前原圭一のメタボリック症候群


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 22:40:51.27 ID:l+xt0wgq0

圭一「はあはあ!」

圭一「はあはあはあ!」

圭一「ぶふふん。最近やたらと疲れやすいな……」

圭一「息切れするし。心なしか、体が前より重くなってきたような気がする」

圭一「正月からこっち家の中でゴロゴロして食ってばかりだったから。太ったのかな」

圭一「1ヶ月ぶりに鏡でも見てみるか」

圭一「ぶひひんひひん ぶふふふ〜ん」

圭一「………」

圭一「な、なんじゃこりゃ!? ひでぶッ!!」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 22:44:55.82 ID:l+xt0wgq0

圭一「こ、この鏡、ゆがんでるんじゃないよな?」

圭一「とっくに正月は終わったってのに、鏡餅みたいな体系をした男がここに」

圭一「これが、俺……!?」

圭一「どど、どうしよう。冬休みも終わって今日から学校だってのに」

圭一「レナが待ってるから、もう登校しなけりゃいけないのに!」

圭一「俺が年末年始を怠惰にすごしたせいで関脇顔負けのアンコ型体系になったって知られたら……!」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 22:50:17.90 ID:l+xt0wgq0

レナ「圭一くん、おっはよ〜!」
圭一「………」
レナ「あれ、圭一くん、今日はなんだか元気ないね。寝不足かな、かな」
圭一「……いや、そういうわけじゃなくて」
レナ「あ〜、圭一くんったらアブドーラ・ブッチャーもビックリなくらい膨らんでる」

レナ「さては休み中はずっと家の中で食べて寝てばっかりだったんでしょ!」
圭一「……まあ、そうなんだが……」
レナ「ダメだよ。そんなんじゃ健康によくないよ。食べるのもいいけど、適度に運動もしないと!」
圭一「いや、まあ、おっしゃるとおりなんだが」

圭一「レナ、お前も、その……太ってるじゃないか」
レナ「……えっ? そ、そうかな。……確かに年末から比べたら太っちゃった……かもしれないけど……はぅ」
圭一「なんていうか、ボーリング玉みたいだぞ」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 22:56:40.01 ID:l+xt0wgq0

レナ「もう圭一くんったら大げさなんだから。人間がボーリング玉になれるわけないじゃない」
圭一「いや、今のは物のたとえで、レナがボーリング玉その物になったと言ったわけじゃ」

圭一「そ、そんなことはどうでもいいんだよ。確かに太った。俺は太った」

圭一「でもそれはレナも同じことじゃないか」
レナ「ひどい、圭一くん。女の子にそんなこと言うなんて……」
圭一「あ、わ、悪い……。つい」


レナ「うぅ、やっぱりダイエットした方がいいかな」
圭一「そうだな。冬の間だったから寒くて動く気もしなくて冬眠モードだったから、運動不足になっちまったぜ」

圭一「魅音や沙都子たちにはからかわれるだろうが、これは新春早々部活で汗を流して脂肪を落とすしかないようだ」
レナ「そうだね。ふたりで一緒にがんばって痩せようね!」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:01:50.43 ID:l+xt0wgq0

圭一「あ〜、憂鬱だな。こんな体系じゃ、しばらくは罰ゲーム常連になっちまいそうだぜ」
レナ「屋内ゲームならまだ希望もあるけど、屋外でのゾンビ鬼とかだと確実に負けちゃうね」
圭一「転がった方が早そうだもんな、俺たち」

圭一「それにしても、今日は魅音のやつ遅いな。新学期1日目だってのに」
レナ「休みボケで寝坊でもしちゃったのかな、かな」

 どすどすどす

圭一「ん? なんだこの地響きは。地震……じゃないみたいだけど」
レナ「なんだろうね。遠くから振動が伝わってくるような重低音だよ、だよ」

 どすどすどす どすどすどす

圭一「どんどん近づいてくるぞ?」

 どすどすどす どすどすどす どすどすどす

魅音「はあはあはあ! ふひー! ふひー! はあはあはあ!」
圭一「肉ダンゴが走ってくる!?」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:06:04.11 ID:l+xt0wgq0

魅音「お、おお、お待たせふたりとも! はあはあはあ! ぜひぃぜひぃ!」
圭一「み、みおん……お前、魅音、だよな……?」
魅音「うぇっうぇっひーひー。つ、つかれた………のどが乾いた。水分補給しないと」

 ごきゅっ ごきゅっ

魅音「ぶふぁ! ファンタ最高!」
レナ「……魅ぃちゃん……?」

魅音「いや〜、ごめんね待たせて! 冬休み明けだってのに、いきなり遅刻ギリギリになっちゃったね。たはは」
圭一「そ、それはいいんだが、魅音お前、なんだか、その……ちょっと成長した?」
レナ「横に」
魅音「はあ? なにが? おじさんの話?」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:10:40.73 ID:l+xt0wgq0

魅音「なによぉ。よく見たらふたりともすごい体形になってるじゃん!」

魅音「きっと外にも出ずに、家の中で食っちゃねしてたんでしょ?」
圭一「その通りだけどさ……なんて言うか、お前には言われたくねえよ」
魅音「ふぇ? 何で?」
圭一「お前、自分の体形がどうなってるか確認してるか?」
レナ「二の腕とか。丸太かと思ったよ」

