ハルヒ「ねえ、私を見て」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:19:18.16 ID:n58zkpy50

ハルヒ「私の手を握って」

ハルヒ「離さないで」

ハルヒ「いつまでも傍に……」

ハルヒ「ずっと傍に居て」

ハルヒ「キョン、お願い――」


キョン「ハルヒ…………」

キョン「ハルヒ……どうして……」



俺は、俺たちは……飛び降りた。

学校の屋上から――

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:26:31.71 ID:n58zkpy50

光、光、ひかり……まぶしい光で目が覚めた。


キョン「ここは……どこだ?」

謎の少女「ここは病院」

キョン「…………おまえ、誰?」

長門「私は、長門有希。そう認識されている存在」

キョン「…………ついでに聞きたいんだが」


キョン「俺は、誰だ?」


長門「……貴方は、これから知っていくのだと思う。全てを」

キョン「?」

長門「さよなら……」

キョン「………………」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:29:05.03 ID:n58zkpy50

看護師「あ、237号室の患者さんが目を覚まされたようです」

看護師「少し記憶が混乱しているみたいで……」


キョン「俺は……記憶喪失ってヤツなのか」

ズキッ

キョン「イタッ……、相当強くぶつけたんだな……」

キョン「一体、何があったんだ?」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:33:35.58 ID:n58zkpy50

クラスメートたち「ざわ…ざわ……」


キョン「ここが俺のクラスか」

ガラッ

クラスメートたち「………………」

キョン(なんだ……?)

うるさい女「おはよう!! キョン!!!」

キョン「うわ!! お前だれだ!!!!」

うるさい女「うわっ、あんた本当に記憶喪失なのね! 興味深いわ!」

キョン「だから、お前は誰だ!!」

ハルヒ「私はハルヒ、涼宮ハルヒよ! 記憶に刻みなさい!!」


キョン(うるさい女だ……)

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:37:54.36 ID:n58zkpy50

キョン「……ふぅ。やっと授業が終わった」

キョン「知識とかは普通に残ってるんだな」

キョン「不思議な感じだ……」

見知らぬ男「……よぅ、キョン」

キョン「?」

谷口「……そうか。記憶喪失だったな。俺は谷口だよ」

キョン「そうか。初めまして……ってわけじゃないんだよな」

谷口「ああ、俺とお前は大親友、英語で言うとベストフレンドだったぜ!」

キョン(……そうなのか?)

谷口「まあ、退院したばかりでさ、慣れない事もあるだろうけど」

谷口「そんな時は俺に頼ってくれよな」

キョン「ああ、ありがとな」


キョン(けっこう良いヤツみたいだな)

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:42:13.25 ID:n58zkpy50

ハルヒ「放課後よ!! 部室へ行くわよ!!」

キョン「お、おい、部室ってなんだよ涼宮!!」

ハルヒ「私の事はハルヒって呼びなさい! さあ、今日もSOS団の活動をするわよ!!」

キョン「引っ張るな!! 自分で歩くから!!」

ハルヒ「馬鹿ね!! 時間は待っててくれないし、地球は回り続けるのよ!!」

キョン「さっぱり意味が分からんぞ!!」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:47:29.29 ID:n58zkpy50

キョン(病院で会った長門とか言う女も、この部活なのか)


メイド服を着た女「お茶が入りましたよ」

キョン「ありがとう。……えーと……」

みくる「私は朝比奈みくるです。えへへ、なんだか照れますね」

キョン「ああ、ありがとう朝比奈……さん」

キョン(可愛い人だなぁ)

謎の男「あのキョン君が記憶喪失ですか」

キョン「……誰だ」

古泉「古泉一樹と申します。以後、お見知りおきを」

キョン「あまり親しくしたくないな」

古泉「ふふ、ストレートに言いますね」

キョン「本心だからな」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:48:43.36 ID:n58zkpy50

