1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:11:37.10 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「今日は早めに帰るって言ってたのに!!」
キョン「ああ、悪い悪い。残業でな。ほら、お詫びにケーキ買って来たぞ」
ハルヒ「わあ、ケーキだ!!」
ハルヒ「……って、誤魔化すな!!」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:13:00.32 ID:ymEaUjLV0
キョン「もう夕飯は食ったんだろ?」
ハルヒ「…………」ぐー
キョン「……待っててくれたのか」
ハルヒ「…一緒に食べようって、約束したじゃない」
キョン「…すまん」
キョン「俺もまだだから、食おうぜ」
ハルヒ「うん!」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:14:56.57 ID:ymEaUjLV0
キョン「やっぱりハルヒの作る飯は最高だな」
ハルヒ「何よ、キョン。毎日あたしの料理食べてるくせに今更じゃない」
キョン「ん、でももうすぐ、じゃないか」
キョン「なんか感慨深いというか」
ハルヒ「……そういえばそうね」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:16:48.01 ID:ymEaUjLV0
キョン「さて、寝るか」
ハルヒ「……あのさ」
キョン「ん?」
ハルヒ「今日も、一緒に寝ていい?」
キョン「おいおい……ここんとこ毎日じゃないか」
ハルヒ「べ、別にいいじゃない!!」
キョン「はいはい。まったく、いくつになっても甘えん坊だな」
ハルヒ「…えへへ」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:18:38.74 ID:ymEaUjLV0
翌朝
キョン「ふああ……おはよう」
ハルヒ「おはよう、キョン!!」
キョン「相変わらず早いな」
ハルヒ「早く起きないとお弁当作れないじゃない」
キョン「たまには休んでもいいんだぞ?」
ハルヒ「なによ、あたしのお弁当が食べたくないっていうの?」
キョン「いや、そういうわけじゃ」
ハルヒ「ま、自分の分を作るついでだけどね、キョンのは」
キョン「まったく……」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:20:17.98 ID:ymEaUjLV0
昼休み
キョン「さて、仕事もひと段落ついた。飯だ飯」
ぴりりり
キョン「なんだ、これからってときに」
キョン「ん?古泉から?」
ぴっ
キョン「もしもし」
古泉『もしもし、お久しぶりです』
キョン「ああ、約一年ぶりだな」
古泉『お時間のほうはよろしかったでしょうか?』
キョン「ちょうど昼休みで、ちょうど昼飯を食うところだった」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:21:44.29 ID:ymEaUjLV0
古泉『おや、それは失礼しました。……もしかして、ハルヒさんの手作り弁当では?』
キョン「なぜわかった」
古泉『なんとなくですよ。相変わらず仲がよろしいようで何よりです』
古泉『ところで、今年もあの日が近づいてきたので、旧SOS団の会合の打ち合わせをと思いまして』
キョン「ああ、そうだな。しかし、十年以上もやってることだ、いつもどおりでいいだろ」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:22:56.05 ID:ymEaUjLV0
キョン「おう、おう、それじゃあ」
ぴっ
キョン「…………」
キョン「もう十六年か」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:25:21.41 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「おかえり、今日は早かったのね」
キョン「まあな」
キョン「そういや、今日古泉から電話があってな」
ハルヒ「え、古泉くんから?」
キョン「ああ、またいつものように、集まることになった」
ハルヒ「やった!ということは、みくるちゃんも有希もくるのね?」
キョン「ああ、昼間のうちに連絡しといた」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:28:49.31 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「一年ぶりね!またみんな一段と老けてるでしょうね!!」
キョン「失礼なことを言う奴だな……長門は相変わらず容姿に変化はなさそうだが」
ハルヒ「ああ!!待ち遠しいわ!!」
キョン「そうだな、わざわざお前のために集まってくれるんだから、感謝しないといけないぞ」
ハルヒ「わかってるわよ!」
ハルヒ「♪」
キョン「やれやれ」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:33:17.79 ID:ymEaUjLV0
