佐々木「恋? 病の一種でしかないさ」


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トップ 作品一覧 作者一覧 掲示板 検索 リンク SS:古泉「亜空間にバラまいてやる!!」

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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 22:53:24.14 ID:izjSxNI4O

佐々木「そもそもだ、キョン。恋をして何か得るものがあるのかい? 必要のない独占欲が生まれ、それによって束縛という鎖に、生まれ持った自由すら無くなってしまう。
はっきり言って人間に害でしかない、病気さ」

キョン「まぁお前の言うこともわからんでもないがな、少なからず得るものもあるんじゃないか?」

佐々木「得るもの? せいぜい恋人ができたという達成感や、いることによる見栄くらいだろ?
場合によっては性的欲求が満たされることによる満足感があるかもしれないが。所詮その程度さ、違うかい? キョン」

キョン「ふむ、じゃあ何か得るものがあるから恋をするって考えから違うのかもな。よくわからんが」

佐々木「なかなか興味深い事を言うね、キョン。だが得るものもなく時間を割くだなんて僕には全く理解ができないよ」

キョン「じゃあ一回模擬デートでもしてみるか? 少しは恋人の気持ちがわかるかもしれないぞ」

佐々木「面白い話だが、生憎僕は模擬試験に向けての勉強に忙しい毎日でね、その誘いは断らせてもらうよ」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 22:55:46.90 ID:izjSxNI4O

佐々木「……と言いたいところだが、他の誰でもない親友である君の誘いだ。明日一日の僕を好きにしてくれて構わない。
それにその、模擬デートとやらに少し興味があるしね」

キョン「そりゃ良かった。だが俺もデートなんざしたことがないからな、つまらない一日にならないように努力はしてやる」

佐々木「キョン、君の誘いでなければ聞く耳すら持たないところだ。楽しませてくれよ?」

キョン「もう一度言おう。努力は、してやる」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:00:05.14 ID:izjSxNI4O

キョン「じゃあまた明日の事が決まったら連絡するよ」

佐々木「送ってくれて助かったよ、キョン。ふふ、期待して連絡を待つとしようかな。
じゃあ、気をつけて」

キョン「あぁ、じゃあな」チャリンチャリン

佐々木「……模擬、デートかぁ」ガチャ
佐々木「ただいまー」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:02:58.12 ID:izjSxNI4O

佐々木「むむ、二ページも三次方程式についてか、この問題集ははずれだったなー。
この程度の事で無駄にページ数を……」ブツブツ

プルルルル プルルルル

佐々木「あ、キョンだ。日程が決まったのかな」ピッ

佐々木「やっと決まったかい? キョン」

キョン『あぁ、なかなか上手いこと決まらなくてな、遅くなった。まだ寝てなかったか?』

佐々木「ふふ、まだ十時じゃないか。寝るには早いよ、キョン。それで? 詳しく聞こうか」

キョン『そうかい。
明日は一応九時に駅前な。詳しい事は明日になればわかるから楽しみにしといてくれ』

佐々木「九時か、世の恋人達は皆そんな時間から行くのかい? 何もそんな早くから時間を割かなくても良いものを。
まぁ明日について任せたのは僕だ、素直に従おうじゃないか」

キョン『そう嫌そうに言うなよ、無駄かどうかは体験しなきゃわからないさ』

佐々木「ふふ、嫌じゃないよ、キョン。誘ってくれた事は素直に嬉しいよ。
じゃあ、また明日」

キョン『どうだかな。
あぁ、また明日』ピッ

ピッ
佐々木「恋人の気持ち、か。私には縁のないものなのかもしれないよ、キョン……」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:07:05.18 ID:izjSxNI4O