魅音「う〜ん、ちょっと太っちゃったかな?」

魅音「自分でもね、腕とか足に余計な肉がついたかな?って思ってたんだけどさ」

魅音「もうね。年末から三が日にかけて、ずっと親類縁者が集まっての宴会続きでさ。もう食べてばっかだったから」
圭一「すごいことになってるぞお前」
レナ「肉に埋もれて首がなくなってるよ」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:14:56.18 ID:l+xt0wgq0

魅音「あはは! そんなわけないじゃん! 確かに近頃鏡を見てなかったけど、たった2週間でそこまで太るわけないじゃん!」
圭一「俺たちもたった2週間で養豚場のブタみたいになっちまったんだけどな」
レナ「今朝からスカートが苦しくて苦しくて」

魅音「そういえばおじさんも、今朝から制服がピチピチで。服が縮んだのかなと思ってたけど」
圭一「お前が膨張したんだよ」
魅音「4Lサイズのコートでごまかしてるけど、けっこう服が苦しいんだ」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:20:20.82 ID:l+xt0wgq0

 〜雛見沢分校 ・ 廊下〜

圭一「ぶひぃぶひぃ……よ、ようやく学校までたどりつけた……」
レナ「はあはあはあ。冬だっていうのに、はあはあ、汗でベタベタだよ、だよ!」
魅音「ひぃひぃ……つかれた。今日はもう一日寝ていたい気分だよ」

圭一「それはともかく。早く教室に入ろうぜ。知恵先生が来るぞ」
レナ「そ、そうだね。もうクタクタ。早く椅子に座りたいよ」
魅音「今日くらいは沙都子のトラップも無ければありがたいんだけど」

 がらがら

圭一「………」

圭一「どうやら今日は沙都子のトラップは仕掛けられていないようだな」
レナ「よかった。これで平穏無事に休めるね」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:24:58.54 ID:l+xt0wgq0

岡村「ま、前原さんに竜宮さん、委員長も……どうしたんですか、その体形は」
富田「ボンレスハムかビア樽が現れたのかと思いましたよ」
圭一「くそ、やっぱ好奇の目で見られている……!」
魅音「富田岡村、それ以上言ったら醤油かけて頭から食っちまうよ」

 カランカラン

圭一「あ、始業のベルの音だ。席につこうぜ」
魅音「みんな着席着席! 知恵先生が来るよ!」
レナ「あれ? 沙都子ちゃんに梨花ちゃんがまだ来ていないみたいだね」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:30:53.98 ID:l+xt0wgq0

知恵「あけましておめでとうございます、皆さん。怪我もなく楽しい冬休みが送れましたか?」

知恵「先生はとても充実した年末年始でしたよ」

知恵「この休みを利用してインドへ行って本場のインドカリーを1日5食も食べて堪能してきたんですから!」

知恵「ああ、まさにカレーの神秘! この世でもっとも尊い食べ物であるカレーにどっぷり浸透することのできた至福の休暇でした」

知恵「おかげでカレーが飲み物であるという新事実も発見することができました」

レナ「……なんか知恵先生、休み前と比べて丸太みたいになってない?」
圭一「針でついたら中からカレーがあふれてくるんじゃないか?」
魅音「カレーの脂分でテカテカしてるし……」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:36:00.24 ID:l+xt0wgq0

知恵「古手さんと北条さんは体調不良のため、診療所へ寄ってから登校するという連絡がありましたが、他の皆さんはそろっていますね」

知恵「また元気な皆さんと新学期にお会いできて先生うれしいですよ」

圭一「クラスの半分以上が見るも無残なメタボ体形になってるけどな」
レナ「すごいね。やっぱり冬休み中はみんな家でゴロゴロしてたんだね」
魅音「壮観だね。白い湯気が天井付近をただよう水蒸気まみれの教室なんて初めて見たわ」
圭一「知恵先生なんて加湿器みたいに水蒸気を発散させてるからな」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:40:57.30 ID:l+xt0wgq0

 〜入江診療所〜

沙都子「お正月のころから体がだるいんですわ」
入江「体がだるい、ですか。ふたりとも熱はないので風邪ではないと思うのですが」

入江「体の節々が痛むということはありませんか?」
沙都子「いいえ、ありませんわ。のども鼻も痛くないですわ」
梨花「食欲も旺盛にありますです。調子は悪くないですよ」
沙都子「そうなんですの。体のどこも悪くないのに、やたらと体が重いんですの」

沙都子「ねえ監督。これは、なにかの病気なんですの?」
入江「……そうですね……思い当たる節がないわけではないのですが……」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:46:41.11 ID:l+xt0wgq0

入江「たとえば、おふたりはこの頃服がきつくなったと感じることはありませんか?」
梨花「すごいです入江。よく分かりましたのです。その通りなのですよ」
沙都子「確かに監督のおっしゃる通り、最近やたらと服がきつくなってきたようなんですの」

沙都子「これは成長期なんですの?」
入江「まあ成長期と言えば成長期……」

梨花「入江。そう言葉を濁さなくても良いのですよ」

梨花「言うべきことがあれば、包み隠さず教えてほしいのです」
沙都子「そうですわ。わたくしと監督の仲じゃありませんの。病気を告げられるよりも隠し事をされていることの方が嫌ですわ」
入江「梨花さん。沙都子さん」

入江「分かりました。そこまでおっしゃられるのなら、はっきり言わせていただきましょう!」
梨花「お願いするのですよ、入江」
入江「肥満です」

梨花「………」
沙都子「………」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:51:36.55 ID:l+xt0wgq0

