1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:39:44.01 ID:v5wuYwnc0
キョン「・・・そうか」
古泉「悲しんでくれないんですか?」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:41:31.50 ID:v5wuYwnc0
キョン「そりゃあ、寂しいさ」
古泉「なぜこんな事になったのかをお話しましょうか?」
キョン「頼む」
古泉「事の発端はやはり涼宮さんです」
キョン「あいつがお前の転校を望んだという事か?」
古泉「そうなりますね」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:43:57.57 ID:v5wuYwnc0
キョン「何かの間違いじゃねえのか?あいつは団員全員を自分の所有物だと思ってる女だぜ?
特にお前は副団長じゃねえか。
真っ先にいらないって思われるのは俺だと思うぜ」
古泉「考えてもみてください。
彼女はなぜ僕をSOS団に招きいれたのですか?」
キョン「いや、謎の転校生だったからだろ?」
古泉「今の僕は転校生という属性も、謎という属性も失ってしまっているのですよ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:46:19.39 ID:v5wuYwnc0
キョン「・・・だとしても、だ。あいつはお前がその属性を失ったからって見捨てるような奴じゃあないと思うんだが」
古泉「それだけではないのですよ。彼女は僕に不信感を募らせていたのです」
キョン「不信感?」
古泉「実を言うと、生徒会長との密談を目撃されてしまいまして」
キョン「あー・・・」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:48:34.46 ID:v5wuYwnc0
古泉「他にも色々原因はあるのでしょうが、僕が転校してしまう事になったのは事実です。
今朝、機関の方から「お前は北高から引き上げろ」との命令が下りました」
キョン「・・・待てよ。それは機関の命令だろ?ハルヒは関係ねえじゃねえか」
古泉「以前もいいましたが、方法はどうあれ彼女の願いはオールマイティに叶ってしまうのです。
生徒会長の件もそうだったでしょう?」
キョン「・・・」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:52:18.31 ID:v5wuYwnc0
古泉「あえて僕は彼女にお別れを言わない事を選択しました。
だから今日の部活動も、何事も無かったかのように過ごしたのですよ」
キョン「・・・じゃあ何で、今になって俺に言うんだよ。
お前と過ごす最後の部活動だったってのに」
古泉「おや。嬉しい事を言ってくれますね。
言おうかどうか、僕も迷っていたのですよ。
突然消える方が僕らしいでしょう?」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:53:48.27 ID:v5wuYwnc0
キョン「・・・・・・古泉。部室に戻るぞ」
古泉「はい?」
キョン「いいから!」
古泉「いえ、普通に学校は閉まっている頃ですよ?」
キョン「黙れ」
古泉「はい」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 12:58:49.82 ID:v5wuYwnc0
古泉「この坂を上るのも、今朝で最後だと思ってたのですが」
キョン「・・・お前はどうなんだよ」
古泉「何がでしょうか?」
キョン「寂しくねえのかよ?SOS団に未練はないのか?」
古泉「・・・ない。と言ったら嘘になります」
キョン「・・・だったら何でそんなに平然と笑ってるんだよ」
古泉「・・・すみません。笑顔は癖なんですよ。
決まってしまったことは仕方が無いですからね。
一役者、それも端役が脚本家の決めた台本を覆すことは出来ないのです。
しかし、こんな時にまで涼宮さんの望む僕を演じ続けるってのも皮肉なものですね」
キョン「お前の本心を言えよ」
古泉「・・・」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:00:59.13 ID:v5wuYwnc0
古泉「・・・見てください。校門には警備員が居ます。
正面突破は無理でしょうね。帰ります?」
キョン「正面から行かなくてもいいだろうよ」
古泉「そう言うと思いましたよ。
不思議ですね。あなたは妙なところで無茶をする」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:06:42.46 ID:v5wuYwnc0
古泉「無事侵入できましたね。気分はスパイです」
キョン「楽しそうだな古泉」
古泉「こういうの、嫌いじゃないんですよ」
キョン「ああ、実は俺もだ」
古泉「ミステリーに危険はつきものですからね。
危機的状況の中で感じるスリルは病みつきになるものがありますね」
キョン「悪いがそうは思わないね。