佐々木「全く。遅いなぁ、キョンは。まぁまだ九時になってないんだけど」

――――十分後。
キョン「悪い、待ったか?」ダッダッダ

佐々木「いや、今来たとこだよ、キョン。それよりどこに連れてってくれるのかな?」

キョン「そうか、なら良かったが。
まずはショッピングモールでも行くか」

佐々木「異論はないが、しっかりエスコートしてくれよ? 今日一日は僕らは“恋人”って設定だ」ぎゅっ

キョン「なっ!? だからって何故手を繋ぐ!」

佐々木「これでも僕なりに恋人について勉強してきたつもりだよ、キョン。恋人はこうして手を繋いで歩くのだろう?」ぎゅ

キョン「し、しかしだな、設定上の恋人なんだぞ」

佐々木「設定上でも恋人は恋人だ。恋人の気持ちをわかろうとするのに恋人がしていることをしないのは理解する気がないってものさ」

キョン「それはそうかもしれないがな、これじゃ端から恋人だと見られるぞ。嫌じゃないのか?」

佐々木「そんなの勝手に思わせておけばいいだろう? それともなにか。キョン。僕と恋人だと思われるのがそんなに嫌かい?」

キョン「そ、それはだな……」

佐々木「ふふ、冗談だ」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:11:51.08 ID:izjSxNI4O

佐々木「しかしあれだな、キョン。異性と手を繋ぐなんて不快だとばかり思っていたが、意外とそうでもないみたいだ」ぎゅ

キョン「そうかい。そりゃあ良かった……あ、タクシーきた」すっ

佐々木「キョン、恋人達は室内や車内でも手を繋ぐのかい?」

キョン「さぁな、恋人の事を俺に聞くのは間違ってると思うぞ。繋ぎたい時に繋げば良いんじゃないか?
あ、ショッピングモールまでお願いします」ストン

佐々木「ふむ、しかし今日限定の恋人である僕達に繋ぎたい時というのはわからないと思うのだが、どうだろう?」ストン

キョン「なら佐々木が繋いでも良いって時に繋げば良い」

佐々木「なるほど。しかしそうなると君はいつまでも僕の手から離れられないな」ぎゅっ


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:18:16.64 ID:izjSxNI4O

キョン「さぁ、着いたぞ」

佐々木「リードしてくれよ? キョン。僕はちょこちょこついて回るだけさ」ぎゅ

キョン「そうかい。しかしどんな店を見て回るのかねぇ、恋人達は。
ところで佐々木。何か欲しい物とかないのか?」

佐々木「欲しい物かい? そうだな、新しい問題集か参考書辺りを買いたいと思ってはいたが」

キョン「こんなとこまで来てまだ勉強か? ちょっとは娯楽に意識を向けたらどうだ」

佐々木「それもそうか、なら女の子らしく服でも買いに行こうかな。どうだろう?」

キョン「良いんじゃないか? その方がずっと楽しそうだ」

佐々木「楽しい、ね。しばらく考えたこともなかったな、楽しさなんて」ぐい

キョン「お、おい! 引っ張るな引っ張るな!」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:23:01.80 ID:izjSxNI4O