その日、俺はSOS団とかいう連中と初めて(?)、わけの分からない活動をした。


……少し、楽しかった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:53:47.67 ID:n58zkpy50

谷口「おはようキョン!」

キョン「おはよう谷口」

谷口「相変わらず記憶喪失か〜?」

キョン「ああ、相変わらずだ」

谷口「まぁ、一生そのままでも大丈夫だろ?」

キョン「いや、それは困るだろ……」

谷口「そうかぁ? 別にそのままで問題ないだろ?」

キョン「つーか、知り合いに会うたびに名前を尋ねなければならないだろ?」

谷口「………………」

キョン「なんでそこで黙るんだよ」

谷口「い、いや、そんなくだらないこと気にしてるのかと思ってさ」

キョン「くだらなくはないだろ……」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:57:27.60 ID:n58zkpy50

ハルヒ「放課後よ!!」

キョン「またSOS団か……勘弁してくれ」

ハルヒ「弱音を吐かない!! さあ、ついてらっしゃい!!」

キョン「はぁ……」

ガラッ

古泉「やっと来ましたか。キョン君」

キョン「お前か。できれば朝比奈さんのほうが良かった」

古泉「相変わらずストレートですね。そういうところ、嫌いじゃないです」

キョン「顔、近づけるなよ」


その日もSOS団で、昨日と同じようにわけの分からない活動をした。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:00:53.18 ID:LInPN4Ao0

谷口「だからさぁ、その子がまた可愛いんだよなぁ!!」

キョン「朝っぱらからうるさい奴だ」

谷口「俺はいつも元気だけが取り得さ!!」

キョン「自分で言ってて悲しくならないのか?」

谷口「悲しいと言えば…………彼女が出来ないことかな」

キョン「まぁ、そのうち見つかるんじゃないか?」

谷口「本当か!? よーし、頑張るぜ!!!」

キョン「せいぜい頑張ってくれ」


谷口「お前も……頑張れよ。色々とさ」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:07:08.05 ID:LInPN4Ao0

キョン(ハルヒの奴が見当たらないな。先に行ったのか?)

キョン(俺も部室へ行ってみるか)


ガラッ

長門「………………」

キョン「なんだ。まだ他の連中はまだ来ていないのか?」

長門「最初から私しか居ない。私一人」

キョン「じゃあ、他の奴らが来るまで俺も本読んでようかな」

長門「……好きにするといい」



その後、他の奴らも来て、ハルヒが朝比奈さんに新しいコスプレをさせたりして楽しく過ごした。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:10:44.37 ID:LInPN4Ao0

キョン「おはよう。谷口」

谷口「……ん、おはよう」

キョン「……? おい、元気だけが取り得じゃなかったのか?」

谷口「あ、ああ、スマンスマン」

キョン「まぁ、何があったか知らないが、元気出せよ?」

谷口「……ああ」

キョン「………………」

谷口「……なぁ、一つ聞いてもいいか?」

キョン「……なんだよ?」


谷口「放課後、一人で何やってんだ?」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:15:14.22 ID:LInPN4Ao0

キョン「はぁ? なに言ってんだ?」

谷口「ここ最近、ずっと見てたんだけどさ……」

谷口「お前、ずっと一人でいるじゃん」

キョン「馬鹿を言うなよ……ハルヒと一緒のことだってあるだろ?」


谷口「涼宮は……涼宮は……死んだじゃねえか……っ!!」


キョン「…………ナニをイッてルんだ?」

谷口「っていうかよぉ……」

谷口「SOS団とか言う奴で、生き残ってるのはお前だけだろ!!」



キョン(谷口が狂っタ)

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:18:44.61 ID:LInPN4Ao0

谷口「なぁ、もう俺、お前の事見てられないよ……」

キョン「なにいってルんっだ……皆、生きテテるぞ」

谷口「混乱してるのはお前のほうだ!! いい加減に目を覚ませ!!!!」

キョン「バカなことばカり言うナよ。お前、きっとこんらんシてっるぞ」

谷口「涼宮は……SOS団とかいう奴らを全員殺して、お前と心中しようとしてただろうが!!!」






キョン「嘘ダろ?」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:22:11.64 ID:LInPN4Ao0