 〜放課後〜

圭一「………」
レナ「………」
魅音「………」
梨花「………」
沙都子「………」

魅音「放課後だけどさ。どうする? 部活、やる?」
圭一「そうだな。なんか新年早々ものすごいショッキングな出来事が立て続けに起こったけど、部活はやっておきたいな」

レナ「朝はあまり深く考えずに登校してきたけど、学校にきてよくよく考えたら酷い状況なんだよね」
梨花「みぃ。放課後に机を寄せ合って菓子パンを食べるぼくたちは、まるで相撲部屋でちゃんこ鍋をつついているお相撲さんたちみたいなのです」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/17(土) 23:56:18.94 ID:l+xt0wgq0

岡村「あ、あの、すいません」
圭一「富田くんに岡村くんじゃないか。どうしたんだよ」
富田「えっと、そこにあるサッカーボールをとりたいんですけど、どいてもらっていいですか?」
圭一「あ、ああ。ごめんごめん。よいしょっと」

 がたがた

魅音「いたたたたた! ちょ、ちょっと圭ちゃん机おさないでよ! おじさんのおなかが圧迫されて苦しいよ!」
圭一「お前スペースとりすぎなんだよ。もっとそっち寄れよ!」
魅音「おじさんは壁スレスレまで下がってるよ! これ以上はあいててててて! 出る! おなかの中身が出る! ぎゅってしないで!」
岡村「せ、せまい〜!」
圭一「いてててて! ひぃ、お、岡村くん押すなよ! み、みみ、みぞおちが机の天板に……げえっ!」

梨花「教室の隅にいるはずなのに、ぼくたちだけで教室の4分の1を占領しているのです」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:00:34.36 ID:GSuDihMh0

レナ「いけないよ、こんなの!」
沙都子「いけないって、なにがですの?」
レナ「体脂肪だよ! 今の私たちの体形を互いに見てみてよ。明からにおかしいでしょ?」
圭一「リックドムが5体並んで座ってるようなものだもんな」

レナ「ダイエットだよ! 太りすぎは健康によくないからね。ダイエットしようよ、みんなで!」
沙都子「そうですわね。こんな異形の体つきでは、細やかなトラップワークはできませんですし」
魅音「それじゃ、今日の部活はダイエット方面のチョイスだね」
圭一「ああ。てっとり早くやせられる内容でたのむぜ!」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:05:49.36 ID:GSuDihMh0

魅音「それじゃ、まずは腹筋勝負だよ!」

魅音「ルールはシンプル。1回でも多く腹筋をできた人が勝利。これでいこう!」
圭一「ああ、いいぜ」

魅音「みんな、スタンバイはできたかな?」
レナ「足の上に重りをのせて、と。レナはOKだよ」
沙都子「みなさん準備ができたようですわね」

魅音「よし! それじゃ、レディー! ゴー!」

魅音「………」  圭一「………」  レナ「………」  梨花「………」  沙都子「………」

魅音「ふんっ! はっ!」
圭一「そおい!」
レナ「うーん!」
梨花「ぷふぁぁっ!」
沙都子「ふぶひぃん!」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:10:17.21 ID:GSuDihMh0

魅音「ふぉぼっふん!」
圭一「えるめす!」
レナ「おもちかえり!」
梨花「はひんぶるわっしゅ!」
沙都子「ばるばろっさ!」

魅音「はひぃ! はひぃ! はひぃぃぃ!」
レナ「も、もう、だめ……限界……」
圭一「き、奇遇だな。俺もだ……」
梨花「お、おなかが……割れそうなのです……」
沙都子「け、けっきょく、皆さん何回体を起こせられましたの?」

魅音「0回」  圭一「0回」  レナ「0回」  梨花「0回」  沙都子「0回」

魅音「………」  圭一「………」  レナ「………」  梨花「………」  沙都子「………」

魅音「……いきなり腹筋はハードルが高かったみたいだね」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:15:40.05 ID:GSuDihMh0

魅音「次はスクワットだよ! スクワットなら何回かできるっしょ!」

魅音「そんじゃ各自、足を曲げて深く座って、背筋は伸ばしてね!」
レナ「レナは準備OKだよ」
梨花「教室の中で5人が一列に並んで中腰になってるのって、なんか不気味なのです」

魅音「よしっ、じゃあいくよ! スクワット勝負、レディー! ゴー!」

魅音「せいやっ!」
圭一「よいさっ!」
レナ「うーんうーん!」
梨花「はにゅう!」
沙都子「にーにー!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:20:12.30 ID:GSuDihMh0

魅音「はひんはひひぃん!」
圭一「おんどぅるどぅ!」
レナ「へっへいや!」
梨花「たかのしね!」
沙都子「かぼちゃしょうめつ!」

魅音「ぶふぁあああ! はあはあはあ!」

 がらがらがら

富田「WAWAWAわすれも……うはんッ!?」

富田「な、なにこの光景!? チンプレーコウプレー!?」

富田「教室に忘れた弁当箱を取りに戻ってみたら委員長や前原さんたちが一列にならんで雲竜型のポーズで土俵入り待ったなし状態!?」

富田「相撲部!?」

魅音「………」

魅音「………うえ……ひぃぃん………」
圭一「泣くな魅音。泣きたいのは俺たちも同じだ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:25:35.98 ID:GSuDihMh0