キョン「ふう、いい湯だった」
キョン「って、また一緒に寝るのか?」
ハルヒ「別にいいでしょ、家族のふれあいは大事よ?」
キョン「何がふれあいだ。お前寝相悪いからあんまり一緒には……」
ハルヒ「……」ぐすん
キョン「はあ、わかったよ」
ハルヒ「えへへ、だからキョンって好きよ」
キョン「……照れるからそういうのはよせよ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:35:47.39 ID:ymEaUjLV0
キョン「うっ……ひぐ……」
ハルヒ「キョン……?」
キョン「ぐすっ……あ……あ……」
ハルヒ「泣いてるの?」
キョン「は、ハルヒ……行かないでくれ……」
ハルヒ「夢……見てるのかな」
ハルヒ「やっぱり、悲しいよね……」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:41:36.54 ID:ymEaUjLV0
休日
ハルヒ「ねえ、プレゼントは何くれるの?」
キョン「もらう側が聞くのは反則だ。当日まで待て」
ハルヒ「あたし、欲しいものがあるんだけど」
キョン「リクエストは受け付けない」
ハルヒ「むう、あたしがもらうんだから、いいじゃない」
ハルヒ「プレゼント選びで頭悩ますよりも、本人から直接欲しいもの聞いたほうが効率的だわ」
キョン「残念ながらもう買っちまったからな」
ハルヒ「うそ、クローゼットの中も漁ったけど、何もなかったわよ」
キョン「それで俺のクローゼットの中がめちゃくちゃだったのかよ!」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:46:13.80 ID:ymEaUjLV0
キョン「ちょっと、でかけてくるわ」
ハルヒ「どこ行くのよ」
キョン「パチンコ」
ハルヒ「やめなさいよ。どうせ勝てないんだから」
キョン「うるせいや。俺の稼いだ金でやるんだ、文句は言わせないぞ」
ハルヒ「あたしには無駄使いするなと言っておきながら……」
キョン「稼いでいる者と食わせてもらっている者の差だな」
ハルヒ「何よ、偉そうに!!」
キョン「実際この家では偉いんだよ」
ハルヒ「くぅう、キョンのくせに生意気よ!!」
キョン「………」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:48:03.70 ID:ymEaUjLV0
キョン「ただいま」
ハルヒ「どうだった?」
キョン「負けた」
ハルヒ「ふん、いい気味ね」
キョン「お前、俺に『負けろ』って願っただろ」
ハルヒ「さて、どうかしら」
キョン「俺の小遣いが……」
ハルヒ「自業自得ね」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:51:49.84 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「じゃあさ、今から一緒にでかけない?」
ハルヒ「まだ昼の一時じゃない、たまには家族サービスでもしなさい!!」
キョン「おいおい……今日はもうあんまり金ないから、またな?」
ハルヒ「そんなの全然関係ないわよ!!あたしが行くと言ったら行くの!!」
キョン「……はは、わがままだな、ハルヒは」
キョン「昔からさ」
ハルヒ「決定ね」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:55:26.42 ID:ymEaUjLV0
キョン「うーん、じゃあ適当にドライブがてら、飯でも食いにいくか」
ハルヒ「じゃあ、あたし『ブローニュの森』がいいな」
キョン「なんで昼間から本格フランス料理を食わなければならんのだ」
キョン「金がないっていっただろ」
ハルヒ「こんなときのためのへそくりじゃない」
キョン「……へそくりなんて、ない」
ハルヒ「ほんとに?」
キョン「……それに、あと数日もすればご馳走が食えるだろ」
キョン「我慢しなさい」
ハルヒ「ちぇ、わかったわよ」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 02:58:22.05 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「二人でお出かけ、ってのも久しぶりね」
キョン「前は誘ってもついてこなかったしな」
ハルヒ「しかたないじゃない。反抗期よ、反抗期」
キョン「今でも十分反抗期だと思うが?」
ハルヒ「何よ、万年課長補佐のくせに」
キョン「うるさい、もうすぐ出世できる」
ハルヒ「ほんとに?」
キョン「……多分」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:00:45.20 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「この車も乗るようになって長いわね」
キョン「ああ、そろそろ変え時かな」
ハルヒ「……ちょっと淋しいかな」
キョン「ん?」
ハルヒ「この車にも、色々思い出がつまってるからさ」
キョン「……ハルヒ」
キョン「シートベルトをしめなさい」