キョン「だっテ、俺は毎日アってるゾゾ。長門にモ、朝比奈サんにも、古泉にも……ハルヒにも」

谷口「うっ……うっ…………」


ワケが分からナいのデ、たにぎちはおイてトうこうシた。

今日はSOS団の活動がなかった。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:28:49.82 ID:LInPN4Ao0

長門「………………」

キョン「………………」

長門「……………………」


キョン「…………お前は、誰だ?」

長門「貴方が認識する、長門有希」

キョン「お前ハ、生キてルのか?」

長門「…………肉体は既に死んで、貴方の認識……記憶の中にだけ存在している」


キョン「嘘だ」

キョン「これは夢だ」

キョン「いや、ハルヒは神なんだ。きっとこれも、いつものSFもどきだ」


長門「涼宮ハルヒは、既に死んでいる。もう生き返らない。彼女がそれを望まない」


キョン「………………あああああへへへへへふふふふふはははああああ???」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:31:46.09 ID:LInPN4Ao0

キョン「……………………」

ガランとした部室。

キョン「……………………」

今にも皆の声が聞こえてきそうだ。

キョン「……………………」

俺はドアノブに、ネクタイを結んだ。


キョン「悪い夢なら、早く覚めてくれ」



俺は―――死んだ。







fin.

79 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 00:37:50.40 ID:LInPN4Ao0

読み返してみると、時間経過がわかりづらいな
次回からの反省点にするわ

じゃ、乙です!

136 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 02:49:47.76 ID:LInPN4Ao0

支援


今更>>1作品の読後まとめなんですが・・・・・・

ラストの終わり方は最初からアレを目指していました
ただ、リアル睡眠薬飲んでいたので、結末を急いでしまいました

ハルヒが心中に至った話も考えてあります
起きた時に残ってたら、最後まで投下してみたいと思います
その場合>>131さんとは別のアナザーとして読んでください

長文スマン

772 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 10:35:02.50 ID:GzoxS9b+0

投下前の注意点

>>1-62からの続きです
・欝です
・投稿間隔は加筆しながらするためどれくらい開くかはわかりません

776 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 10:57:13.58 ID:GzoxS9b+0

キョン「やれやれ、屋上へ来いだと?」

キョン「あいつは一体何様のつもりなんだか」


 サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいどうでもいいような話だが、
それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった。


キョン「はぁ……寒い。セーターでも着てくれば良かった」

キョン「放課後の屋上、ますます寒そうな場所だな」


 俺の周りにはなぜかサンタもビックリの超人変人どもがあつまり、SFオカルトファンタジー入り乱れての大展覧会が毎日のように開催されていた。
 信じられないかもしれないがアマノジャクな俺はこういう奴らが周りに現われてくれることを心のどこかで望んでいた。
 あいつらと過ごす妙な事件の毎日は、ある意味では俺の宝物と言っても過言ではないだろう。


キョン「呼び出したからには、そうとう面白い話が聞けるんだろうな」


 知らず、口元が緩むのを感じていた。なんだかんだで俺も子供である。
 俺は屋上のドアに手をかけた。


ギィィィ……

777 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 11:07:12.15 ID:GzoxS9b+0

――― 5 ―――

キョン「なあ、来てやったぞ古泉」

キョン(放課後に屋上で男と二人きりか……。なんてイヤなシチュエーションなんだ)