魅音「もうやだぁ! わたし帰るぅ!」
レナ「待ってよ魅ぃちゃん! スカートの留め具がはずれてるよ! 肉圧で!」

 がらがら

圭一「あー、魅音のやつだいぶこたえてたみたいだな」
梨花「魅ぃは打たれ弱いですから」
沙都子「泣きたいのはわたくしたちもですわよ」

沙都子「診療所で監督に、このままでは小児性糖尿病になってしまうなんて言われてしまったんですのよ」
梨花「みぃ。ぼくと沙都子と羽入が3人並べばダンゴ三兄弟なのですよ」
圭一「ダンゴ三兄弟? 何だそれ」
梨花「みぃ。串に刺さった丸い兄弟たちのことなのですよ」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:29:11.13 ID:GSuDihMh0

羽入「り、梨花! 大変なのです!」
梨花「羽入!」

圭一「あれ、羽入は今日は用事があって休みなんじゃなかったのか?」
羽入「あうあう。その用事が済んだのでやってきたのですよ!」

羽入「とにかく、梨花! わかったのですよ!」
梨花「本当!?」
圭一「なんの話だ?」

羽入「僕たちがいくら怠惰な生活を送っていたとはいえ、こんなに急激に肥大化するなんておかしいのです」

羽入「何か原因があるはずだと思って、調べていたのです!」
梨花「それで、私たちの肥満化減少の原因が判明したのね!?」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:35:54.95 ID:GSuDihMh0

羽入「この古文書なのです!」
梨花「ずいぶん古い本ね。何が書いてあるの?」
羽入「これは今をさかのぼること数百年前、江戸時代のことが記された古文書なのです」

羽入「時は天保年間。日本で大規模な飢饉が起こっていたときのことなのです」

羽入「当時鬼ヶ淵と呼ばれていた雛見沢村も、土地は枯れ、水も干上がり、酷い食糧難に瀕していたのです」

羽入「それを見かねた神さま、つまりオヤシロ様が村人たちの餓死を食い止めるべく、栄養価に非常に優れた食料を作って村人たちに配ったのです」

羽入「そのおかげでなんとか村は滅亡を免れたという話が書いてるのです」
梨花「で、それが何なの?」
羽入「ようするに、そのオヤシロ様の作ったありがたい栄養満点な食料が、現代によみがえったのです!」

羽入「あうあう!」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:42:40.41 ID:GSuDihMh0

梨花「で、その栄養満点な食料ってなに?」
羽入「はい。見た目はごく普通のお餅なのです。しかしその栄養価はお餅とは比べ物にならないくらい高いのですよ」

羽入「何せ、それ1つで人間が30日活動できる栄養を含んでいるのですから!」
梨花「………それを誤って私たちが食べてしまったということなのよね?」
羽入「おかげで僕もこの通り、へそ出しファッションを余儀なくされる体形になってしまったのですよ」

羽入「去年の末に部活メンバーたちで集まって、楽しく鍋をしましたよね?」

羽入「その時鍋に入れられていたお餅が、そのオヤシロ様の作った食料だったのです! あう」
梨花「なんだってそんな危険な食料が、たかが学生の鍋パーティーの土鍋の中に入っちゃったのよ!? おかしいでしょ!?」
羽入「祭具殿の奥からお餅っぽい物が出てきたので、捨てるのももったいないからと思い鍋の食材に加えたのですが……まさかこんな事になるなんて。迂闊だったのです」
梨花「………」

梨花「ようするに、あんたが原因なわけね」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:47:15.04 ID:GSuDihMh0

 〜昭和58年12月31日 入江診療所〜

詩音「悟史くん。結局、今日も目覚めませんでしたね」

詩音「せっかくおソバとお餅を持ってきたのに。ちょっぴり残念です」
悟史「………」
詩音「でも、きっと来年こそは、昭和59年こそは、目覚めてくれますよね? ですよね?」
悟史「………」

詩音「そうだ。せっかくですし。このおソバとお餅を悟史くんに食べさせてあげますね!」

詩音「監督や看護婦さんたちには内緒ですよ?」

詩音「はい、あーん」
悟史「むがっ」

詩音「悟史くん、おしいですか?」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:50:49.60 ID:GSuDihMh0

 〜昭和59年1月8日 園崎家本家〜

詩音「おねえぇぇ! 止めないで!」
魅音「なにやってるのよあんたは! ちょっと太ったくらいで死ぬなんて大げさな!」
詩音「ぅええぇぇぇん! もうダメ、終わりよぉ!」

詩音「年末はずっとお掃除したりお料理したして、年始はエンジェルモートでバイトしてたのに!」

詩音「なんで!? 朝おきたらこんな超人ハルクみたいな体形になってるの!? どうして!?」

詩音「終わりよ! こんな姿もしも悟史くんに見られたりしたら、私の中の世界が終焉を迎えてしまうもの!」

詩音「ひぃぃん! 死なせてぇ!」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 00:56:46.99 ID:GSuDihMh0

詩音「何がいけなかったのよ!? 私はなにも悪いことしてないのに!」
魅音「いいから銃はおろして!」

 ジリリン ジリリン

魅音「こんな時に電話なんて……!」

魅音「いい、詩音。絶対にはやまった真似しちゃダメだよ。絶対に解決策はあるから!」
詩音「おねえが太ったから双子の私まで一緒に太っちゃったんだ! おねえのせいだ!」
魅音「違うよ! 私だって知らないよ!」
詩音「きひぃぃぃん! ひわぁぁぁん!」
魅音「とにかく、ここでおとなしく待ってるんだよ! いいね!」

魅音「はい、もしもし!?」
レナ『もしもし、魅ぃちゃん!?』
魅音「レナ? どうしたの、こんな時間に。今立て込んでるから、急ぎの用じゃないなら後にしてもらえる?」
レナ『魅ぃちゃん! 謎は全てとけた!』