ハルヒ「はーい」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:02:55.39 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「はあ、ラーメン屋か」
キョン「文句あるなら食わんでよろしい」
ハルヒ「そういうわけじゃないけどさ」
ハルヒ「はあ」
キョン「ここのラーメンは絶品なんだぞ」
キョン「いわゆる、隠れた名店ってやつだ」
ハルヒ「ふーん」ちゅるちゅる
ハルヒ「!!」ずるずる
キョン(気に入ったようだな)
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:06:07.03 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「ふう、食った食った」
キョン「なんだかんだで二杯も食いやがって」
ハルヒ「別にいいじゃない」
キョン「太るぞ?」
ハルヒ「残念でした、あたしは太らない体質なのよ」
キョン「へいへい」
キョン「ん?あれは?」
キョン「おい、佐々木!」
佐々木「おや」
佐々木「これは、奇遇だね」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:14:27.88 ID:ymEaUjLV0
キョン「お前、この町に戻ってきてたのか?」
佐々木「一ヶ月前にね。やはり青春時代をすごしたこの町が、僕には一番心地いい」
キョン「なんだよ、それなら連絡くらいくれてもよかったのに」
佐々木「ああ、それはすまなかった」
佐々木「今日は……ふふ、家族サービスかい?」
キョン「まあな」
佐々木「相変わらずの溺愛ぶりらしいね。うらやましいよ」
キョン「何が」
佐々木「君に愛されているすず……いや、失言だった、許してくれたまえ」
キョン「別にいいよ、いつまでも気にしてないし」
ハルヒ「…………」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:17:23.75 ID:ymEaUjLV0
佐々木「それじゃあ、あまりお邪魔になるといけないから、今日はこのへんで」
キョン「ああ、またな」
ハルヒ「…………」
キョン「おい、なにをむくれてるんだ」
ハルヒ「べつに」
キョン「佐々木と話し込んだのが、まずかったか?」
ハルヒ「そんなんじゃない。佐々木さんはキョンの親友なんでしょ」
キョン「まあな」
ハルヒ「だったら、べつにあたしが怒る理由は無い」
キョン「うそだろ、何が気に入らなかったんだ」
ハルヒ「……キョンの鈍感バカ」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:20:40.56 ID:ymEaUjLV0
夜
キョン「おい、風呂空いたぞ」
ハルヒ「…………」
キョン「なんなんだよ、もう」
ハルヒ「今日は」
キョン「ん?」
ハルヒ「今日は一緒に寝ないから」
キョン「……べつに俺は構わないが」
ハルヒ「構え!!このバカ」
キョン「お、お前、なんだその口の聞き方は!!」
ハルヒ「うるさい!!」
キョン「……女の子は難しいな」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:23:41.32 ID:ymEaUjLV0
キョン「ハルヒ、俺の弁当は?」
ハルヒ「ない、コンビにで買えば?」
キョン「だから、金ないんだよ」
ハルヒ「ラーメン食べるお金はあったのに?」
キョン「人に出させておいてそれはねえだろ」
キョン「あれでほとんどなくなった」
ハルヒ「しらない」
キョン「まだ怒ってるのかよ」
ハルヒ「…………」
キョン「しょうがない、行ってきます」
ハルヒ「……ばか」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:26:10.96 ID:ymEaUjLV0
キョン「やれやれ、佐々木と話してたときは確かに疎外感を与えちゃったのかもしれないが」
キョン「いつまでもあんなに怒ることはないだろ」
ぴりりり
キョン「電話…」
キョン「もしもし」
長門『わたし』
キョン「長門……」
長門『今夜会えない?』
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:32:43.09 ID:ymEaUjLV0
某ホテルのレストラン
キョン「よお、ひさしぶりだな」
長門「……」こく
キョン「突然どうした?SOS団の集まりのことか?」
キョン「それくらいなら電話かメールで……」
長門「ちがう」
長門「ハルヒのこと」
キョン「……なんかあったのか?」
長門「久々の閉鎖空間の発生。及び様々な情報の爆発が確認された」
キョン「それって」
長門「彼女の精神が不安定になり、能力が制御できていないということ」
長門「なにかあった?」
キョン「……実は」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:35:24.52 ID:ymEaUjLV0
長門「そう」
キョン「確かに佐々木とのお喋りに夢中になってしまったが」
キョン「ちょっと怒りすぎなんじゃないかとも思う」
長門「それはあなたが悪い」
