もう遅いかな・・・
22 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:07:29.79 ID:oGA0xCLP0
俺がゼェ・・・ゼェ・・・ふぅ・・・だよばかやろー
がんばりますもうちょい溜まったら投下するお
24 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:16:42.21 ID:oGA0xCLP0
再開ですー
ああ、そういや長門の所在について触れてなかったな。
どうやら、対有機なんちゃらの、あのインチキで今もピンピンしている。
俺の隣で本を読んでるみたいだな。
『世界が滅亡した日』・・・?
不謹慎にも程があるぞ、長門。
そう考えながら俺はボーっと長門を眺めた。
26 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:22:41.51 ID:oGA0xCLP0
「・・・何?」
「いいや、なんでもないさ。」
本当は今にも泣き出しちまうところだったんだがな。
ついこの間まで何とも思わなかった、長門とそして本。
この姿を見ることが、今じゃ唯一の安息を得る方法だなんて恥ずかしくてとても言えない。
”部室の付属物”なんて言って気にも留めてなかったのが嘘のようだ。
28 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:27:26.99 ID:oGA0xCLP0
・・・嘘のようだ。
ああ、違う。長門に対してじゃない。この世界の有様―これこそ嘘のようだ。
俺はもう一度窓の外に目をやる。
人々は発狂したように、しかし悲しそうに空ばかり仰いでいる。
が、それは俺も一緒みたいだ。
無意識の内に空を見上げていた。
あの、どこまでも続いているかのような、
世界の全てを飲み込んだかのような、
灰色がかった空を。
29 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:32:15.01 ID:oGA0xCLP0
少し、ハルヒの現状について触れておこうと思う。
ハルヒはあの日、発狂するかと言われるほどの心的ストレスを抱えていたらしい。
「らしい」と言うのは、後日例の”機関”から聞かされたことだからだ。
と、まあその過度なストレスがハルヒを暴走へと追いやり、結果は先に述べたとおり。
はた迷惑甚だしい話だが、そうも言ってはいられない状況に、ハルヒはあった。
34 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:36:26.08 ID:oGA0xCLP0
「寝たきり!?ハルヒがですか!?」
”機関”の息がかかった病院。
そこにハルヒと俺と長門はいた。
外は見るも無残だったが、
内側はなぜか無事のままだった。こういうときのために、核にも耐えうる構造で作ったのだとか。
『はい。』
「つまり・・・植物状態、って事ですか?」
35 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:40:38.10 ID:oGA0xCLP0
『申し上げにくいですが・・・』
「そう、ですか・・・」
あのバカヤロウ・・・世界中に迷惑かけておきながら
自分はさっさと眠っちまいやがって!
と、悪態を付きたい気もあったが、
そうも言っていられないよな、普通。
36 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:44:34.53 ID:oGA0xCLP0
支援嬉しいですー
おっしゃ
「それで、回復のメドは・・・?」
『残念ですが、今のところは・・・申し訳ございません・・・』
「そう、、ですか・・・・」
『では、また何か変化があれば連絡します。』
「・・・お願いします。」
『それと、古泉についてですが・・・』
「アイツが、どうかしたんですか?」
『どうやら、戦いの最中、瓦礫に押しつぶされてしまったようで・・・もう、恐らく・・・』
39 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:48:18.91 ID:oGA0xCLP0
ああ、回想でスマンな。
とりあえず、こんな感じだ。
とにかく、ハルヒは植物状態で
古泉は恐らくもう・・・。
それだけでもう十分だよな?
思い出すだけでも、溢れそうになっちまうんだ
とりあえずこれで納得してくれ。
40 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:52:08.90 ID:oGA0xCLP0
さて、諸々の事情によって俺が親しい人間は長門だけになった。
しかしこの長門有希という宇宙人は、恐怖とか、悲しみとか
そういうことすら感じないのだろうか。
以前と変わらず黙々と読書にふける姿は、
はたから見れば現実逃避をしているだけのように見えなくは無いが
俺からすると、とても不気味に見えて仕方が無かった。
だが、先に述べたように唯一の安息でもあるのだ。
複雑に入り混じる、俺の感情を知ってか知らずか。
彼女は一心不乱に、黙々と、読書、読書、読書。
42 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 00:56:26.29 ID:oGA0xCLP0
―変わらないモノには、それ特有の
「美しさ」とか「強さ」とか
「しなやかさ」とか「おそろしさ」とかがあると思う。
いや、そう、思っていた。
俺は今、変わらないもの、いや、変わらなかった者を見ている。
だが彼女からは何も感じない。
43 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:01:56.07 ID:oGA0xCLP0
彼女が芸術作品ではないから?人ではないから?