古泉「ふふ、緊張してますか? キョン君」

キョン「なんで緊張する必要があるんだ?」

古泉「ほら、この状況はまるでアレみたいじゃないですか」

キョン「アレってなんだよ」

古泉「もちろん、愛の告白ですよ」

ズササッ

古泉「……そんなに引かないでくださいよ。ただの冗談です」

キョン「悪趣味な冗談はやめろ。用があるから呼んだんだろ?」

古泉「そうです。この件はキョン君、貴方にも無関係の事ではありません」

キョン「回りくどい言い方ばかりしてないで、さっさと用件を言え」


古泉「はい。実は、……閉鎖空間が発生しなくなりました」

779 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 11:13:47.71 ID:GzoxS9b+0

キョン「それは良かったじゃないか。お前も楽が出来ていいだろう? 温泉でも行ってゆっくり休んで来たらどうだ?」

古泉「それは魅力的な提案ですね。もちろん一緒に行ってくれるんでしょう?」

キョン「なにがモチロンなんだ。行きたければ一人で寂しく行って来い」

古泉「冷たいですねぇ。そういう所も嫌いではないですが」

キョン「深刻な顔をしているから何かと思えば、くだらない用件だったな」

古泉「いえ、話はまだこれからなんです」

780 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 11:23:11.47 ID:GzoxS9b+0

キョン「まだ何かあるのか? 超能力者の呼び出しが無くなって暇になる位の話だろう?」

古泉「それが……そう楽観的に構えてもいられないみたいなんです」

キョン「なんでだ?」


古泉「僕の超能力自体が、消えてしまった可能性があるんですよ」


キョン「……ハルヒの精神状態が落ち着いているって事じゃないのか?」

古泉「ここ最近の彼女をご覧になっても、同じことを言えるんですか」

キョン「……………………」


古泉「恋をすると美しくなるって話は本当ですね」

古泉「涼宮さんは元々美少女でしたが……」

古泉「最近はますます磨きがかかってきています」

古泉「恐ろしいほどに……」

783 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 11:33:14.88 ID:GzoxS9b+0

古泉「ラブレターや告白の数も、増えてきていますよ」

キョン「……そんなことを俺に言ってどうする」

古泉「貴方以外の誰に言う必要があるんですか?」

キョン「さあな。そこらのオッサンでも捕まえて、そいつに語ってやれよ」

古泉「これに関しては、貴方の意思も考慮すべきでしたね。……すみません」

キョン「それより超能力絡みって事は、機関とやらはなんて言ってるんだ?」

古泉「………………機関?」

キョン「ああ、お前が所属している妙な組織だよ」

古泉「………………っ!!」

キョン「……驚いた顔してどうした?」

古泉「……こ、これは、本格的にまずいですね」

キョン「なんだよ? どうかしたのか?」


古泉「貴方に言われるまで、忘れていましたよ……機関の存在を」

786 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 11:45:13.18 ID:GzoxS9b+0

古泉は携帯を取り出して操作している。

古泉「………………」

キョン(古泉の手が震えている)

古泉「………………」

キョン(こんなに焦っている古泉を見るのは初めてだ)


しばらく経つと、無言で携帯を差し出された。

キョン「……かわればいいのか?」

俺はそれを受け取り、自分の耳へと当てた。


―――おかけになった電話番号は、現在使われておりません。もう一度番号をお確かめの上……


古泉「……機関へ繋がりません。直通も、緊急用も……すべてダメでした」

789 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 11:51:16.99 ID:GzoxS9b+0

古泉は焦燥した顔で去っていった。

屋上に取り残された俺は、古泉が最後に言った言葉について考えていた。


古泉「涼宮さんは……この世界を収束させるつもりかも知れません」


キョン(収束……つまり、SFごっこが終わるって事だろうか)


それは……ひょっとしたら良い事なのかも知れん。

長門も、朝比奈さんも、ついでに古泉の奴も、みんな普通の人間になってバンザイ。

これで命がけの冒険やら、訳の分からない事件からはオサラバできるって事だ。

世の中には、サンタクロースなんて存在しないんだ。








その日の晩、古泉が死んだ。


798 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 12:03:18.48 ID:GzoxS9b+0