あの孤島の事件みたいのはもう体験したくねえや」
古泉「すみません。事前にあなたにはオチをバラそうかと思ったのですが、
涼宮さんが不自然に感じると思ってやめたんです」
キョン「それはアレか、俺の演技力を疑ってたわけか」
古泉「そうなります」
キョン「人の事を言えるのかギルデンスターン」
古泉「ははは」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:09:04.69 ID:v5wuYwnc0
古泉「さあ部室ですよ。
ここに入るのも最後だと思うと感慨深いですね。
さっきも思った事ですが、何事も最後と自覚すると寂しいものがあります」
キョン「だからここに来たんだよ。わざわざその寂しさを体験しにな」
古泉「・・・今日のあなたはやけに優しいですね。普段の三割増しで格好良く見えますよ」
キョン「気持ち悪い事を言うな」
古泉「すみません」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:12:30.16 ID:v5wuYwnc0
古泉「このパソコンも、一つはコンピ研に返上されるのでしょうね」
キョン「あいつの事だからそんなことしないんじゃねえかな」
古泉「でしょうね。多分団員共用または予備のものになるのでしょう。
功績的に考えて次の副団長は長門さんですかね」
キョン「功績でいったら俺も良い線行ってると思うんだけどな」
古泉「彼女の目に見えない功績ですけどね」
キョン「まあな」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:16:02.14 ID:v5wuYwnc0
古泉「長門さんにも色々お世話になりましたね。
野球大会の時やゲーム対決の時、雪山事件の時など」
キョン「あいつが居なかったらお前のバイト出撃回数も増えてただろうな」
古泉「ええ、それはもう。
それどころか世界が崩壊してた可能性だってあります」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:18:29.88 ID:v5wuYwnc0
古泉「朝比奈さんのコスプレも色々楽しませてもらいましたよ」
キョン「あれほどまでに何着ても似合う女性は居ないだろうな」
古泉「はい。今だから言いますが、チアガールがかなりストライクゾーンでした」
キョン「野球の時か」
古泉「目のやり場に困りましたねえ。彼女のお茶も日々上達してましたね」
キョン「未来人的にはお茶の知識を持ち帰られても・・・って感じかもしれねえけどな」
古泉「涼宮さんの教育の賜物です」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:24:23.96 ID:v5wuYwnc0
古泉「まあ・・・一番お世話になったのは、あなたですね」
キョン「そうか?」
古泉「ええ。何より部員で唯一の同姓でしたし」
キョン「男同士でしか出来ないような話をした覚えはないけどな」
古泉「涼宮さんが望むイメージを崩すわけにはいかなかったので」
キョン「俺相手にでもか?」
古泉「はい。実はこれ、機関でかなり教育を受けた結果の性格なんです」
キョン「あれか、面接みたいなのをやったのか」
古泉「涼宮さんが言うと予想される言葉に対する受け答えとかをですね。
かなり短期間でしこまれましたよ。ボロが出ていなかったらいいのですが」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:27:54.68 ID:v5wuYwnc0
古泉「僕の仮説や分析にも耳を貸してくれましたし。
あそこまで素直に聞いてくれる人はそうそういません」
キョン「素直に聞いた覚えはないぞ」
古泉「あなたは聞き上手なんです。適度にものを知りませんからね。
よくそう言われませんか?」
キョン「・・・まあ」
古泉「あなたとしては鬱陶しかったかもしれませんが、僕は嬉しかったんですよ」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:33:31.52 ID:v5wuYwnc0
キョン「・・・古泉」
古泉「なんでしょう?」
キョン「お前はこれからも神人と戦ったりするのか?」
古泉「そのための力ですから」
キョン「自分を必要としなくなった身勝手な神のためにか?」
古泉「・・・それだけのためじゃないんですよ。
その神が創った世界には、僕にとって大事なものがたくさんあります。
あなたも含めてね、いや、あなたが僕にとって大事なものの最上級かもしれません」
古泉「だから戦うんですよ」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:34:16.88 ID:v5wuYwnc0
キョン「・・・一回くらい」
古泉「はい?」
キョン「一回くらい俺に勝ってみろ。勝負だ」
古泉「・・・オセロですか。いいでしょう」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:37:39.17 ID:v5wuYwnc0
