裁判長「被告人涼宮ハルヒを死刑に処す」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 19:44:16.08 ID:CGvHqzLy0

その判決を聞いて俺は、にわかに信じられなかった
ハルヒが…死刑?


ハルヒ「嘘よ…こんなの…」

力なく崩れ落ちるハルヒ
傍聴席で聞いていた俺はハルヒの崩れ落ちる姿を、ただただぼんやり眺めることしかできない

ハルヒ「キョン…ねぇ…キョン!助けて!あたし、まだ死にたくない!」


被告人席から俺を必死な声で呼ぶハルヒ
あのプライドの高く、人前で決して泣くことのなかったハルヒが泣いている


なんでこんなことになった―――?
全てを語るには、まず俺が高校を卒業したあたりから話さなければならない


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 19:45:57.40 ID:CGvHqzLy0



――

―――

俺達が北高を卒業して4年間…偶然なのかどうか分からないが、SOS団は先に卒業した朝比奈さん含め全員同じ大学に進学した

本当は俺の学力なんかでは絶対に受からないようなところなのだが……、奇跡的に合格してしまった

どうせこれもハルヒが望んだことに違いないんだろう

谷口は目を丸くして

谷口「いやな、キョン。お前は絶対に裏切らないと思ってたんだけどな…まさかこんないい大学に入っちまうなんてな」

半ばやけくそ気味の谷口は、せいぜい5流が良いとこの大学に進学した

国木田「ほんとびっくりだよ!いつの間に勉強してたんだい?」

そういう国木田も決して悪くはない大学に進んだ

それがあいつらとの最後の会話、卒業式のことだったけな
それ以来一度も連絡はとってない



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 19:48:03.44 ID:CGvHqzLy0

大学に入った後も、俺たちがやったことは高校のそれと変わらず、無許可に作ったサークル『SOS団』にて毎日毎日、不思議を探し回っていた

よくもまぁ毎日毎日飽きなかったもんだな…我ながら少し呆れてしまう


そんな日が続き俺たちが2年生、朝比奈さんが3年生になった春のことだ
突然古泉が俺に話を持ち出して来た

古泉「少し…お時間よろしいでしょうか?」

キョン「なんだ、急に改まって」

古泉「お話しておきたいことがあります」

キョン「…?言ってみろ」

古泉「涼宮さんの力が徐々に弱くなっている、とあなたにいつかお話ししたのを覚えていますか」


聞いたような聞いていなかったような
まぁいずれにせよいいことじゃないのか?お前だって、突然《神人》なんぞの相手をしなくて済むようになるんだろ

古泉「その件なんですがね、実は…つい先日その力が完全に消滅しました」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 19:50:23.81 ID:CGvHqzLy0

キョン「消滅…?」

古泉「はい、長門さんにも聞いておいたのですが、間違いないようです」

突然の告白にどう対処しようか迷っている俺を余所に古泉は続ける

古泉「それでですね、僕達『機関』は解散することになったんです。これからは晴れて『一般人』になるわけです」

キョン「そうかい…だが、それを俺に言ってどうする」

古泉「知っておいてほしかったのですよ」

キョン「別に、お前がどうなったって俺には構いはしないがなぁ…」


相変わらずの笑顔で俺を見つめる古泉――
気味が悪い…見つめるな

古泉「それと同時にですね、長門さんと朝比奈さんなんですが…」

古泉「お二方とも、もうすぐここから居なくなるようです」


なに?それは一体どういうことだ…


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 19:52:25.80 ID:CGvHqzLy0

古泉「考えてみてください、長門さんはあくまで涼宮さんを監視するために作られたアンドロイドに過ぎません、役目が無いのにここにいる理由はないでしょう?」

古泉「と同時に、朝比奈さんも涼宮さんの監視が目的で未来からやって来た…任務が終われば帰ってしまうのは当然です」


いきなり古泉に教えられた別れ――
そうか、二人とも帰ってしまうのか

確かに古泉の言うことも分からなくはないが…やっぱり、別れというのは寂しいものだ

キョン「いつ…いなくなるんだ?」

古泉「…それは、本人達にご確認いただければ、と」

なるほど…じゃぁまずは朝比奈さんにでも聞くとするさ


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:00:18.69 ID:CGvHqzLy0

キョン「朝比奈さん…?今よろしいですか?」

みくる「あっキョンくん…サークル以外で会うなんて珍しいですね」


キャンパスのベンチに座っていた朝比奈さんはこれまた変わらぬ笑顔で俺を迎えてくれる
あぁ、この笑顔もそろそろ見納めか…

みくる「何かあったんですか…?」

古泉「実は…古泉に聞いたんですが、未来に…」

みくる「あっ…うん。そう…ごめんなさい、後でゆっくり話そうと思ってたんだけど…」

キョン「いや、それは大丈夫ですよ…それで、いつごろに?」

みくる「ちょうど今週一杯で、帰るんです…」

今週一杯…すでにその日は金曜日だった
もうあまり時間はないようだな

キョン「分かりました…あの、このことハルヒには?」

みくる「まだなんです…なかなか言い出す勇気が無くって…」

キョン「じゃぁ、今日俺が言っておきますよ、長門も自分からは言い出さないだろうし」

みくる「えっ…あ、ありがとう…キョンくん」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/02/10(火) 20:01:36.72 ID:CGvHqzLy0

>>22
ミスった…すいません

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:02:52.05 ID:CGvHqzLy0

次は…長門だな

だが、いつもあいつは大学のどこにいるんだ?
ふむ…仕方ない、とりあえずあちこち回ってみるか



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:06:18.15 ID:CGvHqzLy0

その日の俺はどうやらついていたらしく、見事長門と遭遇することに成功した

キョン「よう」

長門「…」

キョン「古泉に聞いたんだがな、いなくなっちまうんだって?」

長門「…そう」

キョン「そうか、…寂しくなるな…」

長門「仕方がないこと」

キョン「ああ、分かってるさ、お前はいついなくなっちまうんだ?」

長門「朝比奈みくるとほぼ同時に」

キョン「…そうか、分かった」

長門「…」

キョン「ハルヒには…言ったのか?」

長門「まだ」

キョン「なら、俺から言っておいてやるよ、朝比奈さんも自分から言え出せずに困ってたからな」

長門「感謝する」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:12:05.13 ID:CGvHqzLy0

その日のサークルで、俺は朝比奈さんと長門がもうじきいなくなることを……出来るだけ真に迫らないようにハルヒに説明した

ハルヒ「そんな……」

キョン「仕方ないだろ……二人には二人の事情ってもんがある」

ハルヒ「そんなの分かってるけど……でも、こんな急に……」

みくる「あ……あの……涼宮さん………ごめんなさい、私が早く言っていれば…」

今にも泣きだしそうな目でハルヒに謝る朝比奈さんは俺じゃなくたって、男ならだれでも守って差し上げたくなっちまう

ハルヒ「いいのよ…みくるちゃんには、みくるちゃんの事情があるものね…」

やけに物分かりのいいハルヒに俺は少し驚いちまった
…そうか、こいつも大人になったんだな


ハルヒ「明日!二人の別れのための送迎会を盛大にやるわよ!」

ハルヒの提案にこれほど賛成した記憶は他にない



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:19:45.08 ID:CGvHqzLy0

その次の日、長門の家に集まった俺たちは今までで一番じゃなかったかと思うくらい騒いだ

俺だって騒いださ

最後だと言われれば、今までで一番の思い出にしよう……とか思うのは仕方ないことだろ?