――― 4 ―――

全校生徒「ざわざわ…………がやがや…………」


教師『静粛に。これより、緊急の全校集会を行う』

全校生徒「………………」

教師『校長先生からのお話がある。しっかりと聞くように』


校長『えー、今朝こうして集まっていただいたのは……』

校長『皆さんにお伝えしなければならない事があるからです』

校長『昨晩、皆さんのご学友である*年9組の古泉一樹君が亡くなられました』

校長『古泉君のために、1分間の黙祷を捧げます』


教師『それでは……黙祷!!』

799 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 12:07:59.87 ID:GzoxS9b+0

ざわつく生徒たちの声に紛れて、すすり泣きが聞こえてくる。

俺は……何も考えることが出来ずに、視線をさまよわせていた。

なんとなく視線を感じて、そちらへ目を向けてみると、

ハルヒが俺のほうをジッと見つめていた。


その瞳に、怪しい光が宿っている。


吸い込まれる前に、俺は視線を逸らした。

801 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 12:19:18.84 ID:GzoxS9b+0


キョン「昨日の放課後も、この屋上で古泉と話してたんだ……」

長門「配慮に欠けていた。場所を移動することを提案する」

キョン「いや、別にいいんだ」

長門「………………」

キョン「それよりも用件ってなんだ?」

長門「一昨日から、情報統合思念体へのアクセスが出来なくなった」

キョン「やはりお前もなのか。……朝比奈さんは?」

長門「彼女も同様に、未来へ帰れないと嘆いている」

キョン「朝比奈さんは……今、どうしてるんだ?」

長門「今日は登校していない。ショックで寝込んでいる」


キョン「……それで、古泉がどうして死んだか知ってるか?」

803 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 12:29:07.56 ID:GzoxS9b+0

長門「古泉一樹の死因は車両との接触による全身打撲」

キョン「違う。俺が聞きたいのはそういうことじゃない」

長門「……彼は即死だった模様」

キョン「ちがう! 古泉が死んだ理由についてだ!!」

長門「それは涼宮ハルヒが望んだからだと思われる」

キョン「はぁ!?」

長門「………………」

キョン「ちょ、ちょっと待てよ。なんでハルヒがそんなことを?」

長門「……私には理解できない。彼女の行動原理を知るのは、彼女だけ」

キョン「ハルヒが望めば、神の力で人を殺せるっていうのか!?」

長門「それは違う。手を下したのは、おそらく涼宮ハルヒ本人」


キョン「………………え?」

807 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 12:42:09.68 ID:GzoxS9b+0

キョン「ハ、ハルヒが古泉を殺したって言うのか?」

長門「状況から判断する限り、そのような結果が得られる」

キョン「何故だ! 意味が分からん! 説明してくれ!!」

長門「………………」

長門「……昨日の放課後」

長門「貴方と古泉一樹が話している所を」

長門「涼宮ハルヒに見られていた可能性がある」

キョン「………………」


キョン「…………なんだそれは……理解できない……」

812 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 12:52:15.56 ID:GzoxS9b+0

長門「私にも、彼女の行動が理解できない」

キョン「なら……、ハルヒとは限らないじゃないか。単なる事故かも知れないだろ?」

長門「でも、最近の彼女は、貴方と他の誰かが話している所をみると、憤りを感じていた様子」

キョン「…………俺が古泉と話していたから、殺したっていうのか?」

長門「そう。だから私もいずれ殺されるかもしれない」

キョン「そんな馬鹿げた話があってたまるかっ!!」

長門「………………」








次の日、長門が死体で発見された。


819 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 13:06:31.17 ID:GzoxS9b+0