否。
単に俺が物事を感じ取ることができなくなっているだけなんだろうな。
45 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:06:27.57 ID:oGA0xCLP0
ふぅ。駆け足で喋り続けたせいか少しばかり疲れたな。
まあ、どうせしばらくは復興のメドも経たないだろうし、
いや、多分ずっとこのままだな・・・。
っと、さーて、やっと昼だ。
「炊き出しに出向く時間だぞ、長門」
コクン、と首を縦に振りトコトコと後を付いてくる長門。
一つも会話はなく、淡々と歩く。
歩くうちに炊き出し場に着く。といってもグラウンドの一角に
申し訳程度にテントがあるだけだが。
46 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:09:45.33 ID:oGA0xCLP0
決められた量の白米と、カレーを紙皿に盛り、
元来た道を教室へ向け引き返す。
後を付いてくる長門。
金魚の糞とは、こういうことを言うんだろうな。
なんて思いながら、あっという間に教室まで戻ってきた。
『・・・あなたは・・・』
唐突に口を開く長門。
48 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:12:30.33 ID:oGA0xCLP0
コイツはいつも脈略が無いな・・・
「なんだ?」
『・・・何故そんな目をしているの?』
「? どんな目だ?」
『全てを諦めた目。希望に満ち溢れた目。憤怒に支配された目。』
『そして、』
どうやら俺に発言させるいとまは、与えてくれないようだ。
52 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:17:49.56 ID:oGA0xCLP0
『私にはその目をしていることは分かった。でも。』
「その理由が分からない、ってか?」
『そう。』
「まあ・・・きっとお前にも理解できるようになる。」
「俺の感情を目を見ただけで読み取れるようになったんだからな。」
『・・・そう。』
53 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:20:26.03 ID:oGA0xCLP0
確かに、長門は日に日に人間らしくなっている。
入学した手の頃、感情なんてものは全く関係の無かった彼女だけに
相当な変化、というか進歩が見られる。
が、ただそれだけのこと。
その感情の生まれる由縁など、まだ分からないのだから
結局は・・・。
そんな長門に少しの苛立ちを覚えたが、
いつの間にかカレーライスを完食し、再び読書にふける長門を見た瞬間に
さっきまでの苛立ちなんて消えていた。
55 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:23:32.79 ID:oGA0xCLP0
・・・そういえば、他人に苛立ちを感じたのはいつぶりだろう・・?
他人のことなんて構ってはいられなかったからな、最近は。
なんて思いながら、自分が人間らしさを失っていっていることを
少しだけ感じて、
少しだけ悲しくなって、
少しだけ・・・嬉しかった。
「・・・いっそ狂っちまえれば・・楽なのにな」
56 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:27:06.22 ID:oGA0xCLP0
そうそう、世界中が悲劇に見舞われたのに
なぜ俺を含む一部しかその事実を知らないかというと
どうやら、普通の人たちには、アレが見えなかったらしい。
道理であのとき、戦闘機も、戦車も、警察も、全く見かけなかったのだ。
―あのでかい瓦礫の山は、恐らく何か大企業のビルだろう。
あそこで何も知らず死んでいった人はどう感じたんだろう。
突如目の前に現れた死の脅威を、どう感じたんだろう?
57 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:29:06.57 ID:oGA0xCLP0
急なことであっけに取られたかな?
それとも泣き叫びながら徐々に命が削がれていったのかな・・・?