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:04:25.46 ID:GSuDihMh0

 〜雛見沢分校 ・ 教室〜

梨花「というわけなのです。全てはオヤシロ様の厄介アイテムの仕業なのです」
沙都子「まったく。とんだ災難ですわ」
魅音「私たちが突然、不自然に肥え太った原因は分かったんだけどさ。なんでこんな時間に学校に呼ばれたの? もう夜の8時だよ」
梨花「責任をとるべき者がここに逆さ磔になっているからですよ。にぱー☆」
羽入「あうあうあう……あ、頭に血がのぼって……auauau……」

レナ「さ、できたよ! たんと食べてね!」

 どん

詩音「レナさん、その土鍋はなんです? おいしそうな香りがしていますが」
圭一「何だ詩音きいてなかったのかよ。今日の夕飯だよ」
詩音「せっかくですが、私は晩御飯なんて気分じゃありませんので。辞退させていただきますね」
沙都子「まあそう言わず。これを食べなきゃ、元の体形には戻れませんわよ」
詩音「え?」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:11:12.49 ID:GSuDihMh0

梨花「この鍋には、年末に食べた物と同じくオヤシロ様作のお餅が入っているのですよ」
沙都子「このお餅は、食べることによって痩せることのできる不思議なお餅だそうですわ」
詩音「食べて、痩せられる……?」
圭一「そうさ。今の俺たちにぴったりの食材だろ?」

魅音「痩せようと思ったら体を動かして脂肪を燃焼させる。それしかないと思っていたけど、まさか食べるだけで痩せられる食料があるなんてね」
レナ「さすがはオヤシロ様ってところだね、だね!」
圭一「さて、話がついたところで、早速食べようぜ! 俺、晩御飯ぬいてきてるからもう腹ペコだぜ!」
沙都子「わたくしもですわよ!」

詩音「よかった。希望はまだ残っていたんですね。短気を起こして自殺なんてせずに済んで良かった」
魅音「ね、言ったでしょ。生きてれば良いこともあるんだよ。もう二度と死ぬなんて言わないでよね!」
詩音「分かりましたよ。ご心配をおかけしました」

詩音「それじゃいただきましょうか。あ、圭ちゃん、お醤油とってくださいます?」
圭一「おう。はいよ」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:14:00.63 ID:GSuDihMh0

沙都子「はふはふっ。あつあつでおいしいですわ」
梨花「さすがレナのお手製なのです。だしが良い感じなのですよ」
レナ「たくさんあるから、皆どんどん食べてね」

羽入「あうあう……柱にはりつけは寒いのです……僕にも食べさせてほしいのです……auau……」

魅音「ん? あれ?」
詩音「どうしました、おねえ?」
魅音「なんか、なんだろう。体がちょっと軽くなったような気がする」
レナ「そういえば、円盤のように丸かった腹回りが少しへこんできたような」
圭一「ベルトがゆるんでる!? すごい、すこしづつ体脂肪がおちてるぜ!」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:18:26.44 ID:GSuDihMh0

詩音「すごいわ! 食べれば食べるほど無駄な贅肉が落ちていく!」
魅音「すっごい気分爽快! 力がみなぎってくるようだよ!」
圭一「よっしゃ! この調子でガンガン食べまくって、今日中に元のスリムだった本来の俺たちの体格をとりもどそうぜ!」

羽入「あうあう……み、みんな、そんな一気にがっついたら危険なのですよ」
梨花「危険? なにが?」

圭一「うまっうまっ!」

圭一「うまうまう……うっ!?」

沙都子「ふんむ!?」  魅音「へふんむ!?」  詩音「はふん!?」

羽入「体についた体脂肪を落とすということは、体の中の物体を排出するということ」

羽入「排出するということはつまり」
梨花「……お、おなかが……うっ……!」

 ぐるぐるぐる

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:21:49.13 ID:GSuDihMh0

魅音「ちょ、おじさんトイレ!」
詩音「わわ、わたしも!」
圭一「お、おれもだ……」
沙都子「みなさん、お食事中にはしたないですわよ……とはいえ、わたくしもおトイレへ……」
レナ「はぅぅ……おなか痛いよぅ」

梨花「うぐぐ……あんたね、これが下剤入り餅ならそうだと先に言っておきなさいよ!」

梨花「わわ、わたしも……!」
羽入「あうぅ……」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:25:09.87 ID:GSuDihMh0

羽入「あうぅ……結局みんな行っちゃったのです」

羽入「なんとか去り際に梨花に磔獄門から解放してはもらえました」

羽入「まったく。みんながっつきすぎなのです。食事はもっと穏やかにするものなのに」

羽入「さて、それでは僕もこの痩せる鍋を食べて……って」

羽入「あう? あうあう? あうあうあう!?」

羽入「はわわわわ! カセットコンロの火が!」

羽入「あわわわわわわ! 大変なのです! 火事なのです!」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:30:29.53 ID:GSuDihMh0

 〜雛見沢分校 ・ 男子トイレ〜

 じゃー

圭一「なんでお前らがここにいるんだよ。ここは神聖な男子トイレだぞ」
魅音「しょうがないじゃん。女子トイレの便器が全部故障中だったんだからさ」
レナ「はぅ……夜中のトイレで他に誰もいないとは言え、恥ずかしい……」

 じゃー

圭一「お前らな、さっきから水流しすぎなんだよ。水だって無料じゃないんだぜ。ちっとは節約しろよ」
詩音「女の子には恥じらいってものがあるんです。圭ちゃんには分からないかもしれませんが、水を流す音でかき消したいものがあるんです」