キョン「ま、まあそうなんだろうが」
長門「ちがう」
長門「あなたが、『彼女が何故怒っているのかわからない』のが、悪い」
キョン「どういうことだよ」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:38:56.48 ID:ymEaUjLV0
長門「おそらく、彼女は疎外感を感じたから怒っているわけではないと思われる」
キョン「え?」
長門「彼女はそんなことは気にしない」
長門「むしろ旧友との会話を邪魔しないように、一歩引くという謙虚さを持っている」
キョン「……うん、そうだな」
長門「おそらく、彼女はもっとちがうことであなたに対して不満を感じている」
キョン「だから、それはなんなんだ」
長門「それは自分で気づくべき」
キョン「……」
長門「あなたならわかるはず」
キョン「……そうかな」
長門「自信をもって」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:40:15.13 ID:ymEaUjLV0
キョン「自分がなさけないよ」
キョン「家族である俺より、長門のほうがハルヒのこと理解してるみたいだ」
キョン「なさけないよな、ハルヒ……」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:45:33.47 ID:ymEaUjLV0
キョン「ハルヒ……」
ハルヒ「……」
キョン「寝てるのか?」
ハルヒ「……」
キョン「ごめんな、ハルヒ。もしかして俺、無意識のうちにお前を傷つけてのかもしれない」
ハルヒ「……」
キョン「……あれから、考えてみたんだが」
キョン「やっぱり、わからなかった」
キョン「すまん……」
ハルヒ「…………」
キョン「ごめんな、ハルヒ」
ハルヒ「……うび」
キョン「え?」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:48:29.94 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「あたしの誕生日、もうちょっとでしょ?」
キョン「ああ。その日は、SOS団の元メンバーが集まる日でもある」
ハルヒ「そして、その日は、もう一つ、意味がある日、でしょ?」
キョン「……!?」
キョン「そうか、そういうことか」
キョン「すまん」
ハルヒ「……ほんとに、鈍いんだから……」
キョン「俺は、バカだ……」ぽろぽろ
ハルヒ「わかったなら、いいよ」
キョン「すまん……」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:51:18.23 ID:ymEaUjLV0
キョン(たぶん、ハルヒは俺のあの一言で傷ついたんだな)
「別にいいよ、いつまでも気にしてないし」
キョン(何気なく、いや、本当は気丈にふるまうつもりで言った言葉)
キョン(この言葉が、ハルヒにとっては残酷な意味を持っているのを失念していた……)
キョン(まったく、バカだよ、俺は)
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:55:04.21 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ(キョン……本当は、つらいくせいに)
ハルヒ(今でも、夜中に泣いてしまうほど、悲しいくせに)
ハルヒ(バカだよ、やせ我慢ばっかりして)
ハルヒ(でも、楽しみだな……)
ハルヒ(あたしの誕生日、SOS団が集まる日……そして……)
古泉「閉鎖空間に収束の兆しが……どうやら、長門さんがうまく伝えてくれたようだ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 03:58:34.05 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「おはよう」
キョン「ああ」
ハルヒ「どうやら、自分の過ちに気づいたみたいね!」
キョン「ああ」
ハルヒ「な、何よ、あたしも冷たくして、悪かったと思ってるわよ」
キョン「いや、俺が全面的に悪かった」
キョン「すまん」
ハルヒ「もういいよ……」
ハルヒ「暗いのはもう禁止!!暗い表情したら、罰金よ、罰金!!」
キョン「くす、勘弁してくれ。もうほんとうにすっからかん直前なんだ」
ハルヒ「ふ、ふん。無駄遣いしようにもできなくて、いいことだわ!!」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:04:30.18 ID:ymEaUjLV0
キョン「じゃあ、いってくるわ」
ハルヒ「いってらっしゃい、お土産忘れないでよ」
キョン「だったら小遣いくれ」
ハルヒ「ばーか」
キョン「じゃあな」
ハルヒ「うん」
ハルヒ「さーて、あたしも学校行かなくちゃ」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:09:41.94 ID:ymEaUjLV0
みくる「この時代にくるのも一年ぶりかぁ……」
みくる「ふふ、みんな元気かなぁ」
ハルヒ「ちょっと、どいてどいて!!」
みくる「え?」
ドン!!