そう考えるとおかしかった。
いや、おかしいのは俺だ。だが、無性におかしかった。
「ああ、考えるのは、やめよう。」
俺は理性を振り絞った。
本当に・・・狂ってしまいそうだ。
59 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:33:07.12 ID:oGA0xCLP0
Interlude ハルヒ、その日、七月七日。
「あ〜あ・・・」
今日も特に何も起きなかった。
きっとこれからも何も起きない。
SOS団を立ち上げてから二年も経つのに、何にも起きなかった。
でも、楽しかった。
それでよかった。
それでいいって、言い聞かせてた。
62 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:35:46.49 ID:oGA0xCLP0
「そりゃ、そうよね。」
誰に言うわけでもなく、一人つぶやく。
今日は梅雨明け間近で、割と天候は気持ちよく、
空にも青の部分が多く見受けられる。
「ユキや、みくるちゃん、小泉君と、アイツがいれば、それでいいじゃない・・・。」
うん。
いい訳なんてなかった。
だってSOS団として活動するうちに
アイツのことが・・・、
「でも、言えないよなぁ・・・」
64 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:40:47.37 ID:oGA0xCLP0
「アイツはただの団員であって、私の部下でしかなくて・・・」
「私とアイツが恋仲なんて絶対にありえないでしょ・・・」
「だいたいそんなんじゃ、団長として示しがつかないじゃない!!」
「でももし、もし、アイツが私のことを・・・」
「ありえないわ・・・うん。」
「いえ、でも、もしってことは無きにしも非ず・・・」
「う〜ん・・・」
66 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:44:43.97 ID:oGA0xCLP0
なんて独り言を言いながら、学校の目の前にある坂道をゆっくり上る。
そこに、これ以上ないくらい絶妙なタイミングで、目の前を歩く彼の姿を見つけた。
「キョn・・・・!」
と、彼を呼ぼうとする声を、喉から出掛かったところで押し殺した。
誰、その子?ねぇ、キョン?
誰?誰なのよ、ソレ・・・
ダ レ ナ ノ ?
69 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:53:38.65 ID:oGA0xCLP0
間違った・・・
>>67の前にこのレスが入ります!!!!ごめんなさい!!!!
教室に入ると、既に彼は自らの席に座っていた。
私は無言で席に着き、机に突っ伏した形でいた。
彼が、いつものように声を掛けてくれると思ってた。
でも、一向に喋りかけてくれない。
何で?何でなの?あの子は誰なの?キョン・・・!?
そうやって、心の中で唱えるしかなかった。
67 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:49:19.27 ID:oGA0xCLP0
お昼休みも、今日に限って彼は部室に現れない。
「今日はキョン君いらっしゃらないですね〜」
なんて間の抜けた声も聞こえた気がするけど、
私は既に心此処に在らずだった。
「・・・そうね」
なんて返したような返してないような。
―まあどっちでもいい。
71 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:56:33.61 ID:oGA0xCLP0
今日は何だか疲れちゃったわ。
「今日は部活は無しよ。各自速やかに帰宅すること。いいわね?」
そういって、私は教室へと向けて重い足で歩いた。
教室に帰ると彼の姿は無かった。
―あの女と一緒にいるんだ・・・絶対そうだ・・・私なんてどうでもいいんだ・・・
少し悲しくなった後、ソレはとてつもない速さで怒りや憤りに変わり
瞬く間にこの体の、この心の、隅々まで広がっていった。
そして、支配した。
72 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 01:59:32.49 ID:oGA0xCLP0
苦しい。なんでこんなに苦しいの?
イヤ―。キョンが他の女と・・・?