古泉「・・・やっぱり強いですねあなたは」
キョン「いや、お前が弱いんだろ。目先の事しか考えないからだ。
お前頭良いだろうに」
古泉「なぜでしょうね、どうしても勝てないんですよ」
キョン「そのくせこういうゲーム大好きだよなお前は」
古泉「下手の横好きってやつですかね。何度負けても、楽しくて仕方がないんですよ」
キョン「そりゃあまさに下手の横好きだ」
古泉「・・・まあ、相手があなただったからかもしれませんがね」
キョン「・・・・・・」
古泉「これからも、僕はこういったゲームを好きといえるのでしょうか?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:39:20.99 ID:v5wuYwnc0
古泉「やっと、わかったんです。
僕は、この日常が、愛しくて、たまらない。
失いたく、ないんです」
キョン「・・・泣いてんのか」
古泉「いえ、楽しくて、笑ってるんですよ。
だって、それが、古泉一樹でしょう?」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:40:46.02 ID:v5wuYwnc0
キョン「・・・俺の勝ちだ」
古泉「完敗です。角を全て取られてしまうとは」
キョン「まだだ、まだ終わってねえぞ。
ゲームはいくらでもあるし、夜は長い。とことん勝負だ」
古泉「はい」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:43:40.23 ID:v5wuYwnc0
古泉「・・・まさかの全敗ですか。
手加減をしないのがあなたらしいですね」
キョン「・・・」
古泉「ここに居るとやっぱ色々思い出してしまいます。
映画もね。あれの続編には出られなくなってしまいましたね。
代わりにあなたが古泉イツキを演じてください」
キョン「俺には役不足だ」
古泉「あなたが間違った意味でその言葉を活用しているのか、正しい意味で
活用しているのかが気になるところですね」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:46:06.52 ID:v5wuYwnc0
古泉「来年の文化祭でバンドを組むという話も、どうやら心配無用になったみたいですね。
恐らく僕にベースかドラムが回ってくると思ってましたから、練習してたんですよ」
キョン「勤勉な奴だな」
古泉「次の夏休みのミステリーの事も毎晩考えてたんですよ。
次はトリック殺人にしようと思ってたのです」
キョン「・・・」
古泉「・・・」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:49:18.26 ID:v5wuYwnc0
キョン「・・・やっぱ間違ってるだろ、こんなの」
古泉「?」
キョン「こんなに、俺たちSOS団の事を思ってる奴を追い出すなんて、
あいつの頭がいよいよ狂ったとしか思えない」
古泉「でも、これが現実ですから」
キョン「諦めるんじゃねえ!あの馬鹿に電話するぞ」
古泉「・・・何を言うおつもりですか?
僕を転校させるな、と?そもそも彼女にはその事実が漏れないように、先生に頼んで秘密にしてあります。
校内で知ってる生徒はあなたと長門さんくらいですよ」
キョン「違う。お前の大事を思い知らせてやるんだ」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:53:46.28 ID:v5wuYwnc0
「何よ、こんな時間に」
「ハルヒ。知ってるか?」
「何をよ」
「古泉、ドラムとベース練習してるんだってよ。来年の文化祭のために」
「あっそ。真面目ね」
「それだけじゃないぜ。既に来年の夏休みのマーダーゲームも考えてるらしい」
「来年もお世話になるつもりじゃあ無かったんだけど」
「あいつほど団の事を考えてるやつはそうそう居ねえな」
「そうかしら?」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:57:18.35 ID:v5wuYwnc0
「・・・思い出せよ。
夏、冬と、俺たちのためにわざわざシナリオ考えて、知り合いに頼んで、孤島で
事件を起こしてくれたのは誰だ?
あいつはいつだって、お前の目に見えないところで必死だったんだ。
副団長としてな。
SOS団のために必死で動いてた。
生徒会長と陰で交渉して、団に火の粉が降りかからないようにしてたんだ。
たしかにあいつはもう謎でもなんでもねえし、転校生でもなんでもねえ。
だからって不必要な人間じゃねえだろ?
あいつも含めて、5人でSOS団だろ?」
「・・・あんた、何が言いたいのよ?」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/13(月) 13:59:07.49 ID:v5wuYwnc0
「あたしは、古泉君が不必要だなんて、思ってないんだからね!」
古泉の携帯が鳴った。
古泉「はい、古泉です・・・
え?取り消し?はい、わかりました!」
完