みくる「きゃあ!!」
ハルヒ「あいたた……だいじょうぶですか?」
みくる「え、ええ、なんとか」
ハルヒ「あれ、みくるちゃんじゃない!!」
みくる「え……あ、すず……いえ、ハルヒちゃん」
ハルヒ「ひさしぶりねぇ」
みくる「そうですね」ニコ
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:15:10.14 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「今日この時代にきたの?」
みくる「ええ、本当は当日に来る予定だったんだけど、大きな時間振動がこの時代で測定されたから…」
ハルヒ「あ……」
みくる「うふふ、でも大事なくてよかったわ。ハルヒちゃん、キョンくんとケンカでもしたの?」
ハルヒ「べ、べつにケンカなんて……」
みくる「だめよ、仲良くしないと」
ハルヒ「う、うん」
みくる「学校、大丈夫?」
ハルヒ「あ、遅刻しちゃう!!それじゃあ、また今度!!」
みくる「うん、またね」
みくる「……」
みくる「うふふ、誕生日が楽しみね」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:18:29.88 ID:ymEaUjLV0
キョン「え、朝比奈さんに会ったのか」
ハルヒ「うん、今朝偶然にね」
ハルヒ「みくるちゃん、ますます年齢不詳って感じになってたわよ」
キョン「そうかそうか、それは会うのが楽しみだ」
ハルヒ「む、鼻の下伸ばして、いやらしいこと考えてるんでしょ」
キョン「ばか、単純に会うのが楽しみなだけだ」
ハルヒ「ふん、どうかしらね」
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:21:32.40 ID:ymEaUjLV0
ハルヒの誕生日、前日
キョン「やれやれ、まさか新しい服をねだられるとはな」
ハルヒ「また古泉くんの用意したパーティー会場なんでしょ?それなりの格好をしていかなくちゃ」
ハルヒ「あ、これはプレゼントに換算されないからね」
キョン「とんだ出費だ。俺の大事なへそくりまで出動させるはめになった」
ハルヒ「えへへ、いいじゃない、べつに」
ハルヒ「あたしの晴れ姿が見られるんだからさ!」
キョン「…ま、それもそうか」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:25:01.62 ID:ymEaUjLV0
夜
ハルヒ「ねえ、キョン」
キョン「うん?」
ハルヒ「なんだかどきどきしてきちゃった」
キョン「柄にもないな、お前の誕生日なんだからどんと構えていればいいんだ」
ハルヒ「だ、だって、さ」
ハルヒ「年に一度だもん」
ハルヒ「色々な人があたしのために祝ってくれる」
ハルヒ「すっごく素敵で、すごく切ない特別な日だもん」
キョン「……」
ハルヒ「ねえ、キョンは、あたしのこと好き?」
キョン「……そんなのきまってるだろ」
キョン「愛してるよ」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:28:50.46 ID:ymEaUjLV0
当日
古泉「いやあ、お懐かしいですね。また皺が増えたのではないですか?」
キョン「上司と部下の板ばさみだ。色々苦労もあるのさ」
キョン「そういうお前だって、しっかり年取ってるぜ」
古泉「お恥ずかしい、僕もあなたと似たようなものですよ」
古泉「相変わらずなのは、未だに健在な超能力くらいなものでして」
キョン「にやけ顔と、その喋り方も相変わらずだがな」
古泉「これは手厳しい」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:33:22.49 ID:ymEaUjLV0
鶴屋「やあやあ、キョンくんに古泉くんっ、久しぶりだねっ」
キョン「鶴屋さん」
古泉「今回も資金面で援助をいただき、ありがとうございます」
鶴屋「なーに、ハルにゃんの誕生日だからねぇ、ぱーっとやらないと!!」
キョン「すみません、いつもいつも」
鶴屋「ふふふ、じゃあハルにゃんを一日貸してくれればちゃらにしてあげようじゃないかっ」
キョン「疲れますよ?」
鶴屋「だろうねぇ、あたしももう若くないし」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:37:49.92 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「久しぶりね、みんな!!」
鶴屋「おお、ハルにゃん!!すっかり綺麗になって!!」
古泉「綺麗なのは以前からでしたが、予想以上ですね」
みくる「きれいですよ、ハルヒちゃん」
長門「感動」
キョン「おいおい、褒めすぎだぞ、みんな」
谷口「いや、キョン、ハルヒはほんとうに綺麗になった、お前も鼻が高いだろ」
キョン「誰だ、お前」
谷口「笑えないジョークだぜ、キョン」
国木田「まあまあ、キョンなりのフレンドシップだから」
キョン「よう、国木田」
谷口「絶対俺だけの嫌がらせだろ!!」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:42:30.81 ID:ymEaUjLV0