佐々木「しかし女の子ってのは大変だな。こんなに沢山服に種類がある」

キョン「お前はなんでその目線なんだよ。女の子だろうが」

佐々木「僕はお洒落ってのが苦手でね、というより服なんて体を覆えれば何でも良いとさえ思っているんだよ」

キョン「その割には今日の格好は可愛らしいじゃないか」

佐々木「おや、嬉しいことを言ってくれるねキョン。
僕なりに勉強した甲斐があったよ。男はボディラインが良くわかるシャツにミニスカートが好きらしいからね」

キョン「それには激しく同意せざるを得ない」


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:26:23.63 ID:izjSxNI4O

佐々木「これなんてどうかな? キョン」すっ

キョン「良いんじゃないか? 似合ってるぞ」

佐々木「ふふ、じゃあ買おうかな」

キョン「ちょっと貸してみ、佐々木」

佐々木「ん? 手に取ってみたいのかい? はい」

キョン「……」スタスタ

店員「ありがとうございます。4900円になります」

キョン「はい」すっ

店員「5000円からで。こちら商品と、100円のお返しになります。またのご利用お待ちしております」ペコ

キョン「ほらよ」

佐々木「誰も買ってなんて頼んでないぞ、キョン。確かに今日だけ恋人だが、こんな高い物をプレゼントさせるわけにはいかないよ」

キョン「今日一緒に来てくれたお礼だ。他意はないから素直に貰ってくれないか?」

佐々木「全く、時々君の行動には目を疑うが、今君が買ってきてくれた時何故だか胸が苦しくなったよ。何でかな?
ふふ、でもありがとう。キョン」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:32:06.72 ID:izjSxNI4O

キョン「次はあそこに行くか?」

佐々木「アクセサリーショップか、なかなかお洒落な店を選ぶじゃないか、キョン」

キョン「まぁ見るだけならタダだしな」

佐々木「ふふ、面白いこと言うねキョン。だが時間はお金じゃ買えないよ。
つまり、時間のロスは取り返しがつかないのさ」

キョン「あのな、物事全てに利益だとか損得を持ち出すのはどうかと思うぞ」

佐々木「ふむ、じゃああれか。得るものは何もないとわかっていても、するって言いたいのかい?」

キョン「例え物体や知識として得るものがなくてもな、楽しければ気持ちの面でプラスだとは思わないか?」

佐々木「なるほど。僕は少し楽しいって考えを忘れてしまったようだよ、キョン。
でも何だか今こうしていることが楽しい、な」

キョン「そうか、そりゃ良いことさ」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:44:50.57 ID:izjSxNI4O

佐々木「キョン。このネックレスは綺麗だと思わないかい?」

キョン「あぁ、確かに綺麗だ。気に入ったのか?」

佐々木「僕には似合わないよ。体にも服装にも、ね」

キョン「そんなこともないんじゃないか? ちょっと貸してみ」

キョン「首細いな、佐々木。
……よし、付けたぞ。どうだ?」

佐々木「……綺麗」

キョン「買ってやろうか?」

佐々木「ありがたいお言葉だけど遠慮しとくよ、キョン。流石にこれまでプレゼントされては、僕自身の為にもならない」

キョン「そうか、そりゃ残念だ」

佐々木「という訳でキョン。僕がこれを君にプレゼントすることに決めた」

キョン「何故そうなる、お前が欲しいんだろ? いや、嬉しいけどだ」

佐々木「僕が気に入った物を君が付ける。それで充分僕にとっては嬉しいんだよ、キョン」

キョン「なら素直に貰おうかな、ありがとう」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:50:07.25 ID:izjSxNI4O

キョン「どうだ? 変じゃないか?」

佐々木「ふふ、良く似合っているよ、キョン」

キョン「そうかい。ありがとうな、佐々木」

佐々木「なに、今日誘ってくれたお礼だよ。それに、いつでも借りる事ができるだろう?
ふふ、僕らは恋人なんだから」

キョン「お前それが目的か」

佐々木「キョン。そろそろお腹が空いたよ」

キョン「やれやれ」

>>27
僕だって、恋くらいするさ
を書いた者です。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/14(土) 23:56:06.85 ID:izjSxNI4O

キョン「色んな店があるな、流石に」

佐々木「何か変わった物が食べたいよ、キョン」

キョン「変わった物ねぇ、じゃああそこ行くか」


佐々木「なんだい? この店は」

キョン「なんだい? って見ればわかるだろう。珍味専門料理店だ」

佐々木「君ってやつは……」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 00:07:48.32 ID:h0tnExdTO