イヤ、イヤよ・・・。
苦しい―。くるしい―。クルシイ―。
皮肉なことに、私はこんなことで気付かされてしまった。
狂おしいほどに彼を愛していること、そして。
自分がこんなにも醜いことに。
73 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:02:00.69 ID:oGA0xCLP0
「あ・・・ぁ・・・・」
知らず知らずに、涙と嗚咽が止めどなく流れる。
それでも、彼は此処に来てくれない。
彼は私を見つめてくれない。
そう思うと、訳が分からなくなった。
そして、堰を切って流れる雫は
いつの間にか洪水へと変わっていた。
74 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:04:57.34 ID:oGA0xCLP0
それに見かねたクラスメイトが、保健室へ連れて行ってくれた。
養護の先生に何だか色々聞かれた気がしたけど、
私には何にも聞こえなかった。何にも。
ただ、彼のことが頭を支配して、
思い出したら震えが止まらなくなって、
吐き気が止まらなくなって、
切なさが、悲しさが、怒りが、憎悪が、
醜悪な心をさらに醜く染めていくのを感じながら。
77 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:08:11.20 ID:oGA0xCLP0
「今日は、帰ります・・・」
それだけをやっとの思いで言って、
未だ震え続ける足に鞭を打って、
未だ襲いくる吐き気を飲み込んで、
独り、家路へとついた。
「ぅう・・・ッ・・キョンッ・・ぅっ・・・」
79 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:11:52.94 ID:oGA0xCLP0
一体何度、彼の名を呼んだだろう。
いつの間にか自宅へと着いていた。
どうしたの?という母を、無言でかわして、
すぐさま部屋にこもると、小さな子供のように泣き叫んだ。
「・・・ッ!ギョンんん・・・!ぅぁああああああ・・・!」
そして私は、知らぬ間に眠っていた。
いつ覚めるとも知らぬ、深い眠りに就いていた。
Interlude End
81 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:14:32.81 ID:oGA0xCLP0
俺に、何も知らず死んでいった人たちの想いなんて分かるはずがない。
なまじわかったところで、何もできまい。
そんなことは知っている。
そんなことを考えるのは野暮だ、と知っている。
自分の中に少しずつ芽生え始めた、冷たい感情に
呑まれることも、今なら不可抗力だと説得力を持って言えるだろう
82 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:18:38.43 ID:oGA0xCLP0
そんな下らない事を考えることも、
長門を観察する事とともに、いつの間にか日課になっていた。
そして、その日課をこなす毎に、
「俺はまだちゃんと人間なんだなー」
なんて、感慨にふけってみたりしている。
83 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:20:19.32 ID:oGA0xCLP0
その間に、
お世辞にも美味いと言えないカレーライスが、
冷めてよりいっそう不味くなったことも、
長門が獲物を狙う鷹のような目でそれを見ていたことも、
言うまでもない。
「言っておくが、一口しかやらんからな。」
84 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:23:36.14 ID:oGA0xCLP0
そして、俺が冷えたカレーライスを食べ終わる頃、
またしても唐突に口を開く長門。
『・・・あなたに言っておかなければならないことがある。』
「おう、なんだ。今なら何でも受け入れられる気がするぜ?」
強がる俺に構わずに長門は淡々と語る。
『今から約二十七時間後、涼宮ハルヒは目を覚ます。』
87 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:27:22.51 ID:oGA0xCLP0
「・・・なんだって?」
前言撤回だ。
『彼女が目を覚ます。そう言った。』
「なんで分かるんだよ・・・?」
何故かは分からない。
分からないが、この時俺は確かにこの人形に怒りを覚えた。
89 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:30:44.42 ID:oGA0xCLP0
『先ほど情報統合思念対からコンタクトがあった。』
俺は黙ったまま、続けろ、と目で訴えた。
『先ほど涼宮ハルヒの脳細胞に回復の兆しが見られた。』
「・・・なんだって?どういうことだ?」
『僅かながら、脳波の揺れを感知した。』
「何故分かる?」
『分かるから。』
90 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:33:21.77 ID:oGA0xCLP0
急に人間らしい言葉を使いやがったな。
話の内容にも、そこにも、意表をつかれた。
「信用、できるんだな?」
『・・・確実。』
「そうか・・・」
『でも安心はできない。僅かに観測された脳波は、以前の彼女のものとは違う。』
「記憶を失っている可能性があるとでも言うのか?」
『そうじゃない。』
「じゃあ・・・!」
92 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:35:20.59 ID:oGA0xCLP0
『以前より、彼女の持つ特質さが増している。』
「つまりどういうことだ・・・?」
『目覚めた瞬間に、あの日起こった事件と同等、もしくは更なる脅威が起こる可能性がある。』
「・・・・嘘だろ・・!?」
あれ以上の惨劇だと?
冗談じゃない!!
もう既にこれだけ破壊しつくして、
大勢を殺し、大切な・・・仲間まで・・・!