詩音「排泄の音とか、脂肪まみれだった自分の姿とか。そういうものを一切流してしまいたいんです」

圭一「男子便所にきたなら、郷に従えよ。ここじゃぁな、用便は景気よくいっきに豪快に済ますもんだぜ!」

圭一「俺が手本を見せてやらぁ! いくぜぇ!!」

 ばぶん もりもりもり

沙都子「圭一さんの不潔!」
圭一「ふひひwww」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:33:37.59 ID:GSuDihMh0

 〜雛見沢分校 ・ 廊下〜

沙都子「もう! 圭一さんったら、レディーの前で最低ですわ!」
圭一「馬鹿野郎。男子便にきたヤツはな、みんなそろって男子と認められるんだよ。同じ男同士、遠慮なんているもんか!」

圭一「なあ、魅音!」
魅音「はひぅ!?」

レナ「あれれ? なんだか教室の方がおかしいよ?」
梨花「うん? あれは」

羽入「あうあうあうあうあうあい〜!!」
梨花「羽入?」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:36:51.79 ID:GSuDihMh0

羽入「りりりり梨花ぁ! みんなぁ! 大変なのです!」
梨花「どうしたのよそんなに慌てて。頬の肉がぶるぶる震えてるわよ。自重しなさい」
羽入「そんなこと言ってる場合じゃないのです! あうあう!」

羽入「火事なのです! みんながそのままにして行ったカセットコンロの火が紙コップに燃え移って、机が焼け始めたのです!」
魅音「なんだって! 大変だ!」
レナ「急いで教室へ!」

 〜教室〜

圭一「うわっ! こ、これは!」
沙都子「教室の壁が炎上してますわぁ!」
魅音「下がってみんな! 消火器をかけるから!」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:41:43.35 ID:GSuDihMh0

魅音「うわ、ダメだ! 消化剤じゃもうどうにもならない!」
レナ「消防署に連絡してくる!」
詩音「レナさん、お願いします!」

圭一「と、とにかく! 消防のことはレナに任せておいて。俺たちは俺たちのすべきことをしなければ」
沙都子「そ、そうですわね!」


 〜雛見沢村 村道〜

大石「さあて、と。今日の業務はこれで終了ですかな。んっふっふ」
熊谷「じゃ、そろそろ興宮に帰りましょうか」
大石「今日も寒いことですし。燗をくいっとやりながら、麻雀でもどうです?」
熊谷「ははは……本当に好きですね、大石さんも」

熊谷「ん? 無線連絡」
大石「あー、はいはい。もしもし。感度良好」

大石「はいはい。はいはい」

大石「はいは……雛見沢分校が火事!?」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:44:45.37 ID:GSuDihMh0

大石「熊ちゃん! 急いで分校へ向かってください!」
熊谷「了解っす!」

大石「やだなぁ。これから燗を一本と思っていたら。もっと熱いものがついてきちゃうなんて」
熊谷「ついてないっすね」

 〜雛見沢分校〜

大石「すでに雛見沢の消防団が到着しているようですね」
熊谷「道をあけてください! 警察です!」

大石「状況は!?」

大石「学校の教室から出火の模様? こんな時間に教室で誰が」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:47:54.24 ID:GSuDihMh0

圭一「魅音、醤油とってくれ」
魅音「はいよ」
圭一「サンキュ」

レナ「沙都子ちゃん、白菜煮えてるよ」
沙都子「わ、わたくしはそこのお肉をいただきますわ。おほほほほ」
詩音「沙都子〜、お肉ばかり食べてちゃいけません。ちゃんと野菜も食べなさい」
梨花「シイタケが良い感じなのですよ」

羽入「あうあうあう! みみ、みんな、何を落ち着いて鍋食べてるんですか!」

羽入「早く逃げないと! 炎にまかれちゃいますよ! あうあうあう!」

圭一「うるさい!」
羽入「はにゅん!」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 01:53:55.50 ID:GSuDihMh0

圭一「食事中くらい静かにできないのかよ。みんな食べてるだろ」
レナ「しっかり元の体形に戻れるまで食べないと、だもんね。はう〜」
沙都子「ここで逃げたりしたら今度こそ小児性糖尿病になってしまいますわ!」

羽入「でで、でも、このままじゃみんな焼け死んじゃいますよ!? 命あってのものだねなのですよ!」

詩音「私はもうすでに一度死んでいるんです! 痩せるために永らえたこの命です。痩せられずに生きながらえて、なんの意味があると言うんです!」
魅音「そう。私たち部活チームは、この程度の火災でなんかうろたえない!」

羽入「無茶苦茶言ってるのです……」

羽入「梨花! お餅を食べてないで、梨花からもみんなに言ってあげてなのです!!」
梨花「はふふはひふははへぁ?」
羽入「なにを言ってるか分からないのです!」

羽入「だいたい、食べたいのなら鍋を持って外に避難してから食べればいいじゃないですか!」

圭一「カセットコンロが無ければ鍋がさめるだろ!」
詩音「外は寒いじゃないですか!」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:04:14.81 ID:GSuDihMh0

大石「中に子どもたちがいる!?」
熊谷「はい、どうやら火の出元は夜の教室に忍び込んだ生徒たちの火遊びらしいです」
大石「困ったものですねえ、最近の子どもたちは。火の恐ろしさがまるで分かっちゃいない」

大石「…………ん?」

大石(な、なんだ、この記憶は……不思議な感覚が………)

大石(まるで体験したことがないのに、あたかも実際に体験したことがあるかのようなリアリティ)

大石(誰かが教室にガソリンをまいて……人質をとって篭城している記憶……?)