朝から晩まで、みんなでトランプをしたりボードゲームをしたり……王様ゲームもしたっけな

結局、夜の10時頃まで騒いでいた気がする

迫りくる別れの時間に、段々テンションが下がり、最後には朝比奈さんが泣いてしまった


ハルヒ「何泣いてんのよ、みくるちゃん!人生に分かれは付き物でしょう!」

そう言うハルヒの声もいつもより上擦っていたのを俺はまだ覚えている

二人との別れを惜しみながら『送別会』はお開きになった

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:25:14.54 ID:CGvHqzLy0

その帰り道、古泉と少しだけ話した

古泉「今日はいい会でしたね……」

キョン「まぁ、ハルヒが考え付くにしては今までで一番まともだったしな」

古泉「ところで、あなたはこの後どのような進路をお考えですか?」

キョン「具体的には何も決めてないけど……まぁ、もう暫くはハルヒのそばに居てやるさ」

古泉「そうですか」

キョン「そうですか……って、お前はどうするんだ?サークルにはもう出ないってか?」

古泉「大変心苦しいのですが……せっかく、『一般人』になれたんです。夢を追いかけてみようかと」

キョン「夢?」

古泉「ええ。その為に、少し勉学に力を入れようかと」

キョン「そうか……なんか、一気に離れ離れになっちまうな」

古泉「……」

キョン「まぁ、頑張れよ。少しぐらいは応援してやる」

古泉「ありがとうございます……」




41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:31:47.88 ID:CGvHqzLy0

次の日から古泉はサークルには参加しなかった
たまに大学内で会うくらいで、ほとんど接点はなくなってしまった

ハルヒも、古泉がいなくなる件について理解を示していたし、それどころか俺の心配までするようになってきた


ハルヒ「あんたはどうするのよ……このままじゃ、社会に出てもフリーターやニートなんかになっちゃうわよ」

キョン「お前はどうなんだ……何か決まってんのか?」

ハルヒ「人のことはどうでもいいでしょ!」


その日から、ハルヒは不思議探しをやめてしまった
……代わりの、俺の勉強に茶々を入れるようになったんだが


傍から見れば仲睦まじい恋人のように見えただろう

不思議探しはやめても、行事には敏感だったハルヒとはクリスマスだって正月だって一緒にいたさ


そして、月日は流れ――
大学を卒業する日がやってきた

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:39:32.09 ID:CGvHqzLy0

ハルヒのおかげかどうか分からんが、俺は今の就職先の内定をもらっていた

ハルヒは俺とは違う就職先に内定をもらっていた……俺のよりもはるかに大企業の


卒業式の後、たまたま古泉に会えた
夢の実現のためにまだ頑張っていることとか、俺とハルヒはいつしか学園内で一番のカップルになったとか……

そんなくだらない会話を交え古泉はどこかへ行ってしまった

代わりにハルヒが俺に話しかけてきた


ハルヒ「ねぇ……キョン」

キョン「なんだ……」

ハルヒ「あんたさぁ、知ってた?私たちって、この学校で一番のカップルだってこと」


今さっき古泉に言われたことだ
しかし、……こいつが人の噂を気にしてるとは……変わったな…ハルヒ


ハルヒ「私はね、何だろう……別に悪い気がしなかったわ。あんたといると……楽しかったし」

キョン「いきなり何を言い出すんだ……?」

ハルヒ「あんたは?私と居てもつまらなかった?」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:45:18.91 ID:CGvHqzLy0

キョン「まぁ、つまらなくは無かったな」

ハルヒ「何それ……、つまり、どうでも良かったってこと!?」

キョン「あ、いや…うん、楽しかった」

ハルヒ「やっぱりそうよねぇ……私と居てつまらないはずないもの!」


こう言うところはまだ変わってないな……
根拠のない自信というか……なんて言うか


ハルヒ「もっと一緒にいたいと思わなかった?」


これは少し返答に間をおいた
こいつの言おうとしていることが理解できなかった為である


キョン「……まぁ、少しは」


そう言うと、ニヤーっとハルヒは笑みを浮かべた


ハルヒ「そうよね!……いいわ、キョン……もっと一緒にいてあげるわ」

キョン「?付き合うってことか……?だが、今更そんなことしなくても……仕事先も違うんだぞ?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:52:18.88 ID:CGvHqzLy0

ハルヒ「ちがーう!」

キョン「……悪いが全く分からんのだが」

ハルヒ「いい?キョン……今のあんたはまだ社会に出たばかりで何も養うことはできないの」

キョン「何をだ……別に養うものなんかないぞ」

ハルヒ「黙って最後まで聞きなさい!……それで、これから仕事をしてたくさん苦労してやっと社会の一員となるの」

ハルヒ「この先、何年かかってもいいわ……もし、自分が本当に大人になったと思ったら……」




ハルヒ「私を、迎えに来なさい!」

キョン「……は?」


結局ハルヒはそのまま走り去っていってしまった
何が言いたかったのか、本当にその時の俺には分からなかったんだ

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:57:49.52 ID:CGvHqzLy0

それから会社に入社し、がむしゃらに頑張ってきた

時にはミスをすることもあったがへこたれずに毎日毎日働いてきた

その時、ふと会社の同僚に卒業式の件を聞いて笑われた


同僚「ハハハ!もしかして、お前って鈍いほうか?」

キョン「鈍いって……何がだ」

同僚「こりゃ重症だな……あのな、お前はその女にプロポーズされたんだよ」

キョン「プロポーズ?」

同僚「お前が一人の立派な人間になって迎えに来てくれるのを望んでるんだよ」

キョン「……そうだったのか」

同僚「しかし…今時珍しいな。そんなこと言うやつがいるとは……」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:02:09.89 ID:CGvHqzLy0

その次の日から、俺の仕事に対する真剣さは一層強くなった

ハルヒが俺を待っている―――そう思えば、毎日の残業も苦にならなかった



そして、ついに去年……俺は、ハルヒに電話をかけた

電話に出たハルヒの声を確認すると、何だが懐かしい気持ちでいっぱいになって目頭が熱くなっちまった


キョン「明日……会えるか?」

ハルヒ「いきなり急ね……でも、いいわ。場所は……」

キョン「あぁ、いつもの喫茶店だな」


翌日、久しぶりの再会だというのにハルヒが最初に言った言葉は


ハルヒ「遅い!罰金」


やれやれ……

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:12:30.64 ID:CGvHqzLy0

他愛もない話から始まって、この日のために前日から必死で練ったデートプランを実行に移した


学生の時に、『付き合った男はみんなつまらなかった』というハルヒは、とにかく普通のデートが嫌いらしいのだが、それでもあえて映画に誘った

映画の内容ははっきり言ってしまえばそう面白いものではなかったと思うが、映画館から出て来たハルヒの満足そうな顔を見て少し安心した


その後も、ボーリング、ショッピングを楽しみ自慢の愛車(結構無理をして買った)で夜景のきれいなレストランへ行った


ベタすぎるって…?いいのさ、こいつに限っては

あまりにベタすぎて返って変かもしれないがそこでハルヒに俺から求婚した


キョン「結婚しよう……ハルヒ」


もうちょっと何か他に言う言葉はなかったのか?
今考えても何だか簡略化され過ぎてしまったのだが


ハルヒ「……待ってたわよ、キョン」


そして俺たちは夫婦になった

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:15:46.27 ID:CGvHqzLy0

結婚して、式も終えた後…俺はすごく幸せだった

俺と結婚した直後にハルヒは会社を辞めてしまったから俺にかかるプレッシャーは増えた

だが、それでも家に帰ればハルヒがいるし、昼飯は毎日ハルヒが作ってくれる


これ以上の幸せなんて……俺には考えられなかった


でも忘れてたんだ

悪いことが続かないように……
良いことも続かないんだ……ってことを

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:23:37.55 ID:CGvHqzLy0

今からちょうど3ヶ月前

何時もの様に家に帰宅すると、家にはハルヒがいた

いつも通りの光景に一日の疲れが吹っ飛んじまう


ハルヒ「遅かったわねぇ、なにしてたのよ?」

キョン「最近不景気でな…サービス残業ってやつだ……悪いな」

ハルヒ「そう…・…あまり無理しないでよ?」

キョン「あぁ、ありがとう」


ピンポーン

誰かが家の呼び鈴を鳴らした


ハルヒ「あ、誰だろう……」

キョン「あぁ、お前は夕飯の準備しててくれ、俺が出るから」


――ガチャ
キョン「どなたです…」

警官「夜分遅くに失礼します、こちらに涼宮ハルヒはいますか?」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:28:57.05 ID:CGvHqzLy0

俺たちは、結婚はしたのだが苗字は変えなかった
特に理由はないのだが…『そのほうが面白い』とハルヒらしい理由でそうなったのだ


キョン「はぁ…警官さんですか?」

警官「○○署の者です」

その警官は警察手帳を俺に見せた

なんだ…こんな時間にいったい何の用だ…


警官「涼宮ハルヒさんには○○署に逮捕状が出ました」


…は?
何言ってやがる…


逮捕状?