佐々木「おめでとう、ハルヒさん」
ハルヒ「佐々木さん」
佐々木「この前はすまなかったね。君を傷つけてしまったようで」
ハルヒ「何いってのよ、キョンの鈍感が全部悪いんだから、佐々木さんは気にしなくていいのよ」
キョン「おい、それは謝って許してもらったはずだが」
ハルヒ「うるさい、バカキョン!!当分は言い続けてやるんだから!!」
キョン「やれやれだ」
古泉「あの、大変申し訳ないのですが、そろそろいいですか?」
キョン「ああ」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:45:43.33 ID:ymEaUjLV0
古泉「静粛に願います。これより、××様からのスピーチがございます」
古泉「最後まで、ご静聴のほどをよろしくお願いします」
シーン
キョン(うう、何度やっても慣れんな)
キョン「ええ、ごほん」
キョン「まずは、ハルヒ、誕生日おめでとう」
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:48:12.61 ID:ymEaUjLV0
キョン「十六年……長いようで短かったよ」
キョン「今の俺があるのも、すべてお前がいてくれたからだ」
キョン「本当に、感謝している」
キョン「ありがとう」
キョン「うっ……」
ハルヒ(みっともないわよ、こんなところで泣くなんて)じわっ
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 04:53:21.72 ID:ymEaUjLV0
キョン「そして、俺たち二人を支えてくれた多くの友人たち」
キョン「みんなにも、感謝の意を示したい」
キョン「本当に、ありがとう!!」
キョン「そして、今日はハルヒの誕生日であると同時に」
キョン「とても、悲しい日でもあります」
キョン「俺の……」
キョン「俺の妻だった、涼宮ハルヒの……」
キョン「命日です」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:00:46.14 ID:ymEaUjLV0
俺と涼宮ハルヒが婚約したのは、大学を卒業し、俺の社会人生活がまさにスタートするという頃だった。
波乱の高校時代を経て、俺とハルヒの間にはいつしか団長と団員の関係ではなく、男と女として愛し合うようになっていたのだ。
俺はハルヒを、ハルヒは俺を生涯の伴侶として、生きる道を選んだ。
そんな矢先のことだ。
ハルヒの能力が消えかかっていると知ったのは。
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:07:12.65 ID:ymEaUjLV0
古泉「僕はあなたのことを鍵と称していましたが、その鍵が涼宮さんを神の座から開放したようなのですよ」
キョン「どういうことだ」
古泉「つまり、彼女はこの世の不思議よりも大切なものを手に入れたということです」
古泉「あなたと共に生き、そして死ぬ」
古泉「彼女の能力はこの世界に対する不満から生じたものです」
古泉「しかし、今の彼女は世界のすべて……あなたを受け入れている」
古泉「能力は、もはや無用の長物というわけです」
キョン「だったら、ハルヒはもう」
古泉「ええ、機関も監視する必要もなくなるでしょうし、平穏な日常を過ごせると思いますよ」
キョン「それは願ったり叶ったりだ」
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:13:58.42 ID:ymEaUjLV0
俺は心底喜んだ。
ハルヒの願望を現実にする能力は、やはり普通の生活を送りたい俺にとっては気がかりなものだったからだ。
しかしハルヒの心の安定により、徐々に能力は消えていき、やがては初めからそんなものはなかったように、
あっけなくすべては終わってしまった。
機関も、未来人も、情報統合思念体も、撤退した。
必然的に朝比奈さんは未来へ帰還、長門も消えた。
古泉も普通の生活へ戻った。
寂しくなかったといえば、嘘になる。
しかし俺は、ハルヒとの明るい結婚生活を夢見て、がむしゃらに働くことでそれを忘れた。
そして婚約してから一年後、正式に籍を入れようとした、そんなときになって、
ハルヒは、倒れた。
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:15:57.41 ID:ymEaUjLV0
キョン「幸せだった俺の生活は、もろくも崩れ去った」
キョン「ハルヒは原因不明の病にかかり、歩くこともままならなくなった」
キョン「それでも、希望はあった」
キョン「ハルヒのお腹には、俺との間にできた子供が宿っていたんだ」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:19:54.51 ID:ymEaUjLV0
ハルヒは産むといって聞かなかった。
俺は、最初は反対した。
医者も母体が耐えられないといって、止めようとした。
でも、ハルヒが一度言い出したら聞かない性格だってことを、誰よりも俺は知っていた。
ハルヒ「あたし、産むわ……キョンとの……間にできた子だもん……産んであげなくちゃ」
俺は、涙をのんで医者に頼んだ。