大石(馬鹿な。そんなことありえるわけがない。しかしこの記憶は……いったい……)

大石(………うぅぅむ……!)

大石「熊ちゃん! 嫌な予感がします!」
熊谷「はい?」
大石「私は突入します! 直接教室内の子どもたちを救出に向かいます! 熊ちゃんは本部へ連絡を!」
熊谷「あ、大石さん! それは消防が……って、行っちゃった」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:11:09.30 ID:GSuDihMh0

大石「この大石蔵人! 今年で還暦を迎える、世間で言うところの初老の齢!」

大石「ついに悲願だったS号事件も解決し、思い残すことなく穏やかに定年退職を迎えると思っていましたが!」

大石「しょせん私は荒事の世界がお似合いの人間でしたか!」

大石「退職間際に、こんな命も顧みぬ無茶をするなんて。年甲斐もなく……」

大石「ですが、実に私らしい。刑事生活を締めくくるに相応しい事件ですよ!」

大石「くっ……! 火の勢いが予想以上に早い……これは、ちょっとばかりマズイですね。んっふっふ」

大石「煙も濃い……ごほごほ! し、しかし、私がここで引き返すわけにはいかない! 未来を背負って立つ若者たちの命がかかっているのだから!」

大石「教室はここか! 皆さん、無事ですか!?」


圭一「あ、そっちの餅煮えてないか?」
レナ「食べごろだね。はいどうぞ」

大石「(゜Д゜)」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:16:33.39 ID:GSuDihMh0

魅音「ひふん! ま、また便意が……」
詩音「もう気にすることありませんって。みんな座して漏らしてますよ」
梨花「今はとにかく、この鍋を片付けて脱出することに専念しないと」
沙都子「そうですわね。おトイレはいつだっていけますもの」
圭一「出した分はあとで拭いとけばいいのさ。せいぜいかぶれる程度で済む」

羽入「もう僕もやけなのです! むしゃむしゃ!なのです!」
梨花「あ、またきた」

 ぶりぶり

大石「………」

大石「あの、皆さん? なにをしているんですか?」

圭一「あ、大石さんじゃないですか」
レナ「その節はどうもお世話になりました」
大石「こりゃどうも……じゃなくて、何をしているんですか! 早くここから出てください! 悠長に鍋など食べてる場合じゃないでしょうが!」

詩音「まあまあ大石さん。そういきり立たず。どうです? ご一緒にこのダイエット鍋でも」
大石「ダイエット鍋?」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:21:18.13 ID:GSuDihMh0

熊谷「遅い、遅すぎます!」

熊谷「大石さんが突入してからずいぶん時間が経過している。もう校舎の外壁もだいぶ焼け落ちたっていうのに……」

熊谷「はっ! ま、まさか! いや、そんなはずはない! あの大石さんがこんな火災ごときで……」

熊谷「はっ!」

熊谷(な、なんだ、この記憶は……? 体験したことがないのに、まるで経験したことがあるかのような生々しい情景が脳裏に……)

熊谷(路傍に停車してあった不自然な車に近づいて職務質問しようとした大石さんが、突然頭から崩れるように……!?)

熊谷(なんなんだ、この記憶は!? 現実に起こりえるはずがないことが頭に……いや、でも、しかし……!!)


熊谷「お、大石さああぁぁぁぁん!!」

消防団員「あ、刑事さん! 危ない戻って! 今学校に入ったら危険だよ!」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:28:05.73 ID:GSuDihMh0

 〜雛見沢分校 教室 (火災中) 〜

沙都子「げふぅ。もうおなかいっぱいですわ」
梨花「ぼくもなのですよ」
羽入「はぐはぐ! もしゃもしゃ!」
レナ「だいぶ食材も片付いてきたね」

大石「うまうま!」
熊谷「はふはふ! すきっ腹にしみこむような味わいっス!」
大石「竜宮さんはなかなかお料理上手ですねぇ。なっはっは!」
レナ「えへへ。ありがとうございます」

魅音「かなり火が回ってきたね。そろそろ脱出しないと本気でヤバイんじゃないかな」
圭一「んじゃ、そろそろ出るか? 腹ごなしも終わったしさ」
詩音「そうですね。すっかり元のスリムボディに戻ることができましたし、もうこんな火災校舎には用ないです」

沙都子「じゃあ、鍋をおいて脱出しますわよ!」
圭一「お尻かぶれたかもしれない……」

梨花「それじゃ、行きましょうです。どこから出ますか?」
魅音「さて、と。どっから出ようかね。火の手の弱いところから脱出するのがいいんだけど」

魅音「………」

魅音「……どっから出ようかね」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:32:51.05 ID:GSuDihMh0

圭一「う、うわああぁぁぁ! 鍋と脱糞に夢中で気づかなかった!」
レナ「あわわわわ……すっかり火と煙に囲まれちゃってるよぅ!」
大石「ありゃ、本当だ」

魅音「どどどどうしよう!? 調子にのって鍋食べ過ぎたよ!」
詩音「逃げ場なしですか!? 嘘でしょ!?」

詩音「いやよ、いや! まだ悟史くんにおはようの挨拶もしてないのに! まだ悟史くんにお目覚めのチュッチュもしてないのに! 死ぬのはいやぁ!」
沙都子「わたくしも嫌ですわぁ! た、たすけて、にーにー!」