キョン「どういうことだ…ハルヒが何かやったのか?」

少しずつ…俺から冷静さが消えていく

警官「まだ公になっていないのですが、彼女がある事件に関与していた可能性があるのです」



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:35:34.33 ID:CGvHqzLy0

騒ぎを聞きつけたのか、キッチンからハルヒが来る

ハルヒ「どうしたのよ……え?警官?」

キョン「いや、こいつが訳の分からないことを言い出しやがって……」

警官「あなたに、逮捕状が出ましたので、すいませんが○○署までご同行願えますか?」

ハルヒ「え…なんで……?」


痺れを切らしたのか、外で待機していたと思われる他の警官数名が家に入ってくる

キョン「な…ちょっと!勝手に入るな!」

警官「取り押さえろー!」


ぞろぞろと入ってきた警官たちに俺とハルヒは取り押さえられた

キョン「は…離せ!いきなり何しやがんだ!!」

ハルヒ「そうよ!こんなの不当逮捕よ!いい加減にしなさい……!」

必死の抵抗を見せるが……ついにハルヒは外で待機していたパトカーに乗せられてしまった


ハルヒ「そんな……!キョン!助けて!」

キョン「待て!ハルヒをどこに連れて行くつもりだ!おい!!」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:46:24.40 ID:CGvHqzLy0

結局俺は何もできないままハルヒは連れて行かれてしまった

……あまりに突然だったもんで、しばらくぼーっと立ち尽くした

何分ぐらい立ちつくしたんだろうか

少しずつ思考が可能になっていった



追いかけなくては!


愛車に飛び乗り○○署へ向かう

何故ハルヒが…?何で……!考えがまとまらないまま、ついに○○署に着いた

近くの有料駐車場に車を止め中に入る


キョン「ハルヒ!!!」

叫ぶ俺に○○署内部にいた全ての人間の視線が集中した

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 21:52:54.77 ID:CGvHqzLy0

突然の来訪者にその場の人間のほとんどが固まっていたが、やがて一人の男が話しかけてきた


男「突然押し掛けてきて…誰だい?」

その男は、中年ぐらいのおっさんで少し太り気味の体だった


キョン「ハルヒは……ハルヒはどこだ!」

男「はるひ?……あぁ、確か……」

キョン「知ってんだな?で、ハルヒはどこにいるんだ!!」

男「まず、君は誰だ?いきなり押しかけてきて、少し無作法なんじゃないのかい?」

キョン「う…あぁ、すまない……俺は、涼宮ハルヒの夫の――だ」

男「旦那さんか、それで、どう言ったご用件で?」

キョン「突然ハルヒが連れてかれたんだ!どうなってる…教えてくれ!!」

男「何も知らないのか…いいでしょう、少し付いてきなさい」


その男は別の部屋へと俺を案内した

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 22:07:47.69 ID:CGvHqzLy0

その部屋で…俺はなぜハルヒが連れて行かれたのかを……知った



男「先日、とある高校の近くにて二つの遺体が発見された」

男「その遺体は損傷が激しく、体の一部が切断されてるほどだった……」

男「我々はその二人の人間の身元をやっと特定したのだが……」

男「それは、『朝比奈みくる』と『長門有希』だった」

男「詳しいことは分からなかったが、北高校の出身者であることが分かっていて身元が特定できた」



……は!?

誰が死んでたって……?

俺の耳が飾りか何かでない限り、こいつは確かにこう言った

遺体は『朝比奈さん』と『長門』だった……と


いや待て……確か二人とも帰ったはずじゃ…

意味が分からない

これは……夢なのか?

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 22:18:35.13 ID:CGvHqzLy0

何も喋れない俺を余所にその男は続ける…


男「その遺体発見現場のすぐ近くの丘のようなところから、凶器と思われる血液付きのナイフと返り血が着いた服が発見された」

男「ナイフの指紋はきれいにふき取られていたが、服のほうに被害者のものとは違う髪の毛を検出した」

男「その髪の毛を詳しく調べると……涼宮ハルヒのものであると判明したのだ」


………・その後は何を言われたのか覚えていない
気付けば家に居て、一人泣いている俺がいた


意味が分からない……なぜハルヒが二人を殺した?
いや、仮に殺さなかったとしてもなんで二人の遺体何かが…

考えれば考えるほど混乱していく


次の日  俺は会社を休んだ

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 22:26:23.13 ID:CGvHqzLy0

その日は何もせずにただ一日家にいた

もう一度○○署に行ってハルヒに会いたかったんだが…体が動かない


もしも本当だったら――?

その時点で俺は多分……

こんな考えばかり浮かぶ自分が嫌になる

ハルヒは俺を信じて何年も待ってくれたのに……なぜ俺は信じてやれないんだ?

しかし、体が動かない

代わりに…涙だけが零れ落ちる


ピンポーン

誰だ……?

精一杯力を体に入れ、玄関に向かった


――ガチャ



210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 22:33:13.59 ID:CGvHqzLy0

古泉「こんにちは」

キョン「古泉……?」

古泉「そうです、……少しやつれましたか?」

キョン「……」

古泉「全て知っています」

キョン「!!」

古泉「警察の内部のほうに知人がいましてね、『北高の出身者が遺体で見つかった』と言われ、少し興味がありまして……」

キョン「あ……」

古泉「心中お察しします。それで、どうですか?」

キョン「昨日連れて行かれちまったよ……俺は……何も、何もできなかった……!」

古泉「……」

キョン「ひどいやつだろ?愛しているとは言えるのに信じているとは言えないんだ……」

古泉「……まさか、もう諦めてしまったのですか?」

キョン「……?」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 22:49:07.90 ID:CGvHqzLy0

古泉「何故僕がここに来たか……お分かりですか?」

キョン「……」

古泉「僕は、弁護士になったんですよ」

キョン「……」

古泉「大学の時にあなたに話した『夢』を実現したわけです」

キョン「……そうか、それで?」

古泉「涼宮さんの弁護人……やらせてもらえませんか?」

キョン「弁護人……?」

古泉「明らかに不自然な事件だと思いませんか?帰ったはずの二人が殺されているなんて……」

古泉「しかも、これは涼宮さんを知る僕としての意見なのですが、彼女が二人を殺す理由がありません」

古泉「お願いします……僕は、この事件の真実が知りたいんです」

キョン「……あぁ、頼む……」

古泉「ありがとうございます」

キョン「もし、ハルヒが死刑にでもなったら……俺は……」

古泉「大丈夫ですか?気を確かに持ってください。必ず、彼女を救いましょう!」

309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 22:56:14.19 ID:CGvHqzLy0

キョン「俺は何をすればいいんだ…」

古泉「まずは、涼宮さんに面会しましょう」

キョン「……そう、だな……・ここに居ても始まらない」

古泉「では」


俺は古泉を助手席に乗せ、車を出した
社内では終始無言で、重苦しい雰囲気を醸し出すには十分だった

○○署に着き、俺は深呼吸を一つした

……大丈夫だ、ハルヒを信じろ


○○署での面会をする為の手続きなんかは全て古泉がやってくれた

○○署の内部に入り、古泉の後を付いていくと、昨日と違う部屋に着いた

扉の前で古泉は立ち止まり

古泉「面会時間は5分です…外で待ってます」


俺に微笑みかけた

334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 23:05:54.79 ID:CGvHqzLy0

キョン「……ハルヒ!」


ガラス越しにパイプ椅子に座っているハルヒを俺は部屋に入るなり、すぐに見つけた


キョン「大丈夫か?」

ハルヒ「キョン……ねぇ、何でこんなとこにいなきゃならないの……?帰りたいよ……」

キョン「お、落ち着け……お前は、やってないんだな?」

ハルヒ「当たり前じゃない!なんで私がみくるちゃんや有希を殺さなきゃならないのよ!」


よかった……本当に良かった……ハルヒはやってない!無実だ!