――― 3 ―――


キョン「……………………」


ガラッ

みくる「キョン君、ここに居たんですか」

キョン「朝比奈さん。……身体はもう平気ですか?」

みくる「うん。もう大丈夫。心配かけてゴメンね?」

キョン「いえ、無事ならいいんです……」

みくる「部室も……寂しくなっちゃいましたね」

キョン「………………」

みくる「あっ、ご、ごめんね」

キョン「……本当に……寂しくなりましたね………」

822 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 13:12:42.03 ID:GzoxS9b+0

みくる「お茶、いれるね?」

キョン「……ありがとうございます」

みくる「あ、その前に……くすくす。メイド服に着替えましょうか?」

キョン「ははは、別にそのままで構いませんよ」

みくる「それじゃあ、紅茶をいれる間、少し待っててください」

キョン「わかりました」

824 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 13:19:26.14 ID:GzoxS9b+0

カチャッ

みくる「はい、どうぞ」

キョン「いい香りですね……。落ち着きます」

みくる「…………ぐしゅっ」

キョン「朝比奈さん……」

みくる「ご、ごめんね。泣かないつもりだったのに……」

キョン「いえ、いいんです」

みくる「ううぅ、キョンくぅん。わ、わたし、怖い……」

キョン「大丈夫ですよ。俺が傍に居ますから……」

828 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 13:29:25.73 ID:GzoxS9b+0

キョン「……落ち着きましたか?」

みくる「……はい」

キョン「……………………」

みくる「どうして、こんなことになったの……?」

キョン「それは分かりません」

みくる「今でも……信じられないんです。……あの二人が、居なくなったこと……」

キョン(死んだ……って言わないところが、朝比奈さんらしいな……)

みくる「…………私も、一体どうなってしまうのか……怖くてたまらない……」

キョン「大丈夫です。きっと、なんとかなりますよ」

831 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 13:39:52.51 ID:GzoxS9b+0

みくる「……キョン君……落ち着いてるんですね」

キョン「ええ、朝比奈さんがいれてくれたお茶のおかげですよ」

みくる「……ありがとう。キョン君」

キョン「それじゃ、遅くなる前に帰りましょうか」

みくる「一緒に、帰ってくれる?」

キョン「もちろんです。ああ、朝比奈さんと帰れるなんて光栄だなぁ」

みくる「くすくす。私も嬉しいです」








翌日、生きた朝比奈さんには会えなかった。

839 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 13:54:49.63 ID:GzoxS9b+0


――― 2 ―――

ハルヒ「………………」

キョン「ハルヒ……」

ハルヒ「……キョン…………」

キョン「屋上に呼び出して、なんの用だ?」

ハルヒ「…………」

キョン「……放課後の、屋上か」

ハルヒ「………………」

キョン「まるで告白みたいだって、古泉が言ってたな」

ハルヒ「………そうね」

キョン「その次の日、長門に同じ場所へ呼び出されたんだ」

ハルヒ「…………ふーん」

キョン「朝比奈さんと最後に話をしたのは……部室だったよ」

ハルヒ「………………そう」

841 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 14:03:24.34 ID:GzoxS9b+0


ハルヒ「……ねえ、キョン……質問があるの」

キョン「なんだ? バカバカしい話ならお断りだぞ」

ハルヒ「…………大事な質問よ……」

キョン「なら、さっさと聞けばいいだろ?」

ハルヒ「じゃあ、…………聞くわ」








ハルヒ「どうして、皆を殺したの?」







849 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 14:12:08.02 ID:GzoxS9b+0


キョン「………………」

ハルヒ「キョン、どうして古泉君や有希やみくるちゃんたちを殺したの!?」

キョン「…………なんだ、そんなことか」

ハルヒ「そんなことなんかじゃないわ!! どうして!? 答えなさいよ!!」

キョン「………………」

ハルヒ「答えなさい!! キョン!!!!」

キョン「―――――――――」








キョン「―――サンタが居なくなったからさ」







855 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 14:22:07.74 ID:GzoxS9b+0