医者もしぶしぶ了承した。
もはや、ハルヒが治る見込みがないのを知っていたのだろう。
あいつの最後のわがまま、それが子供の出産だった。
140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:24:34.85 ID:ymEaUjLV0
キョン「そして、ハルヒは出産した直後……自分の産んだ子を見ながら、笑顔であの世へ旅立った」
キョン「俺は、生まれた子に『ハルヒ』と名づけた」
キョン「自分でもどうかと思うぜ、死んだ妻と同じ名前をつけるなんてな」
キョン「でも、俺は、母親を知らずに育つこの子に……何か残してあげたかったんだ」
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:27:00.71 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「キョン……」ぽろぽろ
キョン「娘の誕生日にあんまり湿っぽくなるのもあれだな」
キョン「俺の話はここまでだ」
キョン「ハルヒ、あとはまかせた」
ハルヒ「キョン……お父さん……」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:29:12.19 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「あ、あたしはお父さんの子供でよかった!!」
ハルヒ「お母さんの子供でよかった!!」
ハルヒ「お母さんのことは、写真やビデオでしか知らないけど」
ハルヒ「お母さんと同じ名前で、すごく誇らしい!!」
ハルヒ「SOS団のみんながお母さんの話をしてると、嬉しくなる!!」
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:31:40.28 ID:ymEaUjLV0
ハルヒ「だ、だから、だから……」
ハルヒ「う、うええええん!!」
キョン「お、おい泣くやつがあるか」
ハルヒ「だってぇ、だってぇ!!」
みくる「うう、ハルヒちゃん……」
長門「……」ぐすん
古泉「やれやれ、毎年大変ですね」じわっ
谷口「くそお!!俺こういうのに弱いんだよ!!」うわあああ!!
国木田「君が一番泣いてどうすんのさ」
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:34:37.33 ID:ymEaUjLV0
古泉「やれやれ、今年も終わりましたね」
キョン「ああ、なんか俺たち毎年ように泣いてないか?」
古泉「いいんですよ、これはハルヒさんの成長を涼宮さんに報告する会合でもあるんですから」
キョン「しかしな、毎年あいつにどやされてる気分なんだよ」
キョン「『あたしの前で泣くのは禁止!!もっと楽しく騒ぎなさい!!』てな」
古泉「なるほど、涼宮さんが言いそうなことです」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:38:40.05 ID:ymEaUjLV0
古泉「それにしても、先日は驚きましたよ」
古泉「久しぶりの閉鎖空間でしたからね」
キョン「ああ、俺のせいでな、すまん」
古泉「まあ以前に比べれば些細なものです」
古泉「母親の能力を受け継いだハルヒさんは、自覚を持つがゆえに普段はコントロールできているのですから」
キョン「なあ、本当に教えてよかったのかな」
キョン「あいつが自覚を持っているということは、世界を意のままに操れるということに……」
古泉「ふふ、その心配が無いのは、父親であるあなたが一番良くわかっているのでは?」
キョン「……さてね」
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:42:10.10 ID:ymEaUjLV0
翌日
ハルヒ「ねえ、キョン」
キョン「ん?」
ハルヒ「お母さんにちゃんと報告できたかな」
キョン「さあな、寝てて聞いてなかったかもな」
ハルヒ「もう、なんであんたはそういうことしか言えないの!!」
キョン「冗談だ」
キョン「なあ、ハルヒ」
ハルヒ「ん?」
キョン「俺のこと、好きか?」
ハルヒ「……はあ、きもいこと言わないでよ」
ハルヒ「そんなの……きまってるじゃない」
ハルヒ「……愛してるわよ」
完
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:44:18.43 ID:ymEaUjLV0
眠気に勝てず後半失速
読んでくれた人は乙
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:46:18.27 ID:ymEaUjLV0
>>155
ハルヒの死を
「別にいいよ、いつまでも気にしてないし」
と言ってしまったことにハルヒ(娘)がショックを受けた
フォロー入れ忘れた、すまん
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/17(火) 05:48:15.11 ID:ymEaUjLV0
ミスリードは途中で気づいた人は結構いたみたいだけど、
黙っててくれて感謝
こんな時間まで本当に乙
おやすみなさい