キョン「分かった……ハルヒ……」

ハルヒ「なによ……あんたまで私を疑ってるの!?うそでしょ……ねぇ!」

キョン「落ち着け、俺は……最後までお前の味方だ。必ずお前をそこから出してやる!」

ハルヒ「本当に……?本当に……助けてくれる?」

キョン「絶対だ……必ずお前を救う。弁護士に古泉がついてくれたんだ……負けるはずないだろ?」

ハルヒ「古泉くんが…?」

347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 23:10:53.75 ID:CGvHqzLy0

キョン「そうだ!だから……」

看守「面会時間は終わりです。」

ハルヒ「あっ…キョン…」


ハルヒは看守に連れられて行ってしまった


こぶしを強く握りしめる

必ず……ハルヒを救いだしてやる……



部屋から出ると、古泉が

古泉「どうでしたか……?」

キョン「あまり良くないな……」

古泉「そうでしたか……」

キョン「古泉……お前の力を貸してくれ、俺は…必ずハルヒを助ける!!」

古泉「その意気ですよ。では、僕はまとめたい資料もあるのでここら辺で……詳しいことが決まったらご連絡します」

キョン「送ってくぞ?」


356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/10(火) 23:13:25.24 ID:CGvHqzLy0

古泉「いえ、近くに事務所があるので大丈夫です……では」


古泉は去って行った





その日は早く寝てしまった
明日からは会社にも行くことにした


432 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:00:12.47 ID:96EcMC070

次の日

会社に行き、最初に部長に逢いに行った

急に休みを取らせてもらったんだ……礼ぐらい言わないと


キョン「あの、昨日はすいませんでした」

深々と頭を下げる、が、帰ってきた答えに驚いた



部長「なぜここにいるんだ?こんなことしてる場合じゃないだろう?」

キョン「え……?」

部長「昨日弁護士さんから電話がかかってきたぞ、もしかしたら会社に来てるかもしれないから何とか休みを与えてやれないか、と」

キョン「古泉が……?」

部長「悪いが話は全て聞かせてもらったよ」

キョン「そう・・・ですか」


443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:08:12.20 ID:96EcMC070

部長「私は、君を信じてるよ」

キョン「え?」

部長「ここにきてから君はどんな仕事にも熱心に、しかも嫌な顔一つせずにまじめにやってきたんだ」

部長「そんな優秀な部下を信じないわけがないだろう?」

部長「そして、彼女は君が選んだんだろう?なら、きっと彼女は犯人ではないはずだ」

部長「早く行きなさい……君は必ずクビななんかしないから」

キョン「あ、ありがとうございます!!」


俺は会社を飛び出した

451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:14:08.23 ID:96EcMC070

古泉によれば、一日一回面会させてくれるらしい

面会の時間までまだ少しあったので、どこかで時間をつぶすことにした


車から降り、行く宛てもなく歩いていると何たることか……
SOS団のいつもの集合場所にいた

他に行く宛てもないし喫茶店にでも入るか……


思えばあの時は楽しかった
毎回俺が奢らされていたがそれでも構わなかった


高校生が『不思議探し』などと言って街中を歩き回る姿は他人から見ればおかしな連中だったんだろう

それでも俺は良かったんだ…


席に着きホットコーヒーを注文すると、しばらくして運ばれてきた


コーヒーを俺の前に置いたのだが、なぜかその店員は俺の向かい側の席に座って話しかけてきた


453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:19:48.93 ID:96EcMC070

キョン「もしかして……森さんですか?」

森「そうよ…浮かない顔してるお客さんがいるから気になってて……それで見てみたら、キョンくんで驚きましたよ」

森さんは、確か古泉の元・同僚だったな
『機関』そのものが無くなって何をしているかと思えばこんなところにいたとは


キョン「お久しぶりですね……」

森「そうね、古泉は元気にしてる?」

キョン「ええ」


俺が知っている森さんではなかった
大分纏っているオーラのようなものが違ったし、何より話しやすい

口調も変わったようだな


この人になら話しても……いいかな


俺は森さんに今回の事をすべて説明した


456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:23:59.27 ID:96EcMC070

俺から話を聞いている森さんはときどき相槌を入れたり、悲しそうな目で見たり、と真剣に俺の話を聞いてくれた


全部話し終えて

森「そう……大変だったわね…」

キョン「これからハルヒに逢いに行きます」

森「頑張ってね、私じゃ応援しか出来ないけど……」

キョン「いけ、俺のほうこそ森さんに話して良かったです」

森「あ、待って。これを、あなたに渡しておくわ」


そう言って森さんが俺に渡してくれたのは、ボイスレコーダーのようなものだ

森「何かの役に立てれば、と思って」


何故こんなものを持ち歩いているのか分からないが、とりあえず礼を言い俺は○○署へと向かった

467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:45:57.53 ID:96EcMC070

今日は古泉がいなかったが昨日古泉がやったように俺も手続きをした


昨日と同じ部屋の前に案内され、頭の中で
あぁ何を話そうか、なんて考えていた


部屋に入ると今日もハルヒが座っていた

だが、明らかに昨日よりも元気が無い


無理もない……こんな何もないところに2日も入れられて元気が出るほうが変だ


キョン「大丈夫か?」

ハルヒ「あんた……会社は?」

キョン「部長が休めって言ってくれたんだ、安心しろ…さぼってはいないから」

ハルヒ「ならいいけど……」

そしてなるべく明るい話を俺はハルヒとした


時々笑ってくれてはいるが、その笑顔もどこかぎこちない

そうこうしているうちに、面会時間は終わってしまった

468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:51:03.12 ID:96EcMC070

それから日に日にハルヒが衰弱していった

星でも落ちそうなほどきらきら輝いていたあの瞳はいまや廃人のようでその目を見るのが悲しかった


ハルヒとの8回目の面会が終わったころである


家について、今後の事を考えている時である
俺の携帯が鳴った


キョン「もしもし」

古泉「僕です」

キョン「あぁ…なんだ?」

古泉「裁判の日が決まりましたので……」

キョン「そうか、で、いつだ?」

古泉「来週の月曜日です」


その日は確か火曜日だった気がする




470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 00:56:21.77 ID:96EcMC070

古泉「明日の面会では、僕も付いていきますので…」

キョン「あぁ、そうしてくれると助かる。俺からじゃうまく説明できない」

古泉「はい、では明日」



そう言って電話を切った……いよいよか、ついに戦う時が来たんだな



次の日の面会時
古泉を見たハルヒは、少し驚いていたがやはりその目の輝きは失われたままであった


ハルヒ「古泉くん…ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって……」

言葉に力が無い
なぜ、なぜ俺はハルヒの目の前にいるのに何もできないんだ!

古泉「いえ……くどいようですが、必ず僕と彼とであなたを助け出して見せます」

ハルヒ「……ありがとう」


その日の面会は終わったが、ハルヒはもはや限界のように感じた

このままじゃ先にハルヒが壊れてしまう


476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 01:09:43.21 ID:96EcMC070

家に帰ってからは祈る時間が増えていった

以前のような楽しかった時間に戻してほしい…と

これ以上弱っていくハルヒを見るのは……もういやだ


裁判の日までの面会では水曜日は面会が出来たのだが、木曜日からハルヒは来なかった


体調不良が原因らしいのだが

いよいよ持って危なくなってきた


だが、明日は大事な裁判だ

ここで――すべて決まるんだ



478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 01:14:13.50 ID:96EcMC070

裁判の日

不安が俺を押しつぶしそうになる――
もし、もし有罪判決で……しかも、死刑だったら?