店員「ご注文お決まりでしょうか?」

キョン「じゃあ、イナゴの唐揚げと、芋虫の天ぷらで」

佐々木「え、えと。女王蜂と蜜蜂の親子丼をお願いしま、す」

店員「かしこまりました」

佐々木「おい、キョン。この店のメニューに惹かれる料理がないんだが」

キョン「そうか? イナゴ美味しいんだぞ、イナゴ」

佐々木「世の恋人達がこの店に来るとは思えないぞ、キョン」

キョン「何も世の中が全てじゃないさ、俺とお前にしか理解できない事でもふたりが良ければ良いのさ」

佐々木「僕はこの店に良さを見出だせないよ。だいたい芋虫の天ぷらってなんだ。良くそんなものを頼もうと思ったなキョン僕に言わせれば……」ぶつぶつ


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 00:17:24.00 ID:h0tnExdTO

キョン「よし、食べよう」

佐々木「本当に、蜂の親子丼か……。姿煮じゃないか、これじゃ」

キョン「美味しそうだな、それ。一匹イナゴと交代しないか?」

佐々木「好きにしてくれ、キョン。うわ、足が長い……」

キョン「騙されたと思って食べてみろ、人も虫も見掛けによらないさ」

佐々木「僕は騙される事が嫌いなんだよ、キョン。しかしこのままでは一向に完食できないしな、食べてみるか」パク

キョン「どうだ? 意外といけるだろ」

佐々木「あ、あれ? 美味しい」

キョン「ほらな、じゃあ芋虫食うか?」

佐々木「いやそれは話が違う」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 00:23:19.22 ID:h0tnExdTO

佐々木「よく芋虫なんて口にできるね、キョン」

キョン「お前それは芋虫に失礼だぞ」

佐々木「いや待て、キョン。人に食べられる為に生まれてきたわけじゃない」

キョン「まぁ芋虫を最初に食べた奴は凄いよな」

佐々木「相当食料に困っていたか、相当物好きかのどちらかだろうね」

キョン「空腹の時でも目の前をのそのそ歩く芋虫を口に運ぶ奴はいないんじゃないか?」

佐々木「とりあえず食事中に芋虫芋虫言わないでくれないか、キョン」

キョン「その芋虫を食ってる俺はどうなるんだよ、おい」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 00:29:45.21 ID:h0tnExdTO

キョン「いやぁ食った食った」

佐々木「ご馳走様」

キョン「じゃあ食後の運動がてら、ゲーセンでも行くか?」

佐々木「ふふ、エアホッケーだね?」

キョン「そろそろ白黒つけようじゃないか」

佐々木「負けた方はジュースを奢りでいいかい? キョン」

キョン「あぁ、良いだろう。後悔させてやる」

佐々木「力だけで勝てると思うなよ? キョン」

キョン「言っとけ」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 00:44:18.96 ID:h0tnExdTO

キョン「さぁ始めようか」

佐々木「そっちからで良いよ、キョン」

キョン「そりゃありがたい、いくぞ!」


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佐々木「ま、負けた」

キョン「佐々木、これが現実だ」

佐々木「くっ、たかがゲームごときなのにここまで悔しいとは」

キョン「でも楽しいだろ? 最後にお前と遊んだのはもう半年も前のことだからな」

佐々木「半年、か。でも仕方ないんだよ、キョン。僕にとっては高校二年の終わり、この時期が一番大事なんだ。遊んでる時間なんて本当はないんだよ」

キョン「わかってる。でも何か大事なことを忘れていってないか? 佐々木。
確かに勉強は大事だ、友情じゃ良い大学には行けないさ。だが、本当に勉強だけしていれば良いのか?」

佐々木「……」

キョン「お前だって年頃の女の子だろう? 少しくらい遊んだって誰も責めやしないさ」

佐々木「遊び……? 僕もね、キョン。本当は遊びたいんだよ。
でも良い大学に行って良い会社に入る事だけが親の望む道。僕はただその道から外れないように進むしかないんだ」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 00:55:24.75 ID:h0tnExdTO