ハルヒ「…………何……サンタって?」


キョン「お前には分からない理由さ……」

ハルヒ「……そう…………」

キョン「…………酷いだろ?」

ハルヒ「………………」

キョン「みんな、いいヤツばかりだったのに……」

ハルヒ「………………」

キョン「全部、……俺の八つ当たりだ……っ!!」

ハルヒ「…………キョン……」

キョン「俺が一番、サンタを信じたかったんだっ!!!」

ハルヒ「……泣いているのね……キョン……」

キョン「はは……、俺は涙なんて流してないぞ?」


ハルヒ「涙を流すだけが、泣くことだとは限らないわ」


859 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 14:30:47.47 ID:GzoxS9b+0


キョン「………………」

ハルヒ「……ねえ、キョン」

キョン「………………」

ハルヒ「……私は別に責めたりしないわ」

キョン「…………っ!?」

ハルヒ「最初はね、警察に自首して貰おうと思って呼び出したの」

キョン「………………」

ハルヒ「でもね、私は気づいたの」

キョン「…………ハルヒ……」

ハルヒ「キョンが人殺しだろうがなんだろうが……」

キョン「……っ!!」

ハルヒ「それでも私は―――」

キョン「…………やめろっ!!」


ハルヒ「―――キョンが、好きなの」


862 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 14:39:45.40 ID:GzoxS9b+0


キョン「……嘘だ…………」

ハルヒ「本当よ。……私はキョンが好き」

キョン「嘘だろ……っ!」

ハルヒ「好き。好きなのよキョン。キョンが大好き。あまりに好きすぎて、気が狂いそう……」

キョン「こんな俺なんかを……好きで居られる筈がない!!」

ハルヒ「なら、証拠を見せてあげるわ」

ガシャガシャガシャ……スタッ!

キョン「お、おい、危ないぞ!! フェンスを乗り越えるなんて!!」

ハルヒ「……ねえ、キョン―――」

キョン「ハルヒ!! 戻って来い!!」


ハルヒ「―――貴方が望むなら、死んでも構わないわ……」


キョン「―――――――――ハルヒッ!!」


俺はフェンスの向こうへ渡り、ハルヒを抱きしめた。


866 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 14:51:10.49 ID:GzoxS9b+0


キョン「………………」

ハルヒ「風が強いわね……」

キョン「……寒くないか? ハルヒ……」

ハルヒ「ううん、平気よ……」

キョン「……そうか…………」


俺は、絡めた腕をほどいて、ハルヒを見た。

ハルヒはまっすぐな目で、俺を見ている。

こんな……俺を…………。

この手で、古泉や長門や朝比奈さんを殺した俺を……。

――俯いて、跪いて、懺悔したい気分だった。

それでも、俺は目を逸らせなかった。


ハルヒの瞳はとてもうつくしい輝きに満ちていた。

867 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 14:58:42.54 ID:GzoxS9b+0


知らないうちに、俺の身体は震えていた。

ふつふつと、自責の念がこみ上げてくる。

もうこれ以上、生きてなどいられない……。

でも、ハルヒは――――ハルヒだけは……っ!


ハルヒ「キョン、大丈夫よ」

キョン「ハルヒ…………」

ハルヒ「私は――キョンについていくわ」

キョン「――――ハルヒ……!!」

ハルヒ「二人で一緒に行きましょう」


ハルヒの瞳から、綺麗な宝石が流れ落ちた。


869 名前:1[sage] 投稿日:2009/02/18(水) 15:04:39.26 ID:GzoxS9b+0

ハルヒ「ねえ、私を見て」

ハルヒ「私の手を握って」

ハルヒ「離さないで」

ハルヒ「いつまでも傍に……」

ハルヒ「ずっと傍に居て」

ハルヒ「キョン、お願い――」


キョン「ハルヒ…………」

キョン「ハルヒ……どうして……」



俺は、俺たちは……飛び降りた。

学校の屋上から――



――― >>1 ―――



……どうして……俺なんかを好きになったんだ……ハルヒ…………



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