梨花「……せっかく運命を打ち破り6月を乗り越えたというのに……」
羽入「夏のセミのように儚い数ヶ月でしたね、梨花……」
レナ「なななんで諦めモードになってるのかな、かな!?」
羽入「でも、皆と一緒に死ねるのなら……」
梨花「そうね」
レナ「はうー!」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:37:49.76 ID:GSuDihMh0

圭一「俺たち、死んじまうのか?」
魅音「どうやら、そうみたいだね」
沙都子「げほん! ごほごほ!」
梨花「沙都子。苦しいでしょうけど、もう少しの我慢なのですよ。暑いでしょうけど、あと少しで楽になりますのです……」

詩音「そそそんなぁ! 皆さんなんで諦めモードのままなんですか!? 生きたくないんですか!?」
レナ「でも、四方八方を火に囲まれたこの状況じゃ……もう……」
詩音「圭ちゃん! あなたからも何か言ってあげてください! こういうピンチの時こそ圭ちゃんがみんなに活力を与えるべきなのでしょ!?」

圭一「あ……天使が見える……えひひひん……うんこまみれ……」

詩音「いやあああぁぁぁぁ! こんな屎尿まみれで焼け死ぬなんて、死んでもしにきれなぁい!」

 ドカン!

葛西「詩音さん! お迎えに参りました!」
詩音「葛西!?」

圭一「火災だけに葛西さん……うひひ」
梨花「重症なのです」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:44:41.57 ID:GSuDihMh0

 こうして私たちは、夜の宵闇に赤々とした火の粉を舞い上げて燃え盛る校舎から脱出した。
 葛西の車に急いで糞尿くさい面々を押し込むと、急発進する車体の感覚がやけに頼もしかった。
 生きているという実感が希薄になり状況判断ができない頭でふと後ろをふりかえると、ゴウゴウと炎をたてる雛見沢分校校舎がゆっくりと、まるでスローモーションのように倒壊していくのが確認できた。
 まるで、映画のスクリーンをアリーナ席で見ているような感覚だった。

 ああ。
 と思った瞬間、ストンと体が車体後部座席に崩れた。
 そして、すぐに私の意識は溶暗していった。

 目が覚めたら、あの世でないことを祈りつつ。
 また悟史くんに逢えることを祈りつつ。
 私は夢も見ない闇の中へと落ちていった。


 どれくらい時間が経っていたのだろう。分からない。
 白ける世界が徐々に輪郭を持ち始める境目で、私はうっすらと鼻梁で感じ取っていた。
 うんこくさい。
 ああ、生きているんだな。と思った。

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:50:22.62 ID:GSuDihMh0

圭一「だいぶこってり怒られちまったな」
レナ「はう……しかたないよ。私たちが営林署を火事にしちゃったんだもの」
魅音「叱責だけで済んで留置場に放り込まれなかったのは良かったけど、親の大目玉がつらかったね」
梨花「僕たちは村長にやさしく怒られただけで済んだのですよ。にぱー☆」

沙都子「わたくしたちの問題は片付きましたが、学校はどうなってしまうのでしょう」
レナ「鹿骨市が立て直すんじゃないかな。火災保険に入ってただろうし。そのお金で」
圭一「しばらくは俺たちも自転車で興宮の学校に通わなくちゃいけないのか。大変だぜ」
魅音「私はしばらく興宮の実家に住み込むから、近いけどね」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 02:56:18.95 ID:GSuDihMh0

梨花「今回の一件で一番悪いのはオヤシロ様なのですよ」
羽入「あうあうあう」
梨花「オヤシロ様があんな物騒な食料を鍋に放り込まなかったら、そもそもこんなことにはならなかったのです」
羽入「はにゅん!」

圭一「でもまあ、俺たちも無事元の体形にもどれてよかったよな!」
魅音「だいぶ臭かったけどね」

レナ「大人の問題はいろいろと山積みだけど、私たち子どもの問題は解決かな、かな」
沙都子「ものすごく責任逃れな感じですけど、過ぎてしまったことをどうこう言ったって仕方ありませんし、わたくしたちにこれ以上できることはありませんものね」
圭一「そうそう。前向きにいこうぜ!」

詩音「ん〜、気のせいかな」

詩音「何か忘れていることがあるような……」

魅音「ん? 詩音どうかしたの?」
詩音「え、いえいえ。なんでもないですよ!」

詩音「これで沙都子が興宮の学校に来てくれるな〜と思って嬉しかっただけですよ」
沙都子「ぎくっ。お、お弁当は、梨花に作ってもらいますからね!」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/01/18(日) 03:00:47.81 ID:GSuDihMh0

詩音「だいぶ父さんと母さんに怒られたけど、もうこれで晴れて自由の身。ああ〜、やっと苦痛から解放されたわ!」

詩音「さあて。全部片付いたところで。また悟史くんのお見舞いにいこうっと!」

詩音「ふんふんふ〜ん♪」

 がちゃ

詩音「はろろ〜ん。悟史くん、園崎詩音でーす。また今日もお見舞いに……」

詩音「ぎゃああああぁぁぁぁ!」

詩音「ささ、さ、さとしくんが、ブトシくんにぃぃぃ! ひぃぃぃ!」

入江「どうしました詩音さん!? 何があったんですか!?」
三四「何事かしら?」

詩音「いやあああぁぁぁぁ!」

詩音「監督と三四さんまでアンドレ・ザ・ジャイアント!!」


  おしまい



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