俺は気が狂ってしまうかもしれない


もう、信じるしかないんだ、ハルヒと古泉を

俺は車に乗って裁判所を目指した




裁判所に着く

内部に入るのは初めてだったが、まさかこんな気持ちで中に入るとは思ってなかった


だが、中に入り俺はもう一つ驚くべきことを見つけてしまった

482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 01:18:53.90 ID:96EcMC070

ハルヒはまだいなかったが、古泉の姿は確認できた
つまり、向かって左側が弁護人の席なのか

ってことは、反対側の右側が検察官ってことになる


検察官に視線をやる

…はて、どこかで見たことのある顔だった


記憶をたどる……が、なかなか思い出せない
少なくとも北高の生徒ではない

確かにどこかで会ってるはずなんだ




俺が思考の渦に巻き込まれているうちにハルヒが現れた

髪はぼさぼさ、服はよれていて、目には生気が感じられない


かつての凛とした美少女の面影はそこにはなかった

493 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 01:34:39.55 ID:96EcMC070

裁判長「それではこれより審議を開始する」

裁判長「検察官。起訴事実を述べよ」

検察官「被告人涼宮ハルヒは8年前の4月中旬頃、朝比奈みくるさん当時20歳と長門有希さん当時19歳をナイフで刺殺しました」


どこかで見たことのあるその弁護人の女は起訴事実を言った

裁判長「被告人、間違いないか?」

ハルヒ「私は……やってません」

裁判長「検察官」


その女は指名され再び立ち喋り出した


検察官「当時、大学2年生だった被告はある異性に好意を抱いていました。そしてその人物を手に入れるため、邪魔だと思われた二人を殺害したものとしています」

古泉「異議ありです」

そこでようやく古泉が発言し始めた

500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 01:44:54.08 ID:96EcMC070

古泉「全て推測の域を出ていません、証拠の提示を求めます」

裁判長「証拠を提出しなさい」


そう言うと、その見覚えのある検察官は何やら資料を配り始めた

検察官「そちらに明記してあるように、凶器が捨ててあった場所のすぐ近くに被害者の返り血を浴びた服が見つかりました」

検察官「それで、その衣服に付着していた髪の毛を鑑定したところ、涼宮ハルヒの毛髪であることが判明しました」

検察官「さらに、その衣服に何点か涼宮ハルヒの指紋も発見されました」


そんな新事実まであったとは……頼む古泉!何とかしてくれ


古泉「異議ありですね、それだけでは証拠能力が低いと考えます」

裁判長「他の証拠はないのか」

検察官「目撃者を発見しました。入廷の許可を申請します」

裁判長「許可する」

そう言って、現われた目撃者とやらに俺は絶句した

古泉も信じられなさそうな顔をしている

現われたのは……  

518 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 01:58:57.57 ID:96EcMC070

現われたのは佐々木だった

俺が中学の時に親しくしていた友人だ

大人になって感じは変わった気もするが、どことなく残っている面影が確実に佐々木だと証明しているようなもんだった

同時に、検察官の正体も分かった


あいつは…橘京子だ

かつてハルヒではなく佐々木が神なんだと言っていた連中のうちの一人だ

そいつらが、今揃ってハルヒを陥れようとしているのか……?


佐々木「8年前のその時僕……失礼、私は被告が丘に二人の遺体を放置しているのを見ました」

橘「これが、こちら側の提示できる証拠のすべてです」

裁判長「弁護人、何かあるか?」

古泉「目撃者についてなんですが、証拠にはならないと思います。すでに時間がかなり経過したことですし彼女が嘘を付いている可能性もあります」

橘「ですが、本当のことを言っている可能性もあります……それに、目撃者は他にもいます」


そう言って橘は何やら紙を取り出し再び配り始めた

その紙には、目撃したという人間のリストが載っていたらしく、全員の顔写真が載っていた

527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 02:07:52.25 ID:96EcMC070

橘「そのリストに載っている方達は全員同じ時間帯に目撃したと言っています。もちろん全員何の関係もない人たちです」


まさかここまで準備されてるとは……

本当に冤罪なのかどうかさえ分からなくなってきた


もし、この裁判の被告人がハルヒじゃなく全く知らない赤の他人だったら俺だって有罪だと思っちまうかもしれない



裁判長「では最後に検察側、弁護側双方からこの事件の刑について」

橘「極めて悪質で、非人道的かつ残虐な犯罪だと思っています」

古泉「今回の事件は、有力な証拠が乏しいと判断しますし、動機についても憶測の話です。無罪を主張します」


裁判長「では、審議を終了する」


そう言って、裁判は終わった

ハルヒは固まったままその場から一歩も動かない

法廷から徐々に人がいなくなり、ハルヒも連れて行かれた


俺も外に出て早速古泉に電話をかけた

536 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 02:15:56.37 ID:96EcMC070

古泉「用件は分かっています…いつもの喫茶店で待っててください」



車に乗り、駅前の喫茶店に入る
見渡したがどうも森さんはいないようだな

10分程して古泉が現れた

古泉「お待たせしてすいません」

キョン「それで……ハルヒはどうなるんだ?」

古泉「この後、論告求刑が行われます。その後に最終的な決定が下るわけです」

キョン「勝てそうなのか……?」

古泉「正直言ってかなり厳しいですね……まさか、目撃者をあそこまで集めてくるとは思いませんでした」

キョン「どうにかならないのか?」

古泉「一番いいのは、涼宮さんのアリバイを証明することなんですが……8年も前の話では難しいでしょうね」

キョン「くそっ……どうするんだよ、このままじゃマジでハルヒが……」

古泉「何とかしましょう、そのために僕はここにいるのです」

キョン「あぁ……ところで、何で佐々木や橘がいたんだ…?」

古泉「それは分かりませんね……、涼宮さんには既に力はないので、単なる偶然かと思いますが」

616 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 10:53:38.82 ID:96EcMC070

キョン「それで……いつになるんだ?」

古泉「まだ分かりません、詳しい事が決まり次第また連絡します」

キョン「そうか、……頼むぞ古泉」

古泉「はい」

キョン「俺はそれまでどうすればいい?ハルヒに逢ってやるしか出来ないのか?」

古泉「それが一番大切ですよ。今一番つらいのはあなたではなく、涼宮さんなのですから」

キョン「……」

古泉「では、そろそろ行きますね」

キョン「あぁ」


そう言い残し古泉は喫茶店を後にした
律儀に、自分の頼んだコーヒー代をテーブルに置いて


俺が落ち込んでどうする
精一杯ハルヒを元気付けないとな

コーヒーを飲みほし、店を出た

619 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:00:29.01 ID:96EcMC070

次の日から面会に行く前に、家で何を話すのか決めてからハルヒに逢いに行った


少ししかない面会の時間でなるべくたくさん話したかったからな

何回か面会のできない日もあった

それでも、毎日毎日ハルヒのところへ向かった

もう会社もクビになっても構わない



それから三カ月ほど経った日のことだ

ハルヒは俺の話題に少しずつ反応を示してくれるまで回復してきていた


キョン「……でな、その時谷口の奴がさ」

ハルヒ「ふぅん。やっぱりあいつは馬鹿ね」

キョン「あぁ、しかも一緒にいた国木田までが――」

看守「面会の時間は終わりです」



悲しそうな眼をしているハルヒに、最後に必ずこう言っていた

623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:08:54.74 ID:96EcMC070

キョン「お前も、俺を信じてくれ」


ハルヒが連れ去られ、俺も部屋から出ると、外に古泉がいた


古泉「決まりました、論告求刑と判決が同時に行われるようです」

キョン「一遍にやるのか?」

古泉「異例です、と言うより明らかにおかしい」

古泉「本来、もっと時間をかけてやるものなのですが、何故か急いでいる様にも思われます」

キョン「よくわからんな……なぜすぐにやってはならんのだ?」

古泉「十分な審議の時間を与えるためですよ、なぜ今回に限ってこんなに早いのか……少し怪しいですね」



昔はこう言った怪しいことやら不思議な事やらにはハルヒの力がどうのこうの言っていたが

今回は違う……ハルヒには力とやらはもうないはずだ


キョン「それで……いつなんだ?」

古泉「3日後です」

キョン「……分かった」

625 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:12:57.29 ID:96EcMC070

古泉「では、3日後に」

軽く会釈をし古泉はいなくなった


ついに……長かったこの戦いも終わりを迎えるんだ

だが、勝てるのか?