94 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:37:31.09 ID:oGA0xCLP0
「これ以上は、例えハルヒが原因だろうと、それが無意識によるものだろうと・・・」
『あなたは今、涼宮ハルヒを殺そうと考えている。』
「・・・ああ、そうだ。それ以外に何も策はない。そうだろ?」
『情報統合思念体も、そう結論を出した。』
「ああ、だろうな・・・。だから、せめて俺がやる。」
『なぜ・・・?』
「団長の尻拭いってやつだな・・・。」
『・・・そう。』
97 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:41:27.23 ID:oGA0xCLP0
翌日、俺はハルヒの居る病室へ向かった。
ハルヒが目覚めるまで、あと― 十二時間
イコール、タイムリミットって訳だ。
俺はこの病院にお世話になったこともあったし、
何度もハルヒのお見舞いに来ているから
ほぼ顔パスで入室を許可された。
お見舞いの果物の詰め合わせのバスケットに
果物ナイフを忍ばせて。
98 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:44:37.06 ID:oGA0xCLP0
コンコン。
一応ノックをしてハルヒの病室へ入る。
ハルヒが個室の病室でよかった。
他の病室はパンパンだってのに。
さすが、神様と言ったところか。
「ったく、迷惑な神様だよな・・・」
100 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:51:24.47 ID:oGA0xCLP0
ハルヒは、やせ細っていた。
そりゃそうだろうな。ずっと寝たきりだ。
体は骨と皮と言っても過言ではないほどだったが、
もっと凄惨な死に様をいくつも見てしまった後だ。
生きているってだけで何のグロテスクさも感じなかった。
ふと時計を見る。
まだ、大丈夫だな。
101 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:53:15.86 ID:oGA0xCLP0
よっし、こっちでは書き溜め終わった!
後は72秒規制もあるし、まったり投下しますー
俺は返事のないハルヒに向かって独りで語りかけていた。
野球大会の話、旅行に行った話し、雪山の話・・・
とにかく色々話した。
気付いたらハルヒの寝ているベッドの掛け布団はびっしょりになっていた。
なんで濡れてんだ?
ああ、原因は・・・俺か・・・。
104 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:54:57.81 ID:oGA0xCLP0
きっと、俺はコイツがいとおしくて仕方がないんだろう。
そんなこと、今更気付いちまったよ・・・。
情けない。情けない。
今ここでコイツを殺しちまったら、一生言えないんだぞ?
好きだって、愛してるって。それでいいのか?
わからない。
時計を見ると残り時間は四時間ほどになっていた。
106 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 02:57:52.95 ID:oGA0xCLP0
どうしたらいいのか分からない。
どうしようもない。
そう思うとまた泣けてきた。
―せめて終わりの時まで・・・
「・・・添い寝、してもいいよな?」
返事は返ってこない。でも、いいんだ。
俺がそうしたいと心から思ったから。
108 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:00:59.00 ID:oGA0xCLP0
Interlude 夢
「おいハルヒ。」
『なーに、キョン♪』
手を繋いで散歩をしている。
ただ、それだけの夢。
あたりは桜や何だかよくわからないが、綺麗な花が咲いていて
あたかも、これは夢です、と言っているような感じだ。
俺もアイツも幸せそうに手を繋いでいる。
『ねえ、キョン・・・?』
『一つ聞いていい?』
109 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:02:58.64 ID:oGA0xCLP0
『あの日の朝、一緒に歩いてた子、誰?』
「・・・?」
『七月七日!七夕の日の朝!誰かと歩いてたでしょ!校門のところで!!』
「いや、身に覚えがないんだが・・・?見間違いとかじゃないのか?」
『そんなことあるわけないじゃ・・・!』
「どうした?」
『そういえばあの日・・・』
110 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:04:17.08 ID:oGA0xCLP0
「やっぱり間違いだったか?」
『そんな気がしてきたわ・・・』
うーん、と考え込むハルヒ。
「バカだなぁ、お前は」
『なっ!バカとは何よ!』
「そういうのをな、杞憂っていうんだぞ?」
『あっそ!・・・まあ、私の見間違いなんだから大丈夫よね・・・?』
「おう、命に変えてもな!」
Interlude End
111 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:06:46.92 ID:oGA0xCLP0
『・・・ン!・・・さい!・・・起きなさ・!・・』
ん・・・なんだ?何だか懐かしい声が・・・
『起きなさい!バカキョン!!!』
「うふぉっ!!!!!!!!!!」
『なーにアホみたいな声出してんのよ・・・。気色悪い・・・。』
「だってお前、ハルヒ・・・」
113 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:08:38.31 ID:oGA0xCLP0
『ちょっとアンタ、何泣いてんのよ!??』
ああ、不覚・・・一生の不覚・・・!