佐々木「遊ぶ事で他の人より遅れをとるなら、僕は遊ばない。友情だっていらない。
良い会社に入ってからでも遊ぶことはできるけどね、キョン。その逆はないんだよ」

キョン「じゃあ何で今日来たんだ? 今日一日こうやって遊ぶ事は無駄じゃないのか?」

佐々木「わかってる。わかってるんだ、僕にだって。でもそれでも来たかった。
それじゃだめかい? キョン」

キョン「わかった。もう何も聞かない。すまん」

佐々木「いや、良いんだ。さぁ、デートの続きをしようか」

キョン「……あぁ」

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 01:13:04.61 ID:h0tnExdTO

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佐々木「もうこんな時間か、日が沈み始めたよ」

キョン「最後に連れて行きたいとこがあるんだよ」

佐々木「ふふ、何だかロマンチックな事を言うじゃないか、キョン」

キョン「冷やかすな、この長い坂を上がったとこなんだ」

佐々木「大方予想はできたぞ、キョン。綺麗な景色が一望できるのだろうね」

キョン「まぁつけばわかる」


138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 01:20:41.69 ID:h0tnExdTO

キョン「よし、ついたぞ」

佐々木「…………」

キョン「なんだ、リアクションなしか」

佐々木「……凄いよ、キョン」

キョン「そうだろ? ここは知る人ぞ知る絶景ポイントなんだ」

佐々木「夕日ってこんな綺麗な色をしていたっけ。
夕方なんて塾にいるか家にいるかで、すっかり忘れちゃったみたいだ。
何でかな、こんなに綺麗なのに、凄く悲しいよ」

キョン「……佐々木」


145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 01:34:23.99 ID:h0tnExdTO

佐々木「この夕日を見てると思い出すよ、中学時代を。キョン、君と毎日ふたりで塾に行って帰ったっけ。
ふふ、時には塾をサボって遊んだこともあったね」

キョン「そんなこともあったな」

佐々木「それからお互い違う高校に入って、会う事も少なくなって。君はどんどん僕から遠い存在になってしまった。
だからといってね、キョン。一度も違う高校に入った事を後悔した事はないよ。何でかわかるかい?」

キョン「……」

佐々木「それが親の選んだ道だったからさ。僕には自分の道を選ぶ権利も術もない。
ましてや、自由に遊ぶ事もままならない。今日もね、キョン。実は抜け出してきたんだ、家を。
ふふ、帰ったらどうなるんだろ」

キョン「何で、何でそこまでするんだよ、ただの遊びの誘いだろ!? 簡単に断る事ができたはずだ」

佐々木「僕は今まで親に逆らったことは一度もなかった。でもね、キョン。
親を裏切る事になることはわかっていてもね。
君の初めてのデートの誘いだけは、どうしても断れなかったんだ」


153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 01:49:20.22 ID:h0tnExdTO

佐々木「今日君と一日を過ごして、何となくわかった気がする。
恋するってこんなに楽しいことなんだって。確かに何か得ることはないし、お金と時間だけが減っていくけど、そんなことを忘れさせる程に大切な思い出ができた。
ふふ、おかしいよね。恋は病だ、とか。恋愛なんか、とか、偉そうに口走っていた僕が今はこんな事を言っているなんて」

キョン「思い出、か。お前らしくないことを言うじゃないか。でもな、良い大学に入らなくてもな、良い会社に入らなくてもな。
世の中幸せな奴は沢山いるんだよ、佐々木」

佐々木「今ならわかるよ、キョン。君が言いたいことが。
利益のない幸せが、今になってやっとわかった。ありがとう、キョン」

キョン「そうやって笑ってる方がお前らしいぞ」

佐々木「恋は何も悪い病だと決め付けるのは良くないみたいだね。
ふふ、今の僕は良い病に犯されているみたいだ、キョン」

キョン「まさか恋の病にとか言うんじゃないだろうな」



佐々木「僕だって、恋くらいするさ」

HAPPYEND


154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/15(日) 01:50:56.20 ID:h0tnExdTO

短いようですが、終わります。読んでくれた方々ありがとうございました。

明日朝が早いもので、少々展開を早めてしまいましたがw



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