こっちの無罪を証明する方法が無い

ハルヒはやってないが、やってないことを証明できないんじゃ何の意味が無い


まさか、殺された二人とも実は未来人や宇宙人でその日より前に帰ったはずだった

そんな事を言ったところで誰も相手にしてくれないだろうよ


覚悟が決まらないまま家に帰った

628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:18:01.37 ID:96EcMC070

言いようのない不安が俺を押しつぶす

ダメだ――このままじゃ勝てない


どうする事も出来ない自分に腹が立つ


いっそ俺がやったと言うか?

いや、それじゃ何の解決にもなるまい


そして、何もできないまま今日を迎えた

傍聴席で腰を下ろすと、すでに古泉も橘もいた

俺の手足はぶるぶる震えている


もし、ハルヒが有罪判決になれば覆せないのだろうか

古泉だって本当は勝てないと分かってるんだろうか


ついに、公判が始まった

635 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:25:00.70 ID:96EcMC070

今一度橘が罪状とやらをつらつらと話している


長過ぎてよくは分からないが、確信を持ってこう言える

全部でっち上げだ、こいつの言ってることは嘘なんだ


橘「――以上のように、今回の犯行は実に自己中心的で残虐的なものと思われます」

橘「一切の酌量の余地なしと見なし被告に」



橘「死刑を求刑します」

目の前が真っ暗になる

被告人席のハルヒはどうだったのか知らないが、俺は絶望感でいっぱいになる

なんて言った……?

死刑???


こんあ訳の分からないでっち上げでハルヒが――死刑?

その後、古泉に発言の機会が設けられた



639 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:30:01.84 ID:96EcMC070

古泉「今回の一連の犯行は全てでっち上げ……冤罪だと主張します」

古泉「まず、目撃者の件なのですがなぜいまさら現われたのでしょうか?本当に見たのであればその当時に問題になっているはずです」

古泉「第二に、動機が不明瞭です。そのような事実があったとは証明されてません」

古泉「証拠不十分として、無罪を主張します」


これで、すべての発言は終わった


後は、裁判長の判決だけになった


頼む……頼む……!!


裁判長「判決を言い渡す」



――

―――


640 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:33:00.36 ID:96EcMC070

そして判決が言い渡された

俺の回想もここまでだ


取り乱すハルヒに裁判長が静かにするように促す


俺は、何も考えられない


最悪だ……一番防ぎたかった未来が現実になっちまった

ハルヒ、もう会えないのか?

今日で終わりなのかよ??


涙が止まらない

裁判長が何を言ってるのか分からない


気がつけば、裁判は終わっていた



644 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:40:09.12 ID:96EcMC070

ハルヒが俺に向かって叫んでいる


ハルヒ「キョン!!いや……死にたくない!!!」

俺もハルヒも泣いている

俺とハルヒの距離は、実際には10メートルも離れてないのに、まるで、地球の裏側にハルヒがいるような絶望感が襲ってきた



そして、ハルヒは連れ去られ俺も外に出た


外に出ると……古泉がいる

いつになく真剣な顔だな


古泉「今日中に控訴の申請をします」

キョン「控……訴?」

古泉「おや、ご存知ないのですか?」

キョン「いや知ってるが」

古泉「最後まで闘いましょう、まさか、このまま涼宮さんを見殺しにする気ですか?」



646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:44:12.95 ID:96EcMC070

涙を拭いて前を見る


そうだ……何をあきらめているんだ

必ず助けると言ったのは俺なのに


キョン「あぁ、そうだな。必ずハルヒを助けるぞ!」

古泉「ええ、頑張りましょう。最後まで」



新たな決意を胸にし、家に帰った

もう何回目だろうな

誰もいない家に『ただいま』と言うのは


ひょっとしたら、全部悪い夢でひょっこり『遅い!』なんて聞こえてくるんじゃないのか

分かっていても、どうしても期待してしまうんだ

そして、その度に悲しくなる

650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 11:49:59.36 ID:96EcMC070

布団に転がる

そういえばまともに食事もとっていないな

昨日体重を測ったらハルヒと新婚生活を満喫していた頃より12キロ痩せていた


ハルヒも、俺も追い詰められている


そうこうしている内に眠気が襲う

そして、いつもこう願うんだ

――夢であってくれ、と

659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:07:02.01 ID:96EcMC070



目覚めても何も変わっていない

だが、ここから変えなければ一生変わらないんだ

朝食に適当にパンをつついていると俺の携帯が鳴っていることに気付く


古泉か?

画面を見たが古泉ではない、知らない番号だ

一応取ってみた


キョン「もしもし?」

???「あぁ……起きてたかい?」

キョン「誰だ?」

???「誰だ、とは随分だな。まさか結婚して忘れてしまったのかい……・くっくっくっ」


こいつは……

662 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:15:15.68 ID:96EcMC070

キョン「佐々木か……?」

佐々木「おや、まさか本当に忘れていたようだね、3か月前に君を見たはずだが」


3か月前、確かにこいつを見たな

法廷でハルヒが遺体を捨てているのを目撃したとか


佐々木「君に重要な話があるんだが……どうだい?」

キョン「なんだ」

佐々木「話がする気があるのなら今日の午後2時に僕らの母校で待っているよ」


そう言い残し佐々木は電話を切る

話……?なんの事だ?


だがどうも行かないといけないような気がして結局、古泉に言うこともなく行くことにした



665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:22:45.59 ID:96EcMC070

ポケットに森さんが渡してくれたボイスレコーダーを入れ、車に乗った

話ってなんの事だ?

ハルヒのことなのか……?

車の中で一人考えていると、かつて俺や佐々木が通っていた中学校だった場所に着いた


――驚いた

俺たちの母校だった中学校は取り壊され、廃墟と化している

佐々木は知っててここにしたのか?

それとも、何も知らないままここにしたのか?