それにしても、ずっと寝たきりだったのによく声が出るもんだ。
だが明らかにか細くはなっていたが。
「とにかく、よかった・・・!!」
『何がどーなってんの・・・?意味わかんない・・・。』
115 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:10:19.60 ID:oGA0xCLP0
あーもうちょっとですー
肩痛いお
腕を振り回した勢いで、そのままカーテンを開ける。
街は・・・!
「あ・・・れ・・・?」
117 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:12:32.51 ID:oGA0xCLP0
俺が窓の外に目を奪われたその時。
コンコン。
『お見舞いにあがりました。』
この声は・・・古泉・・・?
キ「・・・なんで、だ?」
古『ああ、元気そうで何よりです。』
キ「・・・その嫌味なほどの爽やかスマイルは、間違いない・・・」
118 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:14:09.30 ID:oGA0xCLP0
古『ひどい言われようですね・・・』
ハ『さっきからキョンが変なのよー!小泉君、何かわかんない!?』
キ「何がなにやら・・・」
キ「それにハルヒ、なんでお前は制服なんだ?」
ハ「はぁ?あったりまえじゃない!学校帰りだからよ!」
ふと時計を見ようとしたが、左腕に巻いていたはずの腕時計がない。
まあ、話から察するに、きっと午後6時ってところだろう。
古「それよりキョン君、早くよくなってくださいね。」
キ「俺はどこも悪くないぞ?」
119 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:16:15.26 ID:oGA0xCLP0
ハ「だめねこりゃ、重症だわ・・・」
古「まあ、アレだけの高熱の上、気を失って三日も寝ていたんです。錯乱していても仕方がありませんよ。」
キ「つまり、何だ?俺はずっと夢を見ていたのか?」
ハ「何?どんな夢見てたの!??」
キ「まあ、気が向いたら話すよ・・・」
ハハハ、と愛想で笑う俺を見たハルヒは、
さも不機嫌そうな顔をした。
121 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:18:28.24 ID:oGA0xCLP0
古「では、元気なキョン君も見れたことですし、われわれはこれで・・・お大事に。 ニコッ」
ハ「まあ、命に代えるのはさすがに可哀相だから・・・お大事にね!」
そういうと二人は帰っていった。
122 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:20:28.02 ID:oGA0xCLP0
そうか、ははっ、夢か。
・・・なら、俺の左腕と腕時計はどこへ消えた?
ハルヒがさっき言った、命に代えるってなんだよ?
街に溢れていた残骸はどこへ消えた?
なぜハルヒが目覚めていて、俺が眠っていた・・・!?
いつだったか・・・長門が言ってたな。
「ハルヒは俺の発言を」云々かんぬん。
っっぅぁあ゛ぁあぁぁあっぁあうあぁうぅぁあああぁああ!!!!!!
全てが粉塵となったこの街に、
俺の声だけがこだました。
123 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:22:32.85 ID:oGA0xCLP0
うわぁ、こりゃひどい・・・
って言われても仕方ないどす・・・
複線回収も何もwwwwwサーセン・・・・・
一応おしまいです。
支援してくれた方感謝感謝です!
134 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:32:49.63 ID:oGA0xCLP0
古泉は死んでませんでした。
明確に「死んだ」と言う表現をしてなかったのはこのため。
キョンの左腕はハルヒが目覚めた際、新人が出現し
巻き込まれあぼん。
上でも書いたように、もう一度神人が現れています。
これは、ハルヒが夢でキョンに聞いた後も、やはり信じられなかったからです。
最後にキョンが長門の言葉を思い出しているところから、
やはりハルヒは自分が正しいとおもっています
137 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:35:00.47 ID:oGA0xCLP0
次に古泉とハルヒの関係についてですが、
機関は既にハルヒが目覚めるであろう頃合と、
目覚めた際にどうなるか、大方の見当がついていました。
そして、街は瓦礫や死骸だらけなので、
この際その災害を利用して、大掃除をしようとします。
138 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:36:26.00 ID:oGA0xCLP0
まあ、なんというか、単純に
「人間は汚い生き物なんだよー」と言うことを
表現したかったんですが・・・
むずかしいどす・・・
142 名前: ◆dOyMaibW9Q [] 投稿日:2009/02/18(水) 03:40:40.89 ID:oGA0xCLP0
とりあえず、口内炎ができて痛いんだお!!!!!!