校舎があった場所に倉庫のようなものが建っている



一応覗いてみるか

扉を開けると……そこに佐々木がいた

670 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:31:32.40 ID:96EcMC070

佐々木「やぁ、こうして話すのは久しぶりだな」


ポケットのボイスレコーダーのスイッチを入れた


キョン「何の用だ?」

佐々木「いきなりそのことからかい?くくく……どうも焦ってるようだね」

キョン「……今は冗談に付き合ってるほど余裕が無いんだ」

佐々木「それは失礼した、話と言うのは涼宮さんのことだ」

キョン「!!」

佐々木「僕達が大学生だった頃の話だ、彼女の力が無くなったというのは知ってたかい?」

キョン「ああ」

佐々木「僕も、その事を知らされたんだよ、ある人物に」

キョン「ある人物?」

佐々木「まぁ、それは置いといて、それで、その人物にこう言われた」

佐々木「『涼宮さんが死ねばあなたに力が渡る』と」

キョン「……」


674 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:38:20.40 ID:96EcMC070

佐々木「前にも話したように、僕にはそんな力はっきり言っていらなかったんだ」


そんなこともあったな
俺が高校2年生ぐらいの頃か

佐々木「だから、どうでも良かったんだ。最初はね」

キョン「……?」

佐々木「でも、ある日、君が通っている大学に用事があって行った時の話だ」

佐々木「たまたま、君と涼宮さんがとても楽しそうにしているのを見かけてしまったんだ」

キョン「……」

佐々木「昔は何とも思わなかったのに……なぜか、どうしようもない嫉妬心を感じた」

佐々木「そんな心の変化を、その人物に付け込まれたんだ」

佐々木「『彼女が死ねば彼も君のものにできる』と、」

佐々木「そんな事をするつもりはなかった……けど、何故か次の日にまた君達を見かけたんだ」

佐々木「そこではっきりと分かった。僕は君が好きだったんだと」

キョン「……」



677 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:43:33.17 ID:96EcMC070

佐々木「人間なんて弱いものさ、みるみる涼宮さんの事が憎く感じた」

キョン「じゃぁお前が……?」

佐々木「お察しの通り、一連の事件を起こした」

キョン「何だと」

佐々木「実際、すごくスムーズに事は運んで行ったよ、どういうわけだか彼女の衣服をその人物に用意してもらったり」

佐々木「彼女の毛髪も用意してくれた」



言葉が出ない
佐々木は今まさに罪の自白をしているはずだ

だが、どうして……


佐々木「そして、事件が発覚して現われた目撃者も、この力によるものだと説明されたね」

キョン「本当なのか……全部」

佐々木「ああ」

キョン「何でそれを俺に?」

佐々木「……怖くなってね」

681 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:52:40.16 ID:96EcMC070

キョン「……はぁ?」

佐々木「彼女が捕まったと聞いてから毎日怖かったよ」

佐々木「冷静になれば、僕のせいで彼女は何も悪くないのに捕まったんだから」

佐々木「自殺を考えたこともあったよ」

佐々木「でも、その人物がそれを許してくれなかったんだ」

キョン「……」

佐々木「『せめて、涼宮さんが死ぬまで待ってくれ』と」


それが佐々木の言った全てだった

まさか、こんなことになるなんてな

キョン「なぁ……」

佐々木「なんだい?」

キョン「自首……してくれないか?」

佐々木「……」

キョン「お前も知ってるとは思うが、ハルヒは死刑判決を受けちまったんだ。ここでこうしてる間も震えているんだ」

佐々木「……」

683 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 12:56:56.22 ID:96EcMC070

キョン「それに……」


俺はポケットからボイスレコーダーを取り出した

キョン「お前の発言は全てここに録音されている」

キョン「悪いが、終わりだよ」



佐々木は俺が取り出したボイスレコーダーに驚いている

佐々木「くっくっ……まさか、そこまで用意周到だったとはね」

キョン「そういうことだ、だから自首を……」

佐々木「そうもいかないんだ、すまないが後ろを見てくれないか」


言われるまま振り向くと……

キョン「な……!」


俺の背後には日本では所持を認められていない拳銃を持った橘京子がいた

キョン「どういうことだ?」



688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:00:42.10 ID:96EcMC070

橘「それを、こちらに渡して?」


拳銃ををこちらに突き付けたまま橘が俺に少しずつ近寄ってくる


キョン「断る!」


パーン

乾いた音が響く

橘の拳銃から硝煙が立ち込めている


俺の右足から真っ赤な血が滲みでてきた

キョン「ぐああああ」

橘「大人しく渡してくれれば殺しはしないわ」


さらに近寄ってくる

くそ……絶対に渡してたまるか

697 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:06:01.88 ID:96EcMC070

ボイスレコーダーを懐にしまう

絶対に渡さねぇ


パーン

橘が2発目を俺の左足に命中させる

ついに俺は倒れこんでしまった


キョン「くそ……なんでハルヒが死ななきゃならないんだ!」

痛みをこらえて必死で橘に話しかける
もしかしたら、誰か助けにきてくれるかもしれない

橘「それが世界のためだから」

キョン「ふざけんな……」

橘「分かったらもう抵抗は止め―――」


バーーーーン

俺が橘にとどめを刺されると覚悟した時

一台の車が突然現れた

718 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:13:41.20 ID:96EcMC070

その車はものすごいドライブテクニック橘と俺の間に入り込んだ

すると、車が止まらないうちに後部座席から誰かが俺を抱き抱え車の中に入れた


そして、俺が乗ったことを確認したのか、猛スピードで倉庫から車は出た


誰だ――?

運転席に目をやる


キョン「あなたは……?」


その人物は、俺が高校生のころに何回か会ったことのある――新川さんだった

そして、俺を後部座席に乗せてくれたのは森さんだった


キョン「なんで?」

新川「話は後です、まずは病院に向かいましょう」

森「古泉にはすでに連絡したから、良く頑張ったわね」

キョン「よく俺がここにいるって分かりましたね?古泉にも言ってなかったのに」

森「あのボイスレコーダーには発信機がついてるのよ、機関にいた頃に渡されたものだったけど、少しいじったの」

736 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:22:35.42 ID:96EcMC070

病院に着くと、既に古泉が待っていた

古泉「大丈夫ですか?」

キョン「あぁ、それより古泉。ついに、ついに真犯人が分かったぞ」

古泉「真犯人ですか?」

キョン「これを……」


古泉にボイスレコーダーを渡す

古泉「では、聞いておきます。あなたは治療のほうを」

キョン「頼んだぞ」


病院で手当てを受ける
幸い傷は大して深くなく、次第に歩けるようになるそうだ

改めて新川さんと森さんに感謝しなきゃな


二人が来なきゃ俺もハルヒも死んでいたんだ


治療を終え、車いすに乗り外に出ると古泉が待っていた

745 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:29:57.01 ID:96EcMC070

キョン「どうだった?」

古泉「やりましたね……これなら、大丈夫でしょう」

キョン「てことは……ハルヒは」

古泉「助かります、ですが代わりに佐々木さんが捕まってしまいますが」



少し戸惑う
そうか、ハルヒは確かに助かるな

だが佐々木は?


キョン「でも、あいつがやったことなんだ……罪は償ってもらう」

キョン「何より、あいつも自首をしようとしていた。まぁ橘のせいで出来ないらしいんだが」

古泉「そうでしたか」

キョン「じゃぁ、そろそろ行こうか」

古泉「ええ、一刻も早く涼宮さんを助けに行きましょう」

キョン「あ!」

古泉「どうなさいました?」

758 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:37:00.87 ID:96EcMC070

キョン「車……置いてきちまったな」

古泉「何言ってるんですか、どうせその足では運転は無理でしょう?」

古泉「車なら、新川さんが連れて行ってくださるそうです」

キョン「そうか、恩に着るよ」


ふと、笑みがこぼれる
まだ終わっていないが、少し安堵した

やっと、やっとハルヒに逢えるんだ

ガラス越しなんかじゃなく、目の前にハルヒを感じることができる


安堵して、涙もこぼれてきた

長かった……本当に、長かった



777 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:47:44.15 ID:96EcMC070

○○署に着く

ここにはすでにハルヒはいない

判決が出てから拘置所にいるらしい


古泉に全てを任せた俺は車内で少し新川さんと話をしている

キョン「今までどうしてたんですか?」

新川「どう、とは?」

キョン「機関がなくなって、その後はどのように?」

新川「こじんまりとしたバーを経営してます」

キョン「そうだったんですか……今度行ってもいいですか?」

新川「はい、お待ちしております」

781 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 13:54:51.37 ID:96EcMC070

そんな他愛もない話をしていると、古泉が○○署から出てきた

そんな何でももない話なんかするのも久しぶりだ



次の目的地に向かっている途中で、俺は寝てしまった





――――

古泉「…さん、…さん、起きてください」

キョン「ん……?」


古泉に起こされると、すでに辺りは真っ暗だった


キョン「ここは……?」

古泉「あなたの家です」

キョン「!…ハ、ハルヒは?」

古泉「流石に、今日いきなり釈放とはいきませんでしたが、大丈夫です」


788 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:03:15.72 ID:96EcMC070

キョン「そうか、色々とありがとうな」

古泉「いえ、こちらこそ最後までこんなことしか出来ずにすいません」

キョン「新川さんと森さんもありがとうございました」

新川「いえ」

森「頑張ってね、キョンくん」


車から降り、家に入った


不自由な足を引きずり布団に入る

今日は本当に疲れた

――そして、やっと終わったんだ


先ほどまで車で寝ていたというのにすぐに眠りに落ちてしまった

795 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:12:31.99 ID:96EcMC070

数日後

俺の脚が完全とは言えないが回復したあたりのことだ


古泉から電話がかかってきた


古泉「明日、控訴審があります。そこでようやく涼宮さんの無実を証明できます」

キョン「やっとか、分かった」

古泉「早ければ、明日中にも釈放されるでしょう」

キョン「分かった」


ついに、終わりが来るんだ

あと、ちょっとだ

801 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:21:47.75 ID:96EcMC070

法廷内に入ると何やら違和感を感じた

橘の姿が無い

代わりに立っている検察官は俺には全く分からない男だった


程なくして、審議が始まった

内容は古泉が新証拠となったボイスレコーダーを武器に雄弁をふるっている


新しく入った検察官は何も反論できぬまま、裁判は終わった

後は判決だけだ


素人の俺でもわかる……これは勝ったな、と

813 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:29:31.96 ID:96EcMC070

裁判の後、古泉に一言「お疲れ」

とだけ言った


車(これも、新川さんが持ってきてくれたのだが)に乗って家に帰ると、家の前で誰かが経っているのに気付いた


キョン「……佐々木?」

佐々木「やぁキョン」


何をしに来たのだろうか……



佐々木「おそらく、もうすぐ僕は逮捕されるだろうからね」

佐々木「お別れを言いに来たんだ」

キョン「は?」

佐々木「最初に、すまなかった」


深々と頭を下げる佐々木


佐々木「罪は償うよ、おそらく僕も死刑になってしまうんだろうけどね」

822 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:33:35.45 ID:96EcMC070

キョン「……」


ここで佐々木が出てこなければ、どんなに楽だっただろうか

確かに今回の一連の事件はほぼ佐々木のせいではある

だが、どんなに佐々木が悪いとは言っても……佐々木が捕まってしまうのもうれしくはない

考えたくなかったことを無理やりにでも考えさせられてしまう



罪を償ってほしいのも事実

捕まってほしくないのも事実

ハルヒを助けたいのも事実


俺にとっての真実は……・なんなんだ?

838 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:41:47.96 ID:96EcMC070

ここまで来て

やっとここまで来たのに


佐々木「本当に、本当にすまなかった」

佐々木が泣いていることに気付いた


佐々木「僕が、バカだったんだ!本当に……」


今まで見たことのない佐々木の泣き顔に俺の心はますます揺らぐ




俺は何をするべきなんだ?どうすればいいんだ?


何も出来ずに立ちつくしているとどこからともなくパトカーのサイレンの音が聞こえてきた


キョン「まさかお前……」

845 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:46:31.29 ID:96EcMC070

佐々木「ああ、自分で呼んだんだ」

キョン「最初から自首する気だったのか?」

佐々木「もはや出頭になってしまってはいると思うけどね……キョン?」

キョン「……?」

佐々木「最後に、わがままかもしれないけど、抱きしめてくれないか?」

キョン「!!」



そして俺は佐々木を強く抱きしめた

佐々木「……ありがとう、キョン」

キョン「……・」

佐々木「泣いているのかい?」

キョン「すまない……」

佐々木「君が泣くことはないさ、涼宮さんと幸せにね」


そう言うと佐々木は俺から離れ、パトカーのほうへ歩いて行った

864 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 14:53:28.87 ID:96EcMC070

そのまま佐々木は逮捕された

俺は本当にこれでよかったのだろうか?


分からないままパトカーは行ってしまった


家に入り、古泉に電話した



古泉「どうしました?」

キョン「ちょっと、な」

古泉「僕でよければ相談にのりますよ」

キョン「あぁ・・・実はな、さっき佐々木に逢ったんだ」

キョン「俺に謝って、それからパトカーに乗って行っちまった」

古泉「なんと」

キョン「俺は、これでよかったんだよな・・・・・・?」

古泉「・・・・・・それは、あなたが決めることですよ」

キョン「やはり、そうだよな・・・」

882 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:03:44.81 ID:96EcMC070

数日後

俺は拘置所に向かっていた


既に裁判でハルヒの無罪が確定し、今日が釈放の日だった

佐々木はどうなってしまうのだろうか?


古泉「あなたには、涼宮さんを幸せにする義務があると思いませんか?」

古泉「それに、例え彼女がやったことに同情の余地があったとしても、肯定はできません、絶対に」

古泉「何の関係もない二人が被害にあったのですから」

裁判が終わり、古泉にこう言われやっと俺は吹っ切れることができた


いくら佐々木が気になったって、結局それは俺の一方的なシンパシーにすぎない

朝比奈さんと長門はもう帰って来ないんだ



古泉「いつまでも、お幸せに」

これが最後に交わした古泉との会話だ


890 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:08:42.66 ID:96EcMC070

拘置所に着く

釈放予定時間の少し前に着いた


・・・・・・まだか?

・・・・・・・・・まだか?


今まであまり待ったことのなかったからか、1分1秒が長く感じる


はやく

はやく!!


そして、・・・・・・ついに門が開いた




896 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:12:03.24 ID:96EcMC070

キョン「ハルヒーーーー!!!」


叫んだ

門番のおっちゃんが、驚いた顔で俺を見ている


気にするものか


走る

ハルヒのもとへ・・・・・・一刻も早く!!


距離にして約20メートルほどか

ついに、ハルヒを・・・・・・捕まえた

911 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:17:33.07 ID:96EcMC070

ハルヒ「ちょっとキョン?いきなり抱きつかないでよ・・・」


なんと言われたって離すものか

ハルヒの抵抗はあってないようなものだった


キョン「今まで・・・本当にすまなかった」

ハルヒ「何言ってんのよ、あんたが助けてくれたんじゃない」

キョン「俺一人の力じゃないさ・・・・・・良かった、本当に」

ハルヒ「・・・・・・」

キョン「約束するよ・・・・・・これから一生お前を守ると」

ハルヒ「・・・・・・ありがとう、キョン」



こうして、今回の一連の騒動は終わった

922 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:22:57.34 ID:96EcMC070

次の日から職場に復帰した

部長の計らいのおかげで、減給にはなったがクビにはならなかった

改めて部長に感謝を告げると

部長「大切にしろよ?」


そう言って笑って答えてくれた


家に帰るとハルヒがいつものように夕飯を準備してくれていた

ハルヒ「今日は早かったじゃない」

キョン「まあ、こんな日もあるさ」

ハルヒ「それじゃぁ、夕飯にしましょ?」

キョン「ああ、ありがとう」

ハルヒ「今日は結構頑張ったんだから、味わって食べなさいよ」


ようやく戻ってこれたんだ

俺の望んでいた幸せが・・・・・・ここにある



937 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:30:28.15 ID:96EcMC070

一連の騒動の数年後

俺はとある人物の墓の前に立っていた


キョン「・・・・・・」

何も言わずに手を合わせる


そして、一言だけ「すまなかった」と呟いた


ハルヒ「そろそろ行くわよ〜」

遠くでハルヒが呼んでいる

ハルヒと手を繋いでこっちを見ているのは俺とハルヒの子供だ


キョン「すまんな」

子供「何してたのぉ?」

キョン「ん、昔の友達に逢いに来たんだ」

子供「昔のお友達?」

キョン「あぁ・・・・・」


947 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:36:01.34 ID:96EcMC070

ハルヒ「早く行きましょ?あそこの店人気あって予約とるのも大変だったんだから」

キョン「そうだったな、こいつの誕生日祝いに行くんだよな」


子供を抱きかかえて、そう言う俺に

ハルヒ「何言ってんのよ、あんたの昇進祝いも兼ねてるって言ったじゃない!」

キョン「そうだったな、すまんすまん」

子供「パパすご〜い」

キョン「はは、ありがとうな」


そうして、俺たちは車に乗った


あいつの墓で俺は誓った


一生ハルヒを守ること、ハルヒの笑顔を消さぬこと・・・・・・


死んであいつに逢いに行くまで、な


    ―完―

964 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/02/11(水) 15:38:07.12 ID:96EcMC070

終わりです

長い間ありがとうございました


皆さんのご指摘通り、こんな拙い文ですいませんでした

SSは何回か書いたんですがどうも自分には向いてないようですね

最後までお付き合いいただきありがとうございました



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